本願は、2018年2月26日に出願された米国仮特許出願第62/635,197号明細書の優先権の利益を主張し、その内容が依拠され、その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。
第1の実施形態によれば、透明なマザーシートを処理するための方法は、前記透明なマザーシートに1つ以上の閉じた輪郭を形成するステップであって、それぞれの閉じた輪郭は、透明な物品の周囲を画定するための複数のきずを前記透明なマザーシートに含む、ステップを含む。前記1つ以上の閉じた輪郭の各々を形成する前記ステップは、ビーム源から出力され、ビーム経路に沿って方向付けられたパルスレーザビームを前記透明なマザーシートへと向けるステップであって、これにより、前記透明なマザーシートへと向けられた前記パルスレーザビームの一部が、前記透明なマザーシートの内部で誘導吸収を発生させて、前記誘導吸収が、前記透明なマザーシートの内部にきずを生じさせるようにするステップと、前記透明なマザーシートと前記パルスレーザビームとを、1つ以上の閉じた輪郭線に沿って互いに相対的に並進させ、それにより前記透明なマザーシートの内部に、前記1つ以上の閉じた輪郭線に沿ったきずをレーザ形成するステップとを含む。当該方法は、前記閉じた輪郭に沿って前記透明なマザーシートの一部を分離し、それにより1つ以上の透明な物品を形成するステップであって、ここで、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つは、前記透明なマザーシートのフレーム部分と摩擦係合している、ステップと、前記透明なマザーシートの一部を分離して前記1つ以上の透明な物品を形成した後、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つの透明な物品の表面に1つ以上の材料層を被着させるステップと、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つの透明な物品の表面に前記1つ以上の材料層を被着させた後、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つを前記透明なマザーシートの前記フレーム部分との摩擦係合から解放するステップとをさらに含む。
第2の実施形態は、前記閉じた輪郭に沿って前記透明なマザーシートを分離し、それにより前記1つ以上の透明な物品を形成する前記ステップは、前記1つ以上の閉じた輪郭に応力を印加するステップを含む、第1の実施形態の方法を含む。
第3の実施形態は、前記1つ以上の閉じた輪郭に応力を印加する前記ステップは、前記1つ以上の閉じた輪郭に機械的応力を印加するステップを含む、第2の実施形態の方法を含む。
第4の実施形態は、前記1つ以上の閉じた輪郭に応力を印加する前記ステップは、赤外線レーザビームを、前記透明なマザーシートへと、前記1つ以上の閉じた輪郭に沿うようにまたは前記1つ以上の閉じた輪郭の近傍に向けるステップを含む、第2の実施形態の方法を含む。
第5の実施形態は、前記1つ以上の材料層のうちの少なくとも1つは、メタライゼーション層を含む、第1から第4の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第6の実施形態は、前記1つ以上の材料層のうちの少なくとも1つは、反射防止コーティングを含む、第1から第5の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第7の実施形態は、前記1つ以上の材料層を被着させる前記ステップは、前記1つ以上の材料層を蒸着させるステップを含む、第1から第6の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第8の実施形態は、前記1つ以上の材料層を被着させる前記ステップは、1つ以上の材料層をスピンコーティングするステップを含む、第1から第7の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第9の実施形態は、前記1つ以上の材料層のうちの少なくとも1つは、ガラス、ガラスセラミック、ポリマー、またはそれらの組み合わせを含む、第1から第8の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第10の実施形態は、前記1つ以上の材料層を被着させる前記ステップは、前記1つ以上の材料層を前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つに接合するステップを含む、第1から第9の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第11の実施形態は、前記透明なマザーシートは、第1の透明なマザーシートを含み、前記1つ以上の材料層のうちの少なくとも1つは、第2の透明なマザーシートを含む、第1から第10の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第12の実施形態は、前記第2の透明なマザーシートは、1つ以上の閉じた輪郭を含み、前記1つ以上の閉じた輪郭は、それぞれ複数のきずを含む、第11の実施形態の方法を含む。
第13の実施形態は、前記第2の透明なマザーシートの前記1つ以上の閉じた輪郭は、前記第1の透明なマザーシートの前記1つ以上の閉じた輪郭とは位置合わせされていない、第12の実施形態の方法を含む。
第14の実施形態は、前記第2の透明なマザーシートは、1つ以上の透明な物品と、フレーム部分とを含み、前記フレーム部分は、前記1つ以上の透明な物品を取り囲んでいて、かつ前記1つ以上の透明な物品と摩擦係合している、第11の実施形態の方法を含む。
第15の実施形態は、前記第2の透明なマザーシートの前記1つ以上の透明な物品および前記フレーム部分は、前記第1の透明なマザーシートの前記1つ以上の透明な物品および前記フレーム部分とは位置合わせされていない、第14の実施形態の方法を含む。
第16の実施形態は、前記1つ以上の材料層のうちの少なくとも1つは、前記第1の透明なマザーシートと前記第2の透明なマザーシートとの間に配置されたメタライゼーション層を含む、第11から第15の実施形態の方法を含む。
第17の実施形態は、前記第1の透明なマザーシートは、前記第2の透明なマザーシートに接合されている、第11から第16の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第18の実施形態は、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つを前記フレーム部分との摩擦係合から解放する前記ステップは、前記1つ以上の透明な物品の各々と前記フレーム部分との間の接触を解除する、第1から第17の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第19の実施形態は、前記透明なマザーシートの前記フレーム部分に1つ以上の解放線を形成するステップをさらに含む、第1から第18の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第20の実施形態は、前記1つ以上の解放線は、前記透明なマザーシートの前記フレーム部分にある解放周線と、前記解放周線から前記フレーム部分の外面に向かって延在する1つ以上の解放支線とを含む、第19の実施形態の方法を含む。
第21の実施形態は、前記1つ以上の解放線を形成する前記ステップは、前記1つ以上の透明な物品のうちの前記少なくとも1つを前記透明なマザーシートの前記フレーム部分との摩擦係合から解放する、第19の実施形態の方法を含む。
第22の実施形態は、前記1つ以上の透明な物品の各々を解放する前記ステップは、前記1つ以上の解放線のうちの少なくとも1つと前記透明なマザーシートの前記フレーム部分の前記外面との間に延在するノッチ部分に応力を印加するステップを含む、第19の実施形態の方法を含む。
第23の実施形態は、前記1つ以上の透明な物品は、第1の透明な物品および第2の透明な物品を含み、前記第1の透明な物品は、前記透明なマザーシートの前記フレーム部分と摩擦係合しており、前記第2の透明な物品は、前記第1の透明な物品と摩擦係合している、第1から第22の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第24の実施形態は、前記1つ以上の透明な物品は、前記透明な物品の内側アレイおよび前記透明な物品の外側アレイを含み、前記透明な物品の前記外側アレイは、前記透明なマザーシートの前記フレーム部分と摩擦係合しており、前記透明な物品の前記内側アレイは、前記透明な物品の前記外側アレイによって前記フレーム部分から離隔されており、前記透明な物品の前記内側アレイのうちの少なくとも1つは、前記透明な物品の前記外側アレイと摩擦係合している、第1から第23の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第25の実施形態は、前記パルスレーザビームは、前記透明なマザーシートを照射する前に非球面光学素子を通過する、第1から第24の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第26の実施形態は、前記非球面光学素子は、屈折アキシコン、反射アキシコン、負のアキシコン、空間光変調器、回折光学系、または立方体形状の光学素子を含む、第25の実施形態の方法を含む。
第27の実施形態は、前記透明なマザーシートへと向けられる前記パルスレーザビームの一部は、波長λと、スポットサイズw
oと、
よりも大きなレイリー長ZRを含む断面とを有し、FDは、10以上の値を含む無次元の発散係数である、第1から第26の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第28の実施形態は、前記無次元の発散係数FDは、10~2000の値を含む、第27の実施形態の方法を含む。
第29の実施形態は、前記無次元の発散係数FDは、50~1500の値を含む、第27の実施形態の方法を含む。
第30の実施形態は、前記無次元の発散係数FDは、100~1000の値を含む、第27の実施形態の方法を含む。
第31の実施形態は、隣り合うきず同士の間隔は、50μm以下である、第1から第30の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第32の実施形態は、隣り合うきず同士の間隔は、25μm以下である、第1から第31の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第33の実施形態は、隣り合うきず同士の間隔は、15μm以下である、第1から第32の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第34の実施形態は、前記透明なマザーシートは、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス材料を含む、第1から第33の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第35の実施形態は、前記パルスレーザビームは、波長λを有し、前記透明なマザーシートは、ビーム伝搬方向において20%/mm未満の、線形吸収および散乱に起因した合計損失を有する、第1から第34の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第36の実施形態は、前記ビーム源は、1パルスバースト当たり1個のサブパルスから1パルスバースト当たり30個のサブパルスのパルスバーストを生成するパルスビーム源を含み、パルスバーストエネルギは、1パルスバースト当たり100μJ~600μJである、第1から第35の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第37の実施形態は、前記透明なマザーシート上に1つ以上の基準を形成するステップをさらに含む、第1から第36の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第38の実施形態によれば、透明なマザーシートを処理するための方法は、前記透明なマザーシートに1つ以上の閉じた輪郭を形成するステップであって、それぞれの閉じた輪郭は、透明な物品の周囲を画定するための複数のきずを前記透明なマザーシートに含む、ステップを含む。前記1つ以上の閉じた輪郭の各々を形成する前記ステップは、ビーム源から出力され、ビーム経路に沿って方向付けられたパルスレーザビームを前記透明なマザーシートへと向けるステップであって、これにより、前記透明なマザーシートへと向けられた前記パルスレーザビームの一部が、前記透明なマザーシートの内部で誘導吸収を発生させて、前記誘導吸収が、前記透明なマザーシートの内部にきずを生じさせるようにするステップと、前記透明なマザーシートと前記パルスレーザビームとを、1つ以上の閉じた輪郭線に沿って互いに相対的に並進させ、それにより前記透明なマザーシートの内部に、前記1つ以上の閉じた輪郭線に沿ったきずをレーザ形成するステップとを含む。当該方法は、前記閉じた輪郭に沿って前記透明なマザーシートの一部を分離し、それにより1つ以上の透明な物品を形成するステップであって、ここで、前記1つ以上の透明な物品は、前記透明なマザーシートのフレーム部分と摩擦係合している、ステップと、前記透明なマザーシートの一部を分離して前記1つ以上の透明な物品を形成した後、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つの透明な物品の表面を修正するステップと、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つの透明な物品の表面に1つ以上の材料層を被着させた後、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つを前記透明なマザーシートの前記フレーム部分との摩擦係合から解放するステップとをさらに含む。
第39の実施形態は、前記閉じた輪郭に沿って前記透明なマザーシートを分離し、それにより1つ以上の透明な物品を形成する前記ステップは、赤外線レーザビームを、前記透明なマザーシートへと、前記1つ以上の閉じた輪郭に沿うようにまたは前記1つ以上の閉じた輪郭の近傍に向けることにより、前記1つ以上の閉じた輪郭に応力を印加するステップを含む、第38の実施形態の方法を含む。
第40の実施形態は、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つの透明な物品の表面を修正する前記ステップは、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つの透明な物品の表面を研磨するステップを含む、第38または第39の実施形態の方法を含む。
第41の実施形態は、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つの透明な物品の表面を修正する前記ステップは、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つの透明な物品の表面を清浄化するステップを含む、第38から第40の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第42の実施形態は、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つの透明な物品の表面を修正する前記ステップは、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つの透明な物品の表面を粗面化するステップを含む、第38から第41の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第43の実施形態は、前記透明なマザーシートの前記フレーム部分に1つ以上の解放線を形成するステップをさらに含む、第38から第41の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第44の実施形態は、前記1つ以上の解放線は、前記透明なマザーシートの前記フレーム部分にある解放周線と、前記解放周線から前記フレーム部分の外面に向かって延在する1つ以上の解放支線とを含む、第43の実施形態の方法を含む。
第45の実施形態は、前記1つ以上の解放線を形成する前記ステップは、前記1つ以上の透明な物品のうちの前記少なくとも1つを前記透明なマザーシートの前記フレーム部分との摩擦係合から解放する、第43の実施形態の方法を含む。
第46の実施形態は、前記1つ以上の透明な物品の各々を解放する前記ステップは、前記1つ以上の解放線のうちの少なくとも1つと前記透明なマザーシートの前記フレーム部分の前記外面との間に延在するノッチ部分に応力を印加するステップを含む、第43の実施形態の方法を含む。
第47の実施形態は、前記1つ以上の透明な物品は、第1の透明な物品および第2の透明な物品を含み、前記第1の透明な物品は、前記透明なマザーシートの前記フレーム部分と摩擦係合しており、前記第2の透明な物品は、前記第1の透明な物品と摩擦係合している、第38から第46の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第48の実施形態は、前記1つ以上の透明な物品は、前記透明な物品の内側アレイおよび前記透明な物品の外側アレイを含み、前記透明な物品の前記外側アレイは、前記透明なマザーシートの前記フレーム部分と摩擦係合しており、前記透明な物品の前記内側アレイは、前記透明な物品の前記外側アレイによって前記フレーム部分から離隔されており、前記透明な物品の前記内側アレイのうちの少なくとも1つは、前記透明な物品の前記外側アレイと摩擦係合している、第38から第47の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第49の実施形態は、前記パルスレーザビームは、前記透明なマザーシートを照射する前に非球面光学素子を通過する、第38から第48の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第50の実施形態は、前記透明なマザーシートへと向けられる前記パルスレーザビームの一部は、波長λと、スポットサイズw
oと、
よりも大きなレイリー長ZRを含む断面とを有し、FDは、10以上の値を含む無次元の発散係数である、第38から第49の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第51の実施形態は、隣り合うきず同士の間隔は、30μm以下である、第38から第50の実施形態のいずれか1つの方法を含む。
第52の実施形態によれば、透明な被加工物アセンブリは、第1の主面、第2の主面、および1つ以上の側面を含む1つ以上の透明な物品と、前記1つ以上の透明な物品を取り囲んでいて、かつ第1の主面、第2の主面、1つ以上の内面、および外面を含むフレーム部分であって、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つが、前記1つ以上の透明な物品の各々を前記フレーム部分と摩擦係合したまま保持するために、前記フレーム部分の少なくとも1つの内面または前記1つ以上の内面と摩擦係合している、フレーム部分と、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つの透明な物品の前記第1の主面上に配置されていて、かつ前記1つ以上の透明な物品のうちの前記少なくとも1つの透明な物品に関連する少なくとも1つの分離された輪郭を覆うように途切れなく配置されている、1つ以上の材料層とを含む。
第53の実施形態は、前記1つ以上の透明な物品は、第1の透明な物品および第2の透明な物品を含み、前記第1の透明な物品は、前記フレーム部分と摩擦係合しており、前記第2の透明な物品は、前記第1の透明な物品と摩擦係合している、第52の実施形態の透明な被加工物アセンブリを含む。
第54の実施形態は、前記1つ以上の材料層は、前記第1の透明な物品の第1の主面上および前記第2の透明な物品の第1の主面上に配置されていて、かつ前記第1の透明な物品と前記第2の透明な物品との間の界面を形成する分離された輪郭を覆うように途切れなく配置されている、第53の実施形態の透明な被加工物アセンブリを含む。
第55の実施形態は、前記1つ以上の材料層は、前記第1の透明な物品の第1の主面上および前記フレーム部分の第1の主面上に配置されていて、かつ前記第1の透明な物品と前記フレーム部分との間の界面を形成する分離された輪郭を覆うように途切れなく配置されている、第53の実施形態の透明な被加工物アセンブリを含む。
第56の実施形態は、前記1つ以上の透明な物品は、前記透明な物品の内側アレイおよび前記透明な物品の外側アレイを含み、前記透明な物品の前記外側アレイは、前記フレーム部分と摩擦係合しており、前記透明な物品の前記内側アレイは、前記透明な物品の前記外側アレイによって前記フレーム部分から離隔されており、前記透明な物品の前記内側アレイのうちの少なくとも1つは、前記透明な物品の前記外側アレイと摩擦係合している、第52から第55の実施形態のいずれか1つの透明な被加工物アセンブリを含む。
第57の実施形態は、前記フレーム部分は、1つ以上の解放線をさらに含む、第52から第56の実施形態のいずれか1つの透明な被加工物アセンブリを含む。
第58の実施形態は、前記1つ以上の解放線は、前記フレーム部分にある解放周線と、前記解放周線から前記フレーム部分の外面に向かって延在する1つ以上の解放支線とを含む、第57の実施形態の透明な被加工物アセンブリを含む。
第59の実施形態は、前記1つ以上の解放線のうちの少なくとも1つと、前記フレーム部分の前記外面との間に延在するノッチ部分をさらに含む、第57の実施形態の透明な被加工物アセンブリを含む。
第60の実施形態は、前記1つ以上の材料層のうちの少なくとも1つは、メタライゼーション層を含む、第52から第59の実施形態のいずれか1つの透明な被加工物アセンブリを含む。
第61の実施形態は、前記1つ以上の材料層のうちの少なくとも1つは、反射防止コーティングを含む、第52から第60の実施形態のいずれか1つの透明な被加工物アセンブリを含む。
第62の実施形態は、前記1つ以上の材料層のうちの少なくとも1つは、ガラス、ガラスセラミック、ポリマー、またはそれらの組み合わせを含む、第52から第61の実施形態のいずれか1つの透明な被加工物アセンブリを含む。
第63の実施形態は、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つと、前記1つ以上の透明な物品を取り囲む前記フレーム部分とが、第1の透明なマザーシートを共同で含み、前記少なくとも1つの材料層のうちの少なくとも1つは、第2の透明なマザーシートを含み、前記第2の透明なマザーシートは、1つ以上の透明な物品と、前記1つ以上の透明な物品を取り囲むフレーム部分とを含む、第52から第62の実施形態のいずれか1つの透明な被加工物アセンブリを含む。
第64の実施形態は、前記第2の透明なマザーシートの前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つは、前記第2の透明なマザーシートの前記1つ以上の透明な物品の各々を前記第2の透明なマザーシートの前記フレーム部分と摩擦係合したまま保持するために、前記第2の透明なマザーシートの前記フレーム部分と摩擦係合している、第63の実施形態の透明な被加工物アセンブリを含む。
第65の実施形態は、前記1つ以上の材料層のうちの少なくとも1つは、前記第1の透明なマザーシートと前記第2の透明なマザーシートとの間に配置されたメタライゼーション層を含む、第63の実施形態の透明な被加工物アセンブリを含む。
第66の実施形態は、前記第1の透明なマザーシートは、前記第2の透明なマザーシートに接合されている、第63の実施形態の透明な被加工物アセンブリを含む。
本明細書に記載しているプロセスおよびシステムの追加的な特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載され、ある程度、これらの説明から当業者には容易に理解され、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、ならびに添付の図面を含めて、本明細書に記載されている実施形態を実施することによって認識されるだろう。
上記の概説および以下の詳細な説明が、両方とも種々の実施形態を記載しており、請求される主題の本質および特性を理解するための概観または枠組みを提供することを意図していることを理解すべきである。添付の図面は、種々の実施形態のさらなる理解を提供するために含まれており、本明細書に援用され、本明細書の一部を構成する。図面は、本明細書に記載している種々の実施形態を例証しており、その説明と共に、請求される主題の原理および動作を解説するために使用される。
ここで、ガラス被加工物のような透明な被加工物(例えば、透明なマザーシート、および透明なマザーシートから形成される透明な物品)をレーザ処理するためのプロセスの実施形態を詳細に参照するが、これらの実施形態の例は、添付の図面に示されている。可能な場合には常に、同一または同様の部分を指すために図面全体を通して同一の参照符号が使用される。本明細書に記載している1つ以上の実施形態によれば、透明なマザーシートをレーザ処理して、この透明なマザーシートに1つ以上の閉じた輪郭を形成することができ、それぞれの閉じた輪郭は、透明なマザーシートから分離可能な1つ以上の透明な物品の周囲を画定する一連のきずを含む。1つの実施形態によれば、ビーム源が、パルスレーザビームを出力し、このレーザビームは、透明なマザーシートへと向けられて、透明なマザーシートに一連のきずを生じさせ、それにより、透明なマザーシートから形成される透明な物品の周囲をそれぞれ画定する1つ以上の閉じた輪郭をレーザ形成する。本明細書における種々の実施形態では、これらのきずは、被加工物における線きず、穿孔、またはナノ穿孔と称される場合がある。次いで、1つ以上の閉じた輪郭に、応力、例えば、化学的応力(例えば、化学エッチングによる)、熱的応力(例えば、加熱されたレーザ照射による)、または機械的応力などを印加することによって、1つ以上の閉じた輪郭によって画定された周囲を有する透明な物品を、透明なマザーシートから分離することができる。
透明なマザーシートから透明な物品を分離した後、これらの透明な物品は、追加的な処理ステップがなければ、透明なマザーシートと摩擦係合したままである。なぜなら、透明な物品の周囲と、透明な物品が分離された後に残っている透明なマザーシートのフレーム部分との間に、最小限の分離ギャップ(すなわち、最小限の切り溝)が存在するからである。この摩擦係合により、透明な物品を透明なマザーシートのフレーム部分と摩擦係合させたままで、透明な物品の表面(および任意選択的に、透明なマザーシートの残りのフレーム部分の表面)を、インサイチュ(in-situ)で追加的に処理することが可能となる。1つの例として、1つ以上の透明な物品の表面(および任意選択的に、透明なマザーシートの残りのフレーム部分の表面)に1つ以上の材料層を被着させることができる。別の例として、1つ以上の透明な物品の表面(および任意選択的に、透明なマザーシートの残りのフレーム部分の表面)を修正(例えば、研磨、粗面化、または清浄化など)することができる。これらの追加的な処理ステップの後、1つ以上の透明な物品を、透明なマザーシートのフレーム部分との摩擦係合から解放することができる。したがって、本明細書に記載している実施形態は、レーザ処理技術を使用して透明なマザーシートから透明な物品を形成し、その後、これらの透明な物品を透明なマザーシートの残りの部分と摩擦係合させたままで、これらの透明な物品の表面を処理する方法に関するものであり、これにより、これ以外の場合には寸法の制約または製造上の制約などに起因して個々に処理することが困難となり得る、複数の透明な物品の表面処理を、一括して実施することが容易になる。さらに、透明な物品を透明なマザーシートの残りの部分と摩擦係合したまま保持することにより、後続の処理および分離の前にこれらの透明な物品をより簡単に輸送することが可能となる。本明細書では、透明なマザーシートから透明な物品を形成および処理する種々の実施形態を、添付の図面を詳細に参照しながら説明することとする。
本明細書で使用する「透明な被加工物」という表現は、透明なガラスまたはガラスセラミックから形成された被加工物を意味し、ここで、本明細書で使用する「透明」という用語は、その材料が、材料深度1mm当たり約20%未満、例えば特定のパルスレーザ波長に対して材料深度1mm当たり約10%未満、または特定のパルスレーザ波長に対して材料深度1mm当たり約1%未満の光吸収率を有することを意味する。1つ以上の実施形態によれば、透明な被加工物は、約50マイクロメートル(μm)~約10mm(例えば、約100μm~約5mm、約0.5mm~約3mm、または約100μm~約2mm、例えば、100μm、250μm、300μm、500μm、700μm、1mm、1.2mm、1.5mm、2mm、5mm、または7mmなど)の厚さを有することができる。本明細書に記載している透明な被加工物には、「透明なマザーシート」、「透明な物品」、および「フレーム部分」が含まれる。本明細書で使用する「透明なマザーシート」は、透明な被加工物であって、ここから追加的な(より小さな)透明な被加工物(例えば、透明な物品)を分離することができるような、透明な被加工物を指す。本明細書で使用する「透明な物品」は、透明なマザーシートから分離された透明な被加工物を指す。さらに、本明細書で使用する「フレーム部分」は、透明なマザーシートの残りの部分の一部または全部であって、ここから透明な物品が分離されるような、透明なマザーシートの残りの部分の一部または全部(例えば、透明な物品を取り囲んでいる隣接する残りの部分)を指す。
さらに、本開示は、透明な被加工物を処理するための方法について記載している。本明細書で使用する「レーザ処理」は、透明な被加工物に輪郭(例えば、閉じた輪郭)を形成すること、透明な被加工物を分離すること、またはそれらの組み合わせを含むことができる。透明な被加工物は、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、アルカリ土類アルミノケイ酸塩ガラス、アルカリ土類ボロアルミノケイ酸塩ガラス、溶融シリカなどのガラス組成物、もしくはサファイア、ケイ素、ガリウムヒ素などの結晶材料、またはそれらの組み合わせから形成されたガラス被加工物を含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラスは、イオン交換強化可能であってよく、したがって、ガラス組成物は、透明な被加工物をレーザ処理する前または後に、かつ透明な被加工物の化学エッチングの前または後に、機械的強化のためのイオン交換強化を受けることが可能となる。例えば、透明な被加工物は、ニューヨーク州コーニングのコーニング社から入手可能なCorning Gorilla(登録商標)ガラス(例えば、コード2318、コード2319、およびコード2320)のような、イオン交換強化ガラスまたはイオン交換強化可能ガラスを含むことができる。さらに、これらのイオン交換強化ガラスは、約6ppm/℃~約10ppm/℃の熱膨張係数(CTE)を有することができる。いくつかの実施形態では、透明な被加工物のガラス組成物は、約1.0モル%を超えるホウ素を含むことができ、かつ/または限定するわけではないがB2O3を含む、ホウ素含有化合物を含むことができる。別の実施形態では、透明な被加工物を形成する元となるガラス組成物は、約1.0モル%以下のホウ素酸化物および/またはホウ素含有化合物を含む。さらに、透明な被加工物は、レーザの波長に対して透明なその他の成分、例えば、サファイアまたはセレン化亜鉛のような結晶を含むことができる。
いくつかの透明な被加工物は、ディスプレイおよび/またはTFT(薄膜トランジスタ)基板として利用可能である。ディスプレイまたはTFTの使用に適したそのようなガラスまたはガラス組成物のいくつかの例としては、ニューヨーク州コーニングのコーニング社から入手可能なEAGLE XG(登録商標)およびCORNING LOTUS(商標)がある。アルカリ土類ボロアルミノケイ酸塩ガラス組成物は、限定するわけではないがTFT用の基板を含む、電子用途のための基板として使用するのに適するように調合可能である。TFTに関連して使用されるガラス組成物は、典型的には、ケイ素の熱膨張係数と同様の熱膨張係数(例えば、5×10-6/K未満、または4×10-6/K未満、例えば、約3×10-6/K、または約2.5×10-6/K~約3.5×10-6/K)を有し、ガラス内のアルカリが低レベルである。TFT用途では、低レベルのアルカリ(例えば、約0質量%~2質量%の、例えば1質量%未満、例えば0.5質量%未満の微量のアルカリ)であれば、使用可能である。なぜなら、アルカリドーパントは、いくつかの条件下では、ガラスから浸出してTFTを汚染または「汚毒」して、TFTを動作不能にする可能性があるからである。
本明細書で使用する「輪郭線」という表現は、透明な被加工物の表面上の所望の分離線(例えば、線、曲線など)であって、適切な加工条件下に置かれた場合に、透明な被加工物がこの線に沿って複数の部分に分離されることとなるような、分離線を表す。さらに、本明細書で使用する「閉じた輪郭線」という表現は、透明な被加工物の表面上の閉じた経路に沿って(例えば、透明なマザーシートの表面に沿って)延在する特定の輪郭線(例えば、線、曲線など)を表す。閉じた輪郭線は、透明なマザーシートから分離可能な透明な物品の所望の周囲を画定するものである。さらに、本明細書で使用する「輪郭」という表現は、輪郭線に沿って、種々の技法を使用して透明な被加工物に導入される複数のきずを指し、本明細書で使用する「閉じた輪郭」という表現は、閉じた輪郭線に沿って形成される輪郭を指す。さらに、本明細書で使用する「きず」は、赤外線レーザ処理、機械的応力形成、またはその他の分離プロセスのような追加的な処理によって、透明なマザーシートから透明な物品を形成するために、輪郭線および閉じた輪郭線に沿った透明なマザーシートの材料の分離(例えば、輪郭および閉じた輪郭の分離)を可能にするような、透明な被加工物における(バルク材料に対して)修正された材料の領域、空隙、引っ掻き跡、ひび、孔、またはその他の変形を含むことができる。きずは、ガラスの深さ全体にわたって貫通していてもよい。本明細書に開示しているきずは、「孔」または「孔のような」と記載されることもあるが、概して、空隙でなくてよく、むしろ、透明なマザーシートのうちの、本明細書に記載しているレーザ処理によって修正された部分であることを理解すべきである。
動作中、最初に、透明なマザーシートに1つ以上の閉じた輪郭を形成し、その後、この閉じた輪郭上で、透明な被加工物の表面に応力を印加(例えば、CO2レーザまたはCOレーザなどのような赤外線レーザを使用して加熱)して、透明な被加工物に熱的応力のような応力を形成することにより、透明なマザーシートから1つ以上の透明な物品を分離することができる。最終的には、この応力により、閉じた輪郭に沿って被加工物が自発的に分離する。さらに、透明なマザーシートが強化される(例えば、イオン交換強化される)実施形態のような、いくつかの実施形態では、後続の分離ステップは、透明な被加工物の種類、厚さ、および構造に応じて、透明なマザーシートに存在する応力に起因して発生する自発的な破断によって起こり得る。例えば、透明なマザーシートを強化した後、透明なマザーシートに応力が存在し得るので、さらなる加熱ステップまたは機械的な分離ステップなしで、閉じた輪郭に沿った透明なマザーシートの自発的な分離を引き起こすことができる。
ここで一例として図1Aおよび図1Bを参照すると、ガラスマザーシートまたはガラスセラミックマザーシートのような透明なマザーシート160が、本明細書に記載している方法による処理を受けている様子が概略的に図示されている。透明なマザーシート160は、第1の主面162と、第1の主面162の反対側に位置し得る第2の主面164と、1つ以上の周面166とを含む。円形または楕円形のような丸みを帯びた形状を有する実施形態による透明なマザーシート160は、単一の連続した周面166を有することができ、長方形のような多角形を有する実施形態による透明なマザーシート160は、複数の周面166を有することができることに留意すべきである。
図1Aおよび図1Bは、透明なマザーシート160における閉じた輪郭170の形成を示し、閉じた輪郭170は、パルスレーザビーム112が、並進方向101で、透明なマザーシート160に対して相対的に並進するように、パルスレーザビーム112と透明なマザーシート160とを互いに相対的に並進させることによって形成可能である。図1Aおよび図1Bは、ビーム経路111に沿ったパルスレーザビーム112を示し、このパルスレーザビーム112は、例えば、アキシコンのような非球面光学素子120(図3)と、1つ以上のレンズ(例えば、以下で説明され、図3に図示されるような第1のレンズ130および第2のレンズ132)とを使用して、透明なマザーシート160の内部のパルスレーザビーム焦線113へと集束され得るように方向付けられる。例えば、パルスレーザビーム焦線113の位置は、Z軸に沿って、かつZ軸を中心として制御可能である。さらに、パルスレーザビーム焦線113は、約0.1mm~約100mmの範囲内、または約0.1mm~約10mmの範囲内の長さを有することができる。種々の実施形態は、約0.1mm、約0.2mm、約0.3mm、約0.4mm、約0.5mm、約0.7mm、約1mm、約2mm、約3mm、約4mm、または約5mm、例えば、約0.5mm~約5mmの長さlを有するパルスレーザビーム焦線113を有するように構成可能である。さらに、パルスレーザビーム焦線113は、以下により詳細に定義するように、準非回折ビームの一部であってもよい。
図1Aは、パルスレーザビーム112が、透明なマザーシート160の第1の主面162上に投影されるビームスポット114を形成する様子を図示している。図1Aでは、パルスレーザビーム112が、最初に透明なマザーシート160の第1の主面162を照射している様子が図示されているが、代替的に、他の実施形態では、パルスレーザビーム112が、最初に透明なマザーシート160の第2の主面164を照射してもよいことを理解すべきである。さらに、本明細書でも使用される「ビームスポット」は、透明な被加工物(例えば、透明なマザーシート160)と最初に接触する点におけるレーザビーム(例えば、パルスレーザビーム112)の断面を指す。
ここで図2を参照すると、透明なマザーシート160からの透明な物品210の分離が、概略的に図示されている。図2は、レーザ処理する前における閉じた輪郭線165(図2の右側)と、閉じた輪郭線165に沿って形成されるきず172を含む、閉じた輪郭170(図2の中央)と、閉じた輪郭170に沿って透明なマザーシート160を分離することによって閉じた輪郭170に沿って形成される、透明な物品210(図2の左側)とを示す。閉じた輪郭線165は、所望の分離線を描いており、この分離線に沿って、透明なマザーシート160に閉じた輪郭170を形成することができ、その後、透明なマザーシート160から1つ以上の透明な物品210を形成することができる。換言すれば、それぞれの閉じた輪郭線165および閉じた輪郭170は、透明なマザーシート160から分離可能な透明な物品210の周囲215を画定するものである。さらに、それぞれの閉じた輪郭170は、複数のきず172を含み、これらの複数のきず172は、透明なマザーシート160内に延在していて、透明なマザーシート160の残りの部分(例えば、図5Aに示されている透明なマザーシート160のフレーム部分220)から、透明なマザーシート160のうちの、閉じた輪郭170によって取り囲まれた材料(透明な物品210になる)を分離するための経路を確立する。
動作中、閉じた輪郭線165にパルスレーザビーム112(図2ではビームスポット114として図示されている)を照射し、パルスレーザビーム112と透明なマザーシート160とを、並進方向101で、閉じた輪郭線165に沿って互いに相対的に並進させて、閉じた輪郭170のきず172を形成することにより、閉じた輪郭170を形成することができる。その後、閉じた輪郭170に赤外線レーザビーム(図2では赤外線レーザビームスポット116として図示されている)を照射し、赤外線レーザビームと透明な被加工物とを、並進方向101で、閉じた輪郭170に沿ってまたは閉じた輪郭170の近傍で互いに相対的に並進させることにより、透明なマザーシート160から透明な物品210を分離することができる。
閉じた輪郭170は、図1Aおよび図2では長方形として図示されているが、限定するわけではないが、円形、長円形、正方形、六角形、楕円形、規則的な幾何形状、不規則な形状、多角形の形状、任意の形状などを含む、他の閉じた構成が考えられ、かつ可能であることを理解すべきである。さらに、図2に示されているように、本明細書に記載している実施形態を使用して、単一の透明なマザーシート160に複数の閉じた輪郭170を形成し、それにより、1つの透明なマザーシート160から複数の透明な物品210を形成することができる。
引き続き図1Aおよび図2を参照すると、本明細書に記載している実施形態では、(透明なマザーシート160上に投影されるビームスポット114を有する)パルスレーザビーム112を、透明なマザーシート160上へと向けることができる(例えば、透明なマザーシート160の厚さの少なくとも一部を貫通する高アスペクト比の線焦点へと集光させることができる)。これにより、パルスレーザビーム焦線113が形成される。さらに、ビームスポット114は、パルスレーザビーム焦線113の例示的な断面であり、パルスレーザビーム焦線113が、(ビームスポット114を形成しながら)透明なマザーシート160を照射すると、パルスレーザビーム焦線113は、透明なマザーシート160の少なくとも一部を貫通する。
さらに、閉じた輪郭170の複数のきず172を形成するために、パルスレーザビーム112を、(例えば、並進方向101で)透明なマザーシート160に対して相対的に並進させることができる。パルスレーザビーム112を透明なマザーシート160へと向けることまたは限局することにより、透明なマザーシート160の内部に誘導吸収が生成され、閉じた輪郭線165に沿って離間された各所で、透明なマザーシート160の化学結合を破壊するために十分なエネルギが蓄積されて、きず172が形成される。1つ以上の実施形態によれば、透明なマザーシート160を動かすこと(例えば、図3に示されているような、透明なマザーシート160に結合された並進ステージ190を動かすこと)によって、またはパルスレーザビーム112を動かすこと(例えば、パルスレーザビーム焦線113を動かすこと)によって、または透明なマザーシート160とパルスレーザビーム焦線113との両方を動かすことによって、パルスレーザビーム112を、透明なマザーシート160にわたって並進させることができる。パルスレーザビーム焦線113を、透明なマザーシート160に対して相対的に並進させることにより、透明なマザーシート160に複数のきず172を形成することができる。
いくつかの実施形態では、きず172は、概して、閉じた輪郭170に沿って、約0.1μm~約500μm、例えば、約1μm~約200μm、約2μm~約100μm、または約5μm~約20μmなどの距離だけ、互いに離間することができる。例えば、きず172同士の適切な間隔は、TFT/ディスプレイガラス組成物の場合には、約0.1μm~約50μm、例えば約5μm~約15μm、約5μm~約12μm、約7μm~約15μm、または約7μm~約12μmであり得る。いくつかの実施形態では、隣り合うきず172同士の間隔は、約50μm以下、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、15μm以下、または10μm以下などであり得る。さらに、透明なマザーシート160を、パルスレーザビーム112に対して相対的に並進させることは、1つ以上の並進ステージ190(図3)を使用して、透明なマザーシート160および/またはビーム源110を移動させることによって実施可能である。
再び図1Aおよび図2を参照すると、きず172を形成するために使用されるパルスレーザビーム112は、強度分布I(X,Y,Z)をさらに有し、図面に示されているように、Zは、パルスレーザビーム112のビーム伝搬方向であり、XおよびYは、伝搬方向に直交する方向である。X方向およびY方向は、断面方向と称される場合もあり、X-Y平面は、断面平面と称される場合がある。断面平面におけるパルスレーザビーム112の強度分布は、断面強度分布と称される場合がある。
図3に示される光学アセンブリ100に関して以下でより詳細に説明されるような非球面光学素子120を通るように、パルスレーザビーム112を伝搬させること(例えば、ビーム源110を使用して、ガウスビームのようなパルスレーザビーム112を出力すること)により、ビームスポット114または他の断面におけるパルスレーザビーム112は、準非回折ビーム、例えば、以下で数学的に定義される低ビーム発散角を有するビームを含むことができる。ビーム発散角とは、ビームの伝搬方向(すなわち、Z方向)におけるビーム断面の拡大率を指す。本明細書で使用する「ビーム断面」という表現は、パルスレーザビーム112のビーム伝搬方向に対して垂直な平面に沿った、例えば、X-Y平面に沿った、パルスレーザビーム112の断面を指す。本明細書で論じられる1つの例示的なビーム断面は、透明なマザーシート160上に投影されたパルスレーザビーム112のビームスポット114である。準非回折ビームの例には、ガウスベッセルビームおよびベッセルビームが含まれる。
回折は、パルスレーザビーム112の発散につながる1つの要因である。他の要因には、パルスレーザビーム112を形成する光学系によって引き起こされる合焦もしくは脱焦、または界面での屈折および散乱が含まれる。閉じた輪郭170のきず172を形成するためのパルスレーザビーム112は、低発散性および弱回折性のビームスポット114を有することができる。パルスレーザビーム112の発散角は、レイリー長ZRによって特徴付けられ、レイリー長ZRは、パルスレーザビーム112の強度分布の分散σ2およびビーム伝搬係数M2に関係している。以下の説明では、デカルト座標系を使用して式が表される。他の座標系に関して対応する式は、当業者には既知である数学的技法を使用して得ることができる。ビーム発散角に関するさらなる情報は、A.E. Siegman著の文献名“New Developments in Laser Resonators”SPIE Symposium Series Vol. 1224, p. 2 (1990)と、R. BorghiおよびM. Santarsiero著の文献名“M2 factor of Bessel-Gauss beams”Optics Letters, Vol. 22(5), 262 (1997)とに記載されており、これらの開示全体を、参照により本明細書に援用するものとする。さらなる情報は、“Lasers and laser-related equipment - Test methods for laser beam widths, divergence angles and beam propagation ratios - Part 1: Stigmatic and simple astigmatic beams”と題する国際標準ISO 11146-1:2005(E)と、“Lasers and laser-related equipment - Test methods for laser beam widths, divergence angles and beam propagation ratios - Part 2: General astigmatic beams”と題する国際標準ISO 11146-2:2005(E)と、“Lasers and laser-related equipment - Test methods for laser beam widths, divergence angles and beam propagation ratios - Part 3: Intrinsic and geometrical laser beam classification, propagation and details of test methods”と題する国際標準ISO 11146-3:2004(E)にも記載されており、これらの開示全体を、参照により本明細書に援用するものとする。
時間平均された強度プロファイルI(x,y,z)を有するパルスレーザビーム112の強度プロファイルの重心の空間座標は、以下の式によって与えられる:
これらは、ウィグナー分布の一次モーメントとしても知られており、ISO 11146-2:2005(E)のセクション3.5に記載されている。これらの測定は、ISO 11146-2:2005(E)のセクション7に記載されている。
分散は、ビーム伝搬方向における位置zの関数としての、パルスレーザビーム112の強度分布の、断面(X-Y)平面における幅の測定値である。任意のレーザビームの場合、X方向における分散は、Y方向における分散とは異なる可能性がある。X方向およびY方向におけるそれぞれの分散を、
によって表すものとする。特に関心のあるものが、近接場限界および遠隔場限界における分散である。近接場限界でのX方向およびY方向におけるそれぞれの分散を、
によって表すものとし、遠隔場限界でのX方向およびY方向におけるそれぞれの分散を、
(νxおよびνyは、X方向およびY方向におけるそれぞれの空間周波数である)による時間平均された強度プロファイルI(x,y,z)を有するレーザビームの場合には、X方向およびY方向における近接場分散および遠隔場分散は、以下の式:
によって与えられる。
は、ウィグナー分布の対角要素としても知られている(ISO 11146-2:2005(E)を参照のこと)。これらの分散は、ISO 11146-2:2005(E)のセクション7に記載されている測定手法を使用して、実験的なレーザビームについて定量化可能である。簡単に言えば、この測定は、線形不飽和ピクセル型検出器を使用して、分散および重心座標を定義する積分方程式の無限積分領域を近似する有限空間領域にわたってI(x,y)を測定する。測定領域の適切な範囲、背景の減算、および検出器のピクセル解像度は、ISO 11146-2:2005(E)のセクション7に記載されている反復測定手順の収斂によって決定される。式(1)~式(6)によって与えられる式の数値は、ピクセル型検出器によって測定されるような強度値の配列から数値的に計算される。
である)との間のフーリエ変換関係を通して、
を示すことができる。
は、
それぞれx方向およびy方向におけるウエスト位置z
0xおよびz
0yにおいて発生する
の最小値であり、λは、パルスレーザビーム112の波長である。式(7)および式(8)は、
が、パルスレーザビーム112のウエスト位置(例えば、パルスレーザビーム焦線113のウエスト部分)に関連する最小値からいずれかの方向にzと共に二次的に増加することを示す。さらに、軸対称であり、これにより軸対称の強度分布I(x,y)を有するビームスポット114を含む、本明細書に記載している実施形態では、
であり、非軸対称であり、これにより非軸対称の強度分布I(x,y)を有するビームスポット114を含む、本明細書に記載している実施形態では、
である。
式(7)および式(8)は、ビーム伝搬係数M
2の観点から書き換えることができ、x方向およびy方向に関する別々のビーム伝搬係数
は、
のように定義される。
式(9)および式(10)を再整理して、式(7)および式(8)に代入すると、
のようになる。これらは、
のように書き換えることができ、ここで、x方向およびy方向におけるレイリー長ZRxおよびZRyは、それぞれ以下の式:
によって与えられる。
レイリー長は、(ビームウエストの位置での分散を基準にして)レーザビームの分散が2倍になっている範囲の(ISO 11146-1:2005(E)のセクション3.12で定義されているビームウエストの位置を基準にした)距離に対応していて、レーザビームの断面積の発散角の尺度である。さらに、軸対称であって、これにより軸対称の強度分布I(x,y)を有するビームスポット114を含む、本明細書に記載している実施形態では、ZRx=ZRyであり、非軸対称であって、これにより非軸対称の強度分布I(x,y)を有するビームスポット114を含む、本明細書に記載している実施形態では、ZRx≠ZRyであり、すなわち、ZRx<ZRyまたはZRx>ZRyである。レイリー長は、光強度がビームウエスト位置(最大強度の位置)で観測される値の半分に減衰している範囲の、ビーム軸に沿った距離としても観測可能である。レイリー長が大きいレーザビームは、低発散性であり、レイリー長が小さいレーザビームよりも緩慢に、ビーム伝搬方向における距離と共に拡大する。
上記の式は、レーザビームを表す強度プロファイルI(x,y,z)を使用することにより、(ガウスビームだけでなく)あらゆるレーザビームに適用可能である。ガウスビームのTEM00モードの場合、強度プロファイルは、以下の式:
によって与えられ、ここで、woは、(ビーム強度がビームウエスト位置zoでのビームのピークビーム強度の1/e2に減少している範囲の半径として定義される)半径である。式(17)および上記の式から、TEM00ガウスビームに関して以下の結果:
が得られ、ここで、Z
R=Z
Rx=Z
Ryである。ガウスビームの場合には、さらに、
であることに留意すべきである。
ビーム断面は、形状および寸法によって特徴付けられる。ビーム断面の寸法は、ビームのスポットサイズによって特徴付けられる。ガウスビームの場合には、スポットサイズは、ビームの強度がその最大値の1/e2に減少しているところの径方向範囲として定義されることが多く、式(17)ではw0として示されている。ガウスビームの最大強度は、強度分布の中心(x=0かつy=0(デカルト)またはr=0(円筒))に発生し、スポットサイズを決定するために使用される径方向範囲は、この中心を基準にして測定される。
軸対称(すなわち、ビーム伝搬軸Zを中心とした回転対称)の断面を有するビームは、ISO 11146-1:2005(E)のセクション3.12で規定されているように、ビームウエスト位置で測定される単一の寸法またはスポットサイズによって特徴付け可能である。ガウスビームの場合には、式(17)は、スポットサイズがwoに等しいことを示し、woは、式(18)からは、2σ0xまたは2σ0yに対応する。円形の断面のような軸対称の断面を有する軸対称のビームの場合には、σ0x=σ0yである。したがって、軸対称のビームの場合には、断面寸法は、単一のスポットサイズパラメータによって特徴付け可能であり、wo=2σ0である。スポットサイズは、非軸対称のビーム断面の場合にも同様に定義可能であるが、軸対称のビームとは異なり、σ0x≠σ0yである。したがって、ビームのスポットサイズが非軸対称である場合には、非軸対称のビームの断面寸法を、2つのスポットサイズパラメータ、すなわち、それぞれx方向およびy方向におけるwoxおよびwoyによって特徴付ける必要があり、ここで、
wox=2σ0x (25)
woy=2σ0y (26)
である。
さらに、非軸対称のビームの場合における軸(すなわち、任意の回転角度)対称性の欠如は、σ0xおよびσ0yの値の計算の結果が、X軸およびY軸の向きの選択に依存するということを意味する。ISO 11146-1:2005(E)は、これらの参照軸を電力密度分布の主軸と称しており(セクション3.3~3.5)、以下の説明では、X軸およびY軸がこれらの主軸と整列していると仮定する。さらに、断面平面においてX軸およびY軸を回転させることができる角度φ(例えば、それぞれX軸およびY軸の参照位置に対するX軸およびY軸の角度)を使用して、非軸対称のビームのスポットサイズパラメータの最小値(wo,min)および最大値(wo,max)を定義することができる:
wo,min=2σ0,min (27)
wo,max=2σ0,max (28)
ここで、2σ0,min=2σ0x(φmin,x)=2σ0y(φmin,y)であり、2σ0,max=2σ0x(φmax,x)=2σ0y(φmax,y)である。ビーム断面の軸非対称性の程度は、アスペクト比によって定量化可能であり、アスペクト比は、wo,minに対するwo,maxの比率として定義される。軸対称のビーム断面は、1.0のアスペクト比を有するが、その一方で、長円形および他の非軸対称のビーム断面は、1.0より大きいアスペクト比を有し、例えば、1.1より大きい、1.2より大きい、1.3より大きい、1.4より大きい、1.5より大きい、1.6より大きい、1.7より大きい、1.8より大きい、1.9より大きい、2.0より大きい、3.0より大きい、5.0より大きい、または10.0より大きい、などのアスペクト比を有する。
ビーム伝搬方向(例えば、透明なマザーシート160の深さ寸法)におけるきず172の均一性を促進するために、低発散性のパルスレーザビーム112を使用することができる。1つ以上の実施形態では、きず172を形成するために、低発散性のパルスレーザビーム112を使用することができる。上述したように、発散角は、レイリー長によって特徴付け可能である。非軸対称のビームの場合には、主軸XおよびYに関するレイリー長は、それぞれX方向およびY方向に関して式(15)および式(16)によって定義され、ここで、任意の実際のビームの場合には、
は、レーザビームの強度分布によって決定される。対称のビームの場合には、レイリー長は、X方向とY方向とで同じであり、式(22)または式(23)によって表される。低発散角は、レイリー長の大きな値と、レーザビームの弱回折とに相関がある。
ガウス強度プロファイルを有するビームは、きず172を形成するためのレーザ処理にはさほど好ましくない可能性がある。なぜなら、ガウス強度プロファイルを有するビームは、利用可能なレーザパルスエネルギが、ガラスのような材料を修正することを可能にするために、十分に小さいスポットサイズ(約1~5μmまたは約1~10μmのようなマイクロメートル範囲のスポットサイズなど)に集束された場合には、非常に高い回折性を有し、短い伝搬距離にわたって著しく発散するからである。低発散角を実現するためには、回折を減少させるようにパルスレーザビームの強度分布を制御または最適化することが望ましい。パルスレーザビームは、非回折性または弱回折性であってもよい。弱回折レーザビームには、準非回折レーザビームが含まれる。代表的な弱回折レーザビームには、ベッセルビーム、ガウスベッセルビーム、エアリービーム、ウェーバービーム、およびマシュービームが含まれる。
非軸対称のビームの場合には、レイリー長ZRxとZRyとは等しくない。式(15)および式(16)は、ZRxおよびZRyがそれぞれσ0xおよびσ0yに依存することを示唆しており、上記において、σ0xおよびσ0yの値がX軸およびY軸の向きに依存することを説明している。ZRxおよびZRyの値は、それに応じて変化し、各々が、主軸に対応する最小値および最大値を有し、任意のビームプロファイルに関してZRxの最小値をZRx,minで表し、ZRyの最小値をZRy,minで表すとき、ZRx,minおよびZRy,minは、以下の式:
および
によって与えられることを示すことができる。
レーザビームの発散角は、最小のレイリー長を有する方向に、より短い距離にわたって発生するので、きず172を形成するために使用されるパルスレーザビーム112の強度分布は、ZRxおよびZRy(または軸対称のビームの場合には、ZRの値)が可能な限り大きくなるように制御可能である。非軸対称のビームの場合には、ZRxの最小値ZRx,minと、ZRyの最小値ZRy,minとが異なるので、損傷領域を形成する際には、ZRx,minおよびZRy,minのうちの小さい方を可能な限り大きくするような強度分布を有するパルスレーザビーム112を使用することができる。
種々の実施形態において、ZRx,minおよびZRy,minのうちの小さい方(または軸対称のビームの場合には、ZRの値)は、50μm以上、100μm以上、200μm以上、300μm以上、500μm以上、1mm以上、2mm以上、3mm以上、5mm以上、50μm~10mmの範囲内、100μm~5mmの範囲内、200μm~4mmの範囲内、または300μm~2mmの範囲内などである。
本明細書で規定されるZRx,minおよびZRy,minのうちの小さい方(または軸対称のビームの場合には、ZRの値)の値および範囲は、被加工物を透過する種々の波長に関して、式(27)で定義されたスポットサイズパラメータwo,minを調整することによって達成可能である。種々の実施形態において、スポットサイズパラメータwo,minは、0.25μm以上、0.50μm以上、0.75μm以上、1.0μm以上、2.0μm以上、3.0μm以上、5.0μm以上、0.25μm~10μmの範囲内、0.25μm~5.0μmの範囲内、0.25μm~2.5μmの範囲内、0.50μm~10μmの範囲内、0.50μm~5.0μmの範囲内、0.50μm~2.5μmの範囲内、0.75μm~10μmの範囲内、0.75μm~5.0μmの範囲内、0.75μm~2.5μmの範囲内などである。
非回折または準非回折ビームは、概して、半径に対して非単調に減少する強度プロファイルのような、複雑な強度プロファイルを有する。ガウスビームに類似していることから、非軸対称のビームの場合には、有効なスポットサイズwo,effは、強度が最大強度の1/e2に減少しているところである最大強度(r=0)の径方向位置からの、任意の方向における最短の径方向距離として定義可能である。さらに、軸対称のビームの場合には、wo,effは、強度が最大強度の1/e2に減少しているところである最大強度(r=0)の径方向位置からの径方向距離である。非軸対称のビームの場合には有効なスポットサイズwo,effに基づいた、または軸対称のビームの場合にはスポットサイズwoに基づいた、レイリー長の基準は、非軸対称のビームの場合には以下の式(31)、または軸対称のビームの場合には以下の式(32)を使用して、損傷領域を形成するための非回折ビームまたは準非回折ビームとして規定可能である:
ここで、FDは、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも250、少なくとも500、少なくとも1000、10~2000の範囲内、50~1500の範囲内、100~1000の範囲内の値を有する無次元の発散係数である。式(31)を式(22)または式(23)と比較することにより、非回折ビームまたは準非回折ビームの場合には、式(31)における、有効なビームサイズが2倍になっている範囲の距離Smaller of ZRx,min,ZRy,minが、典型的なガウスビームプロファイルが使用された場合に予測される距離のFD倍であることが分かる。無次元の発散係数FDは、レーザビームが準非回折であるかどうかを判定するための基準を提供する。本明細書で使用する場合、パルスレーザビーム112は、そのレーザビームの特性が、FDの値が10以上であるときに式(31)または式(32)を満たしていると、準非回折であると見なされる。FDの値が増加するにつれて、パルスレーザビーム112は、より完全に近い非回折状態に近づく。さらに、式(32)は、式(31)を簡略化したものに過ぎず、したがって、式(31)は、パルスレーザビーム112が軸対称である場合と、パルスレーザビーム112が非軸対称である場合との両方の場合における無次元の発散係数FDを数学的に記述したものであることを理解すべきである。
ここで図3を参照すると、非球面光学素子120(例えば、アキシコン122)を使用して透明なマザーシート160にパルスレーザビーム焦線113を形成する準非回折性のパルスレーザビーム112を生成するための光学アセンブリ100が、概略的に図示されている。光学アセンブリ100は、パルスレーザビーム112を出力するビーム源110と、第1のレンズ130および第2のレンズ132とを含む。
さらに、ビーム源110によって出力されたパルスレーザビーム112が、例えば、非球面光学素子120を通過し、その後、第1のレンズ130および第2のレンズ132の両方を通過した後に、透明なマザーシート160を照射するように、透明なマザーシート160を配置することができる。光軸102は、ビーム源110がパルスレーザビーム112を出力したときにパルスレーザビーム112のビーム経路111が光軸102に沿って延在するように、ビーム源110と透明なマザーシート160との間にZ軸に沿って延在する。本明細書で使用する「上流」および「下流」は、ビーム源110に対するビーム経路111に沿った2つの場所またはコンポーネントの相対的な位置を指す。例えば、パルスレーザビーム112が、第2のコンポーネントを通過する前に第1のコンポーネントを通過する場合には、第1のコンポーネントは、第2のコンポーネントの上流にある。さらに、パルスレーザビーム112が、第1のコンポーネントを通過する前に第2のコンポーネントを通過する場合には、第1のコンポーネントは、第2のコンポーネントの下流にある。
引き続き図3を参照すると、ビーム源110は、パルスレーザビーム112を出力するように構成された任意の既知または未開発のビーム源110を含むことができる。動作中、閉じた輪郭170のきず172(図1Aおよび図2)は、ビーム源110によって出力されたパルスレーザビーム112と、透明なマザーシート160との相互作用によって生成される。いくつかの実施形態では、ビーム源110は、例えば、1064nm、1030nm、532nm、530nm、355nm、343nm、または266nm、または215nmの波長を含むパルスレーザビーム112を出力することができる。さらに、透明なマザーシート160にきず172を形成するために使用されるパルスレーザビーム112は、選択されたパルスレーザ波長に対して透明である材料にとって好適なものとすることができる。
きず172を形成するために適したレーザ波長は、透明なマザーシート160による線形吸収および散乱の合計損失が十分に低くなるような波長である。実施形態において、この波長における透明なマザーシート160による線形吸収および散乱の合計損失は、20%/mm未満、または15%/mm未満、または10%/mm未満、または5%/mm未満、または1%/mm未満であり、「/mm」という寸法は、パルスレーザビーム112のビーム伝搬方向(例えば、Z方向)における透明なマザーシート160の内部での距離1ミリメートル当たりを意味する。多くのガラス被加工物に対する代表的な波長には、Nd3+の基本波長および調和波長(例えば、1064nm付近の基本波長と、532nm、355nm、266nm付近の高次の調和波長とを有するNd3+:YAGまたはNd3+:YVO4)が含まれる。所与の基板材料に対する線形吸収および散乱の合計損失の要件を満たすような、スペクトルの紫外部分、可視部分、および赤外部分における他の波長を使用することも可能である。
動作中、ビーム源110によって出力されたパルスレーザビーム112は、透明な被加工物160において多光子吸収(MPA)を生成することができる。MPAは、同一または異なる周波数の2つ以上の光子の同時吸収であり、この同時吸収によって分子が、ある1つの状態(通常は、基底状態)からより高いエネルギの電子状態(すなわち、イオン化)へと励起される。分子の関連する下位状態と上位状態との間のエネルギの差は、関連する光子のエネルギの合計に等しい。誘導吸収とも称されるMPAは、例えば、線形吸収よりも桁違いに弱い2次または3次(またはより高次)の過程である場合がある。MPAは、2次の誘導吸収の強度が、例えば、光強度の2乗に比例する可能性があるという点で線形吸収とは異なり、したがって、非線形の光学過程である。
1つ以上の閉じた輪郭170(図1Aおよび図2)を作製する穿孔ステップは、非球面光学素子120、第1のレンズ130、および第2のレンズ132と組み合わせて、ビーム源110(例えば、超短パルスレーザ)を利用して、透明なマザーシート160上にビームスポット114を投影し、パルスレーザビーム焦線113を生成することができる。パルスレーザビーム焦線113は、上記で定義したように、ガウスベッセルビームまたはベッセルビームのような準非回折ビームを含み、透明なマザーシート160を完全に穿孔して、透明なマザーシート160にきず172を形成することができ、これらのきず172が、閉じた輪郭170を形成することができる。いくつかの実施形態では、個々のパルスのパルス持続時間は、約1フェムト秒~約200ピコ秒の範囲内、例えば約1ピコ秒~約100ピコ秒の範囲内、または5ピコ秒~約20ピコ秒の範囲内などであり、個々のパルスの繰り返し周波数は、約1kHz~4MHzの範囲内、例えば約10kHz~約3MHzの範囲内、または約10kHz~約650kHzの範囲内などであり得る。
図4Aおよび図4Bも参照すると、前述した個々のパルス繰り返し周波数における単一パルス動作に加えて、パルスバースト500の形態で、2個のパルス500A(例えば、サブパルス)またはそれ以上(例えば、1パルスバースト当たり3個のサブパルス、4個のサブパルス、5個のサブパルス、10個のサブパルス、15個のサブパルス、20個のサブパルス、またはそれ以上の個数のサブパルス、例えば1パルスバースト500当たり1~30個のサブパルス、または1パルスバースト500当たり5~20個のサブパルス)のパルスを生成することができる。理論によって制限されることは意図しないが、パルスバーストとは、単一パルス動作を利用した場合には容易に達成できないような時間スケールでの材料との光学的なエネルギ相互作用(すなわち、透明なマザーシート160の材料中のMPA)を生成する短くて高速なサブパルスをグループ化したものである。引き続き理論によって制限されることは意図しないが、パルスバースト(すなわち、パルスのグループ)の内部のエネルギは保存される。説明のための一例として、100μJ/バーストのエネルギと、2個のサブパルスとを有するパルスバーストの場合には、100μJ/バーストのエネルギが、2個のパルス間で1サブパルス当たり50μJの平均エネルギに分割され、100μJ/バーストのエネルギと、10個のサブパルスとを有するパルスバーストの場合には、100μJ/バーストのエネルギが、10個のサブパルス間で1サブパルス当たり10μJの平均エネルギに分割される。さらに、パルスバーストのサブパルス間でのエネルギ分布は、均一である必要はない。実際にいくつかの例では、パルスバーストのサブパルス間でのエネルギ分布が、指数関数的な減衰の形になっていて、その場合に、パルスバーストの最初のサブパルスが最も多くのエネルギを含み、パルスバーストの2番目のサブパルスがわずかにより少ないエネルギを含み、パルスバーストの3番目のサブパルスがさらにより少ないエネルギを含む、等々となっているものもある。しかしながら、個々のパルスバーストの内部での他のエネルギ分布も可能であり、透明なマザーシート160に種々の程度の修正をもたらすために、それぞれのサブパルスの正確なエネルギを調量することが可能である。
引き続き理論によって制限されることは意図しないが、1つ以上の閉じた輪郭170のきず172が、少なくとも2個のサブパルスを有するパルスバーストを用いて形成される場合には、閉じた輪郭170に沿って透明なマザーシート160を分離するために必要とされる力(すなわち、最大破断抵抗)は、同一の透明なマザーシート160における、単一パルスレーザを使用して形成される隣り合うきず172同士の間隔が同じである場合、同じ形状を有する閉じた輪郭170の最大破断抵抗と比較して低減される。例えば、単一パルスを使用して形成される閉じた輪郭170の最大破断抵抗は、2個以上のサブパルスを有するパルスバーストを使用して形成される閉じた輪郭170の最大破断抵抗よりも少なくとも2倍大きい。さらに、単一パルスを使用して形成される閉じた輪郭170と、2個のサブパルスを有するパルスバーストを使用して形成される閉じた輪郭170との間の最大破断抵抗の差は、2個のサブパルスを有するパルスバーストを使用して形成される閉じた輪郭170と、3個のサブパルスを有するパルスバーストを使用して形成される閉じた輪郭170との間の最大破断抵抗の差よりも大きい。したがって、パルスバーストを使用して、単一パルスレーザを使用して形成される閉じた輪郭170よりも容易に分離される閉じた輪郭170を形成することができる。
引き続き図4Aおよび図4Bを参照すると、パルスバースト500の内部のサブパルス500A同士は、約1ナノ秒~約50ナノ秒の範囲内、例えば約10ナノ秒~約30ナノ秒の範囲内、例えば約20ナノ秒の持続時間によって分離可能である。他の実施形態では、パルスバースト500の内部のサブパルス500A同士は、最大100ピコ秒(例えば、0.1ピコ秒、5ピコ秒、10ピコ秒、15ピコ秒、18ピコ秒、20ピコ秒、22ピコ秒、25ピコ秒、30ピコ秒、50ピコ秒、75ピコ秒、またはそれらの間の任意の範囲)の持続時間によって分離可能である。所与のレーザの場合、パルスバースト500の内部の隣り合うサブパルス500A同士の間の時間間隔Tp(図4B)は、比較的均一であり得る(例えば、互いに約10%以内)。例えば、いくつかの実施形態では、パルスバースト500の内部のそれぞれのサブパルス500A同士は、約20ナノ秒(50MHz)だけ、後続のサブパルスから時間的に分離される。さらに、それぞれのパルスバースト500の間の時間は、約0.25マイクロ秒~約1000マイクロ秒、例えば、約1マイクロ秒~約10マイクロ秒、または約3マイクロ秒~約8マイクロ秒であり得る。
本明細書に記載しているビーム源110の例示的な実施形態のいくつかでは、時間間隔Tb(図4B)は、約200kHzのバースト繰り返し周波数を有するパルスレーザビーム112を出力するビーム源110の場合には、約5マイクロ秒である。レーザバースト繰り返し周波数は、1つのバーストにおける最初のパルスから後続するバーストにおける最初のパルスまでの時間Tbに関連している(レーザバースト繰り返し周波数=1/Tb)。いくつかの実施形態では、レーザバースト繰り返し周波数は、約1kHz~約4MHzの範囲内であり得る。実施形態では、レーザバースト繰り返し周波数は、例えば、約10kHz~650kHzの範囲内であり得る。それぞれのバーストの最初のパルスから後続するバーストの最初のパルスまでの時間Tbは、約0.25マイクロ秒(4MHzのバースト繰り返し周波数)~約1000マイクロ秒(1kHzのバースト繰り返し周波数)、例えば、約0.5マイクロ秒(2MHzのバースト繰り返し周波数)~約40マイクロ秒(25kHzのバースト繰り返し周波数)、または約2マイクロ秒(500kHzのバースト繰り返し周波数)~約20マイクロ秒(50kHzのバースト繰り返し周波数)であり得る。正確なタイミング、パルス持続時間、およびバースト繰り返し周波数は、レーザの設計に応じて変わり得るが、高強度の短パルス(Td<20ピコ秒、いくつかの実施形態ではTd≦15ピコ秒)が特に良好に機能することが判明している。
バースト繰り返し周波数は、約1kHz~約2MHzの範囲内、例えば約1kHz~約200kHzの範囲内であり得る。バースティングまたはパルスバースト500の生成は、サブパルス500Aの発光が、均一かつ一定のストリーム状ではなく、むしろ密な塊状のパルスバースト500であるような種類のレーザ動作である。パルスバーストレーザビームは、動作対象の透明なマザーシート160の材料に基づいて選択された波長であって、その波長では、その透明なマザーシート160の材料が、実質的に透明であるような波長を有する。材料において測定される1バースト当たりの平均レーザ出力は、材料の厚さ1mm当たり少なくとも約40μJであり得る。例えば、実施形態では、1バースト当たりの平均レーザ出力は、約40μJ/mm~約2500μJ/mm、または約500μJ/mm~約2250μJ/mmであり得る。具体例では、0.5mm~0.7mmの厚さを有するコーニング社のEAGLE XG(登録商標)の透明な被加工物の場合には、約300μJ~約600μJのパルスバーストが、被加工物を切断および/または分離することができ、これは、約428μJ/mm~約1200μJ/mmの例示的な範囲に対応する(すなわち、0.7mmのEAGLE XG(登録商標)ガラスの場合には300μJ/0.7mmであり、0.5mmのEAGLE XG(登録商標)ガラスの場合には600μJ/0.5mmである)。
透明なマザーシート160を修正するために必要なエネルギは、パルスバーストエネルギ(すなわち、それぞれのパルスバースト500が一連のサブパルス500Aを含有する場合にパルスバースト500の内部に含有されるエネルギ)の観点から、または単一レーザパルス(その多くがバーストを含むことができる)の内部に含有されるエネルギの観点から説明することできるパルスエネルギである。パルスエネルギ(例えば、パルスバーストエネルギ)は、約25μJ~約750μJ、例えば、約50μJ~約500μJ、または約50μJ~約250μJであり得る。いくつかのガラス組成物の場合には、パルスエネルギ(例えば、パルスバーストエネルギ)は、約100μJ~約250μJであり得る。しかしながら、ディスプレイまたはTFTのガラス組成物の場合には、パルスエネルギ(例えば、パルスバーストエネルギ)は、もっと高くてもよい(例えば、透明なマザーシート160の具体的なガラス組成に応じて、約300μJ~約500μJ、または約400μJ~約600μJ)。
理論によって制限されることは意図しないが、パルスバーストを生成することができるパルスレーザビーム112の使用は、透明な材料、例えばガラス(例えば、透明なマザーシート160)を切断または修正するために有利である。単一パルスレーザの繰り返し周波数だけ時間的に離間されている単一パルスの使用とは対照的に、バーストの内部の高速なパルスシーケンスにわたってパルスエネルギが分散されているバーストシーケンスを使用することにより、単一パルスレーザによって可能となる時間スケールよりも大きな時間スケールでの、材料との非常に集中的な相互作用を利用することが可能になる。(単一パルス動作とは対照的に)パルスバーストの使用は、きず172の寸法(例えば、断面寸法)を増大させ、これにより、透明な物品210(図5)を形成するために、1つ以上の閉じた輪郭170に沿って透明なマザーシート160を分離する際に、隣り合うきず172同士を接続させることが容易になり、それにより、透明な物品210(図5)における亀裂形成が最小化される。さらに、きず172を形成するためにパルスバーストを使用することによって、それぞれのきず172から透明なマザーシート160のバルク材料の中へと外向きに延在する亀裂の向きのランダム性が増大し、これにより、きず172の分離が閉じた輪郭170に追従するように、対応する透明な物品210(図5A)を形成するために、きず172から外向きに延在する個々の亀裂が、閉じた輪郭170の分離に影響を与えなくなるか、またはさもなければバイアスをかけなくなり、これにより、透明な物品210と、残りの透明なマザーシート160(すなわち、透明なマザーシート160のフレーム部分220)との中へと延在する亀裂の形成が最小化される。
再び図3を参照すると、非球面光学素子120が、ビーム源110と透明なマザーシート160との間のビーム経路111内に配置されている。動作中、非球面光学素子120を通してパルスレーザビーム112、例えば、入射してくるガウスビームを伝搬させることにより、上記のように、パルスレーザビーム112のうちの、非球面光学素子120を越えて伝搬する部分が準非回折レーザビーム112となるように、パルスレーザビーム112を変化させることができる。非球面光学素子120は、非球面形状を含む任意の光学素子を含むことができる。いくつかの実施形態では、非球面光学素子120は、アキシコンレンズ、例えば、負の屈折アキシコンレンズ(例えば、負のアキシコン)、正の屈折アキシコンレンズ、屈折アキシコンレンズ、回折アキシコンレンズ、またはプログラム可能な空間光変調器アキシコンレンズ(例えば、位相アキシコン)などのような、円錐形の波面生成光学素子を含むことができる。
いくつかの実施形態では、非球面光学素子120は、形状がz’=(cr2/1)+(1-(1+k)(c2r2))1/2+(a1r+a2r2+a3r3+a4r4+a5r5+a6r6+a7r7+a8r8+a9r9+a10r10+a11r11+a12r12として数学的に表される少なくとも1つの非球面を含み、ここで、z’は、非球面の表面サグであり、rは、径方向(例えば、X方向またはY方向)における非球面と光軸102との間の距離であり、cは、非球面の面曲率であり(すなわち、ci=1/Riであり、ここで、Rは、非球面の面半径である)、kは、円錐定数であり、係数aiは、非球面を表す1次から12次またはそれより高次の非球面係数(多項式非球面)である。1つの例示的な実施形態では、非球面光学素子120の少なくとも1つの非球面は、以下の係数a1~a7、すなわち、それぞれ、-0.085274788、0.065748845、0.077574995、-0.054148636、0.022077021、-0.0054987472、0.0006682955を含み、非球面係数a8~a12は、0である。この実施形態では、少なくとも1つの非球面は、円錐定数k=0を有する。しかしながら、係数a1は、ゼロではない値を有するので、このことは、ゼロではない値を有する円錐定数kを有することに等しい。したがって、ゼロではない円錐定数k、ゼロではない係数a1、またはゼロではないkとゼロではない係数a1との組み合わせを規定することによって、同等の表面を記述することができる。さらに、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの非球面は、ゼロではない値を有する少なくとも1つのより高次の非球面係数a2~a12(すなわち、a2,a3,・・・a12のうちの少なくとも1つが≠0)によって記述または定義される。1つの例示的な実施形態では、非球面光学素子120は、ゼロではない係数a3を含む、立方体形状の光学素子のような3次の非球面光学素子を含む。
いくつかの実施形態では、非球面光学素子120が(図3に示されるような)アキシコン122を含む場合には、このアキシコン122は、約1.2°、例えば約0.5°~約5°、または約1°~約1.5°、またはさらには約0.5°~約20°の角度を有するレーザ出力面126(例えば、円錐面)を有することができ、この角度は、パルスレーザビーム112がアキシコン122に入射するレーザ入力面124(例えば、平坦な面)を基準にして測定される。さらに、レーザ出力面126は、円錐の先端で終端する。さらに、非球面光学素子120は、レーザ入力面124からレーザ出力面126まで延在し、かつ円錐の先端で終端する中心軸125を含む。他の実施形態では、非球面光学素子120は、ワキシコン、空間光変調器のような空間位相変調器、または回折光学格子を含むことができる。動作中、非球面光学素子120は、入射してくるパルスレーザビーム112(例えば、入射してくるガウスビーム)を準非回折ビームに整形し、この整形された準非回折ビームが、今度は、第1のレンズ130および第2のレンズ132を通るように向けられる。
引き続き図3を参照すると、第1のレンズ130は、第2のレンズ132の上流に配置されており、第1のレンズ130と第2のレンズ132との間のコリメーション空間134の内部でパルスレーザビーム112をコリメートすることができる。さらに、第2のレンズ132は、透明なマザーシート160へとパルスレーザビーム112を集束させることができ、透明なマザーシート160は、結像平面104に配置可能である。いくつかの実施形態では、第1のレンズ130および第2のレンズ132は、それぞれ平凸レンズを含む。第1のレンズ130および第2のレンズ132がそれぞれ平凸レンズを含む場合には、第1のレンズ130および第2のレンズ132の湾曲部を、それぞれコリメーション空間134に面するように方向付けることができる。他の実施形態では、第1のレンズ130は、他のコリメートレンズを含むことができ、第2のレンズ132は、メニスカスレンズ、非球面レンズ、または他のより高次の補正された集束レンズを含むことができる。
ここで図5A~図8Eを参照して、透明なマザーシートからの透明な物品の形成についてより詳細に説明する。特に、図5A~図7Bは、透明な物品と、透明なマザーシートから形成されるフレーム部分とを含む、透明な被加工物アセンブリを示す。さらに、図8A~図8Eは、透明なマザーシートから1つ以上の透明な物品を形成するために透明なマザーシートをレーザ処理するステップを示す。
ここで図5Aを参照すると、1つ以上の透明な物品210が(図1A~図3に図示されている透明なマザーシート160、または図8A~図8Cに図示されている透明なマザーシート360のような)透明なマザーシートから分離された後、単一の透明なマザーシートであったものは、1つ以上の透明な物品210と、1つ以上の透明な物品210を取り囲むフレーム部分220とが含まれた、透明な被加工物アセンブリ200を含む。本明細書に記載している種々の実施形態では、フレーム部分220は、透明なマザーシートの残りの部分、または透明なマザーシートのフレーム部分と称される場合もある。
図5Aの透明な被加工物アセンブリ200の断面図である図5Bに示されているように、1つ以上の透明な物品210の各々は、第1の主面212と、第1の主面212の反対側であり得る第2の主面214とを含む。さらに、1つ以上の透明な物品210は、それぞれ第1の主面212と第2の主面214との間に延在する1つ以上の側面216を含む。さらに、フレーム部分220は、第1の主面222と、第1の主面222の反対側であり得る第2の主面224とを含む。フレーム部分220は、1つ以上の内面226および外面228も含む。特に、フレーム部分220の外面228は、透明なマザーシートの周面と同じ面であり、この透明なマザーシートから透明な物品210が分離される。さらに、1つ以上の透明な物品210のうちの少なくとも1つは、フレーム部分220の1つ以上の内面226のうちの少なくとも1つと摩擦係合していて、1つ以上の透明な物品210の各々をフレーム部分220と係合したまま保持する。例えば、1つ以上の透明な物品210のうちの少なくとも1つの透明な物品210の、1つ以上の側面216のうちの少なくとも1つを、フレーム部分220の内面226と直接的に摩擦係合させることができる。隣り合う透明な物品同士の間の、かつ/または透明な物品とフレーム部分との間の摩擦係合のこれらの界面は、本明細書では「分離された輪郭」と称される。さらに、本明細書で使用する場合、ある1つの分離された輪郭が、特定の透明な物品と、別の透明な物品、フレーム部分、またはその両方との間の摩擦係合の界面を形成している場合には、この分離された輪郭は、特定の透明な物品のほうに関連付けられる。
図5Aおよび図5Bに示されているように、透明な被加工物アセンブリ200は、複数の透明な物品210、例えば、第1の透明な物品210aと、第2の透明な物品210bと、第3の透明な物品210cと、第4の透明な物品210dと、第5の透明な物品210eとを含むことができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の透明な物品210は、透明な物品210の内側アレイ211と、透明な物品210の外側アレイ213とを含むことができる。外側アレイ213のそれぞれの透明な物品210は、フレーム部分220と摩擦係合しており、内側アレイ211のそれぞれの透明な物品210は、外側アレイ213の少なくとも1つの透明な物品210によってフレーム部分220から離隔されている。さらに、内側アレイ211の透明な物品210のうちの少なくとも1つは、外側アレイ213の透明な物品210と摩擦係合している。図5Aおよび図5Bに示されている実施形態では、第1の透明な物品210aおよび第5の透明な物品210eが、外側アレイ213の一部であって、かつフレーム部分220と摩擦係合しており、第2、第3、および第4の透明な物品220b~220dが、内側アレイ211の一部である。第2の透明な物品210bは、第1の透明な物品210aと第3の透明な物品210cとの間に配置されていて、かつ第1の透明な物品210aおよび第3の透明な物品210cと摩擦係合しており、第4の透明な物品210dは、第3の透明な物品210cと第5の透明な物品210eとの間に配置されていて、かつ第3の透明な物品210cおよび第5の透明な物品210eと摩擦係合している。さらに、いくつかの実施形態では、内側アレイ211は、内側アレイ211の他の透明な物品210のみと摩擦係合する少なくとも1つの透明な物品210を含むことができる。
ここで図6Aおよび図6Bを参照すると、透明な被加工物アセンブリ200’が示されている。図6Aに示されているように、透明な被加工物アセンブリ200’は、複数の透明な物品210を含み、これらの複数の透明な物品210は、フレーム部分220の一部によってそれぞれ互いに離隔されている。図6Aの透明な被加工物アセンブリ200’の断面図である図6Bに示されているように、1つ以上の透明な物品210の各々は、第1の主面212と、第1の主面212の反対側であり得る第2の主面214とを含む。さらに、1つ以上の透明な物品210は、それぞれフレーム部分220の内面226と摩擦係合する1つ以上の側面216を含む。図5A~図6Bの実施形態には示されていないが、例えば、透明な物品210が丸みを帯びた長方形を含んでいる実施形態では、透明な物品210は、互いに接触してもよく、かつ透明な被加工物アセンブリ200のうちの、フレーム部分220の一部ではない、複数の透明な物品210の間に存在する離散した部分に接触することができる。また、図5A~図6Bには示されていないが、透明な物品210のうち、他の透明な物品210と摩擦係合するもの(図5Aおよび図5Bと同様)と、フレーム部分220のみと摩擦係合するもの(図6Aおよび図6Bと同様)とがある実施形態も企図されている。
ここで図5A~図6Bを参照すると、透明な被加工物アセンブリ200,200’は、フレーム部分220の内部に配置された1つ以上の解放線230を含むこともできる。最初に、フレーム部分220に複数のきず(図1Aおよび図2のきず172と同様)をレーザ形成することによって、解放線230を形成することができ、その後、これらの解放線230に沿ってフレーム部分220が分離される。いくつかの実施形態では、解放線230を、例えば、図5Aおよび図5Bに示されているように、透明な物品210と、フレーム部分220の外面228との間に延在させることができる。さらに、図6Aに示されているように、解放線230を、透明な物品210同士の間に延在させることもできる。動作中、(例えば、赤外線レーザビームを解放線230に沿うようにまたは解放線230の近傍に向けること、または解放線230に機械的な力を印加することなどにより)1つ以上の解放線230に沿ってフレーム部分220を分離することによって、透明な物品210をフレーム部分220との摩擦係合から解放することができ、それにより、透明な物品210をフレーム部分220との接触から解除することができる。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの解放線230は、少なくとも1つの解放線230がノッチ部分235によって外面228から離隔されるように、外面228に達することなく外面228に向かって延在することができる。ノッチ部分235は、フレーム部分220のうちの、解放線230と外面228との間に配置された中実部分を含む。いくつかの実施形態では、ノッチ部分235は、外面228から少なくとも1つの解放線230まで延在しており、いくつかの実施形態では、ある解放線230が、外面228からノッチ部分235まで延在し、かつ別の解放線230が、このノッチ部分235からフレーム部分220の内面226まで延在するようにすることができる。
動作中、解放線230と外面228との間にノッチ部分235を残しながら1つ以上の解放線230を形成することにより、透明な物品210をフレーム部分220との摩擦係合から解放することなく、(例えば、赤外線レーザビームを解放線230に沿うようにまたは解放線230の近傍に向けること、または解放線230に機械的な力を印加することなどにより)解放線230に沿ってフレーム部分220を分離することができる。このことにより、透明な物品210をフレーム部分220との摩擦係合から解放することなく、閉じた輪郭170を分離するのと同じ動作ステップ中に(例えば、同じまたは類似の製造設備を使用して)解放線230を分離することが可能となる。
ここで図7Aおよび図7Bを参照すると、透明な物品210と、フレーム部分220と、解放周線232および1つ以上の解放支線234を含む解放線230とを含む、透明な被加工物アセンブリ200’’が概略的に図示されている。解放周線232は、フレーム部分220内に配置されていて、かつ1つ以上の透明な物品210に外接している。解放周線232は、フレーム部分220の1つ以上の内面226のうちの少なくとも1つと接触していて、かつ透明な物品210を取り囲んでいる。解放支線234は、解放周線232から外面228に向かって延在している。いくつかの実施形態では、1つ以上の解放支線234は、解放周線232から外面228まで延在している。他の実施形態では、1つ以上の解放支線234は、解放周線232から延在することができ、解放支線234がノッチ部分235によって外面228から離隔されるように、解放周線232と外面228との間にノッチ部分235を配置することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ノッチ部分235は、外面228と解放支線234との間に延在することができ、いくつかの実施形態では、ある解放支線234が、外面228からノッチ部分235まで延在し、かつ別の解放線230が、このノッチ部分235からフレーム部分220の解放周線232まで延在するようにすることができる。他の実施形態では、解放線230が、解放周線232を含み、かつ解放支線234を含まないようにしてもよい。さらに、図示されていないが、図6Aおよび図6Bの透明な被加工物アセンブリ200’のいくつかの実施形態は、透明な物品210のうちの少なくとも1つと接触していて、かつこの1つ以上の透明な物品210を取り囲んでいる解放周線232を含むことができる。
動作中、(例えば、赤外線レーザビームを解放周線232および解放支線234に沿うようにもしくは解放周線232および解放支線234の近傍に向けること、または解放周線232および解放支線234に機械的な力を印加することなどにより)解放周線232および解放支線234を分離することによって、その後の、フレーム部分220への、例えば1つ以上のノッチ部分235への力の印加により、1つ以上の透明な物品210をフレーム部分220との摩擦係合から解除することが可能となる。代替的に、ノッチ部分235を有さない透明な被加工物アセンブリ200’’の実施形態では、解放周線232および解放支線234を分離することにより、透明な物品210をフレーム部分220との摩擦係合から解除することができる。さらに、解放支線234を有さない実施形態では、フレーム部分220に力を印加して、フレーム部分220の外面228と解放周線232との間で亀裂を伝搬させることにより、1つ以上の透明な物品210をフレーム部分220との摩擦係合から解除することができる。
再び図5A~図7Bを参照すると、透明な被加工物アセンブリ200,200’,200’’は、1つ以上の材料層240をさらに含むことができ、この1つ以上の材料層240は、少なくとも1つの透明な物品210の第1の主面212および第2の主面214のうちの一方または両方の上に配置されている。例えば、図5B,図6B,および図7Bに示されているように、材料240は、透明な被加工物アセンブリ200の透明な物品210の各々の第1の主面212上に配置されている。いくつかの実施形態では、材料240を、追加的にフレーム部分220上に、例えば、フレーム部分220の第1の主面222および第2の主面224のうちの一方または両方の上に配置してもよい。理論によって制限されることは意図しないが、透明な物品210をフレーム部分220と摩擦係合したまま保持することにより、単一のプロセスステップで、複数の透明な物品210に1つ以上の材料層240を被着させることができる。この実施形態では、1つ以上の材料層240は、少なくとも1つの透明な物品210の第1の主面212上に配置されていて、かつ少なくとも透明な物品210に関連する少なくとも1つの分離された輪郭を覆うように途切れなく配置されている。一例として、1つ以上の材料層240は、第1の透明な物品210aの第1の主面212上と、第2の透明な物品210bの第1の主面212上とに配置可能であり、かつ第1の透明な物品210aと第2の透明な物品210bとの間の界面を形成する分離された輪郭を覆うように途切れなく配置可能である。別の例として、1つ以上の材料層240は、第1の透明な物品210aの第1の主面212上と、フレーム部分220の第1の主面222上とに配置可能であり、かつ第1の透明な物品210aとフレーム部分220との間の界面を形成する分離された輪郭を覆うように途切れなく配置可能である。さらに、比較的小さな複数の個々の透明な物品210に材料240を被着させるよりも、比較的大きな1つの透明な被加工物アセンブリ200,200’,200’’に材料240を被着させる方が簡単であり得る。
いくつかの実施形態では、1つ以上の材料層240は、メタライゼーション層または反射防止コーティングなどを含むことができる。さらに、1つ以上の材料層240は、ガラス、ガラスセラミック、セラミック、ポリマー、またはそれらの組み合わせなどを含むことができる。例えば、1つ以上の材料層240は、透明な被加工物アセンブリ200に接合された、例えば、1つ以上の透明な物品210のうちの少なくとも1つに接合された、1つ以上のガラスシートを含むことができる。動作中、解放線230は、透明な物品210がフレーム部分220との摩擦係合から解放される前に、1つ以上の材料層240が透明な物品210に被着されることを可能にする。さらに、ノッチ部分235は、解放線230が解放された後に、1つ以上の材料層240を被着させることを可能にする。なぜなら、ノッチ部分235は、破壊されることにより透明な物品210をフレーム部分220との摩擦係合から解放するために、限局された小さな力(機械的な力など)しか必要としないからである。さらに、解放線230が解放された後に、材料240を被着させることができるので、1つの透明な被加工物アセンブリ200,200’の表面全体に材料240を被着させることができ、このことは、複数の透明な物品210に材料240を選択的に被着させるよりも簡単であり得る。透明な被加工物アセンブリ200,200’の表面全体に材料240を被着させる1つの例示的な方法は、スピンコーティングを含む。
いくつかの実施形態では、透明なマザーシート160は、第1の透明なマザーシートを含み、1つ以上の材料層240のうちの少なくとも1つは、第2の透明なマザーシートを含むことができる。本明細書に記載しているレーザ処理を使用して、ガラスシートのスタックのような透明なマザーシートのスタックに穿孔し(すなわち、スタックの内部にきずを形成し)、最大数mmの合計高さのガラススタックをただ1回のレーザ通過で完全に穿孔することができるが、複数の透明なマザーシートを同時に穿孔することが有利でない状況が存在する場合もある。一例として、少なくとも1つの透明なマザーシート上に金属コンポーネント(電気コネクタなど)が配置される実施形態では、透明なマザーシート(例えば、第1および第2の透明なマザーシート)に、同じ動作で(すなわち、スタックされた状態で)きずをレーザ形成しないことが有利であり得る。なぜなら、レーザビーム焦線が、金属コンポーネントによって散乱、遮断、または他の方法で中断され得るからである。別の例として、複数の異なる透明なマザーシート(例えば、第1および第2の透明なマザーシート)のきずの輪郭同士、およびその後に形成される透明な物品同士、ならびにフレーム部分同士が、互いに位置合わせされていない実施形態では、それぞれ異なる形状および寸法を有する輪郭、およびその後の透明な物品、ならびにフレーム部分を形成することができるように、それぞれの透明なマザーシート(例えば、第1および第2の透明なマザーシート)に別々にきずをレーザ形成することが有利であり得る。
いくつかの実施形態では、第2の透明なマザーシートは、1つ以上の閉じた輪郭のような1つ以上の輪郭を含むことができ、1つ以上の輪郭は、それぞれ、本明細書に記載している任意の実施形態による輪郭およびきずを含むことができる複数のきずを含み、第2の透明なマザーシートは、本明細書に記載している任意の実施形態による透明なマザーシート160を含むことができる。この実施形態では、第2の透明なマザーシートの1つ以上の閉じた輪郭は、第1の透明なマザーシートの1つ以上の閉じた輪郭とは位置合わせされておらず、したがって、第1の透明な被加工物および第2の透明な被加工物の両方においてきずの輪郭を同時にレーザ形成することは、実現不可能である。さらに、いくつかの実施形態では、第2の透明なマザーシートの閉じた輪郭を解放する前に、第2の透明なマザーシートを(第1の透明なマザーシート160から形成される)透明な物品210およびフレーム部分220と共にスタックして1つのアセンブリにすることができる。他の実施形態では、第2の透明なマザーシートを(第1の透明なマザーシート160から形成される)透明な物品210およびフレーム部分220と共にスタックして1つのアセンブリにする前に、第2の透明なマザーシートの1つ以上の閉じた輪郭を分離することができる。この実施形態では、第2の透明なマザーシートは、1つ以上の透明な物品と、フレーム部分とを含み、このフレーム部分は、1つ以上の透明な物品を取り囲んでいて、かつ1つ以上の透明な物品と摩擦係合しており、これらの1つ以上の透明な物品およびフレーム部分は、第1の透明なマザーシート160から形成される1つ以上の透明な物品210およびフレーム部分220と位置合わせされている。この実施形態では、第2の透明なマザーシートの(すなわち、第2の透明なマザーシートから形成される)フレーム部分は、ノッチ部分を有することができ、このノッチ部分は、透明な物品と第2の透明なマザーシートのフレーム部分とを摩擦係合したまま保持することができ、第1の透明なマザーシートのノッチ部分と同様のやり方で解放可能である。
いくつかの実施形態では、第1の透明なマザーシート(すなわち、透明な物品210およびフレーム部分220)は、第2の透明なマザーシートに接合可能であり、例えば、直接的に接合可能である。代替的に、第1の透明なマザーシート(すなわち、透明な物品210およびフレーム部分220)と、第2の透明なマザーシートとの間に、追加的な材料層240、例えば、メタライゼーション層、ポリマー層、セラミック層、ガラス層(例えば、第2の透明なマザーシートではないガラス層)、ガラスセラミック層、または第1の透明なマザーシートと第2の透明なマザーシートとの間に配置される同様の層を配置してもよい。したがって、本明細書に記載しているレーザ処理は、透明な物品と、追加的な材料層との、十分に位置合わせされてスタックされたアセンブリの形成を容易にする。さらに、透明な物品210をフレーム部分220との摩擦係合から解放する前に、スタックされたアセンブリを形成することにより、少なくとも1つの透明な物品210を含むスタックされたアセンブリの、より迅速かつより信頼できる形成を促進することができる。
ここで図8A~図8Eを参照すると、例えば、透明なマザーシート360から透明な物品410をレーザ形成し、透明な物品410をインサイチュで処理することによって透明なマザーシート360を処理する方法が、概略的に示されている。図8Aおよび図8Bに示されているように、本方法は、最初に、透明なマザーシート360を用意するステップ(図8A)と、いくつかの実施形態では、透明なマザーシート360に1つ以上の基準361を形成するステップ(図8B)とを含む。基準361は、透明なマザーシート360の上または中に、例えば、透明なマザーシート360の第1の主面362の中または上に形成されるマーキングを含む。基準361は、透明なマザーシート360の後々の処理ステップを支援するための参照点を提供し、位置合わせを容易にする。さらに、図8C~図8Eに示されているように、基準361は、透明なマザーシート360のうちの、透明なマザーシート360から1つ以上の透明な物品410が形成された後にフレーム部分420になる部分に形成可能である。
ここで図1A~図3および図8A~図8Eを参照すると、透明なマザーシート360を処理する方法は、透明なマザーシート360にきず372(例えば、図1Aおよび図2のきず172)を含む1つ以上の輪郭370(閉じた輪郭、例えば、図1Aおよび図2の閉じた輪郭170など)を形成するステップを含む。例えば、輪郭370のうちのいくつか(例えば、閉じた輪郭)は、1つ以上の透明な物品410の周囲413を画定することができ、また、輪郭370のうちのいくつかは、解放線430になるように形成可能である。動作中、きず372を含む輪郭370を形成するステップは、ビーム源110によって出力され、ビーム経路111に沿って方向付けられたパルスレーザビーム112を、透明なマザーシート360へと向ける(例えば、限局する)ステップであって、これにより、透明なマザーシート360へと向けられたパルスレーザビーム112の一部が、透明なマザーシート360の内部に誘導吸収を発生させて、この誘導吸収が、透明なマザーシート360の内部にきず372を生成するようにする、ステップを含む。
パルスレーザビーム112は、透明なマザーシート360の損傷閾値を超えるために十分なパルスエネルギおよびパルス持続時間を含むことができる。いくつかの実施形態では、パルスレーザビーム112を透明なマザーシート360へと向けるステップは、ビーム源110によって出力されたパルスレーザビーム112を、ビーム伝搬方向(例えば、Z軸)に沿って方向付けられたパルスレーザビーム焦線113へと集束するステップを含む。透明なマザーシート360は、パルスレーザビーム112のパルスレーザビーム焦線113に少なくとも部分的に重なるようにビーム経路111に配置される。パルスレーザビーム焦線113は、このようにして透明なマザーシート360へと向けられる。パルスレーザビーム112、例えば、パルスレーザビーム焦線113は、透明なマザーシート360の内部に誘導吸収を発生させて、透明なマザーシート360内にきず372を生成する。いくつかの実施形態では、個々のきず372は、数百キロヘルツ(すなわち、1秒当たり数十万個のきず)の速度で生成可能である。いくつかの実施形態では、非球面光学素子120は、パルスレーザビーム112をパルスレーザビーム焦線113へと集束させることができる。動作中、パルスレーザビーム焦線113の位置は、透明なマザーシート360に対して相対的にパルスレーザビーム112を適切に位置決めおよび/または位置合わせすることによって、ならびに光学アセンブリ100(図3)のパラメータを適切に選択することによって、制御可能である。
引き続き図1A~図3および図8A~図8Eを参照すると、透明なマザーシートを処理する方法は、透明なマザーシート360を、パルスレーザビーム112に対して相対的に並進させるステップ(または、パルスレーザビーム112の方を、例えば、図1Aおよび図2に示される並進方向101で、透明なマザーシート360に対して相対的に並進させてもよい)をさらに含むことができ、これにより、透明なマザーシート360に、1つ以上の透明な物品410の所望の周囲413をトレースする輪郭370(例えば、閉じた輪郭)が形成され、後続の分離ステップの後に、この1つ以上の透明な物品410を、透明なマザーシート360に形成することができる。
ここで図8C~図8Eを参照すると、本方法は、輪郭370に沿って透明なマザーシート360の一部を分離し(図8C)、それにより1つ以上の透明な物品410と、1つ以上の透明な物品410を取り囲んでいて、かつ1つ以上の透明な物品410のうちの少なくとも1つと摩擦係合しているフレーム部分420とを含む、透明な被加工物アセンブリ400を形成するステップ(図8Dおよび図8E)を含む。特に、少なくとも1つの透明な物品410の側面416は、フレーム部分420の1つ以上の内面426と直接的に摩擦係合しており、少なくとも1つの透明な物品410の側面416は、別の透明な物品410の側面416と直接的に摩擦係合している。動作中、透明なマザーシート360を分離するステップは、例えば、1つ以上の輪郭370に機械的応力を印加すること、または赤外線レーザビームを、透明なマザーシート360へと、1つ以上の輪郭370に沿うようにまたは1つ以上の輪郭370の近傍に向けることなどにより、1つ以上の輪郭370に応力を印加するステップを含む。
ここで図8Dの透明な被加工物アセンブリ400の断面図である図8Eを参照すると、いくつかの実施形態では、本方法は、次に、1つ以上の透明な物品410のうちの少なくとも1つの透明な物品410の表面に1つ以上の材料層440を被着させるステップを含むことができる。図8Eに示されている実施形態では、材料440は、それぞれの透明な物品410の第1の主面412と、フレーム部分420の第1の主面422とに被着される。他の実施形態では、材料440を、付加的または代替的に、1つ以上の透明な物品410のうちの少なくとも1つの透明な物品410の第2の主面414と、フレーム部分420の第2の主面424とに被着させてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、材料440を、1つ以上の透明な物品410のうちの少なくとも1つの透明な物品410の表面(例えば、第1の主面412)には被着させるが、フレーム部分420の表面には被着させないようにしてもよい。いくつかの実施形態では、任意の既知または未開発の堆積方法、例えば、気相成長(化学気相成長または物理気相成長など)、またはスピンコーティングなどを使用して、透明な被加工物アセンブリ400に材料層440を被着させることができる。さらに、透明な被加工物アセンブリ400に材料層440を追加することにより、複合多層構造を形成することができる。例えば、層440のうちの少なくとも1つは、透明な物品410と共にスタックされた形態で配置可能な、上述した第2の透明なマザーシートと、フレーム部分420と、いくつかの実施形態では、追加的な材料層440とを含むことができる。
他の実施形態では、本方法は、付加的または代替的に、1つ以上の透明な物品410のうちの少なくとも1つの透明な物品410の表面、例えば、第1の主面412および/または第2の主面414を修正するステップをさらに含むことができる。1つ以上の透明な物品410のうちの少なくとも1つの透明な物品410の表面を修正するステップは、表面を研磨すること、表面を清浄化すること、表面を粗面化すること、表面をエッチングすること、表面をパターニングすること(例えば、表面に窪み部、マーキング、または他の限局された損傷のパターンを形成することによる)、またはそれらの組み合わせを含む。
次に、透明な物品410の表面に材料440を被着させるステップ、および/または透明な物品410の表面を修正するステップの後、本方法は、1つ以上の透明な物品410の少なくとも1つをフレーム部分420との摩擦係合から解放し、それにより、1つ以上の透明な物品410の各々とフレーム部分420との間の接触を解除するステップをさらに含むことができる。動作中、例えば、切れ目を入れて破断するプロセスのような機械的な破断プロセス、またはレーザ分離プロセスなどを使用して、フレーム部分420を破断することにより、透明な物品410をフレーム部分420との摩擦係合から解放することができる。少なくとも1つの材料層440が第2の透明なマザーシートを含む実施形態では、この第2の透明なマザーシートの透明な物品を、透明な物品410をフレーム部分420との摩擦係合から解放するのと同じステップで、または追加的なステップで、(例えば、第2の透明な被加工物のフレーム部分を破断することにより)第2の透明な被加工物のフレーム部分との摩擦係合から解放可能である。
いくつかの実施形態では、透明な物品410を解放するステップは、フレーム部分420に(解放周線432および解放支線434のような)1つ以上の解放線430を形成するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の解放線430を形成するステップによって、1つ以上の透明な物品410のうちの少なくとも1つがフレーム部分420との摩擦係合から解放され、他の実施形態では、1つ以上の透明な物品410を解放するステップは、フレーム部分420に、例えば、1つ以上の解放線430のうちの少なくとも1つとフレーム部分420の外面428との間に延在するノッチ部分435に、応力を印加するステップを含む。
前述の説明を考慮すると、透明なマザーシートからの透明な物品の形成および処理は、透明な物品が透明なマザーシートの残りの部分と摩擦係合したままになるように、それぞれの透明な物品の所望の周囲に対応する閉じた輪郭線に沿ったきずを含む、閉じた輪郭を形成および分離することによって改善可能であることを理解すべきである。この摩擦係合により、透明な物品の表面への材料層の被着および/または透明な物品の表面の修正のような追加的な処理ステップを、透明な物品が透明なマザーシートの残りの部分と共にその場に留まっている間に実施することが可能になる。これらの追加的な処理ステップの後、1つ以上の透明な物品を解放することができる。したがって、本明細書に記載している実施形態により、複数の透明な物品を一括して表面処理することが容易になり、この複数の透明な物品の一括での表面処理は、寸法制約または製造制約などに起因した複数の透明な物品の個々の処理よりも高速で、安価で、より一貫性のあるものであり得る。
本明細書で使用する「約」という用語は、量、寸法、配合、パラメータ、および他の数量ならびに特性が正確ではなく、また必ずしも正確でなくてもよく、必要に応じて、公差、変換係数、丸め、および測定誤差など、ならびに当業者には既知の他の要因を反映しながら、概数および/またはそれ以上またはそれ以下であってもよいことを意味する。数値または範囲の端点を説明する際に「約」という用語が使用されている場合には、その言及されている特定の値または端点が含まれる。本明細書における数値または範囲の端点に「約」が付されているか否かにかかわらず、「約」によって修飾された実施形態と、「約」によって修飾されていない実施形態の2つの実施形態が記載されているものとする。さらに、それらの範囲の各々の端点は、他方の端点との関係においても、他方の端点とは関係なくても有効であることは理解されるであろう。
本明細書で使用する方向に関する用語、例えば、上、下、右、左、前、後、頂、底は、図示された図面を参照して使用されているに過ぎず、絶対的な向きを示唆することを意図していない。
特に明記しない限り、本明細書に記載している方法は、その方法のステップを特定の順序で実施することを要求していると解釈されることは意図しておらず、また、何らかの装置によって特定の向きが要求されることも意図していない。したがって、方法の請求項が、実際にその方法のステップが従うべき順序を記載していない場合、またはいずれの装置の請求項も、実際に個々のコンポーネントに対する順序または向きを記載していない場合、またはそれ以外に、特許請求の範囲もしくは明細書において、それらのステップが特定の順序に限定されるべきであることが明記されていない場合、または装置のコンポーネントに対する特定の順序もしくは向きが記載されていない場合には、いかなる点においても、順序もしくは向きの推定は決して意図していない。これは、ステップの配列、動作フロー、コンポーネントの順序、またはコンポーネントの向きに関する論理の問題、文法的な構成または句読点から導き出される明白な意味、および本明細書に記載している実施形態の数または種類を含む、考え得る限りの明示されていない解釈の根拠について当てはまる。
本明細書で使用する場合、単数形の「1つの」および「その/この」は、文脈上明らかに別異の記載がない限り、複数の指示物を含む。したがって、例えば、「1つの」コンポーネントは、文脈上明らかに別異の記載がない限り、2つ以上のそのようなコンポーネントを有する態様を含む。
請求される主題の思想および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載している実施形態に対して種々の修正および変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本明細書は、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内にある限り、本明細書に記載している種々の実施形態の修正形態および変形形態を包含することを意図している。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
透明なマザーシートを処理するための方法であって、
当該方法は、前記透明なマザーシートに1つ以上の閉じた輪郭を形成するステップであって、それぞれの閉じた輪郭は、透明な物品の周囲を画定するための複数のきずを前記透明なマザーシートに含む、ステップを含み、前記1つ以上の閉じた輪郭の各々を形成する前記ステップは、
ビーム源から出力され、ビーム経路に沿って方向付けられたパルスレーザビームを前記透明なマザーシートへと向けるステップであって、これにより、前記透明なマザーシートへと向けられた前記パルスレーザビームの一部が、前記透明なマザーシートの内部で誘導吸収を発生させて、前記誘導吸収が、前記透明なマザーシートの内部にきずを生じさせるようにするステップと、
前記透明なマザーシートと前記パルスレーザビームとを、1つ以上の閉じた輪郭線に沿って互いに相対的に並進させ、それにより前記透明なマザーシートの内部に、前記1つ以上の閉じた輪郭線に沿ったきずをレーザ形成するステップと
を含み、
当該方法は、前記閉じた輪郭に沿って前記透明なマザーシートの一部を分離し、それにより1つ以上の透明な物品を形成するステップであって、ここで、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つは、前記透明なマザーシートのフレーム部分と摩擦係合している、ステップを含み、
当該方法は、前記透明なマザーシートの一部を分離して前記1つ以上の透明な物品を形成した後、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つの透明な物品の表面に1つ以上の材料層を被着させるステップを含み、
当該方法は、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つの透明な物品の表面に前記1つ以上の材料層を被着させた後、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つを前記透明なマザーシートの前記フレーム部分との摩擦係合から解放するステップを含む、
方法。
実施形態2
前記閉じた輪郭に沿って前記透明なマザーシートを分離し、それにより前記1つ以上の透明な物品を形成する前記ステップは、前記1つ以上の閉じた輪郭に応力を印加するステップを含む、実施形態1記載の方法。
実施形態3
前記1つ以上の閉じた輪郭に応力を印加する前記ステップは、前記1つ以上の閉じた輪郭に機械的応力を印加するステップを含む、実施形態2記載の方法。
実施形態4
前記1つ以上の閉じた輪郭に応力を印加する前記ステップは、赤外線レーザビームを、前記透明なマザーシートへと、前記1つ以上の閉じた輪郭に沿うようにまたは前記1つ以上の閉じた輪郭の近傍に向けるステップを含む、実施形態2記載の方法。
実施形態5
前記1つ以上の材料層のうちの少なくとも1つは、メタライゼーション層を含む、実施形態1から4までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態6
前記1つ以上の材料層のうちの少なくとも1つは、反射防止コーティングを含む、実施形態1から5までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態7
前記1つ以上の材料層を被着させる前記ステップは、前記1つ以上の材料層を蒸着させるステップを含む、実施形態1から6までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態8
前記1つ以上の材料層を被着させる前記ステップは、前記1つ以上の材料層をスピンコーティングするステップを含む、実施形態1から7までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態9
前記1つ以上の材料層のうちの少なくとも1つは、ガラス、ガラスセラミック、ポリマー、またはそれらの組み合わせを含む、実施形態1から8までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態10
前記1つ以上の材料層を被着させる前記ステップは、前記1つ以上の材料層を前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つに接合するステップを含む、実施形態1から9までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態11
前記透明なマザーシートは、第1の透明なマザーシートを含み、前記1つ以上の材料層のうちの少なくとも1つは、第2の透明なマザーシートを含む、実施形態1から10までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態12
前記第2の透明なマザーシートは、1つ以上の閉じた輪郭を含み、前記1つ以上の閉じた輪郭は、それぞれ複数のきずを含む、実施形態11記載の方法。
実施形態13
前記第2の透明なマザーシートの前記1つ以上の閉じた輪郭は、前記第1の透明なマザーシートの前記1つ以上の閉じた輪郭とは位置合わせされていない、実施形態12記載の方法。
実施形態14
前記第2の透明なマザーシートは、1つ以上の透明な物品と、フレーム部分とを含み、前記フレーム部分は、前記1つ以上の透明な物品を取り囲んでいて、かつ前記1つ以上の透明な物品と摩擦係合している、実施形態11記載の方法。
実施形態15
前記第2の透明なマザーシートの前記1つ以上の透明な物品および前記フレーム部分は、前記第1の透明なマザーシートの前記1つ以上の透明な物品および前記フレーム部分とは位置合わせされていない、実施形態14記載の方法。
実施形態16
前記1つ以上の材料層のうちの少なくとも1つは、前記第1の透明なマザーシートと前記第2の透明なマザーシートとの間に配置されたメタライゼーション層を含む、実施形態11から15までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態17
前記第1の透明なマザーシートは、前記第2の透明なマザーシートに接合されている、実施形態11から16までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態18
前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つを前記フレーム部分との摩擦係合から解放する前記ステップは、前記1つ以上の透明な物品の各々と前記フレーム部分との間の接触を解除する、実施形態1から17までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態19
当該方法は、前記透明なマザーシートの前記フレーム部分に1つ以上の解放線を形成するステップをさらに含む、実施形態1から18までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態20
前記1つ以上の解放線は、前記透明なマザーシートの前記フレーム部分にある解放周線と、前記解放周線から前記フレーム部分の外面に向かって延在する1つ以上の解放支線と
を含む、実施形態19記載の方法。
実施形態21
前記1つ以上の解放線を形成する前記ステップは、前記1つ以上の透明な物品のうちの前記少なくとも1つを前記透明なマザーシートの前記フレーム部分との摩擦係合から解放する、実施形態19記載の方法。
実施形態22
前記1つ以上の透明な物品の各々を解放する前記ステップは、前記1つ以上の解放線のうちの少なくとも1つと前記透明なマザーシートの前記フレーム部分の前記外面との間に延在するノッチ部分に応力を印加するステップを含む、実施形態19記載の方法。
実施形態23
前記1つ以上の透明な物品は、第1の透明な物品および第2の透明な物品を含み、前記第1の透明な物品は、前記透明なマザーシートの前記フレーム部分と摩擦係合しており、前記第2の透明な物品は、前記第1の透明な物品と摩擦係合している、実施形態1から22までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態24
前記1つ以上の透明な物品は、前記透明な物品の内側アレイおよび前記透明な物品の外側アレイを含み、前記透明な物品の前記外側アレイは、前記透明なマザーシートの前記フレーム部分と摩擦係合しており、前記透明な物品の前記内側アレイは、前記透明な物品の前記外側アレイによって前記フレーム部分から離隔されており、前記透明な物品の前記内側アレイのうちの少なくとも1つは、前記透明な物品の前記外側アレイと摩擦係合している、実施形態1から23までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態25
前記パルスレーザビームは、前記透明なマザーシートを照射する前に非球面光学素子を通過する、実施形態1から24までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態26
前記非球面光学素子は、屈折アキシコン、反射アキシコン、負のアキシコン、空間光変調器、回折光学系、または立方体形状の光学素子を含む、実施形態25記載の方法。
実施形態27
前記透明なマザーシートへと向けられる前記パルスレーザビームの一部は、波長λと、スポットサイズw
oと、
よりも大きなレイリー長ZRを含む断面とを有し、FDは、10以上の値を含む無次元の発散係数である、実施形態1から26までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態28
前記無次元の発散係数FDは、10~2000の値を含む、実施形態27記載の方法。
実施形態29
前記無次元の発散係数FDは、50~1500の値を含む、実施形態27記載の方法。
実施形態30
前記無次元の発散係数FDは、100~1000の値を含む、実施形態27記載の方法。
実施形態31
隣り合うきず同士の間隔は、50μm以下である、実施形態1から30までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態32
隣り合うきず同士の間隔は、25μm以下である、実施形態1から31までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態33
隣り合うきず同士の間隔は、15μm以下である、実施形態1から32までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態34
前記透明なマザーシートは、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス材料を含む、実施形態1から33までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態35
前記パルスレーザビームは、波長λを有し、前記透明なマザーシートは、ビーム伝搬方向において20%/mm未満の、線形吸収および散乱に起因した合計損失を有する、実施形態1から34までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態36
前記ビーム源は、1パルスバースト当たり1個のサブパルスから1パルスバースト当たり30個のサブパルスのパルスバーストを生成するパルスビーム源を含み、パルスバーストエネルギは、1パルスバースト当たり100μJ~600μJである、実施形態1から35までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態37
当該方法は、前記透明なマザーシート上に1つ以上の基準を形成するステップをさらに含む、実施形態1から36までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態38
透明なマザーシートを処理するための方法であって、
当該方法は、前記透明なマザーシートに1つ以上の閉じた輪郭を形成するステップであって、それぞれの閉じた輪郭は、透明な物品の周囲を画定するための複数のきずを前記透明なマザーシートに含む、ステップを含み、前記1つ以上の閉じた輪郭の各々を形成する前記ステップは、
ビーム源から出力され、ビーム経路に沿って方向付けられたパルスレーザビームを前記透明なマザーシートへと向けるステップであって、これにより、前記透明なマザーシートへと向けられた前記パルスレーザビームの一部が、前記透明なマザーシートの内部で誘導吸収を発生させて、前記誘導吸収が、前記透明なマザーシートの内部にきずを生じさせるようにするステップと、
前記透明なマザーシートと前記パルスレーザビームとを、1つ以上の閉じた輪郭線に沿って互いに相対的に並進させ、それにより前記透明なマザーシートの内部に、前記1つ以上の閉じた輪郭線に沿ったきずをレーザ形成するステップと
を含み、
当該方法は、前記閉じた輪郭に沿って前記透明なマザーシートの一部を分離し、それにより1つ以上の透明な物品を形成するステップであって、ここで、前記1つ以上の透明な物品は、前記透明なマザーシートのフレーム部分と摩擦係合している、ステップを含み、
当該方法は、前記透明なマザーシートの一部を分離して前記1つ以上の透明な物品を形成した後、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つの透明な物品の表面を修正するステップを含み、
当該方法は、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つの透明な物品の表面に1つ以上の材料層を被着させた後、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つを前記透明なマザーシートの前記フレーム部分との摩擦係合から解放するステップを含む、
方法。
実施形態39
前記閉じた輪郭に沿って前記透明なマザーシートを分離し、それにより1つ以上の透明な物品を形成する前記ステップは、赤外線レーザビームを、前記透明なマザーシートへと、前記1つ以上の閉じた輪郭に沿うようにまたは前記1つ以上の閉じた輪郭の近傍に向けることにより、前記1つ以上の閉じた輪郭に応力を印加するステップを含む、実施形態38記載の方法。
実施形態40
前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つの透明な物品の表面を修正する前記ステップは、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つの透明な物品の表面を研磨するステップを含む、実施形態38または39記載の方法。
実施形態41
前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つの透明な物品の表面を修正する前記ステップは、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つの透明な物品の表面を清浄化するステップを含む、実施形態38から40までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態42
前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つの透明な物品の表面を修正する前記ステップは、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つの透明な物品の表面を粗面化するステップを含む、実施形態38から41までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態43
当該方法は、前記透明なマザーシートの前記フレーム部分に1つ以上の解放線を形成するステップをさらに含む、実施形態38から41までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態44
前記1つ以上の解放線は、前記透明なマザーシートの前記フレーム部分にある解放周線と、前記解放周線から前記フレーム部分の外面に向かって延在する1つ以上の解放支線と
を含む、実施形態43記載の方法。
実施形態45
前記1つ以上の解放線を形成する前記ステップは、前記1つ以上の透明な物品のうちの前記少なくとも1つを前記透明なマザーシートの前記フレーム部分との摩擦係合から解放する、実施形態43記載の方法。
実施形態46
前記1つ以上の透明な物品の各々を解放する前記ステップは、前記1つ以上の解放線のうちの少なくとも1つと前記透明なマザーシートの前記フレーム部分の前記外面との間に延在するノッチ部分に応力を印加するステップを含む、実施形態43記載の方法。
実施形態47
前記1つ以上の透明な物品は、第1の透明な物品および第2の透明な物品を含み、前記第1の透明な物品は、前記透明なマザーシートの前記フレーム部分と摩擦係合しており、前記第2の透明な物品は、前記第1の透明な物品と摩擦係合している、実施形態38から46までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態48
前記1つ以上の透明な物品は、前記透明な物品の内側アレイおよび前記透明な物品の外側アレイを含み、前記透明な物品の前記外側アレイは、前記透明なマザーシートの前記フレーム部分と摩擦係合しており、前記透明な物品の前記内側アレイは、前記透明な物品の前記外側アレイによって前記フレーム部分から離隔されており、前記透明な物品の前記内側アレイのうちの少なくとも1つは、前記透明な物品の前記外側アレイと摩擦係合している、実施形態38から47までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態49
前記パルスレーザビームは、前記透明なマザーシートを照射する前に非球面光学素子を通過する、実施形態38から48までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態50
前記透明なマザーシートへと向けられる前記パルスレーザビームの一部は、波長λと、スポットサイズw
oと、
よりも大きなレイリー長ZRを含む断面とを有し、FDは、10以上の値を含む無次元の発散係数である、実施形態38から49までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態51
隣り合うきず同士の間隔は、30μm以下である、実施形態38から50までのいずれか1つ記載の方法。
実施形態52
透明な被加工物アセンブリであって、
第1の主面、第2の主面、および1つ以上の側面を含む1つ以上の透明な物品と、
前記1つ以上の透明な物品を取り囲んでいて、かつ第1の主面、第2の主面、1つ以上の内面、および外面を含むフレーム部分であって、前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つが、前記1つ以上の透明な物品の各々を前記フレーム部分と摩擦係合したまま保持するために、前記フレーム部分の少なくとも1つの内面または前記1つ以上の内面と摩擦係合している、フレーム部分と、
前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つの透明な物品の前記第1の主面上に配置されていて、かつ前記1つ以上の透明な物品のうちの前記少なくとも1つの透明な物品に関連する少なくとも1つの分離された輪郭を覆うように途切れなく配置されている、1つ以上の材料層と
を含む、透明な被加工物アセンブリ。
実施形態53
前記1つ以上の透明な物品は、第1の透明な物品および第2の透明な物品を含み、前記第1の透明な物品は、前記フレーム部分と摩擦係合しており、前記第2の透明な物品は、前記第1の透明な物品と摩擦係合している、実施形態52記載の透明な被加工物アセンブリ。
実施形態54
前記1つ以上の材料層は、前記第1の透明な物品の第1の主面上および前記第2の透明な物品の第1の主面上に配置されていて、かつ前記第1の透明な物品と前記第2の透明な物品との間の界面を形成する分離された輪郭を覆うように途切れなく配置されている、実施形態53記載の透明な被加工物アセンブリ。
実施形態55
前記1つ以上の材料層は、前記第1の透明な物品の第1の主面上および前記フレーム部分の第1の主面上に配置されていて、かつ前記第1の透明な物品と前記フレーム部分との間の界面を形成する分離された輪郭を覆うように途切れなく配置されている、実施形態53記載の透明な被加工物アセンブリ。
実施形態56
前記1つ以上の透明な物品は、前記透明な物品の内側アレイおよび前記透明な物品の外側アレイを含み、前記透明な物品の前記外側アレイは、前記フレーム部分と摩擦係合しており、前記透明な物品の前記内側アレイは、前記透明な物品の前記外側アレイによって前記フレーム部分から離隔されており、前記透明な物品の前記内側アレイのうちの少なくとも1つは、前記透明な物品の前記外側アレイと摩擦係合している、実施形態52から55までのいずれか1つ記載の透明な被加工物アセンブリ。
実施形態57
前記フレーム部分は、1つ以上の解放線をさらに含む、実施形態52から56までのいずれか1つ記載の透明な被加工物アセンブリ。
実施形態58
前記1つ以上の解放線は、前記フレーム部分にある解放周線と、前記解放周線から前記フレーム部分の外面に向かって延在する1つ以上の解放支線とを含む、実施形態57記載の透明な被加工物アセンブリ。
実施形態59
前記1つ以上の解放線のうちの少なくとも1つと、前記フレーム部分の前記外面との間に延在するノッチ部分をさらに含む、実施形態57記載の透明な被加工物アセンブリ。
実施形態60
前記1つ以上の材料層のうちの少なくとも1つは、メタライゼーション層を含む、実施形態52から59までのいずれか1つ記載の透明な被加工物アセンブリ。
実施形態61
前記1つ以上の材料層のうちの少なくとも1つは、反射防止コーティングを含む、実施形態52から60までのいずれか1つ記載の透明な被加工物アセンブリ。
実施形態62
前記1つ以上の材料層のうちの少なくとも1つは、ガラス、ガラスセラミック、ポリマー、またはそれらの組み合わせを含む、実施形態52記載の透明な被加工物アセンブリ。
実施形態63
前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つと、前記1つ以上の透明な物品を取り囲む前記フレーム部分とが、第1の透明なマザーシートを共同で含み、前記1つ以上の材料層のうちの少なくとも1つは、第2の透明なマザーシートを含み、前記第2の透明なマザーシートは、1つ以上の透明な物品と、前記1つ以上の透明な物品を取り囲むフレーム部分とを含む、実施形態52記載の透明な被加工物アセンブリ。
実施形態64
前記第2の透明なマザーシートの前記1つ以上の透明な物品のうちの少なくとも1つは、前記第2の透明なマザーシートの前記1つ以上の透明な物品の各々を前記第2の透明なマザーシートの前記フレーム部分と摩擦係合したまま保持するために、前記第2の透明なマザーシートの前記フレーム部分と摩擦係合している、実施形態63記載の透明な被加工物アセンブリ。
実施形態65
前記1つ以上の材料層のうちの少なくとも1つは、前記第1の透明なマザーシートと前記第2の透明なマザーシートとの間に配置されたメタライゼーション層を含む、実施形態63記載の透明な被加工物アセンブリ。
実施形態66
前記第1の透明なマザーシートは、前記第2の透明なマザーシートに接合されている、実施形態63記載の透明な被加工物アセンブリ。