JP7137139B2 - 電力ケーブル - Google Patents
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Description
導体と、
前記導体の外周に設けられる絶縁層と、
前記導体と前記絶縁層とに接する接着層とを備え、
前記導体は、銅又は銅基合金からなる複数の素線を含む圧縮撚線であり、
前記絶縁層の構成材料は、架橋ポリオレフィンを含む。
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の一態様に係る電力ケーブルは、
導体と、
前記導体の外周に設けられる絶縁層と、
前記導体と前記絶縁層とに接する接着層とを備え、
前記導体は、銅又は銅基合金からなる複数の素線を含む圧縮撚線であり、
前記絶縁層の構成材料は、架橋ポリオレフィンを含む。
前記接着層の構成材料は、エチレンメタクリ酸メチル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、及び無水マレイン酸からなる群より選択される1種以上の化合物を含む形態が挙げられる。
前記接着層における常温での電気抵抗率が1×104Ω・cm以上である形態が挙げられる。
前記接着層の厚さは、0.5mm以下である形態が挙げられる。
横断面において、前記圧縮撚線の包絡円と、前記圧縮撚線の輪郭とをとり、前記包絡円の面積に対する前記輪郭内の面積が占める割合が85%超である形態が挙げられる。
前記絶縁層の構成材料は、酸化防止剤を含む形態が挙げられる。
前記酸化防止剤は、フェノール系であり、
前記絶縁層の構成材料は、前記酸化防止剤を0.05質量%以上0.5質量%以下含む形態が挙げられる。
部分放電試験において、10pCの放電発生電圧が15kV以上である形態が挙げられる。
AC破壊試験において、破壊電圧が20kV/mm以上である形態が挙げられる。
浸水課電後のAC破壊試験において、破壊電圧が15kV/mm以上である形態が挙げられる。
送電電圧が6.6kV以上である形態が挙げられる。
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施形態を具体的に説明する。図中の同一符号は、同一名称物を示す。
(概略)
以下、図1,図2を適宜参照して、実施形態に係る電力ケーブルを説明する。
実施形態の電力ケーブル1は、導体2と、絶縁層3とを備える。絶縁層3は、導体2の外周に設けられる。電力ケーブル1は、絶縁層3の主たる構成材料が架橋ポリオレフィンであるゴム・プラスチック絶縁電力ケーブルである。代表的には、電力ケーブル1は、絶縁層3の外周に外部半導電層5を備え、更にその外周に遮蔽層、シース(いずれも図示せず)を備える。
以下、構成要素ごとに詳細に説明する。
〈導体〉
実施形態の電力ケーブル1は、圧縮撚線からなる導体2を備える。圧縮撚線は、複数の素線20が撚り合わされてなる撚線の一種であり、撚り合せ後に更に圧縮成形されたものである。
(2)素線20のうち、撚線の輪郭をなす外周素線間に設けられる隙間(撚り溝)が小さくなり易い。
(3)製造過程で、押出によって、接着層4や絶縁層3を形成し易い。
(4)横断面形状が六角形等の角張った形状である場合に比較して、接着層4の厚さtや絶縁層3の厚さを均一的に製造し易い。その結果、ケーブル径を小さくし易い。
(1)圧縮成形時に圧縮度合いを大きくする。
(2)圧縮成形前の撚り合せに供する線材として、断面積がある程度大きな線材(ある程度太い線材)を利用する。
絶縁層3の構成材料は、架橋ポリオレフィンを含む。例えば、絶縁層3の構成材料を100質量%として、架橋ポリオレフィンの含有量は95質量%以上が挙げられる。ポリオレフィンの具体例として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。絶縁層3の構成材料の一例として、架橋ポリエチレンが挙げられる。
(1)幅広い温度範囲で架橋ポリオレフィンの酸化防止効果が高い。
(2)銅害防止効果を期待できる。
銅害とは、導体2の構成材料である銅によって絶縁層3の酸化が促進される現象である。導体2と絶縁層3とが直接接触する箇所がある場合には、銅害が生じる可能性があるが、絶縁層3に酸化防止剤を含むことで防止し易い。
接着層4は、導体2と絶縁層3との密着性の向上に寄与する。ここで、電力ケーブル1は、代表的には地中管路等に布設されて使用される。そのため、電力ケーブル1は、布設状態に起因する張力が実質的に作用しない。しかし、電力ケーブル1の使用時、通電及び非通電の繰り返しに伴うヒートサイクルによって、絶縁層3が熱伸縮する。特に、絶縁層3が熱収縮すると、電力ケーブル1の端部において、絶縁層3の端部が初期位置から変位して、導体2の端部が絶縁層3から露出されることが考えられる。そのため、接着層4には、上述の使用時の熱収縮に起因する張力が絶縁層3に作用した場合でも、導体2と絶縁層3とが密着した状態を維持できることが望まれる。このような接着層4の構成材料は、銅又は銅基合金からなる導体2と、架橋ポリオレフィンを主材料とする絶縁層3との双方に対して密着性に優れる材料が好ましい。例えば、接着層4の構成材料には、架橋ポリオレフィン以外の材料であって、架橋ポリオレフィンよりも導体2との密着性に優れる材料が好適に利用できる。
外部半導電層5や遮蔽層、シース等は、公知の材料を利用できる。なお、外部半導電層5を省略することもできる。
実施形態の電力ケーブル1は、内部半導電層を備えていないものの、内部半導電層を備える従来の電力ケーブルと同等程度、又はそれ以上の絶縁特性を有する。
実施形態の電力ケーブル1は、上述のように導体2を特定の形状とし、かつ接着層4を備えることで部分放電や絶縁破壊が発生し難いため、送電電圧がより高い用途に好適に利用できる。例えば、電力ケーブル1は、送電電圧が600V超、更に3500V以上、特に6.6kV以上である用途に好適に利用できる。
実施形態の電力ケーブル1は、例えば、以下の工程を備える製造方法によって製造できる。
(導体準備工程)複数の線材を撚り合せた後、更に圧縮成形して、圧縮撚線を形成する工程。
(押出工程)前記圧縮撚線の直上に、接着層となる第一の原料と、絶縁層となる第二の原料とを同時に押し出す工程。
(架橋工程)前記第二の原料による押出層を架橋する工程。
以下、工程ごとに詳細に説明する。
この工程では、導体2とする圧縮撚線を製造する。圧縮撚線に供する線材は、銅又は銅基合金からなり、所定の断面積や外径を有する線材を利用できる。代表的には、上記線材は、銅又は銅基合金からなる丸線を利用できる。上記線材は、公知の銅線又は銅基合金線の製造方法によって製造できる。上記線材として、比較的太めの線材を利用すると、圧縮度合いを高め易く、上述の導体占有割合を高め易い。撚線の製造には、同心撚りや集合撚り等の撚り合せ法を利用できる。圧縮成形には、所定の横断面形状が得られる成形型を利用できる。また、圧縮成形は、上記導体占有割合が85%超となる範囲で圧縮度合いを調整して行うことが好ましい。
この工程では、用意した圧縮撚線の外周に第一の原料及び第二の原料を押し出して、第一の原料による押出層と第二の原料による押出層とを同時に形成する。押出層の形成には、従来の電力ケーブルにおける内部半導電層と絶縁層との同時押出に利用される設備を利用できる。
この工程では、第二の原料による押出層、即ち主としてポリオレフィンからなる押出層を架橋して、主として架橋ポリオレフィンからなる絶縁層3を形成する。架橋条件は、ポリオレフィンの種類、酸化防止剤等の添加剤の種類や含有量、押出層の厚さ等に応じて、適宜選択できる。この工程により、圧縮撚線からなる導体2の外周に、架橋ポリオレフィンを主体とする絶縁層3を備え、かつ導体2と絶縁層3とに接する接着層4を有するものが得られる。
外部半導電層5を備える場合、絶縁層3の外周に外部半導電層5を形成する。例えば、外部半導電層5は、半導電テープを巻回して形成してもよい。又は、例えば、外部半導電層5は、接着層4及び絶縁層3と同時押出によって形成してもよい。
同時押出に代えて、圧縮撚線の直上に接着層となる第一の原料を押し出した後、絶縁層となる第二の原料を押し出してもよい。即ち、押出工程を複数回行ってもよい。但し、上述の同時押出を行うと、押出工程数が少なく、製造性に優れる。
実施形態の電力ケーブル1は、導体2が圧縮撚線から構成されると共に、導体2と絶縁層3とに接する接着層4を備える。実施形態の電力ケーブル1は、内部半導電層を備えていないものの、内部半導電層を備える従来の電力ケーブルと同等程度以上の絶縁特性を有する。また、導体2と絶縁層3との密着性にも優れる。これらの効果を以下の試験例1で具体的に説明する。
以下の電力ケーブルについて、絶縁特性、導体と絶縁層との密着性を調べた。
電力ケーブルはいずれも、送電電圧が6.6kVであり、導体断面積が60mm2である単心のCVケーブル(6600V、CV、1X60SQ)相当とする。導体は銅からなるものとする。また、各電力ケーブルは、同一の厚さの絶縁層を備えると共に、外部半導電層、遮蔽層、シースを備えるものとする。
試料No.1の電力ケーブルは、圧縮撚線からなる導体と、EMMAからなる接着層と、酸化防止剤を含む架橋ポリエチレンからなる絶縁層とを備える。
ここでは、1.0mmφ以上の線径を有する複数の銅線を撚り合せた後、圧縮成形して圧縮撚線を製造する。圧縮度合いは、導体占有割合が91%となるように調整する。導体占有割合は、得られる電力ケーブル(又は圧縮撚線)の横断面において、圧縮撚線の包絡円の面積に対する圧縮撚線の輪郭内の面積が占める割合である。
絶縁層の原料は、フェノール系の酸化防止剤を0.15質量%含有するポリエチレンである。接着層の原料(EMMA)と絶縁層の原料とを溶融状態として、圧縮撚線の外周に同時押出を行う。押出温度は、210℃である。押出後、絶縁層の原料による押出層を架橋する。接着層の厚さは0.1mmである。
接着層における常温(ここでは20℃程度)の電気抵抗率は、1×104Ω・cm以上である。
試料No.100の電力ケーブルは、試料No.1に対して、上記導体占有割合を小さくした点を除いて、試料No.1と同様に製造する。試料No.100の電力ケーブルの導体占有割合は85%である。
試料No.200の電力ケーブルは、内部半導電層を備える従来の電力ケーブルであり、市販のものである。
以下の(1)~(3)の試験では、各試料の電力ケーブルから適宜な長さのケーブル片をとり、ケーブル片の端末(切断端面)から部分放電等が発生しないように十分な処置を行ったものを試験片とする。
この試験は、室温(ここでは20℃程度)で行う。
用意した試験片を線心外径の約10倍の円周に沿って180°屈曲させた状態で、試験片に備えられる導体と遮蔽層との間に交流電圧を加え、部分放電の発生電圧を測定器で調べる。印加する交流電圧は、周波数が50Hz又は60Hzの正弦波に近いものである。上記測定器には、10pC以下の放電電荷量を測定可能な精度を有するものを利用する。
用意した試験片を、上述の(1)部分放電試験と同様に、室温にて、線心外径の約10倍の円周に沿って180°屈曲させた状態で、導体と遮蔽層との間に交流電圧を印加する。印加する交流電圧は、周波数が50Hz又は60Hzのほぼ正弦波の波形を持つものである。交流電圧を徐々に増大させていき、絶縁破壊する電圧を調べる。
この試験は、絶縁層の内外を浸水状態として、電圧を印加する。詳しくは、水路中に試験片を設置する。試験片に備えられるシースに穴をあけてシース内に浸水可能なようにし、かつケーブル両端から導体内に水を注入した状態で課電を行う。上記課電後、上述の(2)AC破壊試験と同様にして、AC破壊電圧(残存性能)を測定する。上記課電は、印加電圧を12.7kVとし、周波数を50Hzとする加速劣化条件での課電とし、この加速劣化条件での課電を120日行う。
この試験は、各試料の電力ケーブルから適宜な長さのケーブル片をとり、ケーブル片の端部に端末金具を取り付けて実線路に近い回路を形成し、通電及び非通電を繰り返す。通電条件は、導体温度が90℃となるような電流値を設定し、この電流値で4時間通電後、4時間非通電とする(通電を遮断する)。絶縁層の収縮量が飽和するまで、上述の通電条件で通電及び非通電を繰り返す。絶縁層の収縮量が飽和した状態において、導体の端部が絶縁層から露出するか否か目視確認する。
(1)部分放電試験において15kVで部分放電が発生せず、15.8kVで発生した。即ち、10pCの放電発生電圧が15kV以上である。
(2)AC破壊試験において、初期のAC破壊電圧が21kV/mmであり、20kV/mm以上である。
(3)浸水課電試験において、浸水課電試験後のAC破壊電圧が19.2kV/mmであり、15kV/mm以上である。
(4)ヒートサイクル試験において、絶縁層が収縮しているものの、収縮量が小さく(6mm以下程度)、導体は絶縁層から露出していない。
(1)部分放電試験において6.0kVで部分放電が発生し、10pCの放電発生電圧が15kV未満、更に10kV以下であった。
(2)AC破壊試験において、初期のAC破壊電圧が20kV/mm未満であった。
(3)浸水課電試験において、浸水課電試験後のAC破壊電圧が12kV以下であった。
(4)ヒートサイクル試験において、絶縁層が収縮しているものの、収縮量が小さく(6mm以下程度)、導体は絶縁層から露出していない。
(1)部分放電試験において5.0kV~12kVで部分放電が発生した。
(2)AC破壊試験において、初期のAC破壊電圧が26kV/mmであった。
(3)浸水課電試験において、浸水課電試験後のAC破壊電圧が13kV/mm~31kV/mmであった。
(4)ヒートサイクル試験において、絶縁層が収縮しているものの、収縮量が小さく(6mm以下程度)、導体は絶縁層から露出していない。
なお、試料No.200については、複数のサンプルを測定しており、(1),(3)に示すように結果にばらつきがある。
2 導体、20 素線、22 隙間、25 包絡円、27 介在領域
3 絶縁層
4 接着層
5 外部半導電層
Claims (11)
- 導体と、
前記導体の外周に設けられる絶縁層と、
前記導体と前記絶縁層とに接する接着層とを備え、
前記導体は、銅又は銅基合金からなる複数の素線を含む圧縮撚線であり、
前記圧縮撚線は、前記複数の素線間に隙間を有しており、
前記絶縁層の構成材料は、架橋ポリオレフィンを含み、
送電電圧が6.6kV以上である、
電力ケーブル。 - 前記接着層の構成材料は、エチレンメタクリ酸メチル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、及び無水マレイン酸からなる群より選択される1種以上の化合物を含む請求項1に記載の電力ケーブル。
- 前記接着層における常温での電気抵抗率が1×104Ω・cm以上である請求項2に記載の電力ケーブル。
- 前記接着層の厚さは、0.5mm以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力ケーブル。
- 横断面において、前記圧縮撚線の包絡円と、前記圧縮撚線の輪郭とをとり、前記包絡円の面積に対する前記輪郭内の面積が占める割合が85%超である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電力ケーブル。
- 前記絶縁層の構成材料は、酸化防止剤を含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電力ケーブル。
- 前記酸化防止剤は、フェノール系であり、
前記絶縁層の構成材料は、前記酸化防止剤を0.05質量%以上0.5質量%以下含む請求項6に記載の電力ケーブル。 - 部分放電試験において、10pCの放電発生電圧が15kV以上である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電力ケーブル。
- AC破壊試験において、破壊電圧が20kV/mm以上である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電力ケーブル。
- 浸水課電後のAC破壊試験において、破壊電圧が15kV/mm以上である請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の電力ケーブル。
- 前記導体の公称断面積が14mm 2 以上1200mm 2 以下である請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の電力ケーブル。
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