JP7417247B2 - 中皮腫の予防・治療剤 - Google Patents

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Description

本発明は、中皮腫の予防及び/又は治療剤、並びに診断剤に関する。
中皮腫(悪性中皮腫)は、胸腔や腹腔の表面を覆う中皮由来の腫瘍である。中皮腫は、その発生部位によって胸膜中皮腫、腹膜中皮腫、心膜中皮腫等に分類される。悪性胸膜中皮腫(以下、「MPM」ともいう。)の原因は、アスベスト(石綿)の吸入であることが多い。アスベストは、耐熱性、耐摩耗性等に優れ、かつ加工が容易で安価であるため、日本では1970年代から1990年代に建材、摩擦材、断熱材等をはじめ、様々な用途に用いられていた。通常、MPMはアスベスト曝露から約20~40年後に発症するため、MPM患者は今後増加すると考えられている。
MPMの悪性度は極めて高いにも関わらず、有効な薬物療法がない。また、外科的治療は容易ではなく、たとえ切除できても術後のquality of life (QOL) の低下や低くない再発率が問題となっている。手術ができない場合や、手術前にがんを小さくする、症状を緩和するなどの目的で、化学療法が用いられている。現在、MPMの治療に主に使用される化学療法剤はシスプラチンとペメトレキセドである。
ところで、ゲノム上にコードされた内在性の20~25塩基程度の非コード(non-coding)RNAであるマイクロRNA(miRNA)は、ヒトでは2000種類以上が知られており、それぞれが複数の標的遺伝子の発現を調節し、細胞の増殖や分化など、様々な生命現象に関与している。がん細胞の増殖に関与するmiRNAについても数多くの報告があり、miRNAの発現を調節することでがん細胞の増殖を抑制するがん治療法が提案されている。しかしながら、実験レベルでは、いくつかのmiRNAがMPM細胞に対して抗腫瘍効果を示したことが報告されてはいるものの(例えば、非特許文献1参照)、miRNAを用いた中皮腫の治療薬は未だ実用化されていない。
また、hsa-miR-1290、has-miR-345-5p及びhas-miR-4732-5pと、中皮腫との関連性についても何ら知られていない。
Molecular Therapy, 27(9), 1665-1680 (2019)
本発明の目的は、中皮腫細胞の増殖を抑制し得るmiRNAを同定し、該miRNAを用いて新規な中皮腫の予防及び/又は治療手段を提供することである。本発明の別の目的は、中皮腫細胞で発現が抑制されているmiRNAを同定し、該miRNAの発現量を指標として、中皮腫を診断する手段を提供することである。
本発明者は、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、正常胸膜中皮細胞と比べてMPM細胞で発現が低下している3種のmiRNA(hsa-miR-1290、hsa-miR-345-5p及びhsa-miR-4732-5p)を同定し、これらmiRNAの発現を指標として、中皮腫の診断や抗中皮腫薬のスクリーニングが可能であることを明らかにした。さらに、これらのmiRNAをMPM細胞に導入し過剰発現させたところ、hsa-miR-1290を導入したMPM細胞では、細胞増殖が有意に抑制されることを見出した。
本発明者は、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下に関する。
[1]中皮腫の予防及び/又は治療剤であって、
(a) 配列番号1で表されるmiR-1290のヌクレオチド配列を含む核酸、又は
(b) 上記(a)のヌクレオチド配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、且つmiR-1290と同等の機能を有するヌクレオチドを含む核酸
を含有する、剤。
[2]核酸が1本鎖または2本鎖である、[1]に記載の剤。
[3]核酸が配列番号1で表されるヌクレオチド配列又はその部分配列からなるRNA、或いはその修飾体である、[1]に記載の剤。
[4]核酸が配列番号1で表されるヌクレオチド配列からなるRNA又はその修飾体である、[1]に記載の治療剤。
[5]核酸が、miR-1290及びその前駆体からなる群から選ばれる少なくとも1種の核酸である、[1]に記載の治療剤。
[6]前駆体が、miR-1290のpri-miRNAまたはpre-miRNAである、[5]に記載の治療剤。
[7]中皮腫が胸膜中皮腫である、[1]~[6]のいずれかに記載の治療剤。
[8]中皮腫の予防及び/又は治療方法であって、
(a) 配列番号1で表されるmiR-1290のヌクレオチド配列を含む核酸、又は
(b) 上記(a)のヌクレオチド配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、且つmiR-1290と同等の機能を有するヌクレオチドを含む核酸
の有効量を、対象に投与することを含む、方法。
[9]miR-1290を特異的に検出し得る核酸プローブ及び/又は核酸プライマー、miR-345-5pを特異的に検出し得る核酸プローブ及び/又は核酸プライマー、並びにmiR-4732-5pを特異的に検出し得る核酸プローブ及び/又は核酸プライマーからなる群より選択される1以上の核酸プローブ及び/又は核酸プライマーを含む、中皮腫の診断剤。
[10]以下の工程を含む、抗中皮腫活性を有する物質のスクリーニング方法:
(1)被検物質と中皮腫細胞とを接触させること;
(2)被検物質を接触させた細胞におけるmiR-1290の発現レベルを測定し、該発現レベルを、被検物質を接触させない対照細胞におけるmiR-1290の発現レベルと比較すること;並びに
(3)上記(2)の比較結果に基づいて、miR-1290の発現レベルを増大させた被検物質を、抗中皮腫活性を有する物質として選択すること。
本発明によれば、中皮腫細胞の増殖を抑制することができる。しかも、有効成分であるmiR-1290は、正常な胸膜中皮細胞で発現しているので、投与したmiR-1290が正常細胞に取り込まれても、タンパク質の発現量に大きな変化は起こらず、細胞障害が生じにくい、即ち、副作用が少ないことが期待できる。
図1は、6種のヒトMPM細胞及びヒト不死化胸膜中皮細胞におけるhsa-miR-1290(上)、hsa-miR-345-5p(中)及びhsa-miR-4732-5pの発現を、リアルタイムPCRにて測定した結果を示す。 図2は、hsa-miR-1290、hsa-miR-345-5p又はhsa-miR-4732-5pを導入したMESO1細胞において各miRNAが過剰発現していることを示す。 図3は、hsa-miR-1290、hsa-miR-345-5p又はhsa-miR-4732-5pを過剰発現する細胞の増殖能を示す。
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、本発明が属する技術分野で通常に用いられる意味を有する。
1.本発明の剤
本発明は、中皮腫の予防及び/又は治療剤であって、
(a) 配列番号1で表されるmiR-1290のヌクレオチド配列を含む核酸、又は
(b) 上記(a)のヌクレオチド配列と70%以上の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、且つmiR-1290と同等の機能を有するヌクレオチドを含む核酸
を含む、剤(以下、「本発明の剤」ともいう。)を提供する。上記(a)及び(b)の核酸を包括して「本発明の核酸」ともいう。
本発明の核酸は、RNA、RNAとDNAのキメラ核酸(以下、キメラ核酸と称する)またはハイブリッド核酸である。ここにおいて、キメラ核酸とは、1本鎖又は2本鎖の核酸において一本の核酸の中にRNAとDNAを含むことをいい、ハイブリッド核酸とは、二本鎖において、一方の鎖がRNAまたはキメラ核酸でもう一方の鎖がDNAまたはキメラ核酸である核酸をいう。
本発明の核酸は、1本鎖または2本鎖である。2本鎖の態様には、2本鎖RNA、2本鎖キメラ核酸、RNA/DNAハイブリッド、RNA/キメラ核酸ハイブリッド、キメラ核酸/キメラ核酸ハイブリッドおよびキメラ核酸/DNAハイブリッドが含まれる。本発明の核酸は、好ましくは1本鎖RNA、1本鎖キメラ核酸、2本鎖RNA、2本鎖キメラ核酸、RNA/DNAハイブリッド、RNA/キメラ核酸ハイブリッド、キメラ核酸/キメラ核酸ハイブリッドまたはキメラ核酸/DNAハイブリッドであり、より好ましくは1本鎖RNA、1本鎖キメラ核酸、2本鎖RNA、2本鎖キメラ核酸、RNA/DNAハイブリッド、キメラ核酸/キメラ核酸ハイブリッドまたはRNA/キメラ核酸ハイブリッドである。
本発明の核酸の長さは、哺乳動物(好ましくはヒト)の中皮腫細胞、好ましくはMPM細胞の増殖を抑制する活性を有する限り、その長さに上限はない。しかし、合成の容易さや抗原性の問題等を考慮すると、本発明の核酸の長さは、例えば約200塩基以下、好ましくは約130塩基以下、より好ましくは約50塩基以下であり、最も好ましくは30塩基以下である。下限としては、例えば15塩基以上、好ましくは、17塩基以上である。なお、核酸がステム-ループ型の2次構造をとることによりハイブリッドを形成する場合の核酸の長さは、該ハイブリッドの片側鎖の長さとして考えるものとする。
miR-1290は既知の分子であり、miRBaseにはヒト(hsa-miR-1290; Accession No. MI0006352)、チンパンジー(ptr-miR-1290; Accession No. MI0008491)、ボルネオオランウータン(ppy-miR-1290; Accession No. MI0015246)のpre-miRNA配列がエントリーされており、いずれも成熟型miRNAは、配列番号1(ヒト成熟型miR-1290のAccession No.はMIMAT0005880)で表されるヌクレオチド配列からなる。即ち、成熟型miR-1290とは、配列番号1で表されるヌクレオチド配列からなる1本鎖または2本鎖の核酸分子を意味する。
miR-1290は、中皮腫細胞内へ取り込まれると、該細胞の増殖を抑制する活性を有する。本発明において、「miR-1290と同等の機能を有する」とは、中皮腫細胞の増殖を抑制する活性を有することを意味する。当該活性を有する限り、その程度は問わない。マイクロRNAは標的mRNAとハイブリッドを形成し、タンパク質への翻訳を抑制したり、標的mRNAを切断したりして、その機能を抑制する。従って、miR-1290と同等の機能を有するヌクレオチドとしては、miR-1290の標的mRNAと、生理的な条件(例えば0.1M リン酸緩衝液 (pH7.0) 25℃)下でハイブリッドを形成するヌクレオチドが挙げられる。miR-1290の標的mRNAは、例えば、TagetScan、TargetMiner、miRDB等の各種アルゴリズムを用いて検索することができる。
本発明において用いられる「miR-1290と同等の機能を有するヌクレオチド」のヌクレオチド配列は、配列番号1で表されるヌクレオチド配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の同一性を有する。
「同一性」とは、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて2つのヌクレオチド配列をアラインさせた場合の、最適なアラインメント(好ましくは、該アルゴリズムは最適なアラインメントのために配列の一方もしくは両方へのギャップの導入を考慮し得るものである)における、オーバーラップする全ヌクレオチド残基に対する、同一ヌクレオチド残基の割合(%)を意味する。
本明細書において、ヌクレオチド配列における同一性は、例えば相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST-2(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(ギャップオープン=5ペナルティ;ギャップエクステンション=2ペナルティ;x_ドロップオフ=50;期待値=10;フィルタリング=ON)にて2つのヌクレオチド配列をアラインすることにより、計算することができる。
配列番号1で表されるヌクレオチド配列と70%以上の同一性を有するヌクレオチド配列としては、配列番号1で表されるヌクレオチド配列において1もしくは複数のヌクレオチドが欠失、置換、挿入または付加されたヌクレオチド配列、例えば、(1)配列番号1で表されるヌクレオチド配列中の1~6個(好ましくは1~4個、より好ましくは1または2個、さらに好ましくは1個)のヌクレオチドが欠失したヌクレオチド配列、(2)配列番号1で表されるヌクレオチド配列に1~6個(好ましくは1~4個、より好ましくは1または2個、さらに好ましくは1個)のヌクレオチドが付加されたヌクレオチド配列、(3)配列番号1で表されるヌクレオチド配列に1~6個(好ましくは1~4個、より好ましくは1または2個、さらに好ましくは1個)のヌクレオチドが挿入されたアミノ酸配列、(4)配列番号1で表されるヌクレオチド配列中の1~6個(好ましくは1~4個、より好ましくは1または2個、さらに好ましくは1個)のヌクレオチドが他のヌクレオチドで置換されたヌクレオチド配列、または(5)上記(1)~(4)の変異が組み合わせれたヌクレオチド配列(この場合、変異したヌクレオチドの総和が、1~6個、好ましくは1~4個、より好ましくは1または2個、さらに好ましくは1個)である。
マイクロRNAは5’末端側2~8番目のヌクレオチド配列(シード領域)が標的mRNAとのハイブリッド形成・翻訳抑制に主に寄与するので(Current Biology, 15, R458-R460 (2005))、配列番号1で表されるヌクレオチド配列中2~8番目のヌクレオチド配列は保存されることが望ましい。
一実施態様において、「配列番号1で表されるヌクレオチド配列において1もしくは複数のヌクレオチドが欠失、置換、挿入または付加されたヌクレオチド配列」は、成熟型miR-1290のアイソフォーム(isomiR)であり得る。miR-1290のisomiRとしては、中国科学技術大学から提供されるIsomiR Bank(Bioinformatics, 32(13): 2069-2071 (2016))にエントリーされているヌクレオチド配列からなるヌクレオチドが挙げられる。
好ましい一実施態様において、配列番号1で表されるヌクレオチド配列と70%以上の同一性を有するヌクレオチド配列は、配列番号1で表されるヌクレオチド配列に含まれる連続する15塩基以上(好ましくは16塩基以上、より好ましくは17塩基以上、さらに好ましくは18塩基)の部分配列である。
好ましい実施態様において、本発明の核酸は、RISC複合体に取り込まれて標的mRNAに作用する。本発明の核酸が効率よくRISC複合体に取り込まれて成熟miR-1290にプロセッシングされるためには、該核酸は2本鎖核酸(ステム-ループ構造をとることで2重鎖を形成する1本鎖核酸を含む)であることが好ましい。
本発明の核酸が2本鎖核酸(ステム-ループ構造をとることで2重鎖を形成する1本鎖核酸を含む)である場合、相補鎖(パッセンジャー鎖)配列は、配列番号1で表されるヌクレオチド配列又はそれと70%以上の同一性を有するヌクレオチド配列に対して、完全相補的であってもよいし、ミスマッチを含んでもよい。ミスマッチの数としては、例えば、1~10個、好ましくは1~8個、より好ましくは1~6個が挙げられる。但し、効率的な標的mRNAの機能抑制のためには、標的nRNAとのハイブリッド形成の安定性だけでなく、2本鎖miRNAの5’末端側の5ヌクレオチドの対合安定性が寄与するとされているので、当該領域中にはミスマッチを含まないことが望ましい。
本明細書において、核酸が「miR-1290」や「miR-1290と同等の機能を有するヌクレオチド」を含むとは、該核酸のヌクレオチド配列中に「miR-1290」や「miR-1290と同等の機能を有するヌクレオチド」のヌクレオチド配列が含まれることを意味する。
天然型の核酸は、細胞中に存在する核酸分解酵素によって容易に分解されるので、本発明の核酸は、各種分解酵素に対して抵抗性となるように修飾し、修飾体としてもよい。本発明の修飾体には、配列番号1で表されるヌクレオチド配列と70%以上の同一性を有し、且つ、miR-1290と同等の機能を有するヌクレオチドの範囲で、配列の修飾も含めた各種修飾をされた修飾体が含まれる。修飾体における修飾の例としては、例えば、糖鎖部分が修飾されているもの(例えば、2’-Oメチル化)、塩基部分が修飾されているもの、リン酸部分やヒドロキシル部分が修飾されているもの(例えば、ビオチン、アミノ基、低級アルキルアミン基、アセチル基等)を挙げることができるが、これに限定されない。
本発明の核酸は、5’または3’末端に、付加的な塩基を有していてもよい。該付加的塩基の長さは、通常5塩基以下である。該付加的塩基は、DNAでもRNAでもよいが、DNAを用いると核酸の安定性を向上させることができる場合がある。このような付加的塩基の配列としては、例えばug-3’、uu-3’、tg-3’、tt-3’、ggg-3’、guuu-3’、gttt-3’、ttttt-3’、uuuuu-3’などの配列が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の核酸の好ましい態様としては、成熟型miR-1290、その前駆体等の核酸を挙げることができる。本発明の核酸の好ましい別の態様としては、成熟型miRNAと同様の活性を有するヌクレオチドを含む核酸、例えば、内在性の成熟型miR-1290を模倣するように合成された、miR-1290 mimicなどを使用することができる。市販のものを利用することもできる。例えば、AmbionTM Pre-miRTM miRNA precursor moleculeが例示できる。
miR-1290の前駆体とは、細胞内のプロセシングや、2本鎖核酸の開裂の結果、細胞内において成熟型miR-1290を生じ得る核酸を意味する。該前駆体としては、miR-1290のpri-miRNAやpre-miRNA等を挙げることができる。pri-miRNAはmiRNA遺伝子の一次転写産物(1本鎖RNA)であり、通常数百~数千塩基程度の長さを有する。pre-miRNAは、pri-miRNAが細胞内プロセシングを受けることにより生じるヘアピン構造を有する1本鎖RNAであり、通常70~110塩基の長さを有する。
miR-1290のpri-miRNAやpre-miRNAは公知の分子であり、例えばサンガー研究所が作成しているmiRBaseデータベース等に開示されている。miR-1290の好適なpre-miRNAとしては、配列番号2(Accession No. MI0006352)で表されるヒトpre-miR-1290(hsa-miR-1290)のヌクレオチド配列からなる1本鎖RNAを挙げることが出来る。
また、ループ部分を介して、例えば、配列番号1で表されるヌクレオチド配列(第1の配列)と、その相補配列(第2の配列)とが連結された一本鎖核酸であって、ステム-ループ型の構造をとることにより、第1の配列が第2の配列と2本鎖構造状の形状を有する人工核酸も本発明の核酸の好ましい態様の1つである。この場合、ループ部分は、3~10ヌクレオチド程度の任意のヌクレオチド配列であり得る。
本発明の核酸は、従来公知の手法を用いて、哺乳動物細胞(ヒト細胞等)から単離することにより、または化学的に合成することにより、または遺伝子組み換え技術を用いて産生することにより得ることができる。また、適宜市販されている核酸を用いることも可能である。
本発明の核酸は、適切な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、細胞内に導入して転写されることにより生合成される形態として提供することもできる。発現ベクターとしては、宿主細胞において機能的なプロモーターを含有しているものが用いられる。プロモーターとしては、例えば、RNA polymerase II (pol II)系プロモーターやRNA polymerase III (pol III)系プロモーター等をあげることができる。pol II系プロモーターとしては、例えば、サイトメガロウイルス(ヒトCMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター等をあげることができる。それらを用いた発現ベクターとして、例えば、pCDNA6.2-GW/miR(Invitrogen社製)、pSilencer 4.1-CMV(Ambion社製)等を例示することができる。pol III系プロモーターとしては、例えば、U6 RNAやH1 RNAあるいはtRNAのプロモーターをあげることができる。それらを用いた発現ベクターとして、例えば、pSINsi-hH1 DNA(タカラバイオ社製)、pSINsi-hU6 DNA(タカラバイオ社製)、pENTR/U6(Invitrogen社製)等をあげることができる。
あるいは、ウイルスベクター内のプロモーター下流に本発明の核酸を挿入して組換えウイルスベクターを作製し、該ベクターをパッケージング細胞に導入して組換えウイルスを産生し、該ウイルスを宿主細胞に感染させることにより、該宿主細胞内に本発明の核酸を導入・発現させることもできる。
パッケージング細胞はウイルスのパッケジ-ングに必要なタンパク質をコードする遺伝子のいずれかを欠損している組換えウイルスベクターの、該欠損するタンパク質を補給できる細胞であればいずれの細胞でもよく、例えばヒト腎臓由来のHEK293細胞、マウス繊維芽細胞NIH3T3などを用いることができる。パッケージング細胞で補給するタンパク質としては、レトロウイルスベクターの場合はマウスレトロウイルス由来のgag、pol、envなどのタンパク質、レンチウイルスベクターの場合はHIVウイルス由来のgag、pol、env、vpr、vpu、vif、tat、rev、nefなどのタンパク質、アデノウイルスベクターの場合はアデノウイルス由来のE1A,E1Bなどのタンパク質、また、アデノ随伴ウイルスベクターの場合はRep(p5、p19、p40)、Vp(Cap)などのタンパク質を用いることができる。
本発明の剤は、有効量の本発明の核酸に加え、任意の担体、例えば医薬上許容される担体を含むことができ、医薬組成物の形態で医薬として適用される。
医薬上許容される担体としては、例えば、ショ糖、デンプン等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース等の結合剤、デンプン、カルボキシメチルセルロース等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、エアロジル等の滑剤、クエン酸、メントール等の芳香剤、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム等の安定剤、メチルセルロース、ポリビニルピロリド等の懸濁剤、界面活性剤等の分散剤、水、生理食塩水等の希釈剤、ベースワックス等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
本発明の核酸の中皮腫細胞内への導入を促進するために、本発明の剤は更に核酸導入用試薬を含むことができる。該核酸導入用試薬としては、アテロコラーゲン;リポソーム;ナノパーティクル;リポフェクチン、リプフェクタミン(lipofectamine)、DOGS(トランスフェクタム)、DOPE、DOTAP、DDAB、DHDEAB、HDEAB、ポリブレン、あるいはポリ(エチレンイミン)(PEI)等の陽イオン性脂質等を用いることが出来る。
本発明の剤は、経口的にまたは非経口的に、哺乳動物に対して投与することが可能であるが、本発明の剤は、非経口的に投与するのが望ましい。
非経口的な投与(例えば、皮下注射、筋肉注射、局所注入、腹腔内投与など)に好適な製剤としては、水性および非水性の等張な無菌の注射液剤があり、これには抗酸化剤、緩衝液、制菌剤、等張化剤等が含まれていてもよい。また、水性および非水性の無菌の懸濁液剤が挙げられ、これには懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、防腐剤等が含まれていてもよい。当該製剤は、アンプルやバイアルのように単位投与量あるいは複数回投与量ずつ容器に封入することができる。また、有効成分および医薬上許容される担体を凍結乾燥し、使用直前に適当な無菌のビヒクルに溶解または懸濁すればよい状態で保存することもできる。
医薬組成物中の本発明の核酸の含有量は、例えば、医薬組成物全体の約0.1ないし100重量%である。
本発明の剤の投与量は、投与の目的、投与方法、中皮腫の種類、腫瘍の大きさ、投与対象者の状態(性別、年齢、体重など)によって異なるが、成人に注射により局所投与する場合、通常、本発明の核酸の量として1 pmol/kg以上10 nmol/kg以下、全身投与では2 nmol/kg以上50 nmol/kg以下が望ましい。かかる投与量を1~10回、より好ましくは5~10回投与することが望ましい。
本発明の剤は、投与対象に対して好ましくない影響を及ぼさない範囲で、他の抗中皮腫薬と併用することができる。そのような抗中皮腫薬としては、例えば、シスプラチン、ペメトレキセド、カルボプラチン、ゲムシタビン、ビノレルビン等の化学療法剤が挙げられる。好ましくは、ペメトレキセド、シスプラチン、カルボプラチン及びそれらの組み合せが挙げられる。化学療法剤以外の抗がん剤としては、例えば、ベバシズマブ等の抗VEGF抗体薬、免疫チェックポイント阻害薬等を挙げることができる。これらの抗中皮腫薬の投与方法・投与量は、臨床上で通常使用されている用法・用量に従うことができる。
本発明の核酸と他の抗中皮腫薬との併用に際しては、それらの投与形態は特に限定されず、投与時に、両者が組み合わされていればよい。このような投与形態としては、例えば、(1)本発明の核酸と他の抗中皮腫薬とを同時に製剤化して得られる単一の製剤の投与、(2)本発明の核酸と他の抗中皮腫薬とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での同時投与、(3)本発明の核酸と他の抗中皮腫薬とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での時間差をおいての投与、(4)本発明の核酸と他の抗中皮腫薬とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での同時投与、(5)本発明の核酸と他の抗中皮腫薬とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での時間差をおいての投与(例えば、本発明の核酸→他の抗中皮腫薬の順序での投与、あるいは逆の順序での投与)等が挙げられる。
本発明の剤は、その有効成分である本発明の核酸が中皮腫組織(中皮腫細胞)に送達されるように、哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、ウシ、サル、ヒト、好ましくはヒト)に対して安全に投与される。
本発明の核酸は、中皮腫細胞の増殖を抑制する活性を有するので、本発明の剤を中皮腫患者等に対して投与することにより、中皮腫を治療及び/又は予防することが出来る。
本発明の剤が適用できる中皮腫としては、例えば、胸膜中皮腫(MPM)、腹膜中皮腫、心膜中皮腫及び精巣鞘膜中皮腫などが挙げられる。好ましくは、MPM及び腹膜中皮腫、より好ましくはMPMである。
本発明の剤は、中皮腫細胞においてmiR-1290の発現が低下している患者に投与するのが望ましい。miR-1290の発現レベルは、例えば、後述の本発明の診断剤を用いて測定することができる。
2.中皮腫の診断剤・判定方法
本発明は、被験者から採取した生体試料中の、miR-1290、miR-345-5p及びmiR-4732-5pからなる群より選択される1以上のmiRNAのレベルを測定することを含む、中皮腫の判定方法(以下、「本発明の判定方法」ともいう。)を提供するものである。
本発明の判定方法において、中皮腫は、悪性の中皮腫を意味し、胸膜中皮腫(MPM)、腹膜中皮腫、心膜中皮腫及び精巣鞘膜腫を含む。患者数の多さという点から、中皮腫はMPM及び腹膜中皮腫が好ましく、MPMがより好ましい。
本発明の判定方法において、被験者は、哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、ウシ、サル、ヒト)であれば特に限定されないが、好ましくはヒトである。被験者としては、例えば、中皮腫に罹患していることが疑われる者(例、アスベストへの曝露経験がある者、胸水や腹水の貯留が認められる者等)などが挙げられる。
本発明の判定方法において用いられ得る生体試料としては、中皮腫が発生し得る部位(例、胸膜、腹膜、心膜、精巣鞘膜、肺及び横隔膜等)の中皮組織の細胞、あるいは当該細胞から分泌されるエクソソームが含まれる限り特に限定されないが、例えば、胸膜、腹膜、心膜、精巣鞘膜、肺及び横隔膜等の中皮組織の生検サンプルやそれらの培養上清、あるいは、胸水、腹水、心嚢液、血液、血漿、血清、リンパ液、尿及び唾液等の体液が挙げられる。
本発明の判定方法において発現レベルが測定されるmiR-1290、miR-345-5p及びmiR-4732-5pには、それぞれ成熟型、pri-miRNA及びpre-miRNAが含まれるが、好ましくは、これら全ての型の発現レベルの合計または成熟型の発現レベル、より好ましくは成熟型の発現レベルが測定される。
miR-1290の成熟型及びその前駆体については、上述のとおりである。miR-345-5p及びmiR-4732-5pも既知の分子であり、ヒト成熟型及びpre-miR-345-5pは、miRBaseにそれぞれAccession No. MIMAT0000772(配列番号3)及びMI0000825(配列番号4)として、ヒト成熟型及びpre- miR-4732-5pは、それぞれAccession No. MIMAT0019855(配列番号5)及びMI0017369(配列番号6)としてエントリーされている。
本発明の判定方法における測定対象としてのmiR-1290、miR-345-5p及びmiR-4732-5pには、各miRNAのアイソフォーム(isomiR)及びそれらの前駆体(pri-miRNA及びpre-miRNA)も含まれる。これらのisomiRとしては、上述のIsomiR Bankにエントリーされているヌクレオチド配列からなるヌクレオチドが挙げられる。
例えば、miR-1290、miR-345-5p及びmiR-4732-5pの発現レベルは、各miRNAを特異的に検出し得る核酸プローブ及び/又は核酸プライマーを用いて、自体公知の方法により測定することが出来る。該測定方法としては、例えば、RT-PCR、ノザンブロッティング、in situ ハイブリダイゼーション、核酸アレイ等を挙げることができる。または、市販のキット(例えば、TaqMan(登録商標)MicroRNA Cells-to-CTTM Kit)によっても測定できる。
miR-1290、miR-345-5p又はmiR-4732-5pを特異的に検出し得る核酸プローブとしては、配列番号1、3又は5で表されるヌクレオチド配列に含まれる、15塩基以上、好ましくは16塩基以上、より好ましくは17塩基以上の連続したヌクレオチド配列またはその相補配列を含むポリヌクレオチドを挙げることが出来る。
miR-1290、miR-345-5p又はmiR-4732-5pを特異的に検出し得る核酸プライマーは、当該miRNA又はその相補的核酸のヌクレオチド配列の一部又は全部の領域を特異的に増幅し得るように設計されたものであればいかなるものであってもよい。そのような核酸プライマーは、例えば、配列番号2、4又は6で表されるヌクレオチド配列の配列情報に基づいて、適宜設計することができる。
核酸プローブ及び核酸プライマーは、特異的検出に支障を生じない範囲で付加的配列(検出対象のポリヌクレオチドと相補的でないヌクレオチド配列)を含んでいてもよい。
また、核酸プローブ及び核酸プライマーは、適当な標識剤、例えば、放射性同位元素(例:125I、131I、3H、14C等)、酵素(例:β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等)、蛍光物質(例:フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート等)、発光物質(例:ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等)などで標識されていてもよい。あるいは、蛍光物質(例:FAM、VIC等)の近傍に該蛍光物質の発する蛍光エネルギーを吸収するクエンチャー(消光物質)がさらに結合されていてもよい。かかる実施態様においては、検出反応の際に蛍光物質とクエンチャーとが分離して蛍光が検出される。
核酸プローブ及び核酸プライマーは、DNA、RNA、キメラ核酸のいずれであってもよく、また、1本鎖であっても2本鎖であってもよい。核酸プローブまたはプライマーは、例えば、miR-1290については配列番号1または2、miR-345-5pについては配列番号3または4、miR-4732-5pについては配列番号5または6で、それぞれ表されるヌクレオチド配列の情報に基づいて、DNA/RNA自動合成機を用いて常法に従って合成することができる。
測定対象のmiRNA又はその相補的核酸を特異的に検出し得る核酸プローブを、適切な支持体の上に結合して、核酸アレイとして提供してもよい。支持体としては、当該分野で通常用いられている支持体であれば特に限定されず、例えば、メンブレン(例えば、ナイロン膜)、ビーズ、ガラス、プラスチック、金属等が挙げられる。
次に、測定されたmiR-1290、miR-345-5p及びmiR-4732-5pの発現レベルに基づいて、被験者が中皮腫に罹患している又は将来罹患する可能性が高いか否かが判定される。後述の実施例に示すように、正常細胞に比べて、中皮腫細胞胞ではmiR-1290、miR-345-5p及びmiR-4732-5pの発現レベルが低い。上記判定は、miR-1290の発現レベルと中皮腫との間の負の相関に基づき行われる。
例えば、健常者(ネガティブコントロール)、必要に応じてさらに中皮腫患者(ポジティブコントロール)から採取した生体試料中の、miR-1290、miR-345-5p及びmiR-4732-5pのうちの1以上のmiRNAの発現レベルを測定し、被験者から採取した生体試料中の該miRNAの発現レベルを、ネガティブコントロール及びポジティブコントロールのそれと比較する。発現レベルの比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行われる。
その結果、被験者におけるこれらのmiRNAの発現レベルがネガティブコントロールと比べて低かった場合には、該被験者は、中皮腫に罹患している又は将来罹患する可能性が高いと判定することができる。
本発明の中皮腫の予防及び/又は治療剤(本発明の剤)の投与対象としては、中皮腫細胞におけるmiR-1290の発現レベルが低下している患者が望ましいため、本発明の判定方法は、本発明の剤の投与対象の選別に有用である。
本発明はまた、miR-1290を特異的に検出し得る核酸プローブ及び/又は核酸プライマー、miR-345-5pを特異的に検出し得る核酸プローブ及び/又は核酸プライマー、並びにmiR-4732-5pを特異的に検出し得る核酸プローブ及び/又は核酸プライマーからなる群より選択される1以上の核酸プローブ及び/又は核酸プライマーを含む、中皮腫の診断剤(以下、「本発明の剤(II)」ともいう。)を提供する。本発明の剤(II)に含まれる核酸プローブ及び核酸プライマーは、上記「本発明の判定方法」において使用されるものと同様である。
核酸プローブ及び核酸プライマーは、通常、水もしくは適当な緩衝液(例:TEバッファー、PBSなど)中に適当な濃度となるように溶解されるか、凍結乾燥された状態で、適切な容器中に収容される。或いは、該核酸プローブが固相担体上に固定された核酸アレイの態様で、本発明の剤(II)に含まれ得る。
本発明の剤(II)は、対象miRNAの測定方法に応じて、当該方法の実施に必要な他の成分を構成としてさらに含んでいてもよい。例えば、ノザンブロッティングや核酸アレイを測定に用いる場合には、本発明の剤(II)は、ブロッティング緩衝液、標識化試薬、ブロッティング膜等をさらに含むことができる。in situ ハイブリダイゼーションを測定に用いる場合には、本発明の剤(II)は、標識化試薬、発色基質等をさらに含むことができる。RT-PCRを測定に用いる場合には、本発明の剤(II)は、10×PCR反応緩衝液、10×MgCl2水溶液、10×dNTPs水溶液、Taq DNAポリメラーゼ、逆転写酵素等を更に含むことができる。
3.抗中皮腫活性を有する物質のスクリーニング方法
本発明はまた、被検物質が中皮腫細胞におけるmiR-1290の発現を増強するか否かを評価することを含む、抗中皮腫活性を有する物質のスクリーニング方法(以下、「本発明のスクリーニング方法」ともいう。)を提供する。
本発明のスクリーニング方法に供される被検物質は、いかなる公知化合物および新規化合物であってもよく、例えば、核酸、糖質、脂質、蛋白質、ペプチド、有機低分子化合物、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された化合物ライブラリー、ランダムペプチドライブラリー、あるいは微生物、動植物、海洋生物等由来の天然成分等が挙げられる。
本発明の探索方法は、以下の工程を含む:
(1)被検物質と中皮腫細胞とを接触させること;
(2)被検物質を接触させた細胞におけるmiR-1290の発現レベルを測定し、該発現レベルを、被検物質を接触させない対照細胞におけるmiR-1290の発現レベルと比較すること;並びに
(3)上記(2)の比較結果に基づいて、miR-1290の発現レベルを増大させた被検物質を、抗中皮腫活性を有する物質として選択すること。
本発明のスクリーニング方法において、発現レベルが測定されるmiR-1290には、成熟型、pri-miRNAおよびpre-miRNAが含まれるが、好ましくは、これら全ての型の発現レベルの合計または成熟型の発現レベル、より好ましくは成熟型の発現レベルが測定される。
中皮腫細胞としては、胸膜中皮腫(MPM)、腹膜中皮腫、心膜中皮腫、精巣鞘膜腫等の各種中皮腫患者から切除した中皮腫、好ましくはMPM又は腹膜中皮腫、より好ましくはMPMの腫瘍組織から単離した中皮腫細胞などが挙げられる。中皮腫細胞は、初代培養細胞でもよいし、そこから樹立された細胞株であってもよい。
被検物質と中皮腫細胞との接触は培地中で行われる。培地は、例えば、約5~20%のウシ胎仔血清を含む最少必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)などである。培養条件も同様に適宜決定されるが、例えば、培地のpHは約6~約8であり、培養温度は通常約30~約40℃であり、培養時間は約12~約72時間である。
miR-1290の発現レベルの測定は、上記「本発明の判定方法」の項で述べた方法に従って行うことができる。
発現レベルの比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行なわれ得る。なお、被検物質を接触させない対照細胞におけるmiR-1290の発現レベルは、被検物質を接触させた細胞におけるmiR-1290の発現レベルの測定に対し、事前に測定した発現レベルであっても、同時に測定した発現レベルであってもよいが、実験の精度、再現性の観点から同時に測定した発現レベルであることが好ましい。
比較の結果、miR-1290の発現レベルを増大させた物質が、抗中皮腫活性を有する物質として選択される。
本発明のスクリーニング方法で得られる化合物は、新たな中皮腫の予防及び/又は治療剤の開発のための候補物質として有用である。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例等により何ら限定されるものではない。
細胞培養
理研細胞バンク(つくば、日本)より、悪性胸膜中皮腫(MPM)細胞株であるACC-MESO1及びACC-MESO4を入手した。ATCC(American Type Culture Collection、マナッサス、バージニア、米国)より、MPM細胞株であるMSTO-211H及び非悪性中皮細胞株であるMeT-5A細胞を購入した。MPM細胞株であるL324、N407及びK921は、産業医科大学 第2外科で樹立されたものを用いた。GlutaMAXサプリメント(Invitrogen、カールスバッド、カリフォルニア、米国)、10% 非働化ウシ胎児血清(FBS)及び1%(v / w)ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したRPMI-1640培地、199培地及びDMEMを用いて、MPM及びMeT-5A細胞をそれぞれ5% CO2雰囲気中、37℃で維持した。
実施例1 MPM細胞で発現レベルが低下するmiRNAの同定
6種類のヒトMPM細胞株(MESO1, MESO4, K921, L324, N407, 211H)とヒト不死化胸膜中皮細胞株(MeT-5A)の細胞から、miRNeasy Mini Kit(Qiagen、Hilden、ドイツ)を用いて全RNAで抽出した。得られた全RNAについて、microRNAの発現量を3D-Geneのチップ(東レ社)を用いて網羅的に解析した。2,565種類のmicroRNAから、MeT-5A細胞での値を、6種類のMPM細胞の中で最も高い値で除した値を求め、この値が2以上になる3種類のmicroRNA(hsa-miR-1290、hsa-miR-345-5p及びhsa-miR-4732-5p)を同定した(表1)。
実施例2 リアルタイムPCRによる検証
実施例1にて同定した3種のmiRNAについて、それらの発現レベルをリアルタイムPCRにより検証した。TaqMan MicroRNA Reverse Transcription Kit(米国マサチューセッツ州ウォルサム)を用いて、StepOne PlusリアルタイムPCRシステム(米国マサチューセッツ州ウォルサム)でマイクロRNAのcDNAを合成し、特別に設計されたTaqManプローブを用いてqRT-PCRを行った。各miRNAの増幅に用いたプライマー配列は、ThermoFisher Scientificより購入した。PCR反応は、95℃で20秒間保持した後、40サイクルの増幅(95℃で30秒間の変性、60℃で30秒間のアニーリング及び伸長)にて行った。各細胞のmiRNAとU6(内部標準)のCT値を求め、MeT-5Aが1になるようにΔΔCT法で比を求めた。
その結果、3種類のmiRNAはいずれも、MeT-5A細胞に比べて、MPM細胞での発現が20%以下に低下していた(図1)。
実施例3 miR-1290過剰発現によるMPM細胞の細胞増殖抑制
miRNA発現プラスミドの構築のために、hsa-miR-1290(配列番号2)、hsa-miR-345-5p(配列番号4)及びhsa-miR-4732-5p(配列番号6)の5’末端にBamH1リンカー(GGATCC)、3’末端に(dT)5及びEcoRIリンカー(GAATTC)を付加した2本鎖オリゴDNAを合成し、pSIH1-H1-GFP-T2A-Puroベクター(System Biosciences、Palo Alto、California、United States)のBamHI-EcoRI部位に連結した。製造業者のプロトコルに従って、System Biosciencesのレンチウイルスパッケージングシステムから、各miRNAの発現カセットを含むレンチウイルスを入手した。 MESO1細胞をこれらのウイルスに感染させた後、5 μg/mLのピューロマイシン存在下で各miRNAを発現する細胞(MESO1-1290、MESO1-345-5p、MESO1-4732-5p)を選択した。miRNAを含まないベクターを導入したMESO1細胞(MESO1-ctrl)をコントロール細胞として用いた。
実施例2と同様にして、導入された各miRNAの発現レベルをリアルタイムPCRにより測定し、U6(内部標準)で補正した後、コントール細胞の値が1になるようにΔΔCT法で比を求めた。その結果、各miRNAは、MESO1-ctrlに比べ、いずれも100倍以上に高発現していることが確認された(図2)。
次に、作製されたmiRNA過剰発現細胞を、5% CO2雰囲気中、37℃で4日間培養した。1日毎に細胞数を測定し、培養開始1日後の細胞数を1とした相対値で、細胞数の経日変化を図3に示した。また、各細胞の倍加時間を表2に示す。
hsa-miR-1290過剰発現細胞(MESO1-1290)のみが、コントロール細胞(MESO1-ctrl)と比べて、顕著に細胞増殖能が低下していた。
本発明の核酸は、中皮腫細胞の増殖を顕著に抑制することができ、かつ正常細胞に取り込まれても細胞障害が生じにくいと考えられるので、副作用が少ない中皮腫の治療薬として大いに有用である。

Claims (9)

  1. 中皮腫の予防及び/又は治療剤であって、
    (a) 配列番号1で表されるmiR-1290のヌクレオチド配列を含む核酸、又は(b) 上記(a)のヌクレオチド配列と90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、且つmiR-1290と同等の機能を有するヌクレオチドを含む核酸を含有する、剤。
  2. 核酸が1本鎖または2本鎖である、請求項1に記載の剤。
  3. 核酸が配列番号1で表されるヌクレオチド配列又はその部分配列からなるRNA、或いはその修飾体である、請求項1に記載の剤。
  4. 核酸が配列番号1で表されるヌクレオチド配列からなるRNA又はその修飾体である、請求項1に記載の治療剤。
  5. 核酸が、miR-1290及びその前駆体からなる群から選ばれる少なくとも1種の核酸である、請求項1に記載の治療剤。
  6. 前駆体が、miR-1290のpri-miRNAまたはpre-miRNAである、請求項5に記載の治療剤。
  7. 中皮腫が胸膜中皮腫である、請求項1~6のいずれか1項に記載の治療剤。
  8. miR-1290を特異的に検出し得る核酸プローブ及び/又は核酸プライマーを含む、中皮腫の診断剤。
  9. 以下の工程を含む、抗中皮腫活性を有する物質のスクリーニング方法:
    (1)被検物質と中皮腫細胞とを接触させること;
    (2)被検物質を接触させた細胞におけるmiR-1290の発現レベルを測定し、該発現レベルを、被検物質を接触させない対照細胞におけるmiR-1290の発現レベルと比較すること;並びに
    (3)上記(2)の比較結果に基づいて、miR-1290の発現レベルを増大させた被検物質を、抗中皮腫活性を有する物質として選択すること。
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