以下、一実施形態について、図1~図15(B)に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係る造形装置100の全体構成が、ブロック図にて示されている。
造形装置100は、DED方式のM3DPである。造形装置100は、ラピッドプロトタイピングにより、後述するテーブル12上で三次元造形物を形成するのにも用いることができるが、ワーク(例えば、既存の部品)に対して三次元造形による付加加工を行うのにも用いることもできる。本実施形態では、後者のワークに対する付加加工を行う場合を中心として説明を行う。実際のモノづくりの現場では、別の製法、別の材料あるいは別の工作機械で生成された部品に対し、更に加工を繰り返し所望の部品に仕立てていくことが普通であり、三次元造形による付加加工に対してもその要求は潜在的には同じである。
造形装置100は、移動システム200、計測システム400及びビーム造形システム500と、これらのシステムを含み、造形装置100の全体を制御する制御装置600とを備えている。このうち、計測システム400と、ビーム造形システム500とは、所定方向、に離れて配置されている。以下の説明では、便宜上、計測システム400と、ビーム造形システム500とは、後述するX軸方向(図2参照)に離れて配置されているものとする。
図2には、移動システム200の構成が、計測システム400とともに概略的に示されている。また、図3には、ワークWが搭載された移動システム200が、斜視図にて示されている。以下では、図2における紙面内の左右方向をY軸方向、紙面に直交する方向をX軸方向、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸方向とし、X軸、Y軸及びZ軸回りの回転(傾斜)方向を、それぞれθx、θy及びθz方向として説明を行う。
移動システム200は、造形の対象面(ここではワークW上の目標部位TAが設定される面)TAS(例えば図4及び図9(A)参照)の位置及び姿勢を変更する。具体的には、対象面を有するワーク及び該ワークが搭載される後述するテーブルを6自由度方向(X軸、Y軸、Z軸、θx、θy及びθzの各方向)に駆動することで、対象面の6自由度方向の位置の変更を行う。本明細書においては、テーブル、ワーク又は対象面などについて、θx、θy及びθz方向の3自由度方向の位置を適宜「姿勢」と総称し、これに対応して残りの3自由度方向(X軸、Y軸及びZ軸方向)の位置を適宜「位置」と総称する。
移動システム200は、テーブルの位置及び姿勢を変更する駆動機構の一例としてスチュワートプラットホーム型の6自由度パラレルリンク機構を備えている。なお、移動システム200は、テーブルを6自由度方向に駆動できるものに限定されない。
移動システム200(但し、後述する平面モータの固定子を除く)は、図2に示されるように、床F上にその上面がXY平面にほぼ平行になるように設置されたベースBS上に配置されている。移動システム200は、図3に示されるように、ベースプラットホームを構成する平面視正六角状のスライダ10と、エンドエフェクタを構成するテーブル12と、スライダ10とテーブル12とを連結する6本の伸縮可能なロッド(リンク)141~146と、ロッド141~146にそれぞれ設けられ当該各ロッドを伸縮させる伸縮機構161~166(図3では図示せず、図11参照)とを有している。移動システム200は、ロッド141~146の長さを伸縮機構161~166でそれぞれ独立に調整することにより、テーブル12の動きを三次元空間内で6自由度で制御できる構造となっている。移動システム200は、テーブル12の駆動機構として、スチュワートプラットホーム型の6自由度パラレルリンク機構を備えているので、高精度、高剛性、支持力が大きい、逆運動学計算が容易などの特徴がある。
本実施形態に係る造形装置100では、ワークに対する付加加工時等において、ワークに対して所望の形状の造形物を形成する等のため、ビーム造形システム500に対し、より具体的には後述するビーム照射部からのビームに対してワーク(テーブル12)の位置及び姿勢が制御される。原理的には、この逆にビーム照射部からのビームの方が可動であっても良いし、ビームとワーク(テーブル)の両方が可動であっても良い。後述するようにビーム造形システム500は複雑な構成であるため、ワークの方を動かす方が簡便である。
テーブル12は、ここでは、正三角形の各頂点の部分を切り落としたような形状の板部材から成る。テーブル12の上面に付加加工対象のワークWが搭載される。テーブル12には、ワークWを固定するためのチャック機構13(図3では不図示、図11参照)が設けられている。チャック機構13としては、例えばメカニカルチャックあるいは真空チャックなどが用いられる。なお、テーブル12は、図3に示される形状に限らず、矩形板状、円盤状など如何なる形状でも良い。
この場合、図3から明らかなように、ロッド141~146のそれぞれは、両端がユニバーサルジョイント18を介して、スライダ10とテーブル12とにそれぞれ接続されている。また、ロッド141、142は、テーブル12の三角形の1つの頂点位置の近傍に接続され、スライダ10とこれらのロッド141、142とによって概略三角形が構成されるような配置となっている。同様に、ロッド143,144、及びロッド145,146は、テーブル12の三角形の残りの各頂点位置の近傍にそれぞれ接続され、スライダ10と、ロッド143、144、及びロッド145,146とによって、それぞれ概略三角形が構成されるような配置となっている。
これらのロッド141~146のそれぞれは、図3にロッド141について代表的に示されるように、それぞれの軸方向に相対移動可能な第1軸部材20と、第2軸部材22とを有しており、第1軸部材20の一端(下端)は、スライダ10にユニバーサルジョイント18を介して取り付けられており、第2軸部材22の他端(上端)は、テーブル12にユニバーサルジョイントを介して取り付けられている。
第1軸部材20の内部には、段付き円柱状の中空部が形成されており、この中空部の下端側には、例えばベローズ型のエアシリンダが収納されている。このエアシリンダには、空圧回路及び空気圧源(いずれも不図示)が接続されている。そして、その空気圧源から供給される圧縮空気の空気圧を空圧回路を介して制御することにより、エアシリンダの内圧を制御し、これによってエアシリンダが有するピストンが軸方向に往復動されるようになっている。エアシリンダでは、戻り工程は、パラレルリンク機構に組み込まれた際にピストンに作用する重力を利用するようになっている。
また、第1軸部材20の中空部内の上端側には、軸方向に並べて配置された複数の電機子コイルから成る電機子ユニット(不図示)が配置されている。
一方、第2軸部材22は、その一端部(下端部)が第1軸部材20の中空部内に挿入されている。この第2軸部材22の一端部には、他の部分に比べて直径が小さい小径部が形成されており、この小径部の周囲には、磁性体部材から成る円管状の可動子ヨークが設けられている。可動子ヨークの外周部には、同一寸法の複数の永久磁石から成る中空円柱状、すなわち円筒状の磁石体が設けられている。この場合、可動子ヨークと磁石体とによって、中空円柱状の磁石ユニットが構成されている。本実施形態では、電機子ユニットと磁石ユニットとによって、電磁力リニアモータの一種であるシャフトモータが構成されている。このようにして構成されたシャフトモータでは、固定子である電機子ユニットの各コイルに対し、所定周期及び所定振幅の正弦波状の駆動電流を供給することにより、磁石ユニットと電機子ユニットとの間の電磁気的相互作用の一種である電磁相互作用によって発生するローレンツ力(駆動力)により第1軸部材20に対し第2軸部材22が軸方向に相対駆動される。
すなわち、本実施形態では、上述したエアシリンダと、シャフトモータとによって、第1軸部材20と第2軸部材22とを軸方向に相対駆動して、ロッド141~146のそれぞれを伸縮させる前述の伸縮機構161~166(図11参照)が、それぞれ構成されている。
また、シャフトモータの可動子である磁石ユニットは、第1軸部材20の内周面に設けられたエアパッドを介して固定子である電機子ユニットに対して非接触で支持されている。
また、図3では図示が省略されているが、ロッド141~146のそれぞれには、第1軸部材20を基準とする第2軸部材22の軸方向の位置を検出するアブソリュート型のリニアエンコーダ241~246が設けられており、これらのリニアエンコーダ241~246の出力は、制御装置600に供給されるようになっている(図11参照)。リニアエンコーダ241~246で検出される第2軸部材22の軸方向の位置は、ロッド141~146それぞれの長さに対応する。
リニアエンコーダ241~246の出力に基づいて、伸縮機構161~166が、制御装置600により制御されるようになっている(図11参照)。本実施形態の移動システム200と同様のパラレルリンク機構の構成の詳細は、例えば米国特許第6,940,582号明細書に開示されており、制御装置600は上記米国特許明細書に開示されているのと同様の方法により、逆運動学計算を用いて伸縮機構161~166を介してテーブル12の位置及び姿勢を制御する。
移動システム200では、ロッド141~146にそれぞれ設けられる伸縮機構161~166が、相互に直列(又は並列)に配置されたエアシリンダと電磁力リニアモータの一種であるシャフトモータとを有していていることから、制御装置600ではエアシリンダの空圧制御により、テーブル12を、粗く大きく駆動するとともに、シャフトモータにより細かく微動させることができる。この結果、テーブル12の6自由度方向の位置(すなわち位置及び姿勢)の制御を短時間で正確に行うことが可能になる。
また、ロッド141~146のそれぞれは、シャフトモータの可動子である磁石ユニットを固定子である電機子ユニットに対して非接触で支持するエアパッドを有しているので、伸縮機構によるロッドの伸縮を制御する際の非線形成分となる摩擦を回避することができ、これにより、テーブル12の位置及び姿勢の制御を一層高精度に行うことができる。
また、本実施形態では、伸縮機構161~166を構成する電磁力リニアモータとしてシャフトモータが用いられ、該シャフトモータでは可動子側に円筒状の磁石が用いられた磁石ユニットが用いられているので、その磁石の放射方向の全方向に磁束(磁界)が発生し、その全方向の磁束を、電磁相互作用によるローレンツ力(駆動力)の発生に寄与させることができ、例えば通常のリニアモータ等に比較して明らかに大きな推力を発生させることができ、油圧シリンダ等に比べて小型化が容易である。
したがって、各ロッドがシャフトモータをそれぞれ含む移動システム200によれば、小型・軽量化と出力の向上とを同時に実現でき、造形装置100に好適に適用できる。
また、制御装置600では、伸縮機構をそれぞれ構成するエアシリンダの空圧を制御することにより低周波振動を制振するとともにシャフトモータに対する電流制御により高周波振動を絶縁するようにすることができる。
移動システム200は、さらに平面モータ26(図11参照)を備えている。スライダ10の底面には、磁石ユニット(又はコイルユニット)から成る、平面モータ26の可動子が設けられ、これに対応してベースBSの内部には、コイルユニット(又は磁石ユニット)から成る、平面モータ26の固定子が収容されている。スライダ10の底面には、可動子を取り囲んで複数のエアベアリング(空気静圧軸受)が設けられ、複数のエアベアリングによってスライダ10は、平坦度が高く仕上げられたベースBSの上面(ガイド面)上に所定のクリアランス(ギャップ又は隙間)を介して浮上支持されている。平面モータ26の固定子と可動子との間の電磁相互作用によって生じる電磁力(ローレンツ力)により、スライダ10は、ベースBSの上面に対して非接触でXY平面内で駆動される。本実施形態では、移動システム200は、図1に示されるように、計測システム400及びビーム造形システム500、並びにワーク搬送系300(図1では不図示、図11参照)の配置位置相互間で、テーブル12を自在に移動可能である。なお、移動システム200が、それぞれにワークWを搭載する複数のテーブル12を備えていても良い。例えば複数のテーブルの一つに保持されたワークに対してビーム造形システム500を用いた加工を行っている間に、別の一つのテーブルに保持されたワークに対して計測システム400を用いた計測を行っても良い。かかる場合においても、計測システム400及びビーム造形システム500、並びにワーク搬送系300(図1では不図示、図11参照)の配置位置相互間で、それぞれのテーブルが自在に移動可能にすれば良い。あるいは、もっぱら計測システム400を用いた計測のときにワークを保持するテーブルと、もっぱらビーム造形システム500を用いた加工のときにワークを保持するテーブルを設けるとともに、その2つのテーブルに対するワークの搬入及び搬出がワーク搬送系等によって可能となる構成を採用した場合には、それぞれのスライダ10は、ベースBS上に固定されていても良い。複数のテーブル12を設ける場合であっても、それぞれのテーブル12は、6自由度方向に可動であり、その6自由度方向の位置の制御が可能である。
なお、平面モータ26としては、エア浮上方式に限らず、磁気浮上方式の平面モータを用いても良い。後者の場合、スライダ10には、エアベアリングを設ける必要はない。また、平面モータ26としては、ムービングマグネット型、ムービングコイル型のいずれをも用いることができる。
制御装置600では、平面モータ26を構成するコイルユニットの各コイルに供給する電流の大きさ及び方向の少なくとも一方を制御することで、スライダ10を、ベースBS上でX、Y2次元方向に自在に駆動することができる。
本実施形態では、移動システム200は、スライダ10のX軸方向及びY軸方向に関する位置情報を計測する位置計測系28(図11参照)を備えている。位置計測系28としては、2次元アブソリュートエンコーダを用いることができる。具体的には、ベースBSの上面に、X軸方向の全長に渡る所定幅の帯状のアブソリュートコードを有する2次元スケールを設け、これに対応してスライダ10の底面に、発光素子などの光源と、該光源から射出された光束により照明された2次元スケールからの反射光をそれぞれ受光するX軸方向に配列された一次元受光素子アレイ及びY軸方向に配列された一次元受光素子アレイとによって構成されるXヘッド及びYヘッドを設ける。2次元スケールとしては、例えば非反射性の基材(反射率0%)上において、互いに直交する2方向(X軸方向及びY軸方向)に沿って一定の周期で複数の正方形の反射部(マーク)が2次元配列され、反射部の反射特性(反射率)が、所定の規則に従う階調を有するものが使用される。2次元アブソリュートエンコーダとしては、例えば米国特許出願公開第2014/0070073号公報に開示されている2次元アブソリュートエンコーダと同様の構成を採用しても良い。米国特許出願公開第2014/0070073号公報と同様の構成のアブソリュート型2次元エンコーダによると、従来のインクリメンタルエンコーダと同等の高精度な2次元位置情報の計測が可能になる。アブソリュートエンコーダであるから、インクリメンタルエンコーダと異なり原点検出が不要である。位置計測系28の計測情報は、制御装置600に送られる。
本実施形態では、後述するように、計測システム400により、テーブル12上に搭載されたワークW上の対象面(例えば上面)の少なくとも一部の三次元空間内の位置情報(本実施形態では形状情報)が計測され、その計測後にワークWに対する付加加工(造形)が行われる。したがって、制御装置600は、ワークW上の対象面の少なくとも一部の形状情報を計測したときに、その計測結果と、その計測時におけるロッド141~146に設けられたリニアエンコーダ241~246の計測結果及び位置計測系28の計測結果と、を対応づけることで、テーブル12に搭載されたワークW上の対象面の位置及び姿勢を、造形装置100の基準座標系(以下、テーブル座標系と呼ぶ)と関連付けることができる。これにより、それ以後は、リニアエンコーダ241~246及び位置計測系28の計測結果に基づくテーブル12の6自由度方向の位置のオープンループの制御により、ワークW上の対象面TASの目標値に対する6自由度方向に関する位置制御が可能になっている。本実施形態では、リニアエンコーダ241~246及び位置計測系28として、アブソリュート型のエンコーダが用いられているので原点出しが不要なためリセットが容易である。なお、テーブル12の6自由度方向の位置のオープンループの制御によるワークW上の対象面の目標値に対する6自由度方向に関する位置制御を可能にするために用いられる、計測システム400で計測すべき前述の三次元空間内の位置情報は、形状に限らず、対象面の形状に応じた少なくとも3点の三次元位置情報であれば足りる。
なお、上記実施形態では、スライダ10をXY平面内で駆動する駆動装置として、平面モータ26を用いる場合について説明したが、平面モータ26に代えてリニアモータを用いても良い。この場合、前述した2次元アブソリュートエンコーダに代えて、アブソリュート型のリニアエンコーダによりスライダ10の位置情報を計測する位置計測系を構成しても良い。また、スライダ10の位置情報を計測する位置計測系を、エンコーダに限らず、干渉計システムを用いて構成しても良い。
また、上記実施形態では、テーブルを駆動する機構を、スライダをXY平面内で駆動する平面モータと、スライダによってベースプラットホームが構成されるスチュワートプラットホーム型の6自由度パラレルリンク機構とを用いて構成する場合について例示したが、これに限らず、その他のタイプのパラレルリンク機構、あるいはパラレルリンク機構以外の機構を用いてテーブルを駆動する機構を構成しても良い。例えば、XY平面内で移動するスライダと、スライダ上でテーブル12をZ軸方向及びXY平面に対する傾斜方向に駆動するZチルト駆動機構を採用しても良い。かかるZチルト駆動機構の一例としては、テーブル12を三角形の各頂点位置で例えばユニバーサルジョイントその他のジョイントを介して下方から支持するとともに、各支持点を互いに独立してZ軸方向に駆動可能な3つのアクチュエータ(ボイスコイルモータなど)を有する機構が挙げられる。ただし、移動システム200のテーブルを駆動する機構の構成は、これらに限定されるものではなく、ワークが載置されるテーブル(可動部材)をXY平面内の3自由度方向、及びZ軸方向、並びにXY平面に対する傾斜方向の少なくとも5自由度方向に駆動できる構成であれば良く、XY平面内で移動するスライダを備えていなくても良い。例えばテーブルとこのテーブルを駆動するロボットによって移動システムを構成しても良い。いずれの構成であっても、テーブルの位置を計測する計測系を、アブソリュート型のリニアエンコーダの組み合わせ、又は該リニアエンコーダとアブソリュート型のロータリエンコーダとの組み合わせを用いて構成すると、リセットを容易にすることができる。
この他、移動システム200に代えて、テーブル12をXY平面内の3自由度方向、及びZ軸方向、並びにXY平面に対する傾斜方向(θx又はθy)の少なくとも5自由度方向に駆動可能なシステムを採用しても良い。この場合において、テーブル12そのものを、エア浮上又は磁気浮上によって、ベースBSなどの支持部材の上面上に所定のクリアランス(ギャップ又は隙間)を介して浮上支持(非接触支持)しても良い。このような構成を採用すると、テーブルは、これを支持する部材に対して非接触で移動するので、位置決め精度上極めて有利であり、造形精度向上に大きく寄与する。
計測システム400は、テーブル12に搭載されたワークの位置及び姿勢をテーブル座標系と関連付けるためのワークの三次元位置情報、一例として形状の計測を行う。計測システム400は、図2に示されるように、レーザ非接触式の三次元計測機401を備えている。三次元計測機401は、ベースBS上に設置されたフレーム30と、フレーム30に取付けられたヘッド部32と、ヘッド部32に装着されたZ軸ガイド34と、Z軸ガイド34の下端に設けられた回転機構36と、回転機構36の下端に接続されたセンサ部38と、を備えている。
フレーム30は、Y軸方向に延びる水平部材40と、水平部材40をY軸方向の両端部で下方から支持する一対の柱部材42とから成る。
ヘッド部32は、フレーム30の水平部材40に取付けられている。
Z軸ガイド34は、ヘッド部32にZ軸方向に移動可能に装着され、Z駆動機構44(図2では図示せず、図11参照)によってZ軸方向に駆動される。Z軸ガイド34のZ軸方向の位置(又は基準位置からの変位)は、Zエンコーダ46(図2では図示せず、図11参照)によって計測される。
回転機構36は、センサ部38をヘッド部32(Z軸ガイド34)に対して所定角度範囲(例えば90度(π/2)又は180度(π)の範囲)内でZ軸と平行な回転中心軸回りに連続的に(又は所定角度ステップで)回転駆動する。本実施形態では、回転機構36によるセンサ部38の回転中心軸は、センサ部38を構成する後述する照射部から照射されるライン光の中心軸と一致している。回転機構36によるセンサ部38の基準位置からの回転角度(又はセンサ部のθz方向の位置)は、例えばロータリエンコーダなどの回転角度センサ48(図2では図示せず、図11参照)によって計測される。
センサ部38は、テーブル12上に載置される被検物(図2ではワークW)に光切断を行うためのライン光を照射する照射部50と、ライン光が照射されることで光切断面(線)が現れた被検物の表面を検出する検出部52と、を主体に構成される。また、センサ部38には、検出部52により検出された画像データに基づいて被検物の形状を求める演算処理部54が接続されている。演算処理部54は、本実施形態では造形装置100の構成各部を統括的に制御するための制御装置600に含まれる(図11参照)。
照射部50は、図示しないシリンドリカルレンズ及び細い帯状の切り欠きを有したスリット板等から構成され、光源からの照明光を受けて扇状のライン光50aを生じさせるものである。光源としては、LED、レーザ光源あるいはSLD(super luminescent diode)等を用いることができる。LEDを用いた場合は安価に光源を形成することができる。また、レーザ光源を用いた場合、点光源であるため収差の少ないライン光を作ることができ、波長安定性に優れ半値幅が小さく、迷光カットに半値幅の小さいフィルタが使えるため、外乱の影響を少なくすることができる。また、SLDを用いた場合は、レーザ光源の特性に加え可干渉性がレーザ光よりも低いため被検物面でのスペックルの発生を抑えることができる。検出部52は、被検物(ワークW)の表面に投影されるライン光50aを照射部50の光照射方向とは異なる方向から撮像するためのものである。また、検出部52は、図示しない結像レンズやCCD等から構成され、後述するようにテーブル12を移動させてライン光50aが所定間隔走査される毎に被検物(ワークW)を撮像するようになっている。なお、照射部50及び検出部52の位置は、被検物(ワークW)の表面上のライン光50aの検出部52に対する入射方向と、照射部50の光照射方向とが、所定角度θを成すように定められている。本実施形態では、上記所定角度θが例えば45度に設定されている。
検出部52で撮像された被検物(ワークW)の画像データは、演算処理部54に送られ、ここで所定の画像演算処理がなされて被検物(ワークW)の表面の高さが算出され、被検物(ワークW)の三次元形状(表面形状)が求められるようになっている。演算処理部54は、被検物(ワークW)の画像において、被検物(ワークW)の凹凸に応じて変形したライン光50aによる光切断面(線)の位置情報に基づき、光切断面(線)(ライン光91a)が延びる長手方向の画素毎に三角測量の原理を用いて被検物(ワークW)表面の基準平面からの高さを算出し、被検物(ワークW)の三次元形状を求める演算処理を行う。
本実施形態では、制御装置600が、被検物(ワークW)に投影されたライン光50aの長手方向と略直角な方向にテーブル12を移動させることで、ライン光50aを被検物(ワークW)の表面を走査させる。制御装置600は、センサ部38の回転角度を回転角度センサ48で検出し、該検出結果に基づいてテーブル12をライン光50aの長手方向と略直角な方向に移動させる。このように、本実施形態では、被検物(ワークW)の形状等の計測に際し、テーブル12を移動させるので、その前提として、ワークWを保持して計測システム400のセンサ部38の下方に移動してきた時点では、テーブル12の位置及び姿勢(6自由度方向の位置)は、常に所定の基準状態に設定されている。基準状態は、例えばロッド141~146がいずれも伸縮ストローク範囲の中立点に相当する長さ(あるいは最小の長さ)となる状態であり、このとき、テーブル12のZ軸、θx、θy及びθzの各方向の位置(Z、θx、θy、θz)=(Z0、0、0、0)となる。また、この基準状態では、テーブル12のXY平面内の位置(X,Y)は、位置計測系28によって計測されるスライダ10のX、Y位置と一致する。
その後、被検物(ワークW)に対する上述した計測が開始されるが、この計測中を含み、テーブル12の6自由度方向の位置は、制御装置600によってテーブル座標系上で管理される。すなわち、制御装置600は、位置計測系28の計測情報に基づいて平面モータ26を制御するとともに、リニアエンコーダ241~246の計測値に基づいて、伸縮機構161~166を制御することで、テーブル12の6自由度方向の位置を制御する。
ところで、本実施形態に係る三次元計測機401のように光切断法を用いる場合、センサ部38の照射部50から被検物(ワークW)に照射されるライン光50aを、センサ部38とテーブル12(被検物(ワークW))との相対移動方向と直交する方向に配置させるのが望ましい。例えば、図2において、センサ部38と被検物(ワークW)との相対移動方向をY軸方向に設定した場合、ライン光50aをX軸方向に沿って配置するのが望ましい。このようにすると、計測時にライン光50aの全域を有効に利用した被検物(ワークW)に対する相対移動を行うことができ、被検物(ワークW)の形状を最適に計測できるためである。ライン光50aの向きと上述の相対移動方向とを常に直交させることができるように、回転機構36が設けられている。
上述した三次元計測機401は、例えば米国特許出願公開第2012/0105867号公報に開示されている形状測定装置と同様に構成されている。ただし、ライン光の被検物に対するX、Y平面に平行な方向の走査は、米国特許出願公開第2012/0105867号公報に記載されている装置では、センサ部の移動によって行われるのに対し、本実施形態では、テーブル12の移動によって行われる点が相違する。なお、本実施形態では、ライン光の被検物に対するZ軸に平行な方向の走査に際しては、Z軸ガイド34及びテーブル12のいずれを駆動しても良い。
本実施形態に係る三次元計測機401を用いる計測方法では、光切断法を用いることで、被検物の表面に一本のライン光からなるライン状投影パターンを投影し、ライン状投影パターンを被検物表面の全域を走査させる毎に、被検物に投影されたライン状投影パターンを投影方向と異なる角度から撮像する。そして、撮像された被検物表面の撮像画像よりライン状投影パターンの長手方向の画素毎に三角測量の原理等を用いて被検物表面の基準平面からの高さを算出し、被検物表面の三次元形状を求める。
この他、計測システム400を構成する三次元計測機としては、例えば米国特許第7,009,717号明細書に開示されている光プローブと同様の構成の装置を用いることもできる。この光プローブは、2つ以上の光学グループで構成され、2以上の視野方向と2以上の投影方向を含む。1つの光学グループでは1つ以上の視野方向と1つ以上の投影方向を含み、少なくとも1つの視野方向と少なくとも1つの投影方向が光学グループ間で異なり、視野方向により得られたデータは同じ光学グループの投影方向により投影されたパターンのみにより生成される。
計測システム400は、上述の三次元計測機401の代わりに、あるいは上述の三次元計測機に加えて、アライメントマークを光学的に検出するマーク検出系56(図11参照)を備えていても良い。マーク検出系56は、例えばワークに形成されたアライメントマークを検出することができる。制御装置600は、マーク検出系56を用いて少なくとも3つのアライメントマークの中心位置(三次元座標)をそれぞれ正確に検出することで、ワーク(又はテーブル12)の位置及び姿勢を算出する。かかるマーク検出系56は、例えばステレオカメラを含んで構成することができる。マーク検出系56により、テーブル12上に予め形成された最低三か所のアライメントマークを光学的に検出することとしても良い。
本実施形態では、制御装置600は、上述したようにして三次元計測機401を用いて、ワークWの表面(対象面)を走査し、その表面形状データを取得する。そして、制御装置600は、その表面形状データを用いて最小自乗的処理を行いワーク上の対象面の三次元的位置及び姿勢をテーブル座標系に対して関連付けを行う。ここで、被検物(ワークW)に対する上述した計測中を含み、テーブル12の6自由度方向の位置は、制御装置600によってテーブル座標系上で管理されているので、ワークの三次元的位置及び姿勢がテーブル座標系に対して関連付けられた後は、三次元造形による付加加工時を含み、ワークWの6自由度方向の位置(すなわち位置及び姿勢)の制御は全てテーブル座標系に従ったテーブル12のオープンループの制御により行うことができる。
図4には、ビーム造形システム500が、ワークWが搭載されたテーブル12とともに示されている。図4に示されるように、ビーム造形システム500は、光源系510を含み、ビームを射出するビーム照射部520と、粉状の造形材料を供給する材料処理部530と、ウォーターシャワーノズル540(図4では図示せず、図11参照)と、を備えている。なお、ビーム造形システム500が、ウォーターシャワーノズル540を備えていなくても良い。
光源系510は、図5に示されるように、光源ユニット60と、光源ユニット60に接続されたライトガイドファイバ62と、ライトガイドファイバ62の射出側に配置されたダブルフライアイ光学系64と、コンデンサレンズ系66と、を備えている。
光源ユニット60は、ハウジング68と、ハウジング68の内部に収納され、互いに平行にマトリクス状に並べられた複数のレーザユニット70と、を備えている。レーザユニット70としては、パルス発振又は連続波発振動作を行う各種レーザ、例えば炭酸ガスレーザ、Nd:YAGレーザ、ファイバレーザ、あるいはGaN系半導体レーザなどの光源のユニットを用いることができる。
ライトガイドファイバ62は、多数の光ファイバ素線をランダムに束ねて構成されたファイババンドルであって、複数のレーザユニット70の射出端に個別に接続された複数の入射口62aと、入射口62aの数より多い数の射出口を有する射出部62bとを有している。ライトガイドファイバ62は、複数のレーザユニット70のそれぞれから射出される複数のレーザビーム(以下、適宜「ビーム」と略記する)を、各入射口62aを介して受光して多数の射出口に分配し、各レーザビームの少なくとも一部を共通の射出口から射出させる。このようにして、ライトガイドファイバ62は、複数のレーザユニット70のそれぞれから射出されるビームを混合して射出する。これにより、単一のレーザユニットを用いる場合に比べて、総出力をレーザユニット70の数に応じて増加させることができる。ただし、単一のレーザユニットで十分な出力が得られる場合には、複数のレーザユニットを使わなくても良い。
ここで、射出部62bは、次に説明するダブルフライアイ光学系64の入射端を構成する第1フライアイレンズ系の入射端の全体形状と相似な断面形状を有し、その断面内に射出口がほぼ均等な配置で設けられている。このため、ライトガイドファイバ62は、上述のようにして混合したビームを、第1フライアイレンズ系の入射端の全体形状と相似になるように整形する整形光学系の役目も兼ねている。
ダブルフライアイ光学系64は、ビーム(照明光)の断面照度分布(断面強度分布)を一様化するためのもので、ライトガイドファイバ62後方のレーザビームのビーム路(光路)上に順次配置された第1フライアイレンズ系72、レンズ系74、及び第2フライアイレンズ系76とから構成される。なお、第2フライアイレンズ系76の周囲には、絞りが設けられている。
この場合、第1フライアイレンズ系72の入射面と、第2フライアイレンズ系76の入射面とは、光学的に互いに共役に設定されている。また、第1フライアイレンズ系72の射出側焦点面(ここに後述する面光源が形成される)、第2フライアイレンズ系76の射出側焦点面(ここに後述する面光源が形成される)、及び後述する集光光学系82の瞳面(入射瞳)PPは光学的に互いに共役に設定されている。なお、本実施形態において、集光光学系82の瞳面(入射瞳)PPは、前側焦点面と一致している(例えば図4、図6、図7等参照)。
ライトガイドファイバ62によって混合されたビームは、ダブルフライアイ光学系64の第1フライアイレンズ系72に入射する。これにより、第1フライアイレンズ系72の射出側焦点面に面光源、すなわち多数の光源像(点光源)から成る2次光源が形成される。これらの多数の点光源の各々からのレーザ光は、レンズ系74を介して第2フライアイレンズ系76に入射する。これにより、第2フライアイレンズ系76の射出側焦点面に多数の微小な光源像を所定形状の領域内に一様分布させた面光源(3次光源)が形成される。
コンデンサレンズ系66は、上記3次光源から射出されたレーザ光を、照度分布が均一なビームとして射出する。
なお、第2フライアイレンズ系76の入射端の面積、コンデンサレンズ系66の焦点距離などの最適化により、コンデンサレンズ系66から射出されるビームは、平行ビームとみなすことができる。
本実施形態の光源系510は、ライトガイドファイバ62とダブルフライアイ光学系64とコンデンサレンズ系66とを備えた照度均一化光学系を備え、この照度均一化光学系を用いて、複数のレーザユニット70からそれぞれ射出されるビームを混合し、断面照度分布が均一化された、平行ビームを生成する。
なお、照度均一化光学系は、上述した構成に限られない。例えば、ロッドインテグレータ、コリメーターレンズ系などを用いて照度均一化光学系を構成しても良い。
光源系510の光源ユニット60は、制御装置600に接続されており、制御装置600によって、光源ユニット60を構成する複数のレーザユニット70のオンオフが、個別に制御される。これにより、ビーム照射部520からワークW(上の対象面)に照射されるレーザビームの光量(レーザ出力)が調整される。
なお、造形装置100が、光源ユニット60、あるいは光源ユニット60と照度均一化光学系を備えていなくても良い。例えば、所望の光量(エネルギー)と所望の照度均一性を有する平行ビームを、外部装置から造形装置100に供給しても良い。
ビーム照射部520は、図4に示されるように、光源系510の他、光源系510(コンデンサレンズ系66)からの平行ビームの光路上に順次配置されたビーム断面強度変換光学系78及び空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)の一種であるミラーアレイ80と、ミラーアレイ80からの光を集光する集光光学系82とを有する。ここで、空間光変調器とは、所定方向へ進行する光の振幅(強度)、位相あるいは偏光の状態を空間的に変調する素子の総称である。
ビーム断面強度変換光学系78は、光源系510(コンデンサレンズ系66)からの平行ビームの断面の強度分布を変換する。本実施形態では、ビーム断面強度変換光学系78は、光源系510からの平行ビームを、その断面の中心を含む領域の強度がほぼ零となるドーナツ状(輪帯状)の平行ビームに変換する。ビーム断面強度変換光学系78は、本実施形態では、例えば光源系510からの平行ビームの光路上に順次配置された凸型円錐反射鏡及び凹型円錐反射鏡によって構成されている。凸型円錐反射鏡は、その光源系510側に外周面が円錐状の反射面を有し、凹型円錐反射鏡は、その内径が凸型円錐反射鏡の外径より大きな環状部材から成り、その内周面に凸型円錐反射鏡の反射面に対向する反射面を有する。この場合、凹型円錐反射鏡の中心を通る任意の断面で見ると、凸型円錐反射鏡の反射面と凹型円錐反射鏡の反射面とは、平行である。したがって、光源系510からの平行ビームは、凸型円錐反射鏡の反射面により放射状に反射され、この反射ビームが凹型円錐反射鏡の反射面で反射されることで、輪帯状の平行ビームに変換される。
本実施形態では、ビーム断面強度変換光学系78を経由した平行ビームは、後述するようにミラーアレイ80及び集光光学系82を介してワークに照射される。ビーム断面強度変換光学系78を用いて光源系510からの平行ビームの断面強度分布を変換することによって、ミラーアレイ80から集光光学系82の瞳面(入射瞳)PPに入射するビームの強度分布を変更することが可能である。また、ビーム断面強度変換光学系78を用いて光源系510からの平行ビームの断面強度分布を変換することによって、実質的に集光光学系82から射出されるビームの集光光学系82の射出面における強度分布を変更することも可能である。
なお、ビーム断面強度変換光学系78は、凸型円錐反射鏡と凹型円錐反射鏡との組み合わせに限らず、例えば米国特許出願公開第2008/0030852号公報に開示される、回折光学素子、アフォーカルレンズ、及び円錐アキシコン系の組み合わせを用いて構成しても良い。ビーム断面強度変換光学系78は、ビームの断面強度分布を変換するものであれば良く、種々の構成が考えられる。ビーム断面強度変換光学系78の構成によっては、光源系510からの平行ビームを、その断面の中心(集光光学系82の光軸)を含む領域での強度をほぼ零でなく、その外側の領域での強度よりも小さくすることも可能である。
ミラーアレイ80は、本実施形態では、XY平面及びXZ平面に対して45度(π/4)を成す面(以下、便宜上基準面と呼ぶ)を一面に有するベース部材80Aと、ベース部材80Aの基準面上に例えばP行Q列のマトリクス状に配置された例えばM(=P×Q)個のミラー素子81p,q(p=1~P、q=1~Q)と、各ミラー素子81p,qを個別に駆動するM個のアクチュエータ(不図示)を含む駆動部87(図4では図示せず、図11参照)とを有している。ミラーアレイ80は、多数のミラー素子81p,qの基準面に対する傾きを調整することにより、基準面と平行な大きな反射面を実質的に形成可能である。
ミラーアレイ80の各ミラー素子81p,qは、例えば各ミラー素子81p,qの一方の対角線に平行な回転軸回りに回動可能に構成され、その反射面の基準面に対する傾斜角度を所定角度範囲内の任意の角度に設定可能である。各ミラー素子の反射面の角度は、回転軸の回転角度を検出するセンサ、例えばロータリエンコーダ83p,q(図4では不図示、図11参照)によって計測される。
駆動部87は、例えばアクチュエータとして電磁石あるいはボイスコイルモータを含み、個々のミラー素子81p,qは、アクチュエータによって駆動されて非常に高応答で動作する。
ミラーアレイ80を構成する複数のミラー素子のうち、光源系510からの輪帯状の平行ビームによって照明されたミラー素子81p,qのそれぞれは、その反射面の傾斜角度に応じた方向に反射ビーム(平行ビーム)を射出し、集光光学系82に入射させる(図6参照)。なお、本実施形態において、ミラーアレイ80を用いている理由及び輪帯状の平行ビームをミラーアレイ80に入射させる理由については、後述するが、必ずしも輪帯状にする必要はなく、ミラーアレイ80に入射する平行ビームの断面形状(断面強度分布)を輪帯形状とは異ならせても良いし、ビーム断面強度変換光学系78を設けなくても良い。
集光光学系82は、開口数N.A.が例えば0.5以上、好ましくは0.6以上の高NAで、低収差の光学系である。集光光学系82は、大口径、低収差かつ高NAであるため、ミラーアレイ80からの複数の平行ビームを後側焦点面上に集光することができる。詳細は後述するが、ビーム照射部520は、集光光学系82から射出されるビームを、例えば、スポット状又はスリット状に集光することができる。また、集光光学系82は、1又は複数枚の大口径のレンズによって構成される(図4等では、1枚の大口径のレンズを代表的に図示)ので、入射光の面積を大きくすることができ、これにより、開口数N.A.が小さい集光光学系を用いる場合に比べてより多量の光エネルギを取り込むことができる。したがって、本実施形態に係る集光光学系82によって集光されたビームは、極めてシャープで高エネルギ密度を有することとなり、このことは造形による付加加工の加工精度を高めることに直結する。
本実施形態では、後述するように、テーブル12をXY平面に平行な走査方向(図4では、一例としてY軸方向)に移動することにより、ビームと造形の対象面TASを上端に有するワークWとを走査方向(スキャン方向)に相対走査しながら造形(加工処理)を行う場合を説明する。なお、造形の際に、テーブル12のY軸方向への移動中に、X軸方向、Z軸方向、θx方向、θy方向、及びθz方向の少なくとも1つの方向にテーブル12を移動しても良いことは言うまでもない。また、後述するように、材料処理部530によって供給された粉状の造形材料(金属材料)をレーザビームのエネルギにより溶融するようになっている。したがって、前述したように、集光光学系82が取り込むエネルギの総量が大きくなれば、集光光学系82から射出されるビームのエネルギが大きくなり、単位時間に溶解できる金属の量が増える。その分、造形材料の供給量とテーブル12の速度とを上げれば、ビーム造形システム500による造形加工のスループットが向上する。
しかるに、レーザの総出力を前述したような手法で大いに高められたとしても、現実的にはテーブル12のスキャン動作を無限に高速にすることはできないため、そのレーザパワーを完全に生かすだけのスループットを実現することはできない。これを解決するため、本実施形態の造形装置100では、後述するように、スポット状のビームの照射領域ではなく、スリット状のビームの照射領域(以下、一文字領域と呼ぶ(図9(B)の符号LS参照))を、造形の対象面TASを位置合わせすべき所定面(以下、造形面と呼ぶ)MP(例えば図4及び図9(A)参照)上に形成し、その一文字領域LSを形成するビーム(以下、一文字ビームと呼ぶ)に対してその長手方向に垂直な方向にワークWを相対走査しながら造形(加工処理)を行うことができる。これにより、スポット状のビームでワークを走査(スキャン)する場合に比べて格段広い面積(例えば数倍から数十倍程度の面積)を一気に処理することができる。なお、後述するように、本実施形態において、上述の造形面MPは、集光光学系82の後側焦点面である(例えば図4及び図9(A)参照)が、造形面は、後側焦点面の近傍の面でも良い。また、本実施形態において、造形面MPは、集光光学系82の射出側の光軸AXに垂直であるが、垂直でなくても良い。
造形面MP上におけるビームの強度分布を設定する、あるいは変更する方法(例えば、上述したような一文字領域を形成する方法)としては、例えば集光光学系82に入射する複数の平行ビームの入射角度分布を制御する手法を採用することができる。本実施形態の集光光学系82のように平行光を一点に集光するレンズ系は、瞳面(入射瞳)PPにおける平行ビームLB(例えば図4、図6等参照)の入射角度で後側焦点面(集光面)での集光位置が決まる。ここで入射角度は、a.集光光学系82の瞳面PPに入射する平行ビームが集光光学系82の光軸AXと平行な軸に対して成す角度α(0≦α<90度(π/2))と、b.瞳面PP上に光軸AX上の点を原点とし、光軸AXに直交する二次元直交座標系(X,Y)を設定した場合に瞳面PPに入射する平行ビームの瞳面PP(XY座標平面)への正射影の、二次元直交座標系(X,Y)上における基準軸(例えばX軸(X≧0)に対する角度β(0≦β<360度(2π))とから決まる。例えば、集光光学系82の瞳面PPに対して垂直に(光軸に平行に)入射したビームは光軸AX上に、集光光学系82に対して(光軸AXに対して)少し傾斜したビームは、その光軸AX上から少しずれた位置に集光する。この関係を利用し、光源系510からの平行ビームを反射して集光光学系82に入射させる際に、集光光学系82の瞳面PPに入射する複数の平行ビームLBの入射角度(入射方向)に、適切な分布をつけることで、造形面MP内におけるビームの強度分布、例えば造形面MPにおける照射領域の位置、数、大きさ、及び形状の少なくとも一つを任意に変更することができる。したがって、例えば一文字領域、三列領域、欠損一文字領域など(図10参照)も当然容易に形成できるし、スポット状の照射領域を形成することも容易である。なお、ここでは、入射角度(入射方向)を角度αと角度βを用いて説明したが、入射角度(入射方向)の表し方は種々考えられ、瞳面PPに入射する平行ビームの入射角度(入射方向)を、角度αと角度βをパラメータとする制御に限定されないことは言うまでもない。
なお、本実施形態の集光光学系82は、その瞳面(入射瞳)PPと前側焦点面とが一致する構成となっているため、ミラーアレイ80を用いた複数の平行ビームLBの入射角度の変更により、その複数の平行ビームLBの集光位置を正確に、簡便に制御することができるが、集光光学系82の瞳面(入射瞳)と前側焦点面とが一致する構成でなくても良い。
また、造形面に形成される照射領域の形状、及び大きさを可変にしないのであれば、所望の形状のソリッドなミラーを用いて、集光光学系82の瞳面に入射する1つの平行ビームの入射角度を制御して、照射領域の位置を変更することもできる。
しかるに、ワークに対する付加加工(造形)を行う場合、その造形の目標部位が設定される対象面の領域が常に平坦な面であるとは限らない。すなわち一文字ビームの相対走査が可能であるとは限らない。ワークの輪郭エッジ近傍、あるいは中実領域と中空領域との境界付近の場所では、境界は斜めになっていたり、狭くなっていたり、Rがついていたりして、一文字ビームの相対走査の適用は困難である。例えて言えば、幅の広い刷毛では、このような場所を塗りつぶすのは困難であるため、それに応じた幅の狭い刷毛や、細い鉛筆が必要となるので、いわば、リアルタイムかつ連続的に、自在に刷毛と細い鉛筆を使い分けられるようにしたい。これと同様、ワークの輪郭エッジ近傍、あるいは中実領域と中空領域との境界付近の場所では、ビームの照射領域のスキャン方向(相対移動方向)の幅を変更したり、照射領域の大きさ(例えば一文字ビームの長さ)、個数又は位置(ビームの照射点の位置)を変化させたりしたいという要求が発生する。
そこで、本実施形態では、ミラーアレイ80を採用し、制御装置600が、各ミラー素子81p,qを非常に高応答で動作させることで、集光光学系82の瞳面PPに入射する複数の平行ビームLBの入射角度をそれぞれ制御する。これにより、造形面MP上におけるビームの強度分布を設定又は変更する。この場合、制御装置600は、ビームと対象面TAS(造形の目標部位TAが設定される面であり、本実施形態ではワークW上の面である)との相対移動中に造形面MP上におけるビームの強度分布、例えばビームの照射領域の形状、大きさ、個数の少なくとも1つを変化させることが可能になる。この場合において、制御装置600は、造形面MP上におけるビームの強度分布を連続的、あるいは断続的に変更することができる。例えば、ビームと対象面TASの相対移動中に一文字領域の相対移動方向の幅を連続的、あるいは断続的に変化させることも可能である。制御装置600は、ビームと対象面TASとの相対位置に応じて造形面MP上におけるビームの強度分布を変化させることもできる。制御装置600は、要求される造形精度とスループットとに応じて、造形面MPにおけるビームの強度分布を変化させることもできる。
また、本実施形態では、制御装置600が、前述したロータリエンコーダ83p,qを用いて、各ミラー素子の状態(ここでは反射面の傾斜角度)を検出し、これにより各ミラー素子の状態を、リアルタイムでモニタしているので、ミラーアレイ80の各ミラー素子の反射面の傾斜角度を正確に制御できる。
材料処理部530は、図7に示されるように、集光光学系82の射出面の下方に設けられたノズル部材(以下、ノズルと略記する)84aを有するノズルユニット84と、ノズルユニット84に配管90aを介して接続された材料供給装置86と、材料供給装置86に配管を介してそれぞれ接続された複数、例えば2つの粉末カートリッジ88A、88Bとを有している。図7には、図4の集光光学系82より下方の部分が-Y方向から見て示されている。
ノズルユニット84は、集光光学系82の下方でX軸方向に延び、造形材料の粉末を供給する少なくも1つの供給口を有するノズル84aと、ノズル84aの長手方向の両端部を支持するとともに、それぞれの上端部が集光光学系82の筐体に接続された一対の支持部材84b、84cとを備えている。一方の支持部材84bには、配管90aを介して材料供給装置86の一端(下端)が接続されており、内部に配管90aとノズル84aとを連通する供給路が形成されている。本実施形態において、ノズル84aは、集光光学系82の光軸の直下に配置されており、下面(底面)には、後述する複数の供給口が設けられている。なお、ノズル84aは、必ずしも集光光学系82の光軸上に配置する必要はなく、光軸からY軸方向の一側に幾分ずれた位置に配置されても良い。
材料供給装置86の他端(上端)には、材料供給装置86への供給路としての配管90b、90cが接続され、配管90b、90cをそれぞれ介して材料供給装置86に粉末カートリッジ88A、88Bが接続されている。一方の粉末カートリッジ88Aには、第1の造形材料(例えばチタン)の粉末が収容されている。また、他方の粉末カートリッジ88Bには、第2の造形材料(例えばステンレス)の粉末が収容されている。
なお、本実施形態では、造形装置100は、2種類の造形材料を材料供給装置86に供給するために2つの粉末カートリッジを備えているが、造形装置100が備える粉末カートリッジは1つでも良い。
粉末カートリッジ88A、88Bから材料供給装置86への粉末の供給は、粉末カートリッジ88A、88Bのそれぞれに材料供給装置86に粉末を強制的に供給させる機能を持たせても良いが、本実施形態では、材料供給装置86に、配管90b、90cの切り換えの機能とともに、粉末カートリッジ88A、88Bのいずれか一方から真空を利用して粉末を吸引する機能をも持たせている。材料供給装置86は、制御装置600に接続されている(図11参照)。造形時に、制御装置600により、材料供給装置86を用いて配管90b、90cの切り換えが行われ、粉末カートリッジ88Aからの第1の造形材料(例えばチタン)の粉末と粉末カートリッジ88Bからの第2の造形材料(例えばステンレス)の粉末とが択一的に材料供給装置86に供給され、材料供給装置86から配管90aを介して、いずれか一方の造形材料の粉末がノズル84aに供給される。なお、材料供給装置86の構成を変更することで、必要な場合に粉末カートリッジ88Aからの第1の造形材料と粉末カートリッジ88Bからの第2の造形材料とを同時に材料供給装置86に供給して、2つの造形材料の混合物を、配管90aを介してノズル84aに供給できる構成としても良い。なお、粉末カートリッジ88Aに接続可能なノズルと粉末カートリッジ88Bに接続可能な別のノズルを、集光光学系82の下方に設け、造形時に、いずれか一方のノズルから粉末を供給、又は両方のノズルから粉末を供給しても良い。
また、制御装置600は、粉末カートリッジ88A、88Bから材料供給装置86を介してノズル84aに供給される造形材料の単位時間あたりの供給量を調整可能である。例えば、粉末カートリッジ88A、88Bの少なくとも一方から材料供給装置86へ供給される粉末の量を調整することにより、材料供給装置86を介してノズル84aに供給される造形材料の単位時間あたりの供給量を調整可能である。例えば、粉末カートリッジ88A、88Bからの材料供給装置86への粉末の供給に利用されている真空のレベルを調整することで、ノズル84aに供給される造形材料の単位時間あたりの供給量を調整可能である。あるいは、材料供給装置86から配管90aに供給される粉末の量を調整するバルブを設けて、ノズル84aに供給される造形材料の単位時間あたりの供給量を調整することも可能である。
ここで、図7では不図示ではあるが、実際には、ノズル84aの下面(底面)には、図8に示されるように、複数、例えばN個の供給口91i(i=1~N)が、X軸方向に等間隔で形成され、各供給口91iが開閉部材93iによって個別に開閉できるようになっている。なお、図8では、図示の便宜上から、供給口91iは、一例として12個図示され、かつ供給口と開閉部材との関係がわかるように両者が図示されている。しかし、実際には、12個より多くの数の供給口が形成されており、かつ隣接する供給口間の仕切りの部分は、より狭くなっている。ただし、供給口がノズル84aの長手方向のほぼ全長に渡って配置されているのであれば、供給口の数はいくつでも良い。例えば、供給口は、ノズル84aの長手方向のほぼ全長に渡る1つのスリット状の開口であっても良い。
開閉部材93iは、図8中にk番目の開閉部材93kについて矢印を付して代表的に示されるように、+Y方向及び-Y方向にスライド駆動可能であり、供給口91iを、開閉する。開閉部材93iは、スライド駆動に限らず、一端部を中心としてチルト方向に回動可能に構成されていても良い。
各開閉部材93iは、制御装置600によって不図示のアクチュエータを介して駆動制御される。制御装置600は、造形面上におけるビームの強度分布、例えば造形面上に形成されるビームの照射領域の形状、大きさ、配置等の設定(又は変更)に応じて複数、例えばN個の供給口91iのそれぞれを、各開閉部材93iを用いて開閉制御する。これにより、材料処理部530による造形材料の供給動作が制御される。この場合、制御装置600により、複数の供給口91iのうちの少なくとも1つの供給口が選択され、その選択された少なくとも1つの供給口を閉鎖している開閉部材93iのみが開放制御、例えば-Y方向に駆動される。したがって、本実施形態では、複数、例えばN個の供給口91iのうちの一部のみから造形材料を供給可能である。
また、制御装置600は、前述した材料供給装置86を介してノズル84aに供給される造形材料の単位時間あたりの供給量制御と、任意の開閉部材93iを用いた開閉制御との少なくとも一方により、その開閉部材93iで開閉される供給口91iからの造形材料の単位時間あたりの供給量を調整することも可能である。制御装置600は、造形面上におけるビームの強度分布、例えば造形面上に形成されるビームの照射領域の形状、大きさ、配置等の設定(又は変更)に応じて任意の供給口91iからの造形材料の単位時間あたりの供給量を決定する。制御装置600は、例えば前述の一文字領域のスキャン方向の幅に基づいて、それぞれの供給口91iからの単位時間あたりの供給量を決定する。
なお、各開閉部材93iにより、各供給口91iの開度を調整可能に構成しても良い。この場合には、制御装置600は、例えば前述の一文字領域のスキャン方向の幅に応じて各開閉部材93iによる各供給口の開度を調整することとしても良い。
この他、造形材料の粉末を供給する少なくとも1つの供給口が可動であっても良い。例えばノズル84aの下面にX軸方向に延びるスリット状の供給口を1つ形成し、ノズル84aを、一対の支持部材84b、84cに対して、例えば、X軸方向とY軸方向の少なくとも一方に移動可能な構成とし、制御装置600が、造形面上におけるビームの強度分布の変更、すなわちビームの照射領域の形状、大きさ、位置の変更に応じて、下面に供給口が形成されたノズル84aを移動しても良い。なお、ノズル84aをZ軸方向に可動にしても良い。
あるいは、ノズル84aを、本体部と、該本体部に対して例えばXY平面内でX軸方向とY軸方向の少なくとも一方に移動可能でその底面に供給口が形成された少なくとも2つの可動部材とで構成し、可動部材の少なくとも一部を、制御装置600が、造形面上におけるビームの強度分布の変更に応じて、移動しても良い。この場合も、可動部材の少なくとも一部がZ軸方向に可動であっても良い。
また、複数の供給口のうちの1つ供給口と別の供給口とが相対的に移動可能な構成にしても良い。あるいは、例えば、上記1つの供給口のY軸方向の位置と上記別の1つの供給口のY軸方向の位置とが異なっていても良い。あるいは、上記1つの供給口のZ軸方向の位置と上記別の1つの供給口のZ軸方向の位置とが異なっていても良い。
なお、少なくとも1つの供給口の移動は、ビームの強度分布の設定又は変更に合わせて行うだけでなく、別の目的で動かしても良い。
前述したように、ノズル84aに設けられた複数の供給口91iは、集光光学系82の光軸に直交してX軸方向にノズル84aの全長に渡って等間隔で配置されかつ隣接する供給口91i同士の間には僅かの隙間しかない。このため、図9(A)中の黒矢印で示されるように、ノズル84aの複数の供給口91iのそれぞれから粉末状の造形材料PDを集光光学系82の光軸AXに平行なZ軸方向に沿って真下に供給すれば、集光光学系82の光軸AXの直下の前述の一文字領域LS(一文字ビームの照射領域)にその造形材料PDが供給されることになる。この場合、ノズル84aからの造形材料PDの供給は、造形材料PDの自重を利用して、あるいは僅かな噴き出し圧力を加えた噴き出しによって行うことができる。したがって、造形の対象面に対して斜めの方向から造形材料を供給する場合のような造形材料の供給をガイドするガス流の発生機構等の複雑な機構が不要である。また、本実施形態のようにワークに対して至近距離で垂直に造形材料を供給できることは、造形における加工精度を確保する上で極めて有利である。
なお、ノズル84aにガス供給口を設けても良い。そのガス供給口から供給されるガスは、造形材料の供給をガイドするために流しても良いし、別の目的、例えば造形に寄与するガスを流しても良い。
本実施形態では、輪帯状の平行ビームがミラーアレイ80に照射されるので、ミラーアレイ80からの反射ビームは、集光光学系82の周縁近傍の部分領域(N.A.が大きな部分領域)に入射し、集光光学系82の射出端、すなわちビーム照射部520の射出端に位置する終端レンズの光軸から離れた周縁部の領域を介して集光光学系82の造形面MP(本実施形態では集光光学系82の後側焦点面に一致)に集光される(図4参照)。すなわち、同一の集光光学系82の周縁近傍の部分を通る光のみによって、例えば一文字ビームが形成される。このため、別々の光学系を介した光を同一領域に集光してビームスポット(レーザスポット)を形成する場合に比べて、高品質なビームスポットの形成が可能である。また、本実施形態では、集光光学系82の射出面(下端面)の中央下方に設けたノズル84aへのビームの照射を制限することができる。このため、本実施形態では、ミラーアレイ80からの反射ビームを全てスポットの形成に利用することが可能になるとともに、集光光学系82の入射面側のノズル84aに対応する部分にビームがノズル84aに照射されるのを制限するための遮光部材等を設ける必要がなくなる。かかる理由により、輪帯状の平行ビームによりミラーアレイ80を照明することとしているのである。
なお、集光光学系82の射出端に位置する光学部材は、少なくともその射出側の面の光軸から離れた領域に光学面が形成され、該光学面を介して造形面(後側焦点面)にビームを集光することができれば良い。したがって、この光学部材は、光軸を含む領域では射出面と入射面との少なくとも一方が、集光光学系82の光軸に垂直な平面であっても良いし、あるいは、光軸を含む領域に穴が形成されていても良い。光軸を含む中央部の領域に穴の空いたドーナツ状の集光レンズによって集光光学系82の射出端に位置する光学部材を構成しても良い。
なお、集光光学系82からノズル84aに入射するビームを制限するために、例えば図7に二点鎖線で示される制限部材85を集光光学系82の入射面側(例えば瞳面PP)に設けても良い。制限部材85によって、集光光学系82からのビームのノズル84aへの入射を制限する。制限部材85としては、遮光部材を用いても良いが、減光フィルタ等を用いても良い。かかる場合において、集光光学系82に入射する平行ビームは、断面円形の平行ビームであっても良いし、輪帯状の平行ビームであっても良い。後者では、ビームが制限部材85に照射されることがないので、ミラーアレイ80からの反射ビームを全てスポットの形成に利用することが可能になる。
なお、集光光学系82からノズル84aに入射するビームを必ずしも完全に遮光する必要はないが、集光光学系82からのビームがノズル84aに入射するのを防止するために、集光光学系82の終端レンズの射出面の、Y軸方向に関して光軸の両側の分離した周縁部領域(例えば2つの円弧領域)のみからビームを射出するようにしても良い。
ウォーターシャワーノズル540(図11参照)は、いわゆる焼入れの際に用いられる。ウォーターシャワーノズル540は、冷却液(冷却水)を供給する供給口を有し、冷却液を冷却対象物に噴射するものである。ウォーターシャワーノズル540は、制御装置600に接続されている(図11参照)。制御装置600は、焼入れに際し、光源ユニット60を制御してビーム照射部520からのビームの熱エネルギを焼入れに適切な値に調節する。そして、制御装置600は、ワークの表面にビームを照射して高温にした後、ウォーターシャワーノズル540を介して冷却液をその高温部に噴射して急冷することにより、焼入れを行うことができる。この場合、三次元造形によるワークに対する付加加工と同時に焼入れ工程を行うことも可能である。なお、付加加工と同時に焼き入れ工程を行う場合、造形材料として、焼入れ性の良好な金属を用いることが望ましい。
本実施形態では、ワークに対する付加加工時等には、図4及び図4の円A内を拡大して示す図9(A)に示されるように、集光光学系82の周縁部近傍を通過しノズル84aの+Y側及び-Y側(ワークW(テーブル12)のスキャン方向の前方及び後方)の光路を通るビーム(図9(A)に便宜上ビームLB11、LB12として示されている)がノズル84aの真下に集光されて、X軸方向(図9(A)における紙面直交方向)を長手方向とする一文字領域LSが造形面上に形成され(図9(B)参照)、その一文字領域LSを形成する一文字ビームに対してノズル84aの複数の供給口91iを介して粉末状の造形材料PDが集光光学系82の光軸AXと平行なZ軸に沿って(光軸AXを含むXZ面に沿って)供給される。これにより、ノズル84aの真下にX軸方向に延びる線状の溶融池WPが形成される。そして、かかる溶融池WPの形成がテーブル12をスキャン方向(図9(A)では+Y方向)に走査しながら行われる。これにより、一文字ビーム(溶融池WP)の長手方向(X軸方向)の長さに渡る所定幅のビード(溶融凝固した金属)BEを形成することが可能である。なお、図9(A)に示されるビームLB11、LB12は、ミラーアレイ80の異なるミラー素子81p.qでそれぞれ反射され集光光学系82の瞳面PPに異なる入射角度で入射した別々の平行ビームであっても良いし、同一の平行ビーム、例えば断面輪帯状の平行ビームの一部であっても良い。
複数の平行ビームを集光光学系82の瞳面PPに入射させる場合において、例えば集光光学系82に入射する平行ビームLBの数を減らさずに、一文字ビームのX軸方向の幅、又はY軸方向の幅、又は両方が徐々に狭まるように、集光光学系82に入射する複数の平行ビームLBの入射角度の調整を行った場合、ビームの集光密度(エネルギー密度)が高くなる。したがって、それに応じて、単位時間当たりの粉末(造形材料)の供給量を増やし、かつ対象面TASのスキャン速度を上げることで、形成されるビードBEの層の厚さを一定に保つとともに、スループットを高いレベルで保つことが可能になる。ただし、かかる調整方法に限らず、他の調整方法を用いて、形成されるビードBEの層の厚さを一定に保つこともできる。例えば、一文字ビームのX軸方向の幅、又はY軸方向の幅、又は両方の幅に応じて複数のレーザユニット70のうちの少なくとも1つのレーザ出力(レーザビームのエネルギ量)を調節しても良いし、ミラーアレイ80から集光光学系82に入射する平行ビームLBの数を変更しても良い。この場合、上述した調整方法に比べて、スループットは幾分低下するが、調整が簡便である。
図11には、造形装置100の制御系を中心的に構成する制御装置600の入出力関係を示すブロック図が示されている。制御装置600は、ワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等を含み、造形装置100の構成各部を統括制御する。
上述のようにして構成された本実施形態に係る造形装置100の基本的機能は、既存の部品(ワーク)に対し、三次元造形により所望の形状を付け加えることである。ワークは造形装置100に投入され、所望の形状を正確に付け加えられた後に造形装置100から搬出される。このとき、その付け加えられた形状の実際の形状データは、装置から外部の装置、例えば上位装置に送られる。造形装置100で行われる一連の動作は、大略次の通りである。
まず、テーブル12が、所定のローディング/アンローディングポジションにあるときに、ワーク搬送系300によってワークWがテーブル12に搭載される。このとき、テーブル12は、前述した基準状態(Z、θx、θy、θz)=(Z0、0、0、0)にあり、そのXY位置は、位置計測系28によって計測されているスライダ10のX、Y位置と一致している。
次いで、制御装置600により、ワークWを搭載したテーブル12が計測システム400の下方に移動される。テーブル12の移動は、制御装置600が位置計測系28の計測情報に基づいて、平面モータ26を制御して、スライダ10をベースBS上でX軸方向(及びY軸方向)に駆動することで行われる。この移動中も、テーブル12は、前述した基準状態が維持されている。
次に制御装置600により、計測システム400を用いて、基準状態にあるテーブル12上のワークW上の対象面TASの少なくとも一部の三次元空間内の位置情報(本実施形態では形状情報)の計測が行われる。これ以後は、この計測結果に基づき、ワークW上の対象面TASの6自由度方向の位置は、テーブル座標系(基準座標系)上で、オープンループの制御により管理することが可能になる。
次に制御装置600により、対象面TASの少なくとも一部の形状情報の計測が終了したワークWを搭載したテーブル12が、ビーム造形システム500の下方に移動される。
次に、テーブル12上のワークに3Dデータに対応する形状を付加する三次元造形による付加加工が行われる。この付加加工は、次のようにして行われる。
すなわち、制御装置600は、付加加工により付加すべき形状(付加加工後に作られる物体の形状から付加加工の対象となるワークの形状を取り去った形状)の三次元CADデータを三次元造形用のデータとして、例えばSTL(Stereo Lithography)データに変換し、更に、この三次元STLデータから、Z軸方向にスライスした各レイヤ(層)のデータを生成する。そして、制御装置600は、各レイヤのデータに基づき、ワークに対する各層の付加加工を行うべく、移動システム200及びビーム造形システム500を制御して、前述した一文字領域の形成、及び一文字ビームに対するノズル84aからの造形材料の供給による線状(スリット状)の溶融池の形成を、テーブル12をスキャン方向に走査しながら行うことを、各層について繰り返し行う。ここで、付加加工時におけるワーク上の対象面の位置及び姿勢の制御は、先に計測した対象面の形状情報を考慮して行われる。
ここで、上の説明では、ワークWの付加加工の目標部位TAが設定される対象面(例えば上面)TASが、テーブル12の傾きを調整することで、集光光学系82の光軸に垂直な面(XY平面に平行な面)に設定される平面であることを前提とし、テーブル12のスキャン動作を伴う造形が行われるものとしている。しかしながら、ワークの付加加工の目標部位が設定される対象面は、必ずしも一文字ビームが使えるような平面であるとは限らない。しかるに、本実施形態に係る造形装置100は、ワークが搭載されたテーブル12の6自由度方向の位置を任意に設定可能な移動システム200を備えている。そこで、かかる場合において、制御装置600は、計測システム400を用いて計測したワークの三次元形状に基づいて、移動システム200、及びビーム造形システム500のビーム照射部520を制御して、造形面MPに位置合わせされるワークW上の対象面(例えば上面)が造形面MP上におけるビームの照射領域内において付加加工可能な平坦と見なせる程度に造形面MP上におけるビーム照射領域のX軸方向の幅を調整しつつ、ノズル84aの各開閉部材93iを介して各供給口91iの開閉操作を行い、必要な供給口から造形材料を照射領域に照射されるビームに供給する。これにより、ワーク上面(対象面)が平坦でなくても、必要な部分に造形を施すことができる。
なお、ビードの積層による造形を行う際に、造形面における照射領域のX軸方向の幅が小さいビームで付加加工(ビード形成)を行い、比較的大面積の平面を形成した後に、造形面における照射領域のX軸方向の幅を大きくした一文字ビームを使って、その平面上に付加加工(ビード形成)を行っても良い。例えば、凹凸のある対象面上に造形を行う際に、造形面における照射領域のX軸方向の幅が小さいビームで、凹部を埋める付加加工(ビード形成)を行って平面を形成した後に、造形面MPにおける照射領域のX軸方向の幅を大きくした一文字ビームを用いて、その平面上に付加加工(ビード形成)を行っても良い。かかる場合においても、造形面MPにおけるビームの照射領域の大きさ(幅)変化に応じて選択された、1つ又は複数の供給口から造形材料の粉末が供給されることは言うまでもない。
ワークWに対する付加加工の終了後、制御装置600により、付加加工済みのワークWを搭載したテーブル12上が前述のローディング/アンローディングポジションに移動される。
次いで制御装置600により、ワーク搬送系300に対し、ワークのアンロードが指示される。この指示に応じ、ワーク搬送系300によって、付加加工済みのワークWがテーブル12上から取り出され、造形装置100の外部に搬送される。そして、制御装置600により、移動システム200のテーブル12が基準状態に設定される。これにより、移動システム200は、ローディング/アンローディングポジションにて、次のワークの搬入に備えて待機することとなる。
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る造形装置100及び該造形装置100で行われる造形方法によると、前述の造形面MP内におけるビームの強度分布を、ビームと対象面TASとの相対移動による造形開始前だけでなく、ビームと対象面TASとの相対移動中に、必要な場合には連続的に変更可能であるとともに、対象面TASとビームとの相対位置に応じて、しかも要求される造形精度とスループットに応じて変更可能である。これにより、造形装置100では、例えばラピッドプロトタイピングにより造形物をワークWの対象面TAS上に高い加工精度でかつ高スループットで形成することが可能になる。
また、造形装置100及び該造形装置100で行われる造形方法では、平坦な対象面TAS上に比較的広い面積の付加加工(造形)を行う場合に、前述した一文字ビームに対してノズル84aから粉末状の造形材料PDを供給してノズル84aの真下に線状の溶融池WPを形成し、かかる溶融池WPの形成をテーブル12をスキャン方向(図4では+Y方向)に走査しながら行う方法が採用される。この方法によると、従来の3Dプリンタ等では、図12(B)に示されるようにスポット状のビームを何十回も往復しないと生成できなかった形状を、図12(A)に示されるように、一文字ビームに対するテーブル12の数回の往復で生成することが可能になる。本実施形態によると、従来のスポット状のビームによる造形、のいわば一筆書きの造形の場合と比べて格段に短時間で造形物をワークの対象面上に形成することが可能になる。すなわち、この点においても、スループットの向上が可能になる。
また、本実施形態に係る造形装置100及び該造形装置100で行われる造形方法によると、ミラーアレイ80の各ミラー素子の反射面の傾斜角度を変更することにより、集光光学系82の造形面内におけるビームの強度分布の変更が行われるので、その強度分布の変更として、造形面内におけるビームの照射領域の位置、数、大きさ、及び形状の少なくとも一つの変更を容易に行うことができる。したがって、例えば照射領域をスポット状、スリット状(ライン状)などに設定して、前述した手法により、ワーク上の対象面に三次元造形を施すことで、高精度な三次元造形物の形成が可能になる。
また、本実施形態に係る造形装置100は、複数、例えば2つの粉末カートリッジ88A、88Bを有し、粉末カートリッジ88A、88Bそれぞれの内部には、第1の造形材料(例えばチタン)の粉末、第2の造形材料(例えばステンレス)の粉末が収容されている。そして、付加加工時(造形時)に、制御装置600により、材料供給装置86を用いたノズルユニット84に対する粉末の供給経路、すなわち配管90b、90cの切り換えが行われる。これにより、粉末カートリッジ88Aからの第1の造形材料(例えばチタン)の粉末と粉末カートリッジ88Bからの第2の造形材料(例えばステンレス)の粉末とが択一的にノズルユニット84に供給される。したがって、制御装置600が供給する粉末材料を部位に応じて切り換えるだけで、異種材料の接合形状が容易に生成可能である。また、その切り換えはほぼ瞬時に行うことが可能である。更に異種材料を混合して供給することで「合金を」その場で作ってしまうことも、その組成を場所によって変えたりグラデーションにしたりすることも可能である。
なお、上記実施形態では、ビーム造形システム500により単一の直線状のビーム(一文字ビーム)の照射領域を形成し、該一文字ビームに対してワークWを走査方向(例えばY軸方向)に走査する場合について説明した。しかしながら、ビーム造形システム500では、前述したように、集光光学系82に入射する複数の平行ビームLBの入射角度に、適切な分布をつけることで、造形面MP上におけるビームの強度分布を自在に変更できる。したがって、造形装置100では、造形面MP上におけるビームの照射領域の位置、数、大きさ及び形状の少なくとも1つを変更することができ、前述したようにビームの照射領域として例えば一文字領域、三列領域、欠損一文字領域など(図10参照)を形成することも可能である。
図13には、一例として前述した三列領域を構成する3つの一文字領域にそれぞれ照射される3つの一文字ビームを用いたワークWに対する付加加工が行われている様子が示されている。図13に示されるように、集光光学系82の周縁部近傍を通過し、ノズル84aに対してワークW(テーブル12)のスキャン方向の前方及び後方の光路を通るビームLB11、LB12がノズル84a(の複数の供給口)の真下に集光されてX軸方向(図13における紙面直交方向)を長手方向とするスリット状(ライン状)の第1一文字領域LS1が造形面上に形成されている。このとき、ワークWの目標部位TAが設定された対象面TASは、造形面MPに位置合わせされている。また、集光光学系82の周縁部近傍を通過し、ノズル84aに対してスキャン方向の後方の光路を通るビームLB21、LB22が集光されて、第1一文字領域LS1のスキャン方向の後方に所定距離離れた位置に、第1一文字領域LS1に平行に、第1一文字領域LS1と同じ長さでX軸方向に延びる第2一文字領域LS2が形成されている。また、集光光学系82の周縁部近傍を通過し、ノズル84aに対してスキャン方向の前方の光路を通るビームLB31、LB32が集光されて、第1一文字領域LS1のスキャン方向の前方に所定距離離れた位置に、第1一文字領域LS1に平行に、第1一文字領域LS1と同じ長さでX軸方向に延びる第3一文字領域LS3が形成されている。図14には、図13に示される3つの一文字領域LS1、LS2、LS3とスキャン方向との関係がXY平面内で示されている。
なお、図13に示したビームLB11、LB12、LB21、LB22、LB31、LB32は模式的に示したものであり、各一文字領域に入射する少なくとも1つのビームの光路、ビームの数などは、例えばミラーアレイ80を制御することによって設定、及び変更が可能である。
ここで、前述したように、3つの一文字領域LS1、LS2、LS3のうちテーブル12のスキャン方向の中央に位置する第1一文字領域LS1形成する一文字ビーム(以下、便宜上第1一文字ビームと称する)に対してノズル84aから粉末状の造形材料PDが供給されることで、ノズル84aの複数の供給口の真下に線状の溶融池WPが形成され、かかる溶融池WPの形成がワークW(テーブル12)をスキャン方向(図13では+Y方向)に走査しながら行われる。
第1一文字領域LS1に対してテーブル12のスキャン方向後方(進行方向後方)に位置する第2一文字領域LS2を形成する一文字ビーム(以下、便宜上第2一文字ビームと称する)は、一例として造形が施される前にワークWの表面(対象面の目標部位)の温度を予熱する(程よい温度に熱しておく)役割を担う。かかる予熱が行われない場合、レーザビームにより溶融した高温の金属と低温のワーク(対象面)との間の大きな温度差により溶融金属の急速な冷却が起こり、瞬時に凝固してぼそぼそとした塊になってしまう。このことは加工面(造形部の表面)の面精度、面荒さなどを悪化させる大きな要因である。これに対し、第2一文字ビームで、ワークW(対象面)の表面を事前に熱して、溶融金属とワークW(対象面)との温度差を小さくしておくことで、ワークW(対象面)上での溶融金属の凝固スピードが緩やかになり、溶融金属がワークWの表面(対象面)に表面張力の作用で広がり、なじむ時間的余裕が得られる。結果として優れた面精度及び面荒さが実現できる。
第1一文字領域LS1に対してテーブル12のスキャン方向前方(進行方向前方)に位置する第3一文字領域LS3を形成する一文字ビーム(以下、便宜上第3一文字ビームと称する)は、一例としてワークW表面(対象面の目標部位)に付着して凝固(固化)した造形材料(金属材料)、すなわちビードBEの表面をレーザ研磨する作用をもたらす。レーザビームによる表面研磨は一般的な技術として公知であるが、通常1回の付加加工(造形)では得ることのできない良好な面精度、面荒さを、第3一文字ビームで即座に研磨してしまうことで実現できる。
特に、図13に示されるワークWに対する付加加工では、ワークW(テーブル12)をスキャン方向に1回走査する間に、上述したワークWの表面の事前加熱(予熱)、ワークに対する溶融池及びビードの形成、並びに形成されたビード表面のレーザ研磨を行うことができる。なお、図13の場合の第2一文字ビームは、予熱に限らず他の用途に用いても良い。同様に、第3一文字ビームは、レーザ研磨以外の用途に用いても良い。例えば、第1、第2及び第3一文字領域LS1、LS2及びLS3の配置に対応して、3つのノズルを設け、第1、第2及び第3一文字ビームにより、ワークWの造形面上に3つの所定幅の直線状の溶融池を同時に形成しても良い。
なお、図13と反対に-Y方向にワークW(テーブル12)のスキャン方向が設定された場合には、第3一文字ビームが、造形を施される前に、ワークWの表面温度を程よい温度に熱しておく役割を担い、第2一文字ビームがワークW表面に付着して一旦凝固した金属材料の表面をレーザ研磨する役割を担うこととなる。
なお、上の説明では、ワークに対する溶融池の形成に用いられる第1一文字ビームの照射領域(第1一文字領域)に加えて、ワークWの表面の事前加熱(予熱)に用いられる第2一文字ビームの照射領域(第2一文字領域)、及び形成されたビード表面のレーザ研磨に用いられる第3一文字ビームの照射領域(第3一文字領域)が造形面上に互いに離れて形成される場合について説明したが、例えば第1一文字領域と第2一文字領域とは、少なくとも一部が重なっていても良い。また、第2一文字領域LS2と第3一文字領域LS3の少なくとも一方は、第1一文字領域LS1と形状とサイズの少なくとも一方が異なっていても良い。また、第2一文字ビームと第3一文字ビームの少なくとも一方は、必ずしも用いなくても良く、したがって造形面上に、第2一文字領域及び第3一文字領域の少なくとも一方を必ずしも形成する必要はない。
これまでは、一文字領域をできるだけ細くシャープにすることで、デフォーカスした時にその一文字領域に照射されるビームのエネルギ密度が急激に低下することを利用し、溶融池(塗布層)の厚さ制御性を極力高めた使い方を前提に説明を行っていた。しかし、この場合、塗布層の厚さは非常に薄くなり、同一厚さの層を付加する場合に、より多くの層に分けて付加加工(造形)を行わなければならず(何度も重ね塗りしなければならず)、生産性の観点では不利になる。
したがって、要求される造形精度とスループットの兼ね合いを考慮の上、塗布層の厚さを厚くしたい場合が考えられる。かかる場合には、制御装置600は、要求される造形精度とスループットとに応じて、造形面内におけるビームの強度分布を変化させる、具体的にはミラーアレイ80の各ミラー素子81p,qの傾き角を制御して一文字領域の幅を少し太くすれば良い。例えば図15(B)に示される一文字領域LSが一文字領域LS’に変化する。このようにすると、デフォーカスした時のエネルギ密度変化が緩やかになり、図15(A)に示されるように、鉛直方向の高エネルギエリアの厚さhが厚くなり、これにより1回のスキャンで生成できる層の厚さを厚くすることができ、生産性を向上させることができる。
以上のように、本実施形態に係る造形装置100は、従来の金属用3Dプリンタと比較して、多数の利便性、実際の加工現場の要求に沿うソリューションを備えていることが大きな特徴である。
なお、上記実施形態では、空間光変調器としてミラーアレイ80を用いる場合について説明したが、これに代えて、MEMS技術によって作製されるデジタル・マイクロミラー・デバイス(Digital Micromirror Device:DMD(登録商標))を多数マトリクス状に配置して成る大面積のデジタル・ミラーデバイスを用いても良い。かかる場合には、各ミラー素子の状態(例えばチルト角)をエンコーダなどで計測することは困難になる。かかる場合には、その大面積のデジタル・ミラーデバイスの表面に検出光を照射し、デジタル・ミラーデバイスを構成する多数のミラー素子からの反射光を受光し、その強度分布に基づき、各ミラー素子の状態を検出する検出システムを用いても良い。この場合、検出システムは、デジタル・ミラーデバイスによって形成される像を撮像手段により撮像して得られた画像情報に基づいて多数のミラー素子それぞれの状態を検出するものであっても良い。
なお、上記実施形態に係る造形装置100において、ロータリエンコーダ83p,qとともに、図11に仮想線で示される検出システム89を、用いても良い。この検出システム89としては、例えば、ミラーアレイ80を構成する多数のミラー素子81p,qからの反射光を、ミラーアレイ80と集光光学系82との間に配置されたビームスプリッターを介して受光し、その強度分布に基づき、各ミラー素子81p,qの状態を検出する検出システムを用いることができる。検出システムとしては、例えば米国特許第8,456,624号明細書の開示されるものと同様の構成のシステムを用いることができる。
また、上記実施形態では、各ミラー素子81p,qの反射面の基準面に対する傾斜角度を変更可能なタイプのミラーアレイ80を用いる場合について例示したが、これに限らず、各ミラー素子が、基準面に対して傾斜可能かつ基準面に直交する方向に変位可能な構造のミラーアレイを採用しても良い。また、各ミラー素子は、必ずしも基準面に対して傾斜可能でなくても良い。このように、基準面に直交する方向に変位可能なミラーアレイは、例えば米国特許第8,456,624号明細書に開示されている。この他、各ミラー素子が、基準面に平行な互いに直交する2軸の回りに回転可能(すなわち直交する2方向の傾斜角度を変更可能)なタイプのミラーアレイを採用しても良い。このように直交する2方向の傾斜角度を変更可能なミラーアレイは、例えば米国特許第6,737,662号明細書に開示されている。これらの場合においても、上記米国特許第8,456,624号明細書に開示される検出システムを用いて各ミラー素子の状態を検出することができる。
なお、ミラーアレイ80の表面に検出光を照射し、ミラーアレイ80を構成する多数のミラー素子81p,qからの反射光を受光する検出システムを用いても良い。あるいは、検出システムとして、各ミラー素子の基準面(ベース)に対する傾斜角及び間隔を個別に検出するセンサを、ミラーアレイ(光学デバイス)に設けても良い。
なお、上記実施形態では、集光光学系82の瞳面に入射する複数の平行ビームの入射角度を個別に制御することにより造形面上でのビームの強度分布の変更を行う場合について説明したが、集光光学系82の瞳面に入射する複数の平行ビームの全ての入射角度が制御(変更)可能でなくても良い。したがって、上記実施形態と同様にミラーアレイを用いて集光光学系82に入射する平行ビームの入射角度を制御する場合などに、全てのミラー素子が反射面の状態(反射面の位置及び傾斜角度の少なくとも一方)を変更可能でなくても良い。また、上記実施形態では、集光光学系82に入射する複数の平行ビームの入射角度の制御、すなわち造形面上におけるビームの強度分布の変更のためにミラーアレイ80を用いる場合について説明したが、ミラーアレイに代えて、以下に説明する空間光変調器(非発光型画像表示素子)を用いても良い。透過型空間光変調器としては、透過型液晶表示素子(LCD:Liquid Crystal Display)以外に、エレクトロクロミックディスプレイ(ECD)等が例として挙げられる。また、反射型空間光変調器としては、上述のマイクロミラー・アレイの他に、反射型液晶表示素子、電気泳動ディスプレイ(EPD:Electro Phonetic Display)、電子ペーパー(又は電子インク)、光回折型ライトバルブ(Grating Light Valve)等が例として挙げられる。また、上記実施形態では、造形面上におけるビームの強度分布の変更のためミラーアレイ(空間光変調器の一種)を用いる場合について説明したが、空間光変調器をその他の目的で用いても良い。
また、上述したように、集光光学系82は大口径であることが望ましいが、開口数N.A.が0.5より小さい集光光学系を用いても良い。
また、上記実施形態において、ビームの強度分布を管理するために、集光光学系82の後側焦点面、又はその近傍に受光部を配置可能なセンサを造形装置100が備えていても良い。例えば、テーブル12上にCCDイメージセンサを搭載し、該CCDイメージセンサにより、ビームの強度分布(造形面における照射領域内の強度分布)を適当な頻度でキャリブレーションすることが望ましい。この際、センサの受光部(例えばテーブル12)が停止した状態で計測しても良いが、センサの受光部(例えばテーブル12)が動きながら、集光光学系82からのビーム受光するスキャン計測を行っても良い。センサの受光部を移動しながら計測を行うことで、例えばCCD、ミラーアレイなどの有限な画素数の影響を排除し、正しい計測結果を得ることができる。このように、集光光学系82からのビームを受光するセンサでビームの強度分布を計測することで、集光光学系82の熱収差などの変動要因も加味されたビームの強度分布の管理が可能となる。また、その結果に基づいてミラーアレイ80などを制御することによって、集光光学系82の後側焦点面などにおけるビームの強度分布を所望状態に精度良く設定することができる。
なお、上記実施形態では、造形材料としてチタン、ステンレスの粉末を用いる場合について例示したが、鉄粉その他の金属の粉末は勿論、ナイロン、ポリプロピレン、ABS等の粉末など金属以外の粉末を用いることも可能である。また、造形材料として粉末以外のもの、例えば溶接に用いられるフィラワイヤなどを用いる場合にも、上記実施形態に係る造形装置100は適用が可能である。ただし、この場合には、粉末カートリッジ及びノズルユニットなどの粉末の供給系に代えて、ワイヤ送り装置などが設けられることになる。
また、上記実施形態では、ノズル84aの複数の供給口91iのそれぞれから粉末状の造形材料PDを集光光学系82の光軸AXに平行なZ軸方向に沿って供給する場合について説明したが、これに限らず、光軸AXに対して傾斜した方向から造形材料(粉末)を供給しても良い。また鉛直方向に対して傾斜した方向から造形材料(粉末)を供給しても良い。
なお、上記実施形態の造形装置100において、材料処理部530が備えるノズル84aは、前述の造形材料の供給口とともに、溶融されなかった粉末状の造形材料を回収する回収口(吸引口)を有していても良い。
これまでは、既存のワークに形状を付け加える例について説明したが、本実施形態に係る造形装置100の使用用途がこれに限られるものではなく、通常の3Dプリンタなどと同様に、テーブル12上で何もないところから三次元形状を造形によって生成することも可能である。この場合は、「無」というワークに、付加加工を施すことに他ならない。かかるテーブル12上での三次元造形物の造形の際には、制御装置600は、計測システム400が備えるマーク検出系56(図11参照)により、テーブル12上に予め形成された最低三か所のアライメントマークを光学的に検出することで、テーブル12上に設定される造形の対象面の6自由度方向の位置情報を求め、この結果に基づいてビーム(の照射領域)に対するテーブル12上の対象面の位置及び姿勢を制御しつつ、三次元造形を行えば良い。
なお、上記実施形態では、一例として、制御装置600が、移動システム200、計測システム400及びビーム造形システム500の構成各部を制御する場合について説明したが、これに限らず、造形システムの制御装置を、マイクロプロセッサ等の処理装置をそれぞれ含む複数のハードウェアにより構成しても良い。この場合において、移動システム200、計測システム400及びビーム造形システム500のそれぞれが処理装置を備えていても良いし、移動システム200、計測システム400及びビーム造形システム500のうちの2つを制御する第1処理装置と、残りの1つのシステムを制御する第2処理装置の組み合わせであっても良い。いずれの場合もそれぞれの処理装置が、上述した制御装置600の機能の一部を受け持つことになる。あるいは、複数のマイクロプロセッサ等の処理装置と、これらの処理装置を統括的に管理するホスト・コンピュータとによって、造形システムの制御装置を構成しても良い。
上述の各実施形態の構成要件の少なくとも一部は、上述の各実施形態の構成要件の少なくとも他の一部と適宜組み合わせることができる。上述の各実施形態の構成要件のうちの一部が用いられなくても良い。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態で引用した露光装置等に関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。