JP7071724B2 - 骨配向化用薬剤組成物、及び骨疾患治療薬 - Google Patents

骨配向化用薬剤組成物、及び骨疾患治療薬 Download PDF

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Description

本発明は、骨配向化用薬剤組成物、及び骨疾患治療薬に関し、特に、骨配向を実現可能な骨配向化用薬剤組成物、及び骨疾患治療薬に関する。
超高齢社会を迎えた国々において、骨力学機能を回復させるための骨配向化促進薬剤の開発が求められている。現状では、骨量・骨密度回復を促す薬剤のみが骨粗鬆症や骨軟化症などの骨疾患治療薬として使用されている。
例えば、β型インターフェロンを有効成分とする骨疾患治療薬が知られている(特許文献1)。
特願平9-507459号公報
しかしながら、上述の特許文献を含め従来技術においては、骨量・骨密度回復を促す薬剤のみに着目するか、原因は不明ではあるが、相対的に骨形成促進作用が認められるものを骨粗鬆症や骨軟化症などの骨疾患治療薬として使用されているのが現状である。
しかしながら、近年の研究によれば、骨本来の配向化構造(アパタイト/コラーゲン配向化講造)の回復が骨機能化には必須であることが判明してきており、もはや既存の骨疾患治療薬では骨機能回復を促すことは難しく、骨配向化の概念に基づく、全く新しい骨疾患治療薬の開発が必須である。骨配向性は骨量・骨密度と独立した骨質パラメータであり、骨芽細胞(OB)配列化により一方向に配向化した骨を形成する。しかしながら、どのように骨配向化が制御されているのかこれまで詳細は不明である。したがって、骨配向化のメカニズムが解明され、骨配向化を自在に実現可能な組成物の開発が望まれる。
そこで、本発明は、より健全な骨再生を実現可能な骨配向化用薬剤組成物を提供することにある。
上記目的を達成するために、発明者らは、骨芽細胞の骨配向化を担う可溶性因子について鋭意研究した結果、本発明の骨配向化用薬剤組成物を見出すに至った。
すなわち、本発明の骨配向化用薬剤組成物は、CXCR3受容体タンパク質に作用するアゴニストを有効成分として含有する骨配向化用薬剤組成物であって、前記アゴニストは、CXCL9、10、又は11からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
また、本発明の硬組織代替材料の製造方法は、幹細胞から骨芽細胞を誘導する工程と、請求項1又は2に記載の組成物と前記誘導された骨芽細胞とを、硬組織代替材料の一部に適用する工程と、前記組成物の作用によって、前記硬組織代替材料に適用された骨芽細胞を配向化する工程とからなることを特徴とする。
また、本発明の硬組織代替材料の製造方法の好ましい実施態様において、前記組成物中のアゴニストの濃度は、1 pg/mL~100 ng/mLであることを特徴とする。
また、本発明の硬組織代替材料の製造方法の好ましい実施態様において、硬組織代替材料は、金属、炭素繊維強化複合材、高分子複合材、又はセラミックス複合材であることを特徴とする。
また、本発明の骨配向化用治療薬は、本発明の骨配向化用薬剤組成物を含有することを特徴とする。
本発明の骨配向化用薬剤組成物によれば、これまでの骨疾患治療薬では達成できない骨配向性を有する健全な骨再生が可能となるという有利な効果を奏する。
図1は、WT(野生型)およびSrc-/-マウス(大理石骨症を呈する遺伝子組み換え型)に由来する骨芽細胞の配向化の様子を示す。図1(a)、(b)は、(a)WTおよび(b)Src-/- 骨芽細胞における基質コラーゲン配向に沿った骨芽細胞配列化の可視化を示す。スケールバー:100μm。図1(c)、(d)は、(c)WTおよび(d)Src-/- 骨芽細胞の細胞角度分布を示す。図1(e)は、細胞配向度F2Dは、細胞角度に基づいて算出した結果を示す。図1(f)は、WT対Src-/- 骨芽細胞(n = 5)におけるF2Dの定量解析結果を示す。 図2は、破骨細胞は、可溶性因子を介して骨芽細胞配列化を促進することを示す図である。図2Aは、骨配向化微小環境を模倣する異方性共培養システムを示す図である。図2Bにおいて、(a-d)は、WT破骨細胞またはSrc-/- 破骨細胞と共培養したWTまたはSrc-/- 骨芽細胞配列の可視化を示す図である。(e-h)は、基板コラーゲン配向に沿った骨芽細胞の配向角度分布を示す図である。スケールバー:100μm。また、図2Cは、各群における細胞配列度の定量化(n = 5)を示す図である。*:P <0.05。 図3は、Src-/- 破骨細胞と比較して、WT破骨細胞において有意に発現上昇する5つの可溶性因子の同定した結果を示す図である。図3Aは、Src欠損破骨細胞のマイクロアレイ解析を示し、(a)は、WTおよびSrc-/- 破骨細胞の遺伝子発現レベルの散布図を示し、(b)は、Src遺伝子による遺伝子発現変化のベン図を示す。数字は、WT破骨細胞において高度に発現される遺伝子(左)、変化しない(中)、またはSrc-/- 破骨細胞において高度に発現される遺伝子(右)をそれぞれ示す。図3A(c)は、WTおよびSrc欠損破骨細胞の遺伝子発現レベルのヒートマップを示す。WT / Src-/- > 1.5(高発現を有する分泌因子をヒートマップにおいて視覚化したものである。また、図3Bは、同定された5因子のmRNAレベルをRT-PCR(n = 5)によって決定した様子を示す。**:P <0.01。 データは、平均±S.Dとして表される。 図4は、CXCL10 / CXCR3シグナル伝達は、骨芽細胞配列化を促進することを示す図である。図4(a)は、同定された因子に個々にまたはすべて一緒に曝露された骨芽細胞配列度の定量化(n = 5)を示す。図4(b)は、CXCR3アンタゴニストAMG 487の有無による骨芽細胞配列度の定量化を示す。*:P <0.05、**:P <0.01。 データは、平均±S.Dとして表される。 図5は、CXCL10 / CXCR3シグナル伝達は、骨基質の配向化を促進することを示す図である。図5(a)は、石灰化誘導培地において、CXCL10に4週間継続的に曝露して培養した様子を示す。図5(b)は、骨基質異方性を微小領域XRDで解析した様子を示す。図5(c)は、CXCL10処理骨芽細胞における、アパタイト配向性の定量化したものを示す。*:P <0.05。 データは、平均±S.Dとして表される。 図6は、CXCL9、10、及び11 (各200pg/mL)添加による骨芽細胞配列変化を示す図である。 図7は、細胞毒性試験(濃度依存性)を示す図である。図7(a)は、CXCL9の場合、図7(b)は、CXCL10の場合、図7(c)は、CXCL11の場合をそれぞれ示す。**:P <0.01、*:P <0.05。 図8は、骨芽細胞配向化のCXCL10濃度依存性を示す図である。*:P <0.05。
本発明の骨配向化用薬剤組成物は、CXCR3受容体タンパク質に作用するアゴニストを有効成分として含有することを特徴とする。CXCR3受容体タンパク質とは、詳細には、骨芽細胞の細胞膜上のCXCR3受容体タンパク質を意味することができる。本発明においては、CXCR3受容体タンパク質には、CXCR3の変異体CXCR3A, CXCR3-altおよびCXCR3B受容体タンパク質も含むことができる。本発明者らによれば、骨芽細胞の細胞膜上のCXCR3受容体タンパク質に、アゴニストが結合することにより、コンフォメーション変化が生じ、骨配向化の指令がなされ、実際に骨配向化を達成するメカニズムを見出したものである。
また、本発明の骨配向化用薬剤組成物の好ましい実施態様において、前記アゴニストは、骨芽細胞に作用し、その配向化を促進するという観点から、CXCL4、9、10、又は11からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。CXCL4、9、10、又は11などのアゴニストは、配向因子としての役割を有することが判明し、これらのアゴニストがCXCR3受容体タンパク質に結合することにより、骨芽細胞を配列化させ、異方性骨組織を形成することができ、ひいてはより健全な骨形成を実現可能となる。
また、本発明の硬組織代替材料の製造方法は、幹細胞から骨芽細胞を誘導する工程と、上述の本発明の骨配向化用薬剤組成物と前記誘導された骨芽細胞とを、硬組織代替材料の一部に適用する工程と、前記組成物の作用によって、前記硬組織代替材料に適用された骨芽細胞を配向化する工程とからなることを特徴とする。生体外で配向化人工骨を作製する場合の態様である。この場合、患者iPSやMSCなどの幹細胞から骨芽細胞誘導し、コラーゲンや金属(無機と有機どちらもあり得る)の(2次元or3次元)足場材料(硬組織代替材料)で、CXCL10等添加しつつ培養することで、高配向化人工骨を作製することができる。幹細胞から骨芽細胞を誘導する方法については、常法によることができ、特に限定されない。本発明の骨配向化用薬剤組成物については上述の説明を参照することができる。本発明の配向化用薬剤組成物と、前記誘導された骨芽細胞とを、硬組織代替材料の一部に適用する工程において、硬組織代替材料としては特に限定されず、既存のものを適宜用いることができる。
好ましい実施態様において、硬組織代替材料は、金属、炭素繊維強化複合材、高分子複合材、又はセラミックス複合材等とすることができる。硬組織代替材料としては、配向性を有するリン酸カルシウム系物質を含有してもよい。本発明に適用可能な硬組織代替材料としては、セラミックス、アルミナ等の無機材料、ステンレス鋼、Co-Cr合金、チタン合金等の金属材料を挙げることができる。セラミックスは、さらに、生体活性セラミックス、生体不活性セラミックス等に分けることができる。生体セラミックスとしては、リン酸カルシウム系セラミックス、シリカ系ガラス及び結晶化ガラスなどが挙げられる。リン酸カルシウム系セラミックスとしては、ヒドロキシアパタイト(HAp)、リン酸三カルシウムが良く知られており、これらは、人工歯根、皮膚端子、金属コーティング材、歯科用骨補填材などに使われている。本発明は、これらの硬組織代替材料を利用することができる。
また、本発明の硬組織代替材料の製造方法の好ましい実施態様において、前記組成物中のアゴニストの濃度は、好ましくは1 pg/mL~100 ng/mLであり、より好ましくは、50 pg/mL~2ng/mLであり、さらに好ましくは、100 pg/mL~500 pg/mLとすることできる。本願発明は、ケモカインCXCL4、CXCL9、10及び11の受容体がCXCR3、又はCXCR3の変異体CXCR3A, CXCR3-alt, CXCR3Bであり、このシグナル伝達が細胞・骨配向化を実現することを見出したものであり、本願発明の組成物の使用方法の一例としては、濃度について、5 pg/ml~200 pg/mlのCXCL4、CXCL9 、CXCL10及び/又はCXCL11を骨芽細胞培地中に添加、もしくは骨組織培養(応力負荷モデルを含む)培地中に添加することにより骨配向を実現することができる。
骨配向は、単に骨治癒に付随する効果ではなく、骨力学機能を担保するために必須であり、その回復を実現するような薬剤はこれまで報告例がない。
また、本発明の骨疾患治療薬は、本発明の骨配向化用薬剤組成物を含有することを特徴とする。骨配向化用薬剤組成物については、上述した本発明の骨配向化用薬剤組成物における説明を参照することができる。このような本発明の骨配向化用薬剤組成物を使用した本発明の骨疾患治療薬は、骨粗鬆症、腫瘍関連、骨折、骨軟化症、くる病、大理石骨病、又は骨Paget病を含む代謝性骨疾患などの骨疾患の予防、治療を行うことが可能であり、また、歯科インプラント適用時の骨配向化にも有効である。
下記の実施例で確認されたように、本発明の骨疾患治療薬の有効成分である組成物、ひいては、CXCR3受容体タンパク質に作用するアゴニストは、骨芽細胞を配列化させる配列因子としての役割を有する。
本発明の骨疾患治療薬は、静脈投与、皮下投与、又は筋肉内投与などの、非経口投与が可能である。骨の該当箇所へリクルートする必要があるので、実際にはハイドロゲルなどを使用して徐放するのが望ましい。ただし、上述のように、iPSなど使用して、CXCL10を添加して生体外で配向化人工骨を作製し、埋入する方法でも有効とすることができる。すなわち、本発明の組成物及び骨疾患治療薬の利用方法として、非経口投与・徐放投与・生体外での作用で生体材料埋入のパターンなどを挙げることができる。
本発明の骨疾患治療薬の投与量としては、患者の状態に応じて適宜判断される。例えば、マウスで100ng~10ug/投与(腫瘍内など)とすることができ、体重から単純換算でも、ヒトで250ug~25mg/投与程度とすることができる。
本発明において、静脈投与、皮下投与、又は筋肉内投与などの場合、クエン酸緩衝液又は酢酸緩衝液等の弱酸性の緩衝液、またはリン酸緩衝液等の中性緩衝液に溶解して投与することができる。なお、本発明の骨疾患治療薬には、医薬品として容認し得る担体や医薬添加物を含むことができる。例えば、水、生理食塩水、グルコース、リンゲル液、ゼラチンなどの溶液を含むことができる。また、安定化剤、抗酸化剤、抗菌剤、等張化剤、保存剤等も、医薬品として容認し得る限り、本発明の骨疾患治療薬に含めることができる。
このように、本発明は、従来の骨疾患治療薬では達成し得ない骨配向化を、細胞配列化促進により発現させることで、細胞・骨配向化を促進する物質の同定に関する。骨健全化のためには従来の骨疾患治療指標である骨量・ 骨密度回復だけでは不充分である点に着自し、骨配向化を促進する物質を見出した点において革新性がある。
ここで、本発明の一実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であることは言うまでもない。
実施例1
骨組織における特徴的な異方性微細構造は、生体内外の環境に応じた骨系細胞の分子レベルでの協調的な情報伝達により構築・制御される。造血幹細胞を起源とする破骨細胞分化系譜は種々のサイトカイン、転写因子等によりその分化過程が制御されている。なかでも、分化系譜上流で機能するM-CSF遺伝子、および下流で機能するc-src遺伝子を欠損したマウスにおいては、活性化破骨細胞不在により髄腔内にも骨髄骨が充填した大理石骨症を呈し、野生型(WT)と比較して、その皮質部は顕著な骨配向性低下を示すことを明らかにしてきた。本実施例では、分化段階の異なる破骨細胞との相互作用を介した骨芽細胞配列化に着目し、骨芽細胞配列化制御因子を同定することにより遺伝子レベルから骨系細胞間クロストークによる骨配向化機構の解明を目指した。
本発明では、骨配向性が異常低下する大理石骨症モデルマウスを用いて、骨芽細胞配列化、ひいては骨配向化を促進する物質の同定に成功した。破骨細胞(OC)異常により骨吸収不全を引き起こす遺伝子組み換えマウス、または自然発生型遺伝子変異マウスの破骨細胞に比較して、正常マウス破骨細胞で発現上昇する遺伝子をマイクロアレイにより同定し、さらには可溶性タンパクであり骨芽細胞へと作用する物質を同定した。今回同定した物質であるケモカインCXCL4、9、10、11は、骨芽細胞における受容体 CXCR3と結合することで、細胞配列・骨配向化を促進することを定量的に見出した。
<実験方法>
まず、実験方法について説明すれば以下の通りである。
<配向コラーゲン基板の作製>
配向したコラーゲン基板は、流体力学的押出法(Kirkwood, J. E. & Fuller, G. G. Liquid crystalline collagen: A self-assembled morphology for the orientation of mammalian cells. Langmuir 25, 3200-3206 (2009).)を用いて作製した。ラット尾部コラーゲンI型は、0.02N酢酸中に10mg / mLの濃度で調製した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS、10×濃度)へのコラーゲン沈着のプロセスは、コラーゲン分子フィブリルの速度および方向を調節することができる3軸ロボットアーム(SM300-3A; Musashi Engineering、Tokyo、Japan) 。ロボットアームの走査速度は400mm / sに設定した。
<異方性共培養系>
初代頭蓋冠骨芽細胞をWT(野生型)およびSrc-/- マウス(大理石骨症を呈する遺伝子組み換え型)から単離した。簡潔には、成体マウス由来の頭蓋冠を無菌条件下で切除し、氷冷したα-MEM(Invitrogen、Carlsbad、CA)に入れ、次いで骨周囲の線維組織を静かに除去した。縫合線を取り除き、残りの骨を細かく切り刻んだ。この断片をコラゲナーゼ(Wako、Osaka、Japan)で2回インキュベートし、トリプシン(Nacalai Tesque、Kyoto、Japan)で37℃にて30分間処理した。骨片を10%ウシ胎仔血清(FBS)を含むα-MEMですすぎ、培養皿に移した。培地は週に3回交換した。骨片からの遊走した細胞をトリプシン処理し、配向したコラーゲン基質上に播種した。全ての動物実験は、大阪大学動物実験委員会により承認された。
WTおよびSrc-/-マウスから単離された脾臓を小片に切断し、すりつぶし、次いで細胞の懸濁液を100μmメッシュ(BD Biosciences、San Jose、CA)で濾過した。脾臓細胞懸濁液を600rpmで5分間遠心分離し、得られたペレットを細胞培養用の10%ウシ胎仔血清(FBS)を含むα-MEMに再懸濁した。得られた前駆体を5×106 cells/ mLで播種した。 M-CSF(10ng / ml; Peprotech)およびRANKL(10ng / ml; R and D System)を含む培地で3日、7日目に培地を交換した。
新規な異方性骨芽細胞 - 破骨細胞共培養システムは、1μmの孔を有するポリエチレンテレフタレートメンブレンでできた細胞培養インサート(BD Biosciences)と人工的に制御された配向コラーゲン基板の組み合わせにより確立した。初代破骨細胞をインサートの上部コンパートメントで培養した。初代骨芽細胞を、1.25×10 4細胞/ cm 2の密度で、各インサートの下部区画の配向コラーゲン基質上で培養した。
<蛍光イメージング>
3日間培養した後、細胞を30分間1%正常ヤギ血清(NGS; Invitrogen)を含むPBS-0.05%Triton X-100(PBST)中でインキュベートし、非特異的抗体結合部位をブロックした。次いで細胞をビンクリン(Sigma-Aldrich)に対するマウスモノクローナル抗体と共に4℃で12時間インキュベートした。この工程の後に、Alexa Fluor 546結合抗マウスIgG(Molecular Probes、Invitrogen)およびAlexa Fluor 488結合体化ファロイジン(Molecular Probes、Invitrogen)とのインキュベーションを行った。最後に、細胞をPBSTで洗浄し、DAPI(Molecular Probes、Invitrogen)を含むProlong Gold退色防止試薬に入れた。蛍光顕微鏡(Biozero、Keyence、Osaka、Japan)を用いて蛍光画像を取得し、Adobe Photoshop 10.0ソフトウェアを用いて処理した。
<細胞配向性>
初代骨芽細胞を新生マウスの頭蓋冠から単離した。簡単に説明すると、新生児C57BL / 6マウスの頭蓋冠を無菌条件下で切除し、氷冷α-MEM(Invitrogen、Carlsbad、CA)に入れ、骨周囲の線維組織を静かに除去した。次いで、頭蓋冠を一連のコラゲナーゼ/トリプシン(コラゲナーゼ:和光、大阪、日本;トリプシン:ナカライテスク、京都、日本)を37℃で15分間消化した。最初の2つの消化物を捨て、上清3,4および5をα-MEMで中和し、プールし、200-μmのメッシュ(BD Biosciences、San Jose、CA)を用いて濾過した。濾液を遠心分離し、得られたペレットを細胞培養用の10%ウシ胎仔血清(FBS)を含有するα-MEMに再懸濁した。次いで、細胞を1.25×104細胞/ cm 2に希釈し、作製した標本に播種した。
蛍光顕微鏡(Biozero、Keyence、Osaka、Japan)を用いて細胞の蛍光染色画像を撮影することにより、骨芽細胞の配向を基板コラーゲン配向と比較して調べた。細胞の向きは、Cell Profilerソフトウェア(Broad Institute、Cambridge、MA)を用いて定量的に分析した。細胞の配向のレベルを定量的に評価するために、以下の式(1)(Umeno, A., Kotani, H., Iwasaka, M. & Ueno, S. Quantification of adherent cell orientation and morphology under strong magnetic fields. IEEE Trans. Magn. 37, 2909-2911 (2001).)を用いて細胞配列の程度F2Dを決定した。
F2D = 2 {(cos2θ)-1/2} (1)
<マイクロアレイ分析およびリアルタイムRT-PCR>
TRIzol Reagent(Invitrogen Life Technology、Inc.、USA)を用いて全RNAを破骨細胞から抽出し、NucleoSpin(Takara Bio、Shiga、Japan)を用いて製造者のプロトコールに従って精製した。品質チェックのために、RNA純度および完全性を、Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies、USA)によって評価した。 cDNAの断片化および標識化は、Affymetrix GeneChip発現分析マニュアルに従って実施した。次いで、得られたサンプルを、Affymetrix GeneChip Mouse Gene 2.0 STアレイにハイブリダイズさせた。アレイは、製造業者の仕様に従ってスキャンされ処理された。
遺伝子発現プロファイリングは、リアルタイムRT-PCRシステム(Step One RT-PCR; Applied Biosystems、CA、USA)によって決定した。遺伝子発現の相対的変化は、ΔΔCt法を用いて計算した。プライマーおよびプローブを、以下のように、標的遺伝子についてのTaqman遺伝子発現アッセイを用いた:Cxcl9; Mm00434946_m1、Cxcl10; Mm00445235_m1、Npy; Mm03048253_m1、Rbp4; Mm00803264_g1、Sfrp5; m01194236_m1。
<同定されたクラストカインによる骨芽細胞刺激>
培養骨芽細胞に対して、同定された配向化制御候補因子すべてまとめて、または個別に添加した。ELISAアッセイに基づいて、最終濃度 5 pg/ml のCXCL9(Peprotech)、200pg / mlのCXCL10(Peprotech)、2ng / mlのNPY(Phoenix Pharmaceuticals)、20ng / mlのSFRP5(R&D systems)、500pg / mlのRBP4(R&D systems)を添加した。 CXCR3のブロッキングのために、細胞を1μMの中和抗体AMG 487(TOCRIS)に曝露した。
<骨基質配向性の解析>
初代骨芽細胞を、配向コラーゲン基板上で1.25×104細胞/ cm2の密度で培養した。培地を週2回交換し、7日間培養した後、最終濃度50μg/ mLのアスコルビン酸(Sigma、St. Louis、MO)、10mMのβ-グリセロホスフェート(Tokyo Kasei 、Tokyo、Japan)および50nMのデキサメタゾン(MP Bioscience、Solon、OH)を含む石灰化誘導培地に交換し、週2回の培地交換を行った。CXCL10添加群では、同時に最終濃度200pg / mlのCXCL10を添加した。
アパタイト結晶の配向は、微小領域X線回折システム(R-Axis BQ; Rigaku、Japan)によって分析した。測定条件は、管電圧50 kV、管電流90 mA、照射時間1800 sとした。入射ビームは、直径300μmのコリメータを用いて照射した。試験片を最初に10%ホルムアルデヒド中で固定し、次いで測定および分析に供した。アパタイトc軸の優先配向性は、(002)回折ピーク対(211)ピークの相対強度比として、試料の長手方向(コラーゲン基板配向方向)に沿って測定して評価した。
<統計分析>
2群間の統計学的有意性は、スチューデントのt検定またはウェルチのt検定を用いて試験した。3群間以上においては1元配置分散分析(One-way ANOVA)およびTukey’s post hoc testを用いた。帰無仮説を棄却するためにはP <0.05の有意性が必要とした。
次いで、上述の実験方法に従って、まず、骨芽細胞自律的配列化について調べた。Srcは骨芽細胞ならびに破骨細胞において発現される。すなわち異方性骨形成における機能破綻はいずれの細胞型でも起こり得る。
図1は、WT(野生型)およびSrc-/-マウス(大理石骨症を呈する遺伝子組み換え型)に由来する骨芽細胞の配向化の様子を示す。図1(a)、(b)は、(a)WTおよび(b)Src-/- 骨芽細胞における基質コラーゲン配向に沿った骨芽細胞配列化の可視化を示す。スケールバー:100μm。図1(c)、(d)は、(c)WTおよび(d)Src-/- 骨芽細胞の細胞角度分布を示す。図1(e)は、細胞配向度F2Dは、細胞角度に基づいて算出した結果を示す。図1(f)は、WT対Src-/- 骨芽細胞(n = 5)におけるF2Dの定量解析結果を示す。
これらの結果、WT(野生型)およびSrc-/-マウス(大理石骨症を呈する遺伝子組み換え型)に由来する骨芽細胞は、基板コラーゲン配向に沿って優先的な整列を示した(図1(a)、(b))。蛍光画像を用いて細胞配向の定量的評価から得られたヒストグラムは、細胞がSrcを発現するか否かにかかわらず、基板コラーゲン配列に応答して骨芽細胞が配列化することを明らかにした(図1(c)、(d))。式(1)を用いて、細胞配列度、F2Dを定量分析した。 WTとSrc-/- 骨芽細胞の間でF2Dに有意差はなく、細胞配列度は骨芽細胞自律的Src発現に依存しないことを示した(図1(e)、(f))。これは、足場のコラーゲン分子配向に応答して、骨芽細胞の自律的配列化においてSrc発現が必要でないことを意味する。 Srcは、特にFAKのリン酸化を介して、インテグリンによって活性化される細胞内シグナル伝達カスケードにおける重要な調節分子である。 Src欠損骨芽細胞の正常な細胞配列レベルは、Srcファミリーキナーゼによる相補的作用を示している。Src欠損骨芽細胞の正常な配列化は、骨芽細胞自律的Src発現にかかわらず、骨芽細胞自律的配列化ひいては異方性骨基質構築が進行することを示す。
次に、破骨細胞形成について調べた。Src-/- 脾臓細胞は、不完全で部分的に分裂したアクチンリング様構造を有し、活性化破骨細胞へと分化することができなかったが、WT細胞は波状縁を有するTRAP陽性の活性化破骨細胞へと分化した。これらの結果は、Srcが破骨細胞のシーリングゾーンを維持するために不可欠であるという以前の報告と一致している。破骨細胞の後期マーカーであるカルシトニン受容体の遺伝子発現解析もまた、Src欠損破骨細胞における活性低下を示している。
次に、破骨細胞との共培養による骨芽細胞配列化について調べた。図2は、破骨細胞は、可溶性因子を介して骨芽細胞配列化を促進することを示す図である。図2Aは、骨配向化微小環境を模倣する異方性共培養システムを示す図である。図2Bにおいて、(a-d)は、WT破骨細胞またはSrc-/- 破骨細胞と共培養したWTまたはSrc-/- 骨芽細胞配列の可視化を示す図である。(e-h)は、基板コラーゲン配向に沿った骨芽細胞の配向角度分布を示す図である。スケールバー:100μm。また、図2Cは、 各群における細胞配列度の定量化(n = 5)を示す図である。*、P <0.05。
まず、骨配向化微小環境を模倣する異方性共培養系を確立した(図2A)。共培養は、上側(培養インサート)/下側(配向コラーゲン基板)で以下の組み合わせにて行った。 WT破骨細胞/ WT骨芽細胞、Src-/- 破骨細胞/ WT骨芽細胞、WT破骨細胞/ Src-/- 骨芽細胞、Src-/- 破骨細胞/ Src-/- 骨芽細胞である。すべての共培養群において、骨芽細胞は基本的に基板コラーゲン配向に沿って優先的な配列化を示す(図2)。 Src-/- 破骨細胞と共培養した骨芽細胞は、骨芽細胞自律的配列化と同程度の比較的低い細胞配列度を示す。一方、WT破骨細胞と共培養した骨芽細胞は、各細胞体の長軸は基板コラーゲン配向方向とほぼ平行に並んでおり、Src-/- 破骨細胞と共培養した骨芽細胞と比較して細胞配列度が有意に高い。これらの結果は、活性化破骨細胞が、可溶性因子を介して、基板異方性に応答した骨芽細胞の配列化能力を明らかに高めることを示している。
次に、骨芽細胞配列度を調節する破骨細胞由来可溶性因子について調べた。図3は、Src-/- 破骨細胞と比較して、WT破骨細胞において有意に発現上昇する5つの可溶性因子の同定した結果を示す図である。図3Aは、Src欠損破骨細胞のマイクロアレイ解析を示し、(a)は、WTおよびSrc-/- 破骨細胞の遺伝子発現レベルの散布図を示し、(b)は、Src遺伝子による遺伝子発現変化のベン図を示す。数字は、WT破骨細胞において高度に発現される遺伝子(左)、変化しない(中)、またはSrc-/- 破骨細胞において高度に発現される遺伝子(右)をそれぞれ示す。図3A(c)は、WTおよびSrc欠損破骨細胞の遺伝子発現レベルのヒートマップを示す。WT / Src-/- > 1.5(高発現を有する分泌因子をヒートマップにおいて視覚化したものである。また、図3Bは、同定された5因子のmRNAレベルをRT-PCR(n = 5)によって決定した様子を示す。**、P <0.01。 データは、平均±S.Dとして表される。
マイクロアレイ解析により、破骨細胞活性化により発現上昇する複数の遺伝子を明らかにした。これらの中で、52遺伝子の発現レベルは、WT破骨細胞において、Src-/- 破骨細胞と比較して有意に発現上昇していた(図3A(a)、(b))。本実施例では、培養インサートを通過した可溶性因子が骨芽細胞の配列化を促進した。これら遺伝子の中から、分泌性因子をコードする5つの遺伝子を同定した。 すなわち、Cxcl9、Npy、Sfrp5、Rbp4およびCxcl10である(図3A(c))。これらの因子の遺伝子発現レベルをリアルタイムRT-PCRで定量分析したところ、全ての遺伝子がSrc-/- 破骨細胞において有意に発現低下した(図3B)。
これらの結果は、同定した5つの可溶性因子が骨芽細胞の配列化を促進する候補因子であることを示している。図4は、CXCL10 / CXCR3シグナル伝達は、骨芽細胞配列化を促進することを示す図である。図4(a)は、同定された因子に個々にまたはすべて一緒に曝露された骨芽細胞配列度の定量化(n = 5)を示す。図4(b)は、CXCR3アンタゴニストAMG 487の有無による骨芽細胞配列度の定量化を示す。*、P <0.05、**、P <0.01。 データは、平均±S.Dとして表される。
これらの5因子すべてにより刺激した骨芽細胞は、対照骨芽細胞と比較して、有意に高い細胞配列度を示した(図4(a))。これら因子をそれぞれ単独で用いることにより、これらの中で、CXCL10が、細胞配列化を促進するための独占的な因子として決定された(図4(a))。さらに、CXCL10によって刺激された骨芽細胞の配列化の促進は、CXCL10受容体CXCR3をブロックすることによって有意に阻害された(図4(b))。
図5は、CXCL10 / CXCR3シグナル伝達は、骨基質の配向化を促進することを示す図である。図5(a)は、石灰化誘導培地において、CXCL10に4週間継続的に曝露して培養した様子を示す。図5(b)は、骨基質異方性を微小領域XRDで解析した様子を示す。図5(c)は、CXCL10処理骨芽細胞における、アパタイト配向性の定量化したものを示す。*、P <0.05。 データは、平均±S.Dとして表される。
この結果、CXCL10による長期間の継続的刺激により、高度に配列化した骨芽細胞が有意に高配向化骨基質を形成し、CXCL10が細胞配列化ひいては異方性骨基質構造の形成を促進することを示した(図5)。まとめると、骨芽細胞の配列化は、破骨細胞活性によって劇的に調節される。骨芽細胞のみでは、それ自体で十分な配列化を実現することはできない。骨芽細胞は活性化破骨細胞によって放出されたCXCL10等の「助け」を借りて、充分に機能的な配向化骨基質を形成するための細胞配列化を達成することが判明した。
これらの結果、従来の常識を覆し、破骨細胞―骨芽細胞カップリングによる骨結晶学的異方性制御機構を明らかにした。これまで骨系細胞のカップリングは骨量・骨密度制御に寄与するとのみ考えられてきたことから、本成果は思いがけぬ、細胞間相互作用に基づく結晶構造制御を明らかにした新発見である。さらに、人工的に制御された指向性コラーゲン基板を用いて生体模倣配向化微小環境を実現する本培養システムは、古典的培養モデルが均一培養環境のみを提供したのに対し、方向性をもった細胞挙動の分析を可能とした。本実施例では、骨芽細胞配列を制御することによって骨基質の異方性を決定する新規な破骨細胞機能を明らかにした。さらに、骨組織異方性の新規調節因子を発見した:破骨細胞によって分泌されるCXCL10は、骨芽細胞配列を制御することによって骨基質異方性の構築に必須である。
WT破骨細胞と一緒に培養された骨芽細胞は、細胞配列の有意に高いレベルを示し、骨芽細胞の自律的配列化では不十分であり、細胞外拡散因子を介した破骨細胞からの「助け」を必要とすることを示した(図2)。 WTおよびSrc欠損破骨細胞を用いたマイクロアレイ解析により、正常破骨細胞はSrc-/- 破骨細胞と比較して5つの可溶性因子において有意に高いレベルの遺伝子発現を示すことが明らかになった(図3)。同定された5因子の中で、他の因子も配向因子として十分機能するが、CXCL10は、特に、細胞配列化のための強力な寄与因子であり、さらに配向化骨マトリックス形成を誘導することが判明した(図4(a))。これは、骨基質微細構造の規則正しい配向性を制御するCXCL10の機能を示す最初の報告である。CXCL10は、インターフェロン-γ(IFNγ)によって誘導されるケモカインとして最初に同定された。Cxcl10発現レベルの変化は炎症性疾患と関連しており、免疫系におけるその機能は広く研究されている。
その特異的受容体CXCR3に対するCXCL10の結合は、CXCR3アンタゴニストで処理した骨芽細胞の配列化低下によって証明されるように、骨芽細胞の配列化を促進するのに必要である(図4(b))。
CXCL10 / CXCR3シグナル伝達は、癌浸潤、慢性関節リウマチにおける滑膜線維芽細胞浸潤を含むアクチン細胞骨格調節において重要な役割を果たすという強力な証拠がある。CXCL10 / CXCR3シグナル伝達の下流は、p38 / FAK経路を介したアクチン重合を調節する。本実施例において、CXCL10は、コラーゲンのアミノ酸配列と骨芽細胞の表面上に位置するインテグリンとの間の分子相互作用を調節することによって、細胞配列化の潜在的能力を促進した。CXCL10による継続的処理下での長期間培養は、有意に高配向化した骨基質形成を示した(図5)。これらの結果は、骨基質配向の決定要因としてのCXCL10の役割を明らかに示している。Ex vivo骨組織培養においてもCXCL10による骨配向化促進の効果が定量的に明らかになった。すなわちCXCL10は骨芽細胞の初期整列を促進するだけでなく、異方性骨基質構造のより高配向化を維持する。応用的側面として、骨組織におけるCXCL10 / CXCR3シグナル伝達を介した異方性微細構造治療は、次世代の骨治療法の到来を告げるものであり、単なる骨量回復のみならず「骨質」医療の新しい道を切り拓くと期待される。
実施例2
また、他のアゴニストである、CXCL9,10および11についても調べた。図6は、CXCL9, 10, 11 (各200pg/mL)添加による骨芽細胞配列変化を示す図である。その結果、XCL9,10および11は、CXCR3に共通して結合するリガンドであり、濃度依存性により骨芽細胞配列化を促進することが明らかになった(図6)。
実施例3
また、生体外において、配向化した人工骨の作製を試みた。患者iPSやMSCなどの幹細胞から骨芽細胞誘導し、コラーゲンや金属の足場材料(硬組織代替材料)で培養を試みた。実際には、上述の実施例に記載の要領に従って、配向因子として特定されたCXCL10を用いて、当該CXCL10を添加しつつ培養した。この結果、高配向化人工骨(硬組織代替材料)を作製することができた。すなわち、足場材料上でも、CXCL10の配向因子としての機能を達成して、骨芽細胞の配向化を達成することができた。
<細胞毒性試験>
また、アゴニストの細胞毒性試験についても調べた。図7は、細胞毒性試験(濃度依存性)を示す図である。図7(a)は、CXCL9の場合、図7(b)は、CXCL10の場合、図7(c)は、CXCL11の場合をそれぞれ示す。**:P <0.01、*:P <0.05。
<試験方法>
96 wellカルチャーディッシュに、細胞密度2.0×104 cells/mlにて100 μlずつ播種した。この際、Phenol Red free α-MEM (Gibco) を使用し、Blankとしてα-MEMのみを入れたwellも作成した。播種後48 hと72 h培養したメディウムにCell Counting Kit (DOJINDO) を10 μlずつ加え、37 °Cインキュベータ中で2 h呈色反応を行った。その後、MICROPLATE READER (MTP-300, コロナ電気株式会社) による415 nmの吸光度測定により細胞毒性評価を行った (n = 5)。それぞれ、Cxcl9,10,11が0 (ctrl)~100ng/mlの範囲での毒性を評価した。
その結果、いずれの群においても、添加濃度に依存してわずかな細胞数の増加が認められたが、ctrlに比較して有意な細胞数減少は認められず、この濃度範囲内においていずれも細胞毒性を示さないことが明らかになった。
また、図8は、骨芽細胞配向化のCXCL10濃度依存性を示す図である。*:P <0.05。
<試験方法>
上述の実施例の記載に従って、試験を行った。まず、骨芽細胞配列化に対してCXCL10濃度がどのように寄与するか検討した。Cxcl10濃度を0(ctrl)~2 ng/mLで試験を行った。
その結果、添加濃度10 pg/mlでは細胞配向度に影響しないが、100 pg/ml以上で骨芽細胞が高配列化することが明らかになった 。
以上の結果をまとめると、本発明の骨配向化用薬剤組成物によれば、従来の骨量・骨密度回復促進薬とは一線を画し、最重要骨質因子である骨配向化達成のための、細胞記列化制御に基づく骨配向化促進物質を見出し発明完成に至った。本実施例では、特にマイクロアレイによる網羅的遺伝子解析に基づき、人工的に配向性を制御した異方性コラーゲン基板に対する骨芽細胞配列度を定量的に明らかにすることで、まったく新しい骨配向化促進物質の同定に成功した。本実施例によって得られる骨配向化促進物質はこれまで見出されていない骨質制御因子であるため、骨疾患治療薬として開発することで健全な配向性を有する骨再生を達成し、これにともない特に製薬・ 医薬品産業を中心として幅広い産業・製品群に対して、大きな波及効果がある。
本発明によって得られる骨配向化用薬剤組成物はこれまで見出されていない所望の特性を、硬組織代替材料に対して実現でき、新たな市場創製し、これにともない幅広い産業、製品群に対して、大きな波及効果がある。

Claims (5)

  1. CXCR3受容体タンパク質に作用するアゴニストを有効成分として含有する骨配向化用薬剤組成物であって、前記アゴニストは、CXCL9、10、又は11からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする骨配向化用薬剤組成物。
  2. 幹細胞から骨芽細胞を誘導する工程と、請求項1記載の組成物と前記誘導された骨芽細胞とを、硬組織代替材料の一部に適用する工程と、前記組成物の作用によって、前記硬組織代替材料に適用された骨芽細胞を配向化する工程とからなることを特徴とする硬組織代替材料の製造方法。
  3. 前記組成物中のアゴニストの濃度は、1pg/mL~100 ng/mLであることを特徴とする請求項2記載の方法。
  4. 硬組織代替材料は、金属、炭素繊維強化複合材、高分子複合材、又はセラミックス複合材であることを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
  5. 請求項1記載の骨配向化用薬剤組成物を含有する骨配向化用治療薬。
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