JP7249196B2 - 方法 - Google Patents

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Description

本発明は植物からの抽出物であって芳香成分を含有するものに関し、特に1,8-シネオールを含有する植物からの抽出物に関する。本発明はまたその抽出方法に関する。
特許文献1には空気流によって生じた減圧空間によって原料から吸い出された成分を霧化微小粒子内に抽出する方法が記載されている。特許文献2には樹木の木質部及び/又は葉を、マイクロ波を照射しながら減圧蒸留に付すことにより得られる繊維質が記載されている。
特開平09-248138号公報 特開2015-160154号公報
植物は様々な芳香成分を含んでいる。これらの芳香成分は精油や芳香蒸留水といった抽出物として得ることができる。抽出方法によって抽出物中の成分の偏りが生じる。このため抽出物の発する芳香は、生の植物そのものが発する芳香とは異なるものとなることがある。
本発明は1,8-シネオールを含有する植物そのものが発する芳香により近い芳香を発する抽出物を提供することを目的とする。
<1> 植物の器官であって少なくとも1,8-シネオールを含有するものから抽出した水ベースの抽出物であって、
当該抽出物をガスクロマトグラフィー分析した時、1,8-シネオールよりも保持時間の長い芳香成分の中に、1,8-シネオールよりも高い検出強度を示す芳香成分が観察されない、又は1種だけ観察される、
抽出物。
<2> 当該抽出物をガスクロマトグラフィー分析した時、1,8-シネオールよりも保持時間の長い芳香成分の中に、1,8-シネオールよりも高い検出強度を示す芳香成分が観察されない、
<1>に記載の抽出物。
<3> 当該抽出物をガスクロマトグラフィー分析した時、1,8-シネオールは他のいずれの芳香成分よりも検出強度が高い、
<1>に記載の抽出物。
<4> 前記植物の器官はα-ピネンをさらに含有するものの、
当該抽出物をガスクロマトグラフィー分析した時、α-ピネンは実質的に観察されない、
<3>に記載の抽出物。
<5> 前記植物の器官はリモネン及びリモネンよりも豊富なα-ピネンを含有するものの、
当該抽出物をガスクロマトグラフィー分析した時、リモネンはα-ピネンよりも検出強度が高い、
<3>に記載の抽出物。
<6> 前記植物としてユーカリ・グロブルス(Eucalyptus globulus)が選択され、
40~50℃の真空蒸気を前記植物の葉に接触させ、その後、
前記真空蒸気を20±5℃の水に混和することで得られる、
<4>又は<5>に記載の抽出物。
<7> 前記植物はユーカリ・ラジアタ(Eucalyptus Radiata)、ユーカリ・グロブルス(Eucalyptus globulus)、ユーカリ・シトリオドラ(Eucalyptus citriodora)、ユーカリ・スミティ(Eucalyptus smithii)、ユーカリ・スタイゲリアナ(Eucalyptus staigeriana)、及びユーカリ・ポリグラクテア(Eucalyptus polybractea)からなる群から選ばれる一以上のものであり、
少なくとも葉を含む器官から抽出される、
<1>に記載の抽出物。
<8> <1>に記載の抽出物を得る方法であって、
40~55℃の真空蒸気を植物に接触させ、
前記真空蒸気を水に混和することで前記抽出物を得る、
方法。
<9> 閉環状の気密経路内に40~55℃の水蒸気を供給するとともに循環させつつ、前記気密経路内をポンプによって減圧することで前記気密経路内に循環する前記真空蒸気を生成し、
前記真空蒸気を前記気密経路内に配置された前記植物に接触させる、
<8>に記載の方法。
<10> 前記循環する前記真空蒸気を水中でバブリングさせることで前記混和を行う、
<9>に記載の方法。
<11> 前記バブリングを行う際、前記真空蒸気によって温められることになる水を連続的に冷却することで、水の温度を20±5℃の範囲に保つ、
<10>に記載の方法。
<12> 前記バブリングを行う際、前記真空蒸気を10℃以下に設定した冷却器で予め冷却してからバブリングする、
<11>に記載の方法。
<13> 前記冷却器で前記真空蒸気を冷却する際、サイクロンセパレーターで処理することで前記真空蒸気からドレンを予め除去する、
<12>に記載の方法。
本発明により、1,8-シネオールを含有する植物そのものが発する芳香により近い芳香を発する抽出物を提供することができる。
真空蒸気(Vaccum)で抽出された抽出物のクロマトグラム。 常圧蒸気(Non-vaccum)で抽出された抽出物のクロマトグラム。 各温度の真空蒸気で抽出された抽出物のクロマトグラム。 原料(Raw)から大気中に放出される揮発性成分のクロマトグラム。 抽出装置の回路図。 精油(Essence)のクロマトグラム。 サイクロンセパレーター(Cyclone)及び冷却器(Condenser)からの抽出物のクロマトグラム。 温度を変えながら連続抽出した際の抽出物のクロマトグラム(45℃)。 温度を変えながら連続抽出した際の抽出物のクロマトグラム(50℃)。 温度を変えながら連続抽出した際の抽出物のクロマトグラム(55℃)。 10℃でバブリング(Bubbling)した際の抽出物のクロマトグラム。 20℃でバブリングした際の抽出物のクロマトグラム。 30℃でバブリングした際の抽出物のクロマトグラム。 45℃でバブリングした際の抽出物のクロマトグラム。 50℃でバブリングした際の抽出物のクロマトグラム。
本明細書において以下の通り用語を定義する。
「抽出物」は原料から抽出される揮発性成分の混合物を意味する。揮発性成分には芳香成分が含まれる。原料が植物であれば、原料から抽出物が抽出された後、繊維質を初めとする植物の骨格の構成要素は原料中に残される。特に断りのない限り「抽出物」は真空蒸気による抽出物をいう。
「芳香成分」は原料又は抽出物の含有する揮発性成分の内、ヒトに対して芳香を提示するものをいう。「揮発性成分」はガスクロマトグラフィーで検出される物質をいう。芳香成分でない揮発性成分にはその濃度を増やしてもヒトが嗅覚で感じ取れないもの、すなわち無臭のものが含まれる。芳香成分でない揮発性成分には、その濃度を増やしても抽出物全体の芳香に与える影響が乏しく、結果としてフレグランス等の実用的な用途においてその存在を無視できるものが含まれる。
「器官」(organ)は植物のボディを構成する各器官を意味する。植物の器官には根、茎、葉、花及び種子が含まれる。茎には幹や枝が含まれる。植物の器官を原料として利用する場合はこれらの器官が厳密に選り分けられなくともよい。例えば葉と枝が一体になっているボディを原料として用いてもよい。植物の持つ根、茎、葉及び花をすべて一まとめにして抽出に用いてもよい。植物の持つ根、茎及び葉をすべて一まとめにして抽出に用いてもよい。これらから根は除外してもよい。
「真空蒸気」は沸点以下の飽和蒸気を意味する。特に、大気圧下における水の沸点100℃以下の温度を示す、低温の水蒸気を意味する。真空蒸気は専用の減圧装置によって作られる。装置が大気圧下に設置される以上、沸点以下の抽出温度における飽和水蒸気圧に等しい圧力を有する水蒸気だけで占められた気体を得ることは難しい。すなわち水蒸気に対して、抽出結果に大きな影響を与えない程度の他の気体が混入することは避けにくい。本明細書において、「真空蒸気」とは減圧装置の性能を発揮させた上で水蒸気以外の気体、特に空気を、中でも特に酸素を可能な限り除去することで得られる、低温の水蒸気をいうものとする。
「真空蒸気」において、水蒸気の分圧は抽出温度における飽和水蒸気圧の80%以上であることが好ましく、85、90、95、96、97、98、99、99.5、99.6、99.7、99.8、99.9及び100.0%のいずれかでもよい。残余の部分は空気でもよい。
「真空蒸気」中では気液平衡となっていることが好ましい。真空蒸気中では水蒸気から例えばドレンやミストと呼ばれる微小な水の粒が絶えず生じているものと考えられる。また微小な水の粒から絶えず水蒸気が生じているものと考えられる。本実施形態において植物のボディからその成分を抜き出す実体的な役割を果たす媒体が微小な水の粒なのか、それとも水蒸気なのかは特に区別されない。
「抽出温度」は真空蒸気が原料に接するときの真空蒸気の温度である。芳香成分を含む揮発性成分は抽出温度にて原料から放出されるとともに真空蒸気内に混和される。すなわち芳香成分を含む揮発性成分はこの抽出温度にて抽出される。抽出温度は抽出剤である水を蒸発させて水蒸気を得るときの温度でコントロールしてもよい。抽出温度は大気圧下における水の沸点100℃よりも低い。これは上記の「真空蒸気」の説明で述べたとおりである。
「1,8-シネオール(1,8-cineol)」は下記式に示す化合物である。化学式はC1018O。沸点は176~177℃。分子量は154.25。環状エーテル構造を持つモノテルペノイドの一種である。単体は無色から淡黄色澄明の液体であるとともに、爽やかな香りとすっきりした味を持つ。大気に触れると次第に褐色を呈し、一部樹脂化する。ユーカリ精油を蒸留すると99.6%から99.8%の純度の1,8-シネオールが得られる。ユーカリプトール(eucalyptol)やカジェプトール(cajeputol)とも呼ばれる。単にシネオール(cineol)とも呼ばれる。IUPAC系統名で表すと1,3,3-トリメチル-2-オキサビシクロ[2.2.2]オクタン(1,3,3-trimethyl-2-oxabicyclo[2.2.2]octane)である。CAS番号は[470-82-6]。1,8-シネオールの溶け込んだ水は爽やかな良い香りを発する。
Figure 0007249196000001
https://en.wikipedia.org/wiki/Eucalyptolより引用。
「α-ピネン」は下記式に示す鏡像異性体を有する化合物である。化学式はC1016。沸点は155~156℃。分子量は136.24。モノテルペンの1種である。単体は常温常圧では無色の液体で特有の香りをもつ。水に不溶であるが、酢酸・エタノール・アセトンには任意に混和する。鏡像異性体の一つは(1R)-(+)-α-ピネン、CAS番号[7785-70-8]であり、もう一つは(1S)-(-)-α-ピネン、CAS番号[7785-26-4]である。α-ピネンはこれらの総称である。α-ピネンはマツを初めとする針葉樹の特有の芳香を有する。
Figure 0007249196000002
Jonathan Williams, et al., Atmospheric Chemistry and Physics Mirror image hydrocarbons from Tropical and Boreal forests, ATMOSPHERIC CHEMISTRY AND PHYSICS 7(3):973-980, February 2007 with 42のFigure 1より引用。
「リモネン(limonene)」は下記式に示す単環式モノテルペンである。化学式はC1016。沸点は176℃。分子量は136.23。鏡像異性体の一つはD-リモネン(R-(+)-リモネン)、CAS番号[5989-27-5]であり、もう一つはL-リモネン(S-(-)-リモネン)、CAS番号[5989-54-8]である。リモネンはこれらの総称である。リモネンは爽やかな良い香りを発する。これらの鏡像異性体の中でも強いレモン臭がするのはD-リモネンである。
Figure 0007249196000003
Maths skills - Geometry - Developing Understanding - Extracting limonene from oranges, https://www.rsc.org/cpd/resource/RES00001512/geometry/RES00001503?cmpid=CMP00005098より引用。
「ガスクロマトグラフィー」は試料及びキャリヤーガス(移動相)が気体であるクロマトグラフィーである。検出器はTCD(Thermal Conductivity Detector, 熱伝導度型検出器)、FID(Flame Ionization Detector, 水素炎イオン化型検出器)、ECD(Electron Capture Detector, 電子捕獲型検出器)、及びFPD(Flame Photometric Detector, 炎光光度検出器)のいずれかでもよい。固定相はポリジメチルシロキサン(PDMS)で被覆された金属製の撹拌子でもよい。この撹拌子はツイスターと呼ばれる。トラップされる揮発性成分は、抽出液及びその他の液体から常温の大気中に放出されたものでもよい。トラップされる芳香は、植物から常温の大気中に直接放出されたものでもよい。「常温」は20℃±15℃(5~35℃)である(JIS Z 8703)。
「保持時間」はガスクロマトグラフィーにおいて、固定相の設置後から物質が検出器で検出されるまでに掛かる時間をいう。この保持時間からまったく固定相に吸着されない物質が溶出するまでの時間、いわゆるデッドタイム、すなわち空気の保持時間で近似されるもの、を差し引いたものは空間補正保持時間である。一定温度で測定したクロマトグラムにおいては、各成分間の空間補正保持時間の比は温度やキャリヤーガスの種類や流量によってはほとんど変化しない。保持時間は空間補正保持時間として解釈してもよい。
「検出強度」は検出器で検出される物質の数量に比例する測定値である。「検出強度」は抽出物中の各物質のモル比に比例する。
本実施形態に係る抽出物を以下に示す。本発明は下記実施形態及び実施例に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
図1は本実施形態の代表的な抽出物中に含まれる成分をガスクロマトグラフィーによって分析した際のクロマトグラムである。図1を含む全てのクロマトグラムの図面に表された抽出物は例示であり本願発明を限定するものではない。
図1に示す抽出物は水ベースの抽出物である。抽出剤は水である。抽出物は植物の器官から抽出される。水は真空蒸気にしてから植物の器官に接触させることが好ましい。植物の器官は少なくとも1,8-シネオールを含有する。1,8-シネオールは抽出物の有効成分であってもよい。以下、特に断らない限り「原料」又は「植物」の語は抽出の元となる器官を指すものとする。植物は乾燥や発酵させたものではなく生のものが好ましい。
図1に示す抽出物において原料はユーカリ・グロブルス(Eucalyptus globulus)である。ユーカリ・グロブルスはタスマニアン・ブルーガムとも呼ばれる。抽出は真空蒸気によって行う。詳細な抽出条件は実施例で改めて説明する。
図1に示すように抽出物において、1,8-シネオール(Cn)よりも保持時間の長い揮発性成分(Lr)中に、1,8-シネオール(Cn)よりも高い検出強度を示す揮発性成分は観察されない。さらに1,8-シネオール(Cn)よりも保持時間の短い揮発性成分(Sr)中に、1,8-シネオール(Cn)よりも高い検出強度を示す芳香成分も観察されない。したがって1,8-シネオール(Cn)よりも高い検出強度を示す揮発性成分は観察されない。
図2には、100℃以上の常圧蒸気で抽出された抽出物のクロマトグラムが参考として示されている。当該抽出物はいわゆる大気圧下で行う水蒸気蒸留法によりユーカリ・グロブルスから抽出されたものである。いわゆるユーカリ水として従来流通しているものに相当する。1,8-シネオールよりも保持時間の長い揮発性成分(Lr)中に、1,8-シネオールよりも高い検出強度を示す数多くの雑成分が観察される。したがって当該抽出物は本実施形態の抽出物とは異なる。
図3のA、C及びDには本実施形態の他の態様の抽出物のクロマトグラムが示されている。これらの抽出物の詳細な抽出条件は実施例で改めて説明する。図3のBには図1と同じクロマトグラムが示されている。
図3のA及びCに示すように抽出物において、1,8-シネオール(Cn)よりも保持時間の長い揮発性成分(Lr)中に、1,8-シネオール(Cn)よりも高い検出強度を示す揮発性成分は観察されない。
図3のDに示すように、抽出物において1,8-シネオールよりも保持時間の長い揮発性成分(Lr)中に、1,8-シネオールよりも高い検出強度を示す雑成分(Ms)が観察されてもよい。かかる雑成分(Ms)はクロマトグラム中に1種だけであることが好ましい。
図3のA、C及びDに示されるように、1,8-シネオールよりも保持時間の短い揮発性成分(Sr)中には、1,8-シネオールよりも高い検出強度を示す芳香成分は観察されないことが好ましい。
図1並びに図3のA及びCのクロマトグラムに示すように、1,8-シネオール(Cn)は抽出物中のいずれの芳香成分よりも検出強度が高いことが好ましい。1,8-シネオール(Cn)は抽出物中のいずれの揮発性成分よりも検出強度が高いことが好ましい。クロマトグラムにおいて1,8-シネオール(Cn)の検出強度が最も高いことが好ましい。抽出物は最も豊富な芳香成分として1,8-シネオールを含有することが好ましい。
図4には原料となるユーカリ・グロブルスの葉から大気中に直接放出される揮発性成分のクロマトグラムが示されている。ユーカリ・グロブルスの生木から採取した葉を試料とした。ユーカリ・グロブルスの葉の芳香に含まれる代表的な成分は1,8-シネオール(70~90%)、リモネン(~10%)及びα-ピネン(10~20%)である。
図4に代表的に描かれるように、ユーカリ・グロブルスの葉そのものの発する芳香では、1,8-シネオール(Cn)よりも保持時間の長い揮発性成分(Lr)中に、1,8-シネオール(Cn)よりも高い検出強度を示す揮発性成分は観察されない。したがって1,8-シネオール(Cn)よりも高い検出強度を示す芳香成分は観察されない。
図4と図1及び図3の各図との比較から、本実施形態の抽出物は植物そのものの発する芳香に類似する芳香を発生させることが分かる。これに対して、例えば図2に示すような100℃以上の常圧蒸気によって得られるユーカリ水は、図4に示す植物そのもの発する芳香と異なる。一方、図1及び図3に示すような抽出物は植物そのものの発する芳香により近い芳香を発生させる。
図4に示すように原料となる植物において、その器官はα-ピネン(Pn)をさらに含有していてもよい。ただし発明者らは、α-ピネン(Pn)は芳香により爽やかさを演出することには適していないと考えた。一方でα-ピネンを含有する植物は、1,8-シネオールを初めとする芳香成分であって爽やかな芳香を有するものも豊富に含有することもある。ユーカリ・グロブルスはそのような植物の一つである。図4と図1の比較から分かるように、このような植物の抽出物からはα-ピネン(Pn)が実質的に取り除かれていることが好ましい。これにより抽出物において爽やかな芳香を有する成分をより強く感じ取ることができる。
図1に示すように、抽出物をガスクロマトグラフィー分析した時には、1,8-シネオール(Cn)を初めとする芳香成分が観察されても、α-ピネン(Pn)は実質的に観察されないことが好ましい。そのような成分構成を有する抽出物では、1,8-シネオールを初めとする芳香成分の爽やかな香りが、α-ピネンの香りの影響を受けることが抑えられる。
1,8-シネオールの検出強度を基準としたα-ピネン(Pn)の検出強度は、図4の植物から直接放出される芳香に比較して、図1の抽出物の芳香において低下している。言い換えれば真空蒸気による抽出は、1,8-シネオール(Cn)を取得する一方で、α-ピネン(Pn)の混入を抑制するのに役立つ。
図4に示すように原料となる植物の器官はα-ピネンに加えてリモネンをさらに含有していてもよい。また植物の器官から発するα-ピネンはリモネンよりも豊富であってもよい。しかしながら図1に示すように抽出物中のリモネンはα-ピネンよりも検出強度が高いことが好ましい。リモネンは爽やかな香りを有する芳香成分である。リモネンと1,8-シネオール(Cn)との混合物は爽やかな香りを有する。
図4のクロマトグラムに示されるように、リモネン(Lm)は1,8-シネオール(Cn)よりも短い保持時間を有する。
抽出物をガスクロマトグラフィー分析した時、一般的にリモネンはα-ピネンよりも検出強度が高い。
原料となる植物の器官は1,8-シネオールを豊富に含むことが好ましい。1,8-シネオールを豊富に含むことが知られている植物としてはフトモモ科ユーカリ属(Eucalyptus)が挙げられる。またその他の属にも1,8-シネオールを豊富に含む植物が知られる。
原料となる植物の器官はさらにリモネンを豊富に含むことが好ましい。植物の器官中の1,8-シネオールの含有量はリモネンの含有量よりも多いことが好ましい。植物はさらにα-ピネンを含んでいてもよい。植物の器官中のα-ピネンの含有量はリモネンの含有量より多くてもよい。植物の器官中のα-ピネンの含有量は1,8-シネオールの含有量より少なくてもよい。
ユーカリ属の中でもユーカリ・ラジアタ(Eucalyptus Radiata)、ユーカリ・グロブルス(Eucalyptus globulus)、ユーカリ・シトリオドラ(Eucalyptus citriodora)、ユーカリ・スミティ(Eucalyptus smithii)、ユーカリ・スタイゲリアナ(Eucalyptus staigeriana)、及びユーカリ・ポリグラクテア(Eucalyptus polybractea)からなる群から選ばれる一以上のものが好ましい。これらをさらにその他のユーカリ属の植物やその他の属の植物を併用してもよい。原料はユーカリ・グロブルスが好ましい。
ユーカリ属を原料とする場合、原料となる器官に葉が含まれることが好ましい。原料となる器官は葉と茎とを含む枝でもよい。原料となる器官は幹を含んでいなくてもよい。原料となる器官は葉だけでもよい。
その他の属の植物としてはタイム・マストキナ(Thymus mastichina)、カユプテ(Melaleuca leucadendra)、ローレル(Laurus nobilis)、ラヴィンサラ(Cinnamomum camphora)、ローズマリー(Rosmarinus officinalis)、ニアウリ(Melaleuca quinquenervia)、カルダモン(Elettaria cardamomum)、及びマートル(Myrtus communis)からなる群から選ばれる一以上のものが好ましい。これらをさらにユーカリ属の植物を併用してもよい。
一態様において抽出物は以下のようにユーカリ属、好ましくは上記6種のユーカリ属、さらに好ましくはユーカリ・グロブルスから抽出された水ベースの抽出物である。抽出にあたり、大気圧以下の真空蒸気を器官に接触させる。100℃未満の、好ましくは35~60℃の、さらに好ましくは40~55℃の、より好ましくは45~50℃の真空蒸気を原料に接触させる。原料から芳香成分を含む揮発性成分を取り込んだ真空蒸気を水に混和することで水ベースの抽出物が得られる。例えば水中で真空蒸気をバブリングさせてもよい。バブリングに用いる水は10~50℃、好ましくは10~45℃、さらに好ましくは15~35℃、より好ましくは10~30℃、特に好ましくは20±5℃に保たれている。
図5を用いて真空蒸気に依拠した抽出手段の具体例を説明する。抽出装置30は閉環系20を有する。閉環系20は閉環状の気密経路である。閉環系20に真空蒸気を供給するとともに循環させる。真空蒸気の温度、すなわち抽出温度は100℃未満、好ましくは35~60℃、さらに好ましくは40~55℃、より好ましくは45~50℃である。
図5に示すようにポンプ28は閉環系20に接続されている。ポンプ28は閉環系20内から少なくとも蒸気以外の気体を排出するために設けられている。ポンプ28は減圧装置として機能する。ポンプ28により閉環系20内が減圧される。閉環系20内の圧力が少なくとも抽出温度における飽和水蒸気圧以下となるまでポンプ28に気体の排出を行わせる。
図5に示すように閉環系20は供給装置21及び被動機24を備える。供給装置21は原料容器22及び貯留部26を備える。貯留部26には抽出剤25が予め注入されている。抽出剤25は不図示のヒーター等により抽出温度まで加熱される。貯留部26より抽出温度の蒸気が供給装置21内に継続的に供給される。
図5において抽出剤25は水である。水は精製水でもよい。水に添加剤を加えてもよい。添加剤は原料から抽出された成分に対して作用するものでもよい。添加剤は抽出された成分を保護するものでもよい。添加剤は抽出装置30を保護するものでもよい。
図5に示す閉環系20において、抽出温度は所定時間経過ごとに段階的に上げてもよい。例えば抽出温度は30分ごとに40℃から55℃まで5℃ずつ段階的に変化させてもよい。
閉環系20内の流体は被動機24により供給装置21に向かって吹き出される。閉環系20内には流体の流れが生じる。流体はポンプ28により常に排出され、流体中には常に抽出温度の水蒸気が供給される。閉環系20で流体が循環することで閉環系20内の流体が真空蒸気に変わる。真空蒸気の一部は原料容器22内を通過する。真空蒸気は原料であるユーカリ・グロブルスの葉より芳香成分を取り込む。
図5に示すように閉環系20はサイクロンセパレーター31、冷却器32及びバブリング装置33を備える。冷却器32は例えばリービッヒ冷却器、デュワー冷却器、アリーン冷却器、グラハム冷却器、ジムロート冷却器、フリードリヒ冷却器、ホプキンス冷却器及びウエスト冷却器のいずれかでもよい。バブリング装置33は予め精製水を貯えている。芳香成分を取り込んだ真空蒸気をサイクロンセパレーター31、冷却器32、バブリング装置33に対してこの順で流させる。
図5において、サイクロンセパレーター31では真空蒸気中のドレンが回収される。冷却器32では真空蒸気に溶け込んだ成分の内、揮発性が低く凝縮しやすい成分が回収される。これらの成分には芳香成分でないものも含まれる。バブリング装置33では真空蒸気を水中に混和させる。これにより水ベースの抽出物がバブリング装置33内に取得される。
図5に示すサイクロンセパレーター31は省略してもよい。閉環系20は冷却器32及びバブリング装置33のみ有していてもよい。さらに冷却器32は省略してもよい。閉環系20はバブリング装置33のみ有していてもよい。
図5に示すようにバブリング装置33で収集されなかった真空蒸気は再利用される。真空蒸気は被動機24を経由して供給装置21に戻る。真空蒸気は再度原料から芳香成分を抽出する。閉環系20内で真空蒸気は循環する。循環を繰り返す中で真空蒸気には原料から抽出された芳香成分が濃縮されていく。濃縮された芳香成分はバブリングにより時間をかけてバブリング装置33内の水に蓄積される。これらのステップは抽出装置30内で連続的に行われる。
図5に示す抽出装置30を用いて抽出するための実施態様を示す。まず閉環系20内に100℃未満の、好ましくは35~60℃の、さらに好ましくは40~55℃の、より好ましくは45~50℃の水蒸気を供給するとともに循環させる。閉環系20内をポンプ28によって減圧することで閉環系20内に循環する真空蒸気を生成する。真空蒸気の温度は100℃未満、好ましくは35~60℃、さらに好ましくは40~55℃、より好ましくは45~50℃である。真空蒸気を原料容器22内に配置された原料に接触させる。
図5に示す閉環系20内を循環する真空蒸気をバブリング装置33の水中でバブリングさせることで精製水と真空蒸気の混和を行う。バブリング装置33は例えば発泡用のノズルに真空蒸気を通すことで水中に泡を供給するものでもよい。
図5に示すバブリング装置33でバブリングを行う際、真空蒸気を冷却器32で予め冷却してもよい。冷却器32の設定温度は10℃以下でもよく、4~10℃でもよい。冷却器32の設定温度は5℃,6℃,7℃,8℃及び9℃のいずれかでもよい。
図5において冷却器32で真空蒸気を冷却する際、サイクロンセパレーター31で処理することで真空蒸気からドレンを予め除去してもよい。
図5に示すバブリング装置33でバブリングを行う際、バブリング装置33内にあらかじめ注入されていた精製水は真空蒸気によって少しずつ温められる場合がある。バブリング装置33内の水温はバブリングにより得られる抽出物中の芳香成分の組成に影響を与える。そこで例えばバブリング装置33内の水を一定の温度に保たれることが好ましい。これにより抽出物の組成の再現性が高まる。水の温度を10~50℃、好ましくは10~45℃、さらに好ましくは15~35℃、より好ましくは10~30℃、特に好ましくは20±5℃に保つ。例えばバブリング装置33を、温度調整機能を持った水浴装置によって冷やすことで水を一定の温度に保ってもよい。
図5には示していないが、例えば芳香成分が原料から抽出されることを促進するために、真空蒸気による抽出と同時にマイクロ波を初めとするエネルギー波を原料に対して照射してもよい。ただし原料の状態を確認するために明かりを原料に照射する程度のことはこれに含まれない。一方でエネルギー波、特にマイクロ波の照射はしなくともよい。好ましい一態様において真空蒸気による抽出と同時にマイクロ波を原料に対して照射することを要しない。
図5に示す抽出装置30によって植物の器官より抽出物が得られる。抽出物には植物由来の多様な芳香成分が含まれる。多様な芳香成分のなかでも1,8-シネオールが豊富に含まれている。抽出物からは1,8-シネオールの爽やかな香りを中核として植物らしい芳香を感じられる。人工的に合成した1,8-シネオール及びその他の成分を混合しただけでは抽出物と同等の組成物を得ることは困難である。
図5に示す抽出装置30は例示であり、他の抽出装置であって低温の真空蒸気を循環させながら抽出できるものであれば、本実施形態の抽出物を得るのに適すると考えられる。抽出装置30は循環型であるため、芳醇な抽出物を得るのに適している。
なお植物の器官から得た水ベースの抽出物に、人工的に1,8-シネオールを添加することが想定される。あるいは1,8-シネオールが豊富でない抽出物を、1,8-シネオールを豊富に含有する組成物に変化させることもできる。本実施形態の抽出物はこのように水ベースの抽出物に対して人工的に1,8-シネオールを添加したものでないことが好ましい。同様に水ベースの抽出物に対して人工的にリモネンを添加したものでないことが好ましい。
本実施形態の抽出物に1,8-シネオールやリモネンを補うことは本願発明のスコープに含まれる。すなわち水ベースの抽出物が、1,8-シネオールが最も豊富な芳香成分であるものか、1,8-シネオールよりも保持時間の長く、1,8-シネオールよりも豊富な芳香成分が一種だけ含まれるものである場合に、当該抽出物中の1,8-シネオールをさらに補強するためにこれらのいずれかを当該抽出物に添加することは本願発明の一実施態様である。同様の目的で抽出物に対して人工的にリモネンを補ってもよい。
抽出物は化粧品の原料に適する。抽出が有機溶媒に依存していないことから抽出物の肌への影響は小さいことが期待される。抽出物を歯磨きペースト、フレグランス、除菌剤、消臭スプレー、リップクリーム、シャンプー、トリートメント、リンス、ハンドクリーム、アロマ入浴剤、フェイシャルパック、アロマキャンドル及びその他の化学製品に応用してもよい。抽出物を食品に添加してもよい。抽出物をアロマテラピーに応用してもよい。アロマテラピーは所定の装置に本抽出物を導入することで実行されてもよい。アロマテラピーは個人が利用するもののみならず、商業施設やオフィスビルなどのパブリックスペースで利用されるものでもよい。アロマテラピーはサービスとして提供されるものでもよい。
[実施例1]
図1は真空蒸気で抽出された抽出物のクロマトグラムである。抽出条件は以下のとおりである。図5に示す抽出装置30を用いる。原料はユーカリ・グロブルスの葉10gである。抽出温度は45℃である。抽出時間は1時間である。庫内の温度が45℃に達した時を抽出の開始時間とする。貯留部26には精製水100mLを予め注入しておく。抽出終了後に貯留部26に残る精製水の体積は120mLである。
図5にならい、サイクロンセパレーター31によるドレンの分離、冷却器32による真空蒸気の冷却、及びバブリング装置33による抽出液の生成を連続的に行う。冷却器32はリービッヒ冷却器である。
サイクロンセパレーターには特段の温度調節機能を設けてないため、抽出温度に等しい45℃の条件で真空蒸気からドレンを回収する。リービッヒ冷却器は4℃に保つ。したがって45℃の真空蒸気は4℃に急冷される。これにより凝縮しやすい成分が優先的に回収される。
リービッヒ冷却器を通過した真空蒸気に対してバブリングが行われる。バブリング装置に対して20℃前後の精製水100~1000mL程度を予め導入する。抽出終了後にバブリング装置中に得られる抽出液の体積は100~1000mL程度である。体積の増加分は貯留部26に注入された精製水に由来する。特に言及のない限りその他の例において同条件にて抽出作業を行う。
抽出物の分析は微量香気成分分析装置で行う。当該装置はガスクロマトグラフィーにより芳香中の成分を分析する。抽出液をより大気中に放出される揮発性成分をツイスターにトラップすることで固定相を得る。トラップは30分間ツイスターに芳香を接触させることで行う。ガスクロマトグラフィーの条件は次のとおりである。
微量香気成分分析装置の名称は微量香気成分分析装置 スニッフィング装置付き(アジレント・テクノロジー社,6890N)である。キャリヤーガスはヘリウムである。キャリヤーガスの温度は200℃である。検出器は四重極から、トリプルアクシス方向にオフセット配置されるものである。特に言及のない限りその他の例において同条件にて分析した。
[参考例1]
図2は100℃以上の常圧蒸気により原料から抽出された抽出物のクロマトグラムである。抽出に用いられる水蒸気は100℃以上である。
[実施例2]
図3は抽出温度を40℃(A)、45℃(B)、50℃(C)、55℃(D)としたときの各温度の真空蒸気で抽出された抽出物のクロマトグラムである。Bのクロマトグラムは図1のクロマトグラムと同一である。1,8-シネオールが最も豊富なのは45℃(B)で抽出された抽出物である。抽出温度を45℃~50℃とすることで、1,8-シネオールの抽出量を特に高めることができる。
[参考例2]
図4は原料となるユーカリ・グロブルスの葉から大気中に直接放出される揮発性成分のクロマトグラムである。習熟したテスターが香りを確認したところ、図3の各クロマトグラムに表された抽出物の芳香は植物そのものの発する芳香により近いものであった。さらに注意深く観察したところ、図3の各クロマトグラムに表された抽出物の芳香は、図4に示す葉から直接放出される芳香よりも、より柔らかで、より爽やかであった。これは抽出物からα-ピネンが実質的に取り除かれていることの効果であると考えられる。
[参考例3]
図6はユーカリ・グロブルスの精油のクロマトグラムである。精油を精製水にて100倍希釈し、希釈液の発する芳香を上記同様に分析した。精油は1,8-シネオールを豊富に含む。しかしながら1,8-シネオール(Cn)よりも保持時間の長い揮発性成分(Lr)やα-ピネンもまた大量に含有する。
[実施例3]
図7は図5に例示されるサイクロンセパレーター31、冷却器32及びバブリング装置33のそれぞれで回収した液体の分析結果である。Aはサイクロンセパレーターで回収されたドレンのクロマトグラムである。Bはリービッヒ冷却器から得られた凝縮液の抽出物のクロマトグラムである。
図7のCはバブリングで得られた抽出物のクロマトグラムを表す。Cのクロマトグラムは図1と同一である。Dは葉から直接得られた芳香のクロマトグラムを比較のために表示している。Dのクロマトグラムは図4と同一である。
図7のA及びBではリモネンのピークは見いだせない。またBのパターンは図2の100℃以上の常圧蒸気で抽出された抽出物のパターンに類似している。A及びBに比べてCではα-ピネン(Pn)のピークが著しく小さい。また1,8-シネオール(Cn)よりも保持時間の長い揮発性成分(Lr)も少ない。
[実施例4]
図8~10は抽出温度を変えながら連続抽出した際の抽出物のクロマトグラムである。まず新鮮な原料に対して45℃で30分抽出を行う(図8)。その後、45℃での抽出が終わった原料に対して引き続き50℃で30分抽出を行う(図9)。その後、50℃での抽出が終わった原料に対して引き続き55℃で30分抽出を行う(図10)。
図8~10に示すように各温度帯で抽出物中の揮発性成分のバランスが異なっている。温度が上がるにつれて1,8-シネオール(Cn)よりも保持時間の短い揮発性成分(Sr)が減少する。また1,8-シネオール(Cn)よりも保持時間の長い揮発性成分(Lr)が増加する。
[実施例5]
図11~15は様々な温度でバブリングした際の抽出物のクロマトグラムである。抽出温度は40℃に変更されている。バブリング装置を10~50℃の所定の温度にて水浴させることでバブリング装置内の温度が10~50℃に保たれている。図11は10℃。図12は20℃。図13は30℃。図14は45℃。図15は50℃。
いずれのバブリング温度でも豊富な1,8-シネオール(Cn)が得られる。20℃(図12)及び45℃(図14)では1,8-シネオール(Cn)が最も豊富な揮発性成分である。すなわち1,8-シネオール(Cn)が最も豊富な芳香成分である。他の温度帯でも1,8-シネオール(Cn)よりも豊富な雑成分(Ms)は、保持時間の長い揮発性成分(Lr)中には一種類しか見られない。したがって1,8-シネオール(Cn)よりも豊富な芳香成分は、保持時間の長い揮発性成分(Lr)中にはないか、一種類しかない。
20 閉環系、21 供給装置、22 原料容器、24 被動機、25 抽出剤、26 貯留部、28 ポンプ、30 抽出装置、31 セパレーター、32 冷却器、33 バブリング装置、Cn シネオール、Lm リモネン、Lr 1,8-シネオール(Cn)よりも保持時間の長い揮発性成分、Ms 雑成分、Pn α-ピネン、Sr 1,8-シネオール(Cn)よりも保持時間の短い揮発性成分

Claims (12)

  1. 植物の器官であって少なくとも1,8-シネオールを含有するものから抽出した水ベースの抽出物を得る方法であって、
    40~55℃の真空蒸気を植物に接触させ、前記真空蒸気を水に混和することで前記抽出物を得ることを含み、
    当該抽出物をガスクロマトグラフィー分析した時、1,8-シネオールよりも保持時間の長い芳香成分の中に、1,8-シネオールよりも高い検出強度を示す芳香成分が観察されない、又は1種だけ観察される、
    方法。
  2. 当該抽出物をガスクロマトグラフィー分析した時、1,8-シネオールよりも保持時間の長い芳香成分の中に、1,8-シネオールよりも高い検出強度を示す芳香成分が観察されない、
    請求項1に記載の方法。
  3. 当該抽出物をガスクロマトグラフィー分析した時、1,8-シネオールは他のいずれの芳香成分よりも検出強度が高い、
    請求項1に記載の方法。
  4. 前記植物の器官はα-ピネンをさらに含有するものの、
    当該抽出物にα-ピネンは含有されない、
    請求項3に記載の方法。
  5. 前記植物の器官はリモネン及びリモネンよりも豊富なα-ピネンを含有するものの、
    当該抽出物をガスクロマトグラフィー分析した時、リモネンはα-ピネンよりも検出強度が高い、
    請求項3に記載の方法。
  6. 前記植物としてユーカリ・グロブルス(Eucalyptus globulus)が選択され、
    40~50℃の真空蒸気を前記植物の葉に接触させ、その後、
    前記真空蒸気を20±5℃の水に混和する、
    請求項4又は5に記載の方法。
  7. 前記植物はユーカリ・ラジアタ(Eucalyptus Radiata)、ユーカリ・グロブルス(Eucalyptus globulus)、ユーカリ・シトリオドラ(Eucalyptus citriodora)、ユーカリ・スミティ(Eucalyptus smithii)、ユーカリ・スタイゲリアナ(Eucalyptus staigeriana)、及びユーカリ・ポリグラクテア(Eucalyptus polybractea)からなる群から選ばれる一以上のものであり、
    少なくとも葉を含む器官から抽出物が抽出される、
    請求項1に記載の方法。
  8. 閉環状の気密経路内に40~55℃の水蒸気を供給するとともに循環させつつ、前記気密経路内をポンプによって減圧することで前記気密経路内に循環する前記真空蒸気を生成し、
    前記真空蒸気を前記気密経路内に配置された前記植物に接触させる、
    請求項1に記載の方法。
  9. 前記循環する前記真空蒸気を水中でバブリングさせることで前記混和を行う、
    請求項8に記載の方法。
  10. 前記バブリングを行う際、前記真空蒸気によって温められることになる水を連続的に冷却することで、水の温度を20±5℃の範囲に保つ、
    請求項9に記載の方法。
  11. 前記バブリングを行う際、前記真空蒸気を10℃以下に設定した冷却器で予め冷却してからバブリングする、
    請求項10に記載の方法。
  12. 前記冷却器で前記真空蒸気を冷却する際、サイクロンセパレーターで処理することで前記真空蒸気からドレンを予め除去する、
    請求項11に記載の方法。
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