JP7292002B2 - 銅鉱石の評価方法及び銅の製錬方法 - Google Patents

銅鉱石の評価方法及び銅の製錬方法 Download PDF

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Description

本発明は、銅鉱石の評価方法及び銅の製錬方法に関する。より具体的には、本発明は、銅鉱石からの銅の浸出量を予測するための方法に関する。更には、本発明は、前記予測方法を応用した銅の製錬(smelting)方法に関する。
銅鉱石から銅を回収する方法の一つとして、L-SX-EW法がある。L-SX-EW法では、銅鉱石を硫酸等により浸出(L、Leaching)し、銅の浸出液から銅イオンを溶媒抽出(SX、Solvent Extraction)によって選択的に回収-濃縮し、この硫酸銅液から電解採取(EW、Electrowinning)により電気銅を生産する。
銅鉱石は、酸化銅鉱、二次硫化銅鉱、一次硫化銅鉱などに分類することができる。酸化銅鉱は、酸による作用のもとで浸出しやすい。二次硫化銅鉱については、フェリックリーチング等によって浸出させることができる。
リーチング操業の最適化のための基礎試験として一般的に用いられている方法に、カラムリーチング試験がある。この方法の長所は、実操業レベルでの銅の浸出結果と良くマッチした結果を得ることができる点にある。一方で、この方法の欠点は、結果が得られるまでに時間がかかりすぎる点にある(例えば、数カ月)。
上述した欠点に鑑みて、開発された方法が、シーケンシャル分析である。このシーケンシャル分析ついて、例えば、特開2013-189687号では、以下の手順を開示している。
(1)一定粒度に粉砕したサンプルに硫酸を加え一定時間撹拌。溶出した銅を定量。
(2)前記(1)の試料の固液分離で得られた固体部分にシアン化ナトリウム液を加え一定時間撹拌。溶出した銅を定量。
(3)前記(2)の試料の固液分離で得られた固体部分に硝酸及び過塩素酸を加え、ホットプレート上で乾固後、塩酸と蒸留水を加え、固体を溶解。溶出した銅を定量。
シーケンシャル分析では、上記(1)で定量された浸出量を、酸化銅に該当する浸出量とみなしている。また、上記(2)で定量された浸出量を、二次硫化銅鉱に該当する浸出量とみなしている。更には、上記(3)で定量された浸出量を、一次硫化銅鉱に該当する浸出量とみなしている。
シーケンシャル分析では、上述した(1)~(3)の各工程がそれぞれ1時間程度かかるだけであり、従って、全体の工程が数時間で完了する。このような点で、1mカラム試験よりも、シーケンシャル分析は優れている。
特開2013-189687号公報
従って、カラム試験のような時間のかかる試験を行う前に、より簡便に行えるシーケンシャル分析を実施することで、銅の浸出量を見積もることができることは、有用である(例えば、簡便な方法で、銅の浸出量が低いと予め予想することができれば、カラム試験を行わない旨を判断することができ、それによってカラム試験に費やす時間を節約することができる)。このような利点はあるものの、上述したシーケンシャル分析は、浸出量の見積もりの精度について問題がある。例えば、シーケンシャル分析結果から推定される二次硫化銅鉱の浸出量が、カラム試験での二次硫化銅鉱の浸出量と大きく乖離することがあった。
以上の点に鑑み、本発明は、シーケンシャル分析よりも精度の高い、1mカラム試験の成績を推定する方法を提供することを目的とする。
本発明者が鋭意研究したところ、以下の知見を見出した。従来は、シーケンシャル分析では、二次硫化銅鉱に対応する浸出量を見積もるために、シアン化ナトリウムを用いて銅を浸出させていた。
そこで、発明者は以下のような変更を行った。すなわち、二次硫化銅鉱に対応する浸出量を見積もるために、シアン化ナトリウムに換えて、鉄(III)イオンを含む溶液を用いて銅を浸出させた。この改変により、従来のシーケンシャル分析よりも、二次硫化銅鉱に対応する浸出量をより精度よく見積もれることを見出した。
以上の知見に基づいて、本発明は、一側面において、以下の発明を包含する。
(発明1)
銅鉱石の評価方法であって、以下を含む方法:
銅鉱石から硫酸溶液により銅を浸出させて、浸出銅量Aを測定する第1工程;及び
銅鉱石から鉄(III)イオンを含む溶液により銅を浸出させて、浸出銅量Bを測定する第2工程;
ここで、上記第1~2工程は任意の順序で行ってもよい。
(発明2)
発明1の方法であって、銅鉱石中に含まれる全銅量Cを測定する第3工程を更に含む、該方法。
(発明3)
発明2の方法であって、前記第1~3工程を少なくとも部分的に並行して実施する、該方法。
(発明4)
発明3の方法であって、下記の関係に従って浸出量を見積もる工程を更に含む、該方法:
浸出銅量A及び全銅量Cの値に基づいて、浸出率aを見積もること;並びに
浸出銅量Bと浸出銅量Aとの差分、及び全銅量Cの値に基づいて、浸出率bを見積もること。
(発明5)
発明2の方法であって、
前記第1工程で得られた残渣に対して、前記第2工程を実施する、
該方法。
(発明6)
発明5の方法であって、下記の関係に従って浸出量を予測する工程を更に含む、該方法:
浸出銅量A及び全銅量Cの値に基づいて、浸出率aを見積もること;並びに
浸出銅量B及び全銅量Cの値に基づいて、浸出率bを見積もること。
(発明7)
電気銅を製造するための方法であって、以下を含む方法:
発明1~6いずれか1項の方法に従った銅鉱石を評価する工程:
銅鉱石から銅を浸出させる工程:
銅の浸出液から電気銅を精製する工程。
本発明の方法は、一側面において、以下の工程を含む:
銅鉱石から鉄(III)イオンを含む溶液により銅を浸出させて、浸出銅量Bを測定する第2工程。
これにより、カラム試験での浸出量に、より近い見積もり値を得ることができる。そして、採用すべき適切な浸出方法を判定することができる。
実施例における二次硫化銅鉱の浸出量の結果を表す。 実施例における二次硫化銅鉱の浸出量の結果を表す。
以下、本発明を実施するための具体的な実施形態について説明する。以下の説明は、本発明の理解を促進するためのものである。即ち、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
1.銅鉱石の種類
本願明細書で述べる銅鉱石は、粗鉱であってもよい。当該粗鉱は、様々な鉱物(例:硫砒銅鉱、黄銅鉱、輝銅鉱など)が混合された状態であってもよい。あるいは、本願明細書で述べる銅鉱石は、1種類の鉱物(単体鉱物)からなるものであってもよい。
また、本願明細書で述べる銅鉱物は、様々な観点から分類できる。限定されるものではないが、例えば、浸出に関する特徴の観点から、酸化銅、一次硫化銅鉱、二次硫化銅鉱などが挙げられる。
酸化銅鉱は、例として、以下の物を含むことができる:
Atacamite;
Azurite;
Malachite;
Tenorite;
Chrysocolla;
Cuprite;
Native Copper
酸化銅鉱は、硫酸に溶けやすい性質を有する。
二次硫化銅鉱は、例として、以下の物を含むことができる:Chalcocite、Covellite。二次硫化銅鉱は、シアン化ナトリウム溶液に溶けやすい性質を有する。また、二次硫化銅鉱は、鉄(III)イオンを含む溶液に溶けやすい性質を有する。
一次硫化銅鉱は、例として、以下の物を含むことができる:Bornite、Chalcopyrite。一次硫化銅鉱は、上述した硫酸、シアン化ナトリウム溶液、鉄(III)イオンを含む溶液には溶けにくい。その代り、一次硫化銅鉱は、硝酸及び過塩素酸を含む溶液に溶けやすい性質を有する。また、一次硫化銅鉱は、鉄(III)イオンとヨウ化物イオンとを含む溶液に溶けやすい性質を有する。
2.浸出量の予測方法
本発明は、一実施形態において、銅鉱石(例、粗鉱及び/又は単体鉱物)からの銅の浸出量を予測するための方法を包含する。前記方法は、少なくとも以下の工程を含むことができる:
銅鉱石のサンプルから硫酸溶液により銅を浸出させて、浸出銅量Aを測定する第1工程;
銅鉱石のサンプルから鉄(III)イオンを含む溶液により銅を浸出させて、浸出銅量Bを測定する第2工程。
なお、第2工程で用いる鉄(III)イオンを含む溶液は、ヨウ化物イオンを実質的に含まなくてもよい。「ヨウ化物イオンを実質的に含まない」とは、ヨウ化物イオンの濃度0g/Lを意味してもよく、あるいは実質的に浸出反応に寄与しないレベルまで含むことを許容することを意味してもよい(例:0~0.1g/L、より好ましくは、0~0.01g/L、更に好ましくは、0~0.001g/L)。
(1)酸化銅に該当する浸出量の見積もり
前記第1工程は、主に酸化銅に該当する浸出量を見積もることを目的とする。上述したように、酸化銅は硫酸に溶解しやすい性質を有する。従って、酸化銅に関する浸出量を見積もることが可能となる。
浸出条件は、特に限定されないが、以下の通りであってもよい:
温度:20~40℃(好ましくは、20~30℃)
成分:硫酸(1~10%v/v、好ましくは、4~6%v/v)
時間:0.5~2h(好ましくは、0.8h~1.5h)
振盪速度:100rpm~200rpm
鉱石量:10~70g/L(粗鉱の場合)、0.5~1.0g/L(単体鉱物の場合)
鉱物の粒度:50~150μm
なお、溶液成分については、他の物質を添加してもよい。
(2)二次硫化銅鉱に該当する浸出量の見積もり
前記第2工程は、主に二次硫化銅鉱に該当する浸出量を見積もることを目的とする。上述したように、二次硫化銅鉱は三価のFeイオンを含む溶液に溶解しやすい性質を有する。
例えば、二次硫化銅鉱の1種であるChalcociteは、以下の反応式に従って反応が進行すると考えられる。
Cu2S+4Fe3+→2Cu2++4Fe2++S
また、三価のFeイオンを含む溶液は、二次硫化銅鉱のみならず、上述した酸化銅も溶解させる性質がある。従って、三価のFeイオンを含む溶液による銅の浸出量は、酸化銅と二次硫化銅鉱の両方を合わせた分量として見積もることができる。そこで、第2工程で見積もった浸出量から、第1工程で見積もった浸出量を引くことで、二次硫化銅鉱に該当する浸出量を見積もることができる。あるいは、上記第1工程で酸化銅を浸出させた後、その残渣を第2工程にかけてもよい。この場合には、第2工程で見積もった浸出量を、二次硫化銅鉱に該当する浸出量として見積もることができる。
また、従来の手法と比べると(例えば、シーケンシャル分析と比べると)、本発明の分析方法では、カラム試験の浸出結果と良くマッチした見積もり量を得ることができる。以下の説明は、本発明を限定することを意図するものではないが、Jarositeや炭酸塩を含むサンプルの場合、1mカラム試験での浸出量が従来のシーケンシャル分析と比べて少なく、1mカラム試験と従来のシーケンシャル分析の結果が乖離することがある。
浸出条件は、特に限定されないが、以下の通りであってもよい:
温度:20~65℃(好ましくは、45~55℃)
pH:1.6~2.0(好ましくは、1.7~1.9、調整は行わなくてもよい)
成分:Fe3+(1~10g/L、好ましくは、4~6g/L)
時間:0.5h~200h(好ましくは、0.5~2h、又は、20~30h、又は150~180h)
振盪速度:100rpm~200rpm
鉱石量:10~70g/L(粗鉱の場合)、0.5~1.0g/L(単体鉱物の場合)
鉱物の粒度:50~150μm
なお、溶液成分については、他の物質を添加してもよい。
なお、三価のFeイオンの供給源については、硫酸鉄n水和物 Fe2(SO43・nH2O等の化合物を用いることができる。あるいは、二価のFeイオン(例:第一硫化鉄)の溶液を供給し、その後、鉄酸化細菌等により三価のFeイオンに変換してもよい。
(3)銅鉱石に含まれる銅の総量
一実施形態において、本発明の方法では、銅鉱石に含まれる銅の総量を測定する第3工程を含むことができる。銅鉱石に含まれる銅の総量については、浸出後液を濾過後、アルカリ溶融・湿式分析(ICP-OES)の手法により測定することができる。また、銅の総量は、粗鉱に含まれる銅の量を直接測定して得ることができる。或いは、銅の総量は、浸出後液と浸出残渣それぞれに含まれる銅の量を合計して得ることができる。そして、銅の総量を算出することで、浸出率を算出することが可能になる。従って、サンプルから得られた見積もり量に基づき、カラム試験での浸出量を見積もることができる。
上述した第1~2工程は任意の順序で実行することができる。あるいは、前記第1~2工程を少なくとも部分的に並行して実施することができる。更には、銅鉱石に含まれる銅の総量を測定する工程についても、任意の順序で実行可能であり、第1~3工程を少なくとも部分的に並行して実施することができる。
並行して実施する場合には、サンプルを2分割して、それぞれを第1~2工程にかけてもよい。あるいは、サンプルを3分割して、それぞれを第1~3工程にかけてもよい。そして、並行して実施する事で時間の短縮を図ることができる。
シーケンシャルに実施する場合には、サンプルをまず第1工程にかけて、第1工程後、固液分離により残渣をとりだす。次に、当該残渣を、第2工程にかけて、その後、固液分離により残渣をとりだす。シーケンシャルな方法だと、サンプルの量が少ない場合にも、精度を落とすことなく評価することができる(例えば、上述した並行して実施する方法だと、サンプルを分割しなければならないため、1つの分析にかけるサンプル量が少なくなってしまう)。また、シーケンシャルな方法だと、サンプルのバラツキの問題を軽減することができる(例えば、上述した並行して実施する方法だと、サンプルを分割した時点で、偏りが生ずる可能性を排除できない)。
3.カラム試験での浸出方法
銅鉱石のサンプルを用いて上記分析を行った後は、カラム試験での銅の浸出を行うことができる。
(1)酸化銅鉱及び二次硫化銅鉱
例えば、上記分析結果を通して、銅鉱石において、酸化銅鉱の割合が大きいと判断される場合には、酸化銅鉱に適した浸出方法を採用することができる。また、上記分析結果で、銅鉱石において、二次硫化銅鉱の割合が大きいと判断される場合には、二次硫化銅鉱に適した浸出方法を採用することができる。酸化銅鉱や二次硫化銅鉱に適した浸出方法としては、限定されるものではないが、ダンプリーチングやヒープリーチング等が挙げられる。
上述した浸出方法を採用するにあたって、上述した第1~第2工程(より好ましくは第1~第3工程)で得られた見積もり量を参考にすることができる。
例えば、第1~第2工程(より好ましくは、第1~第3工程)を少なくとも部分的に並行して実施する場合には、第2工程で得られた浸出量を元に見積もられる浸出率を参考にすることができる。一例において、当該浸出率が、70%以上であるときには、酸化銅及び二次硫化銅鉱に適した浸出方法を採用するように判断してもよい。
別の例として、第1~第2工程をシーケンシャルに実施する場合には、第1工程及び第2工程で得られた浸出量を元に見積もられる浸出率を参考にすることができる。一例において、当該浸出率が、70%以上であるときには、酸化銅及び二次硫化銅鉱に適した浸出方法を採用するように判断してもよい。
4.銅鉱石の選択方法、及び浸出手段の選択方法
前記分析方法は、様々な形での応用が可能である。例えば、複数の候補となる銅鉱石が存在する場合に、上記分析方法の結果に基づいて、特定の浸出方法(例:ヨウ素法、ダンプリーチング、ヒープリーチングなど)に適した銅鉱石を選択することができる。別の例では、採取された銅鉱石に最適な浸出方法を選択する場合に、上記分析方法の結果に基づいて、浸出方法を選択することができる。別の例では、採取された銅鉱石が、特定の浸出方法(例:ヨウ素法、ダンプリーチング、ヒープリーチングなど)に適しているかどうかを、上記分析方法の結果に基づいて、判断することができる。
5.電気銅の製造
本発明は、一実施形態において、電気銅を製造するための方法を包含することができる。前記方法は、上述した予測方法(「2.浸出量の予測方法」の項で記載した方法)を実施することを含むことができる。また、電気銅を製造するための方法は、浸出量の予測を行った後に、実際に銅鉱石から銅を浸出させる工程を含むことができる。銅を浸出させる工程については、上述した浸出方法(「3.カラム試験での浸出方法」の項で記載した方法)を実施することを含むことができる。前記工程を経て、銅の浸出液を得ることができる。得られた浸出液から、銅イオンを溶媒抽出(SX、Solvent Extraction)によって選択的に回収-濃縮することができる。そして、銅液から電解採取(EW、Electrowinning)により電気銅を生産することができる。
以下の実施例は、本発明の更なる理解を促進するためのものである。即ち、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
6.分析方法
銅鉱石中の酸化銅鉱、一次硫化銅鉱、二次硫化銅鉱の割合を測定するため、シーケンシャル分析(比較例として)、1mカラム試験(参考例として)、及び、鉄(III)イオンを用いた分析法(実施例として)を行った。
6-1.シーケンシャル分析
シーケンシャル分析は、以下の手順で実施した。
(1)酸化銅鉱:一定粒度に粉砕したサンプルに硫酸を加え一定時間撹拌。溶出した銅を定量(CuAS)。
(2)二次硫化銅鉱:酸化銅鉱分析の固液分離で得られた固体部分にシアン化ナトリウム液を加え一定時間撹拌。溶出した銅を定量(CuCN)。
(3)一次硫化銅鉱:二次硫化銅鉱の固液分離で得られた固体部分に硝酸及び過塩素酸を加え、ホットプレート上で乾固後、塩酸と蒸留水を加え、固体を溶解。溶出した銅を定量(CuIns)。
6-2.1mカラム試験
1mカラム試験は、実操業スケールで得られる浸出結果と近い結果を得ることができる試験方法である。ただし、結果を得るまでに数カ月も時間がかかるという欠点がある。
サンプルが全体を代表するものになるようにするため、まず、サンプルを縮分した(sample reduction)。その後、4.75mmの篩を用いて分級した。篩を通過したサンプル及び篩上に残ったサンプルを混合し、合計12kgのサンプルを高さ1m且つ撒布面積7.85×10-32のカラムに充填した。次に浸出液を調製した。より具体的には、pH1.6、鉄(III)濃度5g/L(Fe源は硫酸鉄n水和物)の浸出液を調製した。浸出液をカラム上部から1L/日の速度で供給した。これを、最大で120日間行った。そして、カラムを通過した溶液に含まれるCuの量を測定した。
6-3.鉄(III)イオンを用いた分析法
鉄(III)イオンを用いた分析法は、以下の手順で実施した。
銅鉱石サンプルを少なくとも3つに分けた。1つめの銅鉱石サンプルに含まれる銅の総量(CuT)の測定を、分析機関に委託した。2つめの銅鉱石サンプルについては、以下の条件で、浸出させ、Cuの浸出量を測定した(CuAS)。
温度:25℃
成分:硫酸(5%v/v)
時間:1h
振盪速度:180rpm
鉱石量:40g/L
鉱物の粒度:-100μm(即ち、メッシュサイズ100μmの篩を通過するサイズ、以下同様)
3つめの銅鉱石サンプルについては、以下の条件で、浸出させた。そして、Cuの浸出量を測定した(CuFe)。
温度:50℃
成分:Fe3+(5g/L)
時間:24h
振盪速度:120rpm
鉱石量:40g/L(粗鉱)、0.8g/L(単体鉱物)
鉱物の粒度:-100μm
浸出液中の銅濃度及び鉄濃度はICP発光分光分析装置(ICP-AES)で測定した。
上記方法で、それぞれのサンプルにおける銅の浸出量を測定した。その後、測定値をサンプル中の銅の総量(CuT)で割ることで、CuT採収率を算出した。
7.二次硫化銅鉱に相当する浸出量と分析方法による違い
異なる鉱山からサンプルとして4種類(サンプルA~D)の粗鉱を採用した。
上述した3種類の分析方法を実行し、二次硫化銅鉱に相当する浸出量を測定した。結果を図1に示す。なお、図1のグラフにおいて、シーケンシャル分析については、上記のCuASの80%が浸出した時点を、浸出液量が0.5m3/tに相当する時点としてプロットしている。また、鉄(III)イオンを用いた分析法については、上記のCuFeの80%が浸出した時点を、浸出液量が0.5m3/tに相当する時点としてプロットしている。
いずれの粗鉱(サンプルA、B、D)においても、1mカラム試験による分析および鉄(III)イオンを用いた分析法の結果は、シーケンシャル分析の結果と類似した。一方、1mカラム試験の結果とシーケンシャル分析の結果の乖離があったJarosite・炭酸塩を含む試料(サンプルC)では、鉄(III)イオンを用いた分析法の結果はシーケンシャル分析の結果よりも、1mカラム試験の結果と近い結果になった。
本明細書において、「又は」や「若しくは」という記載は、選択肢のいずれか1つのみを満たす場合や、全ての選択肢を満たす場合を含む。例えば、「A又はB」「A若しくはB」という記載の場合、Aを満たしBを満たさない場合と、Bを満たしAを満たさない場合と、Aを満たし且つBを満たす場合のいずれも包含することを意図する。
以上、本発明の具体的な実施形態について説明してきた。上記実施形態は、本発明の具体例に過ぎず、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上述の実施形態の1つに開示された技術的特徴は、他の実施形態に提供することができる。また、特定の方法については、一部の工程を他の工程の順序と入れ替えることも可能であり、特定の2つの工程の間に更なる工程を追加してもよい。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定される。

Claims (7)

  1. 銅鉱石からの酸化銅、及び/又は二次硫化銅鉱に該当する銅の浸出量の見積もり方法であって、以下を含む方法:
    銅鉱石から硫酸溶液により銅を浸出させて、酸化銅としての浸出銅量Aを測定する第1工程であって、鉱物の粒度150μm以下の浸出条件で実施する工程;及び
    銅鉱石又は前記第1工程の浸出残渣から鉄(III)イオンを含む溶液により銅を浸出させて、浸出銅量Bを測定する第2工程であって、鉱物の粒度150μm以下の浸出条件で実施する工程であり、銅鉱石から浸出させる場合には、前記浸出銅量Bは酸化銅及び二次硫化銅鉱の合計としての浸出量であり、前記第1工程の浸出残渣から浸出させる場合には、前記浸出銅量Bは二次硫化銅鉱としての浸出量である、工程;
    ここで、上記第2工程が銅鉱石から浸出させる場合、上記第1~2工程は任意の順序で行ってもよい。
  2. 請求項1の方法であって、銅鉱石中に含まれる全銅量Cを測定する第3工程を更に含む、該方法。
  3. 請求項2の方法であって、前記第1~3工程を少なくとも部分的に並行して実施する、該方法。
  4. 請求項3の方法であって、下記の関係に従って浸出を見積もる工程を更に含む、該方法:
    浸出銅量A及び全銅量Cの値に基づいて、浸出率aを見積もること;並びに
    銅鉱石から浸出させた浸出銅量Bと浸出銅量Aとの差分、及び全銅量Cの値に基づいて、浸出率bを見積もること。
  5. 請求項2の方法であって、
    前記第1工程で得られた残渣に対して、前記第2工程を実施する、
    該方法。
  6. 請求項5の方法であって、下記の関係に従って浸出見積もる工程を更に含む、該方法:
    浸出銅量A及び全銅量Cの値に基づいて、浸出率aを見積もること;並びに
    浸出銅量B及び全銅量Cの値に基づいて、浸出率bを見積もること。
  7. 電気銅を製造するための方法であって、以下を含む方法:
    請求項1~6いずれか1項の方法に従った銅鉱石を評価する工程:
    銅鉱石から銅を浸出させる工程:
    銅の浸出液から電気銅を精製する工程。
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