JP7137139B2 - 電力ケーブル - Google Patents

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Description

本開示は、電力ケーブルに関する。
従来、電力ケーブルとして、中心から順に、導体、内部半導電層、絶縁層、外部半導電層を備えるものが知られている(例、特許文献1)。このような電力ケーブルとして、架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(CVケーブル)が代表的である(特許文献1の明細書[0002])。
特開平06-203651号公報
導体の外周に内部半導電層、絶縁層、外部半導電層を備える電力ケーブル(以下、従来の電力ケーブルと呼ぶことがある)と同等程度又はそれ以上の絶縁特性を有しつつ、導体と絶縁層との密着性に優れる電力ケーブルが望まれる。
特に、送電電圧が600V超、更に3500V以上と高い電力ケーブルは、使用電圧が数百V以下である電線に比較して、部分放電や絶縁破壊が生じ易い使用状態となり易い。そのため、使用初期から長期に亘り、部分放電や絶縁破壊が発生し難い電力ケーブルが望まれる。
また、電力ケーブルは、代表的には、地中管路等に布設されて使用される。電力ケーブルの使用時、通電及び非通電の繰り返しに伴うヒートサイクルによって、絶縁層が熱伸縮する。特に、絶縁層が熱収縮しても、導体と絶縁層とが密着した状態を維持できることが望まれる。
そこで、本開示は、従来の電力ケーブルと同等以上の絶縁特性を有すると共に、導体と絶縁層との密着性に優れる電力ケーブルを提供することを目的の一つとする。
本開示の電力ケーブルは、
導体と、
前記導体の外周に設けられる絶縁層と、
前記導体と前記絶縁層とに接する接着層とを備え、
前記導体は、銅又は銅基合金からなる複数の素線を含む圧縮撚線であり、
前記絶縁層の構成材料は、架橋ポリオレフィンを含む。
本開示の電力ケーブルは、従来の電力ケーブルと同等以上の絶縁特性を有すると共に、導体と絶縁層との密着性に優れる。
図1は、実施形態の電力ケーブルを示す模式断面図である。 図2は、電力ケーブルの横断面において、導体をなす圧縮撚線の包絡円の面積に対する圧縮撚線の輪郭内の面積が占める割合を測定する方法を説明する図である。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の一態様に係る電力ケーブルは、
導体と、
前記導体の外周に設けられる絶縁層と、
前記導体と前記絶縁層とに接する接着層とを備え、
前記導体は、銅又は銅基合金からなる複数の素線を含む圧縮撚線であり、
前記絶縁層の構成材料は、架橋ポリオレフィンを含む。
本開示の電力ケーブルは、導体を圧縮撚線とし、この導体と絶縁層とに接する接着層を備える。そのため、本開示の電力ケーブルは、導体と絶縁層との間に内部半導電層を備えていないものの、以下に説明するように、内部半導電層を備える従来の電力ケーブルと同等以上の絶縁特性を有する。かつ、本開示の電力ケーブルは、導体と絶縁層との密着性に優れる。
圧縮撚線は、圧縮されていない撚線(以下、非圧縮線と呼ぶことがある)に比較して、隣り合う外周素線間に形成される隙間(撚り溝)を小さく(浅く)できる。そのため、圧縮撚線の撚り溝は、接着層の構成材料に埋められ易い。また、代表的には、接着層は、圧縮撚線の全周を覆う。撚り溝に充填されると共に導体を覆う接着層によって、導体と絶縁層とが密着できる。その結果、導体と絶縁層との間に局所的な電界集中箇所となり得る空隙が少ないと考えられる。上記空隙が少ないことで、局所的な電界集中に起因する部分放電や水トリー等が生じ難く、これらに起因する絶縁破壊が生じ難いと考えられる。また、上記空隙が少ないことで、上記空隙に介在し得る空気や水等に起因する絶縁層の酸化劣化も低減し易いと考えられる。これらのことから、本開示の電力ケーブルは、優れた絶縁特性を有する。
また、本開示の電力ケーブルの使用時、通電及び非通電の繰り返しに伴うヒートサイクルによって絶縁層は、熱収縮して、導体の軸方向に沿って変位しようとする。接着層は、この絶縁層の変位を低減できる。そのため、本開示の電力ケーブルは、絶縁層の熱収縮によって絶縁層の端部が初期位置から変位し、導体の端部が絶縁層から露出されることを防止できる。従って、本開示の電力ケーブルは、長期に亘り、導体と絶縁層とが密着した状態を維持できる。
(2)本開示の電力ケーブルの一例として、
前記接着層の構成材料は、エチレンメタクリ酸メチル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、及び無水マレイン酸からなる群より選択される1種以上の化合物を含む形態が挙げられる。
上記形態は、上述の特定の化合物を構成材料とする接着層を備えるため、導体と絶縁層との密着性に優れる。
(3)上記(2)の電力ケーブルの一例として、
前記接着層における常温での電気抵抗率が1×10Ω・cm以上である形態が挙げられる。
上記形態は、電気抵抗率が高い接着層を有するため、電気絶縁性に優れる。
(4)本開示の電力ケーブルの一例として、
前記接着層の厚さは、0.5mm以下である形態が挙げられる。
上記形態における接着層は、非常に薄い。そのため、上記形態は、同じ導体断面積の導体を備える従来の電力ケーブルに比較して、絶縁層をより厚くできる。この点から、上記形態は、絶縁特性を高め易い。
(5)本開示の電力ケーブルの一例として、
横断面において、前記圧縮撚線の包絡円と、前記圧縮撚線の輪郭とをとり、前記包絡円の面積に対する前記輪郭内の面積が占める割合が85%超である形態が挙げられる。
上記形態では、横断面において、圧縮撚線の包絡円の面積に対する圧縮撚線の輪郭内の面積が占める割合(以下、導体占有割合と呼ぶことがある)が大きい。このような圧縮撚線は、撚り溝が浅いといえる。そのため、上記形態は、導体と絶縁層との間に局所的な電界集中箇所となり得る空隙をより確実に低減できると考えられる。従って、上記形態は、上記空隙に起因する絶縁破壊や絶縁層の酸化劣化等がより生じ難く、長期に亘り、優れた絶縁特性を維持し易い。
(6)本開示の電力ケーブルの一例として、
前記絶縁層の構成材料は、酸化防止剤を含む形態が挙げられる。
上記形態における酸化防止剤は、絶縁層を構成する架橋ポリオレフィンが導体を構成する銅や銅基合金に接触することで酸化が促進されること(銅害)を抑制する機能を有する。従って、上記形態は、導体と絶縁層とが直接接触する箇所が有っても絶縁層の酸化劣化が生じ難く、長期に亘り、優れた絶縁特性を維持し易い。
(7)上記(6)の電力ケーブルの一例として、
前記酸化防止剤は、フェノール系であり、
前記絶縁層の構成材料は、前記酸化防止剤を0.05質量%以上0.5質量%以下含む形態が挙げられる。
上記形態は、上述の特定の酸化防止剤を上述の特定の範囲で含むため、絶縁層の酸化劣化がより生じ難く、長期に亘り、優れた絶縁特性を維持し易い。
(8)本開示の電力ケーブルの一例として、
部分放電試験において、10pCの放電発生電圧が15kV以上である形態が挙げられる。
上記形態は、10pCの放電発生電圧が15kV以上と高く、部分放電し難い。
(9)本開示の電力ケーブルの一例として、
AC破壊試験において、破壊電圧が20kV/mm以上である形態が挙げられる。
上記形態は、破壊電圧が20kV/mm以上と高く、絶縁破壊し難い。
(10)本開示の電力ケーブルの一例として、
浸水課電後のAC破壊試験において、破壊電圧が15kV/mm以上である形態が挙げられる。
上記形態は、浸水課電後の破壊電圧が15kV/mm以上と高く、長期に亘り、絶縁破壊し難い。
(11)本開示の電力ケーブルの一例として、
送電電圧が6.6kV以上である形態が挙げられる。
上記形態は、上述のように優れた絶縁特性を有しており、送電電圧が6.6kV以上である高圧ケーブルに好適に利用できる。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施形態を具体的に説明する。図中の同一符号は、同一名称物を示す。
[実施形態]
(概略)
以下、図1,図2を適宜参照して、実施形態に係る電力ケーブルを説明する。
実施形態の電力ケーブル1は、導体2と、絶縁層3とを備える。絶縁層3は、導体2の外周に設けられる。電力ケーブル1は、絶縁層3の主たる構成材料が架橋ポリオレフィンであるゴム・プラスチック絶縁電力ケーブルである。代表的には、電力ケーブル1は、絶縁層3の外周に外部半導電層5を備え、更にその外周に遮蔽層、シース(いずれも図示せず)を備える。
特に、実施形態の電力ケーブル1では、導体2は、銅又は銅基合金からなる複数の素線20を含む圧縮撚線である。また、実施形態の電力ケーブル1は、導体2と絶縁層3とに接する接着層4とを備える。即ち、実施形態の電力ケーブル1は、CVケーブルといった従来の電力ケーブルに比較すると、内部半導電層を備えていない。但し、実施形態の電力ケーブル1では、絶縁層3の内周面全体が導体2の外周面全体に接するのではなく、代表的には、導体2と絶縁層3との間に接着層4が介在する。
以下、構成要素ごとに詳細に説明する。
(電力ケーブル)
〈導体〉
実施形態の電力ケーブル1は、圧縮撚線からなる導体2を備える。圧縮撚線は、複数の素線20が撚り合わされてなる撚線の一種であり、撚り合せ後に更に圧縮成形されたものである。
圧縮撚線の横断面形状は、図1に示すように円形に近い形状であると、以下の効果を奏する。圧縮撚線の横断面形状又は外形は、圧縮成形に用いる成形型によって変更できる。なお、ここでの横断面とは、電力ケーブル1の軸方向に直交する平面で切断した断面をいう。
(1)曲げ等が行い易い。
(2)素線20のうち、撚線の輪郭をなす外周素線間に設けられる隙間(撚り溝)が小さくなり易い。
(3)製造過程で、押出によって、接着層4や絶縁層3を形成し易い。
(4)横断面形状が六角形等の角張った形状である場合に比較して、接着層4の厚さtや絶縁層3の厚さを均一的に製造し易い。その結果、ケーブル径を小さくし易い。
圧縮撚線の一例として、図1に示す7本の同心撚りの圧縮撚線が挙げられる。素線20の本数、各素線20の断面積、撚り合せ方法等は、送電電圧に応じた所定の断面積を満たす導体2となる範囲で適宜選択できる。例えば、送電電圧が6.6kVである電力ケーブル1では、導体2の公称断面積は14mm以上1200mm以下が挙げられる。また、導体2の外径は4.4mm以上41.7mm以下が挙げられる。
各素線20の構成材料は、銅又は銅基合金とする。「銅」とはいわゆる純銅である。「銅基合金」とは添加元素を含み、残部がCu及び不純物からなる合金である。銅基合金は、公知の組成を利用できる。銅又は銅基合金の導電率は、例えばアルミニウムやアルミニウム基合金に比較して高い。そのため、導体2として、銅又は銅基合金からなる素線20の圧縮撚線を備えれば、導体断面積を小さくし易い。ひいてはケーブル径を小さくし易い。
導体2を構成する圧縮撚線の撚り溝は、浅いことが好ましい。定量的には、電力ケーブル1の横断面において、図2に示すように導体2をなす圧縮撚線の包絡円25と、この圧縮撚線の輪郭とをとる。包絡円25の面積に対する上記圧縮撚線の輪郭内の面積が占める割合(導体占有割合)が85%超であることが挙げられる。ここでの圧縮撚線の輪郭内の面積は、複数の素線20の面積に加えて、複数の素線20で囲まれてできる隙間22の面積を含む。図2では、包絡円25を二点鎖線で仮想的に示す。また、図2では、包絡円25において圧縮撚線の輪郭内の面積を除く領域(以下、介在領域27と呼ぶ)にハッチングを付し、隙間22にクロスハッチングを付している。図2では、素線20のハッチングは省略している。介在領域27には、接着層4の構成材料が充填される(図1)。
上述の導体占有割合が85%超であると、電力ケーブル1は、接着層4を備えることと相俟って、以下に説明するように、絶縁層3の絶縁特性の劣化を抑制し易い。そのため、電力ケーブル1は、長期に亘り、優れた絶縁特性を維持し易い。
上述の導体占有割合が85%超である圧縮撚線は、非圧縮線と比較して、撚り溝が浅く、凹凸が小さい外形を有するといえる。また、このような圧縮撚線の横断面形状は円形に近いといえる。撚り溝が浅ければ、接着層4の構成材料が充填されることで、撚り溝に空隙が生じることを低減し易い。撚り溝に充填された接着層4によって、導体2をなす圧縮撚線と絶縁層3とが密着できる。更に、代表的には、圧縮撚線の全周が接着層4に覆われて、導体2をなす圧縮撚線と絶縁層3との間に接着層4が介在する。このような接着層4によって、導体2と絶縁層3とがより密着し易い。従って、圧縮撚線からなる導体2と絶縁層3との間に局所的な電界集中箇所となり得る空隙が少ないと考えられる。上記空隙が少ないことで、上記空隙での電界集中に起因する絶縁破壊を低減し易い。また、上記空隙が少ないことで、上記隙間に存在し得る空気や水分等の介在物も少ないと考えられる。そのため、絶縁層3が上記介在物に長期に亘り接触することで酸化劣化することも低減し易い。これらのことから、電力ケーブル1は、所定の絶縁特性を維持し易い。
上述の導体占有割合が大きいほど、上述の空隙が少ないと期待される。従って、上記導体占有割合は、88%以上、更に90%以上、更には95%以上が好ましい。
上述の導体占有割合を大きくする手法は、例えば、以下が挙げられる。
(1)圧縮成形時に圧縮度合いを大きくする。
(2)圧縮成形前の撚り合せに供する線材として、断面積がある程度大きな線材(ある程度太い線材)を利用する。
〈絶縁層〉
絶縁層3の構成材料は、架橋ポリオレフィンを含む。例えば、絶縁層3の構成材料を100質量%として、架橋ポリオレフィンの含有量は95質量%以上が挙げられる。ポリオレフィンの具体例として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。絶縁層3の構成材料の一例として、架橋ポリエチレンが挙げられる。
絶縁層3の構成材料は、架橋ポリオレフィンの他、添加剤を含んでもよい。例えば、絶縁層3の構成材料は、酸化防止剤を含んでもよい。酸化防止剤を含むことで、絶縁層3の酸化劣化を効果的に防止できる。絶縁層3の構成材料の一例として、酸化防止剤を含む架橋ポリエチレンが挙げられる。
酸化防止剤は、種々のものが利用できる。特にフェノール系の酸化防止剤は、以下の点から好ましい。
(1)幅広い温度範囲で架橋ポリオレフィンの酸化防止効果が高い。
(2)銅害防止効果を期待できる。
銅害とは、導体2の構成材料である銅によって絶縁層3の酸化が促進される現象である。導体2と絶縁層3とが直接接触する箇所がある場合には、銅害が生じる可能性があるが、絶縁層3に酸化防止剤を含むことで防止し易い。
酸化防止剤の含有量は、例えば、絶縁層3の構成材料(架橋ポリオレフィンと酸化防止剤等の添加剤との合計量)を100質量%として、0.05質量%以上0.5質量%以下が挙げられる。
酸化防止剤の含有量が0.05質量%以上であれば、絶縁層3の酸化や銅害を防止し易い。酸化防止剤の含有量が多いほど、絶縁層3の酸化や銅害を防止し易い。そのため、酸化防止剤の含有量は、0.08質量%以上、更に0.10質量%以上、更には0.12質量%以上としてもよい。
酸化防止剤の含有量が0.5質量%以下であれば、絶縁層3の発泡や変色等の不具合を低減できる。そのため、酸化防止剤の含有量は、0.45質量%以下、更に0.40質量%以下、更には0.30質量%以下としてもよい。
絶縁層3の構成材料における酸化防止剤の含有量の測定には、例えば、各種の分析方法を利用できる。分析方法の一例として、ガスクロマトグラフィー分析が挙げられる。
絶縁層3の厚さは、導体断面積に応じて、所定の絶縁特性を満たすように適宜選択するとよい。実施形態の電力ケーブル1は、内部半導電層を有していない。そのため、従来の電力ケーブルに対して、(内部半導電層の厚さ-接着層4の厚さt)の厚さを絶縁層3に加えられる。このような絶縁層3の厚肉化によって、電力ケーブル1は、絶縁特性を高め易い。例えば、送電電圧が6.6kVである電力ケーブル1では、絶縁層3の厚さは、4.0mm以上6.0mm以下が挙げられる。
〈接着層〉
接着層4は、導体2と絶縁層3との密着性の向上に寄与する。ここで、電力ケーブル1は、代表的には地中管路等に布設されて使用される。そのため、電力ケーブル1は、布設状態に起因する張力が実質的に作用しない。しかし、電力ケーブル1の使用時、通電及び非通電の繰り返しに伴うヒートサイクルによって、絶縁層3が熱伸縮する。特に、絶縁層3が熱収縮すると、電力ケーブル1の端部において、絶縁層3の端部が初期位置から変位して、導体2の端部が絶縁層3から露出されることが考えられる。そのため、接着層4には、上述の使用時の熱収縮に起因する張力が絶縁層3に作用した場合でも、導体2と絶縁層3とが密着した状態を維持できることが望まれる。このような接着層4の構成材料は、銅又は銅基合金からなる導体2と、架橋ポリオレフィンを主材料とする絶縁層3との双方に対して密着性に優れる材料が好ましい。例えば、接着層4の構成材料には、架橋ポリオレフィン以外の材料であって、架橋ポリオレフィンよりも導体2との密着性に優れる材料が好適に利用できる。
接着層4の構成材料の一例として、エチレンメタクリ酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、及び無水マレイン酸からなる群より選択される1種以上の化合物を含むことが挙げられる。上記に列挙する化合物はいずれも、導体2との接着性が高い。そのため、上記に列挙する化合物からなる接着層4は、導体2と絶縁層3とを密着できる。また、上記に列挙する化合物はいずれも、溶解時に適度な流動性を有しており、押出被覆を行い易い。この点で電力ケーブル1の製造性にも優れる。接着層4の構成材料は上記に列挙する1種の化合物でもよいし、2種以上の化合物を含んでもよい。
接着層4における常温(例えば20℃±15℃)での電気抵抗率は、例えば1×10Ω・cm以上が挙げられる。接着層4の電気抵抗率が1×10Ω・cm以上であれば、電気絶縁性に優れる。良好な電気絶縁性等を望む場合には、上記電気抵抗率を5×10Ω・cm以上、更に1×10Ω・cm以上としてもよい。このような電気絶縁性に優れる接着層4は、例えば、導電性物質(例、カーボンブラック)を添加していない上述のEMMA等の化合物によって実質的に構成することが挙げられる。
接着層4は、導体2をなす圧縮撚線の撚り溝(介在領域27)に充填される部分(以下、充填部と呼ぶ)を含む。また、接着層4は、代表的には、上記充填部に加えて、圧縮撚線の外周の少なくとも一部を囲む部分(以下、被覆部と呼ぶ)を含む。上記被覆部は、上述の包絡円25の少なくとも一部を覆う部分である。接着層4は、上記充填部と上記被覆部とを含み、上記被覆部が上記包絡円25の全周を覆って環状であることが好ましい。
圧縮撚線の各撚り溝に上述の接着層4の充填部を備えていれば、上述の接着層4の被覆部を有していなくても、各充填部の外周面と絶縁層3の内周面とが接着されることで、導体2と絶縁層3とが密着できる。従って、接着層4は、上記被覆部を有さない場合、及び上記被覆部を有するものの環状でない場合を許容する。いわば、導体2と絶縁層3とが直接接触した箇所が存在することを許容する。一方、上記充填部と上記被覆部とを備えると、更には上記被覆部が環状に近いほど、絶縁層3の内周面における接着層4との接触面積が増大し、導体2と絶縁層3とが密着し易く好ましい。また、上記被覆部が環状であれば、導体2をなす圧縮撚線の全周と絶縁層3との間に接着層4が介在することで、導体2と絶縁層3とが直接接触することを防止できる。そのため、接着層4の介在による銅害の防止効果が期待できる。
接着層4は、上述のように電力ケーブル1の使用時において導体2と絶縁層3とが密着した状態を維持できれば、薄くてよい。例えば、接着層4の厚さtは、0.5mm以下が挙げられる。
ここでの接着層4の厚さtとは、上述の被覆部の厚さである。厚さtの測定は、以下のように行う。電力ケーブル1の横断面において、導体2をなす圧縮撚線の包絡円25と、接着層4の輪郭線とを抽出する。包絡円25の直径方向に沿って、包絡円25と輪郭線との距離を測定する。複数の測定点(例、4点~5点)についてそれぞれ上記距離を測定して平均をとる。この平均値を厚さtとする。上記被覆部が環状であれば、包絡円25の周方向に等間隔に測定点をとるとよい。又は、上記被覆部が環状であれば、包絡円25の全周に亘って上記距離を測定し、平均をとってもよい。上記被覆部が環状でなければ、上記被覆部が存在する箇所から測定点をとる。
接着層4の厚さtが薄いほど、上述のように絶縁層3を厚くして絶縁特性を高め易い。(内部半導電層の厚さ-接着層4の厚さt)の値が大きくなって、絶縁層3の増加量を大きく確保できるからである。また、厚さtが薄いほど、接着層4の材料を低減できる。この点から、材料コストも低減できる。絶縁層3の増大による絶縁特性の向上等を望む場合には、厚さtを0.4mm以下、更に0.3mm以下としてもよい。
一方、接着層4の厚さtが0.01mm以上であれば、上述の被覆部を含むことによる導体2と絶縁層3との密着性の向上を図れる。また、厚さtが厚いほど、接着層4は、上記被覆部を有し易く、更には環状の被覆部を有し易い。そのため、導体2と絶縁層3との密着性の向上効果、銅害防止効果を得易い。密着性の向上、銅害防止等を望む場合には、厚さtを0.05mm以上、更に0.08mm以上、0.10mm以上にしてもよい。
〈その他の構成層〉
外部半導電層5や遮蔽層、シース等は、公知の材料を利用できる。なお、外部半導電層5を省略することもできる。
〈絶縁特性〉
実施形態の電力ケーブル1は、内部半導電層を備えていないものの、内部半導電層を備える従来の電力ケーブルと同等程度、又はそれ以上の絶縁特性を有する。
例えば、実施形態の電力ケーブル1は、部分放電試験において、10pCの放電発生電圧が15kV以上であることが挙げられる。10pCの放電発生電圧が15kV以上であれば部分放電し難いといえる。このような電力ケーブル1は、導体2と絶縁層3との間に部分放電の起点となり得る空隙が少ないと考えられる。このことから、内部半導電層を備えていない電力ケーブルに対して、「10pCの放電発生電圧が15kV以上」という指標は、導体2と絶縁層3との間に部分放電の起点となり得る空隙が少ないことを間接的に示す指標の一つに利用できると考えられる。10pCの放電発生電圧が高いほど部分放電し難く、絶縁特性に優れる。そのため、10pCの放電発生電圧は15.3kV以上、更に15.5kV以上が好ましい。部分放電試験、後述するAC破壊試験、浸水課電後のAC破壊試験の試験条件は、試験例1で詳細に説明する。
又は、実施形態の電力ケーブル1は、AC破壊試験において、破壊電圧が20kV/mm以上であることが挙げられる。上記破壊電圧が20kV/mm以上であれば絶縁破壊し難いといえる。このような電力ケーブル1は、絶縁層3や、導体2と絶縁層3との間に絶縁破壊の起点となり得る空隙が少ないと考えられる。このことから、内部半導電層を備えていない電力ケーブルに対して、「破壊電圧が20kV/mm以上である」という指標は、絶縁層3や、導体2と絶縁層3との間に上記空隙が少ないことを間接的に示す指標の一つに利用できると考えられる。上記破壊電圧が高いほど絶縁破壊し難く、絶縁特性に優れる。そのため、上記破壊電圧は20.2kV/mm以上、更に20.5kV/mm以上が好ましい。
又は、実施形態の電力ケーブル1は、浸水課電後のAC破壊試験において、破壊電圧が15kV/mm以上であることが挙げられる。浸水課電後における上記破壊電圧が15kV/mm以上であれば、長期に亘り水分が接した状態となっても酸化劣化や水トリー等が生じ難く、絶縁破壊し難いといえる。このような電力ケーブル1は、絶縁層3や、導体2と絶縁層3との間に水分が溜まり得る隙間が少ないと考えられる。このことから、内部半導電層を備えていない電力ケーブルに対して、「浸水課電後の破壊電圧が15kV/mm以上である」という指標は、絶縁層3や導体2と絶縁層3との間に上記隙間が少ないことを間接的に示す指標の一つに利用できると考えられる。上記破壊電圧が高いほど長期の使用でも絶縁破壊し難く、絶縁特性に優れる。そのため、上記破壊電圧は16kV/mm以上、更に18kV/mm以上が好ましい。
実施形態の電力ケーブル1は、部分放電試験において10pCの放電発生電圧が15kV以上であること、AC破壊試験において破壊電圧が20kV/mm以上であること、及び浸水課電後のAC破壊試験において破壊電圧が15kV/mm以上であることの少なくとも一つを満たすことが好ましい。列挙した三つの事項のうち、少なくとも二つを満たすこと、更に三つ全てを満たすことがより好ましい。
上述の放電発生電圧、破壊電圧、浸水課電後の破壊電圧をより高めるには、上述の導体占有割合をより大きくすること、酸化防止剤の含有量を多くすること、接着層4の厚さtを厚くすること等が挙げられる。
〈送電電圧〉
実施形態の電力ケーブル1は、上述のように導体2を特定の形状とし、かつ接着層4を備えることで部分放電や絶縁破壊が発生し難いため、送電電圧がより高い用途に好適に利用できる。例えば、電力ケーブル1は、送電電圧が600V超、更に3500V以上、特に6.6kV以上である用途に好適に利用できる。
(電力ケーブルの製造方法)
実施形態の電力ケーブル1は、例えば、以下の工程を備える製造方法によって製造できる。
(導体準備工程)複数の線材を撚り合せた後、更に圧縮成形して、圧縮撚線を形成する工程。
(押出工程)前記圧縮撚線の直上に、接着層となる第一の原料と、絶縁層となる第二の原料とを同時に押し出す工程。
(架橋工程)前記第二の原料による押出層を架橋する工程。
以下、工程ごとに詳細に説明する。
〈導体準備工程〉
この工程では、導体2とする圧縮撚線を製造する。圧縮撚線に供する線材は、銅又は銅基合金からなり、所定の断面積や外径を有する線材を利用できる。代表的には、上記線材は、銅又は銅基合金からなる丸線を利用できる。上記線材は、公知の銅線又は銅基合金線の製造方法によって製造できる。上記線材として、比較的太めの線材を利用すると、圧縮度合いを高め易く、上述の導体占有割合を高め易い。撚線の製造には、同心撚りや集合撚り等の撚り合せ法を利用できる。圧縮成形には、所定の横断面形状が得られる成形型を利用できる。また、圧縮成形は、上記導体占有割合が85%超となる範囲で圧縮度合いを調整して行うことが好ましい。
〈押出工程〉
この工程では、用意した圧縮撚線の外周に第一の原料及び第二の原料を押し出して、第一の原料による押出層と第二の原料による押出層とを同時に形成する。押出層の形成には、従来の電力ケーブルにおける内部半導電層と絶縁層との同時押出に利用される設備を利用できる。
第一の原料には、接着層4の構成材料の項で説明した化合物等を利用できる。第二の原料には、絶縁層3の構成材料の項で説明したポリオレフィン(酸化防止剤等を含んでもよい)を利用できる。接着層4、絶縁層3の構成材料の詳細は上述の各項を参照するとよい。第一の原料及び第二の原料は、いずれも押出可能なように溶融状態とする。
各押出層の厚さは、接着層4の厚さt、絶縁層3の厚さが所定の厚さとなるように調整する。上述のように接着層4の厚さtは薄くてよいため、接着層4となる押出層の厚さも薄くできる。
押出温度は、例えば180℃以上が挙げられる。押出温度が高いほど、原料の流動性を高められて、圧縮撚線と溶融状態の原料(押出層)とを密着させ易い。第一の原料による押出層と第二の原料による押出層とも密着させ易い。その結果、導体2と絶縁層3との間に局所的な電界集中箇所となり得る微小な空隙が生じることを低減し易い。密着性の向上等を望む場合には、原料の組成、押出層の厚さ等にもよるが、押出温度を190℃以上、更に200℃以上としてもよい。押出温度の調整に加えて、又は調整に代えて、押出圧力を高めてもよい。この場合も、上記空隙を低減して、圧縮撚線と押出層、押出層同士を密着させ易いと期待される。
〈架橋工程〉
この工程では、第二の原料による押出層、即ち主としてポリオレフィンからなる押出層を架橋して、主として架橋ポリオレフィンからなる絶縁層3を形成する。架橋条件は、ポリオレフィンの種類、酸化防止剤等の添加剤の種類や含有量、押出層の厚さ等に応じて、適宜選択できる。この工程により、圧縮撚線からなる導体2の外周に、架橋ポリオレフィンを主体とする絶縁層3を備え、かつ導体2と絶縁層3とに接する接着層4を有するものが得られる。
〈その他の工程〉
外部半導電層5を備える場合、絶縁層3の外周に外部半導電層5を形成する。例えば、外部半導電層5は、半導電テープを巻回して形成してもよい。又は、例えば、外部半導電層5は、接着層4及び絶縁層3と同時押出によって形成してもよい。
絶縁層3の外周、又は外部半導電層5の外周に遮蔽層やシース等(いずれも図示せず)を形成する。遮蔽層やシースの製造条件は、公知の条件を利用できる。
〈その他の製法〉
同時押出に代えて、圧縮撚線の直上に接着層となる第一の原料を押し出した後、絶縁層となる第二の原料を押し出してもよい。即ち、押出工程を複数回行ってもよい。但し、上述の同時押出を行うと、押出工程数が少なく、製造性に優れる。
(主要な作用・効果)
実施形態の電力ケーブル1は、導体2が圧縮撚線から構成されると共に、導体2と絶縁層3とに接する接着層4を備える。実施形態の電力ケーブル1は、内部半導電層を備えていないものの、内部半導電層を備える従来の電力ケーブルと同等程度以上の絶縁特性を有する。また、導体2と絶縁層3との密着性にも優れる。これらの効果を以下の試験例1で具体的に説明する。
[試験例1]
以下の電力ケーブルについて、絶縁特性、導体と絶縁層との密着性を調べた。
電力ケーブルはいずれも、送電電圧が6.6kVであり、導体断面積が60mmである単心のCVケーブル(6600V、CV、1X60SQ)相当とする。導体は銅からなるものとする。また、各電力ケーブルは、同一の厚さの絶縁層を備えると共に、外部半導電層、遮蔽層、シースを備えるものとする。
〈試料No.1 内部半導電層なし、接着層有り、導体占有割合:大〉
試料No.1の電力ケーブルは、圧縮撚線からなる導体と、EMMAからなる接着層と、酸化防止剤を含む架橋ポリエチレンからなる絶縁層とを備える。
ここでは、1.0mmφ以上の線径を有する複数の銅線を撚り合せた後、圧縮成形して圧縮撚線を製造する。圧縮度合いは、導体占有割合が91%となるように調整する。導体占有割合は、得られる電力ケーブル(又は圧縮撚線)の横断面において、圧縮撚線の包絡円の面積に対する圧縮撚線の輪郭内の面積が占める割合である。
絶縁層の原料は、フェノール系の酸化防止剤を0.15質量%含有するポリエチレンである。接着層の原料(EMMA)と絶縁層の原料とを溶融状態として、圧縮撚線の外周に同時押出を行う。押出温度は、210℃である。押出後、絶縁層の原料による押出層を架橋する。接着層の厚さは0.1mmである。
接着層における常温(ここでは20℃程度)の電気抵抗率は、1×10Ω・cm以上である。
〈試料No.100 内部半導電層なし、接着層有り、導体占有割合:小〉
試料No.100の電力ケーブルは、試料No.1に対して、上記導体占有割合を小さくした点を除いて、試料No.1と同様に製造する。試料No.100の電力ケーブルの導体占有割合は85%である。
〈試料No.200 内部半導電層有り、接着層無し〉
試料No.200の電力ケーブルは、内部半導電層を備える従来の電力ケーブルであり、市販のものである。
各試料の電力ケーブルについて、以下の試験を行った。
以下の(1)~(3)の試験では、各試料の電力ケーブルから適宜な長さのケーブル片をとり、ケーブル片の端末(切断端面)から部分放電等が発生しないように十分な処置を行ったものを試験片とする。
(1)部分放電試験(初期特性の評価)
この試験は、室温(ここでは20℃程度)で行う。
用意した試験片を線心外径の約10倍の円周に沿って180°屈曲させた状態で、試験片に備えられる導体と遮蔽層との間に交流電圧を加え、部分放電の発生電圧を測定器で調べる。印加する交流電圧は、周波数が50Hz又は60Hzの正弦波に近いものである。上記測定器には、10pC以下の放電電荷量を測定可能な精度を有するものを利用する。
(2) AC破壊試験(初期特性の評価)
用意した試験片を、上述の(1)部分放電試験と同様に、室温にて、線心外径の約10倍の円周に沿って180°屈曲させた状態で、導体と遮蔽層との間に交流電圧を印加する。印加する交流電圧は、周波数が50Hz又は60Hzのほぼ正弦波の波形を持つものである。交流電圧を徐々に増大させていき、絶縁破壊する電圧を調べる。
(3)浸水課電試験
この試験は、絶縁層の内外を浸水状態として、電圧を印加する。詳しくは、水路中に試験片を設置する。試験片に備えられるシースに穴をあけてシース内に浸水可能なようにし、かつケーブル両端から導体内に水を注入した状態で課電を行う。上記課電後、上述の(2)AC破壊試験と同様にして、AC破壊電圧(残存性能)を測定する。上記課電は、印加電圧を12.7kVとし、周波数を50Hzとする加速劣化条件での課電とし、この加速劣化条件での課電を120日行う。
(4)ヒートサイクル試験
この試験は、各試料の電力ケーブルから適宜な長さのケーブル片をとり、ケーブル片の端部に端末金具を取り付けて実線路に近い回路を形成し、通電及び非通電を繰り返す。通電条件は、導体温度が90℃となるような電流値を設定し、この電流値で4時間通電後、4時間非通電とする(通電を遮断する)。絶縁層の収縮量が飽和するまで、上述の通電条件で通電及び非通電を繰り返す。絶縁層の収縮量が飽和した状態において、導体の端部が絶縁層から露出するか否か目視確認する。
試料No.1の電力ケーブルの試験結果は以下の通りである。
(1)部分放電試験において15kVで部分放電が発生せず、15.8kVで発生した。即ち、10pCの放電発生電圧が15kV以上である。
(2)AC破壊試験において、初期のAC破壊電圧が21kV/mmであり、20kV/mm以上である。
(3)浸水課電試験において、浸水課電試験後のAC破壊電圧が19.2kV/mmであり、15kV/mm以上である。
(4)ヒートサイクル試験において、絶縁層が収縮しているものの、収縮量が小さく(6mm以下程度)、導体は絶縁層から露出していない。
試料No.100の電力ケーブルの試験結果は以下の通りである。
(1)部分放電試験において6.0kVで部分放電が発生し、10pCの放電発生電圧が15kV未満、更に10kV以下であった。
(2)AC破壊試験において、初期のAC破壊電圧が20kV/mm未満であった。
(3)浸水課電試験において、浸水課電試験後のAC破壊電圧が12kV以下であった。
(4)ヒートサイクル試験において、絶縁層が収縮しているものの、収縮量が小さく(6mm以下程度)、導体は絶縁層から露出していない。
試料No.200の電力ケーブルの試験結果は以下の通りである。
(1)部分放電試験において5.0kV~12kVで部分放電が発生した。
(2)AC破壊試験において、初期のAC破壊電圧が26kV/mmであった。
(3)浸水課電試験において、浸水課電試験後のAC破壊電圧が13kV/mm~31kV/mmであった。
(4)ヒートサイクル試験において、絶縁層が収縮しているものの、収縮量が小さく(6mm以下程度)、導体は絶縁層から露出していない。
なお、試料No.200については、複数のサンプルを測定しており、(1),(3)に示すように結果にばらつきがある。
試料No.1と試料No.200とを比較することで、試料No.1の電力ケーブルは、内部半導電層を備える従来の電力ケーブルと同等程度以上の部分放電特性を有する、同等程度のAC破壊特性を有する、浸水課電試験後においても同等程度又は同等程度以上のAC破壊特性を有するといえ、絶縁特性に優れる。また、試料No.1の電力ケーブルは、内部半導電層を有していないものの、導体と絶縁層との密着性に優れる。
試料No.1と試料No.100とを比較すると、内部半導電層を省略する場合には、導体占有割合をある程度高めると(この試験では85%超)、10pCの放電発生電圧や、AC破壊電圧、浸水課電試験後のAC破壊電圧を高め易いといえる。また、試料No.200に示すように内部半導電層を備えていても10pCの放電発生電圧が15kV未満になったり、浸水課電試験後のAC破壊電圧にばらつきがあり、15kV/mm未満となったりする場合がある。これに対し、試料No.1の電力ケーブルが上述のように絶縁特性に優れる理由の一つとして、圧縮撚線からなる導体を備えると共に、導体と絶縁層とに接する接着層を備えることで、導体と絶縁層との間に局所的な電界集中箇所となり得る空隙が十分に少ないため、と考えられる。
以上の試験結果から、圧縮撚線からなる導体を備えると共に、導体と絶縁層とに接する接着層を備えることで、内部半導電層を備えていなくても、内部半導電層を備える従来の電力ケーブルと同等以上の絶縁特性を有しつつ、導体と絶縁層との密着性に優れることが示された。
本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
1 電力ケーブル
2 導体、20 素線、22 隙間、25 包絡円、27 介在領域
3 絶縁層
4 接着層
5 外部半導電層

Claims (11)

  1. 導体と、
    前記導体の外周に設けられる絶縁層と、
    前記導体と前記絶縁層とに接する接着層とを備え、
    前記導体は、銅又は銅基合金からなる複数の素線を含む圧縮撚線であり、
    前記圧縮撚線は、前記複数の素線間に隙間を有しており、
    前記絶縁層の構成材料は、架橋ポリオレフィンを含み、
    送電電圧が6.6kV以上である、
    電力ケーブル。
  2. 前記接着層の構成材料は、エチレンメタクリ酸メチル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、及び無水マレイン酸からなる群より選択される1種以上の化合物を含む請求項1に記載の電力ケーブル。
  3. 前記接着層における常温での電気抵抗率が1×10Ω・cm以上である請求項2に記載の電力ケーブル。
  4. 前記接着層の厚さは、0.5mm以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力ケーブル。
  5. 横断面において、前記圧縮撚線の包絡円と、前記圧縮撚線の輪郭とをとり、前記包絡円の面積に対する前記輪郭内の面積が占める割合が85%超である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電力ケーブル。
  6. 前記絶縁層の構成材料は、酸化防止剤を含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電力ケーブル。
  7. 前記酸化防止剤は、フェノール系であり、
    前記絶縁層の構成材料は、前記酸化防止剤を0.05質量%以上0.5質量%以下含む請求項6に記載の電力ケーブル。
  8. 部分放電試験において、10pCの放電発生電圧が15kV以上である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電力ケーブル。
  9. AC破壊試験において、破壊電圧が20kV/mm以上である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電力ケーブル。
  10. 浸水課電後のAC破壊試験において、破壊電圧が15kV/mm以上である請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の電力ケーブル。
  11. 前記導体の公称断面積が14mm 以上1200mm 以下である請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の電力ケーブル。
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