JP7250314B2 - 糖鎖結合性新規ポリペプチド - Google Patents

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特許法第30条第2項適用 平成30年2月1日に広島大学大学院学位論文審査会にて発表
特許法第30条第2項適用 平成30年9月16日に平成30年度日本水産学会秋季大会にて発表
本発明は、新規ポリペプチドに関し、特に糖鎖結合性のポリペプチドに関する。
細胞表面や体液中に存在する糖タンパク質や糖脂質等の複合糖質の糖鎖は、一種の情報素子として機能し、発生、免疫、がん、感染等の重要な生命現象に深く関わっている。一方、糖鎖結合性タンパク質であるレクチンは糖鎖認識分子として機能し、糖鎖と同様に生物学的に重要な役割を担っている。
これまでに、海藻類又は藻類(淡水産藍藻)から多くの種類のレクチンが単離され、その生化学的性質が明らかにされている。レクチンの一部は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザウイルス等のウイルスに特異的に結合することが知られている(非特許文献1~11)。
Boyd,M. R. et al., Antimicrob. Agents Chemother.41, 1521-1530, 1997. O’Keefe, B. R. et al., Antimicrob. AgentsChemother. 47, 2518-2525, 2003. Helle,F., .et al., J. Biol. Chem. 281, 25177-25183, 2006. Barrientos,L. G., et al., Antiviral. Res. 58, 47-56, 2003. Dey,B., et al., J. Virol. 74, 4562-4569, 2000. O’Keefe, B. R. et al.,J. Virol. 84, 2511-2521,2010. Hori,K.et al., Glycobiology, 17, 479-491, 2007. Sato,Y.,Okuyama, S., and Hori, K., J. Biol. Chem. 282, 11021-11029, 2007. Sato,Y.,Morimoto,K., Hirayama, M., and Hori, K. Biochem. Biophys. Res. commun. 405,291-296, 2011. 佐藤雄一郎、平山 真、藤原佳史、森本金治郎、堀 貫治 (2010) 第13回マリンバイオテクノロジー学会大会講演要旨 (2010. 5.29発表) Sato,Y.,Hirayama, M., Morimoto,K., Yamamoto, N., Okuyama, S., and Hori, K. J. Biol.Chem. 286, No.22, 19446-19458, 2011.
しかしながら、現在のところHIVウイルスやインフルエンザウイルス等の表面に存在する糖鎖に特異的に結合し、上記ウイルスの感染を効果的に阻害する物質はまだ十分に知られているとは言いがたく、その数は限られているため、上記物質が十分に供給できる状況にはなっていない。従って、新規な上記物質がさらに多く見出され、その特性が明らかにされることが必要である。
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、上記のようなウイルス感染を効果的に阻害する新規ポリペプチドを探索し、提供できるようにすることにある。
前記の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究の結果、石灰緑藻サボテングサ属の藻類から新規のポリペプチド(レクチン)を単離することに成功した。
具体的に、本発明に係る新規ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列をN末端に有し、糖鎖結合性を有することを特徴とする。
本発明に係るポリペプチドは、複合型N-グリカンに特異的に結合可能であってもよく、また、インフルエンザウイルスのヘマグルチニンに結合可能であってもよい。さらに、本発明にかかるポリペプチドは、Halimeda borneensis由来であってもよい。また、分子量が38~39kDaであってもよい。
本発明に係る抗インフルエンザ剤は、上記本発明に係るポリペプチドを含むことを特徴とする。本発明に係る抗インフルエンザ剤は、上記インフルエンザウイルスのヘマグルチニンに結合可能であり、抗インフルエンザ活性を有する上記ポリペプチドを含むため、インフルエンザの感染を効果的に阻害することができる。
本発明に係る新規ポリペプチドによると、抗インフルエンザ活性を有し、インフルエンザの治療や予防等に利用可能であり、極めて有用である。
実施例1における疎水性クロマトグラフィーにより得られたそれぞれの画分のUV280nmの吸光度及び赤血球凝集活性を示すグラフである。 実施例1におけるイオン交換クロマトグラフィーにより得られたそれぞれの画分のUV280nmの吸光度及び赤血球凝集活性を示すグラフ、並びに得られた活性画分に対して行ったSDS-PAGEの結果を示すゲル写真である。 実施例2のオリゴ糖結合解析において用いたオリゴ糖を示す図である。 実施例2のオリゴ糖結合解析の結果を示すグラフ及び図である。 実施例3におけるHBL40のインフルエンザウイルス感染阻害試験の結果を示す写真及びグラフである。 実施例3におけるHBL40のヘマグルチニン結合活性の測定結果を示すグラフである。 実施例4における逆相HPLCで得られた溶出液のUV280の吸光度の測定結果を示すグラフである。 実施例4におけるHBL40-1及びHBL40-2の分子量測定の結果を示すグラフである。 実施例5において配列決定を行ったHBL40-1及びHBL40-2のN末端配列を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用方法或いはその用途を制限することを意図するものではない。
本発明の一実施形態は、石灰緑藻サボテングサ属であるHalimeda borneensisから単離された新規ポリペプチド(HBL40)である。特に、本発明に係る新規ポリペプチドは、N末端に配列番号1に示すアミノ酸配列を有し、分子量が38~39kDaの大きさの糖鎖結合性ポリペプチドである。
本明細書中で用いられる用語「ポリペプチド」は、「ペプチド」又は「タンパク質」と交換可能に使用される。また、本発明に係るポリペプチドは、天然供給源より単離されても、化学合成されてもよい。
用語「単離された」ポリペプチド又はタンパク質とは、その天然の環境から取り出されたポリペプチド又はタンパク質が意図される。一方、宿主細胞中で発現された組換え産生されたポリペプチド及びタンパク質の場合においても、任意の適切な技術によって実質的に精製され、宿主細胞から単離されたものが用いられる。
本発明に係るポリペプチドは、天然の精製産物、化学合成手順の産物、及び原核生物宿主又は真核生物宿主(例えば、細菌細胞、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞及び哺乳動物細胞を含む)から組換え技術によって産生された産物を含む。組換え産生手順において用いられる宿主に依存して、本発明に係るポリペプチドは、グリコシル化され得るか又は非グリコシル化され得る。さらに、本発明に係るポリペプチドは、宿主媒介プロセスの結果として、開始の改変メチオニン残基を含み得る。
本発明者らは、上記本発明に係るポリペプチドが、特に複合型糖鎖に特異的に結合することを見出した。より具体的には、本発明に係るポリペプチドは、2本又は3本に分岐したN-グリカンに特異的に結合できる。ここで、「糖鎖」とは、直鎖又は分岐したオリゴ糖又は多糖を意味する。また上記糖鎖は、タンパク質との結合様式によって、アスパラギンと結合するN-グリコシド結合糖鎖(以下、「N型糖鎖」、「N-グリカン」という)及びセリン、スレオニンなどと結合するO-グリコシド結合糖鎖(以下、「O型糖鎖」、「O-グリカン」という)に大別され、N型糖鎖には高マンノース型糖鎖、複合型糖鎖、混成型糖鎖がある。
なお、オリゴ糖とは、単糖又は単糖の置換誘導体が2~10個脱水結合して生じたものをいう。さらに多数の単糖が結合している糖質を多糖という。多糖は、構成糖の種類によって異なるが、ウロン酸やエステル硫酸を多く含む糖質を酸性多糖、中性糖のみのものを中性多糖という。多糖のうち、ムコ多糖とよばれる一群の多糖は、ほとんどがタンパク質と結合しており、プロテオグリカンという。単糖とは、糖鎖の構成単位となるもので、加水分解によってそれ以上簡単な分子にならない基本的物質である。
さらに、単糖は、カルボキシル基などの酸性側鎖を有する酸性糖、ヒドロキシル基がアミノ基で置換されたアミノ糖、それ以外の中性糖の3つに大別される。生体内に存在する単糖としては、酸性糖はN-アセチルノイラミン酸やN-グリコリルノイラミン酸(以下、「Neu5Gc」という)等のシアル酸や、ウロン酸等があり、アミノ糖としてはN-アセチルグルコサミン(以下、「GlcNAc」という)やN-アセチルガラクトサミン等があり、中性糖としてはグルコース、マンノース、ガラクトース、フコース等が挙げられる。
N型糖鎖は全て、「トリマンノシルコア」と呼ばれる〔Manα1-6(Manα1-3)Manβ1-4GlcNAcβ1-4GlcNAc〕からなる共通母核構造を持っている。高マンノース型糖鎖は、トリマンノシルコアに加え、分岐構造部分にα-マンノース残基のみを含む。この糖鎖には〔Manα1-6(Manα1-3)Manα1-6(Manα1-3 )Manβ1-4GlcNAcβ1-4GlcNAc〕という七糖が共通の母核として含まれている。また混成型糖鎖は、複合型と高マンノース型の両方の特徴を併せ持っていることからそう呼ばれている。1つまたは2つのα-マンノシル基が、高マンノース型の場合と同様に、トリマンノシルコアのManα1-6腕と結合し、複合型糖鎖の側鎖と同じものがコアのManα1-3腕に結合している。
トリマンノシルコアの還元末端に位置するGlcNAcのC-6位へのフコースの結合の有無、またβ-マンノシル残基のC-4位へのβ-GlcNAcの結合(バィセクテイングGlcNAcと呼ばれる)の有無は、複合型や混成型糖鎖の構造の多様性に寄与している。3つのN型糖鎖の間で、複合型が最も多様な構造を含んでいる。
この多様性は、主に2つの要素で作り出され、トリマンノシルコアに1個から5個の側鎖がそれぞれ異なる結合位置で結合しており、一、二、三、四、または五本側鎖糖鎖を形成している。三本側鎖の複合型糖鎖には、〔GlcNAcβ1-4(GlcNAcβ1-2)Manα1-3〕あるいは〔GlcNAcβ1-6(GlcNAcβ1-2)Manα1-6〕のどちらかを含む2つの異性体が見つかっている。
なお上記トリマンノシルコアにおいて、アスパラギンと結合する糖鎖の末端、すなわちGlcNAc側の末端を還元末端、その反対側、すなわちMan側の末端を非還元末端という。
ポリペプチドが糖鎖と結合するか否かは、例えば標的となる糖鎖、又は糖鎖が結合した糖タンパク質等を固定化したカラムに、試験対象であるポリペプチドを通し、当該カラムにポリペプチドが結合したか否かをその通過液に含まれるポリペプチドの量、または特異的溶出剤でカラムから溶出したポリペプチドの量により評価することができる。また標的となる糖鎖が結合した糖タンパク質をメンブレン等に固定化し、ビオチン、フルオレセインイソチオシアネート、ペルオキシダーゼ等で標識したポリペプチドを用いて検出するウエスタンブロット法(法医学の実際と研究、37, 155, 1994 参照)、ドットブロット法(AnalyticalBiochemistry, 204(1), 198, 1992 参照)を用いて評価することができる。
また標的となる糖鎖、または糖鎖が結合した糖タンパク質等を固定化したチップと、試験対象であるポリペプチドとの親和性を表面プラズモン共鳴法(SPR法)を用いて測定すればよい。上記方法によれば、その親和性の有無のみならず、その強度まで測定できるために好ましい方法であるといえる。このとき得られる結合定数(親和定数)(K)が、10(M-1)以上、より好ましくは10(M-1)以上、最も好ましくは10(M-1)以上であればポリペプチドと糖鎖とが結合していると判断できる。
また、本発明は上記ポリペプチドを含む抗インフルエンザウイルス剤を提供する。
本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤は経口製剤、非経口製剤のいずれであってもよい。また、剤型は特に限定されるものではなく、常法に従い、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、エリキシル剤、シロップ剤、マイクロカプセル剤あるいは懸濁液剤等に製剤化して用いることができる。
非経口的に投与する場合には、例えば、本発明に係るポリペプチドを含有する溶液を点鼻噴霧することや、注射剤として投与することができる。経口的に投与する場合には、食前、食後、食間のいずれに投与してもよい。
本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤は、必要に応じて、担体、賦形剤、結合剤、膨化剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、防腐剤、安定剤、被覆剤等の材料を含有することができる。
本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤において、例えば錠剤、カプセル剤等に含有することができる具体的な成分としては、トラガント、アラビアゴム、コーンスターチ及びゼラチンのような結合剤;微晶性セルロース、結晶セルロースのような賦形剤; コーンスターチ、前ゼラチン化デンプン、アルギン酸、デキストリンのような膨化剤; ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤;微粒二酸化ケイ素のような流動性改善剤; グリセリン脂肪酸エステルのような滑沢剤; ショ糖、乳糖及びアスパルテームのような甘味剤; ペパーミント、ワニラ香料及びチェリーのような香味剤等を挙げることができる。
調剤単位形態がカプセル剤である場合には上記のタイプの材料にさらに油脂のような液
状担体を含有することができる。
また、種々の他の材料を、被覆剤としてまたは調剤単位の物理的形態を変化させるために含有させることができる。錠剤の被覆剤としては、例えば、シェラック、砂糖又はその両方が挙げられる。シロップ剤またはエリキシル剤は、例えば、甘味剤としてショ糖、防腐剤としてメチルパラベン及びプロピルパラベン、色素及びチェリー又はオレンジ香味等を含有することができる。その他、各種ビタミン類、各種アミノ酸類を含有しても良い。
本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤の適用対象は、ヒト、ヒト以外の動物〔例えば、ヒト以外の哺乳類(ブタ、ウシ、ウマ、イヌ等の家畜)、鳥類(ニワトリ等の家禽)等〕のいずれであってもよい。家畜や家禽等へ適用することにより、それらの経済的損失を軽減することができる。また、それらを食用とする場合も多いため、ヒトへの感染予防という点からも重要である。
本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤の投与量は、適用対象が必要とする量を確保できるように設定すればよく、製剤化して用いたり、飲食品に配合して上記抗ウイルス剤を用いることができる。
以下に、本発明に係る新規ポリペプチドについて詳細に説明するための実施例を示す。
[実施例1:Halimeda borneensisからのHBL40の単離]
(HBL40の単離)
まず、屋久島の春田浜沿岸で採集されたHalimeda borneensisの凍結藻体100gを、液体窒素を用いて粉末にした。この粉末に200mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加え、4℃で一晩中撹拌した後に、遠心分離(9000g、30分、4℃)により上清を回収した。回収した上清に硫安を70%飽和となるように加え、30分間緩やかに撹拌し、4℃で一晩中静置した。その後、遠心分離(9000g、30分、4℃)により沈殿物を回収し、回収した沈殿物を少量のPBSに溶解し、同溶媒に対して十分に透析した。その後、内液をさらに遠心分離(9000g、30分、4℃)して上清を塩析画分として回収した。得られた塩析画分を硫安で1M溶液に調製し、1M硫安含有20mMリン酸緩衝液(PB)で平衡化されたHiPrep Phenyl FF カラム(1.6×10cm, Vt=20.1ml, GE Healthcare, Buckinghamshire, UK)に注入した。カラムを開始溶液で十分に洗浄した後に、PBで溶出した。なお、流速は2mL/minとし、溶出された5mLずつの画分を分取し、それぞれのUV280nmの吸光度及び赤血球凝集活性について測定した。その後、溶出された活性画分をプールし、限外ろ過(分画分子量10kDa)により濃縮した。濃縮液を20mMトリス‐塩酸緩衝液(pH8.0)に対して透析し、同一の緩衝液で平衡化されたTSKgel DEAE-5PWカラム(7.5×75mm, 東ソー製)に注入した。カラムを開始溶液で十分に洗浄した後に、上記緩衝液に0~1M NaClの線形濃度勾配で含まれた溶液を用いて溶出した。溶出された1mLずつの画分を分取し、それぞれのUV280nmの吸光度及び赤血球凝集活性について測定した。
(UV280nmの吸光度測定)
UV280nmに対する吸光度を測定することにより、それぞれの画分におけるタンパク質量を決定した。具体的に、280nmの吸光度が1.0の場合にタンパク質濃度が1mg/mLと推定し、又はウシ血清アルブミン(BSA)を標品として用いて、Pierce BCA Protein Assay Kit(Thermo FisherScientific, IL, USA)により測定した。
(赤血球凝集活性の測定)
それぞれの画分の赤血球凝集活性を測定することにより、それぞれの画分の糖鎖結合性を評価した。赤血球凝集活性の測定のために、96ウェルプレートの各ウェルに対して25μLずつ生理食塩水による系列2倍希釈でそれぞれの画分を分注し、それらに等量の2%赤血球懸濁液を加えた。その後、混合液を緩やかに振とうし、室温で60分間インキュベートした。赤血球凝集活性を肉眼で観察し、凝集活性を示す最大希釈液の濃度を力価として決定した。
(SDS-PAGE)
SDS-PAGEは12%アクリルアミドゲルを用いて、常法に従って行った。具体的に、上記画分に0.2%SDSを含むローディングバッファを加え、2%の2-メルカプトエタノールを加え又は加えずに100℃で5分間加熱した。電気泳動は100Vで2時間行い、電気泳動後のゲルはクマシーブリリアントブルー(CBB)R-250で染色した。参照タンパク質を含むマーカーキットはTefco社から購入した。
(結果)
HiPrepPhenyl FF カラムを用いた疎水性クロマトグラフィーにより得られたそれぞれの画分のUV280nmの吸光度及び赤血球凝集活性の結果を図1に示す。なお、図1において、活性画分としてプールした画分は、ピーク上方のバーで示している。また、さらにTSKgel DEAE-5PWカラムを用いたイオン交換クロマトグラフィーにより得られたそれぞれの画分のUV280nmの吸光度及び赤血球凝集活性の結果を図2に示す。なお、図2において、活性画分として、すなわち精製HBL40として回収された画分は、ピーク上方のバーで示している。また、当該活性画分に対して行ったSDS-PAGEの結果も図2に示す。なお、SDS-PAGEの結果において、レーン1は2%2-メルカプトエタノールを含む(還元)HBL40であり、レーン2は2-メルカプトエタノールを含まない(非還元)HBL40であり、レーン3は分子量マーカーである。さらに、抽出、硫安塩析、疎水性クロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィーの各工程後に得られた溶液における液量、タンパク質濃度、赤血球凝集活性(HA)、総赤血球凝集力価(THA)及び最小凝集濃度(MAC)を表1に示す。
Figure 0007250314000001
図1、図2及び表1に示すように、各精製工程によって、Halimeda borneensisからHBL40が効果的に分離、精製され、精製されたHBL40において強い赤血球凝集活性が認められた。また、そのような活性画分についてSDS-PAGEを行った結果、還元下で約20kDa、非還元下で約40kDaの位置にバンドが認められた。従って、HBL40は糖鎖結合性を有し、20kDaのサブユニットからなる二量体型タンパク質であると示唆される。
[実施例2:HBL40の糖鎖結合特異性]
(赤血球凝集阻害試験)
次に、HBL40の糖鎖結合特異性を赤血球凝集阻害試験により明らかにした。まず、96ウェルプレートの各ウェルに対して25μLずつ生理食塩水による系列2倍希釈で糖及び糖タンパク質を分注し、各ウェルに等量の赤血球凝集力価が4のHBL40を加えた。その後、プレートを緩やかに振とうし、室温で1時間静置した後に各ウェルに25μLの2%赤血球懸濁液(PRBC)を加え、再度プレートを緩やかに振とうし、室温で1時間静置した。赤血球の凝集阻害は肉眼で観察し、凝集阻害活性は、HBL40が完全に赤血球凝集を阻害する糖又は糖タンパク質の最小阻害濃度(mM又はμg/mL)で示した。なお、用いた糖は、単糖類のD-グルコース(Glc)、D-ガラクトース(Gal)、D-マンノース(Man)、D-フコース(Fuc)、N-アセチル-D-ガラクトサミン(GalNAc)、N-アセチル-D-グルコサミン(GlcNAc)、N-アセチル-D-ノイラミン酸(NeuAc)、D-キシロース(Xyl)及びD-ラムノース(Rha)、並びにニ糖類のD-ラクトース(Lac)であり、用いた糖タンパク質は、トランスフェリン、アシアロトランスフェリン、フェチュイン、アシアロフェチュイン、ウシ顎下腺ムチン(BSM)、アシアロBSM、ブタサイログロブリン(PTG)、アシアロPTG及びイーストマンナンである。結果を表2に示す。
Figure 0007250314000002
表2に示すように、HBL40の赤血球凝集活性は、単糖類や二糖類では阻害されず、また、糖タンパク質のうち複合型の特にN-グリカン及びO-グリカンを含むものによって強く阻害された。特に、アシアロ誘導体の糖タンパク質において強い阻害が認められた。一方、高マンノース型の糖タンパク質では、HBL40の赤血球凝集活性の阻害効果が認められなかった。以上から、HBL40は、複合型N-グリカンに好適に結合すると示唆された。
(オリゴ糖結合解析)
HBL40のオリゴ糖結合特異性を遠心限外ろ過-HPLC法によって測定した。すなわち、まず、90μLの1μMHBL40と10μLの300nMピリジルアミノ化(PA)-オリゴ糖(タカラバイオ製)とを50mMトリス-塩酸(pH7.0)に混合し、室温で1時間インキュベートした。続いて、その混合液に対して、遠心限外ろ過器(分画分子量10kDa、PALL, NY, USA)を用いて室温で10000gの遠心分離を30秒間行った。20μLのろ液を、15%メタノール含有0.1M酢酸アンモニウム緩衝液で平衡化されたTSKgel ODS-80TMカラム(4.6×150nm)(東ソー製)に注入し、同一の溶液を用いて溶出した。このHPLCは流速1mL/min、40℃で行った。溶出液は、励起波長320nm、蛍光波長400nmでモニターした。一方、HBL40を含まない90μLの50mMトリス-塩酸(pH7.0)を上記PA-オリゴ糖と混合し、上記遠心限外ろ過を行い、ろ液をブランクとして用いた。HBL40と結合したPA-オリゴ糖の量[Obound]は、加えられたPA-オリゴ糖の量[Oadded]から未結合のPA-オリゴ糖の量[Ounbound]を引くことにより得た。[Oadded]に対する[Obound]の比率を結合活性(%)として定義した。用いた25種のPA-オリゴ糖を図3に示し、試験結果を図4に示す。
図4に示すように、2本又は3本に分岐した糖鎖を有する複合型N-グリカン(No.1~8)に対して強く結合した。しかしながら、他の4本又は5本に分岐した糖鎖を有する複合型N-グリカン(No.9~11)、HM-グリカン(No.12、13)、糖脂質由来の糖タンパク質(No.14~24)及びN-グリカンをコアとする五糖類(No.25)には結合しなかった。以上から、HBL40は、2本又は3本の分岐鎖を有する複合型N-グリカンを好適に認識することが示唆された。
[実施例3:抗インフルエンザ活性の測定]
(感染阻害効果の測定)
HBL40の抗インフルエンザ活性を測定するために以下の試験を行った。まず、ヒトNCI-H292細胞(ATCC #CRL1848, Culture Collections, Public Health England, London,UK)を48ウェルプレートに播種し、インフルエンザウイルスA/H3N2/Udorn/72株を2.5の多重感染度(MOI)で感染させた。また、同時に、種々の濃度のHBL40を細胞培養液に添加した。感染から24時間後に、細胞を80%アセトンにより固定し、0.5%アミドブラック含有45%エタノール-10%酢酸により染色した。染色したプレートをグレースケールで撮影し、写真の色濃度をNHI-ImageJ 1.48vソフトウェアにより測定した。HBL40を添加しない場合、重度の細胞変性が見られ、細胞生存率を0%とした。一方、擬似感染させた細胞は、変性が無く、細胞生存率を100%とした。試験結果を図5に示す。
図5に示すように、HBL40は、NCI-H292細胞に対するインフルエンザウイルスの感染を濃度依存的に阻害し、ED50は8.02nMであった。この結果から、HBL40は、抗インフルエンザ活性を有することが示唆された。
(表面プラズモン反応によるヘマグルチニン結合活性の測定)
次に、HBL40のインフルエンザウイルスエンベロープの糖タンパク質ヘマグルチニンに対する直接の相互作用について、BIAcore X100 system (GE Healthcare)を用いて評価した。そのために、まず、センサチップ(CM5,GE Healthcare)をN-ヒドロキシコハク酸イミド/N-エチル-N’-ジメチルアミノプロピルカルボジイミドで活性化させ、ヘマグルチニンをアミンカップリング法によりセンサチップ上に固定した。なお、センサ表面の未反応基を1Mエタノールアミンでブロックした。10mMの4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、150mMのNaCl(pH7.4)からなるランニングバッファ(HBS-N)を用いて、種々の濃度のHBL40を流速30μL/minで流して結合試験を行った。結合試験の条件は、接触時間120秒、解離時間600秒とし、10mMのグリシン-塩酸(pH1.5)により表面を再生した。動態パラメータ(k:会合速度定数、k:解離速度定数、K:会合定数、K:解離定数)をBiacore X100 evaluationソフトウェア(GE Healthcare)を用いた1:1の結合のためのラングミュアモデルにデータをフィッティングすることで算出した。その結果を図6及び表3に示す。
Figure 0007250314000003
図6及び表3に示すように、HBL40は、インフルエンザウイルスのヘマグルチニンに濃度依存的に直接結合することが示された。その親和性は、表3に示すようにK値で1.21×10-6Mであった。この結果から、HBL40はインフルエンザウイルスのヘマグルチニンに直接に結合することが明らかとなった。以上から、HBL40は、抗インフルエンザ活性を有するものと認められる。
[実施例4:HBL40の分子量の測定]
HBL40のN末端アミノ酸配列を以下の通りに決定した。すなわち、まず、HBL40に対して、5%アセトニトリル含有0.05%水性トリフルオロ酢酸(TFA)で平衡化されたTSKgel ODS-80TMカラム(4.6×150mm)で逆相HPLCを行った。HBL40の注入後、カラムを開始溶液で洗浄し、5~70%の濃度勾配アセトニトリル含有0.05%TFAで溶出した。溶出液のUV280の吸光度を観察し、タンパク質ピークを回収し、得られた2種の精製HBL40(後に説明するHBL40-1及びHBL40-2)に対して分子量測定を行った。分子量測定は、AXIMA-CFR plus(島津製作所)を備えたマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計(MALDI-TOFMS)を用いて行った。
図7に逆相HPLCで得られた溶出液のUV280の吸光度の変化を示す。図7に示すようにHBL40は、HBL40-1及びHBL40-2の2つのピークが認められた。これらについて分子量測定を行った結果を図8に示す。図8に示すように、HBL40-1の分子量は38141Daであり、HBL40-2の分子量は38451Daであり、両者共に概ね38~39kDaであった。
[実施例5:HBL40のN末端アミノ酸配列の決定]
HBL40のN末端アミノ酸配列(16アミノ酸)を以下の通りに決定した。すなわち、YMC-Pack Protein-RPカラムによる逆相HPLCにより精製されたHBL40(HBL40-1及びHBL40-2)に対してProcise 492 HT protein sequencing system(ThermoFisher Scientific)を用いて配列決定を行った。その結果を図9に示す。
図9に示すように、HBL40-1及びHBL40-2は、共にN末端に同一の16アミノ酸配列(配列番号1)を有していた。なお、このN末端配列と顕著に類似する配列はデータベースにおいて発見されなかった。
以上のように、Halimeda borneensis由来の新規レクチンであるHBL40は、N末端に配列番号1で示されるアミノ酸配列を有し、分子量が約38~39kDaであって、抗インフルエンザウイルス活性を有しており極めて有用である。

Claims (3)

  1. Halimeda borneensis由来であり、分子量が38~39kDaであり、配列番号1のアミノ酸配列をN末端に有し、複合型N-グリカンに特異的に結合することを特徴とする糖鎖結合性の新規ポリペプチド。
  2. インフルエンザウイルスのヘマグルチニンに結合することを特徴とする請求項1に記載のポリペプチド。
  3. 請求項1又は2に記載のポリペプチドを含む抗インフルエンザ剤。
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