以下、本発明の一例としての実施の形態に係るオーブントースターTについて説明する。オーブントースターTは、被調理物を加熱調理可能なものである。被調理物としては、パン、冷凍品、菓子等の様々な食品がある。
なお、オーブントースターTの前後方向、左右方向、上下方向は、ユーザーが扉50方向に見る正面視を基準とする。即ち、図1の状態において、扉50側を前方とし、扉50と反対側を後方とし、前後方向に水平に直交する方向を左右方向とし、前後方向に垂直に直交する方向を上下方向とする。さらに、扉50においては、扉50の前方側、即ち、ユーザー側の面を扉50の前面、扉50の後方側、即ち、調理室30側の面を扉50の後面または背面とする。
図1、図2に示すように、オーブントースターTは、本体部20、内壁部材25、開閉可能な扉50、被調理物を載置可能な調理網31、上側ヒーター33、下側ヒーター34、操作パネル40等を有する。なお、上側ヒーター33、下側ヒーター34は、本発明の加熱手段に相当する。
本体部20は、オーブントースターTの外郭を形成する鋼板製の板状部材である。本体部20は、全体が横長の直方体構造となっている。本体部20には、前方側を除いた上外壁20a、左右一対の側外壁20b、後外壁20c、底外壁20d等を有している(図1~3参照)。
図3に示すように、底外壁20dの直上には、前後方向に移動可能で、下側開口27から落下するパン等の食品くずを受ける受皿21が収納自在に設けられている。受皿21の内部に食品くずが溜まると、受皿21を前方側に引き出して、受皿21内の食品くずを除去する。その後、受皿21を元の位置に押し込んで使用することになる。
底外壁20dの下方には、本体部20の荷重を支持する4個の脚22が設けられている。
内壁部材25は、図3に示すように、本体部20内に配置される高い熱反射特性を有する鋼板製の部材である。内壁部材25は、その内部に被調理物を調理可能な調理室30を形成し、その内面には、例えば、シリコン加工が施される。
そして、内壁部材25の前面部には、正面視矩形状の前側開口26を有し(図2、5参照)、その下部の受皿21の上方には、平面視矩形状の下側開口27を有する(図3参照)。なお、前側開口26は、本発明の調理室の開口部に相当する。
内壁部材25は、第1内壁部材25aと、第2内壁部材25bとを有する。そして、調理室30は、第1内壁部材25a、第2内壁部材25b、扉50、受皿21等によって囲まれた空間に形成されることになる。
第1内壁部材25aは、上内壁25aa、左右一対の側内壁25ab、及び後内壁25acを有する(図3参照)。第1内壁部材25aは、一体の板状部材であり、上内壁25aa、左右一対の側内壁25ab、後内壁25acは、それぞれ折り曲げて形成されている。
なお、上内壁25aa、左右一対の側内壁25ab、後内壁25acは、別体のものでもよい。また、第1内壁部材25aと第2内壁部材25bは、別体のものを示すが、1部材からなるものでもよい。
上内壁25aaの一部、後内壁25acの一部及び第2内壁部材25bは、調理網31の方向に向かうように傾斜しており、上側ヒーター33及び下側ヒーター34からの輻射熱をこれら傾斜面で反射させて被調理物に向かわせることができる。
第2内壁部材25bは、調理網31前方の下側に設けられており、操作パネル40との間に内部空間35を形成する。そして、内部空間35内には、調理室30の温度を調整するサーモスタット43及び電気接点等からなる制御装置46が設けられる(図3参照)。なお、制御装置46は、上側ヒーター33及び下側ヒーター34を制御する。
図3に示すように、第1内壁部材25aの左右一対の側内壁25abには、それぞれ調理網31を案内する水平なガイド溝28が設けられている。このようなガイド溝28を設けることにより、扉50の開放に連動して、調理網31を後方から前方に向けて水平状態で引き出すことができ、被調理物の載置と取り出しが容易になる。
調理網31には、調理時に上面に被調理物が載置される金網31aと、金網31aを支持する枠体31bとを有する。
枠体31bは、金網31aの外周側の下部に位置し、金網31aを固定支持する。枠体31bの左右には、それぞれ先端に図示しない係止部を有する棒状部材31baを有し、棒状部材31ba先端の係止部は、扉の左右端に設けられるリンク部材50a(図2参照)に係合しており、図2に矢印で示すように、扉50が開蓋すると調理網31は、前方に向かって水平に移動する。
そして、扉50を閉じた状態では、調理網31は、ガイド溝28に沿って後方側に向かって水平に移動して支持される。なお、図2に示すように、調理網31の上部には、調理容器32を載置し、調理容器32内に被調理物を入れて調理することもできる。
図3に示すように、左右一対の側内壁25abの上部中央には、1個の上側ヒーター33が左右に伸びる形態で取り付けられる。また、左右一対の側内壁25abの下部には2個の下側ヒーター34、34が左右に伸びる形態で取り付けられる。
そして、上側ヒーター33は、調理網31の上方に位置し、調理網31上の被調理物を上方から加熱する。また、2個の下側ヒーター34、34は、調理網31の下方に位置し、調理網31上の被調理物を下方から加熱する。
図3で示すように、1個の上側ヒーター33と2個の下側ヒーター34、34は、三角形を形成し、それらの中心が調理網31の中央になるように配置されている。そのため調理網31上の被調理物をより均一に加熱することができるようになる。
また、1個の上側ヒーター33と、2個の下側ヒーター34、34は、制御装置46により全て通電可能にしたり、一部のみ通電可能にすることもできる。なお、ヒーターは、3個に限らず、2個でも4個でもそれ以外であってもよい。
図1に示すように、操作パネル40は、扉50の下方に設けられる正面視横長矩形状の鋼板製部材である。操作パネル40には、左側部分に温度設定摘み41が配置され、右側部分にタイマー設定摘み42が配置されている。
そして、操作パネル40の後方側には、第2内壁部材25bが設けられることになる。なお、操作パネル40は、側方に設ける縦長のものでもよいし、温度設定摘み41とタイマー設定摘み42とは左右が逆でもよい。
温度設定摘み41は、被調理物の種類や被調理物の量に応じて、調理室30内の温度を設定するものである。温度設定摘み41の操作に基づいて設定される設定温度により、サーモスタット43における電気接点のオン/オフの時期を調節する。
タイマー設定摘み42は、被調理物の種類や被調理物の量によって、加熱時間を設定するものである。タイマー設定摘み42の操作に基づく設定時間により、1個の上側ヒーター33と2個の下側ヒーター34、34に対する通電時間が変更可能である。
サーモスタット43は、上側ヒーター33及び下側ヒーター34、34の温度を調節する装置であり、感熱板44及びバイメタル45を有する。バイメタル45は、温度により変形する部材であり、サーモスタット43の対向する2つの電気接点のオンオフを切り替えて、1個の上側ヒーター33と2個の下側ヒーター34、34に対する通電をオンオフする。
感熱板44は、アルミ製の板状部材で構成されており、第2内壁部材25bに配置されている。感熱板44は、調理網31よりも下方に位置し、調理室30の温度をバイメタル45に伝えて対向する2つの電気接点をオンオフする。
操作パネル40の温度設定摘み41を回動すると、対向する2つの電気接点の接触強さが変わり、電気接点がオンオフする温度を変更することができる。
扉50の下方背面側には、円弧状に湾曲した反射板47が配置されている。図3に示すように、反射板47は、扉50が閉じられると第2内壁部材25bを後方側から覆うように位置し、調理時に下側ヒーター34からの輻射熱を調理網31上に載置される被調理物の方向に反射するとともに、第2内壁部材25b内の内部空間35の過度の加熱を防止する。
そして、扉50の開蓋時、反射板47は、扉50の前方側への回動に伴って前方側に引き出されて、操作パネル40の上方および前方を覆うように位置にする。このように、扉50が開かれた状態において、反射板47は、調理網31上に載置される被調理物などがこぼれ落ちて操作パネル40上を汚すことを防止する。即ち、反射板47は、カバー部材としての機能も有する。
次に、扉50の構成について詳細に説明する。図4は、扉50を縦方向に切断した状態を横方向から見た斜視図であり、図5は、扉50の断面図であり、図6は、扉50の主要部材の分解斜視図であり、図7は、扉50の下部部分の拡大斜視図であり、図8は、扉50の右側面図である。なお、以下の説明においては、図1、図3にて示すように、扉50が閉じた状態を基準として説明する。
扉50は、正面視矩形状で、所定の厚さを有する全体として直方体状の部材で、扉50全体の外殻を構成する本体プレート51と、扉50の上方に配置されて、扉50の上部前面と、上部と、上部左右両側面とを覆う上部プレート60と、扉50の下部に配置されて、扉50の下部前面と、下部と、下部後面とを覆う下部プレート65と、外側ガラス52と、内側ガラス53と、外側ガラス52と内側ガラス53との間に介在するガラス押圧部材70を備えている。なお、外側ガラス52は、本発明の第1のガラスに相当し、内側ガラス53は、本発明の第2のガラスに相当する。
外側ガラス52は、例えば縦123mm、横373mm、厚さ3mmの透明の強化ガラスを用いている。図1に示すように、外側ガラス52は、扉50の前面の大部分を占めるように構成されており、オーブントースターT全体としてのデザイン性を高めている。
内側ガラス53は、面積が外ガラスよりも小さく、例えば縦73mm、横297mm、厚さ3mmの透明の強化ガラスを用いている。なお、外側ガラス52と内側ガラス53の大きさや材料は一例であって、扉50のデザイン性や、調理室30内の被調理物の状態を良好に視認できる光の透過性、耐熱性などにより適宜選択可能である。
本体プレート51は、本体部分55と、脚部分56とを有する全体として鳥居形状の部材である(図6参照)。
本体部分55は、中央部に中央開口55aを有する口形状の部分である。中央開口55aの面積は、内側ガラス53の面積より小さくされており、その前方側(外側ガラス52側)には、内側ガラス53の後方側の外周面が嵌入する口形状の嵌入溝55bを有する。
そして、口形状の嵌入溝55bには、内側ガラス53後方の外周面が嵌入して密着し、調理室30内から本体部分55内(即ち、第1の内部空間75内)への洩れを防止するようにしている。なお、本体部分55の背面は、調理室30の前面になる。
また、本体部分55の上部は、前方側に略直角に折り曲げられて上端部55cを形成し、本体部分55の左右側部は、前方側に略直角に折り曲げられて左右の側端部55d、55dを形成する。そして、左右の側端部55d、55dのそれぞれには、上下方向に複数個、具体的には6個の縦長の側面スリット55eが形成されている(図6、8参照)。この縦長の側面スリット55eは、扉50内の第1の内部空間75の外側に位置する第2の内部空間78に連通する。なお、これら複数の側面スリット55eは、本発明の複数の開口のうちの一部である上方開口に相当する。
本体部分55の中央開口55aの上方の壁部には、前後方向に開口する4個のビス挿通口55fを有する。この4個のビス挿通口55fは、後記の上部プレート60の4個の穴60dに対応する位置に設けられており、上部プレート60の4個の穴60dに把手61の4個の突起61aのそれぞれが嵌入されると、把手61の4個の突起61aの先端が対向する。なお、本体部分55の左右の壁部及び下方の壁部にも複数のビス挿通口が設けられており、扉50を一体化する際には、それらビス挿通口からビスを挿通し、所定のビス穴に螺合することになる。
脚部分56は、本体部分55の左右下端部から下方に伸びる本体部分55と一体の部分であり、その前方には、それぞれカバープレート57、57が嵌合される。そして、それぞれの脚部分56とカバープレート57との下端部には、ヒンジ軸58が左右方向に取り付けられる(図3、6参照)。
ヒンジ軸58は、脚部分56と操作パネル40との間に設けられており、扉50は、ヒンジ軸58を中心にして図2に矢印で示すように回動する。
上部プレート60は、扉50が閉じた状態での上部に配置される断面がキャップ状で左右方向に細長い部材で、扉50前面の上部を構成する前面部分60aと、この前面部分60aの上端部から後方に略直角に折り返されて扉50の上面を構成する上面部分60bと、前面部分60aの左右両端部からそれぞれ後方に略直角に折り返されて扉50上部の左右両側面を構成する左右の側面部60c、60cとを有している。
上部プレート60は、ユーザの目に触れやすい場所に配置されるものであり、白色などの目立つ色で着色されて外観をよくするとともに、扉50の前面に配置される外側ガラス52の上端部を前方から保持する役割を担っている。
また、上部プレート60の前面部分60aには、把手61を取り付けるための複数の穴、具体的には4個の穴60dが設けられている。
扉50の上方には、把手61が取り付けられる。把手61は、正面視で上部プレート60の前面部分60aとほぼ同形の横方向に細長い矩形状のもので、その後面には後方に向かって突き出る複数の突起、具体的には4個の突起61aを有する(図6参照)。
そして、把手61の4個の突起61aには、前後方向に伸びる中心に沿って図示しない雌ネジが切られている。
把手61は、以下のように取り付けられる。まず、把手61の4個の突起61aを、上部プレート60の前面部分60aの4個の穴60dのそれぞれに挿通する。すると、把手61の4個の突起61aは、本体部分55の4個のビス挿通口55fのそれぞれに対向する。次いで、本体部分55の4個のビス挿通口55fの背面(調理室30側)から図示しない4個のビスを、把手61の4個の突起61aの中心軸に沿った雌ネジのそれぞれに螺合して取り付けることになる。
下部プレート65は、扉50の脚部分56以外の部分の底部を覆う断面が容器状で横方向に細長い部材で、図5~7に示すように、外側ガラス52の底部を支える底面部分65aと、この底面部分65aの前端から上方に略直角に折り返されて外側ガラス52の下部前面を覆う前面部分65bと、前面部分65bの上端から更に後方に略直角に折り返されて外側ガラス52下部の前面を保持する上面部分65c(図5、7参照)と、底面部分65aの後端から上方に略直角に折り返されて扉50下部の背面側を構成する後面部分65d(図5~7参照)とから構成されている。
そして、図5、7に示すように、下部プレート65の上面部分65cの後端は、後述するガラス押圧部材70との間で主として外側ガラス52の下部を保持する。
また、底面部分65aには、前後方向に細長い底面スリット66が複数個左右方向に並んで形成されている(図7参照)。この底面スリット66は、扉50内の第1の内部空間75の外側、即ち、周囲に位置する第2の内部空間78に連通する。なお、これら複数の底面スリット66は、本発明の複数の開口のうちの一部である下方開口に相当する。
ガラス押圧部材70は、筒状部71と、前側フランジ部72と、後側フランジ部73とを有する部材で、外側ガラス52と内側ガラス53との間に介在し、外側ガラス52と内側ガラス53とを同時に保持する。
筒状部71は、図6に示すように前面側に正面視矩形状の前側開口70aを有し、後面側に同じく正面視矩形状の後側開口70bを有している。なお、前側開口70aの面積は、外側ガラス52より若干小さく、後側開口70bより大きい。また、後側開口70bの面積は、内側ガラス53より若干小さく、前側開口70aより小さい。
そして、筒状部71は、前側開口70aより後側開口70bに向かって絞られるテーパー形状を呈し、平面視及び側面視ではいずれも台形状である。筒状部71は、外側ガラス52と内側ガラス53との間に介在し、介在すると内部に第1の内部空間75を形成する。そして、扉50内には、第1の内部空間75の外側、即ち、周囲に第2の内部空間78が形成されることになる。
なお、筒状部71は、本発明の筒状のガラス押圧部材の一部に相当する。また、筒状部71は、上記したテーパー形状以外の形状、例えば、絞られない形状であってもよいし、広がる形状であってもよい。また、筒状部71は、複数部材からなるものでもよい。絞られない形状の場合は、外側ガラス52と内側ガラス53との大きさは同じになり、広がる形状の場合は、外側ガラス52は内側ガラス53より小さくなる。
前側フランジ部72は、筒状部71の前端から外方に伸びる正面視口形状で且つ平板状の部分であり、その前面には、図6に示すように、長辺側にそれぞれ3個ずつ、短辺側にそれぞれ2個ずつで合計10個の台形状突出部76を有する。なお、その数は必要に応じて変更可能である。
10個の台形状突出部76は、同じ高さを有し、その上面は平坦面76aであり、やはり同形状の矩形状である。なお、平坦面76aの形状は円形、楕円形等必要に応じて変更可能である。
なお、台形状突出部76の平坦面76aは、全て同じ形状の例を示したが、面積を異ならせることで、調理室30内の熱がガラス押圧部材70を介して外側ガラス52に伝えられる量を調整することができる。例えば、ガラス押圧部材70の下側の長辺の左右両側に形成される2つの台形状突出部76の平坦面76aの面積を大きくすることで、外側ガラス52の左右下端部であるコーナー部分のみの温度を高くして、加熱調理中にコーナー部分に生じる曇りを早急に抑制することができる。
そして、台形状突出部76の平坦面76aには、外側ガラス52後方の外周面が当接する。台形状突出部76の平坦面76aに外側ガラス52後方の外周面が当接すると、台形状突出部76を有しない前側フランジ部72の前面と、外側ガラス52後方の外周面との間に隙間77が形成される(図5参照)。そして、当接面を介して、熱が外側ガラス52に伝わることになる。
この隙間77は、本発明の隙間に相当し、第1の内部空間75と第2の内部空間78とを連通することになるが、この隙間77は、後記のパッキン80で封止されることになる。
前側フランジ部72は、その前面に、長辺側にそれぞれ4個ずつで合計8個の孔72aを有する。孔72aは、台形状突出部76より左右方向にずれた位置、即ち、3個の台形状突出部76の間などに設けられている。しかし、その数は必要に応じて変更可能である。
そして、8個の孔72aには、後記するパッキン80の8個の突起81bが嵌合する。これらの孔72aは、本発明の孔に相当する。
後側フランジ部73は、筒状部71の後端から内方に略直角に折れ曲がって伸びる正面視口形状で且つ平板状の部分である。そして、後側開口70bは、後側フランジ部73の内端面によって形成されることになる。
後側フランジ部73は、その背面に平坦な平坦後壁面73aを有する(図5、7参照)。そして、平坦後壁面73aには、内側ガラス53前方の外周面が当接する。平坦後壁面73aに内側ガラス53前方の外周面が当接すると、当接する平坦後壁面73aと内側ガラス53前方の外周面との間は密閉状態になる。
また、平坦後壁面73aに内側ガラス53前方の外周面が当接すると、後側フランジ部73は、内側ガラス53を後方側へ押し込むように作用し、内側ガラス53後方の外周部は、本体プレート51の嵌入溝55bに密着する。その結果、第1の内部空間75は、調理室30に対して密封状態になる。
パッキン80について説明する。図9に、斜め前方から見たパッキン80の斜視図を示し、図10(A)に、斜め後方から見たパッキン80の斜視図を示し、図10(B)に、パッキン80の断面図を示す。
パッキン80は、シール特性の高い部材、例えば伝熱性を有するシリコン製のパッキンであり、基底部81とリップ部82とを有する。なお、実施の形態では、伝熱性を有するパッキンとして説明するが、伝熱性を有しないものでもよい。
基底部81は、ガラス押圧部材70の前側フランジ部72とほぼ同形の口形状を呈する板状体のもので、前側フランジ部72と外側ガラス52との間に介在される。また、基底部81は、長辺側にそれぞれ3個ずつ、短辺側にそれぞれ2個ずつで合計10個の矩形状開口81aを有する。
10個の矩形状開口81aの位置は、前側フランジ部72の前面に設けられる10個の台形状突出部76の位置と同じであり、また、10個の矩形状開口81aの大きさは、前側フランジ部72の前面に設けられる10個の台形状突出部76に嵌入可能な大きさである。
また、基底部81の底面には、複数個、例えば、8個の突起81bを有する(図10参照)。この8個の突起81bは、前側フランジ部72の8個の孔72aに対向する位置に設けられており、基底部81の底面が前側フランジ部72の前面に取り付けられると、パッキン80の10個の矩形状開口81aは、前側フランジ部72の10個の台形状突出部76のそれぞれに嵌入し、8個の突起81bは、8個の孔72aのそれぞれに嵌合する。その結果、パッキン80は、ガラス押圧部材70に位置決めされるとともに、脱落が防止される。なお、10個の矩形状開口81aと10個の台形状突出部76とは、主として位置決めのためであり、8個の突起81bと8個の孔72aとは、位置決め及び脱落防止のためである。
リップ部82は、基底部81の上面に一体形成されるもので、正面視は基底部81と同様の口形状のものである。リップ部82の断面は、略し字状で内側に折れ曲がっており、内側に折れ曲がったリップ上面82a(図7参照)が外側ガラス52後方の外周面に当接する。
リップ上面82aが外側ガラス52後方の外周面に当接すると、リップ部82は、更に内側に折れ曲がり、外側ガラス52後方の全外周面に線接触状態で強く接触することになる。例えば、公差を踏まえると、線接触の幅、即ち、リップ部82と外側ガラス52との当たり代は、2mm以上にするとよい。このような幅にすることで、シール性が高まるとともに、外側ガラスへの伝熱が良好且つ均一になる。なお、図4、5、7でのパッキン80は、外側ガラス52に当接する前の状態であり、取り付けが完了した状態は、内側に向かってより折れ曲がった状態になる。
図6の各部品の組み立ての一例について説明する。まず、ガラス押圧部材70の前側フランジ部72の前面にパッキン80を取り付けておく。その取り付けは、パッキン80の10個の矩形状開口81aを、前側フランジ部72の10個の台形状突出部76のそれぞれに嵌入し、8個の突起81bを、8個の孔72aのそれぞれに嵌合することにより行う。
次いで、本体プレート51の嵌入溝55b内に内側ガラス53を嵌入する。なお、全体の取り付けは、主として上下方向に行われるが、方向については、段落[0025]の記載に基づく。
その後、ガラス押圧部材70を内側ガラス53の前方側に当接する。その当接は、ガラス押圧部材70の後側フランジ部73の平坦後壁面73aを、内側ガラス53前方の外周面に押しつけることにより行う。その後、パッキン80の前面に外側ガラス52後方の外周面を当接して、5部材からなる積層体を準備しておく。
その後、上記積層体の上方に上部プレート60を嵌合し、下方に下部プレート65を嵌合する。そして、上部プレート60の4個の穴60dに把手61の4個の突起61aを嵌入し、4個の突起61aの図示しない雌ネジに、本体部分55の4個のビス挿通口55fの背面(調理室30側)から図示しない4個のビスが螺合される。その結果、扉50に把手61が取り付けられるとともに、扉50の上部が組み立てられる。そして、扉50の側部及び底部も複数のビスで一体に螺合される等して扉50が完成する。
組み立てられた扉50内には、外側ガラス52と、ガラス押圧部材70と、内側ガラス53との間に、第1の内部空間75が形成され、第1の内部空間75の外側である周囲に第2の内部空間78が形成されることになる。
そして、第1の内部空間75は密閉状態となり、第2の内部空間78は、側面スリット55e及び底面スリット66を介して外部と連通する。第1の内部空間75と第2の内部空間78との間には、隙間77を有するが、隙間77はパッキン80のリップ部82で封止される。
加熱調理時、第1の内部空間75と第2の内部空間78は、加熱されるが、第2の内部空間78は、側面スリット55e及び底面スリット66を介して外部と連通しているため、第2の内部空間78内の空気は、対流作用により外気と入れ替わるため、第2の内部空間78の温度は低下する。
すると、温度が低下した第2の内部空間78内の空気により、第1の内部空間75内の空気も冷却される。その結果、扉50全体の温度を低減することができるようになる。そして、パッキン80は、伝熱性を有するものであり、外側ガラス52の全外周部を加熱することができるため、この部分の曇りや結露をなくすることができる。
本実施形態にかかる扉50は、内側ガラス53が調理室30内に入り込んだ位置に配置されており(図3、5参照)、扉50の厚さを厚くすることなく扉50内部の第1の内部空間75と第2の内部空間78の体積を広げることができる。このため、扉50内部の空気による断熱効果を高めることができる。
また、図5に示すように、内側ガラス53の下端部が調理網31よりも上方に位置する。このようにすることで、内側ガラス53の下方部分が金属製の本体プレート51になるため、下側ヒーター34からの輻射熱を調理網31上に載置された被調理物の方向に反射させて被調理物を効果的に加熱することができる。
更に、内側ガラス53の面積を外側ガラス52より小さくすることで、調理室30内の上側ヒーター33及び下側ヒーター34、34からの輻射熱が扉50内の第1の内部空間75へ伝わる量を低減させることができる。その結果、外側ガラス52及び第2の内部空間78の温度上昇を抑制することができる。
なお、上記説明では、扉50の背面の中央部分を後方に突出させて内側ガラス53の位置を調理室30内にした例を示したが、突出しないものでもよい。また、内側ガラス53の面積を外側ガラス52の面積よりも小さくした例を示したが、外側ガラス52と内側ガラス53の大きさ並びに位置は、扉50全体の重さ、厚さなどの形状などを考慮して適宜定めることができる。
本発明は、上記実施の形態に示した構成態様のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態に示した構成態様から適宜の設計変更が可能である。