JP7436748B2 - コンパウンドヘリコプタ - Google Patents

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Description

本開示は、コンパウンドヘリコプタに関する。
従来のコンパウンドヘリコプタとして、特許文献1の回転翼航空機が知られている。この回転翼航空機は、胴体、メインロータ、一対の推進プロペラ及びスタビライザを有している。メインロータは胴体の上に配置され、一対の推進プロペラは胴体の両側に配置され、スタビライザは胴体の後端に配置されている。各推進プロペラは複数のブレードを有しており、スタビライザにはフラップが設けられている。
米国特許出願公開第2010/0243792号公報
上記特許文献1の回転翼航空機では、一対の推進プロペラ及びフラップが飛行安定化のために調整されている。しかしながら、推進プロペラにおける飛行効率化については記載されていない。
本開示はこのような課題を解決するためになされたものであり、飛行効率の向上を図ったコンパウンドヘリコプタを提供することを目的としている。
本開示のある態様に係るコンパウンドヘリコプタは、胴体と、胴体の進行方向に対して、胴体から右側方へ延びる第1主翼及び左側方に延びる第2主翼と、胴体よりも上側に設けられたメインロータと、第1主翼に設けられ、進行方向を正としたとき、正の推力を発生させる第1プロペラと、第2主翼に設けられ、正及び負の推力を発生させる第2プロペラと、を備え、第1プロペラの諸元が第2プロペラの諸元とは異なる。
実施形態1に係るコンパウンドヘリコプタを示す斜視図である。 図1の第1プロペラブレードの斜視図である。 図2Aの第1プロペラブレードの断面図である。 図1の第2プロペラブレードの斜視図である。 図3Aの第2プロペラブレードの断面図である。 図1のコンパウンドヘリコプタにおける力を示した概略図である。 図1のホバリング時におけるコンパウンドヘリコプタの効率を示したグラフである。 図1の高速飛行時におけるコンパウンドヘリコプタの効率を示したグラフである。 実施形態2に係るコンパウンドヘリコプタの第1プロペラブレードの断面図である。 第2プロペラブレードの断面図である。
(実施の形態1)
<コンパウンドヘリコプタの構成>
実施の形態1に係るコンパウンドヘリコプタ10は、揚力を発生する構成に加えて、推進力を発生する構成を備える航空機である。図1に示すように、コンパウンドヘリコプタ10は、胴体20、主翼30、メインロータ40、諸元の異なる一対のプロペラ50、60)、降着装置70、尾翼80及び制御部90を備える。
メインロータ40及び降着装置70は上下方向において胴体20を挟むように配置されている。降着装置70よりもメインロータ40側を上側と称し、その反対側を下側と称する。また、第1プロペラ50及び第2プロペラ60は左右方向において胴体20を挟むように配置されている。進行方向を向いたとき、主翼30の右側には第1プロペラ50が配置され、主翼30の左側には第2プロペラ60が配置される。後述するように、進行方向を正としたとき、第1プロペラ50は正の推力のみを発生させ、第2プロペラ60は正の推力及び負の推力を発生させるため、第1プロペラ50と第2プロペラ60の諸元が異なっている。なお、以下の説明においては、「正の推力」は「前進推力」、「負の推力」は「後進推力」とも言う。
胴体20は、機首21から機尾22に向けて機軸方向に延びている。胴体20の左右方向の中点において左右方向に直交する面を仮想対称面VPとしたとき、胴体20は仮想対称面VPに対して対称な形状である。なお、胴体20の形状は、例えば、前後方向に長い長球でも良く、あるいは仮想対称面VPに対して対称でなくてもよい。
胴体20の上部には、メインロータ40を回転駆動するメイン駆動部41が配置されている。メイン駆動部41は、例えば、エンジン等の原動機により構成されている。
メインロータ40は、メインロータ回転軸42及び4つのメインロータブレード43を有し、揚力を発生させる。メインロータ回転軸42は、胴体20における左右方向の中央であって、前後方向の中央又はそれよりも前側に配置されている。メインロータ回転軸42は、その下端がメイン駆動部41の出力部に取り付けられており、鉛直方向に延びている。なお、メインロータ回転軸42は上下方向に対して傾斜させた、ティルトロータとしてもよい。
メインロータブレード43は、例えば、矩形状の長尺部材であって、一端部がメインロータ回転軸42に接続されている。複数のメインロータブレード43は、メインロータ回転軸42を中心に周方向に等間隔に配置されて、メインロータ回転軸42から放射線状に延びている。
メイン駆動部41の出力はメインロータ回転軸42を介してメインロータブレード43に伝達され、メインロータブレード43をメインロータ回転軸42を中心に回転させる。なお、メインロータブレード43は、メインロータ40により発生する揚力が最大になるようにピッチ角が制御されていてもよい。
主翼30は、第1主翼部31及び第2主翼部32を有し、前進飛行時に揚力を発生させる。第1主翼部31は、進行方向に対して胴体20の右側方から延びており、第2主翼部32は胴体20の左側方から延びている。第1主翼部31及び第2主翼部32は、仮想対称面VPに対して対称に形成され、仮想対称面VPに対して交差(例えば、直交)する方向に延びている。
各主翼部31、32は、胴体20に接続される翼根33と、翼端34を有している。各主翼部31、32は、例えば、上面視において、前後方向における寸法が翼端34よりも翼根33が大きい台形状である。
第1主翼部31及び第2主翼部32の翼端34には、推進力を発生させる第1プロペラ50及び第2プロペラ60と、第1プロペラ50及び第2プロペラ60を回転させる第1駆動部51及び第2駆動部61が設けられている。第1駆動部51及び第2駆動部61は、例えば、メイン駆動部41と接続されたドライブシャフトにより駆動される。第1プロペラ50は第1回転軸52と4つの第1プロペラブレード53を有し、第2プロペラ60は第2回転軸62と4つの第2プロペラブレード63を有している。
第1回転軸52及び第2回転軸62は機軸方向と平行な方向に延び、その後端部が第1駆動部51及び第2駆動部61の出力部に取り付けられている。これにより、各駆動部51、61によって各回転軸52、62は、例えば、定速で回転する。
複数の第1プロペラブレード53及び第2プロペラブレード63は、第1回転軸52及び第2回転軸62の前端部に取り付けられており、第1回転軸52及び第2回転軸62を中心に周方向において互いに等間隔に配置される。なお、各プロペラブレード53、63が取り付けられる各回転軸52、62の前端部は、前方へ突出する円錐形等の錐体形状であってもよい。
各プロペラブレード53、63は、各回転軸52、62を中心に回転する。この際、第1プロペラブレード53は反時計回りに定速vで回転し、第2プロペラブレード63は時計回りに定速vで回転する。このように、第1プロペラブレード53及び第2プロペラブレード63は、互いに、逆向きの回転方向かつ同じ回転速度で回転する。
第1プロペラブレード53の取付部分には、第1プロペラブレード53のピッチ角を可変する第1ピッチ可変機構54が設けられている。同様に、第2プロペラブレード63の取付部分には、第2プロペラブレード63のピッチ角を可変する第2ピッチ可変機構64が設けられている。ピッチ角を変えることにより、各プロペラブレード53、63により発生する推進力の方向と大きさが制御される。
具体的には、第1ピッチ可変機構54は、第1プロペラブレード53を正のピッチ角とし、前進推力(正推力)を発生させる。一方、第2ピッチ可変機構64は、飛行状態に応じて、第2プロペラブレード63を正または負のピッチ角とし、前進推力(正推力)または後進推力(負推力)を発生させる。
第1及び第2プロペラブレード53、63は、例えば、メインロータブレード43よりも小さく、矩形状であって、各回転軸52、62から放射線状に長く延びている。各プロペラブレード53、63は、この長手方向における両端部に基端部53a、63a及び先端部53b、63bを有している。各プロペラブレード53、63の基端部53a、63aが各回転軸52、62に接続されている。
図2A、図2B、図3A、図3Bに示すように、第1及び第2プロペラブレード53、63は、前縁53c、63c及び後縁53d、63dを有している。前縁53c、63cは、基端部53a、63aの一端と先端部53b、63bの一端とに接続されている。後縁53d、63dは、基端部53a、63aの他端と先端部53b、63bの他端とに接続されている。
第1及び第2プロペラブレード53、63は、翼断面が、例えば、前縁53c、63c側が丸く、後縁53d、63d側が尖った形状であって、後縁53d、63d側よりも前縁53c、63c側の厚みが大きい。
第1及び第2プロペラブレード53、63の迎え角は、基端部53a、63aから先端部53b、63bに向かって減少する、ねじり下げとしている。
第1及び第2プロペラブレード53、63の基端部53a、63aと先端部53b、63bの取付角の差である、ねじり下げ角は、基端部53a、63aのコード線53a1、63a1と先端部53b、63bのコード線53b1、63b1とがなす鋭角であって、例えば、10度以上であって、50度以下である。なお、コード線53a1は、基端部53aにおける前縁53cと後縁53dとを結ぶ線であって、コード線53b1は、先端部53bにおける前縁53cと後縁53dとを結ぶ線である。コード線63a1は、基端部63aにおける前縁63cと後縁63dとを結ぶ線であって、コード線63b1は、先端部63bにおける前縁63cと後縁63dとを結ぶ線である。
ここで、第1プロペラ50の諸元は、第2プロペラ60の諸元と異なっている。具体的には、メインロータ40を反時計回りに回転させ、第1プロペラブレード53及び第2プロペラブレード63を負のピッチ角及び回転速度を同一にして回転させる条件下において、第2プロペラ60が発生する負の推力が、第1プロペラ50が発生する負の推力よりも大きくなるように諸元が設定される。また、メインロータ40を反時計回りに回転させ、第1プロペラブレード53及び第2プロペラブレード63を正のピッチ角及び回転速度を同一にして回転させたときに発生する推力の絶対値と、第1プロペラブレード53及び第2プロペラブレード63を負のピッチ角及び回転速度を同一にして回転させたときに発生する推力の絶対値との差は、第2プロペラ60の方が第1プロペラ50よりも小さくなるよう諸元が設定される。例えば、本実施の形態では、第2プロペラブレード63のねじり下げ角θ2が第1プロペラブレード53のねじり下げ角θ1よりも小さい。
尾翼80は、垂直尾翼81及び水平尾翼82を有し、胴体20の機尾22に設けられるT字形状である。垂直尾翼81は、メインロータ40が反時計回りに回転する場合に、進行方向を向いたときの右向きの揚力を発生する。
降着装置70は、胴体20の下部に設けられ、例えば、スキッド等の着陸脚が用いられる。降着装置70は、コンパウンドヘリコプタ10が地上に着陸する際に、衝撃を受けて、胴体20等を支持する装置である。
制御部90は、胴体20内に配置され、コンパウンドヘリコプタ10の飛行における各部を制御する、プロセッサ等の演算処理装置である。制御部90は、操縦装置及び各種センサ等からの出力に基づき、メイン駆動部41及び各ピッチ可変機構54、64等の各部を制御している。
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、および/または、それらの組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアおよび/またはプロセッサの構成に使用される。
<コンパウンドヘリコプタに作用する力>
図4は、コンパウンドヘリコプタ10の飛行時に発生する力を模式的に示した図であり、推進力及び機体のヨー回転に寄与する一部の力を表している。
コンパウンドヘリコプタ10の飛行中には、上面視においてメインロータ40は反時計回りに回転する。このため、メインロータブレード43は、上から視て、メインロータ回転軸42の回りを、胴体20の機尾22側(後側)、第1主翼部31側(右側)を経て、胴体20の機首21側(前側)へ回転する。
コンパウンドヘリコプタ10の飛行中には、第1プロペラ50及び第2プロペラ60は一定速度及び一定方向にそれぞれ回転する。ただし、第1プロペラ50及び第2プロペラ60は互いに反対方向に回転する。例えば、正面視において、第1プロペラ50は、反時計回りに回転し、第2プロペラ60は、時計回りに回転する。
<ホバリング時にコンパウンドヘリコプタに作用する力>
コンパウンドヘリコプタ10のホバリング時には、前進速度が0ktであって、コンパウンドヘリコプタ10は空中に静止している。この際、メインロータ40の回転により機体の自重に相当する揚力を発生させるため、メインロータ40の回転トルクが大きくなる。この回転トルクによって胴体20は、メインロータ40の回転方向の反対方向(時計回り)のモーメントM0を受ける。このモーメントM0は回転トルクに伴い大きい。
メインロータ40の回転トルクを打ち消すために、第1プロペラ50により前進推力(正推力)F0、第2プロペラ60により後進推力(負推力)S0をそれぞれ発生させる。具体的には、第1ピッチ可変機構54は、第1プロペラブレード53を正のピッチ角に調整し、第2ピッチ可変機構64は第2プロペラブレード63を負のピッチ角に調整する。そして、正推力F0及び負推力S0により、モーメントM0が相殺されて、コンパウンドヘリコプタ10はヨー方向に回転することなく姿勢が維持される。また、負推力S0は正推力F0と同じ又はほぼ同じであり、コンパウンドヘリコプタ10は前後方向にも移動しない。
<低速飛行時にコンパウンドヘリコプタに作用する力>
ホバリングから低速(例えば、80kt)で前進飛行させるために、第1プロペラ50の正推力をF0からF1に増加させる。
この前進によって、主翼30により揚力が発生し、メインロータ40による揚力の寄与が小さくなり、メインロータ40の回転トルクが減少する。このため、回転トルクの反作用である胴体20のモーメントM1はモーメントM0よりも小さくなる。これに伴い、メインロータ40の回転トルクを打ち消すための第2プロペラ60の負推力を、S0からS1に減少させる。また、前進飛行によって垂直尾翼81に揚力R1が右向きに発生する。
垂直尾翼81による揚力R1、正推力F1及び負推力S1によりモーメントM1が相殺されて、コンパウンドヘリコプタ10はヨー方向に回転することなく姿勢が維持される。また、正推力F1が負推力S1よりも大きく、コンパウンドヘリコプタ10には前進推力T1が付与されて前進する。
このように、ホバリングから前進飛行の初期段階である低速飛行時には、第1プロペラ50には正推力を発生させ、第2プロペラ60には負推力を発生させる。
<低速以降の飛行時にコンパウンドヘリコプタに作用する力>
コンパウンドヘリコプタ10の前進速度を150ktに増加させるため、第1プロペラ50の正推力をF1からF2に増加させる。このとき、第2ピッチ可変機構64は第2プロペラブレード63を負のピッチ角から正のピッチ角に変更し、第2プロペラ60から正推力S2を発生させる。これにより、第1プロペラ50の推力F2及び第2プロペラ60の推力S2は、前進推力に用いられ、コンパウンドヘリコプタ10は正推力T2にて速度を増して前進する。
この速度が増すことに伴い、主翼30による揚力がさらに増加し、これに伴い胴体20のモーメントがM2に低下する。さらに、垂直尾翼81の揚力がR1からR2に増加する。この揚力R2、正推力F2及び正推力S2によりモーメントM2が相殺されて、コンパウンドヘリコプタ10はヨー方向に回転することなく姿勢が維持される。
そして、コンパウンドヘリコプタ10の前進する速度が一層、増し、例えば、200ktになる。この前進方向の推進力を上昇するため、第1プロペラ50の正推力をF2からF3に増加し、第2プロペラ60の正推力をS2からS3に増加する。この和であるコンパウンドヘリコプタ10の正推力は、T3に増加して、高速で前進する。なお、正推力S3は正推力F3に等しい又はほぼ等しい。
高速化による主翼30による揚力の更なる増加に伴い、胴体20のモーメントがM3に低下する。また、垂直尾翼81の揚力がR3に増加する。このモーメントM3は揚力R3により打ち消されて、コンパウンドヘリコプタ10はヨー方向に回転することなく姿勢が維持される。
このように、低速以降の前進飛行時には、第1プロペラ50及び第2プロペラ60ともに正の推力を発生させる。
<第1プロペラブレード及び第2プロペラブレードのねじり下げ角>
ホバリング、低速の前進飛行、高速の前進飛行の飛行状態に応じて、第1プロペラ50及び第2プロペラ60の推力と、その向きを変更するため、適切な第1、第2プロペラブレード53、63のねじり下げ角が設定される。
図5Aは、コンパウンドヘリコプタ10のホバリング時における各プロペラの効率のグラフを示し、図5Bは、コンパウンドヘリコプタ10の高速(200kt)飛行時における各プロペラの効率のグラフを示している。各グラフにおいて、横軸は各プロペラブレード53、63のねじり下げ角を示し、縦軸は各飛行状態の際に必要な推力を発生させるために各プロペラを回転させる必要馬力を示している。
各グラフにおいて、四角形ドットを通る線が第1プロペラ50の必要馬力と、第1プロペラブレード53のねじり下げ角θ1との関係を示している。三角形ドットを通る線が第1プロペラ50の必要馬力と第2プロペラ60の必要馬力との和と、第2プロペラブレード63のねじり下げ角θ2との関係を示している。太線は、プロペラ馬力上限値(メイン駆動部41の馬力上限値からメインロータ40を回転させる必要馬力を差し引いたもの)を示している。
なお、図5Aと図5Bの各縦軸のスケールは必ずしも同一ではない。また、コンパウンドヘリコプタ10が前進すると、メイン駆動部41は空冷される。このため、図5Bの高速飛行時におけるプロペラ馬力上限値は、図5Aのホバリング時におけるプロペラ馬力上限値よりも大きい値を示す。
第1プロペラ50は、飛行状態によらず正推力を発生する。このため、図5A及び図5Bに示すように、ねじり下げ角に拘らず必要馬力は大きく変化しないが、第1プロペラブレード53のねじり下げ角θ1が大きいほど、第1プロペラ50の必要馬力が小さくなる。この場合には、ねじり下げ角θ1が40度で、第1プロペラ50の必要馬力が最小になる。このため、ねじり下げ角θ1が大きい(例えば、ねじり下げ角θ1が40度に近い)ほど、第1プロペラ50の推力効率が向上する。
一方、第2プロペラ60は、コンパウンドヘリコプタ10の速度に応じて推力の方向が変わり、ホバリング時及び前進飛行の初期段階である低速飛行時には負推力を発生するのに対し、高速飛行時には正推力を発生する。このため、図5A、図5Bに示すように、第2プロペラ60は、ねじり下げ角θ2によって必要馬力は大きく変化するとともに、その変化の傾向は図5Aのホバリング時と図5Bの高速飛行時とで異なる。そのため、第2プロペラ60のねじり下げ角θ2は、プロペラ馬力上限値よりも小さい値であって、ホバリング時と高速飛行時の双方の必要馬力が小さくなるような値が設定される。
例えば、図5Bに示すように、高速飛行時には、第1プロペラ50と同様に、第2プロペラブレード63のねじり下げ角θ2が大きいほど、第2プロペラ60の必要馬力が小さくなる。このため、ねじり下げ角θ2が大きい(例えば、ねじり下げ角θ2が40度に近い)ほど、第2プロペラ60の推力効率が向上する。
これに対し、図5Aに示すように、ホバリング時には、第2プロペラブレード63のねじり下げ角θ2が小さいほど、第2プロペラ60の必要馬力が小さくなる。このため、ねじり下げ角θ2が小さいほど、第2プロペラ60の推力効率が向上する。
以上のことから、図5Aによりねじり下げ角θ2の上限は、第1プロペラ50の必要馬力と第2プロペラ60の必要馬力との和と、プロペラ馬力上限値とが一致する値である、例えば、26度である。図5Bによりねじり下げ角θ2の下限は、第1プロペラ50の必要馬力と第2プロペラ60の必要馬力との和と、プロペラ馬力上限値とが一致する値である、例えば、18度である。この範囲において、マージンを考慮し、例えば、ねじり下げ角θ2は、22度に設定される。
<作用、効果>
このように、ホバリング、低速飛行、高速飛行の飛行状態によって、第1プロペラ50及び第2プロペラ60に要求される推力や推力の向きが異なるため、左右のプロペラの諸元は同一にする必要はなく、コンパウンドヘリコプタに適した最適なプロペラとすることができる。
具体的には、ホバリング時及び前進飛行の初期である低速飛行時において、第2プロペラ60には負の推力を発生させ、低速飛行時以降は正の推力を発生させる。一方、第1プロペラ50にはいずれの飛行状態においても正の推力を発生させる。
プロペラ諸元は例えばプロペラブレードのねじり下げ角を調整することにより設定される。第2プロペラブレード63のねじり下げ角θ2は、第1プロペラブレード53のねじり下げ角θ1よりも小さい。これにより、仮に、第1プロペラブレード53及び第2プロペラブレード63が互いに同一の回転速度及び同一の負ピッチ角で回転させる条件とした場合、第2プロペラブレード63の負の推力は第1プロペラブレード53の負の推力よりも大きくなる。
また、仮に、第1プロペラブレード53及び第2プロペラブレード63が互いに同一の回転速度及び同一の正ピッチ角である角度+βで回転させる条件とした場合、第1プロペラブレード53により正推力+Fpが発生し、第2プロペラブレード63により正推力+Spが発生する。また、仮に、第1プロペラブレード53及び第2プロペラブレード63が互いに同一の回転速度及び同一の負ピッチ角である角度-βで回転させる条件とした場合、第1プロペラブレード53により負推力-Fmが発生し、第2プロペラブレード63により負推力-Smが発生する。
このとき、ねじり下げ角が0度であって、正ピッチ角の絶対値と負ピッチ角の絶対値が等しい時、正ピッチ角で発生する正推力の絶対値と、負ピッチ角で発生する負推力の絶対値が等しくなる。また、正ピッチ角の絶対値と負ピッチ角の絶対値が等しい時、ねじり下げ角が大きくなるほど、正推力の絶対値が負推力の絶対値よりも大きくなる。この場合、第2プロペラブレード63の推力の絶対値の差(Sp-Sm)は、第1プロペラブレード53の推力の絶対値の差(Fp-Fm)よりも小さくなる。
このため、第1プロペラブレード53は、正推力を発生するのに適した形状に形成される。一方、第2プロペラブレード63は、正推力及び負推力に対する効率の低下を抑制した形状に形成される。よって、コンパウンドヘリコプタ10の飛行効率の向上が図られる。
また、第1プロペラ50及び第2プロペラ60による推力によって、コンパウンドヘリコプタ10の高速化が図られると共に、ヨー方向におけるコンパウンドヘリコプタ10の動きを制御することができる。
(実施の形態2)
実施の形態1に係るコンパウンドヘリコプタ10は、プロペラの諸元のうち、第1プロペラ50及び第2プロペラ60のねじり下げ角を異ならせることにより最適なプロペラとしたが、実施の形態2に係るコンパウンドヘリコプタ10は、図6に示すように、第1プロペラブレード153及び第2プロペラブレード163の翼断面形状を異ならせている。
第2プロペラブレード163は、プロペラブレードの断面形状の厚みの中心線であるキャンバーライン153f、163fと、前縁と後縁とを結んだ直線であるコード線153g、163gとの差であるキャンバーが第1プロペラブレード153よりも小さい。例えば、図6Aに示すように、第1プロペラブレード153は、キャンバーが0よりも大きいキャンバー翼である。図6Bに示すように、第2プロペラブレード163は、キャンバーが0である対称翼である。なお、各プロペラブレード153、163にはねじり下げが付けられていない。
外形線153e、163eは、各プロペラブレード153、163の長手方向に直交する断面の形状を表す線である。中心線153f、163fは、外形線153e、163eのうち、前縁153c、163cと後縁153d、163dとを直線で結んだコード線153g、163gよりも上側と下側との間の中心を通る線である。
第1プロペラブレード153では、中心線153fがコード線153gよりも上側に位置しており、キャンバー153hが0よりも大きくなる。この場合、第1プロペラブレード153は、コード線153gから一方側に反っていることにより、第1プロペラブレード153は正推力を発生し易い。
第2プロペラブレード163では、中心線163fがコード線163gと一致しており、キャンバーが0になる。このように、第2プロペラブレード163は、コード線163gに対して対称な形状であることにより、第2プロペラブレード163は正推力及び負推力の両方を発生し易い。
このため、仮に、同一の回転速度及び同一の負ピッチ角で回転させる条件下において、第1プロペラ50及び第2プロペラ60が発生する負の推力は、第2プロペラ60が第1プロペラ50よりも大きくなる。よって、コンパウンドヘリコプタ10は、飛行効率の向上を図ることができる。
(変形例)
実施の形態2に係る各プロペラブレード153、163について、実施の形態1と同様のねじり下げ角θ1、θ2をつけてもよい。つまり、対称翼の第2プロペラブレード163及びキャンバー翼の第1プロペラブレード153のそれぞれにねじり下げが付けられており、第2プロペラブレード163のねじり下げ角θ2は、第1プロペラブレード153のねじり下げ角θ1よりも小さい。
上記全ての実施の形態において、ねじり下げ及び断面形状の違いを除いた形状について、第1プロペラブレード153及び第2プロペラブレード163は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。例えば、基端部153a、163a、先端部153b、163b、前縁153c、163c及び後縁153d、163dにより囲まれた平面形状を、第1プロペラブレード153と第2プロペラブレード163とで異ならせることによりプロペラの諸元を設定してもよい。
また、各実施の形態において、第1プロペラ50及び第2プロペラ60は同一の回転数としたが、飛行状態に応じた推力とその向きとなるように、第1プロペラ50及び第2プロペラ60を異なる回転数で駆動させてもよい。
上記全ての実施の形態において、第1プロペラ50及び第1駆動部51が第1主翼部31に取り付けられ、第2プロペラ60及び第2駆動部61が第2主翼部32に取り付けられている。但し、第1プロペラ50が胴体20の一方側に設けられ、第2プロペラ60が胴体20の他方側に設けられていれば、これらの位置はこれに限定されない。例えば、第1プロペラ50及び第1駆動部51が胴体20の一方側に取り付けられ、第2プロペラ60及び第2駆動部61が胴体20の他方側に取り付けられていてもよい。
なお、第1及び第2プロペラブレード53、63の迎え角は、基端部53a、63aから先端部53b、63bに向かって減少する、ねじり下げとしているが、これに限られない。各プロペラブレードは、基端部から先端部に向かって迎え角が増加する、負のねじり下げ(ねじり上げ)としてもよい。
また、上記全実施の形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。上記説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
本開示のコンパウンドヘリコプタは、飛行効率の向上を図ったコンパウンドヘリコプタ等として有用である。
10 :コンパウンドヘリコプタ
20 :胴体
21 :機首
22 :機尾
30 :主翼
31 :第1主翼部
32 :第2主翼部
33 :翼根
34 :翼端
40 :メインロータ
41 :メイン駆動部
42 :メインロータ回転軸
43 :メインロータブレード
50 :第1プロペラ
51 :第1駆動部
52 :第1回転軸
53 :第1プロペラブレード
53a :基端部
53a1 :コード線
53b :先端部
53b1 :コード線
53c :前縁
53d :後縁
54 :第1ピッチ可変機構
60 :第2プロペラ
61 :第2駆動部
62 :第2回転軸
63 :第2プロペラブレード
63a :基端部
63a1 :コード線
63b :先端部
63b1 :コード線
63c :前縁
63d :後縁
64 :第2ピッチ可変機構
70 :降着装置
80 :尾翼
81 :垂直尾翼
82 :水平尾翼
90 :制御部
153 :第1プロペラブレード
153a :基端部
153b :先端部
153c :前縁
153d :後縁
153e :外形線
153f :キャンバーライン(中心線)
153g :コード線
153h :キャンバー
163 :第2プロペラブレード
163a :基端部
163b :先端部
163c :前縁
163d :後縁
163e :外形線
163f :キャンバーライン(中心線)
163g :コード線

Claims (8)

  1. 胴体と、
    前記胴体の進行方向に対して、前記胴体から右側方へ延びる第1主翼及び左側方に延びる第2主翼と、
    前記胴体よりも上側に設けられたメインロータと、
    前記第1主翼に設けられ、前記進行方向を正としたとき、正の推力を発生させる第1プロペラと、
    前記第2主翼に設けられ、正及び負の推力を発生させる第2プロペラと、を備え、
    前記第1プロペラの諸元が前記第2プロペラの諸元とは異な
    前記第1プロペラは、機軸方向と平行な方向を回転軸とするプロペラブレードである第1プロペラブレードを有し、
    前記第2プロペラは、機軸方向と平行な方向を回転軸とするプロペラブレードである第2プロペラブレードを有し、
    前記第1プロペラブレード及び前記第2プロペラブレードは、基端から先端に向かって迎え角が変化するねじり下げ角を有し、
    前記第2プロペラブレードのねじり下げ角は、前記第1プロペラブレードのねじり下げ角よりも小さく、
    前記第2プロペラブレードのねじり下げ角は、
    前進飛行を行う推力を発生させるために必要な前記第1プロペラブレード及び前記第2プロペラブレードを回転させる馬力の和と、プロペラ馬力上限値が一致する値である下限値と、
    ホバリングを行う推力を発生させるために必要な前記第1プロペラブレード及び前記第2プロペラブレードを回転させる馬力の和と、プロペラ馬力上限値が一致する値である上限値と、の間の値である、
    コンパウンドヘリコプタ。
  2. 前記第1プロペラは、機軸方向と平行な方向を回転軸とするプロペラブレードである第1プロペラブレードを有し、
    前記第2プロペラは、機軸方向と平行な方向を回転軸とするプロペラブレードである第2プロペラブレードを有し、
    前記第1プロペラ及び前記第2プロペラの諸元は、各前記プロペラブレードの基端から先端に向かって迎え角が変化するねじり下げ角、各前記プロペラブレードの翼断面形状、各前記プロペラブレードの平面形状、または前記第1プロペラ及び前記第2プロペラの回転数の少なくともいずれか1つである、請求項1に記載のコンパウンドヘリコプタ。
  3. 第1プロペラは、ホバリング時及び前進飛行時のいずれにおいても正の推力を発生させ、
    第2プロペラは、ホバリング時及び前進飛行の初期時において負の推力を発生させ、前進飛行の初期時以降には正の推力を発生させる、請求項1に記載のコンパウンドヘリコプタ。
  4. 前記第1プロペラは、機軸方向と平行な方向を回転軸とするプロペラブレードである第1プロペラブレードを有し、
    前記第2プロペラは、機軸方向と平行な方向を回転軸とするプロペラブレードである第2プロペラブレードを有し、
    上面視において前記メインロータを反時計回りに回転させ、かつ、前記第1プロペラブレード及び前記第2プロペラブレードの負のピッチ角及び回転速度を同一にして回転させる条件下において、前記第2プロペラが発生する負の推力は、前記第1プロペラが発生する負の推力よりも大きい、請求項1に記載のコンパウンドヘリコプタ。
  5. 前記第1プロペラは、機軸方向と平行な方向を回転軸とするプロペラブレードである第1プロペラブレードを有し、
    前記第2プロペラは、機軸方向と平行な方向を回転軸とするプロペラブレードである第2プロペラブレードを有し、
    上面視において前記メインロータを反時計回りに回転させ、かつ、前記第1プロペラ及び前記第2プロペラを同一回転速度及び同一の正ピッチ角である角度βで回転させる条件下において、前記第1プロペラが発生する推力を+Fpとし、前記第2プロペラが発生する推力を+Spとし、
    上面視において前記メインロータを反時計回りに回転させ、かつ、前記第1プロペラ及び前記第2プロペラを同一回転速度及び同一の負ピッチ角である角度-βで回転させる条件下において、前記第1プロペラが発生する推力を-Fmとし、前記第2プロペラが発生する推力を-Smとしたとき、以下の式を満たす、請求項1~4のいずれか一項に記載のコンパウンドヘリコプタ。
    Fp-Fm>Sp-Sm
  6. 前記第1プロペラブレードのねじり下げ角は、ホバリング及び前進飛行を行うための推力を発生させる際に必要な前記第1プロペラブレードを回転させる馬力が最小となる値である、請求項1~5のいずれか一項に記載のコンパウンドヘリコプタ。
  7. 前記第1プロペラは、機軸方向と平行な方向を回転軸とするプロペラブレードである第1プロペラブレードを有し、
    前記第2プロペラは、機軸方向と平行な方向を回転軸とするプロペラブレードである第2プロペラブレードを有し、
    各前記プロペラブレードの断面形状の厚みの中心線であるキャンバーラインと、前縁と後縁とを結んだ直線であるコード線との差であるキャンバーは、前記第1プロペラブレードよりも前記第2プロペラブレードが小さい、請求項1~のいずれか一項に記載のコンパウンドヘリコプタ。
  8. 前記第1プロペラブレードの前記キャンバーは0よりも大きく、
    前記第2プロペラブレードの前記キャンバーが0である、請求項に記載のコンパウンドヘリコプタ。
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