JP7188901B2 - 情報処理システム及びプログラム - Google Patents
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Description
例えば特許文献1には、仮想の物体の背後に現実の物体が位置する場合に(ユーザからは現実の物体が見えない場合に)、ユーザに近づいてきている現実の物体の存在を事前に知らせる技術が記載されている。具体的には、現実の物体とユーザとの距離とが予め定めた距離以内になると、手前側に位置する仮想の物体の表示を半透明又は輪郭線の表示に制御して背後に位置する現実の物体の視認を可能にする技術が記載されている。
請求項2に記載の発明は、前記取得手段は、前記画像に含まれる現実の物体の像の色調と、当該現実の物体の既知の色調との違いに基づいて前記光源の光の色を推定して前記画像から取得される前記光源の情報の一部として光源の光の色を出力し、前記推定手段は、取得された前記光源の情報に基づいて、当該光源からの光が仮想の物体の色調に与える影響を含む効果を推定する、請求項1に記載の情報処理システムである。
請求項3に記載の発明は、現実空間を直接視認するユーザの網膜に仮想の画像を投影する網膜投射型デバイスを更に有し、前記描画手段は、推定された効果を加えた前記仮想の物体を、前記網膜投射型デバイスを通じて描画する、請求項1に記載の情報処理システムである。
請求項4に記載の発明は、前記光源は、現実空間に存在する投影機であり、前記推定手段は、前記取得手段で取得された前記投影機の情報に基づいて、当該投影機から投影される画像が前記仮想の物体及び周囲に存在する現実の物体に与える効果を推定する、請求項1に記載の情報処理システムである。
請求項5に記載の発明は、前記推定手段は、現実の物体に照射された前記光源からの光が、前記仮想の物体に与える効果を推定する、請求項1~4のいずれか1項に記載の情報処理システムである。
請求項6に記載の発明は、コンピュータに、ユーザの視界前方を少なくとも含む周囲を撮像するカメラによって現実空間を撮像した画像から現実空間に存在する光源の情報を取得する機能と、取得された前記光源の情報に基づいて、当該光源からの光が仮想の物体に与える効果を推定する機能と、推定された効果を加えて前記仮想の物体を描画する機能と、を実現させるためのプログラムであり、前記光源の情報を取得する機能は、前記画像に被写体として含まれる現実の物体の輪郭と、当該現実の物体の周囲に出現する濃度が濃い暗部の輪郭と濃度が薄い暗部の輪郭とを抽出し、抽出された輪郭の組の位置と対応する当該現実の物体の位置との関係から、現実空間に存在する当該光源の位置と数を取得する、プログラムである。
請求項2記載の発明によれば、仮想の物体が実在するかのように仮想の物体の見え方を表現することができる。
請求項3記載の発明によれば、仮想の物体が実在するかのように仮想の物体の見え方を表現することができる。
請求項4記載の発明によれば、仮想の物体が実在するかのように仮想の物体の見え方を表現することができる。
請求項5記載の発明によれば、仮想の物体が実在するかのように仮想の物体の見え方を表現することができる。
請求項6記載の発明によれば、現実空間に存在する光源からの光が仮想の物体に与える影響を描画して仮想の物体が現実空間に存在する光源からの光で実際に照らされているのに近い体験を可能にできる。
<実施の形態1>
本実施の形態では、複合現実の体験に、外界を透過的に視認可能なメガネ型の端末を使用する場合について説明する。
図1は、外界を透過的に視認可能なメガネ型の端末1を装着したユーザが、複合現実を体感する原理を説明する図である。
図1に示すメガネ型の端末1は、透明度が高い導光板2と、画像を表示する小型の表示部3と、仮想の物体(仮想物体11)を描画する仮想物体描画部4とを有している。
ここでのメガネ型の端末1は、情報処理装置の一例であるとともに情報処理システムの一例でもある。
可視光透過型回折格子は、導光板2の前方から入射する外光B1を直線的に透過してユーザの眼球5に導くように作用する。一方で、可視光透過型回折格子は、表示部3から導光板2に入射した表示光B2を屈折させて導光板2の内部を伝搬させ、その後、眼球5の方向に表示光B2を屈折させるように作用する。
外光B1と表示光B2は、眼球5内で合成される。この結果、端末1を装着したユーザは、現実の物体(現実物体12)に仮想の物体(仮想物体11)を合成した複合現実の風景を知覚する。因みに、図1の例では、仮想物体11が現実物体12よりも手前側に位置している。
図2は、メガネ型の端末1のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2に示す端末1は、プログラム(基本ソフトウェアを含む)の実行を通じて装置全体を制御するCPU(Central Processing Unit)21と、BIOS(Basic Input Output System)や基本ソフトウェア等のプログラムを記憶するROM22と、プログラムの実行領域として使用されるRAM(Random Access Memory)23と、を有している。
ROM22は、例えば電気的にデータの書き換えが可能な不揮発性の半導体メモリで構成される。
CPU21、ROM22、RAM23は、コンピュータ20として機能する。
左目用の表示部3Lには、左目用の画像が表示され、右目用の表示部3Rには、右目用の画像が表示される。左目用の画像と右目用の画像には視差が再現されている。このため、端末1を装着したユーザは、仮想物体11を立体視できる。
慣性計測センサ25は、頭の位置や向きの計測に用いられ、視線の追跡などに使用される。
深度センサ26は、赤外線や超音波を使用して現実空間に存在する物体までの距離を計測する。
図3は、メガネ型の端末1の機能構成の一例を示す図である。
図3に示す機能構成は、CPU21によるプログラムの実行を通じて実現される。
図3に示す機能構成は、プログラムの実行を通じて実現される各種の機能のうち、現実の光源(すなわち実光源)と現実の物体との間に仮想の物体が配置される複合現実空間をユーザに知覚させる機能について表している。
現実空間情報41として保存される情報の種類は、メガネ型の端末1を使用する場面や用途によって異なる。
ただし、情報の種類が増えることで、複合現実空間における体験を、現実空間の体験に近づけることができる。
本実施の形態の場合、現実空間情報41には、実時間で追加される現実物体12に関する情報に加え、事前に与えられた又は事前に取得された現実物体12に関する情報も含まれる。
撮像された画像から推定される情報には、色情報のように撮像された画像から直接的に取得可能な情報もあれば、後述する手法などを用いて推定される情報もある。
本実施の形態の場合、RAM23の不揮発性領域には、現実物体12の透過性を有する部分の全てに適用される情報(透過情報を計算するための式や透過情報の代表値を含む)や反射性を有する部分の全てに適用される情報(反射情報を計算するための式や反射情報の代表値)も記憶される。
なお、RAM23の不揮発性領域には、透過性を有する部分別の情報と反射性を有する部分別の情報が記憶されていてもよい。
本実施の形態における現実空間情報取得部31は、RAM23から、画像認識によって特定された個々の現実物体12に関する情報を取得する。
本実施の形態における現実空間情報取得部31には、現実物体12の透過性を有する部分を撮像した画像と同様の見え方を実現するフィルタを取得する機能や現実物体12の反射性を有する部分を撮像した画像と同様の見え方を実現するフィルタを取得する機能が設けられていてもよい。ここでのフィルタは、透過情報や反射情報の一例である。
なお、反射性を有する部分とは、物体の表面に他の物体の像が映り込むような反射性、言い換えると、正反射が起こる鏡面的な反射性を有する部分をいうものとする。
ここで、個別の物体の情報には、例えば形状、色調、材質、透過情報、反射情報、現実空間内での位置を特定する情報が含まれる。物体の認識には、既存の技術を使用する。例えばエッジや色領域を特徴量として検出する手法が用いられる。物体の認識には、人工知能を用いてもよい。
撮像に関する情報には、現実の空間内におけるカメラ24L及び24Rの位置の情報、現実の空間内におけるカメラ24L及び24Rの移動の方向、現実の空間内におけるカメラ24L及び24Rが撮像する向きの情報等が含まれる。なお、カメラ24L及び24Rによって撮像された画像には、撮像の日時に関する情報なども付属する。
因みに、透過性を有しない部分の透過率は0(ゼロ)である。
透過率等の情報は、画像の処理を通じて推定される場合もあれば、事前に与えられる場合もある。透過性を推定する手法には、複数の時点に撮像された複数の画像の比較による方法、人工知能によって特定された物体に対応する透過情報をデータベースから取得する方法等がある。データベースは、例えばクラウドネットワーク上の不図示のサーバに記憶されていてもよい。なお、特定された物体に対応する透過情報がデータベースに存在しない場合、人工知能は、特定された物体に対応する透過情報を、データベースに存在する類似する物品の情報に基づいて推定してもよい。
透過情報に含まれる個々の要素の組み合わせにより、物体の質感が変化する。
反射には、一般に、正反射と拡散反射が存在する。正反射とは、拡散がない反射であり、入射光が一定の方向に反射するものである。拡散反射とは、肉眼で見えるような正反射がない反射であり、入射光が様々な方向に反射するものである。
例えば鏡の場合、極めて平滑な鏡面の全ての位置で正反射が起こることで、元の物体の像を正確に見ることができる。一方、例えば紙や布のような表面がざらざらした物体では拡散反射が起こり、入射した光が表面の微細な凹凸により様々な方向に反射するため、像が崩れてしまい、元の物体の形がわからない状態になる。
反射情報に含まれる個々の要素の組み合わせにより、物体の質感が変化する。
光源は、太陽、月、生物等の自然物と、照明器具、表示装置、投影機等の人工物(人工光源)とに分類が可能である。
なお、現実空間情報41は、例えばクラウドネットワーク上の不図示のサーバに記憶されていてもよい。
現実空間情報取得部31は、現実空間から取得された複数の情報を仮想空間上で整合的に統合し、3次元モデルを生成又は更新する。ここでの3次元モデルは、現実空間仮想化情報42としてRAM23に記憶される。現実空間仮想化情報42には、光源情報推定部32で推定された光源の情報も含まれる。
現実空間を仮想化した空間に仮想物体11を配置したものが複合現実空間である。
例えばカメラ24L及び24Rで撮像された画像に光源が被写体として含まれる場合、光源情報推定部32は、撮像された画像から光源を抽出し、抽出された光源の位置、種類、光の色、光源の光度(カンデラ)又は光束(ルーメン)などの情報を取得する。取得された情報は、前述したように現実空間情報41の一部として記録される。
ただし、照明器具は点灯している場合だけでなく、消灯している場合もある。また、光の色を調整できる場合もあれば、明るさを調整できる場合もある。
また、卓上スタンド、懐中電灯その他のように、位置の移動が可能な照明器具もある。また、太陽や月等の自然物は、時間の経過に伴って移動する。
ここで、光源の種類には、例えば点光源、線光源、スポット光源、平行光源、面光源等が含まれる。
光が全方向に広がる点光源には、例えば白熱電球がある。発光部が線形状の線光源には、例えば蛍光灯がある。1点から指定の向きに円錐状の光が出力されるスポット光源には、例えばLED(Light Emitting Diode)ライトがある。平行光を一方向に出力する平行光源には、例えば高い指向性を有する照明器具や太陽がある。発光部が面形状の面光源には、例えば液晶ディスプレイや投影機(プロジェクタ)がある。
図4は、現実の物体を撮像した画像から現実空間に存在する光源(以下「実光源」ともいう)の情報を推定する手法の一例を説明するフローチャートである。
図4に示す処理動作は、CPU21(図2参照)によるプログラムの実行を通じて実現される。なお、図中では、ステップを記号のSで表している。
図5は、実光源の数と位置を推定する手法を説明する図である。(A)は暗部60、61、62を伴う現実物体12の画像を示し、(B)は暗部を強調した画像から抽出される輪郭の情報を示し、(C)は実光源の数の推定の過程を示し、(D)は光源位置を特定する過程を示す。
次に、CPU21は、カメラ24L及び24Rによって撮像されている画像の中から現実物体12の周囲に暗部が出現する部分を取得する(ステップ1)。この際、CPU21は、現実物体12の3次元的な形状も取得する。
図5(A)に示す画像50には、現実物体12(ここでは筆記具)の周囲に、現実物体12の形状に類似する棒状の暗部60、61、62が現れている。
図5(B)に示す画像51は、画像50の暗部を強調した後の画像である。経験的に知られているように、光の回り込みの影響で、現実物体12の周囲には濃い影とその周囲の薄い影が生じる。図5(B)では、濃度が濃い暗部の輪郭71と濃度が薄い暗部の輪郭72を抽出する。
図5(C)に示す画像52は、現実物体12の輪郭121と、その影である暗部の輪郭71、72の位置関係を表している。
CPU21は、現実物体12の輪郭12Aと類似する形状を有する輪郭71、72の組を抽出し、抽出された数を実光源の数として推定する。図5(C)の場合は、輪郭12Aと類似する輪郭71と輪郭71を取り囲む輪郭72の組70A、70B、70Cがある。従って、CPU21は、実光源の数を3つと推定する。
図5(D)に示すように、CPU21は、輪郭の組70Aと現実物体12との位置関係から光源1の位置を推定し、輪郭の組70Bと現実物体12との位置関係から光源2の位置を推定し、輪郭の組70Cと現実物体12との位置関係から光源3の位置を推定する。
推定には光線追跡法(レイトレーシング)法を使用する。
なお、本実施の形態における光源の位置の推定は、描画される仮想物体11の現実感を高める効果を加えられればよいので、厳密な位置の推定は不要である。
勿論、推定される位置の精度が高いほど、仮想物体11とその周囲に存在する現実物体12の見え方を、仮想物体11が実在する場合に近づけることが できる。
また、CPU21は、濃度が濃い暗部の輪郭71と濃度が薄い暗部の輪郭72の関係から実光源の種類を推定する(ステップ7)。例えば輪郭71と輪郭72が一致し、輪郭71と輪郭72の幅が広がりを持たない場合、CPU21は、平行光源であると推定する。
なお、実光源の位置と現実物体12との距離にしては輪郭71の広がりが狭く、輪郭71と輪郭72の幅も狭い場合、CPU21は、スポット光源であると推定する。
光源情報推定部32によって推定された実光源の情報は、光源情報として現実空間情報41に保存される。
光源光効果推定部33は、推定された実光源が仮想物体11に与える効果と、仮想物体11の背後に位置する現実物体12に与える効果を推定する。ここでの光源光効果推定部33は、実光源からの光が仮想物体11に与える効果を推定する推定手段の一例である。
光源光効果推定部33は、各実光源が仮想物体11に与える効果と、仮想物体11の背後に位置する現実物体12に与える効果を推定する。
ここで、光源光効果推定部33は、端末1(図1参照)を装着しているユーザの眼球5の位置を基準として、仮想物体11や実光源に対して仮想物体11の背後に位置する現実物体12に対する効果を推定する。
なお、ユーザの眼球5の位置は、実測されるのではなく、端末1との関係で与えられる。
(1)実光源と対向する面のうち光源光で照射されている部分(明部)の輝度を高める効果
例えば特定の実光源の位置、仮想物体の形状と位置に基づいて輝度が計算される。ここでの計算は、仮想化された空間内に、計算の対象としている実光源のみが存在するとの仮定の下で実行される。他の効果の説明についても同様である。
なお、光源情報と、仮想物体11の形状と、実光源と仮想物体11との距離との関係に基づいて仮想物体11の表面に明るさの濃淡(分布)を表現してもよい。また、仮想物体11の透過性や反射性を表現してもよい。この 効果によって、仮想物体11が実在するかのように仮想物体11の見え方を表現することができる。その結果、仮想物体11が現実空間に存在する光源からの光で実際に照らされているのに近い体験を可能にできる。後述する他の効果についても同様である。
例えば推定された実光源の位置、他の現実物体12の形状と位置、仮想物体11の形状と位置の関係から影の形状や描画される位置が計算される。
(3)実光源と対向する面に光源光を遮る他の現実物体12の反射像(他の現実物体12のうち仮想物体11と対面する側の面の像)や透過像が形成される効果
例えば仮想物体11の反射特性、他の現実物体12の透過特性等に基づいて反射像や透過像が計算される。
(4)実光源と対向しない面に陰(暗部)が形成される効果
例えば推定された光源の位置、仮想物体11の形状と位置から陰(暗部)になる部位が計算される。
(5)実光源が投影機である場合に、投影機が投影する画像(投影像)が形成される効果
なお、現実空間に存在する投影機が投影している画像の内容は、カメラ24L及び24R(図2参照)を通じて撮像され、投影機の位置と仮想物体11との位置との関係から仮想物体11に投影される
(1)仮想物体11が透過性を有しない場合に、仮想物体11の影が形成される効果
この効果は、実光源を基準として仮想物体11の背後に現れる。なお、影は、現実物体12だけでなく、他の仮想物体11にも形成される。この効果によって、光路上に仮想物体11が実在するかのように現実物体12又は他の仮想の物体11の見え方を表現できる。その結果、現実空間に存在する光源の光路上に仮想物体11が実在するのに近い体験を可能にできる。後述する他の効果についても同様である。
(2)仮想物体11が透過性を有する場合に、仮想物体11の透過像が形成される効果
この効果も、実光源を基準として仮想物体11の背後に現れる。なお、透過像には、仮想物体11の透過率、屈折率、色調、模様等が反映される。また、透過像には、光源の種類や色等の情報が考慮される。透過像は、現実物体12だけでなく、他の仮想物体11にも形成される。
(3)仮想物体11が透過性を有し、実光源が投影機である場合に、投影機が投影する画像(投影像)の透過像が形成される効果
この効果も、実光源を基準として仮想物体11の背後に現れる。投影機が投影する画像(透過像)は、現実物体12だけでなく、他の仮想物体11にも形成される。
(4)仮想物体11が反射性を有する場合に、仮想物体11の周囲に存在する他の物体(仮想物体11か現実物体12かを問わない)を反射光で照らす効果
この効果は、実光源によって照明されている仮想物体11の面と対向している物体に現れる。反射光には、仮想物体11の反射率、屈折率、色調、模様等が反映される。なお、実光源が投影機である場合には、反射像には、投影機が投影する画像(投影像)も影響する。
(5)仮想物体11が鏡面である場合には、仮想物体11の表面に、仮想物体11の周囲に存在する他の物体(仮想物体11か現実物体12かを問わない)の反射像が形成される効果
この効果は、仮想物体11の鏡面部分に現れる。他の物体の反射像には、仮想物体11の反射率、屈折率、色調、模様等が反映される。なお、実光源が投影機である場合には、反射像には、投影機が投影する画像(投影像)も影響する。
なお、RAM23には、仮想物体11が配置される位置(3次元モデル内での位置)、形状、色調、材質などの情報が、仮想物体情報43として記憶されている。仮想物体情報43には、透過率、反射率、屈折率その他の光学特性の情報が含まれる。
仮想物体描画部4は、現実空間仮想化情報42、仮想物体情報43、光源光効果情報44を用い、表示部3L(図2参照)用の仮想物体11の画像と表示部3R(図2参照)用の仮想物体11の画像を描画する。
本実施の形態における仮想物体描画部4は、描画手段の一例である。
光源光の効果に対応するフィルタを作用させた後の仮想物体11の描画により、仮想物体情報43には変更を加えずに済み、演算量も少なく済む。演算量が少なく済むので、現実物体12の背後に隠れる領域の変化が速い場合でも、現実物体12の透過情報を仮想物体11の描画に実時間で反映させることができる。
このように、仮想物体描画部4は、実光源からの光の効果を仮想物体11と一緒に描画するので、従前の技術に比して、複合現実の現実感を高めることができる。
また、仮想物体描画部4は、実光源からの光の光路上に位置する仮想物体11がその背後に位置する現実物体12に与える効果を現実物体12の位置に描画するので、従前の技術に比して、複合現実の現実感を高めることができる。
図6は、メガネ型の端末1で仮想物体11を描画する場合に実行される処理動作の一例を説明するフローチャートである。
図6に示す処理動作は、CPU21によるプログラムの実行を通じて実現される。なお、図中では、ステップを記号のSで表している。
次に、CPU21は、例えばカメラ24L及び24Rで撮像中の現実空間に関する光源情報を取得する(ステップ12)。例えば既知の実光源については、現在の光の色や明るさが取得される。また、未知の実光源については、前述した光源情報推定部32(図3参照)により光源情報が推定される。
CPU21は、選択された仮想物体11を処理の対象として、現実空間に存在する実光源の光が仮想物体11の描画によって生じる効果を推定する(ステップ14)。この処理は、光源光効果推定部33としてのCPU21が実行する。
ここで、CPU21は、端末1を装着しているユーザの眼球5(図1参照)の位置を基準として、処理対象とする仮想物体11のうちユーザから見える面、仮想物体11に影響を与える現実物体12、仮想物体11が影響する現実物体12を推定し、各効果を推定する。
なお、仮想物体11の背後に位置する現実物体12が複数ある場合、CPU21は、個々の現実物体12に対する効果を表現するフィルタを生成する。
次に、CPU21は、全ての仮想物体11が選択済みであるか否かを判定する(ステップ16)。
ステップ16で否定結果が得られた場合、CPU21は、ステップ13に戻る。ステップ13では未選択の仮想物体11の中から1つが処理の対象として選択される。
一方、ステップ16で肯定結果が得られた場合、CPU21は、全ての仮想物体11と対応する全ての効果を描画する(ステップ17)。
以下では、具体例を用いて、本実施の形態における仮想物体11の描画例について説明する。
<例1>
図7は、実光源13と現実物体12の間に仮想物体11Aを描画する場合における従前の技術と本実施の形態による見え方の違いの一例を説明する図である。(A)は従前の技術による描画例であり、(B)は本実施の形態による描画例である。
図7では、従前の技術による描画例を比較例と記している。
図7の場合、円筒形状の仮想物体11Aは、透過性を有していないもの(すなわち透過性なし)とする。
図7において、端末1を装着するユーザの眼球5(図1参照)は、紙面から手前方向に延びる法線上に位置している。
図7では、仮想物体11Aが円筒形状であるが、仮想物体11Aが平板状の場合にも平面内の位置に応じて輝度差が発生する。点光源である実光源13から出力された光は四方に広がるように進むため、平板状の仮想物体11の位置に応じて光路長の違いが生じるためである。このため、輝度値が高い領域を中心として同心円状に輝度が低下する効果を描画することで現実感を高めることができる。
また、図7では描画していないが、仮想物体11Aと実光源13との間に存在する不図示の現実物体12の影を仮想物体11Aの表面に描画してもよい。
また、図7では描画していないが、仮想物体11Aの表面が鏡面である場合、実光源13との間に存在する不図示の仮想物体11や現実物体12の反射像を仮想物体11Aの表面に描画してもよい。
因みに、反射像の描画に際しては、仮想物体11Aの表面における反射光の影響を付加することが望ましい。仮想物体11Aと対面する不図示の現実物体12の背面は、実光源13とは反対側の面であるので実光源13からの光源光による陰が生じる部位(11A2参照)であるが、仮想物体11Aの表面を含む周辺から反射光により陰が少し薄くなる。従って、(B)における部位11A1も厳密には周囲からの反射光(又は環境光)の影響により陰の濃度が薄くなる。
更に、実光源13との間に存在する不図示の仮想物体11や現実物体12による影や透過像を描画してもよい。
このように、仮想物体11Aの表面を照らす実光源13の光による効果を描画することにより、仮想物体11Aが実光源13からの光で実際に照らされているのに近い 体験が可能になる。
また、影12Aを描画する位置の現実物体12の図柄や構造を画像から抽出して影12Aを生成することにより、影12Aを描画する部分が周囲(影12Aが存在しない部分)に対して違和感を与えないようにできる。
このように、仮想物体11Aが実光源13の光を妨げることで生じる効果を現実物体12の位置に描画することにより、実光源13の光路上に仮想物体11Aが実在するのに近い体験 が可能になる。
なお、図7の場合には実光源13が1つの場合を表しているが、複数の実光源13が存在する場合にも、個々の実光源13に対応する効果を描画することにより、現実感を高めることができる。
図8は、実光源13と現実物体12の間に仮想物体11Bを描画する場合における従前の技術と本実施の形態による見え方の違いの他の例を説明する図である。(A)は従前の技術による描画例であり、(B)は本実施の形態による描画例である。
図8でも、従前の技術による描画例を比較例と記している。
図8の場合、平板形状の仮想物体11Bは、透過性を有するもの(すなわち透過性あり)とする。
図8の場合も、端末1を装着するユーザの眼球5(図1参照)は、紙面から手前方向に延びる法線上に位置している。
図8の場合も、従前の技術では、例1(図7参照)の場合と同じく、仮想物体情報43(図3参照)の通りに仮想物体11Bが描画される。なお、本例の仮想物体11Bには全面に網目状の模様が形成されている。
例1との違いは、実光源13に対して仮想物体11Bの背後に位置する現実物体12の表面に仮想物体11Bの透過像12Bが描画されている点である。
本例の場合、仮想物体11Bには網目状の模様が形成されているので、透過像12Bにも網目状の模様が表現されている。なお、図8では実光源13からの光が広がる性質を有するため、現実物体12の表面には仮想物体11Bの模様を拡大した透過像12Bが描画されている。
なお、仮想物体11Bに光を透過する部分と光を透過しない部分が混在する場合には、例1(図7参照)による影12Aと本例による透過像12Bの混在した画像が、現実物体12の表面に描画される。
このように、仮想物体11Bが実光源13の光を妨げることで生じる効果を現実物体12の位置に描画することにより、実光源13の光路上に仮想物体11Bが実在するのに近い体験 が可能になる。
図9は、実空間にある光源が実投影機13Aであり、実投影機13Aと現実物体12の間に仮想物体11Cを描画する場合における従前の技術と本実施の形態による見え方の違いの一例を説明する図である。(A)は従前の技術による描画例であり、(B)は本実施の形態による描画例である。
図9でも、従前の技術による描画例を比較例と記している。
図9における仮想物体11Cも平板形状とする。ただし、仮想物体11Cは、透過性を有しないもの(すなわち透過性なし)とする。
図9の場合も、端末1を装着するユーザの眼球5(図1参照)は、紙面から手前方向に延びる法線上に位置している。
また、従前の技術では、実投影機13Aから投影された画像を遮る位置の仮想物体11Cの表面に、実投影機13Aが投影する画像が描画されていない。
これでは、描画された仮想物体11Cの存在が違和感を与えてしまう。
しかも、実投影機13Aから投影された画像の一部(帯状の物体の画像のうち仮想物体11Cと重なる部分)が、仮想物体11Cの表面に描画されることになる。
なお、図9では実投影機13Aからの光が広がる性質を有するため、仮想物体11Cの表面に描画される画像は、現実物体12の表面に描画される画像の一部よりも縮小された形状で描画される。その際、仮想物体11Cに描画される画像にボケが生じることもあれば、ボケが無い明瞭な画像が描画されることもある。これらは、実投影機13Aと仮想物体11Cとの光学距離に応じて決まる。
このように、仮想物体11Cの表面を照らす実投影機13Aの光による効果を描画することにより、仮想物体11Cが実投影機13Aからの光で実際に照らされているのに近い 体験が可能になる。
このように、仮想物体11Cが実投影機13Aの光を妨げることで生じる効果を現実物体12の位置に描画することにより、実投影機13Aの光路上に仮想物体11Cが実在するのに近い体験 が可能になる。
図10は、実空間にある光源が実投影機13Aであり、実投影機13Aと現実物体12の間に仮想物体11Cを描画する場合における従前の技術と本実施の形態による見え方の違いの他の例を説明する図である。(A)は従前の技術による描画例であり、(B)は本実施の形態による描画例である。
図10でも、従前の技術による描画例を比較例と記している。
図10における仮想物体11Cは、例2(図8参照)と同じである。すなわち、仮想物体11Cは、平板形状を有し、更に透過性を有している。
図10の場合も、端末1を装着するユーザの眼球5(図1参照)は、紙面から手前方向に延びる法線上に位置している。
一方で、本実施の形態の場合、例3の場合と同様に、仮想物体11Cの表面には実投影機13Aから投影された画像の一部(帯状の物体の画像のうち仮想物体11Cと重なる部分)が描画される。
なお、本例の仮想物体11Cでは、例2(図8参照)の場合と同じく、全面に網目状の模様が形成されている。このため、仮想物体11Cの表面には、網目状の模様と投影される画像とが混在した画像が描画されている。従って、仮想物体11Cが実投影機13Aからの光で実際に照らされているのに近い体験 が可能になる。
図10の場合には、仮想物体11Cを透過する際の光の屈折の影響により、透過像12Bを構成する帯状の物体の画像と、実投影機13Aから直接投影された帯状の物体の画像との間にズレが生じている。
また、仮想物体11Cに形成されている網目状の模様も、透過像12Bに表現されている。
このため、透過像12Bは、仮想物体11Cを透過した画像であることの実感が高くなる。
このように、仮想物体11Cが実投影機13Aの光を妨げることで生じる効果を現実物体12の位置に描画することにより、実投影機13Aの光路上に仮想物体11Cが実在するのに近い体験が可能になる。
本実施の形態では、複合現実の体験に頭部に装着された表示装置を使用する場合について説明する。
図11は、複合現実の体験に、実時間で撮像される外界の画像に仮想物体を合成した画像を表示する表示装置100を装着したユーザが、複合現実を体感する原理を説明する図である。
表示装置100は、カメラ24L及び24Rによって撮像された外界の画像と、仮想物体描画部4が描画した仮想物体11の画像とを画像合成部101で合成した画像を、ユーザの眼球5の前方に配置された表示部3L及び3Rに表示する。
ここでの表示装置100は、情報処理装置の一例であるとともに情報処理システムの一例でもある。
なお、表示装置100のハードウェア構成は、メガネ型の端末1(図2参照)と同様である。このため、表示装置100のハードウェア構成の説明は省略する。
図12には、図3との対応部分に対応する符号を付して示している。
表示装置100の基本的な機能構成は、メガネ型の端末1(図2参照)と同様である。表示装置100に特有の機能構成は、画像合成部101である。
画像合成部101は、仮想物体描画部4が描画した画像と、カメラ24L及び24Rで撮像されている外界の画像とが整合するように2つの画像を合成する機能を有している。
例えば画像合成部101は、現実空間仮想化情報42として記憶されている3次元モデルとカメラ24L及び24Rで撮像されている外界の画像とを照合して、仮想物体11の画像を合成する領域を決定する。
このように、本実施の形態が複合現実を知覚させる方式は実施の形態1と異なるが、ユーザによって知覚される複合現実の現実感が従前の技術に比して高くなる点は、実施の形態1と同じである。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上述の実施の形態に記載の範囲に限定されない。前述した実施の形態に、種々の変更又は改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
例えば前述の実施の形態では、左右両目用の表示部3L及び3Rを用いているが、表示部は1つでも構わない。例えばメガネ型の端末1(図1参照)の場合には、左右どちらか一方の前方に表示部を1つ配置してもよい。また例えば表示装置100(図11参照)の場合には、両目の前に表示部を1つ配置してもよい。
また、前述の実施の形態では、仮想物体描画部4の機能を汎用的な演算装置であるCPU21を用いて実現しているが、実時間での画像処理に特化した演算装置であるGPU(Graphics Processing Unit)を用いて実現してもよい。
Claims (6)
- ユーザの視界前方を少なくとも含む周囲を撮像するカメラと、
前記カメラによって撮像された現実空間の画像から現実空間に存在する光源の情報を取得する取得手段と、
取得された前記光源の情報に基づいて、当該光源からの光が仮想の物体に与える効果を推定する推定手段と、
推定された効果を加えて前記仮想の物体を描画する描画手段と
を有し、
前記取得手段は、前記画像に被写体として含まれる現実の物体の輪郭と、当該現実の物体の周囲に出現する濃度が濃い暗部の輪郭と濃度が薄い暗部の輪郭とを抽出し、抽出された輪郭の組の位置と対応する当該現実の物体の位置との関係から、現実空間に存在する前記光源の位置と数を取得する、
情報処理システム。 - 前記取得手段は、前記画像に含まれる現実の物体の像の色調と、当該現実の物体の既知の色調との違いに基づいて前記光源の光の色を推定して前記画像から取得される前記光源の情報の一部として光源の光の色を出力し、
前記推定手段は、取得された前記光源の情報に基づいて、当該光源からの光が仮想の物体の色調に与える影響を含む効果を推定する、
請求項1に記載の情報処理システム。 - 現実空間を直接視認するユーザの網膜に仮想の画像を投影する網膜投射型デバイスを更に有し、
前記描画手段は、推定された効果を加えた前記仮想の物体を、前記網膜投射型デバイスを通じて描画する、
請求項1に記載の情報処理システム。 - 前記光源は、現実空間に存在する投影機であり、
前記推定手段は、前記取得手段で取得された前記投影機の情報に基づいて、当該投影機から投影される画像が前記仮想の物体及び周囲に存在する現実の物体に与える効果を推定する、
請求項1に記載の情報処理システム。 - 前記推定手段は、現実の物体に照射された前記光源からの光が、前記仮想の物体に与える効果を推定する、請求項1~4のいずれか1項に記載の情報処理システム。
- コンピュータに、
ユーザの視界前方を少なくとも含む周囲を撮像するカメラによって現実空間を撮像した画像から現実空間に存在する光源の情報を取得する機能と、
取得された前記光源の情報に基づいて、当該光源からの光が仮想の物体に与える効果を推定する機能と、
推定された効果を加えて前記仮想の物体を描画する機能と、
を実現させるためのプログラムであり、
前記光源の情報を取得する機能は、前記画像に被写体として含まれる現実の物体の輪郭と、当該現実の物体の周囲に出現する濃度が濃い暗部の輪郭と濃度が薄い暗部の輪郭とを抽出し、抽出された輪郭の組の位置と対応する当該現実の物体の位置との関係から、現実空間に存在する当該光源の位置と数を取得する、
プログラム。
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