JP7268217B2 - 冷菓のリッチ感の強度の推定式の作成方法 - Google Patents

冷菓のリッチ感の強度の推定式の作成方法 Download PDF

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Description

特許法第30条第2項適用 日本食品化学工学会第68回大会(オンライン、URL:https://confit.atlas.jp/guide/event/jsfst68/top?lang=ja)にて令和3年8月28日に公開
特許法第30条第2項適用 ウエブサイトアドレス(https://drive.google.com/drive/folders/1EQWuT0dq08deu7t2_bRsQZzRcH_RICXx)にて令和3年8月26日に公開
特許法第30条第2項適用 ウエブサイトアドレス(https://saneigenffi.co.jp/news/2021/336)にて令和3年9月10日に公開
本発明は、官能評価法の一つである経時的優先感覚(Temporal Dominance of Sensations(TDS))法を用いた冷菓のリッチ感の強度の推定式の作成方法、冷菓のリッチ感の強度の推定方法、及び当該推定方法を用いた成分のリッチ感の付与効果評価方法に関する。
近年、消費者のグルメ志向の高まりにより、おいしさを追求した、高級感を彷彿とさせる高価格帯(2020年時点で100mLあたりの価格150円以上)の「スーパープレミアムアイスクリーム」(SPI)が一定の消費者層に好まれ、市場における地位を確立している。
SPIは、価格の他に、下記の(1)~(4)を満たすことを特徴とする。
(1)乳固形分15.0質量%以上かつ乳脂肪分12.0質量%以上であること
(2)植物性脂肪分を実質的に含有しないこと
(3)卵黄脂肪分を0.1質量%以上含有すること
(4)安定剤や乳化剤が使用されていないこと
他方、食品の官能評価法として、喫食中に連続的に変化する風味や食感のうちのどの感覚が優勢かを分析する方法として、Temporal Dominance of Sensations(TDS)法が知られている(非特許文献1、2)。TDS法では、官能評価者(パネル)が予め提示された複数の風味及び/又は食感の中から、喫食中に最も優勢な風味及び/又は食感を経時的に選択する。そして、集計されたデータを解析することによって、喫食中の各時点において、どの風味又は食感の感覚が優勢に感じられるかを解析することができる。非特許文献3には、アイスクリームの冷たい食感、バニラ、ミルク、ココア及びナッツの風味、甘い風味、甘味、乳製品を食べたときに口の中に残る食感並びに無味無臭の感覚を、TDS法を用いて官能評価したことが開示されている。
日本調理科学会誌, 2016, Vol.49, No.3, p.243-247 Food Quality and Preference, 2009, Vol.20, Issue 6, p.450-455 ミルクサイエンス,日本酪農科学会,2018年,第67巻,第3号,p.217-225
熟練した官能評価パネルによってSPIとそれ以外のアイスクリーム類を比較検討した結果、SPIには共通する食感、具体的には、アイスクリーム類の組織が緻密で密度が高く、口どけが良い食感があること、及び、そのような食感によって、乳等の素材が豊富に含まれたような印象を喫食者に想起させることが新たに判明した。本明細書では、前記のような食感を「リッチ感」と呼ぶ。
しかし、従来リッチ感は、様々な物性が複合した食感であるがゆえに、その評価には、事前に多数の冷菓を喫食比較して評価基準のすり合わせを行う必要があり、準備に手間と時間を要することが問題であった。
そこで本発明は、評価基準のすり合わせなしでも実施可能な、一般的な物性感覚を記述する用語に基づく官能評価法によって、冷菓の「リッチ感の強度」を推定するための方法を提供することを課題とする。
なお、本明細書における冷菓の「リッチ感の強度」については、冷菓を喫食した際に「アイスクリーム類の組織がより緻密で密度が高く、口どけが良い」と感じるとき、「リッチ感の強度が高い」と表現される。より詳細には、冷菓を喫食した際に歯ざわりがぎっしりしていると感じる程、舌ざわりが緻密できめ細かいと感じる程、また口どけが良いと感じる程、「リッチ感の強度が高い」と表現される傾向がある。
本発明者らは、
冷菓を喫食して2種以上の物性感覚用語を選択肢とした経時的優先感覚(TDS)法で評価することにより得られる、各物性感覚用語の選択率の時間変化を表す曲線(TDSカーブ)及び各物性感覚用語の用語選択パターンにおいて、
前記TDSカーブから抽出されるパラメータ群及び前記用語選択パターンから抽出されるパラメータ群から選択される2種以上のパラメータを説明変数とし;
冷菓を喫食して官能評価することにより得られる、リッチ感の強度を目的変数とし;
1)2種以上の冷菓について、各冷菓の前記TDSカーブ及び前記用語選択パターンから前記説明変数の値を取得し、各冷菓の官能評価で得られたリッチ感の強度を前記目的変数の値として取得する工程;並びに
2)前記工程1で得られた説明変数の値及び目的変数の値を用いて重回帰分析を行う工程;
を含む、冷菓のリッチ感の強度の推定式の作成方法によって、物性感覚用語に基づいて冷菓のリッチ感の強度を推定可能な推定式を作成できること、及び、
上記推定式を用いることで、冷菓に追加した成分のリッチ感の付与効果を評価することができること
を見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下の態様を含む。
[1]
冷菓を喫食して2種以上の物性感覚用語を選択肢とした経時的優先感覚(TDS)法で評価することにより得られる、各物性感覚用語の選択率の時間変化を表す曲線(TDSカーブ)及び各物性感覚用語の用語選択パターンにおいて、
前記TDSカーブから抽出されるパラメータ群及び前記用語選択パターンから抽出されるパラメータ群から選択される2種以上のパラメータを説明変数とし;
冷菓を喫食して官能評価することにより得られる、リッチ感の強度を目的変数とし;
1)2種以上の冷菓について、各冷菓の前記TDSカーブ及び前記用語選択パターンから前記説明変数の値を取得し、各冷菓の官能評価で得られたリッチ感の強度を前記目的変数の値として取得する工程;並びに
2)前記工程1で得られた説明変数の値及び目的変数の値を用いて重回帰分析を行う工程;
を含む、冷菓のリッチ感の強度の推定式の作成方法。
[2]
前記TDSカーブから抽出されるパラメータ群が、
(a)特定の前記物性感覚用語のTDSカーブの曲線下面積(AUC)に関する、面積パラメータ群、
(b)特定の前記物性感覚用語の特定の時点の選択率の大きさに関する、高さパラメータ群、
(c)特定の前記物性感覚用語のTDSカーブから定義される特定の時間の長さに関する、時間パラメータ群、及び
(d)特定の前記物性感覚用語の特定の時点又は時点間の選択率の時間変化率に関するパラメータ群
から選ばれる少なくとも1つのパラメータ群を含む、[1]に記載の作成方法。
[3]
前記(a)面積パラメータ群が、前記2種以上の物性感覚用語から選ばれるいずれか1種の用語のTDSカーブの曲線下面積(AUC)、又は、前記2種以上の物性感覚用語から選ばれるいずれか2種の用語のTDSカーブの曲線下面積の差の絶対値若しくは曲線下面積の差を少なくとも含む;又は、
前記(b)高さパラメータ群が、前記2種以上の物性感覚用語から選ばれるいずれか1種の用語の最大選択率、又は、前記2種以上の物性感覚用語から選ばれるいずれか2種の用語の最大選択率の差の絶対値若しくは最大選択率の差を少なくとも含む;又は、
前記(c)時間パラメータ群が、前記2種以上の物性感覚用語から選ばれるいずれか1種の用語の選択率がランダム選択率閾値(チャンスレベル)P(=1/選択肢数)以上である時間の長さ(継続時間)、又は、前記2種以上の物性感覚用語から選ばれるいずれか2種の用語の継続時間の差の絶対値若しくは継続時間の差を少なくとも含む、[2]に記載の作成方法。
[4]
前記用語選択パターンから抽出されるパラメータ群が、
(A)各評価者が特定の前記物性感覚用語を選択した時間の合計(選択時間)の平均値又は合計値に関する、選択時間パラメータ群、及び
(B)各評価者が特定の前記物性感覚用語を連続して選択した時間の最大値(最大選択持続時間)の平均値又は合計値に関する、最大選択持続時間パラメータ群
から選ばれる少なくとも1つのパラメータ群を含む、[1]~[3]のいずれか1に記載の作成方法。
[5]
前記(A)選択時間パラメータ群が、前記2種以上の物性感覚用語から選ばれるいずれか1種の用語の選択時間の平均値、又は、前記2種以上の前記物性感覚用語から選ばれるいずれか2種の用語の選択時間の平均値の差の絶対値若しくは選択時間の平均値の差を少なくとも含む、[4]に記載の作成方法。
[6]
前記物性感覚用語が、対照的な物性感覚を表す用語の対を1種以上含む、[1]~[5]のいずれか1に記載の作成方法。
[7]
前記対照的な物性感覚が、かたさ、弾力と粘り、なめらかさ及び後口からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含む、[6]に記載の作成方法。
[8]
前記対照的な物性感覚を表す用語の対が、「かたい」及び「ふんわり」、「ねっちり」及び「さくい」、「シャリシャリ」及び「なめらか」、並びに、「すっきり」及び「もったり」からなる対の群より選ばれる1種以上の対を含む、[6]又は[7]に記載の作成方法。
[9]
冷菓について[1]~[8]のいずれか1に記載の説明変数の値を取得すること、及び
前記説明変数の値を前記[1]~[8]のいずれか1に記載の作成方法で得られる推定式に代入してリッチ感の強度の推定値を得ることを含む、冷菓のリッチ感の強度の推定方法。
[10]
第1の冷菓と、第1の冷菓に追加成分を加えて得られる第2の冷菓のそれぞれについて、[1]~[8]のいずれか1に記載の説明変数の値を取得すること、
前記説明変数の値を前記[1]~[8]のいずれか1に記載の作成方法で得られる推定式に代入して、第1の冷菓及び第2の冷菓のリッチ感の強度の推定値を得ること、及び
前記第2の冷菓の推定値から、前記第1の冷菓の推定値を差し引いた値を、前記追加成分によって付与されたリッチ感の強度とすることを含む、前記追加成分のリッチ感の付与効果評価方法。
本発明によれば、物性感覚用語に基づいて冷菓のリッチ感の強度を推定可能な推定式を作成することができる。また、当該推定式を用いれば、冷菓のリッチ感の強度を推定し、また当該冷菓に追加する成分のリッチ感の付与効果を評価することができる。
用語選択パターンの例と、そこから抽出されるパラメータの値の関係を示す図である。 実施例1で得られた、冷菓の1つに対するTDSカーブである。 実施例1で官能評価した冷菓14種類のリッチ感の強度の実測値と、実施例1で得られた回帰式(I)に基づくリッチ感の強度の推定値の相関を示すプロットである。 実施例1で官能評価した冷菓14種類のリッチ感の強度の実測値と、実施例3で得られた回帰式(II)に基づくリッチ感の強度の推定値の相関を示すプロットである。 実施例1で官能評価した冷菓14種類のリッチ感の強度の実測値と、実施例3で得られた回帰式(III)に基づくリッチ感の強度の推定値の相関を示すプロットである。 実施例1で官能評価した冷菓14種類のリッチ感の強度の実測値と、実施例5で得られた回帰式(IV)に基づくリッチ感の強度の推定値の相関を示すプロットである。 実施例1で官能評価した冷菓14種類のリッチ感の強度の実測値と、実施例6で得られた回帰式(V)に基づくリッチ感の強度の推定値の相関を示すプロットである。 実施例1で官能評価した冷菓14種類のリッチ感の強度の実測値と、実施例7で得られた回帰式(VI)に基づくリッチ感の強度の推定値の相関を示すプロットである。
[冷菓のリッチ感の強度の推定式の作成方法]
本発明の冷菓のリッチ感の強度の推定式の作成方法は、
2種以上の物性感覚用語を選択肢とした経時的優先感覚(TDS)法で得られる、2種以上の冷菓を喫食した際の該冷菓の各物性感覚用語の選択率の時間変化を表す曲線(TDSカーブ)及び該冷菓の各物性感覚用語の用語選択パターン
から抽出される2種以上のパラメータを説明変数とし、
前記2種以上の冷菓を官能評価して得られるリッチ感の強度を目的変数として、重回帰分析を行うことを含む、ことを特徴とする。
即ち、上記の推定式の作成方法では、まず、冷菓を喫食して2種以上の物性感覚用語を選択肢とした経時的優先感覚(TDS)法で評価することにより得られる、各物性感覚用語の選択率の時間変化を表す曲線(TDSカーブ)及び各物性感覚用語の用語選択パターンにおいて、
前記TDSカーブから抽出されるパラメータ群及び前記用語選択パターンから抽出されるパラメータ群から選択される2種以上のパラメータを説明変数として定義し;
冷菓を喫食して官能評価することにより得られる、リッチ感の強度を目的変数として定義する。
そして次の2工程によって、これらの説明変数と目的変数を用いた重回帰分析を行って、リッチ感の強度の推定式を作成する。
1)2種以上の冷菓について、各冷菓の前記TDSカーブ及び前記用語選択パターンから前記説明変数の値を取得し、各冷菓の官能評価で得られたリッチ感の強度を前記目的変数の値として取得する工程;並びに
2)前記工程1で得られた説明変数の値及び目的変数の値を用いて重回帰分析を行う工程。
[1.説明変数]
上記のように、本発明の推定式の作成方法では、TDSカーブから抽出されるパラメータ群及び用語選択パターンから抽出されるパラメータ群から、2種以上のパラメータを選択して説明変数とする。説明変数に関連する用語選択パターンとTDSカーブの作成、パラメータの選択について以下詳述する。
(1-1.各評価者の用語選択パターン及びTDSカーブの作成)
本発明における冷菓のTDSカーブと用語選択パターンは、以下に示すように、冷菓を2種以上の物性感覚用語を選択肢とした経時的優先感覚(TDS)法で評価することによって作成することができる。
(TDS法の概要)
TDS法は、官能評価の一種であり、上記の非特許文献1に記載されているように、複数の「質」(味、香り、食感等)に関して、強度は計測せずに、特定の時点から別の特定の時点まで優先的に感じている感覚の選択率と時間の関係を、評価者の感覚に基づく判断を利用して評価する方法である。
TDS法は、例えばコンピュータによって画面上に上記「質」を記述する2種以上の用語のリストを提示しておき、評価者が開始点から終点までに、提示された用語の中で、「各時点で最も注意をひかれた『質』」を記述する用語を適宜選択していく方法により実施することができる。選択のタイミングは特に限定されず、例えば、最も注意をひかれた「質」が変わったと感じた時点で当該「質」を記述する用語を選ぶ。このようなTDSデータの取得には、例えばBIOSYSTEMES社製のFIZZや、Compusense社、EyeQuestion社、TimeSens社などの官能評価用コンピュータシステム又はソフトウェアを使用することができる。
本明細書において、TDSデータは、TDS法によって得られる「質」に関連するデータ全般を表す。TDSデータには、例えば、後述の用語選択パターン及びTDSカーブが含まれる。
(物性感覚用語)
本発明では、上記の「質」として、物性感覚用語で記述される2種以上の物性感覚(テクスチャー、狭義の食感)をTDS法で評価する。即ち、本発明でTDS法に用いる物性感覚用語は、例えば、かたさ、弾力と粘り、ぬめり、なめらかさ、後口、残留感、空気感(エアリー感)、歯への付着感、舌への付着感、かみきりやすさ、くちどけの良さ、破裂感、崩壊性、粒感、ジューシー感、クリスピー感、みずみずしさ、ハリ、コシ、繊維感、食品同士の付着性等の物性感覚に関連する2種以上の物性感覚用語が挙げられる。
例えば、2種以上の物性感覚用語は、かたさ、弾力と粘り、なめらかさ及び後口からなる群より選ばれる1種以上の物性感覚を記述する用語である。
上記の物性感覚用語のより具体的な例としては、例えば、日本語テクスチャー用語体系(早川文代、農研機構食品総合研究所ホームページ;URLはhttp://www.naro.affrc.go.jp/archive/nfri/introduction/files/2013-yougotaikei.pdf、及び、日本食品科学工学会誌,2013年7月,第60巻,第7号,p.311-322参照)に記載のテクスチャー用語や、「食感言語マップ」(山本候充『菓子・スイーツの開発法~「買いたい」を仕掛ける』、2016年、旭屋出版、p.92)に記載された用語が挙げられる。具体的な用語としては、例えば、かたい、ふんわり、さくい、ねっちり、シャリシャリ、なめらか、もったり、すっきり、さらり、ふわふわ、ふわっと、ほろほろ、サラサラ、さっぱり、とろり、しっとり、ぬるぬる、まろやか、とろける、はらはら、サクサク、つるつる、ぷるぷる、ねっとり、ぽってり、ホクホク、ほっくり、もちもち、もっちり、プチプチ、シャキシャキ、パリパリ、ポリポリ、クニュクニュ、シコシコ、ざらざら、コリコリ、カリカリ、どっしり、こってり、ザクザク、パリパリ、ガリガリ、もろい、水っぽいからなる群より選ばれる2種以上を挙げることができる。
TDS法による官能評価を行う場合、物性感覚用語として、例えば対照的な物性感覚を表す用語の対を1種以上含むことが好ましい。このような対照的な物性感覚を表す用語の対としては、例えば、上記食感言語マップの原点又は1軸に対して対称な位置にある2種の用語が挙げられる。物性感覚用語に含まれる上記対の具体的な例としては、例えば、「かたい」及び「ふんわり」、「さくい」及び「ねっちり」、「シャリシャリ」及び「なめらか」、並びに「もったり」及び「すっきり」からなる対の群より選ばれる1種以上の対が挙げられる。
TDS法において選択肢となる物性感覚用語の数は、特に限定されないが、評価者の用語選択を容易にする観点から、12種以下が好ましい。TDS法に用いる物性感覚用語の選択肢の数は、例えば4種以上、5種以上、6種以上、7種以上又は8種以上、あるいは、4、5、6、7又は8種であってもよい。
(冷菓)
データ取得に用いる冷菓は、特に限定されず、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(昭和26年厚生省令第52号、以下、「乳等省令」と呼ぶ)で定義されるアイスクリーム(乳固形分15.0質量%以上かつ乳脂肪分8.0質量%以上)、アイスミルク(乳固形分10.0質量%以上かつ乳脂肪分3.0質量%以上)、ラクトアイス(乳固形分3.0質量%以上)、氷菓(乳固形分3.0質量%未満)のいずれであってもよいが、アイスクリーム、アイスミルク及びラクトアイスからなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましく、SPIを少なくとも1種以上含むことがより好ましい。
(評価者、評価方法)
TDS法による評価の実施にあたって、評価者の特性は特に限定されず、訓練されていない評価者であってもよいが、予め実施する評価の手法に関する説明を受け、練習していること、また評価する用語の定義について十分理解していることが好ましい。
TDS法の評価者の人数は、評価者に依存するバイアスを低減する観点から、5名以上が好ましく、7名以上又は10名以上とすることができる。また、評価者の人数は、評価時間の短縮やデータ取得の簡素化の観点から、例えば、20名以下、15名以下又は12名以下とすることができる。
本発明で使用するTDSデータ取得時の喫食方法は、特に限定されない。例えば、本発明で使用するTDSデータは、一口分の食品を喫食開始した時点(例えば、1回噛んだ時)を開始点、口内から食品がなくなった時点を終点としてTDS法による評価を行うことで求められる。ここで、「一口分」は各評価者において、当該食品を通常の方法で喫食する際に、口に入れる量を表す。例えば成人の場合、一口分は約5~10cm、例えば8cmである。
また、本発明で使用するTDSデータは、例えば、通常の分量で連続喫食してTDS法によって評価したときの、喫食中の特定の期間のデータを使用することもできる。
同じ冷菓に対するTDS法による評価の回数は、評価する冷菓の総数及び種類、評価者の人数、説明変数の数等によって適宜選択することができ、例えば1回のみの評価でもよいし、2回、3回又はそれ以上繰り返し評価を行ってもよい。
(用語選択パターン及びTDSカーブの作成)
上記のTDS法による評価の実施により、まず各評価者について喫食開始から時間ごとにどの物性感覚用語を選択しているかの対応関係を示すデータ(用語選択パターン;図1参照)が得られる。
評価者ごとに喫食時間(喫食開始から終了までの時間)が異なるため、用語選択パターンの時間は、例えば、各評価者の経過時間を喫食時間で割って標準化することが好ましい。
次に、喫食時間内での各用語の選択率と喫食開始からの経過時間の関係を表す曲線であるTDSカーブを作成する。TDSカーブは、各評価者の用語選択パターンの統合データに基づいて、各経過時間又は標準化された経過時間に対する各用語の選択率(全評価試行においてその用語を選択した試行数/全試行数)をプロットすることにより得られる(例えば、非特許文献1の図3、非特許文献2のFig.1、及び下記実施例を参照のこと)。ここで、全試行数は、例えば評価者ごとに複数回TDS法による評価を実施した場合は、評価者数にTDS法による評価の繰り返し回数を乗じたものである。
TDSカーブは、任意で、得られたプロットをスプライン曲線化、ベジェ曲線化などのスムージング処理がされてもよい。
スムージング処理は、例えば、TRANSREG(SAS Institute Inc.)を使用することができる。また用語選択パターン及びTDSカーブを作成するための上記手順は、上記の官能評価用コンピュータシステム又はソフトウェアにより実行することもできる。例えば官能評価用ソフトウェアとしてFIZZを用いれば、TDSカーブは、例えばベジェ曲線に変換して解析することができる。
(1-2.説明変数に用いるパラメータの選択)
説明変数に用いるパラメータの数は2種以上であり、例えば3種以上、4種以上、5種以上又は6種以上であってもよい。
(TDSカーブから抽出されるパラメータ群)
TDSカーブから抽出されるパラメータ群は、例えば以下の(a)~(d)が挙げられる:
(a)特定の前記物性感覚用語のTDSカーブの曲線下面積(AUC)に関する、面積パラメータ群;
(b)特定の前記物性感覚用語の特定の時点の選択率の大きさに関する、高さパラメータ群;
(c)特定の前記物性感覚用語のTDSカーブから定義される特定の時間の長さに関する、時間パラメータ群;並びに
(d)特定の前記物性感覚用語の特定の時点又は時点間の選択率の時間変化率に関するパラメータ群。
TDSカーブから抽出されるパラメータ群として、上記(a)~(d)のパラメータ群から選ばれる少なくとも1つの群を含むことが好ましく、上記(a)~(d)のパラメータ群から選ばれるいずれかの1つのパラメータ群を含むことがより好ましい。
上記(a)の面積パラメータ群としては、例えば特定の1種の物性感覚用語のAUCや、2種以上の物性感覚用語のAUCを算術演算(四則演算、対数化、絶対値化等)することによって得られるパラメータが挙げられる。
上記(b)の高さパラメータ群としては、例えば、特定の1種の物性感覚用語の、(i)選択率の最大値(最大選択率)、(ii)ピーク値(例えば、極小値、極大値)、若しくは(iii)特定の時点における選択率の大きさ、又は、2種以上の物性感覚用語の(i)~(iii)のいずれかのパラメータを算術演算することによって得られるパラメータ等が挙げられる。
上記(c)の時間パラメータ群としては、例えば、(i)特定の1種の物性感覚用語の選択率が特定の数値に達するまでの喫食開始からの経過時間、(ii)特定の1種の物性感覚用語の選択率が特定の数値以上又は特定の数値以下である時間の長さ、(iii)特定の1種の物性感覚用語の選択率が有意差のある選択率閾値(Level of significance)以上である時間の長さ、(iv)特定の1種の物性感覚用語の選択率がランダム選択率閾値(チャンスレベル)P(=1/選択肢数)以上である時間の長さ(継続時間)、又は、2種以上の物性感覚用語の(i)~(iv)のいずれかのパラメータを算術演算することによって得られるパラメータ等が挙げられる。ここで、有意水準5%の選択率閾値Pは、以下の式により求められる。
Figure 0007268217000001
また、P及びPの単位を百分率(%)で表記する場合には、それぞれP×100、P×100の値を用いる。
上記(d)の選択率の時間変化率に関するパラメータ群は、例えば、(i)特定の1種の物性感覚用語のある特定の時点におけるTDSカーブの傾き(微分値)、(ii)特定の1種の物性感覚用語のある特定の2時点間における選択率の時間変化率(当該2時点間の選択率の変化量を当該特定の2時点間の時間の長さで割った値)、又は2種以上の物性感覚用語の(i)又は(ii)のパラメータのいずれかを算術演算することによって得られるパラメータ等が挙げられる。
上記TDSカーブから抽出されるパラメータは、一部の物性感覚用語のTDSカーブから抽出してもよいし、又は全ての用語のTDSカーブから抽出してもよい。一実施形態では、説明変数は、上記の対照的な物性感覚を表す用語の対を形成するいずれか2種の用語に対応するTDSカーブから抽出したパラメータを含む。
説明変数は、例えば、少なくとも(a)の面積パラメータ群のパラメータを含んでもよく、(a)の面積パラメータ群のパラメータのみからなっていてもよい。一実施形態では、説明変数は、上記物性感覚用語から選ばれる特定の1種の用語のAUC、又は、上記物性感覚用語から選ばれる特定の2種の用語に対応するTDSカーブのAUCの差の絶対値若しくはAUCの差を少なくとも含む。
説明変数は、例えば、少なくとも(b)の高さパラメータ群のパラメータを含んでもよく、(b)の高さパラメータ群のパラメータのみからなっていてもよい。一実施形態では、説明変数は、上記物性感覚用語から選ばれる特定の1種の用語の最大選択率、又は、上記物性感覚用語から選ばれる特定の2種の用語の最大選択率の差の絶対値若しくは最大選択率の差を少なくとも含む。
説明変数は、例えば、少なくとも(c)の時間パラメータ群のパラメータを含んでもよく、(c)の時間パラメータ群のパラメータのみからなっていてもよい。一実施形態では、説明変数は、上記物性感覚用語から選ばれる特定の1種の用語の選択率がランダム選択率閾値(チャンスレベル)P(=1/選択肢数)以上である時間の長さ(継続時間)、又は、上記物性感覚用語から選ばれる特定の2種の用語の継続時間の差の絶対値若しくは継続時間の差を少なくとも含む。
説明変数は、例えば、少なくとも(d)の選択率の時間変化率に関するパラメータ群のパラメータを含んでもよく、(d)の選択率の時間変化率に関するパラメータ群のパラメータのみからなっていてもよい。
(用語選択パターンから抽出されるパラメータ群)
上記TDS法で得られる用語選択パターンから抽出されるパラメータの種類としては下記の(A)及び(B)が挙げられる:
(A)各評価者が特定の前記物性感覚用語を選択した時間の合計(選択時間)の平均値又は合計値に関する、選択時間パラメータ群、及び
(B)各評価者が特定の前記物性感覚用語を連続して選択した時間の最大値(最大選択持続時間)の平均値又は合計値に関する、最大選択持続時間パラメータ群。
ここで、上記の選択時間及び最大選択持続時間は、各評価者の喫食時間等の特定の時間の長さで割ったもの、又はそれに100を乗じて百分率化されたもの等の、標準化された時間であることが好ましい。
当業者は、用語選択パターン、選択時間及び最大選択持続時間の一例である図1から、これらの用語の意味を理解することができるが、本発明の実施形態は当該例に特に限定されるものではない。
上記(A)の選択時間パラメータ群としては、例えば、各評価者の特定の1種の物性感覚用語の選択時間の平均値若しくは合計値、又は、2種以上の物性感覚用語の前記平均値若しくは合計値を算術演算することによって得られるパラメータ等が挙げられる。
上記(B)の最大選択持続時間パラメータ群としては、例えば、各評価者の特定の1種の物性感覚用語の最大選択持続時間の平均値若しくは合計値、又は、2種以上の物性感覚用語の前記平均値若しくは合計値を算術演算することによって得られるパラメータ等が挙げられる。
用語選択パターンから抽出されるパラメータ群として、上記(A)及び(B)のパラメータ群から選ばれる少なくとも1つの群を含むことが好ましく、上記(A)又は(B)のいずれかのパラメータ群を含むことがより好ましい。
説明変数は、例えば、少なくとも(A)の選択時間パラメータ群のパラメータを含んでもよく、(A)の選択時間パラメータ群のパラメータのみからなっていてもよい。一実施形態では、説明変数は、上記物性感覚用語から選ばれる特定の1種の用語の選択時間の平均値、又は、上記物性感覚用語から選ばれる特定の2種の用語の前記選択時間の平均値の差の絶対値若しくは前記選択時間の平均値の差を少なくとも含む。
説明変数は、例えば、少なくとも(B)の最大選択持続時間パラメータ群のパラメータを含んでもよく、(B)の最大選択持続時間パラメータ群のパラメータのみからなっていてもよい。
説明変数において、上記物性感覚用語から選ばれる特定の2種の用語のパラメータの差又はその絶対値を用いる場合は、当該2種の用語としては、上記の対照的な物性感覚を表す用語の対となる2種が好ましい。
一実施形態では、説明変数は、例えば、「かたい」及び「ふんわり」、「ねっちり」及び「さくい」、「シャリシャリ」及び「なめらか」、並びに、「すっきり」及び「もったり」からなる対の群より選ばれる、少なくとも1種の対の用語に対応するTDSカーブ又は用語選択パターンから抽出されるパラメータを含む。このような対となる2種の用語に対応するTDSカーブ又は用語選択パターンからパラメータを抽出する場合、当該2種の用語のTDSカーブのAUCの差又はその絶対値、当該2種の用語の最大選択率の差又はその絶対値、又は当該2種の用語の選択時間の差又はその絶対値を説明変数のパラメータとすることが好ましい。
一実施形態では、説明変数は、「かたい」、「ふんわり」、「ねっちり」、「さくい」、「シャリシャリ」、「なめらか」、「すっきり」及び「もったり」からなる群より選ばれる1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種又は8種全ての物性感覚用語のTDSカーブから抽出されるパラメータを含む。
より具体的な実施形態として、説明変数は、「ねっちり」、「すっきり」、「もったり」及び「なめらか」に対応するTDSカーブから抽出されるパラメータからなる。
別のより具体的な実施形態としては、「ねっちり」、「すっきり」、「もったり」、「なめらか」、「さくい」及び「シャリシャリ」に対応するTDSカーブから抽出されるパラメータからなる。
特定の実施形態では、説明変数に用いるパラメータは、「ねっちり」のTDSカーブのAUC、「すっきり」のTDSカーブのAUCと「もったり」のTDSカーブのAUCの差の絶対値、及び、「なめらか」のTDSカーブのAUCである。
別の特定の実施形態では、説明変数に用いるパラメータは、「ねっちり」の最大選択率、「すっきり」の最大選択率と「もったり」の最大選択率の差の絶対値、及び、「なめらか」の最大選択率である。
さらに別の特定の実施形態では、説明変数に用いるパラメータは、用語選択パターンから抽出される、各評価者の「ねっちり」の選択時間の平均値、各評価者の「すっきり」の選択時間の平均値と各評価者の「もったり」の選択時間の平均値の差の絶対値、及び、各評価者の「なめらか」の選択時間の平均値である。
さらに別の特定の実施形態では、説明変数に用いるパラメータは、「すっきり」のTDSカーブのAUCと「もったり」のAUCの差の絶対値、「ねっちり」のTDSカーブのAUCから「さくい」のAUCを差し引いた値、及び「なめらか」のTDSカーブのAUCから「シャリシャリ」のAUCを差し引いた値である。
さらに別の特定の実施形態では、説明変数に用いるパラメータは、「すっきり」のTDSカーブのAUCと「もったり」のAUCの差の絶対値、及び「ねっちり」のTDSカーブのAUCから「さくい」のAUCを差し引いた値である。
さらに別の特定の実施形態では、説明変数に用いるパラメータは、用語選択パターンから抽出される、「なめらか」の継続時間及び「もったり」の継続時間である。
[2.目的変数]
本発明の推定式の作成方法では、TDS法に用いる冷菓と同じ冷菓を官能評価して得られるリッチ感の強度のデータを目的変数とする。
目的変数とするリッチ感の強度のデータは、種々の官能評価法によって、評価者が各冷菓を喫食して感じた「リッチ感の強度」自体を数値化して得たものであればよく、TDS法を用いなくてもよい。リッチ感の強度を数値化して評価する方法として、例えば、数値尺度(1~9点など)を用いた採点法、線尺度を用いたVAS(Visual Analog Scale)法などのラインスケール法、TI(Time Intensity)法などが挙げられる。中でも、リッチ感の強度の数値化には、程度に応じて連続的にスコアを決定できるラインスケール法が好ましい。
リッチ感の強度を取得するための官能評価の評価者は、上記TDS法の評価者と同じであってもよいし、異なっていてもよいが、同じであるほうが好ましい。官能評価の評価者の属性及び喫食方法は、例えばTDS法と同じである。
[3.説明変数の値及び目的変数の値を取得する工程(工程1)]
本工程では、2種以上の冷菓について、各冷菓の前記TDSカーブ及び前記用語選択パターンから前記説明変数の値を取得し、各冷菓の官能評価で得られたリッチ感の強度を前記目的変数の値として取得する。
説明変数を得るためのTDS法による評価及び目的変数を得るための官能評価で用いる冷菓の種類は、2種以上であり、例えば4種以上であり、推定式の推定精度を高める観点から、例えば5種以上、好ましくは6種以上である。
本発明の推定式の作成方法において、上記2種以上の冷菓の風味は特に限定されないが、評価者の評価が物性以外の要素の影響を受けるリスクを下げる観点から、同じ風味(例えば、バニラ風味)であることが好ましい。
本発明の推定式の作成方法において、上記2種以上の冷菓を選択する工程として、官能評価で得られるリッチ感の強度の程度が近い冷菓を優先的に選択する工程をさらに含むことができる。ここで、「リッチ感の強度の程度が近い冷菓を優先的に選択する」とは、選択された冷菓のリッチ感の強度の差が小さければよく、リッチ感の強度が高いもの同士、又は低いもの同士を選択してもよい。これにより、選択した冷菓のリッチ感の強度の範囲において、得られるリッチ感の強度の推定式の精度をさらに高めることができる。
「リッチ感の強度の程度が近い冷菓を優先的に選択する」ことは、例えば、下記実施例のラインスケール法によって評価したリッチ感の強度の値の差が50以内、40以内又は30以内の冷菓を選択することが挙げられる。また、上記の「リッチ感の強度が高いもの同士、又は低いもの同士を選択する」ことは、例えば、下記実施例のラインスケール法によって評価したリッチ感の強度の値が50以上、又は50以下の冷菓を選択することが挙げられる。
[4.推定式の作成工程(工程2)]
本発明において、冷菓のリッチ感の強度の推定式は、上記の工程1で得られた説明変数の値及び目的変数の値を用いて重回帰分析を行って得られる回帰式である。一般的に、重回帰分析で得られる回帰式(重回帰式)では、目的変数が(偏回帰係数×説明変数)の総和に切片を加えた式、即ち、目的変数=Σ(偏回帰係数×説明変数)+切片で表される。
このような回帰式は、上記の説明変数の値及び目的変数の値を入力として、例えばIBM SPSS Statistics(IBM社)、JMP(登録商標)(SAS Institute Inc.)、R(R Development Core Team)、College Analysis(福山平成大学)、エクセル(登録商標)(マイクロソフト社)の分析ツールの回帰分析機能等を用いて、重回帰分析を行うことにより決定することができる。
また、回帰式の偏回帰係数から標準化係数を求めて、その絶対値の大きさから、各々のパラメータの寄与度を知ることができる。
(予備的重回帰分析)
さらに、本発明の推定式の作成方法において、推定式に用いる説明変数の数を少なくするために、予めリッチ感の強度を目的変数として、上記TDSカーブ又は用語選択パターンから抽出されるパラメータを説明変数とした予備的重回帰分析を行って、得られる回帰式の標準化係数に基づいて、前記予備的重回帰分析に用いた説明変数より少ない数の前記説明変数を選択することも可能である。
(ステップワイズ法による重回帰分析)
上記のように予備的重回帰分析を用いて、より少ない数の説明変数を選択する代わりにステップワイズ法による重回帰分析を行って、より少ない数の説明変数による回帰式を作成することも可能である。
統計解析ソフト(例えば、College Analysis ver.6.7)には、自動的に最適な説明変数の組み合わせを抽出するステップワイズ法の機能を有しており、このような機能(ステップワイズ法)を使用することにより、2~3程度の説明変数を抽出することができる。ステップワイズ法には、変数増減法、変数増加法、変数減少法などの手法があり、偏回帰係数の検定確率(又は検定値)や赤池情報量基準(AIC)などの数値を基準に変数が選別、決定される。これと同時に、偏回帰係数と切片も算出され、重回帰式であるリッチ感の強度の推定式を得ることができる。このようなステップワイズ法による重回帰分析を利用することで、自動的により適切な説明変数を抽出することができ、TDSカーブから抽出するパラメータの数を少なくして、より効率的に冷菓のリッチ感の強度を評価することができる。
(推定式の用途)
本発明の推定式の作成方法で得られた推定式は、一般的な物性感覚とリッチ感の強度との関係を定量的に記述する。
そして、当該推定式に対して各説明変数の値を代入すれば、リッチ感の強度を推定することができる(下記の[リッチ感の強度の推定方法]の項参照)。
また、当該推定式は、一般的な物性感覚の定量値又は定性的な傾向の情報に基づいて、リッチ感の強度又はリッチ感の強度の変化を推定する指針としても有用である。例えば、当該推定式において寄与度が高い説明変数の情報は、当該説明変数に対応する物性感覚に影響する成分、製法等を変更することにより、リッチ感の強度を改善できるという指針を提供する。
[リッチ感の強度の推定方法]
本発明の推定方法は、以下を含む。
上記の作成方法で得られるリッチ感の強度の推定式に対して、
冷菓について、その推定式の説明変数の値を取得すること、及び
前記説明変数の値を上記の推定式に代入してリッチ感の強度の推定値を得ること。
リッチ感の強度を推定する冷菓の説明変数の値は、例えば上記の[冷菓のリッチ感の強度の推定式の作成方法]の項に記載した工程1の(1-1.各評価者の用語選択パターン及びTDSカーブの作成)で得られるTDSカーブ及び用語選択パターンから得ることができる。
[リッチ感の付与効果評価方法]
本発明のリッチ感の付与効果評価方法は、以下を含む。
上記の作成方法で得られるリッチ感の強度の推定式に対して、
第1の冷菓と、第1の冷菓に追加成分を加えて得られる第2の冷菓のそれぞれについて、その推定式の説明変数の値を取得すること、
前記説明変数の値を上記の推定式に代入して、第1の冷菓及び第2の冷菓のリッチ感の強度の推定値を得ること、及び
前記第2の冷菓の推定値から、前記第1の冷菓の推定値を差し引いた値を、前記追加成分によって付与されたリッチ感の強度とすることを含む、前記追加成分のリッチ感の付与効果評価方法。
第1の冷菓と第2の冷菓の説明変数の値の取得は、例えば上記の[冷菓のリッチ感の強度の推定式の作成方法]の項に記載した工程1の(1-1.各評価者の用語選択パターン及びTDSカーブの作成)で得られるTDSカーブ及び用語選択パターンから得ることができる。
追加成分としては、例えば、キサンタンガム、ジェランガム、プルラン、カードラン、ラムザンガム、マクロホモプシスガム、アルギン酸塩(ナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩)、カラギーナン、寒天、ペクチン、水溶性大豆多糖類、水溶性ヘミセルロース、ウェランガム、ガラクトマンナン(例えば、グァーガム、タラガム、ローカストビーンガム等)、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、サバクヨモギシードガム、コンニャク粉、グルコマンナン、トラガントガム、カラヤガム、ガティガム、アラビアガム、セルロース類(微結晶セルロース、発酵セルロース、微小繊維状セルロース等)、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等)、キチン、キトサン、ゼラチン、澱粉類(例えば、澱粉、カルボキシメチル澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、オクテニルコハク酸澱粉、酢酸澱粉等)及びデキストリン類(例えば、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、酵素処理デキストリン等)からなる群より選ばれる1種単独又は2種以上の組み合わせを含む組成物が挙げられる。
さらに、予め基準値となるリッチ感の強度の値を定めておけば、特定の追加成分について、付与されたリッチ感の強度が基準値よりも大きい場合に、当該追加成分を、リッチ感付与成分であると判定することもできる。このような付与されたリッチ感の強度に対する基準値は、冷菓で想定される最小のリッチ感の強度を0、冷菓で想定される最大のリッチ感の強度を100とした場合、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75又は80から選択される。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。特に記載のない限り、「部」は「質量部」を、また「%」は「質量%」を意味する。また、文中「*」印は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製であることを示し、文中「※」印は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを示す。
[官能評価の方法]
(官能評価パネル)
食品の研究開発に従事する官能評価に熟練した12名(男性7名、女性5名、平均年齢34.2歳)を官能評価パネル(評価者)に選定した。
(評価用サンプル、周囲温度)
サンプルは各実施例に記載の種々の冷菓(市販又は試作品)を使用した。サンプルは、評価時に約-18℃になるように評価者に提供した。官能評価は室温(25±2℃)で実施した。
(サンプルの1回の喫食量、喫食方法)
評価者はラインスケール法、TDS法いずれの場合も平均的な冷菓の一口分の摂取量である8cmを一度に口に入れ、はじめは少なくとも1回歯で噛み、口内からなくなるまで自然に喫食して官能評価した。1サンプルを評価後、次のサンプルを評価する前に、水で口内の温度を戻した。
(ラインスケール法)
ラインスケール法は、特定の官能特性の強度を連続量で評価する方法である。左端を冷菓で想定される最小の強度、右端を冷菓で想定される最大の強度として、全長が100mmのスケール上で、評価者が感じた官能特性の強度に対応する位置に印をつけて評価した。当該官能特性の強度は、左端からの距離(mm)で表した。
(TDS法)
TDS法は次の(1)~(3)の手順で行われた。データ収集及び解析はFIZZ(BIOSYSTEMES社)を用いて一括して行った。
(1)評価者はディスプレーに提示される物性感覚を記述する用語(物性感覚用語)の候補の中から、各時点で最も優先的に感じる物性を記述する1用語をマウスクリックによって選択して評価を行った。評価者は、上記所定量の冷菓を口に入れて1回噛んだとき(喫食開始)に最も優先的に感じる物性に対応する用語をまず選択することで評価を開始し、その後最も優先的に感じる物性が変わったと感じた時点で、その用語をクリックする。この操作を冷菓が口内から完全になくなるまで行い、ストップボタンを押して評価を終了した。別の用語を選択するまでは、評価者は同じ用語を選択しているものとみなして、各評価者の用語選択パターンを取得した。1つのサンプルについて評価は2回実施し、その両方の評価で得られたデータをTDSカーブの作成に使用した。
(2)喫食時間が評価者間で異なるため、喫食開始から終了までの時間を標準化してデータを統合することによって、標準化喫食時間の中の各時点において、各用語が選択された割合(選択率)の関係を示すプロットを得た。
(3)得られたプロットをスムージング処理することにより、各時点における用語選択の関係を示すTDSカーブを得た。
[準備1.冷菓のリッチ感の官能評価の確認]
(リッチ感の強度の評価基準のすり合わせ)
上記12名の評価者が、スーパープレミアムアイスクリーム(SPI)とそれ以外の冷菓をそれぞれ複数種試食した。協議の結果、乳等の素材がリッチに含まれたような印象を想起させる、SPIに特徴的な濃密で独特な食感として、「リッチ感」が見出された。また歯ざわり、舌ざわり、及び口あたりについてSPIとそれ以外の冷菓の食感を対比すると、表1のような特徴が見出された。これらの歯ざわり、舌ざわり及び口あたりの特徴が組み合わさって「リッチ感」を生み出すものと考えられた。
Figure 0007268217000002
次にリッチ感の強度の異なる3段階の冷菓を抽出して試食を行い、評価者間で「リッチ感」を表す食感の基準を共有した。次に各評価者には、市販のアイスクリーム類複数種をサンプルとしてラインスケール法によりリッチ感の強度を評価させた。評価者間でリッチ感の強度の評価値が概ね同じ傾向にあり、大きなばらつきはないことを確認した。
下記の実施例では、各冷菓の官能評価によるリッチ感の強度は、評価者のリッチ感の強度の評価値の平均値として求められる。
[準備2.冷菓の物性感覚を表す用語の定義とそのすり合わせ]
上記12名の評価者が冷菓の物性感覚を表す物性感覚用語を出し合い、全員による協議によって特定の物性感覚用語を抽出し、それらの特徴について協議、すり合わせを行った。最終的に、表2のようにTDS法に使用する物性感覚用語とその特徴を決定し、評価者間で共有した。
Figure 0007268217000003
これらの用語のうち、「かたい」と「ふんわり」はかたさ、「さくい」と「ねっちり」は弾力と粘り、「シャリシャリ」と「なめらか」はなめらかさ、「もったり」と「すっきり」は後口において、対になる用語である。
[準備3.冷菓試作品の調製]
下記の実施例に用いた試作品の冷菓12~24は表3及び表4の処方及び方法で調製した。
Figure 0007268217000004
Figure 0007268217000005
[実施例1:曲線下面積に係る3変数によるリッチ感の強度の推定式の作成]
(官能評価による各種冷菓のリッチ感の強度の評価)
表5に示す14種類のバニラ風味の冷菓(市販の冷菓1~11及び表4に記載した試作した冷菓12~14)のリッチ感の強度を、ラインスケール法を用いて上記12名の評価者によって官能評価した。結果を表5に示した。
Figure 0007268217000006
(TDS法による各種冷菓の物性の評価)
次に、上記12名の評価者が官能評価法の一つであるTDS法を用いて、表5の14種類の冷菓それぞれの物性を評価した。選択肢となる物性感覚用語には、表2に記載した8用語全てを使用した。
(TDSカーブの曲線下面積の算出)
上記TDS法によって、各冷菓について、横軸を標準化された経過時間(0~100(%))、縦軸を用語の選択率(0~100(%))とする、8種の物性感覚用語それぞれのTDSカーブが得られた。TDSカーブの例を図2に示した。これらのTDSカーブから、各用語の曲線下面積(AUC)を算出した。
(重回帰分析1)
上記表5の14種類の冷菓のリッチ感の強度を目的変数Y、以下のX~Xを説明変数として、統計解析ソフトCollege Analysis ver.6.7を用いて、重回帰分析を実施した。
:「ねっちり」のTDSカーブのAUC
:「すっきり」のTDSカーブのAUCと「もったり」のAUCの差の絶対値
:「なめらか」のTDSカーブのAUC
その結果、得られた回帰式(以下、回帰式(I)と呼ぶ)は、
Y=0.0088X-0.0082X+0.0079X+36.8794であった。
また、その際に求めた標準化係数を偏回帰係数と共に表6-1に示す。回帰式(I)の自由度調整済み決定係数Rは0.874であり、十分に精度の良い回帰式が得られた。標準化係数の比較から、X~Xは、いずれもリッチ感の強度の推定に寄与していることがわかる。
Figure 0007268217000007
図3は、冷菓1~14(市販の冷菓1~11及び試作した冷菓12~14)について、上記回帰式(I)から推定されるリッチ感の強度の推定値と、表5に記載のリッチ感の強度の実測値との関係を示したグラフ(回帰直線)である。図中に示した通り、回帰直線の係数(直線の傾き)が1、決定係数Rは0.9036であり、回帰式(I)がリッチ感の強度を精度よく推定できていることがわかる。
また、「ねっちり」のAUCであるXを説明変数、官能評価によるリッチ感の強度Yを目的変数として単回帰分析を行った場合は、決定係数がわずか0.305であった。また、X又はXを説明変数とする単回帰分析の決定係数も、上記の回帰式の自由度調整済み決定係数よりも小さかった。よって、上記回帰式により、「ねっちり」のAUC単独を説明変数に用いて得られる回帰式よりも精度よくリッチ感の強度を推定可能であると推察された。
[実施例2:曲線下面積に係る2変数によるリッチ感の強度の推定式の作成]
実施例1で用いた説明変数X~Xのうち、X及びXの2種を説明変数に用い、リッチ感の強度Yを目的変数に用いて、実施例1と同様に重回帰分析を実施した結果、重回帰式Y=0.0115X-0.0132X+54.6378が得られた。自由度調整済み決定係数Rは0.814であり、十分に精度の良い回帰式が得られた。
実施例1で用いた説明変数X~Xのうち、X及びXの2種を説明変数に用い、リッチ感の強度Yを目的変数に用いて、実施例1と同様に重回帰分析を実施した結果、重回帰式Y=-0.0042X+0.0138X+33.36が得られた。自由度調整済み決定係数Rは0.709であり、十分に精度の良い回帰式が得られた。
実施例1で用いた説明変数X~Xのうち、X及びXの2種を説明変数に用い、リッチ感の強度Yを目的変数に用いて、実施例1と同様に重回帰分析を実施した結果、重回帰式Y=-0.0061X+0.0151X+13.924が得られた。自由度調整済み決定係数Rは0.776であり、十分に精度の良い回帰式が得られた。
[実施例3:用語の選択率、選択時間によるリッチ感の強度の推定式の作成]
(重回帰分析2)
実施例1で得られた上記表5の14種類の冷菓のリッチ感の強度を目的変数Y、以下のX~Xを説明変数として、統計解析ソフトCollege Analysis ver.6.7を用いて、重回帰分析を実施した。ここで、特定の用語の最大選択率とは、TDSカーブの全ての時点の中での当該用語の選択率の最大値を示す。
:「ねっちり」の最大選択率
:「すっきり」の最大選択率と「もったり」の最大選択率の差の絶対値
:「なめらか」の最大選択率
その結果、得られた回帰式(以下、回帰式(II)と呼ぶ)は、
Y=0.2215X-0.2763X+0.5836X+35.2853であった。
また、その際に求めた標準化係数を偏回帰係数と共に表6-2に示す。
回帰式(II)の自由度調整済み決定係数Rは0.901であり、十分に精度の良い回帰式が得られた。標準化係数の比較から、X~Xは、いずれもリッチ感の強度の推定に寄与していることがわかる。
Figure 0007268217000008
図4は、冷菓1~14について、上記回帰式(II)から推定されるリッチ感の強度の推定値と、表5に記載のリッチ感の強度の実測値との関係を示したグラフ(回帰直線)である。図中に示した通り、回帰直線の係数(直線の傾き)が1、決定係数Rは0.9239であり、回帰式(II)がリッチ感の強度を精度よく推定できていることがわかる。
(重回帰分析3)
実施例1で得られた上記表5の14種類の冷菓のリッチ感の強度を目的変数Y、以下のX~Xを説明変数として、統計解析ソフトCollege Analysis ver.6.7を用いて、重回帰分析を実施した。ここで、特定の用語の選択時間の平均値とは、各評価者の用語選択パターンから得られる標準化された選択時間(当該特定の用語を選択した時間の合計/喫食時間×100)を、全評価者について集計して単純平均したものである。
:「ねっちり」の選択時間の平均値
:「すっきり」の選択時間の平均値と「もったり」の選択時間の平均値の差の絶対値
:「なめらか」の選択時間の平均値
その結果、得られた回帰式(以下、回帰式(III)と呼ぶ)は、
Y=0.8818X-0.8257X+0.7874X+36.7686であった。
また、その際に求めた標準化係数を偏回帰係数と共に表6-3に示す。
回帰式(III)の自由度調整済み決定係数Rは0.874であり、十分に精度の良い回帰式が得られた。標準化係数の比較から、X~Xは、いずれもリッチ感の強度の推定に寄与していることがわかる。
Figure 0007268217000009
図5は、冷菓1~14について、上記回帰式(III)から推定されるリッチ感の強度の推定値と、表5に記載のリッチ感の強度の実測値との関係を示すグラフ(回帰直線)である。図中に示した通り、回帰直線の係数(直線の傾き)が1、決定係数Rは0.9017であり、回帰式(III)がリッチ感の強度を精度よく推定できていることがわかる。
[実施例4:重回帰式を用いたリッチ感の強度の推定1]
表3及び表4に基づいて、実施例1の回帰式の作成に使用した試作品の冷菓12~14とは異なる物性を有する10種類の冷菓15~24を調製した。これらの冷菓を、上記12名の評価者によりラインスケール法を用いて官能評価し、各冷菓のリッチ感の強度(即ち、実測値)を決定した。
次に、10種類の冷菓15~24のTDS法による評価を実施例1と同じ方法によって行い、各用語のTDSカーブから、上記実施例1のX~Xの値を抽出した。各冷菓のこれら説明変数の値を上記実施例1で得られた回帰式(I)に代入して、各冷菓のリッチ感の強度の推定値を算出した。同様に、冷菓15~24の各用語のTDSカーブから、上記実施例3のX~Xの値を抽出し、実施例3の回帰式(II)及び回帰式(III)にそれぞれ代入して、各冷菓のリッチ感の強度の推定値を算出した。
得られたリッチ感の強度の推定値及び実測値を表7-1~7-3に示した。回帰式(I)、(II)、(III)による推定値と実測値との間の決定係数Rは、それぞれ0.993、0.944、0.993であり、極めて強い相関が認められた。推定値と実測値のズレは12名の評価者による官能評価で得られたリッチ感の強度の標準偏差と比較しても顕著に小さかった。以上から、回帰式(I)~(III)に対応する説明変数の値を代入することで冷菓のリッチ感の強度を精度よく推定可能であることがわかった。
Figure 0007268217000010
Figure 0007268217000011
Figure 0007268217000012
そして、実測値と推定値が同様の値を示したことから、上記の製剤のような追加成分を含有する冷菓と含有しない冷菓のそれぞれのリッチ感の強度の推定値の差をとることにより、前記追加成分によって付与されたリッチ感の強度を精度よく評価することができる。
例えば、表8は回帰式(I)を用いて得られた推定式を用いて得られるリッチ感の付与効果の定量値を示す。リッチ感の付与効果は、冷菓サンプル15~18のリッチ感の強度の推定値から、対照である冷菓サンプル12のリッチ感の強度の推定値(11.2)を差し引いた値として求められる。これらの定量値から、タマリンドシードガム、グァーガム、大豆多糖類、ローカストビーンガム及び酵素処理デキストリンからなる群より選ばれる多糖類を含有する製剤は、冷菓にリッチ感を付与する効果を有すること、中でもグァーガム含有製剤が、顕著にリッチ感を付与する効果が高いことが明らかとなった。
また、例えば、酵素処理デキストリン製剤(スマートテイスト)を含有する冷菓サンプル18及び23は、冷菓サンプル17及び22に比べてリッチ感の強度の推定値及び実測値が顕著に大きく増加していた。よって、酵素処理デキストリン製剤もまた、冷菓にリッチ感を付与する効果が高いことが明らかとなった。
Figure 0007268217000013
[実施例5:別の曲線下面積に係るパラメータを用いたリッチ感の強度の推定式の作成]
実施例1で得られた表5の14種類の冷菓のリッチ感の強度を目的変数Y、以下のX、X10、X11を説明変数として、統計解析ソフトCollege Analysis ver.6.7を用いて、重回帰分析を実施した。
:「すっきり」のTDSカーブのAUCと「もったり」のAUCの差の絶対値
10:「ねっちり」のTDSカーブのAUCと「さくい」のAUCの差
11:「なめらか」のTDSカーブのAUCと「シャリシャリ」のAUCの差
その結果、得られた回帰式(以下、回帰式(IV)と呼ぶ)は、
Y=-0.01X+0.0059X10+0.0027X11+61.4016であった。
また、その際に求めた標準化係数を偏回帰係数と共に表9に示す。回帰式(IV)の自由度調整済み決定係数Rは0.856であり、十分に精度の良い回帰式が得られた。標準化係数の比較から、X、X10及びX11は、いずれもリッチ感の強度の推定に寄与していることがわかる。
Figure 0007268217000014
図6は、冷菓1~14について、上記回帰式(IV)から推定されるリッチ感の強度の推定値と、表5に記載のリッチ感の強度の実測値との関係を示すグラフ(回帰直線)である。図中に示した通り、回帰直線の係数(直線の傾き)が1、決定係数Rは0.8883であり、回帰式(IV)がリッチ感の強度を精度よく推定できていることがわかる。
[実施例6.変数増減法を用いた推定式の作成]
実施例1で得られた表5の14種類の冷菓のリッチ感の強度を目的変数Y、各用語のAUC、対になる物性感覚用語のAUCの差、対になる物性感覚用語のAUCの差の絶対値を含む16パラメータを説明変数として、統計解析ソフトCollege Analysis ver.6.7を用いて、変数増減法による重回帰分析を実施した。その結果、X(「すっきり」のTDSカーブのAUCと「もったり」のAUCの差の絶対値)及びX10(「ねっちり」のTDSカーブのAUCと「さくい」のAUCの差)が説明変数として選択された。得られた回帰式(以下、回帰式(V)と呼ぶ)は、
Y=-0.0134X+0.0088X10+67.0189であった。
また、その際に求めた標準化係数を偏回帰係数と共に表10に示す。回帰式(V)の自由度調整済み決定係数Rは0.832であり、十分に精度の良い回帰式が得られた。標準化係数の比較から、X及びX10は、いずれもリッチ感の強度の推定に寄与していることがわかる。
Figure 0007268217000015
図7は、冷菓1~14について、上記回帰式(V)から推定されるリッチ感の強度の推定値と、表5に記載のリッチ感の強度の実測値との関係を示すグラフ(回帰直線)である。図中に示した通り、回帰直線の係数(直線の傾き)が1、決定係数Rは0.8575であり、回帰式(V)がリッチ感の強度を精度よく推定できていることがわかる。
[実施例7.用語の選択時間を用いたリッチ感の強度の推定式の作成]
実施例1で得られた表5の14種類の冷菓のリッチ感の強度を目的変数Y、各用語の継続時間と、継続時間の差、継続時間の差の絶対値を含む16パラメータを説明変数として、統計解析ソフトCollege Analysis ver.6.7を用いて、変数増減法による重回帰分析を実施した。ここで、継続時間とは、各用語のTDSカーブにおいて、偶然選択される確率であるチャンスレベル(1/選択肢数×100(%))以上の選択率である時間を合計した値である。本試験例では選択肢数8のため、チャンスレベルは12.5%である。その結果、X12及びX13が説明変数として選択された。
12:「なめらか」の継続時間
13:「もったり」の継続時間
得られた回帰式(以下、回帰式(VI)と呼ぶ)は、
Y=0.4535X12+0.3532X13+13.0643であった。
また、その際に求めた標準化係数を偏回帰係数と共に表11に示す。回帰式(VI)の自由度調整済み決定係数Rは0.799であり、十分に精度の良い回帰式が得られた。標準化係数の比較から、X12、X13は、いずれもリッチ感の強度の推定に寄与していることがわかる。
Figure 0007268217000016
図8は、冷菓1~14について、上記回帰式(VI)から推定されるリッチ感の強度の推定値と、表5に記載のリッチ感の強度の実測値との関係を示すグラフ(回帰直線)である。図中に示した通り、回帰直線の係数(直線の傾き)が1、決定係数Rは0.8302であり、回帰式(VI)がリッチ感の強度を精度よく推定できていることがわかる。
[実施例8:重回帰式を用いたリッチ感の強度の推定2]
実施例4で得られた10種類の冷菓15~24に対する各用語のTDSカーブから、上記回帰式(IV)、(V)、(VI)のそれぞれの説明変数の値を抽出し、それぞれの回帰式に代入して、各回帰式に基づくリッチ感の強度の推定値を算出した。
得られたリッチ感の強度の推定値と実施例4で得られた10種類の冷菓15~24のリッチ感の強度の実測値との関係を表12-1~12-3に示した。回帰式(IV)、(V)、(VI)による推定値と実測値との間の相関係数Rは、それぞれ0.998、0.959、0.936であり、極めて強い相関が認められた。推定値と実測値のズレは12名の評価者による官能評価で得られたリッチ感の強度の標準偏差と比較しても顕著に小さかった。以上から、回帰式(IV)~(VI)に対応する説明変数の値を代入することで冷菓のリッチ感の強度を精度よく推定可能であることがわかった。
Figure 0007268217000017
Figure 0007268217000018
Figure 0007268217000019

Claims (9)

  1. 冷菓を喫食して2種以上の物性感覚用語を選択肢とした経時的優先感覚(TDS)法で評価することにより得られる、各物性感覚用語の選択率の時間変化を表す曲線(TDSカーブ)及び各物性感覚用語の用語選択パターンにおいて、
    前記TDSカーブから抽出されるパラメータ群及び前記用語選択パターンから抽出されるパラメータ群から選択される2種以上のパラメータを説明変数とし;
    冷菓を喫食して官能評価することにより得られる、リッチ感の強度を目的変数とし;
    1)2種以上の冷菓について、各冷菓の前記TDSカーブ及び前記用語選択パターンから前記説明変数の値を取得し、各冷菓の官能評価で得られたリッチ感の強度を前記目的変数の値として取得する工程;並びに
    2)前記工程1で得られた説明変数の値及び目的変数の値を用いて重回帰分析を行う工程;
    を含む、冷菓のリッチ感の強度の推定式の作成方法。
  2. 前記TDSカーブから抽出されるパラメータ群が、
    (a)特定の前記物性感覚用語のTDSカーブの曲線下面積(AUC)に関する、面積パラメータ群、
    (b)特定の前記物性感覚用語の特定の時点の選択率の大きさに関する、高さパラメータ群、
    (c)特定の前記物性感覚用語のTDSカーブから定義される特定の時間の長さに関する、時間パラメータ群、及び
    (d)特定の前記物性感覚用語の特定の時点又は時点間の選択率の時間変化率に関するパラメータ群から選ばれる少なくとも1つのパラメータ群を含む、請求項1に記載の作成方法。
  3. 前記(a)面積パラメータ群が、前記2種以上の物性感覚用語から選ばれるいずれか1種の用語のTDSカーブの曲線下面積(AUC)、又は、前記2種以上の物性感覚用語から選ばれるいずれか2種の用語のTDSカーブの曲線下面積の差の絶対値若しくは曲線下面積の差を少なくとも含む;又は、
    前記(b)高さパラメータ群が、前記2種以上の物性感覚用語から選ばれるいずれか1種の用語の最大選択率、又は、前記2種以上の物性感覚用語から選ばれるいずれか2種の用語の最大選択率の差の絶対値若しくは最大選択率の差を少なくとも含む;又は、
    前記(c)時間パラメータ群が、前記2種以上の物性感覚用語から選ばれるいずれか1種の用語の選択率がランダム選択率閾値(チャンスレベル)P(=1/選択肢数)以上である時間の長さ(継続時間)、又は、前記2種以上の物性感覚用語から選ばれるいずれか2種の用語の継続時間の差の絶対値若しくは継続時間の差を少なくとも含む、請求項2に記載の作成方法。
  4. 前記用語選択パターンから抽出されるパラメータ群が、
    (A)各評価者が特定の前記物性感覚用語を選択した時間の合計(選択時間)の平均値又は合計値に関する、選択時間パラメータ群、及び
    (B)各評価者が特定の前記物性感覚用語を連続して選択した時間の最大値(最大選択持続時間)の平均値又は合計値に関する、最大選択持続時間パラメータ群から選ばれる少なくとも1つのパラメータ群を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の作成方法。
  5. 前記(A)選択時間パラメータ群が、前記2種以上の物性感覚用語から選ばれるいずれか1種の用語の選択時間の平均値、又は、前記2種以上の前記物性感覚用語から選ばれるいずれか2種の用語の選択時間の平均値の差の絶対値若しくは選択時間の平均値の差を少なくとも含む、請求項4に記載の作成方法。
  6. 前記物性感覚用語が、対照的な物性感覚を表す用語の対を1種以上含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の作成方法。
  7. 前記対照的な物性感覚を表す用語の対が、「かたい」及び「ふんわり」、「ねっちり」及び「さくい」、「シャリシャリ」及び「なめらか」、並びに、「すっきり」及び「もったり」からなる対の群より選ばれる1種以上の対を含む、請求項6記載の作成方法。
  8. 冷菓について請求項1~のいずれか一項に記載の作成方法で得られた推定式の説明変数に対応する値を取得すること、及び
    前記説明変数の値を前記定式に代入してリッチ感の強度の推定値を得ることを含む、冷菓のリッチ感の強度の推定方法。
  9. 第1の冷菓と、第1の冷菓に追加成分を加えて得られる第2の冷菓のそれぞれについて、請求項1~のいずれか一項に記載の作成方法で得られた推定式の説明変数に対応する値を取得すること、
    前記説明変数の値を前記定式に代入して、第1の冷菓及び第2の冷菓のリッチ感の強度の推定値を得ること、及び
    前記第2の冷菓の推定値から、前記第1の冷菓の推定値を差し引いた値を、前記追加成分によって付与されたリッチ感の強度とすることを含む、前記追加成分のリッチ感の付与効果評価方法。
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