JP7140328B2 - 筋張力測定用基板、当該筋張力測定用基板を用いる筋張力測定器及び装置並びに筋張力測定方法、スクリーニング方法及び評価指標として使用する方法 - Google Patents

筋張力測定用基板、当該筋張力測定用基板を用いる筋張力測定器及び装置並びに筋張力測定方法、スクリーニング方法及び評価指標として使用する方法 Download PDF

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本発明は、筋張力測定用基板、当該筋張力測定用基板を用いる筋張力測定装置及び方法、当該筋張力測定方法を用いるスクリーニング方法及び評価指標として使用する方法に関する。
骨格筋量の減少は種々の疾病を引き起こす要因となる。骨格筋量の減少として、加齢に伴って筋の量や質が低下する老人性筋萎縮(サルコペニア)が知られているが、病態解明と治療法はいまだ確立していない。筋の収縮力は萎縮度を全体的に捉える良い指標となることから、ヒトのサルコペニアの重要な判定基準の一つとなっている。現在の筋萎縮の研究では、モデル動物やヒトを対象に筋力を測定することが主流である。基礎研究では倫理的、時間的、経済的な障壁が比較的小さい骨格筋細胞が汎用されているが、現在のところ骨格筋細胞を用いて筋の収縮力を判断できる手法はなく、骨格筋細胞のタンパク質合成能力や分解を指標とした間接的な測定で筋萎縮やその改善度を判断しており、骨格筋細胞を用いた収縮力測定系の開発が必要とされている。
筋細胞の筋収縮力を出力する手法として、等尺性収縮の評価系を適用して、コラーゲンを主体とする長尺状の支持体の上に筋細胞を接着保持してなる複合体に、電気パルスを印加して筋細胞の収縮を発生させ、長尺状の支持体に生じる歪を歪ゲージにより測定する手法が提案されている(特許文献1)。
非筋ミオシンアクチンによる等尺性収縮を観察して、平滑筋細胞が常時発揮している力を測定する手法が提案されている(非特許文献1及び2)。非特許文献1には、中央に開口を有する枠の中央開口部の底面にポリジメチルシロキサン(PDMS)シートを位置づけ、PDMSシートの下から円錐形テンプレートを挿入してPDMSシートの中央部を上方向に持ち上げ、同時に酸素プラズマで処理して、PDMSシートに皺を発生させ、次いで円錐形テンプレートを取り除いて、PDMSシートに同心円状の微細な皺を残して測定用基板として、この測定用基板のPDMSシートの上に、同心円の中心(円錐形テンプレートの頂点があった位置)から放射状に非筋細胞を並べて播種して、観察したことが報告されている。非特許文献2には、ポリスチレン基板の上にPDMSシートを位置づけ、60℃に加熱して熱膨張させながら酸素プラズマ処理を施してPDMSシートの表面に酸素層を形成させて、次いで室温に戻して酸素層に皺を発生させ、さらに、37℃に加熱して熱膨張させて皺を伸ばした後に、マウス肺繊維芽細胞(MEF)、イヌ腎臓尿細管上皮細胞由来の細胞株(MDCK)、ヒト骨肉種細胞(Sarcoma)を播種して37℃で培養して皺の状態を観察したことが報告されている。
特許5549547号公報
"Conformational plasticity of JRAB/MICAL-L2 provides "law and order" in collective cell migration", Sakane, Y., Deguchi, S., et al., Molecular Biology of the Cell, 27 (2016) 3095-3108, "New wrinkling substrate assay reveals traction force fields of leader and follower cells undergoing collective migration", Sho Yokoyama, Tsubasa S. Matui, Shinji Deguchi, Biochemical and Biophysical Researcn Communication 482 (2017) 975-979
本発明は、筋細胞の収縮を測定することができる筋張力測定用基板、及び筋張力測定用基板を用いる筋張力測定装置、並びに筋張力測定方法、スクリーニング方法及び評価指標として使用する方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、筋細胞の収縮を測定することができる筋張力測定用基板、筋張力測定装置及び方法、筋張力測定方法を用いるスクリーニング方法及び評価指標として使用する方法が提供される。具体的態様は以下のとおりである。
[1]光透過性基板と、当該光透過性基板の上に積層されているシリコーンゲルと、当該シリコーンゲルの表面にプラズマ処理により形成されている親水性の表面硬化層と、を有し、当該表面硬化層に筋細胞を載置して電気刺激を印加する際に、筋細胞の収縮により親水性の表面硬化層に皺が形成され得る筋張力測定用基板。
[2]前記[1]に記載の筋張力測定用基板と、当該筋張力測定用基板に電気刺激を印加する電極と、を具備する筋張力測定器。
[3]前記筋張力測定用基板と、前記電極とを有する区画を2個以上有し、少なくとも1個の区画は対照区画を構成し、少なくとも1個の区画は測定区画を構成する、前記[2]に記載の筋張力測定器。
[4]前記[2]又は[3]の筋張力測定器と、光学顕微鏡と、当該光学顕微鏡により観察される当該筋張力測定用基板の親水性の表面硬化層に形成される皺の変化量を計算する画像処理及び解析手段と、を具備する筋張力測定装置。
[5]前記[1]に記載の筋張力測定用基板に筋細胞を載置し、前記筋張力測定用基板に電気刺激を印加し、電気刺激により収縮した筋細胞の皺を解析し、皺の変化量を算出する、筋張力測定方法。
[6]前記[1]に記載の筋張力測定用基板に筋細胞を載置し、前記筋張力測定用基板に電気刺激を印加し、電気刺激により収縮した筋細胞の皺を解析し、皺の変化量を算出して得られる筋張力評価を比較するスクリーニング方法。
[7]前記[1]に記載の筋張力測定用基板に筋細胞を載置し、前記筋張力測定用基板に電気刺激を印加し、電気刺激により収縮した筋細胞の皺を解析し、皺の変化量を算出して、筋線維の状態を評価する指標として使用する方法。
前記[5]~[7]において、筋張力測定用基板に載置した初期状態の筋細胞の画像を取得し、前記筋張力測定用基板に電気刺激を印加し、電気刺激により収縮した筋細胞の皺と上記初期状態の筋細胞とを対比して該皺を解析し、皺の変化量を算出することが好ましい。また、「皺の変化量」は、初期状態の筋細胞の画像と、電気刺激を印加した状態の筋細胞の画像とを比較し、電気刺激により発生した皺の長さの合計(以後「皺の総長」という。)として求めることができる。「皺の変化量」又は「皺の総長」は、測定対象若しくは評価に用いられる筋線維によって多少の増減はあり、正常な場合の皺の総長に比して、本発明の方法により皺の総長を測定した場合の皺の総長が、当該筋線維において統計的に有意差があると認められる場合には筋線維に異常があると認められる。具体的には、正常な筋線維と比較して、望ましくは10%以上、更に望ましくは15%以上の差(増減)があった場合には、筋線維の肥大や萎縮など筋線維に異常があると認められる。ただし、これらの差の数値については、筋線維の種類や異常の種類によって変動するものである。
本発明が適用できる筋細胞としては、電気刺激によって筋収縮が生じ、本発明の筋張力測定用基板に皺を形成することができるものであれば特に限定されない。たとえば、骨格筋細胞、心筋細胞及び平滑筋細胞などの成熟細胞ばかりでなく、筋管細胞、筋芽細胞、筋骨格サテライト細胞、間葉系幹細胞、心筋前駆細胞、心筋幹細胞、平滑筋前駆細胞などの未成熟細胞にも好適に適用することができる。筋細胞は、培養細胞であることが好ましく、生体から採取後、一定期間培養された細胞であればよく、初代培養細胞も含まれる。初代培養細胞の採取方法は、特に限定されず、生体から採取した筋細胞を酵素処理して単一繊維を採取し、トリプシン処理して筋管を形成するなどの方法を好適に用いることができる。
本発明の筋張力測定用基板、筋張力測定器及び装置並びに測定方法は、研究用途、新規薬剤のスクリーニング、培養細胞の評価、筋細胞の収縮に関連する疾患(心疾患などの心筋関連疾患、サルコペニア、筋ジストロフィーなどの骨格筋関連疾患、高血圧、ぜんそく、消化機能障害などの平滑筋関連疾患)の発見のためのバイオマーカー、治療のための再生医療材料の評価、治療薬の薬剤スクリーニングなどに用いることができ、これらを簡素化、高効率化、高精度化することができる。
本発明の筋力測定用基板の構成を示す概略断面図である。 本発明の筋張力測定用基板の上の筋細胞の収縮時を示す平面図である。 本発明の筋張力測定器の写真である。 本発明の筋張力測定の解析処理フローの一例 筋細胞の弛緩時の観察画像(図5左)及び弛緩時画像から細胞輪郭のみを除いた画像(図5右) 筋細胞の収縮時の観察画像(図6左)及び収縮時画像から細胞の輪郭を取り除いた画像(図6右) 図6(右)の画像の輝度の変化からしわを抽出した画像 図7からドットはノイズとして取り除き、線形部分を皺として残した線形画像 線形画像(図9左)の皺を細線化した細線画像(図9右)とそれぞれ対応する拡大画像(図9下) 皺総長の原データを示すグラフ 皺総長の原データ(図11左)及び収縮3回の皺の長さの総和を強調したグラフ(図11右) 印加した電気刺激(電流値)と皺総長との関係を示すグラフ 対照(day5)と長期培養モデル(day10)の収縮時画像 対照(day5)と長期培養モデル(day10)の細胞の短軸幅の比較を示すグラフ 対照(day5)と長期培養モデル(day10)の皺の総長の計測結果の比較を示すグラフ 対照と癌筋萎縮モデル(Lewis lung carcinoma cell line:LLC処理)の収縮時画像 対照と癌筋萎縮モデルの細胞の短軸幅の比較を示すグラフ 対照と癌筋萎縮モデルの皺の総長の計測結果の比較を示すグラフ 対照と薬剤誘導性筋萎縮(Dexamethasone:Dex群)モデルの収縮時画像 対照と薬剤誘導性筋萎縮モデルの細胞の短軸幅の比較を示すグラフ 対照と薬剤誘導性筋萎縮モデルの皺の総長の計測結果の比較を示すグラフ
好ましい実施形態
以下、添付図面を参照しながら本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1に本発明の筋張力測定用基板の概略断面図を示す。筋張力測定用基板1は、光透過性基板2と、光透過性基板2の上に積層されているシリコーンゲル3と、シリコーンゲル3の表面にプラズマ処理により形成された親水性の表面硬化層4と、を有する。図2の筋張力測定用基板1の平面図に示すように、表面硬化層4に筋細胞5を載置して電気刺激を印加すると、筋細胞5の収縮により親水性の表面硬化層4に皺6が形成され得る。
光透過性基板2としては、表面硬化層4に形成される皺を光学顕微鏡で観察することができるものであれば特に限定されないが、光学顕微鏡のカバーガラスを好適に用いることができる。
シリコーンゲル3としては、電気刺激により筋細胞が収縮して皺が形成され、且つ観察する間に皺が消失しないように所定時間維持できる程度の柔らかさを有し、光学顕微鏡による観察のために光透過性であることが望ましい。シリコーンゲル3の硬さは、たとえば、母剤と架橋剤との比率を変えるなど、通常の方法でシリコーンゲルの架橋度を調節することによって所望の硬さを達成することができる。シリコーンゲルの硬さとしては、弾性定数が1kPa以上10MPa以下の範囲となる程度とすることが好ましい。シリコーンゲルとしては、光透過性及び生体親和性があり、プラズマ処理により親水性及び適度の硬さを付与することができるものであれば特に限定されず、たとえば低分子シロキサン成分を含むポリジメチルシロキサンなどを好ましく用いることができる。
表面硬化層4は、筋細胞との良好な接着性を有し、電気刺激により筋細胞が収縮できる程度の硬さを有する。表面硬化層4の硬さは、シリコーンゲルの表面のプラズマ処理の条件を変えることにより調節することができる。また、ピラニア水(硫酸と過酸化水素の混合物)で洗浄し、硬化した表面の有機物を除去し、水酸化(OH基付加)して、親水性を高めることもできる。ピラニア水による洗浄は必須ではないが、筋細胞の分化や皺の形成を阻害せず、明瞭な観察画像が得られるので好ましい。
筋細胞を電気刺激により収縮させて皺を形成させ、かつ形成された皺を所定時間維持するために、表面硬化層4の硬さをシリコーンゲル3の硬さよりも大きくすることが望ましく、シリコーンゲル3の弾性定数:表面硬化層4の弾性定数が1:1より大きく1:4より小さい範囲とすることが好ましく、1:1より大きく1:3以下の範囲がより好ましく、1:1より大きく1:2以下の範囲がより好ましい。たとえば弾性定数が10kPa程度のシリコーンゲル3を用いる場合には、表面硬化層4の弾性定数が20kPaとなるようにプラズマ処理により表面を硬化させることにより製造することができる。
本発明の筋張力測定器は、上記筋張力測定用基板と、当該筋張力測定用基板に電気刺激を印加する電極と、を具備する。図3に、筋張力測定器の写真を示す。図3に示す筋張力測定器は、2個の区画11及び12と、個の区画11及び12を電気絶縁状態に画定してそれぞれ筋張力測定用基板1を支持する支持枠体13を有する。各区画は、筋張力測定用基板1と一対の電極11A/11C又は12A/12Cの組み合わせを有する。図3は、2個の区画を備える器を示したが、区画は1個でも3個以上とすることもできる。区画11及び12に接続されている各一対の電極11A/11C及び12A/12Cは、同じ電源(図示せず)に接続され、同じ条件又は異なる条件で電通することができる。
複数の区画を有する筋張力測定器は、少なくとも1個を対照区画に設定し、基準となるたとえば健常の筋細胞を播種し、残りの区画を測定区画として、測定対象となる筋細胞を播種して、筋張力の低下の判断や薬剤のスクリーニングに用いることができる。
本発明の筋張力測定装置は、本発明の筋張力測定器と、光学顕微鏡と、当該光学顕微鏡により観察される当該筋張力測定用基板の親水性の表面硬化層に形成される皺の変化量を計算する画像処理及び解析手段と、を具備する。画像処理及び解析手段は、光学顕微鏡の観察画像データを取り込み、後述する画像解析を行い、皺の変化量を計算できるものであればよい。
本発明の筋張力測定装置を用いる筋張力測定方法は、筋張力測定用基板に筋細胞を載置し、筋張力測定用基板に電気刺激を印加し、電気刺激により収縮した筋細胞の皺を画像処理し、皺の変化量を算出する。筋張力測定器は光学顕微鏡の測定ステージに載置される。光学顕微鏡による観察画像データは、画像処理及び解析手段に取り込まれ、筋張力測定用基板の親水性の表面硬化層に形成される皺の変化量が算出される。皺は、電気刺激による筋細胞の収縮により形成されるため、大きな筋力を有する筋細胞ほど皺の総長が長くなる。
本発明の筋張力測定の解析処理フローの一例を図4に示し、各工程の観察画像を図5~11に示す。本解析処理フロー例では、皺の総長を皺の変化量として用いるが、皺の変化量はこれに限定されるものではない。
(1)筋細胞に電気刺激を印加しない弛緩状態の光学顕微鏡による観察画像データを格納する。
(2)弛緩時の観察画像を各コマに分割し(図5左)、筋細胞の輪郭を取り除き、弛緩時画像(図5右)とする。
(3)筋細胞に電気刺激を印加して収縮時の光学顕微鏡による観察画像データを格納する。
(4)収縮時の観察画像を各コマに分割し(図6左)、図5(右)画像をもとに筋細胞の輪郭を取り除き、細胞の輪郭が除かれた収縮時画像(図6右)とする。
(5)細胞の輪郭が除かれた画像(図6左)の輝度の違いを2階調化する(図7)。
(6)輝度の変化が観察される部分のうち、ドットはノイズとして取り除き、線形部分を皺として残し、線形画像(図8)とする。
(7)線形画像(図9左)の直線を細線化して細線画像(図9右)とする。
(8)細線画像(図9右)を拡大して、最小ピクセル(図9右下)を計数して、皺長さの情報を抽出して皺総長の原データ(図10)とする。
(9)皺総長の原データ(図11左)から、収縮3回の皺の長さの総和(曲線下の面積)(図11右)を算出する。
(10)収縮3回の皺の総長で、筋細胞の収縮力を評価する。
本発明により求められる皺の変化量、たとえば総長を比較することで、筋細胞自身の機能、応答性、分化程度を評価することもできるため、薬剤のスクリーニングも可能となる。
また、本発明により求められる皺の変化量を筋肥大又は筋萎縮を評価する指標(モニタリング・マーカーなどのバイオマーカー)として使用して、高齢や癌疾患などによる筋萎縮を判断することも可能となる。
以下、実施例により本発明を更に説明する。
[筋張力測定用基板の製造]
市販のシリコーン(東レ・ダウコーニング株式会社製CY52-276)を用いて母剤と希釈剤の比率を1.3:1~1.4:1に調節して、カバーガラス(厚み150μm)の上に載置し、表面からプラズマ処理(45 mA、20 msec、1Hz)を60秒間行って、表面(深さ50 nm)を硬化させて親水性化させたシリコーンゲル(40μm)を調製し、筋張力測定用基板を製造した。さらに、硬化した表面をピラニア水(硫酸と過酸化水素の混合物)で洗浄し、硬化した表面の有機物を除去し、水酸化(OH基付加)して、親水性を高めた。
[筋張力測定器の組立]
筋張力測定用基板の対向する側面に一対の炭素電極を取り付けて、スライドチャンバー(松浪ガラス工業株式会社SCS-002)の各区画内に位置づけて、筋張力測定器を組み立てた。
[筋細胞の筋力測定]
筋張力測定用基板にマトリゲル(356230 Corning, 1 g/mL)をコートし、その上にマウス由来初代培養細胞(EDL,SOL)を3×10/wellで蒔いた。
分化5日目で、筋張力測定器を光学顕微鏡の観察ステージ上に置いて、各区画の一対の炭素電極に通電して、電気刺激(1Hz、20 msec)を与えて、筋細胞を収縮させ、筋張力測定用基板に形成される皺を観察した。同じ筋細胞に対して、電気刺激を与えず筋細胞が収縮していない弛緩時の画像と、電気刺激を与えて筋細胞が収縮している収縮時の画像と、を録画した。
[皺の解析]
観察画像を各コマに分けて、弛緩時の原画像(図5左)から細胞の輪郭を抽出して除き、弛緩時画像(図5右)を作成した。
収縮時の原画像(図6左)から図5(右)画像をもとに筋細胞の輪郭を取り除き、収縮時画像(図6右)を作成した。
収縮時画像(図6右)と弛緩時画像(図5左)とを比較して、収縮により輝度変化が生じたところを抽出し(図7)、ドット状の白い部分はノイズとして取り除き、線形の皺を際だたせて線形画像(図8)を作成した。
線形画像(図9左)の直線を細線化して細線画像(図9右)を作成した。
細線画像(図9右)を拡大して、最小ピクセル(図9右下)を計数して、皺長さの情報を抽出して皺総長の原データ(図10)を取得した。
皺総長の原データ(図11左)から、収縮3回の皺の長さの総和(曲線下の面積)(図11右)を算出し、収縮力を評価した。
[刺激電流値と収縮力の関係]
図12に、印加した電気刺激(電流値)と皺総長との関係を示す。40mAまでは印加した電気刺激の増大に従って皺総長が長くなるが、50mAの電気刺激印加は40mAの電気刺激印加と同等の皺総長となった。このことから、印加する電気刺激は20mA~40mA程度でよいことがわかる。
[筋萎縮モデル細胞による収縮解析]
正常細胞では収縮力が大きく、筋萎縮細胞では収縮力が小さいことは知られている。筋萎縮細胞の電気刺激による皺形成を確認するため、長期培養モデル、癌筋萎縮モデル、薬剤誘導性筋萎縮モデルの3種について、本発明の筋力測定方法を行った。
(1)長期培養モデル
筋張力測定用基板にマトリゲル(356230 Corning, 1,g/mL)をコートし、その上にマウス由来初代培養細胞(EDL,SOL)を3×10/wellで蒔き、分化5日目、及び分化10日目に、各20mAの電気刺激を印加して上記の筋力測定及び皺解析を行った。結果を図13~15に示す。
図13は収縮時画像である。分化5日目(day5)では明確な皺の形成が確認できるが、分化10日目(day10)では皺の形成はあまり明確ではなかった。
図14は、細胞の短軸幅の比較である。分化10日目(day10)は、分化5日目(day5)と比較して短軸幅が小さいことが確認できた。分化10日目は、筋力が衰えている筋細胞とみなすことができる。
図15は、本発明の筋力測定方法により測定した皺の総長の計測結果の比較である。分化10日目(day10)は、分化5日目(day5)と比較して総長が顕著に短くなっていることが確認できた。
(2)癌筋萎縮モデル
筋張力測定用基板にマトリゲル(356230 Corning, 1,g/mL)をコートし、その上にマウス由来初代培養細胞(EDL)を3×10/wellで蒔き、分化4日目にルイス肺がん(LLC)細胞から得た培養上清を添加し、72時間置いた後、20mAと40mAの電気刺激をそれぞれ印加して上記の筋力測定及び皺解析を行った。結果を図16~18に示す。
図16は、対照(コントロール群)と癌筋萎縮モデル(LLC処理群)の画像である。
図17は、細胞の短軸幅の比較である。癌筋萎縮モデル(LLC処理)は対照(コントロール)よりも短軸幅が小さいことが確認できた。癌筋萎縮モデル(LLC処理)は筋力が衰えている筋細胞といえる。
図18は、本発明の筋力測定方法により測定した皺の総長の計測結果の比較である。20mAの電気刺激でも40mAの電気刺激でも皺総長の計測は可能であった。対照(Control)の皺総長と比較すると、癌筋萎縮モデル(LLC)の皺総長は顕著に短くなっていることが確認できた。
(3)薬剤誘導性筋萎縮モデル
筋張力測定用基板にマトリゲル(356230 Corning, 1,g/mL)をコートし、その上にマウス由来初代培養細胞(EDL)を3×10/wellで蒔き、分化5日目に、デキサメタゾン(Dex)200μMを添加して48時間処理した後、20mA及び40mAの電気刺激をそれぞれ印加して上記の筋力測定及び皺解析を行った。結果を図19~21に示す。
図19は、対照(コントロール群)と薬剤誘導性筋萎縮モデル(Dex処理群)の画像である。
図20は、細胞の短軸幅の比較である。薬剤誘導性筋萎縮モデル(Dex処理)は対照(コントロール)よりも短軸幅が小さいことが確認できた。薬剤誘導性筋萎縮モデル(Dex処理)は筋力が衰えている筋細胞といえる。
図21は、本発明の筋力測定方法により測定した皺の総長の計測結果の比較である。20mAの電気刺激でも40mAの電気刺激でも皺総長の計測は可能であった。対照(Control)の皺総長と比較すると、薬剤誘導性筋萎縮モデル(Dex)の皺総長は顕著に短くなっていることが確認できた。
以上、いずれのモデルでも、筋萎縮細胞は正常筋細胞と比較して、本発明の筋力測定方法による皺の総長に顕著な差が認められることがわかった。このことから、本発明の筋力測定方法を用いることにより、正常筋細胞と筋萎縮細胞とを判別することができるといえる。本発明の筋力測定方法は、創薬スクリーニングツールやサルコペニアなどの筋萎縮を検知するバイオマーカーとして筋医療分野への応用が可能である。
本発明の筋張力測定用基板、測定器及び装置並びに測定方法は、研究用途、新規薬剤のスクリーニング、培養細胞の評価、筋細胞の収縮に関連する疾患(心疾患などの心筋関連疾患、サルコペニア、筋ジストロフィーなどの骨格筋関連疾患、高血圧、ぜんそく、消化機能障害などの平滑筋関連疾患)の発見のためのバイオマーカー、治療のための再生医療材料の評価、治療薬の薬剤スクリーニングなどに用いることができ、これらを簡素化、高効率化、高精度化することができる。

Claims (7)

  1. 光透過性基板と、当該光透過性基板の上に積層されているシリコーンゲルと、当該シリコーンゲルの表面全体にプラズマ処理により形成されている親水性の表面硬化層と、を有し、当該シリコーンゲルと当該表面硬化層とは、シリコーンゲルの弾性定数:表面硬化層の弾性定数が1:1より大きく1:4より小さい範囲であり、当該表面硬化層に筋細胞を載置して電気刺激を印加する際に、筋細胞の収縮により親水性の表面硬化層に皺が形成され得る筋張力測定用基板。
  2. 請求項1に記載の筋張力測定用基板と、当該筋張力測定用基板に電気刺激を印加する電極と、を具備する筋張力測定器。
  3. 前記筋張力測定用基板と、前記電極とを有する区画を2個以上有し、少なくとも1個の区画は対照区画を構成し、少なくとも1個の区画は測定区画を構成する、請求項2に記載の筋張力測定器。
  4. 請求項2又は3の筋張力測定器と、光学顕微鏡と、当該光学顕微鏡により観察される当該筋張力測定用基板の親水性の表面硬化層に形成される皺の変化量を計算する画像処理及び解析手段と、を具備する筋張力測定装置。
  5. 請求項に記載の筋張力測定装置を用いて筋細胞の筋張力を測定する方法であって、
    前記筋張力測定用基板に載置した初期状態の筋細胞の画像を取得し、
    前記筋張力測定用基板に電気刺激を印加し、
    電気刺激により収縮した筋細胞の画像と前記初期状態の筋細胞の画像とを対比して該皺を解析し、
    電気刺激により発生した皺の長さの合計として皺の変化量を算出する、筋張力測定方法。
  6. 請求項に記載の筋張力測定装置を用いて筋細胞の筋張力を測定して筋張力評価を比較するスクリーニング方法であって、
    前記筋張力測定用基板に載置した初期状態の筋細胞の画像を取得し、
    前記筋張力測定用基板に電気刺激を印加し、
    電気刺激により収縮した筋細胞の画像と前記初期状態の筋細胞の画像とを対比して該皺を解析し、
    電気刺激により発生した皺の長さの合計として皺の変化量を算出して得られる筋張力評価を比較するスクリーニング方法。
  7. 請求項に記載の筋張力測定装置を用いて筋細胞の筋張力を測定して筋線維の状態を評価する指標として使用する方法であって、
    前記筋張力測定用基板に載置した初期状態の筋細胞の画像を取得し、
    前記筋張力測定用基板に電気刺激を印加し、
    電気刺激により収縮した筋細胞の画像と前記初期状態の筋細胞の画像とを対比して該皺を解析し、
    電気刺激により発生した皺の長さの合計として皺の変化量を算出して、筋線維の状態を評価する指標として使用する方法。
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