JP7151301B2 - 水封システムおよび水封の復旧方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水封システムおよび水封の復旧方法に関する。
石炭を乾留して製鉄用のコークスを製造すること等に用いられるコークス炉は、炭化室と燃焼室が交互に複数設けられている。このコークス炉は、密閉された炭化室に装入された石炭へ、該炭化室に隣接する燃焼室で発生させたガスの熱を、炉壁レンガを介して伝え、石炭をコークスヘと乾留する(たとえば、特許文献1)。
図1に、石炭乾留中のある一つの炭化室1内の様子を模式的に示す。石炭2の乾留時には、石炭中の揮発成分が石炭ガス3として放出され、該石炭ガス3は、図1に矢印で示すように、石炭層の上部から上昇管4を通じてドライメイン(一種のガス溜め)5ヘ送られ、回収し、種々の用途に利用されている。すなわち、各々の炭化室1には、各々上昇管4が設けられ、各々の上昇管4から、ドライメイン5へと送られ、一括して集められる。
上昇管4には、上昇管蓋6が設けられており、この上昇管蓋6は、一日一回程度開閉して、上昇管4の内部に生成している石炭ガス3の状態を確認する。石炭ガス3の生成の状態は、上昇管蓋6を開き(図2(B))、開いた口に着火してガスの発生を確認するなどして行う。
通常は、上昇管蓋6は閉じられており(図2(A))、それにより上昇管4内部の石炭ガス3を漏えいさせないようにしている。この上昇管蓋6により、上昇管4の内部と外気を隔てるには、図2に示したような、水封部7を設けることが一般に行われている(特許文献2)。図3により、水封する構造について説明する。
通常、水封部7には、常に補給手段8から水封水21が補給され(水封水の流れ20で示した。)、水封部7よりオーバーフロー9をさせて、上昇管蓋6が閉じている間は、この水封水により内部のガスが漏えいすることを防止している。このように、水封部7に必要な量の水封水を維持管理するために、常に水を補給して水封部7よりオーバーフロー9をさせることを、オーバーフロー管理という。圧力容器としてのコークス炉の上昇管4は、内部が通常、完全密閉が必要なほど高圧にはならない。さらに、上昇管4は、粉塵、高温環境であり、頻繁に上昇管蓋6が開け閉めされるため、Oリング等で密閉してしまうとメンテナンスが困難である。そのため、上昇管4の内外のガスの遮断は水封が好ましいため、水封が採用されている。
特開2002-294242号公報 特開2003-64369号公報
しかしながら、コークス炉の炭化室1において、突発的に石炭ガス3の出入バランスが崩れ、上昇管4の内部の圧力が急激に上昇することがある。もともと、水封による密閉は、低圧ガスの漏えいを防止するためのものであるため、突発的、短時間とはいえ内圧が上がり過ぎると、ガスの圧力により水封水が押し出されて消失する。水封水が消失すると、内部のガスが漏えいする状態となってしまう。
この突発的な内部の圧力上昇は、別途設置の圧力放散設備により直ちに定常圧力に降下するため、一般に、長時間続くことはなく、すぐに通常の内圧に戻る。ただ、通常の内圧に戻ったとしても、水封水の消失により一度破れた水封は、すぐには復旧するわけにはいかない。
上記のように水封水が消失しても、長時間が経過すれば、水封部7に、補給手段8から常に補給されている水により十分な水封水がたまることにより水封が復旧する。しかしながら、常にオーバーフロー9をさせて水を流している都合上、この水封水の補給は、単位時間当たりあまり多くの水を流していないので、復旧には時間がかかる。いつ起こるかわからない突発的で、短時間の内部の圧力の上昇に備えて、水封水の補給量を常に多量にすることは、通常時の通水量が過大となり水の確保、排水処理に問題がある。
また、水封部7の水封水が消失することを防ぐために、水封水の水深を深くして水封水の自重を増加させることも考えられるが、上昇管蓋6の開閉の構造上、200mm以上の水深とするなど、水封水の水深をあまり深くすることが難しい。
以上をまとめると、次のようなことになる。
1.上昇管4内圧上昇時の水封水消失の対策として、ガスの漏えい防止のため速やかに水封を復旧する必要がある。
2.従来の方法では、水封水消失時は、水封復旧までに時間がかかりその間ガスの漏えいを止められないため、ガスの漏えいによる安全・環境リスクを抱えていた。
3.ガスが漏えいするリスクを低減できるよう早期に復旧させるためには、定常補給水量を増加させたり、定常補給水量を増加させると通常時の通水量が過大となり水の確保、排水処理のコストが大きくなる。
4.ガスの漏えいを防止するためには、水封の水深を深くしなければならないが、水深を深くすると、水封部7の構造設計に制約が加わる。
以上の問題をかんがみて、本発明は、簡単な構造により、深い水封の水深を適用しなくとも、水封水が消失しにくく、水封が復旧するまでの時間が短い水封システムと水封の復旧方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明者は、上昇管4内圧(容器内圧)の圧力上昇降下後に速やかに水封水を供給するシステムとして、上昇管4内の圧力上昇による水封水の消失が起こった際も圧力降下後に速やかに水封水本管から水封水を供給する水封復旧システムを発明した。
すなわち、上記の本発明の課題を解決するための要旨は以下のとおりである。
(1)所定の水量を保持して圧力容器内を水封する水封部を有する水封システムであって、前記水封部は、枝管を有し、前記枝管は、水平に設けられた本管に接続され、前記本管は、前記水封部が前記所定の水量を保持したときの水封水の高さと、前記本管の内径内の水の高さが一致する高さに設けられ、前記本管に水を補給するための補給手段が設けられていることを特徴とする水封システム。
(2)(1)に記載の水封システムを用いた水封の復旧方法であり、前記水封システムは、本管に接続したタンクを有し、前記タンクに、前記補給手段から、定常的に水を補給し、オーバーフローさせることを特徴とする水封の復旧方法。
本発明によれば、従来に比べ、水封水の量を低減でき、容器内圧降下後速やかに水封が復旧可能である。また、容器圧力をスイッチにするため圧力降下直後の最適なタイミングでの給水が可能である。さらに、対象の水封部7が増加しても本管から枝管を複数出すことで対応可能である。
炭化室1からの石炭ガス3の流れを説明するための図である。 一般的な上昇管4の構造を示した図である。(A)上昇管蓋6が閉じられている状態を示した図。(B)上昇管蓋6を開いた状態を示した図。 従来の水封システムを説明する図である。 本発明の水封システムを説明する図である。(A)通常の状態。(B)圧力容器内のガス圧が急激に上昇して水封水が水封部7から消失した状態。(C)水封が復旧していく状態。 各水封部7に設けた各々の枝管を一つの本管に接続した本発明の態様を示した図である。
本発明の実施の形態について、上昇管4の水封部7を例として、図4を参照して詳細に説明する。図4(A)は、通常の状態、図4(B)は、圧力容器内(上昇管4内)のガス圧が急激に上昇して水封水が水封部7から消失した状態、図4(C)は、水封が復旧していく状態を示している。
図4において、4は上昇管、6は上昇管蓋、7は上昇管4の水封部、8は水封水21の補給手段、10は枝管、11は本管、12はタンクを示している。本発明は、水封部7と補給手段8の間に、水封水供給用の枝管10と本管11を設けたことを特徴とする。図4において、枝管10の長さは実際より短く描いている。
枝管10は、水封部7に一端が直接接続され、他端が、本管11に接続されている。図4に示した例においては、枝管10が動圧により本管まで水封水が押し出されない十分な長さを有しているため、内圧上昇による水封水の押し出しを、枝管10(細管)による圧力損失で補うことで水封水が通じる配管内の水を保持し、圧力降下後速やかに水封が復旧する。
一方、図4に示した例において、本管11は、枝管10が十分に長いため、本管11内には押し出されて消失した水封水の補給に必要な水が保持できる。また、本管11は、水封部7の水封のための水量が、所定の水量となる高さに設けられているため、一旦、上昇管4内の急激な内圧の上昇により水封水が消失しても(図4(B))、水封水の自重により、水封水が本管11より枝管10を通じて補給されるので(図4(C))、速やかに所定の位置まで水封を復旧することができる。
この「水封部7の水封のための水量が、所定の水量となる高さ」とするための本管11の高さは、水封水の所定の高さと、本管11の内径内の水の高さが一致する高さである。本管11内に、十分な水がたまり、その本管11内の水の高さが、水封水の所定の高さとなるようにすればよい。
なお、本管11の内径は、一度の給水に必要な水が保持化可能な径を選定する。この径は、水封部7に必要な水の量によって適宜決定することができる。たとえば、水封部の内径d200~300mm、水封部の外径D330~340mm、水封部の深さh100~150mm、水封部の幅W50~150mmの円形の水封部7に適用する場合、水封部7の一つあたり、本管11の内容積は、6000000~36000000mm3が好ましい。
本管11は一端を、水封水を貯めるタンク12に接続し、このタンク12に水を常に補給手段8から水封水を供給し、オーバーフロー管理で水封水を貯めた本管11内の水切れを防ぐことが好ましい。オーバーフロー用のタンク12を設けることで、水封部7にてオーバーフロー9でオーバーフロー量を管理するよりも、水封水管理が容易になる。
また、図4に示した例では、本管11から、水の自重により枝管10を通じて水封部7に水が補給されている。しかしながら、これに代えて、別の態様として、本管11の水位を測定する水位計と水位計の値に基づいて水を供給できる補給手段8を設けてもよい。この場合、水封部7の水封水の管理は、オーバーフロー管理でなくともよい。
さらに、上昇管4に本発明の水封システムを適用する場合、図5に示したように、複数の水封部7から延びた複数の枝管10を、一つの本管11に接続することが好ましい。これにより、どこの上昇管4の水封部7において、水封水の消失により水封が破れても、速やかに、水封水の補給を行うことできるため、水封の復旧も速やかである。1箇所の上昇管4の水封部7で水封水が消失した場合、本管11は1炉団の全長に延びているので、本管11の全長に保持された水がすべて補給源となる。
以上説明したように、本発明の水封システムと水封の復旧方法は、コークス炉の上昇管4のような圧力容器の水封部に好適に使用できる。
本発明によれば、低圧ガスの漏えい防止の水封水が内圧の局所的かつ一時的な上昇により消失した際に、速やかに水封水を復旧しガスの漏えいを最小限にとどめることができる。
また、オーバーフロー9の水量を増加させる必要もなく、水封部7の水深を深くする必要もないので、少ない水封水で水封できるため機械設計も容易であり、オーバーフローされた排水処理も容易である。
本発明によれば、上昇管4に限らず、低圧ガスの圧力容器内の水封の復旧が速やかに、かつ、水の消費を抑えることができるため、さまざまな用途の水封に適用可能である。
1………炭化室
2………石炭
3………石炭ガス
4………上昇管
5………ドライメイン
6………上昇管蓋
7………水封部
8………補給手段
9………オーバーフロー
10……枝管
11……本管
12……タンク
h………水封部の深さ
W………水封部の幅
d………水封部の内径
D………水封部の外径
20……水封水の流れ
21……水封水

Claims (2)

  1. 所定の水量を保持して圧力容器内を水封する水封部を有する水封システムであって、前記水封部は、枝管を有し、前記枝管は、水平に設けられた本管に接続され、前記本管は、前記水封部が前記所定の水量を保持したときの水封水の高さと、前記本管の内径内の水の高さが一致する高さに設けられ、前記本管に水を補給するための補給手段が設けられていることを特徴とする水封システム。
  2. 請求項1に記載の水封システムを用いた水封の復旧方法であり、前記水封システムは、本管に接続したタンクを有し、前記タンクに、前記補給手段から、定常的に水を補給し、オーバーフローさせることを特徴とする水封の復旧方法。
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