JP7075600B2 - 血圧推定プログラム及び血圧推定装置 - Google Patents
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Description
まず、循環器系を線形系回路と仮定すると、中心静脈圧は動脈圧の大きさと比べて極めて小さく無視できるため、循環回路系は概ねオームの法則を満たしていると考えられ、循環基本式は下記式(a)となることが広く知られている(A.C. Guyton: Cardiac output and its regulation, Saunders (1963), A. C. Guyton and J. E. Hall, Human physiology and mechanisms of disease, Saunders (1996))(この文献の記載は、ここに特に開示として援用される)。
式(a)において、MBP(mean blood pressure)は平均血圧〔mmHg〕、CO(cardiac output)は心拍出量〔mL/min〕、TPR(total peripheral-vascular resistance)は全身の末梢血管抵抗(より正確には全末梢循環抵抗)〔mmHg/mL/min〕を示す。
式(b)において、SV(stroke volume)は一回拍出量〔mL〕、PR(pulse rate)は脈拍数〔1/min〕を示す。なお、脈拍間隔をT〔s〕とすれば、PR=60/Tとなる。以下の説明では、脈拍をPRと統一して表現するが、以下に示す式中のPRは60/Tと置き換えてもよい。
CO≒k1 ×PR ・・・式(i)
と置き換えることができる。
TPR≒k2 ×AR ・・・式(ii)
と置き換えることができる。
TPR≒k2 ×AR≒k2 ×mNPV ・・・式(iii)
となる。
なお、式中、「*」は積を示す。以降の式においても同様である。
MBP=k1 *PR×{k2 *AR(≒k2 mNPV)} ・・・式(c)
lnMBP=ln(k1 *PR×k2 *AR)
=lnPR+lnAR+lnk1 *k2 ・・・式(d)
なお、式(e)においても、上記式(i)~(iii)から、CO0 ≒k3 PR0 、TPR0 ≒k4 *AR0 (≒k4 mNPV0 )とする。
lnMBP0 =ln(k3 *PR0 ×k4 *AR0 )
=lnPR0 +lnAR0 +lnk3 *k4 ・・・式(e)
ln(MBP/MBP0 )=ln(PR/PR0 )+ln(AR/AR0 )
MBP/MBP0 =PR/PR0 ×AR/AR0 ・・・式(f)
従って、収縮期血圧(SBP)は下記式(1-2)、拡張期血圧(DBP)は下記式(1-3)により表される。
生体の末梢部位において、光電容積信号を測定することにより脈拍数(PR)及び末梢血管抵抗(AR)を得る測定ステップと、
予め取得した、平均血圧(MBP0 )、収縮期血圧(SBP0 )及び拡張期血圧(DBP0 )からなる群から選ばれるいずれかの血圧(BP0 )、脈拍数(PR0 )並びに末梢血管抵抗(AR0 )と、前記測定ステップで得られた脈拍数(PR)及び末梢血管抵抗(AR)とを用い、下記式(1)により、前記血圧(BP0 )に対応する血圧(BP)を算出する演算ステップとを
コンピュータに実行させるための血圧推定プログラムが提供される。
また、前記発光素子として緑色光を照射する発光素子を用いる場合において、前記発光素子は、携帯端末に内蔵されたLEDライトであり、前記受光素子は、携帯端末に内蔵されたカメラであることが好ましい。
さらに、前記携帯端末は、スマートフォン、タブレット又はウェアラブルデバイスであることが好ましい。
生体の末梢部位において、光電容積信号を測定することにより脈拍数(PR)及び末梢血管抵抗(AR)を得る測定部と、
予め取得した、平均血圧(MBP0 )、収縮期血圧(SBP0 )及び拡張期血圧(DBP0 )からなる群から選ばれるいずれかの血圧(BP0 )、脈拍数(PR0 )並びに末梢血管抵抗(AR0 )と、前記測定部で得られた脈拍数(PR)及び末梢血管抵抗(AR)とを用い、上記式(1)により、前記血圧(BP0 )に対応する血圧(BP)を算出する演算部とを
有する血圧推定装置が提供される。
生体の末梢部位において、光電容積信号を測定することにより脈拍数(PR)及び末梢血管抵抗(AR)を得る測定ステップと、
予め取得した、平均血圧(MBP0 )、収縮期血圧(SBP0 )及び拡張期血圧(DBP0 )からなる群から選ばれるいずれかの血圧(BP0 )、脈拍数(PR0 )並びに末梢血管抵抗(AR0 )と、前記測定ステップで得られた脈拍数(PR)及び末梢血管抵抗(AR)とを用い、上記式(1)により、前記血圧(BP0 )に対応する血圧(BP)を算出する演算ステップとを
有する血圧推定方法が提供される。
本発明の血圧推定方法においては、血圧(BP0 )が平均血圧(MBP0 )である場合においては、演算ステップで、平均血圧(MBP)が上記式(1-1)により算出され、血圧(BP0 )が最高血圧(SBP0 )である場合においては、演算ステップで、最高血圧(SBP)が上記式(1-2)により算出され、血圧(BP0 )が最低血圧(DBP0 )である場合においては、演算ステップで、最低血圧(DBP)が上記式(1-3)により算出される。
また、特許文献1に記載の血圧測定方法においては、心電図と光電容積脈波を測定するための特別な大型の装置が必要であるが、本発明においては、スマートフォン等の携帯端末を利用すれば、特別な装置も必要なく、経時的にかつ長期間にわたって簡易に測定することができ、その上、特許文献1に記載の血圧測定方法に比べ、飛躍的に高い精度が得られる。
本発明は、カフレスで血圧を推定することが可能な血圧推定プログラムに関し、少なくとも下記ステップ(1)及び(2)をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
(1)生体の末梢部位において、光電容積信号を測定することにより脈拍数(PR)及び末梢血管抵抗(AR)を得る測定ステップ。
(2)予め取得した血圧(BP0 ;平均血圧MBP0 、最高血圧SBP0 又は最低血圧DBP0 )、脈拍数(PR0 )及び末梢血管抵抗(AR0 )と、測定ステップ(1)で得られた脈拍数(PR)及び末梢血管抵抗(AR)とを用い、上記式(1-1)~(1-3)のいずれかにより、血圧(BP0 )に対応する血圧(BP)を算出する演算ステップ。
本発明の第一の態様のプログラムは、図1に示すように、下記ステップS1~S4をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
ステップS1において、初期値を設定する。
初期値として第1の時点での、血圧(BP0 ;平均血圧MBP0 、最高血圧SBP0 又は最低血圧DBP0 )、脈拍数(PR0 )及び末梢血管抵抗(AR0 )を取得し、設定する。
なお、一般的なカフ式血圧計による測定においては、血圧として最高血圧及び最低血圧と、脈拍数とが計測(表示)され、通常、平均血圧は計測されない。そこで、平均血圧(MBP0 )は、カフ式血圧計により測定された最高血圧(SBP0 )及び最低血圧(DBP0 )の測定値を用い、下記式(2)により算出することができる。
なお、発光素子として近赤外光を発光するものを使用する場合においては、種々の公知のものが適用可能である。
また、初期値としての血圧(BP0 )、脈拍数(PR0 )及び末梢血管抵抗(AR0 )はそれぞれ同時点での値が好ましいが、必ずしも同時点であることに限定されない。
ステップS2においては、生体の末梢部位において光電容積信号の測定を行う。
ステップS2においては、具体的には、第1の時点から任意の時間が経過した第2の時点で光電容積信号の測定を行い、得られた光電容積信号から脈拍数(PR)及び末梢血管抵抗(AR)を得る。
光電容積信号の測定においては、発光素子として可視光~近赤外光を発光するものを使用することが可能であるが、体動に高い耐性を有し、高精度の光電容積信号を得ることができることを考慮すれば、発光素子として緑色光を発光するものが好ましい。
なお、発光素子として近赤外光を発光するものを使用する場合においては、種々の公知のものが適用可能である。
ステップS3においては、血圧の推定値の算出を行う。
ステップS1において入力された血圧(BP0 ;平均血圧MBP0 、最高血圧SBP0 又は最低血圧DBP0 )、脈拍数(PR0 )及び末梢血管抵抗(AR0 )と、ステップS2において得られた脈拍数(PR)及び末梢血管抵抗(AR)とを用い、血圧(BP0 )に対応する(BP;平均血圧MBP、最高血圧SBP又は最低血圧DBP)を上記式(1-1)~(1-3)のいずれかにより算出し、推定値を得る。
ステップS4においては、ステップS3により算出された推定値(平均血圧MBP、最高血圧SBP又は最低血圧DBP)を出力する。出力方法としては、血圧の推定値を液晶ディスプレイ等に表示してもよいし、血圧推定値信号を外部装置に送信してもよい。
本発明の血圧推定装置は、本発明のプログラムを実行することができる装置であり、少なくとも以下の構成を有する。
(a)生体の末梢部位において、光電容積信号を測定することにより脈拍数(PR)及び末梢血管抵抗(AR)を得る測定部。
(b)予め取得した血圧(BP0 ;平均血圧MBP0 、最高血圧SBP0 又は最低血圧DBP0 )、脈拍数(PR0 )及び末梢血管抵抗(AR0 )と、測定部で得られた脈拍数(PR)及び末梢血管抵抗(AR)とを用い、上記式(1-1)~(1-3)のいずれかにより、血圧(BP0 )に対応する血圧(BP)を算出する演算部。
本発明の第一の態様の血圧推定装置10は、入力部1と、測定部2と、制御部3、記憶部4及び演算部5を含む処理部6と、表示部7とを備える。
入力部1は、初期値(血圧(BP0 )、脈拍数(PR0 )及び末梢血管抵抗(AR0 ))を設定するための操作デバイスである。
測定部2は、発光素子及び受光素子を備え、光電容積信号から脈拍数(PR)及び末梢血管抵抗(AR)を得るための測定デバイスである。測定部2を構成する発光素子は、可視光~近赤外光を発光するものが適用可能であるが、緑色光を発光するものが好ましい。
制御部3は、CPU等から構成される演算・制御デバイスである。
記憶部4は、RAM、ROM等から構成される記憶デバイスである。記憶部4には、本発明に係るプログラムが格納されている。
演算部5は、入力部1から取得した初期値と測定部2から得られた値とから、血圧(BP)を算出する。記憶部4によって格納されている本発明に係るプログラムが制御部3によって実行されることにより、演算部5の機能が実現される。
表示部7は、液晶ディスプレイ等の表示デバイスである。
さらに、血圧推定装置10としては、測定部2が、腕時計、例えばベッド、椅子、浴槽、便座等の家庭用調度に組み込まれる構成とすることができる。このような構成により、利用者が意図しなくても、経時的にかつ長期間にわたって簡易に血圧推定を行うことができる。
(1)初期値の設定
健康な70代の男性を対象に約1カ月間(23日間)にわたって実験を行った。
まず、上腕式カフ振動法血圧計「DSK-1051」(ニッセイ社製)を用いて、左手上腕部における最高血圧及び最低血圧の測定を行った。得られた値を初期値(最高血圧SBP0 及び最低血圧DBP0 )とした。また、初期値としての平均血圧MBP0 は、得られた最高血圧SBP0 及び最低血圧DBP0 を用い、上記式(2)により算出した。
カフ振動法血圧計の測定と同時に、アプリケーション「iPhysioMeter(登録商標)」がインストールされた「iPhone(登録商標) 7」(アップル社製)を用いて、左手第二指指尖腹部における光電容積信号の測定を行い、この光電容積信号から脈拍数及び修正規準化脈波容積(末梢血管抵抗)を得た。得られた値を初期値(脈拍数PR0 及び末梢血管抵抗AR0 )とした。
少なくとも1日に1回以上任意の時間に、アプリケーション「iPhysioMeter(登録商標)」がインストールされた「iPhone(登録商標) 7」(アップル社製)を用いて、左手第二指指尖腹部における光電容積信号の測定を行った。この光電容積信号から脈拍数PR及び修正規準化脈波容積(末梢血管抵抗AR)を得た。
上記(2)で得られた脈拍数PR及び末梢血管抵抗ARと、上記(1)で取得した血圧BP0 (平均血圧MBP0 、最高血圧SBP0 又は最低血圧DBP0 )、脈拍数PR0 及び末梢血管抵抗AR0 とを用い、上記式(1-1)~(1-3)のいずれかにより、血圧BP0 に対応する血圧BPを算出し、これらを推定値(平均血圧MBPe 、最高血圧SBPe 又は最低血圧DBPe )とした。
上記(2)の光電容積信号の測定と同時に、上腕式カフ振動法血圧計「DSK-1051」(ニッセイ社製)を用いて、左手上腕部における最高血圧及び最低血圧の測定を行って、評価用の実測値(最高血圧SBPc 及び最低血圧DBPc )を得た。また、得られた最高血圧SBPc 及び最低血圧DBPc から上記式(2)により平均血圧MBPc を算出した。
結果を図4~6に示す。
図4(a)は、最高血圧の実測値SBPc (実線)及び推定値SBPe (破線)の経時変化を示すグラフであり、図4(b)は、平均血圧の実測値MBPc (実線)及び推定値MBPe (破線)の経時変化を示すグラフであり、図4(c)は、最低血圧の実測値DBPc (実線)及び推定値DBPe (破線)の経時変化を示すグラフである。図4の縦軸は血圧(mmHg)であり、横軸は時間である。
70代女性を対象にしたこと以外は実験例1と同様に実験を行なった。結果を図7~9に示す。
2 測定部
3 制御部
4 記憶部
5 演算部
6 処理部
7 表示部
10 血圧推定装置
Claims (9)
- 生体の末梢部位において、光電容積信号を測定することにより脈拍数(PR)及び末梢血管抵抗(AR)を得る測定ステップと、
予め取得した、平均血圧(MBP0 )、収縮期血圧(SBP0 )及び拡張期血圧(DBP0 )からなる群から選ばれるいずれかの血圧(BP0 )、脈拍数(PR0 )並びに末梢血管抵抗(AR0 )と、前記測定ステップで得られた脈拍数(PR)及び末梢血管抵抗(AR)とを用い、下記式(1)により、前記血圧(BP0 )に対応する血圧(BP)を算出する演算ステップとを
コンピュータに実行させるための血圧推定プログラム。
- 前記光電容積信号は、前記末梢部位に対して近赤外光を照射する発光素子と、前記末梢部位での反射光を受光する受光素子とを用いて測定される、請求項1に記載の血圧推定プログラム。
- 前記光電容積信号は、前記末梢部位に対して緑色光を照射する発光素子と、前記末梢部位での反射光を受光する受光素子とを用いて測定される、請求項1に記載の血圧推定プログラム。
- 前記発光素子は、携帯端末に内蔵されたLEDライトであり、
前記受光素子は、携帯端末に内蔵されたカメラである、請求項3に記載の血圧推定プログラム。 - 前記携帯端末は、スマートフォン、タブレット又はウェアラブルデバイスである、請求項4に記載の血圧推定プログラム。
- 前記末梢部位が、指尖部、手首又は大腿である、請求項1~5のいずれか一項に記載の血圧推定プログラム。
- 前記血圧(BP0 )、前記脈拍数(PR0 )及び前記末梢血管抵抗(AR0 )が、撮影画像を読み取ることにより取得される、請求項1~6のいずれか一項に記載の血圧推定プログラム。
- 生体の末梢部位において、光電容積信号を測定することにより脈拍数(PR)及び末梢血管抵抗(AR)を得る測定部と、
予め取得した、平均血圧(MBP0 )、収縮期血圧(SBP0 )及び拡張期血圧(DBP0 )からなる群から選ばれるいずれかの血圧(BP0 )、脈拍数(PR0 )並びに末梢血管抵抗(AR0 )と、前記測定部で得られた脈拍数(PR)及び末梢血管抵抗(AR)とを用い、下記式(1)により、前記血圧(BP0 )に対応する血圧(BP)を算出する演算部とを
有する血圧推定装置。
- 前記測定部が家庭用調度に組み込まれる、請求項8に記載の血圧推定装置。
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