JP7358322B2 - 磁気記録媒体および磁気記録再生装置 - Google Patents
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Description
非磁性支持体と強磁性粉末を含む磁性層とを有する磁気記録媒体であって、
上記磁性層を70atmの圧力で押圧した後の磁性層の表面ゼータ電位の等電点(以下、「押圧後の磁性層の表面ゼータ電位の等電点」または「押圧後等電点」とも記載する。)が5.5以上である磁気記録媒体、
に関する。単位に関して、1atm=101325Pa(パスカル)=101325N(ニュートン)/m2である。
本発明の一態様は、非磁性支持体と強磁性粉末を含む磁性層とを有する磁気記録媒体であって、上記磁性層を70atmの圧力で押圧した後の磁性層の表面ゼータ電位の等電点が5.5以上である磁気記録媒体に関する。
上記の磁性層を押圧する圧力70atmは、押圧により磁性層の表面に加わる面圧である。20m/minの速度で磁気記録媒体を走行させながら、2つのロール間を通過させることにより、磁性層の表面に70atmの面圧が加えられる。走行中の磁気記録媒体には、走行方向に0.5N/mの張力が加えられる。例えば、テープ状の磁気記録媒体(即ち磁気テープ)については、走行中の磁気テープの長手方向に0.5N/mの張力が加えられる。上記押圧は、磁気記録媒体を2つのロール間を合計6回通過させ、各ロール間を通過する際にそれぞれ70atmの面圧を加えて行う。上記ロールとしては、金属ロールを使用し、ロールは加熱しない。押圧を行う環境は、雰囲気温度20~25℃、相対湿度40~60%の環境とする。上記の押圧が行われる磁気記録媒体は、相対湿度40~60%の室温環境下での10年以上の長期保管も、かかる長期保管に相当する保管またはかかる長期保管に相当する加速試験も行われていない磁気記録媒体とする。この点は、特記しない限り、本発明および本明細書に記載の磁気記録媒体に関する各種物性についても同様とする。
以上の押圧は、例えば、磁気記録媒体の製造のために使用されるカレンダ処理機を利用して行うことができる。例えば、磁気テープカートリッジに収容されている磁気テープを取り出し、カレンダ処理機においてカレンダロール間を通過させることにより、磁気テープを70atmの圧力で押圧することができる。
例えば、磁気テープは、通常、磁気テープカートリッジ内にリールに巻き取られた状態で収容される。したがって、アクセス頻度が低いデータが記録された後の磁気テープの長期間の保管も、磁気テープカートリッジに収容された状態で行われる。リールに巻き取られた磁気テープは、磁性層表面とバックコート層(バックコート層を有する場合)または非磁性支持体の磁性層側とは反対側の表面(バックコート層を有さない場合)とが接触しているため、磁気テープカートリッジ内で磁性層は押圧された状態にある。本発明者は、各種シミュレーションを行った結果、雰囲気温度20~25℃、相対湿度40~60%の環境(アーカイブでの保管環境の一例)における約10年の長期保管(アーカイブの一例)に相当する加速試験としては、磁性層を70atmの圧力で押圧することが適切であると判断するに至った。そこで本発明者が、磁性層を70atmで押圧した後に走行安定性試験を行い、この試験の結果に基づき鋭意検討を重ねた結果、押圧後等電点が5.5以上の磁気記録媒体は、磁性層を70atmで押圧した後の走行安定性、即ち上記長期保管後に相当する状態での走行安定性に優れることが判明した。この点は、先に示した特開2019-008849号公報(特許文献1)に記載されていない、従来知られていなかった新たな知見を得た。
本発明および本明細書において、磁性層の表面ゼータ電位の等電点とは、流動電位法(流動電流法とも呼ばれる。)により測定される表面ゼータ電位がゼロになるときのpHの値をいう。測定対象の磁気記録媒体からサンプルを切り出し、磁性層の表面が電解液と接するようにサンプルを測定セル内に配置する。表面ゼータ電位は、測定セルに圧力を変化させて電解液を流し、各圧力での流動電位を測定した後、以下の算出式より求められる。
以上の測定を、上記押圧後の磁気記録媒体から切り出した異なるサンプルを用いて室温で合計3回行い、各回の測定において表面ゼータ電位の値がゼロになるときのpHを求める。電解液の粘度および比誘電率としては、室温での測定値を用いる。本発明および本明細書において、「室温」は、20~27℃の範囲とする。磁性層について、こうして求められた3つのpHの算術平均を、測定対象の磁気記録媒体の押圧後の磁性層の表面ゼータ電位の等電点とする。pH9の電解液としては、1mmol/LのKCl水溶液を、0.1mol/LのKOH水溶液を用いてpH9に調整したものを用いる。その他のpHの電解液は、こうして調整されたpH9の電解液を、0.1mol/LのHCl水溶液を用いてpH調整したものを用いる。上記方法によって測定される表面ゼータ電位の等電点は、上記押圧後の磁性層の表面について求められる等電点である。
長期保管後の走行安定性の更なる向上の観点から、上記磁気記録媒体の押圧後の磁性層の表面ゼータ電位の等電点は、5.7以上であることが好ましく、6.0以上であることがより好ましい。磁性層の表面ゼータ電位の等電点は、詳細を後述するように、磁性層形成のために使用される成分の種類、磁性層の形成工程等によって制御することができる。制御の容易性等の観点からは、磁性層の表面ゼータ電位の等電点は、7.0以下であることが好ましく、6.7以下であることがより好ましく、6.5以下であることが更に好ましい。
以下、上記磁気記録媒体について、更に詳細に説明する。
(強磁性粉末)
磁性層に含まれる強磁性粉末としては、各種磁気記録媒体の磁性層において用いられる強磁性粉末として公知の強磁性粉末を一種または二種以上組み合わせて使用することができる。強磁性粉末として平均粒子サイズの小さいものを使用することは記録密度向上の観点から好ましい。この点から、強磁性粉末の平均粒子サイズは50nm以下であることが好ましく、45nm以下であることがより好ましく、40nm以下であることが更に好ましく、35nm以下であることが一層好ましく、30nm以下であることがより一層好ましく、25nm以下であることが更に一層好ましく、20nm以下であることがなお一層好ましい。一方、磁化の安定性の観点からは、強磁性粉末の平均粒子サイズは5nm以上であることが好ましく、8nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることが更に好ましく、15nm以上であることが一層好ましく、20nm以上であることがより一層好ましい。
強磁性粉末の好ましい具体例としては、六方晶フェライト粉末を挙げることができる。六方晶フェライト粉末の詳細については、例えば、特開2011-225417号公報の段落0012~0030、特開2011-216149号公報の段落0134~0136、特開2012-204726号公報の段落0013~0030および特開2015-127985号公報の段落0029~0084を参照できる。
Hc=2Ku/Ms{1-[(kT/KuV)ln(At/0.693)]1/2}
[上記式中、Ku:異方性定数(単位:J/m3)、Ms:飽和磁化(単位:kA/m)、k:ボルツマン定数、T:絶対温度(単位:K)、V:活性化体積(単位:cm3)、A:スピン歳差周波数(単位:s-1)、t:磁界反転時間(単位:s)]
希土類原子表層部含有率/希土類原子バルク含有率>1.0
の比率を満たすことを意味する。後述の六方晶ストロンチウムフェライト粉末の希土類原子含有率とは、希土類原子バルク含有率と同義である。これに対し、酸を用いる部分溶解は六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部を溶解するため、部分溶解により得られる溶解液中の希土類原子含有率とは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部における希土類原子含有率である。希土類原子表層部含有率が、「希土類原子表層部含有率/希土類原子バルク含有率>1.0」の比率を満たすことは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子において、希土類原子が表層部に偏在(即ち内部より多く存在)していることを意味する。本発明および本明細書における表層部とは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表面から内部に向かう一部領域を意味する。
また、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末を磁性層の強磁性粉末として用いることは、磁気ヘッドとの摺動によって磁性層表面が削れることを抑制することにも寄与すると推察される。即ち、磁気記録媒体の走行耐久性の向上にも、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末が寄与し得ると推察される。これは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表面に希土類原子が偏在することが、粒子表面と磁性層に含まれる有機物質(例えば、結合剤および/または添加剤)との相互作用の向上に寄与し、その結果、磁性層の強度が向上するためではないかと推察される。
繰り返し再生における再生出力の低下をより一層抑制する観点および/または走行耐久性の更なる向上の観点からは、希土類原子含有率(バルク含有率)は、0.5~4.5原子%の範囲であることがより好ましく、1.0~4.5原子%の範囲であることが更に好ましく、1.5~4.5原子%の範囲であることが一層好ましい。
上記部分溶解とは、溶解終了時に液中に六方晶ストロンチウムフェライト粉末の残留が目視で確認できる程度に溶解することをいう。例えば、部分溶解により、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子について、粒子全体を100質量%として10~20質量%の領域を溶解することができる。一方、上記全溶解とは、溶解終了時に液中に六方晶ストロンチウムフェライト粉末の残留が目視で確認されない状態まで溶解することをいう。
上記部分溶解および表層部含有率の測定は、例えば、以下の方法により行われる。ただし、下記の試料粉末量等の溶解条件は例示であって、部分溶解および全溶解が可能な溶解条件を任意に採用できる。
試料粉末12mgおよび1mol/L塩酸10mLを入れた容器(例えばビーカー)を、設定温度70℃のホットプレート上で1時間保持する。得られた溶解液を0.1μmのメンブレンフィルタでろ過する。こうして得られたろ液の元素分析を誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)分析装置によって行う。こうして、鉄原子100原子%に対する希土類原子の表層部含有率を求めることができる。元素分析により複数種の希土類原子が検出された場合には、全希土類原子の合計含有率を、表層部含有率とする。この点は、バルク含有率の測定においても、同様である。
一方、上記全溶解およびバルク含有率の測定は、例えば、以下の方法により行われる。
試料粉末12mgおよび4mol/L塩酸10mLを入れた容器(例えばビーカー)を、設定温度80℃のホットプレート上で3時間保持する。その後は上記の部分溶解および表層部含有率の測定と同様に行い、鉄原子100原子%に対するバルク含有率を求めることができる。
強磁性粉末の好ましい具体例としては、強磁性金属粉末を挙げることもできる。強磁性金属粉末の詳細については、例えば特開2011-216149号公報の段落0137~0141および特開2005-251351号公報の段落0009~0023を参照できる。
強磁性粉末の好ましい具体例としては、ε-酸化鉄粉末を挙げることもできる。本発明および本明細書において、「ε-酸化鉄粉末」とは、X線回折分析によって、主相としてε-酸化鉄型の結晶構造が検出される強磁性粉末をいうものとする。例えば、X線回折分析によって得られるX線回折スペクトルにおいて最も高強度の回折ピークがε-酸化鉄型の結晶構造に帰属される場合、ε-酸化鉄型の結晶構造が主相として検出されたと判断するものとする。ε-酸化鉄粉末の製造方法としては、ゲーサイトから作製する方法、逆ミセル法等が知られている。上記製造方法は、いずれも公知である。また、Feの一部がGa、Co、Ti、Al、Rh等の置換原子によって置換されたε-酸化鉄粉末を製造する方法については、例えば、J. Jpn. Soc. Powder Metallurgy Vol. 61 Supplement, No. S1, pp. S280-S284、J. Mater. Chem. C, 2013, 1, pp.5200-5206等を参照できる。ただし、上記磁気記録媒体の磁性層において強磁性粉末として使用可能なε-酸化鉄粉末の製造方法は、ここで挙げた方法に限定されない。
粉末を、透過型電子顕微鏡を用いて撮影倍率100000倍で撮影し、総倍率500000倍になるように印画紙にプリントして粉末を構成する粒子の写真を得る。得られた粒子の写真から目的の粒子を選びデジタイザーで粒子の輪郭をトレースし粒子(一次粒子)のサイズを測定する。一次粒子とは、凝集のない独立した粒子をいう。
以上の測定を、無作為に抽出した500個の粒子について行う。こうして得られた500個の粒子の粒子サイズの算術平均を、粉末の平均粒子サイズとする。上記透過型電子顕微鏡としては、例えば日立製透過型電子顕微鏡H-9000型を用いることができる。また、粒子サイズの測定は、公知の画像解析ソフト、例えばカールツァイス製画像解析ソフトKS-400を用いて行うことができる。後述の実施例に示す平均粒子サイズは、特記しない限り、透過型電子顕微鏡として日立製透過型電子顕微鏡H-9000型、画像解析ソフトとしてカールツァイス製画像解析ソフトKS-400を用いて測定された値である。本発明および本明細書において、粉末とは、複数の粒子の集合を意味する。例えば、強磁性粉末とは、複数の強磁性粒子の集合を意味する。また、複数の粒子の集合とは、集合を構成する粒子が直接接触している形態に限定されず、後述する結合剤、添加剤等が、粒子同士の間に介在している形態も包含される。粒子との語が、粉末を表すために用いられることもある。
(1)針状、紡錘状、柱状(ただし、高さが底面の最大長径より大きい)等の場合は、粒子を構成する長軸の長さ、即ち長軸長で表され、
(2)板状または柱状(ただし、厚みまたは高さが板面または底面の最大長径より小さい)の場合は、その板面または底面の最大長径で表され、
(3)球形、多面体状、不定形等であって、かつ形状から粒子を構成する長軸を特定できない場合は、円相当径で表される。円相当径とは、円投影法で求められるものを言う。
そして、特記しない限り、粒子の形状が特定の場合、例えば、上記粒子サイズの定義(1)の場合、平均粒子サイズは平均長軸長であり、同定義(2)の場合、平均粒子サイズは平均板径である。同定義(3)の場合、平均粒子サイズは、平均直径(平均粒径、平均粒子径ともいう)である。
上記磁気記録媒体は塗布型磁気記録媒体であることができ、磁性層に結合剤を含むことができる。結合剤とは、一種以上の樹脂である。結合剤としては、塗布型磁気記録媒体の結合剤として通常使用される各種樹脂を用いることができる。例えば、結合剤としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート等を共重合したアクリル樹脂、ニトロセルロース等のセルロース樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルキラール樹脂等から選ばれる樹脂を単独で用いるか、または複数の樹脂を混合して用いることができる。これらの中で好ましいものはポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂、および塩化ビニル樹脂である。これらの樹脂は、ホモポリマーでもよく、コポリマー(共重合体)でもよい。これらの樹脂は、後述する非磁性層および/またはバックコート層においても結合剤として使用することができる。
以上の結合剤については、特開2010-24113号公報の段落0028~0031を参照できる。結合剤として使用される樹脂の平均分子量は、重量平均分子量として、例えば10,000以上200,000以下であることができる。本発明および本明細書における重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、下記測定条件により測定された値をポリスチレン換算して求められる値である。後述の実施例に示す結合剤の重量平均分子量は、下記測定条件によって測定された値をポリスチレン換算して求めた値である。
GPC装置:HLC-8120(東ソー社製)
カラム:TSK gel Multipore HXL-M(東ソー社製、7.8mmID(Inner Diameter)×30.0cm)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
磁性層には、上記の各種成分とともに、必要に応じて一種以上の添加剤が含まれていてもよい。添加剤は、所望の性質に応じて市販品を適宜選択して使用することができる。または、公知の方法で合成された化合物を添加剤として使用することもできる。添加剤の一例としては、上記の硬化剤が挙げられる。また、磁性層に含まれ得る添加剤としては、非磁性フィラー、潤滑剤、分散剤、分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤等を挙げることができる。非磁性フィラーは、非磁性粒子または非磁性粉末と同義である。非磁性フィラーとしては、突起形成剤として機能することができる非磁性フィラーおよび研磨剤として機能することができる非磁性フィラーを挙げることができる。また、添加剤としては、特開2016-051493号公報の段落0030~0080に記載されている各種ポリマー等の公知の添加剤を用いることもできる。
非磁性フィラーの一形態である突起形成剤としては、無機物質の粒子を用いることができ、有機物質の粒子を用いることもでき、無機物質と有機物質との複合粒子を用いることもできる。無機物質としては、金属酸化物等の無機酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等を挙げることができ、無機酸化物が好ましい。一形態では、突起形成剤は、無機酸化物系粒子であることができる。ここで「系」とは、「含む」との意味で用いられる。無機酸化物系粒子の一形態は、無機酸化物からなる粒子である。また、無機酸化物系粒子の他の一形態は、無機酸化物と有機物質との複合粒子であり、具体例としては、無機酸化物とポリマーとの複合粒子を挙げることができる。そのような粒子としては、例えば、無機酸化物の粒子の表面にポリマーが結合した粒子を挙げることができる。
非磁性フィラーの他の一形態である研磨剤は、好ましくはモース硬度8超の非磁性粉末であり、モース硬度9以上の非磁性粉末であることがより好ましい。これに対し、突起形成剤のモース硬度は、例えば8以下または7以下であることができる。なおモース硬度の最大値は、ダイヤモンドの10である。具体的には、アルミナ(Al2O3)、炭化ケイ素、ボロンカーバイド(B4C)、SiO2、TiC、酸化クロム(Cr2O3)、酸化セリウム、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化鉄、ダイヤモンド等の粉末を挙げることができ、中でもα-アルミナ等のアルミナ粉末および炭化ケイ素粉末が好ましい。また、研磨剤の平均粒子サイズは、例えば30~300nmの範囲であり、好ましくは50~200nmの範囲である。
次に非磁性層について説明する。上記磁気記録媒体は、非磁性支持体上に直接磁性層を有していてもよく、非磁性支持体と磁性層との間に非磁性粉末を含む非磁性層を有していてもよい。非磁性層に使用される非磁性粉末は、無機物質の粉末でも有機物質の粉末でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等が挙げられる。これらの非磁性粉末は、市販品として入手可能であり、公知の方法で製造することもできる。その詳細については、特開2011-216149号公報の段落0146~0150を参照できる。非磁性層に使用可能なカーボンブラックについては、特開2010-24113号公報の段落0040~0041も参照できる。非磁性層における非磁性粉末の含有量(充填率)は、好ましくは50~90質量%の範囲であり、より好ましくは60~90質量%の範囲である。
次に、非磁性支持体について説明する。非磁性支持体(以下、単に「支持体」とも記載する。)としては、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド等の公知のものが挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドが好ましい。これらの支持体には、あらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、加熱処理等を行ってもよい。
上記磁気記録媒体は、非磁性支持体の磁性層を有する表面側とは反対の表面側に、非磁性粉末を含むバックコート層を有することもでき、有さなくてもよい。バックコート層には、カーボンブラックおよび無機粉末の一方または両方が含有されていることが好ましい。バックコート層は、結合剤を含むことができ、添加剤を含むこともできる。バックコート層の結合剤および添加剤については、バックコート層に関する公知技術を適用することができ、磁性層および/または非磁性層の処方に関する公知技術を適用することもできる。例えば、特開2006-331625号公報の段落0018~0020および米国特許第7,029,774号明細書の第4欄65行目~第5欄38行目の記載を、バックコート層について参照できる。
非磁性支持体の厚みは、好ましくは3.00~20.00μm、より好ましくは3.00~10.00μm、更に好ましくは3.00~6.00μmである。
(各層形成用組成物の調製)
磁性層、非磁性層またはバックコート層を形成するための組成物は、先に説明した各種成分とともに、通常、溶媒を含む。溶媒としては、塗布型磁気記録媒体を製造するために一般に使用される各種有機溶媒を用いることができる。各層形成用組成物における溶媒量は特に限定されるものではなく、通常の塗布型磁気記録媒体の各層形成用組成物と同様にすることができる。各層を形成するための組成物を調製する工程は、通常、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程を含むことができる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。各層形成用組成物の調製に用いられる成分は、どの工程の最初または途中で添加してもよい。また、個々の成分を2つ以上の工程で分割して添加してもよい。
交流磁場の印加は、磁性層形成用組成物の塗布層の表面に対して垂直に交流磁場が印加されるように、塗布装置に磁石を配置して行うことができる。交流磁場の磁場強度は、例えば0.05~3.00T程度とすることができる。ただし、この範囲に限定されるものではない。本発明および本明細書における「垂直」とは、必ずしも厳密な意味の垂直のみを意味するものではなく、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。誤差の範囲とは、例えば、厳密な垂直±10°未満の範囲を意味することができる。
また、サーボバンドに情報を埋め込む方法としては、上記以外の方法を採用することも可能である。例えば、一対のサーボストライプの群の中から、所定の対を間引くことによって、所定のコードを記録するようにしてもよい。
本発明の一態様は、上記磁気記録媒体と、磁気ヘッドと、を含む磁気記録再生装置に関する。
また、記録再生ヘッドは、他のデータバンドに対する記録および/または再生を行うことも可能である。その際には、先に記載したUDIM情報を利用してサーボ信号読み取り素子を所定のサーボバンドに移動させ、そのサーボバンドに対するトラッキングを開始すればよい。
(1)アルミナ分散物の調製
アルファ化率約65%、BET(Brunauer-Emmett-Teller)比表面積20m2/gのアルミナ粉末(住友化学社製HIT-80)100.0部に対し、2,3-ジヒドロキシナフタレン(東京化成社製)を3.0部、SO3Na基含有ポリエステルポリウレタン樹脂(東洋紡社製UR-4800(SO3Na基:0.08meq/g))の32%溶液(溶媒はメチルエチルケトンとトルエンの混合溶媒)を31.3部、溶媒としてメチルエチルケトンとシクロヘキサノン1:1(質量比)の混合溶媒570.0部を混合し、ジルコニアビーズの存在下で、ペイントシェーカーにより5時間分散させた。分散後、メッシュにより分散液とビーズとを分け、アルミナ分散物を得た。
(磁性液)
強磁性粉末(種類:表1参照) 100.0部
結合剤(種類:表1参照) 表1参照
シクロヘキサノン 150.0部
メチルエチルケトン 150.0部
(研磨剤液)
上記(1)で調製したアルミナ分散物 6.0部
(突起形成剤液)
突起形成剤(種類:表1参照) 1.3部
メチルエチルケトン 9.0部
シクロヘキサノン 6.0部
(その他成分)
ステアリン酸 2.0部
ステアリン酸アミド 0.2部
ブチルステアレート 2.0部
ポリイソシアネート(東ソー社製コロネート(登録商標)) 2.5部
(仕上げ添加溶媒)
シクロヘキサノン 200.0部
メチルエチルケトン 200.0部
非磁性無機粉末:α-酸化鉄 100.0部
平均粒子サイズ(平均長軸長):0.15μm
平均針状比:7
BET比表面積:52m2/g
カーボンブラック 20.0部
平均粒子サイズ:20nm
結合剤A 18.0部
ステアリン酸 2.0部
ステアリン酸アミド 0.2部
ブチルステアレート 2.0部
シクロヘキサノン 300.0部
メチルエチルケトン 300.0部
非磁性無機粉末:α-酸化鉄 80.0部
平均粒子サイズ(平均長軸長):0.15μm
平均針状比:7
BET比表面積:52m2/g
カーボンブラック 20.0部
平均粒子サイズ:20nm
塩化ビニル共重合体 13.0部
スルホン酸塩基含有ポリウレタン樹脂 6.0部
フェニルホスホン酸 3.0部
メチルエチルケトン 155.0部
ポリイソシアネート 5.0部
シクロヘキサノン 355.0部
磁性層形成用組成物を、以下の方法により調製した。
上記磁性液を、各成分をバッチ式縦型サンドミルを用いて24時間分散(ビーズ分散)することにより調製した。分散ビーズとしては、ビーズ径0.5mmのジルコニアビーズを使用した。
突起形成剤液は、上記突起形成剤液の成分を混合した後に、ホーン式超音波分散機により200ccあたり500ワットの超音波出力で60分間超音波処理(分散処理)して得られた分散液を孔径0.5μmのフィルタでろ過して調製した。
上記サンドミルを用いて、上記磁性液、上記研磨剤液、上記突起形成剤液ならびに他の成分(その他成分および仕上げ添加溶媒)を混合し5分間ビーズ分散した後、バッチ型超音波装置(20kHz、300W)で0.5分間処理(超音波分散)を行った。その後、0.5μmの孔径を有するフィルタを用いてろ過を行い磁性層形成用組成物を調製した。
非磁性層形成用組成物を、以下の方法により調製した。
潤滑剤(ステアリン酸、ステアリン酸アミドおよびブチルステアレート)、シクロヘキサノンおよびメチルエチルケトンを除いた各成分を、バッチ式縦型サンドミルを用いて24時間分散して分散液を得た。分散ビーズとしては、ビーズ径0.5mmのジルコニアビーズを使用した。その後、得られた分散液に残りの成分を添加し、ディゾルバーで撹拌した。こうして得られた分散液を0.5μmの孔径を有するフィルタを用いてろ過し非磁性層形成用組成物を調製した。
バックコート層形成用組成物を、以下の方法により調製した。
ポリイソシアネートおよびシクロヘキサノンを除いた各成分をオープンニーダにより混練および希釈した後、横型ビーズミル分散機により、ビーズ径1mmのジルコニアビーズを用い、ビーズ充填率80体積%およびローター先端周速10m/秒で、1パス滞留時間を2分とし、12パスの分散処理を行った。その後、得られた分散液に残りの成分を添加し、ディゾルバーで撹拌した。こうして得られた分散液を1μmの孔径を有するフィルタを用いてろ過しバックコート層形成用組成物を調製した。
厚み5.00μmの二軸延伸ポリエチレンナフタレート製支持体の表面上に、乾燥後の厚みが1.00μmとなるように上記(5)で調製した非磁性層形成用組成物を塗布および乾燥させて非磁性層を形成した。
次いで、交流磁場印加用の磁石を配置した塗布装置において、非磁性層の表面上に乾燥後の厚みが0.10μmとなるように上記(5)で調製した磁性層形成用組成物を、交流磁場(磁場強度:0.15T)を印加しながら塗布して塗布層を形成した。交流磁場の印加は、塗布層の表面に対して垂直に交流磁場が印加されるように行った。その後、磁性層形成用組成物の塗布層が湿潤(未乾燥)状態にあるうちに、磁場強度0.30Tの直流磁場を塗布層の表面に対し垂直方向に印加して垂直配向処理を行った。その後、乾燥させて磁性層を形成した。
その後、上記ポリエチレンナフタレート製支持体の非磁性層および磁性層を形成した表面とは反対側の表面上に、乾燥後の厚みが0.50μmとなるように上記(5)で調製したバックコート層形成用組成物を塗布および乾燥させてバックコート層を形成した。
こうして得られた磁気テープを1/2インチ(0.0127メートル)幅にスリットした後、磁性層形成用組成物の塗布層表面のバーニッシュ処理およびワイピング処理を行った。バーニッシュ処理およびワイピング処理は、特開平6-52544号公報の図1に記載の構成の処理装置において、研磨テープとして市販の研磨テープ(富士フイルム社製商品名MA22000、研磨剤:ダイヤモンド/Cr2O3/ベンガラ)を使用し、研削用ブレードとして市販のサファイヤブレード(京セラ社製、幅5mm、長さ35mm、先端角度60度)を使用し、ワイピング材として市販のワイピング材(クラレ社製商品名WRP736)を使用して行った。処理条件は、特開平6-52544号公報の実施例12における処理条件を採用した。
上記バーニッシュ処理およびワイピング処理後、金属ロールのみから構成されるカレンダロールで、速度80m/分、線圧294kN/m(300kg/cm)、カレンダ温度(カレンダロールの表面温度)100℃にてカレンダ処理(表面平滑化処理)を行った。
その後、雰囲気温度70℃の環境で36時間加熱処理(硬化処理)を行い、磁気テープを作製した。
作製した磁気テープの磁性層を消磁した状態で、サーボライターに搭載されたサーボライトヘッドによって、LTO Ultriumフォーマットにしたがう配置および形状のサーボパターンを磁性層に形成した。これにより、磁性層に、LTO Ultriumフォーマットにしたがう配置でデータバンド、サーボバンド、およびガイドバンドを有し、かつサーボバンド上にLTO Ultriumフォーマットにしたがう配置および形状のサーボパターンを有する磁気テープを得た。
表1に示す各種項目を表1に示すように変更した点以外、実施例1と同様の方法で磁気テープを作製した。
磁気テープの作製方法については、表1に示されているように、実施例2~21および比較例3~10では、実施例1と同様の磁気テープ作製方法を実施した。即ち、実施例1と同じく磁性層形成用組成物の塗布中に交流磁場の印加を行い、かつ磁性層形成用組成物の塗布層に対してバーニッシュ処理およびワイピング処理を行った。
これに対し、比較例1、2、11~13では、磁性層形成用組成物の塗布中に交流磁場の印加を行わず、かつ磁性層形成用組成物の塗布層に対してバーニッシュ処理およびワイピング処理を行わなかった点以外、実施例1と同様の磁気テープ作製方法を実施した。
実施例または比較例の磁気テープの製造のために使用した突起形成剤は、以下の通りである。突起形成剤1および突起形成剤3は、粒子表面の表面平滑性が低い粒子である。突起形成剤2の粒子形状は繭状の形状である。突起形成剤4の粒子形状はいわゆる不定形である。突起形成剤5の粒子形状は真球に近い形状である。
突起形成剤1:キャボット社製ATLAS(シリカとポリマーとの複合粒子)、平均粒子サイズ100nm
突起形成剤2:キャボット社製TGC6020N(シリカ粒子)、平均粒子サイズ140nm
突起形成剤3:日揮触媒化成社製Cataloid(シリカ粒子の水分散ゾル;突起形成剤液調製のための突起形成剤として、上記水分散ゾルを加熱して溶媒を除去して得られた乾固物を使用)、平均粒子サイズ120nm
突起形成剤4:旭カーボン社製旭#50(カーボンブラック)、平均粒子サイズ300nm
突起形成剤5:扶桑化学工業社製クォートロンPL-10L(シリカ粒子の水分散ゾル;突起形成剤液調製のための突起形成剤として、上記水分散ゾルを加熱して溶媒を除去して得られた乾固物を使用)、平均粒子サイズ130nm
表1中、「結合剤A」は、SO3Na基含有ポリウレタン樹脂(重量平均分子量:70,000、SO3Na基:0.20meq/g)である。
表1中、「結合剤B」は、カネカ社製塩化ビニル共重合体(商品名:MR110、SO3K基含有塩化ビニル共重合体、SO3K基:0.07meq/g)である。
表1中、「BaFe」は平均粒子サイズ(平均板径)21nmの六方晶バリウムフェライト粉末を示す。「SrFe1」および「SrFe2」は六方晶ストロンチウムフェライト粉末を示し、「ε-酸化鉄」はε-酸化鉄粉末を示す。
以下に記載の各種強磁性粉末の活性化体積および異方性定数Kuは、各強磁性粉末について、振動試料型磁力計(東英工業社製)を用いて、先に記載の方法により求められた値である。
また、質量磁化σsは、振動試料型磁力計(東英工業社製)を用いて磁場強度15kOeで測定された値である。
表1に示す「SrFe1」は、以下の方法により作製された六方晶ストロンチウムフェライト粉末である。
SrCO3を1707g、H3BO3を687g、Fe2O3を1120g、Al(OH)3を45g、BaCO3を24g、CaCO3を13g、およびNd2O3を235g秤量し、ミキサーにて混合し原料混合物を得た。
得られた原料混合物を、白金ルツボで溶融温度1390℃で溶融し、融液を撹拌しつつ白金ルツボの底に設けた出湯口を加熱し、融液を約6g/秒で棒状に出湯させた。出湯液を水冷双ローラーで圧延急冷して非晶質体を作製した。
作製した非晶質体280gを電気炉に仕込み、昇温速度3.5℃/分にて635℃(結晶化温度)まで昇温し、同温度で5時間保持して六方晶ストロンチウムフェライト粒子を析出(結晶化)させた。
次いで六方晶ストロンチウムフェライト粒子を含む上記で得られた結晶化物を乳鉢で粗粉砕し、ガラス瓶に粒径1mmのジルコニアビーズ1000gと濃度1%の酢酸水溶液を800mL加えてペイントシェーカーにて3時間分散処理を行った。その後、得られた分散液をビーズと分離させステンレスビーカーに入れた。分散液を液温100℃で3時間静置させてガラス成分の溶解処理を行った後、遠心分離器で沈澱させてデカンテーションを繰り返して洗浄し、炉内温度110℃の加熱炉内で6時間乾燥させて六方晶ストロンチウムフェライト粉末を得た。
上記で得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末(表1中、「SrFe1」)の平均粒子サイズは18nm、活性化体積は902nm3、異方性定数Kuは2.2×105J/m3、質量磁化σsは49A・m2/kgであった。
上記で得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末から試料粉末を12mg採取し、この試料粉末を先に例示した溶解条件によって部分溶解して得られたろ液の元素分析をICP分析装置によって行い、ネオジム原子の表層部含有率を求めた。
別途、上記で得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末から試料粉末を12mg採取し、この試料粉末を先に例示した溶解条件によって全溶解して得られたろ液の元素分析をICP分析装置によって行い、ネオジム原子のバルク含有率を求めた。
上記で得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末の鉄原子100原子%に対するネオジム原子の含有率(バルク含有率)は、2.9原子%であった。また、ネオジム原子の表層部含有率は8.0原子%であった。表層部含有率とバルク含有率との比率、「表層部含有率/バルク含有率」は2.8であり、ネオジム原子が粒子の表層に偏在していることが確認された。
PANalytical X’Pert Pro回折計、PIXcel検出器
入射ビームおよび回折ビームのSollerスリット:0.017ラジアン
分散スリットの固定角:1/4度
マスク:10mm
散乱防止スリット:1/4度
測定モード:連続
1段階あたりの測定時間:3秒
測定速度:毎秒0.017度
測定ステップ:0.05度
表1に示す「SrFe2」は、以下の方法により作製された六方晶ストロンチウムフェライト粉末である。
SrCO3を1725g、H3BO3を666g、Fe2O3を1332g、Al(OH)3を52g、CaCO3を34g、BaCO3を141g秤量し、ミキサーにて混合し原料混合物を得た。
得られた原料混合物を、白金ルツボで溶融温度1380℃で溶解し、融液を撹拌しつつ白金ルツボの底に設けた出湯口を加熱し、融液を約6g/秒で棒状に出湯させた。出湯液を水冷双ロールで急冷圧延して非晶質体を作製した。
得られた非晶質体280gを電気炉に仕込み、645℃(結晶化温度)まで昇温し、同温度で5時間保持し六方晶ストロンチウムフェライト粒子を析出(結晶化)させた。
次いで六方晶ストロンチウムフェライト粒子を含む上記で得られた結晶化物を乳鉢で粗粉砕し、ガラス瓶に粒径1mmのジルコニアビーズ1000gと濃度1%の酢酸水溶液を800mL加えてペイントシェーカーにて3時間分散処理を行った。その後、得られた分散液をビーズと分離させステンレスビーカーに入れた。分散液を液温100℃で3時間静置させてガラス成分の溶解処理を行った後、遠心分離器で沈澱させてデカンテーションを繰り返して洗浄し、炉内温度110℃の加熱炉内で6時間乾燥させて六方晶ストロンチウムフェライト粉末を得た。
得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末(表1中、「SrFe2」)の平均粒子サイズは19nm、活性化体積は1102nm3、異方性定数Kuは2.0×105J/m3、質量磁化σsは50A・m2/kgであった。
表1に示す「ε-酸化鉄」は、以下の方法により作製されたε-酸化鉄粉末である。
純水90gに、硝酸鉄(III)9水和物8.3g、硝酸ガリウム(III)8水和物1.3g、硝酸コバルト(II)6水和物190mg、硫酸チタン(IV)150mg、およびポリビニルピロリドン(PVP)1.5gを溶解させたものを、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、大気雰囲気中、雰囲気温度25℃の条件下で、濃度25%のアンモニア水溶液4.0gを添加し、雰囲気温度25℃の温度条件のまま2時間撹拌した。得られた溶液に、クエン酸1gを純水9gに溶解させて得たクエン酸水溶液を加え、1時間撹拌した。撹拌後に沈殿した粉末を遠心分離によって採集し、純水で洗浄し、炉内温度80℃の加熱炉内で乾燥させた。
乾燥させた粉末に純水800gを加えて再度粉末を水に分散させて分散液を得た。得られた分散液を液温50℃に昇温し、撹拌しながら濃度25%アンモニア水溶液を40g滴下した。50℃の温度を保ったまま1時間撹拌した後、テトラエトキシシラン(TEOS)14mLを滴下し、24時間撹拌した。得られた反応溶液に、硫酸アンモニウム50gを加え、沈殿した粉末を遠心分離によって採集し、純水で洗浄し、炉内温度80℃の加熱炉内で24時間乾燥させ、強磁性粉末の前駆体を得た。
得られた強磁性粉末の前駆体を、大気雰囲気下、炉内温度1000℃の加熱炉内に装填し、4時間の加熱処理を施した。
加熱処理した強磁性粉末の前駆体を、4mol/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液中に投入し、液温を70℃に維持して24時間撹拌することにより、加熱処理した強磁性粉末の前駆体から不純物であるケイ酸化合物を除去した。
その後、遠心分離処理により、ケイ酸化合物を除去した強磁性粉末を採集し、純水で洗浄を行い、強磁性粉末を得た。
得られた強磁性粉末の組成を高周波誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES;Inductively Coupled Plasma-Optical Emission Spectrometry)により確認したところ、Ga、CoおよびTi置換型ε-酸化鉄(ε-Ga0.28Co0.05Ti0.05Fe1.62O3)であった。また、先に六方晶ストロンチウムフェライト粉末の作製方法1について記載した条件と同様の条件でX線回折分析を行い、X線回折パターンのピークから、得られた強磁性粉末が、α相およびγ相の結晶構造を含まない、ε相の単相の結晶構造(ε-酸化鉄型の結晶構造)を有することを確認した。
得られたε-酸化鉄粉末(表1中、「ε-酸化鉄」)の平均粒子サイズは12nm、活性化体積は746nm3、異方性定数Kuは1.2×105J/m3、質量磁化σsは16A・m2/kgであった。
(1)押圧後の磁性層の表面ゼータ電位の等電点
実施例および比較例の各磁気テープについて、雰囲気温度20~25℃、相対湿度40~60%の環境下で、金属ロールのみから構成される7段のカレンダロールを備えたカレンダ処理機を用いて、20m/minの速度で磁気テープを長手方向に0.5N/mの張力を加えた状態で走行させながら、2つのロール間(ロールの加熱なし)を合計6回通過させることにより、各ロール間を通過する際にそれぞれ磁性層の表面に70atmの面圧を加えて押圧した。
上記押圧後の実施例および比較例の各磁気テープから、等電点測定用のサンプルを6つ切り出し、1回の測定において2つのサンプルを測定セル内に配置した。測定セル内では、測定セルの上下のサンプル台(それぞれサンプル設置面のサイズは1cm×2cm)に両面テープでサンプル設置面とサンプルのバックコート層表面とを貼り合わせた。こうして2つのサンプルを配置した後に測定セル内に電解液を流すと、測定セルの上下のサンプル台にそれぞれ貼り合わされた2つのサンプルの磁性層表面が電解液と接触するため、磁性層の表面ゼータ電位を測定することができる。このように1回の測定においてサンプルを2つ用いて、合計3回測定を行い、磁性層の表面ゼータ電位の等電点を求めた。3回の測定により得られた3つの値の算術平均を、各磁気テープの押圧後の磁性層の表面ゼータ電位の等電点として、表1に示す。表面ゼータ電位測定装置としては、Anton Paar社製SurPASSを使用した。測定条件は、以下の通りとした。等電点を求める方法のその他詳細は、先に記載した通りである。
測定セル:可変ギャップセル (20mm×10mm)
測定モード:Streaming Current
ギャップ:約200μm
測定温度:室温
Ramp Target Pressure/Time:400000Pa(400mbar)/60秒
電解液:1mmol/LのKCl水溶液(pH9に調整)
pH調整液:0.1mol/LのHCl水溶液または0.1mol/LのKOH水溶液
測定pH:pH9→pH3(約0.5刻みで合計13測定点で測定)
実施例および比較例の各磁気テープについて、上記(1)での押圧後、以下の方法によりPES(Position Error Signal)を求めた。
サーボパターンの形成に用いたサーボライター上のベリファイ(verify)ヘッドでサーボパターンを読み取った。ベリファイヘッドは、磁気テープに形成されたサーボパターンの品質を確認するための読取用磁気ヘッドであり、公知の磁気テープ装置(ドライブ)の磁気ヘッドと同様に、サーボパターンの位置(磁気テープの幅方向の位置)に対応した位置に読取用の素子が配置されている。
ベリファイヘッドには、ベリファイヘッドでサーボパターンを読み取って得た電気信号から、サーボシステムにおけるヘッド位置決め精度をPESとして演算する公知のPES演算回路が接続されている。PES演算回路は、入力された電気信号(パルス信号)から磁気テープの幅方向への変位を随時計算し、この変位の時間的変化情報(信号)に対してハイパスフィルタ(カットオフ:500cycles/m)を適用した値を、PESとして算出した。PESは走行安定性の指標とすることができ、上記で算出されたPESが18nm以下であれば、走行安定性に優れると評価することができる。
Claims (9)
- 非磁性支持体と強磁性粉末を含む磁性層とを有する磁気記録媒体であって、
前記非磁性支持体と前記磁性層との間に、非磁性粉末を含む非磁性層を有し、
前記非磁性層の厚みは、0.10μm以上1.50μm以下であり、
前記磁性層を70atmの圧力で押圧した後の該磁性層の表面ゼータ電位の等電点が5.5以上7.0以下である磁気記録媒体。 - 前記非磁性層の厚みは、0.10μm以上1.00μm以下である、請求項1に記載の磁気記録媒体。
- 前記磁性層は、無機酸化物系粒子を含む、請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
- 前記無機酸化物系粒子は、無機酸化物とポリマーとの複合粒子である、請求項3に記載の磁気記録媒体。
- 前記磁性層は、酸性基を有する結合剤を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 前記酸性基は、スルホン酸基およびその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の酸性基である、請求項5に記載の磁気記録媒体。
- 前記非磁性支持体の前記磁性層を有する表面側とは反対の表面側に、非磁性粉末を含むバックコート層を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 磁気テープである、請求項1~7のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 請求項1~8のいずれか1項に記載の磁気記録媒体と、
磁気ヘッドと、
を含む磁気記録再生装置。
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