JP7084689B2 - 脳組織の異常を伴う非ヒト動物の作製方法およびその利用 - Google Patents

脳組織の異常を伴う非ヒト動物の作製方法およびその利用 Download PDF

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特許法第30条第2項適用 平成28年6月9日に国立大学法人一橋大学一橋講堂で開催された「平成28年度 第2回 東京都医学総合研究所 都民講座」で発表
本発明は脳組織の異常を伴う非ヒト動物の作製方法およびその利用に関する。
従来の研究では、特定の精神疾患または精神障害の発症または病状の進行は、遺伝的要因に大きく支配されていると考えられていた。しかし、近年の研究により、それらは実は幼少期の子育ての適切性、適度な運動または住環境などの環境要因が影響をしていることが明らかになってきた。Rett症候群モデルマウスまたはハンチントン舞踏病モデルマウスでの結果などがその例である(非特許文献1)。先進国において精神疾患または精神障害の患者は急増しているが、その発症または病状の進行には、環境要因が大きく影響していることが推察されている。
また、環境要因の一つとして栄養環境、すなわち食事が考えられる。食事と疾患との関連としては、食事として摂取する炭水化物量と肥満および糖尿病などの様々な疾患との関連が近年議論されてきている(非特許文献2および3)。
Lonetti G. et. al., BiolPsychiatry., 67(7):657-665, 2010 Orr M. E. et al., Neurobiologyof Aging, 35 1233-1242, 2014 Giovanni B. et al., BiomedicalSpectroscopy and Imaging, 2, 301-315, 2013
しかし、生体内に食事などによって摂取する炭水化物量および炭水化物の性質が、生体、とりわけ脳に及ぼす影響についての詳細な検証を行った例は少なく、精神疾患または精神障害への食事の影響に関する研究データは乏しい。さらに、精神疾患または精神障害のモデル動物は未だ十分に確立されていない。そこで、精神疾患または精神障害の発症機序の解明、その予防および/または治療薬の開発のために、精神疾患または精神障害の適切なモデル動物の確立が望まれている。したがって、本願発明者らは、脳の状態または行動への食事の影響を検証した。
本発明者らは、体内に摂取する炭水化物の量および種類に注目し、特定の糖類を摂取した場合に、個体の脳組織ならびに行動にどのような影響が生じるのかを検証し、本発明を完成させるに至った。上記の課題を解決するために、本願発明は以下の何れかの一態様を包含する。
<1> 非ヒト動物に単糖類、二糖類およびオリゴ糖から選択される糖類ならびに人工甘味料のうちの少なくともいずれか1つの物質を投与する工程を包含する、脳組織の異常を伴う非ヒト動物の作製方法。
<1’> 非ヒト動物に上記物質の代わりに多糖類を投与する工程を包含する、脳組織の異常を伴う非ヒト動物の作製方法。
<2> 上記物質の投与を受けた上記非ヒト動物において上記脳組織の異常が生じているか調べる工程をさらに包含する、<1>に記載の方法。
<3> 上記脳組織の異常を、当該脳組織の異常に起因する行動異常が生じているかで調べる、<2>に記載の方法。
<4> 上記行動異常は、過活動、PPI(Pre Pulse Inhibition)値の低下、作業記憶の低下、活動の馴化不全およびセルフグルーミングの増加のうちの少なくとも1つである、<3>に記載の方法。
<5> 上記脳組織の異常を、脳血管中のAGE(Advanced Glycation End Product)の蓄積、抑制性神経細胞の異常およびアストロサイトの炎症のうちの少なくとも1つが生じているかで調べる、<1>~<4>の何れかに記載の方法。
<6> 上記行動異常が、ヒトの精神疾患または精神障害の指標となるものである、<1>~<5>の何れかに記載の方法。
<7> 上記精神疾患または精神障害が、うつ病、自閉症、統合失調症、注意欠如・多動性障害、不安障害、認知症および知的障害のうちの少なくとも1つである、<6>に記載の方法。<8> 上記物質は、スクロース、グルコース、フルクトース、エリスリトール、アスパルテーム、アセスルファムカリウムおよびスクラロースから選択される、<1>~<7>の何れかに記載の方法。
<9> 上記物質を投与する上記工程は、上記非ヒト動物に対して、スクロース相当量に換算して50重量%を超える物質を含有する飼料を与えることで行われる、<1>~<8>の何れかに記載の方法。
<10> 上記非ヒト動物が、マウス、ラットおよびマーモセットから選択される非ヒト動物である、<1>~<9>の何れかに記載の方法。
<11> 物質を投与する上記工程は、少なくとも、成体より前の段階を含んでいる所定の期間行われる、<1>~<10>の何れかに記載の方法。
<12> 上記非ヒト動物はマウスであり、上記物質を離乳直後から少なくとも1か月間投与する、<1>~<11>の何れかに記載の方法。
<13> 脳血管中にAGEが蓄積している、脳組織の異常を伴う非ヒト動物。
<14> アストロサイトに炎症が生じている、<13>に記載の非ヒト動物。
<15> 行動異常をさらに伴う、<13>または<14>に記載の非ヒト動物。
<16> <13>または<14>に記載の非ヒト動物に、被検物質を投与することによって行動異常が予防されるか否か、または<15>に記載の非ヒト動物に、被検物質を投与することによって上記行動異常が改善されるか否か、を調べる工程を包含する、精神疾患または精神障害の予防または治療薬のスクリーニング方法。
<17> 非ヒト動物に、単糖類、二糖類およびオリゴ糖から選択される糖類を代替する被験物質を投与することによって、脳組織の異常を生じるか否かを調べる工程を包含する、脳組織の異常の要因となる物質のスクリーニング方法。
本発明によれば、脳組織の異常を伴う非ヒト動物の作製方法、脳組織の異常を伴う非ヒト動物、精神疾患または精神障害の予防または治療薬のスクリーニング方法および脳組織の異常の要因となる物質のスクリーニング方法を提供する。
マウスへの給餌プロトコル、飼料の成分について示した図である。 同一系統のマウス飼料の種類と多動性との関係を示した図である。 マウスの飼料の種類とPPIとの関係を示した図である。 マウスの飼料の種類と作業記憶低下との関係を示した図である。 マウスの飼料の種類とセルフグルーミングの頻度との関係を示した図である。 マウスの飼料の種類と不安行動異常との関係を示した図である。 マウスの飼料の種類とPV量との関係を示した図である。 マウスの飼料の脳血管におけるアストロサイトの炎症への影響を示した図である。 マウスの飼料の脳血管におけるAGEの蓄積への影響を示した図である。 マウスの飼料の血管内皮細胞におけるFC受容体の発現への影響を示した図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
〔1.脳組織の異常を伴う非ヒト動物の作製方法〕
本発明に係る脳組織の異常を伴う非ヒト動物の作製方法は、非ヒト動物に単糖類、二糖類およびオリゴ糖から選択される糖類ならびに人工甘味料のうちの少なくともいずれか1つの物質を投与する工程(物質投与工程)を包含する、脳組織の異常を伴う非ヒト動物の作製方法である。
まず、各用語について説明する。
(糖類)
本明細書において「糖類」は、単糖類、二糖類およびオリゴ糖を指すものとして定義する。以下に各糖類について詳細に説明する。
<単糖類>
「単糖類」はそれ以上加水分解されない糖の最小構成単位として存在する糖類を指す。本実施形態における単糖類としては、例えば、プシコース、ソルボース、タガトース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、フコース、フクロース、ラムノース、グルコース、ガラクトース、フルクトース、キシロース、アラビノース、エリトルロース、エリトロース、トレオース、ヘプツロース、ヘキシロースおよびペンツロース等が挙げられるがこれらに限定されない。また、アミノ糖類として、グルコサミン、N-アセチルグルコサミン(例えば、N-アセチルD-グルコサミン)、およびガラクトサミン等が挙げられる。
また、上述の単糖類を構成単位として組み合わせた糖鎖からなる二糖またはオリゴ糖も本願の糖類の範疇に含まれる。構成単位の単糖が2つ以上連なる場合は、各々の構成単位の糖同士の間は、例えば、グリコシド結合による脱水縮合によって結合している。
<二糖類>
「二糖類」は上記糖類の最小構成単位が2分子結合した構造を有する糖類を指す。本実施形態における二糖類としては、例えば、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオース、イソマルトース、トレハノース、メリビオース等が挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書において「オリゴ糖」は、上記構成単位の単糖類が3~10個結合したものを指す。上述した単糖類および/または二糖類の組み合わせの構造を有するものであってもよい。
オリゴ糖の例示としては、ラフィノース、メレジトースおよびマルトトリオース等の三糖類、アカルボースおよびスタキオースなどの四糖類、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖およびマンナオリゴ糖などのその他のオリゴ糖類が挙げられる。
なお、上述の「二糖類およびオリゴ糖」を合わせて「少糖類」ということもある。
さらに、上述した糖類の異性化物または誘導体、および様々な立体配置を有するものも本発明の糖類に含まれる。例えば、立体配置には、糖のグリコシド結合のα配置およびβ配置が挙げられるがそれらに限定されない。
また、上述の単糖類、二糖類およびオリゴ糖が修飾され、デオキシ化されたもの(例えば、2-デオキシ-D-リボースなど)、硫酸基を含む硫酸化糖、リン酸基を含むリン酸化糖およびウロン酸類なども本願の糖類に含まれる。
また、本発明の別の形態では、非ヒト動物に上記物質の代わりに多糖類を投与する工程(多糖類投与工程)を包含する、脳組織の異常を伴う非ヒト動物の作製方法である。
<多糖類>
多糖類は、上記構成単位の単糖類が11個以上結合したものを指す。多糖類の例示としては、デンプン、デキストリンおよびセルロースなどの多糖類が挙げられる。
上記物質の代わりに多糖類を投与する場合も、以下の物質投与工程に記載した投与方法や投与形態などが全て適用される。
なお、本明細書で「糖類」というときは上記の単糖類、二糖類およびオリゴ糖までの範疇を意味している。また、本明細書において、「炭水化物」は単糖を基本の構成成分とする物質の総称を意味している。そして、特に、炭水化物のうち、構成単位の単糖類が11個以上結合する構成を有する糖類、デンプン、およびデンプンを加水分解して得られるデキストリンなどと、本明細書で適用する上述の「糖類」とは区別され、異なるものとして定義される。
(人工甘味料)
また本実施形態において投与される物質は人工甘味料であり得る。
人工甘味料としては、糖類、糖アルコール、非糖質系天然甘味料および非糖質系合成甘味料が挙げられる。糖類としては、スクラロース、糖アルコールとしては、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトールおよび還元パラチノースが挙げられる。非糖質系天然甘味料としては、カンゾウ、ステビア、グリチルリチン酸2カリウムが挙げられる。非糖質系合成甘味料としてはアスパルテーム、アセスルファムカリウム、サッカリンナトリウム糖、サイクラミン酸ナトリウム(チクロ)およびズルチンが挙げられる。
(非ヒト動物)
本明細書において「非ヒト動物」とはヒト以外の動物を指しており、非ヒト哺乳動物、鳥類および爬虫類等が挙げられる。なかでも、非ヒト哺乳動物が好ましい。非ヒト哺乳動物としては、例えば、げっ歯類および霊長類などが挙げられる。
げっ歯類は個体発生のサイクルが比較的短く、且つ繁殖が容易である観点から材料動物としてより好ましい。げっ歯類として具体的には、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ等が挙げられる。例えば、マウスの純系としてC57BL/6系統(C57BL/6Jなど)、BAL/c系統、DBA2系統など、交雑系として、B6c3F1系統、BDF1系統、B6D2F1系統、ICR系統などが挙げられる。ラットの純系としては、Wister、SDなどが挙げられる。
このうち、げっ歯類は、個体発生のサイクルが比較的短く、且つ繁殖が容易である観点から材料動物として好ましく、マウスまたはラットが好ましい。
霊長類は、作製された動物をヒトの精神疾患および精神疾患のモデルとして用いる場合、ヒトにより生物学的に近いという観点から材料動物として好ましい。霊長類として具体的には、コモンマーモセット、ピグミーマーモセットなどのマーモセット科のサル、オランウータン、チンパンジー、ゴリラなどのオランウータン科のサル、テナガザルなどのテナガザル科のサル、マカクザル、カニクイザル、アカゲザル、ニホンザルなどのオナガザル科のサルおよびクモザル、ヨザルおよびリスザルなどのオマキザル科のサルが挙げられる。また、イヌ、ネコなどのペット、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジおよびヤギなどの家畜などが挙げられるがこれらに限定されない。
また、精神疾患または精神障害に関連する遺伝子の変異遺伝子を有する変異体の非ヒト動物、精神疾患または精神障害に関連する遺伝子を特異的に欠損させたノックアウトまたはノックダウン、および精神疾患または精神障害に関連する変異遺伝子の変異を模したノックイン等の遺伝子改変を行った非ヒト動物は、本発明の範囲に含まれる。これらの非ヒト動物は、公知の遺伝子組み換え方法またはノックアウトもしくはノックダウン方法等を用いて作製されたものであり得る。例えば胚性幹細胞(ES細胞)へのターゲティングベクターの導入を用いた組み換え方法によって作製されたものであり得る。例えば脳組織の異常に関連するマーカータンパク質であって蛍光標識されたタンパク質を発現する変異非ヒト動物であってもよい。
一例では、既存のヒト型の精神疾患または精神障害感受性遺伝子変異を有する非ヒト動物が挙げられる。遺伝子変異マウスの具体的な例としてはGlo1マウス、APPマウスを含む公知のアルツハイマー病モデルマウス、PV-cre;GAD67マウス、およびRP58ヘテロマウスが挙げられる。
一実施形態では、本発明の非ヒト動物の作製方法に供する非ヒト動物は一定数(例えば10~20個体)の個体群を準備する。一例では、物質投与する対象の非ヒト動物群(物質投与群)とその対照となる非ヒト動物群(対照群)とを準備する。物質投与群および対照群の非ヒト動物は、投与工程以外の条件(例えば週齢、性別、遺伝的背景および成育環境など)が統一されている非ヒト動物を準備することが望ましい。
(脳組織の異常)
「脳組織」とは、例えば、線体、大脳皮質、海馬、桃体および脳室などの脳内の組織、中枢神経並びに脳内血管等を包含する任意の脳内に存在するあらゆる組織を意味しており、本明細書において脳組織の異常とは、例えば脳神経系の異常および脳血管の異常が挙げられる。脳神経系の異常とは、抑制性神経細胞の異常およびアストロサイトの炎症等が挙げられる。
ここで抑制性神経細胞とは、シナプス後細胞の興奮を抑制する働きを有する細胞を意味している。抑制性神経細胞としては大脳皮質・海馬のバスケット細胞およびシャンデリア細胞、小脳皮質のプルキンエ細胞および脊髄のレンショウ細胞などが知られている。抑制性神経細胞の異常は、抑制性ニューロンの一部のマーカーであるパルブアルブミン(Parvalbumin、PV)の発現強度の低下によって検出される。あるいは、抑制性神経細胞の活動低下によって検出される。
PVは、GABA作動性のニューロンの一部に存在する。PV陽性の抑制性の神経細胞は学習記憶の成立や脳波の一種であるγ派の形成に必要であり、統合失調症またはうつ病の患者では、γ波の強度低下および同期の異常が報告されている。また、ヒトの死後脳では、GABAニューロンの健全な機能発現に必須なPVの発現低下が報告されており(Lodge DJ et al., 2009)、マウスモデルにおいても、PV陽性のGABAニューロンの活動低下は統合失調症の発症に必要十分であることが証明されている。
また、ミクログリアおよびアストロサイトは脳の恒常性を維持する先天性の神経保護的な免疫反応を調節していることが知られている。さらにアストロサイトは、脳構造の維持とともに、脳内の代謝および神経細胞外環境の維持にも関与している。近年、アストロサイトは、シナプスの可塑性にも関与して、脳の記憶および学習形成に関わっている可能性が示されており、アストロサイトの炎症は、パーキンソン病や、アルツハイマー等の疾患の病態の進行に影響することが明らかになりつつある。
本明細書において、脳血管の異常とは、血管中のAGE(Advanced Glycation End Product、終末糖化物質)の蓄積、および血管内皮細胞における異常なFC受容体の発現の増加等が挙げられる。
(物質投与工程)
続いて、物質投与工程について詳細に説明する。
一実施形態において、投与される物質は単糖類、二糖類およびオリゴ糖から選択される糖類ならびに人工甘味料のうちの少なくともいずれか1つの物質であり、好ましくは、単糖類、二糖類およびオリゴ糖から選択される糖類である。具体例は上述した通りである。本方法において、投与される物質は一種類であっても、複数種類であってもよい。ある例では、投与される物質はスクロース、グルコースまたはフルクトースである。
<投与形態>
物質の投与形態は、飼料(食餌)の成分として含有させることによって投与してもよく、飼料とは別途に、該物質のみの形態または該物質を含有する組成物の形態で投与してもよい。また、通常の飲料の溶液中に含有させてもよい。
飼料に含有させる場合の飼料中の物質の含量は、飼料の総重量当たり、スクロース相当量に換算して50重量%を超える量であり、スクロース相当量に換算して、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらにより好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上であり得る。スクロース相当量とは、飼料中の該物質のモル濃度と同一のモル濃度のスクロースの重量で換算した時の重量%を意味している。ある別の場合では、スクロース相当量とは、飼料中の該物質のモル濃度と同一のカロリー量のスクロースの重量で換算した時の重量%を意味している。飼料に含有させる場合の飼料中の物質の含量は、例えば、飼料の総重量当たり、50重量%を超える量であり、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、または90重量%以上であり得る。また飼料は、タンパク質および脂肪等の通常の飼料に含まれる成分が任意に含まれていてよい。一例では、飼料に含有させる場合の飼料中の物質の含量は、例えば、飼料の総カロリー当たり、50カロリー%を超える量であり、60カロリー%以上、70カロリー%以上、80カロリー%以上、または90カロリー%以上であり得る。
一例では、材料動物としてマウスを使用する場合、通常の飼育において用いられる飼料における、スクロース相当量に換算して50重量%を超える量であり、スクロース相当量に換算して、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらにより好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である、物質を含有する。飼料中に含有させる物質がスクロースである場合は、上記のスクロース相当量に換算した重量%濃度が、飼料中のスクロースの濃度である。
物質を含有する組成物の形態としては、固形、半固形、液状、エアロゾル等の好適な形態とすることができる。組成物のその他の成分は特に限定されず、担体、賦形剤、希釈剤、各種溶媒が挙げられる。溶媒の例としては、水および緩衝液等が挙げられ、緩衝液としては、生理食塩水、リン酸緩衝液およびリンゲル液などが挙げられる。
<投与方法>
物質の投与方法は、通常の飼料または飲料として経口的に与える方法の他に、該物質のみの形態または該物質を含有する組成物の形態で経口的または非経口的に投与する方法が挙げられる。非経口的経路としては、静脈内、筋肉内、腹腔内、動脈内、皮下、皮内、気道内、鼻腔内または気管支内が挙げられる。また、非経口的投与手法としては、直接注射、噴霧および血管内投与が挙げられる。
<投与期間および投与量>
物質の投与量は、物質の種類、動物の種類、体重、年齢または生育段階および投与形態などによって異なるが、例えばスクロース相当量に換算して、0~3g/kg体重/日の範囲、3~5g/kg体重/日の範囲、または5~10g/kg体重/日の範囲であり得る。例えば、スクロースをマウスに投与する場合0~3g/kg体重/日の範囲、より好ましくは、5~10g/kg体重/日の範囲、さらにより好ましくは、5~10g/kg体重/日の範囲から適宜選択することができる。また、例えば当該物質の投与量として、0~3g/kg体重/日の範囲、3~5g/kg体重/日の範囲、または5~10g/kg体重/日の範囲であり得る。例えば、スクロースをマウスに投与する場合0~3g/kg体重/日の範囲、より好ましくは、5~10g/kg体重/日の範囲、さらにより好ましくは、5~10g/kg体重/日の範囲から適宜選択することができる。当該量を1日1回ないし数回に分けて投与してもよい。また、ここでスクロース換算量とは、実際に投与する物質の重量を該物質と同一のモル等量のスクロース重量で換算した時の重量である。
投与期間も特に制限されず、連続で与えても間欠的に与えてもよいが、例えば1もしくは2か月間、1~4か月間または1~12か月間、もしくは、連続で、または2~4日おきもしくは1~3日おきに投与することができる。
投与工程において、複数の物質を投与する場合は、複数種類の物質を同時にまたは混合して投与してもよく、複数種類の物質を異なる時期に投与してもよい。その場合、投与の順は、例えば、ある物質の一定の投与期間投与した後、別の物質をさらなる一定期間投与する、というように、順次投与する物質を変更してもよく、一定期間中の投与物質をランダムに変更したり、所望のサイクルで変更してもよい。
<投与する生育段階>
物質の投与の対象となる生育段階は、特に限定されないが、例えば、出生してから哺乳期までの間、離乳直後から成体となるまでの間、成体となってから死亡するまでの間、または離乳直後から死亡するまでの間などであり得る。あるいは、成体となってからのある一定期間のみ投与してもよい。ある一定の期間とは、例えば、成体における妊娠前もしくは妊娠後から授乳している期間までの間などの期間であり得る。
材料動物として、マウスを用いる場合は、例えば、離乳直後(3週齢~4週齢)から1~30日または1~2か月間、離乳直後から1~6か月間、または離乳直後から1~12か月間投与する。別の例では離乳直後(3週齢~4週齢)から死亡するまで投与する。さらに別の例では成体(60日齢~180日齢)から30日~6か月間投与する。
(脳組織異常性の検査工程)
一実施形態における脳組織の異常を伴う非ヒト動物の作製方法は、上記物質の投与を受けた上記非ヒト動物において上記脳組織の異常が生じているか調べる工程(脳組織異常性の検査工程)をさらに包含する。
以下は検査の方法について詳細に説明する。
<検査方法>
一例では上記脳組織の異常は、脳血管中のAGEの蓄積、および内皮細胞における異常なFC受容体の発現上昇、抑制性神経細胞の異常およびアストロサイトの炎症のうちの少なくとも1つが生じているかで調べられる。
<AGE>
「AGE」とは、タンパク質または脂質のアルドース糖とのインキュベーションによって生じるタンパク質または脂質の糖化反応(メイラード反応)により生じる生成物の総称である。AGEは、糖尿病および正常な老化に関連した合併症を含む種々の障害に関係していることが知られている。AGEの例としては、ペントシジン、N-カルボキシメチルリシン(CML)、Nε-カルボキシエチルリシン(CEL)、アルグピリミジン、ピラリン、クロスリン、GA-ピリジンおよびグルコスパン等が挙げられる。
別の実施形態において、上記脳組織の異常を、当該脳組織の異常に起因する行動異常が生じているかで調べてもよい。
脳組織の異常を調べる方法としては、例えば、実際の細胞組織形態、細胞状態または細胞数等の変化を顕微鏡観察することによっても検査を実施することができる。その場合は、観察対象のアストロサイト、PV、AGEおよびFC受容体などのマーカータンパク質の発現を、各マーカーに特異的に反応する抗体を用いて、免疫染色法などの方法を用いて染色してもよい。あるいは、該観察対象のアストロサイト、PV、AGEおよびFC受容体などのマーカータンパク質の発現を、ウェスタンブロッティング等の免疫学的な手法により検出および定量する方法、または該マーカーの遺伝子発現を、定量的RT-PCR、ノーザンブロッティング等により検出および定量する方法などを用いることができる。
顕微鏡観察する場合、対象の物質投与群の個体の脳のスライス組織などが挙げられる。例えば、該個体より脳を取り出し、大脳皮質の凍結切片または組織のブロックを調製し、中枢神経などの目的の脳組織を染色して観察する。染色方法は、抗体染色、HA染色、ニッスル染色、PAS染色およびin situ hybridizationなどの公知の方法を適宜用いることができる。
<行動異常>
本明細書において「行動異常」とは、行動上の異常を意味しており、各動物の種類によってその種類や形態は多岐にわたるが、各非ヒト動物の行動異常にはヒトにおける精神疾患または精神障害に関連する行動異常に対応するものが知られている。
一例では、行動異常としては、過活動(多動性)、PPI(Pre Pulse Inhibition、プレパルス阻害)値の低下、作業記憶の低下、活動の馴化不全、セルフグルーミングの増加、学習記憶障害、社会的相互作用の低下および不安行動異常およびこれらの組み合わせが挙げられる。本方法で行動異常としては、例えば、過活動(多動性)、PPI(Pre Pulse Inhibition、プレパルス阻害)値の低下、作業記憶の低下、活動の馴化不全およびセルフグルーミングの増加、不安行動異常のうちの少なくとも1つであり得る。
活動過多および馴化不全は、注意欠如・多動性障害(ADHD)や統合失調症の患者で、PPI値の低下は、統合失調症またはアルツハイマー病の患者で(Kohl S et al., J Psychiatr Res. , 47(4): 445-452, 2013)、作業記憶の低下は統合失調症やうつ病の患者で、過剰なセルフグルーミングは自閉症、不安障害および統合失調症の患者で報告されている(Kalueff AV et al., Nat Rev Neurosci., 17(1):45-59, 2016)。
これらの行動異常は、行動薬理学の分野において公知の行動試験等を用いた行動評価方法によって評価可能であり得る。例えば、知覚過敏や知覚ゲーティングまたは感覚ゲーティングの障害および活動の馴化不全の評価法として、プレパルス阻害による情報処理障害を指標とした行動評価が挙げられる。また、不安障害または注意欠・多動性障害(ADHD)の評価法として、オープンフィールドテスト(Open field test)、明暗選択テストおよび高架式十字迷路テスト等の方法が挙げられる。社会的相互作用の低下、コミュニケーションの異常などの社会性欠如の評価法として、超音波啼鳴反応試験、3チャンバー解析および社会性テスト等の行動評価法が挙げられる。うつ病等の気分障害の陰性症状(感情鈍磨、意欲の低下、疎通性障害、社会性忌避など)の評価法として、社会性行動試験による社会的行動障害を指標にした行動評価、強制水泳テスト、テイルサスペンションテストなどによる意欲低下を指標にした行動評価等が挙げられる。記憶障害の試験方法としては、モリス水迷路、8方向放射迷路、バーンズ迷路、物体再テスト、受動的回避行動試験、恐怖記憶学習およびフットショック試験などが挙げられる。
他には、回転輪テスト、ホットプレートテストおよび、グルーミング観察および巣作り行動観察等が挙げられるが、それらに限定されない。
上述した通り、上記の非ヒト動物の行動異常は、ヒトの精神疾患または精神障害の指標となるものであり得る。
本明細書において、「精神疾患または精神障害」とは、「神経障害」「神経発達障害」とも言い換え可能である。
精神疾患または精神障害は、日常生活において苦痛または機能障害を引き起こす精神的または行動上のパターンまたは異常性を伴う状態を意味する。精神疾患または精神障害には、感情、学習能力、自己制御および記憶に影響する、脳または中枢神経系の機能的な疾患または障害を包含する。
精神疾患または精神障害には、例えば、具体的には、統合失調症、不安障害、うつ病および双極性障害などの気分障害、神経発達障害、自閉症または自閉症スペクトラム障害、知的障害、胎児性アルコールスペクトラム障害、運動障害、コミュニケーション、発話および言語障害、注意欠・多動性障害(ADHD)および認知症およびこれらの組み合わせが挙げられる。
「精神疾患または精神障害」を呈するヒトにおいて特徴的に見られ得る行動上の異常としては、以下に限定されないが、例えば、意識障害、知的障害、記憶障害、知覚障害、思考障害、抑うつ状態、感情鈍麻、興奮、不安または怒りなどの感情または気分の障害、食欲低下および睡眠障害等が挙げられる。また、記憶障害には、記憶を思い出すことができない障害と、新たなことを覚えることができない障害とが含まれる。また、記憶障害には、一時的に思い出すことができない短期記憶障害と、長期間思い出すことができない長期記憶障害とが含まれる。
自閉症スペクトラム障害としてさらに具体的には、従来型自閉性障害、アスペルガー症候群、レット症候群、小児崩壊性障害、および特定不能の広汎性発達障害等が挙げられる。
気分障害として、さらに具体的には、躁病、うつ病および躁うつ病等が挙げられる。
不安障害として、さらに具体的には、全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害、強迫性神経障害およびPTSDが挙げられる。
また、神経変性を伴う精神疾患または精神障害としては、パーキンソン病、パーキンソン症候群、アルツハイマー病および老年性痴呆が挙げられる。運動障害としては、協調運動発達障害、常同性運動障害およびチック障害等が挙げられる。
なかでも、精神疾患または精神障害は、うつ病などの気分障害、自閉症、統合失調症、注意欠如・多動性障害、強迫神経症などの不安障害、認知症および知的障害の少なくとも1つから選択されるものであり得る。
(選抜工程)
一実施形態において、対照と比較して脳組織の異常性の高い非ヒト動物を選抜する選抜工程をさらに包含していてもよい。
対照とは、単糖類、二糖類およびオリゴ糖から選択される糖類ならびに人工甘味料のうちの少なくともいずれか1つの物質を投与しなかったか、投与群と比較して投与量が有意に少ない以外は同一の条件で飼育した非ヒト動物であり得る。ある一例では、対照は、精神疾患または精神障害に罹患していない正常な個体または個体群であり得る。
本選抜工程の一例では、上記の脳組織の異常の検査工程で調べた脳の器質的変化の程度を、物質を投与していない対照群の非ヒト動物の脳組織における変化の程度と比較する。その結果、物質を投与しなかった場合に比べて、脳組織の異常性が高い非ヒト動物を選抜する。または、本選抜工程の一例では、上記の脳組織の異常の検査工程で調べた脳の器質的変化の程度を、物質を投与していない対照群の非ヒト動物の脳組織における変化の程度と比較する。物質を投与しなかった場合に比べて、行動異常性が高い非ヒト動物を選抜する。
一実施形態において、脳組織の異常性が高いとは、対照と比較して、抑制性神経細胞の異常(すなわち、PV発現強度の低下)の増大、アストロサイトの炎症性の増大、血管中のAGEの蓄積量の増大が見られる場合を意味している。
一実施形態において、行動異常性が高いとは、対照と比較して、過活動性(多動性)の増大、作業記憶の低下の程度の増大、活動の馴化不全の増大およびセルフグルーミング頻度の増加が見られる場合を意味している。
さらに、過活動性(多動性)が高いとは、例えばオープンフィールドテストで一定時間内に移動する距離が多いことを意味しており、対照と比較して、オープンフィールドテストでの同一時間経過後の移動距離が25%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、さらにより好ましくは50%以上、さらにより好ましくは60%以上、さらにより好ましくは70%以上、さらにより好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上または100%以上、多い場合であり得る。また、活動の馴化不全の増大とは、例えば対照非ヒト動物と比較して、オープンフィールドテストでの試験開始から一定時間経過後の移動距離をより高く保っていることを意味しており、対照非ヒト動物と比較して、オープンフィールドテストでの試験開始30~60分経過後における移動距離が25%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、さらにより好ましくは50%以上、さらにより好ましくは60%以上、さらにより好ましくは70%以上、さらにより好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上または100%以上、多い場合であり得る。
さらに、セルフグルーミングの頻度が増加しているとは、例えば対照と比較して、所定時間当たりのセルフグルーミング回数が、25%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、さらにより好ましくは50%以上、さらにより好ましくは60%以上、さらにより好ましくは70%以上、さらにより好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上または100%以上、多い場合であり得る。なお、一例では、セルフグルーミングの頻度は、一般的なセルフグルーミングの指標とされるElliptical stroke、Unilateral stroke、Bilateral stroke、Body lickingなどの合計回数を測定することで行われる。
(出産工程)
一実施形態において、上記の物質投与工程において物質投与した非ヒト動物を母親および/または父親として交配し、仔を出産させる工程を包含していてもよい。交配は、任意方法で行えばよく、近交系、クローズドコロニーおよび交雑系等のいずれであってもよい。
さらに、上記の出産により、出生した仔に対し、上記の母親により、当該仔に、所望の一定期間、例えば離乳するまで、哺乳させる工程を包含していてもよい。
また、母親が分娩した新生仔には、そのまま出産した母親に哺乳させてもよく、別途に用意した上記の物質投与工程によって物質投与した雌の非ヒト動物であって授乳可能な雌に哺乳させてもよい。
以上のように、本願発明の作製方法であれば、短期間で、簡便に脳組織の異常を伴う非ヒト動物の作製を行うことができる。さらに本発明の作製方法であれば、効率的に脳組織の異常を伴う非ヒト動物を得ることができる。また、本方法は、マウスまたはラットをはじめとする種々の動物種に適用可能である。
〔2.脳組織の異常を伴う非ヒト動物〕
本発明に係る脳組織の異常を伴う非ヒト動物は、脳血管中にAGEが蓄積している。
上述の作製方法によって得られた脳組織の異常を伴う非ヒト動物も本発明の範疇である。
また、別の一例では、脳組織の異常を伴う非ヒト動物は、アストロサイトに炎症が生じている。さらに別の一例では、該脳組織の異常を伴う非ヒト動物は、行動異常をさらに伴っている。また、脳組織の異常を伴う非ヒト動物は、上記状態の全てあるいは複数の状態を同時に示すものであり得る。
一実施形態では係る行動異常は、上述のヒトの精神疾患または精神障害の指標となるものである。このような行動異常を伴う非ヒト動物は、精神疾患または精神障害の非ヒトモデル動物として好適に用いることができる。
また、作製方法の項目で記載した出産工程または哺乳工程を経て得られた仔についても、本願発明の作製方法にて得られる脳組織の異常を伴う非ヒト動物の範疇である。
ヒトにおいて、Jenkinsらによって提唱されたグリセミックインデックス(GI)は、同じ糖質量の食品であっても、素材が異なれば血糖値への影響は同様でないという考えに基づくもので、ブドウ糖(すなわちグルコース、糖質50g相当)を摂取開始から2時間までの血糖上昇下面積(IAUC)を100とした場合に、ブドウ糖と同糖質量の試験食品を摂取し、試験食品の面積とグルコースの面積の比に係数100をかけたものとして表される糖質の質を表す指標である。
近年、ヒトにおいて、高糖質食あるいは、高GI食(高いGI値、例えばブドウ糖を100とした場合に80以上のGIを有する食物)の摂取と種々の疾患との関連が明らかになりつつあるが、本発明に係るモデル非ヒト動物を用いれば、例えばヒトにおける高糖質および高GI食と精神疾患または精神障害との関連についての精神疾患または精神障害モデル非ヒト動物としての使用が可能である。
本実施形態にかかるヒトの精神疾患または精神障害モデル非ヒト動物は、短期間で作成可能である。本実施形態にかかる神経疾患モデル動物は、精神病態解析、予防または治療薬開発および創薬の分野に寄与する。行動解析のみならず、脳組織の状態変化による定量的な解析評価が可能である。
〔3.精神疾患または精神障害の予防または治療薬のスクリーニング方法〕
本発明は、上述の作製方法によって得られた、脳組織の異常を伴う非ヒト動物に、被検物質を投与することによって上記行動異常が予防されるか否か、または上述の作製方法によって得られた、行動異常を伴う非ヒト動物に、被検物質を投与することによって上記行動異常が改善されるか否か、を調べる工程を包含する、精神疾患または精神障害の予防または治療薬のスクリーニング方法を提供する。
以下、本発明の精神疾患または精神障害の予防または治療薬のスクリーニング方法の各工程について説明する。
一実施形態において精神疾患または精神障害の予防薬のスクリーニング方法は、(1)本発明に係る脳組織の異常を伴う非ヒト動物に、被検物質を投与する工程、(2)該動物における行動異常が生じるかを調べる工程、および(3)被検物質を適用しなかった場合と比較して、行動異常の発生が抑制されたときに該被検物質を、精神疾患または精神障害の予防効果を有する物質の候補として選択する工程を含む。
また、別の一実施形態において精神疾患または精神障害の治療薬のスクリーニング方法は、(1’)本発明に係る行動異常を伴う非ヒト動物に、被検物質を投与する工程、および(2’)被検物質を適用しなかった場合と比較して、行動異常が改善されたときに、該被検物質を、精神疾患または精神障害の治療効果を有する物質の候補として選択する工程を含む。
上記工程(1)および(1’)は、被験動物として、それぞれ本発明に係る脳組織の異常を伴う動物または行動異常を伴う非ヒト動物を用い、物質の代わりに被験物質を投与するほかは、上述の〔1.脳組織の異常を伴う非ヒト動物の作製方法〕の(物質投与工程)における方法と同様であるので投与方法、投与期間および投与形態についての詳細は省略する。被検物質としては、特に限定されないが、任意の合成化合物、ペプチドおよび蛋白質が挙げられる。
上記工程(2)についても、上述の(脳組織異常性の検査工程)に記載の方法と同様に実施可能である。
上記工程(3)および(2’)において、工程(2)で調べたあるいは投与前に有していた行動異常の程度を、被検物質を投与しなかった非ヒト動物における行動異常の程度と比較する。比較は、好ましくは有意差の有無に基づいて行われる。その結果、被検物質を適用しなかった場合に比べて、行動異常性が改善されたときに、該被検物質を精神疾患または精神障害の予防効果または治療効果を有する物質の候補として選択する。
また、上述の(出産工程)を包含していてもよい。その場合、親に対して(1)(2)の工程を行い、上記工程(3)および(2’)は出生した仔に対して行われるものであってもよい。
〔4.脳組織の異常の要因となる物質のスクリーニング方法〕
本発明は、また、非ヒト動物に、単糖類、二糖類およびオリゴ糖から選択される糖類を代替する被験物質を投与することによって、脳組織の異常を生じるか否かを調べる工程を包含する、脳組織の異常の要因となる物質のスクリーニング方法も提供する。
一実施形態において脳組織の異常の要因となる物質のスクリーニング方法は、(a)非ヒト動物に、単糖類、二糖類およびオリゴ糖から選択される糖類を代替する被検物質を投与する工程、(b)該動物における脳組織の異常が生じるかを調べる工程、および(c)被検物質を適用しなかった場合と比較して、脳組織異常性が高くなったときに、該被検物質を、精神疾患または精神障害の増悪因子または要因因子となる物質の候補として選択する工程を包含する。
上記工程(a)は、材料となる非ヒト動物は上述の(非ヒト動物)の記載と同様であり、被験物質の投与は本発明の物質の代わりに被験物質を投与するほかは上述の(物質投与工程)における方法と同様であるので投与方法、投与期間および投与形態についての詳細は省略する。被検物質としては、単糖類、二糖類およびオリゴ糖から選択される糖類の代替としての候補物質であれば特に限定されないが、該被験物質としては、医薬化合物、食品、健康食品、機能性食品または特定保健用食品に含有されるものが挙げられる。また、一例では、候補物質は人工甘味料、および腸内細菌に分解されて、生体内で代謝され得る物質であり得る。上記工程(b)についても、上述の(脳組織異常性の検査工程)に記載の方法と同様に実施可能である。
上記工程(c)において、工程(b)で調べた脳組織異常の程度を、被検物質を投与しなかった非ヒト動物における脳組織異常の程度と比較する。比較は、好ましくは有意差の有無に基づいて行われる。その結果、被検物質を適用しなかった場合と比較して、脳組織異常性が高くなったときに、該被検物質を、精神疾患または精神障害の増悪因子または要因因子となる物質として選抜する。一方、被検物質を適用しなかった場合に比べて、脳組織の異常性が抑制されたときに、該被検物質を増精神疾患または精神障害の増悪因子または要因因子とならず、安全性のより高い物質候補として選択する。当該スクリーニング方法は、被験物質の生体に対する安全性試験としても適用され得る。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
まず、本実施例で用いた実験材料動物および飼育条件について説明する。
(実験材料)マウス(B6J系統)
(飼育方法)
マウス(雌10~20個体、雄10~20個体)に、離乳直後(3週齢)から通常の食餌(CE2 、日本クレア、以下通常食とも記載する)、および該通常食の炭水化物成分(58カロリー%(50重量%)のデンプン)の代わりに、68カロリー%のデンプン(コーンスターチ)もしくは、68カロリー%のスクロースを含有する食餌(糖類高含有飼料)を与えて1~3か月間飼育した。なお、この実験材料マウスの親マウスは、両親とも通常食を与えて飼育されたマウスであり、実験材料のマウスはこの親マウスから離乳時まで授乳させた。なお、カロリー%は、飼料の総カロリー当たりのカロリーの割合であり、重量%は、飼料の重量当たりの重量割合を示している。以降の記載でも同様である。
(飼育環境および給餌条件)
食餌の飼料組成
(通常食)炭水化物としてのデンプン58カロリー%(50重量%)、タンパク質29カロリー%(25重量%)、脂肪13カロリー%(11重量%)、粗繊維等14重量%;
(糖類高含有飼料1、図1では複合糖質食として示している(以下、デンプン食としても記載する))デンプン68カロリー%、タンパク質21カロリー%、脂肪11カロリー%;
(糖類高含有飼料2、図1では砂糖含有食として示している(以下、砂糖食としても記載する))スクロース68カロリー%、タンパク質21カロリー%、脂肪11カロリー%。
ここでマウスを以下の2つの群として、上記の同一条件で飼育した。
<被験群>上記糖類高含有飼料1または2を離乳直後(3週齢)から3か月間与えた。
<対照群>通常の飼料(通常食)を離乳直後(3週齢)から3か月間与えた。
図1は、給餌プロトコルおよび飼料の成分について示した図である。
<試験のタイミング>
以下の実施例においては、離乳直後から糖類高含有飼料を与えたものを被験群とし、離乳直後から1か月の時点で各行動試験および離乳直後から3か月の時点で脳組織の解析を行った。
以下の実施例1~3では、上記の条件で飼育したマウスを用い、マウスの食餌成分と行動異常性との関連性の解析を行った。
〔実施例1:マウスの食餌成分と多動性との関連性の解析〕
(多動性の測定方法:オープンフィールドテスト)
一辺50cm程度の空間に被験マウスを置き、5分ごとの移動距離の計測を合計で30分間行った。
(多動性測定結果)
結果を図2に示す。図2は、飼料の種類と多動性との関係を示した図である。図2の(a)は、通常食を与えた場合と砂糖食を与えた場合との多動性の比較を示す。図2の(b)は、デンプン食を与えた場合と砂糖食を与えた場合との多動性の比較を示す。
図2のとおり、砂糖食では新奇の環境における行動量が多く、新奇の環境における多動性が認められた。
〔実施例2:マウスの食餌成分とプレパルス抑制との関連性の解析〕
(音刺激によるプレパルス抑制テスト実施方法〕
上記のマウスを1匹ずつ筒状の入れ物の中にマウスを固定し、大きなパルス音(120db)を聞かせ驚愕反応としてのマウスのつっぱり強度を測定し、このつっぱり強度の値を基準値とした。次に大きな音の前(100ms)に小さなパルス音(70db、75db、80dbまたは85db)聞かせた。PPIがよく機能しているマウスはより小さいレベルのパルス音でも驚愕反応の抑制が観察される。
結果を図3に示す。図3は、飼料の種類とPPIとの関係を示した図である。
図3のとおり、砂糖食の場合は、PPIの低下が見られた。
〔実施例3:マウスへの食餌成分と作業記憶との関連性の解析〕
実験1日前にマウスを50cmの正方形の箱に入れ、15分間自由行動させ環境に慣れさせた。翌日、まったく同じ見た目の、色付きの水を入れたペットボトルを2本用意し、箱の中の一辺の壁から7cm離れ、且つ、該一片の壁に接する片側の壁から7cm離れた位置に一方のペットボトルを、一辺の壁から7cm離れ、且つ、該一片の壁に接する別の側の壁から7cm離れた位置に他方のペットボトルを設置し、10分間マウスをその中で歩かせる。ホームケージにマウスを5分戻したのち、設置されたペットボトルのうち、どちらか一方のみを、もう一方のペットボトルと箱の対角線上に点対称となる位置に移動させ、前回箱に入れたものと同一のマウスを再び箱に入れる。前回のペットボトルの位置を記憶しているマウスは、習性上新しく移動したボトルの近くで長い時間を過ごすため、それぞれのボトルにおける滞在時間を記憶力のスコアとする。
(作業記憶測定結果)
結果を図4に示す。図4の(a)は作業記憶テスト(object location test, OLT)のプロトコルを示す。図4の(b)5分後にobject Bを探索した割合を示す。値が高い程、object Bの移動を認識しており作業記憶が良好であること示す。
〔実施例4:マウスへの食餌成分とセルフグルーミング頻度との関連性の解析〕
(セルフグルーミング頻度の測定方法)
実験前の最終の食餌を与えた時間から3時間以上絶食させたのち、ホームケージで10分間目視で観察を行い、セルフグルーミングの回数を測定した。その際一般的なセルフグルーミングの指標とされる、Elliptical stroke、Unilateral stroke、Bilateral stroke、Body lickingの4種のグルーミングを行った合計時間を算出した。
(セルフグルーミング頻度測定結果)
結果を図5に示す。図5は、飼料の種類とセルフグルーミングの頻度との関係を示した図である。図5のとおり、糖類高含有飼料を与えることにより、セルフグルーミングの頻度の増加が認められた。
〔実施例5:マウスへの食餌成分と不安行動との関連性の解析〕
(不安行動の測定方法)
高架式十字迷路によって、不安行動の程度を測定した。
クローズドアーム、ニュートラルアームおよびオープンアームのある高架式十字迷路にマウスを置き、各アームにおける滞在時間を観察した。10分間のうち、壁のないオープンアーム(もしくは、オープンアームおよびニュートラルゾーン)に滞在する時間が長いほど、不安の程度が低いと判断した。
(不安行動の測定結果)
結果を図6に示す。図6は、飼料の種類と不安行動との関係を示した図である。図6のとおり、糖類高含有飼料を与えることにより、不安行動の減少が認められた。
続いて、以下の実施例ではマウスの食餌成分と脳組織の異常性との関連性の解析を行った。
〔実施例:マウスの食餌成分と抑制性神経細胞の活動低下(PV量減少)との関連性の解析〕
(試料の調製および観察方法)
上記の条件で飼育した、離乳直後から3か月の時点のマウスから脳を取り出し、4%パラフォルムアルデヒド液で灌流固定後、脳切片を作成し、抗PV抗体で染色した。各群の脳組織について、顕微鏡(オリンパスFV1000)を用いて観察を行った。
(観察結果)
結果を図7に示す。図7は、飼料の種類とPV量との関係を示した図である。海馬CA1領域および大脳皮質の一部を示しており、緑のシグナルは抗PV抗体染色された細胞を示す。
〔実施例:マウスの食餌成分とのアストロサイトの炎症との関連性の解析〕
本実施例では、マウスの系統として、GFAP-GFPマウス(アストロサイト特異的にGFP蛍光を示すマウス(GFAPプロモーター依存的にGFPを発現するマウス)を用い、上記の飼育条件と同様に被験群と対照群とを飼育し、離乳直後から3か月の時点で実験に用いた。
(試料の調製および観察方法)
GFAP-GFPマウスについて、離乳直後から3か月の時点のマウスから脳を取り出し、4%パラフォルムアルデヒド液で灌流固定後、脳切片を作成し、抗GFP抗体を用いて染色し、給餌によってアストロサイトで増加したGFPの量を定量した。
(観察結果)
結果を図8に示す。図8は、マウスの飼料の脳血管におけるアストロサイトの炎症への影響を示した図であり、海馬の歯状回の染色像を示す。GFPの強度が強いほど、強い炎症反応を示す。図8のとおり、糖類高含有飼料を与えて飼育した被験群のマウスは通常飼料を与えた対照群のマウスと比較して、アストロサイトに強い炎症が見られた。
〔実施例:マウスの食餌成分とのAGEの蓄積との関連性の解析〕
(試料の調製および観察方法)
上記の条件で飼育した、離乳直後から3か月の時点のマウスから脳を取り出し、4%パラフォルムアルデヒド液で灌流固定後、脳切片を作成し、抗AGE抗体で染色した。各群の脳組織について、顕微鏡(オリンパスFV1000)を用いて観察を行った。
(観察結果)
結果を図9に示す。図9は、マウスの飼料の脳血管におけるAGEの蓄積への影響を示した図であり、大脳皮質における抗ペントシジン抗体による染色像を示す。図のとおり、糖類高含有飼料を与えて飼育した被験群のマウスは通常飼料を与えた対照群のマウスと比較して、脳血管中のペントシジン蓄積が見られた。
〔実施例:マウスの食餌成分とのFC反応性因子との関連性の解析〕
上記のマウスについて、離乳直後から3か月の時点で実験に用いた。
(試料の調製および観察方法)
上記のマウスを離乳直後から3か月の時点のマウスから脳を取り出し、4%パラフォルムアルデヒド液で灌流固定後、脳切片を作成し、抗FC抗体を用いて染色した。各群の脳組織について、顕微鏡(オリンパスFV1000)を用いて観察を行った。
(観察結果)
結果を図10に示す。図10は、マウスの飼料の脳血管における影響を示した図であり、海馬の歯状回の染色像を示す。GFPの強度が強いほど、強い炎症反応を示す。図10のとおり、糖類高含有飼料を与えて飼育した被験群のマウスは通常飼料を与えた対照群のマウスと比較して脳血管内皮細胞のFC受容体の発現の増加が見られた。
本発明の方法を用いて作製された脳組織の異常を伴う非ヒト動物は、ヒトの精神疾患または精神障害の非ヒトモデル動物として用いることができる。さらに、作製された該非ヒト動物を用いて、被験物質が人の精神疾患または精神障害の予防または治療薬のスクリーニングに用いることができる。さらには、非ヒトの動物を用いた精神疾患または精神障害の解明や予防および治療薬の開発に寄与する。

Claims (18)

  1. 脳血管中にAGEが蓄積している、脳組織の異常を伴う非ヒト動物であって、
    上記脳組織の異常は、パルブアルブミン量の減少および脳血管内皮細胞における異常なFC受容体の発現上昇のうちの少なくとも1つが生じている、非ヒト動物。
  2. 上記非ヒト動物が、マウス、ラットおよびマーモセットから選択される非ヒト動物である、請求項1に記載の非ヒト動物。
  3. アストロサイトに炎症が生じている、請求項1または2に記載の非ヒト動物。
  4. 行動異常をさらに伴う、請求項1~3の何れか一項に記載の非ヒト動物。
  5. 上記行動異常は、過活動、PPI(Pre Pulse Inhibition)値の低下、作業記憶の低下、活動の馴化不全およびセルフグルーミングの増加のうちの少なくとも1つである、請求項4に記載の非ヒト動物。
  6. 上記行動異常が、ヒトの精神疾患または精神障害の指標となるものである、請求項4または5に記載の非ヒト動物。
  7. 上記精神疾患または精神障害が、うつ病、自閉症、統合失調症、注意欠如・多動性障害、不安障害、認知症および知的障害のうちの少なくとも1つである、請求項6に記載の非ヒト動物。
  8. 非ヒト動物に単糖類、二糖類およびオリゴ糖から選択される糖類ならびに人工甘味料のうちの少なくともいずれか1つの物質を投与する工程を包含する、脳組織の異常を伴う非ヒト動物の作製方法であって、
    上記脳組織の異常を伴う非ヒト動物は、パルブアルブミン量の減少および脳血管内皮細胞における異常なFC受容体の発現上昇のうちの少なくとも1つを伴う非ヒト動物であり、
    上記物質の投与を受けた上記非ヒト動物において上記脳組織の異常が生じているか調べる工程をさらに包含し、
    上記脳組織の異常を、パルブアルブミン量の減少および脳血管内皮細胞における異常なFC受容体の発現上昇のうちの少なくとも1つが生じているかで調べ、
    上記物質は、スクロース、フルクトース、グルコース、ソルビトール、ならびに、フルクトースおよびグルコースを含む異性化糖から選択される、方法。
  9. 上記脳組織の異常を、当該脳組織の異常に起因する行動異常が生じているかで調べる、
    請求項8に記載の方法。
  10. 上記行動異常は、過活動、PPI(Pre Pulse Inhibition)値の低下、作業記憶の低下、活動の馴化不全およびセルフグルーミングの増加のうちの少なくとも1つである、請求項9に記載の方法。
  11. 上記行動異常が、ヒトの精神疾患または精神障害の指標となるものである、請求項9または10に記載の方法。
  12. 上記精神疾患または精神障害が、うつ病、自閉症、統合失調症、注意欠如・多動性障害、不安障害、認知症および知的障害のうちの少なくとも1つである、請求項11に記載の方法。
  13. 上記物質を投与する上記工程は、上記非ヒト動物に対して、スクロース相当量に換算して50重量%を超える物質を含有する飼料を与えることで行われる、請求項8~12の何れか一項に記載の方法。
  14. 上記非ヒト動物が、マウス、ラットおよびマーモセットから選択される非ヒト動物である、請求項8~13の何れか一項に記載の方法。
  15. 上記物質を投与する上記工程は、少なくとも、成体より前の段階を含んでいる所定の期間行われる、請求項8~14の何れか一項に記載の方法。
  16. 上記非ヒト動物はマウスであり、
    上記物質を離乳直後から少なくとも1か月間投与する、請求項8~15の何れか一項に記載の方法。
  17. 請求項1~3の何れか一項に記載の非ヒト動物に、被検物質を投与することによって行動異常が予防されるか否か、または
    請求項4~7の何れか一項に記載の非ヒト動物に、被検物質を投与することによって上記行動異常が改善されるか否か、を調べる工程を包含する、精神疾患または精神障害の予防または治療薬のスクリーニング方法。
  18. 非ヒト動物に、スクロース、フルクトース、グルコース、ソルビトール、ならびに、フルクトースおよびグルコースを含む異性化糖から選択される糖類を代替する被験物質を投与することによって、脳組織の異常を生じるか否かを調べる工程、および
    上記被験物質を投与しなかった場合と比較して、脳組織異常性が高くなったときに、該被験物質を、脳組織の異常の要因となる物質の候補として選択する工程を包含しており、
    上記脳組織の異常は、パルブアルブミン量の減少および脳血管内皮細胞におけるFC受容体の発現上昇のうちの少なくとも1つが生じていることである、脳組織の異常の要因となり、スクロース、フルクトース、グルコース、ソルビトール、ならびに、フルクトースおよびグルコースを含む異性化糖から選択される糖類を代替する物質のスクリーニング方法。
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