JP7442228B2 - 新世代眼科多焦点レンズ - Google Patents

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Description

本開示は、全般的に眼科多焦点レンズに関し、特に、異なる瞳孔サイズに応じて調整された配光を伴う回折次数を提供する眼科眼鏡、眼科コンタクトレンズ及び眼内多焦点回折レンズに関する。
診療科眼科は、解剖学、生理学及び人の目の病気の分野にある。
人の目は、解剖学的に複雑である。目の主構造体は、角膜、目の外側正面にある球状の透明な組織;目の色の付いた部分である虹彩;目の中に受けた光の量を均一化させる虹彩の中の適応可能な開口である瞳孔;光線を網膜状で焦点を合わせる目の中の小さな透明な円板である水晶体を含み、網膜は、目の後ろ側を形成し、網膜は、感知した光を、視神経を介して頭脳へ送る電気信号に変換し、網膜とレンズとの間の後方の空洞には、ガラス質の透明なゼリー状の物質で満たされる。レンズと角膜との間の前側及び後ろ側の室には、水性の透明な水状の液体で満たされる。
自然な水晶体レンズは、柔軟で透明な両凸構造を有し、角膜と共に、光を網膜上に焦光するように光を反射する。レンズは、前側で後ろ側より平らになっており、毛様小帯と称する吊り下げ靱帯によりレンズが接続された毛様筋により湾曲が制御される。レンズの湾曲を変化させることにより、様々な距離の被写体の焦点を合わせるように、目の焦点距離が変化する。目から至近距離にある被写体を見るため、毛様筋が収縮し、レンズが厚くなり、その結果、丸い形状になって、高い屈折力を有する。遠い距離の被写体に対する焦点合わせに変更する場合には、レンズの弛緩及び焦点距離の増加を要する。湾曲を変更し、目の焦点距離を網膜上に被写体の鮮明な画像を形成するように適合させることを、遠近調節と称する。
人では、水晶体レンズの屈折力は、自然な環境下で概略18-20ジオプトリであり、目の全光学出力の約1/3である。角膜が、目の全光学出力の残りの40ジオプトリを供給する。
目が年老いていくと、白内障と称する目の曇りにより、レンズの不透明度が増加し、糖尿病、外傷、ある医薬品及び過剰な紫外線を受けることにより、白内障を起こすことがあり得る。白内障は痛みがなく、結果として、曇ったぼやけた視界となる。白内障の治療には、曇ったレンズを取り除いて、一般的に眼内レンズ(IOL)と称する人工のレンズに交換する手術が含まれる。
他の加齢に関連する影響として、小さな字や近くの絵をはっきり見るのが困難なことで示される老眼と称するものがある。老眼は、一般的に、目の中の自然なレンズの厚みを増すことや柔軟性に欠くことにより生じると信じられている。加齢に関連する変化は、レンズを囲む毛様筋にも生じる。柔軟性が減ることにより、目の近くの被写体の焦点を合わせるのが難しくなる。
近視、近眼のような他の視覚障害を矯正するため、様々な眼内レンズが採用されている。例えば、角膜が大きすぎる湾曲を有することにより、目で離れた被写体を見ることができなくなる。角膜の影響は、離れた光線を網膜上でなく、網膜より前側で焦点を合わせることで示される。遠視は、通常でなく扁平な角膜により生じ、目に入った光線が網膜の後ろ側で焦点が合い、近い被写体で焦点を合わせることができない。遠視は、視覚困難の他の一般的な原因であり、不均一な形状の角膜により画像がぼやける。多くの場合、白内障の手術の間、患者の目に眼内レンズが移植され、除去したレンズの光学出力の損失を補償する。従来のIOLは単焦点で、典型的には、遠い(長距離の)焦点合わせを提供するのみであり、使用者は、例えば、読むためには、追加の眼科レンズ(例えば、眼鏡またはコンタクトレンズ)を使用する必要がある。ある近代的なIOLは、多焦点の光学的な設計で、この問題を解決している。これにより、遠くの焦点合わせに加えて、近く及び/または中間距離の視覚を提供する。今日、市場に存在する多焦点眼内レンズは、2焦点または3焦点である。実際、4つの目標焦点距離を有する、例えば4焦点レンズと称する多焦点眼内レンズや、5つの目標焦点距離を有する、例えば5焦点レンズと称する多焦点眼内レンズが提案されている。
多焦点眼科レンズは、屈折及び回折という2つの原理を利用している。これらの原理を用いた多焦点コンタクトレンズもある。老眼は、眼鏡またはコンタクトレンズで矯正され、多焦点光学系も選択できる。
本記載では、これらの原理の間の物理的な差を図示するため、光の波モデルを採用している。このモデルでは、電磁波が、特定の方向に、特定の速度で、特定の波長、振幅及び位相を有して伝搬する。
屈折は、光波が、空気や液体のような1つの媒体から、ガラスまたは樹脂のような光波の異なる伝搬速度を有する他の媒体に進むときに受ける偏光である。
最も基本的な形式では、回折は、光波が対象物の凹凸に当たったときに、第2の光波の源となる物理効果に基づく。これらの第2の光波は、建設的または破壊的に互いに干渉し合う。干渉光波により運ばれる光路の長さの差異が、波長の半分の整数の倍数のとき、建設的な干渉が生じる。つまり、振幅が強化する態様で加算される。このことを、波が同位相であるとも称する。特定のポイントに到達した光波の間の光学経路の差異が、半波長の奇数倍のとき、破壊的な干渉が生じる。つまり、1つの波の頂部が、他の波の谷部と合致し、波を一部でまたは完全に互いに消滅させる。このことを、波が同位相にないと称する。
多焦点眼科レンズは、一般的に両凸形状、平凸形状、両凹または平凹形状のレンズ本体を有し、曲率や厚みは、屈折により光学軸における第1の焦点を提供するように適合される。レンズ本体の前側及び後ろ側の表面の1つの面または両方の面において、透過表面レリーフまたは回折を備えることができ、透過表面レリーフまたは回折は、透過光を回折するように設計され、レンズ本体のそれぞれの表面における同心円状のリングまたは領域に配置される、一定のまたは間欠の空間を有する稜線及び/または溝を有する。間欠した空間、または稜線及び/または溝のピッチは、実質的にレンズの光学軸における破壊的及び建設的な干渉のポイントを定める。稜線及び/または溝の形状及び高さは、干渉による建設的な干渉のポイントにおいて提供される入射光の量を制御する。建設的な干渉のポイントは、一般的に、回折次数または焦点と称する。例えば、屈折の焦点と異なる、3焦点レンズの第2及び第3の焦点を提供するように、回折レリーフを設計することができる。
多焦点眼科レンズの1つの共通なクラスでは、鋸歯タイプまたはバイナリのグレーチングを備える。本記載では、鋸歯タイプまたはギザギザのタイプという用語は、直線状または湾曲した単調な傾斜受光面のような単調な傾斜受光面を有する、繰り返し隣接して配置された複数のプリズム形状の透明な回折光学要素(DOE)を備えた透光性回折グレーチングまたはレリーフのクラスを示す。本記載の目的において、バイナリタイプのレリーフという用語は、繰り返し間隔をあけて配置された複数の矩形またはプリズム形状の透光性を有するDOEを備えた透光性回折レリーフのクラスを示す。
レンズとして機能する場合、ギザギザのクレーチングの繰り返す間隔またはピッチは、中心またはレンズの光軸から半径方向に、単調に小さくなる必要がある。特に、第1の間隔がレンズの中心で始まり、第2の間隔が(1*k)0.5で始まる。ここで、kは、正の定数である。そして、第3の間隔が(2*k)0.5で始まり、第4の間隔が(3*k)0.5で始まり、更に続く。このように、回折光学系において、グレーチングを所謂r空間で表すことに優位性がある。
空間は、|2λf|で記載することができる。ここで、λは設計波長であり、fは第1回折次数の光学パワーの逆数である。回折レンズの間隔が、物理的な間隔で等距離でなくとも、これらは周期的である。これを把握する1つの方法は、r空間を見ることである。これを把握する他の方法は、各々の間隔において、焦点への光路長さの差が、厳密に1波長λずつ増加することである。周期性の源は、各々の間隔において、光路の長さの同一の増加である。
このような基本的なレリーフの回折次数のような焦点の計算は周知であり、回折光学レンズの当業者にとって単純な事項である。一般的に、眼科レンズの使用について、基本的なレリーフまたはグレーチングの間隔やピッチは、目標の焦点を提供する第1及び/または第2回折次数を有するように選択される。このような基本的なレリーフにより、大半の光が低い回折次数で回折する。設計工程において、回折焦点で結合された所望の光の強度プロファイルに到達し、これらの基本的なグレーチングまたはレリーフの第1及び/または第2回折次数に回折するような振幅プロファイルを有するように構成される。しかし、このような進め方が、レンズに入射する光の最適の分布を導くものではない。何故ならば、多くの光は使われていないより高い回折次数に分布され、レンズの焦点の間の相対的な光分布の調整及び制御を、異なる瞳孔の大きさにおいて困難にし、多焦点レンズの全体的効率を著しく低下させるからである。
回折レリーフまたはゴレーチングでの鋭い遷移は、機械加工の困難性を生じさせ、完成したレンズにおいて、光の散乱及び迷光、色収差、眩輝のような望まない光学現象が生じる。例えば、日光の直射または反射や、夜間の車のヘッドランプのような人工光といった明るい光の存在下で、視覚が困難になる。薄明視の状態下のような、ほのかな明かりで視覚される白色または色付きのリングやスポットのような後光効果が生じる。このような望まない光学効果のその他の例として、段差のある回折レリーフまたはグレーチングの鋭いエッジを滑らかにすることが提案される。滑らかには、サインまたはコサイン関数、多項式、フィルタリングまたはスパーガウス関数を用いた重畳積分を用いることができる。滑らかにすることにより、鋸歯タイプまたはバイナリタイプのDOEの鋭いエッジや段差を、例えば、レンズの半径方向に伸ばしたり、分散させたりする効果が得られる。
回折表面を比較するとき、重要なファクタは、回折効率である。回折効率は、どれだけの光学パワーを所望の回折次数に向けられたかの測定値となり、特に回折レンズ関しては、どれだけの光学パワーが所望の光学焦点に向けられたかの測定値である。2焦点レンズでは、レンズ本体の表面が、識別可能な2つの距離において、可能な限り良い視界を提供できるように最適化され、位相整合のフレネルレンズの原理を用いて、可能な限り最高の回折効率に達することができ、これにより、鋸歯タイプまたはギザギザのタイプの回折パターンを活用できる。参考として、刊行物"Refractive and diffractive properties of planar micro-optical elements", by M. Rossi et al., in Applied Optics Vol. 34, No. 26 (1995) p. 5996-6007が挙げられ、この刊行物は、参照として本書に組み込まれる。
鋸歯タイプまたはギザギザのタイプの回折パターンでは回折プロファイルにおける不連続性の結果として、フレネルレンズは、眩輝に関して上記の全ての欠点を有する。それとともに、同じものを容易に正確に製造するのが困難である。しかし、3焦点レンズでは、レンズは、3つの焦点において可能な限り良好な視覚を提供し、鋭いエッジを有することなく、最適なグレーチングが得られる。
等しい強度分布を有する3焦点リニアクレーチングの場合、刊行物"Analytical derivation of the optimum triplicator",by F. Gori et al., in Optics Communication 157 (1998), p. 13-16”が挙げられ、この刊行物は、参照として本書に組み込まれる。
刊行物"Theory of optimal beam splitting by phase gratings. I. One-dimensional gratings", by L. A. Romero and F. M. Dickey, in Journal of the Optical Society of America Vol. 24, No. 8 (2007) p. 2280-2295"も挙げられ、この刊行物は、参照として本書に組み込まれる。この刊行物は、より一般的に記載され、少なくとも奇数の次数に等しく分割する最適なグレーチングが提供されている。後者の書面では、所定の目標次数のセットと、このような目標次数の中の所定の強度分布を見出すための数学的手段が提供されている。最適なグレーチングは、記載された強度分布において、最も高い回折効率を有するリニア回折グレーチングと定義される。
刊行物Gori et al及びRomero et alでは、ビームスプリッタの意図のみによるリアアフェーズグレーチングが議論されている。
出願人の国際出願WO2019/020435のように、Gori et. alによる3焦点グレーチングを、多焦点眼科レンズの設計に用いることができる。
後述するように、WO2019/020435に記載の態様では、一般的なリニアグレーチングを提供できる。もし、リニアグレーチングの形状がr空間におけるレンズプロファイルの形状に一致していれば、リニアグレーチングをレンズに変形させることができる。このように、リニアグレーチングを、構成するレンズの半径の2乗に変形させることができる。
WO2019/020435Aは、回折レリーフまたはグレーチングを備える多焦点眼科レンズを設計するための一般的なアプローチを開示しており、回折レリーフまたはグレーチングの回折プロファイルは、レンズ本体の半径方向における単閉鎖表示または関数により数学的に記載される。
このような数学的な表示は、回折次数(-m、+m)における目標焦点に分配された光量の所定に強度分布において想像できる最高の効率を有する入射光の分割が可能な回折グレーチングの位相プロファイル及び/または高さプロファイル、または振幅プロファイルを表すことができる。このようなグレーチングは、中央の次数で、(屈折焦点を作る)ゼロ次数を含む。もし、M=1であれば、3焦点レンズを作れるし、もしm=2であれば、5焦点レンズを提供できる。
このようなグレーチングを設計する一つの有益な方法は、はじめに所望の目標次数及びこの次数間の所望の光分布を定め、そしてこれらの特性を提供する最適なグレーチングを設計する。
レンズ本体の半径方向に延びる連続周期位相プロファイル関数を有する眼科レンズは、非継続またはジグザグのタイプの位相プロファイル関数を有するレンズに比べて、視界が快適でなく性能に劣る。例えば、関数が機能する変数、項、式のような引数の各々の点や値において、(1)関数がこのような点で規定され、(ii)右側及び左側からの点が存在して等しいように引数がなるときの関数の制限、(iii)点がこの点での関数の値に等しいように引数がなるときの関数の制限となるように、関数が働くとき、関数が連続すると称される。
連続周期位相プロファイル関数を有するレンズは、特に、ジオプトリの計算ミスに対して鈍感になる。このことは、例えば、眼内レンズを装着する場合に医者や技師、または、コンタクトレンズを装着する場合の検眼医の正確でない計測装置に起因し、特に使用者により要求される内部光学パワーの修正における計算ミスとなる。更に、レンズを装着した後、レンズの傾斜及びずれにより生じる眼内レンズの場合の位置ずれ(偏心)に対する繊細さは、連続周期位相プロファイル関数を有するレンズでは無視することができると報告されている。このようなレンズは、レンズを進む入射光の光路で不均一性による眩輝、散乱が生じる可能性が低く、光輪を作りにくい。
連続周期位相プロファイル関数を有するレンズは、特に、滑らかな曲線を有する場合、例えば、鋸歯タイプまたはバイナリタイプのグレーチングまたはレリーフに比べて、計算されたプロファイルに応じて、より容易に製造できるという利点を有する。
上記の利点の結果は、より大きい部分において、連続周期位相プロファイル関数を有する回折グレーチングでは、鋭いエッジを有する同心リングまたは領域を要さないところから生まれる。
連続周期位相プロファイル関数により規定された回折グレーチングの光学伝送機能または光搬送機能を有するレンズは、目標焦点の選択の自由だけでなく、選択された目標焦点の各々における光の分配の制御も提供するレンズ本体の半径または光軸への半径方向の距離の関数として、位相プロファイル関数の引数を調整することにより、このようなレンズの回折及び/または屈折焦点における相対的な光分布を調整することができる。これにより、例えば、異なる瞳孔サイズにおいて、目標焦点における光分布の調整を、個々に、異ならせて実施できる。よって、レンズ表面全体を、多焦点に向けて最適化できる。
実際、人の目にIOLを埋め込んだ後、全体として新しい目の焦点特性を計測する必要がある。つまり、IOLの埋め込みの結果の第1の客観的な表示として、新しいレンズと使用者の目の残余部分とからなる完全な視覚システムを一体的に計測する。実際、例えば、大半の医者は、オートレフラクトメータによる単純な計測に頼る。自答的なレフラクトメータまたはオートレフラクトメータは、例えば、人の屈折エラーの客観的な計測及び眼鏡またはコンタクトレンズの処方箋を提供するように、目の検査中に用いられるコンピュータ制御の装置である。これは、光が人の目に入ったときに、どのように光が変化するか計測することにより達成される。オートレフラクトメータは、患者の目が適切に像に焦点付けられたときに定められる。
多焦点眼内レンズを移植された後、レンズの利点の前の適応時間が、使用者により十分評価される。これが、使用者の目の中及び頭の中における適応プロセスによる。臨床的な観察により、移植の後、使用者ははじめに遠位焦点に対して適応し、多焦点レンズに関して、数日、数週間たって、最終的に2つの焦点、例えば、近く及び中間の焦点に対して適応することが示される。しかし、全ての瞳孔サイズに対して多焦点で全く最適化されたレンズにおいて、遠位焦点に対する適応時間が増加することもある。このことは、使用者にとって喜ばしくなく不快である。
IOLにおいて全ての焦点を正しく測定するため、プロトコールが存在するが、このようなプロトコールを完全に提供するには、しばしば過大な時間消費として捉える必要があり、例えば、測定により、多焦点IOLの1つの光学強度のみが得られる場合もある。測定は、しばしば医者、眼科医、検眼医が行う場合だけでなく、定期的に医療技師が代わりに回折遠位焦点を計測する場合があり、手術が成功するか否かの間違った結論を導く虞がある。
鋸歯タイプのIOLにおいて、例えば、測定は、確かに一般的に遠位焦点を示す。しかし、WO2019020435の教えに従って製造されたレンズでは、多焦点で最適化するとき、使用者の異なる瞳孔サイズで3以上の焦点を提供し、これはレンズの屈折強度なので、このようなタイプのIOLの測定された1つの焦点は、通常、中間焦点となる。オートレフラクトメータを用いて実際に測定された焦点は、回折焦点の1つではなく、たびたび中間または屈折焦点であることを、測定に関わった人に確信させるのは非常に困難である。
WO2019020435から、眼科レンズの多焦点特性は、光軸近傍のレンズ本体の表面の半径方向における第1領域に限定されることが知られており、一方、レンズ本体の半径方向で第1領域を越えて、レンズ本体の外周端部に向けた更なる外側において、例えば、レンズが2焦点の特性を有する第2領域を備えることができる。例えば、第2領域において、中間及び遠位焦点の焦点を提供することができる。しかし、このタイプのレンズを測定するとき、オートレフラクトメータが、しばしば中間、例えば、屈折焦点を示す場合がある。
よって、全ての目標焦点における相対的な光強度を調整または制御して、目標とする3以上の回折次数または焦点における自由度を提供する改良された眼科レンズの設計が必要であり、特に、異なる瞳孔サイズにおいて、使用者または患者の適応時間を改善し、遠位及び近位焦点の何れかにおいて、容易に回折焦点を測定する可能性を提供できることが必要となる。
第1の態様では、少なくとも近位、中間及び遠位を見るための焦点を備える眼科多焦点レンズが提供される。透光性レンズ本体を有するレンズは、レンズ本体の光軸からレンズ本体の表面を横切って、同心に半径方向rに延びる回折クレーチングを備える。レンズ本体は、中間視覚のための屈折焦点、及びレンズ本体への入射光の位相を変化させるように配置された1つの連続周期関数として表され、少なくとも回折次数+mの近位視覚及び回折次数-mの遠位視覚のための回折焦点を提供する光学ウエーブスプリッタとして機能する位相プロファイルφ(r)を有する周期回折グレーチングを備えるように設計される。ここで、mは正の整数である。
本開示に係るレンズ本体は、レンズ本体の光軸からレンズ本体の表面を横切って、半径方向rに所定の距離延び、回折焦点の1つと一致する焦点を提供するレンズ本体への入射光の位相を変化させるように配置された連続位相プロファイル関数ψ(r)を有する単焦点中央ゾーンを備え、単焦点中央ゾーンが終端するレンズ本体の半径方向の位置における遷移ポイントから、回折グレーチングが備えられる。遷移ポイントにおいて、回折グレーチング及び単焦点中央ゾーンが同一の振幅値を有する。
本開示は、回折グレーチングにより提供される回折焦点の1つと一致する焦点を有する単焦点部分を眼科レンズの中心に備えることにより、IOLを移植した後、比較的小さな瞳孔サイズにおいて、もし、単焦点部分の焦点が目標の回折焦点の1つと一致する場合、レンズ及びレンズと目の組み合わせのような患者の完全な視覚システムの目標の回折焦点の1つを正確に測定できるという見識に基づく。
回折次数+1の近位視覚のための目標焦点、回折次数-1の遠位視覚のための目標焦点及びゼロ次数とも示される目標中間焦点を仮定する。単焦点中央ゾーンの焦点が遠位視覚の目標焦点と一致するとき、目標遠位視覚に対するレンズと目の組み合わせのような患者の視覚システムの適応を、単焦点中央ゾーンのサイズの範囲における瞳孔サイズに対して計測することができる。同様に、単焦点中央ゾーンの焦点が近位視覚の目標焦点と一致する場合も同様である。
オートレフラクトメータが、患者の瞳孔の周囲における計測を行う。しかし、光の状態によって、しばしば医者は、瞳孔が概略3mm以下の径であると計測する。本開示により製造されたレンズを計測したとき、典型的な瞳孔のサイズは、1-2mmの径を有する。つまり、このような寸法から、計測を行う人は、計測は、単焦点中央ゾーンの焦点に基づく結果を示すと知る。
更に、本開示では、瞳孔サイズの大きな範囲において、単焦点中央ゾーンにより提供される強い遠位焦点または近位焦点を得ることができる。外部周囲条件及び/または日中の条件において、遠位または近位焦点が支配的である。これにより、例えば、WO2019020435に開示されたような先行文献の多焦点レンズに比べて、全ての焦点が、使用者の視覚システムで許容されるまでにおいて、単焦点中央ゾーンにより提供される焦点合わせを適応させる時間の短縮と、より快適な経験を導く。
上記のように、鋭いエッジを有する同心リングまたはゾーンを備えず、連続周期位相プロファイル関数を有するレンズは、レンズを通る光の光路の不均一性に起因する眩輝または散乱が生じる可能性が低く、例えば、鋸歯タイプまたはバイナリタイプのグレーチングまたはレリーフに比べて、計算されたプロファイルに応じて、より容易に製造できる。
これらの利点は、レンズ本体の半径方向の位置における遷移ポイントにおいて、本開示でも維持される。遷移ポイントは、単焦点中央ゾーンが終端し、回折グレーチングが開始する。単焦点中央ゾーンの高さプロファイルまたは振幅プロファイル、及び回折グレーチングの高さプロファイルまたは振幅プロファイルが一致した振幅値を有する。つまり、レンズ本体の表面を横切るレンズの全体的な光学プロファイルの振幅または高さの飛躍を、効果的避けることができる。これにより、レンズを進む光の光路における不均一性を防ぐことができる。
ミクロ機械加工やダイモンド旋削による眼科レンズの製造における重要なステップは、例えば、切削痕を取り除くように機械研磨することである。品質要求及び眼内レンズの医学的規定に従うため、全ての視覚可能な切削痕を取り除く必要がある。しかし、非常に低いレベルの切削痕を取り除くには、高価な機械を要し、低速施策を要する。切断の後、レンズを磨くことができれば、加工をより速く行うことができる。
回折レンズの高さプロファイルにおける鋭い角度は、機械研磨を複雑にする。レンズの高さプロファイルの観点から、機械研磨が不可能な場合、危険な化学薬品を要する化学研磨を用いるか、または研磨を要しないようにレンズを製造するかの何れかを行う必要がある。後者の場合、低い歩留り及び高価な機械の一方または両方により、製造コストが非常に高騰する。
本開示に係るスムーズな回折形状により、研磨が許容され、これにより、高さプロファイルで鋭い遷移部を有するレンズに比べて、大きく歩留りを増加させることができる。
本開示に係る眼科多焦点レンズの1つの実施形態では、回折グレーチングがウエーブタイプの回折パターンを備える。例えば、周期回折グレーチングの位相プロファイルφ(r)が、連続ウエーブタイプ関数を備え、頂部と谷部の振幅値が交互に現れ、遷移ポイントが、回折グレーチングの谷部の振幅値よりも頂部の振幅値により近く位置する。
遷移ポイントが、回折グレーチングの谷部の振幅値よりも頂部の振幅値により近くで生じるとき、レンズの回折効率が増加することが見て取れる。つまり、遷移ポイントが、レンズ本体の表面の回折グレーチングのピークに近いとき、回折効率が増加する。
本開示に係る眼科多焦点レンズのその他の実施形態では、遷移ポイントと、レンズ本体の半径方向rにおいて計測された頂部振幅値との間の距離が、r空間で見るとき、r空間における回折グレーチングの周期またはピッチの0.25より小さく、好ましくは、r空間における回折グレーチングの周期またはピッチの0.2より小さい。
回折グレーチングの回折プロファイルの計測から、2乗r軸において測定を表示することにより、回折グレーチングの周期を定めることができる。
よって、単焦点中央ゾーンの振幅プロファイルから回折グレーチングの振幅プロファイルまでの比較的スムーズな遷移、及び改善された回折効率が、頂部振幅値の横の回折グレーチングの振幅プロファイルの上昇または降下エッジにおける遷移ポイントを研磨することにより得られる。
つまり、回折グレーチングの特定の山振幅値の先導するまたは上昇するエッジ、及び追従するまたは下降するエッジの1つにおいて、単焦点中央ゾーンと回折グレーチウングとが合流する。例えば、このようなウエーブタイプ周期回折プロファイルのこのようなエッジでは、この山振幅値に向けた何れかの方向において、半径方向の距離が減じられるとともに、レンズ本体の表面が減じられる。
本開示の1つの実施形態において、少なくとも単焦点中央ゾーンの半径の1つにおいて、回折グレーチングの位相プロファイル関数φ(r)に基づいて、回折グレーチングの振幅プロファイルH(r)の偏角及び/または振幅を適応させ、単焦点中央ゾーンの位相プロファイル関数ψ(r)に基づいて、単焦点中央ゾーンの位相プロファイルh(r)の偏角及び/または振幅を適応させる。
本開示に係る眼科多焦点レンズの回折グレーチング及び単焦点中央ゾーンは、レンズ本体の表面の一部を横切るように、半径方向に、両方とも対称に、レンズ本体の光軸に関して対称に延びることができる。対称な実施形態では、光軸が、レンズ本体の中心から半径方向rに移動したレンズ本体の表面の点を含むことができる。実際、殆どの場合、対称な実施形態が適用される。本開示に係る眼科用多焦点レンズの実施形態では、回折グレーチングの周期位相プロファイルφ(r)の偏角及び振幅の一方または両方が、レンズ本体の光軸からの半径方向rにおける距離の関数として変化する。
連続周期位相プロファイル関数を有する回折グレーチングを備える眼科レンズの焦点の光分布は、位相プロファイル関数の偏角及び振幅の一方または両方を、レンズ本体の光軸への半径方向または放射状の距離の関数として変調することにより、相対的に大きな強度範囲にわたって優れて調整できることが、WO2019020435から知られている。
このような態様により、様々な瞳孔のサイズに対して、レンズの各々の焦点における所望の相対的な光分布を、本開示に係る回折焦点の1つにおける光量に対する短焦点中央ゾーンの貢献に関わらず、または貢献によって、効果的に確立することができ、中央ゾーンの半径を適合させる、及び/または中央ゾーンの振幅プロファイルh(r)の振幅を適合させる、及び/または回折グレーチングの振幅プロファイルH(r)の偏角及び/または振幅を適合させるといったような、上記の任意の方法により、遷移ポイントをセットすることにより、焦点における目標光分布における影響を修正する。
本開示に係る眼科多焦点レンズの実施形態において、回折グレーチング及び単焦点中央ゾーンは、
光軸、回折クレーチングにより提供される回折焦点の1つと一致する第1領域の焦点を含むレンズ本体の第1領域において、単焦点の特性を提供し、
レンズの半径方向において第1領域を越えて延びるレンズ本体の第2領域において、多焦点特性を提供し、
レンズ本体の外周端部に向けて半径方向において第2領域を越えて延びるレンズ本体の第3領域において、2焦点特性を提供する
ように配置される。
このような実施形態により、眼科レンズの多焦点特性は、レンズ本体の表面の半径方向において、例えば、レンズの第1領域のような単焦点中央ゾーン及びレンズ本体の外周端部の間に位置する第2領域に限定される。半径方向において更に外側の第2領域を越えてレンズ本体の外周端部に向けて、レンズは、2焦点特性を有する第3領域を備える。
このタイプのレンズは、使用者の瞳孔サイズに対して、好ましく調整された最適化された回折効率を提供する。第1、第2及び第3領域の寸法は、強いまたは比較的強い周囲の光状態に対して、例えば、本を読むとき、人の瞳孔サイズは、主にレンズの第1及び第2領域をカバーするように配置され、光学パワーの殆どが、近位及び中間距離の視覚のための焦点に向くように配置される。少ない光の状態では、夜に車を運転するとき、例えば、瞳孔サイズは比較的大きくなり、レンズの全ての表面領域をカバーするように配置され、光学パワーの殆どが、中間及び遠位の視覚のための焦点に向くように配置される。当業者は、それぞれの表面領域における焦点の間の光学パワーの比率は、レンズの単焦点第1領域が、近位または遠位の焦点の何れに寄与するかによる。
本開示に係る眼科多焦点レンズの実施形態において、単焦点中央ゾーンは、遠位視覚のための回折焦点と一致する焦点を生成する。
IOLを移植した後、例えば、患者は、遠位視覚の方が、近位視覚及び中間距離視覚の一方または両方よりも速く適合することが観察される。上記の実施形態では、患者に、例えば遠位視覚のような1つの良く規定された単焦点を与え、患者は素早く適合し、移植の後の早い段階で既に日常の活動の多くを上手く実行できるようになる。更に、この実施形態では、特定の単焦点中央ゾーンのみが遠位視覚を与えることを知っているので、医者は容易にレンズを評価できる。患者の瞳孔の寸法が単焦点中央ゾーンの直径より小さいとき、(オート)レフラクトメータを用いて視覚システムを測定した場合でも、遠位視覚の測定が保証される。
本開示に係る眼科レンズは、半径方向の位置に遷移ポイントを有し、単焦点中央ゾーンまたは第1領域が0.8-1.3mmの範囲の直径を有し、遠位視覚及び近位視覚に対する目標焦点に分配される入射光の強度の比が、0.8-2.0の遠/近比率範囲であるように設計された、回折グレーチングの位相プロファイル関数φ(r)と、単焦点中央ゾーンの位相プロファイル関数ψ(r)を有し、当該眼科レンズは、実際、移植されたレンズの過半をカバーする。
単焦点ゾーンのプロファイルの形状または高さは、単焦点レンズから知られている複数の連続屈折プロファイルから選択することができる。非球面の表面は、実際に知られた単焦点レンズの最も一般的な形状の中にある。
本開示の多焦点眼科レンズの実施形態によれば、単焦点中央ゾーンは、下式で規定される連続位相プロファイル関数ψ(r)を備える。
r:レンズ本体の光軸からの半径方向における距離、[mm]、
f:単焦点中央ゾーンの焦点距離、[mm]、及び
λ:設計波長、[mm]
幾何光学または光線光学を用いた近軸近似において、
レンズのこのような光線及び光軸の間の角度θが、tanθ≒sinθとみなせるような、例えば、<<1ラジアンのような小さな値に維持され、
単焦点中央ゾーンの上記の位相プロファイル関数(1)が下式まで減少する。
代替的な単焦点中央ゾーンの屈折プロファイルは、下式で規定される。
z(r):光軸から距離rにおけるサグ
r:レンズ本体の光軸からの半径方向における距離、[mm]、
R:曲率半径、[mm]、及び
κ:レンズの形状を規定する円錐定数、
h:(光軸からの)半径座標、及び
2n:(より高次の非球面光学要素を許容する)修正多項式の係数。
用語”サグ”は、円筒から開始し、端部z(r)の1つから非球面レンズをカットすることにより、中心光軸からそれぞれ距離hでカットする深さを提供することから思いつくことができる。ここで、Rha円柱の曲率半径である。
前述のように、リニア位相グレーチングのために計算された所望の多焦点グレーチングを提供し、そのグレーチングを回折レンズまたは回折レンズの一部に変換することは、しばしば有効である。例えば、Goriらにより、光学的に三重化する最適な方法が証明されている。例えば、入射光を各次数で同じ光強度を有するように3の次数に分割するビームスプリッタが下式で提供される。
φlin(x):リニア位相グレーチングの位相プロファイル、x:グレーチングが延びる軸または距離、[mm]。
この規定では、1周期は厳密に1単位長さである。
本開示に係る多焦点眼科レンズの実施形態において、回折グレーチングが、ウエーブスプリッタとして稼働するように配置され、回折次数+1及び-1の2つの回折焦点を備え、位相プロファイル関数が、WO2019020435に開示された、例えば、下式のような単一連続期間閉鎖形式表現または関数により表される。
r:レンズ本体の光軸からの半径方向の距離、または外側への半径、[mm]、
A(r):レンズ本体の半径方向の位相プロファイル関数の振幅変調関数、
F[α*G]:ウエーブスプリッタ機能を提供するレンズ本体の半径方向の関数、
G(r):r空間における連続周期関数、
α(r):Gの偏角マグニチュード変調関数、
S(r):r空間におけるGの偏角変調関数、[mm]、
T:r空間における回折グレーチングの周期またはピッチ、[mm]、及び
B(r):連続周期位相プロファイル関数の振幅調整関数。
偏角マグニチュード変調関数α(r)及び偏角変調関数S(r)の少なくとも1つが、レンズ本体の光軸の半径方向の距離の関数として、変調された偏角を備える。
式(4)において、均等な光強度分布を有する3焦点ビームスプリッタにおける最高回折効率を有するリニア位相グレーチングが規定される。もし、偏角がxからxに変更された場合、レンズの修正ゾーン距離を伴う位相プロファイルが提供される。もし、これが式(5)の位相プロファイル関数φ(r)に適用される場合、F[α*G]は、逆タンジェント関数であり、G(r)はサイン関数である。S(r)=0、A(r)=1及びB(r)=0の場合、x空間から見たとき、リニア位相グレーチングと同一に見えるような回折グレーチングに到達する。レンズとして、それは、±1回折次数または0次数における焦点で最高の効率を有するように入射光を分割する平面回折グレーチングの連続周期位相プロファイル関数である。
異なる瞳孔サイズに応じた目標焦点における光分布を調整するため、上記の連続周期プロファイル関数(4)の偏角を変調するため、α(r)及びS(r)の両方を個々に選択することができる。
偏角変調関数S(r)の定数は、連続周期位相プロファイル関数の位相シフトを表し、位相プロファイル関数の傾斜の開始を定め、これにより、+1回折次数においてより光が回折されるか、または-1回折次数においてより光が回折されるかが、それぞれ、サイン及び位相シフト値に依存する。
S=±0.25*Tのような、グレーチング周期Tの一部として位相シフトS(r)を表すことは有利なことである。当業者は、回折グレーチングの周期Tの整数値を含む特定の位相が、単一周期T内の対応する位相シフトとして同じ効果を奏すると評価する。
本開示によれば、連続周期位相プロファイル関数(5)の振幅変調関数A(r)及び振幅変調関数B(r)の少なくとも1つの適用により、回折及び屈折焦点における光分布を更に調整することができる。
振幅変調関数A(r)及びB(r)は、瞳孔のサイズに応じて±1次数及び0次数の間で分配される光量の更なる制御を提供する。一般的に、位相プロファイルにおける最大位相遅延が設計波長未満の場合、振幅変調関数の何れかまたは両方の増加により、0次次数または屈折焦点に比べて、±1次の次数、例えば、回折焦点において回折される光量を増加させるであろう。一方、振幅変調関数の何れかまたは両方の減少により、回折焦点に比べて、屈折焦点において提供される光量を増加させるであろう。
振幅変調関数は、アポダイズのため、レンズの中心または光軸からの半径方向の距離の関数として変化することができる。振幅を変更することは、屈折焦点のような中間における相対的な光強度を制御する態様である。本開示に係る実際の実施形態として、振幅変調関数A(r)及びB(r)は、レンズ本体の一部において一定であることができる。
偏角マグニチュード変調関数または光分布パラメータα(r)により、本開示の中間視覚の焦点のような、0次次数で分配された光量を調整することができる。本開示によれば、α(r)がレンズ本体の一部にわたって一定値を有することができる。特に、α(r)の値が、例えば、2及び3の間の範囲にあることができる。
これにより、本開示に係る眼科レンズの実施形態において、回折グレーチングの位相プロファイル関数(4)は、下式に規定するように減少する。
S(r)は、r2空間において-0.5*T及び0.5*Tの間の範囲の定数を有し、
A(r)が定数を有し、
α(r)が2.5及び3の間の範囲の定数を有する。
例えば、研磨によるようなレンズの仕上げ工程により。回折グレーチングの高さの減縮を考慮するため、1.05-1.15の間のように、レンズ表面にわたって、振幅変調関数A(r)の値は、一定にすることができる。このような仕上げ工程を要さないレンズ本体では、A(r)の値を1にすることができる。
本開示によれば、単焦点中央ゾーンの位相プロファイル関数及び/または回折グレーチングの位相プロファイル関数を算術的に分析的に計算することができるが、コンピュータの計算により、一方または両方の位相プロファイル関数を提供することができる。位相フロファイル関数はフーリエ級数で表され、各々の回折次数は、それぞれのフーリエ係数で表される。目標焦点を伴う回折次数のフーリエ係数の2乗絶対値または加算2乗絶対値の合計が最大となるように、位相プロファイル関数を計算できる。
式(4)では、均等な強度分布を有する3焦点グレーチングのための最適なリニア位相グレーチングが示されている。所望の特性を有する特定の光学グレーチングを設計することは、しばしば有益である。Romeroらによる既に述べた書面において、所望の目標焦点のセット及びそれらの間の特定の強度分布のための最適なリニア位相グレーチングを見つける方法論が開示されている。3焦点グレーチングの場合、Romeroらに基づく、リニア位相グレーチングの完全な単純化していない式φlin(x)は、下式で表される。
γ、γ、γは、それぞれ、それぞれの回折次数-1、0、1の相対的な強度を示し、
α、α、αは、位相プロファイル関数のそれぞれのフーリエ係数の位相を表し、
μ、μ、μは、最適化された定数であり、
|α|=Nにおいて、Nは正の定数であり、|α|は、k=1、2、3における回折グレーチングのフーリエ係数αの振幅を表し、
xは、グレーチングが延びる軸方向を示す。
この定義において、1周期は1ユニット長さである。
xをレンズ半径rの2乗に置き換えることにより、式(7)におけるグレーチングを、レンズの3焦点部分として用いることができる。より正確には、式(5)の等価式に到達するため、xは、1/T(r-S(r))に置き換わるべきである。
上記の式(5)に等価のレンズ式は、式(7)のリニアグレーチングから形成できる。
式(7)で規定された位相プロファイルφlin(x)は下式に到達する。
φ(r)は、レンズ回折グレーチングの連続周期位相プロファイル関数であり、
rは、レンズ本体の光軸からの半径方向の距離または外側に向けた半径[mm]であり、
A(r)は、連続周期位相プロファイル関数の振幅変調関数であり、
B(r)は、連続周期位相プロファイル関数の振幅変調関数であり、
S(r)は、r空間[mm]における偏角変調関数及びr空間r空間[mm]における回折グレーチングのT周期またはピッチである。
このため、Romeoらからの理論は、それぞれ正及び負の回折次数に対応する遠位及び近位の焦点に適用される。これは、本願の記載で他に用いられた反対のものである。理論的な観点から、この次数及び焦点の逆転は不適切である。
Romeroらによる数式から、次数(-1、0、+1)において等しく分割する光学3焦点グレーチングを見出すため、下記の式に到達した。
この定義は、90度(0.25*T)シフトの場合を除き、上記の式(4)に一致している。レンズを適切に形成するとき、このシフトを考慮する必要がある。
均等な強度分布の代わりに、例えば、回折グレーチングが(1.2、1、1)の(近位、中間、遠位)の分割を有するように提供された場合、これらの要求を満たす最適な回折グレーチングを表現する方法は、式(7)に関するRomeroらの教えを、下式に規定される定数を有するように提供することによる。
本開示に係る多焦点眼科レンズのその他の実施形態では、回折格子が、+1、0、-1の回折次数の回折焦点を備えた対称な光学ウエーブスプリッタとして機能するように配置される。レンズ回折グレーチングの単一連続周期位相プロファイル関数φ(r)が、上記の式(7)及び(8)により規定される。特定の実施形態では、式(10)による定数が、式(7)及び(8)に適用される。
レンズ本体の表面は、フーリエフィルタリングまたはカーネル畳み込みを適用することにより修正することができ、回折次数の間のエネルギ分布を変更し、望まない迷光を除くように、レンズプロファイルを滑らかにしたり、少し修正するために、他の既知の信号処理を適用することができる。このような修正は、r空間で適用すると、しばしば容易に行うことができる。
本例えば、4焦点レンズと称する4つの目標焦点を有する多焦点眼科レンズや、5焦点レンズと称する5つの目標焦点を有する多焦点眼科レンズの光分布を設計し、調整するのに、開示による教えを同等に適用できることに、更に注視すべきである。
上記で説明したような±1の第1外接次数とは異なる、少なくとも、近位及び遠位の視覚を有する対称または非対称なビームスプリッタの屈折及び回折焦点において、所望の光分布を提供するための位相関数または位相プロファイル関数を計算するため、数値的方法が必要となる。
次の実施態様では、少なくとも近位、中間、遠位を視覚するための焦点を含む、眼科多焦点レンズを製造する方法を提供する。レンズは、レンズ本体の表面の一部を横切るレンズ本体の光軸から半径方向rにおいて同心に延びた回折グレーチングを備えた透光性を有するレンズ本体を有する。レンズ本体は、中間視覚のための屈折焦点を提供するように設計され、回折グレーチングは、レンズ本体への入射光の位相を変化させ、少なくとも、回折次数+mの近位視覚のための回折焦点、及び回折次数-mの遠位視覚のための回折焦点
を提供する光学ウエーブスプリッタとして機能するように配置された、単一連続周期関数として表現される位相プロファイルφ(r)を有するように設計される。ここで、mは、正の整数であり、方法は、
-多焦点レンズの近位、中間及び遠位の目標焦点を定めるステップ、
-中間視覚の目標焦点を有する光等価レンズ本体を提供するステップ、及び
-近位び遠位の目標焦点を有する回折グレーチングを提供するステップ
を含み、
-レンズ本体の光軸から半径方向にrだけレンズ本体を横切って延び、遠位及び近位の目標焦点の1つと一致する焦点を提供するように、レンズ本体の入射光の位相を変えるように配置された連続位相プロファイル関数ψ(r)を有する単焦点中央ゾーンを提供するステップ、
-回折グレーチングの位相プロファイル関数φ(r)に基づいて回折グレーチングの振幅プロファイル関数h(r)、及び単焦点中央ゾーンの位相プロファイル関数φ(r)に基づいて単焦点中央ゾーンの振幅プロファイルH(r)を定めるステップ、
-単焦点中央ゾーンが終端し、遷移ポイントで、回折グレーチング及び単焦点中央ゾーンが同じ振幅値を有する、レンズ本体の半径方向の位置における遷移ポイントを定めるステップ、及び
-定めた遷移ポイントに応じて、単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングを適用するステップ
により特徴付けられる。
光軸またはレンズの中心と繋がったレンズの表面において、リング、楕円または他の回転形状のゾーンのように延びた変化するDOEの高さや位置を特定する単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングの振幅プロファイルまたは高さプロファイルを、例えば、レーザマイクロ機械加工、ダイアモンド旋削、3Dプリント、または他の機械加工またはリソグラフ表面処理技術によって、レンズ本体に適用できる。
本開示に係る眼科多焦点レンズの製造方法の1つの実施形態では、回折グレーチングが山及び谷を繰り返す振幅値を有する波型の回折パターンを備え、遷移ポイントが、回折グレーチングの谷の振幅値よりも山の振幅値に近くに位置するように定められる。
特に、遷移ポイントは、r空間で見たとき、レンズ本体の半径方向rで測定された遷移ポイント及び谷の振幅値の間の距離が、r空間における回折グレーチングの周期またはピッチの0.25倍より小さい、より好ましくは、r空間における回折グレーチングの周期またはピッチの0.2倍より小さい。
本開示の眼科多焦点レンズの製造方法の他の実施形態では、少なくとも、単焦点中央ゾーンの振幅プロファイスルh(r)の1つと、回折グレーチングの振幅プロファイルH(r)とが、遷移ポイントにおいて、単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングの振幅値が一致するように適用される。
本開示の眼科多焦点レンズの製造方法の更なる実施形態では、遷移ポイント及び回折グレーチングの半径方向におけるシフトが、所定の口径において、下記のように、レンズの入射光の目標焦点における分布に基づいて定められる;
-目標焦点の各々に分配された光強度は、個別の目標焦点の各々における所定の強度範囲内にあり、
-目標焦点に分分配された合計光強度は、所定の合計範囲内にあり、
-遠位及び近位視覚の目標焦点で分配された光強度の比が、所定の比の範囲内にある。
レンズ本体は、疎水性アクリリック、親水性アクリリック、シリコン材料、または他の適した透光性材料を備えることができる。
本開示の眼科多焦点レンズの製造方法におけるレンズの連続位相プロファイル関数及び高さプロファイル関数を、レンズを製造するための装置から遠く離れて提供できる。特に、回折グレーチングの高さプロファイルは、インターネットのような実用されている通信ネットワークによるデータ転送により、製造サイトまたは装置に送信することができる。
目標屈折及び回折焦点における光学特性及び光分布の調整及び円滑化が、強められた焦点の深さ、ED、特性を有する眼科レンズを提供するため、特定の焦点または次数において回折された光の量を、光軸の一部に渡って広げるようにして適用される。
本開示の第3の態様では、コンタクトレンズ、眼内レンズ、無水晶体症コンタクトレンズ、無水晶体症眼内レンズ、スペクタクルレンズの1つとして、上記の眼科多焦点レンズが適用される。眼内レンズの場合には、レンズ本体が、一般的に両凸または平凸の光学的に透光性のあるディスクが取り入れられることに注視すべきである。コンタクトレンズ、スペクタクルレンズまたは眼鏡の場合、両凸または平凸、及び両凹または平凹形状、またはそれらの組み合わせの何れかを取り入れることができ、光学透光性本体に配置された更なる光学的修正により強調された場合、強調されない場合がある。
本開示のこれらの態様または他の態様において、下記に記載する例を参照することにより明らかである。
人の目において、ある距離からの光ビームの焦点が合うところを模式的に示す図である。 多焦点無水晶体症眼内レンズの典型的な先行技術の上面を模式的に示す図である。 図2aに示す多焦点無水晶体症眼内レンズ側面を模式的に示す図である。 両凸透光性本体及びギザギザまたは鋸歯タイプの透光性回折グレーチングを備える回折レンズの先行技術の光学的工程を模式的に示す図である。 WO2019020435に開示された多焦点無水晶体症眼内レンズの先行技術の実施形態の両凸レンズ本体における連続周期回折グレーチングの様々な瞳孔サイズに応じた高さプロファイル及びコンピュータシミュレーション光分布の例を模式的に示す図である。 WO2019020435に開示された多焦点無水晶体症眼内レンズの先行技術の実施形態の両凸レンズ本体における連続周期回折グレーチングの様々な瞳孔サイズに応じた高さプロファイル及びコンピュータシミュレーション光分布の例を模式的に示す図である。 WO2019020435に開示された多焦点無水晶体症眼内レンズの先行技術の実施形態の両凸レンズ本体における連続周期回折グレーチングの様々な瞳孔サイズに応じた高さプロファイル及びコンピュータシミュレーション光分布の例を模式的に示す図である。 WO2019020435に開示された多焦点無水晶体症眼内レンズの先行技術の実施形態の両凸レンズ本体における連続周期回折グレーチングの様々な瞳孔サイズに応じた高さプロファイル及びコンピュータシミュレーション光分布の例を模式的に示す図である。 WO2019020435に開示された多焦点無水晶体症眼内レンズの先行技術の実施形態の両凸レンズ本体における連続周期回折グレーチングの様々な瞳孔サイズに応じた高さプロファイル及びコンピュータシミュレーション光分布の例を模式的に示す図である。 WO2019020435に開示された多焦点無水晶体症眼内レンズの先行技術の実施形態の両凸レンズ本体における連続周期回折グレーチングの様々な瞳孔サイズに応じた高さプロファイル及びコンピュータシミュレーション光分布の例を模式的に示す図である。 WO2019020435に開示された多焦点無水晶体症眼内レンズの先行技術の実施形態の両凸レンズ本体における連続周期回折グレーチングの様々な瞳孔サイズに応じた高さプロファイル及びコンピュータシミュレーション光分布の例を模式的に示す図である。 本開示を示す両凸レンズにおける単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングの高さプロファイル、偏角変調パラメータ及び偏角変調関数、及び対応するコンピュータシミュレーション光分布を模式的に示す図である。 本開示を示す両凸レンズにおける単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングの高さプロファイル、偏角変調パラメータ及び偏角変調関数、及び対応するコンピュータシミュレーション光分布を模式的に示す図である。 本開示を示す両凸レンズにおける単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングの高さプロファイル、偏角変調パラメータ及び偏角変調関数、及び対応するコンピュータシミュレーション光分布を模式的に示す図である。 本開示を示す両凸レンズにおける単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングの高さプロファイル、偏角変調パラメータ及び偏角変調関数、及び対応するコンピュータシミュレーション光分布を模式的に示す図である。 本開示を示す両凸レンズにおける単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングの高さプロファイル、偏角変調パラメータ及び偏角変調関数、及び対応するコンピュータシミュレーション光分布を模式的に示す図である。 本開示を示す両凸レンズにおける単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングの高さプロファイル、偏角変調パラメータ及び偏角変調関数、及び対応するコンピュータシミュレーション光分布を模式的に示す図である。 本開示を示す両凸レンズにおける単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングの高さプロファイル、偏角変調パラメータ及び偏角変調関数、及び対応するコンピュータシミュレーション光分布を模式的に示す図である。 本開示を示す両凸レンズにおける単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングの高さプロファイル、偏角変調パラメータ及び偏角変調関数、及び対応するコンピュータシミュレーション光分布を模式的に示す図である。 本開示を示す両凸レンズにおける単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングの高さプロファイル、偏角変調パラメータ及び偏角変調関数、及び対応するコンピュータシミュレーション光分布を模式的に示す図である。 本開示を示す両凸レンズにおける単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングの高さプロファイル、偏角変調パラメータ及び偏角変調関数、及び対応するコンピュータシミュレーション光分布を模式的に示す図である。 本開示を示す両凸レンズにおける単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングの高さプロファイル、偏角変調パラメータ及び偏角変調関数、及び対応するコンピュータシミュレーション光分布を模式的に示す図である。 本開示を示す両凸レンズにおける単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングの高さプロファイル、偏角変調パラメータ及び偏角変調関数、及び対応するコンピュータシミュレーション光分布を模式的に示す図である。 本開示を示す両凸レンズにおける単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングの高さプロファイル、偏角変調パラメータ及び偏角変調関数、及び対応するコンピュータシミュレーション光分布を模式的に示す図である。 本開示を示す両凸レンズにおける単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングの高さプロファイル、偏角変調パラメータ及び偏角変調関数、及び対応するコンピュータシミュレーション光分布を模式的に示す図である。 本開示を示す両凸レンズにおける単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングの高さプロファイル、偏角変調パラメータ及び偏角変調関数、及び対応するコンピュータシミュレーション光分布を模式的に示す図である。 本開示を示す両凸レンズにおける単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングの高さプロファイル、偏角変調パラメータ及び偏角変調関数、及び対応するコンピュータシミュレーション光分布を模式的に示す図である。 本開示を示す両凸レンズにおける単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングの高さプロファイル、偏角変調パラメータ及び偏角変調関数、及び対応するコンピュータシミュレーション光分布を模式的に示す図である。 本開示を示す両凸レンズにおける単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングの高さプロファイル、偏角変調パラメータ及び偏角変調関数、及び対応するコンピュータシミュレーション光分布を模式的に示す図である。 眼科多焦点レンズを製造するための本開示に係る製造のステップを示す単純かされたフローチャートである。
図1は、本開示を示す目的で、人の目10の解剖学的構造を単純化して示す。目10の前側の部分は、角膜11で、瞳孔12をカバーする球状の透明な組織から形成されている。瞳孔12は、目10の受光量を制御する目10の適合性のある受光部分である。瞳孔12を通過する光線は、目10の後ろ側の部分の網膜14上に光線を集中させる天然の水晶レンズ及び目10の内側の柔軟なディスクで受けられる。網膜14は、目10で形成した画像に寄与する。例えば、網膜14及びレンズ13の間の空間のような後部の空洞が、ガラス質の体液、透明なゼリー状の物質で満たされている。例えば、レンズ13及び角膜11の間の空間のような、前側及び後ろ側の室16が、水溶性の体液、透明な水のような液体で満たされている。参照番号20は、目10の光軸を示す。
目10によるシャープで鮮明な遠位視覚のため、レンズ13は比較的平坦であるべきであり、一方、シャープで鮮明な近位視覚のため、レンズ13は比較的湾曲しているべきである。レンズ13の湾曲は、人の脳により制御される毛様筋により制御される。健康な目10では、遠位及び近位の間の角膜11の前の任意の距離における鮮明でシャープな画像を提供するようにするため、例えば、レンズ13を制御するように適応できる。
眼科または人造レンズは、レンズ13との組み合わせで、目10により正しい視覚が得られるように適用される。この場合、眼科レンズが、角膜11の前に位置する、またはレンズ13と置き換えられる。後者の場合、無水晶体症眼科レンズとしても示される。
多焦点眼科レンズは、様々な距離に対して、目10による視覚を向上させるまたは矯正するために用いられる。3焦点眼科レンズの場合、例えば、図1でそれぞれ参照番号17、18及び19で示されるような、遠位、中間及び近位と一般的に称される3以上、以下の離散的な距離において、シャープで鮮明な視覚のために眼科レンズが配置される。それらの距離または焦点17、18及び19にまたはその近傍に配置された物体から発せられ多光線は、網膜14で正しく焦点が合い、物体の鮮明でシャープな画像が網膜14上に投影される。実際、焦点17、18及び19は、それぞれ、数メートルから、数十センチまで、センチまでの範囲の焦点距離に対応する。共通の光学用語においては、遠位は無限大で焦点が合うことであり、通常、医者は患者のために、遠位焦点は、患者が平行光で焦点合わせができるようにレンズを選択する。
眼科レンズが提供する矯正の量が、光学パワー、OPと称され、ジオプトリ、Dとして示される。光学パワーOPは、メートルで測定された焦点距離fの逆数として計算される。つまり、OP=1/fである。ここで、fは、レンズから遠位17、中間18及び近位19におけるそれぞれの焦点へのそれぞれの焦点距離である。
レンズのカスケードの光学パワーについて、例えば、レンズを構成する光学パワーを加えることにより見いだせる健康な人のレンズ13の光学パワーは、約20Dである。
図2aは、多焦点無水晶体症眼内レンズ30の典型的な先行技術の上面を示す。図2bは、レンズ30の側面を示す。レンズ30は、透光性環状ディスク形状のレンズ本体31と、人の目の中でレンズ30を支持するためにレンズ本体から外側に延びたハプティックスの対とを備える。レンズ本体32は両凸形状を有し、中央部分33、前側表面34及び後ろ側表面35を備える。レンズ本体31は、更に、前側及び後ろ側表面34、35を横断し、中心部33の中心を通過するように延びた光軸29を備える。レンズ30の特性を参照する目的から、当業者は光軸20が仮想の軸であると認識する。実際の実施形態において、凸のレンズ本体31が約20Dの屈折光学パワーを提供する。
図示した実施形態では、レンズ本体31の前側表面34に周期透光性回折グレーチングまたはレリーフ36が配置されている。周期透光性回折グレーチングまたはレリーフ36は、レンズ本体31の前側表面34の少なくとも一部に中心部分33にわたって、光軸29に対して同心に延びるリングまたはゾーンを備える。回折グレーチングまたはレリーフ36は、回折焦点のセットを提供する。図示されていないが、レンズ本体32の後ろ側表面35、または両方の表面34、35にも、回折グレーチングまたはレリーフ36を配置することができる。実際、回折グレーチング36は、同心円または環に限られず、同心の長円または楕円形状や、例えば、一般的に、任意のタイプの同心の回転ゾーン形状を含む。
実際、レンズ本体31の光学直径は約5-7mmであり、ハプティックス31を含むレンズ30の全体の外径は約12-14mmである。レンズ30は、約1mmの中心厚みを有する。眼科多焦点コンタクトレンズ、スペクタクルレンズまたは眼鏡レンズの場合、レンズ本体31にハプティックス32は備えられず、レンズ本体31は、平凸形状、両凹または平凹形状、または凸及び凹形状の組み合わせを有する。レンズ本体は、疎水性アクリリック、親水性アクリリック、シリコン材料、または無水晶症レンズの場合、人も目に用いる他の適した透光性材料を備えることができる。
図3には、両凸透光環状ディスク形状レンズ本体41を備えたレンズ40の既知の周期透光性回折グレーチングまたはレリーフ42の光学工程が示されている。レンズ40は、レンズ本体の半径方向の断面図で示される回折グレーチングまたはレリーフ42は、複数の繰り返し連続配置されたプリズム形状の透光性回折光学要素DOEs43を備える。DOEs43は、図2aに示すグレーチングまたはレリーフ36のリングまたはゾーンと同様の態様で、レンズ本体41の中心部分45の回りに同心ゾーンとして延びている。図示のため、回折グレーチング42のDOEs42は、直線状または湾曲した傾斜受光面44のように、連続傾斜受光面44を備えた周知のジグザグまたは鋸歯タイプ要素として示されている。DOEs43がレンズ本体41の半径方向で間隔が開けられたgure-chinnguまたはレリーフが、バイナリタイプにレリーフ(図示せず)と称される。DOEs43の繰り返し周期またはピッチは、レンズの中心または光軸からの半径方向の距離おいて単調減少し、半径距離の2乗で変化する。
グレーチング42及びレンズ本体41を通過する入射または主光ビーム46が、それぞれ、回折し屈折して、結果として出力または2次光ビーム47となる。屈折及び回折した光波47が、光波47の建設的な干渉により、レンズ40の光軸48において、複数の焦点を形成する。特定の焦点において、レンズ本体41から到達した光波47の間の光路の差が、波長の整数倍のとき、例えば、光波が同位相で、振幅が強化されるように積算されるとき、建設的な干渉が起こる。レンズ本体41から干渉光波47により運ばれた光路における差が、半波長の奇数倍のとき、つまり、1つの波の山が他の波の谷と合致するとき、光波47が一部または完全に互いに消し合い、例えば、光波が同位相でなく、結果として、レンズ本体41の光軸48における焦点とならない。
レンズ本体41から様々な距離における建設的な干渉ポイントは、一般的に指定された回折次数である。レンズ40の曲率の屈折作用により生じる焦点に対応した焦点は、次数ゼロ、0として示される。他の焦点は、次数+mまたは-mで指定される。ここで、mは正の整数である。例えば、レンズ本体41に向けた方向における距離において、図の平面で見たとき、もし、ゼロ次数の左側でそれぞれの焦点が生じた場合、m=+1、+2、+3等となる。例えば、レンズ本体41から離れる方向における距離において、図の平面で見たとき、もし、ゼロ次数の右側でそれぞれの焦点が生じた場合、m=-1、-2、-3等となる。図3に示されている。
ある刊行物やハンドブックでは、正及び負の次数の割り当てがゼロ次数に対する位置が、上記の割り当てと逆の場合がありことに注視すべきである。ここでは、例えば、Romeroらの刊行物による理論が直接適用された場合である。他で記載が無い場合には、本開示は、図3に示す慣例に従う。
回折レリーフ42は、レンズ本体42から異なる距離の焦点を提供するように設計されることができる。DOEs43の周期スペースまたはピッチは、実質的に、例えば、光軸48における回折次数の位置のように、レンズの光軸48において、破壊的な及び建設的な干渉のポイントがどこで起こるかを定める。DOEs43の形状及び高さにより、例えば、特定の回折次数におけるような、建設的干渉のポイントで提供される入射光の量が制御される。
通常、ゼロ次数の両側においてスペースをあけた回折次数を提供する回折グレーチングまたはレリーフ42において、グレーチンまたはレリーフは、対称波スプリッタと称され、入射光ビーム45は、ゼロ次数に対して、対称に回折または分割される。+1、+2、-3、-5のような回折次数の一定でないスペースを生成するグレーチングまたはレリーフを、非対称ビームスプリッタと称する。
人の目10の角膜14において、像を形成するのに貢献しない焦点または次数において、集光または回折する光波47の光エネルギは失われ、レンズ40の全体的な効率を減少させ、よって、このようなレンズを用いる人により知覚される像の質が減じられる。実際、もし、レンズを最適に設計するため、人の目に対して遠位、中間及び近位の視覚を提供するまたは矯正する焦点を、例えば、図1に示すように、はじめにセットすることができ、予めセットした焦点における入射光ビーム46から受けた光エネルギの全体効率を最大化して最適化する回折グレーチング42を提供するようにすれば、有効である。
科学文献によれば、予めセットされたまたは目標の次数での光分布の全体効率を最適化する回折グレーチングが、最大前提効率ηまたは全てのこれらの目標次数の光エネルギの標準化された合計として規定されたメリット値を伴う目標回折次数を生成する線形位相のみの関数または位相プロファイルの決定から見出すことができる。このような回折グレーチングが、r空間で等距離の周期を有するように、偏角を調整することにより、レンズに形成される。
当業者は、レンズ本体41が、平凸、両凸または平凹形状 並びに凸及び凹形状、または曲面(図示せず)の組み合わせを含むことと評価できる。
図4aの参照番号50は、WO2019020435に開示されたように、mm2で表された、r空間における連続周期回折プロファイルの高さまたは振幅プロファイルH(r)の例を示し、図4bは、式(5)に応じた位相プロファイル関数φ(r)に基づき、半径方向の距離rの関数であるリニアスケールに沿った同じ高さ関数を示す。例えば、
H(r):レンズの高さプロファイル、[mm]
A(r):レンズ本体の半径方向における、位相プロファイル関数の振幅変調関数
λ:レンズの設計波長、[nm]
n:レンズ本体の屈折率
:レンズ本体を囲む媒体の屈折率
高さプロファイルH(r)は、垂直軸に沿ったμmスケールで示される。レンズ本体に中心を通る光軸は、半径方向の位置r=0であると仮定され、ここで、光軸から外側の方向で測定された半径距離rは、垂直軸に沿ってmmで示される。
この実施形態では、レンズの設計波長λが、550nmであると仮定され、レンズ本体の屈折率nが1.4618にセットされ、レンズ本体を囲む媒体の屈折率nが1.336であると仮定される。振幅変調関数A(r)は、1.07で一定であり、偏角マグニチュード変調関数α(r)がα=2.65718で一定であり、r空間で周期T=0.7333mmであり、偏角変調関数S(r)=0であり、例えば、位相シフトや偏角変調がない。
図4aに示すように、r空間において、高さプロファイルH(r)51の各々の周期Tが、等しいまたは同等な長さとして示されている。高さプロファイル関数H(r)51は、光軸、例えばr=0から開始し、レンズ本体にわたって光軸から外側方向に延びる、同心に配置されたDOEsを規定する単一閉鎖型連続幾何学関数である。回折プロファイルは、レンズ本体で製造が困難な鋭い遷移部を有さない。これにより、回折グレーチングの高さプロファイルH(r)51では、レンズを正確に製造することができる。
高さプロファイルH(r)51を有するレンズにより回折される光の量は、図4cに示すコンピュータシミュレーション光強度分布により示される。参照番号54は、中間視覚の焦点を提供する回折次数0を参照し、参照番号52は、遠位視覚の焦点を提供する回折次数+1を参照し、参照番号53は、近位視覚の焦点を提供する回折次数-1を参照する。強度プロファイルにおいて、回折光の強度Iは、水平軸に沿って示されたジオオプトリDの光学パワーの関数として、垂直軸に沿った任意のユニットで示される。
コンピュータシミュレーション光強度分布は、ジオプトリ20Dにおいてゼロ次数焦点を目標とし、21.5D及び18.5Dにおいて、ゼロ次数に対して対称に位置する1次次数焦点を目標とするように設計された、図2a、2bに示すタイプの眼科レンズ30の両凸レンズ本体31を想定する。つまり、ゼロ次次数焦点で20Dにおいて中間視覚の焦点を提供し、-1回折次数により18.5Dにおいて遠位視覚の焦点を提供し、+1回折次数により21.5Dにおいて近位視覚の焦点を提供する。当業者は、これらの光学パワーまたは焦点は、目標焦点に応じて実際のレンズで相違することを認識する。例では、6mm径の瞳孔サイズを想定して、シミュレーションソフトウエアに基づくMATLAB(登録商標)を用いて計算される。
図4cに示すように、α(r)=2.65718のGoriらによる線形最適トリプリケイタにより計算されたレンズ位相プロファイルと異なり、湾曲したレンズ本体の入射光の量は、目標焦点で均等に分布しない。これは、Goriらによる最適トリプリケイタ周期位相プロファイル関数は、周期間の距離が線形異存を示す線形または平坦位相グレーチングで計算されたからであり、同じことをレンズに適用すると、位相プロファイル関数の周期間の距離は2条依存性を有する。
図5aは、3焦点眼内眼科レンズの実施形態における回折グレーチングの半径距離rの関数として、上記の式(11)に応じた高さプロファイルまたは高さ関数H(r)56を示す。この実施形態において空間rで、設計波長λ、レンズ本体の屈折率n、レンズ本体を囲む媒体の屈折率nm、振幅変調関数A(r)、偏角マグニチュード変調関数α(r)、及び周期Tは、図4a~4cに示す実施形態のパラメータと同一である。図4a~4cの実施形態と異なり、図5aに示す回折グレーチングの高さプロファイルH(r)56の偏角が、固定値S=0.42*Tを有する変調関数S(r)により変調されている。参照番号55は、回折プロファイル関数H(r)56を備え、光軸から延びた回折グレーチングまたはレリーフ36を有するレンズ本体30前側表面34の外周またはベースラインの湾曲を参照する。
高さプロファイルまたは高さ関数H(r)56は、光軸、例えばr=0から開始し、レンズ本体にわたって光軸から外側方向に延びる、同心に配置されたDOEsを規定する単一閉鎖型連続幾何学関数である。
図5b、5c及び5は、様々な瞳孔サイズに応じた図5aのレンズのコンピュータシミュレーション光強度分布を示す。図5b、5c及び5のグラフの垂直軸に沿って、焦点の1つにおける最大強度に関連する屈折及び回折した相対的強度rel.Iが、水平軸に沿って示されたジオプトリDにおける光学パワーの関数として示される。つまり、ゼロ次次数焦点で20Dにおいて中間視覚の焦点を提供し、-1回折次数により18.5Dにおいて遠位視覚の焦点を提供し、+1回折次数により21.5Dにおいて近位視覚の焦点を提供する。
図5bは、1mmの直径を有する瞳孔サイズにおける光強度分布57を示す。図5bに示すように、レンズへの殆ど全ての入射光が、20Dにおいて中間視覚の焦点で同心状になる。つまり、オートレフラクトメータ、及び使用者の瞳孔サイズが約1mmであるような光強度分布を用いた図5aの実施形態に係る眼内レンズを備えた使用者の光学システムで測定するとき、オートレフラクトメータで実際に測定された焦点は、回折焦点の1つではなく、中間または屈折焦点である。
図5cは、3mmの直径を有する瞳孔サイズにおける光強度分布57を示す。このようなサイズの瞳孔は、回折プロファイル及び図5bに示す1mm瞳孔サイズのためのレンズの凸表面の大きな部分をカバーする。参照番号57は、中間視覚を提供する回折次数0を参照する。参照番号58は、遠位視覚の焦点を提供する回折次数-1を参照し、参照番号59は、近位視覚の焦点を提供する回折次数+1を参照する。図5bの強度プロファイルに示すように、中間視覚57及び遠位視覚64に比べて、入射光のより大きな部分が、近位視覚59の焦点に分布される。
図5dは、6mmの直径を有する瞳孔サイズにおける光強度分布を示す。このようなサイズの瞳孔は、一般的に眼科レンズの全体の光学システムをカバーする。参照番号57は、中間視覚を提供する回折次数0を参照する。参照番号58は、遠位視覚の焦点を提供する回折次数-1を参照し、参照番号59は、近位視覚の焦点を提供する回折次数+1を参照する。
図6aは、例えば、図2aに示すレンズ31の中心部分33のような中央ゾーンを備え、参照番号62に示すような連続振幅プロファイルh(r)を有し、遠位及び近位視覚の回折焦点を提供する表面60にわたってレンズ本体の半径距離に伸びた振幅関数H(r)を有する回折プロファイル61を備えた、本開示に係る3焦点眼科レンズの実施形態の振幅プロファイルまたは高さプロファイルを示す。
高さプロファイルh(r)及びH(r)の振幅は、図6aの垂直軸に沿ったμmのスケールで示される。レンズ本体尾中心を通る光軸は、半径方向の位置r=0と想定される。ここで、光軸から外側方向に計測された半径方向の距離rは、垂直軸に沿ってmmで示される。
中央ゾーンは、レンズ本体の表面60一部を横切って、光軸から半径方向rの距離にわたって延びており、その連続振幅プロファイルh(r)は、回折プロファイル61の回折焦点の1つの一致する単一の焦点を提供するように設計され、よって単焦点中央ゾーンを提供する。
図6aにおいて、参照番号60は、図2a及び2bに示すレンズ本体30の前側表面34の外周またはベースライン湾曲を参照する。遷移ポイント63において、光軸からの距離において、単焦点中央ゾーンの連続振幅プロファイルh(r)が終端し、振幅プロファイルH(r)61に連続する。
図6aの実施形態では、単焦点中央ゾーン62は、上記の式(2)に従う位相プロファイルを備える。
ここで、fは中央ゾーンの焦点であり、レンズ全体の焦点とは一致しない。典型的な例では、IOLの中間焦点は20Dであり、遠位及び近位焦点が、それぞれ18.5D及び21.5Dに位置する。fの絶対値は、1/1.5=0.67mである。
レンズにおける、実際の物理的な形状または振幅プロファイルに到達するため、以下のステップが適用される。
単焦点中央ゾーン62が遠位視覚に貢献すると仮定すると、単焦点中央ゾーン62の焦点が、回折グレーチング61により提供される遠位視覚の焦点に一致する。例えば、屈折パワーのようなレンズのベースパワーが図2bに示す凸レンズ本体31のように、凸レンズ本体により提供される中間視覚に貢献する。
レンズに遠位視覚を追加するには、負のレンズ部分の提供を要する。これを実現するため、式(2)のサインを、例えば下記に変更する。
そして、この表現を距離に変えて、単焦点ゾーンの形状が、例えば、ψ(r)/2πのような波長のタームで示す。次に、全(例えば2π)位相シフトに対応する距離を見出すため、レンズ及びレンズを囲む媒体の屈折率を規定する必要がある。これは、λ/(n-n)で表すことができる。ここで、λはレンズの設計波長、[nm]であり、nはレンズの屈折率であり、nはレンズを囲む媒体の屈折率である。波長で示されたレンズとの乗算で、例えば下記のような、単焦点中央ゾーン62の振幅プロファイルまたは高さプロファイルh(r)に到達する。
ここで、設計波長λは、式(13)から消えていることに注視すべきである。
仮に、球状の単焦点中央ゾーンが選択された場合、曲率半径は、周知のレンズメーカの式を用いて得られる。薄いレンズの近似を適用すると、結果として下式が得られる。
ここで、Rは単焦点中央ゾーンの曲率半径、[m]を示す。
式(13)、(14)から凸中央ゾーンが提供されているという知識を用いて、単焦点中央ゾーンの振幅プロファイルを下記のように計算することができる。
図6aの実施形態では、回折グレーチング61の振幅プロファイルが、図4aを参照して上記で開示したように、回折グレーチングの振幅プロファイル(11)に対応する。
本開示によれば、遷移ポイント63において、回折グレーチング61及び単焦点中央ゾーンの振幅プロファイルは、一致した振幅値を有する。つまり、遷移ポイント63において、両方の振幅プロファイルの振幅値が等しい、または基本的に等しい。例えば、遷移ポイントにおいて、レンズ本体の表面60を横切り、入射光がレンズを通る光路で不均一さを導く、レンズの全体光学プロファイルの振幅または高さにおけるジャンプが、効果的に回避される。
この実施形態において、レンズの設計波長λは550nmと想定され、レンズ本体の屈折率nが1.492にセットされ、レンズ本体を囲む媒体の屈折率nが1.336と想定される。振幅変調関数A(y)が1.06で一定であり、偏角マグニチュード変調関数α(r)がα=2.65718で一定であり、r2空間において周期T=0.66mm2であり、偏角変調関数S(r)が、一定位相シフトS=0.31*Tを示す。
図6b、6c及び6dは、それぞれ図5b、5c及び5dに示すような様々な瞳孔サイズに応じた図6aのレンズのコンピュータシミュレーション光強度分布を示す。図6b、6c及び6dのグラフの垂直軸に沿って、焦点の1つにおける最大強度に関連する屈折及び回折した相対的強度rel.Iが、水平軸に沿って示されたジオプトリDにおける光学パワーの関数として示される。この例は、シミュレーションソフトウエアに基づくMATLAB(登録商標)を用いて計算される。
レンズのコンピュータシミュレーション光強度分布は、ジオプトリ20Dにおいてゼロ次数焦点を目標とし、21.675D及び18.325Dにおいて、ゼロ次数に対して対称に位置する1次次数焦点を目標とするように設計された両凸レンズ本体が想定される。つまり、ゼロ次次数焦点で20Dにおいて中間視覚の焦点を提供し、-1回折次数により18.325Dにおいて遠位視覚の焦点を提供し、+1回折次数により21.675Dにおいて近位視覚の焦点を提供する。
図6bは、1mmの直径を有する瞳孔サイズにおける光強度分布64を示す。図6bに示すように、レンズへの殆ど全ての入射光が、18.5Dにおいて中間視覚の焦点で同心状になる。これは、例えば、回折グレーチングの遠位視覚の目標焦点と一致する単焦点中央ゾーンを提供するように、本開示に係る本実施形態のレンズの設計目標に従っている。図6aの振幅プロファイルに示すように、1mm直径の瞳孔サイズが、単焦点中央ゾーンをほとんど独占的にカバーするように、単焦点中央ゾーン62の半径は、約0.5mmの距離で終端している。
図6cは、3mmの直径を有する瞳孔サイズにおける光強度分布57を示す。このようなサイズの瞳孔は、単焦点中央ゾーン、回折プロファイル及びレンズの凸表面の一部をカバーする。参照番号66は、中間視覚を提供する回折次数0を参照する。参照番号65は、近位視覚の焦点を提供する回折次数+1を参照する。図6cの強度プロファイルに示すように、入射光のほとんどが、遠位視覚64の焦点に分布する。
図6dは、6mmの直径を有する瞳孔サイズにおける光強度分布を示す。このようなサイズの瞳孔は、一般的に眼科レンズの全体の光学システムをカバーする。参照番号66は、中間視覚を提供する回折次数0を参照し、参照番号64は、遠位視覚の焦点を提供する回折次数-1を参照し、参照番号65は、近位視覚の焦点を提供する回折次数+1を参照する。図6dの強度プロファイルに示すように、焦点64、65、66のそれぞれに分配する光の量は、概ね等しい。これにより、本開示による単焦点中央ゾーンの結果として、回折プロファイルの適切な設計により、遠位視覚の焦点に婦敗される光の追加寄与分が補償され、例えば、単焦点中央ゾーンより大きな瞳孔サイズの多焦点特性を提供する。
図7は、単焦点中央ゾーンの連続高さまたは振幅プロファイルh(r)72、及びレンズ表面70にわたって延びる、上記の式(11)及び(15)の位相プロファイルによる、回折グレーチング71の連続周期高さまたは振幅プロファイルH(r)を示す。
この実施形態において、レンズの設計波長λは550nmと想定され、レンズ本体の屈折率nが1.492にセットされ、レンズ本体を囲む媒体の屈折率nが1.336と想定される。振幅変調関数A(y)が1.06で一定であり、偏角マグニチュード変調関数α(r)がα=2.65718で一定であり、r空間において周期T=0.66mmであり、偏角変調関数S(r)が、一定位相シフトS=0.34*Tを示す。コンピュータシミュレーション光強度分布は、ジオプトリ20Dにおいてゼロ次数焦点を目標とし、21.675D及び18.325Dにおいて、ゼロ次数に対して対称に位置する1次次数焦点を目標とするように設計された両凸レンズ本体が想定される。
光軸から約0.3mmの半径距離で単焦点中央ゾーンが終端する遷移ポイント73において、本開示では、振幅プロファイル71及び72の振幅が、同一でないまたは実質的に等しく、比較的鋭いエッジが、遷移ポイント72において、レンズの光学システムで起こる。
図8は、図7に示す実施形態のレンズの光学システムの高さまたは振幅プロファイルにおける鋭いエッジが、単焦点中央ゾーンの寸法を増やすことにより滑らかにできることが示されており、単焦点中央ゾーン82の振幅値h(r)が回折グレーチング81の振幅値H(r)と等しくなる遷移ポイント83で単焦点中央ゾーンが終端するようにする。この例では、単焦点中央ゾーンが、光軸から約0.5mmの半径方向の距離で終端している。
単焦点中央ゾーンの連続高さまたは振幅プロファイルh(r)及び回折グレーチング81の連続高さまたは振幅プロファイルH(r)は、レンズ表面80にわたって延び、上記の式(1)及び(11)による位相プロファイルにも従う。
遷移ポイント83を回折グレーチング81の山84よりも谷85により近く位置付ける場合には、回折効率が最適化されないことが見られた。
この実施形態において、レンズの設計波長λは550nmと想定され、レンズ本体の屈折率nが1.492にセットされ、レンズ本体を囲む媒体の屈折率nが1.336と想定される。振幅変調関数A(y)が1.06で一定であり、偏角マグニチュード変調関数α(r)がα=2.65718で一定であり、r空間において周期T=0.66mmであり、偏角変調関数S(r)が、一定位相シフトS=0.50*Tを示す。コンピュータシミュレーション光強度分布は、ジオプトリ20Dにおいてゼロ次数焦点を目標とし、21.675D及び18.325Dにおいて、ゼロ次数に対して対称に位置する1次次数焦点を目標とするように設計された両凸レンズ本体が想定される。
図9aは、本開示に係る眼科レンズ用であって、式(15)及び(11)の位相プロファイルまたは類似した形状の位相プロアイルを有し、例えば、交互に現れる山98及び谷99の振幅値を有する周期的正弦または連続波タイプの回折グレーチング91、及び連続湾曲単焦点中央ゾーン92を有し、改善された回折効率、及び高さにおける中央ゾーン92から回折グレーチング91へ比較的滑らかな遷移を実現し、単焦点中央ゾーンが終端し、回折グレーチングが開始する遷移ポイント93が、回折グレーチング91の谷99よりも山98により近く位置付けられているのが示される。
図9aでは、遷移ポイント93がr=0の光軸に隣接した山100の側部に示されている。しかし、遷移ポイントは、山100の他の側に位置する場合もあり得る。例えば、一点鎖線95に示すように、レンズの外周側に隣接した場合もあり得る。後者の場合、遷移ポイント94は、依然、山振幅値100の位置に関連していることに注視すべきである。
図9bは、r空間における9aの高さプロファイルを示す。特に、遷移ポイント93または遷移ポイント94と、r空間で計測された最も近い山振幅値100との間の距離95がr空間の回折グレーチングの周期またはピッチ距離Tの0.25倍より小さく、好ましくは、0.2倍より小さいように、遷移ポイント93が生じるとき、単焦点中央ゾーンの振幅プロファイルから周期回折グレーチングの振幅プロファイルへの比較的滑らかな遷移が得られる。遷移ポイント94では、この距離は、山振幅値100の位置に関連し、この振幅値が最終的なレンズプロファイルで直接見えないけれども、レンズプロファイルの計測で容易に再構築できることに注視すべきである。
つまり。遷移ポイント93または94が、レンズ本体の表面90に近い周期回折グレーチングの振幅プロファイル91の山100の近くにあり、単焦点中央ゾーン92の振幅プロファイルh(r)及び周期回折グレーチングの振幅プロファイルH(r)が、図9の点線の円97で示すように、回折グレーチングの振幅プロファイルH(r)のリーディングエッジまたは上向きエッジで融合する。
その他の策として、遷移ポイント93または94が周期回折プロファイル91の上向きまたは下向きエッジで、囲まれた領域97に位置するとき、振幅プロファイルh(r)及びH(r)の滑らかな遷移及び改善された回折効率が得られる。よって、プロファイルの谷か99から山98、または山8から谷99の周期回折プロファイル91のエッジが得られる。
囲まれた領域97は、周期回折グレーチングの振幅プロファイル91の最大振幅の約10から30%(例えば頂点-頂点振幅の半分)のレンズ本体の表面90にわたる測定範囲をカバーできる。
図9a及び9bは、1.04mmの中央ゾーンの直径で計算され、レンズの設計波長λは550nmと想定され、レンズ本体の屈折率nが1.492にセットされ、レンズ本体を囲む媒体の屈折率nが1.336と想定され、振幅変調関数A(y)が1.02で一定であり、偏角マグニチュード変調関数α(r)がα=2.65718で一定であり、r2空間において周期T=0.67mm2であり、偏角変調関数S(r)が、一定位相シフトS=0.32*Tを示す。焦点として、20D+/-1.625D,例えば、18.375D、20D及び21.625D、並びに単焦点中央ゾーンの調整された高さが提供される。
遷移ポイントにおいて、単焦点中央ゾーンの振幅プロファイルの振幅プロファイルh(r)のタンジェントと、レンズ本体の上面に向けた方向で見た谷から山への周期回折プロファイルにエッジに沿った振幅プロファイルH(r)のタンジェントの間の角度βが約1度未満であり、単焦点中央ゾーンの振幅プロファイルから周期回折グレーチングの振幅プロファイルへの比較的滑らかな遷移が示される。もし、ここに示された滑らかなプロファイルが用いられた場合、遷移ポイントにおける角度βは、約1mmの中央ゾーンで、1度を超すことは希であるが、異なるプロファイルでは大きくなることもある。より大きな中央ゾーンでは、角度はより大きくなる。プロファイルの図では、水平及び垂直軸における非対称スケーリングに起因して、遷移ポイントにおける角度が、しばしば大きく見えることに注視すべきである。
例えば、図7を参照ながら前述した、光軸からの半径または距離のような、単焦点中央ゾーンの大きさの適応の代わりに、これに加えて、単焦点中央ゾーンが終端し、回折グレーチングが開始する遷移ポイントの位置が、回折グレーチングの位相プロファイル関数の偏角、及び位相プロファイル関数の振幅変調関数の何れかまたは両方によりセットすることもできる。
式(5)に従う回折グレーチングの位相プロファイル関数φ(r)は、F[α**G]が、タンジェント関数の逆数であり、G(r)がサイン関数であるとすると、下式で示される。
この結果として、振幅または高さプロファイルH(r)は、下式のようになる。
偏角変調関数S(r)及び/または光分布関数α(r)の何れかを適用またはセットすることにより、周期回折プロファイルが、レンズ表面を横切る半径方向でその位相または位置においてシフトし、本開示に係るように、一致した単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングの振幅プロファイルh(r)及びH(r)と、における滑らかな遷移を実現する。
本開示に係る遷移ポイントにおける単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングの振幅プロファイルh(r)及びH(r)の滑らかな遷移は、上記で概要を示した方法とは別に、またはそれに加えて、上記の式(17)に従う位相プロファイル関数の振幅変調関数A(r)及びB(r)の何れかまたは両方を適用することも要する場合がある。
WO2019020435に開示されたように、この教示は、参考として本書に組み込まれ、回折効率、例えば、目標回折次数または目標焦点に向けた光学パワーの量は、レンズの光軸からの半径方向の距離による回折グレーチングの位相プロファイルのシフトまたは振幅変調により、効率的に調整され、焦点における瞳孔に対応した光の分布を提供する。このようにして、単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングの振幅プロファイルの滑らかな遷移が得られる回折グレーチングを適用することにより、目標焦点での所望の光分布の効率は、幾つかの瞳孔サイズに対して、効率的に減少でき補償できる。
図10は、グラフにより、偏角変調関数またはパラメータS(r)の機能として、それぞれ式(11)及び(15)に従う、回折グレーチング及び遠位視覚単焦点中央ゾーンの位相プロファイルに基づく、本開示に応じて設計された眼科レンズのコンピュータシミュレーションを示す。図10でシミュレーションされたレンズは、全て1.1mmの直径を有する遠位視覚単焦点中央ゾーンを有する。焦点での強度値は、3mm直径の動向を有する目をシミュレーションして、3mの開口でサンプリングした。各々のレンズS(r)の3焦点グレーチングは、水平軸で示される値を有し、全ての直径にわたって静的である。
各々のレンズは、コンピュータプログラムで、自動的に下記のように形成される;1)所望の光学パワーを有する単焦点中央ゾーンが形成される、2)S(r)の適応を含む任意の数の技術により、回折グレーチングが形成される、3)所望の遷移ポイントにおける中央ゾーン及び回折グレーチングの間の高さの差が計算され、垂直方向のジャンプが無いように補償される。
図10の上の部分には、水平軸に沿った周期で示されるパラメータSの関数として、中間焦点103、遠位焦点101及び近位焦点102に関連した計算された光絶対強度を、垂直軸に沿い任意のユニットで示す。つまり、S(r)は、S*Tで提供される一定の位相シフトである。図10の中間の部分には、Sの関数として、絶対強度101、102及び103の合計を示し、図10の下側の部分には、やはりSの関数として、遠位焦点及び近位焦点に関連した光量の比率、遠位/近位比率105を示す。強度は、1.1mmの直径を有する遠位単焦点中央ゾーンとして計算されている。
図11は、図10と同様な態様で、3mm直径の瞳孔サイズまたは開口サイズに基づく、本開示に従って設計された眼科レンズのパラメータSの異なる値のコンピュータシミュレーションされた強度プロファイルを示す。
図11の上の部分には、水平軸に沿った周期で示されるSの関数として、中間焦点110、遠位焦点111及び近位焦点112に関連した計算された光絶対強度を示す。図11の中間の部分では、Sの関数として、絶対強度110、111及び112の合計を示し、図10の下側の部分では、やはりSの関数として、遠位/近位比率114を示す。強度は、0.98mmの直径を有する遠位単焦点中央ゾーンとして計算されている。
図10及び11から、それぞれ、垂直の一点鎖線106、107及び115、116に±示すように、それぞれ1.1mm及び0.98mmの直径を有する単焦点中央ゾーン、約0.1及び0.3の間のS値に対して、例えば、約2~3の許容レベルの間の不安定でない、遠位/近位強度比率のような比較的安定さと組み合わされて、個々のまたは合算された相対的に高い全体強度値が提供される。
図12は、図6a、10及び11に応じて眼科レンズ設計に基づく3次元グラフを示し、3焦点におる光強度の合計が、y軸に沿ってμm単位で示された中央ゾーンの半径と、x軸に沿って示されたSパラメータの両方の関数として、垂直軸またはz軸に沿った任意のユニットで示される。xy平面の各々のラスターポイント121は、1つのレンズ設計を表し、3焦点の強度は、3mmの開口のモデルでサンプリングされる。
このプロットから設計を評価するため、そこから判断する2つの主なコンセプトは、論理的な性能と製造可能性である。高い合計強度は高い性能を示す。図12に示す中央ゾーン及びグレーチングのパラメータの特定の選択において、可能な最も高い性能が、約0.550mmの半径の中央ゾーン及び約0.1~0.35のS値において見出される。図12には、領域122で囲まれた台形が見られ、合計強度がS値の示された範囲に極めて類似している。
異なる焦点の間では、基調をなす分布は合計が同じであっても異なる。しかし、製造において、常にある程度間違いが生じる。図から明らかなように、0.550mmの中央ゾーンの半径及び0.1または0.5のS値の組み合わせは、設計されたレンズを効率の低下に大変近いところに位置付ける。Sにおける小さな逸脱により、製造されたレンズは、より小さなまたはより大きなSを有するレンズのように振る舞う。これにより、高い性能の台形部の中央ゾーンから設計を選択することは、製造歩留まりにおいて良い効果があり、一般的に有利である。
図13は、図10及び11に応じた眼科レンズ設計に基づく3次元グラフを示し、3焦点におる光強度の合計が、y軸に沿ってμm単位で示された中央ゾーンの半径と、x軸に沿って示されたSパラメータの両方の関数として、垂直軸またはz軸に沿って示された、遠位及び近位焦点における光強度に基づく遠位/近位比率が示される。
図は、図12に類似した方法で設計を選択して用いられる。遠位/近位比率は、光の分布、延いてはそれぞれの距離における視覚的な鋭さを定める。よって、絶対値が重要である。しかし、製造可能性も重要な要素である。図面から、幾つかの鋭いエッジが見られる。小さな逸脱が大きな負の効果を有するので、これらのエッジに近いレンズを製造することで、製造歩留まりを低下させる。
図14は、z軸に沿った、図10及び11に応じた眼科レンズ設計に基づく3次元グラフを示し、例えば、r空間で見た山振幅またはピークのような遷移ポイント及び最高ポイントの間の回折グレーチングの周期で示された、遷移ポイントと山の水平距離を示す。±のサインは、山振幅値の1つのまたは他の側部における距離を参照する。図9a及び9bも参照のこと。あるレンズでは、この山振幅または高さピークは結果のレンズに残っておらず、ある部分が単焦点中央ゾーンに置き換えられる前に、元の回折グレーチングにおけるピークを仮定して、距離が計算されるべきである。
図14では、y軸に沿ってμmで示された中央ゾーンの半径、及びz軸に沿って示されたSパラメータの両方の関数として、距離が示される。z軸におけるゼロ値は、例えば、今回の周期の山のような、最も高いポイントにおける遷移ポイントを伴って形成されたレンズを示す。正確に今回の周期のピークにおいて、中央ゾーンを伴って形成されたレンズを示す線が、容易に図14に位置付けられる。
図14を図12と比較すると、ピークにおける遷移ゾーンまたは本周期の山振幅値における遷移ゾーンを伴うレンズを区別する図114の線は、図12で見出される高い性能の台形122の長手方向の中心とも一線を画する。このことは、遷移ゾーンを有する高い歩留まりの良い性能のレンズは、直近の谷よりも直近の山に近くなることが期待されることを示す。特に、r空間で見て、0.25*Tより小さく、より好ましくは0.2*Tより小さく、遷移ゾーンと周期の最も高いピークの間の絶対距離であることは有利である。
図10~14のグラフから、単焦点中央ゾーンが0.8~1.3mmの範囲の直径を有し、遠位及び近位の視覚の目標焦点で分布した光強度の比が、0.8~2.0の遠位/近位比率であるような半径方向の位置に遷移ポイントがあるとき、本開示に係るレンズの最適な設計空間が生じることがわかる。
図15aは、例として、mmで示された半径方向の距離rとして機能するリニアスケールに沿って、本開示に係る3焦点眼科レンズの他の実施形態の高さプロファイルまたは振幅プロファイルを示す。
図15aに示す眼科レンズの実施形態の振幅プロファイルまたは高さプロファイルは、上記の式(11)に従う参照番号152で示された連続振幅プロファイルh(r)、サマリー部分において上記で提供された式(6)に従う連続周期位相プロファイル関数に基づく回折グレーチング151を有する、図2aに示されたレンズ31の中心部分33のような中央ゾーンを備える。
高さプロファイルh(r)162及びH(r)161の振幅が、図16aの垂直軸に沿ってμmスケールで示されている。光軸から外側方向に測定された半径方向の距離rが垂直軸に沿ってmmで示される場合、レンズ本体の中央を通過する光軸は、半径方向の位置r=0と仮定される。参照番号160は、図2a及び2bで示されるように、レンズ本体30の前側表面34の外周を参照する。
中央ゾーンは、レンズ本体の表面150の一部を横切って、光軸から半径方向rにおいてある距離にわたって延びており、その振幅プロファイルh(r)152は、回折プロファイル151の遠位視覚の回折焦点と一致する単一の焦点を提供するように設計され、よって、単焦点中央ゾーンを提供する。
光軸から約0.5mmの距離のレンズの半径方向の位置の遷移ポイント153において、単焦点中央ゾーンの連続振幅プロファイルh(r)152が終端し、回折グレーチングの振幅プロファイルH(r)151に連続する。図示された実施形態では、遷移ポイント153が、レンズ本体の表面150にある。
この実施形態において、レンズの設計波長λは550nmと想定され、レンズ本体の屈折率nが1.492にセットされ、レンズ本体を囲む媒体の屈折率nが1.336と想定される。回折グレーチング151は、式(7)及び(8)を用いて最適化されて、それぞれ(1.2,1,1)のそれぞれの回折次数-1、0、1の相対的な強度(γ1、γ2、γ3)を提供する。グレーチングは最適化されて、近位視覚焦点により光を供給して、単焦点中央ゾーンにより供給される光強度を、ある程度、近位視覚焦点に補填する。
中央ゾーンプロファイル152及び回折ポプロファイル151を有するレンズにより回折された光量が、3mm直径の瞳孔サイズに基づく、図15bの強度シミュレーション線図に示される。強度は、垂直軸に沿って、任意のユニットで示される。コンピュータシミュレーション光強度分布は、図2aに示すタイプの眼科レンズの両凸レンズ本体を仮定し、ジオプトリ20Dでのゼロ次数焦点、及びゼロ次数に対して対称に位置する21.675D及び18.325Dでの近位及び遠位視覚の焦点を目標として設計される。参照番号154は、中間視覚を提供する回折次数0を参照し、参照番号155は、18,325Dにおいて遠位視覚の焦点を参照し、参照番号156は、21.675Dにおいて近位視覚の焦点を参照する。
図16aは、例として、r2空間でmで示された、本開示に係る5焦点レンズの高さプロファイルまたは振幅プロファイルを示し、図16bは、mmで示された、半径方向の距離rの関数としてのリニアスケールに沿った同じ高さプロファイルまたは振幅プロファイルを示す。
図16aに示す5焦点眼科レンズの実施形態の振幅プロファイルまたは高さプロファイルは、例えば、上記の式(11)に従う参照番号162で示された連続振幅プロファイルh(r)を有する、図2aで示されたレンズ31の中央ゾーン33のような中央ゾーンと、異なる焦点を生成する回折グレーチングとを備える。
レンズの回折部分の基礎となる線形位相グレーチングのφ(x)は、下記の式(18)のセットで記載される。
ここで、atan2は、2-偏角アークタンジェントを示し、
γ1、γ2、γ3、γ4、γ5は、位相プロファイル関数のフーリエ係数を示し、
μ1、μ2、μ3、μ4、Micronは、最適化された定数を示し、
|αk|/γk=Nにおいて、Nは正の定数であり、|αk|は、k=1、2,3に対して、回折グッレーチングのフーリエ係数の振幅を表し、
xは、グレーチングが延びる軸である。
この定義において、1周期は厳密の1ユニット長である。
5焦点を有する多焦点レンズを、3焦点レンズを形成したのと類似させて、上記の式(8)を提供することにより、式のセット(18)を伴って実現できる。
線形位相グレーチング(14)は、本開示及び下記の刊行物の教示に基づく、
Romero, Louis A, and Fred M. Dickey, “Theory of optimal beam splitting by phase gratings. II. Square and hexagonal gratings.” JOSA A 24.8 (2007): 2296-2312。線形位相グレーチングは、例えば、(γ1、γ2、γ3、γ4、γ5)=(1.1,0.9,0.8,0.9,1)の強度分布を伴う5回折次数により最適化される。
高さプロファイルh(r)162及びH(r)161の振幅は、図16aの垂直軸に沿ってμmで示される。光軸から外側の方向で測定された半径距離rは、垂直軸に沿ってmmで示される場合、レンズ本体の中心を通過する光軸は、半径方向の位置r=0にあると仮定される。参照番号160は、2a及び2bに示すように、レンズ本体30の前側の表面34の外周を参照する。
光軸から約0.6mmの距離のレンズの半径方向の位置の遷移ポイント163において、単焦点中央ゾーンの連続振幅プロファイルh(r)162が終端し、回折グレーチングの振幅プロファイルH(r)161に連続する。図示された実施形態では、遷移ポイント163が、レンズ本体の表面160にある。
この実施形態において、レンズの設計波長λは550nmと想定され、レンズ本体の屈折率nが1.4618にセットされ、レンズ本体を囲む媒体の屈折率nが1.336と想定される。r2空間において、周期T=0.733っm2であり、偏角変調関数S(r)が、一定の位相シフトS=0.80*T.A(r)=γ(r)=δ(r)=1を表す。
中央ゾーン162及び回折グレーチング161を有するレンズにより回折された光量は、3mmの瞳孔サイズに基づく、図16cの強度シミュレーション線図に示される。強度は、垂直軸に沿って、任意のユニットで示される。コンピュータシミュレーション光強度分布は、図2aに示すタイプの眼科レンズの両凸レンズ本体を仮定し、ジオプトリ20Dでのゼロ次数焦点、及びゼロ次数に対して対称に位置する21.675D及び18.325Dでの近位及び遠位視覚の焦点を目標として設計される。参照番号164は、中間視覚を提供する回折次数0を参照し、参照番号165は、18,325Dにおいて遠位視覚の焦点を参照し、参照番号166は、21.675Dにおいて近位視覚の焦点を参照する。
本設計では、例えば、中間及び遠位視覚の焦点の間の、19Dにおける第1追加焦点、及び中間及び近位視覚の焦点の間の21Dにおける第2追加焦点のような、2つの追加焦点が提供される。
本願の目的からすれば、式(14)に従った上記のものだけでなく、5焦点レンズを提供するための他の連続周期位相プロファイル関数を適用することができる。本開示に係る単焦点中央ゾーンを有する4焦点レンズを提供することもできる。
図17に示す単純化したフローチャートは、本開示の第2の態様に係る眼科多焦点レンズの製造方法のステップを示す。フローの方向は、図面の上側から下側である。
第1のステップでは、例えば、ブロック171「目標焦点をセット」のように、少なくとも、レンズの近位、中間及び遠位の視覚の目標焦点をセットする。
第2のステップでは、例えば、ブロック172「相対的な光分布をセット」のように、使用者の異なる瞳孔サイズに対する異なる焦点の間の目標相対光分布を定める。例えば、選択した瞳孔サイズは、0~3mm、0~4,5mm及び0~6mmの範囲を例示できる。例えば、6mmを超えるレンズは、例えば、中間及び遠位の視覚に関する2焦点特性を示すようにすることができる。
次に、例えば、ブロック173「レンズ本体を選択」のように、中間視覚の目標焦点を提供する屈折焦点を有する透光性レンズ本体を選択する。
更に、例えば、ブロック174「単焦点中央ゾーンを提供する」において、レンズ本体の表面を横切ってレンズ本体の光軸から半径方向rにある距離にかけて延びた単焦点中央ゾーンを提供する。この単焦点中央ゾーンは、上記の第1のステップでセットされた遠位及び近位の目標焦点の1つと一致する屈折焦点を提供する連続位相プロファイル関数ψ(r)を有する。
回折焦点を提供するため、例えば、ステップ175「回折位相プロファイルを計算する」のように、適したプログラムを有するプロセッサまたはコンピュータを用いて、数学的にまたは数的に、回折グレーチングの連続周期位相プロファイル関数φ(r)を計算する。異なる瞳孔サイズに応じた単焦点中央ゾーンとの組み合わせを含み、レンズ全体にわたって目標屈折及び回折焦点において所望の光分布を形成するように、連続周期位相プロファイル関数を計算する。
ステップ176「遷移ポイントを定める」において、単焦点中央ゾーンが終端し、回折プロファイルが開始する、光軸からある距離を有する遷移ポイントを定める。この遷移ポイントでは、上記の本開示の第1の態様に示すように、回折グレーチング及び単焦点中央ゾーンが一致した振幅値を有する。最後に、単焦点中央ゾーンの高さプロファイルの振幅御及び/または回折グレーチングの高さプロファイルの振幅を調整する。
遷移ポイントは、ステップ176において、本開示の第1の態様に示すように定められる。例えば、レンズの光入射の目標焦点における光分布に基づいて、所定の開口サイズにおいて、
-各々の目標焦点に分布した光の強度が、各々の個別目標焦点に対す手所定の強度範囲何あり、
-目標焦点に分布した光の強度の合計が、所定の合計範囲内にあり、
-遠位及び近位視覚のための目標焦点に分布した光の強度の比が、所定の比率範囲内にある。
次のステップにおいて計算された位相プロファイル関数及び遷移ポイントに、例えば、ステップ177「強度チューニング」のように、目標焦点の中の所望の相対的光分布のようなレンズの所望のまたは目標の光学特性のファインチューニング、及び/またはスムージングが提供される。この強度チューニングは、適したプログラムを有するプロセッサまたはコンピュータで処理され、上記の例で示された変調が含まれる。これには、例えば、公差の結果、及びレンズの機械加工または製造における公差として、目標焦点及びプロファイルの光学偏差を考慮する必要もある。
最後に、例えば、ステップ178「高さプロファイルを適用」のように、単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングの高さプロファイルまたは振幅プロファイルが、レンズを製造するために計算される。
最後に、レンズ本体に適用された高さプロファイルまたは高さ関数が、例えば、任意のマイクロ機械加工、ダイアモンドチューニング、3Dプリント、または他の任意の機械加工またはリソグラフ表面処理技術により、機械加工され研磨される。これが、ステップ179「機械加工」で示される。
ステップ175の計算は、回折グレーチングのフーリエシリーズの表現に基づいており、目標焦点に関連する回折次数のフーリエ係数の絶対値の2乗の合計が最大化するようにする。上記のように、この計算は。目標焦点での、等しいまたは重み付けがなされた目標光強度の制約下で実施できる。
本開示に係る計算は、レンズを機械加工する装置から離れて提供できる。特に、回折グレーチングの計算は、インターネット(図示せず)のような、実際利用可能な通信コミュニケーションによりデータ送信によって、機械加工装置に送ることができる。
単焦点中央ゾーン及び回折グレーチングを、レンズの前側及び後ろ側の表面の一方または両方に適用でき、全ての実施形態及び添付のクレームによる請求範囲に適用可能であることを、当業者は認識できる。
本開示に係る教示は、アポダイズされた高やまたは振幅プロファイルを有する多焦点中眼科レンズの光分布における設計やチューニングに等しく適用可能であることも更に朝雨目すべきである。
図面、開示及び添付されたクレームの教示からクレームされた実施するに当たり、当業者により開示された実施例御及び実施形態に対する他の変形例が理解され、効果が得られる。クレームにおいて、”備える(comprising)」は、他の要素やステップを排除するものではなく、”a”または”an”は、複数を排除するものではない。ある手段が互いに異なる従属クレームに引用さている単なる事実は、それらの手段の組み合わせが有効に用いられないことを示すものではない。クレームの任意の参照サインが、その範囲の制限を構成するものではない。同じ参照サインは、等しいまたは等価な要素または実施を参照している。

Claims (15)

  1. 近位、中間及び遠位の焦点を少なくとも備える眼科多焦点レンズであって、前記レンズは、レンズ本体の表面の一部を横切り、前記レンズ本体の光軸から半径方向rにおいて同心状に延びた対称な回折グレーチングを備え、前記レンズ本体は、中間視覚の屈折焦点を提供するように設計され、前記回折グレーチングは、前記レンズ本体への入射光の位相を変化させるようにr空間において周期的に配置された単一連続周期関数として示される位相プロファイルφ(r)を有し、少なくとも、mを1または2から選択された正の整数値として、回折次数+mにおける近位の回折焦点及び回折次数-mにおける遠位の回折焦点を提供する対称なウエーブスプリッタとして機能し、
    前記レンズ本体は、前記レンズ本体の前記表面の一部を横切り、前記レンズ本体の光軸から半径方向rの所定の距離にわたって延び、前記回折焦点の1つと一致する焦点を提供し、前記レンズ本体への入射光の位相を変化させるように配置された連続位相プロファイル関数ψ(r)を有する屈折単焦点中央ゾーンを備え、
    前記回折グレーチングは前記レンズ本体の半径方向における遷移ポイントから備えられ、前記単焦点中央ゾーンが前記遷移ポイントで終端し、前記遷移ポイントで尖ったエッジを避けるため、前記回折グレーチング及び前記単焦点中央ゾーンが前記遷移ポイントで同一の振幅値を有し、
    前記回折グレーチングが、鋭いエッジを有さず、山及び谷が交互に現れる振幅値を有する高さプロファイルを備え、
    前記遷移ポイントが、前記回折グレーチングの谷振幅値よりも山振幅値により近く位置付けられており、
    前記振幅値、前記谷振幅値及び前記山振幅値が、高さプロファイル関数H(r)に基づくことを特徴とする眼科多焦点レンズ。
  2. 空間から見て、前記レンズ本体の半径方向rで計測された前記遷移ポイント及び前記山振幅値の間の距離が、r 空間における前記回折グレーチングの周期の0.2倍より小さい、請求項1に記載の眼科多焦点レンズ。
  3. 前記回折グレーチング及び前記単焦点中央ゾーンが、前記レンズ本体の前記光軸に対して対称に、前記レンズ本体の前記表面の一部を横切って半径方向rに延びている。請求項1または2に記載の眼科多焦点レンズ。
  4. 前記レンズ本体、前記回折グレーチング及び前記単焦点中央ゾーンが、前記光軸を含む前記レンズ本体の第1の領域で単焦点特性を提供し、前記レンズ本体の半径方向において前記第1の領域を越えて延びた前記レンズ本体の第2の領域で多焦点特性を提供し、前記レンズ本体の半径方向において前記第2の領域を越えて前記レンズ本体の外周端に向けて延びた前記レンズ本体の第3の領域で2焦点特性を提供するように配置されている、請求項1から3の何れか1項に記載の眼科多焦点レンズ。
  5. 前記単焦点中央ゾーンが、遠位視覚の回折焦点に一致する焦点を備える、請求項1から4の何れか1項に記載の眼科多焦点レンズ。
  6. 前記遷移ポイントが、前記単焦点中央ゾーンが0.8-1.3mmの範囲の直径を有し、遠位及び近位視覚の目標焦点に分布した入射光の強度の比率が、0.8-2.0の近位/遠位の比率範囲内にあるような半径方向における位置にある、請求項1から5の何れか1項に記載の眼科多焦点レンズ。
  7. 前記単焦点中央ゾーンの前記位相プロファイル関数ψ(r)が下式で規定され、
    ここで、rは、前記レンズ本体の前記光軸からの半径方向の距離、[mm]であり、
    fは、前記単焦点中央ゾーンの焦点距離、[mm]
    λは、設計波長、[mm]であって、
    特に、前記単焦点中央ゾーンの前記位相プロファイル関数ψ(r)が下式で規定される、
    請求項1から6の何れか1項に記載の眼科多焦点レンズ。
  8. 前記回折グレーチングの前記位相プロファイル関数φ(r)が下式で規定され、
    ここで、rは、前記レンズ本体の前記光軸からの半径方向の距離、[mm]であり、
    A(r)は、前記レンズ本体の半径方向における前記位相プロファイル関数φ(r)の振幅変調関数であり、
    F[α(r)*G(r)]は、前記ウエーブスプリッタ機能を提供する前記レンズ本体の半径方向における関数であり、
    G(r)は、r空間における連続位相関数であり、
    α(r)は、G(r)の偏角マグニチュード変調関数であり、
    S(r)はr空間におけるG(r)の偏角変調関数、[mm]であり、
    Tは 空間における前記回折グレーチングの周期またはピッチであり、
    B(r)は連続周期位相プロファイル関数の振幅変調関数である、
    請求項1から7の何れか1項に記載の眼科多焦点レンズ。
  9. 前記回折グレーチングの前記位相プロファイル関数φ(r)が下式で規定され、
    ここで、S(r)は、r空間において、-0.5*T及び0.5*Tの間の範囲の定数であり、
    A(r)は、1.05及び1.15の間の範囲の定数を有し、
    α(r)は、2.5及び3の間の範囲の定数を有する、
    請求項8に記載の眼科多焦点レンズ。
  10. 前記回折グレーチングは、回折次数+1、0、-1の回折焦点を備えた対称な光学ウエーブスプリッタとして機能するように設計され、
    前記回折グレーチングの前記位相プロファイル関数φ(r)が下記2式で規定され、
    ここで、rは、前記レンズ本体の前記光軸からの半径方向の距離、[mm]であり、
    A(r)は、前記レンズ本体の半径方向における前記位相プロファイル関数φ(r)の振幅変調関数であり、
    G(r)は、r 空間における連続位相関数であり、
    S(r)は、r空間におけるG(r)の偏角変調関数、[mm]であり、
    Tは、r空間における前記回折グレーチングの周期またはピッチ、[mm]であり、
    B(r)は連続周期位相プロファイル関数の振幅変調関数であり、
    ここで、γ、γ、γは、それぞれ、それぞれの回折次数-1、0、1の相対的な強度を示し、
    α、α、αは、位相プロファイル関数のそれぞれのフーリエ係数の位相を表し、
    μ、μ、μは、最適化された定数であり、
    |α|=Nにおいて、Nは正の定数であり、|α|は、k=1、2、3における回折グレーチングのフーリエ係数αの振幅を表し、
    xは、φlin(x)が延びる軸である、
    請求項1から7の何れか1項に記載の眼科多焦点レンズ。
  11. 近位、中間及び遠位の焦点を少なくとも備える眼科多焦点レンズの製造方法であって、前記レンズは、レンズ本体の表面の一部を横切り、前記レンズ本体の光軸から半径方向rにおいて同心状に延びた対称な回折グレーチングを備え、前記レンズ本体は、中間視覚の屈折焦点を提供するように設計され、前記回折グレーチングは、前記レンズ本体への入射光の位相を変化させるように配置された、r空間で周期的に配置された単一連続周期関数として示され、少なくとも、mを1または2から選択された正の整数値として、回折次数+mにおける近位の回折焦点及び回折次数-mにおける遠位の回折焦点を提供する対称光学スプリッタとして機能し、
    前記方法は、
    -前記多焦点レンズの近位、中間及び遠位の目標焦点を定めるステップ、
    -中間視覚の前記目標焦点を有する前記透光性レンズ本体を提供するステップ、及び
    -近位及び遠位視覚の目標焦点を有する前記回折グレーチングを提供するステップ
    を含み、
    更に、
    -前記レンズ本体の前記表面の一部を横切り、前記レンズ本体の前記光軸から半径方向rの所定の距離にわたって延び、遠位及び近位視覚の前記目標焦点の1つと一致する焦点を提供する前記レンズ本体への入射光の位相を変化させるように配置された位相プロファイル関数ψ(r)を有する単焦点中央ゾーンを提供するステップ、
    -前記回折グレーチングの前記位相プロファイル関数φ(r)に基づいて前記回折グレーチングの振幅プロファイルH(r)を定め、前記単焦点中央ゾーンの前記位相プロファイル関数ψ(r)に基づく前記単焦点中央ゾーンの振幅プロファイルψ(r)を定めるステップ、
    -前記レンズ本体の半径方向における遷移ポイントを定めるステップであって、前記遷移ポイントで前記単焦点中央ゾーンが終端し、前記回折グレーチング及び前記単焦点中央ゾーンが前記遷移ポイントで同一の振幅値を有し、前記遷移ポイントが、前記グレーチングの谷振幅値よりも山振幅値により近く位置付けられるステップ、及び
    -定めた前記遷移ポイントに従って前記単焦点中央ゾーン及び前記回折グレーチングを適用するステップ、
    を含み、
    前記振幅値、前記谷振幅値及び前記山振幅値が、高さプロファイル関数H(r)に基づく方法。
  12. 前記遷移ポイントが、r空間から見て、前記レンズ本体の半径方向rで計測された前記遷移ポイント及び前記山振幅値の間の距離が、r 空間における前記回折グレーチングの周期の0.2倍より小さい、請求項11に記載の方法。
  13. 少なくとも、前記単焦点中央ゾーンの前記振幅プロファイルh(r)及び前記回折グレーチングの前記振幅プロファイルH(r)が、前記遷移ポイントにおいて前記単焦点中央ゾーン及び前記回折グレーチングの一致した振幅値を提供するように適用される、請求項11または12に記載の方法。
  14. -各々の目標焦点に分布した光の強度が、各々の個別目標焦点に対する所定の強度範囲内にあり、
    -前記目標焦点に分布した光の強度の合計が、所定の合計範囲内にあり、
    -遠位及び近位視覚の前記目標焦点に分布した光の強度の比率が、所定の比率範囲内にあるような、
    瞳孔に対応した所定の開口サイズにおいて、
    前記レンズの入射光の前記目標焦点における分布に基づいて前記回折グレーチングの半径方向における前記遷移ポイント及びシフトを定めるステップを更に含む、請求項11から13の何れか1項に記載の方法。
  15. コンタクトレンズ、眼内レンズ、無水晶体症コンタクトレンズ、無水晶体症眼内レンズ、スペクタクルレンズの1つとして配置される請求項1から10の何れか1項に記載の眼科多焦点レンズ。
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