JP7116268B1 - 末梢静脈路の適正機能判定装置 - Google Patents

末梢静脈路の適正機能判定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】良好な精度で、非侵襲的にPIVアクセス状態を判定するライン判定装置を提供する。【解決手段】超音波の送波と受波を行う超音波ドップラープローブ201と、超音波ドップラープローブ201が送波した超音波と受波した超音波の間のドップラーシフトに応じたドップラー信号を生成し、ドップラー信号に対応する血流速度データを出力する血流回路301と、ラインから患者の末梢静脈内に薬剤をボーラス投与する前の血流速度データと、ボーラス投与後の所定時間内の血流速度データとから、ボーラス投与後の血流速度がボーラス投与前の血流速度よりも所定の閾値以上に変化したことを算出した場合にラインのアクセス状態が正常であると判定する制御回路302と、制御回路302による判定の結果を使用者に報知する報知手段と、を有するライン判定装置202とする。【選択図】図3

Description

特許法第30条第2項適用 ・ウェブサイトの掲載日:令和3年3月22日 ・ウェブサイトのアドレス:https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0248999 ・公開者:小嶋大樹、北村佳奈、一柳彰吾、渡邉文雄、山口由紀子、佐藤絵美、谷大輔、加古裕美、Ali I.Kandil、大出幸子、宮津光範
本発明は、ライン(カテーテル)の末梢静脈内へのアクセス状態(末梢静脈内に正しく留置されているか否か)を判定するための装置に関する。
点滴や静脈注射等を行うためのライン(カテーテル)の末梢静脈内(PIV: peripheral intravenous、以下「PIV」と略称する)へのアクセス(以下「PIVアクセス」と称する)による浸潤(以下「PIV浸潤」と称する)は、様々な皮膚組織損傷を引き起こす可能性がある。これらの合併症のいくつかは広範囲であり、コンパートメント症候群(すなわち、筋膜切り、切断)のために外科的介入を必要とする可能性がある。
更に、PIVアクセスにおける機能不全(以下「PIV機能不全」と称する)は、不十分な投薬の送達のために負の結果(術中覚醒と意図しない身体運動など)を引き起こす可能性がある。しかし、PIV浸潤とPIV機能不全の同定は、アクセス部位がしばしば外科的ドレープで覆われているため、全身麻酔中に遅延することがあり、また、全身麻酔下の患者は浸潤の場合に痛みを訴えることができず、重大な結果をもたらす可能性がある。以下、PIV浸潤又はPIV機能不全が発生しているか否かを示す状態を総称して「PIVアクセス状態」と称する。
PIVアクセス状態の確認は、一般的に、医療従事者の主観により臨床的に行われている。例えば、点滴の薬が重力に従って自然にスムーズに落下するかが、目視により判断されている。また、注射器に入った液体の薬剤を点滴から押して入れる際に変な抵抗を感じないかが、注射器を押す手の感覚によって判断されている。更に、カテーテルの針の挿入直後に挿入箇所の周囲が腫れてこないかが、目視により判断されている。針が血管から抜けかけていると、注入された薬剤が皮下に漏れ出してくるためである。
PIVアクセス状態の客観的な確認方法の従来技術として、例えば、エコー装置を用いて右心房の微小気泡乱流を観察することにより、PIV浸潤やPIV機能不全が発生していないことを確認する方法が知られている(非特許文献1)。
また、PIVアクセス状態の客観的な確認方法の他の従来技術として、重炭酸ナトリウムを点滴から投与し、その薬剤が点滴から血管内に適正に投与された場合に息に含まれる二酸化炭素濃度が上昇することを観察することにより、PIV浸潤やPIV機能不全が発生していない状態を確認する方法が知られている(非特許文献2)。
一方、従来、全身麻酔中の静脈空気塞栓症を検出するために、前胸部ドップラー超音波が使用されてきた(非特許文献3)。
また、中心静脈ラインを介して10mL(ミリリットル)の生理食塩液(NS:Normal Saline、以下「NS」と略称)を断続的に急速にフラッシュした後のドップラー音の乱流音響信号を観測することによって、ラインの中心静脈内への配置を確認する技術も開発されている(非特許文献4)。
超音波ドップラー血流計の従来技術としては、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。
特開2003-028690号公報
Takeshita J, Nakajima Y, Kawamura A, et al. "Ultrasonographic detection of micro-bubbles in the right atrium to confirm peripheral venous catheter position in children. (小児の末梢静脈カテーテル位置を確認するための右心房の微小気泡の超音波検査)" Crit Care Med. 2019; 47:e836-e840、PMID: 31343477、https://doi.org/10.1097/CCM.0000000000003916 Ilan K, Sidi A, Ben-Menachem E, Derazne E, Berkenstadt H. "A simple diagnostic test to confirm correct intravascular placement of peripheral catheters in order to avoid extravasation. (血管外漏出を回避するために末梢カテーテルの正しい血管内配置を確認するための簡単な診断テスト)" J Clin Anesth. 2015; 27:585-588. PMID: 26286133、https://doi.org/10.1016/j.jclinane.2015.07.004 Schubert A, Deogaonkar A, Drummond JC. "Precordial Doppler probe placement for optimal detection of venous air embolism during craniotomy (頭蓋骨切り出しの静脈塞栓症の最適検出のための前胸部ドップラープローブ配置)" Anesth Analg. 2006; 102:1543-1547. PMID: 16632839、 https://doi.org/10.1213/01.ane.0000198665.84248.61 Burbridge MA. A novel use of the precordial "Doppler for verification of central venous access (中央静脈アクセスの検証のための前胸部ドップラーの新しい使用)" Korean J Anesthesiol. 2019; 72:76-7. PMID: 30205666、https://doi.org/10.4097/kja.d.18.00252
しかしながら、前述した医療従事者によるPIVアクセス状態の臨床的な確認方法は、信頼性に乏しいという報告が多い。特に新生児や1歳未満の乳児は、皮膚組織が緩い。このため、例えば点滴針が血管から抜けて皮下にあっても、重力に従って点滴の薬剤が自然滴下するため、診断を誤ることが往々にあった。更に、これらの小さな子供に投与する液体の薬剤は量が少なく、また腕もむくんで見えるため、液体薬剤投与後の点滴針周囲のむくみを判別することによる診断は非常に難しい。針が抜けないように視認性の乏しいテープで固定されているケースも多く、視覚による観察が困難なケースが多いという課題があった。
また、前述した、エコー画像の観察に基づくPIVアクセス状態の客観的な確認方法では、エコー画像を観察するための比較的大型のプローブを患者の腕に当てる必要がある。しかし、患者は手術中に手術覆布に覆われており、かつ患者の脇には手術を実施する外科医が立っているため、患者の腕に麻酔科医がアクセスすることが困難である。このため、手術麻酔中に麻酔科医が、この従来技術による確認を行うことが困難であるという課題があった。
更に、前述した、重炭酸ナトリウムの投与に基づく、PIVアクセス状態の客観的な確認方法では、点滴漏れの発生時にアルカリ性の薬剤である重炭酸ナトリウムを注入すると、重篤な皮膚障害を起こす懸念がある。このため、手術麻酔中にこの従来技術による確認を行うことは、適切でないという課題があった。
加えて、前述した前胸部ドップラー超音波を利用した全身麻酔中の静脈空気塞栓症の検出技術は、PIVアクセス状態を判定する技術ではない。
更に、前述した前胸部ドップラー超音波を利用したライン(カテーテル)の中心静脈内への配置を確認する技術は、ラインの挿入先が中心静脈であり、末梢静脈を対象とするPIVアクセス状態の確認に基づいてPIV浸潤やPIV機能障害を検出できる技術ではない。
そこで、本発明は、良好な精度で、非侵襲的に、PIVアクセス状態を判定可能とする末梢静脈路の適正機能判定装置を提供することを目的とする。
本願の末梢静脈路の適正機能判定装置は、
患者の前胸部の表面に貼着され、前記患者の心臓に向けて超音波の送波と受波を行う超音波ドップラープローブと、
前記超音波ドップラープローブが送波した超音波と前記ドップラープローブが受波した超音波の間のドップラーシフトに応じたドップラー信号を生成し、前記ドップラー信号に対応する血流速度データを出力する血流回路と、
使用者が末梢静脈路から患者の末梢静脈内に生理食塩液をボーラス投与するタイミングを使用者に合図し、ボーラス投与する前の前記血流速度データと、ボーラス投与後の所定時間内の前記血流速度データとから、ボーラス投与後の血流速度がボーラス投与前の血流速度よりも1.0cm/s以上速くなったことを算出した場合に前記末梢静脈路のアクセス状態が正常であると判定する制御回路と、
前記制御回路による判定の結果を使用者に報知する報知手段と、を有する。
本発明によれば、良好な精度で、非侵襲的にPIVアクセス状態を判定する末梢静脈路の適正機能判定装置を提供することができる。
本願の実施形態による、前胸部ドップラー超音波を利用したラインの末梢静脈内へのアクセス状態の確認方法の手順を示すフローチャートである。 本願の実施形態に係る末梢静脈路の適正機能判定装置の使用状態を示す図である。 本願の実施形態に係る末梢静脈路の適正機能判定装置の構成例を示すブロック図である。 PIVアクセスが正常である場合におけるNSのボーラス投与前後の血流速度を示すグラフである。 閾値を1.0cm/sとした場合の調査結果の受信者動作特性曲線を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態(以下「本実施形態」と称する)について図面を参照しながら詳細に説明する。
<本実施形態の原理>
手術中の全身麻酔された患者の前胸部の表面に粘着テープを貼り又は少量のゼリーを塗布し、そこに平型又は円盤状の超音波ドップラープローブを貼着して心音が良好に聞こえる状態にしておく。そして、ライン(カテーテル)から液体の薬剤(例えばNS)を少量ボーラス投与(数秒で迅速に投与)する。
ラインのPIVアクセス状態が正常、即ちカテーテルが末梢静脈内に適正に留置されPIV浸潤及びPIV機能障害が発生していない場合には、ボーラス投与された液体薬剤は数秒以内に心臓に到達する。この結果、超音波ドップラープローブを使用して測定する血流速度に変化が生じる。また、可聴域のドップラー音において、心音以外のバブリング音(ごぼごぼといった音)等のそれまでになかった音が含まれるようになり、または、今まで聞こえていた心音の音高が明らかに高くなる。
そこで、本実施形態では、カテーテルから少量の液体薬剤をボーラス投与した数秒後に生成されるドップラー信号に対応して出力される血流速度が所定の変化幅以上で変化する場合には、PIVアクセス状態が正常であると判定する。加えて、可聴域のドップラー音における変化により使用者がPIVアクセス状態を確認できるものとしてもよい。
一方、血流速度の変化幅が所定の変化幅未満である場合には、ボーラス投与した薬剤が心臓に到達しておらず、PIV浸潤によりボーラス投与した薬剤が皮下に漏れていたり、PIV機能障害が発生したりしている状態であると判定する。
<本実施形態における定義>
本実施形態において、「PIV浸潤」は、浮腫又は発赤につながったライン(カテーテル)挿入部位の下の皮膚下軟部組織においてNSが漏出したことと定義する。
また、本実施形態において、「PIV機能障害」は、ライン挿入部位において目に見えるよじれが存在すること、又はNSのボーラス投与に伴う目に見える流体漏出を引き起こしたPIVラインの緩い接続が存在することと定義する。
図1は、本実施形態による、PIVアクセス状態の確認手順を示すフローチャートである。
まず、全身麻酔による患者が仰臥位の姿勢にされる(図1のステップS1)。
次に、ラインのPIVアクセス状態の確認を行う麻酔医又は看護師(以下「使用者」と称する。)は、図2に示されるように、小型で平型又は円盤型の超音波ドップラープローブ201を、患者の前胸部に粘着テープ又はゼリーで貼着(固定)する(図1のステップS2)。前胸部は例えば、ドップラー音が最も良好に集音できる、右又は左の傍胸骨に沿った第3、第4、第5、又は第6肋間空間である。
超音波ドップラープローブ201としては、例えば、2.25MHz(メガヘルツ)周波数及び15.7cm2ビーム面積において、310W/cm2(ワット/平方センチメートル)未満の最大強度、94mW/cm2未満の強度空間ピーク時間平均、190W/cm2未満の強度空間ピークパルス平均を有するものを使用することができる。
次に、使用者は、充填されるNS量に対応した、2.5、5.0、又は10.0mLのシリンジの何れかに、NSを引き入れる。そして、使用者は、そのシリンジを、PIVライン(カテーテル)に接続する(以上、図1のステップS3)。
次に、使用者は、超音波ドップラープローブ201に接続される末梢静脈路の適正機能判定装置202を起動する(図1のステップS4)。
図3は、図2の末梢静脈路の適正機能判定装置202の構成例を示すブロック図である。図3に示されるように、末梢静脈路の適正機能判定装置202は、血流回路301、制御回路302、アンプ303、スピーカ304、ヘッドホン接続コネクタ305、ディスプレイ306、キーパネル307、電源電池308を備える。本実施形態に係る末梢静脈路の適正機能判定装置202は、ハンディタイプであり、使用者は末梢静脈路の適正機能判定装置202を手に持ちながらキーパネル307を指で操作することにより、末梢静脈路の適正機能判定装置202の動作を制御することができる。ただし、本願発明はこれに限らず、例えば、末梢静脈路の適正機能判定装置202の機能の一部を据置型のコンピュータや、インターネットに接続されたサーバー等が担っても良い。
次に、NSのボーラス投与前の血流速度が記録される(図1のステップS5)。具体的には、まず使用者が、図3のキーパネル307を操作することにより、NSのボーラス投与前動作を、末梢静脈路の適正機能判定装置202に指示する。これにより、図3の制御回路302が血流回路301に指示を出す。血流回路301は、超音波ドップラープローブ201に接続されている。血流回路301は、血流回路301が内蔵する不図示の超音波発振器から、超音波ドップラープローブ201が内蔵する不図示の送波器を介して、数メガヘルツ程度の周波数を有する超音波を、患者の心臓に向けて送波する。続いて、血流回路301が内蔵する不図示の超音波受信器は、心臓内の血球で反射し、超音波ドップラープローブ201が内蔵する不図示の受波器を介して受波された超音波信号を受信する。そして、血流回路301は、血流で生じるドップラー効果により、送波された超音波と受波された超音波との間で生じたドップラーシフト(周波数のずれ)を検出し、そのドップラーシフトに比例するドップラー信号を生成し、そのドップラー信号に対応する血流速度データを出力する。制御回路302は、血流回路301が出力した血流速度データを、NSのボーラス投与前の血流速度として記録する。
上記ステップS5で血流回路301が生成したNSのボーラス投与前のドップラー信号は、可聴周波数域の音響信号である。そこで、ステップS5での動作と同時に、図3の血流回路301は、上記ドップラー信号である音響信号を、アンプ303に出力してもよい。アンプ303は、その音響信号を増幅した後に、図3のスピーカ304、又はヘッドホン接続コネクタ305に接続され、使用者が装着している不図示のヘッドホンから、ドップラー音として適切な音量で放音してもよい(図1のステップS6)。
ステップS5でのNSのボーラス投与前の血流速度の記録動作と、ステップS6でのNSのボーラス投与前のドップラー音の放音動作は、ステップS5で使用者がNSのボーラス投与前動作を指示して動作が開始された時点(以下「判定開始」と称する)から例えば5秒間(ステップS7で判定開始後5秒が経過したと判定される時点まで)実行される。図1のステップS7の判定がNOの場合、ステップS5、S6が繰返し動作する。
制御回路302は、例えば上記5秒間が経過すると(ステップS7の判定がYES)、図3のアンプ303を介して、スピーカ304又はヘッドホン接続コネクタ305に接続されている不図示のヘッドホンから、例えば「ピッ」というような第1の合図音を放音する。なお、合図音の代わりにディスプレイ306に「ボーラス投与を開始して下さい。」等の表示を行っても良いし、振動発生装置を設け、振動を発生させても良い。また、これらの複数の手段を同時に使用しても良い。つまり、使用者が認識できる方法であれば手段は問わない。これについては以降の合図、報知などの説明においても同様である。
使用者は、上記第1の合図音が聞こえたタイミングで、図1のステップS3で充填されPIVラインに接続されたシリンジを操作することにより、NSのボーラス投与を開始する(図1のステップS8)。
ボーラス投与されるNSの量は、例えば0.5mL/kg(ミリリットル/体重1キログラムあたり)、最大で10mLである。
上記ボーラス投与に要する時間は2~3秒間である。ステップS9で判定開始から7~8秒が経過したと判定される時点まで図1のステップS9の判定がNOとなりステップS8の待機動作を継続する。この時間は7~8秒の範囲内の特定の時間に予め設定しておくこともできるが、例えばキーパネル307により調整可能としても良い。
制御回路302は、上記ボーラス投与の期間が経過すると(図1のステップS9の判定がYES)、血流回路301により測定された血流速度の記録を開始する(図1のステップS10)。その際、制御回路302は、図3のアンプ303を介して、スピーカ304又はヘッドホン接続コネクタ305に接続されたヘッドホンから、例えば「ピピッ」というような第2の合図音を放音する。血流回路301は、ステップS5の場合と同様にして、超音波ドップラープローブ201を介して検出したドップラーシフトに比例するドップラー信号を生成し、そのドップラー信号に対応する血流速度データを出力する。制御回路302は、血流回路301が出力した血流速度データを、NSのボーラス投与後の血流速度として記録する(以上、図1のステップS10)。
上記ステップS10で血流回路301が生成したNSのボーラス投与後のドップラー信号は、ステップS6の場合と同様に、可聴周波数域の音響信号である。そこで、ステップS10での動作と同時に、図3の血流回路301は、ドップラー信号である音響信号を、アンプ303に出力しても良い。アンプ303は、上記音響信号を増幅した後に、図3のスピーカ304又はヘッドホン接続コネクタ305に接続されている不図示のヘッドホンから、ドップラー音として適切な音量で放音しても良い(図1のステップS11)。
これにより、使用者は、前述したステップS6で放音されたNSのボーラス投与前のドップラー音と、ステップS11で放音されたNSのボーラス投与後のドップラー音とを聞き比べることができる。ドップラー音中の心音以外のバブリング音(ごぼごぼといった音)等のそれまでなかった音が含まれるようになった場合、あるいは、今まで聞こえていた心音の音高が明らかに高くなった場合、使用者はラインの抹消静脈内へのアクセス状態が良好であることを、末梢静脈路の適正機能判定装置202の判定に加えて確認することができる。末梢静脈路の適正機能判定装置202は、例えば、使用者の判別結果をキーパネル307から入力できるものとし、入力結果を制御回路302が記録することとしても良い。
ステップS10でのNSのボーラス投与後の血流速度の記録動作と、ステップS11でのNSのボーラス投与後のドップラー音の放音動作は、図1のステップS8でのNSのボーラス投与の終了(図1のステップS9の判定がYESとなった)後、例えば5秒間(ステップS12で判定開始後12~13秒が経過したと判定される時点まで)実行される。図1のステップS12の判定がNOの場合、ステップS10、S11の動作を繰り返す。
制御回路302は、例えば上記5秒間が経過すると、アンプ303を介して、図3のスピーカ304又はヘッドホン接続コネクタ305に接続されている不図示のヘッドホンから、例えば「ピピピッ」というような第3の合図音を放音し、使用者に判定作業の終了を報知する。
図1のステップS12の判定がYESとなった後、図3の制御回路302は、図1のステップS5で記録したNSのボーラス投与前の一連の血流速度の平均値と、図1のステップS10で記録したNSのボーラス投与後の一連の血流速度の平均値との変化幅を算出する(ステップS13)。なお、血流速度の比較は平均値によるものに限られず、例えば、中央値によるもの、最大値によるもの、最小値によるもの、あるいは、これらを組み合わせたもの等とすることができる。
そして、制御回路302は、ステップS13で算出した血流速度変化幅が所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS14)。512人の患者を対象として行った調査の結果(下記表1)により、閾値は、1.0cm/sセンチメートル/秒)とすることが最も好ましいことが確認された。閾値を1.0cm/sよりも小さい値とすると、PIV浸潤またはPIV機能不全を見逃す可能性が高くなる。一方、閾値を1.0cm/sよりも大きい値とすると、PIV浸潤又はPIV機能不全が無いにもかかわらず、PIV浸潤またはPIV機能不全があるように判定されてしまう可能性が高くなる。
(表1)
PIV浸潤又は機能不全
閾値(cm/秒) 有り 無し
< 0.5 3 9
≧ 0.5 4 495
PIV浸潤又は機能不全
閾値(cm/秒) 有り 無し
< 1.0 4 16
≧ 1.0 3 489
PIV浸潤又は機能不全
閾値(cm/秒) 有り 無し
< 1.5 4 31
≧ 1.5 3 474
PIV浸潤又は機能不全
閾値(cm/秒) 有り 無し
< 2.0 5 52
≧ 2.0 2 453
PIV浸潤又は機能不全
閾値(cm/秒) 有り 無し
< 2.5 5 67
≧ 2.5 2 438
PIV浸潤又は機能不全
閾値(cm/秒) 有り 無し
< 3.0 5 86
≧ 3.0 2 419
PIV浸潤又は機能不全
閾値(cm/秒) 有り 無し
< 3.5 5 100
≧ 3.5 2 405
PIV浸潤又は機能不全
閾値(cm/秒) 有り 無し
< 4.0 5 116
≧ 4.0 2 389
PIV浸潤又は機能不全
閾値(cm/秒) 有り 無し
< 4.5 5 130
≧ 4.5 2 375
PIV浸潤又は機能不全
閾値(cm/秒) 有り 無し
< 5.0 6 146
≧ 5.0 1 359
上記各閾値についての調査結果を受信者動作特性曲線下の面積比率により判定したところ、閾値を1.0cm/sとした場合に面積比率が0.84となり、最も信頼性が高いことが確認された。閾値を1.0cm/sとした場合の受信者動作特性曲線を図5に示す。
制御回路302は、報知手段を介して判定の結果を使用者に報知する。報知手段としては、例えば、ステップS14の判定がYESの場合、制御回路302は、Vテストの結果が肯定的である(ラインのPIV内へのアクセス状態が正常である)ことを示す青ランプを、図2の末梢静脈路の適正機能判定装置202のディスプレイ306(図3)又は不図示のLED等により点灯する(図1のステップS15)。一方、ステップS14の判定がNOの場合、制御回路302は、Vテストの結果が否定的である(ラインのPIV内へのアクセス状態が正常ではない)ことを示す赤ランプを、図2の末梢静脈路の適正機能判定装置202のディスプレイ306(図3)又は不図示のLED等により表示する(図1のステップS16)。なお、制御回路302は、Vテストの結果が肯定的、否定的のいずれかの場合に、報知手段にその旨を報知するものとしても良い。
図4は、実施形態において、PIVアクセスが正常である場合におけるNSのボーラス投与後の血流速度の変化例を示すグラフである。縦軸は、血流回路301が出力する血流速度データが示す血流速度であり、横軸はステップS5での判定開始を0秒とする経過時間(秒)を示す。血流速度の単位はcm/sセンチメートル毎秒)である。
判定開始後5秒が経過する時点までは、ボーラス投与前の血流速度を示しており、概ね10cm/sから20cm/sの間で推移する心臓の鼓動に応じた繰返し波形となっている。このとき、図1に示す手順においてはステップS5→S6→S5を繰り返す。
判定開始後概ね5秒が経過した矢印Aの時点から判定開始後7~8秒の時点までの概ね2~3秒間、NSのボーラス投与が行われる。このとき、図1に示す手順においてはステップS8→S9→S8を繰り返す。
NSのボーラス投与が終了する判定開始後7~8秒の時点から判定開始後12~13秒の時点までの概ね5秒間は、ボーラス投与後の血流速度を示しており、血流速度が高くなっていることが分かる。このとき、図1に示す手順においてはステップS10→S11→S12→S10を繰り返す。
図4のグラフに示すように、PIVアクセスが正常であるならば、ボーラス投与後に血流速度がプラス方向に大きく変化する。
本実施形態では、図1のステップS13、ステップS14において、この血流速度変化幅を捉えることで、PIVアクセスの状態を客観的に判定し、青又は赤のランプ表示等で使用者に報知することができる(ステップS15、ステップS16)。併せて、使用者が、この血流速度変化に対応するドップラー音の乱れを聴取する場合には、PIVアクセスの状態を主観的に確認することが可能となる。
ステップS15又はステップS16の後、制御回路302は、末梢静脈路の適正機能判定装置202による判定動作を終了する。
このようにして、本実施形態によれば、良好な精度で、非侵襲的にPIVアクセス状態を判定することが可能となる。
本出願の発明者は、本出願に先立って、本発明の基礎となる研究(以下「本研究」と称する)を実施し、下記の文献(以下「本研究文献」と称する)として発表した。本出願は、本研究文献の公開が特許法第30条第2項に該当するとして、同条第3項に規定する証明書の提出とともに、新規性喪失の例外の適用を受けるものである。
<本研究文献>
Kojima T, Kitamura K, Ichiyanagi S, Watanabe F, Yamaguchi Y, Sato E, et al. (2021) “Introduction of precordial Doppler ultrasound to confirm correct peripheral venous access during general anesthesia in children: A preliminary study. (小児全身麻酔中の正しい末梢静脈アクセスを確認するための、心部ドップラー超音波の導入:予備的研究。)”, PLoS ONE 16(3): e0248999、 https://doi.org/ 10.1371/journal.pone.0248999
本研究は、下記引用文献1に開示されている、診断精度報告のための標準ステートメント(STARD)2015年版に準拠している。
<引用文献1>
Bossuyt PM, Reitsma JB, Bruns DE, et al. “STARD 2015: an updated list of essential items for reporting diagnostic accuracy studies. (STARD 2015:診断精度の研究を報告するための必須項目の更新されたリスト)” BMJ. 2015; 351:h5527. PMID: 26511519、https://doi.org/10.1136/bmj.h5527
上記研究は、2019年10月から2020年3月の間に、緊急でない待期的手術を予定しており、アメリカ麻酔科学会における全身状態分類(ASAPS)のクラスIII(高度の全身疾患を有するが運動不可能ではない状態)の18歳未満の小児患者を対象とした。術前検査に基づいて、NSのボーラス投与が、その使用量に関係なく、鬱血性心不全(例えば呼吸困難、呼吸窮迫、及び昇圧剤の使用)又は、電解物質(例えばナトリウムと塩化物)及び酸塩基の障害を示す顕著な症状を引き起こす可能性がある患者を、本研究の対象から除外した。重複データ収集を避けるために、データは、本研究が定めた基準を満たし、本研究の研究期間中に複数の待期的手術を受けた患者の中から、最初の手術において1回のみ収集した。
201 超音波ドップラープローブ
202 末梢静脈路の適正機能判定装置
301 血流回路
302 制御回路
303 アンプ
304 スピーカ
305 ヘッドホン接続コネクタ
306 ディスプレイ
307 キーパネル
308 電源電池

Claims (1)

  1. 患者の前胸部の表面に貼着され、前記患者の心臓に向けて超音波の送波と受波を行う超音波ドップラープローブと、
    前記超音波ドップラープローブが送波した超音波と前記ドップラープローブが受波した超音波の間のドップラーシフトに応じたドップラー信号を生成し、前記ドップラー信号に対応する血流速度データを出力する血流回路と、
    使用者が末梢静脈路から患者の末梢静脈内に生理食塩液をボーラス投与するタイミングを使用者に合図し、ボーラス投与する前の前記血流速度データと、ボーラス投与後の所定時間内の前記血流速度データとから、ボーラス投与後の血流速度がボーラス投与前の血流速度よりも1.0cm/s以上速くなったことを算出した場合に前記末梢静脈路のアクセス状態が正常であると判定する制御回路と、
    前記制御回路による判定の結果を使用者に報知する報知手段と、を有する末梢静脈路の適正機能判定装置
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