本発明の実施形態に係る情報処理システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
<システム概要>
図1は、本実施の形態に係る情報処理システムの概要を説明するための模式図である。本実施の形態に係る情報処理システムは、例えば高齢者又は未成年等の見守り対象者による金銭取引を、その家族又は後見人等のユーザが見守ることを支援するシステムである。以下、見守り対象者を単に対象者と称する場合がある。見守り対象者の金銭取引には、例えば銀行口座からの預金の引き出し、他人への振り込み、商品等の購入、クレジットカードの使用、借金の契約、物品の売却、先物取引及び信用取引等の種々の取引が含まれ得る。また見守り対象者及びこれを見守るユーザの関係は、例えば親及びその子供、並びに、子供及びその親等の家族関係に限らず、被後見人及びその後見人等のような種々の関係が含まれ得る。本実施の形態において、ユーザは対象者の金銭取引を見守る側の人であり、対象者は金銭取引を見守られる側の人である。
本実施の形態に係る情報処理システムは、見守りサーバ装置1と、ユーザが使用するユーザ端末装置3とを備えて構成されている。見守りサーバ装置1は、予め登録された見守り対象者の口座情報等に基づいて、見守り対象者の金銭取引に係る取引情報を金融サーバ装置5から定期的に取得し、金銭取引の異常度の算出及び異常の有無の判定等の処理を行う。見守りサーバ装置1は、対象者の金銭取引に異常があると判定した場合、この対象者を見守るユーザが使用するユーザ端末装置3へ通知を行う。異常を通知されたユーザは、例えば見守り対象者に連絡を取る、異常な取引の停止又はキャンセル等を申請する、及び、専門家に相談する等の種々の対処を行うことができる。
なお図1においては、金融サーバ装置5を1つのみ図示しているが、金融サーバ装置5には種々の装置が含まれ得る。例えば金融サーバ装置5には、見守り対象者が口座又はID等を有する銀行、証券会社、クレジットカード会社、又は、消費者金融会社等が管理運営するサーバ装置が含まれ得る。また例えば金融サーバ装置5には、仮想通貨、電子マネー又はキャッシュレス決済等による売買を管理するサーバ装置が含まれ得る。金融サーバ装置5は、上記のものに限らず、見守り対象者の金銭取引に関する情報を記憶又は管理等する装置であればどのような装置であってもよい。
金融サーバ装置5は、見守り対象者の口座に関する情報を記憶している。金融サーバ装置5が記憶する情報には、例えば対象者の氏名、年齢、住所、連絡先、金融機関名、支店名、口座種別及び口座番号等の書誌情報と、口座の残高、取引の金額、取引種別(例えば入金、出金、振込又は振替等)、取引日時及び取引相手等の取引情報とが含まれ得る。金融サーバ装置5は、対象者の氏名及び口座番号等を指定した見守りサーバ装置1からの情報提供の要求に応じて、指定された対象者の取引情報を送信する。
ユーザ端末装置3には、例えばスマートフォン、タブレット型端末装置又はパーソナルコンピュータ等の種々の情報処理装置が用いられ得る。例えばユーザは自身のスマートフォンに本実施の形態に係る情報処理システムのためのアプリケーションプログラムをインストールすることによって、このスマートフォンを本実施の形態に係る情報処理システムのユーザ端末装置3として用いることができる。
見守りサーバ装置1は、本実施の形態に係る情報処理システムを提供する会社又は組織等が運営するサーバ装置である。見守りサーバ装置1は、見守り対象者を識別する識別情報、対象者が有する一又は複数の口座情報、及び、対象者を見守るユーザ又はこのユーザが使用するユーザ端末装置3を識別する識別情報等の情報を対応付けて記憶するデータベースを有している。見守りサーバ装置1は、このデータベースに予め登録された見守り対象者について、金融サーバ装置5から取引情報を取得し、金銭取引に関する異常性の有無の判定及び判定結果に基づくユーザへの通知等の処理を行う。
本実施の形態において見守りサーバ装置1は、予め機械学習がなされた学習済の2つの学習モデルを備えており、この2つの学習モデルを用いて見守り対象者の金銭取引に関する異常性の有無を判定する処理及びこの判定の根拠となる情報を提示する処理等を行う。見守りサーバ装置1が備える第1の学習モデルは、例えば見守り対象者の性別及び生年月日等の属性情報と時系列の金銭取引情報とを入力として受け付け、この金銭取引に関する異常度(評価値)を出力する異常度算出モデルである。見守りサーバ装置1は、異常度算出モデルが出力する異常度が予め設定された閾値を超えるか否かの判定を行い、異常度が閾値を超える場合に通常とは異なる異常な金銭取引がなされたと判定して、対象者を見守るユーザのユーザ端末装置3へ通知を行う。
見守りサーバ装置1が備える第2の学習モデルは、異常度算出モデルを用いて行った金銭取引の異常の有無の判定結果について、その判定結果を得た根拠を特定するための説明可能モデルである。説明可能モデルは、例えば見守り対象者の時系列の金銭取引情報を入力として受け付けて、この金銭取引に関する複数の統計値を算出し、算出した統計値に基づく金銭取引に関する異常度(評価値)を出力する。見守りサーバ装置1は、説明可能モデルが出力する異常度に対する各統計値の寄与度を算出し、寄与度が高い統計値を異常の有無の判定結果の根拠とする。
<装置構成>
図2は、本実施の形態に係る見守りサーバ装置1の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る見守りサーバ装置1は、処理部11、記憶部(ストレージ)12及び通信部(トランシーバ)13等を備えて構成されている。なお本実施の形態においては、1つのサーバ装置にて処理が行われるものとして説明を行うが、複数のサーバ装置が分散して処理を行ってもよい。
処理部11は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置、ROM(Read Only Memory)、及び、RAM(Random Access Memory)等を用いて構成されている。処理部11は、記憶部12に記憶されたサーバプログラム12aを読み出して実行することにより、見守り対象者の金銭取引に関する異常を判定する処理、及び、金銭取引の判定結果に関する情報をユーザへ通知する処理等の種々の処理を行う。
記憶部12は、例えばハードディスク等の大容量の記憶装置を用いて構成されている。記憶部12は、処理部11が実行する各種のプログラム、及び、処理部11の処理に必要な各種のデータを記憶する。本実施の形態において記憶部12は、処理部11が実行するサーバプログラム12aと、予め機械学習がなされた学習済の異常度算出モデル12b及び説明可能モデル12cを記憶している。また記憶部12には、見守り対象者及びこれを見守るユーザ等に関する情報を記憶する見守りDB(データベース)12dと、見守り対象者の金銭取引に関する情報を記憶する金銭取引DB12eとが設けられている。
本実施の形態においてサーバプログラム12aは、メモリカード又は光ディスク等の記録媒体99に記録された態様で提供され、見守りサーバ装置1は記録媒体99からサーバプログラム12aを読み出して記憶部12に記憶する。ただし、サーバプログラム12aは、例えば見守りサーバ装置1の製造段階において記憶部12に書き込まれてもよい。また例えばサーバプログラム12aは、遠隔の他のサーバ装置等が配信するものを見守りサーバ装置1が通信にて取得してもよい。例えばサーバプログラム12aは、記録媒体99に記録されたものを書込装置が読み出して見守りサーバ装置1の記憶部12に書き込んでもよい。サーバプログラム12aは、ネットワークを介した配信の態様で提供されてもよく、記録媒体99に記録された態様で提供されてもよい。
本実施の形態に係る見守りサーバ装置1は、いわゆる人工知能を活用して見守り対象者の金銭取引に関する異常度の算出及び異常判定の根拠の特定等の処理を行うものであり、これらの処理に用いる異常度算出モデル12b及び説明可能モデル12cを有している。異常度算出モデル12b及び説明可能モデル12cは、予め機械学習がなされた学習済の学習モデルであり、例えばニューラルネットワーク又はSVM(Support Vector Machine)等の学習モデルが採用され得る。本実施の形態において異常度算出モデル12b及び説明可能モデル12cは、見守りサーバ装置1によって学習及び再学習の処理が行われる。ただし、異常度算出モデル12b及び説明可能モデル12cの学習及び再学習の処理は別の装置で行われてもよく、この場合に異常度算出モデル12b及び説明可能モデル12cは、例えばサーバプログラム12aと共に記録媒体99を介して提供されてもよく、また例えばサーバプログラム12aとは別に他のサーバ装置等により配信されてもよく、どのような態様で提供されてもよい。異常度算出モデル12b及び説明可能モデル12cの詳細については後述する。
図3は、見守りDB12dの一構成例を説明するための模式図である。本実施の形態に係る見守りDB12dには、例えば「対象者ID」に対して「属性情報」、「口座情報」及び「ユーザ情報」等が対応付けて記憶されている。「対象者ID」は、見守りの対象者に対して一意に付される識別情報である。「属性情報」は、見守り対象者の属性に関する情報であり、例えば「生年月日」及び「性別」等の情報を含む。「口座情報」は、見守り対象者が有する金融機関の口座に関する情報であり、例えば「金融機関情報」及び「口座番号」等の情報を含む。「金融機関情報」は、見守り対象者の口座を管理する機関を識別するための情報であり、例えば金融機関名及び支店名等の情報を含んで構成される。「口座番号」は、見守り対象者の口座に対して一意に付される識別番号である。「ユーザ情報」は、対象者を見守るユーザに関する情報であり、異常通知等の送信先を特定するための情報である。「ユーザ情報」には、例えば「ユーザID」及び「端末ID」等の情報を含む。「ユーザID」は、ユーザに対して一意に付された識別情報である。「端末ID」は、ユーザが所有するユーザ端末装置3に対して一意に付された識別情報である。なおこれらの情報は、本実施の形態に係る見守り支援システムのサービスの利用開始時にユーザが登録することによって、見守りDB12dに記憶される。
図示の例では、見守り対象者の「対象者A」は、「生年月日」が「1955/10/10」であり、「性別」が「男性」であり、「金融機関X」の口座番号「0123」の口座と「金融機関Y」の口座番号「4567」の口座とを有し、この対象者に関する通知等を「ユーザa」の「端末i」へ送信することが見守りDB12dに記憶されている。また、見守り対象者の「対象者B」は、「生年月日」が「1941/1/21」であり、「性別」が「女性」であり、「金融機関Z」の口座番号「8901」の口座を有し、この対象者に関する通知等を「ユーザb」の「端末j」へ送信することが見守りDB12dに記憶されている。見守りサーバ装置1は、見守りDB12dに登録された見守り対象者について、口座情報に示される口座の取引情報を金融サーバ装置5から取得して異常の有無の判定及び判定の根拠の特定等の処理を行い、処理結果をユーザ情報に示される送信先へ送信する。
なお、図示の例では、1人の「対象者ID」に対して1人の「ユーザ情報」が対応づけられているが、1人の「対象者ID」に対して複数の「ユーザ情報」が対応づけられてもよい。これにより、1人の対象者の金銭取引を複数のユーザで見守ることができる。また、図示の例では、1人の「口座情報」に対して1人の「ユーザ情報」が対応づけられているが、1人の「口座情報」に対して複数の「ユーザ情報」が対応づけられてもよい。これにより、1人の口座の金銭取引を複数のユーザで見守ることができる。
図4は、金銭取引DB12eの一構成例を説明するための模式図である。本実施の形態に係る金銭取引DB12eは、例えば「対象者ID」に対して「口座番号」、「年月日・曜日」、「入金総額」、「出金総額」及び「取引回数」等の情報を対応付けて金銭取引情報として記憶するデータベースである。「対象者ID」は、見守りの対象者に対して一意に付される識別情報である。「口座番号」は、見守り対象者の口座に対して一意に付される識別番号である。金銭取引DB12eに記憶される「対象者ID」及び「口座番号」は、上述の見守りDB12dに記憶される「対象者ID」及び「口座番号」と同じものである。「年月日・曜日」は、見守り対象者が金銭取引を行った日付及び曜日である。「入金総額」は、その日に見守り対象者が行った金銭取引のうち、入金に関する金銭取引の取引金額の総額である。「出金総額」は、その日に見守り対象者が行った金銭取引のうち、出金に関する金銭取引の取引金額の総額である。「取引回数」は、その日に見守り対象者が行った入金及び出金の両方について合算した取引回数である。
本実施の形態において見守りサーバ装置1が金銭取引DB12eに記憶する各金銭取引情報は、1人の対象者の1つの口座について、1日に行われた金銭取引をまとめたものである。例えば見守り対象者が同じ日に2回の入金と1回の出金とを行った場合、金銭取引DB12eの金銭取引情報には、「入金総額」として2回の入金による総額が記憶され、「出金総額」として1回の出金の金額(総額)が記憶され、「取引回数」として入金回数及び出金回数の合計値として3回が記憶される。
図示の例では、見守り対象者の「対象者A」の口座番号「0123」の口座について、「2020年9月29日の火曜日」に金銭取引が「1回」行われており、その「入金総額」が「20000円」であり、「出金総額」が「0円」であることが記憶されている。また同じ口座について、「2020年9月30日の水曜日」に金銭取引が「2回」行われており、その「入金総額」が「0円」であり、「出金総額」が「15000円」であることが記憶されている。この場合、2回の金銭取引がいずれも出金であったことは分かるが、各金銭取引において出金された個別の金額は分からない。
なお図示の例では、金銭取引DB12eには「対象者A」の口座番号「0123」に関する金銭取引情報のみが記憶されているが、複数の対象者及び複数の口座に関する金銭取引情報が記憶されてよい。また金銭取引情報を口座毎に金銭取引情報を作成するのではなく、同じ日の金銭取引について複数の口座での取引をまとめて1つの金銭取引情報としてもよい。また逆に、同じ日の金銭取引について金銭取引情報をまとめるのではなく、1回の金銭取引毎に金銭取引情報が作成されてもよい。また金銭取引が行われなかった日については、例えば金銭取引DB12eに金銭取引情報が記憶されなくてもよく、また例えば総額を0円、取引回数を0回とした金銭取引情報が記憶されてもよい。
本実施の形態に係る見守りサーバ装置1は、例えば1日に1回の頻度で金融サーバ装置5との通信を行い、見守り対象者について前日の金銭取引に関する情報を取得する。このときに金融サーバ装置5から得られる金銭取引に関する情報は、例えば1回の金銭取引について情報が1つにまとめられたものである。見守りサーバ装置1は、金融サーバ装置5から取得した金銭取引に関する情報を基に、入金総額、出金総額及び取引回数等を算出することで、対象者毎に1日に1つの金銭取引情報を作成して金銭取引DB12eに記憶する。
見守りサーバ装置1の通信部13は、携帯電話通信網及びインターネット等を含むネットワークNを介して、種々の装置との間で通信を行う。本実施の形態において通信部13は、ネットワークNを介して、ユーザ端末装置3及び金融サーバ装置5との間で通信を行う。通信部13は、処理部11から与えられたデータを他の装置へ送信すると共に、他の装置から受信したデータを処理部11へ与える。
なお記憶部12は、見守りサーバ装置1に接続された外部記憶装置であってよい。また見守りサーバ装置1は、複数のコンピュータを含んで構成されるマルチコンピュータであってよく、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよい。また見守りサーバ装置1は、上記の構成に限定されず、例えば可搬型の記憶媒体に記憶された情報を読み取る読取部、操作入力を受け付ける入力部、又は、画像を表示する表示部等を含んでもよい。
また本実施の形態に係る見守りサーバ装置1の処理部11には、記憶部12に記憶されたサーバプログラム12aを処理部11が読み出して実行することにより、情報取得部11a、異常度算出部11b、異常判定部11c、根拠判定部11d、表示処理部11e及び学習処理部11f等が、ソフトウェア的な機能部として処理部11に実現される。
情報取得部11aは、ユーザ端末装置3又は金融サーバ装置5等から見守り対象者の属性情報を取得する処理、及び、金融サーバ装置5から見守り対象者の金銭取引情報を取得する処理等を行う。情報取得部11aは、例えばユーザが本サービスの利用を開始する前に、見守り対象者の性別及び生年月日等の属性情報の入力をユーザ端末装置3にて受け付け、入力された見守り対象者の属性情報を取得して記憶部12の見守りDB12dに記憶する。又は、情報取得部11aは、金融サーバ装置5が見守り対象者の属性情報を記憶している場合には、この金融サーバ装置5から属性情報を取得してもよい。また、情報取得部11aは、見守りDB12dに登録された各対象者の各口座について、例えば1日に1回等の所定周期で、金融サーバ装置5から金銭取引情報を繰り返し取得し、取得した取引情報を適宜に加工又は編集して記憶部12の金銭取引DB12eに記憶する。
異常度算出部11bは、見守り対象者の金銭取引に関する異常度を算出する処理を行う。異常度算出部11bは、記憶部12の金銭取引DB12eに記憶された見守り対象者の金銭取引情報から、例えば過去1ヶ月間の金銭取引のように、最新の金銭取引情報を含む予め定められた期間の金銭取引情報を取得する。又は、異常度算出部11bは、例えば過去20回分の金銭取引のように、最新の金銭取引情報を含む予め定められた回数の金銭取引情報を取得してもよい。異常度算出部11bは、取得した所定期間の複数の金銭取引情報を時系列に並べ、時系列の金銭取引情報とする。異常度算出部11bは、時系列の金銭取引情報を、記憶部12の異常度算出モデル12bへ入力する。本実施の形態に係る異常度算出モデル12bは、時系列の金銭取引情報を入力として受け付けて、入力された金銭取引情報に係る金銭取引の異常度を出力するように予め機械学習がなされた学習済みの学習モデルである。異常度算出部11bは、異常度算出モデル12bが出力する異常度を取得することで、見守り対象者の金銭取引に係る異常度を算出する。
異常判定部11cは、異常度算出部11bが算出した異常度に基づいて、見守り対象者の金銭取引に関する異常性の有無を判定する処理を行う。本実施の形態において異常判定部11cは、異常度との比較を行う閾値を予め記憶しており、異常度算出部11bが算出した異常度が閾値を超えるか否かを判定する。異常判定部11cは、異常度が閾値を超える場合、見守り対象者の金銭取引に異常があると判定する。異常判定部11cは、見守り対象者の金銭取引に異常ありと判定した場合に、この見守り対象者を見守るユーザのユーザ端末装置3へ異常通知を送信することにより、ユーザ端末装置3に金銭取引の異常を通知する画面又はメッセージ等を表示させる処理を行う。
根拠判定部11dは、異常判定部11cが見守り対象者の金銭取引に異常ありと判定した場合に、この金銭取引の異常の根拠を判定する処理を行う。根拠判定部11dは、異常ありと判定された金銭取引に関する時系列の金銭取引情報と、記憶部12に記憶された説明可能モデル12cとを用いて、異常の根拠の判定を行う。本実施の形態に係る説明可能モデル12cは、入力された時系列の金銭取引情報を基に各種の統計値を算出し、算出した複数の統計値に基づく異常度を出力するように予め機械学習がなされた学習済の学習モデルである。根拠判定部11dは、異常ありと判定された金銭取引に関する時系列の金銭取引情報(即ち、異常判定部11cが異常ありと判定した異常度を異常度算出部11bが算出した際に異常度算出モデル12bへ入力した時系列の金銭取引情報)を説明可能モデル12cへ入力し、説明可能モデル12cが算出する各種の統計値を取得する。根拠判定部11dは、取得した各種の統計値と、説明可能モデル12cの内部のパラメータとに基づいて、異常判定に対する寄与度が高い統計値がいずれであるかを判定し、寄与度が高い統計値を異常の根拠と判定する。
表示処理部11eは、根拠判定部11dが判定した異常の根拠に関する表示を行う。本実施の形態において表示処理部11eは、異常の根拠を判定する際に用いた各種の統計値とその異常判定に対する寄与度とを可視化したグラフを表示する処理を行う。表示処理部11eは、グラフ表示を行うためのデータ(画像データなど)を作成してユーザ端末装置3へ送信することにより、ユーザ端末装置3に見守り対象者の金銭取引を異常と判定した根拠に関する情報を可視化したグラフを表示することができる。なおこのグラフ表示は、ユーザ端末装置3においてユーザ向けに行われるのではなく、例えば本システムの管理者向けに見守りサーバ装置1又はこれに接続された装置等において行われてもよく、また例えば金融機関の担当者向けに金融サーバ装置5又はこれに接続された装置等において行われてもよい。
学習処理部11fは、異常度算出モデル12b及び説明可能モデル12cに対する機械学習の処理を行う。学習処理部11fは、金融サーバ装置5に蓄積された過去の金銭取引情報とこの金銭取引情報に係る金銭取引を行った人の属性情報とを取得する。学習処理部11fは、特定の特徴を有する人の属性情報及びこの人が行った金銭取引に関する時系列の金銭取引情報に対して例えばラベル「1」を与え、特定の特徴を有さない人の属性情報及びこの人が行った金銭取引に関する時系列の金銭取引情報に対して例えばラベル「0」を与えた教師データを作成する。即ち、本実施の形態においては、入力となる時系列の金銭取引情報の中に異常な金銭取引が含まれているか否かに対してラベル「1」又は「0」を付すのではなく、金銭取引を行った人が特定の特徴を有するか否かに対してラベル「1」又は「0」を付す。本実施の形態においては、ラベル「1」を与える特定の特徴を有する人を、例えば被後見人(後見人が登録されている人)として教師データを作成するが、被後見人は一例であってこれに限るものではなく、被後見人以外の種々の人を特定の特徴を有する人として教師データを作成してもよい。学習処理部11fは、作成された教師データを用いて、見守り対象者の属性情報及び時系列の金銭取引情報を入力として受け付けて金銭取引に関する異常度を出力するよう異常度算出モデル12bの学習処理を行う。
また学習処理部11fは、説明可能モデル12cの学習に用いる教師データとして、特定の特徴を有する人が行った金銭取引に関する時系列の金銭取引情報に対して例えばラベル「1」を与え、特定の特徴を有さない人が行った金銭取引に関する時系列の金銭取引情報に対して例えばラベル「0」を与えた教師データを作成する。これは上記の異常度算出モデル12bの学習に用いる教師データから属性情報を除いたものに相当するため、学習処理部11fは異常度算出モデル12bの学習用に作成した教師データを流用してもよい。学習処理部11fは、作成された教師データを用いて、見守り対象者の時系列の金銭取引情報を入力として受け付けて金銭取引に関する異常度を出力するよう説明可能モデル12cの学習処理を行う。
なお、異常度算出モデル12b及び説明可能モデル12cの学習に用いられる教師データの作成は、見守りサーバ装置1とは異なる装置にて行われてもよい。学習処理に用いられる教師データは、少なくとも最初の学習処理においては、例えば金融サーバ装置5に蓄積された過去の取引情報に基づいて、見守り支援システムの設計者又は管理者等が予め作成してもよい。2回目以降の学習処理(再学習処理)においては、見守り支援システムの運営に伴って蓄積したデータを用いて、学習処理部11fが教師データを作成して異常度算出モデル12b及び説明可能モデル12cを再学習してよい。
図5は、本実施の形態に係るユーザ端末装置3の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係るユーザ端末装置3は、処理部31、記憶部(ストレージ)32、通信部(トランシーバ)33、表示部(ディスプレイ)34及び操作部35等を備えて構成されている。ユーザ端末装置3は、対象者を見守る家族又は後見人等のユーザが使用する装置であり、例えばスマートフォン、タブレット型端末装置又はパーソナルコンピュータ等の情報処理装置を用いて構成され得る。
処理部31は、CPU又はMPU等の演算処理装置、ROM及び等を用いて構成されている。処理部31は、記憶部32に記憶されたプログラム32aを読み出して実行することにより、見守りサーバ装置1から送信される見守り対象者に関する情報を受信する処理、及び、受信した情報を表示する処理等の種々の処理を行う。
記憶部32は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ素子を用いて構成されている。記憶部32は、処理部31が実行する各種のプログラム、及び、処理部31の処理に必要な各種のデータを記憶する。本実施の形態において記憶部32は、処理部31が実行するプログラム32aを記憶している。本実施の形態においてプログラム32aは遠隔のサーバ装置等により配信され、これをユーザ端末装置3が通信にて取得し、記憶部32に記憶する。ただしプログラム32aは、例えばユーザ端末装置3の製造段階において記憶部32に書き込まれてもよい。例えばプログラム32aは、メモリカード又は光ディスク等の記録媒体98に記録されたプログラム32aをユーザ端末装置3が読み出して記憶部32に記憶してもよい。例えばプログラム32aは、記録媒体98に記録されたものを書込装置が読み出してユーザ端末装置3の記憶部32に書き込んでもよい。プログラム32aは、ネットワークを介した配信の態様で提供されてもよく、記録媒体98に記録された態様で提供されてもよい。
通信部33は、携帯電話通信網及びインターネット等を含むネットワークNを介して、種々の装置との間で通信を行う。本実施の形態において通信部33は、ネットワークNを介して、見守りサーバ装置1との間で通信を行う。通信部33は、処理部31から与えられたデータを他の装置へ送信すると共に、他の装置から受信したデータを処理部31へ与える。
表示部34は、液晶ディスプレイ等を用いて構成されており、処理部31の処理に基づいて種々の画像及び文字等を表示する。操作部35は、ユーザの操作を受け付け、受け付けた操作を処理部31へ通知する。例えば操作部35は、機械式のボタン又は表示部34の表面に設けられたタッチパネル等の入力デバイスによりユーザの操作を受け付ける。また例えば操作部35は、マウス及びキーボード等の入力デバイスであってよく、これらの入力デバイスはユーザ端末装置3に対して取り外すことが可能な構成であってもよい。
また本実施の形態に係るユーザ端末装置3は、記憶部32に記憶されたプログラム32aを処理部31が読み出して実行することにより、異常通知受信部31a及び表示処理部31b等がソフトウェア的な機能部として処理部31に実現される。なおプログラム32aは、本実施の形態に係る見守り支援システムに専用のプログラムであってもよく、インターネットブラウザ又はウェブブラウザ等の汎用のプログラムであってもよい。
異常通知受信部31aは、見守りサーバ装置1が見守り対象者の金銭取引に異常があるとの判定した場合に送信する異常通知を受信する処理を行う。異常通知受信部31aは、見守りサーバ装置1からの異常通知を受信した場合に、いわゆるプッシュ通知によりユーザに異常を通知してもよい。プッシュ通知は、例えばユーザ端末装置3がスマートフォンである場合、スマートフォンのホーム画面又はロック画面等の基本画面において異常を通知するメッセージを表示するものである。異常通知受信部31aは、見守り支援システムに専用のアプリケーションプログラムにより表示される専用の情報表示要画面ではなく、アプリケーションプログラムを起動するためのアイコン等が並べて表示されたホーム画面もしくはデスクトップ画面、ユーザ認証のための情報入力を要求するロック画面もしくはログイン画面、ユーザが一定時間に亘って操作等を行わない場合に特定の画像を表示する待受け画面、又は、別のアプリケーションプログラムによる画像等が表示された状態で、通知のためのメッセージを表示するプッシュ通知を行うことができる。
表示処理部31bは、見守り対象者の金銭取引に係る情報を表示部34に表示する処理を行う。表示処理部31bは、例えば見守り支援システムに専用の画面を表示し、この画面において種々の情報表示を行う。表示処理部31bは、見守りサーバ装置1から受信した情報に基づいて、例えば見守り対象者の金銭取引の異常の有無、及び、異常と判定された金銭取引に関する詳細情報等を表示する。また表示処理部31bは、見守りサーバ装置1から受信する画像データ等に基づいて、例えば見守り対象者の金銭取引を異常と判定した根拠を示すグラフの表示を行ってもよい。
<異常度算出モデル>
図6は、本実施の形態に係る異常度算出モデル12bの概要を説明するための模式図である。本実施の形態に係る異常度算出モデル12bは、例えば複数のニューロンが相互に結合したニューラルネットワークの構造をなしている。既存の技術であるため詳しい説明は省略するが、ニューロンは複数の入力に対して演算を行い、演算結果として1つの値を出力する素子である。ニューロンは、演算に用いられる重み付けの係数及び閾値等の情報を有している。ニューラルネットワークの異常度算出モデル12bは、一又は複数のデータの入力を受け付ける入力層と、入力層にて受け付けられたデータに対して演算処理を行う中間層と、中間層の演算結果を集約して一又は複数の値を出力する出力層とを備えている。
本実施の形態に係る異常度算出モデル12bは、見守り対象者の性別及び生年月日等の属性情報と、見守り対象者の金銭取引に関する時系列の金銭取引情報とを入力として受け付ける。図示の例では、見守り対象者に関する1つの属性情報と、金銭取引情報1から金銭取引情報NまでのN回分の金銭取引情報とが異常度算出モデル12bへ入力されている。これらのうち、金銭取引情報1が最も古い取引情報であり、金銭取引情報Nが最も新しい取引情報である。各金銭取引情報には、金銭取引の年月日、曜日、入金総額、出金総額及び取引回数等の情報が含まれている。見守り対象者の「時系列の金銭取引情報」は、最新の金銭取引情報と、これから遡った(N-1)個の金銭取引情報とを、取引年月日の順に並べた情報である。異常度算出モデル12bは、この属性情報及び時系列の金銭取引情報の入力に対して、見守り対象者の金銭取引に関する異常度を出力する。異常度算出モデル12bが出力する異常度は、その値が0~1の範囲内となるスカラーの情報である。
図7は、本実施の形態に係る異常度算出モデル12bの一構成例を説明するための模式図である。本実施の形態に係る異常度算出モデル12bは、第1特徴量変換部121、第2特徴量変換部122、合成部123、双方向LSTM(Long short-term memory)124、平均算出部125(本図では「平均」と略示する)、ReLU(Rectified Linear Unit、正規化線形関数又はランプ関数)演算部126(本図では「ReLU」と略示する)、及び、シグモイド演算部127(本図では「シグモイド」と略示する)を備えて構成されている。
第1特徴量変換部121は、見守り対象者の属性情報を例えば32次元のベクトルの特徴量に変換する演算を行う。第2特徴量変換部122は、見守り対象者の金銭取引情報を例えば32次元のベクトルの特徴量に変換する演算を行う。本実施の形態において第1特徴量変換部121及び第2特徴量変換部122が出力する特徴量のベクトルは32次元であるものとして説明するが、これは一例であって、特徴量のベクトルは31次元以下又は33次元以上のものであってよい。また本実施の形態においては、第1特徴量変換部121が出力する特徴量のベクトルと、第2特徴量変換部122が出力する特徴量のベクトルとは、同じ次元のベクトルであるものとする。なお第2特徴量変換部122は1つの金銭取引情報を特徴量に変換して出力するものであり、異常度算出モデル12bへ入力された時系列の金銭取引情報(金銭取引情報1~金銭取引情報N)は、時系列順に1つずつ第2特徴量変換部122にて特徴量のベクトルに変換される。このため、第1特徴量変換部121は入力された属性情報に対応する1つの特徴量のベクトルを出力し、第2特徴量変換部122は入力されたN個の金銭取引情報に対応するN個の特徴量のベクトルを出力する。
合成部123は、第1特徴量変換部121が出力する特徴量のベクトルと、第2特徴量変換部122が出力する特徴量のベクトルとを合成する処理を行う。本実施の形態において合成部123は、32次元の2つのベクトルについて、各次元の成分を加算することで2つのベクトルを合成し、合成後の32次元のベクトルを出力する。即ち、第1特徴量変換部121が出力する特徴量のベクトルをA=(a1,a2,…,a32)とし、第2特徴量変換部122が出力する特徴量のベクトルをB=(b1,b2,…,b32)とした場合、合成部123は、合成ベクトルC=(a1+b1,a2+b2,…,a32+b32)を出力する。また第2特徴量変換部122はN個の金銭取引情報1~Nの入力に対してN個の特徴量のベクトルを出力するため、合成部123は、第2特徴量変換部122が出力するN個の特徴量のベクトルのそれぞれについて、第1特徴量変換部121が出力する特徴量のベクトルとの合成を行って、N個のベクトルを出力する。
双方向LSTMは、時系列のデータを扱うRNN(Recurrent Neural Network)を拡張した学習モデルであり、時系列のデータの依存関係を学習することができる学習モデルである。通常の(単方向の)LSTMは過去の状態から現在の状態を予測する学習モデルであるのに対し、双方向のLSTMは過去及び未来の状態から現在の状態を予測する学習モデルである。RNN,LSTM及び双方向LSTM等は既存の技術であるため、詳細な説明は省略する。なお本実施の形態においては異常度算出モデルに双方向LSTMの学習モデルを利用しているが、これに限るものではなく、単方向のLSTM又はRNN等の他の構成の学習モデルを利用してもよい。本実施の形態に係る異常度算出モデル12bにおいては、合成部123が出力するN個のベクトルが時系列順に双方向LSTM124へ入力され、双方向LSTM124は入力された時系列のベクトルに対応するN個のベクトルを出力する。
平均算出部125は、双方向LSTM124が出力するN個のベクトルの平均を算出する。本実施の形態において双方向LSTM124は、N個の32次元のベクトルの入力に対して、N個の32次元のベクトルを出力する。平均算出部125は、N個のベクトルの各次元の成分の平均値をそれぞれ算出して32個の平均値を取得し、32個の平均値を各次元の成分とする32次元のベクトルを出力する。即ち、平均算出部125は、D1=(d1_1,d1_2,…,d1_32)、D2=(d2_1,d2_2,…,d2_32)、…、Dn=(dn_1,dn_2,…,dn_32)のN個のベクトルが与えられた場合に、平均のベクトルとしてE=((d1_1+D2_1+…+dn_1)/N,(d1_2+D2_2+…+dn_2)/N,…,(d1_32+D2_32+…+dn_1)/N)を出力する。
ReLU演算部126は、本実施の形態においては全結合層のニューラルネットワークと、出力層としてランプ関数又は正規化線形関数と呼ばれる活性化関数とを組み合わせたものである。ReLU演算部126は、平均算出部125が出力する32次元のベクトルを入力として受け付け、各次元の成分がランプ関数又は正規化線形関数により正規化された32次元のベクトルを出力する。ランプ関数又は正規化線形関数は、入力が0以下であれば0を出力し、入力が0より大きければその入力値を出力する関数である。
シグモイド演算部127は、本実施の形態においては全結合層のニューラルネットワークと、出力層としてシグモイド関数と呼ばれる活性化関数とを組み合わせたものである。シグモイド演算部127は、ReLU演算部126が出力する32次元のベクトルを入力として受け付け、シグモイド関数により正規化された0~1の範囲の1つのスカラー値を異常度として出力する。シグモイド関数は、入力された値を0~1の範囲内の値に正規化する関数である。
本実施の形態における異常度算出モデル12bの学習処理において見守りサーバ装置1は、例えば金融機関を利用した複数の人について所定期間の時系列の金銭取引情報と、この人の属性情報とを取得して、異常度算出モデル12bの学習処理に用いる教師データを作成する。教師データは、金融機関を利用した人の属性情報及び時系列の金銭取引情報に対して、この人が特定の特徴を有する人であるか否かを示す「1」又は「0」のラベルを付したものである。本実施の形態においては、特定の特徴を有する人として、被後見人であるか否かをラベルとして教師データに付す。
見守りサーバ装置1は、作成された上記の教師データを用いて、異常度算出モデル12bの学習処理(異常度算出モデル12bの生成処理)を行う。学習モデルの学習処理(教師あり学習)は、予め与えられた多数の教師データを用いて、ニューラルネットワークを構成する各ニューロンの係数及び閾値等に適切な値を設定する処理である。本実施の形態に係る見守りサーバ装置1は、金融機関を利用した人の属性情報及び時系列の金銭取引情報と、この人が特定の特徴を有する人(被後見人)であるか否かのラベルとを対応付けた教師データを用いて、例えば勾配降下法、確率的勾配降下法又は誤差逆伝播法等の手法により異常度算出モデル12bを学習する。これらの学習処理は、既存の技術であるため、詳細な説明を省略する。これにより異常度算出モデル12bは、入力された属性情報及び時系列の金銭取引情報が特定の特徴を有する人に関するものであるか否かの評価値を出力するように学習がなされる。本実施の形態においては、異常度算出モデル12bが出力するこの評価値を異常度として用いる。
見守りサーバ装置1は、学習処理により学習がなされた異常度算出モデル12bについて、複数のニューロンを接続したニューラルネットワークの構成情報、並びに、各ニューロンの係数及び閾値等の値等を含むデータを、異常度算出モデル12bとして記憶部12に記憶する。見守りサーバ装置1は、記憶部12に記憶した異常度算出モデル12bを用いて、見守り対象者の金銭取引に係る異常度を算出し、この異常度が閾値を超えるか否かに基づいて金銭取引における異常性の有無を判定する処理を行う。
<説明可能モデル>
図8は、本実施の形態に係る説明可能モデル12cの一構成例を説明するための模式図である。本実施の形態に係る説明可能モデル12cは、見守り対象者の金銭取引に関する時系列の金銭取引情報を入力として受け付ける。図示の例では、金銭取引情報1から金銭取引情報NまでのN回分の金銭取引情報が説明可能モデル12cへ入力されている。説明可能モデル12cへ入力される時系列の金銭取引情報は、上述の異常度算出モデル12bへ入力される時系列の金銭取引情報と同様の情報である。説明可能モデル12cは、見守り対象者の時系列の金銭取引情報の入力に対して、見守り対象者の金銭取引に関する異常度を出力する。説明可能モデル12cが出力する異常度は、その値が0~1の範囲内となるスカラーの情報である。
本実施の形態に係る説明可能モデル12cは、統計値算出部131、線形結合部132及びシグモイド演算部133(本図では「シグモイド」と略示する)を備えて構成されている。統計値算出部131は、入力された見守り対象者の時系列の金銭取引情報を基に、例えば取引回数又は取引金額等について平均値、最小値、最大値及び標準偏差等の種々の統計値を算出する処理を行う。また統計値算出部131は、例えば1ヶ月分の時系列の金銭取引情報が入力される場合に、3日間、1週間及び1ヶ月等の長さが異なる複数の期間について統計値をそれぞれ算出する。例えば統計値算出部131は、取引金額について1ヶ月の平均値、1週間の平均値及び3日間の平均値等の複数の平均値を算出する。統計値算出部131は、算出した複数の統計値を成分とする多次元のベクトルを出力する。なお統計値算出部131がどのような統計値を算出して出力するかは、本システムの設計者等により予め定められ、統計値を算出するための演算式等が説明可能モデル12cに組み込まれる。
線形結合部132は、統計値算出部131が出力する各種統計値のベクトルを、所定の演算式を用いて1つのスカラー値に変換する演算を行う。本実施の形態において説明可能モデル12cは、線形結合の演算式によりベクトルをスカラーに変換する。例えば統計値算出部131が出力するn次元のベクトルをA=(a1,a2,…,an)とし、線形結合部132が出力するスカラー値をBとした場合、以下の(1)式によりBが算出される。なお、この(1)式に含まれる係数k1,k2,…,knは、説明可能モデル12cの学習処理によって定められるパラメータである。
B = a1×k1+a2×k2+…+an×kn …(1)
シグモイド演算部133は、線形結合部132が出力するスカラー値を入力として受け付け、シグモイド関数により正規化された0~1の範囲の1つのスカラー値を異常度として出力する。シグモイド関数は、入力された値を0~1の範囲内の値に正規化する関数である。
本実施の形態における説明可能モデル12cの学習処理において見守りサーバ装置1は、例えば金融機関を利用した複数の人について所定期間の時系列の金銭取引情報を取得して、説明可能モデル12cの学習処理に用いる教師データを作成する。教師データは、金融機関を利用した人の時系列の金銭取引情報に対して、この人が特定の特徴を有する人であるか否かを示す「1」又は「0」のラベルを付したものである。本実施の形態においては、特定の特徴を有する人として、被後見人であるか否かをラベルとして教師データに付す。なお説明可能モデル12cの学習処理に用いる教師データは、上述の異常度算出モデル12bの学習処理に用いる教師データから属性情報を除いたものである。このため見守りサーバ装置1は、異常度算出モデル12bの学習処理用の教師データを流用して説明可能モデル12cの学習処理を行ってもよい。
見守りサーバ装置1は、作成された上記の教師データを用いて、説明可能モデル12cの学習処理(説明可能モデル12cの生成処理)を行う。学習モデルの学習処理(教師あり学習)は、予め与えられた多数の教師データを用いて、ニューラルネットワークを構成する各ニューロンの係数及び閾値等に適切な値を設定する処理である。本実施の形態に係る説明可能モデル12cの学習処理は、上記の(1)式に示された係数k1,k2,…,knに適切な値を設定する処理である。本実施の形態に係る見守りサーバ装置1は、金融機関を利用した人の時系列の金銭取引情報と、この人が特定の特徴を有する人(被後見人)であるか否かのラベルとを対応付けた教師データを用いて、例えば勾配降下法、確率的勾配降下法又は誤差逆伝播法等の手法により説明可能モデル12cを学習する。これらの学習処理は、既存の技術であるため、詳細な説明を省略する。これにより説明可能モデル12cは、入力された時系列の金銭取引情報が特定の特徴を有する人に関するものであるか否かの評価値を出力するように学習がなされる。本実施の形態においては、説明可能モデル12cが出力するこの評価値を異常度と見なすことができる。見守りサーバ装置1は、学習処理により学習がなされた説明可能モデル12cについて、設定された係数k1,k2,…,knの値を含むデータを、説明可能モデル12cとして記憶部12に記憶する。
本実施の形態に係る見守りサーバ装置1は、記憶部12に記憶した説明可能モデル12cを用いて、見守り対象者の金銭取引における異常の有無を判定する処理を行うのではなく、異常度算出モデル12bを用いた異常判定処理において異常があると判定された見守り対象者の金銭取引について、異常判定の根拠を提示する処理を行う。上述の(1)式において、スカラー値Bは説明可能モデル12cが出力する異常度の正規化前の値であり、Bの値が大きいほど異常度は高くなる。また(1)式においてBの値は統計値aiとこれに対応する係数kiとの積を合算した者であり、(ai×ki)の値が大きいものほど出力されるスカラー値Bに対する寄与度が大きい。なおi=1,2,…,nである。
本実施の形態に係る見守りサーバ装置1は、異常度算出モデル12bを用いた異常判定処理において見守り対象者の金銭取引に異常があると判定した場合、この判定に用いられた見守り対象者の金銭取引情報を含む所定期間の時系列の金銭取引情報を説明可能モデル12cへ入力する。見守りサーバ装置1は、説明可能モデル12cの統計値算出部131が出力する統計値のベクトルA=(a1,a2,…,an)を取得すると共に、説明可能モデル12cの線形結合部132に設定された係数k1,k2,…,knを取得する。見守りサーバ装置1は、取得した統計値のベクトルA=(a1,a2,…,an)と線形結合部132の係数k1,k2,…,knとを基にa1×k1,a2×k2,…,an×knをそれぞれ算出し、この値を各統計値の寄与度とする。即ち、統計値a1の寄与度はa1×k1であり、統計値a2の寄与度はa2×k2であり、…、統計値anの寄与度はan×knである。なお見守りサーバ装置1は、全統計値の寄与度の合計が100%となるように、寄与度を正規化してもよい。
見守りサーバ装置1は、例えば寄与度が大きい上位3つの統計値を、異常判定の根拠となる統計値とする。見守りサーバ装置1は、ユーザ端末装置3に対して見守り対象者の異常通知を送信する際に、異常判定の根拠となる統計値についての情報を付して送信し、ユーザ端末装置3に異常の通知と共にその根拠となる統計値の情報を表示させることができる。
また見守りサーバ装置1は、複数の統計値とその寄与度とを可視化したグラフ表示を行うことができる。図9は、統計値及び寄与度のグラフ表示の一例を示す模式図である。見守りサーバ装置1は、例えば縦軸に統計値を寄与度の高い順に並べ、横軸を寄与度とした横向きの棒グラフを表示する。図示の例では、「入金額の1週間平均」、「出金額の1ヶ月平均」及び「入金額の3日間最大値」等が、寄与度が高い統計値の一例として上から下へ順に表示されている。なお本例では横向きの棒グラフで統計値及び寄与度を可視化する例を示したが、可視化の方法は横向きの棒グラフに限らず、例えば縦向きの棒グラフ、円グラフ、帯グラフ又は折れ線グラフ等の種々のグラフ表示を見守りサーバ装置1は行ってよい。
<異常判定処理>
本実施の形態に係る見守りサーバ装置1は、例えば1日に1回の頻度で金融サーバ装置5から見守り対象者の金銭取引情報を取得して、取得した最新の金銭取引情報とこれ以前の所定期間又は所定数の金銭取引情報とを時系列で並べることによって、見守り対象者の時系列の金銭取引情報を作成する。また見守りサーバ装置1は、見守りDB12dに記憶された見守り対象者の性別及び生年月日等の属性情報を取得する。見守りサーバ装置1は、見守り対象者の属性情報及び時系列の金銭取引情報を異常度算出モデル12bへ入力し、異常度算出モデル12bが出力する異常度を取得する。
次いで見守りサーバ装置1は、異常度算出モデル12bから取得した異常度に基づいて、見守り対象者の金銭取引についての異常性の有無を判定する。本実施の形態において見守りサーバ装置1は、異常度算出モデル12bから取得した異常度と、予め定められた閾値とを比較して、異常度が閾値を超える場合に、見守り対象者の金銭取引に異常があると判定する。この判定に用いられる閾値は、例えば本システムの設計者等により予め定められ、サーバプログラム12aと共に記憶部12に記憶される。
見守り対象者の金銭取引に異常があると判定した場合、見守りサーバ装置1は、異常判定の根拠となる統計値を特定する処理を行う。見守りサーバ装置1は、見守り対象者の時系列の金銭取引情報を取得して、取得した時系列の金銭取引情報を説明可能モデル12cへ入力する。このときに説明可能モデル12cへ入力する時系列の金銭取引情報は、異常があると判定した際に異常度算出モデル12bへ入力した時系列の金銭取引情報と同じか、又は、この時系列の金銭取引情報を含むより長い期間の金銭取引情報であることが好ましい。見守りサーバ装置1は、説明可能モデル12cの統計値算出部131が出力する各種の統計値を取得する。見守りサーバ装置1は、統計値算出部131から取得した各統計値と、これに対応する説明可能モデル12cの線形結合部132の係数との積をそれぞれ算出することで、各統計値の寄与度を算出する。見守りサーバ装置1は、例えば寄与度が高い上位3つの統計値を、異常判定の根拠となる統計値として特定する。
見守り対象者の金銭取引に異常があると判定した場合、見守りサーバ装置1は、この見守り対象者を見守るユーザのユーザID又はユーザ端末装置3の端末ID等の情報を見守りDB12dから取得して、これらの情報により特定されるユーザ端末装置3へ異常通知を送信する。このときに送信する異常通知には、例えば異常と判定した金銭取引が行われた年月日及び取引された金額等の情報、並びに、説明可能モデル12cを用いて特定した異常判定の根拠となる統計値に関する情報等が含まれ得る。見守りサーバ装置1からの異常通知を受信したユーザ端末装置3は、例えばプッシュ通知により見守り対象者の金銭取引の異常を通知する。なお見守りサーバ装置1は、どのような方法でユーザ端末装置3への異常通知を行ってもよく、例えば電子メールを送信することで異常通知を行ってもよい。またユーザ端末装置3は、見守りサーバ装置1からの異常通知を受信した場合に、どのような方法でユーザに対して異常を通知してもよい。また見守りサーバ装置1は、見守り対象者の金銭取引に異常がないと判定した場合には、ユーザ端末装置3へ異常がない旨を通知してもよく、通知を行わなくてもよい。
図10は、本実施の形態に係る見守りサーバ装置1が行う異常判定処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係る見守りサーバ装置1の処理部11は、図示の異常判定処理を見守り対象者毎に行っている。処理部11の情報取得部11aは、所定周期で見守り対象者の金銭取引情報を金融サーバ装置5から取得しており、前回の情報取得から所定周期が経過して次の情報を取得するタイミングに至ったか否かを判定する(ステップS1)。情報を取得するタイミングに至っていない場合(S1:NO)、情報取得部11aは、情報の取得タイミングに至るまで待機する。
情報の取得タイミングに至った場合(S1:YES)、情報取得部11aは、記憶部12の見守りDB12dに登録された見守り対象者の口座情報に基づいて、対象者の口座を管理する金融サーバ装置5との通信を行い、金融サーバ装置5から見守り対象者の金銭取引情報を取得する(ステップS2)。情報取得部11aは、記憶部12の金銭取引DB12eに記憶された過去の所定期間又は所定回数の金銭取引情報を取得し、取得した過去の金銭取引情報とステップS2にて取得した金銭取引情報とを時系列に並べた情報、即ち時系列の金銭取引情報を作成する(ステップS3)。また情報取得部11aは、記憶部12の見守りDB12dに記憶された見守り対象者の性別及び生年月日等の属性情報を取得する(ステップS4)。
次いで処理部11の異常度算出部11bは、ステップS3にて作成された時系列の金銭取引情報と、ステップS4にて取得された見守り対象者の属性情報とを、異常度算出モデル12bへ入力する(ステップS5)。異常度算出部11bは、属性情報及び時系列の金銭取引情報の入力に応じて異常度算出モデル12bが出力する異常度を取得する(ステップS6)。
次いで処理部11の異常判定部11cは、ステップS6にて取得された異常度が、予め定められた閾値を超えるか否かを判定する(ステップS7)。異常度が閾値を超える場合(S7:YES)、処理部11の根拠判定部11dは、異常と判定した根拠となる統計値を特定する根拠特定処理を行う(ステップS8)。異常判定部11cは、ステップS8にて特定した根拠に関する情報を含む異常通知を、見守り対象者を見守るユーザのユーザ端末装置3へ送信し(ステップS9)、処理を終了する。異常度が閾値を超えない場合(S7:NO)、異常判定部11cは、異常通知を行わずに処理を終了する。
図11は、本実施の形態に係る見守りサーバ装置1が行う根拠特定処理の手順を示すフローチャートであり、図10のステップS8にて行う処理の詳細を示したものである。本実施の形態に係る見守りサーバ装置1の処理部11の根拠判定部11dは、金銭取引に異常があると判定された見守り対象者について、時系列の金銭取引情報を取得する(ステップS21)。なおこのときに取得する時系列の金銭取引情報は、例えば図10のフローチャートのステップS3にて作成された時系列の金銭取引情報と同じものであってよく、また例えば金銭取引DB12eに記憶された情報を取得して根拠判定部11dが作成したものであってもよい。
根拠判定部11dは、ステップS21にて取得した見守り対象者の時系列の金銭取引情報を、記憶部12の説明可能モデル12cへ入力する(ステップS22)。根拠判定部11dは、説明可能モデル12cの統計値算出部131が出力する複数の統計値を取得する(ステップS23)。根拠判定部11dは、ステップS23にて取得した複数の統計値と、記憶部12に記憶された説明可能モデル12cの統計値算出部131の係数との積を算出することにより、各統計値の寄与度を算出する(ステップS24)。根拠判定部11dは、算出した寄与度に基づいて、例えば寄与度が高い上位3つの統計値を選択し、この3つの統計値を異常判定の根拠となる統計値と特定して(ステップS25)、根拠特定処理を終了する。
図12は、本実施の形態に係るユーザ端末装置3が行う異常通知処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係るユーザ端末装置3の処理部31の異常通知受信部31aは、見守りサーバ装置1から送信される異常通知を受信したか否かを判定する(ステップS31)。異常通知を受信していない場合(S31:NO)、異常通知受信部31aは、異常通知を受信するまで待機する。異常通知を受信した場合(S31:YES)、処理部31の表示処理部31bは、見守り対象者の金銭取引に異常がある旨を通知するメッセージを表示部34に表示する、いわゆるプッシュ通知を行い(ステップS32)、ステップS31へ処理を戻す。なお表示処理部31bは、ユーザに異常を通知する際に、異常通知と共に送信される根拠の情報を表示してもよい。
図13は、本実施の形態に係る見守りサーバ装置1が行う異常度算出モデル12bの生成処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係る見守りサーバ装置1の処理部11の学習処理部11fは、例えば金融サーバ装置5が蓄積している過去数年分の情報を取得して、本図のフローチャートに示す処理を開始する。学習処理部11fは、金融サーバ装置5が蓄積していた情報の中から、ある人の属性情報を取得し(ステップS41)、この人に関する所定期間の時系列の金銭取引情報を取得する(ステップS42)。
学習処理部11fは、取得した属性情報及び時系列の金銭取引情報に関する人が特定の特徴を有する人、例えば被後見人であるか否かを判定する(ステップS43)。属性情報及び金銭取引情報が被後見人のものであるか否かに関する情報は金融サーバ装置5が管理しており、属性情報及び金銭取引情報と共にこれらが被後見人のものであるか否かの情報を見守りサーバ装置1が金融サーバ装置5から取得するものとする。また本実施の形態において、被後見人であるか否かの情報は、属性情報及び金銭取引情報には含まれていないものとする。
属性情報及び時系列の金銭取引情報が被後見人のものである場合(S43:YES)、学習処理部11fは、属性情報及び時系列の金銭取引情報に対してラベル1を付与する(ステップS44)。属性情報及び時系列の金銭取引情報が被後見人のものでない場合(S43:NO)、学習処理部11fは、属性情報及び時系列の金銭取引情報に対してラベル0を付与する(ステップS44)。学習処理部11fは、属性情報及び時系列の金銭取引情報とラベルとを対応付けて教師データとして記憶部12に記憶する(ステップS46)。学習処理部11fは、金融サーバ装置5から取得した全てのデータについて教師データの作成を終了したか否かを判定する(ステップS47)。全てのデータについて教師データの作成を終了していない場合(S47:NO)、学習処理部11fは、ステップS41
へ処理を戻し、教師データの作成を継続して行う。
全てのデータについて教師データの作成を終了した場合(S47:YES)、学習処理部11fは、予め用意された学習モデル(異常度算出モデル12b)を読み出して(ステップS48)、作成した教師データを用いて学習処理を行う(ステップS49)。学習処理の終了後、学習処理部11fは、訓練された学習モデルを異常度算出モデル12bとして記憶部12に記憶し(ステップS50)、処理を終了する。
なお、説明可能モデル12cの生成処理については、教師データに属性情報を含まないことを除いて異常度算出モデル12bの生成処理と略同じであるため、フローチャートの図示及び処理手順の説明は省略する。
<まとめ>
以上の構成の本実施の形態に係る見守りサーバ装置1は、金融機関を利用した複数の人の属性情報及び時系列の金銭取引情報を取得し、特定の特徴を有する人(例えば被後見人)についての属性情報及び時系列の金銭取引情報に対して第1の評価値(例えば「1」)を対応付け、特定の特徴を有する人以外の人についての属性情報及び時系列の金銭取引情報に対して第2の評価値(例えば「0」)を対応付けた教師データを作成する。見守りサーバ装置1は、作成した教師データを用いて、見守り対象者の属性情報及び時系列の金銭取引情報を入力として受け付けて見守り対象者の金銭取引に関する評価値(異常度)を出力する異常度算出モデル12bを生成する。これにより見守りサーバ装置1は、見守り対象者の金銭取引に係る異常性の有無を精度よく判定することが期待できる。
また本実施の形態に係る異常度算出モデル12bは、見守り対象者の属性情報を第1ベクトルに変換する第1変換部(第1特徴量変換部121)と、見守り対象者の金銭取引情報を第2ベクトルに変換する第2変換部(第2特徴量変換部122)と、第1ベクトル及び第2ベクトルを合成した第3ベクトルを生成する生成部(合成部123)と、時系列の第3ベクトルを入力として受け付けて時系列の第4ベクトルを出力するリカレントニューラルネットワーク部(双方向LSTM124)と、所定期間分の第4ベクトルをスカラーの評価値(異常度)へ変換する第3変換部(平均算出部125、ReLU演算部126、シグモイド演算部127)とを備えている。これらにより異常度算出モデル12bは、適切な学習処理がなされることによって、見守り対象者の金銭取引に係る異常度を精度よく算出することが期待できる。
また本実施の形態に係る見守りサーバ装置1は、金融機関を利用した複数の人の時系列の金銭取引情報を取得し、特定の特徴を有する人(例えば被後見人)についての時系列の金銭取引情報に対して第1の評価値(例えば「1」)を対応付け、特定の特徴を有する人以外の人についての時系列の金銭取引情報に対して第2の評価値(例えば「0」)を対応付けた教師データを作成する。見守りサーバ装置1は、作成した教師データを用いて、見守り対象者の時系列の金銭取引情報を入力として受け付けて見守り対象者の金銭取引に関する評価値(異常度)を出力する説明可能モデル12cを生成する。
また本実施の形態に係る説明可能モデル12cは、時系列の金銭取引情報に関する複数の統計値を算出する統計値算出部131と、この複数の統計値を入力として受け付けてスカラーの評価値(異常度)を算出する評価値算出部(線形結合部)とを備えている。これにより、統計値算出部131が算出する複数の統計値と、線形結合部に設定された演算式sの係数とに基づいて、評価値(異常度)の算出に対する各統計値の寄与度を算出することができる。
また本実施の形態に係る見守りサーバ装置1は、特定の特徴を有する人として被後見人を採用して教師データを作成する。この教師データを用いて学習処理を行うことにより、異常度算出モデル12b及び説明可能モデル12cは、見守り対象者の金銭取引が被後見人の金銭取引の特徴を示しているか否かを評価値として出力することができる。
また本実施の形態に係る見守りサーバ装置1は、見守り対象者の属性情報及び金銭取引情報を取得し、見守り対象者の属性情報及び時系列の金銭取引情報を第1学習モデル(異常度算出モデル12b)へ入力し、第1学習モデルが出力する評価値(異常度)を取得して、評価値に基づいて見守り対象者の金銭取引に係る異常性の有無を判定する。第1学習モデルが適切に学習されることによって、見守り対象者の金銭取引に係る異常性の有無を精度よく判定することが期待できる。
また本実施の形態に係る見守りサーバ装置1は、第1学習モデルが出力した評価値に基づいて見守り対象者の金銭取引が正当ではない(異常である)と判定した場合に、第2学習モデル(説明可能モデル12c)を利用して、正当ではないとの判定結果に関する寄与度が高い統計値を特定する。これにより学習モデルを用いて判断した金銭取引に関する異常の根拠を提示することが期待できる。
また本実施の形態に係る説明可能モデル12cは、時系列の金銭取引情報に関する複数の統計値を算出する統計値算出部131と、この複数の統計値を入力として受け付けてスカラーの評価値(異常度)を出力する線形結合部とを備えている。見守りサーバ装置1は、第1学習モデルが見守り対象者の金銭取引が正当ではないと判定した際にこの第1学習モデルへ入力した時系列の金銭取引情報を含む見守り対象者の時系列の金銭取引情報を第2学習モデルへ入力する。見守りサーバ装置1は、第2学習モデルの統計値算出部131が出力する複数の統計値と、線形結合部132に設定された係数とに基づいて、統計値毎の寄与度を算出する。見守りサーバ装置1は、算出した寄与度をグラフ表示等の方法で、見守り対象者を見守るユーザ、システムの管理者又は金融機関の担当者等に提示してもよい。これによりユーザ、システム管理者及び金融機関の担当者等は、異常と判定された金銭取引について判定の根拠を知ることが期待できる。
なお本実施の形態においては、金融サーバ装置5と見守りサーバ装置1とを別の装置とし、見守りサーバ装置1が金融サーバ装置5から金銭取引情報を取得する構成としたが、これに限るものではない。例えば金融サーバ装置5及び見守りサーバ装置1を1つの装置としてもよい。この場合に金融サーバ装置5は、自身が管理する口座の取引情報についてのみ、異常度の算出及び異常有無の判定等を行ってもよい。見守り対象者が有する複数の口座が複数の金融機関に分散している場合に、各金融機関の金融サーバ装置5がそれぞれ個別に異常度の算出及び異常有無の判定等を行ってよい。また例えば、見守り対象者が使用するスマートフォン等の情報処理装置にて異常度の算出及び異常有無の判定等の処理を行い、処理結果をユーザ端末装置3へ送信してもよい。
また、金銭取引情報に基づく異常度の算出及び異常有無の判定等の処理を、ユーザ端末装置3が行ってもよい。この場合、見守りサーバ装置1が金融サーバ装置5から金銭取引情報を取得してユーザ端末装置3へ送信してもよく、ユーザ端末装置3が金融サーバ装置5から直接的に金銭取引情報を取得してもよい。
(変形例)
変形例に係る情報処理システムは、見守り対象者の金銭取引情報に、金銭取引のカテゴリを示すカテゴリ情報を含めて、学習モデルの学習処理及び金銭取引に係る異常度の算出処理等を行う。図14は、カテゴリ情報の一例を示す模式図である。図示の例では、金銭取引をカテゴリ0~9の10種類に分類している。カテゴリ1は、ATM(Automatic Teller Machine)を利用した入金である。カテゴリ2は、ATMを利用した出金である。カテゴリ3は、給与又は年金の振り込みである。カテゴリ4は、他口座への振り込みである。カテゴリ5は、電気料金の支払いである。カテゴリ6は、ガス料金の支払いである。カテゴリ7は、電話料金の支払である。カテゴリ8は、水道料金の支払である。カテゴリ9は、クレジットカードの利用料金の支払いである。カテゴリ0は、カテゴリ1~9に含まれないその他の取引である。
変形例に係る情報処理システムが扱う金銭取引情報には、例えば金銭取引が行われた年月日及び曜日等の情報と、カテゴリ毎の入金総額、出金総額及び取引回数との情報が含まれる。見守りサーバ装置1は、これらのカテゴリに関する情報を含む複数の金銭取引情報を時系列順に並べることで時系列の金銭取引情報を作成し、学習モデルの学習処理及び見守り対象者の金銭取引に関する異常度の算出等の処理を行う。なお金銭取引のカテゴリ情報は、見守り対象者の金銭取引情報内にどのように反映させてもよい。
本情報処理システムの設計者は、カテゴリ情報を含む金銭取引情報を用いて学習モデルの学習処理及び見守り対象者の金銭取引に関する異常度の算出等を行うことによって、異常度算出モデル12bが出力する異常度に基づく異常判定の精度が向上することを確認している。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。