JP7428505B2 - コンピュータプログラム、学習モデル生成方法及び情報処理装置 - Google Patents

コンピュータプログラム、学習モデル生成方法及び情報処理装置 Download PDF

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Description

本発明は、コンピュータプログラム、学習モデル生成方法及び情報処理装置に関する。
免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1抗体は、適応がん患者に投与しても奏功率は20%以下である。その他の承認されている、抗PD-L1抗体や抗CTLA4抗体、抗CCR4抗体も奏効率は低く、T細胞輸注療法に使用する細胞医薬(キムリア(登録商標))も、一部の患者にしか効かないことが報告されている。そして、抗PD-1抗体投与患者の中には、この薬剤を投与したことで急激に病状が進んでしまうHPD(Hyperprogressive disease)という看過できない有害事象も報告されている。
よって、薬剤が効く患者と効かない患者を見分けることは、患者にとっての有効な治療薬選択の観点のみならず、高額な医療費抑制の観点からも重要な課題である。
抗PD-1抗体が効く患者と効かない患者では、がん免疫逃避機構の違い、及びそれに伴うがん微小環境の変化があることが近年報告されてきている。がん微小環境の違いとは、がん微小環境を構成する細胞である、細胞障害性T細胞、Treg(制御性T細胞)、Breg(制御性B細胞)、MDSC(Myeloid-Derived Suppressor Cells)、マクロファージ、がん関連繊維芽細胞(cancer-associated fibroblast, CAF)、がん細胞自身等の違いを意味する。つまり、これらの細胞の外部へ向けられるシグナルが、がん微小環境の違いを生み出しているともいえる。外部へのシグナルとしては、細胞から細胞外へ分泌されるケモカイン、サイトカイン、抗体、ホルモン、エクソソーム、cfDNA(セルフリーDNA)等の分泌因子が挙げられるが、どれか一つの分泌因子をもって複雑ながん微小環境を判別することは困難である。
非特許文献1には、抗PD-1抗体の投与前に比べて、投与後に血中CXCL2が減少、又はMMP-2が増加する患者は、予後がよいことが報告されている。
非特許文献2には、エフェクターTreg(腫瘍浸潤FoxP3highCD45RACD4T細胞;以下、エフェクターTregを適宜、eTregと呼ぶ。)は、CD4T細胞又はCD8T細胞と同レベルにPD-1を細胞膜上に発現しており(PD-1eTreg)、PD-1eTregが存在する場合、eTregが増殖し、腫瘍に対する免疫反応が抑制されることが報告されている。
抗PD-1抗体療法前後の胃癌患者の組織を比較すると、HPD(Hyperprogressive disease)患者において顕著に腫瘍浸潤増殖性(Ki67)のeTregが増加している。これは、非HPD患者ではeTregが減少するのと対照的である。PD-1eTregは、PD-1eTregに比較して、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の活性を抑えるCTLA-4を高発現しており、PD-1eTregよりも増殖能が高い。また、PD-1阻害によって、Tregが増殖し、腫瘍免疫反応に対する抑制能が増強されることが示されている。これらのことから、腫瘍組織において、PD-1eTregが存在する場合、抗PD-1抗体を投与すると、eTregの増殖能と免疫抑制能を増大させてしまい、HPDリスクが高くなることが予測されるので、先にeTregに高発現しているCTLA-4を狙って、抗CTLA-4抗体などでeTregを不活化したのちに、抗PD-1抗体療法をした方が、効果的である可能性が示唆されている。
Matsuo N. et al., International Journal of Cancer 0, 2018 Kamada T et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2019 116(20):9999-10008
上記の通り、特定の治療薬が患者に奏功するかどうかは、がん微小環境の違いに依存することは知られているが、低侵襲な検査で得られる分泌因子1種類の測定値(以下、分泌因子量と呼ぶ。)からがん微小環境の状態を判別し、有効な治療薬を特定することは困難である。
非特許文献1の知見によれば、抗PD-1抗体の投与前後での血中CXCL2又はMMP-2の増減と、予後との関係を知ることができるが、薬剤投与前にがん微小環境の状態を判別し、抗PD-1抗体が奏功するかどうかを知ることができない。
非特許文献2の知見によれば、PD-1+eTregが存在する場合、抗PD-1抗体の投与がHPDリスクの増大を招くことが分かるが、薬剤投与前に患者のがん微小環境の状態を判別し、患者に有効な治療薬を知ることができない。
本開示の目的は、患者から取得した生体試料に含まれる分泌因子量に基づいて、患者のがん微小環境を層別化することが可能なコンピュータプログラム、学習モデル生成方法及び情報処理装置を提供することにある。
本態様に係るコンピュータプログラムは、患者から取得した生体試料に含まれる、がん微小環境に影響を与え得る分泌因子量を取得し、患者の前記分泌因子量が入力された場合、がん微小環境に係る情報又はがん微小環境に応じた治療薬に係る情報を出力するように学習された学習モデルに対して、取得した前記分泌因子量を入力することによってがん微小環境又は治療薬に係る情報を出力させる処理をコンピュータに実行させる。
本態様に係る学習モデル生成方法は、がん微小環境に影響を与え得る、患者の生体試料に含まれる分泌因子量と、前記患者に投与した治療薬と、治療薬が投与された前記患者の予後とを含む教師データを用意し、学習モデルに前記教師データに含まれる前記分泌因子量を入力し、前記学習モデルから前記教師データに含まれる治療薬及び予後に対応するがん微小環境に係る情報又はがん微小環境に応じた治療薬に係る情報が出力されるように、前記学習モデルを機械学習させる。
本態様に係る情報処理装置は、がん微小環境に影響を与え得る、患者の生体試料に含まれる分泌因子量を取得する取得部と、前記分泌因子量が入力された場合、がん微小環境に係る情報又はがん微小環境に応じた治療薬に係る情報を出力するように学習された学習モデルに対して、取得した前記分泌因子量を入力することによってがん微小環境又は治療薬に係る情報を出力させる処理部とを備える。
本態様によれば、患者から取得した生体試料に含まれる分泌因子量に基づいて、患者のがん微小環境を層別化することができる。
実施形態1に係る情報処理御システムの構成例を説明する模式図である。 実施形態1に係る情報処理装置の構成例を示すブロック図である。 実施形態1に係る学習モデルの構成例を示す概念図である。 実施形態1に係る学習処理手順を示すフローチャートである。 教師データの準備方法を示す概念図である。 がん微小環境を構成する細胞及び分泌因子を示す図表である。 がん種、分泌因子、がん微小環境構成細胞等、治療薬の関係を示す概念図である。 実施形態1に係るがん微小環境モデルの層別化処理手順を示すフローチャートである。 患者情報等入力画面の一例を示す模式図である。 解析結果画面の一例を示す模式図である。 解析結果画面の一例を示す模式図である。 解析結果画面の一例を示す模式図である。 解析結果画面の一例を示す模式図である。 解析結果画面の一例を示す模式図である。 解析結果画面の一例を示す模式図である。 治療後の患者情報等入力画面例を示す模式図である。 実施形態2に係る層別化処理の方法を示す概念図である。 実施形態2に係る治療薬テーブルの構成例を示す概念図である。
本発明の実施形態に係る分注装置、コンピュータプログラム及び分注方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
(実施形態1)
<情報処理システム>
図1は、実施形態1に係る情報処理御システムの構成例を説明する模式図である。本実施形態1に係る情報処理システムは、情報処理装置1、一又は複数の医療情報DBサーバ2を備え、医療情報DBサーバ2はインターネット等の通信ネットワークNを介して情報処理装置1に接続されている。
本実施形態1の情報処理装置1は、がん免疫逃避機構の違い、及びそれに伴うがん微小環境の多様性が、がんに対する薬剤及び治療法の効果に関与しているという点に着目し、がん微小環境等から発せられた外部へのシグナル、即ち患者から取得した生体試料に含まれる分泌因子を解析することで、患者にとって低侵襲な検査で、がん微小環境のタイプを推定し、そのがん微小環境を視覚化したモデル図を利用者に提供することで直観的な病態メカニズムの理解を促すと共に、効果的な薬剤及び治療法を提案し、また有害事象を引き起こす可能性のある治療薬を提示するものである。
具体的には、本実施形態1の情報処理装置1は、AIに、診断名(例えば国際疾病分類コード)、性別、年齢、既往症、投薬歴等の患者の背景情報と、がん患者の薬剤投与前の生体試料中の分泌因子量(分泌因子の測定値)と、薬剤投与後の各患者の予後とを機械学習させたソフトウェアであって、患者のがんに対する治療薬の選択において、患者の生体試料中の分泌因子量の入力を受け付け、がん患者のがん微小環境を層別化し、効果が出る薬剤又はその組み合わせを導き出すものである。
生体試料は、例えば、血液、尿、汗、唾液、糞便、脊髄液、喀痰、又は肺洗浄液等である。以下、本実施形態1では生体試料として血液を想定して説明するが、本発明は血液中の分泌因子を解析するものに限定されるものではない。
図2は、実施形態1に係る情報処理装置1の構成例を示すブロック図である。本実施形態1に係る情報処理装置1は、処理部11、記憶部12、通信部13、入力部14及び表示部15を備える。
処理部11は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)、TPU(Tensor Processing Unit)等の演算処理装置を用いて構成されている。処理部11は、記憶部12に記憶されたコンピュータプログラム12aを読み出して実行することにより、患者から取得した生体試料を検査することによって得られる分泌因子量等に基づいて患者のがん微小環境のタイプを特定し、推奨される治療薬、推奨されない治療薬(有害事象を引き起こす可能性のある治療薬)を導出する処理を行う。
記憶部12は、例えば、ハードディスク、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の記憶装置である。記憶部12は、処理部11が実行する各種のプログラム、及び、処理部11の処理に必要な各種のデータを記憶する。本実施形態1において記憶部12は、処理部11が実行するコンピュータプログラム12aと、学習モデル3と、教師DB4と、モデル図DB5を記憶している。なお記憶部12は、情報処理装置1に接続された外部記憶装置であってよい。
コンピュータプログラム12aは、例えば情報処理装置1の製造段階において記憶部12に書き込まれてもよい。例えばコンピュータプログラム12aは、遠隔の他のサーバ等が配信するものを情報処理装置1が通信にて取得してもよい。例えばコンピュータプログラム12aは、メモリカード又は光ディスク等の記録媒体19に読み出し可能に記録されたコンピュータプログラム12aを情報処理装置1が読み出して記憶部12に記憶してもよい。例えばコンピュータプログラム12aは、記録媒体19に記録されたものを書込装置が読み出して情報処理装置1の記憶部12に書き込んでもよい。コンピュータプログラム12aは、通信ネットワークNを介した配信の態様で提供されてもよく、記録媒体19に記録された態様で提供されてもよい。
学習モデル3は、予め教師データを用いた機械学習又は深層学習等により、患者の分泌因子量からがん微小環境タイプ等を導出するように学習された学習済のモデルである。学習モデル3は、入力値に対して所定の演算を行い、演算結果を出力するものであり、記憶部12にはこの演算を規定する関数の係数及び閾値等のデータが学習モデル3として記憶される。学習モデル3として記憶されたデータを読み込むことによって、処理部11は、がん微小環境を特定するための演算処理を実行することが可能になる。
本実施形態1において学習モデル3の学習処理は、情報処理装置1が行う。ただし学習処理は、情報処理装置1以外の装置が行ってもよい。この場合に学習された学習モデル3に係るデータは、コンピュータプログラム12aと同様に、通信ネットワークNを介した配信の態様で提供されてもよく、記録媒体19に記録された態様で提供されてもよい。
教師DB4は、学習前の学習モデル3を学習させるために必要な教師データを蓄積するデータベースである。教師データの詳細は後述する。
モデル図DB5は、学習モデル3によって特定される複数のがん微小環境タイプにそれぞれの特徴を視覚的に表した画像データであるモデル図データを記憶する(図10~図15参照)。モデル図の詳細は後述する。
通信部13は、インターネット、通信ネットワークNを介して、医療情報DBサーバ2との間で通信を行う。通信部13は、処理部11から与えられたデータを他の装置へ送信すると共に、他の装置からの受信データを処理部11へ与える。処理部11は、通信部13を介して医療情報DBサーバ2にアクセスし、学習モデル3の学習に必要な教師データの元になる医療情報を収集する。
入力部14は、キーボード、マウス、外部からデータを取り込むインタフェース等であり、患者の診断名、例えば国際疾病分類コード、患者の年齢、性別、既往歴、投薬歴、患者の生体試料を検査により測定して得られた分泌因子量等、患者のがん微小環境を層別化するために必要な情報を受け付ける。以下、患者の分泌因子量を除く、患者の診断名、年齢、性別、既往歴、投薬歴等の情報を患者情報と呼ぶ。
なお、患者の患者情報及び分泌因子量は、必ずしも入力部14で受け付ける必要は無く、その一部又は全部を、生体試料分析装置等の他のコンピュータから受信するように構成してもよい。
表示部15は、液晶表示パネル、有機EL表示パネル等である。表示部15は、処理部11から出力される画像データに基づいて、患者情報及び分泌因子量の解析によって導出されたがん微小環境タイプ、推奨される治療薬及び治療方法を示す解析結果画面7(図10参照)を表示する。
なお、上記した情報処理装置1は、複数のコンピュータを含んで構成されるマルチコンピュータであってよく、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよい。また、情報処理装置1をクラウドサーバとして構成してもよい。
<学習モデル3>
図3は、実施形態1に係る学習モデル3の構成例を示す概念図である。本実施形態1において学習モデル3は、例えば、患者情報及び分泌因子量を受け付ける入力層31と、分泌因子量の特徴量、即ちがん微小環境の特徴量を抽出する中間層32と、特徴抽出によって導出されるがん微小環境タイプ、推奨される治療薬、推奨されない治療薬及び治療方法の解析結果を出力する出力層33とを有するニューラルネットワークである。情報処理装置1は、学習前モデルに対して、分泌因子量及びがん微小環境の特徴量を学習するディープラーニングを行うことで、学習モデル3を生成する。学習方法の詳細は後述する。
ニューラルネットワークの入力層31は、国際疾病分類コード等の診断名、患者の年齢、性別、既往歴、投与中の治療薬を含む投薬暦、患者の複数種類の分泌因子量がそれぞれ入力される複数のニューロンを有し、入力された各データを中間層32に受け渡す。
中間層32は、複数のニューロンからなる層を複数有する。各層は入力されたデータから患者のがん微小環境の特徴量を抽出しながら前段から後段の層へ順々に受け渡し、最後段の層は、がん微小環境の特徴量によって分類されるがん微小環境タイプ、当該がん微小環境タイプに適合した治療薬、適合しない治療薬に係るデータを出力層33に受け渡す。
出力層33は、複数のがん微小環境タイプにそれぞれ対応する複数のニューロンを備え、各ニューロンはそれぞれのがん微小環境タイプである確信度を出力する。
また、出力層33は、推奨される複数の治療薬及び治療方法にそれぞれ対応する複数のニューロンを備え、各ニューロンはそれぞれの治療薬及び治療方法が推奨されるものであることの確信度を出力する。推奨される治療薬及び治療方法は、例えば20%以上の奏功率が期待される治療法及び治療方法である。一のニューロンに対応する治療薬及び治療方法には、複数の薬剤の組合せが含まれる。また、一のニューロンに対応する治療薬及び治療方法には、推奨される治療薬が複数の薬剤及び投与順序が含まれる。以下、一種類の薬剤である治療薬、複数の薬剤の組合せを意味する治療薬、複数の薬剤の投与順序等を含め、適宜、治療薬等と呼ぶ。
更に、出力層33は、推奨されない複数の治療薬等にそれぞれ対応する複数のニューロンを備え、各ニューロンはそれぞれの治療薬等が推奨されないものであることの確信度を出力する。推奨されない治療薬等は、例えば腫瘍が20%以上大きくなり、もしくは新病変が出現する等、有害事象を引き起こすおそれがある治療法及び治療方法である。
上記した各確信度は、例えば0以上、1以下の少数で表され、その値が大きいほど出力結果が確かであることを示す。
なお本実施形態1においては、学習モデル3がニューラルネットワークである例を説明したが、SVM(Support Vector Machine)、ベイジアンネットワーク、又は、回帰木等の構成のモデルであってもよい。
<学習モデル3の学習方法>
図4は、実施形態1に係る学習処理手順を示すフローチャート、図5は、教師データの準備方法を示す概念図である。まず、処理部11は、医療情報DBサーバ2から、教師データの元になる医療情報を収集する(ステップS11)。医療情報には、複数の患者それぞれの診察情報、検査結果、治療内容、治療開始日、治療結果等を含む複数の診療データが含まれる。教師データの元になる患者の診療データは、例えば診断名、年齢、性別、既往症等を含む患者情報、患者の生体試料を検査することによって得られる分泌因子量、治療薬等、予後、免疫検査結果を含む。
予後は、例えば固形がんの場合、CR(Complete Response:腫瘍が完全に消失した状態)、PR(Partial Response:腫瘍の大きさの和が30%以上減少した状態)、SD(Stable Disease:腫瘍の大きさが変化しない状態)、PD(Progressive Disease:腫瘍の大きさの和が20%以上増加かつ絶対値でも5mm以上増加した状態、あるいは新病変が出現した状態)等を示す。
免疫検査結果は、免疫細胞マーカを用いた解析、サイトカイン、ケモカインの分泌量に基づく解析等の結果等である。
次いで、処理部11は、複数の患者それぞれの診療データに対して、当該患者のがん微小環境タイプをラベル付けすることによって教師データを生成する(ステップS12)。処理部11は、例えば免疫検査結果に基づいて、がん微小環境タイプを特定し、特定されたがん微小環境タイプを患者の診療データに付与することによって、教師データを生成する。教師データは、例えば患者情報、分泌因子量、治療薬、予後、がん微小環境タイプを対応付けた情報である。
そして、処理部11は、ステップS12で生成した教師データを用いて、学習モデル3を機械学習又は深層学習させ(ステップS13)、処理を終える。具体的には、処理部11は、教師データに含まれる患者情報、分泌因子量を、学習前のニューラルネットワークモデルに入力し、中間層32での演算処理を経て、出力層33から出力されるがん微小環境タイプ、推奨される治療薬、推奨されない治療薬等のデータを取得する。そして、処理部11は、出力層33から出力された微小環境タイプのデータと、教師データが示す微小環境タイプと比較し、出力層33から出力されるデータが正解値に近づくように、中間層32での演算処理に用いるパラメータを最適化する。また、処理部11は、出力層33から出力されたデータが示す推奨される治療薬又は推奨されない治療薬と、教師データが示す治療薬及び予後の組合せから特定される推奨される治療薬又は推奨されない治療薬とを比較し、出力層33から出力されるデータが正解値に近づくように、中間層32での演算処理に用いるパラメータを最適化する。当該パラメータは、例えばニューロン間の重み(結合係数)などである。パラメータの最適化の方法は特に限定されないが、例えば処理部11は最急降下法等を用いて各種パラメータの最適化を行う。
情報処理装置1は、教師データに含まれる多数の患者の教師データに基づいて上記の処理を繰り返し行うことによって、学習済の学習モデル3を得る。
<がん微小環境の構成細胞及び分泌因子>
がん微小環境について説明する。がん組織では、がん細胞に加えてがん関連線維芽細胞が増殖しており、ケモカインによって誘導された免疫細胞ががん組織周辺に集積ないし浸潤し、がん細胞及び免疫細胞が分泌する抗腫瘍因子とその抑制因子とがせめぎ合っている特殊ながん微小環境が形成されている。
図6は、がん微小環境を構成する細胞及び分泌因子を示す図表である。左欄はがん微小環境を構成する主な細胞、右欄は各細胞が分泌する分泌因子を示している。
腫瘍関連マクロファージ(TAM)は、サイトカインの一種である増殖因子(VEGF, FGF, HGF, PDGF, platelet-derived growth factor)や、その他のサイトカイン(IL-6, IL-8)を産生することでがん細胞の生育にとって良い微小環境を作る(Briswas S.K. and Mantovani A., Nat. Immunol., 11:889-896, 2010, de Visser. K. E. et al., Nat. Rev. Cancer, 6: 24-37, 2006)。
がん細胞は、TGF-β等を分泌し、繊維芽細胞を活性化してがん関連繊維芽細胞(CAF:Cancer-Associated Fibroblast)に分化させる。CAFはがん細胞との相互作用や、増殖因子(HGF, FGFs、VEGFs, TGF-β)や、サイトカイン(IL-11)を介したシグナル伝達を通して、がんの悪性化に寄与する(Polanska U.M. and Orimo A., J. Cell Physiol., 228: 1651-1657, 2013)。
また、がん細胞は、IL-10やプロスタグランジンを分泌し、腫瘍関連マクロファージ(TAM)を活性化させる。
がん治療を考える上で、他の臓器への転移を抑制することは重要である。がんの転移に先立って、原発巣の腫瘍から転移前ニッチ調節因子(S100A8, SAA3, CCL2, LOX等)が産生し、これらが予め転移先の肺などにCD11b+骨髄由来細胞を誘起して転移前ニッチを形成する。転移先臓器にがん細胞が到着した後は、転移後ニッチ調整因子(VCAM-1, TGF-β, PGE2, ペリオスチン等)が産生さて、がん細胞の生存に有利な転移後ニッチが形成される。
原発腫瘍のがん細胞が分泌するエクソソームが転移前ニッチ形成に関与し、がんの転移と増殖を亢進させることも報告されている(Peinado H. et al., Nat. Med., 18: 883-891, 2012)。
これらの転移ニッチ調整因子を解析因子に加えることで、転移する可能性や、適切な薬剤を選択できる可能性が考えられる。
制御性T細胞(Treg)は、免疫抑制に関与する細胞である。Tregを除去すると自己免疫疾患を誘導する一方、腫瘍をもった動物のTregを除去すると強い抗腫瘍効果がみられる。また、腫瘍組織にTregが高浸潤し、かつ細胞障害性T細胞の比率が低い微小環境の腫瘍では、予後が悪いことも報告されている(Shang B. et al., Scientific Reports 5, 15179, 2015)。
制御性B細胞(Breg)は、一般的にIL-10を産生するB細胞ととらえられている。Bregは、IL-10以外にもTGF-βやIL-35を介して、免疫抑制性の細胞機能を増加させたり、エフェクター細胞の機能を抑制することで、がん微小環境における免疫抑制に寄与している。
細胞障害性T細胞(CTL)は抗腫瘍免疫に重要な役割を担う。CTL表面にPD-1など免疫チェックポイント分子が発現していることで、がん細胞のPD-L1と反応し、免疫寛容状態になっている。抗PD-1抗体は、このCTLの免疫チェックポイント分子をマスクすることで、CTLのがん細胞への攻撃力を高めることができると考えられている。
MDSC(myeloid-derived suppressor cells)は免疫反応の抑制に対する重要な原因因子である。モデルマウスの実験で、MDSCsの腫瘍中の移動をCXCR2の欠損によって阻害した場合や、抗CXCR2抗体を投与した場合に、抗PD-1抗体による抗腫瘍効果が増強することが報告されている(Highfill SL. et al., Sci Transl Med. 2014;6:237-67)。
サイトカインは、細胞から分泌される生理活性物質をいう。サイトカインは低分子のタンパク質又は糖タンパク質で構成されている。サイトカインには、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン6(Il-6)、細胞増殖抑制の機能を有するインターフェロンγ(INF-γ)、アポトーシスを誘発する腫瘍壊死因子(TNF-α)、リンフォトキシン(TNF-β)等が含まれる。
ホルモンは、内分泌腺で生成され、血液中に分泌され、特定の器官に作用する物質であり、エストロゲン、プロゲステロン、アンドロゲン等が含まれる。
エクソソームは、細胞が分泌する小型(直径約30~100nm)の膜小胞をいう。その表面は細胞膜由来の脂質、タンパク質を含み、内部には核酸(マイクロRNA、メッセンジャーRNA、DNAなど)やタンパク質等の細胞内物質を含んでいる。
成長因子は、特定の細胞の増殖や分化を促進するタンパク質をいう。成長因子には、例えば肝細胞増殖因子(HGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)等が含まれる。
ケモカインは、遊走因子とも呼ばれ、サイトカインのうち、特に免疫細胞を特定の場所に呼び寄せるための物質をいう。ケモカインには、例えば、CXCL2、CCL17等が含まれる。
図7は、がん種、分泌因子、がん微小環境構成細胞等、治療薬の関係を示す概念図である。図7には、左側から右側へ、種々のがん種、因子A(分泌因子)、因子B(免疫細胞、がん細胞等)及び治療薬が図示されている。因子A及び因子Bはがん微小環境を構成する因子であり、がん微小環境タイプによって、その環境に存在する免疫細胞及び分泌因子が異なる。図7中、関連性のある因子Aと、因子Bとが実線で結ばれている。また関連性のある因子Bと、治療薬とが実線で結ばれている。なお、関連のあるがん種と、因子B又は治療薬とが破線で結ばれている。
図7から、分泌因子と、がん微小環境を構成する免疫細胞との間には相当の相関があることが分かる。また、がん微小環境に集積及び浸潤している各種免疫細胞及びがん細胞と、治療薬との間にも相関があることが分かる。このことから、分泌因子を解析することによって、がん微小環境タイプを層別化し、そのがん微小環境を形成している腫瘍に効果的な治療薬を特定することが可能であることが推察される。
本実施形態1に係る学習モデル3は、主に因子Aと、因子B及び治療薬との関係を機械学習により学習したものである。
<がん微小環境層別化処理>
図8は、実施形態1に係るがん微小環境モデルの層別化処理手順を示すフローチャートである。処理部11は、患者情報等入力画面6を表示し、入力部14を介して、患者の診断名、年齢、性別、既往症、投薬歴等の患者情報を取得する(ステップS31)。また、処理部11は、入力部14を介して当該患者の分泌因子量を取得する(ステップS32)。なお、ステップS32の処理を実行する処理部11は、がん微小環境に影響を与え得る患者の血中の分泌因子量を取得する取得部として機能する。
図9は、患者情報等入力画面6の一例を示す模式図である。患者情報等入力画面6は、診断名入力部61、年齢入力部62、性別入力部63、既往症入力部64、投薬歴入力部65及び分泌因子量入力部66を有する。
診断名入力部61は、患者の診断名、例えば国際疾病分類コード(例えば、ICD-10)を受け付ける。診断名は、例えば、非小細胞肺癌等のがん種を示す情報である。
年齢入力部62は、患者の年齢を受け付ける。
性別入力部63は、患者の性別を受け付ける。
既往症入力部64は、患者の既往歴を受け付ける。既往歴は、例えば国際疾病分類コード(例えば、ICD-10)で入力される。
投薬歴入力部65は、患者に投与中の治療薬を受け付ける。投薬歴入力部65は、それ以前の過去に投与した治療薬を受け付けてもよい。投薬歴入力部65は、患者の治療を開始してから現在に至るまでに当該患者に投与された全ての治療薬を受け付けてもよい。
分泌因子量入力部66は、例えば、サイトカイン、ホルモン、エクソソーム中のRNA又はDNA、成長因子、ケモカイン、セルフリーDNA(cfDNA)、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)、転移ニッチ調節因子、がん抗原に対する抗体、免疫チェックポイント分子等それぞれの測定値を、患者の分泌因子量として受け付ける。
ステップS31及びステップS32の処理を終えた処理部11は、取得した患者情報及び分泌因子量を学習モデル3の入力層31に入力し、演算することによって、患者のがん微小環境タイプ、当該患者に推奨される治療薬等、当該患者に推奨されない治療薬等を導出する(ステップS33)。
次いで、処理部11は、導出されたがん微小環境タイプに対応するモデル図データをモデル図DB5から読み出し(ステップS34)、解析結果画面7を生成し(ステップS35)、生成した解析結果画像を表示部15に表示させ(ステップS36)、処理を終える。
図10~図15は、解析結果画面7の一例を示す模式図である。解析結果画面7は、がん微小環境タイプ表示部71、モデル図表示部72、推奨治療薬表示部73及び非推奨治療薬表示部74を含む。ただし、推奨されない治療薬が無い場合、解析結果画面7は、非推奨治療薬表示部74を含まない。
がん微小環境タイプ表示部71は、ステップS33で導出されたがん微小環境タイプを示す文字列又は画像を表示する。がん微小環境タイプ表示部71は、例えば表示画面の左上に表示される。
モデル図表示部72は、ステップS34で読み出したモデル図データで表されるモデル図画像を表示する。モデル図表示部72は、例えばがん微小環境タイプ表示部71の下方に表示される。モデル図画像は、導出されたがん微小環境タイプに特徴的な免疫細胞の画像を含む。また、モデル画像はがん細胞の画像を含む。なお、導出されたがん微小環境タイプによっては、METタンパク質等の特徴的なタンパク質ががん細胞に発現している場合がある。この場合、モデル図画像は、がん微小環境タイプに特徴的ながん細胞、つまり細胞表面に発現したタンパク質を表した画像を含むがん細胞画像を含む。また、モデル画像は、分泌因子を示す画像を含む。
推奨治療薬表示部73は、ステップS33で導出された患者に推奨される治療薬等を示す文字列又は画像を表示する。推奨される治療薬が複数の薬剤の組合せである場合、推奨治療薬表示部73は、複数の薬剤の名称と、各薬剤の組合せであることを示す記号画像、例えば「+」画像を表示するとよい。また、推奨される治療薬が複数の薬剤を含み、順次投与すべき場合、推奨治療薬表示部73は、複数の薬剤の名称と、各薬剤の投与順序を示す記号画像、例えば矢印画像を表示するとよい。更に推奨治療薬表示部73は、当該治療薬が推奨されるものである確信度を表示する。確信度は、学習モデル3から出力される情報である。推奨治療薬表示部73は、例えば表示画面の右上に表示される。
非推奨治療薬表示部74は、ステップS33で導出された患者に推奨されない治療薬を示す文字列又は画像を含む。また非推奨治療薬表示部74は、当該治療薬が推奨されないものである確信度を表示する。更に非推奨治療薬表示部74は、推奨されない治療薬であることを明示する非推奨画像を表示する。非推奨画像は、例えば取り消し線の画像、バツ印画像(「X」状の画像)等であり、推奨されない治療薬に重畳して表示するとよい。非推奨治療薬表示部74は、例えば表示画面の右下に表示される。
以下、図10~図15の解析結果画面7が示す解析結果について簡単に説明する。
図10の解析結果画面7は、PD-1+eTregが優勢ながん微小環境タイプ「PD-1eTreg」を示す。解析結果画面7は、このがん微小環境タイプに推奨される治療薬及び治療方法として、まず抗CTLA-4抗体を投与し、次いで抗PD-1抗体及び抗CTLA-4抗体を投与することを提示している。また解析結果画面7は、このがん微小環境タイプに推奨されない治療薬として、抗PD-1抗体、単体の投与を提示している。
非特許文献2で説明したように、PD-1eTregは、PD-1eTregに比較して、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の活性を抑えるCTLA-4を高発現しており、PD-1eTreg よりも増殖能が高い。また、PD-1阻害によって、Tregが増殖し、腫瘍免疫反応に対する抑制能が増強されることが示されている。これらのことから、腫瘍組織において、PD-1eTregが存在する場合、抗PD-1抗体を投与すると、eTregの増殖能と免疫抑制能を増大させてしまい、HPDリスクが高くなると考えられる。このため、まずeTregに高発現しているCTLA-4を狙って、抗CTLA-4抗体などでeTregを不活化したのちに、抗PD-1抗体療法をした方が、効果的である可能性がある。
図11の解析結果画面7は、TAMとMDSCが優勢ながん微小環境タイプ「PD-1,CXCL2,TGF-β」を示す。解析結果画面7は、このがん微小環境タイプに推奨される治療薬及び治療方法として、抗PD-1抗体及び抗CXCR2抗体を併用して投与することを提示している。また解析結果画面7は、このがん微小環境タイプに二番目に推奨される治療薬として、抗PD-1抗体、抗CXCR2抗体及びTGF-β阻害剤を併用して投与することを提示している。
CXCL2は、CXCL2の受容体であるCXCR2によって調節されるシグナルにより、MDSCsを腫瘍部位に誘導することが報告されている(ZHANG H. ET AL., ONCOGENE. 2017;36:2095-2104)。モデルマウスの実験で、MDSCsの腫瘍中の移動をCXCR2の欠損によって阻害した場合や、抗CXCR2抗体を投与した場合に、抗PD-1抗体による抗腫瘍効果が増強することが報告されている(Highfill SL. et al., Sci Transl Med. 2014;6:237-67)。
図12の解析結果画面7は、PD-1TAMが優勢ながん微小環境タイプ「PD-1TAM」を示す。解析結果画面7は、このがん微小環境タイプに推奨される治療薬及び治療方法として、抗PD-1抗体を投与することを提示している。
腫瘍中のマクロファージ(TAM)にPD-1が高発現しており、がんが進行するほどPD-1陽性のM2型TAMが増殖することが示唆されている。腫瘍関連M2型マクロファージ(TAM)はM1型に比べ、PD-1を高発現している。TAMを除去した腫瘍では、抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体を投与しても腫瘍が減少しなかったことから、腫瘍関連マクロファージ(TAM)が、抗PD-1抗体及び抗PD-L1抗体医薬の作用点となっていると考えられる(Gordon S. R. et al., Nature. 2017 May 25; 545(7655):495-499)。
図13の解析結果画面7は、血中に分泌型PD-L1が存在するがん微小環境タイプ「分泌型PD-L1」を示す。解析結果画面7は、このがん微小環境タイプに推奨される治療薬及び治療方法として、抗PD-1抗体を投与することを提示している。また解析結果画面7は、このがん微小環境タイプに推奨されない治療薬として、抗PD-L1抗体の投与を提示している。
抗PD-L1抗体薬治療に対して耐性獲得となった症例では、PD-L1の膜貫通領域がRNAスプライシングにより欠損した分泌型PD-L1バリアントがある。分泌型PD-L1が存在する環境では、抗PD-L1抗体薬の治療耐性をする誘導することが報告されている(キョウ 博, 第23回日本がん免疫学会総会, p115, 2019)。分泌型PD-L1が存在する環境では、抗PD-1抗体が効果的である可能性がある。
図14の解析結果画面7は、CAFによりHGFが産生されているがん微小環境タイプ「HGF,CAF」を示す。解析結果画面7は、このがん微小環境タイプに推奨される治療薬及び治療方法として、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR―TKI)と、MET阻害剤を併用して投与することを提示している。また解析結果画面7は、このがん微小環境タイプに推奨される二番目の治療薬として、抗HER2抗体及びMET阻害剤を併用して投与することを提示している。
微小環境を構成するがん細胞や繊維芽細胞から、HGFが産生され、がん細胞に発現しているMETに結合することで、下流のPI3K/Akt経路を活性化し、EGFR-TKI耐性を誘導することが報告されている(Turke, A. B. et al., Cancer Cell, 17: 77-88, 2010)。EGFR-TKI耐性となる要因が、繊維芽細胞等から分泌されるHGFである患者群を層別化できれば、これらの患者群にはEGFR-TKI又は抗HER2抗体とHGF/MET阻害薬を併用することが考えられる。
図15の解析結果画面7は、がん進行期にTGF-βが存在するがん微小環境タイプ「TGF-β」を示す。解析結果画面7は、このがん微小環境タイプに推奨される治療薬及び治療方法として、TGF-阻害剤を投与することを提示している。
TGF-βは、早期のがんでは細胞増殖抑制能をもつ。一方、進行期では腫瘍促進的な効果を示し、例えば、がん細胞の上皮間葉移行(EMT:epitherial-mesenchymal transition)を誘導する。EMTにより間葉系細胞の形質を有したがん細胞は転移能が亢進し、薬剤耐性や幹細胞形質を獲得することが示唆されている(Tsai J. H. and Yang J.: Genes Dev., 27(20):2192-2206, 2013)。よって、TGF-β阻害剤は、がん細胞のEMTを阻害し、がんの転移・薬剤耐性獲得・がん幹細胞化を抑制できる可能性がある。しかし、TGF-βの作用は常に促進的であるわけではないので、適切な微小環境の時にTGF-β阻害剤を投与する必要がある。
図16は、治療後の患者情報等入力画面6例を示す模式図である。処理部11は、上記処理によって推奨された治療薬の投与後の患者情報及び分泌因子量を、図16に示すように、患者情報等入力画面6を介して受け付けるとよい。処理部11は、前回投与された治療薬を加味して、現在の患者のがん微小環境タイプ、推奨される治療薬等を導出することができる。
また、記憶部12は、ここで入力された患者情報及び分泌因子量を、教師データの元になる医療情報として蓄積し、処理部11が蓄積されたこの医療情報に基づいて、教師データを生成するように構成しても良い。
このように構成された実施形態1に係るコンピュータプログラム12a、学習モデル3生成方法及び情報処理装置1は、がん微小環境に影響を与え得る患者の生体試料に含まれる分泌因子量に基づいて、患者のがん微小環境を層別化することができる。
また、実施形態1に係るコンピュータプログラム12a等によれば、がん微小環境に応じた適切な治療法及び治療薬を出力することができる。
更に、実施形態1に係るコンピュータプログラム12a等によれば、がん微小環境に応じた不適切な治療法及び治療薬を出力することができる。
このように治療薬投与前の患者の医療情報、特に低侵襲な生体試料検査で得られる分泌因子量に基づいて、当該患者に推奨される又は推奨されない治療薬及び治療方法を提供することができるため、有害事象を減らし、高額な医療費を抑制することが可能となる。
また、本実施形態1に係るコンピュータプログラム12a等によれば、分泌因子量として、サイトカイン、成長因子、ケモカイン、ホルモン、エクソソーム中の核酸、セルフリーDNA、血中循環腫瘍DNA、転移ニッチ調整因子、がん抗原に対する抗体及び免疫チェックポイント分子等の種々の分泌因子量を学習モデル3により解析することにより、精度良く患者のがん微小環境タイプを特定し、適切な治療法及び治療方法を導出することができる。
更に、本実施形態1に係るコンピュータプログラム12a等によれば、分泌因子量に加え、患者情報、具体的には患者の診断名、年齢及び性別、既往症並びに投薬歴等を含む患者情報を学習モデル3により解析することにより、精度良く患者のがん微小環境タイプを特定し、適切な治療法及び治療方法を導出することができる。
更にまた、特定されたがん微小環境を、モデル図により視覚的に表示することによって、情報処理装置1の使用者に直観的な病態メカニズムの理解を促すことができる。
なお、実施形態1では、患者情報と現在の分泌因子量を学習モデル3に入力してがん微小環境タイプを導出する例を説明したが、患者の現在及び過去の分泌因子量が入力された場合に、がん微小環境タイプを示すデータが出力されるように学習モデル3を構成してもよい。言い換えると、患者の治療を開始してから現在に至るまでに、当該患者に投与された治療薬と、治療薬投与前後の患者の分泌因子量とを含む治療履歴データが学習モデル3に入力された場合に、がん微小環境タイプを示すデータが出力されるように学習モデル3を学習させてもよい。
また、本実施形態では、学習モデル3ががん微小環境タイプと、推奨及び非推奨の治療薬等を出力する例を説明したが、実施形態2で説明するようにがん微小環境タイプのみを出力するように構成しても良いし、推奨される治療薬等のみを出力するように構成してもよいし、推奨されない治療薬等のみを出力するように構成してもよい。
更に、本実施形態1では、がん微小環境タイプに関連し得る患者情報として、診断名、年齢、性別、既往症、投薬歴を例示したが、患者の遺伝子情報等、がん微小環境タイプに関連するその他の情報を患者情報として受け付けるように構成しても良い。
(実施形態2)
実施形態2に係るコンピュータプログラム12a、学習モデル203生成方法及び情報処理装置1は、学習モデル203及び治療薬の決定方法が実施形態1と異なるため、以下では主に上記相違点を説明する。その他の構成及び作用効果は実施形態1と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
図17は、実施形態2に係る層別化処理の方法を示す概念図である。実施形態2に係る学習モデル203は、実施形態1と同様の入力層31、中間層32及び出力層33を備える。入力層31に入力されるデータは、実施形態1と同様であり、出力層33から出力されるデータが異なる。実施形態2に係る学習モデル203は、がん微小環境タイプを示すデータを出力し、推奨又は非推奨の治療薬等を出力しない構成である。
実施形態2に係る記憶部12は治療薬テーブルを記憶している。
図18は、実施形態2に係る治療薬テーブルの構成例を示す概念図である。治療薬テーブルは、がん微小環境タイプと、当該がん微小環境タイプのがんに適した治療薬等とを対応付けたテーブルである。
処理部11は、機能部としての治療薬決定部8を備える。治療薬決定部8は、学習モデル203から出力される微小環境タイプを示すデータに基づいて、治療薬テーブルから、当該微小環境タイプに対応する治療薬等を読み出すことにより、患者に推奨される治療薬等及び推奨されない治療薬等を特定する。そして、処理部11は、実施形態1と同様、がん微小環境タイプ、モデル図、推奨及び非推奨の治療薬等の情報を含む解析結果画面7を表示部15に表示させる。
このように構成された実施形態2に係るコンピュータプログラム12a、学習モデル203生成方法及び情報処理装置1は、実施形態1と同様、がん微小環境に影響を与え得る患者の生体試料に含まれる分泌因子量に基づいて、患者のがん微小環境を層別化することができる。
なお、出力項目を低減することによって、学習モデル203を効率的に学習させることができる。
1 情報処理装置
11 処理部
12 記憶部
12a コンピュータプログラム
13 通信部
14 入力部
15 表示部
19 記録媒体
2 医療情報DBサーバ
3 学習モデル
31 入力層
32 中間層
33 出力層
4 教師DB
5 モデル図DB
6 患者情報等入力画面
61 診断名入力部
62 年齢入力部
63 性別入力部
64 既往症入力部
65 投薬歴入力部
66 分泌因子量入力部
7 解析結果画面
71 がん微小環境タイプ表示部
72 モデル図表示部
73 推奨治療薬表示部
74 非推奨治療薬表示部
8 治療薬決定部
N 通信ネットワーク

Claims (9)

  1. 患者から取得した生体試料に含まれる、がん微小環境に影響を与え得る分泌因子量であって、サイトカイン、成長因子、ケモカイン、ホルモン、エクソソーム中の核酸、セルフリーDNA、血中循環腫瘍DNA、転移ニッチ調整因子、がん抗原に対する抗体及び免疫チェックポイント分子からなる群から選択される分泌因子の量を含む前記分泌因子量を取得し、
    患者の前記分泌因子量が入力された場合、がん微小環境に係る情報又はがん微小環境に応じた治療薬に係る情報を出力するように学習された学習モデルに対して、取得した前記分泌因子量を入力することによってがん微小環境又は治療薬に係る情報を出力させる
    処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
  2. 前記学習モデルは、がん微小環境に係る情報を出力するように学習されており、
    前記学習モデルから出力されるがん微小環境に係る情報に基づいて、がん微小環境に応じた治療薬を決定する
    処理を前記コンピュータに実行させるための請求項1に記載のコンピュータプログラム。
  3. 前記学習モデルは、前記分泌因子量と、前記分泌因子量を除く患者情報とが入力された場合、がん微小環境に係る情報又はがん微小環境に応じた治療薬に係る情報を出力するように学習されており、
    前記患者情報を取得し、
    前記学習モデルに対して、取得した前記分泌因子量及び前記患者情報を入力することによってがん微小環境又は治療薬に係る情報を出力させる
    処理を前記コンピュータに実行させるための請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
  4. 前記患者情報は、患者の診断名、年齢及び性別、既往症並びに投薬歴の少なくとも一つを含む
    請求項3に記載のコンピュータプログラム。
  5. 前記学習モデルが出力するがん微小環境に係る情報に対応するモデル図を出力する
    処理を前記コンピュータに実行させるための請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
  6. 前記モデル図は、
    患者のがん微小環境に適した治療薬の情報と、不適な治療薬の情報とを含む
    請求項5に記載のコンピュータプログラム。
  7. 前記生体試料は患者から取得した血液である
    請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム
  8. がん微小環境に影響を与え得る、患者の生体試料に含まれる分泌因子量であって、サイトカイン、成長因子、ケモカイン、ホルモン、エクソソーム中の核酸、セルフリーDNA、血中循環腫瘍DNA、転移ニッチ調整因子、がん抗原に対する抗体及び免疫チェックポイント分子からなる群から選択される分泌因子の量を含む前記分泌因子量と、前記患者に投与した治療薬と、治療薬が投与された前記患者の予後とを含む教師データを用意し、
    学習モデルに前記教師データに含まれる前記分泌因子量を入力し、前記学習モデルから前記教師データに含まれる治療薬及び予後に対応するがん微小環境に係る情報又はがん微小環境に応じた治療薬に係る情報が出力されるように、前記学習モデルを機械学習させる
    学習モデル生成方法。
  9. がん微小環p境に影響を与え得る、患者の生体試料に含まれる分泌因子量であって、サイトカイン、成長因子、ケモカイン、ホルモン、エクソソーム中の核酸、セルフリーDNA、血中循環腫瘍DNA、転移ニッチ調整因子、がん抗原に対する抗体及び免疫チェックポイント分子からなる群から選択される分泌因子の量を含む前記分泌因子量を取得する取得部と、
    前記分泌因子量が入力された場合、がん微小環境に係る情報又はがん微小環境に応じた治療薬に係る情報を出力するように学習された学習モデルに対して、取得した前記分泌因子量を入力することによってがん微小環境又は治療薬に係る情報を出力させる処理部と
    を備える情報処理装置。
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