以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。実施形態では、図1、図3及び図4に対してX軸、Y軸、Z軸を設定しているが、これらの各軸は、説明のために便宜的に設定されている。
図1の(a)は、一の実施形態に係る面ファスナ雌材の側面を模式的に表した側面図であり、図1の(b)は、一の実施形態に係る面ファスナ雌材用編地の編組織のパターンを模式的に示した図である。図1の(c)は、一の実施形態に係る面ファスナ雌材の側面を第1方向に沿って拡大して模式的に表した側面図である。図1の(d)は、一の実施形態に係る面ファスナ雌材の側面を第2方向に沿って拡大して模式的に表した側面図である。
図1の(a)に示されるように、面ファスナ雌材10は、基材20と、面ファスナ雌材用編地30とを備える。面ファスナ雌材用編地30は、経糸32、緯糸34、及びループ糸36から構成される。ループ糸36は、面ファスナ雌材用編地30のパイルを形成し、経糸32及び緯糸34は、面ファスナ雌材用編地30の地組織を形成する。ループ糸36は、面ファスナ雌材用編地30に対して基材20と反対側の表面30aから突出している。
本実施形態において、面ファスナ雌材用編地30を構成する経糸32、緯糸34、及びループ糸36は、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタン、レーヨン、これらのコポリマー若しくは混合物、又は天然繊維等を含む。経糸32、緯糸34、及びループ糸36の材質に、特に制限はなく、ある態様においては、雄材との係合による雌材破壊を防ぐという観点から、高強度であるポリアミドが使用される。材料コストや環境安定性の点から、ポリエステルによって、経糸32、緯糸34、及びループ糸36が構成されてもよい。
ループ糸36は、面ファスナ雄材との係合確率を高めるという点から、モノフィラメントよりマルチフィラメントの材質を含むことが好ましい。マルチフィラメントが用いられる場合には、ループ糸36のフィラメントが細いときには、面ファスナ雄材との係合中に切れたりすることがあるので、面ファスナの形状等に基づき、適度な太さのフィラメントが選択される。経糸及び緯糸の材質は、モノフィラメントを含んでも、マルチフィラメントを含んでもよい。フィラメント糸の繊度は、20~220T、好ましくは20~100Tであることができる。
面ファスナ雌材用編地30は、1平方メートル当たり10~100gの坪量を有することができる。坪量が5g/m2以下であるときには、編み立て時に面ファスナ雌材用編地30としての形態保持が難しいことがある。また、坪量が100g/m2以上であるときには、面ファスナ雌材用編地の剛性が増すことにより、面ファスナ雌材用編地が、例えば、吸水性物品に取り付けられたとき、面ファスナ雌材用編地が取り付けられた部分において、その柔軟性が損なわれる場合がある。坪量が100g/m2以上であるときには、面ファスナ雌材用編地が密となるので、基材20上にデザイン等を施す場合には、その視認性が損なわれることがある。
基材20は、例えば、樹脂フィルム、不織布、紙、又はこれらの積層体等を含む。基材20の材質には、特に制限はない。樹脂フィルムは、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂などの合成樹脂フィルム、又はこれらの合成樹脂フィルムの積層フィルム等を含む。基材20には、面ファスナ雄材との係合面の位置指標や各種記号又はデザイン等が設けられてもよい。
図1の(a)に示されるように、ループ糸36が面ファスナ雌材用編地30に対して基材20と反対側の表面30aから突出しており、基材20は、ループ糸36が突出している面と反対側の面で、面ファスナ雌材用編地30と接合している。基材20と面ファスナ雌材用編地30との接合方法としては、特に制限はなく、熱ラミネート法、超音波ラミネート法、押し出しラミネート法、ホットメルト塗布ラミネート法、ドライラミネート法、又はウェットラミネート法といった従来公知の方法が使用される。押し出しラミネート法では、ポリエチレン、ポリプロピレン、あるいは変性ポリオレフィンといった樹脂が適宜使用される。
図1の(b)は、面ファスナ雌材用編地30の編組織パターンP30を模式的に示している。編組織パターンP30では、ループ糸36の編パターンを表記し、経糸32及び緯糸34の編パターンを省略している。ループ糸36の編パターンは、0-2/2-3/3-1/1-0である。編組織パターンP30においては、第1方向Ax1と、第1方向Ax1に直交する第2方向Ax2とを仮想的に設けることができる。図1の(b)では、第1方向Ax1がX軸方向に沿い、第2方向Ax2がY軸方向に沿っている。
第1方向Ax1は、経方向及び緯方向の一方であることができて、例えば、経方向である。第2方向Ax2は、経方向及び緯方向の他方であることができて、例えば、緯方向である。
図1の(b)では、第1方向Ax1が、経方向であり、第2方向Ax2が、緯方向である編組織パターンP30の一実施形態を示している。面ファスナ雌材用編地30の編組織パターンP30は、第1方向Ax1における1ピッチ毎、及び第2方向Ax2における1ピッチ毎に仮想的にグリッドを設定することによって表される。図1の(b)において、グリッドは小さな黒丸で表記されている。
第1方向Ax1においては、1ピッチ毎に仮想的に設定されたグリッドの配列が、第1方向Ax1に沿ったグリッドラインGL1を成す。第1方向Ax1のグリッドラインGL1は、例えば、グリッドラインW1~グリッドラインW6を含む。
第2方向Ax2においては、1ピッチ毎に仮想的に設定されたグリッドの配列が、第2方向Ax2に沿ったグリッドラインGL2を成す。第2方向Ax2のグリッドラインGL2は、例えば、グリッドラインC1~グリッドラインC7を含む。
第1方向Ax1は、一方側Ax1aと、この一方側Ax1aと反対方向に向かう他方側Ax1bとを有する。第1方向Ax1の一方側Ax1aは、例えば、第1方向Ax1に沿って、グリッドラインC1からグリッドラインC7に向かう方向として規定される。第1方向Ax1の他方側Ax1bは、例えば、第1方向Ax1のグリッドラインGL1に沿って、グリッドラインC7からグリッドラインC1に向かう方向として規定される。第1方向Ax1の一方側Ax1aは、例えば、第1方向Ax1に沿って、グリッドラインC7からグリッドラインC1に向かう方向として規定されてもよい。第1方向Ax1の他方側Ax1bは、例えば、第1方向Ax1のグリッドラインGL1に沿って、グリッドラインC1からグリッドラインC7に向かう方向として規定されてもよい。
第2方向Ax2は、一方側Ax2aと、この一方側Ax2aと反対方向に向かう他方側Ax2bとを有する。第2方向Ax2の一方側Ax2aは、例えば、第2方向Ax2に沿って、グリッドラインW1からグリッドラインW6に向かう方向として規定される。第2方向Ax2の他方側Ax2bは、例えば、第2方向Ax2のグリッドラインGL2に沿って、グリッドラインW6からグリッドラインW1に向かう方向として規定される。第2方向Ax2の一方側Ax2aは、例えば、第2方向Ax2に沿って、グリッドラインW6からグリッドラインW1に向かう方向として規定されてもよい。第2方向Ax2の他方側Ax2bは、例えば、第2方向Ax2のグリッドラインGL2に沿って、グリッドラインW1からグリッドラインW6に向かう方向として規定されてもよい。
面ファスナ雌材用編地30は、接結点40を備える。接結点40は、経糸32及び緯糸34の少なくとも一方とループ糸36との編成によってループ糸36を固定する。一の接結点40は、他の接結点40から離間した位置に設けられ、経糸32及び緯糸34の少なくとも一方とループ糸36との編成によってループ糸36を固定する。図1の(b)において、接結点40は大きな黒丸で表記されている。一つ当たりのループ部50は、一の接結点40を一端部として地組織に固定され、隣の接結点40を他端部として地組織に固定される(図1の(d)参照)。ループ部50は、第2方向Ax2の一方側Ax2a(Y軸方向の正側)に傾斜するパターンのループ部50Aと、他方側Ax2b(Y軸方向の負側)に傾斜するパターンのループ部50Bを有する(図1の(c)参照)。ループ部50Aとループ部50Bとは、第1方向Ax1に沿って交互に形成される。
接結点40は、図1の(b)に示されるように、第1方向Ax1のグリッドライン上、例えば、グリッドラインW2上及びグリッドラインW5上に並ぶことができる。また、接結点40は、第2方向Ax2のグリッドライン上、例えば、グリッドラインC1上、グリッドラインC3上、グリッドラインC5上、及びグリッドラインC7上に並ぶことができる。
ループ糸36は、例えば、第1方向Ax1の一方側Ax1a、すなわち、グリッドラインC1上からグリッドラインC7に向かって順番に経糸32及び緯糸34の少なくとも一方との編成が行われる。また、例えば、第2方向Ax2において、複数のループ糸36が、経糸32及び緯糸34の少なくとも一方と同時に編成されて、接結点40が形成されてもよい。図1の(b)において、ループ糸36として、ループ糸36Aとループ糸36Bとが図示されているが、ループ糸36Aとループ糸36Bとは、同時に、経糸32及び緯糸34の少なくとも一方と編成されることができる。
ここで、編組織パターンP30を説明するために、「第1接結点41」、「第2接結点42」という語を用いて説明を行う場合がある。また、第1接結点41が形成されるグリッドを「第1グリッド」と称し、第2接結点42が形成されるグリッドを「第2グリッド」と称する場合がある。第1接結点41は、一つのループ部50に注目した時に、編成順序における上流側、すなわち第1方向Ax1の他方側Ax1bの接結点40に該当する。第2接結点42は、一つのループ部50に注目した時に、編成順序における下流側、すなわち第1方向Ax1の他方側Ax1bの接結点40に該当する。
本実施形態では、ループ部50Aとループ部50Bとが交互に連続的に形成されている。すなわち、第1方向Ax1に互いに隣り合うループ部50Aとループ部50Bは、一つの接結点40を共有し、接結点40は、第1接結点41と第2接結点42とを含む。従って、一つのループ部50Aにとっての第2接結点42は、第1方向Ax1の一方側Ax1aに隣り合うループ部50Bにとっては第1接結点41に該当する。例えば、図1の(b)には、グリッドラインC3とグリッドラインC5との間に一対のループ部50Aが形成されている。すなわち、例えば、図1の(b)の領域E1と領域E2とに一対のループ部50Aが形成されている。一例では、領域E1は、グリッド(W2,C3)、(W3,C4)、(W2,C5)、及び(W3,C5)を含み、領域E2は、グリッド(W5,C3)、(W6,C4)、(W5,C5)、及び(W6,C5)を含む。図1の(b)には、グリッドラインC5とグリッドラインC7との間に一対のループ部50Bが形成されている。すなわち、例えば、図1の(b)の領域F1と領域F2とに一対のループ部50Aが形成されている。一例では、領域F1は、グリッド(W2,C5)、(W1,C6)、(W1,C7)、及び(W2,C7)を含み、領域F2は、グリッド(W5,C5)、(W4,C6)、(W4,C7)、及び(W5,C7)を含む。
ループ部50Aにとっては、例えば領域E1のグリッド(W2,C3)及び 領域E2のグリッド(W5,C3)の接結点40が、第1接結点41に該当し、例えば領域E1のグリッド(W2,C5)及び 領域E2の(W5,C5)の接結点40が、第2接結点42に該当する。一方、ループ部50Bにとっては、例えば領域F1のグリッド(W2,C5)及び 領域F2のグリッド(W5,C5)の接結点40が、第1接結点41に該当し、例えば領域F1のグリッド(W2,C7)及び 領域F2のグリッド(W5,C7)の接結点40が、第2接結点42に該当する。このように、グリッド(W2,C5),(W5,C5)の接結点40は、ループ部50Aにとっての第2接結点42として機能すると同時に、ループ部50Bにとっての第1接結点41として機能する。すなわち、グリッド(W2,C5),(W5,C5)は、ループ部50Aに対する第2グリッドG2に対応し、且つ、ループ部50Bに対する第1グリッドG1に対応する。なお、グリッド(W2,C3),(W5,C3)はループ部50Aに対する第1グリッドG1に対応し、(W2,C7),(W5,C7)はループ部50Bに対する第2グリッドG2に対応する。
ループ糸36Aが、経糸32及び緯糸34の少なくとも一方と編成されるときには、接結点40は、例えば、グリッド(W2,C1),(W2,C3),(W2,C5)及び(W2,C7)において順に形成される。グリッド(W2,C1)の接結点40は、第1接結点41であり、グリッド(W2,C3)の接結点40は、第2接結点42であるとともに、第1接結点41としても機能する。ループ糸36Bが、経糸32及び緯糸34の少なくとも一方と編成されるときにも、接結点40は、例えば、グリッド(W5,C1),(W5,C3),(W5,C5)及び(W5,C7)において順に形成される。グリッド(W5,C1)の接結点40は、第1接結点41であり、グリッド(W5,C3)の接結点40は、第2接結点42であるとともに、第1接結点41としても機能する。
なお、本実施形態では、編組織パターンP30上において、一の接結点40と他の接結点40、すなわち、第1接結点41と第2接結点42とを結ぶ基準線Sx1を規定することができる。具体的には、グリッドラインW2上に接結点40で形成されるループ部50A,50Bに対して設定される基準線Sx1は、図1の(b)に示されるように、例えば、グリッドラインW2に沿う。
図1の(b)では、第1方向Ax1において、一の接結点40は、他の接結点40に対して2グリッド分の離間を有しているが、一の接結点40は、他の接結点40に対して1グリッド分の離間を有してもよく、また、3グリッド分以上の離間を有してもよい。また、図1の(b)では、第2方向Ax2において、一のループ糸36を固定する接結点40は、他のループ糸36を固定する接結点40に対して3グリッド分の離間を有しているが、一のループ糸36を固定する接結点40は、他のループ糸36を固定する接結点40に対して1グリッド又は2グリッド分の離間を有してしてもよく、また、4グリッド分以上の離間を有してもよい。
面ファスナ雌材用編地30では、第1仮止め点43が設定される。第1仮止め点43では、ループ糸36を解除可能に支持することでループ糸36の仮止めが行われる。第1仮止め点43は、ループ糸36を他の糸に対して編み込むことなく、ループ糸36の移動を拘束する点である。第1仮止め点43ではループ糸36は他の糸に対して編み込まれていないため、支持を解除した後は、ループ糸36は、第1仮止め点43の位置から移動することができる。第1仮止め点43では、接結点40(第2接結点42)の形成中に、ループ糸36が支持される。第1仮止め点43におけるループ糸36の仮止めでは、編機の針が、例えば、第2接結点42(接結点40)を形成している間、第1仮止め点43でループ糸36を支持し続け、第2接結点42(接結点40)の形成後にループ糸36の支持を解除することができる。編機の針は、例えば、J型といった形状を有する。編機の針の短辺側の部分にて第1仮止め点43での支持が行われる。図1の(b)に示されるように、第1仮止め点43は、大きな白丸で表記されている。
第1仮止め点43は、第2方向Ax2に沿って、第2接結点42(接結点40)と同じグリッドライン上に設定される。第1仮止め点43は、例えば、第2接結点42(接結点40)がグリッドラインC5上に形成されるとき、その一の接結点40と同じグリッドラインC5上に設定される。具体的には、領域E1において、グリッド(W2,C3)の接結点40(第1接結点41)が形成され、グリッド(W3,C5)の第1仮止め点43が設定される。続いて、グリッド(W2,C5)の接結点40(第2接結点42)が形成される。
第1仮止め点43は、ループ部50Aを形成するときは基準線Sx1よりも第2方向Ax2の一方側Ax2aに設定され、ループ部50Bを形成するときは基準線Sx1よりも第2方向Ax2の他方側Ax2bに設定される。図1の(b)では、第2方向Ax2において、第1仮止め点43は、第2接結点42(接結点40)に対して1グリッド分の離間を有しているが、第1仮止め点43は、第2接結点42(接結点40)に対して2グリッド分以上の離間を有してもよい。
面ファスナ雌材用編地30は、第2仮止め点44が更に設定されることができる。第2仮止め点44では、ループ糸36を解除可能に支持することでループ糸36の仮止めが行われる。なお、第2仮止め点44でのループ糸36の支持態様は、第1仮止め点43と同様である。第2仮止め点44におけるループ糸36の仮止めでは、編機の針が、例えば、接結点40(第1接結点41)の形成後に、第2仮止め点44でループ糸36を支持し、接結点40(第2接結点42)の形成前にループ糸36の支持を解除する。第2仮止め点44は、大きな白丸で表記されている。
第2仮止め点44は、第2方向Ax2に沿って、接結点40と異なるグリッドライン上に設定されることができる。第2仮止め点44は、例えば、一の接結点40がグリッドラインC3上に形成され、他の接結点40がグリッドラインC5上に形成されるとき、その一の接結点40のグリッドラインC3と、他の接結点40のグリッドラインC5との間のグリッドラインC4上に設定される。具体的には、領域E1において、グリッド(W2,C3)の接結点40(第1接結点41)が形成され、グリッド(W3,C4)の第2仮止め点44が形成される。続いて、グリッド(W3,C5)の第1仮止め点43が設定され、グリッド(W2,C5)の接結点40(第2接結点42)が形成される。
図1の(b)に示されるように、例えば領域E1において、編組織パターンP30は、第1接結点及び第2接結点を含む二つの接結点と、第1仮止め点及び第2仮止め点を含む二つの仮止め点とを有し、接結点と仮止め点とが合わせて4つあることによって一つの編パターンを構成している。編組織パターンP30は、接結点と仮止め点とが合わせて5つ以上あることによって一つの編パターンを構成してもよく、例えば、2つの接結点と4つの仮止め点とを有し、接結点と仮止め点とが合わせて6つあることによって一つの編パターンを構成してもよい。具体的には、編組織パターンP30は、例えば2つの接結点と4つの仮止め点とによって一つの編パターンを構成してもよい。接結点と仮止め点とが合わせて6つある場合も、接結点と仮止め点とが合わせて4つある場合と類似の効果を示すことが可能である。
第2仮止め点44は、ループ部50Aを形成するときは基準線Sx1よりも第2方向Ax2の一方側Ax2aに設定され、ループ部50Bを形成するときは基準線Sx1よりも第2方向Ax2の他方側Ax2bに設定される。図1の(b)では、第2方向Ax2において、第2仮止め点44は、接結点40に対して1グリッド分の離間を有しているが、第2仮止め点44は、接結点40に対して2グリッド分以上の離間を有してもよい。
次に、上述の様な編組織パターンP30によって形成されたループ部50の構成について、図1の(c),(d)を参照して詳細に説明する。図1の(c)は、基材20と反対側の表面30aから突出したループ糸36を第1方向Ax1から視認した図を示している。具体的には、グリッドラインW2又はグリッドラインW5に沿って、第1方向Ax1の一方側Ax1aにループ糸36A又はループ糸36Bを視認している。
本実施形態では、第1接結点41及び第2接結点42は、第1方向Ax1に沿って配列されることができる。また、第1仮止め点43及び必要に応じて設定される第2仮止め点44は、第1方向Ax1における一方側Ax1aと、第1方向Ax1における他方側Ax1bとの双方において、第1接結点41と第2接結点42とを結ぶ基準線Sx1から等しい距離に設定されることができる。これらの第1接結点41、第2接結点42、第1仮止め点43及び第2仮止め点44の配置によって、ループ糸36は、第1方向Ax1に沿って左右対称に突出することができる。
また、ループ糸36は、第1接結点41及び第2接結点42に固定され、また、ループ糸36は、第1仮止め点43及び、必要に応じて設定される第2仮止め点44に支持されることができるので、その支持に対応して、面ファスナ雌材用編地30の表面30aから多く突出することができる。特に、第1仮止め点で止めるため、引っ張られによる沈みがなく、表側にループ糸がしっかりと突出できる。よって、ループ長が長くなるループ糸36は、表面30aから多く突出するので、第1接結点41及び第2接結点42との距離より長いループ長を有する。なお、ループ長とは、ループ部50一つ分におけるループ糸36の長さ(第1接結点41と第2接結点42との間のループ糸36の長さ)である。本実施形態では、ループ糸36の第1接結点41と第2接結点42との間におけるループ長は、例えば、第1接結点41と第2接結点42との間の離間距離の1.1~10倍である。この長いループ長によって、面ファスナ雌材用編地30は、その編地に含まれる糸の総量を増大させることなく、雄材のフックとの高い係合力を有する。
図1の(d)は、基材20と反対側の表面30aから突出したループ糸36を第2方向Ax2に沿って視認した図を示している。具体的には、グリッドラインC4に沿って、第2方向Ax2の一方側Ax2aに領域E1のループ部50Aを視認している。
本実施形態では、第1接結点41及び第2接結点42は、第1方向Ax1に沿って配列されることができる。その一方で、仮止め点の配置は、基準面RP1に対して非対称となるように設定されている。すなわち、基準面RP1上には第2仮止め点44が設定され、基準面RP1に対する一方側Ax1aには第1仮止め点43が設定される一方、他方側Ax1bには仮止め点が設定されていない。具体的には、領域E1のループ部50Aにおいて、グリッド(W2,C4)の第2接結点42側には、グリッド(W3,C4)の第1仮止め点43が設定される一方で、グリッド(W2,C4)の第2接結点42側には、第1仮止め点43が設定されていない。従って、これらの第1接結点41、第2接結点42、第1仮止め点43及び第2仮止め点44の配置によって、ループ糸36は、基準面RP1に対して、非対称をなすように突出することができる。ループ糸36は、所望の方向に揃って傾いた形状を有することができて、例えば、第2接結点42側に揃って傾いたような形状を有する。ループ糸36は、第2接結点42側以外の方向に揃って傾いたような形状を有することもできる。なお、基準面RP1は、第1接結点41と第2接結点42とを結ぶ基準線Sx1の中間点MP1を通り、且つ、基準線Sx1に垂直な仮想面である。
第1接結点41及び第2接結点42が形成され、例えば、第1仮止め点43が第2接結点42と同じグリッドライン上に設定されるときには、少なくとも第2接結点42が形成されている間、第1仮止め点43においてループ糸36が支持され続ける。このような支持を行うことにより、基準面RP1に対して第2接結点42側の領域に存在するループ糸36の長さは、第1接結点41側の領域に存在するループ糸36の長さよりも、長くなる。従って、第1仮止め点43での支持を解除した後においても、ループ糸36は、第1接結点41側よりも第2接結点42側に傾いたような形状となる。
本実施形態では、図1の(d)に示すように第2接結点42側に傾斜するループ部50の個数の割合は、全体のループ部50の個数に対して30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。面ファスナ雌材用編地30は、一定方向に傾斜したループ糸36の割合が、全体の30%以上であるので、その規則性を有するループ糸の傾斜によって、一定形状の雄材のフックとの高い係合力を有する。本実施形態では、傾斜したループ糸36が雄材のフックとの高い係合力を有するので、フックとの係合確率を増大させるために、ループ糸36の総量を増やす必要はない。
図2は、一の実施形態に係る面ファスナ雌材用編地の製造方法を示すフロー図である。なお、図2では、一つのループ部50を形成するための工程が示されており、面ファスナ雌材用編地の製造方法についての説明に際しては、例えば、図1の(b)の領域E1を参照することができる。面ファスナ雌材用編地の製造方法については、領域E1以外のループ部50を参照しても説明できることは勿論である。また、図2のフロー図によって、例えば、図1の(b)の領域E1におけるループ部50を形成した後に、連続して図1の(b)の領域F1におけるループ部50を形成することが説明できる。なお、面ファスナ雌材10の編成に使用される編機には、特に制限はなく、例えば、従来から広く用いられている3本筬や4本筬の編機を用いることができる。
面ファスナ雌材用編地30の製造方法MT1では、初めに、第1接結点41を形成する(工程ST1)。工程ST1の第1接結点41は、例えば、グリッド(W2,C3)の接結点であり、経糸32及び緯糸34の少なくとも一方とループ糸36とを編成することでループ糸36が固定されることによって形成される。
第1接結点41を形成した後に、第2仮止め点44においてループ糸36の仮止めを行う(工程ST2)。工程ST2の第2仮止め点44は、例えば、グリッド(W3,C4)の仮止め点である。工程ST2の仮止めは、第2仮止め点44において、ループ糸36を解除可能に支持することによって行われる。第2仮止め点44は、基準線Sx1に対する一方側Ax1aの位置に設定される。第2仮止め点44は、第4グリッドG4に設定される。第4グリッドG4は、第1グリッドG1及び第2グリッドG2から第2方向Ax2における一方側Ax2aに離間し、且つ、第3グリッドG3より第1方向Ax1における他方側Ax1bであって第1グリッドG1の第1方向Ax1における位置と同じ又はそれよりも一方側Ax1aの位置に設定される。第2仮止め点44におけるループ糸36の仮止めでは、編機の針が、例えば、第1接結点41の形成後に、第2仮止め点44でループ糸36を支持し、第2接結点42の形成前にループ糸36の支持を解除する。
第2仮止め点44を設定した後、第1仮止め点43において、ループ糸36を解除可能に支持することでループ糸36の仮止めを行う(工程ST3)。工程ST3の第1仮止め点43は、例えば、グリッド(W3,C5)の仮止め点である。図1の(b)に示されるように、第1仮止め点43は、基準線Sx1に対する一方側Ax1aの位置に設定され、基準線Sx1は、第1接結点41と第2接結点42とを結ぶ。第1仮止め点43は、第3グリッドG3の位置に設定される。第3グリッドG3は、第2グリッドG2から第2方向Ax2における一方側Ax2aに離間し、且つ、第2グリッドG2と第1方向Ax1において同位置の位置に設定される。
また、第2仮止め点44を設定した後、第2接結点42を形成する(工程ST4)。工程ST4の第2接結点42は、例えば、グリッド(W2,C5)の接結点である。第2接結点42を形成する工程ST4は、工程ST1によって第1接結点41を形成した後であって、ループ糸36の仮止めを行う工程ST3と同時、又はループ糸36の仮止めを行う工程ST3より後に開始される。
第2接結点42は、第1接結点41から離間した位置に、経糸32及び緯糸34の少なくとも一方とループ糸36とを編成することでループ糸36が固定されることによって形成される。ループ糸36は、少なくとも第2接結点42の形成中に、第1仮止め点43に支持される。第2接結点42を形成する工程ST4は、ループ糸36の仮止めを行う工程ST3の完了と同時、又はループ糸36の仮止めを行う工程ST3が完了する前に完了する。
第2接結点42は、第2グリッドG2に形成される。第2グリッドG2は、第1接結点41が形成される第1グリッドG1から、第1方向Ax1における一方側Ax1aに離間した位置に形成される。第1仮止め点43におけるループ糸36の仮止めでは、編機の針が、例えば、第2接結点42を形成している間、第1仮止め点43でループ糸36を支持し続け、第2接結点42の形成後にループ糸36の支持を解除することができる。編機の針は、例えば、J型といった形状を有する。以上により、図2に示す工程が終了する。なお、次のループ部を連続して形成する場合、上述の工程ST4で形成された第2接結点42が、次のループ部にとっての第1接結点41として機能することとなる。よって、次のループ部を形成する場合は工程ST1を省略してもよい。また、工程ST2は、必要に応じて行われる工程であり省略されることができる。
ここで、比較のために、比較例に係る面ファスナ雌材について説明する。図3の(a)は、比較例に係る面ファスナ雌材用編地の編組織のパターンを模式的に示した図である。図3の(b)は、比較例に係る面ファスナ雌材の側面を第1方向に沿って拡大して模式的に表した側面図である。図3の(c)は、比較例に係る面ファスナ雌材の側面を第2方向に沿って拡大して模式的に表した側面図である。
比較例に係る面ファスナ雌材用編地を含む面ファスナ雌材は、図1の(a)と同様の構成を有する。図3の(a)の編組織パターンP30cでは、ループ糸36の編パターンを表記し、経糸32及び緯糸34の編パターンを省略している。ループ糸36の編パターンは、1-0/5-6/10-11/6-5である。
図3の(a)は、第1方向Ax1が経方向であり、第2方向Ax2が緯方向である編組織パターンP30cの比較例を示している。図3の(a)の編組織パターンは、第1仮止め点43が設定されないこと、ループ糸36の編パターンが異なること、並びに、第1接結点41、第2接結点42及び第2仮止め点44の第2方向Ax2における間隔が異なることを除いて、図1の(b)の編組織パターンP30と同様である。
図3の(b)は、基材20と反対側の表面30aから突出したループ糸36を第1方向Ax1から視認した図を示している。具体的には、グリッドラインW2又はグリッドラインW4に沿って、第1方向Ax1の一方側Ax1aにループ糸36A又はループ糸36Bを視認している。
本実施形態では、第1接結点41及び第2接結点42は、第1方向Ax1に沿って配列されることができる。また、第2仮止め点44は、第1方向Ax1における一方側Ax1aと、第1方向Ax1における他方側Ax1bとの双方において、第1接結点41と第2接結点42とを結ぶ基準線Sx1から等しい距離に設定されることができる。
比較例においては、本実施形態のように第1仮止め点43において仮止めがなされない。また、第2仮止め点44では、第2接結点42の形成前にループ糸36の支持を解除するので、ループ糸36において、引っ張られによって編地の表側からの沈み込みが起こり易くなる。引っ張られによってループ糸は編地の表側に十分に突出し難いので、面ファスナ雌材用編地30cの表面30aから突出するループ糸の長さは、本実施形態に係る図1の(c)に比べて短くなる。このように、ループ部50のループ長が短くなる場合、一つあたりのループ部50における雄材のフックとの係合頻度が低下する。従って、比較例に係る面ファスナ雌材用編地の係合力を高めるには、ループ部50の第2方向Ax2における間隔を短くすることで、ループ部50の密度を高くする必要がある。しかしながら、この場合、面ファスナ雌材用編地30cの全体として必要となるループ糸36の総量が増加してしまう。
これに対し、本実施形態に係る面ファスナ雌材用編地30の製造方法MT1によれば、ループ糸36は、第1接結点41及び第2接結点42によって、この順に固定され、また、少なくとも第2接結点42が形成されている間は、第1接結点41と第2接結点42とを結ぶ基準線Sx1に対する一方側Ax2aの位置に設定される第1仮止め点43に解除可能に支持される。ループ糸36は、少なくとも第2接結点42の形成中に、第1仮止め点43に支持されるので、引っ張られによる沈みがなく、編地の表側にループ糸がしっかりと突出できて、第1接結点41及び第2接結点42間のループ糸のループ長を長くすることができる。雌材のループ糸36は、長いループ長を有するので、雄材のフックとの高い係合力を有することができる。このように、所定の長さあたりのループ糸36において、係合力に寄与する部分の長さを長くすることができるので、面ファスナ雌材用編地を製造するためのループ糸36の総量を増大させなくても、雌材全体としての係合力を向上できる。すなわち、一つあたりのループ部50における雄材のフックとの係合頻度が高くなる。従って、ループ部50の第2方向Ax2における間隔を短くしてループ部50の密度を高くすることなく、すなわち面ファスナ雌材用編地30の全体として必要となるループ糸36の総量の増加を抑制しながら、面ファスナ雌材用編地30の係合力を向上することができる。図1の(b)に示されるように、本実施形態に係る図1のループ糸36Aとループ糸36Bとは、互いに3グリッド分も離間しているのに対して、図3の(a)に示されるように、比較例に係る図3のループ糸36Aとループ糸36Bとは、互いに2グリッド分だけ離間している。本実施形態では、比較例に比べて、ループ糸36の間隔が広くても、すなわちループ部50の密度が低くても、高い係合力を有することができる。
図3の(c)は、基材20と反対側の表面30aから突出したループ糸36を第2方向Ax2に沿って視認した図を示している。具体的には、グリッドラインC4に沿って、第2方向Ax2の一方側Ax2aにループ糸36Aを視認している。
比較例においては、本実施形態のように第1仮止め点43での仮止めがなされないため、ループ糸36は、基準面RP1に対して、第1仮止め点43での仮止めによって、第1仮止め点43側に引っ張られることがない。このため、比較例のループ糸36は、基準面RP1に対して、第1仮止め点43側に偏った形状を多く示すことがない。比較例のループ糸36は、基準面RP1に対して、左右対称を成すように突出した形状のループ糸36pであってよく、また、第1接結点41側に偏った形状のループ糸36q、あるいは、第2接結点42側に偏った形状のループ糸36rであってよい。比較例のループ糸36は、これら左右対称のループ形状及び偏ったループ形状をランダムに示す。図3の(c)は、これら比較例のループ糸30p、ループ糸30q、及びループ糸30rの一例を示している。比較例では、本実施形態と異なり、ループ糸36が基準面RP1に対し非対称を成して突出するように制御できない。比較例では、ループ糸36が基準面RP1に対して左右対称の形状及び偏った形状をランダムに示すので、ループ糸36の係合力がばらつくようになる。
図4の(a)は、他の実施形態に係る面ファスナ雌材の側面を模式的に表した側面図であり、図4の(b)は、他の実施形態に係る面ファスナ雌材用編地の編組織のパターンを示す図である。図4の(c)は、他の実施形態に係る面ファスナ雌材の側面を第1方向に沿って拡大して模式的に表した側面図である。
図4の(a)に示されるように、面ファスナ雌材10dは、基材層22と、接着剤層24と、面ファスナ雌材用編地30dとを備える。接着剤層24は、基材層22と面ファスナ雌材用編地30dとの間に設けられる。
面ファスナ雌材用編地30dは、経糸32、緯糸34、及びループ糸36から構成される。ループ糸36は、面ファスナ雌材用編地30dのパイルを形成し、経糸32及び緯糸34は、面ファスナ雌材用編地30dの地組織を形成する。ループ糸36は、面ファスナ雌材用編地30dの一方の表面30aから突出している。接着剤層24は、面ファスナ雌材用編地30dの他方の表面30b上に設けられる。
図4の(b)は、面ファスナ雌材用編地30dの編組織パターンP30dを模式的に示している。ループ糸36の編パターンは、0-2/6-7/7-5/1-0である。編組織パターンP30dにおいては、第1方向Ax1と、第1方向Ax1に直交する第2方向Ax2とを仮想的に設けることができる。図4の(b)では、第1方向Ax1がX軸方向に沿い、第2方向Ax2がY軸方向に沿っている。
図4の(b)では、第1方向Ax1が、経方向であり、第2方向Ax2が、緯方向である編組織パターンP30dの一実施形態を示している。第1方向Ax1においては、1ピッチ毎に仮想的に設定されたグリッドの配列が、第1方向Ax1に沿ったグリッドラインGL1を成す。第1方向Ax1のグリッドラインGL1は、例えば、グリッドラインW1~グリッドラインW7を含む。第2方向Ax2においては、1ピッチ毎に仮想的に設定されたグリッドの配列が、第2方向Ax2に沿ったグリッドラインGL2を成す。第2方向Ax2のグリッドラインGL2は、例えば、グリッドラインC1~グリッドラインC9を含む。
面ファスナ雌材用編地30dは、接結点40を備える。接結点40は、図4の(b)に示されるように、第1方向Ax1のグリッドライン上、例えば、グリッドラインW2上及びグリッドラインW6上に並ぶことができる。また、接結点40は、第1方向Ax1と第2方向Ax2とに傾斜する方向、すなわち、基準線Sx1に沿って並ぶことができる。編組織パターンP30d上において、一のループ糸36を共に固定する一の接結点40と他の接結点40とを結ぶ基準線Sx1を規定することができる。基準線Sx1は、図4の(b)に示されるように、例えば、第1グリッド(W2、C2)と第2グリッド(W6、C4)とを結ぶ直線として表される。
ループ糸36は、例えば、第1方向Ax1の一方側Ax1a、すなわち、グリッドラインC1上からグリッドラインC9に向かって順番に経糸32及び緯糸34の少なくとも一方との編成が行われる。また、例えば、第2方向Ax2において、複数のループ糸36が、経糸32及び緯糸34の少なくとも一方と同時に編成されて、接結点40が形成されてもよい。
本実施形態では、ループ部50Aとループ部50Bとが交互に連続的に形成されている。すなわち、基準線Sx1に互いに隣り合うループ部50Aとループ部50Bは、一つの接結点40を共有する。一つのループ部50Aにとっての第2接結点42は、隣り合うループ部50Bにとっては第1接結点41に該当する。例えば、図4の(b)には、グリッドラインC2とグリッドラインC4との間に一対のループ部50Aが形成され、グリッドラインC4とグリッドラインC6との間に一対のループ部50Bが形成されている。ループ部50Aにとっては、グリッド(W2,C2)の接結点40が第1接結点41に該当し、グリッド(W6,C4)の接結点40が第2接結点42に該当する。一方、ループ部50Bにとっては、グリッド(W6,C4)の接結点40が第1接結点41に該当し、グリッド(W2,C6)の接結点40が第2接結点42に該当する。このように、グリッド(W6,C4)の接結点40は、ループ部50Aにとっての第2接結点42として機能すると同時に、ループ部50Bにとっての第1接結点41として機能する。
図4の(b)では、第1方向Ax1において、一の接結点40は、他の接結点40に対して2グリッド分の離間を有しているが、一の接結点40は、他の接結点40に対して1グリッド分の離間を有してもよく、また、3グリッド分以上の離間を有してもよい。また、図4の(b)では、第2方向Ax2において、一の接結点40は、他の接結点40に対して4グリッド分の離間を有しているが、一の接結点40は、他の接結点40に対して1グリッド又は2グリッド分の離間を有してしてもよく、また、4グリッド分以上の離間を有してもよい。
面ファスナ雌材用編地30dでは、第1仮止め点43が設定される。第1仮止め点43では、接結点40(第2接結点42)の形成中に、ループ糸36が支持される。第1仮止め点43におけるループ糸36の仮止めでは、編機の針又はガイドが、例えば、第2接結点42(接結点40)を形成している間、第1仮止め点43でループ糸36を支持し続け、第2接結点42(接結点40)の形成後にループ糸36の支持を解除することができる。
第1仮止め点43は、第2方向Ax2に沿って、第2接結点42(接結点40)と同じグリッドライン上に設定される。第1仮止め点43は、例えば、第2接結点42(接結点40)がグリッドラインC4上に形成されるとき、その一の接結点40と同じグリッドラインC4上に設定される。第1仮止め点43は、ループ部50Aを形成するときは基準線Sx1よりも第2方向Ax2の一方側Ax2aに設定され、ループ部50Bを形成するときは基準線Sx1よりも第2方向Ax2の他方側Ax2bに設定される。図4の(b)では、第2方向Ax2において、第1仮止め点43は、第2接結点42(接結点40)に対して1グリッド分の離間を有しているが、第1仮止め点43は、第2接結点42(接結点40)に対して2グリッド分以上の離間を有してもよい。
面ファスナ雌材用編地30dは、第2仮止め点44が更に設定されることができる。第2仮止め点44では、ループ糸36を解除可能に支持することでループ糸36の仮止めが行われる。第2仮止め点44におけるループ糸36の仮止めでは、編機の針が、例えば、接結点40(第1接結点41)の形成後に、第2仮止め点44でループ糸36を支持し、接結点40(第2接結点42)の形成前にループ糸36の支持を解除する。
第2仮止め点44は、第2方向Ax2に沿って、接結点40と異なるグリッドライン上に設定されることができる。第2仮止め点44は、例えば、一の接結点40がグリッドラインC2上に形成され、他の接結点40がグリッドラインC4上に形成されるとき、その一の接結点40のグリッドラインC2と、他の接結点40のグリッドラインC4との間のグリッドラインC3上に設定される。第2仮止め点44は、ループ部50Aを形成するときは基準線Sx1よりも第2方向Ax2の一方側Ax2aに設定され、ループ部50Bを形成するときは基準線Sx1よりも第2方向Ax2の他方側Ax2bに設定される。図4の(b)では、第2方向Ax2において、第2仮止め点44は、接結点40に対して1グリッド分の離間を有しているが、第2仮止め点44は、接結点40に対して2グリッド分以上の離間を有してもよい。
図4の(c)を参照して編組織パターンP30dによって形成されたループ部50の構成について詳細に説明する。図4の(c)は、基材20と反対側の表面30aから突出したループ糸36を基準面RP1の面内方向に沿って視認した図を示している。本実施形態では、第1接結点41及び第2接結点42は、基準線Sx1に沿って配列されることができる。その一方で、仮止め点の配置は、基準面RP1に対して非対称となるように設定されている。すなわち、基準面RP1に対する一方側Ax2aに第1仮止め点43及び第2仮止め点44が設定される一方、他方側Ax2bには仮止め点が設定されていない。これらの第1接結点41、第2接結点42、第1仮止め点43及び第2仮止め点44の配置によって、ループ糸36は、基準面RP1に対して、非対称をなすように突出することができる。
第1接結点41及び第2接結点42が形成され、例えば、第1仮止め点43が第2接結点42と同じグリッドライン上に設定されるときには、少なくとも第2接結点42が形成されている間、第1仮止め点43においてループ糸36が支持され続ける。このような支持を行うことにより、基準面RP1に対して第2接結点42側の領域に存在するループ糸36の長さは、第1接結点41側の領域に存在するループ糸36の長さよりも、長くなる。従って、第1仮止め点43での支持を解除した後においても、ループ糸36は、第1接結点41側よりも第2接結点42側に傾いたような形状となる。
本実施形態では、図4の(c)に示すように第2接結点42側に傾斜するループ部50の個数の割合は、全体のループ部50の個数に対して30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。面ファスナ雌材用編地30dは、一定方向に傾斜したループ糸36の割合が、全体の30%以上であるので、その規則性を有するループ糸の傾斜によって、一定形状の雄材のフックとの高い係合力を有する。本実施形態では、傾斜したループ糸36が雄材のフックとの高い係合力を有するので、フックとの係合確率を増大させるために、ループ糸36の量を増やす必要はない。
また、ループ糸36は、第1接結点41及び第2接結点42に固定され、また、ループ糸36は、第1仮止め点43及び、必要に応じて設定される第2仮止め点44に支持されることができるので、その支持に対応して、引っ張られによる沈みがなく、表側にループ糸がしっかりと突出できる。よって、ループ長が長くなるループ糸36は、表面30aから多く突出するので、第1接結点41及び第2接結点42との距離より長いループ長を有する。本実施形態では、ループ糸36の第1接結点41と第2接結点42との間におけるループ長は、例えば、第1接結点41と第2接結点42との間の離間距離の1.1~10倍である。この長いループ長によって、面ファスナ雌材用編地30は、その編地に含まれる糸の総量を増大させることなく、雄材のフックとの高い係合力を有する。
図4の(a)に示される面ファスナ雌材10においては、基材層22と面ファスナ雌材用編地30dとの接合方法としては、特に制限はなく、熱ラミネート法、超音波ラミネート法、押し出しラミネート法、ホットメルト塗布ラミネート法、ドライラミネート法、又はウェットラミネート法といった従来公知の方法が使用される。ドライラミネート用接着剤は、ウレタン系、EVA系、アクリル系、酢酸ビニル系等を含み、ウェットラミネート用接着剤は、澱粉、カゼイン、酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル等の接着剤を含む。
基材層22と面ファスナ雌材用編地30dとの接合が、ドライラミネート法によるときには、接着剤層24は、基材層22の表面の全領域に設けられてもよいし、また、一部領域に設けられてもよい。接着剤層24を基材層22の表面の一部領域に設ける場合、接着剤層24を設ける方法については、特に制限はなく、例えば、接着剤のパターン塗布法が用いられる。接着剤を塗布するパターン、形状、及びサイズ等は、特に限定されず、円、楕円、四辺形、多角形など任意のパターン、形状、サイズであることができる。接着剤層24を基材層22の表面の一部領域に設ける場合、面ファスナ雌材用編地30dを通して滲み出した接着剤によって、面ファスナ雌材用編地30dの表面30a上で倒れるループ糸36の本数を少なくすることができる。また、倒れるループ糸36の本数が少なくなることによって、面ファスナ雄材のフックとの係合力の低下を防止できる。さらに、パターンの形状や接着剤量を適切に設定することによって、係合力を調整することが可能である。
本実施形態では、面ファスナ雌材10は、面ファスナ雌材用編地30dを備えるので、面ファスナ雌材用編地30d中のループ糸の総量を増大させなくても、雄材との高い係合力を有する。
なお、面ファスナ雌材用編地を製造するために用いられる製造装置は、上述の実施形態及び変形例で説明したようなものに限定されず、あらゆる装置を用いてよい。第1仮止め点でループ糸を支持しながら第2接結点を編成することができるものであれば、第1仮止め点は、必ずしも第2接結点と同じグリッドラインGL2上に設定されていなくともよい。例えば、編機の針以外の補助部材によって、第2接結点と異なるグリッドラインGL2上に設定された第1仮止め点においてループ糸を支持し、そのループ糸の支持中に、編機の針によって第2接結点を編成してもよい。少なくとも第2接結点の形成中に、ループ糸は補助部材によって支持される。
以下、本発明の実施例及び比較例により、面ファスナ雌材用編地を作製する方法、面ファスナ雌材用編地、及び面ファスナ雌材について更に説明する。本発明は、下記例に制限されない。表1は、下記例で用いた面ファスナ雌材の構成及び編パターンをまとめて示す表である。
(実施例1)
(面ファスナ雌材用編地の作製)
実施例1では、編機として、28ゲージの3枚筬シングルトリコット編機(カールマイヤー社製)を用い、トリコットパイル編みとした。経糸には、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含む22T1を用い、緯糸には、PETを含む56T24を用いた。ループ糸には、ナイロンを含む78T24を用いた。100mm×100mm当たりのループ糸の量は、およそ7600mmであった。面ファスナ雌材用編地の坪量は、22g/m2であった。
図5は、実施例1に係る面ファスナ雌材用編地の編組織を模式的に示す図である。図6は、図5で示される面ファスナ雌材用編地の編組織のパターンを経糸、緯糸及びループ糸ごとに分解して示した模式図である。図6の(a)は、経糸の編パターン、図6の(b)は、緯糸のパターン、図6の(c)は、ループ糸の編パターンを示す。経糸の編パターンは、1-0/0-1/0-1/1-0であり、緯糸の編パターンは、0-0/5-5である。ループ糸の編パターンは、0-2/2-3/3-1/1-0である。実施例1では、ループ糸の第1接結点と第2接結点との間におけるループ長は、第1接結点と第2接結点との間の離間距離の2倍であった。また、第2接結点側に傾斜するループ部の個数の割合は、全体のループ部の個数に対して70%であった。
(面ファスナ雌材の作製)
面ファスナ雌材は、面ファスナ雌材用編地と、基材層と、接着剤層とによって作製した。基材層には、二軸延伸ポリプロピレンシートを用い、二軸延伸ポリプロピレンシートの厚さは、12μmであり、二軸延伸ポリプロピレンシートの坪量は、10.5g/m2であった。接着剤層には、接着剤用ポリウレタンを含むタケラックA969v/A5(三井化学ポリウレタン社製)を用いた。タケラックA969v/A5の乾燥後の塗布量は、5.5g/m2であった。
(雌材試験片の作製)
面ファスナ雌材を長さ100mm×幅50mmの大きさに加工して雌材試験片を作製した。
(90度剥離試験)
フックを有する雄材として、3MメカニカルファスナーフックNC-2050(スリーエムジャパン社製)を準備し、長さ20mm×幅25mmの雄材試験片とした。雄材試験片は、固定テープ4591LH(スリーエムジャパン社製)の感圧接着剤面上に取り付けられた。雄材試験片上には、雌材試験片を両面テープY9448(スリーエムジャパン社製)によって貼付した。雌材試験片は、その長さ方向を雄材試験片の長さ方向に合わせて、雄材試験片上に配置された。長さ方向は、上記の第1方向に対応する。雄材試験片上の雌材試験片に対して、2.0kgハンドローラーを約300mm/分の速度で長さ方向に1周×1往復させた。続いて、雌材試験片を垂直(角度90度)方向に毎分300mmの速度で引っ張ることにより雌材試験片の剥離接着力を測定した。剥離接着力の測定は、一つの雌材試験片に対して10回連続して行った。
(比較例1)
(面ファスナ雌材用編地の作製)
比較例1では、実施例1と同じ編機を用い、実施例1と同じ経糸、緯糸及びループ糸を用いた。100mm×100mm当たりのループ糸の量は、およそ15200mmであった。面ファスナ雌材用編地の坪量は、28g/m2であった。ループ糸の編パターンは、1-0/5-6/10-11/6-5とした。経糸及び緯糸の編パターンは、実施例1と同じとした。比較例1では、ループ糸の第1接結点と第2接結点との間におけるループ長は、第1接結点と第2接結点との間の離間距離の2倍であった。
(面ファスナ雌材の作製)
比較例1では、面ファスナ雌材は、面ファスナ雌材用編地と、基材層と、接着剤層とによって作製した。基材層及び接着剤層は、実施例1と同じとした。
(雌材試験片の作製及び90度剥離試験)
比較例1では、面ファスナ雌材を実施例1と同じ大きさに加工して雌材試験片を作製した。また、実施例1と同様の条件によって90度剥離試験を行った。
図7は、実施例1及び比較例1に係る90度剥離試験の結果を示す図である。横軸は、剥離試験の回数を示し、縦軸は、剥離強度(N/25mm)を示す。いずれの試験においても、実施例1の剥離強度は、比較例1の剥離強度を上回った。比較例1に係る面ファスナ雌材用編地の坪量が28g/m2である一方で、実施例1に係る面ファスナ雌材用編地の坪量は22g/m2である。実施例1に係る面ファスナ雌材用編地は、比較例1に比べて、編地のための糸の総量を増大させることなく雄材との係合力を維持できることが示された。