JP7182250B2 - 多チャンネルファイバグレーティング、及び多チャンネルファイバグレーティングの製造方法 - Google Patents

多チャンネルファイバグレーティング、及び多チャンネルファイバグレーティングの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、多チャンネルファイバグレーティング、多チャンネルファイバグレーティング製造装置及び多チャンネルファイバグレーティングの製造方法に関する。
特許文献1、2及び非特許文献1~6は、ファイバグレーティングに関する技術を開示する。
らせん状長周期ファイバグレーティング(helical long period fiber grating :HLPG)は、周期的なスクリュータイプ(らせん型)の屈折率変調を持つ回折格子である。らせん状長周期ファイバグレーティングは、らせん特性に基づく光の偏光及び光の軌道角運動量(orbital angular momentum :OAM)モードを制御可能である。従って、らせん状長周期ファイバグレーティングは、偏光器、偏光変換器、全ファイバ帯域阻止フィルタ、マイクロマニピュレータ、OAMモード変換器、捩じりセンサなどに利用することができる。
らせん状長周期ファイバグレーティングの製造方法について、これまでにいくつかの報告がある。例えば、非特許文献1は、ねじり法を報告する。ねじり法は、特別な非対称断面を有するファイバを加熱によって形成する。しかし、この方法では、極めて高い温度を有する加熱器において、回折格子のピッチを精密に制御することが困難である。
また、非特許文献2及び非特許文献3は、炭酸ガスレーザを用いる方法を報告する。この方法は、集光した炭酸ガスレーザをファイバに照射して、ファイバの表面にらせん状の形状を形成する。この方法では、集光レンズを通した炭酸ガスレーザを使用する。その結果、ファイバ表面には損傷が発生する。従って、グレーティングの再現性と高い歩留まり率とを得ることが困難である。
米国特許第6707967号明細書 特開2000-206337号公報
ブイ・アイ・コップ、ブイ・エム・チュリコフ、ジェイ・シンガー、エヌ・チャオ、ディー・ニュグロシュル及びエー・ゼット・ジェナック(V. I. Kopp, V. M. Churikov, J. Singer, N. Chao, D. Neugroschl, andA. Z. Genack)、「キラリティファイバグレーティング」(Chiral fiber gratings)、サイエンス(Science)、平成16年(2004)、305、p.74-p.75。 エス・オー、ケー・リー、ユー・ペック及びワイ・チャン(S. Oh, K. Lee, U. Paek, and Y. Chung)、「炭酸ガスレーザを用いたらせん長周期ファイバグレーティングの製造」(Fabricationof helical long-period fiber gratings by use of a CO2 laser)、オプティクス・レターズ(Opt.Lett)、平成16年(2004)、29、p.1464-p.1466。 ブイ・イワノフ(V. Ivanov)、「捩じりによる長周期ファイバグレーティングを有するシングルモードファイバの製造」(Fabrication of long-period fiber gratings by twisting a standardsingle-mode fiber)、オプティクス・レターズ(Opt. Lett)、平成17年(2005)、30、p.3290-p.3292。 ピー・ワン及びエイチ・リー(P. Wang and H. Li)、「薄型ファイバに形成されたヘリカル長周期グレーティングとその屈折率センサへの応用」(Helical long-period grating formed in a thinned fiber and itsapplication to refractometric sensor)、アプライド・オプティクス(Applied Optics)、平成28年(2016)、55、p.1430-p.1434。 エイチ・リー、ワイ・シェング、ワイ・リー、及びジェイ・イー・ローゼンバーグ(H. Li, Y. Sheng, Y. Li, and J. E. Rothenberg)、「高チャネル数波長分散補償用の位相をサンプリングしたファイバブラッググレーティング」(Phased-only sampled fiber Bragg gratings for high-channel-countchromatic dispersion compensation)、アイトリプルイー・ジェイ・ライトウエーブテクノロジ(IEEE J. Lightwave Technol)、平成15年(2003)、21、p.2074-p.2083。 エイチ・リー、エム・リー、ワイ・シェング及びジェイ・イー・ローゼンバーグ(H. Li, M. Li, Y. Sheng, and J. E. Rothenberg)、「高チャネル数のファイバブラッググレーティングの設計と製造の進歩」(Advances in the design and fabrication of high channel-count fiberBragg gratings)、アイトリプルイー・ジェイ・ライトウエーブテクノロジ(IEEE J. Lightwave Technol)、平成19年(2007)、25、p.2739-p.2749。
これまでに提唱及び実証されているらせん状長周期ファイバグレーティングは、特定のクラッドモードに対して一つの損失ノッチを有する単一チャンネルである。そこで、当該技術分野では、複数の等間隔かつ等強度吸収波長帯を有する、いわゆる多チャンネルのらせん状長周期ファイバグレーティングを備えた光ファイバデバイスが望まれている。
そこで、本発明では、多チャンネル化が可能な多チャンネルファイバグレーティング、多チャンネルファイバグレーティング製造装置及び多チャンネルファイバグレーティングの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一形態に係る多チャンネルファイバグレーティングは、互いに異なる2以上のチャンネルを有するグレーティング部を含むコアと、コアの周囲に形成されたクラッドと、を備え、グレーティング部では、コアの光軸を回転中心としてコアが捩じられている。
ファイバグレーティングは、コアの光軸を回転中心としてコアが捩じられることにより形成されている。従って、ファイバグレーティングにおいて屈折率をらせん状に分布させることが可能になるので、多チャンネル化を実現する複雑な屈折率の分布を精度よく形成することが可能である。従って、ファイバグレーティングの多チャンネル化が達成できる。
上記のグレーティング部は、光軸の方向に沿ってコアの屈折率がらせん状に変化する部分を含んでもよい。また、上記のグレーティング部では、光軸の方向に沿ってらせんのピッチが変化してもよいし、光軸の方向に沿ってらせんのピッチが一定であってもよい。この構成によれば、多チャンネル化を実現する複雑な屈折率の分布を精度よく形成することができる。
上記のグレーティング部は、光軸の方向に沿って互いに異なる屈折率を有する領域が交互に設けられた部分をさらに含んでもよい。この構成によっても、多チャンネルを実現する複雑な屈折率の分布を精度よく形成することができる。
本発明の別の形態に係るの多チャンネルファイバグレーティング製造装置は、筒状を呈し、コアとコアの周囲に形成されたクラッドとを有する光ファイバが挿通される加熱部と、光ファイバの光軸方向において、光ファイバに対する加熱部の相対的な位置を制御する位置制御部と、光ファイバに対して、光軸方向のまわりにおける所定方向に捩じり力を付与する捩じり力付与部と、位置制御部及び捩じり力付与部を制御する制御部と、を備え、制御部は、互いに異なる2以上のチャンネルを有するファイバグレーティングのための、光軸方向に沿ったコアにおける位置と位置における屈折率の周期と、の関係を示す情報を保持する情報保持部と、情報保持部に保持された情報に基づいて、捩じり力付与部及び位置制御部を制御するための信号を出力する信号出力部と、を有する。この製造装置によれば、上記の多チャンネルファイバグレーティングを確実かつ容易に製造することができる。
本発明のさらに別の形態に係る多チャンネルファイバグレーティング製造方法は、位相サンプリング関数を用いて、コアとコアの周囲に形成されたクラッドとを有する光ファイバの光軸方向に沿った、コアにおける位置と位置における屈折率の周期を設定する第1ステップと、光軸の方向に沿ってコアの屈折率がらせん状に変化する部分を含むグレーティング部を光ファイバに形成する第2ステップと、を有し、第2ステップでは、第1ステップで得た光軸方向に沿ったコアの位置と位置における屈折率の周期に応じて、光ファイバを加熱しつつ、加熱される部分を光ファイバの光軸方向へ移動させながら、光ファイバを光軸のまわりに捩じる。この製造方法によれば、多チャンネル化されたファイバグレーティングを容易に得ることができる。
上記の製造方法において、第2ステップでは、光軸方向に沿ったコアの位置に対応する屈折率の周期を変化させるように、光ファイバを光軸方向へ移動させながら、光ファイバを光軸のまわりに捩じってもよい。この製造方法によっても、多チャンネル化されたファイバグレーティングを容易に得ることができる。
上記の製造方法において、グレーティング部に、光軸の方向に沿って互いに異なる屈折率を有する領域が交互に設けられた部分を形成する第3ステップをさらに含み、第2ステップは、グレーティング部に光軸の方向に沿ってらせんのピッチが第1の値である部分を形成する第1ピッチ形成ステップを含んでもよい。この製造方法によっても、多チャンネル化されたファイバグレーティングを容易に得ることができる。
上記の製造方法において、第2ステップは、グレーティング部に光軸の方向に沿ってらせんのピッチが第1の値とは異なる第2の値である部分を形成する第2ピッチ形成ステップをさらに含んでもよい。この製造方法によっても、多チャンネル化されたファイバグレーティングを容易に得ることができる。
本発明によれば、多チャンネル化が可能な多チャンネルファイバグレーティング、多チャンネルファイバグレーティング製造装置及び多チャンネルファイバグレーティングの製造方法が提供される。
図1は、一形態に係るらせん状長周期ファイバグレーティングを有する光ファイバを模式的に示す図である。 図2は、一形態に係る多チャンネルファイバグレーティング製造装置を模式的に示す図である。 図3は、多チャンネルファイバグレーティング製造装置における主要部を拡大して示す図である。 図4は、3チャンネルサンプリング関数における位相分布を示す。 図5は、3チャンネルサンプリング関数のフーリエスペクトルを示す。 図6は、3チャンネルらせん状長周期ファイバグレーティングの局所的な周期を計算した結果である。 図7は、3チャンネルらせん状長周期ファイバグレーティングの透過スペクトルを示す。 図8は、9チャンネルサンプリング関数における位相分布を示す。 図9は、9チャンネルサンプリング関数のフーリエスペクトルを示す。 図10は、9チャンネルらせん状長周期ファイバグレーティングの局所的な周期を計算した結果である。 図11は、9チャンネルらせん状長周期ファイバグレーティングの透過スペクトルの計算結果である。 図12は、第2実施形態の多チャンネルファイバグレーティングを説明するための図である。 図13は、第2実施形態のファイバグレーティングの製造方法を示すフロー図である。 図14は、第2実施形態の3チャンネルファイバグレーティングを説明するための図である。 図15は、第2実施形態の3チャンネルらせん状長周期ファイバグレーティングの測定結果(透過スペクトル)を示す。 図16は、第2実施形態の9チャンネルらせん状長周期ファイバグレーティングの測定結果(透過スペクトル)を示す。
<第1実施形態>
以下、図面とともに多チャンネルファイバグレーティング、多チャンネルファイバグレーティングの設計方法、多チャンネルファイバグレーティングの製造装置及び多チャンネルファイバグレーティングの製造方法について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。具体的には、新しいマルチチャンネルのらせん状長周期ファイバグレーティングを有する多チャンネルファイバグレーティングとその設計方法、製造装置及び製造方法について説明する。
図1に示すように、多チャンネルファイバグレーティング(以下「ファイバグレーティング1」と呼ぶ)は、コア2とクラッド3とを有する。そして、コア2は、互いに異なる2以上のチャンネルを有するグレーティング部4を含む。グレーティング部4には、らせん状長周期ファイバグレーティングが設けられている。グレーティング部4は、コア2の光軸を回転中心としてコア2が捩じられることにより形成されている。換言すると、グレーティング部4は、コア2の光軸方向に沿ったコア2の位置と当該位置における周期(ねじりのピッチ)とが所定の態様に形成されている。らせん状長周期ファイバグレーティングは、ファイバグレーティング1の光軸に沿って周期的なスクリュータイプの屈折率変調を有するファイバデバイスである。このようならせん状長周期ファイバグレーティングを有するファイバグレーティング1は、大容量の光ファイバ通信への利用が期待されている。利用の形態として、例えば、波長分割多重方式(Wavelength Division Multiplexing:WDM)及び軌道角運動量を利用した多重融合システムなどが挙げられる。
ファイバグレーティング1は、多チャンネルのらせん状長周期ファイバグレーティングであるので、等間隔であり且つ均一とみなせるスペクトルの損失ピークを生じさせる。ファイバグレーティング1は、一様な周期を有する単一チャンネルの長周期ファイバグレーティングに対して離散化した異なる位相シフトを挿入しているものとみてよい。多チャンネルのらせん状長周期ファイバグレーティングであるファイバグレーティング1は、位相サンプリング関数を用いて設計されているので、必要な最大屈折率変調を最小化できる。さらに、各サンプリング周期において振幅のアポディゼイションを加える必要がない。その上、作製は容易になる。
ファイバグレーティング1を設計する方法は、多チャンネルのらせん状長周期ファイバグレーティングのためのものである。この設計方法では、位相サンプリング関数を利用する。位相サンプリング関数は、位相変調だけを有するものである。その関数を利用することによって、ファイバグレーティングの周期は均一ではなく、グレーティングごとに異なる周期を持つようになる。
まず、サンプリング関数について最適化を行う。位相をサンプリングした長周期ファイバグレーティングを有するファイバグレーティング1の屈折率変調は、式(1)により示される。
Figure 0007182250000001

式(1)において、Reは、実部について扱うことを意味する。Δn(z)は、最大屈折率変調である。zは、ファイバグレーティング1に沿った方向における位置である。Λは、シード長周期であるファイバグレーティング1のピッチである。S(z)は、連続的な位相サンプリング関数である。
そして、位相サンプリング関数(S(z))を式(2)に示す。式(2)のサンプリング関数における位相(φ(z))は、いくつかの調和項を含む。式(2)において、Pは、サンプリング関数の周期である。Sは、サンプリング関数(φ(z))における複素フーリエ係数である。φ(z)は、サンプリング関数(S(z))の位相であり、式(3)により示される。
Figure 0007182250000002

Figure 0007182250000003
式(2)において、調和項の数(J)は、高調波の次数であり、最小化されている。つまり、調和項の数(J)の最小値は、必要とするチャンネル数によって決定される。調和項の数(J)という値に対して、均一な振幅を持つチャンネル数(2J+1)が得られる。
式(2)における各項(α)は、それらのフーリエ係数(S)が想定するチャンネル数(例えば、3チャンネル又は9チャンネル)において均一になるように最適化されている。換言すると、各項(α)は、必要とするチャンネル数に対して、フーリエ係数(S)が均一となるように最適化されている。各項(α)の最適化には、非線形の最適化アルゴリズムを用いてよい。
式(2)の最適化の目標は、チャンネルの間隔と各フーリエ係数(S)とが等しくなること、及び、帯域内の回折効率(η)が最大になることである。ここで、式(4)に示すコスト関数を定義する。式(4)において、係数(η)は、帯域内のチャンネル数(2M+1)に対する回折効率である。また、係数(S)は、サンプリング関数のフーリエ級数である。焼きなまし法を用いて、コスト関数(式(4))を最小にすることを目標とするサンプリング関数(式(2))を求める。
Figure 0007182250000004
多チャンネルのファイバグレーティング1は、単一チャンネルのシード長周期ファイバグレーティングを多チャンネル化したものであると言える。このような多チャンネルのファイバグレーティング1は、式(3)に示される位相(φ(z))を離散化したうえで、ファイバグレーティング1の各周期に挿入することにより得る。従って、ファイバグレーティング1のピッチを精密に制御する必要があるので、ファイバグレーティング1の製造は非常に難しくなる。
ここで、新しい位相サンプリング関数を提案する。式(1)~(3)によれば、屈折率変調(Δn(z))は、式(5)のように書き換えることができる。
Figure 0007182250000005
ファイバブラッググレーティング(FBG)に基づいた多チャンネルのフィルタは、コンパクトサイズ、低挿入損失、高信頼性など波長フィルタとしての特徴を有する。このような観点から、ファイバブラッググレーティング(FBG)に基づいた多チャンネルのフィルタについて、系統的な研究が行われている。
その結果、様々な多チャンネルファイバブラッググレーティングの生成法が提案されている。例えば、提案された生成法として、振幅のみをサンプリングしたファイバブラッググレーティングの生成法、位相シフトファイバブラッググレーティングの生成法、重ね合わせファイバブラッググレーティングの生成法、位相をサンプリングしたファイバブラッググレーティングの生成法などが挙げられる。
そのうち、発明者らは、位相をサンプリングする生成法に注目している。この生成法によれば、必要な屈折率変調を実用的な段階にまで減少させることが可能である。これまでの発明者らの提案は、単一チャンネルのファイバグレーティングに関するものであった。つまり、サンプリング法による多チャンネルの長周期ファイバグレーティングは過去に提案された例はない。そこで、発明者らは、位相をサンプリングしたらせん状長周期ファイバグレーティングについて鋭意検討を進め、本願において提案するに至った。つまり、位相をサンプリングしたらせん状長周期ファイバグレーティングを採用する光ファイバ、その設計方法及び製造装置の提案は、過去に例がない。
この設計方法によれば、位相サンプリング法を採用したので、必要な屈折率変調を最小化することができる。さらに、各サンプリング周期において、振幅のアポディゼイション処理を要しない。つまり、振幅の観点からすれば、実施形態に係るファイバグレーティング1が有するらせん状長周期ファイバグレーティングにおける屈折率変化の振幅成分は、単一のチャンネルを有するらせん状長周期ファイバグレーティングにおける屈折率変化の振幅成分と同等である。この設計方法は、炭酸ガスレーザの照射を採用するらせん状長周期ファイバグレーティングの形成に適しており、設計及び製造を共に容易にすることができる。
次に、図2を参照しつつ、上記の設計方法によって得た屈折率周期により示されるファイバグレーティング1を光ファイバ100に設けるための多チャンネルファイバグレーティング製造装置10について説明する。この多チャンネルファイバグレーティング製造装置10は、炭酸ガスレーザとサファイア結晶管を用いて、らせん状ファイバグレーティングを形成する点に特徴がある。
図2に示すように、多チャンネルファイバグレーティング製造装置10は、レーザ装置11と、ステージ12(位置制御部)と、ホルダ13と、錘14と、加熱部16と、捩じり力付与部17と、制御部18と、を有する。
レーザ装置11は、光ファイバ100を加熱するためのレーザ光を提供する。例えば、レーザ装置11は、炭酸ガスレーザ光源を有していてもよい。レーザ装置11は、所定の光学部材(例えば、ミラー15)を介して、レーザ光Lを加熱部16に提供する。
ステージ12は、光ファイバ100と加熱部16との相対的な位置を変更する。具体的には、ステージ12は、加熱部16の位置を不変とし、当該加熱部16に対して光ファイバ100を移動させる。ステージ12は、ベース12aと、ベース12aに対して基準線Aに沿って往復移動可能なテーブル12bと、を有する。
ホルダ13は、ステージ12のテーブル12bに固定されている。つまり、ステージ12のテーブル12bが移動すると、ホルダ13も移動する。ホルダ13は、直方体形状を呈すると共に、基準線Aと重複する軸線を有する貫通穴を有する。この貫通穴には、光ファイバ100が挿通される。つまり、ホルダ13は、基準線Aと直交する面内において、光ファイバ100の位置決めを行う。従って、ホルダ13は、基準線Aの方向において、光ファイバ100の移動を許す。換言すると、ホルダ13は、光ファイバ100を完全に固定するものではなく、テーブル12bの移動方向にのみ光ファイバ100の移動を許す。
ホルダ13と光ファイバ供給部(不図示)との間には、錘14が配置されている。具体的には、錘14は、ホルダ13と光ファイバ提供部との間に位置する光ファイバ100に吊り下げられている。錘14は、光ファイバ100に所定の張力を生じさせることにより、光ファイバ100の撓みを抑制する。なお、必要に応じて、光ファイバ100の一方の端部には、広帯域光源19を接続し、他方の端部には光スペクトルアナライザ21を接続してもよい。
加熱部16は、ステージ12のベース12aに固定されている。つまり、ステージ12のテーブル12bが移動しても、加熱部16は移動しない。加熱部16は、筒状の部材である。加熱部16の軸線は、多チャンネルファイバグレーティング製造装置10の基準線Aと重複する。
加熱部16は、光ファイバ100を加熱し、ねじり変形を生じさせる状態とする。光ファイバ100にファイバグレーティングを設けるとき、例えば、ZnSeレンズを用いて炭酸ガスレーザを絞り込み、ファイバに直接照射する方式が挙げられる。本実施形態の加熱部16は、これとは相違しており、サファイア結晶管を採用する。サファイア結晶管によれば、結晶管全体がレーザ光Lによって加熱される。従って、サファイア結晶管に挿通されている光ファイバ100を均一に加熱することができる。
捩じり力付与部17は、ステージ12のテーブル12bに固定されている。つまり、ステージ12のテーブル12bの移動に伴って、捩じり力付与部17も基準線Aの方向に沿って移動する。捩じり力付与部17は、光ファイバ100に捩じり力を提供する。捩じり力付与部17は、回転モータと、クランプと、を有する。回転モータは、捩じり力を発生させる。クランプは、光ファイバ100を把持すると共に、把持した状態で回転モータの回転に伴って回転する。
制御部18は、ステージ12及び捩じり力付与部17を制御する。制御部18は、例えば、パーソナルコンピュータを用いてもよい。制御部18は、情報保持部18aと、信号出力部18bと、を有する。情報保持部18aは、上述した光ファイバの設計方法において得た屈折率周期に関する情報を保持する。つまり、情報保持部18aは、互いに異なる2以上のチャンネルを有するファイバグレーティングのための、光軸方向に沿った位置と、当該位置における屈折率と、の関係を示す情報を保持する。信号出力部18bは、情報保持部18aから情報を取得し、ステージ12及び捩じり力付与部17の動作を制御する。具体的には、信号出力部18bは、ステージ12におけるテーブル12bの移動速度を制御するための信号B1を出力する。さらに、信号出力部18bは、捩じり力付与部17における回転モータの回転角度を制御するための信号B2を出力する。
図3は、加熱部16の近傍を拡大して示す図である。図3に示すように、レーザ装置11は、レーザ光Lを光ファイバ100に直接に提供するものではなく、光ファイバ100が挿通する加熱部16にレーザ光Lを照射する。この照射によって、加熱部16の温度が上昇する。その結果、光ファイバ100を均一に加熱することができる。
炭酸ガスレーザの照射によって、加熱部16の内部に位置する光ファイバ100の温度が上昇する。その結果、光ファイバ100の一部が溶融状態となる。この状態において、捩じり力付与部17の回転モータを動作させて、光ファイバ100を捩じる。この捩じり動作と同時に、テーブル12bを基準線Aの方向に沿って移動させる(図3の矢印B参照)。この捩じり動作と直線移動動作とを組み合わせることにより、光ファイバ100にらせん状の変形を生じさせることができる。例えば、制御部18に保持されている情報としての、ファイバグレーティングのピッチ(Λ)と、テーブル12bの移動速度(V)と、回転モータの回転速度(V)との関係は、式(6)により示される。
Figure 0007182250000006
テーブル12bの移動によって、捩じられた光ファイバ100の部分は、加熱部16の外部に移動する。その結果、光ファイバ100は冷却されるので、らせん状の変形形状が保存される。このねじり部の排出に伴って、光ファイバ100の別の部分が加熱部16に進入する。そして、進入した光ファイバ100の別の部分は、加熱されると共に捩じられて、らせん状の変形を生じる。上記の捩じり動作と直線移動動作とを並行して行うことにより、らせん構造を光ファイバ100に連続的に設けることができる。
多チャンネルファイバグレーティング製造装置10によれば、質の高いファイバグレーティング1を容易に製造することができる。さらに、この製造装置によれば、歩留まり率も向上することが可能である。
多チャンネルファイバグレーティング製造装置10は、サファイアチューブである加熱部16を有する。この加熱部16によれば、光ファイバ100の表面に欠陥を生じさせることなく、屈折率の変調を光ファイバ100に形成することができる。従って、多チャンネルファイバグレーティング製造装置10によれば、均一なスペクトル特性を有する堅強ならせん状長周期ファイバグレーティングを有する光ファイバ100を得ることができる。
<実施例1>
上記の多チャンネルファイバグレーティングの設計方法を用いて、3チャンネルのサンプリング関数の最適化を行った。その結果を、図4に示す。図4は、3チャンネルのサンプリング関数における位相分布(グラフG5)を示す。この位相分布は、解析的な形式を用いると、式(7)のように示すことができる。
Figure 0007182250000007
図5は、設計したサンプリング関数のフーリエスペクトル(グラフG6)を示す。各チャンネル間において、不均一さは0.5%以下であった。また、チャンネル内のエネルギー効率(回折効率)は91%以上であった。
さらに、らせん状長周期ファイバグレーティングの局所的な周期を再度計算した。図6、その計算結果を示す。図6では、一つサンプリング周期内のグレーティング周期を示す。一つサンプリング周期は、64周期のグレーティングを含む。
<実施例2>
概念的な原理を証明するために、伝達行列法を用いて、らせん状長周期ファイバグレーティングの数値シミュレーションを行った。この解析の条件として、計算対象の長周期ファイバグレーティングについて、波長帯域を1520nm以上1620nm以下とした。さらに、基本コアモード(HE11)とクラッディングモード(HE13)の結合のみが起こるものと仮定した。
また、次のような解析の条件を設定した。つまり、数値シミュレーションでは、コア2の直径(a)を、a=8.2μmとし、クラッド3の直径(a)を、a=8.2μmとした。また、コア2の屈折率(n)を、n=1.4580とし、クラッド3の屈折率(n)を、n=1.4536とした。さらに、周囲の媒質の屈折率(n)を、n=1.0とした。中心波長は1560nmとした。
さらに、長周期ファイバグレーティングの周期は、320μmとした。らせん状長周期ファイバグレーティングの周期は、1.5cmとした。らせん状長周期ファイバグレーティングの長さは6cmとした。長周期ファイバグレーティングの長さも6cmとした。つまり、ファイバグレーティング1におけるらせん状長周期ファイバグレーティングのサンプリング周期は4とした。
さらに、式(8)は屈折率変調を示す。式(8)によれば、最大屈折率変調の最大値は3.9×10-4であった。
Figure 0007182250000008
式(9)は、らせん状長周期ファイバグレーティングの屈折率変調を示す。式(9)によれば、最大屈折率変調は1.47×10-4であった。
Figure 0007182250000009
上記式(8)、(9)及び解析の条件に基づいて、数値シミュレーションを行った結果を図7に示す。図7は、ファイバグレーティング1の透過スペクトル(グラフG8)を示す。図7によれば、3つの大きなノッチP8aが確認できた。それぞれのノッチP8aの深さは、15dB以上であった。さらに、ノッチP8aの間隔は33.28nmであった。ノッチP8aの間隔は、2つのピッチの比、すなわちサンプリングのためのらせん状長周期ファイバグレーティングと長周期ファイバグレーティングのピッチ又は中心波長に強く依存するものと予想できた。
<実施例3>
上記の多チャンネルファイバグレーティングの設計方法を用いて、9チャンネルのサンプリング関数の最適化を行った。つまり、上記のファイバグレーティングの設計方法を用いて、9チャンネルであって位相をサンプリングしたサンプリング関数の最適化を行った。その結果を、図8に示す。図8は、9チャンネルのサンプリング関数における位相分布(グラフG11)を示す。この位相分布(φ(z))は、解析的な形式を用いると、式(10)のように示すことができる。
Figure 0007182250000010
図9は、9チャンネルサンプリング関数のフーリエスペクトル(グラフG12)を示す。各チャンネル間において、不均一さは0.5%以下であった。また、チャンネル内のエネルギー効率(回折効率)は91%以上であった。
さらに、らせん状長周期ファイバグレーティングの局所的な周期を再度計算した。図10は、その計算結果を示す。図10では、一つサンプリング周期内のグレーティング周期を示す。一つサンプリング周期は、64周期のグレーティングを含む。
図10によれば、位相をサンプリングする方法を適用することでグレーティング周期が不均一となることがわかった。換言すると、グレーティングの周期ごとに異なる長さを有することがわかった。
<実施例4>
9チャンネルである光ファイバについても、実施例2と同様の数値シミュレーションを行った。解析の条件として、サンプリング周期を1.984cmとした。グレーティングの全長は5.952cm(3サンプリング周期)とした。9チャンネルであるらせん状長周期ファイバグレーティングの最大屈折率変化は、3.0×10-4と仮定した。
図11は9チャンネルであるらせん状長周期ファイバグレーティングの透過スペクトル(グラフG14)の計算結果である。図11によれば、ノッチ間隔およびノッチの大きさが均一性を有する評価してよいことが確認できた。具体的には、各ノッチP14a~P14iの間隔において、不均一さは0.4%以下であった。また、チャンネル内のエネルギー効率(回折効率)は97%以上であった。さらに、以下の実施例において得た数値解析の結果とほぼ等価であると言えることがわかった。図11に示すスペクトルは、9個のノッチP14a~P14i(チャンネル)を含む。この結果は、上記の設計方法がらせん状長周期ファイバグレーティングにも好適に適用できることを示している。
また、ノッチの深さであるグレーティングの強度は20dBよりも大きいことがわかった。この結果によれば、提案したサンプリング法がらせん状長周期ファイバグレーティングにも適用可能であることを示している。さらに、ノッチの深さが20dBを超えるような、強いらせん状長周期ファイバグレーティングにおいても十分に機能することがわかった。
<第2実施形態>
第2実施形態に係るファイバグレーティングについて説明する。第1実施形態に係るファイバグレーティング1は、透過率のらせんピッチ(周期)を変化させることにより、多チャンネル化を実現するものであった。第2実施形態に係るファイバグレーティングは、透過率のらせんピッチ(周期)が一定であること、及び、シードグレーティングを有する点で、第1実施形態のファイバグレーティングと相違する。また、らせんピッチ(周期)が一定であるらせん状の長周期ファイバグレーティングは、重複して設けられる。
サンプリング関数の周期(P)は、シードグレーティングのピッチ(Λ)に対して十分に大きい。従って、位相(φ(z))の変化は、ファイバグレーティングそのものに含まれる位相(すなわち、2πz/Λ)に比べて、極めて遅いことがわかる。その結果、位相(φ(z))は、シードグレーティングの位相に加えられた、位相変調の直流成分として扱ってよい。同様に、このような位相変調は、シードグレーティングの屈折率変化の直流成分(ΔnDC(z))に関連している。ΔnDC(z)は、式(11)により示される。式(11)において、zはグレーティングに沿った方向の位置である。λは、想定されるシードグレーティングの中心波長である。
Figure 0007182250000011
式(11)は、J個の回折格子(グレーティング)の重ね合わせとみなしてよい。回折格子のそれぞれは、ピッチ(P/n)と、振幅(nαMλ/P)と、を有する。ここで、nは、高調波の次数である。nは1からJの間の値を取り得る。
屈折率変調は、J個のらせん状の長周期ファイバグレーティングをファイバグレーティング1に重ねて形成することにより得られる。換言すると、式(2)が示す位相をサンプルした長周期ファイバグレーティングは、1個のシード長周期ファイバグレーティングと、J個のらせん状の長周期ファイバグレーティング(式(2))の重ね合わせであるとみなしてよい。シード長周期ファイバグレーティングの屈折率変化は、式(12)により示される。
Figure 0007182250000012
なお、位相関数(φ(z))はグレーティング周期として光ファイバ100に書き込まれる。その結果として得られる各グレーティングの周期は、式(13)により示される。換言すると、Λは、単一のチャンネルを有する長周期ファイバグレーティングを有するシードグレーティングの周期である。式(13)において、Mは、ある一つのサンプリング周期内におけるファイバグレーティングのピッチ数である。また、Δφは、隣接するグレーティングのピッチの位相差(φ-φj―1)である。
Figure 0007182250000013
このように、シード長周期ファイバグレーティングと、らせん状の長周期ファイバグレーティングと、を重ね合わせたファイバグレーティングを得ることができる。以下、図13に示すフロー図を参照しつつ、多チャンネルファイバグレーティングの製造方法の例示について説明する。
まず、位相サンプリング関数を用いて、コア2の位置と当該位置におけるねじりのピッチを設定する(第1ステップS1)。この第1ステップS1には、上述したファイバグレーティング1を設計する方法を用いる。次に、光ファイバ100を準備する。そして、光ファイバ100を上述した多チャンネルファイバグレーティング製造装置10に設置する。次に、シード長周期ファイバグレーティングを形成する(第3ステップS2、図12の(a)部参照)。この第3ステップS2には、所望の方法を用いてシード長周期ファイバグレーティングを形成してよい。次に、らせん状の長周期ファイバグレーティング部を形成する(第2ステップS3)。まず、第1ピッチを有するらせん構造を光ファイバ100に形成する(第1ピッチ形成ステップS3a、図12の(b)部参照)。その結果、光ファイバ100Aが得られる。次に、光ファイバ100Aを捩じって、第2ピッチを有するらせん構造を光ファイバ100Aに形成する(第2ピッチ形成ステップS3b、図12の(c)部参照)。その結果、光ファイバ100Bが得られる。最後に、光ファイバ100Bを捩じって、第3ピッチを有するらせん構造を光ファイバ100Cに形成する(第3ピッチ形成ステップS3c、図12の(d)部参照)。その結果、光ファイバ100Cが得られる。
要するに、図12の(a)部は、ピッチ(Λ)を持つシードグレーティング6である。図12の(b)部~(d)部は、ピッチ(P)のグレーティングを有するファイバグレーティング1Aであり、ピッチ(P/2)のグレーティングを有するファイバグレーティング1Bであり、ピッチ(P/J)であるのグレーティングを有するファイバグレーティング1Cを、それぞれ模式的に示す図である。
図12の(d)部に示すファイバグレーティング1Cは、シード長周期ファイバグレーティングと、らせん状の長周期ファイバグレーティングと、の重ね合わせである。このようなグレーティングは、まず、光ファイバ100にシードグレーティング6を形成する(図12の(a)部参照)、次に、ファイバグレーティング1を捩じって第1のピッチのらせんを形成する(図12の(b)部参照)。次に、ファイバグレーティング1Aをさらに別の第2のピッチで捩じってらせんを形成する(図12の(c)部参照)。さらに、ファイバグレーティング1Bをさらに別の第2のピッチで捩じってらせんを形成する(図12の(d)部参照)。
<実施例5>
3チャンネルのファイバグレーティングを製造し、そのスペクトルを確認した。ファイバグレーティングの形成は、上述した多チャンネルファイバグレーティング製造装置10を用いた。まず、第1ステップとして、図14の(a)部に示すように、ファイバグレーティング1Dにらせん状長周期ファイバグレーティングを形成した。上記の数値シミュレーションと比較可能であるように、らせん状長周期ファイバグレーティングの周期を15mmとした。また、らせん状長周期ファイバグレーティングの長さを60mmとした。
次に、図14の(b)部に示すように、第2ステップとして、第1ステップにおいて得たファイバグレーティング1Dにシード長周期ファイバグレーティングFを形成した。この第2ステップでは、ファイバグレーティング1Dに対して直接に炭酸ガスレーザを照射することにより、ファイバグレーティングを形成した。シード長周期ファイバグレーティングの周期は320μmとした。
図15は、3チャンネルのファイバグレーティングに係る透過スペクトル(グラフG10)を示す。図15によれば、1520nm以上1620nm以下の波長帯域において、3つのノッチP10a、P10b、P10cが確認できた。それぞれノッチP10a、P10b、P10cの深さは、15dB以上であることが確認できた。従って、製造したファイバグレーティングは、数値シミュレーションから予測した結果と同等の特性を有することがわかった。なお、ファイバグレーティングにおいて、ノッチの間隔は36nmであり、シミュレーションの結果に対して厳密に一致するものではない。しかし、数値シミュレーションにより得た結果と、実測により得た結果とは、概ね対応していると評価してよい。
<実施例6>
9チャンネルであるファイバグレーティングを製造し、そのスペクトルを確認した。設計及び製造については、3チャンネルであるファイバグレーティングのものと同等である。図16は、製造したファイバグレーティングの透過スペクトル(グラフG15)である。図16によれば、9個のノッチP15a~P15i(チャンネル)が存在していることが確認できた。つまり、上記の設計方法及び製造装置によって、9チャンネルであるファイバグレーティングを製造できることがわかった。
このような多チャンネルのらせん状長周期ファイバグレーティングは、光ファイバセンシング領域における波長多重センシングデバイス、また、光通信分野におけるOAMモードを利用する多重光通信デバイスへの応用が期待されている。上記のらせん状長周期ファイバグレーティングは、らせん状の固有モードを有しているので、次世代通信システムとして検討されているOAMモードを利用した多重光通信システムに好適に適用することができる。
ここで、OAMモードを利用した多重光通信システムとは、軌道角運動量(Orbital Angular Momentum:OAM)を利用して、伝送容量を増加させる技術である。軌道角運動量は、空間を伝播する光が有する性質の一つである。軌道角運動量は、光の伝播方向に沿う並進方向のまわりにフォトンが公転する運動に関する。フォトンの移動が並進と公転とを含む場合、そのフォトンの軌跡はらせん状である。このようなフォトンの軌跡は、平面波として伝播する光に対していわゆる「らせん転移」を導入することにより形成されると説明できる。例えば、並進と公転とを含むフォトンの移動は、平面波の位相変調又は振幅変調により導入できる。位相変調を利用する場合、例えば、光を屈折率がらせん状に変化する媒質を通過させることにより、実現できる。
上記のファイバグレーティング1も屈折率がらせん状に変化しているので、ファイバグレーティング1に平面波である光を提供すると、らせん状長周期ファイバグレーティングからは、並進と公転とを含むフォトンの移動を含む変調された光が出力される。つまり、実施形態に係るファイバグレーティング1によれば、光を通過させるだけで、OAMモードを利用した多重光通信システムに要する変調された光を得ることができる。
より詳細には、例えば、ファイバグレーティング1を利用する場合には、まず、所望のチャンネルの数と、その周波数とを設定する。次に、当該チャンネル数と周波数とを実現するファイバグレーティング1を作製する。そうすると、例えば、図7や図15に示すような特性を有するファイバグレーティング1が得られる。ここで、図7や図15に示す特性は、コア2における透過特性である。つまり、コア2に光を通すと、所定のチャンネルに対応する周波数の波長は吸収されてしまう。そこで、実際にファイバグレーティング1をOAM通信に用いる場合には、コア2ではなくクラッド3に光を通す。クラッド3の特性は、コア2の透過特性と逆であるからである。つまり、コア2では、吸収される周波数が、クラッド3では透過する周波数となるためである。
1…ファイバグレーティング(多チャンネルファイバグレーティング)、2…コア、3…クラッド、4…グレーティング部、6…シードグレーティング、10…多チャンネルファイバグレーティング製造装置、11…レーザ装置、12…ステージ、13…ホルダ、14…錘、16…加熱部、17…捩じり力付与部、18…制御部、15…ミラー、12a…ベース、12b…テーブル、18a…情報保持部、18b…信号出力部、19…広帯域光源、21…光スペクトルアナライザ、100…光ファイバ、A…基準線、L…レーザ光。

Claims (6)

  1. 互いに異なる2以上のチャンネルを有するグレーティング部を含むコアと、
    前記コアの周囲に形成されたクラッドと、を備え、
    前記グレーティング部は、前記コアの光軸を回転中心として前記コアが捩じられて、前記光軸の方向に沿って前記コアの屈折率が第1のピッチであるらせん状に変化する部分と、前記コアの光軸を回転中心として前記コアが捩じられて、前記光軸の方向に沿って前記コアの屈折率が前記第1のピッチとは異なる第2のピッチであるらせん状に変化する部分と、を含み、
    前記第1のピッチであるらせん状に変化する部分と、第2のピッチであるらせん状に変化する部分とは、互いに重ね合わされている、多チャンネルファイバグレーティング。
  2. 前記グレーティング部では、前記光軸の方向に沿って前記らせんの前記第1のピッチが一定である、請求項に記載の多チャンネルファイバグレーティング。
  3. 前記グレーティング部は、前記光軸の方向に沿って互いに異なる屈折率を有する領域が交互に設けられた部分をさらに含む、請求項1又は2に記載の多チャンネルファイバグレーティング。
  4. 請求項1~3の何れか一項に記載の多チャンネルファイバグレーティングの製造方法であって、
    位相サンプリング関数を用いて、コアと前記コアの周囲に形成されたクラッドとを有する光ファイバの光軸方向に沿った、前記コアにおける位置と前記位置における屈折率の周期を設定する第1ステップと、
    前記光軸の方向に沿って前記コアの屈折率がらせん状に変化する部分を含むグレーティング部を前記光ファイバに形成する第2ステップと、を有し、
    前記第2ステップでは、
    前記第1ステップで得た前記光軸方向に沿った前記コアの位置と前記位置における屈折率の周期に応じて、前記光ファイバを加熱しつつ、前記加熱される部分を前記光ファイバの光軸方向へ移動させながら、前記光ファイバを前記光軸のまわりに捩じることによって、前記グレーティング部に前記光軸の方向に沿って前記らせんのピッチが第1の値である部分を形成する第1ピッチ形成ステップと、
    前記第1ピッチ形成ステップの後に、前記光ファイバにおいて前記らせんのピッチが第1の値である部分をさらに前記光軸のまわりに捩じることによって、前記グレーティング部に前記光軸の方向に沿って前記らせんのピッチが前記第1の値とは異なる第2の値である部分を形成する第2ピッチ形成ステップをさらに含む、多チャンネルファイバグレーティングの製造方法。
  5. 前記第2ステップでは、前記光軸方向に沿った前記コアの位置に対応する屈折率の周期を変化させるように、前記光ファイバを前記光軸方向へ移動させながら、前記光ファイバを前記光軸のまわりに捩じる、請求項に記載の多チャンネルファイバグレーティングの製造方法。
  6. 前記第1ステップの後であって前記第2ステップの前に、前記グレーティング部に、前記光軸の方向に沿って互いに異なる屈折率を有する領域が交互に設けられた部分を形成する第3ステップをさらに含む、請求項に記載の多チャンネルファイバグレーティングの製造方法。
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