JP7393570B1 - フェロニッケル合金とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ステンレス鋼および特殊鋼の原料として用いるのに良好な形状を持ち、高純度であり、特に、微量の硫黄分を有効に活用した、フェロニッケル合金を提供する。【解決手段】以下質量%にて、Ni:10~50%、C:1%以下、S:0.1~2%、P:0.04%以下、Co:2%以下、Cr:2%以下、残部Feおよび不可避的不純物から成り、その粒度が0.05mm~50mmであって、粒子はFe-Ni相およびFe-Ni-S相から構成されるフェロニッケル合金。【選択図】図1

Description

本発明は、ステンレス鋼、特殊鋼などの製鋼工程においてNi源として用いられるフェロニッケル合金に関し、特に、化学成分および粒度を向上させることで製鋼工程において最適な形で原料として扱えることを可能としたフェロニッケル合金に関する。
フェロニッケル合金は、ニッケルを含有するオーステナイトステンレス鋼、二相ステンレス鋼、合金鋼等のニッケル源として、広く使用されている。このフェロニッケル合金は、従来、酸化ニッケル鉱石に含まれる酸化ニッケル、並びに酸化鉄を還元してフェロニッケル合金を製造している。
フェロニッケル合金の製造方法としては、特許文献1に示されるロータリーキルンを用いて乾燥、還元を行う方法、特許文献2で示されるロータリードライヤーと電気炉を組み合わせて乾燥、還元を行う方法、特許文献3に示される電気を用いた還元炉を用いて還元を行う方法が挙げられる。
特許文献1で開示されているフェロニッケル合金製錬方法は、ロータリーキルンを用いて、ニッケル鉱石を半溶融状態として、石炭で還元製錬するものである。その工程では、フェロニッケル合金を効果的に凝集合体として、スラグとフェロニッケル合金粒子の混合体であるクリンカーを製造する。ここで、キーとなるのがフェロニッケル合金粒子を十分に成長させないと、その後のクリンカー粉砕、水中での浮遊選鉱、磁力選鉱を経てのフェロニッケル合金粒子の回収が難しいという技術課題がある。つまり、ニッケルの収率では不利点があるという課題があった。
一方、特許文献2及び3は、フェロニッケル合金を製造するにあたり、最も広く利用されている方法である。その方法とは、ニッケル鉱石と石炭を混合して、ロータリーキルンで予備乾燥、予備還元を行い、その後、電気炉に投入して、フェロニッケル合金とスラグを完全溶融させるものである。つまり、溶融フェロニッケル合金上に溶融スラグが分離してフェロニッケル合金を回収するため、Niの収率としては有利である。しかしながら、そのための三相黒鉛電極を配した放電アーク溶解設備を必要として、かつ、多大な電力を使用するため、コスト的には不利であるという難点がある。なおかつ、数多くの設備を初期投資せねばならないという課題がある。
また、ロータリーキルンで製錬する方法においては、特許文献4に記載されているように、ロータリーキルンの内壁にスラグリングが形成して、生産性を著しく損なうという課題も挙げられていた。さらに、特許文献5に示されている通り、ニッケル鉱石の組み合わせを厳選しないと、適切な操業を実施できないという難点も抱えていた。
上記したニッケル収率に関する技術については、特許文献6で示されている通り、ロータリーキルンを使う特許文献1、4、5に開示された技術において、ロータリーキルンから1300℃で排出され水冷されたクリンカーは、主としてスラグとフェロニッケル粒とからなり、このフェロニッケル合金粒子の表面はFeとNiの硫化物相で覆われているとしている。しかし、硫化物の働きについては何ら開示が無い。
特開平3-10026号公報 特開2016-211032号公報 特開2016-35085号公報 特開2011-047020号公報 特開2006-336028号公報 特開平05-295469号公報
ステンレス鋼および特殊鋼に用いるのに良好な形状を持ち、高純度のフェロニッケル合金を提供する。特に微量の硫黄分を有効に活用したフェロニッケル合金を提供することが目的である。
発明者らは、新たなフェロニッケル合金を提供するために鋭意研究を行った。直径3.6m、長さ72mのロータリーキルンを用いて実験を重ねた。キルンの炉前側つまり、クリンカーを排出する側から、微粉炭バーナーを用いて原料を加熱した。その原料は、粉砕したニッケル鉱石と、還元剤、且つ、熱源となる石炭、およびスラグ溶融材の石灰石を配合し、水分を20%程度に調整しブリケット成型した。石炭は主として無煙炭を用い、その原単位は150kg/oreトン(Ni鉱石1トン当たりの配合量)とした。石灰石は焼成していない炭酸カルシウムの形態であり、60kg/oreトンとした。このブリケットを炉の奥側から装入し、上記バーナーで加熱されると共に、排ガス系統に配置された排風機で炉前から空気を炉内に導入し、最高到達温度1400℃、排出位置で1300℃に制御した。
ニッケル鉱石を石炭で還元する実験を行った。その結果、フェロニッケル合金中に硫黄が0.1~2%含有することにより、フェロニッケル合金粒子は成長し、スラグとの混合物であるクリンカーを、粉砕浮遊選鉱、磁力選鉱を経ても、充分回収可能なフェロニッケル合金を得ることに成功した。そのフェロニッケル合金は、低C濃度、低リン濃度、かつ、低Cr濃度と純度が高い特徴があり、以下にその発明の内容を示す。
すなわち、本発明のフェロニッケル合金の製造方法は、以下質量%にて、Ni:10~50%、C:1%以下、S:0.1~2%、P:0.04%以下、Co:2%以下、Cr:2%以下、残部Feおよび不可避的不純物から成り、その粒度が0.05mm~50mmであって、粒子はFe-Ni相およびFe-Ni-S相から構成され、Fe-Ni相はNi:10~50%、Fe-Ni-S相はFe:10~80%、Ni:5~50%、S:10~40%であるフェロニッケル合金の製造方法であって、以下質量%で、SiO :36~52%、Al :0.2 ~3%、Fe:6~20%、MgO:17~30%、Ni:1.5~3%、Co:0.5%以下、Cr :2%以下、P:0.005%以下、不可避的不純物を含有する酸化ニッケル鉱石と、Fixed-C:70~80%、SiO 、Al 、CaOのアッシュ分10~15%、S:0.3~1.0%、Ig-loss:10~15%の炭材を100~180kg/oreトンと、スラグ溶融剤を10~100kg/oreトンとを粉砕混合して水分を8~30%に調整してブリケットに製団し、前記ブリケットをロータリーキルンに装入し、空気を炉内に導入してクリンカー排出側から加熱しつつ、前記ブリケットを転動させながら半溶融還元してクリンカーとし、排出された前記クリンカーを冷却、破砕、選鉱することを特徴とする
また、フェロニッケル合金粒子の構造としては、Fe-Ni-S相はFe-Ni相間に分布すること、Fe-Ni-S相中に前記Fe-Ni相が分散すること、単一のFe-Ni相の周囲にFe-Ni-S相が被覆することが好ましい。
発明例のフェロニッケル合金粒子を示す模式断面図である。 発明例のフェロニッケル合金粒子を示す模式断面図である。 発明例のフェロニッケル合金粒子を示す模式断面図である。 比較例のフェロニッケル合金粒子を示す模式断面図である。
本願発明のフェロニッケル合金の化学成分について説明する。
Ni:10~50%
鉱石のみから得られる濃度は10%以上である。また、50%を超えると、ステンレス鋼、例えば、SUS304に代表されるFe-18%Cr-8%Ni合金の製鋼工程では、Ni濃度が高くなり過ぎ、Feを補充するためにフェロニッケル合金のみならず、高価な低リンの鉄屑を配合する必要が生じ、製造コストが増大する。そのため、10~50%と規定した。好ましくは、20~40%である。
C:1%以下
フェロニッケル合金の製錬工程において、無煙炭を用いて原料を還元しており、フェロニッケル合金中に不可避的に混入してくる元素である。ステンレス鋼に配合する際に、Cが高すぎると、ステンレス鋼精錬の脱炭工程にて負荷を大きくしてしまう。そのため、1%以下と規定した。好ましくは、0.1%以下である。
S:0.1~2%
硫黄は本願発明で極めて重要な成分である。Sが0.1%未満であると、フェロニッケル合金中にFe-Ni-S相を形成できなくなる。2%を超えるとFe-Ni-S相が多くなりすぎてしまい、キルン内でフェロニッケル合金が溶融状態となり炉壁に付着してしまい、排出側に到達せず、フェロニッケル合金を得ることが出来なくなってしまう。また、フェロニッケル合金を原料としてステンレス鋼、特殊鋼を製造する際に、Sは当該合金の溶接性を阻害する他、熱間加工性を低下するため下げる必要があるが、AOD、VODを用いた近年の精錬技術では脱硫が可能であるがその工程の負荷を高くしてしまう。そのため、0.1~2%と規定した。好ましくは、0.2~1%である。
P:0.04%以下
フェロニッケル合金を原料としてステンレス鋼、特殊鋼を製造する際に、Pは当該合金の溶接性を阻害する他、熱間加工性を損ねるため、下げる必要がある。そのため、0.04%以下と規定した。好ましくは、0.03%以下である。
Co:2%以下
フェロニッケル合金を原料としてステンレス鋼、特殊鋼を製造する際に、Coは当該合金の耐食性を向上する効果がある。一方で、原子力用途等では規制がある元素でもある。そのため2%以下の含有に留めるべきである。好ましくは、1%以下である。
Cr:2%以下
フェロニッケル合金を原料としてステンレス鋼、特殊鋼を製造する際に、Crは当該合金の耐食性を向上する効果がある。一方で、Fe-36%Ni低熱膨張合金に代表されるFe-Ni系合金を製造する際には脱Cr工程を必要としてしまう。そのため2%以下の含有に留めるべきである。好ましくは、1%以下である。
以上の化学成分は、局所的にFe-Ni相、Fe-Ni-S相に限定しないフェロニッケル合金全体としての平均組成である。
フェロニッケル合金の粒度:0.05mm~50mm
フェロニッケル合金はクリンカーを粉砕、浮遊選鉱、磁力選鉱を経て回収できるサイズが0.05mm以上であり、50mmを超えると、キルン内で分離してしまい、排出できなくなるため、逆にNi収率を下げる。従って、0.05mm~50mmとした。好ましくは、0.1~10mmである。
粒子はFe-Ni相およびFe-Ni-S相から構成されるフェロニッケル合金
硫黄はステンレス鋼、特殊鋼を製造する際に溶接性を阻害するが、Fe-Niと反応して高濃度に硫黄を含むFe-Ni-S相を形成すると、その融点を下げてキルン炉内の温度域でFe-Ni-S相はフェロニッケル合金の溶融を助けて、粒子同士が合体成長し、上記の0.05mm以上のサイズに成長させるために有効であるため、Fe-Ni相およびFe-Ni-S相から構成されることとした。
フェロニッケル合金粒子中のFe-Ni相はNi:10~50%、Fe-Ni-S相はFe:10~80%、Ni:5~50%、S:10~40%
Fe-Ni相はNiが10%以上でないと、請求項1に記載のNi:10%以上を達成できない。また、50%を超えると、Fe-Ni相の融点が低下し、Fe-Ni-S相を介した融合による粒成長が困難となる。そのため、Fe-Ni相はNi:10~50%と定めた。Fe-Ni-S相はFe:10~80%、Ni:5~50%、S:10~40%で構成されないと、フェロニッケル合金の溶融性を確保できないため、この範囲に規定した。なお、この相にはCrが2%以下含まれても構わない。その理由は溶融に関わる性質が変わらないためである。
フェロニッケル合金粒子中のFe-Ni-S相はFe-Ni相間に分布すること
フェロニッケル合金粒子中のFe-Ni-S相中にFe-Ni相が分散すること
フェロニッケル合金粒子中の単一のFe-Ni相の周囲にFe-Ni-S相が被覆すること
炉内温度域でFe-Ni-S相が液相を生成し、Fe-Ni相の凝集合体を促してフェロニッケル合金粒子を成長させるため、フェロニッケル合金粒子の構造は、1つの任意の粒子において、図1に示すように、隣接するFe-Ni相間にFe-Ni-S相が分布する形態が望ましい。また、これよりもFe-Ni-S相の含有率が高く、図2に示すように、Fe-Ni-S相中に、図1の場合よりも相対的に小さいFe-Ni相が分散している形態も可能である。さらには、図3に示すように、単一のFe-Ni相が存在し、その周囲をFe-Ni-S相が被覆している構成も許容される。一方、図4に示すようにFe-Ni相のみからなりFe-Ni-S相を含まない構成は本願発明の対象外である。
上記の化学成分を満足するための好ましい製造方法も記載する。特に、ロータリーキルンのサイズは限定されるものではないが、直径3.6m、長さ72m、傾斜角2度のロータリーキルンを用いて操業する。また、回転数は45~60rphとする。キルンの炉前側、つまり、クリンカーを排出する側から、微粉炭バーナーを用いて原料を加熱する。原料は、粉砕したニッケル鉱石、還元剤および熱源となる石炭およびスラグ溶融材の石灰石を配合し、水分を8~30%に調整しブリケット成型した。15%程度が好ましい。石炭は主として無煙炭を用い、その原単位は100~180kg/oreトンとした。石灰石は焼成していない炭酸カルシウムの形態であり、10~100kg/oreトンとした。このブリケットを炉の奥側から10~25oreトン/Hrの供給速度で装入し、上記バーナーで加熱されると共に、排ガス系統に配置された排風機で炉前から空気を炉内に導入し、最高到達温度1300~1500℃、排出位置で1200~1300℃に制御した。それぞれ、凡そ1400℃および凡そ1300℃が好ましい。
本発明では、還元処理に用いる上記酸化ニッケル鉱石は、化学組成が、SiO:36~52%、Al:0.2~3%、Fe:6~20%、MgO:17~30%、Ni:1.5~3%、Co:0.5%以下、Cr:2%以下、P:0.005%以下のものが好ましく用いられる。無煙炭はFixed-C:70~80%、SiO、Al、CaOアッシュ分:10~15%、S:0.3~1.0%、Ig-loss:10~15%が良い。
まず、石炭、ならびに、炉内に供給される空気が、バーナーで加熱されることで反応して、下記の反応が起きる。
C(石炭)+1/2O(空気)=CO(ガス)…(1)
原料が徐々に炉前側に移動する過程で、原料温度が上昇する。高温域において、このCOガスが、原料中の酸化ニッケル、酸化鉄を還元することで、主として原料中のオリビン鉱物中に、ミクロンサイズの微粒フェロニッケル合金を形成する。主として石炭から供給される硫黄分は、還元性雰囲気では、石灰石が熱分解して生じたCaOと下記反応式(2)~(4)の反応を通して、石灰石からCaSを形成する。
CaCO(石灰石)=CaO(固相)+CO(ガス)…(2)
CO+C(石炭)=2CO(ガス)…(3)
CaO(固相)+S(ガス)+CO=CaS(固相)+CO(ガス)…(4)
更に、原料温度が上昇すると、鉱石中のSiO、CaO、Al、MgOが融合して溶融スラグを形成し始める。
SiO(鉱石)+CaO(鉱石)+Al(鉱石)+MgO(鉱石)
=CaO-MgO-SiO-Al(融体スラグ)…(5)
(5)式で形成した融体スラグ(液相)はごく微量であるが、この液相にCaSが溶融していく。このようにして、スラグ中の液相部にSが分布するようになり、下記の反応を引き起こす。
Fe-Ni(フェロニッケル合金)+S(融体スラグ)=Fe-Ni-S(硫化物)…(6)
このFe-Ni-S相はとても重要な役割を果たす。つまり、構造を図4に示すFe-Ni系であるフェロニッケル合金のみでは、状態図を参照してもキルン内最高温度1400℃にて溶融しないのに対して、Fe-Ni-S相は融点が1000℃程度であるため、ロータリーキルン内の温度域において溶融し、この溶けたFe-Ni-S相がFe-Ni相を包みながら、スラグ中の液相部を移動し、別の同一粒子と接触すると合体する。これを、キルンの回転が助長して対数的に大型化していく。なおかつ、鉱石中に微量に含有されるP酸化物、Cr酸化物もCOガスによって還元されて、フェロニッケル合金中に移行する。
(鉱石)+5CO(ガス)=2P(フェロニッケル合金)+5CO(ガス)…(7)
Cr(鉱石)+3CO(ガス)=2Cr(フェロニッケル合金)+3CO(ガス)…(8)
このような合体成長様式によって、フェロニッケル合金の粒度が0.05mm~50mmに成長することが出来、フェロニッケル合金粒子中のFe-Ni-S相はFe-Ni相間に分布する。
さらに、クリンカーが排出側に移動するにつれて、排風機で導入される空気が未反応の状態となる比率が高くなり、酸素分圧が高くなる。そのため、フェロニッケル合金中の鉄が酸化して、下記式に従いスラグ中液相部にFeOをもたらす。
Fe(フェロニッケル合金)+1/2O(ガス)=FeO(固相)…(9)
CaO-MgO-SiO-Al(融体スラグ)+FeO(固相)
=CaO-MgO-SiO-Al-FeO(融体スラグ)…(10)
このFeOが、一旦フェロニッケル合金中に含有されたCr、Pと反応して、下記式に従ってスラグ中に移行することにより、本願発明の範囲に制御することができる。
2P(フェロニッケル合金)+5FeO(融体スラグ)
=5Fe(フェロニッケル合金)+P(融体スラグ)…(11)
2Cr(フェロニッケル合金)+3FeO(融体スラグ)
=3Fe(フェロニッケル合金)+Cr(融体スラグ)…(12)
挿入した石炭は、排出側に至るまでに、ほぼ還元と熱源に消費し尽くされるため、フェロニッケル合金中のCはCOガスとして酸化されることにより、C濃度を本願発明の範囲に制御することができる。
この酸素分圧を適正に制御するのが石炭原単位であり、100~180kg/oreトン、さらに、装入した原料の移動速度を決めるロータリーキルンの回転数は45~60rphに制御することで、スラグの溶融部すなわち液相部の構成比率を20~50体積%に制御でき、本願発明のフェロニッケル合金の化学成分、並びに、組織、粒度も満たすことが可能である。
以下に、実施例を示し、本発明の効果をより明確なものとする。直径3.6m、長さ72m、傾斜角2度のロータリーキルンを用いて操業した。ロータリーキルンの回転数は55rphとした。キルンの炉前側、つまり、クリンカーを排出する側から、微粉炭バーナーを用いて原料を加熱した。原料は、粉砕した酸化ニッケル鉱石、還元剤および熱源となる石炭およびスラグ溶融材の石灰石を配合し、水分を20%程度に調整しブリケット成型した。石炭は無煙炭を用い、その原単位は100~180kg/oreトンとした。石灰石は焼成していない炭酸カルシウムの形態であり、10~100kg/oreトンとした。
このブリケットを炉の奥側から20oreトン/Hrの供給速度で装入し、上記バーナーで加熱されると共に、排ガス系統に配置された排風機で炉前から空気を炉内に導入し、最高到達温度凡そ1400℃、排出位置で凡そ1300℃に制御した。操業は1か月間に渡って継続的に実施し、結果を明確にすることとした。
上記酸化ニッケル鉱石は、操業期間中に種類が切り替わることが多く、それにより変動する化学組成の範囲は、SiO:36~52%、Al:0.2 ~3%、Fe:6~20%、MgO:17~30%、Ni:1.5~3%、Co:0.5%以下、Cr:2%以下、P:0.005%以下の組成の物を用いた。無煙炭も同様に、操業期間中に切り替わることが多く、変動範囲がFixed-C:70~80%、SiO、Al、CaOアッシュ分10~15%、S:0.3~1.0%、Ig-loss:10~15%の物を用いた。実施した結果を表1に示す。なお、各項目の測定及び評価方法は以下の通り行った。
1)化学成分
フェロニッケル合金1kgを、窒素ガスを流しながら高周波誘導炉で溶解した後に、φ35mmの鋳型に流し込み、得られた鋼塊の底部から15mmの位置で切断して、平均組成を測定するための試料を得た。鋼塊切断面をベルトグラインダーで研磨し蛍光X線分析にて測定した。なお、C、Sは、鋼塊からドリルで切粉を作成し、燃焼法で分析した。
2)粒度
フェロニッケル合金を篩にかけて測定した。
3)フェロニッケル合金のFe-Ni相、Fe-Ni-S相の化学組成
フェロニッケル合金粒子1000粒程度を樹脂に埋め込み、研磨後、SEM-EDSにより、構成相を観察しながら、各相の分析を行った。なお、100粒子以上を測定し、各相の平均組成を表1に示した。
4)Fe-Ni-S相の分布形態
上記のSEM観察の際に、Fe-Ni相に対してFe-Ni-S相がどのような形態をとるかを把握し、図1~4に示すA、B、C、Dのいずれに該当するかを記録した。
5)後工程のステンレス鋼溶製に使用した際の課題
実際にステンレス鋼を溶製する際に電気炉に本願のフェロニッケル合金粒子を配合した時の状況を示した。すなわち、SUS304組成を形成するにあたり、ステンレス屑、フェロクロム、鉄屑等の原料に加えて、本願のフェロニッケル合金を使うことによって課題があった際、記録として残したものである。なお、精錬はその後のAODにて脱炭、Cr還元、脱硫を行った。
6)総合評価
以下のように評価した。
◎:フェロニッケル合金の化学成分および粒度、Fe-Ni相とFe-Ni-S相の化学成分、請求項の粒子構造または請求項の粒子構造を満足した場合
〇:フェロニッケル合金の化学成分および粒度、Fe-Ni相とFe-Ni-S相の化学成分、請求項の粒子構造を満足した場合
△:フェロニッケル合金の化学成分および粒度、請求項の粒子構造を満足した場合
×:後工程のステンレス鋼溶製に使用した際に課題が生じた場合
7)備考
備考には、比較例において本願発明例との乖離が発生した理由を示した。
Figure 0007393570000002
以下に、各発明例について説明する。なお、( )を付した数値は請求項1の範囲外であることを示す。
No.1~6は、全ての範囲を満足したため、◎の評価であった。No.7~9はフェロニッケル合金中Fe-Ni-S相の化学成分が一部外れたため、〇の評価であり、参考例とした。No.10、11は、フェロニッケル合金中Fe-Ni-S相の化学成分が一部外れたのと同時に、Fe-Ni-S相の分布形態が外れたために、△の評価となり、参考例とした

比較例について説明する。No.12は、石炭原単位200kg/oreトンとして操業したことにより、C、S、P濃度が上限範囲を超えて高くなり、粒度も50mm以上のものが多く発生しており、Ni収率も悪くなってしまった。そのため、SUS304製造時に、脱炭脱硫強化を余儀なくされ、生産性を阻害された。
No.13は、石炭原単位80kg/oreトンで操業したため、S濃度が下限範囲を低く外れてしまい、粒度も0.05mm以下が発生するなどフェロニッケル合金の成長に悪影響を及ぼした。また、Ni濃度が上限範囲を超えて高くなってしまい、SUS304製造時に、鉄屑配合を余儀なくされた。
No.14は、鉱石のNi含有量が低く、石炭原単位210kg/oreトンで操業したため、Ni濃度が低くなったと共にC濃度が高く、S濃度が低く、P濃度は高く、Cr濃度も高くなってしまった。フェロニッケル合金の粒度も0.05mm以下が発生するなど微粒になってしまった。SUS304製造時は、Ni濃度が低くPが高かったため、少量ずつ利用することが必要となった。また、脱炭強化も行ったことで、生産性を阻害した。
No.15は、石炭原単位が50kg/oreトンで操業したため、Ni濃度が上限範囲を超えて高くなり、S濃度は低くなって外れてしまった。そのため、フェロニッケル合金中にFe-Ni-S相が形成されず、フェロニッケル合金の粒度も0.05mm以下が著しく多くなってしまい、SUS304製造には使えなかった。また、Ni濃度が上限範囲を超えて高くなってしまった。
No.16は、石炭原単位190kg/oreトンで操業したために、C濃度、P濃度のいずれもが上限範囲を超えて外れてしまった。その結果、SUS304製造時には、脱炭強化をするとともに、P濃度が高くなってしまったために少量ずつしか利用できずに生産性を阻害した。
No.17は、鉱石のNi含有量が著しく低かったために、Ni濃度が低いフェロニッケル合金となってしまった。そのため、SUS304製造時には他のNi源も添加することで対応したため、その製造コストが著しく増加してしまった。
No.18は、石炭原単位190kg/oreトンで操業したことにより、S濃度が高く外れてしまい、粒度も50mmを超えるものが発生してNi収率が悪化した。SUS304製造時には、脱硫強化を要して生産性を阻害した。
本願発明により、優れた純度のフェロニッケル合金を安価に提供でき、ステンレス鋼を安価に製造できる。


Claims (4)

  1. 以下質量%にて、Ni:10~50%、C:1%以下、S:0.1~2%、P:0.04%以下、Co:2%以下、Cr:2%以下、残部Feおよび不可避的不純物から成り、その粒度が0.05mm~50mmであって、粒子はFe-Ni相およびFe-Ni-S相から構成され、前記Fe-Ni相はNi:10~50%、前記Fe-Ni-S相はFe:10~80%、Ni:5~50%、S:10~40%であるフェロニッケル合金の製造方法であって、
    以下質量%で、SiO:36~52%、Al:0.2 ~3%、Fe:6~20%、MgO:17~30%、Ni:1.5~3%、Co:0.5%以下、Cr:2%以下、P:0.005%以下、不可避的不純物を含有する酸化ニッケル鉱石と、Fixed-C:70~80%、SiO、Al、CaOのアッシュ分10~15%、S:0.3~1.0%、Ig-loss:10~15%の炭材を100~180kg/oreトンと、スラグ溶融剤を10~100kg/oreトンとを粉砕混合して水分を8~30%に調整してブリケットに製団し、
    前記ブリケットをロータリーキルンに装入し、
    空気を炉内に導入してクリンカー排出側から加熱しつつ、
    前記ブリケットを転動させながら半溶融還元してクリンカーとし、
    排出された前記クリンカーを冷却、破砕、選鉱することを特徴するフェロニッケル合金の製造方法。
  2. 前記フェロニッケル合金粒子中において、前記Fe-Ni-S相は前記Fe-Ni相間に分布することを特徴とする請求項1に記載のフェロニッケル合金の製造方法
  3. 前記フェロニッケル合金粒子中において、前記Fe-Ni-S相中に前記Fe-Ni相が分散することを特徴とする請求項1に記載のフェロニッケル合金の製造方法
  4. 前記フェロニッケル合金粒子中において、単一の前記Fe-Ni相の周囲に前記Fe-Ni-S相が被覆することを特徴とする請求項1に記載のフェロニッケル合金の製造方法
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