JP7170982B2 - 構造体状態測定方法、品質管理方法、経時変化モニター方法、および構造体の製造方法 - Google Patents
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連続繊維強化複合材料を用いた製品(構造体)では、繊維が一方向に並んだ積層材を用いることは少なく、設計者の求める強度および剛性となるように設計された繊維配向で、一方向材やクロス材を様々な角度で配置し積層材とすることが多い。また、短繊維や長繊維を用い、ランダムに繊維をばらまいたような非連続繊維強化樹脂複合材料の製品への適用もある。
このような材料を用いた構造体は、この材料の機械的性質の面内分布が構造体としての機械的性質、場合によってはその機械的性質が反映された音響伝搬性や熱伝導性といった物理的性質にまで影響を与える。そのため、その機械的性質の面内分布による品質管理、すなわち、その機械的性質が一様な分布をもつか、方向性をもった分布であるかといった視点からの品質管理が重要である。
特許文献1は、構造体が耐火物、コンクリート部材などの被打音検査物とした場合であるが、その構造体表面を打撃した際の振幅が最大となる振動数を測定し、その構造体から予想される理想固有振動数と比較してその構造体の健全度を指数化する方法である。この方法は、固有振動数比較という数値化がしやすい管理法であるが、機械的性質の面内分布の問題が明示的にわかる方法ではない。
特許文献2は、杭の品質管理方法であるが、杭を振動させることにより算出される固有振動数に基づいて杭の健全性を評価する方法である。この方法も、杭の機械的性質の面内分布の問題が明示的にわかる方法ではない。
この例としては特許文献3を挙げることができる。
特許文献3は、ペネトレータの品質管理方法等に関するものであるが、そこでは、管体の溶接部を超音波探傷し、欠陥の合計面積と人工欠陥との信号強度差に基づき品質管理を行う方法が開示されている。この方法も、構造体であるペネトレータの機械的性質の面内分布の問題が明示的にわかる方法ではない。
以上に示したように、製品製造時の工程を乱さずに、非破壊で、かつ高速に面内分布を含めた強度、剛性等があるかを保証する方法、および面内分布を含めて製品の強度、剛性等が常に同程度であるかを品質保証する十分な方法は、これまでなかった。また、厚肉の上記複合材料の性能(強度/剛性等)を評価できる手法も殆どなかった。
(構成1)
下記工程を行う装置を用い、
構造体の1以上の場所に打点を与える打点工程と、
前記構造体の所定の場所の振動を測定する振動測定工程と、
前記打点工程の打点の情報と前記振動測定工程によって得られた振動情報を基に、前記構造体の所定の1カ所に打点が与えられたときの前記構造体の振動分布を計算する振動分布計算工程を有し、
前記振動分布計算工程によって得られた前記構造体の振動分布の空間的対称性を評価する工程により前記構造体の状態を求める、構造体状態測定方法。
(構成2)
前記振動分布計算工程における振動分布計算手段が3次元弾性波動方程式による、構成1記載の構造体状態測定方法。
(構成3)
前記打点工程における打点手段がレーザー光のスポット照射である、構成1または2記載の構造体状態測定方法。
(構成4)
前記打点は2以上であって、かつ時間差をもって打点が前記構造体に与えられる、構成1から3の何れか1記載の構造体状態測定方法。
(構成5)
前記振動測定工程における振動測定手段がレーザー光干渉測定手段、ピエゾ素子による振動測定手段、ひずみセンサーによる振動測定手段、アコースティックエッミッションセンサーによる振動測定手段、前記構造体と前記振動測定手段の距離の変化を静電容量の変化で測定する静電容量振動測定手段の少なくとも何れかである、構成1から4の何れか1記載の構造体状態測定方法。
(構成6)
前記空間的対称性を評価する方法が、計算された振動分布のデータと、前記計算された振動分布を所定の角度回転させた、または所定の範囲の角度を回転させた、またはミラー反転させた、あるいは所定の角度の回転とミラー反転を組み合わせた振動分布のデータとのフィッティングをとり、前記フィッティングの残差により評価する、構成1から5の何れか1記載の構造体状態測定方法。
(構成7)
前記空間的対称性を評価する方法が、計算された振動分布のデータと、前記計算された振動分布を所定の角度回転させた、または所定の範囲の角度を回転させた、またはミラー反転させた、あるいは所定の角度の回転とミラー反転を組み合わせた振動分布のデータとの差分を取ることを含む、構成1から5の何れか1記載の構造体状態測定方法。
(構成8)
前記空間的対称性を評価するときの座標系が円柱座標系である、構成6または7記載の構造体状態測定方法。
(構成9)
構成6記載の構造体状態測定方法により得られる前記残差があらかじめ定めた基準値を満たすか満たさないかを判定基準として前記構造体の品質管理をする、品質管理方法。
(構成10)
構造体に対して、構成1から8の何れか1記載の構造体状態測定方法による振動分布の空間的対称性の評価を経時的に実施し、前記構造体の機械的特性の経時変化をモニターする、経時変化モニター方法。
(構成11)
構造体を製造する構造体の製造方法において、
構成6記載の構造体状態測定方法により得られる前記残差が、あらかじめ定めた基準値を満たす構造体を選別する工程を有する、構造体の製造方法。
(構成12)
構成6記載の構造体状態測定方法により得られる前記残差が、あらかじめ定めた基準値を満たす第1の構造体の少なくとも一部の領域を使って第2の構造体を製造する、構造体の製造方法。
以下、本発明を実施するための第1の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
本発明による構造体状態測定方法の工程を示した図1に示すように、本発明では、最初に、構造体に打点を印加し(工程S1)、その打点による振動を測定する(工程S2)。
測定装置としては、例えば、図2に示す測定装置101を用いることができる。測定装置101は、光源(レーザー)2、光線走査手段3、振動測定手段5、制御手段7および振動波算出、解析手段8を有する。制御手段7からの指令により、光源(レーザー)2から発せられた光線4は、光線走査手段3によって構造体1の所定の場所に所定の間隔を置いて照射されて打点となる。
そして、構造体1の表面の振動を振動測定手段5によって測定する。
振動測定手段5によって測定された振動情報は制御系7に送られ、制御系7は、その振動情報と光源2および光線走査手段3に送った制御信号を基にした打点情報を合わせて振動波算出、解析手段8へ送る。
また、図3に示す測定装置102の振動測定手段15のように、接触式の振動測定手段、例えば、接触式の加速度センサー、ピエゾ素子などを用いたひずみセンサー、アコーステックエミッションセンサー(AEセンサー)などを用いることもできる。
非接触式の振動測定手段5は、構造体に触れず、したがって構造体に傷や汚染を与えずに測定ができるという特徴がある。
一方、接触式の振動測定手段15は、厚さ方向(Z方向)のみならず平面方向(X方向やY方向)の振動も容易に測定することができ、測定環境依存性も少ないという特徴がある。例えば、非接触式の振動測定手段5の場合は、測定精度は構造体1と振動測定手段5の空間の空気の揺らぎ(温度による屈折率揺らぎ)の影響を受けるので、振動測定手段5の近傍は温度が十分管理された層流環境にする必要があるが、接触式の振動測定手段15の場合は、その場合より温度などの環境の影響を受けにくい。
振動測定面側とは逆面側に打点を与える方法は、打点を与える場所が振動測定手段5の配置に無関係に設定できるという特徴がある。すなわち、振動測定手段5によって遮られることなく、所望の場所に打点を与えることができるという特徴がある。
一方、振動測定面側と同じ面側に打点を与える方法は、筒状など振動測定面とは反対面側に打点を与えにくい場合に有効な方法である。
打点を行う場所は、任意の場所でよい。但し、構造体の状態の測定精度上からは、振動測定手段5または15によって振動測定を行う場所を取り囲むような場所であることが好ましい。
複数の打点を同時に印加することもできるが、複数の打点を同時に印加すると振動波計算出が複雑になり、その処理にも時間がかかるため、先に打った打点による振動が収束する程度の時間をおいて1打点ずつ打つのが好ましい。通常、振動の減衰が少ない(振動収束時間が長い)試験体では、打点の時間間隔は、10ms、短くても1ms程度が用いられる。試験体や試験範囲の大きさなどを考慮して調節される。なお、打点の時間的および空間的間隔は一定でも一定でなくても構わない。
打点の大きさは、構造体に非可逆的な変形や破壊をもたらさず、可逆的な変形を起こして構造体に振動を与える程度の大きさとする。
振動分布計算工程S3では、制御系7より送られてきた打点情報と振動情報を基に、振動波算出、解析手段8にて、振動分布(振動波)計算を行う。
振動分布計算では、下記(数1)にて示される3次元弾性波動方程式を用いて振動分布を計算する。具体的には、打点情報と振動情報を(数1)に入れて、まずc11からc66までの36個の要素からなる構造体の弾性率(スティフネスマトリックス)cを求める。そして、そのcを用いて、構造体の1点に打点を与えたときを仮定して、打点を与えた時間から所定の時間経過した後の変位u(x,y,z)を求める。
次に、振動分布対称性評価工程S4として、求めた弾性率cが組み込まれた3次元弾性波動方程式(数1)あるいは(数9)を用いて求めた構造体の1点に打点が与えられて所定の時間がたったときの振動波、言い換えれば振動分布を基に、その対称性を評価して構造体の状態を求め、品質管理などの基にする。
この使い分けは、構造体の構成と着目する機械的特性による。一般には、3方向全ての変位を取り込んでその二乗和平均をとるのが全ての振動を平均的に評価する方法なので好ましい。z方向の変位のみを用いる等高線の方法は、振動測定手段5や15が簡便になり、測定しやすいという特徴をもつ。また、例えば、一軸方向のみに繊維が配向されている場合、その方向に沿って変位を測定するのが、変位量が最も増えて測定精度が高まりやすい。また、構造体の局所的な伸び縮みが問題になるときは、xとyの二乗和平均をとるのが好ましい。
ここで、CFRP Cloth(0/90)14は、薄膜のCFRP Clothを14枚準備し、基準の向き(0°)として14層積層させて厚さ約3mmとした構造体である。
CFRP Cloth[(0/90)/(+45/‐45)]4Sは、薄膜のCFRP Clothを16枚準備し、基準の向き(0°)、それとは45°回転させた向き、基準の向き、45°回転させた向き、基準の向き、45°回転させた向き、基準の向き、45°回転させた向き、45°回転させた向き、基準の向き、45°回転させた向き、基準の向き、45°回転させた向き、基準の向き、45°回転させた向き、基準の向きとして16層積層させて厚さ約3mmとした構造体である。
一方、CFRP Cloth[(0/90)/(+45/‐45)]4Sの場合は、同心円状の波面になっている。これは、この構造の繊維の配向が45°ずつ異なった16層という多層の積層膜からなっていることにより、疑似的に特定の繊維配向性をもたないことによると考えられる。このように、本発明による振動分布を用いると、構造体の繊維配向上の素性を知ることが可能になる。
試料(構造体)は全て繊維の配向性を有するCFRPからできていて、(0)14と表記されているものは同じ向きで14層積層したもの、(0/90/90/0)4と表記されたものは、基準の向き(0°)、90°回転させた向き、90°回転させた向き、基準の向きを1セットとしてそれを4セット積層(計16層積層)したものである。(0/+45/90/‐45/‐45/90/+45/0)2と表記されたものは、基準の向き(0°)、+45°回転させた向き、90°回転させた向き、‐45°回転させた向き、‐45°回転させた向き、90°回転させた向き、+45°回転させた向きおよび基準の向きを1セットとしてそれを2セット積層(計16層積層)したものである。また、(0/+60/‐60/‐60/+60/0)3と表記されたものは、基準の向き(0°)、+60°回転させた向き、‐60°回転させた向き、‐60°回転させた向き、+60°回転させた向き、および基準の向きを1セットとしてそれを3セット積層(計18層積層)したものである。
ここで、試料(構造体)は、繊維が無秩序に配向されたCFRPからできている。そして、その厚さが26mmと3mmの2種類の試料の振動分布を比較評価した。両試料の縦と横の大きさは共に200mmである。
試料の厚さが比較的厚い26mmの試料を用いた場合は、乱れがあるものの略円状の振動分布を示しているのに対し、比較的薄い3mmの厚さの試料では、振動分布はモホロジーの目立つ乱れたものとなり、かつ周辺部には十文字状の分布が認められる。薄くなって繊維の数が比較的少なくなることにより、この構造体は、繊維の配向が完全な無秩序ではなく、ある程度の偏りのある状態であることが本方法によってわかる。
平面部に打点を与えた場合と異なり、振動の拡がりに偏りが認められる。この偏りから試料の機械的性質に対する積層構造の影響を評価できる。
実施の形態2では、振動分布の空間対称性を定量的に評価する方法について述べる。
空間対称性を評価する方法はいろいろあるが、ここでは、振動分布の空間対称性を評価する空間対称性評価工程S4が、図9に示す円柱座標変換(工程S11)、座標回転(工程S12)、フィッティング計算(工程S13)および、フィッティング値による判定(工程S14)からなる場合について説明する。なお、振動分布計算工程S3までは、実施の形態1と同様である。
まず、円柱座標変換工程S11として、上記振動分布計算のときに与えた打点を原点として、振動分布を円柱座標系に座標変換する。
例えば、振動分布計算によって求めた振動分布が(x,y)座標系で打点を(0,0)に与えた場合、(数10)を使って(r,θ)座標系に変換する。
その後、座標回転工程S12として、その円柱座標系に変換された振動分布u(r,θ)を原点を中心にして所定の角度回転(φ)させた振動分布図形urot(r,θ)を計算する。
ここで、所定の角度回転させた振動分布図形urot(r,θ)は(数11)によって計算される。
オリジナルの振動分布図形を0°回転の図形として、それを原点(0,0)を中心に‐45°、‐90°、‐180°、‐250°回転させた振動分布図形が図10に示されているが、主一軸伝搬では、‐180°回転の振動分布図形がオリジナルの振動分布図形と一致し、二方向伝搬では、‐90°および‐180°回転の振動分布図形がオリジナルの振動分布図形と一致する。また、等方伝搬では、どの角度回転させた動分布図形もオリジナルの振動分布図形と一致する。
フィッティング計算工程S13では、オリジナルの振動分布図形と回転させた振動分布図形の相似性をフィッティング値という形で定量化する。
フィッティングパラメータは、図形間の相似性、同一性を数値として定量化できるものであれば用いることができるが、ここではフィッティング評価法として汎用に利用されている最小二乗法による方法を説明する。なお、このほかの方法としては、差分による方法も挙げることができる。
フィッティングパラメータf(φ)は値が小さいほどフィッティング度が高く、振動分布図形の相似性が高いことを意味する。すなわち、小さい値のフィッティングパラメータf(φ)が得られる場合は、その角度φで高い対称性が得られることを意味する。前記のように、振動分布図形の対称性は、構造物の機械的特性の対称性を表すものとなる。
構造体の振動分布のフィッティングパラメータf(φ)が図11に示すような周期変動を示す場合、その構造体は回転方向に対して周期的な機械的性質をもつことを意味する。
構造体の振動分布のフィッティングパラメータf(φ)が図12に示すような曲線を描く場合、その構造体の機械的性質は非周期的で方向依存性をもたないことを意味する。
構造体の振動分布のフィッティングパラメータf(φ)が図13に示すような180°毎の周期変動を示す場合、その構造体は主に一軸に沿って対称な機械的性質をもつことを意味する。
構造体の振動分布のフィッティングパラメータf(φ)が図14に示すように回転角φにほぼよらずに小さな値になる場合、その構造体は等方的な機械的性質をもつことを意味する。
構造体の振動分布のフィッティングパラメータf(φ)が図15に示すように0°から360°の間に複数の極小値をもつ場合、その構造体はその極小値の角度で空間的に対称的な機械的性質をもち、特にその極小値が小さな場合はその角度方向に対して強い対称的な機械的性質をもつことを意味する。
前記のフィッティング計算工程S13では、オリジナルの振動分布図形と回転させた振動分布図形の相似性をフィッティングパラメータ値という形で定量化したが、振動分布の対称性は、上記の回転対称性のほか、ミラー反転対称性もある。
ここでは、ミラー反転対称性をフィッティングパラメータ値で定量化する方法について述べる。
前記したように、フィッティングパラメータは、図形間の相似性、同一性を数値として定量化できるものであれば用いることができるが、ここではフィッティング評価法として汎用に利用されている最小二乗法による方法を説明する。
角度φのときに高いミラー反転性をもつ振動分布と角度φの関係(振動分布特性)を図16に示す。振動分布特性でθcの回転角で極小値が得られる場合は、角度θcで、高いミラー反転分布の機械的特性がその構造体に備わっていることを意味する。そしてその極小値の値が小さいほどその機械的特性のミラー反転分布は強いことを意味する。
本発明は、構造体に2以上の打点を与え、その打点による構造体表面の振動を1以上の場所で測定した後、構造体の1点に打点を与えたときの構造体表面の振動波面、言い換えれば振動分布を3次元弾性波動方程式を用いて計算し、その振動分布の対称性を判定して、構造体の機械的状態を求めるというものである。
一方、構造体の振動分布を測定し、構造体の機械的状態を求める方法としては、下記に示すものも考えられる。
その方法は、構造体の1点に打点を与え、その打点による構造体の振動分布を直接測定する方法である。
図21は、金属のような面内均質な機械的性質をもつ板状の構造体の中心に打点を与え、その後の構造体の振動の拡がり(波面の拡がり)を時系列的に載せたものである。
図22は、一方向性の機械的性質をもつ板状の構造体の中心に打点を与え、その後の構造体の振動の拡がり(波面の拡がり)を時系列的に載せたものである。前記試料でいうと、CFRP(0)14のようなものの場合である。
なお、これらの図では、簡単化のために、第1象限と第4象限のみを載せている。対称性があるので、第2及び第3象限はこれをミラー反転した振動分布になっている。
また、測定精度を高めるため、複数回の測定、すなわち複数回の打点を与えた測定とするときは、前の打点の影響が次の打点の測定に悪影響を及ぼさないように(前の打点による振動が収まるまで)、打点間で十分な時間を置くことが好ましい。このため、この方法には、測定時間も長くなるという問題がある。
また、この方法では、拡がり拡散や途中の欠陥などの影響により構造体の周辺部の測定精度を高めにくいという問題がある。
なお、本発明による被測定対象は、板状に限るものではなく曲面でも3D構造であってもよい。また、板などの素材状の段階から製造構造物の段階まで測定できるという特徴をもつ。
実施の形態3では、上記実施の形態1および2に示した構造体の状態測定法の適用とその展開、すなわち、構造体状態測定法の応用について述べる。
特に、空間的対称性を定量化する前記フィッティングパラメータf(φ)、fM(φ)を極小にする回転角φminとそのフィッティング値f(φmin)、fM(φmin)があらかじめ定めた基準値に収まるかを判定基準にして品質管理を行うと精度の高い品質管理を行うことができる。これは、これらの指標が空間的対称性を精度よく定量的に表しているためである。
また、CFRPなどを製造する際の繊維配向ミスによる製品不良を本発明の構造体状態測定方法により、素材段階から最終製品段階のどこの段階でも見つけることが可能なので、本発明は構造体の品質保証法として有効である。
本発明の構造体状態測定は薄膜の板状に限らず、厚膜の板状、3D構造をもつ複雑な形状、円筒状等の内部に空間(空洞)をもつ構造の何れの構造体に対しても適用可能なので、構造体の製造工程のどの段階でも適用可能という特徴をもつ。
このようにすると、空間分布を含んで所望の機械的特性を有する素材で構造体を製造できるので、製造された構造体も空間分布を含んで所望の機械的特性を有するものとなる。
例えば、ランダム材とされた材料を用いて製造された構造体に対して本発明の構造体状態の測定を行い、空間的対称性評価を行うと、部分的に配向が揃ってランダムではなくなり所望の機械的性質が得られなくなった不良個所がある場合、その不良個所を特定することが可能になる。
例えば、航空機のプロペラや翼などの構造体に対し本発明の構造体状態の測定を行い、振動分布の経時的空間的変化から機械疲労状態をモニターすることが可能になる。
例えば、CFRPを製造する際に繊維配向ミスがあった場合、その繊維配向起因により製造されるCFRPの振動分布対称性が所定の対称性と異なるが、本発明の方法によるその振動分布対称性の測定を通じて繊維配向ミスが判明し、所望の構造体(CFRP)を製造することが可能になる。
実施例1は、試料(構造体)を配向の組み合わせを変えた平織のCFRP積層膜としたときの、試料の機械的状態を調べた例である。
ここで、試料の配向の組み合わせは、0°/90°を積層した直交した2方向の構造をもつものと、0°/90°と‐45°/+45°を積層した疑似等方性の構造をもつものとした。試料は、縦200mm、横200mmの板状で、その板厚は約3mmである。
レーザー12としては、波長1064nmのYAGレーザーを用いた。そのレーザーのパワーは最大で約30mJ、パルス幅は約8ns、ビーム径(直径)は約0.5mm、繰り返し周波数は100Hzとした。
振動測定手段15としては、接触式のAEセンサーを用いた。
試料の表面側の中心にAEセンサーを接触させて、試料裏面側の周辺部にレーザー光4を掃引しながら1600秒間照射して(工程S1)、打点‐振動の測定データを取得した(工程S2)。ここで、レーザー光4は、試料の中央を取り囲む正方形状の場所(正方形の辺上)に照射した。
直交した2方向の構造をもつ平織0°/90°CFRPは中心付近が十文字状、周辺部が菱形状の振動分布形状を示し、疑似等方性の構造をもつ平織0°/90°と平織‐45°/+45°の積層CFRPは同心円状の振動分布形状を示した。
直交した2方向の構造をもつ平織0°/90°CFRPは回転角0°、‐90°および‐180°で相似の形状となり、疑似等方性の構造をもつ平織0°/90°と平織‐45°/+45°の積層CFRPは全ての回転角で相似の形状になっていることが目視でもわかる。
その結果、直交した2方向の構造をもつ平織0°/90°CFRPは回転角0°、‐90°、‐180°および‐270°で極小のフィッティング値をとり、その値は0に近いものであった。また、疑似等方性の構造をもつ平織0°/90°と平織‐45°/+45°の積層CFRPのフィッティング値は回転角によらずほぼ0となった。
したがって、振動分布の対称性は構造体の機械的構造分布と相関が取れていることが明らかになった。
2:光源(レーザー)
3:光線走査手段
4:光線
5:振動測定手段
6:レーザー光線
7:制御手段
8:振動波算出、解析手段
12:光源(レーザー)
13:光線走査手段
15:接触式振動測定手段
101:測定装置
102:測定装置
103:測定装置
Claims (12)
- 下記工程を行う装置を用い、
構造体の1以上の場所に打点を与える打点工程と、
前記構造体の所定の場所の振動を測定する振動測定工程と、
前記打点工程の打点の情報と前記振動測定工程によって得られた振動情報を基に、前記構造体の所定の1カ所に打点が与えられたときの前記構造体の振動分布を計算する振動分布計算工程を有し、
前記振動分布計算工程によって得られた前記構造体の振動分布の空間的対称性を評価する工程により前記構造体の状態を求める、構造体状態測定方法。 - 前記振動分布計算工程における振動分布計算手段が3次元弾性波動方程式による、請求項1記載の構造体状態測定方法。
- 前記打点工程における打点手段がレーザー光のスポット照射である、請求項1または2記載の構造体状態測定方法。
- 前記打点は2以上であって、かつ時間差をもって打点が前記構造体に与えられる、請求項1から3の何れか1記載の構造体状態測定方法。
- 前記振動測定工程における振動測定手段がレーザー光干渉測定手段、ピエゾ素子による振動測定手段、ひずみセンサーによる振動測定手段、アコースティックエッミッションセンサーによる振動測定手段、前記構造体と前記振動測定手段の距離の変化を静電容量の変化で測定する静電容量振動測定手段の少なくとも何れかである、請求項1から4の何れか1記載の構造体状態測定方法。
- 前記空間的対称性を評価する方法が、計算された振動分布のデータと、前記計算された振動分布を所定の角度回転させた、または所定の範囲の角度を回転させた、またはミラー反転させた、あるいは所定の角度の回転とミラー反転を組み合わせた振動分布のデータとのフィッティングをとり、前記フィッティングの残差により評価する、請求項1から5の何れか1記載の構造体状態測定方法。
- 前記空間的対称性を評価する方法が、計算された振動分布のデータと、前記計算された振動分布を所定の角度回転させた、または所定の範囲の角度を回転させた、またはミラー反転させた、あるいは所定の角度の回転とミラー反転を組み合わせた振動分布のデータとの差分を取ることを含む、請求項1から5の何れか1記載の構造体状態測定方法。
- 前記空間的対称性を評価するときの座標系が円柱座標系である、請求項6または7記載の構造体状態測定方法。
- 請求項6記載の構造体状態測定方法により得られる前記残差があらかじめ定めた基準値を満たすか満たさないかを判定基準として前記構造体の品質管理をする、品質管理方法。
- 構造体に対して、請求項1から8の何れか1記載の構造体状態測定方法による振動分布の空間的対称性の評価を経時的に実施し、前記構造体の機械的特性の経時変化をモニターする、経時変化モニター方法。
- 構造体を製造する構造体の製造方法において、
請求項6記載の構造体状態測定方法により得られる前記残差が、あらかじめ定めた基準値を満たす構造体を選別する工程を有する、構造体の製造方法。 - 請求項6記載の構造体状態測定方法により得られる前記残差が、あらかじめ定めた基準値を満たす第1の構造体の少なくとも一部の領域を使って第2の構造体を製造する、構造体の製造方法。
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山脇 寿,2段階弾性波動方程式を基本にした改良型差分法による超音波伝播シミュレーション,非破壊検査,59巻12号,日本,一般社団法人 日本非破壊検査協会,2010年12月01日,p.624-629 |
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