JP7417919B2 - 生体信号処理装置 - Google Patents

生体信号処理装置 Download PDF

Info

Publication number
JP7417919B2
JP7417919B2 JP2019164428A JP2019164428A JP7417919B2 JP 7417919 B2 JP7417919 B2 JP 7417919B2 JP 2019164428 A JP2019164428 A JP 2019164428A JP 2019164428 A JP2019164428 A JP 2019164428A JP 7417919 B2 JP7417919 B2 JP 7417919B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
temperature
heat
heat flow
amount
value
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019164428A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021040872A (ja
Inventor
昭生 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
TECHNO COMMONS CO., LTD.
Original Assignee
TECHNO COMMONS CO., LTD.
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by TECHNO COMMONS CO., LTD. filed Critical TECHNO COMMONS CO., LTD.
Priority to JP2019164428A priority Critical patent/JP7417919B2/ja
Publication of JP2021040872A publication Critical patent/JP2021040872A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7417919B2 publication Critical patent/JP7417919B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Measuring And Recording Apparatus For Diagnosis (AREA)

Description

本発明は生体信号処理方法およびその装置に関し、さらに詳しく言えば、熱流積分による深部温度の計測技術に関するものである。
深部温度(深部体温)を測る技術として、特許文献1には、ウォーミングアップ中の深部体温と、皮膚温と、心拍と、環境データとから個人差パラメータや遅延パラメータを求めて深部体温を推定することが記載されている。
特許文献2には、DHF(Dual Heat Flux) センサーよりなる2つの温度計を備え、その温度計を中央と周辺に配置して、横方向の熱流(Heat Flux)の影響をなくし、環境温度依存性を低減する技術が記載されている。
DHFセンサーで、水平方向の温度分布を水平方向に並べた温度計で補正する構成が記載されている。
特開2017-217224号公報 国際公開2011/012386号公報 特開2015-064369号公報
上記に挙げた従来技術によると、個人差パラメータや遅延パラメータをあらかじめ取得する必要がある。パラメータの取得に伴い、ウォーミングアップを必要としたり、衣服に変化がないことを前提にする等、制約が多い。また、DHFセンサーにおいては、環境温度依存性を補正するため、複雑な構成を採る必要がある(SHF(Single Heat Flux)センサーでも同じ)、等の問題がある。
そこで、本発明の課題は、一般的なDHFセンサーやSHFセンサー(以下、HFセンサー)に比べて、環境温度の変化による偽信号の影響を小さくし得る生体信号処理装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明は次の好ましいいくつかの態様を備えている。まず、第1の態様として、生体の体表面に装着して熱の流出入を計測する熱流計測部と、安静時の熱流を記憶する熱流記憶部と、上記熱流計測部における熱流値から上記熱流記憶部の値を減算する熱流減算部と、上記熱流減算部における減算結果の積分を行う熱流積分部、とを備えていることを特徴としている。
の態様は、上記第2の態様において、上記生体の熱容量と熱放散面積とに基づいて係数を算定する係数算定部と、上記熱流積分部によって計算された熱量と上記係数算定部で計算された係数とを乗算する熱量乗算部と、をさらに備えることを特徴としている。
の態様は、上記第3の態様において、深部温度を計測する深部温度計測部と、上記深部温度計測部にて計測された深部温度と上記熱量乗算部での乗算結果とを加算する温度・熱量加算部と、をさらに備えることを特徴としている。
本発明によれば、一般的なHFセンサーに比べて、環境温度の変化による偽信号の影響を小さくすることができる。また、一般的なHFセンサーに比べて、より速く環境が生体に与える影響を示すことができる。
本発明の第1実施形態に係る生体信号処理装置の構成を示すブロック図。 (a)熱流測定部の構成を概略的に示す模式図、(b)熱流測定部の別の構成を概略的に示す示す模式図。 (a)~(c)上記第1実施形態の動作を説明するためのグラフ。 (a)~(c)上記第1実施形態の動作を説明するためのグラフ。 上記第1実施形態と従来技術を対比した模式図。 本発明の第2実施形態に係る生体信号処理装置の構成を示すブロック図。 本発明の第3実施形態に係る生体信号処理装置の構成を示すブロック図。 本発明の第4実施形態に係る生体信号処理装置の構成を示すブロック図。 本発明の第5実施形態に係る生体信号処理装置の構成を示すブロック図。 上記第5実施形態で補正係数を求める手順を示す説明図。 本発明の第6実施形態に係る生体信号処理装置の構成を示すブロック図。 上記第6実施形態の動作を説明するためのグラフ。 本発明の第7実施形態に係る生体信号処理装置の構成を示すブロック図。 (a),(b)上記第7実施形態の動作を説明するためのグラフ。 本発明の効果を検証するために行った実験結果を示す第1のグラフ。 本発明の効果を検証するために行った実験結果を示す第2のグラフ。 本発明の効果を検証するために行った実験結果を示す第3のグラフ。 (a)~(c)本発明の生体信号処理装置の装着例を示す模式図。
次に、図面(図1~図18)を参照して、本発明のいくつかの実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る生体信号処理装置(以下、本装置と言うことがある)10は、基本的な構成として、体表面に装着して熱の流出入を計測する熱流計測部110と、安静時の熱流を記憶する熱流記憶部120と、熱流計測部110にて計測された熱流値から熱流記憶部120に記録された安静時の熱量値を減算する熱流減算部130と、熱流減算部130により算出された減算値を積分する熱流積分部140とを備えている。
熱流計測部110は、生体と環境との間で授受される熱の流れを計測する。生体の深部温度は通常37℃前後であるが、環境の状況に応じてそをれ以下の場合と、それ以上の場合があり、熱の流れ方向もそれによって逆転する。多くの場合、安静時では、体温より低い環境下に身を置いており、熱は生体深部から環境に向かって流れ安定している。
熱流記憶部120は、熱流計測部110にて計測される熱流の中から安静時(安定時)の熱流を記憶する。本装置10を体表面に装着してから最初の10分から30分程度は、本装置10の周辺温度や熱流が過渡状態にあることが多いことから、熱流記憶部120は、安定したところの熱流を記憶する。
熱流がある時間(例えば、数分~数十分)ほぼ一定でその平らな部分を平均化して記憶する熱量としてもよい。装着開始時のみならず、一日の中で休憩のたびに熱流を記憶して平均化することもできる。
熱流減算部130は、熱流計測部110にて計測される熱流値から熱流記憶部120に記憶された安静時の熱量値を減算を減算する。すなわち、安静時の熱量値からの差分を抽出する。
熱流積分部140は、熱流減算部130により算出される減算値を積分する。熱流の時間積分は熱量、つまりはエネルギーを計算することになる。安静時からの差分熱量の積分を行うことで、安静時からのエネルギーの流出入を抽出することができる。
恒温動物は、熱産生と熱放散で温度(体温)を維持している。熱産生には、基礎代謝や食事誘発性熱産生、身体活動による代謝がある。熱放散には、対流、伝導、放射による乾性熱放散と、汗等の水分による湿性熱放散がある。ある範囲の環境温度や衣服内温度では、これらのバランスがとられ深部体温の恒常性が維持されるが、その範囲外(異常な低温や高温)になると恒常性から逸脱してくる。
本実施形態による構成は、安静時からの熱流のアンバランスを測定する。生体には比熱と質量に基づく有限の熱量があり、継続的な熱流のアンバランスは深部体温の増減を引き起こす。
熱流の計測は、電気における電流の計測と等価であり、キャパシタからの電流の増減の観測によって電圧変化が分かるように、熱流の観測によって深部体温の増減の計測や予測が可能となる。
図2を参照して、熱流計測部110の構成の2例について説明する。まず、図2(a)の第1例では、熱流を計測するため、2つの温度計111,112と、熱分離構造体113とが用いられる。熱分離構造体113は断熱材で体表面に置かれる。
一方の第1温度計111は熱分離構造体113の体表面側に配置され、他方の第2温度計112は熱分離構造体113の反体表面側である例えば上面側に配置される。温度計111,112は位置的に重なるように上下に配置される。熱分離構造体113は、温度計111,112の間に有意な温度差を生じさせる役割を担っている。
熱流計測部110で測定される熱流Ithは、第1温度計111の指示値をT1,第2温度計112の指示値をT2,温度計111,112の間の熱抵抗をRsensとして、次式(1)で表される。
Ith=(T2-T1)/Rsens…(1)
次に、図2(b)の第2例では、2つの温度計111,112の代わりに1つの測温ユニット114が用いられる。測温ユニット114は温度計+放射温度計の機能を備え、自らの温度を測るとともに、放射温度計により離れた箇所の温度も測ることができる。
測温ユニット114は、熱分離構造体113の上面側の例えば中央に配置され、熱分離構造体113の中央部分に赤外線を透過する特性を持たせる。これにより、一つの測温ユニット114にて体表面側の温度も測定することができ、上記式(1)と同様にして熱流Ithを測定することができる。
次に、図3(a)~(c)により、上記のようにして測定される2つの温度T1,T2から熱流Ithを求める例を説明する。この例は、被験者が環境温度Ta=25℃で60分間安静にし、その後、Ta=35℃の環境下に60分間滞在し、その後、Ta=25℃の環境に戻った場合の例である。
図3(a)では、被験者の腹部に取り付けた熱流計測部110からの2つの温度計指示値T1,T2をプロットしている。あらかじめ温度計111,112の間の熱抵抗Rsensを測っておくことにより、熱流Ithを図3(b)のように求めることができる。
なお、本明細書では、環境から生体に流れる方向の熱流Ithをプラス(+Ith)と定義している。熱流計測部110は、生データとしての温度T1,T2を出力するものであってもよいし(この場合、熱流Ithは他の場所で計算)、計算機能を備え上記式(1)により算出される熱流Ithを出力するものでもよい。
図示しないが、あらかじめ温度計111,112の間の熱抵抗Rsensを測定する方法としては、ホットプレート上に熱コンダクタンスが既知の材料m(例えば、シリコンゴム)を載せ、さらにその材料mの上に熱流計測部110を置いてホットプレートを加熱する方法がある。
ホットプレートの温度Tpと、温度T1,T2、材料mの熱コンダクタンスkおよび材料mの厚さdから、温度計111,112の間の熱抵抗Rsensは次式(2)により求めることができ、熱抵抗Rsensは例えば0.1W-・mあたりの値をとる。
Rsens={(Tp-T1)/(T1-T2)}×d/k…(2)
熱流記憶部120は、安静期間の例えば最後の数分から数十分間の熱流Ithの平均値を計算し、この値を記憶する(図3(b)では、この安静期間の熱流の値を「Ith0」としている)。通常、熱流センサでは装着後熱流が安定するまでに数十分かかるため、このような時間をおくことはセンサの安定と被験者を安静にさせる両方の意味がある。
何故なら、センサが持つ熱時定数により、センサには安定するまでの時間がかかることと、被験者が動いてしまうと、身体活動による熱産生が生じて体温や熱流が変化して、安静期間の熱流の基準点Ith0を求めるのが難しくなるからである。
熱流減算部130は、熱流Ithから安静期間の熱流Ith0を減算する。図3(b)にはその値(Ith-Ith0)がΔIthとして鎖線で示されている。
熱流積分部140は、減算値ΔIthの時間積分を行う(図3(c)のIntegrated ΔIth)。熱流積分値として、この場合、約66kJ/m(約16kcal/m)の値を得ている。これに人体の表面積をかけた値が熱量のアンバランスとなる。この熱量と人体の質量に応じて、深部の温度上昇もしくは温度低下が起こる。このように、減算値ΔIthの時間積分値(Integrated ΔIth)により、環境が生体に及ぼす影響を定量化することができる。
ちなみに、環境温度が異常に高い場合、恒温動物でも恒常性を外れて深部体温の上昇が起こる。また、環境温度が異常に低くて着衣が十分でないと、恒常性を外れて深部体温の低下が起こる。
本発明によれば、第1の効果として、一般的なSHFセンサやDHFセンサ(以下、HFセンサ)に比べ、環境温度の変化による偽信号の影響を小さくすることができる。図3(a)において、Tcは一般的なHFセンサにおいて計算される深部体温の計算値で、次式(3)によって計算される(式中、Rbodyは皮下の熱抵抗)。
Tc=T1+(T1-T2)×Rbody/Rsens…式(3)
図3(a)の矢印(2箇所)はTc計算値の偽信号であり、環境温度の大きな変化時に乱れる場合が多い。これに対し、図3(c)に示す熱流積分値(減算値ΔIthの時間積分値(Integrated ΔIth))は、この影響が少ない。
また、本発明によれば、第2の効果として、一般的なHFセンサに比べ、より早く環境が生体に与える影響を示すことができる。図3(a)において、Tc計算値は、例えば環境35℃の部屋に入室後30分程度が経過してからやっと上昇し始めるのに対し、熱流積分値Integrated ΔIthは、図3(c)に示すように、入室後速やかに反応する。なお、低温環境では、熱量積分値はマイナスとなり、低体温に対する指標となる。
本発明による上記第1および第2の効果の物理的なメカニズムを明確にするために、次のようなシミュレーションを行った。
図4に示す熱的な等価回路において、環境温度Taを30分間パルス状に20℃変化させた。ここで、Raは環境から本装置10の温度計112(図2参照)に至るまでの熱抵抗、C1,C2はそれぞれT1,T2にぶら下がる熱容量、CやRは皮下の熱容量や熱抵抗、Ccoreは深部の熱容量、Tcは深部温度である。
図4(a)において、Tc,calcは上記式(3)により計算されたTc計算値で、つまりは一般的なHFセンサの指示値である。Tcはシミュレーションにより得られた深部体温であり、実際の深部体温の動きに相当する。T1やT2の周辺に存在するCやR成分によって、Tc,calcには大きな変動が生じる。この現象は皮下厚が厚い場合、つまりCやRが大きい場合により顕著になる。
図4(b)は、Tc,calcに10分程度の時定数フィルタをかけた場合である。偽信号は減少して、真の深部体温であるTcに近くなる。Tc,calcもTcも応答は遅く、30分の高温環境の最後の段階で、深部温度の最終上限値の約半分程度までしか上がっていない。
これに対して、熱流積分値(図3(c)のIntegrated ΔIth)は、高温環境の最後の段階でほぼ100%近くまでに達している。例えば、50%や80%の段階でアラームを出すことにより、深部が高温に達することを事前に避けることができる。
以上をまとめると、電気と熱とのアナロジーを絡めて、以下のことが言える。
図5を参照して、一般的な上記式(3)によるTc計算では、電気におけるCに対する変位電流Cdv/dtにより偽信号を発生させる。この現象は皮下のCRが大きいほど(抵抗成分に対して容量性リアクタンス成分が小さいほど)顕著になる。
また、Rbodyが大きくなるとともに、T1やT2ノードのインピーダンスが高くなり、外乱であるTaの変化の影響を受けやすくなる。さらに交流理論において電圧の位相は電流に対して90度遅れるように、電圧=温度の応答も遅れる。
一方で本発明の熱流測定は、変位電流を含め体内に注入される熱量を測定するため、偽信号が少ない。さらに積分を行うことにより、熱流を熱量(エネルギー)に変換するとともに、ノイズ低減効果が生じる。さらに上記交流理論により、温度測定より応答速度が速いという効果がある。
本装置10の演算に関わる演算装置や記憶装置、通信装置、電源等は、熱分離構造体113の上やその周辺、生体上の離れた位置、あるいは誘導結合等の無線通信手段を用いて生体から離れた位置や、任意の場所等におくことができる。
熱流を計測する体の部位として、目的に応じて任意の場所を選ぶことができるが、熱中症や低体温症等でダメージの影響が深刻な内蔵を監視する意味では、腹部や頭部が選択できる。本装置10を複数箇所に装着することも当然可能であり、上記以外に四肢等に装着することで、凍傷の予防等を目的にした計測を行うことができる。
また、腹部と四肢の深部温度の相関が得られている場合等では、四肢に装着することでも、内蔵に対する保護を目的とした計測を行うことができる。
次に、図6により、第2実施形態に係る生体信号処理装置11について説明する。この生体信号処理装置11では、上記第1実施形態に係る生体信号処理装置10の構成をすべて備えるほかに、係数算定部151と熱量乗算部152とをさらに備える。
係数算定部151は、生体の熱容量と熱放散面積に基づいて係数を算定する。熱量乗算部152は、熱流積算部140によって計算された熱量(熱流積分値)と係数算定部151で計算された係数とを乗算する。
上記第1実施形態で説明した熱流Ithは、例えば単位面積当たりのワット数、熱流積分値は単位面積当たりのジュール数もしくはカロリー数となる。これを熱量に直すには面積を乗算する必要がある。
通常の成人男性における皮膚表面積は1.5~2m(平方メートル)であり、デュポア式、新谷式、藤本式等を用いて身長や体重から体表面積を計算することができる。また、胴回りの計測や座高、頭の高さの計測等から、体幹の表面積を割り出すこともできる。
さらに、熱量から温度変化を計算するには、熱容量Cthを求める必要がある。熱容量Cthは質量と比熱から計算されるが、体のどの部位を前提にすべきか明確でない。例えば、腹部での測定を例にとると、皮膚や皮下脂肪、筋肉、内臓、血管、骨格等分けられるが、どこからどこまでが深部なのか明確でない。
ちなみに、水の熱容量は1cal/(gK)であり、水1kgを1℃上げるのに1kcalの熱量を必要とする。熱容量が大きいほど、同じ熱量に対して温度が上がりにくい。熱容量は比熱と質量によって決まる。電気回路の集中定数であれば、容量Cの位置や大きさは明確であるが、生体の熱量Cthは分布定数的に連続的に存在するため扱いが難しい。
本発明者によるZero Heat FluxセンサやDHF,SHFセンサを用いてる実験や、実際に直腸に温度プローブを入れた実験から、皮下脂肪等で決まる皮下厚と、それによって決まる皮下の熱抵抗(Rbody)が定義でき、その先にある程度の大きさの熱容量があることが推定される。皮下脂肪厚計とRbodyとの関係もある程度の精度で相関がある。
これは丁度、分布定数的に存在するCRを、等価的に集中定数で置き換えたことに相当し、ある誤差の範囲内において熱容量Cthと皮下の熱抵抗Rbodyを定義できる。
上記熱容量Cthの算定方法として、例えば腹部装着の場合を例にとると、成人の体幹重量は体重の60~80%程度で、そのうち除脂肪量(脂肪を除いた量)は80%程度となる。体重50kgの成人の場合、体幹重量は例えば35kg、そのうち除脂肪量は28kgとなる。人体の比熱は0.8kcal/(g・K)程度であり、熱容量Cthは例えば22kcal/K程度となる。
上記第1実施形態において、35℃の環境下に60分間居た例では約66kJ/mの熱流積分値となり、体幹の長さを70cm,胴回りを100cm、つまりは体幹表面積を約0.7mとすると、熱量Qは約46kJ(11kcal)となる。これと先に求めた熱容量Cthから、温度上昇ΔTは、ΔT=Q/Cth=0.5℃となる。
係数算定部151は、例えば被験者の胴回りLtと、体幹高さHt(例えば座高-頭の高さ)を入力として、体幹表面積At(=Lt×Ht)を計算する。さらに体重mを入力として、除脂肪係数lean(例えば80%)、体幹重量対体重比trunk(例えば70%)、比熱c(例えば0.8kcal/(g・K))を使って、
熱容量Cth=m×lean×trunk×c
を計算する。
熱量乗算部152は、例えば体幹表面積Atと熱容量Cth、さらには補正係数αと、熱流積分値Integrated Ithを用いて、
温度変化ΔT=α×Integrated ΔIth×At/Cth
を計算する。
なお、上記と等価なパラメータを入力として熱流積分値Integrated ΔIthを温度に変換することは可能である(例えば、体幹の代わりに体全体、もしくは体の一部を使って計算)。また、頭部に装着して、頭部に関して同じ計算をすることもできる。
上記熱放散に関わる体表面積や熱容量の計算を行っても、実際の深部温度の変化に合わせ込むには、学習等による補正が必要になる場合がある(例えば上記補正係数αを学習により進化させる)。ただし、マルチパラメータを使う方法に対して未知数のパラメータははるかに少ない。パラメータの合わせ込みに伴う発振や振動のリスクが低下して不安定性の低下が期待できる。
次に、図7により、第3実施形態に係る生体信号処理装置12について説明する。この生体信号処理装置12では、上記第2実施形態に係る生体信号処理装置11の構成をすべて備えるほかに、深部温度を計測する深部温度計測部161と、計測された深部温度と熱量乗算部152での乗算結果である熱量を加算する温度・熱量加算部162とをさらに備える。
深部温度計測部161には、例えば上記第1実施形態における図2(a)で示した2つの温度計111,112を含む発熱を伴わない受動的なDHFセンサやSHFセンサを用いたり、ヒータを使用するZHFセンサを用いることができる。さらには、口から飲み込んで通過する胃や腸の温度を測るカプセル型体温計を使用することもできる。
温度・熱量加算部162は、深部温度計測部161にて計測された深部温度と、熱量乗算部152の乗算結果(温度変化ΔT)とを加算する。上記第2実施形態における熱量乗算部152で計算された温度変化ΔTは、あくまでも相対変化で絶対値が分からないのと、熱放散のアンバランスに基づく温度変化であり、熱産生による深部体温変化が含まれていない。
また、深部温度計測部161による計測結果には、前述したように、環境温度Taが変化したときに本質的に温度変化が遅れる問題や、偽信号や環境温度Taの変化により擾乱を受ける問題、その対策に用いるフィルタによってさらに遅れが生じる問題がある。
例えば、40℃以上の環境に1時間居た場合、30分経過の段階では深部温度のみではほとんど反応しない場合がある(特に皮下厚が厚い場合)。これに対し、温度・熱量加算部162での加算結果は、30分経過の段階で全体の約半分の熱履歴を受けたことを示すことができる。
例えば、1時間で深部体温が37℃から39℃に2℃上がった場合、温度・熱量加算部162加算結果は、30分経過の段階で約50%の熱負荷を受けたことを示せる。このままあと30分居ると深部体温が2℃上がることを事前に警告することができる。初期の深部温度が高ければ、それに応じた警告を出すことができる。
これは丁度、海岸にいて遠くの高波を観測することに似ている。高波のエネルギーを減衰させるものがなければ、確実に所定時間後に高波は到来する。現時点の水位が満潮であれば、被害をさらに増大させることになる。
別の表現をとれば、点在する容量性リアクタンスの充放電において、電流の位相は電圧の位相よりも90度手前にくる。このことは、90度の分だけ早く検知することができることを意味する。
深部温度計測部161と熱流計測部110は、それぞれ別の場所に複数配置することは可能である。深部温度計測部161を複数箇所に配置する意味は、生体の深部温度が頭部や腹部、さらには腹部においても部位によって異なるため、それぞれの箇所の深部温度を測る意味がある。
例えば、頭部は生体の中で温度変化しないように守られている部位であり、腹部が温度上昇しても頭部は温度上昇しない場合があることが報告されている。
熱流計測部110を複数箇所に配置する意味は、熱放散の測定精度を上げる点にある。皮下脂肪や汗腺の密度、さらには着衣等が人体の部位によって異なることに起因して、熱放散量も部位によって異なるため、期待する精度に応じて配置する数を増やすことが好ましい。
次に、図8により、第4実施形態に係る生体信号処理装置13について説明する。この生体信号処理装置13では、上記第3実施形態に係る生体信号処理装置12における深部温度計測部161の深部温度計測機能と熱流計測部110の熱流計測機能とを併せ持つ深部温度・熱流計測部171を備える。他の構成は上記第3実施形態に係る生体信号処理装置12と同じであってよい。
このように、第4実施形態に係る生体信号処理装置13では、深部温度計測機能と熱流計測機能を深部温度・熱流計測部171としてユニット化することにより構成を簡略化している。この深部温度・熱流計測部171を複数配置することにより、計測精度を上げることができる。
次に、図9により、第5実施形態に係る生体信号処理装置14について説明する。この第5実施形態に係る生体信号処理装置14では、上記第4実施形態に係る生体信号処理装置13における温度・熱量加算部162の代わりに温度・熱量の比較・加算部172を備える。他の構成は上記第4実施形態に係る生体信号処理装置13と同じであってよい。
温度・熱量の比較・加算部172は、深部温度・熱流計測部171で計測された深部温度と、熱量乗算部152で求められた熱量を加算するとともに、深部温度と熱量の比較を行う。深部温度と熱量の加算は、上記第3実施形態と同様の処理であってよい。
深部温度と熱量の比較は、熱流計測から計算される温度上昇と、温度計測から計算される温度上昇との比較を行う。これは前述した電流測定と電圧測定の比較と等価であり、位相が速い熱流(電流)測定からの温度変化量ΔT1と、位相が遅い温度(電圧)測定からの温度変化量ΔT2との比較になる。
熱流測定からの温度計算には、前述したように体表面積に関わる不確定性と、熱容量に関わる不確定性とがあるため、補正係数αを定義した。例えば、上記温度変化量ΔT1,ΔT2の比較を行ったうえで、補正係数αの修正を行うことができる。
温度変化量ΔT2には遅れがあるものの、移動平均をかければ比較的精度は高いため、仮の係数から算出した温度変化量ΔT1を温度変化量ΔT2に合わせ込むために補正係数αを用いる。例えば、最初はα=1として、順次修正を加えていく使い方ができる。
比較の方法の一つとして、例えば熱流計算からの温度変化量ΔT1のピークと、温度計算からの温度変化量ΔT2のピークを用いることができる。
前者の熱流計算からの温度変化量ΔT1は、上記第1,第2実施形態を例にとると、熱流積分値として約66kJ/m(約16kcal/m)、ΔT=0.5℃の温度変化が安静時とピークとの差分として生じている。
後者の温度計算からの温度変化量ΔT2は、約36.5℃の安静時深部体温と、約38℃のピーク時深部体温との差であるΔT=1.5℃の温度変化が起きている。この場合、補正係数αとして両者の比の3をとることができる(身体活動による発熱を考慮する場合については後述する)。
比較の別の方法として、ある時間内の変化量(安静時との差分)の実効値同士を比較する方法がある。例えば、熱流計測からの実効値RMS1と、温度計測からの実効値RMS2から、α=RMS2/RMS1で補正係数αを求めることができる。実効値はある時系列x(t)の時間T内の変化に対して∫x(t)dt/Tの平方根で表されるため、ある区間内の変化を平均化する効果が期待できる。
さらに別の方法として、図10のような整合フィルタ(相互相関関数)を用いることもできる。熱流計算からの温度変化量(安静時との差分)ΔT1を一定量遅延させて、温度計算からの温度変化量(安静時との差分)ΔT2と乗算する。そして、一定期間積分を行った後、正規化処理を行う。例えば、温度変化量ΔT1,ΔT2の2つの時系列をx(t),y(t)とすると、上記一定期間の積分はΣx(t+d)y(t)で表現される。dは上記の遅延量である。
正規化処理は、上記一定期間の積分値Σx(t+d)y(t)を例えば熱流計算からの温度変化量ΔT1の二乗和平方根で除算する。遅延量が未知の場合、上記遅延量dをある時間刻みで変化させながらΣx(t+d)y(t)の繰り返し計算を行い、Σx(t+d)y(t)が最大となる遅延量を見つければよい。
前述したように、温度変化量ΔT1は応答が速くノイズの影響を受けにくいが初期の段階では体表面積や熱容量に関わる不確定性がある。これに対して、温度変化量ΔT2は遅れがあるものの、移動平均をかければ、比較的精度は高い。温度変化量ΔT1を温度変化量ΔT2に合わせ込む補正係数αを導入し、繰り返し合わせ込みを行うことで、応答が速い温度変化量ΔT1の効果を残しながら、ΔT1の精度を上げる使い方ができる。
例えば、測定初期の段階では、被験者の身長や体重その他から仮決めした補正係数を用い、環境温度が変化するたびに補正係数の修正を行い、徐々に精度を向上させる運用を行うことができる。これらは、先んじて現れる熱流計測の結果を、遅れてやってくる温度計測の結果で補正していくことと等価である。
次に、図11により、第6実施形態に係る生体信号処理装置15について説明する。この第6実施形態に係る生体信号処理装置15は、上記第5実施形態に係る生体信号処理装置14が備えているすべての構成の他に、身体活動量計測部181と、熱量算定部182と、ΔT算定部183をさらに備える。
身体活動量計測部181は身体活動量の測定を行う。熱量算定部182は身体活動量計測部181で測定された測定値を入力として熱量を算定する。ΔT算定部183は熱量算定部182からの算定値を入力として温度変化ΔTを算定する。ΔT算定部183で算定された温度変化ΔTは、温度・熱量の比較・加算部172に送られる。
身体活動量計測部181は、身体活動による熱産生を求める目的で計測を行う。運動や作業、歩行や走行、その他一般生活においても活動による熱産生は生ずる。これらを計測する方法として、心拍数や加速度、角加速度、手足に加わる力や、それらを組み合わせたもの等を用いることができる。
例えば、心拍数と加速度を組み合わせることによって、それぞれが持つ問題を補うことができる。心拍数を用いる方法として、心拍数と酸素消費量VO2との関係から身体活動量を計測する方法がある。加速度を用いる方法としては、加速度を何段階かのレベルに分け、それぞれに身体活動量を定義する方法がある。
熱量算定部182は、身体活動量計測部181で計測された身体活動量を受けて熱産生となる熱量を求める。例えば、心拍数と加速度を用いる場合、心拍数の誤差の要因として精神負荷による心拍数上昇があるため、心拍の揺らぎから緊張度を算定し(例えば、高周波成分HFと低周波成分LFの比(LF/HF))、緊張度が高い部分の確からしさを落とす。あるいは、心電波ECGの取得における信号対ノイズ比SNRに応じて、SNRが低い場合は確からしさを落とす。
例えば、熱産生となる熱量を100%求められる場合は確からしさとして1、全く求められない場合は確からしさとして0とする。精神的緊張による心拍数の増大は120bpmあたりまでに収まる場合が多く、それを超える心拍数はハードな運動による場合が多い。この場合、単純に120bpmを境に、それ以上を確からしさとして1、それ未満を0とすることもできる。
加速度の誤差要因として、坂の昇降や手足に負荷がかかる運動があるため、上記緊張度やSNRの裏返しとして、心拍数の確からしさが高い場合、加速度の確からしさを下げることができる。
熱量算定部182は、確からしさに応じて重み付けを行い、複数の活動量計測値の加算を行うことができる。例えば、心拍による熱量計算Qhrと、その確からしさ(信頼度)Rhr、加速度による熱量計算Qaccとその確からしさRaccから、重み付け合成値Q=Qhr・Rhr+Qacc・Raccを計算することができる。
例えば前述の例で言えば、心拍数が120bpmを超える場合、Rhrを1としてRaccを0とする。心拍数が120bpm以下の場合、Rhrを0としてRaccを1とすることができる。これはRhrの精神的緊張による問題と、Raccにおける特定の体の部位の運動が検知できない問題を対策する上で意味がある。より細かい確からしさの設定をすることは当然可能である。
ΔT算定部183は、上記熱量計算結果Qを受けて温度上昇ΔTを計算する。温度上昇ΔTは、前述した熱放散の例と同じように、熱容量Cthを使ってΔT=β・Q/Ctで計算することができる。βは補正係数である。
熱容量Cthとして、体全体や体幹の熱容量を使うことができる。補正係数βは実測との合わせ込みであり、前述したように、初めての測定である場合は、体重や身長等から求められる典型的な標準値を用いることができる。測定を重ねるごとに修正を加えることで精度が向上する。
図12のグラフに、エアロバイク(登録商標)運動を30分行った場合のHFセンサによる測定値(腹部装着)Tcと、直腸温の測定値Trectの典型的なデータを示す。
Tcはエアロバイク(登録商標)終了時刻あたりか、そのやや後にピークがくる場合が多い。これに対して、Trectは体重や体格、皮下厚等によって差があるが、運動終了後、数分から数十分後にピークがくる。直腸は骨盤等で保護され、一般的に温まりにくく冷めにくい部位とされており、Trectの遅れはそれに起因すると考えられる。Trectは一般的に腹部より0.3~0.5℃程度高い。
心拍数HRは、安静時60~80bpmであり、運動期間中上昇する。その値から酸素消費量VO2を計算し、さらには熱産生される熱量や温度上昇ΔTが計算できる。前述したように、適宜加速度の値も使用することができる。温度計測によって実測されるΔTcは遅れてやってくるが、熱流計測によるΔTと温度計測によるΔTcとの比較から補正係数βを修正することができる。
この第6実施形態による効果は、先の第5実施形態で説明した熱放散による体温変化だけでなく、身体活動による熱産生による体温上昇も加味することができる点である。すでに説明したように、温度の測定は、熱流測定や熱量測定に対して本質的に遅れるとともに、フィルタ要素を通す必要からさらに遅れる。
現在までの温度環境や熱産生状態を把握して速やかに警告を出すことは体温管理にとって重要となる。高温環境と身体活動による温度上昇だけでなく、低温環境と熱産生の低下による低体温においても同様の効果をもたらす。
次に、図13により、第7実施形態に係る生体信号処理装置16について説明する。この第7実施形態に係る生体信号処理装置16は、上記第6実施形態に係る生体信号処理装置15が備えているすべての構成の他に、パーセンテージ算定部191と、熱履歴記憶部192とを備える。
パーセンテージ算定部191は、温度・熱量の比較・加算部172から得られる熱量変化の熱量変化限界値に対する割合を算定する。熱履歴記憶部192は、温度計測や熱流計測や身体活動量から得られた熱履歴を記憶する。
前述したように、熱流計測は温度計測より先んじて温度変化を示す指標となる。遅れてやってくる温度変化と、熱流計測から計算される温度変化を照合することにより、熱流計測から計算される温度変化の精度を向上させることができる。
一方で、両者(温度計測による温度変化と熱流計測による温度変化)を並べてユーザーに示すと混乱を招くおそれがある。直感的な理解をユーザーに与えられるよう、先んじている熱量や温度変化計算値がどの程度リスクを伴うものか示せるとよい。
そこで、パーセンテージ算定部191は、熱量変化限界値に対する上記先んじている熱量の割合を計算する。
上記した温度計測の遅れや変動の問題を低減するため、深部温度・熱流計測部171の温度出力部にカルマンフィルタ部193を接続する。カルマンフィルタは最小二乗法的に求めたトレンドを利用するフィルタ概念であり、一般的なフィルタより遅れ要素が少ないというメリットがある。ただし、交流理論的な遅れ要素まではなくせない。
図14は、この第7実施形態の動作を示したグラフで、図14(a)には30分の高温環境下における身体活動での深部体温Tcと、Tc変化に先んじて生ずる各熱流の変化を示す。ΔQenvは環境による熱量変化、ΔQactは身体活動による熱量変化、ΔQtotalは両者の和(ΔQenv+ΔQact)である。
ΔQenvは、高温環境下では熱放散が減少し上昇するが、退室後は汗等による熱放散の増大により減少する。身体活動によりΔQactは増大するが、両差の和であるΔQtotalは相殺されて退室後減少する。
ΔQtotalは最大で75kJ/m程度となっているが、例えばこの値を熱量変化限界値ΔQlimitとすると、両者の比であるΔQtotal/ΔQlimitは図14(b)のようになる。
この図のグラフでは、例えば入室・運動開始から15分の段階で約50%の熱量を受けていることが分かり、危険度として50%であることが認識できる。このとき、深部温度Tcは遅れ要素があるためほとんど変化していない。
通常、この遅れは15~20分程度であるが、この遅れ要素を合わせ込むことが本質的な対策ではなく、ユーザーや管理者、医師、介護士、看護士、保育士、この他の第三者やAI等のシステム(機械)に、危険度が100%に近づいていることを認識させることが重要である。
危険度を認識させるにあたっては、熱量変化限界値ΔQlimitをどのようににして決めるかが問題となる。余裕のある状態で警告が出されれれば信頼が損なわれる恐れがある。また、危険な状態になるまで警告が出ないときにも信頼が損なわれる恐れがある。
熱履歴記憶部192は、過去の被験者の熱履歴を記憶して、熱量変化限界値ΔQlimitの判断のもとになる情報を提供する。特定の個人の情報のみを使うこともできるが、多くの被験者の情報を匿名化技術を用いながら参照することで、的確な判断を下すことができる。
また、その判断をより的確にするうえで、温度や熱流の情報だけでなく、心拍や加速度、呼吸や心拍揺らぎ・自律神経の状態、脈波伝搬速度分析から算定される血圧や、運動の種類、主観評価や客観評価等を同時に総合的に用いることもできる。
また、上記の情報に基づいて、熱量変化限界値ΔQlimitの値を決めるのは、装着者自身(自己)、管理者、医師、介護士、看護士、保育士、この他の第三者、もしくはAI等のシステム(機械)が判断してもよい。
そのため、機械/他社/自己判断切替部194を設けて、現場ごとや使用する環境ごとに切り換えるようにすることが好ましい。システムが判断する場合、そのシステムが置かれている場所、計算を行う場所や記憶が置かれている場所は、本装置内であっても、あるいは近くの端末、クラウド、エッジコンピュータ等、どこにあってもよく、設置場所に特に制限はない。
さらに、熱量ΔQは補正係数αや熱容量Cth、体幹表面積Atを用いて温度変化に変換してもよい。例えば、ΔQtotalのピーク75kJ/mに対して、遅れて生じる体温計測Tcのピークは2.2℃であり、ΔQtotalにα・At/Cth=2.2/75を乗算することで、温度変化に変換される。
次に、図15ないし図17により、本発明の効果を検証するために行った実験の結果について説明する。この実験を行うため、被験者は熱流Ithと深部体温Tcを同時に測る深部温度・熱流計測部171と、心拍・加速度を測定するセンサを身に着けている。
まず、図15を参照して、Totalは、熱流Ithと加速度Acc、心拍数HRから求めた温度変化ΔTの総和である。左の縦軸は温度変化ΔTの温度軸(単位℃)で、右の縦軸は温度変化2℃を100%とした場合の熱量バランス軸(%表示)である。例えば、75%に警告のしきい値を設けたとすれば、エアロバイク(登録商標)中の中半で警告が出される。
ΔTはIntegrated ΔIthや心拍、加速度から計算しており、それそれ、Delta T_ith, Delta T_hr, Delta T_actと図の注釈で表記している。注釈のTotalはそれらを加算したものである。計算にあたっては、α,β,At,Cth等の係数を用いて熱量を温度に変換している。通常、安静時の直腸温は37℃付近にあり、それが運動や環境により±2℃の範囲外に出ると熱中症や低体温症の危険がある。個人の属性に応じて何℃を100%とするかは、ユーザーや管理者等により任意に変更できる。
前述したように、熱流Ithと深部体温Tcを同時に測る深部温度・熱流計測部171から得られる熱流Ithを積分して所定の係数をかけると、生体の温度変化が計算できる。室温26℃のオフィスから32℃の屋外に出ることで、熱流Ithのアンバランスが起こり、体温上昇が算出される。さらに、屋外での1kmの歩行時の加速度変化の絶対値を積分することにより、歩行による体温上昇が算出される。
12時過ぎのTotalの体温上昇は、この屋外での1kmの歩行に起因している。トレーニング室は比較的低温に設定されているため、この例では、熱流Ith起因のΔTはマイナスに転じている。前述したように、熱流Ithは安静時のIth(Ith0)を減算して求めるためである。一方で、エアロバイク(登録商標)運動を行うことで心拍数は増大し、心拍数から計算される体温変化は上昇する。
熱流Ith起因のΔTがマイナスに転じる理由は、図3(b)にあるように、ΔIthがマイナスになると、それを積分したIntegrated ΔIthの変化が右下がりになるためである。安静時より寒い環境に入り、着衣を大きく変更しなければ、体内の熱が奪われ体温は低下する。
図16は、実際の心拍数HRの変化を示したものである。安静時に75bpm程度の心拍数HRがエアロバイク(登録商標)運動中は160bpm程度にまで上昇している(エアロバイク(登録商標)の負荷は100W)。心拍数HRは高負荷運動のあと、特に高い体温にある間、高い値になる場合が多く、この例おいても、1時間程度高い状態が続いている。
心拍数HRから単純に体温上昇を求めると、この期間大きな熱産生を行っていないのに大きな体温上昇を計算してしまう。精神的な緊張による心拍数HRの増大も体温上昇の計算に誤差を生じるため、心拍数HRにしきい値を設けて、しきい値以上の心拍数を抽出することが好ましい。この例では、しきい値を130bpmに設定して、それ以上の心拍数を抽出している(図16の下図参照)。
安静時の心拍数HRを75bpmとすると、安静時からの差分ΔHR(=HR-HR0)を体温上昇に関わる運動量として使うことがてができる。この運動量を積分することにより、熱量を求めることができる。エアロバイク(登録商標)運動のような運動は、腹部に付けた加速度センサでは検知しにくいため、心拍数HRを併用することの意味は大きい。
図17は、前述したTotalに移動平均をかけたものと、直腸温Trect,深部体温Tcを比較したものである。前述した図15のTotalは安静時からの変化量であるため、安静時の直腸温37.2℃を足している。通常、直腸温センサは装着しないため、例えば腹部でのセンサで計測したTcに0.3~0.5℃程度の値を足すことで、直腸温の推定値を求めることができる。
深部温度・熱流計測部171としてTcセンサと熱流センサを持つメリットは、相対値になってしまうIth計算と、絶対値であるTcセンサから、直腸温の変化に相当する温度を算出できる点にある。通常、直腸温はTcより速く立ち上がる(例えばエアロバイク(登録商標)開始直後から変化する)傾向があるが、上記をもとに計算したTotalは、その直腸温よりも速く変化するため、アラームを先んじて出せるメリットがある。
繰り返しになるが、熱流Ithから求める体温変化は、熱量の流出入しか分からないため相対値となる。Tcセンサは温度自身を計測しているため、絶対値となる(SHFセンサはRbodyを取得した上で)。
次に、図18により、本装置を体へ装着する態様について説明する。(a)は貼り付け型、(b)はベルト型、(c)はウェア型である。
深部温度・熱流計測部171には、図2で説明した温度計111,112および熱分離構造体113を用いることができる。身体活動量計測部181には、心電信号を検出する電極と、その信号処理回路が用いられるが、この他に、加速度計や角加速度計、高度計・気圧計等を用いることができる。
図18(a)の貼り付け型では、本装置10(11~16)を導電性のゲルを用いて生体に接着させるとともに、心電信号を検出する。図18において、本装置10(11~16)は、深部温度・熱流計測部171および身体活動量計測部181を備えている。
図18(b)のベルト型では、ベルト、好ましくは伸縮性のベルトに本装置10(11~16)の深部温度・熱流計測部171および身体活動量計測部181を取り付ける。深部温度・熱流計測部171および身体活動量計測部181が体表面(皮膚)に接するようにしてベルトを人体の所定部位に巻き付ける。導電性ゲルの代わりに乾式電極を用いてもよい。また、電極を用いずに加速度等の他の方法で身体活動量を計測してもよい。ベルトの伸縮性によって本装置10(11~16)が皮膚に押さえられる力が期待できる。
図18(c)のウェア型では、本装置10(11~16)を肌着や帽子等のウエアに取り付けて使用する。腹部や胸部のほか、下腹部や頭部、手足に装着してもよい。手足に装着する場合には、サポータが用いられてもよい。
例えば、手足は身体活動量のみを測り、腹部で温度・熱流を測る等、測定機能を分散させることもできる。本装置10(11~16)を一部修正することにより、人間以外の生体、例えば家畜やペット等にも使用することができる。
10~16 生体信号処理装置
110 熱流計測部
111,112 温度計
113 熱分離構造体
114 測温ユニット
120 熱流記憶部
130 熱流減算部
140 熱流積分部
151 係数算定部
152 熱量乗算部
161 深部温度計測部
162 温度・熱量加算部
171 深部温度・熱流計測部
172 温度・熱量の加算部
181 身体活動量計測部
182 熱量算定部
183 ΔT算定部
191 パーセンテージ算定部
192 熱履歴記憶部
193 カルマンフィルタ部
194 機械/他者/自己判断切替部

Claims (3)

  1. 生体の体表面に装着して熱の流出入を計測する熱流計測部と、
    安静時の熱流を記憶する熱流記憶部と、
    上記熱流計測部における熱流値から上記熱流記憶部の値を減算する熱流減算部と、
    上記熱流減算部における減算結果の積分を行う熱流積分部、とを備えていることを特徴とする生体信号処理装置。
  2. 上記生体の熱容量と熱放散面積とに基づいて係数を算定する係数算定部と、
    上記熱流積分部によって計算された熱量と上記係数算定部で計算された係数とを乗算する熱量乗算部と、をさらに備えることを特徴とする請求項に記載の生体信号処理装置。
  3. 深部温度を計測する深部温度計測部と、
    上記深部温度計測部にて計測された深部温度と上記熱量乗算部での乗算結果とを加算する温度・熱量加算部と、をさらに備えることを特徴とする請求項に記載の生体信号処理装置。
JP2019164428A 2019-09-10 2019-09-10 生体信号処理装置 Active JP7417919B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019164428A JP7417919B2 (ja) 2019-09-10 2019-09-10 生体信号処理装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019164428A JP7417919B2 (ja) 2019-09-10 2019-09-10 生体信号処理装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021040872A JP2021040872A (ja) 2021-03-18
JP7417919B2 true JP7417919B2 (ja) 2024-01-19

Family

ID=74862757

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019164428A Active JP7417919B2 (ja) 2019-09-10 2019-09-10 生体信号処理装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7417919B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023067789A1 (ja) * 2021-10-22 2023-04-27 日本電信電話株式会社 発熱検知装置、発熱検知方法およびプログラム

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017217224A (ja) 2016-06-08 2017-12-14 国立大学法人大阪大学 深部体温推定装置、その方法及びプログラム
WO2019026439A1 (ja) 2017-07-31 2019-02-07 帝人株式会社 深部体温推定システム、ヒートストレス警報システム、及び、深部体温推定方法
JP2019097819A (ja) 2017-11-30 2019-06-24 株式会社テクノ・コモンズ 生体データ測定装置

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017217224A (ja) 2016-06-08 2017-12-14 国立大学法人大阪大学 深部体温推定装置、その方法及びプログラム
WO2019026439A1 (ja) 2017-07-31 2019-02-07 帝人株式会社 深部体温推定システム、ヒートストレス警報システム、及び、深部体温推定方法
JP2019097819A (ja) 2017-11-30 2019-06-24 株式会社テクノ・コモンズ 生体データ測定装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021040872A (ja) 2021-03-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Trivedi et al. Android based health parameter monitoring
Massaroni et al. Smart textile for respiratory monitoring and thoraco‐abdominal motion pattern evaluation
US11844722B2 (en) Method and system to detect changes in a patient's endogenous temperature set-point during externally induced targeted temperature management
Huang et al. A wearable thermometry for core body temperature measurement and its experimental verification
US7942825B2 (en) Method and device for monitoring thermal stress
US20090105560A1 (en) Lifestyle and eating advisor based on physiological and biological rhythm monitoring
US20120143019A1 (en) System Method and Device for Determining the Risk of Dehydration
WO2008001366A2 (en) Lifestyle and eating advisor based on physiological and biological rhythm monitoring
WO2018167765A1 (en) Method, system and device for noninvasive core body temperature monitoring
Bender et al. Measuring the fitness of fitness trackers
US20220125388A1 (en) Method for estimating core body temperature
US20180008149A1 (en) Systems and Methods of Body Temperature Measurement
Buono et al. Comparison of infrared versus contact thermometry for measuring skin temperature during exercise in the heat
WO2011012386A1 (en) Sensor and method for determining a core body temperature
Sim et al. Estimation of circadian body temperature rhythm based on heart rate in healthy, ambulatory subjects
Ray An IR sensor based smart system to approximate core body temperature
Shan et al. Wearable personal core body temperature measurement considering individual differences and dynamic tissue blood perfusion
JP7417919B2 (ja) 生体信号処理装置
Nagano et al. Technique for continuously monitoring core body temperatures to prevent heat stress disorders in workers engaged in physical labor
Saurabh et al. Continuous core body temperature estimation via SURFACE temperature measurements using wearable sensors-is it feasible?
Daanen et al. Heat flux systems for body core temperature assessment during exercise
Hamatani et al. Estimating core body temperature based on human thermal model using wearable sensors
Hirata et al. Body core temperature estimation using new compartment model with vital data from wearable devices
Sekiguchi et al. Monitoring internal body temperature
Huang et al. Wearable deep body thermometers and their uses in continuous monitoring for daily healthcare

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220905

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230518

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230628

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20230828

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20231002

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20231206

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20231225

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7417919

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150