JP7386099B2 - 作業車両 - Google Patents

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Description

本発明は、作業車両に係り、特に、電動走行モータによって走行を行う電気駆動システムを走行駆動部分に備えた作業車両に関する。
近年、環境問題、原油高騰などの点から、各工業製品に対して省エネ志向が強まっている。これまでディーゼルエンジンによる油圧駆動システムが中心であった建設車両等の作業車両においても、電動化による高効率化、省エネルギー化が進んでいる。例えば、従来のホイールローダは、エンジンの動力をトルクコンバータ(トルコン)およびトランスミッション(T/M)によりタイヤに伝えて走行を行いながら、フロント部の油圧作業装置のバケット部分で土砂等を掘削・運搬する作業車両である。このようなホイールローダの走行駆動部分を電動化した場合、トルコンの動力伝達効率を向上させることができる。ここで挙げたホイールローダでは、作業中、低速走行状態で車両(前記バケット部分)を土砂等に差し込み、掘削作業を実施するため、そのときのトルコンの動力伝達効率が低下する。この特性を改善するための手段の一つとして、前述のような走行駆動部分を電動化する手法が考えられる。
また、ホイールローダ等の作業車両では、前述のように、掘削した土砂等を運搬する作業を行う。そこで、この作業効率を向上させるためには、現在の運搬量(どの程度バケット部分に土砂等を積んでいるか)を把握し、その状態に適した駆動を行うことが有効である。ここで述べている作業効率とは、例えば単位が[t/h](t:運搬量の重量、h:時間)となる性能であり、短時間でより多くの物量を運搬する指標となる。
このような作業車両における運搬量を検出する方法については、例えば特許文献1(特開平10-37254号公報)に開示されたものがある。この従来技術は、バケットを固定するピン部分に負荷センサを設置し、その垂直方向の負荷を演算し、運搬量(積み込み重量)を推定する方式となっている。この従来技術によれば、簡易な重量計測装置により、作業性を損なうことなく、正確な運搬量を推定することが可能となる。
特開平10-37254号公報
上記従来技術では、バケットの固定ピン部分に直接負荷センサを取り付けているため、正確な運搬量の検出が可能であるものの、バケットの固定ピンの2箇所に負荷センサが必要であり、さらに負荷センサの検出値の垂直方向成分を抽出するために、別途バケットの対地角度を検出する傾斜角検出器を設ける必要がある。
以上のように従来技術では、多数の検出器を用いるため、検出器の誤差、および演算誤差により、運搬量の検出精度が大きく変動することが考えられる。さらに、検出器の故障発生確率も上昇し、運搬量の検出が困難となる可能性も考えられる。
上記事情に鑑み、本発明の目的は、電動走行モータによって走行を行う電気駆動システムを走行駆動部分に有する作業車両において、専用の検出器を追加することなく、作業車両の運搬量を推定することが可能な作業車両を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明に係る作業装置は、車輪を備える車体と、前記車体に備えられ、掘削作業を行う作業具を有する作業装置と、前記車体に備えられた電動走行モータであって、前記車体に備えられたエンジンにより駆動されるモータジェネレータで発電した電力を利用して駆動される電動走行モータにより駆動されて前記車体を走行させる走行駆動装置と、前記走行駆動装置と前記作業装置の出力を制御する制御装置とを備えた作業車両であって、前記制御装置は、前記作業具による掘削作業前後かつ前記作業具に積み込まれる前後の走行における車両速度が最大値となり車両加減速度が0となる時点の前記電動走行モータのトルクに基づいて、前記作業具に積み込まれる前の第1走行駆動力と前記作業具に積み込まれた後の第2走行駆動力とを演算し、演算された前記第1走行駆動力と前記第2走行駆動力との差分に基づいて、前記作業具に積み込まれた運搬量を算出する。
また、本発明に係る作業装置は、車輪を備える車体と、前記車体に備えられ、掘削作業を行う作業具を有する作業装置と、前記車体に備えられた電動走行モータであって、前記車体に備えられたエンジンにより駆動されるモータジェネレータで発電した電力を利用して駆動される電動走行モータにより駆動されて前記車体を走行させる走行駆動装置と、前記走行駆動装置と前記作業装置の出力を制御する制御装置とを備えた作業車両であって、前記制御装置は、現在の作業内容を推定し、推定された前記作業具による掘削作業前後かつ前記作業具に積み込まれる前後の走行における車両速度が最大値となり車両加減速度が0となる時点の前記電動走行モータの出力の差分に基づいて、前記作業具に積み込まれた運搬量を算出する。
本発明によれば、電動走行モータによって走行を行う電気駆動システムを走行駆動部分に有する作業車両において、専用の検出器を追加することなく、作業車両の運搬量を推定することが可能な作業車両を提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本実施例で対象とする作業車両である、電気駆動システムを用いたホイールローダの外観を示す図である。 電気駆動システムを用いたホイールローダのシステム構成例を示す図である。 ホイールローダの基本動作であるV字掘削動作の概要を示す図である。 車両制御装置の機能ブロック構成を示す図である。 パワー配分部の入出力構成を示す図である。 システム制御部のブロック構成を示す図である。 掘削動作時の車両速度および走行モータトルクの例を示す図である。 システム制御部のブロック構成の他例を示す図である。
以下、本発明の実施形態を図面を参照して述べる。
まず、本実施例で対象とする電気駆動システムを用いたホイールローダの外観を図1に、そのシステム構成例を図2に示す。図示実施例のホイールローダ100は、走行駆動部分を電動化したもの、言い換えれば、電動走行モータ(以下、単に走行モータと呼ぶ)によって走行を行う電気駆動システムを走行駆動部分に備えたものである。
本実施例のホイールローダ100は、図1にその外観が示されるように、基本構成として、タイヤ(車輪)11が装着された車体2に、ディーゼルエンジン(以下、単にエンジンと呼ぶ)1や運転室(キャブ)3が搭載されるとともに、車体2の前方に作業装置としての油圧作業装置5が取り付けられた作業車両である。
この電気駆動システムを用いたホイールローダ100のシステム構成では、図2に示すように、エンジン1の出力軸に接続されたM/G(モータジェネレータ)6、それを制御するM/G用インバータ7、ならびに、走行駆動部分の出力軸(プロペラシャフト)8を回転駆動する走行モータ9、それを制御する走行モータ用インバータ10、およびこれらを統括的に制御する車両制御装置15が搭載される。
このホイールローダ100は、走行駆動部分(走行駆動装置)12が、車体2に備えられた、上述した走行モータ9、走行モータ9に連結された出力軸(プロペラシャフト)8、センタージョイント(CJ)8a、デファレンシャルギヤ(Dif)8b、ファイナルギヤ(G)8c等を介してプロペラシャフト8に取り付けられた(4輪の)タイヤ(車輪)11等から構成される。この走行駆動部分(走行駆動装置)12は、上述した車体2に備えられた走行モータ9により駆動されて車体2を走行させる。
また、ホイールローダ100は、エンジン1の駆動によって作動する油圧ポンプ4が備えられ、油圧ポンプ4から圧油が油圧作業装置5へと供給され、油圧作業装置5に供給された圧油は、コントロールバルブ(C/V)5aを介して作業具としてのバケット5b、リフト5c、ステアリング5dへと供給される。詳しくは、ホイールローダ100は、油圧作業装置5に供給された圧油による図示しないバケットシリンダの伸縮動作に伴って、前記作業具としてのバケット5bがチルトもしくはダンプする。また、油圧作業装置5に供給された圧油による図示しないリフトアームシリンダの伸縮動作に伴って、前記リフト5cが上下動する。また、ホイールローダ100は、車体2を構成する前フレームと後フレームとを有し、前フレームと後フレームとが互いにピン結合され、このピンを間に挟んで左右に図示しないステアリングシリンダが設けられている。ホイールローダ100は、油圧作業装置5に供給された圧油によるステアリングシリンダの伸縮動作に伴って、前記ステアリング5dが左右に操舵される構成を有している。このホイールローダ100は、例えば運転室(キャブ)3からオペレータが操作レバーやステアリングホイール、操作ペダル等を操作することにより、エンジン1の動力を利用して走行を行いながら、車体2前方にある油圧作業装置5のバケット5b部分で土砂等を掘削・運搬することができる。
本実施例で対象とする走行駆動部分12の電気駆動システムは、エンジン1によりM/G6を駆動して発電し、その電力を用いて走行モータ9からトルクを発生させてタイヤ11を回転させて車両を駆動するシステムである。本電気駆動システムでは、従来機(トルコン機)と同様に、土砂等の掘削作業を行うフロント部分の油圧作業装置5を油圧により駆動する油圧ポンプ4を備えていて、目的に応じた作業を実施する。それに対して、車両の走行動作は、主にエンジン1の動力によりM/G6で発電した電力を利用し、走行モータ9を駆動することにより行う。本実施例で対象としている電気駆動システムでは、バッテリや電気2重層キャパシタ等の蓄電デバイスを搭載していないため、M/G6でDCバスの電圧の制御を行うように記載しているが、DCバス部分にバッテリや電気2重層キャパシタ等の蓄電装置を接続して、DCバス電圧を制御してもさしつかえない。またその際、DCバスと蓄電装置の間にDCDCコンバータなどの変換器を介してもよい。なお、以上の制御は、図2に示す車両制御装置15によって統括的に行われる。
次に、本実施例で適用対象としているホイールローダ100の基本的動作について述べる。ホイールローダ100の基本動作はV字掘削作業と呼ばれる動作である。このV字掘削作業の概要を図3に示す。図3に示すように、ホイールローダ100は、まず土砂山等の掘削対象物に対して前進し、掘削対象物に突っ込むような形でバケットに土砂等の運搬物を積み込む。その後、後進して元の位置に戻り、ステアリングを操作しながら、かつフロントのバケット部分を上昇させながらダンプ等の運搬車両に向かって前進する。そして、運搬車両に運搬物を積み込んだ(バケットから放土した)後は再び後進し、車両は元の位置に戻る。車両は、図3の説明のようにV字軌跡を描きながらこの作業を繰り返し行うことから、V字掘削作業と呼ばれ、ホイールローダ100の作業時間の大多数を占める基本的動作となっている。そこで、ホイールローダ100の作業効率を向上させるためには、このV字掘削作業における作業効率を向上させることが有効である。
V字掘削作業において作業効率を向上させるためには、バケットに土砂等を積み込む掘削作業と、それに続いて行われるダンプ等の運搬車両への積み込み作業の2つの作業での効率を向上させることが必要である。本実施例はこのうち、後者の積み込み作業の効率向上に寄与する技術である。この積み込み作業とは、ホイールローダ100が掘削作業で運搬物をバケットに積み込んだのち、ダンプ等の運搬車両にアプローチする際のバケットを上昇させながら前進する一連の動作に相当する。ここで、この積み込み作業における最も効率が良い動作とは、ホイールローダ100がダンプ等の運搬車両にアプローチする際の走行と、フロントのバケットを上昇させる動作がバランスよく行われ、短い時間で運搬車両への積み込みが完了する動作である。このとき、走行とバケット上昇動作のバランスが悪いと、例えば、早くバケットを上昇し過ぎた場合には、バケットが高い水平位置で走行せねばならず、走行の安定性を欠き、スムーズな走行が困難になる。一方、これとは逆に、バケットの上昇が遅過ぎる場合は、運搬車両にアプローチできなくなるため、作業時間がかかってしまうことになる。上述のような低い作業効率となる動作は、走行駆動部分とフロントの油圧作業部分のパワー配分が不適正である場合に発生することとなるため、作業効率を向上させるためには、積み込み作業における走行駆動部分と油圧作業部分のパワー配分を最適化する必要がある。
図2に示すように、車両制御装置15は、例えば、フロントの油圧作業装置5等を操作する操作レバーのレバー操作量を表すレバー信号、アクセル量(アクセル開度)を表すアクセル信号、ブレーキ量(ブレーキ踏度)を表すブレーキ信号、FNR信号、車両速度等を入力し、それらに基づいて、ホイールローダ100に配備された各機器を統括的に制御するが、以下では、本実施例の特徴部分である、積み込み作業における走行駆動部分と油圧作業部分のパワー配分を最適化する制御について、詳細に説明する。
図4に、車両制御装置15の機能ブロック図を示す。なお、図示は省略するが、前記車両制御装置15は、処理内容や処理結果が記憶される記憶装置(RAM、ROM等)、当該記憶装置に記憶された処理を実行する処理装置(CPU等)等を備えたマイクロコンピュータ(マイコン)で構成されている。
車両制御装置15にはそれぞれ機能で大別すると、システム制御部30、パワー配分部31、エンジン制御部32、M/G制御部33、油圧制御部34、走行制御部35が設けられる。この中で、上述のパワー配分の最適化制御を実施する部分がパワー配分部31である。
なお、詳細説明は省略するが、エンジン制御部32、M/G制御部33はそれぞれ、車両制御装置15への入力信号に基づいて、エンジン1、M/G用インバータ7(M/G6)の動作状態(エンジン回転数等)を制御する部分である。
図5に、パワー配分部31の入出力図を示す。パワー配分部31では、後述するシステム制御部30で演算された走行出力要求、油圧出力要求、作業状態、さらにはエンジン制御部32(または、ここでは図示していないエンジン制御装置)から出力されるエンジン回転数を入力して、許容されるエンジン出力内で、かつ作業状態に適した油圧出力指令と走行出力指令を演算し、これらの演算値を油圧制御部34、走行制御部35にそれぞれ出力する。このような構成にて油圧部分と走行部分の出力を制御することで、走行駆動装置12と油圧作業装置5間のパワー配分が可能となる。このように、最適なパワー配分を実現するには、パワー配分部31に入力される走行出力要求と油圧出力要求の値を最適化することが重要となる。
ここで、上記の走行出力要求と油圧出力要求の算出方法について述べる。この演算が行われるブロックが図4に示すシステム制御部30である。このシステム制御部30は、車両関係の様々な制御が行われる多機能な処理ブロックとなる。ここでは、その中の機能の一つである、前述の走行出力要求と油圧出力要求を演算する処理について述べる。これらの要求値は、現在の車両の作業状態を求め、その作業状態に最も適したパワー指令を演算した結果、得られる値である。
図6に、システム制御部30のブロック図を示す。
システム制御部30は、走行出力要求と油圧出力要求を演算するために、換言すれば、走行出力要求と油圧出力要求の演算ブロックとして、作業状態推定部40およびパワー要求演算部41を備える。
動作状態推定部40では、油圧作業装置5のレバー操作量、アクセル量、ブレーキ量、車両速度、バケット位置、ポンプ油圧(油圧ポンプ4の吐出圧力)、走行モータ出力(走行モータ9の出力)をそれぞれ入力し、これら入力の状態により、掘削作業や運搬走行、積み込み作業など、現在のホイールローダ100の作業状態(作業内容)を推定する。例えば、掘削作業は、(1)アクセルが踏まれ、(2)中速以下の車両速度で、(3)バケットが低い位置にあって、かつバケットが車両前方に向くようにレバー操作がされている条件が全て検知された場合に、判断される。さらに、ここで推定された作業状態とレバー操作量、アクセル量、ブレーキ量、車両速度、バケット位置、さらには後で説明する現在の運搬量(推定値)(バケット5bへの積み込み量)をパワー要求演算部41に入力し、パワー要求演算部41では、これら入力の状態を基に、車両の作業効率がもっとも高くなるような走行出力要求と油圧出力要求を演算する。このパワー要求演算部41の動作としては、まず、アクセルとブレーキの操作量、および車両速度を入力して走行出力要求を決定する。ここでの走行出力要求の決定方法は、例えば、テーブル検索を用いても良いし、任意の近似式を用意し、演算によって求めても良い。さらに、レバー操作量と車両速度、およびバケット位置を入力して油圧出力要求を演算する。ここでの油圧出力要求の決定方法は、前述の走行出力要求と同様に、テーブル検索を用いても良いし、任意の近似式を用意し、演算によって求めても良い。
さらにここでは、動作状態推定部40で推定した作業状態もパワー要求演算部41に入力する。これは、同様の車両の操作量であっても、作業状態の違いによって、走行駆動装置12と油圧作業装置5に必要な出力の大きさが異なるため、その時点の作業状態に応じて走行出力要求と油圧出力要求を求める特性マップ、もしくは特性式を変更する。ここで得られた走行出力要求と油圧出力要求を前述のパワー配分部31に入力することで、実際の走行駆動装置12と油圧作業装置5の出力制御を実現する。
ここで、パワー要求演算部41には車両(油圧作業装置5のバケット5b)の運搬量も入力している。これは、バケット5bへの積み込み量の違いで車両のバランスや動作内容が異なってくるため、運搬量の大きさに応じて走行駆動装置12と油圧作業装置5のパワー配分を変更し、安定に車両が動作するように制御するためである。例えば、掘削作業でバケット5bに土砂等の運搬物を積み込んだあとの積み込み動作において、運搬量が大きいときに油圧出力を小さくすれば、バケット5bの上昇が遅れてしまう。また、運搬量が小さいときに油圧出力を大きくすれば、早くバケット5bが上昇し過ぎて走行時の車両バランスが悪くなってしまうことが考えられる。
このように、作業効率が良い走行出力(要求)と油圧出力(要求)の大きさを決定するためには、車両の運搬量が必要となる。この運搬量を計測するためには、従来技術で示したように、バケット部分に負荷センサを付して直接検出する方法や、掘削時のバケットおよびリフトの油圧シリンダの推力検出による推定方法が考えられる。これに対して、本実施例では走行モータ9を利用した運搬量推定を行う。このように、走行モータ9のトルクにより運搬量を推定することで、専用のセンサの設置を不要とし、簡易な運搬量推定が可能となる。
システム制御部30は、走行モータ9のトルクによる運搬量推定を実施する機能ブロックとして、走行駆動力演算部42および運搬量演算部43を備える。システム制御部30は、図6に示すように、走行モータトルク(走行モータ9のトルク)とトランスミッションの速度段を走行駆動力演算部42に入力して走行駆動力を演算し、前述の動作状態推定部40で得られる作業状態(作業内容)と、走行駆動力演算部42にて得られる走行駆動力を運搬量演算部43に入力して運搬量推定値を演算し、演算結果である運搬量推定値を(前記パワー要求演算部41に)出力する。
ここで、運搬量演算部43の動作内容について説明する。運搬量演算部43では、動作状態推定部40で得られる動作状態推定結果を入力し、前述の掘削作業を検知したときに、予め走行駆動力演算部42から入力したその掘削作業の前後(作業具としてのバケット5bへの積み込み前後)の走行モータトルクの違い(走行モータトルクの変化率)(詳細には、走行モータトルクに速度段を加味した走行駆動力の変化率)を利用して運搬量を演算する。これは、掘削前である土砂山への突っ込み動作時は空荷状態であり、掘削後の後退動作時は積載状態となっている重量の変化を利用する。
この掘削作業時の走行モータ出力は、以下の(式1)で示される走行抵抗Rによって決まる。
[数1]
R = R1+R2+R3+R4 (式1)
但し、R1:転がり抵抗、R2:空気抵抗、R3:勾配抵抗、R4:加速抵抗、である。
この中で、重量にかかる抵抗はR1:転がり抵抗、R3:勾配抵抗、R4:加速抵抗であり、R2:空気抵抗は重量に関係せず、しかも掘削動作は低速で行われるため、他の抵抗に対して十分小さく、無視してよい成分である。また、R3:勾配抵抗は地面が平地の場合はゼロとなり、こちらも無視できる成分である。なお、掘削作業の現場に傾斜がある場合には、車両に設置してある傾斜センサを利用して掘削作業前後の傾斜状態を検出し、その検出された傾斜状態に応じて、掘削作業前後の走行モータ9の出力やトルクを補正し、補正された走行モータ9の出力やトルクを用いて運搬量を演算(推定)することで、その影響分を排除する。なお、掘削作業前後の走行モータ9の出力やトルクの補正に利用する走行条件としては、前述の傾斜状態の他、空気抵抗に関連する車両速度、周囲の環境状態等も考えられる。
さらに、図7に示すように、掘削作業前後(すなわち、前進時と後進時)それぞれの車両速度が最大値となる時点の走行モータ9のトルク値を用いれば、この検出タイミングでは加減速度が概0となり、R4:加速抵抗の影響も排除することができ、図7中のR11、R12(転がり抵抗)のみの変化で運搬量(ΔM)の推定を行うことが可能となる。この前進時の転がり抵抗R11は以下の(式2)で、後進時の転がり抵抗R12は以下の(式3)でそれぞれ示される。
[数2]
R11 = μMg [N] (式2)
[数3]
R12 = μ(M+ΔM)g [N] (式3)
ここで、μは転がり抵抗係数、Mは車両総重量、gは重力加速度である。
(式2)から分かるように、掘削動作の前後で車両総重量Mに変化があれば、転がり抵抗R1の値も変化する。すなわち、この転がり抵抗R1に応じて走行出力が決まるため、掘削動作の前後での走行モータトルクの違い(詳細には、走行モータトルクに速度段を加味して演算した走行駆動力の違い)を計算することにより、車両総重量Mの変化(ΔM:運搬量に相当)を計算することが可能となる。
以上、運搬量演算部43での、走行モータ9の掘削動作前後のトルクの違い(詳細には、走行駆動力の違い)による運搬量の推定方法について述べた。パワー要求演算部41(およびそれに続くパワー配分部31)では、この運搬量推定値に応じて、掘削動作に続く運搬車両への積み込み動作の走行駆動装置12と油圧作業装置5の出力を最適に配分することが可能となるため、高い作業効率を実現することができる。
なお、運搬量推定値は単独で出力分配制御に用いても良いし、推定精度が低い場合にはバケットに付された負荷センサのバックアップや、シリンダの油圧による運搬量推定値の補正用として活用しても良い。
以上で説明したように、本実施例のホイールローダ(作業車両)100は、タイヤ(車輪)11を備える車体2と、前記車体2に備えられ、バケット(作業具)5bを有する油圧作業装置(作業装置)5と、前記車体2に備えられた電動走行モータ9により駆動されて前記車体2を走行させる走行駆動装置12と、前記走行駆動装置12と前記油圧作業装置5の出力を制御する車両制御装置(制御装置)15とを備え、前記車両制御装置(制御装置)15は、現在の作業内容を推定し、推定された作業前後の前記電動走行モータ9のトルクに基づいて、前記バケット(作業具)5bに積み込まれる前の第1走行駆動力と前記バケット(作業具)5bに積み込まれた後の第2走行駆動力とを演算し、演算された前記第1走行駆動力と前記第2走行駆動力との差分に基づいて、前記バケット(作業具)5bに積み込まれた運搬量を算出する。
また、前記車両制御装置15は、前記算出した運搬量に基づいて、前記バケット(作業具)5bに積み込まれた後の運搬車両への積み込み作業における前記走行駆動装置12と前記油圧作業装置5の出力配分を決定する。
これにより、本実施例によれば、走行モータ9のトルク(詳しくは、走行駆動力)に基づいて作業車両の運搬量を推定することができるため、専用の検出器を追加することなく、作業車両の運搬量を推定することが可能となり、作業効率を向上させることができる。
なお、上述した実施例では、車両の運搬量を推定するのに走行モータ9のトルクを利用したが、車両制御装置15内で演算されているモータパワー(出力:[kW])を用いても良い。この場合のブロック図を図8に示す。ここでの違いは、走行駆動力演算部42の代わりに、走行モータトルクと走行モータ回転数を基に走行モータ出力を演算する走行出力演算部44を備え、運搬量演算部43にて、前記走行出力演算部44で演算された前記走行モータ出力の(掘削作業前後の)変化分(出力差)に応じて運搬量を推定する。
すなわち、図8に示す例のホイールローダ(作業車両)100は、タイヤ(車輪)11を備える車体2と、前記車体2に備えられ、バケット(作業具)5bを有する油圧作業装置(作業装置)5と、前記車体2に備えられた電動走行モータ9により駆動されて前記車体2を走行させる走行駆動装置12と、前記走行駆動装置12と前記油圧作業装置5の出力を制御する車両制御装置(制御装置)15とを備え、前記車両制御装置(制御装置)15は、現在の作業内容を推定し、推定された作業前後の前記電動走行モータ9の出力の差分に基づいて、前記バケット(作業具)5bに積み込まれた運搬量を算出する。
図8に示す例においても、走行モータ9の出力に基づいて作業車両の運搬量を推定することができるため、専用の検出器を追加することなく、作業車両の運搬量を推定することが可能となり、作業効率を向上させることができることは勿論である。
なお、上述した実施例では、作業車両としてホイールローダを例示して説明したが、本発明はこれに限るものではなく、電動走行モータによって走行を行う電気駆動システムを有するものであれば、油圧ショベル、フォークリフト、トラッククレーン、ダンプトラック等の作業車両にも適用できることは当然である。土砂や荷物等が積み込まれる対象としての作業具は、上述したホイールローダや油圧ショベルであればバケットになり、掘削作業を伴わないフォークリフトであればフォークになり、掘削作業を伴わないダンプトラックであればベッセルになる。
また、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
1-エンジン(ディーゼルエンジン)
4-油圧ポンプ
5-油圧作業装置(作業装置)
5a-コントロールバルブ
5b-バケット(作業具)
5c-リフト
5d-ステアリング
6-モータジェネレータ(M/G)
7-M/G用インバータ
8-プロペラシャフト(出力軸)
9-電動走行モータ
10-走行モータ用インバータ
11-タイヤ(車輪)
12-走行駆動部分(走行駆動装置)
15-車体制御装置(制御装置)
30-システム制御部
31-パワー配分部
32-エンジン制御部
33-M/G制御部
34-油圧制御部
35-走行制御部
40-動作状態推定部
41-パワー要求演算部
42-走行駆動力演算部
43-運搬量演算部
44-走行出力演算部
100-ホイールローダ(作業車両)

Claims (6)

  1. 車輪を備える車体と、
    前記車体に備えられ、掘削作業を行う作業具を有する作業装置と、
    前記車体に備えられた電動走行モータであって、前記車体に備えられたエンジンにより駆動されるモータジェネレータで発電した電力を利用して駆動される電動走行モータにより駆動されて前記車体を走行させる走行駆動装置と、
    前記走行駆動装置と前記作業装置の出力を制御する制御装置とを備えた作業車両であって、
    前記制御装置は、前記作業具による掘削作業前後かつ前記作業具に積み込まれる前後の走行における車両速度が最大値となり車両加減速度が0となる時点の前記電動走行モータのトルクに基づいて、前記作業具に積み込まれる前の第1走行駆動力と前記作業具に積み込まれた後の第2走行駆動力とを演算し、演算された前記第1走行駆動力と前記第2走行駆動力との差分に基づいて、前記作業具に積み込まれた運搬量を算出することを特徴とする作業車両。
  2. 請求項1に記載の作業車両において、
    前記制御装置は、現在の作業内容を推定し、推定された前記作業具による掘削作業前後の前記電動走行モータのトルクに基づいて、前記作業具に積み込まれる前の第1走行駆動力と前記作業具に積み込まれた後の第2走行駆動力とを演算し、演算された前記第1走行駆動力と前記第2走行駆動力との差分に基づいて、前記作業具に積み込まれた運搬量を算出することを特徴とする作業車両。
  3. 請求項1に記載の作業車両において、
    前記制御装置は、前記算出した運搬量に基づいて、前記作業具に積み込まれた後の運搬車両への積み込み作業における前記走行駆動装置と前記作業装置の出力配分を決定することを特徴とする作業車両。
  4. 請求項1に記載の作業車両において、
    前記制御装置は、前記作業具に積み込まれる前後の走行条件を検出し、検出された前記走行条件に基づいて、前記電動走行モータのトルクを補正し、補正された前記電動走行モータのトルクに基づいて、前記運搬量を算出することを特徴とする作業車両。
  5. 請求項1に記載の作業車両において、
    前記制御装置は、前記電動走行モータのトルクに基づいて前記電動走行モータの出力を演算し、前記電動走行モータの出力の前記作業具に積み込まれる前後の差分に基づいて、前記作業具に積み込まれた運搬量を算出することを特徴とする作業車両。
  6. 車輪を備える車体と、
    前記車体に備えられ、掘削作業を行う作業具を有する作業装置と、
    前記車体に備えられた電動走行モータであって、前記車体に備えられたエンジンにより駆動されるモータジェネレータで発電した電力を利用して駆動される電動走行モータにより駆動されて前記車体を走行させる走行駆動装置と、
    前記走行駆動装置と前記作業装置の出力を制御する制御装置とを備えた作業車両であって、
    前記制御装置は、現在の作業内容を推定し、推定された前記作業具による掘削作業前後かつ前記作業具に積み込まれる前後の走行における車両速度が最大値となり車両加減速度が0となる時点の前記電動走行モータの出力の差分に基づいて、前記作業具に積み込まれた運搬量を算出することを特徴とする作業車両。
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