JP7217883B2 - 機能性組成物、機能性膜、構造体、機能性積層膜および機能性積層膜の製造方法 - Google Patents

機能性組成物、機能性膜、構造体、機能性積層膜および機能性積層膜の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、機能性組成物、機能性膜、機能性積層膜および機能性積層膜の製造方法に係り、特に、通気性、抗酸化性、抗菌・滅菌性および撥水性に優れる機能性組成物、機能性膜、機能性積層膜および機能性積層膜の製造方法に関する。
通気性に加え、抗菌・滅菌性、撥水性および耐酸化性などの各種機能をもたせた機能性膜は、医療用、食品製造用服、防水服(レインコート)および壁材など様々な用途があるので、高い需要がある。
このため、布や木材などの通気性材料に、銀を担持させて抗菌・滅菌性を付与したり、ポリテトラフルオロエチレンをコートして撥水性を高めたり、チタン酸化物を担持させて耐酸化性を高めたりした製品が市場に多く出回っている。
抗菌・滅菌性、耐酸化性をもつ材料としては、銀およびチタン酸化物などの鉱物、工業生産物材料以外に、植物由来のものとしてタンニン、タンニン酸が知られている。タンニン、タンニン酸は、天然由来の材料であるために人体や環境への害が少ない健康・安全素材と位置づけることができる材料である(特許文献1参照)。そして、タンニンを担体にして銀などのナノパーティクルを付与し、液中の硫黄化合物を除去する方法の開示がある(特許文献2参照)。
国際公開WO2016/076311A1 特開2016-163880号公報 特表2016-509105号公報
タンニン酸は、上述のように植物由来の材料で人体や環境に馴染みやすいものであるが、従来のタンニン酸を用いた機能性材料は、必ずしも通気性が十分ではない。このため、通気性に加えて抗菌・滅菌性、撥水性および耐酸化性などの各種機能をもたせた機能性膜としては、十分なものではなかった。また、従来のタンニン酸を用いた機能性材料では、水の接触角で表して120°を超える高い撥水性を得ることは困難であった。
本発明が解決しようとする課題は、人体および環境に馴染みやすい天然由来の植物原料を使用して、通気性に加えて、高い抗菌・滅菌性、高い耐酸化性、および水の接触角で120°を超える高い撥水性を備えた機能性膜およびその機能性膜を作製するための機能性組成物を提供することである。また、その組成物を使用した機能性膜および機能性積層膜を提供することである。
本発明の構成を下記に示す。
(構成1)
タンニン酸およびタンニン酸誘導体の群から選ばれる1以上を有する主剤と、求核性試薬を有する重合剤の少なくとも2剤以上からなり、
前記求核性試薬は、
(L-X
は3価以上6価以下の連結基、Lは炭素数が2以上16以下の直鎖の連結基、XはNH、SHおよびCHOからなる群より選ばれるいずれか1、mはMの価数に等しい整数からなる、機能性組成物。
(構成2)
前記XはNHである、構成1記載の機能性組成物。
(構成3)
前記Mは3価の連結基である、構成1または2記載の機能性組成物。
(構成4)
前記Mは窒素である、構成1から3のいずれか1記載の機能性組成物。
(構成5)
前記タンニン酸誘導体は、タンニン酸の少なくとも一部の水酸基における水素原子が、少なくとも1つの水酸基を有する鎖状炭化水素で置換されたタンニン酸誘導体である、構成1から4のいずれか1記載の機能性組成物。
(構成6)
前記タンニン酸誘導体は、タンニン酸の少なくとも一部の末端のピロガロール基がカテコール基で置換されたタンニン酸誘導体である、構成1から5のいずれか1記載の機能性組成物。
(構成7)
タンニン酸を有する主剤と、トリス(2-アミノエチル)アミンを有する重合剤からなる、機能性組成物。
(構成8)
前記主剤および前記重合剤の合計に対する前記主剤のモル比が、0.1以上0.2以下である、構成1から7のいずれか1記載の機能性組成物。
(構成9)
前記主剤および前記重合剤の合計に対する前記主剤のモル比が、0.15である、構成1から7のいずれか1記載の機能性組成物。
(構成10)
タンニン酸およびタンニン酸誘導体の群から選ばれる1以上が、
(L-X
で表される求核性試薬を介して結合され、かつ多孔を有する、機能性膜。
は3価以上6価以下の連結基、Lは炭素数が2以上16以下の直鎖の連結基、XはNH、SHおよびCHOからなる群より選ばれるいずれか1、mはMの価数に等しい整数。
(構成11)
前記タンニン酸誘導体は、タンニン酸の少なくとも一部の水酸基における水素原子が、少なくとも1つの水酸基を有する鎖状炭化水素で置換されたタンニン酸誘導体である、構成10記載の機能性膜。
(構成12)
前記タンニン酸誘導体は、タンニン酸の少なくとも一部の末端のピロガロール基がカテコール基で置換されたタンニン酸誘導体である、構成10または11記載の機能性膜。
(構成13)
タンニン酸がトリス(2-アミノエチル)アミンを介して結合され、かつ多孔を有する、機能性膜。
(構成14)
前記タンニン酸または前記タンニン酸誘導体の少なくとも一部の水酸基が、塩化炭化物および炭化フッ化物からなる群より選ばれる1以上で置換された、構成10から13のいずれか1記載の機能性膜。
(構成15)
前記タンニン酸または前記タンニン酸誘導体の少なくとも一部の水酸基が、塩化パルミトイルおよび塩化ヘプタデカフルオロアンデカノイルからなる群より選ばれる1以上で置換された、構成10から14のいずれか1記載の機能性膜。
(構成16)
前記多孔の平均直径は10nm以上500nm以下である、構成10から15のいずれか1記載の機能性膜。
(構成17)
多孔性の基材と、構成10から16のいずれか1記載の機能性膜である第1の機能性膜とを有する機能性積層膜であって、
前記基材と前記第1の機能性膜とは、構成10から16のいずれか1記載の機能性膜からなる複数の粒状の材料で繋がれた、機能性積層膜。
(構成18)
前記基材は繊維からなる、構成17記載の機能性積層膜。
(構成19)
基材上に粒状体を離散して複数形成する粒状体形成工程と、
前記粒状体上に構成10から16のいずれか1記載の機能性膜を形成する機能性膜形成工程を有し、
前記粒状体は、第2のタンニン酸誘導体および前記求核性試薬からなる液状の第2の機能性組成物を用いて形成された重合体であり、
前記第2の機能性組成物は前記基材に対し撥液性を有する、機能性積層膜の製造方法。
(構成20)
前記粒状体形成工程は、前記第2の機能性組成物を前記基材にスプレーコーティングするステップを有する、構成19記載の機能性積層膜の製造方法。
(構成21)
前記第2のタンニン酸誘導体は、少なくとも一部の末端のピロガロール基がカテコール基に置換されたタンニン酸誘導体である、構成19または20に記載の機能性積層膜の製造方法。
(構成22)
前記基材は多孔性の基材である、構成19から21のいずれか1記載の機能性積層膜の製造方法。
(構成23)
前記基材は繊維からなる、構成19から22のいずれか1記載の機能性積層膜の製造方法。
本発明により、人体および環境に馴染みやすい天然由来の植物原料を基に、通気性を有するとともに、高い抗菌・滅菌性、高い耐酸化性、および水の接触角で120°を超える高い撥水性を備えた機能性膜、およびその機能性膜を作製するための機能性組成物を提供することが可能になる。
本発明のコンセプトを示す説明図である。 本発明のタンニン酸誘導体の特徴を示す説明図である。 本発明の機能性積層膜の作製工程を示す断面図である。 多孔質試料の重合剤依存性を示すSEM写真である。 主剤と重合剤の比率を変えて作製した多孔質試料のSEM写真である。 水溶液の濃度を変えて作製した多孔質試料のSEM写真である。 機能性膜のSEM写真である。 抗酸化特性を示す特性図である。 抗酸化特性を示す特性図である。 抗酸化特性を示す特性図である。 抗酸化特性を示す特性図である。 抗酸化特性を示す特性図である。 PCLまたはDFUを用いた処理による撥水効果を示す特性図である。
<実施の形態1>
1.基本構成と効果
本発明の機能性組成物は、タンニン酸およびタンニン酸誘導体からなる群より選ばれる1以上を有する主剤と、求核性試薬を有する重合剤の少なくとも2剤からなり、前記求核性試薬は、
(L-X ・・・(A0)
からなる。
ここで、Mは3価以上6価以下の連結基、Lは炭素数が2以上16以下の直鎖の連結基、XはNH、SHおよびCHOからなる群より選ばれるいずれか1、mはMの価数に等しい整数である。
使用に当たってはこの2剤、すなわち主剤と重合剤を混合する。
図1に示すように、タンニン酸およびタンニン酸誘導体からなる群より選ばれる1以上を有する主剤(a)と、上記式(A0)で表される求核性試薬からなる重合剤(b)を混合することにより、主剤(a)は重合剤(b)を介して重合し、多孔性の機能性膜(c)が形成される。なお、図1では、主剤(a)としてタンニン酸、重合剤(b)としてMが価数3の窒素(N)であるトリス(2-アミノエチル)アミンが例示されている。
この機能性膜(c)は、均一な多孔性のため、膜面内で均一な通気性を有する。
この機能性膜は、人体や環境にやさしく抗菌性、滅菌性および耐酸化性を有するタンニン酸および/またはタンニン酸誘導体を骨格の材料として含むので、機能性膜としても抗菌性、滅菌性および耐酸化性を有する。
したがって、この機能性膜は、通気性と、抗菌性、滅菌性および耐酸化性の両機能を併せもつ。
なお、タンニン類、イソシアネート、およびアミン官能性とアルコキシ化官能性とを併せもつ物質を含んだ弾性発泡材の報告が、例えば特許文献3に開示されているが、これは均一な多孔を形成することを目的としたものではなく、弾性発泡体を目的としたものであり、目的が異なる。この目的の差を反映して、使用されるアミンは、ココヤシエトキシ化脂肪族アミンなどのココヤシアミン、獣脂アミン、オレイルアミンおよび/またはステアリルアミンのアルコキシ化誘導体であり、本発明とは異なる。すなわち、本発明でアミンを用いた場合は、式(A0)で定義される化学式にのっとったアミンであり、特許文献3に記載のアミンとは異なる。
2.機能性組成物
上記のように、本発明の機能性物は、タンニン酸およびタンニン酸誘導体からなる群より選ばれる1以上を有する主剤と、式(A0)で定義される求核性試薬を有する重合剤を有する。
タンニン酸(以後TAとも称す)はタンニンの加水分解によって生じる有機酸であり、例えば下記式(A1)で表される。
ここで、タンニンは、加水分解で多価フェノールを生じる植物成分の総称であり、没食子酸やエラグ酸がグルコースなどにエステル結合し、酸や酵素で加水分解されやすい加水分解型タンニンと、フラバノール骨格を持つ化合物が重合した縮合型タンニンに大別される。
本発明で用いるタンニンは、いずれのタイプのタンニンであっても、またそれらの混合物であってもよいが、好ましくは加水分解型タンニンである。
Figure 0007217883000001
タンニン酸誘導体は、タンニンを原材料にして製造することができる。
鎖状の炭化水素基により誘導化されたタンニン酸誘導体の一例を下記式(A2)に示す。これは、式(A1)のタンニン酸の10個の水酸基が炭素数16の直鎖の炭化水素基で置換されたタンニン酸誘導体である。
このタンニン酸誘導体は、図2に示すように、タンニンからなるコア部1と、鎖状の炭化水素基による置換により形成された枝部2からなる。
枝部2は、この機能性組成物から機能性膜を作製したときに、その機能性膜に柔軟性を与える。また、多孔膜としたときのポア径(孔の径)に関与し、鎖状が長いほどポア径は広がる。したがって、所望のポア径や柔軟性を得るように鎖状炭化水素基の炭素数や鎖状炭化水素基の数を調整することが好ましい。
Figure 0007217883000002

また、タンニン酸誘導体は、タンニン酸の少なくとも一部の末端基のピロガロール基がカテコール基により置換された誘導体であってもよい。この一例を下記式(A3)に示す。このタンニン酸誘導体は、末端部にカテコール基が配置されるので、この機能性組成物から機能性膜を作製したときに、基材等への密着性に優れるという特徴が得られる。
Figure 0007217883000003
タンニン酸の一部の水酸基が鎖状の炭化水素で置換されたタンニン酸誘導体(PATA:Partially n-alkyl substituted TA)は、アルキル化反応の一つであるウィリアムソンエーテル合成法によって得ることができる。
具体的には、テトラヒドロフラン、ジメチルスホキサイド等の溶媒中で、塩基性触媒の存在下で、タンニン酸(TA)にハロゲン化アルキルを反応させて作ることができる。塩基性触媒としてはMH、MCO、M(M:アルカリ金属)からなる群より選択されるいずれか1以上の触媒を使うことができる。例えば、KCOは、OH基をOに変換し、ハロゲン化アルキル(X-R:X:ハロゲン、R:アルキル基)へのO基の求核反応を促進することができる。ハロゲン化アルキルとしては、例えば、ヨウ化アルキルを用いることができる。また、ハロゲン化アルキルの代わりに、スルホニル基などを脱離基として有するものも使用できる。
また、上記、ウィリアムソンエーテル合成法以外のアルキル化反応を用いることもできる。さらに、N,N′-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DOC)等の縮合剤を用いたカルボン酸類との脱水縮合反応や、イソシアネートとの縮合反応を用いることもできる。
反応は、例えば、70℃以上100℃以下で、約1時間加熱する。タンニン酸に対するハロゲン化アルキルのモル比を変えることにより、タンニン酸中へのアルキル基の導入数を所望の値に設定できる。
重合剤となる求核性試薬は前述のように式(A0)で与えられる。
(L-X ・・・(A0)
ここで、Mは3価以上6価以下の連結基であり、例えば、3価の例として窒素(N)、4価の例として炭素(C)、6価の例としてベンゼン、シクロヘキサノンを挙げることができる。この中でも、Mが3価であることが均一な多孔を形成する上で特に好ましく、Mが窒素であることがさらに好ましい。
は炭素数が2以上16以下の直鎖の連結基であり、言い換えれば炭素数が2以上16以下の直鎖状のアルキル基であり、例えばエチル基、プロピル基、ブチル基、ドデシル基を挙げることができる。炭素数が2を下回る(2未満だと)と、稠密な重合、架橋になって多孔を形成しにくく、炭素数が16を上回るとLの直線性、剛直性が低下して均一な多孔を形成しにくくなり、好ましくない。
はNH、SHおよびCHOからなる群より選ばれるいずれか1である。これらは反応基となってタンニン酸やタンニン酸誘導体と重合を起こして膜が形成される。この中でもXとしては、反応性と取扱いの容易さから特にNHが好ましい。
mはMの価数に等しい整数である。
式(A0)で示される求核性試薬は、星形形状の架橋剤であり、均一な多孔を形成しやすいという特徴がある。
式(A0)で示される求核性試薬の例としては、トリス(2-アミノエチル)アミン、トリス(3-アミノプロピル)アミンを挙げることができる。
この中でも、下記式(A4)に示すトリス(2-アミノエチル)アミンは均一な多孔を有する機能性膜を形成する上で特に好ましい。すなわち、重合剤としてトリス(2-アミノエチル)アミンを用いると、ポアサイズが均一で凝集体生成の少ない均一な多孔性機能膜を形成することが可能になる。均一な多孔性機能膜は、通気性の面内分布が少なく、またこの機能性膜に撥水性をもたせたときの撥水分布ムラが少なくなるという効果を生む。
Figure 0007217883000004

主剤と重合剤の比率は、主剤のモル量Aと重合剤のモル量Bの合計のモル量A+Bに対する主剤のモル量との比(主剤のモル比)A/(A+B)で表して、0.1以上0.2以下である。特に好ましくは0.15である。このような値にすると均一な多孔を有する機能性膜を形成しやすい。すなわち、主剤のモル比A/(A+B)が、0.1以上0.2以下、特に好ましくは0.15であると、ポアサイズが均一で凝集体生成の少ない均一な多孔性機能膜を形成することが可能になるという効果が得られる。
3.機能性膜
前述のように本発明の機能性膜は、タンニン酸およびタンニン酸誘導体からなる群より選ばれる1以上を有する主剤(a)が式(A0)で規定される求核性試薬からなる重合剤(b)を介して重合した多孔性の機能性膜(c)である(図1参照)。
この機能性膜は、多孔性のため、この機能性膜(c)は通気性を有する。また、人体や環境にやさしく抗菌性、滅菌性および耐酸化性を有するタンニン酸および/またはタンニン酸誘導体を骨格の材料として含むので、機能性膜としても抗菌性、滅菌性および耐酸化性を有する。したがって、この機能性膜は、通気性と、抗菌性、滅菌性および耐酸化性の両機能を併せもつ。
タンニン酸は親水性の性質をもつが、タンニン酸の少なくとも一部の水酸基における水素原子が、少なくとも1つの水酸基を有する撥水性の鎖状炭化水素で置換されたタンニン酸誘導体により疎水性(撥水性)をもたせることができる。
また、タンニン酸またはタンニン酸誘導体の一部の水酸基が、炭化水素基およびフルオロアルキル基からなる群より選ばれる1以上で置換されることにより、具体的には、塩化炭化物および炭化フッ化物からなる群より選ばれる1以上で置換されることにより、さらにこの機能性膜の撥水性は高まる。塩化炭化物および炭化フッ化物としては、下記式(A5)に示す塩化パルミトイル(Parmiroyl chloride;PCL)および下記式(A6)に示す塩化へプタデカフルオロアンデカノイル(4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11,Heptadecafluoroundecanoyl chloride;DFU)を好ましく挙げることができる。
本発明の機能性組成膜は、多孔性であり、その表面にナノメータからサブミクロン領域の凹凸を形成することができる。この凹凸形状効果も加わって、120°を超える水の接触角を有する撥水膜としての機能もこの機能性膜にもたせることが可能となる。
多孔の平均直径で表した孔径は、この機能性組成膜を高い撥水性の膜とするとき、10nm以上500nm以下が好ましい。ここで、多孔の平均直径は、多孔の1つ1つと同じ面積をもつ1つ1つの円の直径の平均値で定義される。
多孔の平均直径が10nm以上500nm以下の場合、凹凸形状効果が加わって、極めて高い水の接触角を得ることができる。さらに、この孔径で十分な通気性も確保される。
Figure 0007217883000005
本発明の機能性膜は、上記の主剤(a)と重合剤(b)を混合する混合工程と、塗布する塗布工程により作製することができる。
混合工程の混合温度は、0℃以上40℃以下が好ましい。この温度範囲で、より効率よく、多孔が均一で、凝集体などの欠陥の少ない機能性膜を形成することができる。0℃以上だと、重合反応効率が上がって生産性が向上し、40℃以下だと、多孔のポア径が均一になり、また、凝集体などの多孔としての欠陥がより少ないものとなる。
ここで、主剤(a)および/または重合剤(b)は、溶媒に添加された形態で混合されてもよい。なお、溶媒としては、水、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、イソプロピルアルコールおよびこれらの混合液を挙げることができる。
主剤(a)と重合剤(b)を混合した後は、ドロップ-キャスト法、キャスト法、スピンコート法およびディップ法などの塗布法によって混合液を基材上に塗布し、乾燥を行うことによって機能性膜を得る。
ここで、基材は、特に限定がないが、通気性をもつ布、繊維あるいは木などとすると全体として通気性が確保されることからその特徴を十分発揮することが可能となる。例えば、基材を木とし、その上に本発明の機能性膜を塗布形成すると木が呼吸できる、結露なども発生しにくくなる。基材を綿やウールなどの布とすると、機能性膜を被着後も通気性が確保された布となり、着心地の良い布地となる。
成膜後は、20秒間の超音波洗浄とエタノールでの洗浄を経た後、ドライヤーもしくはオーブンでの乾燥処理を行うことも好ましい。熱処理を行うことによって、重合が促進されるため、機能性膜の製造時間を短縮することができ、また、経時変化の少ない機能性膜を供給することが可能になる。
<実施の形態2>
実施の形態2では、実施の形態1で述べた機能性膜を用いた機能性積層膜について説明する。
本発明の機能性積層膜21は、図3に示すように、基材11と実施の形態1で説明した機能性膜(多孔性機能膜)13が、実施の形態1で説明した機能性組成物(主剤であるタンニン酸誘導体と重合剤である求核性試薬を用いて形成される機能性組成物)からなる複数の粒状体12を介して繋がれた構造を有する。
機能性積層膜21の製造方法は、基材11上に実施の形態1で説明した機能性組成物(第2の機能性組成物)を粒状にして粒状体12を形成する粒状体形成工程(図3(a)参照)と、形成した粒状体12の上に実施の形態1で説明した多孔性の機能性膜13を形成する機能性膜形成工程(図3(b)参照)からなる。
ここで、第2の機能性組成物は、基材11に対して撥液性を有するようにする。すなわち、基材11が綿のような親水性のときは第2の機能性組成物を疎水性とし、基材11がウールのような疎水性のときは第2の機能性組成物を親水性にする。
なお、ここでの撥液性は、基材11上に第2の機能性組成物を滴下したときの接触角が20°以上、好ましくは40°以上、さらに好ましくは60°以上180°未満であることをいう。
第2の機能性組成物の疎水性、親水性の調整は、その主剤であるタンニン酸誘導体を構成する鎖状炭化水素の選択により行うことができる。例えば、炭素数の少なく水酸基の多い鎖状炭化水素の場合は親水性になり、炭素数の多い鎖状炭化水素の場合は疎水性になる。
また、第2の機能性組成物の主剤であるタンニン酸誘導体は、少なくとも一部の末端のピロガロール基がカテコール基によって置換されたタンニン酸誘導体であることが好ましい。カテコール基に置換されていることにより、粒状体12の基材11および機能性膜13に対する密着性が向上し、機能性積層膜21の曲げ伸ばしに対する耐久性が向上し、また機能性積層膜21の機械的特性の経時変化が少なくなる。
粒状体12を基材11上に形成する方法としては、例えばスプレー法を挙げることができる。粒状体12を形成するときに用いる第2の機能性組成物は基材11に対して撥液性を有するので、第2の機能性組成物をミスト状にして基材11にスプレー塗布すると、第2の機能性組成物の表面張力により第2の機能性組成物は微小な粒状になる。このため、多数の微小な粒状体12を基材11上に分散して形成することができる。
機能性膜13を粒状体12上に形成する方法は、機能性膜13を準備した後、粒状体12が形成された基材11に機能性膜13を密着、圧着する方法を挙げることができる。この際、熱処理を加えると、粒状体12は基材11および機能性膜13と接着力が向上するので好ましい。
機能性積層膜21は、基材11と多孔を有する機能性膜13の繋がりが粒状体12によるピンドット接合(ピンポイント接合)のため、基材11の機械的性質を維持しやすい。このため、機能性積層膜21は、基材の柔軟性、しなやかさおよびフレキシビリティなどの基材のすぐれた良さを反映しやすいものとなる。
例えば、基材11を綿、ウールなどの繊維、生地とした場合、機能性積層膜21はその繊維、生地の柔軟性などの良さを引き継いだものとなる。基材11が生地の場合、機能性積層膜21の基材11側ではその生地と同様の肌触りも得られる。
基材11が多孔な材料や繊維の場合、基材11は通気性を有するので、基材11、散在する粒状体12および多孔性の機能性膜13からなる機能性積層膜21も通気性を有する。
その上で、機能性積層膜21の機能性膜13側は、抗菌性、滅菌性、抗酸化性を有する。このため、機能性積層膜21をもちいた衣服は、医療、衛生用途に適し、かつ着心地のよいものとなる。
また、機能性膜13に含まれるタンニン酸誘導体の少なくとも一部の水酸基を塩化炭化物および炭化フッ化物からなる群より選ばれる1以上で置換された状態にすると、極めて高い撥水性が得られる。例えば、機能性膜13に含まれるタンニン酸誘導体の一部の水酸基を塩化パルミトイルあるいは塩化ヘプタデカフルオロアンデカノイルで置換された機能性積層膜21の機能性膜13側は、水の接触角で評価して120°を超える撥水性をもたせることができる。したがって、このような機能性積層膜21は、手術着、看護着およびレインコートの生地として好適である。
一方、生地にポリテトラフルオロエチレンなどの撥水材をコートした従来法では、生地の繊維に対して直接コートされるため、生地のしなやかさや肌触りが損なわれる。また、生地にポリテトラフルオロエチレンなどの撥水材を貼り付けたものは、通気性などが損なわれやすいという問題がある。
(実施例1)
実施例1は、本発明による機能性膜の多孔形成特性について述べる。
主剤としてタンニン酸(TA、和光純薬工業(株)製)、重合剤として求核試薬であるn-ヘキシルアミン(和光純薬工業(株)製)、ビス(2-アミノエチル)アミン(和光純薬工業(株)製)、トリス(2-アミノエチル)アミン(和光純薬工業(株)製)、枝分かれしたポリエチルアミン(ALDRICH製)を準備した。ここで、これらの求核性試薬の中で式(A0)で表される構造をもつものはトリス(2-アミノエチル)アミンだけである。
そして、それぞれ主剤Aと重合剤BをA:B=15:85のモル比で混合し、水を溶媒として加え、大気圧の室温(25℃)下でスタラーを使って8-10時間攪拌した。
作製された試薬は、それぞれ50mm×50mmの大きさのガラス基板上に2.5mLドロップ-キャスト法で塗布され、その後乾燥された。引き続き、水、エタノールで洗浄を行い、乾燥窒素ブロー乾燥を行って、機能性膜を形成した。
しかる後、形成された機能性膜は、帯電による観察像質低下を防止するための白金コート処理を施した後、SEM(Scanning electron microscope)により表面観察を行って、その表面形状(多孔形成の状況)を評価した。ここで、使用したSEMはSU8000((株)日立ハイテクノロジーズ製)であり、加速電圧1.0kVで観察した。SEM観察は以下全てこの条件で行った。
観察した結果を図4に示す。これは重合剤が各種のアミンを用いたときの表面形状比較であるが、トリス(2-アミノエチル)アミンを用いたときに均一な多孔質(網目状)の膜が形成され、他のアミン重合剤を用いたときは十分な多孔形状が得られないことがわかる。
次に、主剤をTA、重合剤をトリス(2-アミノエチル)アミンとして、主剤Aと重合剤Bのモル比率を変化させて作製した膜の表面形状をSEM観察した。その結果を図5に示す。ここで、図5中の数値はA:Bのモル割合を示す。
最も均一で凝集体の形成も少ない主剤Aと重合剤Bのモル比率は15:85、すなわち主剤のモル比率A/(A+B)=0.15の場合であり、50nm径を中心とした孔が形成される。それより主剤Aの比率が高まると凝集体(aggregation)が発生し、多孔の均一性も低下する。また、それより主剤Aの比率が少なくなると孔が潰れ、多孔性が低下することがわかる。
多孔性が低下、すなわち膜の開口率が低下するとこの膜の通気性も低下する。多孔性が不均一になると、通気性、滅菌性、抗菌性、抗酸化性および撥水性も面内分布が生じ好ましくない。このことから、主剤のモル比率A/(A+B)=0.15の場合が、均一性の観点から好ましいことがわかる。さらに詳細な評価を行ったところ、主剤のモル比率A/(A+B)が0.1以上0.2以下で均一な多孔形状が得られることがわかった。
次に、多孔膜の溶液濃度依存性を調べた。
主剤をTA、重合剤をトリス(2-アミノエチル)アミン、主剤Aと重合剤Bのモル比率をA:B=15:85、溶媒を水として、濃度を0.14mg/mLから3.47mg/mLまで振った試料溶液を作製し、上記ドロップ-キャスト法により形成した膜をSEM観察した。その結果を図6に示す。ここで、図中の数字は試料溶液の濃度(単位はmg/mL)を示す。その結果、濃度に拘わらず均一な多孔性の膜が形成された。
(実施例2)
実施例2は、機能性膜に銀ナノ粒子を担持させた例を示す。
主剤をTA、重合剤をトリス(2-アミノエチル)アミン、主剤Aと重合剤Bのモル比率をA:B=15:85として形成した膜をAgNO水溶液に3時間浸し、その後乾燥させて銀ナノ粒子が担持された機能性膜を作製した。ここで、AgNO水溶液の濃度は0.1wt%で、添加剤を用いず、室温(25℃)で浸漬処理を行った。
作製された銀ナノ粒子担持機能性膜のSEM観察像を図7(b)に、銀担持処理前の機能性膜のSEM観察像を図7(a)に示す。多孔性の膜上に直径45nmから55nmの銀ナノ粒子が均一に分散担持された機能性膜が得られていることがわかる。膜の構成材であるタンニン酸の抗菌、滅菌作用に加え、抗菌、滅菌作用の強い銀ナノ粒子が担持された機能性膜を簡便に提供できることが示された。
(実施例3)
実施例3は、機能性膜の抗酸化特性をDPPH(1,1-Diphenyl-2-picrylhydrazyl)試薬を用いて調べた結果を示す。
ここで、DPPHは酸化機能をもつ物質であり、DPPHの酸化能力を奪えればそれは抗酸化能力を有することを意味する。そしてそれは、波長520nmの光吸収をモニターすることによって評価できる。
実験の手順を下記に示す。
機能性組成物を、主剤をTA、重合剤をトリス(2-アミノエチル)アミン、主剤Aと重合剤Bのモル比率をA:B=15:85として調製し、その機能性組成物2.5mLをドロップ-キャスト法により50mm×50mmのガラス基板に塗布して多孔性の機能性膜を形成した。したがって、この機能性膜の面密度は0.15mg/cmである。
DPPH試薬(東京化成工業(株)製)は、アセトニトリルを溶媒として、0.16mmol/mg、0.33mmol/mgおよび0.67mmol/mgの三種類の濃度の溶液を用意した。それぞれの溶液のDPPHの量は、12μM、25μMおよび50μMである。
そして、それぞれのDPPH溶液50mLを別々のビーカーに入れ、上記機能性膜が形成された試料を24時間浸漬させた。その間、各DPPH溶液の波長520nmにおける光吸収を測定した。ここで、光吸収測定には、V-670(ASCO製)を用いた。
その測定結果を図8から図10に示す。ここで、図8、9および10は、それぞれDPPH溶液の濃度が0.16mmol/mg、0.33mmol/mgおよび0.67mmol/mgの場合である。どの場合においても、DPPHの吸収スペクトルの極大値である波長520nmの吸光度αは経過時間とともに単調に減少することがわかる。
図11は、図8から図10のデータを基に作成した図で、波長520nmにおける吸光度の初期値比α/αの経過時間依存性を示す。吸光度の初期値比α/αは経過時間とともに単調に減少し、DPPH溶液の濃度が0.16mmol/mgの場合は約6時間でその減少は飽和する。DPPH溶液の濃度が0.33mmol/mgおよび0.67mmol/mgの場合は、その減少は24時間で飽和に近づく。
このことから、この機能性膜は十分高い抗酸化機能を有することが実証された。
なお、参考までに、機能性膜をDPPH溶液に24時間浸漬させた後のDPPH溶液吸光度初期値比α/αのDPPH濃度依存性を図12に示す。DPPH溶液吸光度初期値比α/αはDPPH濃度とリニアな関係にある。
(実施例4)
実施例4は、機能性膜の滅菌・抗菌作用について調べた結果を示す。
フィルム密着法により、本発明の機能性膜の滅菌・抗菌効果評価を行った。
被検菌は、大腸菌、黄色ブドウ球菌およびメシチリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)で、機能性膜としては、主剤をTA、重合剤をトリス(2-アミノエチル)アミン、主剤Aと重合剤Bのモル比率をA:B=15:85として作製された膜を用いた。
具体的には、ガラス基板に上記機能性膜を塗布形成した後、ピーリングして作製したフィルム試料と、コントロールとして何も塗布しないフィルムによる非処理フィルム試料とを準備し、各フィルム試料を大腸菌を培養させた培養体に接触させて、大腸菌に対する殺菌作用を評価した。その評価の方法の詳細はJIS2801のフィルム試験法に準拠させ、各フィルム試料の培養体への接触時間は24時間とした。また、菌を黄色ブドウ球菌やMRSAに換えて同様の測定を行った。その結果を下記表1に示す。ここで、初期値は、培養体の細菌数(細菌コロニー数)である。各々3サンプルにつき測定を行った。
Figure 0007217883000006
この結果、本発明の機能性膜は、大腸菌、黄色ブドウ球菌およびMRSAに対して強い滅菌、抗菌作用を有することが実証された。
(実施例5)
実施例5は、機能性膜の撥水性について調べた結果を示す。
最初に、主剤をTA、重合剤をトリス(2-アミノエチル)アミン、主剤Aと重合剤Bのモル比率をA:B=15:85としてガラス基板上に形成した機能性膜を準備した。そして、その機能性膜の一部の水酸基をPCL(東京化成工業(株)製)で置換した試料とDFU(ALDRICH製)で置換した疎水化処理試料を作製した。ここで、PCLおよびDFUの置換は、溶媒をジエチルエーテルとしたPCL溶液およびDFU溶液を準備し、それらの溶液に機能性膜を形成した試料を室温(25℃)で2時間浸漬して行った。PCL溶液の濃度は0.6,1.2,2.4および4.9μmol/mLの4種類、DFU溶液の濃度は0.6,1.2,2.4および4.8μmol/mLの4種類計8種類とした。
浸漬後は機能性膜を形成した試料を室温で乾燥させ、浸漬終了から3-10時間大気中保管した後に水の接触角を測定した。
ここで、水の接触角測定にはDrop Master DMs-401(協和界面科学(株)製)を用い、測定は大気圧下で行った。また、コントラストの高い水滴像を得るために、水には濃度0.1mMでローダミンBを添加した。水の滴下にはマイクロシリンジを用い、1滴当たりの水の滴下量は2.0μLとした。
また、参考までに、ガラス基板上に濃度1.2μmol/mLのPCLを塗布し、その後乾燥を行った試料と、1.2μmol/mLのDFUを塗布し、その後乾燥を行った計2つの試料を別に準備し、その水の接触角も上記と同様に測定した。
その測定結果を図13に示す。同図には、参考までに、接触角を測定したときの水滴の拡大鏡像も併せて載せている。
その結果、PCLで表面処理した場合もDFUで表面処理した場合も高い水の接触角が得られ、特にPCLやDFUの濃度を1.2μmol/mLとした場合には、PCLが126.8±0.8°、DFUが130.8±0.9°と共に120°を超える水の接触角となった。また、DFUを用いた場合は、0.6μmol/mLから4.8μmol/mLに至るまで水の接触角は127.7±2.4°から132.0±2.2°の範囲にあり、ほぼ濃度に依存せず130°付近の高い水の接触角が得られた。
一方、ガラス基板上に直接PCLを塗布形成した場合の水の接触角は62.7±1.6°であり、DFUのそれは74.1±2.9°と本発明の多孔を有する機能性膜を用いた場合より大幅に低い接触角であった。また、PCLやDFUで表面処理をしていない本機能性膜での水の接触角は約0°であった。
この結果、本発明の機能性膜は、PCLやDFUによる表面処理により、水の接触角で120°を超える高い撥水性を得ることができることが実証された。これは、PCLやDFUによる疎水性付与と機能性膜の多孔に伴う凹凸形状効果の相乗効果によると考えられる。
本発明により、通気性に加えて、高い抗菌・滅菌性、高い耐酸化性、および水の接触角で120°を超える高い撥水性を備えた機能性膜およびその膜を作製するための機能性組成物を提供することが可能になる。
ここで、この機能性組成物および機能性膜は天然植物由来の材料を用いているので、人体、環境に馴染みやすく悪影響が少ないと考えられるという特徴を併せもつ。
このため、手術着、看護着、ガーゼ等の医療用途、おむつ等の民生用途、レインコートなどの民生服用途など様々な分野への適用が期待される。
1:コア部
2:枝部
11:基材(布、繊維)
12:粒状体
13:機能性膜(多孔機能性膜)
21:機能性積層膜

Claims (22)

  1. タンニン酸誘導体を有する主剤と、求核性試薬を有する重合剤の少なくとも2剤以上からなり、
    前記タンニン酸誘導体は、タンニン酸の少なくとも一部の末端のピロガロール基がカテコール基で置換されたタンニン酸誘導体、およびタンニン酸の少なくとも一部の水酸基が塩化炭化物および炭化フッ化物からなる群より選ばれる1以上で置換されたタンニン酸誘導体からなる群より選ばれた1以上からなり、
    前記求核性試薬は、
    (L-X
    は3価以上6価以下の連結基、Lは炭素数が2以上16以下の直鎖の連結基、XはNH、SHおよびCHOからなる群より選ばれるいずれか1、mはMの価数に等しい整数からなる、機能性組成物。
  2. 前記XはNHである、請求項1記載の機能性組成物。
  3. 前記Mは3価の連結基である、請求項1または2記載の機能性組成物。
  4. 前記Mは窒素である、請求項1から3のいずれか1記載の機能性組成物。
  5. 前記タンニン酸誘導体は、タンニン酸の少なくとも一部の末端のピロガロール基がカテコール基で置換されたタンニン酸誘導体、およびタンニン酸の少なくとも一部の水酸基が塩化パルミトイルおよび塩化ヘプタデカフルオロアンデカノイルからなる群より選ばれる1以上で置換されたタンニン酸誘導体からなる群より選ばれる1以上からなる、請求項1から4の何れか1記載の機能性組成物。
  6. 前記求核性試薬は、トリス(2-アミノエチル)アミンである、請求項1から5のいずれか1記載の機能性組成物。
  7. タンニン酸誘導体が、
    (L-Xで表される求核性試薬を介して結合され、かつ多孔を有する、機能性膜。
    は3価以上6価以下の連結基、Lは炭素数が2以上16以下の直鎖の連結基、XはNH、SHおよびCHOからなる群より選ばれるいずれか1、mはMの価数に等しい整数であり、
    前記タンニン酸誘導体は、タンニン酸の少なくとも一部の末端のピロガロール基がカテコール基で置換されたタンニン酸誘導体、およびタンニン酸の少なくとも一部の水酸基が塩化炭化物および炭化フッ化物からなる群より選ばれる1以上で置換されたタンニン酸誘導体からなる群より選ばれる1以上からなる。
  8. 前記タンニン酸誘導体は、タンニン酸の少なくとも一部の末端のピロガロール基がカテコール基で置換されたタンニン酸誘導体、およびタンニン酸の少なくとも一部の水酸基が塩化パルミトイルおよび塩化ヘプタデカフルオロアンデカノイルからなる群より選ばれる1以上で置換されたタンニン酸誘導体からなる群より選ばれる1以上からなる、請求項7記載の機能性膜。
  9. 前記求核性試薬は、トリス(2-アミノエチル)アミンである、請求項7または8記載の機能性膜。
  10. 前記多孔の平均直径は10nm以上500nm以下である、請求項7から9のいずれか1記載の機能性膜。
  11. タンニン酸が求核性試薬を介して結合された、多孔を有する機能性膜であって、
    前記求核性試薬はトリス(2-アミノエチル)アミンであり、
    前記タンニン酸および前記求核性試薬の合計に対する前記タンニン酸のモル比が、0.1以上0.2以下である、通気性を有する機能性膜。
  12. 前記タンニン酸および前記求核性試薬の合計に対する前記タンニン酸のモル比が、0.15である、請求項11記載の通気性を有する機能性膜。
  13. 基体上に通気性をもった機能性膜が形成された構造体であって、
    前記基体は、布、繊維および木からなる群より選ばれる1以上からなり、
    前記機能性膜は、タンニン酸およびタンニン酸誘導体の群から選ばれる1以上が、M (L -X で表される求核性試薬を介して結合され、かつ多孔を有する、構造体。
    は3価以上6価以下の連結基、L は炭素数が2以上16以下の直鎖の連結基、X はNH 、SHおよびCHOからなる群より選ばれるいずれか1、mはM の価数に等しい整数であり、
    前記タンニン酸誘導体は、タンニン酸の少なくとも一部の末端のピロガロール基がカテコール基で置換されたタンニン酸誘導体、およびタンニン酸の少なくとも一部の水酸基が塩化炭化物および炭化フッ化物からなる群より選ばれる1以上で置換されたタンニン酸誘導体からなる群より選ばれる1以上からなる。
  14. 前記タンニン酸誘導体は、タンニン酸の少なくとも一部の末端のピロガロール基がカテコール基で置換されたタンニン酸誘導体、およびタンニン酸の少なくとも一部の水酸基が塩化パルミトイルおよび塩化ヘプタデカフルオロアンデカノイルからなる群より選ばれる1以上で置換されたタンニン酸誘導体からなる群より選ばれる1以上からなる、請求項13記載の構造体。
  15. 前記求核性試薬は、トリス(2-アミノエチル)アミンである、請求項13または14記載の構造体。
  16. 多孔性の基材と、請求項7から12のいずれか1記載の機能性膜である第1の機能性膜とを有する機能性積層膜であって、
    前記基材と前記第1の機能性膜とは、請求項7から12のいずれか1記載の機能性膜からなる複数の粒状の材料で繋がれた、機能性積層膜。
  17. 前記基材は繊維からなる、請求項16記載の機能性積層膜。
  18. 基材上に粒状体を離散して複数形成する粒状体形成工程と、
    前記粒状体上に請求項7から12のいずれか1記載の機能性膜を形成する機能性膜形成工程を有し、
    前記粒状体は、第2のタンニン酸誘導体および前記求核性試薬からなる液状の第2の機能性組成物を用いて形成された重合体であり、
    前記第2の機能性組成物は前記基材に対し撥液性を有する、機能性積層膜の製造方法。
  19. 前記粒状体形成工程は、前記第2の機能性組成物を前記基材にスプレーコーティングするステップを有する、請求項18記載の機能性積層膜の製造方法。
  20. 前記第2のタンニン酸誘導体は、少なくとも一部の末端のピロガロール基がカテコール基に置換されたタンニン酸誘導体である、請求項18または19に記載の機能性積層膜の製造方法。
  21. 前記基材は多孔性の基材である、請求項18から20のいずれか1記載の機能性積層膜の製造方法。
  22. 前記基材は繊維からなる、請求項18から21のいずれか1記載の機能性積層膜の製造方法。
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