(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る印象材、この印象材を用いて得られる陰型及び陽型、並びに印象材を有する歯紋収集キットを、図1の概略図を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の印象材1は、動的粘弾性測定により求まる37℃におけるtanδ37が0.5以下、80℃におけるtanδ80が0.1以上で、かつJIS K 7215:1986に準拠してタイプAデュロメータにより測定された硬さHDAが60以上の樹脂材2と、樹脂材2を収容するトレー3と、を備えて構成されている。このような印象材1を用いることで、歯の紋様を含む本実施形態の陰型4(図2参照)を得ることができる。ところで、このような特徴のある陰型4又はこの陰型4を用いて得られる陽型の特徴を、物の構造又は特性により直接特定することは、不可能である。即ち、陰型4は、柔らかい状態の印象材1を歯に接触させ、硬化させることで得られるものである。また、陽型は、陰型4に石膏等を流して硬化させること等によって得られるものである。そのため、本実施形態の陰型4又は陽型を、印象材1を用いて得られる陰型4又は陽型と特定している。
本実施形態の印象材1は、人間の歯の紋様の取得に好適に用いることができる。また、生体だけでなく、事故や災害の犠牲となった遺体の歯の紋様を取得することができる。また、人間以外にも、犬、猫等の動物の歯の紋様の取得にも適用することができる。
本実施形態の印象材1は、動的粘弾性測定により求まる37℃におけるtanδ37が0.5以下、80℃におけるtanδ80が0.1以上で、かつJIS K 7215:1986に準拠してタイプAデュロメータにより測定された硬さHDAが60以上であることで、高温域では歯の紋様の精密な印象を採得できるような粘性を示し、低温域では印象材1や陰型4に必要な適度な弾性と硬度を示す。tanδ37が0.5より大きい場合、変形しやすくなり印象取得後の形状が変化し易くなる。tanδ80が0.1未満である場合、印象取得する時に樹脂が変形しにくくなる。さらに、JIS K 7215:1986に準拠してタイプAデュロメータにより測定された硬さHDAが60未満である場合、印象取得後の形状が変化し易くなる。なお、tanδ37は、0.4以下がより好ましく、0.3以下がさらに好ましい。また、tanδ80のは、0.2以上がより好ましく、0.3以上がより好ましい。
また、樹脂材2としては、JIS K7206に準拠して測定されたビカット軟化点が20℃以上、80℃以下であることが望ましく、印象取得操作を行い易くなることや、歯の紋様の印象をより精密に採取することができる。なお、該ビカット軟化点が20℃未満の場合、印象取得後の形状が変化し易くなるおそれがあるため好ましくなく、80℃より大きい場合、変形しにくく歯の紋様を取得しにくくなるため好ましくない。
このような特性を有する樹脂材2の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル等のポリオレフィン系樹脂;シリコン樹脂;天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレンゴム、アクリルゴム、イソプレン-イソブチレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、又はスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー及びアクリル系エラストマー等のゴム系樹脂等の熱可塑性樹脂材を好適に用いることができる。より好適には、ポリオレフィン系樹脂、シリコン樹脂、及びゴム系樹脂のいずれかからなる板状の熱可塑性樹脂材である。また、これらに硬度や軟化点の調整を目的として可塑剤を添加することができる。これらを用いることで、複数材料の混合等の手間がなく、樹脂材2を加熱するだけで印象を採取することができ、印象材1の取扱い性や印象取得時の作業効率を向上させることができる。また、高温域以外では硬化状態を保つので、保存性も向上させることができる。これらの中でも、印象取得操作がし易いこと、緻密な印象が得られることから、エチレン-酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。
また、樹脂材2の形態も、特に限定されるものではなく、ペースト状等の不定形なものであってもよいし、板状やブロック状であってもよい。より好ましくは、板状とすることで、歯の紋様を精密に取得可能で、しかも印象材1及び陰型4の厚みをより少なくすることができる。また、歯の表面側の印象を取得すればよいので、歯全体の陽型を作成する必要がなく、陽型の容積もより小さくすることができる。そのため、印象材1、陰型4、陽型の収納スペース等が少なくて済み、携帯性、搬送性、保管性等に優れ、搬送や保管コストも低減することができる。
さらに好ましくは、熱可塑性樹脂材製の板状の樹脂材2とすることで、樹脂材2で歯全体を包含して印象を採取する必要がなく、加熱により軟化させた樹脂材2を、歯の唇側の表面に押し当てるだけで、手軽で容易に印象を採取することができる。そのため、患者は勿論、歯科医師も、印象の採取に対する抵抗感がなくなり、管理組織等が、印象の採取を積極的に勧め易いものとなり、より多くの個体認証の照合情報を収集することができる。
また、トレー3は、樹脂材2を収容可能であれば、特に限定されるものではない。例えば、金属材、金属製の網材であってもよいし、樹脂材2の軟化温度では変形等しない樹脂材や木材等であってもよく、公知のものを使用することができる。
なお、トレー3は必ずしも備える必要はないが、本実施形態のようにトレー3を備えることで、高温域で軟化した樹脂材2の支持安定性に優れるとともに、樹脂材2を歯に押し当てる際の操作性にも優れるものとなる。特に、高温域での流動性が低い樹脂材2等の保持に好適である。
また、印象材1で採取する歯の紋様としては、周波条、破折線、唇側面隆線、小窩、溝、切縁、亀裂等が挙げられ、身元確認や生体認証等の個体認識に有効な材料(情報)を取得することができる。
また、上記歯の紋様の中でも、周波条が最も好適に挙げられる。この周波条は、歯の表面に現れる紋様であり、図1等に示すように、歯軸に対して水平な複数の線から構成される。この周波条を含む歯の紋様は、エナメル芽細胞によってエナメル質が形成される過程で、歯の表面に形成される紋様であることから、指紋と同様に個体によって形状が異なり、経時により摩耗はあるが、形状そのものは終生変わらないということが知られている。
本発明の発明者は、このような個体固有の周波条に着目し、歯が残り易いという特性も含め、周波条が個体を識別するための識別子として有効なことを知見し、本発明に至ったものである。
また、唇側面隆線、小窩、溝、切縁、亀裂等の紋様も、個体によって形状が異なるため、個体識別の情報として有効である。また、周波条、唇側面隆線、小窩、溝、切縁、亀裂等の中から選択されるいずれか、又は複数の組み合わせからなる紋様を採取することがより望ましく、個体識別に有効なより詳細な情報を取得することができる。以下、本明細書では、上述したような、個体に固有の歯の紋様を、指紋(Finger print)に準えて「歯紋(しもん、Tooth print(発明者による造語)」と呼ぶことがある。
また、印象材1により歯紋を採取することで、歯冠の有無及びその形態、歯並び等の歯の様々な状態を採取することができる。これらも個体によって異なるため、歯紋と併せて識別情報とすることで、個体識別の信頼性をより高めることができる。
上述のような歯紋は、歯であればその表面に現れる。印象の採取の際に歯の欠損があったり、印象の取得後に歯の欠損があったりすることを考慮して、より多くの歯の印象を取得することが望ましい。具体的には、少なくとも左右の中切歯及び側切歯(すなわち、前歯)の範囲、より望ましくは、前歯を含む犬歯から犬歯までの範囲、さらに望ましくは、小臼歯から小臼歯の範囲又は大臼歯から大臼歯までの範囲の印象を採取する。これらの歯の印象の採取は、上顎又は下顎のみでもよいし、上顎及び下顎の双方であってもよい。印象を採取する歯の数が多くなる程、使用する樹脂材2の量が多くなり、陰型4の容量も大きくなるが、本実施形態のように板状の樹脂材2からなる印象材1とすれば、樹脂材2の量が過度に多くなることがなく、陰型4等の容量の増大も抑制できる。
また、歯紋の中でも周波条は、特に切歯(前歯)において特徴的な形状を呈し、さらにこれらの歯頸部でより明瞭に現れる。そのため、周波条は個体識別情報として最も好適である。この周波条の取得のため、より多くの歯の印象を採取してもよいが、周波条が切歯において特徴的であることを利用して、少なくとも上顎の切歯4本、さらには下顎の切歯4本も含めた印象を採取すればよい。前歯のいずれかを欠損している場合等もあるため、前歯の少なくも1本の陰型4を取得し、周波条を取得できれば、個体識別に有効な情報を取得できる。また、臼歯等のいわゆる奥歯に比べて、切歯は唇の表面側に位置しているため、印象も取得し易く、作業性や操作性も向上する。また、陰型4等の容量をより少なくすることができる。ただし、歯の抜けや治療状態の変化等を考慮した場合、できるだけ多くの歯の印象を採取し、歯の紋様情報を取得しておくことが好ましい。特に身元不明者等の個体認証に利用する場合等はより多くの歯の情報を取得しておくことが望ましい。また、ご遺体等の場合は、可能な限り残っている歯の情報を取得することが望ましい。
本実施形態では、上顎中切歯及び上顎側切歯、並びに、下顎中切歯及び下顎側切歯を含む歯の印象を、一度の操作で採取できるように、図1に示すように、1つのトレー3の上下に、上顎用の樹脂材2と、下顎用の樹脂材2とを配置した構成の印象材1(1A)としている。なお、この構成に限定されるものではなく、他の異なる例として、トレー3を上顎用と下顎用に2つに分離し、それぞれのトレー3に樹脂材2を収容した構成の印象材1(1B)としてもよいし、これら以外の構成としてもよい。
また、上記印象材1は、印象の採取に必要な他の部材を含めた「歯の紋様取得用キット」として提供することができる。図1に示すように、本実施形態の歯の紋様取得キット10は、歯の唇側の表面の紋様の陰型4を取得するための印象材1と、殺菌消毒剤や消臭剤からなる溶液5aが収容されており印象材1により得られた陰型4を保管するための密閉容器(密閉袋)5と、密閉容器5を収容して発送するための梱包材6と、を備えている。この他にも、本実施形態では、歯の表面を清浄するための清浄剤を含む清浄具7と、印象の採取の手順や送付手順等が記載された使用方法説明書8とを備えている。
このような部材からなる歯の紋様取得キット10を、1つの袋や箱に収容して提供することができる。密閉容器5、梱包材6、清浄具7等は、歯科医院等に備えられているが、このようにしてセットものとして提供されることで、歯科医師等が用具を準備する必要がなく、歯科医師等の負担や抵抗感をなくすことができ、歯の紋様の取得から発送までの一連の作業を効率的に行うことが可能となる。また、災害現場等、物資が不足している場所においては、印象に必要なすべての用具が揃った本実施形態の歯の紋様取得キット10を用いることで、すべての作業を円滑に行うことが可能となる。
印象材1としては、第1実施形態の印象材1A,1Bを用いることができるが、これに限定されるものではない。密閉容器5としては、陰型4を収容可能で溶液5aが流出しないように密閉できるものであれば、特に限定されるものではなく、蓋付きの樹脂容器や密閉できる樹脂袋等を用いることができる。溶液5aに含まれる殺菌消毒剤としては、特に限定されるものではなく、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸水、強酸性水等を用いることができる。密閉容器5に殺菌消毒剤や消臭剤からなる溶液5aが収容されていることで、陰型4の殺菌消毒及び消臭が可能となり、感染等を抑制することができる。
密閉容器5には、印象を採取する患者等の氏名、生年月日、年齢、性別、血液型、連絡先等の個体を識別するための個体情報を記載できることが望ましい。また、身元不明者等の印象を採取する場合は、識別IDや発見場所等の情報を個体情報として記載できることが望ましい。これにより、個体情報と陰型4又は陽型とを容易に対応づけて管理することができる。また、個体情報を必ずしも密閉容器5に記載する必要はなく、個体情報記入用紙を別途備え、個体情報を記入した上で密閉容器5と同封して送付する構成とすることもできる。
清浄具7としては、例えば、清浄剤を含有したワッテ7aが、滅菌された密閉袋7bに収容されたものを用いることができる。清浄剤としては、特に限定されるものではなく、アルコール等の一般的な清浄剤を使用することができる。
梱包材6も、特に限定されるものではなく、一般的な封筒、段ボール箱、緩衝材等を用いることができる。本実施形態では、例えば、梱包材6として内側に緩衝材が貼付けられた封筒を用いている。また、梱包材6の表面には、送付先や送付元の住所、名称等の記入欄が設けられている。送付先が決まっている場合には、送付先の住所等を予め記載していてもよいし、さらには送付元の住所等も予め記載しておいてもよく、発送作業をより簡易とすることができる。
上述のような歯の紋様取得キット10での歯の紋様の取得手順を、図2のフローチャートを参照しながら説明する。
図2に示すように、ステップS1では、密閉袋7bから取り出したワッテ7aを用いて、印象を採取する歯Tの表面の清浄作業を行う。次のステップS2では、印象材1の樹脂材2を加熱により軟化させ、上下の歯Tの表面に押し当てることで、歯紋Pを含むこれらの歯Tの陰型4を取得する。ステップS3では、陰型4を水道水等で洗浄し、ステップS4で、殺菌消毒剤や消臭剤等の溶液5a入りの密閉容器5に収容する。次いでステップS5では、梱包材6で密閉容器5を梱包し、送付先や送付元の住所等を記載する。このとき、印象を採取した個体の名前等の個体情報を、密閉容器5に記載してもよいし、個体情報を記載する用紙に記載し、梱包材6に同封してもよい。その後、ステップS6でポスト等に投函して発送する。
なお、管理機関の職員が歯科医院等に出向いて、陰型4を収容した密閉容器5(又は密閉容器を収容した梱包材6)を回収するものとしてもよい。また、複数の密閉容器5をまとめて1つに梱包して発送してもよい。
以上、第1実施形態の印象材1、この印象材1によって得られた陰型4及び陽型、並びにこの印象材1を備えた歯の紋様取得キット10によれば、動的粘弾性測定により求まる37℃におけるtanδ37が0.5以下、80℃におけるtanδ80が0.1以上で、かつJIS K 7215:1986に準拠してタイプAデュロメータにより測定された硬さHDAが60以上の樹脂材2を有することで、複雑な歯の紋様であっても、精度よく陰型4や陽型を取得することができる。また、複数の剤の調合等の手間や時間を必要とすることなく、簡易かつ迅速に陰型4や陽型を取得することができる。したがって、身元確認等の個体識別に有効な情報を、より簡易かつより効率的に取得することができ、より多くの情報を収集することが可能となる。
また、本実施形態の印象材1は、歯の表面に押し当てるだけで、簡単に印象を採取することができるため、歯科医師等も手軽な印象の採取が可能となる。また、被爆の心配もなく、口を大きく開ける等の必要もなく、診療報酬も低減でき、患者等の負担も少なくなる。よって、印象を採取される者にとっても、歯科医師等にとっても、歯の紋様取得のための印象を採取することに抵抗がなくなり、積極的な採取を促すことができる。
また、上述のようにして取得された陰型4や陽型そのものを用いて、個体識別を行うことも可能となる。例えば、個体情報とともに陰型4又は陽型を、管理機関で収集して管理する。本実施形態の印象材1は、収納容量が少なくて済み、多くの陰型4等を保管することができる。そして、身元確認等の個体識別の依頼を受けたときに、当該識別対象者の歯そのもの、その陰型4若しくは陽型、又は歯の撮影画像と、保管されている複数の陰型4等と比較することで、個体を識別することができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の歯の紋様情報収集装置としての歯紋情報収集装置及び歯紋情報収集システムについて、図3、図4を参照しながら説明する。図3は、第2実施形態に係る歯紋情報収集装置100及び歯紋情報収集システム1000のハードウェア構成を示す概略図であり、図4は、機能ブロック図である。
図3に示すように、第2実施形態の歯紋情報収集装置100は、情報処理部(制御装置)20を主に備えて構成され、この他にも、入力部21、表示部22、通信部23、撮像部24等を備えている。また、撮像部24で撮影された撮影画像や、収集した歯紋情報等を印刷する出力部としてのプリンタ等を備えていてもよい。
また、本実施形態の歯紋情報収集装置100は、通信ネットワークNを介して複数の情報端末25,25,・・・と接続され、歯紋情報収集システム1000を構成している。
歯紋情報収集装置100は、歯紋情報を収集して管理する管理機関に備えられている。管理機関は、特に限定されるものではなく、例えば、国の機関であってもよいし、歯科医師会やこれに関連する機関であってもよいし、データ管理会社等の企業であってもよい。
入力部21は、個体情報等の各種情報、歯紋情報収集装置100の動作に必要な操作指示等を入力するための機器である。このような入力部21としては、例えば、キーボード、マウス、テンキー等が挙げられる。また、表示部22がタッチパネルディスプレイの場合には、タッチパネル画面も入力部21として機能する。
表示部22は、歯紋情報収集装置100の操作画面、撮像部24等で取得した歯の紋様を含む撮影画像等が表示される機器である。表示部22としては、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ等の電子表示デバイスが好適に挙げられるが、これに限定されるものではない。
通信部23は、通信ネットワークNを介して情報端末25と通信するための機器である。通信部23としては、通信モデム、ルータ等が挙げられる。通信ネットワークNは、例えばインターネットを使用することができるが、専用通信回線等を使用してもよい。
撮像部24は、第1実施形態に係る印象材1で取得された陰型4又はこの陰型4を元に作成された陽型を撮影する機器である。撮像部24としては、特に限定されるものではなく、例えば、デジタルカメラ、CCDカメラ、CTスキャナ、3Dスキャナ等が挙げられる。この中でも、撮像部24として、CTスキャナや3Dスキャナを好適に用いることができ、これらで撮影した撮影画像(光学印象)から、歯の紋様(歯紋)に関する紋様情報(以下、「歯紋情報」という。)を、より詳細かつより高精度に取得することができる。陰型4又は陽型からなる模型を用いた場合は、3Dスキャナ等であっても撮影を容易に行うことができる。また、所望の角度でより精密な撮影が可能となる。
なお、歯紋情報としては、歯、陰型4、陽型を撮影した画像情報、画像情報を解析して取得した紋様の座標その他の数値情報等が挙げられる。さらに陰型4や陽型の表面に現れる歯の紋様も、歯紋情報に含まれる。また、歯紋情報と併せて、歯冠形態、歯並び等の歯の状態に関する情報も取得することが望ましい。
また、CTスキャナや3Dスキャナ等を用いた口腔スキャンにより、口腔内にある歯の三次元画像(光学印象)を取得し、この光学印象から歯紋情報を取得してもよい。昨今の3Dスキャナ技術等の飛躍的な進歩により、より低コストで小型であり、より手軽に光学印象を採取できる製品が上市されつつある。このような3Dスキャナ等を用いることで、人体(特に生体)の光学印象も、撮影者や被撮影者の経済的、身体的負担を低減して、低コストで容易に取得することができる。
情報処理部20のハードウェア構成としては、図3に示すように、CPU30、ROM31、RAM32、入力I/F(インタフェース)33、出力I/F34、通信I/F35、外部機器I/F36、記憶部37等から構成される。
CPU30は中央演算処理装置であり、歯紋情報収集装置100全体の動作を制御する。ROM31は、読出専用メモリであり、CPU30が実行する制御プログラムや歯紋情報収集プログラム等が記憶されているが、これらのプログラムは記憶部37に記憶されていてもよい。RAM32は随時書込読出メモリであり、CPU30のワークエリアとして使用される。すなわち、CPU30は、RAM32をワークエリアとして、ROM31等に記憶された歯紋情報収集プログラムを実行して、歯紋情報収集装置100を動作させる。
入力I/F33は、入力部21とCPU30とを接続するためのインタフェースである。出力I/F34は、表示部22とCPU30とを接続するためのインタフェースである。通信I/F35は、通信部23とCPU30とを接続するためのインタフェースである。外部機器I/F36は、外部機器としての撮像部24とCPU30とを接続するためのインタフェースである。
記憶部37は、ハードディスク、フラッシュメモリ等の記録媒体から構成される。記憶部37には、歯紋に関する歯紋情報と、個体を識別する個体情報とが関連付けられた照合情報が記憶される。
歯紋情報としては、例えば、歯紋を含む歯を撮影した撮影画像、歯紋を含む歯の陰型4を撮影した撮影画像のデジタルデータであってもよいし、これらの撮影画像から、歯の紋様に関する情報のみを抽出したデジタルデータであってもよい。
個体情報としては、歯紋を採取した個体(個人)を識別可能であれば、特に限定されるものではないが、例えば、個体の氏名、生年月日、年齢、性別、血液型及び連絡先の少なくともいずれかを含むことが望ましい。また、個人情報保護の観点から、個体情報を、数字や記号で表した識別IDを個体情報として用いてもよい。
本実施形態では、このような情報処理部20として、サーバ用パーソナルコンピュータ(PC)を用いているが、これに限定されることはなく、汎用大型コンピュータ(メインフレーム)等を用いることもできる。また、サーバ用PCは、クラウドコンピューティングサービスを利用したものであってもよいし、自社のサーバ用PCであってもよい。また、サーバ用PCに限定されることもなく、一般的なPCを用いてもよい。
情報端末25は、歯科診療機関、陰型4や陽型を回収して保管する機関等に設置される。情報端末25は、CPU、RAM、ROM等を備えたデスクトップ型又はノート型PCであってもよいし、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末の携帯情報機器であってもよい。本実施形態では、例えば、1つ又は複数の歯科診療機関等に設置された情報端末25から、通信ネットワークNを通じて、撮像画像及び撮影画像と対応づけられた個体情報を歯紋情報収集装置100に送信することも可能となっている。この場合、これらの情報をメールに添付して送信してもよいし、情報端末25が、セキュリティ対策されたクラウドストレージにこれらの情報をアップロードし、歯紋情報収集装置100側でダウンロードしてもよい。情報端末25からのこれらの情報は、例えば記憶部37に記憶される。
また、撮影画像及び個体情報は、USBメモリ、CD、DVD等の外部記録媒体から取得するものであってもよい。
情報端末25や外部記録媒体から取得される撮影画像としては、歯科診療機関や陽型の加工所等で撮影された陰型4又はその陽型の撮影画像が挙げられる。撮影画像としては、陰型4等をCTスキャナや3Dスキャナで撮影した三次元画像(光学印象)が特に望ましい。この他にも、撮影画像として、患者等の個体の歯の唇側の表面に白色光(通常光)又は紫外光(例えば、370nm近傍の紫外光)を照射して撮影された撮影画像、蛍光色素が塗布された歯の唇側の表面に紫外光を照射して撮影された撮影画像が挙げられる。また、口腔内にある歯を直接にCTスキャナや3Dスキャナで撮影した三次元画像(光学印象)も挙げられる。
次に、図4の機能ブロック図を用いて、情報処理部20の機能について説明する。この図4に示すように、情報処理部20は、撮影画像取得部40、歯の紋様情報取得部としての歯紋情報生成部41、入力情報取得部42、照合情報生成部43、表示画像制御部44及び記憶部37として機能する。
撮影画像取得部40は、撮像部24から入力される画像信号をデジタル信号に変換し、適宜の画像処理を施して撮影画像を取得する。また、撮影画像取得部40は、通信ネットワークNを通じて情報端末25から送信される撮影画像や、外部記録媒体で提供される撮影画像を取得する。
ここで、撮影画像取得部40で取得される撮影画像の一例を、図7A、図7Bを参照して説明する。図7Aは、2本の異なる歯の唇側の表面の撮影画像である。図7Aの紙面左から、歯の表面に白色光(通常光)を照射して撮影した撮影画像、通常光で撮影した撮影画像を画像処理した画像、歯の表面にUV光(紫外光)を照射して撮影した撮影画像を画像処理した画像、表面に蛍光色素を塗布した歯にUV光を照射して撮影した撮影画像を画像処理した画像、陰型4を撮影した撮影画像である。いずれの場合でも、歯紋、特に周波条が明確に観察される。なお、撮影画像に対する上記画像処理は、撮像部24又は情報端末25側で行ってもよいし、歯紋情報生成部41で行ってもよい。また、図7Bは3Dスキャナで撮影した歯の三次元画像(光学印象)を画像処理して得られた、歯の周波条の三次元画像である。また、図7Bには、撮影条件等も示している。この図7Bの三次元画像には、歯の周波条の紋様が鮮明に現れている。
歯紋情報生成部41は、撮影画像取得部40で取得した撮影画像を解析して、周波条等の歯紋を検出し、歯紋情報のデジタルデータを生成(取得)する。歯紋情報としては、例えば、歯紋を含む歯の撮影画像のデジタルデータそのものであってもよいし、歯紋の種類、位置情報、色情報等のデータであってもよい。
入力情報取得部42は、個体情報を取得する個体情報取得部として機能する。この個体情報は、入力部21から入力される。また、個体情報は、通信ネットワークNを介して情報端末25から送信されたり、外部記録装置により提供されたりする。照合情報生成部43は、歯紋情報生成部41で生成した歯紋情報と、入力情報取得部42で取得した識別情報とを対応づけて照合情報を生成し、記憶部37に記憶する。また、入力情報取得部42は、入力部21から入力される歯紋情報生成指示等の指示情報も取得する。
また、他の異なる実施形態として、例えば、陰型4等に、識別情報や識別情報を示すマーカやラベル等を付し、陰型4等の撮影とともに識別情報等を撮影し、撮影画像を解析して、歯紋情報と識別情報とを一緒に取得してもよい。
表示画像制御部44は、歯紋情報収集装置100で実行する処理の選択のためのメニュー画面50(図5A(a)参照)を表示部22に表示する。操作画面には、例えば、撮像部24での撮影から照合情報生成までの実行を指示する新規作成ボタン50a、歯紋情報を含む照合情報の確認、編集、削除のための照合情報確認ボタン50b等が表示される。
また、表示画像制御部44は、撮影画像を取得するための撮影画像取得画面51(図5A(b)参照)を表示部22に表示する。撮影画像取得画面51は、撮像部24での陰型4等の撮影を指示する撮影ボタン51a、情報端末25や外部記録装置から撮影画像を取得するための外部取込みボタン51b、照合情報生成に進むための生成ボタン51c、取得した撮影画像が表示される画像表示領域51d等を有している。この他にも、撮影条件等の設定ボタンや戻りボタン等を有していてもよい。
また、表示画像制御部44は、歯紋情報を含む照合情報生成のための照合情報生成画面52(図5A(c)参照)を表示部22に表示する。照合情報生成画面52は、歯紋情報生成部41で取得した歯紋情報を表示する歯紋情報表示領域52a、個体情報を入力又は表示する個体情報表示領域52b、これらの情報を記憶して保存するための保存ボタン52c等を有している。
また、表示画像制御部44は、内容の確認、編集、削除をする照合情報を選択するための照合情報一覧画面53(図5B(d)参照)を表示部22に表示する。照合情報一覧画面53には、例えば、照合情報のIDと、氏名等の個体情報の一部等が一覧となって表示される。また、表示画像制御部44は、照合情報の内容の確認、編集、削除のための照合情報確認画面54(図5B(e)参照)を表示部22に表示する。照合情報確認画面54は、歯紋情報表示領域54a、個体情報表示領域54bを有し、さらに編集ボタン54c、削除ボタン54d、終了ボタン54e等を有している。
上述のような構成の歯紋情報収集装置100及びこの歯紋情報収集装置100を備える歯紋情報収集システム1000で実行される歯紋情報収集処理(歯紋情報収集方法、歯紋情報収集プログラム)の一例を、図5A、図5Bの表示画面の一例及び図6のフローチャートを参照しながら説明する。
まず、歯紋情報収集装置100の操作者は、情報処理部20としてのPCや撮像部24等のスイッチをONにして、歯紋情報収集装置100を起動する。これにより、歯科治療支援プログラムが起動し、表示画像制御部44が表示部22の表示面に、図5A(a)に示すメニュー画面50を表示する(ステップS1)。
このメニュー画面50で、新規作成ボタン50aがクリックされて選択されると(ステップS2の判定がYES)、表示画像制御部44は、図5A(b)に示す撮影画像取得画面51を表示部22に表示する(ステップS3)。
次に、撮影画像取得部40が、歯紋を含む撮影画像を取得する(ステップS4)。撮像部24によって陰型4等を撮影して撮影画像を取得する場合は、操作者は、撮影画像取得画面51で撮影ボタン51aをクリックする。これにより、撮影画像取得部40の制御の下、撮像部24が陰型4等の二次元画像や三次元画像を撮影し、撮影された撮影画像が撮影画像取得部40により取得される。
これに対して、情報端末25から受信した撮影画像又は外部記録装置に記憶された撮影画像を取り込む場合は、操作者は、撮影画像取得画面51の外部取込みボタン51bをクリックする。これにより、記憶部37や外部記録媒体のフォルダやファイルを指定するツール等が立ち上がり、撮影画像のファイルを選択することで、撮影画像を取得させることができる。
取得された撮影画像は、表示画像制御部44によって撮影画像取得画面51の画像表示領域51dに表示される(ステップS5)。操作者は、画像表示領域51dに表示された撮影画像を視認することで、撮影が適切に行われたか否かを認識することができる。撮影が適切でない場合は、操作者が撮影ボタン51aを再度クリックすることで撮影画像の取得(ステップS4)、撮影画像の表示(ステップS5)が実行され、撮影をやり直すことができる。
撮影画像が取得され、操作者によって生成ボタン51cがクリックされると、表示画像制御部44は、図5A(c)に示す照合情報生成画面52を表示部22に表示する(ステップS6)。次いで、歯紋情報生成部41は、撮影画像に基づいて、歯紋情報を取得する(ステップS7)。
この歯紋情報は、撮影画像から所定の歯、例えば、上顎及び下顎の中切歯及び側切歯並びに歯紋の画像を抽出した画像であってもよいし、これらの歯から歯紋のみを抽出した画像であってもよい。また、これらの画像に、歯紋の線を重畳して、歯紋をより明確に表してもよい。例えば陰型4の撮影画像の場合、撮影画像を解析して、歯の外形や歯紋を抽出し、陰型4の画像上に歯の外径や歯紋を表す線を重畳した画像を歯紋情報としてもよいし、陽型の画像(歯の画像)に変換した上で、歯の外形や歯紋を表す線分を重畳した画像を歯紋情報としてもよい。
また、歯に白色光又は紫外光を照射して撮影された撮影画像、蛍光色素が塗布された歯の唇側の表面に紫外光を照射して撮影された撮影画像の場合も、上顎と下顎の中切歯及び側切歯の画像を抽出した画像を歯紋情報とすることができる。また、このような画像に、歯紋の線を重畳してもよい。なお、撮影画像を取得する歯が、中切歯や側切歯に限定されるものではない。例えば、生体認証に用いる場合は、撮影する歯の本数が少なくてもよいが、身元不明者等の身元認証に用いる場合は、できるだけ多くの歯(より好ましくは存在するすべての歯)の撮影画像を取得しておくことが望ましい。
また、上述のような歯紋の画像に加えて、撮影画像を解析して取得した歯紋の画像上での位置座標、色、その他の特徴を、歯紋情報に加えてもよい。さらに、歯紋情報と併せて、歯冠形態、歯並び等の歯の状態に関する情報も取得してもよい。取得された歯紋情報は、表示画像制御部44によって、照合情報生成画面52の歯紋情報表示領域52aに表示される(ステップS8)。
次に、入力情報取得部42が、個体情報を取得する(ステップS9)。具体的には、例えば、操作者が、密閉容器5の表面又は個体情報記入用紙に記載された個体情報を、入力部21から入力すると、入力された個体情報が、入力情報取得部42によって取得される。また、画像情報を記憶部37や外部記録媒体から取得している場合は、個体情報も、記憶部37や外部記録媒体から取得することができる。
取得された個体情報は、表示画像制御部44によって、照合情報生成画面52の個体情報表示領域52bに表示される(ステップS10)。操作者は、照合情報生成画面52の歯紋情報と個体情報を確認して、これらの情報が適切であれば、保存ボタン52cをクリックする。
この保存の指示を入力情報取得部42が受付け、照合情報生成部43に通知する。照合情報生成部43は、歯紋情報と個体情報とを対応づけ、ID等を付して照合情報を生成し、記憶部37に記憶する(ステップS11)。次いで、操作者が撮影終了ボタン等をクリックし、撮影画像の取得の終了の指示を入力すると、この終了の指示を入力情報取得部42が受付け(ステップS12の判定がYES)、処理を終了する。これに対して、終了の指示がない場合は(ステップS12の判定がNO)、ステップS3に戻り、表示部22への撮影画像取得画面51が表示され、操作者は次の撮影画像の取得を続行することができる。ステップS3~ステップS11を繰り返すことで、新たな照合情報を生成して記憶することができる。
一方、ステップS1で表示されたメニュー画面50で、確認ボタン50bがクリックされて選択されると(ステップS2の判定がNO)、表示画像制御部44は、図5B(d)に示す照合情報一覧画面53を表示部22に表示する(ステップS13)。この照合情報一覧画で、所定のレコードを選択してクリック等すると、表示画像制御部44は、図5B(e)に示す照合情報確認画面54を表示部22に表示する(ステップS14)。この照合情報確認画面54で、編集ボタン54cをクリックすることで、個体情報表示領域54bの個体情報を修正することができる。また、削除ボタン54dをクリックすることで、当該照会情報のレコードを記憶部37から削除することができる。照合情報生成部43は、照合情報確認画面54での照合情報の修正や削除の指示に応じて、記憶部37を更新する(ステップS15)。また、終了ボタン54eのクリックを受け付けると、照合情報一覧画面53に戻って他のレコードの編集や削除を行ったり、照合情報確認の処理を終了したりすることができる。
以上説明したように、第2実施形態の紋様情報収集装置としての歯紋情報収集装置100は、記憶部37と、個体の歯の紋様を含む歯の撮影画像を取得する撮影画像取得部40と、撮影画像に基づいて、当該個体の歯の紋様に関する紋様情報(歯紋情報)を取得する紋様情報取得部(歯紋情報生成部41)と、取得した紋様情報及び個体を識別する個体情報を関連付けて、照合情報を生成し記憶部37に記憶する照合情報生成部43と、を備えている。また、第2実施形態の歯紋情報収集システム1000は、第2実施形態の歯紋情報収集装置100と、通信ネットワークNを介して接続される情報端末25と、を備えている。
また、第2実施形態で実行されるプログラムは、コンピュータを、記憶手段(記憶部37)と、個体の歯の紋様を含む歯の撮影画像を取得する撮影画像取得手段(撮影画像取得部40)と、撮影画像に基づいて、個体の歯の紋様に関する紋様情報を取得する紋様情報取得手段(歯紋情報生成部41)と、取得した紋様情報を、個体を識別する個体情報と関連付けて照合情報を生成して記憶手段(記憶部37)に記憶する照合情報生成手段(照合情報生成部43)として機能させるプログラムである。
したがって、第2実施形態によれば、歯の陰型4又は陽型の撮影画像、歯の撮影画像に基づいて、歯の紋様に関する情報を取得して、記憶部37に記憶する。これにより、身元確認等の個体識別に有効な情報を、より簡易かつより効率的に取得することができ、より多くの情報を収集することができる。また、紋様情報及び個体情報を関連付けた照合情報を多数収集してデータベース化、さらにはビックデータ化することで、より的確でより高精度な個体識別が可能な情報を提供することができる。
また、第2実施形態では、撮影画像が、第1実施形態の印象材1等を用いて得られた陰型4若しくは陰型4を用いて得られた陽型、又は個体の歯そのものを、3Dスキャン又は2次元撮影して得られた撮影画像とすることができる。これにより、人等の口腔内の歯を撮影するよりも、より簡易に撮影することができる。また、陰型4や陽型を保管しておけば、何度でも撮影することができる。よって、身元確認等の個体識別に有効な情報を、より簡易かつより効率的に取得することができる。
また、第2実施形態では、撮影画像が、個体の歯の表面に白色光若しくは紫外光を照射して撮影された撮影画像、又は蛍光色素が塗布された歯の表面に紫外光を照射して撮影された撮影画像を用いることもできる。この場合も、歯の紋様が明確な撮影画像を取得することができるとともに、被撮影者への負担も少なく、口腔内の歯の紋様を、撮影者がより簡易に撮影することができる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の個体識別装置及びこの個体識別装置を備えた個体識別システムについて、図8を参照しながら説明する。図8は、第3実施形態に係る個体識別装置200及び個体識別システム2000の機能ブロック図である。
第3実施形態の個体識別装置200は、情報処理部(制御装置)60を主に備えて構成され、この他にも、入力部61、表示部62、記憶部63等を備えている。また、通信ネットワークNを介して外部と通信する通信部を備え、さらに個体識別結果等を印刷する出力部としてのプリンタ等を備えていてもよい。
また、本実施形態の個体識別装置200は、通信ネットワークNを介して複数の情報端末64,64,・・・と接続され、個体識別システム2000を構成している。本実施形態の個体識別システム2000は、情報端末64から個体識別装置200に入力される身元不明者(識別対象個体)の歯の紋様に関する歯紋情報を含む識別対象情報と、予め収集されて記憶されている照合情報とを照合して、身元不明者の身元を識別し、その識別結果を情報端末64へ返すシステムである。
個体識別装置200は、照合情報を管理し、依頼に応じて身元不明者を識別する個体識別機関(施設)に備えられている。個体識別機関は、特に限定されるものではなく、例えば、国の機関であってもよいし、歯科医師会やこれに関連する機関であってもよいし、個体識別サービスを行う企業等であってもよい。また、第2実施形態の管理機関と同一の機関であってもよい。
個体識別装置200のハードウェア構成は、特に限定されるものではなく、第2実施形態の歯紋情報収集装置100と同様のハードウェア構成とすることができる。つまり、情報処理部60として、CPU、ROM、RAM、入力I/F、通信I/F、外部機器I/F、記憶部等を備えたサーバ用PC等を用いることができる。入力部61として、キーボード、マウス、テンキー、タッチパネル等を用いることができる。表示部62として、LCDなどの電子表示デバイスを用いることができる。
記憶部63として、記憶部37は、ハードディスク、フラッシュメモリ等の記録媒体から構成される。記憶部63には、個体識別装置200の動作に必要なプログラムや各種情報が記憶されている。また、記憶部63は、照合情報データベース63aを備えている。この照合情報データベース63aは、例えば、クラウドプロバイダ等で提供される大容量ストレージサービス等を用いることができる。
照合情報データベース63aには、歯科医院等で取得された複数の個体の歯の紋様に関する紋様情報つまり歯紋情報及び各個体を識別する個体情報が対応づけられた照合情報が予め記憶されている。この照合情報として、例えば、第2実施形態の歯紋情報収集装置100から提供される。このような照合情報を多数記憶してデータベース化、さらにはビックデータ化することで、より的確で高精度な照合が可能となる。
次に、図8の機能ブロック図を用いて、情報処理部60及び情報端末64の機能について説明する。まず情報処理部60は、図8に示すように、識別対象情報取得部70、個体識別部71、身元確認部72、表示画像制御部73、記憶部63として機能する。
識別対象情報取得部70は、身元不明者の歯紋に関する識別対象情報を取得する。この識別対象情報は、入力部61から、又は通信ネットワークNを介して情報端末64から入力される。
歯紋に関する識別対象情報は、身元不明者の歯紋情報を含む情報であり、身元不明者のID番号や発見時の状況等の情報も含んでいることがより望ましい。歯紋情報としては、例えば、第1実施形態の印象材1及び歯の紋様取得キット10で取得した身元不明者の歯紋を含む歯の陰型4や陽型の撮影画像が挙げられる。また、身元不明者の歯の表面に白色光又は紫外光を照射して撮影された撮影画像、蛍光色素が塗布された歯の表面に紫外光を照射して撮影された撮影画像等も挙げられる。また、歯紋をより明確にすべく、このような撮影画像に適宜の画像処理を施した画像等も挙げられる。
ここで、身元不明者とは、身元が特定できない個人のことであり、例えば、災害、事故、事件等で亡くなった被害者が挙げられ、この他にも、記憶喪失者や意識不明者、重症者等、自身で身元を伝えることができない人等が挙げられる。
個体識別部71は、識別対象情報取得部70で取得した識別対象情報を、記憶部63の照合情報データベース63aに記憶された照合情報の歯紋情報と照合して、一致する歯紋情報に対応づけられた個体情報により、識別対象の個体を識別する。
身元確認部72は、個体識別部71での識別結果に基づいて、身元不明者の身元を確認する。また、身元確認部72は、確認結果(身元情報)として、一致した照合情報の個体情報を情報端末64へ送信する。
また、情報端末64は、身元不明者の身元の確認を依頼する施設、例えば、警察機関、医療機関、災害現場等に設置される。情報端末64としては、CPU、RAM、ROM等を備えたPC、スマートフォン等の携帯情報機器等を用いることができる。
また、情報端末64は、撮像部65、表示部66、情報処理部69等を備えている。また、情報端末64は、キーボード等の入力部、通信ネットワークNと接続する通信部等も備えている。撮像部65は、第1実施形態の撮像部24と同様に、デジタルカメラ、CCDカメラ、CTスキャナ、3Dスキャナ等を用いることができる。撮像部65は、前述したように、陰型4、陽型の撮影画像、又は自然光や紫外光を用いて歯そのものの撮影画像を撮影する。表示部66は、第1実施形態の表示部22と同様に、LCD、有機EL等の電子表示デバイスを用いることができる。
また、情報端末64の情報処理部69は、図8に示すように、識別対象情報出力部67、識別結果取得部68として機能する。識別対象情報出力部67は、識別対象情報を取得し、個体識別装置200に向けて出力する。識別対象情報出力部67は、例えば、撮像部65で撮影した陰型4、陽型、歯の撮影画像又は適宜の画像処理を施した画像と、入力部等から入力したID情報を対応づけて識別対象情報を生成する。なお、識別対象情報が情報端末64側で生成されるものに限定されることはなく、外部記録媒体や通信ネットワークNを介して情報端末64に入力された識別対象情報を、識別対象情報出力部67で取得してもよい。
識別結果取得部68は、個体識別装置200から識別結果としての身元情報を取得し、取得した身元情報を表示部66に表示する。
上述のような構成の個体識別装置200及びこの個体識別装置200を備える個体識別システム2000で実行される個体識別処理(個体識別方法、個体識別プログラム)の一例を、図9のフローチャートを参照しながら説明する。第3実施形態では、個体識別として、身元不明者の身元確認を行う。
ここでは個体識別装置200及び情報端末64が起動しており、各々の個体識別プログラムが立ち上がった状態で、個体識別装置200と情報端末64とが通信ネットワークNを介して互いに通信できる状態となっているものとする。
まず、身元確認の依頼者が、情報端末64に対して身元確認の指示をすると、識別対象情報出力部67が、通信ネットワークNを介して個体識別装置200に身元不明者に関する識別対象情報を出力する(ステップS20)。この情報端末64からの識別対象情報を、個体識別装置200の識別対象情報取得部70が取得する(ステップS21)。次に、個体識別部71が、取得した識別対象情報の歯紋情報と、照合情報データベース63aの照合情報の歯紋情報とを照合して、一致する歯紋情報があるか否か識別する(ステップS22)。
この識別結果は、個体識別部71から身元確認部72へ通知される。また個体識別部71は、一致する歯紋情報を検出したきは、対応する照合情報のレコードを身元確認部72へ出力する。身元確認部72は、個体識別部71での識別結果に基づいて身元を確認する。一致する歯紋情報が検出されたという識別結果が得られたときは、身元が確認された旨の確認結果を生成する。この確認結果には、対応する照合情報の個体情報に基づく身元情報も含まれる。一方、一致する歯紋情報が検出されなかったという識別結果が得られたときは、身元が確認されなかった旨の確認結果を生成する(以上、ステップS23)。なお、識別結果や確認結果は、表示画像制御部73によって個体識別装置200の表示部62に表示することもでき、識別機関側でも身元不明者の身元が確認されたことを知ることができる。また、この確認結果を、照合情報データベース63aに記憶することで、以後の個体識別に利用することができる。
身元確認部72は、通信ネットワークNを介して情報端末64に向けて確認結果を出力する(ステップS24)。情報端末64は、この確認結果を取得し(ステップS25)、確認結果を表示部66へ表示する(ステップS26)。身元確認の依頼者は、表示部66に表示された確認結果を視認することで、身元不明者の身元が確認されたか否かを知ることができる。身元が確認された場合は、身元不明者の氏名等の身元情報を知ることができる。
(変形例)
次に、第3実施形態に係る個体識別装置及び個体識別システムの変形例について説明する。この変形例の個体識別装置及び個体識別システムは、身元確認部72に代えて図8に破線で示す生体認証部(個体認証部)74を備えていること以外は、第3実施形態の個体識別装置200及び個体識別システム2000と同様の基本構成を備えている。そのため、第3実施形態と同様の構成については、詳細な説明は省略し、第3実施形態と異なる構成について主に説明する。
この変形例では、識別対象は生体であり、歯紋情報を含む識別対象情報は、生体の歯の撮影画像、又は印象材1を用いて取得した陰型4又はその陽型の撮影画像に基づいて生成される。変形例では、このような識別対象情報と、照合情報データベース63aの照合情報に基づいて、生体認証(バイオメトリクス)を行うものである。すなわち、生体認証部74は、個体識別部71での識別結果に基づいて、生体認証(個体認証)を行う。
この場合、情報端末64は、生体認証等の生体の個体認証が必要な施設、例えば、建物や室内の出入の際、入出国の際など、生体認証が必要な場所に設置されている。
上述のような構成の変形例の個体識別装置及び個体識別システムで実行される生体認証処理(生体認証方法、生体認証プログラム)の一例を、図9のフローチャートを読み替えながら説明する。
まず、生体認証の対象者が、例えば、撮像部65に向かって口を開いて歯を露出すると、撮像部65がその歯の表面を撮影する。この撮影画像は識別対象情報出力部67により取得され、生体認証の識別対象情報として、通信ネットワークNを介して個体識別装置200に出力される(ステップS20)。この識別対象情報を、個体識別装置200の識別対象情報取得部70が取得し(ステップS21)、個体識別部71が、取得した識別対象情報の歯紋情報と、照合情報データベース63aの照合情報とを照合し、一致するものがあるか否か識別する(ステップS22)。この識別結果は、生体認証部74に通知される。
生体認証部74は、ステップS23の身元の確認に代えて、生体の認証を行う。つまり、ステップS22で、一致する歯紋情報が検出されたとの識別結果が得られたときは、生体認証が正常に行われた旨の確認結果を生成し、検出されなかったとの識別結果が得られたときは、生体認証エラーの確認結果を生成する。
次いで、生体認証部74は、通信ネットワークNを介して情報端末64に向けて確認結果を出力する(ステップS24)。情報端末64は、この確認結果を取得し(ステップS25)、確認結果を表示部66へ表示する(ステップS26)。生体認証の対象者や警備担当者等は、表示部66に表示された確認結果を視認することで、生体認証が正常に行われたか否かを知ることができる。また、確認結果に基づいて、セキュリティ装置等が、生体認証が正常に行われたか否かを識別することができる。そして、この生体認証の結果に基づいて、警備担当者やセキュリティ装置等が、施設等への入出等をコントロールしたり、警告したりすることができる。
また、他の異なる実施形態として、歯紋情報収集装置(例えば、第2実施形態の歯紋情報収集装置100)と個体識別装置(例えば、第3実施形態の個体識別装置200)を備えた歯紋情報収集・個体識別装置及びこれを備えた歯紋情報収集・個体識別システムとすることもできる。このような構成とすることで、歯紋情報の収集とこの歯紋情報に基づく個体識別を同一の機関で、まとめて管理及び実行することができる。
以上説明したように、第3実施形態の個体識別装置200は、複数の個体の歯の紋様に関する紋様情報及び各個体に関する個体情報が対応づけられた照合情報が記憶されている記憶部63(照合情報データベース63a)と、識別対象個体の歯の紋様に関する識別対象情報を取得する識別対象情報取得部70と、取得した識別対象情報を、記憶部63の照合情報の紋様情報と照合して、一致する紋様情報に対応づけられた個体情報により識別対象個体を識別する個体識別部71と、を備えている。また、第3実施形態の個体識別システム2000は、個体識別装置200、及び通信ネットワークNを介して個体識別装置200と接続された情報端末64、を備えている。
また、第3実施形態で実行されるプログラムは、個体識別装置200で実行されるプログラムは、コンピュータを、複数の個体の歯の紋様に関する紋様情報及び各個体を識別する識別情報が対応づけられた照合情報を記憶する記憶手段(記憶部63)と、識別対象の個体の歯に関する識別対象情報を取得する識別対象情報取得手段(識別対象情報取得部70)と、取得した識別対象情報から個体の前記歯の紋様情報を取得し、記憶手段の照合情報の紋様情報と照合して、一致する紋様状態に対応づけられた識別情報により当該個体を識別する個体識別手段(個体識別部71)として機能させるためのプログラムである。
したがって、第3実施形態によれば、硬組織の中でも、そのままの形で残り易い歯に着目し、歯の表面に現れる個体固有の紋様に基づいて、個体識別を行うことで、身元確認等の個体識別を、より効率的かつより確実に行うことができる。
また、第3実施形態において、歯の紋様が、周波条、破折線、唇側面隆線、小窩、溝、切縁及び亀裂から選択されるいずれか又は複数の組み合わせであれば、個体識別に有効なより詳細な情報を取得することができる。また、紋様情報が、個体の上顎中切歯及び上顎側切歯の少なくとも1本の表面の紋様情報を少なくとも含むものであれば、歯の紋様をより明確に採取することができる。また、口腔内の歯であっても、より簡易かつ効率的に採取することができる。また、身元認証等に用いる場合は、認証精度や効率を高めるべく、中切歯や側切歯に限らず、できるだけ多くの歯の(より望ましくは存在するすべての歯の)紋様情報を取得しておくことが好ましい。
また、紋様情報が、個体から収集した複数の歯の表面の陰型4の撮影画像、又は陰型4を用いて得られる複数の陽型の撮影画像に基づくものであれば、口腔内の歯に比べて、容易に撮影画像を取得することができ、患者等への負担も少なく、適切な紋様情報を取得することができる。また、また、紋様情報が、個体の歯の表面に白色光若しくは紫外光を照射して撮影された撮影画像、又は蛍光色素が塗布された前記歯の表面に紫外光を照射して撮影された撮影画像に基づくものであっても、患者等への身体的、金銭的負担も少なく、歯科医師等も容易に撮影でき、適切な紋様情報を取得することができる。
また、個体識別情報は、個体の氏名、生年月日、年齢、性別、血液型及び連絡先の少なくともいずれかを含むことで、個体の識別を容易に行うことができる。
また、第3実施形態では、識別対象個体が、身元不明者であり、個体識別部71での識別結果に基づいて、身元不明者の身元を確認する身元確認部72を備えている。軟組織では、腐敗や損傷によって残り難いが、硬組織である歯はそのままの形で残り易く、白骨体や焼死体等でも残り易い。したがって、個体固有の歯の紋様情報に基づいて、身元不明者の身元の確認を、より効率的かつより確実に行うことができる。
また、第3実施形態の変形例では、個体識別部71での識別結果に基づいて、個体の認証を行う個体認証部(生体認証部74)を備えている。指紋認証等の軟組織を用いた個体識別では、指のふやけや怪我等によって、識別できない場合がある。また複製が比較的容易である。また、虹彩認証等を用いる際の虹彩も比較的複製し易い。これに対して、硬組織の歯は残り易く、変化も少ない。また、複製も容易ではない。したがって、個体固有の歯の紋様情報に基づいて、個体認証(生体認証、バイオメトリクス)を、より効率的かつより確実に行うことができる。
また、第3実施形態及び変形例では、情報端末64は、識別対象情報を個体識別装置200に出力する識別対象情報出力部67と、個体識別装置200から識別結果を取得する識別結果取得部68と、取得した識別結果を表示する表示部66と、を備えている。この構成により、個体識別装置200から離れた場所からでも、容易に個体識別を依頼することができ、また、個体固有の歯の紋様情報に基づく適切な識別結果を取得することができる。また、表示部66への表示によって、依頼者が識別結果を明確に把握することができる。
以上、本発明の実施形態を図面により詳述してきたが、上記各実施形態は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記各実施形態の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。
例えば、上記第3実施形態及び変形例に係る個体識別システム2000において、情報処理部20の個体識別部71、身元確認部72、生体認証部74等を、人工知能(AI(Artificial Intelligence))で構成することができる。そして、例えばニューラルネットワーク、ディープラーニング等のアルゴリズムを利用することで、識別対象情報と、ビッグデータ化した照合情報データベース63aの照合情報との照合を、より迅速かつより高精度に行うことができる。また、第2実施形態に係る歯紋情報収集装置100でも、AIを搭載し、AIの学習機能により撮影画像の解析を行うことで、より詳細で個体識別により適した歯紋情報を収集することができる。