以下、本発明の変位検出装置の実施の形態例について、図1~図11を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
また、以下の説明において記載される各種のレンズは、単レンズであってもよいし、レンズ群であってもよい。
1.第1の実施の形態例
まず、本発明の第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる変位検出装置の構成を図1~図6を参照して説明する。
1-1.変位検出装置の構成例
図1は、変位検出装置の構成を示す概略構成図である。
本例の変位検出装置1は、透過型の回折格子を用いて、被測定面における垂直な方向の変位を検出することができる変位検出装置である。図1に示すように、変位検出装置1は、被測定部材Mの被測定面Maと対向するヘッド3と、変位を出力する変位出力部4(図6参照)と、を有している。なお、変位出力部4は、ヘッド3内に収容してもよく、あるいはヘッド3の外部に設けた携帯情報処理端末や、PC(パーソナルコンピュータ)に配置してもよい。
ヘッド3と被測定部材Mのうち少なくとも一方を、被測定面Maと平行をなす走査方向を示す第1の方向Xに移動可能に構成されている。本例では、ヘッド3が固定されており、被測定部材Mが第1の方向Xに移動する。
以下、第1の方向Xと直交し、被測定面Maと平行をなす方向、すなわちトラック方向を第2の方向Yとする。また、第1の方向X及び第2の方向Yと直交する方向、すなわちヘッド3と被測定部材Mが対向する方向である高さ方向を第3の方向Zとする。
図2は、ヘッド3内部の構成を示す概略構成図である。
図2に示すように、ヘッド3は、光源11と、光源11から出射された光を複数光束群に分割する光束群分割部12と、変位検出部13と、受光検出部15とを備えている。
光源11には、例えば半導体レーザダイオードやスーパールミネッセンスダイオード、ガスレーザ、固体レーザ、発光ダイオード等が挙げられる。
光源11として、可干渉距離が長い光源を用いると、被測定部材Mの被測定面Maのチルト等による物体光と参照光の光路長差の影響を受けにくくチルト許容範囲が広くなる。また、光源11の可干渉距離が短くなるほど、不要な迷光の干渉によるノイズを防ぐことができ、高精度な計測をすることができる。
さらに、光源11として、シングルモードのレーザを用いると、波長を安定させるために、光源11の温度をコントロールすることが望ましい。また、シングルモードのレーザの光に、高周波重畳などを付加して、光の可干渉性を低下させてもよい。さらに、マルチモードのレーザを用いる場合も、ペルチェ素子等で光源11の温度をコントロールすることで、不要な迷光の干渉によるノイズを防ぎ、さらに安定した計測が可能になる。
また、光源11と光束群分割部12との間に光ファイバを配置し、光ファイバを用いて光源11から出射された光Lを光束群分割部12に導光してもよい。これにより、熱源となる光源11を後述する変位検出部13や受光検出部15から離して配置することができ、より安定した計測が可能となる。
この光源11から出射された光Lは、光束群分割部12に入射する。なお。光源11と光束群分割部12の間には、コリメートレンズ等からなる不図示のレンズが配置されている。レンズは、光源11から出射された光を平行光にコリメートする。そのため、光束群分割部12には、レンズにより平行光にコリメートされた光が入射される。
光束群分割部12は、例えば、複数のビームスプリッタにより構成されている。そして、光束群分割部12は、第2の方向Yに沿って配置されている。光束群分割部12は、光源11から出射され、不図示のレンズにより平行光にコリメートされた光Lを、第2の方向Yに所定の間隔H1を空けて、第1光束群L1、第2光束群L2、第3光束群L3、第4光束群L4、第5光束群L5に分割する。
なお、本例では、光束群分割部12によって光Lを5つ光束群L1、L2、L3、L4、L5に分割した例を説明したが、これに限定されるものではない。光束群分割部12が分割する数は、4つ以下でもよく、6つ以上でもよい。光束群分割部12は、少なくとも2つ以上光束群に分割できればよい。
光束群分割部12は、分割した光束群L1、L2、L3、L4、L5を第1の方向Xに向けて反射し、変位検出部13に入射させる。この光源11と光束群分割部12により本例の光照射部が構成される。
[変位検出部]
図3は、変位検出部13を示す概略構成図である。
図3に示すように、変位検出部13は、光束分割部21と、第1反射透過部22と、透過型の回折格子23と、参照用反射部の一例を示すミラー24と、第2反射透過部25と、第1の位相板26と、第2の位相板27と、光束結合部28と、第3の位相板29と、を備えている。
図2に示すように、光束分割部21、第1反射透過部22、透過型の回折格子23、ミラー24、第2反射透過部25、第1の位相板26、第2の位相板27、光束結合部28、第3の位相板29は、ヘッド3内において第2の方向Yに延在して配置される。また、光束分割部21、第1反射透過部22、透過型の回折格子23、ミラー24、第2反射透過部25、第1の位相板26、第2の位相板27、光束結合部28、第3の位相板29は、ヘッド3内において第1の方向Xに沿って並べて配置される。
また、図3に示すように、第1反射透過部22と第2反射透過部25は、第1の方向Xにおいて対向して配置される。第1反射透過部22と第2反射透過部25の間には、回折格子23と、ミラー24と、第1の位相板26と第2の位相板27が配置されている。なお、ミラー24は、回折格子23と第1の方向Xにおいて同じ位置に配置され、ミラー24は、その反射面24aが第1の方向X及び第2の方向Yと平行をなし、第3の方向Zにおいて、被測定部材Mの被測定面Maと対向する位置に配置される。また、第1の位相板26と第2の位相板27は、第1の方向Xにおいて回折格子23と第2反射透過部25の間に配置される。
図2及び図3に示すように、光束分割部21は、例えば、ビームスプリッタやハーフミラーにより構成されている。この光束分割部21には、光束群分割部12により分割された第1光束群L1、第2光束群L2、第3光束群L3、第4光束群L4及び第5光束群L5が入射する。なお、以下の各光束群L1、L2、L3、L4、L5の光路は、同様であるため、第1光束群L1について説明する。
光束分割部21は、入射した第1光束群L1を、物体光となる第1の光束LAと、参照光となる第2の光束LBに分割する。光束分割部21を透過する第1の光束LAは、第3の方向Zにおいて被測定部材Mに向けて進行し、光束分割部21によって反射された第2の光束LBは、第3の方向Zにおいて被測定部材Mとは反対側に向けて進行する。また、光束分割部21よりも第1の方向Xにおいて光源11や光束群分割部12とは反対側には、第1反射透過部22及びミラー24が配置されている。
第1反射透過部22には、光束分割部21によって分割された第1の光束LAと、第2の光束LBが入射する。第1反射透過部22は、例えば、偏光ビームスプリッタにより構成されている。本例では、第1反射透過部22は、p偏光の光を透過させ、s偏光の光を反射する。
第1反射透過部22は、その反射透過面22aが後述する回折格子23の回折面と略平行で、かつ被測定部材Mの被測定面Ma及びミラー24の反射面24aに対してほぼ90°となるように、配置されている。
第1反射透過部22は、光束分割部21によって分割された第1の光束LAと第2の光束LBを透過させる。第1反射透過部22を透過した第1の光束LAは、被測定部材Mの被測定面Maに入射する。第1光束群L1の第1の光束LA1は、被測定面Maの第1照射点P1に入射する。第2光束群L2の第1の光束LA2は、被測定面Maの第2照射点P2に入射する。第3光束群L3の第1の光束LA3は、被測定面Maの第3照射点P3に入射する。第4光束群L4の第1の光束LA4は、被測定面Maの第4照射点P4に入射する。第5光束群L5の第1の光束LA5は、被測定面Maの第5照射点P5に入射する。なお、第1照射点P1、第2照射点P2、第3照射点P3、第4照射点P4及び第5照射点P5には、同時に照射される。
第1照射点P1、第2照射点P2、第3照射点P3、第4照射点P4及び第5照射点P5は、第1の方向Xにおいて同じ座標である。そして、第1照射点P1、第2照射点P2、第3照射点P3、第4照射点P4及び第5照射点P5は、第2の方向Yに沿って所定の間隔H1を空けて配置される。この第1照射点P1、第2照射点P2、第3照射点P3、第4照射点P4及び第5照射点P5における第2の方向Yの間隔、すなわち照射点の座標は、後述する変位出力部4に予め格納されている。
また、被測定部材Mが基準位置に配置されている場合、第1反射透過部22を通過した第1の光束LAは、被測定部材Mにおける被測定面Maのほぼ同じ位置である基準点(特定の位置)に入射される。
そして、被測定面Maに入射した第1の光束LAは、被測定面Maによって反射される。被測定面Maによって反射された第1の光束LAは、第1の位相板26を介して第2反射透過部25に入射する。また、ミラー24に入射した第2の光束LBは、ミラー24によって反射され、第2の位相板27を介して第2反射透過部25に入射する。
第1の位相板26及び第2の位相板27は、通過する光の偏光方向を変化させるものであり、例えば、1/2波長板等から構成されている。そのため、通過する光の偏光方向がp偏光の場合、s偏光に変化させ、通過する光の偏光方向がp偏光の場合、s偏光に変化させる。
第2反射透過部25は、第1反射透過部22と同様に、偏光ビームスプリッタである。第2反射透過部25は、p偏光の光を透過させ、s偏光の光を反射する。また、第2反射透過部25は、その反射透過面25aが後述する回折格子23の回折面と略平行で、かつ被測定部材Mの被測定面Ma及びミラー24の反射面24aに対してほぼ90°となるように、配置されている。
第2反射透過部25によって反射された第1の光束LAは、第1の位相板26を介して回折格子23に入射する。同様に、第2反射透過部25によって反射された第2の光束LBは、第2の位相板27を介して回折格子23に入射する。
回折格子23は、透過型の回折格子であり、入射した光を透過させ、かつ回折する。回折格子23は、被測定部材Mの被測定面Ma及びミラー24の反射面24aに対して略直角、すなわち回折格子23の回折面と被測定面Maで形成される角度がほぼ90°となるように配置されている。
なお、回折格子23、第1反射透過部22及び第2反射透過部25における被測定部材Mに対する配置精度は、変位検出装置1に要求される測定精度によって種々に設定されるものである。すなわち、変位検出装置1に高い精度を要求する場合、回折格子23、第1反射透過部22及び第2反射透過部25を被測定面Maに対して90°±0.5°程度の範囲に配置することが好ましい。これに対し、回折格子23、第1反射透過部22及び第2反射透過部25を、被測定面Maに対して90°から±2°の範囲に配置しても、変位検出装置1を工作機械等の低い精度の測定に用いる場合には、十分である。
回折格子23が被測定面Maに対して90°に配置されているため、被測定部材Mの被測定面Maに第1の光束LAが入射角θ1で入射した場合、第1の光束LAは、回折格子23に対して入射角π/2-θ1で入射する。
なお、回折格子23を透過し、回折された第1の光束LA及び第2の光束LBは、再び第1反射透過部22に入射する。そして、第1の光束LAは、第1反射透過部22によって反射されて、再び被測定部材Mの被測定面Maに入射する。なお、被測定部材Mが基準位置に配置されている場合、第1の光束LAは、1回目と同じ基準点に入射される。また、第2の光束LBは、第1反射透過部22によって反射されて、再びミラー24に入射する。
また、回折格子23は、その回折角が回折格子23への入射角とほぼ等しくてもよく、あるいは、等しくなくてもよい。なお、回折格子23の格子ピッチΛは、被測定部材Mへの1回目及び2回目の入射角度をθ1、波長をλとすると、次の式1を満たす値に設定することが好ましい。
[式1]
Λ=nλ/2sin(π/2-θ1)
また、回折格子23としては、例えば、図4A及び図4Bに示すような回折格子23A、23Bを用いてもよい。
図4Aは、回折格子の一例を示す断面図、図4Bは、回折格子の他の例を示す断面図である。
図4Aに示す回折格子23Aは、略透明なガラス基板23Aaの一面に例えばクロム(Cr)からなる格子部23bを形成したものである。一般的に、格子部23bは、ガラス基板23Aaの一面にクロム等の薄膜を真空蒸着によって形成されるため、その厚みは、1μm以下である。
図4Bに示す回折格子23Bは、写真乾板を用いた、いわゆるボリュームタイプのホログラムである。吸収型のホログラムを用いてもよいが、ここでは位相型のホログラムについて説明する。この回折格子23Bにおける格子部23cは、例えば次のようにして形成される。まず、ガラス基板23Baの一面に光に感光する銀塩の乳剤を塗布し、干渉縞を露光し、現像後、漂白する。これにより、格子部23cには、銀の粒子が残っている箇所23dと、残っていない箇所23eが形成される。ここで、銀の粒子が残っている箇所23dは、屈折率が高く、銀の粒子が残っていない箇所23eは、屈折率が低くなる。すなわち、位相型のホログラムである。また、材料として写真乾板の代わりにホログラム記録用フォトポリマーを使用してもよい。
このような構成を有する回折格子23Bの場合、所定の角度(入射角)で光が入射すると、所定の角度(回折角)で光が出力(回折)される。さらに、ブラッグ条件を満たすときに、回折格子23Bによって回折される回折光の出力を最大にすることができる。すなわち、回折格子23Bによって回折された回折光の光量が低下することを防ぐことができる。
この回折格子23Bの格子部23cの厚みN1は、格子ピッチΛの4倍以上が好ましい。しかしながら、光が格子部23cで吸収されることを考慮すると、格子部23cの厚みN1は、格子ピッチΛの約4~20倍程度に設定することが好ましい。
また、図4Bに示すような、ボリュームタイプのホログラムからなる回折格子23Bは、被測定部材Mから反射した第1の光束LAや、ミラー24から反射した第2の光束LBの回折効率を高めることができ、信号のノイズの低下させることができる。
また、図2及び図3に戻って示すように、第2反射透過部25における第1反射透過部22及び回折格子23と対向する側とは反対側、すなわち第2反射透過部25を透過した側には、第3の位相板29と、光束結合部28が配置されている。
第3の位相板29は、第1の位相板26及び第2の位相板27と同様に、通過する光の偏光方向を変化させるものであり、例えば、1/2波長板等から構成されている。
光束結合部28には、第2反射透過部25を透過した第1の光束LAと、第2反射透過部25と透過し、かつ第3の位相板29を通過した第2の光束LBが入射する。光束結合部28は、偏光ビームスプリッタである。光束結合部28は、p偏光の光を透過させ、s偏光の光を反射する。そして、光束結合部28は、第1の光束LAと第2の光束LBを重ね合わせ干渉光LC1~LC5(以下、単に干渉光LCという)を生成する。光束結合部28は、重ね合わせた干渉光LCを受光検出部15に向けて照射する。
[受光検出部]
次に、受光検出部15について説明する。
図5は、受光検出部15を示す概略構成図である。
図5に示すように、受光検出部15は、第4の位相板31と、ハーフミラーからなりビームスプリッタ32と、1/2波長板で構成される第5の位相板33と、第1の偏光ビームスプリッタ34と、第2の偏光ビームスプリッタ35とを有している。第4の位相板31、ビームスプリッタ32、第5の位相板33、第1の偏光ビームスプリッタ34及び第2の偏光ビームスプリッタ35は、変位検出部13の構成部材と同様に、ヘッド3内において第2の方向Yに延在して配置される。
第4の位相板31は、例えば、1/4波長板からなり、通過する干渉光LCを円偏光に変化させると共に、第1の光束LAと第2の光束LBの偏光方向の向きが互いに逆向きとなるように位相板の光軸が設定されている。
ビームスプリッタ32は、第4の位相板31を透過した干渉光LCを2つに分割する。ビームスプリッタ32によって分割された光のうち一方の光は、第1の偏光ビームスプリッタ34に入射し、他方の光は、第5の位相板33を介して、第2の偏光ビームスプリッタ35に入射する。
第5の位相板33は、第2の偏光ビームスプリッタ35に入射する干渉光の偏光方向が第1の偏光ビームスプリッタ34に対して45度傾くように配置されている。第1の偏光ビームスプリッタ34及び第2の偏光ビームスプリッタ35は、s偏光成分を有する光を反射させ、p偏光成分を有する光を透過させることで、光を分割する。
第1の偏光ビームスプリッタ34及び第2の偏光ビームスプリッタ35における光の出射口側には、第1受光部15A、第2受光部15B、第3受光部15C、第4受光部15D、第5受光部15E(図7参照)が配置されている。
第1受光部15A、第2受光部15B、第3受光部15C、第4受光部15D及び第5受光部15Eは、第2の方向Yに沿って所定の間隔H1を空けて配置される。第1受光部15Aは、第1光束群L1の第1干渉光LC1を受光し、第2受光部15Bは、第2光束群L2の第2干渉光LC2を受光し、第3受光部15Cは、第3光束群L3の第3干渉光LC3を受光する。そして、第4受光部15Dは、第4光束群L4の第4干渉光LC4を受光し、第5受光部15Eは、第5光束群L5の第5干渉光LC5を受光する。
第1受光部15Aは、第1受光素子41A、第2受光素子42A、第3受光素子43A及び第4受光素子44Aを有している。第1受光素子41Aと第2受光素子42Aは、第1の偏光ビームスプリッタ34の出射口側に配置されており、第3受光素子43Aと第4受光素子44Aは、第2の偏光ビームスプリッタ35の出射口側に配置されている。
なお、第2受光部15B、第3受光部15C、第4受光部15D及び第5受光部15Eは、第1受光部15Aと同様に、4つの受光素子を有している。そして、第1受光素子41B~41Eと第2受光素子42B~42Eは、第1の偏光ビームスプリッタ34の出射口側に配置されている。また、第3受光素子43B~43Eと第4受光素子44B~44Eは、第2の偏光ビームスプリッタ35の出射口側に配置されている。
第1受光部15A、第2受光部15B、第3受光部15C、第4受光部15D及び第5受光部15Eは、各受光素子41A~43Eが受光し、光電変換した信号を変位出力部4に出力する。
上述したように、第5の位相板33は、第2の偏光ビームスプリッタ35に入射する干渉光の偏光方向が第1の偏光ビームスプリッタ34に対して45度傾くように配置されている。そのため、第1受光素子41A~41Eの干渉信号の位相がsinである場合、第2受光素子42A~42Eの干渉信号の位相は、-sinとなる。そして、第3受光素子43A~43Eの干渉信号の位相は、cosとなり、第4受光素子44A~44Eの干渉信号の位相は、-cosとなる。
[変位出力部]
次に、図6及び図7を参照して変位出力部4の構成について説明する。
図6は、変位出力部4を示すブロック図である。
図6に示すように、変位出力部4は、相対位置出力部101と、被測定部材位置情報取得部102と、マップ情報出力部103と、マップ情報記憶器104と、マップ比較情報出力部105とを有している。
相対位置出力部101は、第1受光部15A、第2受光部15B、第3受光部15C、第4受光部15D及び第5受光部15Eが受光し、光電変換した信号を受信する。相対位置出力部101は、受信した信号に基づいて、被測定部材Mの被測定面Maにおけるヘッド3に対する第3の方向Zの相対変化の変位情報を算出し、出力する。なお、相対位置出力部101の詳細な構成については、後述する。そして、相対位置出力部101は、算出した第3の方向Zの変位情報をマップ情報出力部103に出力する。
被測定部材位置情報取得部102は、例えば、ヘッド3とは別に設けられたエンコーダーから被測定部材Mにおけるヘッド3に対する第1の方向X及び第2の方向Yの位置情報を取得する。そして、被測定部材位置情報取得部102は、取得した被測定部材Mにおける第1の方向X及び第2の方向Yの位置情報をマップ情報出力部103及びマップ情報記憶器104に出力する。
なお、本例では、ヘッド3とは別に設けられたエンコーダーから第1の方向X及び第2の方向Yの位置情報を取得する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ヘッド3に被測定部材Mの第1の方向X及び第2の方向Yの位置情報を測定する変位検出部を設け、この変位検出部から被測定部材Mの第1の方向X及び第2の方向Yの位置情報を取得してもよい。
マップ情報出力部103には、予め変位検出部13における照射点P1、P2、P3、P4、P5の位置座標が格納されている。マップ情報出力部103は、相対位置出力部101から出力された被測定面Maにおける第3の方向Zの変位情報と、被測定部材位置情報取得部102がから取得した被測定部材Mにおける第1の方向X及び第2の方向Yの位置情報に基づいて、被測定面Maの状態、すなわちマップ情報を演算し、出力する。
マップ情報出力部103には、マップ情報記憶器104と、マップ比較情報出力部105が接続されている。マップ情報出力部103は、演算した被測定面Maのマップ情報をマップ情報記憶器104とマップ比較情報出力部105に出力する。
マップ情報記憶器104は、被測定部材位置情報取得部102から出力された被測定部材Mにおける第1の方向X及び第2の方向Yの位置情報と、マップ情報出力部103から出力された被測定部材Mのマップ情報を記憶する。また、マップ情報記憶器104には、マップ比較情報出力部105が接続されている。そして、マップ情報記憶器104は、記憶しているマップ情報をマップ比較情報出力部105に出力する。マップ比較情報出力部105は、マップ情報記憶器104に記憶されている第1マップ情報と、マップ情報出力部103から出力された第2マップ情報と、を比較する。
次に、図7を参照して相対位置出力部101の詳細な構成について説明する。
図7は、相対位置出力部101を示すブロック図である。
図7に示すように、相対位置出力部101は、第1相対位置出力部101Aと、第2相対位置出力部101Bと、第3相対位置出力部101Cと、第4相対位置出力部101Dと、第5相対位置出力部101Eと、同期部の一例を示すクロック同期部69を有している。
第1相対位置出力部101Aは、第1受光部15Aから干渉信号を受信し、第2相対位置出力部101Bは、第2受光部15Bから干渉信号を受信し、第3相対位置出力部101Cは、第3受光部15Cから干渉信号を受信する。また、第4相対位置出力部101Dは、第4受光部15Dから干渉信号を受信し、第5相対位置出力部101Eは、第5受光部15Eから干渉信号を受信する。
第1相対位置出力部101Aは、第1光束群L1の第1の光束LA1が被測定面Maに入射した第1照射点P1の第3の方向Zの相対位置情報を算出する。第2相対位置出力部101Bは、第2光束群L2の第1の光束LA2が被測定面Maに入射した第2照射点P2の第3の方向Zの相対位置情報を算出する。第3相対位置出力部101Cは、第3光束群L3の第1の光束LA3が被測定面Maに入射した第3照射点P3の第3の方向Zの相対位置情報を算出する。第4相対位置出力部101Dは、第4光束群L4の第1の光束LA4が被測定面Maに入射した第4照射点P4の第3の方向Zの相対位置情報を算出する。そして、第5相対位置出力部101Eは、第5光束群L5の第1の光束LA5が被測定面Maに入射した第5照射点P5の第3の方向Zの相対位置情報を算出する。
なお、第1相対位置出力部101A、第2相対位置出力部101B、第3相対位置出力部101C、第4相対位置出力部101D及び第5相対位置出力部101Eは、それぞれ同一の構成を有しているため、ここでは第1相対位置出力部101Aについて説明する。
第1相対位置出力部101Aは、2つの差動増幅器61a、61bと、2つのA/D変換器62a、62bと、波形補正処理部63と、インクリメンタル信号発生器64とを備えている。
第1差動増幅器61aには、第1受光素子41Aと第2受光素子42Aが接続されており、第2差動増幅器61bには、第3受光素子43Aと第4受光素子44Aが接続されている。また、第1差動増幅器61aには、第1のA/D変換器62aが接続されており、第2差動増幅器61bには、第2のA/D変換器62bが接続されている。そして、第1のA/D変換器62a及び第2のA/D変換器62bは、波形補正処理部63と接続している。また、波形補正処理部63は、インクリメンタル信号発生器64に接続されている。
第1差動増幅器61aは、第1受光素子41A及び第2受光素子42Aから干渉信号を受信し、第2差動増幅器61bは、第3受光素子43A及び第4受光素子44Aから干渉信号を受信する。第1差動増幅器61a及び第2差動増幅器61bは、それぞれ受信した干渉信号を差増増幅し、干渉信号の直流成分をキャンセルする。
第1差動増幅器61aで差動増幅された信号は、第1のA/D変換器62aによってA/D変換され、波形補正処理部63によって信号振幅とオフセットと位相が補正される。この信号は、例えばA相のインクリメンタル信号としてインクリメンタル信号発生器64において演算される。
また、第2差動増幅器61bで差動増幅された信号は、第2のA/D変換器62bによってA/D変換され、波形補正処理部63によって信号振幅とオフセットと位相が補正される。なお、第1受光素子41A及び第2受光素子42Aで得られる干渉信号の位相がsin信号である場合、第3受光素子43A及び第4受光素子で得られる干渉信号の位相は、cos信号である。そのため、波形補正処理部63で補正された信号は、A相と位相が90度異なるB相のインクリメンタル信号としてインクリメンタル信号発生器64において演算される。
こうして得られた2相のインクリメンタル信号は、図示しないパルス弁別カイロ等により正逆の判別が行われる。これにより、ヘッド3と被測定部材Mとの第3の方向Zの相対的な変位量が、プラス方向であるか、マイナス方向であるかを検出できる。
また、図示しないカウンタによってインクリメンタル信号のパルス数をカウントすることにより、第1の光束LAと第2の光束LBの干渉光強度が上述の周期の何周期分変化したのかを計測できる。これにより、ヘッド3と被測定部材Mとの第3の方向Zにおける相対的な変位量を検出することができる。
また、本例の相対位置出力部101が出力する相対位置情報は、上述の2相のインクリメンタル信号であってもよいし、それから算出された変位量、変位方向を含む信号であってもよい。
なお、インクリメンタル信号発生器64では、1クロックあたりの位相変化を演算することで、被測定部材Mにおける第3の方向Zの変位をデジタル信号として発生させている。
また、第1相対位置出力部101A、第2相対位置出力部101B、第3相対位置出力部101C、第4相対位置出力部101D及び第5相対位置出力部101Eの第1のA/D変換器62aと第2のA/D変換器62bは、クロック同期部69に接続されている。
クロック同期部69は、第1相対位置出力部101A~第5相対位置出力部101Eにおける第1のA/D変換器62aと第2のA/D変換器62bによって出力される信号の時間を同期させている。これにより、第1相対位置出力部101A、第2相対位置出力部101B、第3相対位置出力部101C、第4相対位置出力部101D及び第5相対位置出力部101Eで検出される第3の方向Zの変位量の検出時間を同期させることができる。その結果、被測定面Maにおける複数の箇所(第1照射点P1~第5照射点P5)の第3の方向Zの変位量を同時に検出することができる。
このように、相対位置出力部101A~101Eを構成する要素のうち出力される信号の周波数が高いA/D変換器62a、62bを同期させることで、より正確なマップ情報を取得することができる。
なお、本例では、各相対位置出力部101A~101EのA/D変換器62a、62bをクロック同期部69によって同期させた例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、A/D変換器62a、62bとは異なる要素で同期させてもよく、あるいは相対位置出力部101A~101Eを構成する全ての要素、すなわち2つの差動増幅器61a、61bと、2つのA/D変換器62a、62bと、波形補正処理部63と、インクリメンタル信号発生器64に同期部を接続させて同期させてもよい。
1-2.変位検出装置の動作
次に、図1~図3、図8を参照して、本例の変位検出装置1の動作について説明する。
図8は、変位検出装置の要部を示す説明図である。
図2及び図3に示すように、光源から出射した光Lは、不図示のレンズによりコリメートされて平行光となる。そして、レンズによりコリメートされた平行光は、光束群分割部12に入射する。光束群分割部12に入射した光は、第2の方向Yに所定の間隔H1を空けて、第1光束群L1、第2光束群L2、第3光束群L3、第4光束群L4及び第5光束群L5に分割される。そして、第1光束群L1、第2光束群L2、第3光束群L3、第4光束群L4及び第5光束群L5は、変位検出部13に入射する。
なお、第1光束群L1、第2光束群L2、第3光束群L3、第4光束群L4及び第5光束群L5における変位検出部13から受光検出部15までの光路は、ほぼ同一であるため、ここでは、第1光束群L1について説明する。
変位検出部13に入射した第1光束群L1は、光束分割部21により物体光となる第1の光束LAと、参照光となる第2の光束LBに分割される。第1の光束LA及び第2の光束LBは、第1反射透過部22を透過する。そして、第1の光束LAは、被測定部材Mの被測定面Maに入射し、第2の光束LBは、ミラー24に入射する。
上述したように、第1光束群L1の第1の光束LA1は、被測定面Maの第1照射点P1に入射する。第2光束群L2の第1の光束LA2は、被測定面Maの第2照射点P2に入射する。第3光束群L3の第1の光束LA3は、被測定面Maの第3照射点P3に入射する。第4光束群L4の第1の光束LA4は、被測定面Maの第4照射点P4に入射する。第5光束群L5の第1の光束LA5は、被測定面Maの第5照射点P5に入射する。
第1照射点P1、第2照射点P2、第3照射点P3、第4照射点P4及び第5照射点P5は、第1の方向Xにおいて同じ座標である。そして、第1照射点P1、第2照射点P2、第3照射点P3、第4照射点P4及び第5照射点P5は、第2の方向Yに沿って所定の間隔H1を空けて配置される。この第1照射点P1、第2照射点P2、第3照射点P3、第4照射点P4及び第5照射点P5における第2の方向Yの間隔、すなわち照射点の座標は、後述する変位出力部4に予め格納されている。
ここで、図8に示すように、被測定部材Mが基準位置にある場合、第1の光束LAは、被測定部材Mの基準点P0に入射角θ1で入射する。そして、第1の光束LAは、被測定部材Mによって1回目の反射をし、第1の位相板26(図3参照)を介して第2反射透過部25に入射する。第1の光束LAは、第1の位相板26を通過することで、p偏光からs偏光に偏光方向が変化する。そのため、第1の光束LAは、第2反射透過部25の反射透過面25aによって反射し、回折格子23の任意の回折位置T0に入射角π/2-θ1で入射する。
第1の光束LAは、回折格子23により回折されて、第1反射透過部22に入射する。上述したように、第1の光束LAは、s偏光に偏光方向が変化しているため、第1反射透過部22の反射透過面22aによって反射され、再び被測定部材Mの被測定面Maに入射する。
ここで、第1反射透過部22の反射透過面22aは、回折格子23によって回折された第1の光束LAを一回目と同じ基準点Pに同じ入射角θ1で入射可能なように配置されている。そのため、被測定部材Mが基準位置にある場合、第1の光束LAは、一回目とほぼ同じ位置である被測定部材Mの基準点P0に入射角θ1で入射する。
その後、第1の光束LAは、1回目の光路とほぼ同じ光路をたどり、被測定部材Mによって反射されて、第1の位相板26(図3参照)を介して第2反射透過部25に入射する。第1の光束LAは、第1の位相板26を通過することで、s偏光からp偏光に偏光方向が変化する。そのため、第1の光束LAは、第2反射透過部25を透過し、光束結合部28に入射する。
なお、被測定部材Mの基準点P0に入射されて、図8に実線で示す第1の光束LAの光路を基準光という。
このように、被測定部材Mが基準位置にある場合、本例では、第1の光束LAにおける被測定部材Mに対する1回目の照射位置と2回目の照射位置を基準点P0のほぼ同じ位置に照射させることができる。これにより、被測定部材Mにおける検出ポイント間隔Qを極力小さくすることができる。
また、図3に示すように、物体光である第2の光束LBは、ミラー24で反射されて、第2の位相板27を介して第2反射透過部25に入射する。第2の光束LBは、第2の位相板を通過することで、p偏光からs偏光に偏光方向が変化する。そのため、第2の光束LBは、第2反射透過部25によって反射されて、回折格子23に入射する。そして、第2の光束LBは、回折格子23によって回折されて、第1反射透過部22に入射する。
第2の光束LBは、s偏光であるため、第1反射透過部22によって反射され、再びミラー24に入射する。そして、第2の光束LBは、ミラー24によって反射されて、第2の位相板27を介して第2反射透過部25に入射する。第2の光束LBは、第2の位相板を通過することで、s偏光からp偏光に偏光方向が変化する。そのため、第2の光束LBは、第2反射透過部25によって透過する。
第2反射透過部25を透過した第2の光束LBは、第3の位相板29を介して光束結合部28に入射する。
ここで、第1の光束LAにおける光束分割部21から光束結合部28までの光路長と、第2の光束LBにおける光束分割部21から光束結合部28までの光路長は、互いに等しくなるように、ミラー24が配置されている。これにより、変位検出装置1を製造する際に、第1の光束LAの光路長と第2の光束LBの光路長や光軸の角度を調整し易くすることができる。その結果、気圧補正、湿度補正や温度補正を行うことなく、周囲環境に関わらず安定した測定を行うことができる。
さらに、第1の光束LA及び第2の光束LBを同じ回折格子23に入射させて回折させている。これにより、温度変化によって回折格子23の回折角に変化が起きても、第1の光束LA及び第2の光束LBが受ける影響を等しくすることができる。
ここで、図8に示すように、被測定部材Mが基準位置から第3の方向Zである高さ方向へz/2だけ移動した場合について説明する。
図8に示すように、被測定部材Mが基準位置から高さ方向へz/2だけ移動すると、1回目の第1の光束LAの照射位置は、被測定部材Mの基準点P0から第1の照射位置Pb1に移動する。なお、被測定部材Mへの入射角θ1は、基準点P0に照射される第1の光束LAの入射角θ1と同じである。そして、第1の光束LAは、点線で示す光路をたどり、回折格子23に入射角π/2-θ1で入射する。なお、被測定部材Mへの入射角が等しいため、移動した際の第1の光束LAにおける回折格子23への入射角π/2―θ1は、基準光路をたどる第1の光束LAの回折格子23への入射角π/2-θ1と同じである。
さらに、第1の光束LAにおける回折格子23への入射位置は、回折位置T0から回折位置T1に移動する。ここで、回折格子23は、被測定部材Mの被測定面Maに対して略直角に配置されているため、回折位置T0と回折位置T1の間隔は、被測定部材Mの移動距離の2倍のzとなる。そして、第1の光束LAには、回折格子23上を移動したz分の波数のみの位相が加算される。
そして、第1の光束LAは、第1反射透過部22に反射されて、再び被測定部材Mに入射する。2回目の第1の光束LAの照射位置は、被測定部材Mの第1の照射位置Pb1から第2の照射位置Pb2に移動する。なお、被測定部材Mへの入射角θ1は、基準点P0に照射される第1の光束LAの入射角θ1及び、1回目の第1の光束LAの入射角θ1と同じである。
また、被測定部材Mに照射された2回目の第1の光束LAは、一点鎖線で示す光路は、実線で基準光路と一致するさらに、第1の光束LAの光路長は、被測定部材Mが高さ方向に変位しても、常に一定となっている。すなわち、第1の光束LAの波長は、変化しない。従って、第1の光束LAには、回折格子23上を回折位置T0から回折位置T1まで移動したz分の波数のみの位相が加算される。
また、変位検出装置1は、第1の照射位置Pb1と第2の照射位置Pb2の間の中心位置Paを検出位置として、検出する。図8に示すように、中心点Paは、基準点P0とほぼ一致している。そのため、被測定部材Mが高さ方向に移動しても、常にほぼ同じ検出位置の変位を検出することができる。これにより、検出ポイント間隔Qが狭い被測定面の計測が可能となる。
図3に戻り、光束結合部28に入射した第1の光束LAは、p偏光であるため、光束結合部28を透過する。また、第2の光束LBは、第3の位相板29を通過することで、s偏光からp偏光に偏光方向が変化する。そのため、光束結合部28に入射した第2の光束LBは、光束結合部28によって反射される。これにより、第1の光束LAと第2の光束LBは、光束結合部28により重ね合わされて、干渉光LCとなる。そして、干渉光LCは、受光検出部15の第4の位相板31に入射する。
ここで、第1の光束LAがp偏光であり、第2の光束LBがs偏光であるため、干渉光LCが第4の位相板31を通過することで、第1の光束LAと第2の光束LBは、回転方向が互いに逆向きの円偏光となる。また、第1の光束LAには、回折格子23上を移動した分の波数の位相が加算されている。そのため、第1の光束LAにおける回折格子23上を移動した分の波数の位相加算に伴って回転する直線偏光を有する干渉光を得ることができる。この直線偏光の回転は、被測定部材Mが回折格子23の格子ピッチΛだけ高さ方向に移動すると1回転する。
また、干渉光LCは、ビームスプリッタ32により2つに分割される。分割された光のうち一方の光は、第1の偏光ビームスプリッタ34に入射し、他方の光は、第5の位相板33を介して、第2の偏光ビームスプリッタ35に入射する。そして、第1の偏光ビームスプリッタ34及び第2の偏光ビームスプリッタ35は、s偏光成分を有する干渉光を反射させ、p偏光成分を有する干渉光を透過させて、光を分割する。
第1の偏光ビームスプリッタ34を透過した干渉光は、第1受光素子41Aによって受光される。また、第1の偏光ビームスプリッタ34によって反射された干渉光は、第2受光素子42Aによって受光される。ここで、第1受光素子41Aと第2受光素子42Aとによって光電変換される信号は、180度位相の異なる信号となる。
同様に、第2の偏光ビームスプリッタ35を透過した干渉光は、第3受光素子43Aによって受光される。また、第2の偏光ビームスプリッタ35を透過した干渉光は、第4受光素子44Aによって受光される。ここで、第3受光素子43Aと第4受光素子44Aとによって光電変換される信号は、180度位相の異なる信号となる。
第1受光素子41Aと第2受光素子42A、第3受光素子43Aと第4受光素子44Aは、Acos(2Kx+δ)の干渉信号を得る。Aは、干渉の振幅であり、Kは2π/Λで示される波数である。また、xは、被測定部材Mにおける第3の方向Zである高さ方向の変位量を示しており、δは、初期位相を示している。Λは、回折格子23における格子のピッチである。
上述したように、被測定部材Mが高さ方向にz/2だけ移動すると、被測定部材Mの測定面に照射される第1の光束LAは、基準点P0から第1の照射位置Pb1に移動する。また、被測定部材Mに反射された第1の光束LAは、回折格子23の回折位置T0から回折位置T1に移動する。そして、回折位置T0と回折位置T1の間隔は、基準点P0と第1の照射位置Pb1の間隔の2倍のzとなる。すなわち、回折格子23上を移動する第1の光束LAの移動量は、被測定部材Mを移動した際の2倍のzとなる。
また、回折格子23が被測定部材Mの被測定面に対して略直角に配置されているため、被測定部材Mが高さ方向に変位しても、第1の光束LAの光路長は常に一定となり、第1の光束LAの波長は、変化しない。そして、被測定部材Mが第3の方向Z(高さ方向)に変位すると、回折格子23に入射する位置だけが変化する。
すなわち、被測定部材Mが高さ方向にzだけ移動すると、回折された第1の光束LAには、2Kzの位相が加わる。そのため、2周期の光の明暗が生じる干渉光が、第1受光素子41A、第2受光素子42A、第3受光素子43A及び第4受光素子44Aによって受光される。
ここで、第1受光素子41A、第2受光素子42A、第3受光素子43A及び第4受光素子44Aによって得られる干渉信号には、光源11の波長に関する成分が含まれていない。よって、気圧や湿度、温度の変化による光源11の波長に変動が起きても干渉強度には、影響を受けない。
さらに、第3受光素子43Aと第4受光素子44Aにおいて得られる信号は、第1受光素子41Aと第2受光素子42Aにおいて得られる信号に対し、90度位相がずれている。したがって、第1受光素子41Aと第2受光素子42Aで得られる信号をsin信号とし、第3受光素子43Aと第4受光素子44Aにおいて得られる信号をcos信号とすることで、リサージュ信号を取得することができる。
これらの受光素子によって得られる信号は、変位出力部4の相対位置出力部101による演算され、被測定面Maにおける第1照射点P1、第2照射点P2、第3照射点P3、第4照射点P4及び第5照射点P5の変位量を検出することができる。なお、クロック同期部69により、第1相対位置出力部101A、第2相対位置出力部101B、第3相対位置出力部101C、第4相対位置出力部101D及び第5相対位置出力部101Eは、クロック同期部69により同期が取られているため、被測定面Ma上の複数の点の変位量を同時に検出することができる。
なお、相対位置出力部101による出力される変位情報には、絶対位置情報が含まれない。しかしながら、インクリメンタル信号には、周期がcos(2Kx)のアブソリュート情報が含まれる。例えば、回折格子23のピッチが1.6μmである場合、インクリメンタル信号には、1周期0.8μmのアブソリュート情報が含まれる。例えば、高精度な半導体製造装置の場合、ステージ上の被測定部材Mの高さを計測するに当たって、0.8μmの高さの繰り返し再現性でステージを移動させることは容易である。
相対位置出力部101は、演算した各照射点P1、P2、P3、P4、P5における第3の方向Zの変位情報をマップ情報出力部103に出力する。また、マップ情報出力部103には、被測定部材位置情報取得部102から被測定部材Mにおける第1の方向X及び第2の方向Yの位置情報が出力されている。これにより、マップ情報出力部103は、各照射点P1、P2、P3、P4、P5の被測定面Maにおける第1の方向X及び第2の方向Yの座標位置を演算する。そして、マップ情報出力部103は、相対位置出力部101から出力された各照射点P1、P2、P3、P4、P5における第3の方向Zの変位情報と、各照射点P1、P2、P3、P4、P5における第1の方向X及び第2の方向Yの座標位置とを対応付ける。これにより、マップ情報出力部103は、被測定面Maにおける各点の第3の方向Zの変位情報を出力することができる。
さらに、図1に示すように、ヘッド3又は被測定部材Mを第1の方向Xに移動させた際に、マップ情報出力部103は、各照射点P1、P2、P3、P4、P5における第3の方向Zの変位情報と、被測定部材Mにおける第1の方向X及び第2の方向Yの位置情報を同時に取得する。これにより、被測定部材Mの被測定面Ma全体の状態(マップ情報)を高速に検出することができる。その結果、高精度に被測定部材Mの高さ方向(第3の方向Z)の変位を高分解能かつ安定して検出でき、測定作業にかかる時間の短縮を図ることができる
また、マップ情報出力部103が演算したマップ情報をマップ情報記憶器104に記憶させる。そして、マップ比較情報出力部105により、マップ情報記憶器104に記憶されている以前に測定した第1マップ情報と、マップ情報出力部103から出力された現時点の被測定面Maの状態を示す第2マップ情報とを比較する。なお、第2マップ情報は、第1マップ情報よりも新しい情報である。これにより、図1に示すように、基準となる基準被測定部材MAと、他の被測定部材Mとの第3の方向Zの変位量、すなわち形状の違いを比較することができる。
図9は、本例の変位検出装置1における変位検出動作の他の例を示す説明図である。
さらに、図9に示すように、ヘッド3又は被測定部材Mを第1の方向Xに沿って往復移動させることで、被測定部材Mの初期値に対する経時的な変化を観察することもできる。これにより、被測定部材Mを加工する前と、加工した後のマップ情報を取得することができる。
2.第2の実施の形態例
次に、第2に実施の形態例にかかる変位検出装置について図10を参照して説明する。
図10は、第2の実施の形態例にかかる変位検出装置の光照射部を示す概略構成図である。
この第2の実施の形態例にかかる変位検出装置が第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と異なる点は、光照射部の構成である。そのため、ここでは、光照射部についてのみ説明し、第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図10に示すように、第2の実施の形態例にかかる変位検出装置の光照射部は、光源11と、コリメートレンズ18と、アイソレータ19と、不図示の光束群分割部を有している。コリメートレンズ18とアイソレータ19は、光源11と光束群分割部の間に配置される。
コリメートレンズ18は、光源11から照射された光Lを平行光にコリメートし、アイソレータ19に照射する。光Lを平行光にコリメートすることで、十分なビーム径を確保することができる。これにより、被測定面Maに小さな凹凸や異物があった場合でも、平均化することができ、干渉信号の乱れを緩和することができる。
アイソレータ19は、光Lを一方向だけ通過させ、逆方向には光を遮断する光学素子である。光源11から出射された光Lが直線偏光である場合、アイソレータ19によって直線偏光の向きが変わる。
これにより、変位検出部13に照射され、変位検出部13によって反射された0次光が光源11に戻ることをアイソレータ19により抑制することができる。その結果、光源11の不要光によるモードホップ、いわゆる波長の飛びが発生することを軽減することができる。
その他の構成は、第1の実施の形態にかかる変位検出装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような光照射部を有する変位検出装置によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と同様の作用効果を得ることができる。
3.第3の実施の形態例
次に、第3に実施の形態例にかかる変位検出装置について図11を参照して説明する。
図11は、第3の実施の形態例にかかる変位検出装置のヘッド内部の構成を示す概略構成図である。
この第3の実施の形態例にかかる変位検出装置が第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と異なる点は、光照射部の構成である。そのため、ここでは、光照射部についてのみ説明し、第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図11に示すように、第3の実施の形態例にかかる変位検出装置は、複数の光源11A、11B、11C、11D、11Eと、変位検出部13Aと、受光検出部15と、不図示の変位出力部とを有している。複数(5つ)の光源11A、11B、11C、11D、11Eは、第2の方向Yに沿って並べて配置されている。なお、第1光源11Aからは、第1光束群L1が照射され、第2光源11Bからは、第2光束群L2が照射され、第3光源11Cからは第3光束群L3が照射される。そして、第4光源11Dからは、第4光束群L4が照射され、第5光源11Eからは、第5光束群L5が照射される。
そして、第1光束群L1は、変位検出部13Aの光束分割部21によって物体光となる第1の光束LA1と、参照光となる第2の光束LB1に分割される。そして、第1の光束LA1と第2の光束LB1は、光束結合部28により重ね合わされて干渉光LC1となる。干渉光LC1は、受光検出部15に入射する。
また、第2光束群L2、第3光束群L3、第4光束群L4、第5光束群L5における変位検出部13Aから受光検出部15までの光路は、第1光束群L1と同様であるため、その説明は省略する。
その他の構成は、第1の実施の形態にかかる変位検出装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このように複数の光源11A~11Eを有する変位検出装置によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる変位検出装置1と同様の作用効果を得ることができる。
なお、第3の実施の形態例にかかる変位検出装置によれば、光束群分割部を省略することができるだけでなく、受光検出部15で検出される光量を増加させることができる。また、第3の実施の形態例にかかる変位検出装置においても、第2の実施の形態例にかかる変位検出装置のように、光源11A~11Eと変位検出部13Aの間に、コリメートレンズ18及びアイソレータ19を配置してもよい。
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。上述した実施の形態例では、光源から照射される光は、気体中だけでなく、液体中又は真空中の空間を飛ばして光を供給するようにしてもよい。
また、ミラー24を被測定部材Mの移動に連動するように移動させてもよい。すなわち、被測定部材Mにおける高さ方向の移動量と同じ移動量だけミラー24を移動させる。これにより、第2の光束LBに第1の光束LAと正負の異なる位相を加えることができる。