JP7380885B2 - 保護監視システム、保護監視方法及び保護監視プログラム - Google Patents

保護監視システム、保護監視方法及び保護監視プログラム Download PDF

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Description

本開示は、対象物に沿って敷設された光ファイバを用いた、長尺インフラストラクチャの保護監視システム等に関する。
今日、海底通信ケーブルは広く用いられ、重要なインフラストラクチャ(以降では、インフラと略す)である。海底通信ケーブルを故意又は過失により損壊する行為は処罰すべき行為と国際法でも示されている。(たとえば、非特許文献1の113条)。海底パイプライン、海底送電ケーブルに対しても同様である。
海底通信ケーブルの損傷の約7割が、漁業活動や船舶の錨によって引き起こされていると言われる。そのような“事故”を防ぐために、まず海底ケーブルの位置を海図に掲載し、海の共同利用者にその正確なルートを知らしめて、注意喚起している。さらに海底ケーブルの周囲を海底ケーブル保護海域(回廊)に指定して、投錨や掘削などを制限している場所もある。このような対策をしてもまだ海底通信ケーブル損傷事故の発生は十分には低減できていない。
警備する方法として、限定された期間であれば警戒船をチャーターして、海底ケーブルに接近する船舶に注意喚起する方法がある。また船舶が操船時に参照する電子海図表示システムにおいて、海底ケーブルに接近した際に、海底ケーブルの周囲を目立つように表示して注意喚起する方法がある。またAIS(Automatic Identification System)のような船舶の位置情報サービスを利用して、海底ケーブルに接近した船舶に無線などで注意喚起する方法がある。ここでAISは、国際海事機関(IMO)の主導により2002年にSOLAS条約(海上人命安全条約)の中で大型船舶に設置が義務付けられ、その後普及が広まっている船舶の航路情報通知システムである。また物体が海底ケーブルに当たったことを監視する手段として例えば特許文献1,2の技術が開示されている。
後述する漁業活動情報とは、海底ケーブルと漁業との干渉回避に理解のある漁業団体から提供される、操業場所を間違えるとケーブルと干渉する可能性がある漁の行われるエリアと期間の情報と、さらにはそのような漁を行う船の個体識別番号などの情報である。
後述する付近作業情報とは、浚渫や掘削、海底ケーブルの敷設や回収、漁礁の設置などの海洋土木工事、音響海底測量、地質調査などの海洋調査などの行われるエリアと期間の情報と、さらにはそのような作業を行う船の個体識別番号などの情報である。
後述する水路通報・航行警報情報とは、前述の付近作業情報を含める場合もあるが、それに加えて、軍事訓練などのエリアと期間の情報や、漂流物の情報、などの情報である。
[光ファイバセンシング技術]
光ファイバセンシングは、例えば、コヒーレント光をセンシング光ファイバに入射し、センシング光ファイバの各部分からの戻り光を検出及び分析して、センシング光ファイバに作用する擾乱(動的歪み)を前記環境情報として取得するものである。このような擾乱は、典型的には、センシング光ファイバの部分に伝わる音響波等によって引き起こされるセンシング光ファイバの振動である。そのような、少なくともセンシング光ファイバの部分における振動の存在を表す情報を前記環境情報として取得する場合、光ファイバセンシングは、分布型音響センシング(DAS:Distributed Acoustic Sensing)と呼ばれる。
DASの技術は、例えば、特許文献3、特許文献4及び非特許文献2などに開示されている。DASはOTDR方式のセンシング方法の一種である。ここでOTDRはoptical time-domain reflectometryの略である。
図1は、一般的なOTDR方式の光ファイバセンシングシステムの動作の説明図である。上はセンシングシステムの主要構成を模式的に示しており、その下にはプローブ光及びその後方散乱光の距離に応じたパワーレベルと、プローブ光及びその後方散乱光が時間とともに移動する様子を模式的に表している。
図1に表されるように、OTDR方式の光ファイバセンシングシステムは、インテロゲーター100と光ファイバ200とを備える。インテロゲーター100は、プローブ光900を、センシング光ファイバである光ファイバ200に送出する。プローブ光900は、光ファイバ200を右方に移動し、移動の過程において、光ファイバ200の各位置において、後方散乱光801、802等の後方散乱光が生じる。当該後方散乱光は、典型的には、レイリー後方散乱光である。後方散乱光は、インテロゲーター100に向けて光ファイバ200を左方に移動し、インテロゲーター100に入射する。光ファイバ200の各位置で生じた後方散乱光は、その位置の環境の影響を受けている。当該環境は、例えば、その位置の温度や音響等の振動の存在である。
インテロゲーター100は、戻り光である後方散乱光が受けている、光ファイバ200の各位置における影響の程度を検出する。
そして、インテロゲーター100は、当該戻り光から検出した情報から、光ファイバ200の各位置における環境に関する環境情報を導出する。当該環境情報は、例えば、光ファイバ200の振動状況を表す情報である。
特許第1619435号公報 特許第3127934号公報 英国特許第2126820号明細書 特開昭59-148835号公報 米国特許第10466172号明細書
UNITED NATIONS CONVENTION ON THE LAW OF THE SEA,[online],令和2年1月25日検索、インターネット<https://www.un.org/Depts/los/convention_agreements/texts/unclos/closindx.htm> R. Posey Jr, G. A. Johnson and S.T. Vohra, "Strain sensing based on coherent Rayleigh scattering in an optical fibre", ELECTRONICS LETTERS, 28th September 2000, Vol. 36 No. 20 G. Marra et al., "Ultrastable laser interferometry for earthquake detection with terrestrial and submarine cables", Science 03 Aug 2018: Vol. 361, Issue 6401, pp. 486-490
背景技術で述べたように、海底ケーブルのような長尺なインフラを、常に監視し、適切な注意喚起を行う方法がなく、損傷事故は十分には低減できていない。例えばAISのような船舶位置情報を用いて海底ケーブルに船舶が接近する都度に無線で注意喚起する方法では、付近を通行するだけで注意喚起されるため、船舶が注意慣れしてしまい、損傷事故防止の効果が薄れてしまうという課題があった。
本発明は上記問題を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、注意慣れを起こしにくい警告機能を備えた、また、ケーブルが障害に至らずとも異常振動を検知した時点で注意喚起できる、保護監視システム、保護監視装置及び保護監視方法を提供することである。
本発明の保護監視システムは、
水中又は水底に設置された長尺インフラストラクチャに沿って設けられた光ファイバと、
前記光ファイバを用いて前記長尺インフラストラクチャの各位置における環境情報を取得するインテロゲーターと、
前記位置において取得された前記環境情報が、予め備えている異常パターンを満たす場合、前記各位置周辺における異常イベントを検出する異常イベント検出手段と、
前記異常イベントが検出された前記位置から所定の範囲に位置する船舶に注意を通知する通知手段を備える。
本発明の保護監視装置は、
水中又は水底に設置された長尺インフラストラクチャに沿って設けられた光ファイバを用いて、前記長尺インフラストラクチャの各位置における環境情報を取得するインテロゲーターと、
前記位置において取得された前記環境情報が、予め備えている異常パターンを満たす場合、前記各位置周辺における異常イベントを検出する異常イベント検出手段と、
前記異常イベントが検出された前記位置から所定の範囲に位置する船舶に注意を通知する通知手段を備える。
本発明の保護監視方法は、
水中又は水底に設置された長尺インフラストラクチャに沿って設けられた光ファイバを用いて、前記長尺インフラストラクチャの各位置における環境情報を取得し、
前記位置において取得された前記環境情報が、予め備えている異常パターンを満たす場合、前記各位置周辺における異常イベントを検出し、
前記異常イベントが検出された前記位置から所定の範囲に位置する船舶に注意を通知する。
本発明の記憶媒体は、
水中又は水底に設置された長尺インフラストラクチャに沿って設けられた光ファイバを用いて、前記長尺インフラストラクチャの各位置における環境情報を取得する処理と、
前記位置において取得された前記環境情報が、予め備えている異常パターンを満たす場合、前記各位置周辺における異常イベントを検出する処理と、
前記異常イベントが検出された前記位置から所定の範囲に位置する船舶に注意を通知する処理と、
を情報処理装置に実行させる保護監視プログラムを記憶する。
上述の態様によれば、注意慣れを起こしにくい警告機能を備えた、また、ケーブルが障害に至らずとも異常振動を検知した時点で注意喚起できる、保護監視システム、保護監視装置、保護監視方法及び記憶媒体を提供できるという効果が得られる。
一般的なOTDR方式の光ファイバセンシングシステムの動作説明図である。 第一の実施形態の保護監視システムの構成を示すブロック図である。 第一の実施形態の第一の例の、警告対象の船舶を決めるアルゴリズムの説明図である。 第一の実施形態の第一の例の処理フロー例を表す概念図である。 第一の実施形態の第二の例の、警告対象の船舶を決めるアルゴリズムの説明図である。 第一の実施形態の第二の例の処理フロー例を表す概念図である。 音または振動による異常イベントの例の説明図である。 第三の実施形態の保護監視システムの処理フロー例を表す概念図である。 第三の実施形態の保護監視システムの処理フロー例を表す概念図である。 第四の実施形態の保護監視システムの構成例を示すブロック図である。 第四の実施形態の保護監視システムの動作例を示すフローチャートである。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下の記載及び図面は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、以下の各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
<第一の実施形態>
まず、図2を参照して、第一の実施形態に係る長尺インフラの保護監視システム1の構成例について説明する。この実施形態では、海底ケーブル10(以下、ケーブルとも呼ぶ)を保護監視の対象物として説明している。なお、対象物は、通信ケーブル、送電ケーブル、パイプラインなどであっても良い。
保護監視システム1は、少なくとも、監視対象となる海底ケーブル10と、海底ケーブル10に備わっている光ファイバ11を用いて海底ケーブル10の周囲の環境情報(典型的にはケーブルに加わる音、振動又は温度)をセンシングするDASインテロゲーター20と、監視サーバー30を備えている。
DASインテロゲーター20(インテロゲーター20とも言う。)は、センシング機能部21及びデータ一次処理部22を含んでいる。DAS技術の概要は背景技術で述べた。光ファイバ11は、機械的な補強のための被覆が施された海底ケーブル10内部に収容されている。また、光ファイバ11は、障害予測の対象物である海底ケーブル10に沿って敷設されていても良い。この光ファイバ11はセンサ機能およびセンシング信号の伝送媒体の役割を持つ。
センシング機能部21は、長尺な光ファイバ11の各点で生じた後方散乱光を順次受信し、各点における環境情報を含んだセンシング信号を出力する。環境情報は、例えば、音、振動、温度又はそれらの時間変化であっても良い。
それらのセンシング信号は監視サーバー30に出力されるが、特にデータ量が膨大となる音、振動のようなデータについては、データ一次処理部22が、異常イベントとして分類してデータ量を絞り込んだうえで、監視サーバー30に出力する。例えば、データ一次処理部22は、環境情報が所定の条件を満たす場合に異常イベントとして分類する。このように、データ一次処理部22は、異常イベント検出手段の一例である。データ一次処理部22が検出した事象の全てをここでは異常イベントと呼ぶことにする。
監視サーバー30は、監視対象の海底ケーブル10の設置位置(地理座標)と海底ケーブル10の種類や海底ケーブル10の設置形態(表面敷設、埋設、付加防護管の有無)などの情報(これらはRPL:route position listと呼ばれる)と、その周辺の地図(海図)、を少なくとも備えている。
また監視サーバー30には少なくともインテロゲーター20からの情報と、他のシステムや社会からの、保護監視対象物の周囲に関係する情報が入力される。そのような情報とは例えば、船舶位置情報(AISなど)、時刻情報、潮流・海気象情報、漁業活動情報、付近作業情報、水路通報・航行警報情報、などの情報である。これらの情報の入手形態は様々であるので説明を省略するが、それらの情報はインターネット等を通じて自動又は半自動的に監視サーバー30に届くように構成されている。このように、監視サーバー30は、船舶位置情報取得手段の一例である。
また監視サーバー30は、情報を出力する手段として、例えば保護監視対象物の周囲にいる船舶への無線通信を用いた通知手段や、パトロール船を持つ公的機関や民間警備会社への通知手段、監視対象物の所有者などの関係者への通知手段を備えている。このように、監視サーバー30は、通知手段の一例である。
[センサ特性の不均一性:ケーブル種類などの違いと補正]
環境情報を取得する海底ケーブル10は、設置場所によってケーブルの種類や設置工法が異なる。これにより海底ケーブル10のセンサとしての特性が場所ごとに異なる。例えば、取得した環境情報を含む信号の中の特定の周波数域の減衰度合いが異なる。後述するデータ一次処理部22においてより高い信頼度のイベント分類結果を得るために、この影響を取り除いて元の信号に近づける補正処理を行うことが望ましい。
ここで、ケーブル種類の違いは、例えば送電用/通信用などによる断面構造の違い、保護被覆の構造の違い(外装鉄線の有無やその種類)などである。設置工法の違いは、例えばケーブルを海底表面に置くだけの工法や、海底に溝を掘ってケーブルを埋める工法などの違いである。
これらのケーブルの場所ごとの違いは、製造記録や施工記録(例えばRPL)を参照すれば分かるので、海底ケーブル10の場所ごとにほぼ一義的に補正できる。具体的な補正方法は、例えばフィルタによる特定の周波数域の振幅を増大させるものである。
なおこの補正を取得データ側に施すのではなく、後述する分類条件側に施す手法も存在する。例えばケーブルの構造により環境情報の高周波側が減衰する特性があれば、取得データの補正はせずに、分類条件の高周波側を取得位置のケーブル種類に応じて減衰させることで、パターン識別の一致が得られやすくなる。しかし取得データ側を補正するほうがデータ利用の汎用性が高まるなどの利点もあり、好ましい。
[センサ特性の不均一性:現地ごとの違いと校正]
敷設されている海底ケーブル10の各点のセンサ特性のばらつきの要因は、前述の施工記録などから一義的に決まる(推定できる)ものだけではない。例えば、一律の深さで埋設されているという記録であっても、実際は場所ごとに埋設深さがばらついていたり、被せていた土砂が流されて露出したりしていることもある。
この課題に対しては、現地に広範囲に伝わる音をリファレンスとして利用して校正する方法が考えられる。リファレンス音には、人工的な音や自然に生ずる音が利用されてよい。同じ音が海底ケーブル10上の各点で感受されるので、それらが同一に近づくように、もしくは音源からの距離に応じた値に近づくように、各点ごとに補正する。
またこの校正により、海底ケーブル10上の各点が、目的とする環境情報の取得に適するかどうかも把握できる。例えば、ある点は感度が非常に低くて補正しきれない、またある点は特定の周波数域で共鳴しやすく補正も難しい、などである。これら環境取得にやや難のある点は、前後の移動平均トレンドと比べることで抽出できる。そこで、後段のイベント検知分類する際に、これら難のある点を、観測点の分布を意識しつつ除外して、ほぼ平均的な環境情報が取得できていると思われる点からのデータを利用することで、観測性能を改善できる。
[地理座標情報の付加]
以上の処理によって得られた環境情報は、様々な用途に使用され得る。そのためには取得位置を地理座標で表現することが求められる。センシング機能部21が出力するセンシングデータの段階では、取得位置はケーブル上の位置(例えばケーブル端からの距離)で表現されている。ケーブル上の位置と、施工記録(RPLなど)に記載されているケーブルが設置されている地理座標データとを照らし合わせることで、各ケーブル上の位置に対応する地理座標が求まる。このケーブル上の位置と地理座標の対応関係は、ケーブル設置後は変わらないため、予め算出してインテロゲーターに記憶させておけばよい。またその際、RPLから水深(標高)データも引用して地理座標情報に含めることが望ましい。
そしてデータ一次処理部22は、センシングデータから異常イベントを検知分析する前に、ケーブル上の位置に対応する地理座標情報を個々のデータに付加する。
[イベントの検知と分類機能]
取得された環境情報には、様々なものが含まれており、その中から注目するイベントを、できるだけ漏れなく、またできるだけ誤検知を少なく、見つける必要がある。本実施形態における、検出すべきイベントは、例えば、何らかの物体がケーブルと接触した振動、重量物が海底を曳かれる振動、重量物がケーブル近くに着底した振動、船から錨鎖を繰り出すときの音などである。一方で、例えば、船の船内の機械音や地震などをケーブル損傷リスクがあるイベントと誤検出して、周辺の船舶に注意喚起してしまうことなどは極力抑制する必要がある。
なお、前述の、ケーブル各点でのセンサ特性の不均一性への対処、地理座標情報の付加は、イベントの検知と分類を行う前に処理済みであるとして説明する。
データ一次処理部22は、異常ではない音に混じって現れる、ケーブル損傷リスクのある音を的確に検知、分類する。そのためにデータ一次処理部22は、既知の複数の異常イベントそれぞれに固有の特徴を分類条件として予め備えている。分類条件に用いられる特徴とは、異常イベント信号の周波数、周波数の時間変化、強度包絡線の時間変化などに存在する特徴である。また分類手法としては、類比判定、パターン識別、機械学習などの技術を組み合わせて用いても良い。
またこれら検知・分類の処理は周波数帯に分けた評価を行うことが望ましい。これらの詳細は後述する。
データ一次処理部22は、取得した環境情報の中に既知の異常イベントが含まれているかを分類条件に照らして調べ、含まれていれば、少なくとも対応する異常イベントの種類および発生時刻と位置を、異常イベントデータとして監視サーバー30に出力する。異常イベントの種類によっては、その検出強度(例えば、振動の大きさ等)などの付随する情報も合わせて出力する。
[イベント分類条件]
イベント分類条件は、海底ケーブル10の設置状況などが異なっても、イベントを正しく検知・分類できるように用意される。その方法は、ケーブルの設置状況などに影響されにくい、異常時にのみ存在する特徴を見出して、それを基に分類するものである。もし同一のイベントが、海底ケーブル10の設置状況などによって1つの分類条件では正しく分類できないとしても、複数の分類条件のいずれか1つで検知されるようにして、同一のイベント種類に紐づければよい。
[的確な分類条件を得る方法]
これらの分類の信頼度を高めるために、事前に、正常時の音・異常時の音の事例データを多数入手して、異常時の音にのみ存在する特徴を見つけ出して、分類条件とすることが重要である。もし事例データの数が十分でない場合は、正常時、異常時のイベントを模擬的に起こして、その時の音・振動を、様々な状況に置かれた海底ケーブル10で取得して、より信頼度の高い分類条件とすることが望ましい。
例えば、データ一次処理部22は、船舶が航行するときに取得される環境情報を非異常パターンとして、船舶の種類、速度などについて多様なケースを採取する。また、錨や重り、底引き漁具などが海底を曳かれるときに取得される環境情報を異常パターンとして、曳行速度や底質条件などについて多様なケースを採取する。そして、非異常パターンにはほとんど含まれず、特定の種類の異常パターンに共通して見られる特徴を見出して、当該種類の異常イベントの検出・分類条件とする。
[取得情報を周波数帯に分けた検知・分類]
データ一次処理部22は、環境情報を検知・分類する際に、環境情報を周波数帯域ごとに分けたのち検知・分類することが望ましい。各々の帯域に分けられたデータの中にイベントが含まれているかどうかを分類条件で判定する。周波数帯域ごとに分けるとは、例えば、極低周波から0.01Hz,0.01から0.1Hz,0.1から1Hz,1から10Hz,10から100Hzのような分け方である。ただし帯域の境界付近に存在するイベントの検出を漏らさないようにするため、各帯域は多少オーバーラップさせることが望ましい。なお、これら複数の周波数帯の検知結果の組合せによって異常イベントを分類判定してもよい。
環境情報データを周波数帯に分けて検知・分類することで、検知不要だが振幅が大きい信号が、検知すべき信号と同時に存在している場合に、それらを周波数的に分離できる可能性がある。これにより、より信頼度の高い検知・分類が可能となる。
また周波数帯に応じてデータサイズが大きく異なるので、周波数帯ごとに分けた方がパターン識別などの演算処理がしやすくなるメリットもある。
ここで、当該イベント検知部分が含まれるオリジナル(各周波数帯に分ける前)のセンシングデータも、イベント分類機能部23で使用するかどうかに関わらず、監視サーバー30に出力して記録しても構わない。例えば後で(オフラインで)詳しく分析したい場合などに利用することができる。このような、用途や状況に応じた動作の細かな設定を可能にするためにプログラマブルな仕様にしておくことが望ましい。
[同一音源の識別・追尾]
ケーブルから離れた場所で発せられた音や振動は、同心円状または球状に広がり、ケーブルの複数の場所で検出される。そこで、検出されたイベントの地理座標および時刻情報をさらに分析することで、一つの音源から出た音であると推定識別することができる。これにより、音源が同一の異常イベントがケーブルの複数個所で検知されても、理想的には1つの異常イベントにまとめられて監視サーバー30に出力される。
さらに音源が移動している場合、この推定識別が継続して行われることで、音源の速度と進行方向の把握と、少し先の予測が可能となる。さらに、音を出す物体が移動しているというモデルをデータ一次処理部22に持ち、モデルに当てはめることで、識別追尾することができる。
一例として、オッタートロール漁具が海底ケーブル10から少し離れた海底を、海底に接触しながら進んでいる場合を考える。データ一次処理部22は、オッタートロール漁具が海底と接触しながら進む振動の特徴パターンを分類条件として予め備えている。データ一次処理部22が、取得したセンシング信号出力の中にオッタートロール漁具が海底を進んでいる際に生じる振動の特徴パターンをケーブル上の複数の個所で検知する。分類されたイベント種類から、検知したケーブル各点の地理座標と検出時刻および検出強度を分析して、同一の音源から音・振動が到来しているモデルに当てはめる。イベントが検知され続ける限り音・振動を発している物体を追尾する。
移動物体のモデルに当てはめることで、過去の履歴から、次に検出される場所が予想できる。そこで次に検知されると予想される場所を、空間的・時間的により細かに調べるように自動設定するなども可能である。また同じ種類のイベントが次に現れる可能性が高い場所では、そのイベントの検出しきい値を下げるなどして、検出・分類の信頼性をより高めることができる。
この、同一音源の識別追尾の処理は、水中音に対してだけでなく、海底地面を伝わってくる振動についても同様に行うことができる。光ファイバ11は両者が混じり合った環境情報を取得するが、両者を周波数や伝搬速度の違いにより分離して分析してもよい。
以上、保護監視システム1の検知・分類機能について説明した。以下では検知・分類された情報に基づく、保護監視システム1の出力について、2つの例で説明する。
[第一の例]
第一の例は、有人の移動物体(例えば船舶)が保護監視対象である海底ケーブル10に損傷を与える、もしくはその危険性がある行為が行われたことを検知した場合に、適切な範囲内の船舶に無線等で自動的に注意喚起する仕組みである。図3のイメージ図および図4のフロー図を参照しながら説明する。
第一の例における注意喚起の方法は、異常イベントを検知した場所からの距離が一定範囲にいる船舶に注意喚起するものである。例えば図3において、異常イベント発生からある時間の経過後に、発生地点に一番近い順に船B、次に船A、船C、船Dがいる。発生地点を中心にとするC2の円で示される領域内を警告範囲とすると、監視サーバー30は船A、B、Cに注意喚起して、船Dには通知しない。警告範囲の半径は、例えば現場水深の3倍として決められる。また、この例において、C1の円で示される領域を警告範囲としても良い
図4のフローを用いて、保護監視システム1の動作について説明する。船舶が発生要因と推定される異常イベントが検知された場合、監視サーバー30は、船舶位置情報データを基に、異常イベント発生地点から一定距離範囲にいる船をリストアップし、記録する(S101)。さらに監視サーバー30は、リストアップされた船舶に無線などで注意喚起する(S102)。図4に示されるBについては後述する。
注意喚起メッセージは例えば次のようなものである。「○時○分に貴船の航行した海域の下にある海底ケーブル10が地理座標〇〇付近にて、何らかの物体が海底に落下した振動を検知したので、注意を求める。もし海底ケーブルに障害が発生した場合には、損害を与えた船舶に損害賠償請求することもありうるので、十分に注意されたい。」
この注意喚起は、海底ケーブル10に障害が生じていなくても、音または振動等の環境情報からリスクのある異常イベントが検知された場合に、その内容に応じたメッセージで発せられる。またその通知範囲は、図3のように、そのリスクのある異常イベントを検知した周囲の一定範囲を航行もしくは停泊していた船舶にのみである。このように、保護監視システム1によれば、警告通知がむやみに多数回発せられることがなくなるため、警告慣れを防ぐことができる。
また、海底ケーブル10に障害が生じていなくても、“損害が発生した場合はその賠償を求めることがある”という警告をすることで、牽制効果を発揮し、海底ケーブル障害を未然に防ぐ効果が期待できる。
[第二の例]
第二の例は、注意喚起する船舶の範囲に工夫を加えたものである。
この例では、衝撃検知時点における船の位置(衝撃検知点からの距離)だけでなく、直近の航跡および衝撃検知時点における船首方向を条件に加える。例えば、衝撃検知点が船の後方にあり、かつ、航跡が衝撃検知点から距離1以内の船に、注意喚起を行う。
ここで、衝撃検知地点が船の後方にあるかどうかは、例えば船の船首方向を起点として60度から120度の範囲に障害検知点がある時に、衝撃検知地点が船の後方にある、と見なす。
これらの条件で図5の各船をチェックする。
船Aは衝撃検知点が船の後方にない。航跡は距離1以上2以内。注意喚起しない。
船Bは衝撃検知点が船の後方にある。航跡は距離1以上2以内。注意喚起しない。
船Cは衝撃検知点が船の後方にある。航跡は距離1以内。注意喚起する。
船Dは衝撃検知点が船の後方にない。航跡は距離1以内。注意喚起しない。
このように、進行方向の条件を加えることにより、注意喚起する船を、衝撃検知点からの距離だけで判定するよりも、より被疑の可能性が高い船に絞り込むことができる。
なおAISによる船の位置の誤差を考慮すべきことは当然であるが、加えて船の位置情報の更新は間欠的であるため、1つの取得情報では船首方向や速度の急変を把握しきれない可能性がある。そこで船首方向は、位置情報更新時の船首方向も加味しつつも、直近の航跡から算出することが望ましい。また船の位置も、航跡の方向に時間幅を持たせて判断することが望ましい。例えば、船Dは衝撃検知時点でもう少し前に進んでいた可能性もあるとすると、衝撃検知点が船の後方に入り、注意喚起の対象になる可能性がある。
フローを図6に示す。監視サーバー30は、まず船舶位置情報データから、異常イベント発生地点周囲の船の異常イベント発生時刻より少し前まで遡った航跡を算出する(S103)。例えば、S103の処理においては、監視サーバー30は、船舶の位置を一定間隔で通知するAIS等のシステムからの情報を受信して保持することにより異常イベント発生時刻よりも前の複数の時刻における船の位置を把握し、航跡を算出する。監視サーバー30は、各船の進行方向に対して後方の範囲が、異常イベント発生地点と重なる又は一定距離範囲にいる船をリストアップし、記録する(S104)。以降のフローは第一の例の注意喚起と同様である(図4のBへ)。
第一の例では、異常イベントを検知した場所からの距離が一定範囲にいる船舶に警告を発した。しかし、第二の例のように、過去の航跡や進行方向、移動速度を考慮してイベント発生時刻に遡って推定すれば、より精度の高い推定が可能となるので、警告慣れをさらに防ぐことができ、牽制効果もより高まる。
以上のように、第一の実施形態の保護監視システム1は、海底ケーブル10が損傷する恐れのある異常イベントを検知した場合の周辺船舶に注意喚起する動作を行う。ここで異常イベントが、例えば漁具が水底を移動しながら擦る音、振動と分類される場合には、船舶位置情報データなどにより船の用途の情報も得ることによって、注意喚起する対象を漁船だけに絞り込むことができる。これによりさらに警告慣れを防ぐことができ、牽制効果を高めることができる。すなわち、上述の態様によれば、保護監視システム1によれば、注意慣れを起こしにくい警告機能を備えた、また、ケーブルが障害に至らずとも異常振動を検知した時点で注意喚起できる、保護監視システムを提供できるという効果が得られる。
[第二の実施形態]
第一の実施形態は、適切な注意喚起により保護監視対象物が損傷させられることを未然に防ぐことを主な目的としている。これに対して第二の実施形態は、機能が停止するような障害事故が発生したり、故意の破壊行為と思われる異常イベントを検知した場合に、自動的に保安警備の行動を更に行う仕組みである。第二の実施形態の保護監視システム1は、第1の実施形態の保護監視システム1と同様の構成を少なくとも備える。
第二の実施形態における保護監視システム1は、異常イベントが生じた周辺を撮影可能な撮影手段を備えている。上記のような異常イベントを検知した場合に周辺を撮影する。例えばカメラを搭載した警戒機やドローンを飛ばしてもよいし、高分解能なカメラを搭載した衛星で撮影してもよい。この画像は事故の証拠として利用できる。このように、警戒機やドローンは、撮影手段の一例である。
また保護監視システム1は、保安当局もしくは警備会社に通報する通報手段を備えている。上記のような異常イベントを検知した場合に警備船などを向かわせて周辺の警備を行わせる。例えばAISトランスポンダを装備していないか作動させていないため、AISなどでは存在を把握できない船舶も少なからず存在する。このような船舶に無線で警告することは困難であるため、現場に警備船などを向かわせてそのような船舶がいることを確認するとともに警告を直接伝える必要がある。
また例えば、保護監視対象物を破壊しようとする行為を止めさせることができる。水底から有価金属を回収して売却する業者の行為がこのような事故を起こすことがある。
また、第二の実施形態の保護監視システム1は、第一の実施形態の保護監視システム1と同様の効果を奏する。
[第三の実施形態]
第三の実施形態では、海底ケーブル10を例に、保護監視システム1が異常イベントを分類し、その種類ごとの対応をする仕組みを説明する。ここでは第一および第二の実施形態で説明した対応も一部含む形で説明している。図7に、検知し対応しようとする典型的な異常イベントの例をイメージ図で示す。第三の実施形態の保護監視システム1は、第二の実施形態の保護監視システム1と同様の構成を備える。
図8、図9のフロー図に基づいて、第三の実施形態における保護監視システム1を説明する。まずインテロゲーター20で異常イベントが検知・分類される(S201)。この段階で無害な種類のイベントに分類されたものは以降の処理を行わず、必要があれば記録して、処理を終了する。このようなイベントには例えば、魚群探知機等の出す音、海洋生物の出す音、などがある。
続いて監視サーバー30は、異常イベントデータを受け取り、データベースに記録する(S202)。さらに以降の処理を行う。
広い範囲で一斉に検知された異常イベントは、地震もしくは地下資源探査等の人工的な地震の可能性があるので、地震として分類される(S203)。監視サーバー30は、数Hz以下の低周波が主体であるなどの特徴により分類して(S204)、地震と推定されれば防災観測機関などに自動的にデータを通知する(S205)。また、低周波が主体でなければ地質調査活動と推定して何もせず終了する(S206)。
監視サーバー30は、局所的な異常イベントと判断した場合(S207)に、海底ケーブル10に物体が当たった場合(ケーブル障害は発生せず)は、第一の実施形態で説明したように注意喚起もしくは保安警備当局などに通知する(S208)。
監視サーバー30は、続いて工事計画情報と対照して(S209)、合致すれば工事起因と推定して何もせず終了する。監視サーバー30は、万一の障害発生に備えて記録を残してもよい(S210)。
工事計画情報とも合致しない場合は、図9のAに移る。
異常イベントが、海面における物体の投下音(S211)、海底に重量物が着底した音(S215)、漁具が海底を引きずられる音(S217)、漁具ではない重量物が海底を引きずられる音(S219)、ケーブル切断作業音(S223)などに分類されていれば、その種類に応じた処理を自動的に行う。
海面における物体の投下音(S211)とは、図7にイメージ図を示したように、海底ケーブル10に障害を与える危険性のある重量物(例えば大型船の錨や重り、不法投棄物)が、海に投下される音や錨を船から降ろす際の錨鎖の船体との接触音(ウィンドラス(windlass)稼働音)などである。海面付近で生じた音であっても大きな音であれば、水中を伝わって海底ケーブル10で検知される。
監視サーバー30は、S211の処理においてこれらの重量物の海への投入音を検知した後に、重量物が海底に着底した振動を検知すれば、船からの投下物があったことがより確実に判定できる。さらに、もし重量物が海底ケーブル10を直撃して、即時に障害が発生してセンシング不能となった場合(S212)も、監視サーバー30は、重量物の海への投入音を基に異常イベント発生場所および時刻として、第二の実施形態で説明した保安警備通報の処理を行うことができる(S213)。これが海面付近で発生した異常音も分類して監視するメリットである。
海底ケーブル10に当たっていなくても(S212の条件分岐における“No”)、周囲に錨を降ろすことは危険であるので、第一の実施形態で説明した注意喚起の通知を行う(S214)。
次に、海底に重量物が着底した音の場合(S215)は、監視サーバー30は、第一の実施形態で説明したように周囲の船舶に注意喚起する(S216)。漁具が引きずられる音の場合(S217)は、監視サーバー30は、第一の実施形態で説明したように漁船に絞って注意喚起する(S218)。
漁具ではない重量物が海底を引きずられる音の場合(S219)、周辺に船がいて(S220)、海象情報も併せて評価して、走錨と推定されれば、監視サーバー30は、第一の実施形態で説明したように注意喚起する(S221)。ここで走錨とは海底に降ろした錨または重りが効かずに船に引かれて水底を移動してしまう状況である。周辺に船がいない場合は、浮標や浮き漁礁の重りが荒天や強い潮流により動いている可能性があるので、監視サーバー30は、警備会社などに現場調査と予防排除の依頼を通知する(S222)。
ケーブル切断作業音や、海底から引き揚げる作業音などの破壊行為を検知した場合(S223)は、第二の実施形態で説明したように、監視サーバー30は、周囲船舶に警告を出すとともに通報する(S224)。
以上説明したような多様な種類の異常イベントを十分な推定精度でイベント分類できる異常イベント分類条件を、データ一次処理部22は備えておくことが望まれる。特徴を学習するための事例データが少ない場合には、実際の海底ケーブル10に対して、人工的かつ模擬的にイベントを起こして、センシングデータを採取し、備えることが望ましい。
また、第三の実施形態の保護監視システム1は、第一の実施形態の保護監視システム1と同様の効果を奏する。
[変形例]
第一乃至第三の実施形態では、光ファイバセンシングの方法として、DASを例に説明したが、DVSやDTS、BOTDRなど他の手法でもよい。ここで、DVSはdistributed vibration sensingの略、DTSはdistributed temperature sensingの略、BOTDRはBrillouin optical time-domain reflectometryの略である。
さらにはOTDR方式以外の、広く分布的にセンシングを行える光ファイバセンシングであっても構わない。例えば特許文献5や非特許文献3では、反射戻り光を使うOTDR方式ではなく、透過光を使う分布型光ファイバセンシング技術が開示されている。
第一乃至第三の実施形態では、海底ケーブルの運用中の例で説明したが、ケーブル敷設工事期間中の敷設済みケーブル区間や、サービス運用休止中の期間の実施であっても構わないことは言うまでもない。
第一乃至第三の実施形態では、ケーブルを海で用いる例で説明したが、河川,湖沼の実施でも有効である。
第一乃至第三の実施形態では、もっぱら通信海底ケーブルで説明したが、光ファイバを含んだ海底電力ケーブルや、光ファイバを沿わせた海底パイプラインでも、本開示を用いた監視が可能である。
第一乃至第三の実施形態では、ケーブルを水中で用いる例で説明したが、地中ケーブルや架空ケーブル等にも同様に適用できるものである。
第一乃至第三の実施形態では、海底ケーブルが感じる音または振動の検知手段として光ファイバセンシングを用いる例で説明したが、海底機器に内蔵した音または振動のセンサ素子を搭載してそれで検知してもよい。
第一乃至第三の実施形態では、海底ケーブルが感じる環境情報として音または振動の現象による監視の例で説明したが、例えば温度変化でもよい。
<第四の実施形態>
第四の実施形態における保護監視システム1Aについて、図10及び図11に基づいて説明する。図10は、保護監視システム1Aの構成例を示すブロック図である。図10に示されるように、保護監視システム1Aは、光ファイバ11、インテロゲーター20A、異常イベント検出手段30A及び通知手段30Bを備える。異常イベント検出手段30Aは、第一乃至第三の実施形態に記載のデータ一次処理部22によって実現されても良い。また、通知手段30Bは、第一乃至第三の実施形態に記載の監視サーバー30によって実現されてもよい。
光ファイバ11は、水中又は水底に設置された長尺インフラ10Aに沿って設けられている。なお、光ファイバ11は、図1に示されるように、長尺インフラの10Aの内部に収容されていても良い。また、インテロゲーター20Aは、光ファイバを用いて長尺インフラ10Aの各位置における環境情報を取得する。また、異常イベント検出手段30Aは、長尺インフラ10Aの各位置において取得された環境情報が、予め備えている異常パターンを満たす場合、長尺インフラ10Aの各位置周辺における異常イベントを検出する。また、通知手段30Bは、異常が発生した位置から所定の範囲に位置する船舶に注意を通知する。以上、保護監視システム1Aの構成について説明した。
次に、保護監視システム1Aの動作を、図11を用いて説明する。図11は、保護監視システムの動作を示すフローチャートである。
まず、インテロゲーター20Aは、長尺インフラに沿って設けられた光ファイバを用いて、環境情報を取得する(S401)。また、異常イベント検出手段30Aは、長尺インフラ10Aの各位置において取得された環境情報が、予め備えている異常パターンを満たす場合、長尺インフラの各位置周辺における異常イベントを検出する(S402)。また、通知手段30Bは、検出された位置から所定の範囲に位置する船舶に注意を通知する(S403)。
以上のように、第四の実施形態の保護監視システム1Aは、長尺インフラ自身又は周囲に生じた異常を検出した場合に、船舶へ注意を通知する。このため、保護監視システム1は、例えば、長尺インフラ10Aが損傷する恐れの異常イベントを検知した場合の周辺船舶に注意喚起する動作を行うことができる。ここで異常イベントが、例えば漁具が水底を移動しながら擦る音、振動と分類される場合には、船舶位置情報データなどにより船の用途の情報も得ることによって、注意喚起する対象を漁船だけに絞り込むことができる。これによりさらに警告慣れを防ぐことができ、牽制効果を高めることができる。すなわち、上述の態様によれば、保護監視システム1Aによれば、注意慣れを起こしにくい警告機能を備えた、また、ケーブルが障害に至らずとも異常振動を検知した時点で注意喚起できる、保護監視システムを提供できるという効果が得られる。
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
水中又は水底に設置された長尺インフラストラクチャに沿って設けられた光ファイバと、
前記光ファイバを用いて前記長尺インフラストラクチャの各位置における環境情報を取得するインテロゲーターと、
前記位置において取得された前記環境情報が、予め備えている異常パターンを満たす場合、前記各位置周辺における異常イベントを検出する異常イベント検出手段と、
前記異常イベントが検出された前記位置から所定の範囲に位置する船舶に注意を通知する通知手段を備える
保護監視システム。
(付記2)
前記異常イベント検出手段は、前記長尺インフラストラクチャの前記位置ごとに前記環境情報の感知感度を補正したのち前記異常パターンの検出を試みる、付記1に記載の保護監視システム。
(付記3)
前記異常イベント検出手段は、前記環境情報を周波数帯に分けたのち、前記異常パターンの検出を試みる、付記1又は2に記載の保護監視システム。
(付記4)
前記異常イベント検出手段は、前記環境情報を分類したのち、前記異常イベントの種類が前記長尺インフラストラクチャから離れた場所で生じた可能性のある種類である場合は、前記長尺インフラストラクチャ上の複数の前記位置で検知された同一の異常イベントを1つの異常イベントにまとめてから出力する、付記1から3の何れか1項に記載の保護監視システム。
(付記5)
前記異常イベント検出手段は、前記環境情報を分類したのち、前記異常イベントの種類が発生地点が移動する可能性のある種類である場合は、移動モデルにあてはめて前記異常イベントの前記発生地点を追尾する、付記1から4の何れか1項に記載の保護監視システム。
(付記6)
前記長尺インフラストラクチャの周囲の水域内の船舶の航行履歴を取得する船舶位置情報取得手段を更に備え、
前記通知手段は、前記異常イベントが生じた時刻における船舶の位置および進行方向に基づいて、前記異常イベントを生じさせた可能性が高い船舶のみに注意喚起する、付記1から5の何れか1項に記載の保護監視システム。
(付記7)
前記通知手段は、前記異常イベントが漁具が水底に接触したことによるものと分類できる場合、前記通知手段は、前記長尺インフラストラクチャの周囲の水域内の船舶のうち、漁船のみに注意を通知する、付記1から6の何れか1項に記載の保護監視システム。
(付記8)
周辺を撮影可能な撮影手段を更に備え、
前記撮影手段は、前記異常イベントが生じた位置の周辺を撮影する付記1から7の何れか1項に記載の保護監視システム。
(付記9)
前記通知手段は、前記異常イベントが生じた位置の周辺の警備を行うように保安当局もしくは警備会社に通知する、付記1から8の何れか1項に記載の保護監視システム。
(付記10)
前記通知手段は、前記異常イベントが前記長尺インフラストラクチャに対する破壊行為に起因するものと分類できる場合、前記通知手段は、保安当局もしくは警備会社に通知する付記9に記載の保護監視システム。
(付記11)
前記異常イベントが、前記長尺インフラストラクチャへの物体の接触、前記長尺インフラストラクチャ近くの水底に物体が落下したこと、前記長尺インフラストラクチャ近くの水底を重量物が曳かれること、または前記長尺インフラストラクチャを破損する行為に伴って生じる音または振動である付記1から10の何れか1項に記載の保護監視システム。
(付記12)
前記異常イベントが、前記長尺インフラストラクチャ近くの水面に重量物が落下したこと、または前記長尺インフラストラクチャ近くの水面で錨鎖が繰り出されること、のいずれかに伴って生じる音または振動である付記1から10の何れか1項に記載の保護監視システム。
(付記13)
前記異常イベント検出手段は、水面に対する物体の投下音を検出し、前記光ファイバから前記環境情報を取得できなくなった場合に、前記物体の落下による障害として検出し、
前記通知手段は、前記異常イベントの発生した位置から所定の範囲に位置する船舶に注意喚起を通知する付記1から12の何れか1項に記載の保護監視システム。
(付記14)
前記異常イベント検出手段は、水面に対する物体の投下音を検出し、前記光ファイバから前記環境情報を取得できる場合に、前記物体の落下を異常イベントとして検出し、
前記通知手段は、前記異常イベントの発生した位置から所定の範囲に位置する船舶に注意喚起を通知する付記1から13の何れか1項に記載の保護監視システム。
(付記15)
水中又は水底に設置された長尺インフラストラクチャに沿って設けられた光ファイバを用いて、前記長尺インフラストラクチャの各位置における環境情報を取得するインテロゲーターと、
前記位置において取得された前記環境情報が、予め備えている異常パターンを満たす場合、前記各位置周辺における異常イベントを検出する異常イベント検出手段と、
前記異常イベントが検出された前記位置から所定の範囲に位置する船舶に注意を通知する通知手段を備える
保護監視装置。
(付記16)
水中又は水底に設置された長尺インフラストラクチャに沿って設けられた光ファイバを用いて、前記長尺インフラストラクチャの各位置における環境情報を取得し、
前記位置において取得された前記環境情報が、予め備えている異常パターンを満たす場合、前記各位置周辺における異常イベントを検出し、
前記異常イベントが検出された前記位置から所定の範囲に位置する船舶に注意を通知する
保護監視方法。
(付記17)
水中又は水底に設置された長尺インフラストラクチャに沿って設けられた光ファイバを用いて、前記長尺インフラストラクチャの各位置における環境情報を取得する処理と、
前記位置において取得された前記環境情報が、予め備えている異常パターンを満たす場合、前記各位置周辺における異常イベントを検出する処理と、
前記異常イベントが検出された前記位置から所定の範囲に位置する船舶に注意を通知する処理と、
を情報処理装置に実行させる保護監視プログラムを記憶する記憶媒体。
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
この出願は、2020年6月29日に出願された日本出願特願2020-111523を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
1 保護監視システム
10 海底ケーブル
11 光ファイバ
20 DASインテロゲーター
21 センシング機能部
22 データ一次処理部
30 監視サーバー

Claims (9)

  1. 水中又は水底に設置された長尺インフラストラクチャに沿って設けられた光ファイバと、
    前記光ファイバを用いて前記長尺インフラストラクチャの各位置における環境情報を取得するインテロゲーターと、
    前記位置において取得された前記環境情報が、予め備えている異常パターンを満たす場合、前記各位置周辺における異常イベントを検出する異常イベント検出手段と、
    前記異常イベントが検出された前記位置から所定の範囲に位置する船舶に注意を通知する通知手段を備え、
    前記異常イベント検出手段は、前記環境情報を分類したのち、前記異常イベントの種類が前記長尺インフラストラクチャから離れた場所で生じた可能性のある種類である場合は、前記長尺インフラストラクチャ上の複数の前記位置で検知された同一の異常イベントを1つの異常イベントにまとめてから出力する、保護監視システム。
  2. 水中又は水底に設置された長尺インフラストラクチャに沿って設けられた光ファイバと、
    前記光ファイバを用いて前記長尺インフラストラクチャの各位置における環境情報を取得するインテロゲーターと、
    前記位置において取得された前記環境情報が、予め備えている異常パターンを満たす場合、前記各位置周辺における異常イベントを検出する異常イベント検出手段と、
    前記異常イベントが検出された前記位置から所定の範囲に位置する船舶に注意を通知する通知手段を備え、
    前記異常イベント検出手段は、前記環境情報を分類したのち、前記異常イベントの種類が発生地点が移動する可能性のある種類である場合は、移動モデルにあてはめて前記異常イベントの前記発生地点を追尾する、保護監視システム。
  3. 水中又は水底に設置された長尺インフラストラクチャに沿って設けられた光ファイバと、
    前記光ファイバを用いて前記長尺インフラストラクチャの各位置における環境情報を取得するインテロゲーターと、
    前記位置において取得された前記環境情報が、予め備えている異常パターンを満たす場合、前記各位置周辺における異常イベントを検出する異常イベント検出手段と、
    前記異常イベントが検出された前記位置から所定の範囲に位置する船舶に注意を通知する通知手段を備え、
    前記通知手段は、前記異常イベントが漁具が水底に接触したことによるものと分類できる場合、前記通知手段は、前記長尺インフラストラクチャの周囲の水域内の船舶のうち、漁船のみに注意を通知する、保護監視システム。
  4. 前記異常イベント検出手段は、前記長尺インフラストラクチャの前記位置ごとに前記環境情報の感知感度を補正したのち前記異常パターンの検出を試みる、請求項1から3の何れか1項に記載の保護監視システム。
  5. 前記異常イベント検出手段は、前記環境情報を周波数帯に分けたのち、前記異常パターンの検出を試みる、請求項1から4の何れか1項に記載の保護監視システム。
  6. 前記長尺インフラストラクチャの周囲の水域内の船舶の航行履歴を取得する船舶位置情報取得手段を更に備え、
    前記通知手段は、前記異常イベントが生じた時刻における船舶の位置および進行方向に基づいて、前記異常イベントを生じさせた可能性が高い船舶のみに注意喚起する、請求項1から5の何れか1項に記載の保護監視システム。
  7. 周辺を撮影可能な撮影手段を更に備え、
    前記撮影手段は、前記異常イベントが生じた位置の周辺を撮影する請求項1からの何れか1項に記載の保護監視システム。
  8. 水中又は水底に設置された長尺インフラストラクチャに沿って設けられた光ファイバを用いて、前記長尺インフラストラクチャの各位置における環境情報を取得し、
    前記位置において取得された前記環境情報が、予め備えている異常パターンを満たす場合、前記各位置周辺における異常イベントを検出し、
    前記異常イベントが検出された前記位置から所定の範囲に位置する船舶に注意を通知し、
    前記環境情報を分類し、
    前記異常イベントの種類が前記長尺インフラストラクチャから離れた場所で生じた可能性のある種類である場合は、前記長尺インフラストラクチャ上の複数の前記位置で検知された同一の異常イベントを1つの異常イベントにまとめてから出力する、
    保護監視方法。
  9. 水中又は水底に設置された長尺インフラストラクチャに沿って設けられた光ファイバを用いて、前記長尺インフラストラクチャの各位置における環境情報を取得する処理と、
    前記位置において取得された前記環境情報が、予め備えている異常パターンを満たす場合、前記各位置周辺における異常イベントを検出する処理と、
    前記異常イベントが検出された前記位置から所定の範囲に位置する船舶に注意を通知する処理と、
    前記環境情報を分類する処理と、
    前記異常イベントの種類が前記長尺インフラストラクチャから離れた場所で生じた可能性のある種類である場合は、前記長尺インフラストラクチャ上の複数の前記位置で検知された同一の異常イベントを1つの異常イベントにまとめてから出力する処理と、
    を情報処理装置に実行させる保護監視プログラム。
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