JP7068046B2 - 地絡方向継電器、電力システム、および地絡方向継電器の角度範囲の整定方法 - Google Patents

地絡方向継電器、電力システム、および地絡方向継電器の角度範囲の整定方法 Download PDF

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Description

本願は、電力系統における地絡保護を行う、地絡方向継電器、この地絡方向継電器を備えた電力システム、およびこの地絡方向継電器の角度範囲の整定方法に関するものである。
従来より、電力会社等の配電用変電所から各需要家に対して電力供給を行う配電線路において地絡が生じた際に、この地絡を検知して地絡が生じた電線路を健全な電線路から切り離すことで、配電用変電所および他の需要家への地絡の影響を抑制する、以下のような地絡方向継電器が用いられている。
即ち、変電所用変圧器から給電される母線にフィーダを接続した高圧配電線路において、母線の零相電圧は、変電所用変圧器から接地変圧器(GPT)を通して取出される。各フィーダの零相電流は、零相変流器(ZCT)を通して取出される。地絡方向継電器は、零相電圧の正負の半波期間毎に、零相電圧と同方向に、最先に発生した零相電流を選別し、この零相電流を生じたフィーダを地絡事故線と判定する(例えば、特許文献1参照)。
特開平1-206822号公報
上記のような従来の地絡方向継電器は、零相電圧の正負の半波期間毎に、零相電圧と同方向に最先に発生した零相電流を選別している。即ち、地絡方向継電器は、地絡発生時の零相電圧に対して、地絡フィーダの零相電流が約90°進み、健全フィーダの零相電流が約90°遅れることに着目して、この零相電圧に対する各フィーダの零相電流の位相差に基づいて地絡を検知している。しかしながら、零相電圧に対する各フィーダの零相電流の進み、遅れの位相差は、地絡発生時に零相電流が流れる経路の回路構成により変化する。 そのため、地絡方向継電器が、地絡が発生した地絡フィーダにおける位相差を地絡と検知せず、この地絡フィーダにおける遮断器が不動作となったり、地絡が発生していない健全フィーダにおける位相差を地絡と検知し、この健全フィーダの遮断器を動作させるといった誤動作が生じるという課題があった。
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、各電線路における地絡の発生、不発生を確実に検知する地絡方向継電器と、この地絡方向継電器を備えた電力システムと、この地絡方向継電器の角度範囲の整定方法との提供を目的とする。
本願に開示される地絡方向継電器は、
変圧器が設置された母線から分岐される複数の電線路ごとに設けられ、前記電線路ごとに設けられた遮断器を、前記母線の零相電圧と前記電線路の零相電流との位相差に基づいて動作させる制御回路を備えた地絡方向継電器において、
前記制御回路は、
前記位相差が所定の角度範囲内となると前記遮断器を遮断するように動作させ、
前記角度範囲は、前記変圧器の回路構成に応じて整定され、
前記制御回路は、
前記位相差が、前記角度範囲内で、且つ、設定された動作時限以上継続すると前記遮断器を遮断するように動作させるものであり、
前記動作時限は、前記変圧器の回路構成に応じて整定された、
ものである。
また、本願に開示される電力システムは、
上記のように構成された地絡方向継電器と、
前記母線から分岐された複数の前記電線路ごとに設けられた前記遮断器と、
前記母線に接続される前記変圧器とを備えた、
ものである。
また、本願に開示される地絡方向継電器の角度範囲の整定方法は、
上記のように構成された電力システムにおける前記地絡方向継電器の前記角度範囲を整定する方法であって、
複数の前記電線路の内の所定の前記電線路において地絡を生じさせ、地絡を生じさせた前記所定の電線路における、前記零相電圧に対する前記零相電流の前記位相差である第1位相差と、地絡を生じさせていない前記電線路における前記零相電圧に対する前記零相電流の前記位相差である第2位相差とを算出する位相差算出工程を、前記変圧器の回路構成ごとに行い、
前記変圧器の回路構成ごとの、前記第1位相差あるいは前記第2位相差の少なくとも一方に基づいて、前記変圧器の回路構成に応じた前記角度範囲を整定する、
ものである。
本願に開示される地絡方向継電器によれば、確実に各電線路における地絡の発生、不発生を検知できるため、各電線路の遮断器を適切に動作できる。
また、本願に開示される電力システムによれば、各電線路の遮断器を適切に動作させることができるため、安定した電力系統の運用が可能となる。
また、本願に開示される地絡方向継電器の角度範囲の整定方法によれば、適切な角度範囲を整定できるため、地絡方向継電器が確実に各電線路の地絡の発生、不発生を検知できる。
実施の形態1による地絡方向継電器を備えた電力システムの概略構成を示すブロック図である。 実施の形態1による地絡方向継電器の動作特性となる設定値を示す図である。 実施の形態1による地絡方向継電器を備えた電力システムの概略構成を示すブロック図である。 実施の形態1による抵抗接地系の電力システムに於いて零相電流が流れる向きを示した図である。 実施の形態1による非接地系の電力システムに於いて零相電流が流れる向きを示した図である。 実施の形態1による地絡方向継電器の感度角を整定する実験的根拠を得ることを目的とした人工間欠地絡試験の抵抗接地系の電力系統図である。 実施の形態1による地絡方向継電器の感度角を整定する実験的根拠を得ることを目的とした人工間欠地絡試験の非接地系の電力系統図である。 フィーダ6のケーブル長と断面積とによる対地静電容量関係を示す図である。 実施の形態1による人工間欠地絡試験における試験条件を示す図である。 実施の形態1による地絡方向継電器の動作特性を決定する各設定値を示す図である。 実施の形態1による人工間欠地絡試験の結果を示す図である。 実施の形態1による人工間欠地絡試験の結果を示す図である。 実施の形態1による人工間欠地絡試験の結果を示す図である。 実施の形態1による人工間欠地絡試験の結果を示す図である。 実施の形態1による人工間欠地絡試験の電力系統図である。 実施の形態1による人工間欠地絡試験の電力系統図である。 実施の形態1による人工間欠地絡試験の結果を示す図である。 実施の形態1による人工間欠地絡試験の結果を示す図である。 実施の形態1による人工間欠地絡試験の結果を示す図である。 実施の形態1による人工間欠地絡試験の結果を示す図である。 実施の形態1による人工間欠地絡試験の結果を示す図である。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による地絡方向継電器20(20a、20b)を備えた電力システム100aの概略構成を示すブロック図である。
図1に示す電力システム100aは、6.6kVあるいは3.3kVで電力を各需要家に対して供給する高圧電力系統であり、配電用変電所等において設置される配電用変圧器1と、この配電用変圧器1に接続されて電力が供給される母線5と、この母線5に設置される変圧器10aと、この母線5から分岐されて各需要家に対して電力を供給する3相3線の電線路としてのフィーダ6(6a、6b)と、このフィーダ6ごとに設けられた遮断器2a、2bと、このフィーダ6ごとに設けられて各フィーダ6を流れる零相電流I0を検出するZCT(Zero-phase-sequence Current Transformer)3a、3bと、フィーダ6ごとに設けられて、各フィーダ6に設けられた遮断器2a、2bを動作させる地絡方向継電器20a、20bとを備える。
フィーダ6a、フィーダ6bに設けられる地絡方向継電器20a、20bは、それぞれ同じ構成であり、区別する必要が無いときは地絡方向継電器20と称す。遮断器2a、2b、ZCT3a、3bについても同様であり、区別する必要がない場合は、遮断器2、ZCT3と称す。
ここで、一般的に、高圧電力系統の接地方式として、接地形計器用変圧器(Earthed Voltage Transformer、以下EVTと称す)および接地変圧器(Grounding Transformer、以下GTRと称す)を使用した抵抗接地系と、EVTのみを使用した非接地系とがある。
図1に示す電力システム100aに於いて、母線5に設置される変圧器10aは、EVT11と接地抵抗13を有するGTR12とを用い、それぞれが母線5に接続された回路構成である。従って、電力システム100aの接地方式は抵抗接地系である。
母線5に接続されるEVT11は、母線5の零相電圧V0を検出し、検出した母線5の零相電圧V0の値を地絡方向継電器20a、20bに対して出力する。
また、フィーダ6aに設けられたZCT3aは、フィーダ6aに流れる零相電流I0を検出し、同一のフィーダ6aに設けられた地絡方向継電器20aに対して検出した零相電流I0の値を出力する。同様に、フィーダ6bに設けられたZCT3bは、フィーダ6bに流れる零相電流I0を検出し、同一のフィーダ6bに設けられた地絡方向継電器20bに対して検出した零相電流I0の値を出力する。
地絡方向継電器20は、制御回路21を備えており、この制御回路21は、EVT11によって検出された母線5の零相電圧V0と、ZCT3により検出されたフィーダ6を流れる零相電流I0との位相差θに基づいて、同一のフィーダ6に設けられた遮断器2を動作させる。
より詳しくは、地絡方向継電器20の制御回路21は、検出された零相電流I0が設定値以上となり、検出された母線5の零相電圧V0が設定値以上となると、この零相電圧V0に対する零相電流I0の位相差θを演算する。そして制御回路21は、演算された位相差θが設定された角度範囲内となり、且つ、この角度範囲内の位相差θが設定された動作時限以上継続すると、このフィーダ6に於いて地絡が生じたと判定し、同一のフィーダ6に設けられた遮断器2を遮断するように動作させる。
図2は、実施の形態1による地絡方向継電器20の動作特性となる上記設定値を示す図である。
図2に示す地絡方向継電器20の各設定値は、制御回路21が有する格納部としてのメモリ23に設定される。図2に示すように、メモリ23には、上記角度範囲としての感度角が複数設定可能であり、ここでは、遅れ10°から進み110°までの第1感度角(第1角度範囲)と、遅れ45°から進み135°までの第2感度角(第2角度範囲)との、2つの感度角が設定される。そして、第1感度角(遅れ10°から進み110°)と、第2感度角(遅れ45°から進み135°)とに対してそれぞれ、動作時限の設定値と、零相電圧V0の設定値と、零相電流I0の設定値とが対応付けて設定される。
このように地絡方向継電器20は、複数の感度角が設定可能に構成されたものであり、地絡方向継電器20を設置する際に於いて、いずれの感度角で動作させるかが選択される。また、この第1感度角、第2感度角の値は、それぞれ電力システムの接地方式(母線5に設置される変圧器10aの回路構成)に応じて予め決定されたものである。そして、理由は後述するが、地絡方向継電器20が図1に示すような抵抗接地系の電力システム100aに設置される場合では、感度角として、遅れ10°から進み110°までの第1感度角が選択される。
また本実施の形態では、図2に示すように、第2感度角(遅れ45°から進み135°)に対応付けられた動作時限(0.5s)は、第1感度角(遅れ10°から進み110°)に対応付けられた動作時限(0.3s)より長く設定された構成となっている。
先述のように、地絡方向継電器20が、抵抗接地系の電力システム100aに設置される場合、遅れ10°から進み110°までの第1感度角が選択される。そして、地絡方向継電器20は、この第1感度角に対応する動作時限、零相電圧、零相電流の設定値に基づいて動作する。こうして、地絡方向継電器20の制御回路21は、検出された零相電流I0が0.1A以上となり、検出された母線5の零相電圧V0が2.5V以上となると、この零相電圧V0に対する零相電流I0の位相差θを演算する。そして制御回路21は、演算された位相差θが第1感度角の遅れ10°から進み110°の範囲内となり、且つ、この第1角度の範囲内の位相差θが0.3s以上継続すると、このフィーダ6に於いて地絡が生じたと判定し、同一のフィーダ6に設けられた遮断器2を遮断するように動作させる。
図3は、実施の形態1による地絡方向継電器20を備えた電力システム100bの概略構成を示すブロック図である。
図3に示す電力システム100bは、図1に示した電力システム100aと、電力系統の接地方式が異なり、母線5に設置される変圧器10aは、EVT11のみが母線5に接続された回路構成である。従って、電力システム100bの接地方式は非接地系である。
地絡方向継電器20の感度角は、電力系統の接地方式が非接地系である場合、遅れ45°から進み135°までの第2感度角が設定される。
以下、地絡方向継電器20が、零相電圧V0に対する零相電流I0の位相差θに基づいて、地絡が生じていない健全フィーダ6では遮断器2を動作させず、地絡が生じたフィーダ6では遮断器2を動作させる原理について図を用いて説明する。
図4は、実施の形態1による抵抗接地系の電力システム100aに於いて、特定のフィーダ6aで間欠地絡が発生した際に零相電流I0が流れる向きを示した図である。
図5は、実施の形態1による非接地系の電力システム100bに於いて、特定のフィーダ6aで間欠地絡が発生した際に零相電流I0が流れる向きを示した図である。
フィーダ6aのある地点Tに於いて間欠地絡が発生した場合、地絡地点Tにおける地絡電流は、系統各部の静電容量と、変圧器10a(10b)とを介して、地絡地点Tに戻るように流れる。このとき、図4、図5に示すように、間欠地絡が発生している地絡フィーダ6aと、間欠地絡が発生していない健全フィーダ6bとでは、零相電流I0の流れる方向、すなわち位相が異なる。
零相電圧V0の値は、母線5に設置されたEVT11から、フィーダ6a、6bに設けられた地絡方向継電器20a、20bに対して出力されるため、地絡方向継電器20a、20bが受信する零相電圧V0の値は等しい。一方、零相電流I0の値は、フィーダ6a、6bに設けられたZCT3a、3bから、同一のフィーダに設けられた地絡方向継電器20a、20bに対してそれぞれ出力されるため、地絡方向継電器20a、20bが受信する零相電流I0の値はそれぞれ異なる。
よって、地絡フィーダ6aに設けられた地絡方向継電器20aと、健全フィーダ6bに設けられた地絡方向継電器20bとがそれぞれ演算する、零相電圧V0に対する零相電流I0の位相差θは異なる。この特徴を利用し、地絡フィーダ6aでは地絡を検出し、健全フィーダ6bでは地絡を検出しないことを目的とした、零相電圧V0に対する零相電流I0の位相差θに対する感度角の整定を行っている。
前述した第1感度角(遅れ10°から進み110°)は、電力系統の接地方式が抵抗接地系である場合に、地絡フィーダでは地絡を検出し、健全フィーダでは地絡を検出しない範囲に整定された角度範囲である。また、第2感度角(遅れ45°から進み135°)は、電力系統の接地方式が非接地系である場合に、地絡フィーダでは地絡を検出し、健全フィーダでは地絡を検出しない範囲に整定された角度範囲である。
以下、電力系統の接地方式に応じて、地絡方向継電器20に於いて用いる感度角として、第1感度角(遅れ10°から進み110°)と、第2感度角(遅れ45°から進み135°)とを使い分けることで、地絡方向継電器20が確実に各フィーダ6に於ける地絡の発生、不発生を検知できることを人工間欠地絡試験のデータを用いて示す。
この人工間欠地絡試験は、特定のフィーダに於いて模擬的に間欠地絡を発生させる地絡発生模擬回路を形成することで行う。
図6は、実施の形態1による地絡方向継電器の感度角を整定する実験的根拠を得ることを目的とした人工間欠地絡試験の抵抗接地系の電力系統図である。
図7は、実施の形態1による地絡方向継電器の感度角を整定する実験的根拠を得ることを目的とした人工間欠地絡試験の非接地系の電力系統図である。
図8は、フィーダ6のケーブル長と断面積とに対応する対地静電容量を示す図である。
図9は、実施の形態1による人工間欠地絡試験における試験条件を示す図である。
図10は、実施の形態1による地絡方向継電器20b1、20b2の動作特性を決定する各設定値を示す図である。
図6、図7に示すように、フィーダ6aに於いて、地絡を発生させるための地絡発生模擬回路(TEST CIRCUIT)7を形成する。よって、図6に示す抵抗接地系の電力系統、図7に示す非接地系の電力系統のいずれに於いても、フィーダ6aが、地絡が生じる地絡フィーダ6aとなり、フィーダ6bが、地絡が生じない健全フィーダ6bとなる。
また、健全フィーダ6bにのみ、ZCT3b1、3b2と、地絡方向継電器20b1、20b2とが設置される。地絡方向継電器20b1の感度角には、第2感度角(遅れ45°から進み135°)が設定され、地絡方向継電器20b2の感度角には、第1感度角(遅れ10°から進み110°)が設定されている。
また、地絡フィーダ6aと健全フィーダ6bとに、それぞれ遮断器2a、2bが設置される。また、地絡方向継電器20b1、20b2は、健全フィーダ6bの遮断器2bに接続されている。
以上の構成により、抵抗接地系の電力系統および非接地系の電力系統の健全フィーダ6bに設置された、第1感度角(遅れ10°~進み110°)が設定された地絡方向継電器20b2と、第2感度角(遅れ45°~進み135°)が設定された地絡方向継電器20b1の、双方の動作を確認する。
ここで、人工間欠地絡試験を行うに当たり、零相電圧V0に対する零相電流I0の位相差θに影響する条件の1つとなる、健全フィーダ6bに於ける対地静電容量を決定するための、ケーブル長と断面積に対する対地静電容量を図8に示す。この図8の表によれば、例えば、CVケーブル(cross-linked polyethylene insulated vinyl sheath cable)の断面積が200sqで、ケーブル長が3.7kmであれば、対地静電容量は2.5μFになる。
よって、健全フィーダ6bに対地間コンデンサ8を接続し、この対地間コンデンサ8の静電容量を、図8の表に示すように、0.5μF~3.0μFまで変化させることで、実際の電力系統におけるケーブル長、断面積に対応させた試験を行うことができる。
次に、先述のCVケーブルを使用した電力系統を想定し、人工間欠地絡試験を行う試験条件を図9に示す。また、地絡方向継電器20b1、20b2の動作特性を決定する設定値を、図10に示す。
先述のように、地絡方向継電器20b1には、第2感度角(遅れ45°から進み135°)が設定されており、この感度角で動作時限を0.3sec、0.5sec、0.8secまで変化させて試験を行う。このように、地絡方向継電器20b1に於いて動作時限を0.3sec、0.5sec、0.8secと変化させた試験条件をそれぞれ整定番号1、2、3とおく。
また、地絡方向継電器20b2には、第1感度角(遅れ10°から進み110°)が設定されており、この感度角で動作時限を0.3sec、0.5sec、0.8secまで変化させて試験を行う。このように、地絡方向継電器20b2に於いて動作時限を0.3sec、0.5sec、0.8secと変化させた試験条件をそれぞれ整定番号4、5、6とおく。
以上の試験条件で、整定番号1~6に於いて、さらに対地間コンデンサ8の対地静電容量を0.5μF~3.0μFまで変化させて、地絡フィーダ6aに地絡を生じさせる人工間欠地絡試験をそれぞれ5回づつ行う。
先ず、図6に示す抵抗接地系の電力系統を用いて人工間欠地絡試験を行った結果を以下図11に示す。
図11は、図6に示す抵抗接地系の電力系統を用いて人工間欠地絡試験を行った、健全フィーダ6bに設けられた地絡方向継電器20b1、20b2の動作を示す図である。
図11に於いて、A-1~A-20は、試験番号を示す。
また、「○」は地絡方向継電器20b1、20b2が遮断器2bを動作させなかった(適切動作)、「×」は地絡方向継電器20b1、20b2が遮断器2bを遮断するように動作させた(不適切動作)を示す。
図11に示す結果から、抵抗接地系の電力系統に於いて、感度角が第2感度角(遅れ45°~進み135°)に設定された地絡方向継電器20b1が、遮断器2bを動作させたケースが多く、感度角が第1感度角(遅れ10°~進み110°)に設定された地絡方向継電器20b2は、遮断器2bを動作させていないことが判る。
先述のように、地絡が生じていない健全フィーダに於いて遮断器が動作(不適切動作)すると、安定した電力提供の阻害要因となる。
図11に示した試験結果に基づき、本願に於いて防止することを目的としていた、健全フィーダにおける地絡方向継電器の不適切動作の原因を究明するために、試験番号A-2の条件に於いて、図6に示す電力系統の健全フィーダ6bにおける零相電圧V0と零相電流I0とを検出してソフトウェア解析を行った。
図12は、試験番号A-2の条件に於いて、健全フィーダ6bにおける、零相電圧V0に対する零相電流I0の位相差(第2位相差θ2)の時間的変化を、ソフトウェア解析により算出する位相差算出工程を行った結果を示す図である。
図12から、抵抗接地系の電力系統では、間欠地絡発生時に健全フィーダ6bにおける零相電圧V0に対する零相電流I0の位相差(第2位相差θ2)が、遅れ10°から遅れ30°の領域に集中していることが判る。
そのため、感度角を第2感度角(遅れ45°~進み135°)に整定していた地絡方向継電器20b1は、整定番号1~3に於いて、試験60回中51回、遮断器2bを動作させていた。一方、感度角を第1感度角(遅れ10°~進み110°)に整定していた地絡方向継電器20b2は、整定番号4~6に於いて、試験60回中60回、遮断器2bを動作させておらず、適切動作している事が判る。
次に、同様の試験条件にて、図7に示す非接地系の電力系統を用いて人工間欠地絡試験を行った、健全フィーダ6bに設けられた地絡方向継電器20b1、20b2の動作結果を図13に示す。
図13は、図7に示す非接地系の電力系統を用いて人工間欠地絡試験を行った、健全フィーダ6bに設けられた地絡方向継電器20b1、20b2の動作を示す図である。
図13に於いて、B-1~B-20は、試験番号を示す。
図13に示す結果から、非接地系の電力系統に於いて、感度角が第2感度角(遅れ45°から進み135°)に設定された地絡方向継電器20b1は、ほとんどの場合で遮断器2bを動作させていない(適切動作)していたが、試験番号B-11、B-12に於いて遮断器2bを動作(不適切動作)させていた(60回中2回が不適切動作)。
図13に示した試験結果に基づき、試験番号B-11の条件に於いて、図7に示す電力系統の健全フィーダ6bにおける零相電圧V0と零相電流I0とを検出してソフトウェア解析を行った。
図14は、試験番号B-11の条件に於いて、健全フィーダ6bにおける、零相電圧V0に対する零相電流I0の位相差(第2位相差θ2)の時間的変化を、ソフトウェア解析により算出する位相差算出工程を行った結果を示す図である。
図14から、非接地系の電力系統では、間欠地絡発生時に健全フィーダ6bにおける零相電圧V0に対する零相電流I0の位相差(第2位相差θ2)が、遅れ15°から遅れ55°の領域に集中していることが判る。
地絡方向継電器20b1が不適切動作していたのは、動作時限を0.3secとしていた整定番号1の場合だけであり、図14に示す通り、間欠地絡発生から3.9秒経過時までに、位相差が遅れ45°~15°の範囲内で0.3秒以上継続した場合があったため、地絡と判定した。しかしながら、実運用上では図5のように地絡フィーダにも地絡方向継電器を設けており、3.9秒経過前に地絡フィーダに設けられた地絡方向継電器にて先に地絡を検出して遮断を行うため、運用上問題はない。
なお、試験番号B-12についても上記と同様であり、地絡方向継電器が動作時限を0.3secとしていため、不適切動作となっている。
なお、感度角を遅れ10°~進み110°の第1感度角に整定した地絡方向継電器20b2については、整定番号4~6に於いて、遮断器20bを動作させていない(適切動作)していた(60回中60回が適切動作)。
また、この実験結果により、静電容量を0.5μFから3.0μFまで変化させたとしても、地絡方向継電器20の動作に変化は生じていない。よって、零相電圧V0に対する零相電流I0の位相差θは、電力系統の接地方式による影響が支配的であり、静電容量に関する影響は限定的であることが判る。
以上、健全フィーダ6bに設置した、第1感度角(遅れ10°~進み110°)が設定された地絡方向継電器20b2と、第2感度角(遅れ45°~進み135°)が設定された地絡方向継電器20b1の、双方の動作を確認した。
以下、地絡フィーダ6aに設置した、第1感度角(遅れ10°~進み110°)が設定された地絡方向継電器20a2と、第2感度角(遅れ45°~進み135°)が設定された地絡方向継電器20a1の、双方の動作を確認する。
図15は、地絡方向継電器の感度角を整定する実験的根拠を得ることを目的とした人工間欠地絡試験の抵抗接地系の電力系統図である。
図16は、地絡方向継電器の感度角を整定する実験的根拠を得ることを目的とした人工間欠地絡試験の非接地系の電力系統図である。
図17は、地絡方向継電器20a1、20a2の動作特性を決定する各設定値を示す図である。
図15、図16に示すように、フィーダ6aに於いて、地絡を発生させるための地絡発生模擬回路(TEST CIRCUIT)7を形成する。
また、地絡フィーダ6aにのみ、ZCT3a1、3a2と、地絡方向継電器20a1、20a2とが設置される。地絡方向継電器20a1の感度角には、第2感度角(遅れ45°から進み135°)が設定され、地絡方向継電器20a2の感度角には、第1感度角(遅れ10°~進み110°)が設定されている。
また、地絡フィーダ6aと健全フィーダ6bとに、それぞれ遮断器2a、2bが設置される。また、地絡方向継電器20a1、20a2は、地絡フィーダ6aの遮断器2aに接続されている。
前述したように、地絡方向継電器20a1には、第2感度角(遅れ45°から進み135°)が設定されており、この感度角で動作時限を0.8secとして試験を行う。この試験条件を整定番号7とおく。
また、地絡方向継電器20a2には、第1感度角(遅れ10°から進み110°)が設定されており、この感度角で動作時限を0.8secとして試験を行う。この試験条件を整定番号8とおく。
以上の試験条件で、整定番号7、8に於いて対地間コンデンサ8の対地静電容量を0.5μF~3.0μFまで変化させて、地絡フィーダ6aに地絡を生じさせる人工間欠地絡試験をそれぞれ5回づつ行う。
先ず、図15に示す抵抗接地系の電力系統を用いて人工間欠地絡試験を行った結果を以下図18に示す。
図18は、図15に示す抵抗接地系の電力系統を用いて人工間欠地絡試験を行った、地絡フィーダ6aに設けられた地絡方向継電器20a1、20a2の動作を示す図である。
図18に於いて、C-1~C-20は、試験番号を示す。
また、「○」は地絡方向継電器20a1、20a2が遮断器2aを遮断するように動作させた(適切動作)、「×」は地絡方向継電器20a1、20a2が遮断器2aを動作させなかった(不適切動作)を示す。
先述のように、地絡が生じている地絡フィーダに於いて遮断器が不作動(不適切動作)であると、母線および健全フィーダから地絡フィーダを切り離しできない。そのため、配電用変電所および他の需要家へ影響が生じ、安定した電力提供の阻害要因となる。
図18に示した試験結果に基づき、本願に於いて防止することを目的としていた、地絡フィーダにおける地絡方向継電器の不適切動作の原因を究明するために、試験番号C-11の条件に於いて、図15に示す電力系統の地絡フィーダ6aにおける零相電圧V0と零相電流I0とを検出した。そして、地絡フィーダ6aにおける、零相電圧V0に対する零相電流I0の位相差(第1位相差θ1)の時間的変化を、ソフトウェア解析により算出する位相差算出工程を行った。
図示は行わないが、このソフトウェア解析の結果、非接地系の電力系統では、間欠地絡発生時に地絡フィーダ6aにおける零相電圧V0に対する零相電流I0の位相差(第1位相差θ1)が、進み105°よりも早い領域に集中していることが判った。
前述したように、地絡方向継電器20a1は、その感度角として、第2感度角(遅れ45°~進み135°)が設定されており、地絡方向継電器20a2は、その感度角として、第1感度角(遅れ10°~進み110°)が設定されている。よって、上記のような、進み105°より早い領域に集中している位相差は、地絡方向継電器20a1、20a2の双方の感度角範囲内となるため、遮断器2aを動作させるはずであるが、図18に示すように一部のケースで動作していない。
図19は、試験番号C-11の条件に於いて、地絡フィーダ6aにおける、零相電圧V0の時間的変化を示す図である。
図19に示すとおり、試験番号C-11では間欠地絡が発生しているものの、地絡方向継電器20a1、20a2に設定された動作時限0.8秒より短い時間だけ発生していた。したがって、間欠地絡が発生しているものの、地絡方向継電器20a1、20b1が動作せず、不適切動作だと思われていた結果は、正しくは適切動作であった。
他の「×」となった試験番号についても同様に解析した結果、試験番号C-1~C-20に於いて、地絡方向継電器20a1、20a2は、全て適切動作していた。
次に、同様の試験条件にて、図16に示す非接地系の電力系統を用いて人工間欠地絡試験を行った、地絡フィーダ6aに設けられた地絡方向継電器20a1、20a2の動作結果を図20に示す。
図20は、図16に示す非接地系の電力系統を用いて人工間欠地絡試験を行った、地絡フィーダ6aに設けられた地絡方向継電器20a1、20a2の動作を示す図である。
図20に於いて、D-1~D-20は、試験番号を示す。
図20に示す結果から、非接地系の電力系統に於いて、感度角が第2感度角(遅れ45°~進み135°)に設定された地絡方向継電器20a1は、ほとんどの試験条件に於いて、遮断器2bを動作させている(適切動作)。
図示は行わないが、試験番号D-16は、地絡方向継電器20b1の動作時限0.8秒より短い時間だけしか間欠地絡事故が発生していないことが判った。よって、不適切動作と思われていた地絡方向継電器20a1の試験番号D-16は、正しくは適切動作であり、第2感度角に設定された地絡方向継電器20a1は、整定番号7の全ての試験条件に於いて遮断器2bを動作させている(適切動作)。
一方、感度角が第1感度角(遅れ10°~進み110°)に設定された地絡方向継電器20a2は、遮断器2aを動作させていない(不適切動作)しているケースが多いことが判る。
図20に示した試験結果に基づき、試験番号D-11の条件に於いて、図16に示す電力系統の地絡フィーダ6aにおける零相電圧V0と零相電流I0とを検出してソフトウェア解析を行った。
図21は、試験番号D-11の条件に於いて、地絡フィーダ6aにおける、零相電圧V0に対する零相電流I0の位相差(第1位相差θ1)の時間的変化を、ソフトウェア解析により算出する位相差算出工程を行った結果を示す図である。
図21から、非接地系の電力系統では、間欠地絡発生時に地絡フィーダ6aにおける零相電圧V0に対する零相電流I0の位相差(第1位相差θ1)が、進み90°から進み140°の領域に集中していることが判る。
感度角を第1感度角(遅れ10°~進み110°)に整定していた地絡方向継電器20a2は、整定番号8に於いて、検出される位相差θの80%以上がその感度角に含まれていなかったため、試験20回中4回、遮断器2aを動作させていない不適切動作であった。
以上の試験結果から、地絡方向継電器20の感度角を、遅れθX°から進みθY°までの角度範囲とした場合の、上記遅れθX°、進みθY°の整定方法について説明する。
先ず、上記進みθY°は、地絡フィーダ6aに於いて検出された第1位相差θ1の最大値±所定の第1値A°よりも大きい値に整定するとよい。
例えば、図21に示した非接地系の電力系統の場合では、上記進みθY°は、第1位相差θ1の最大値±所定の第1値A°(140°-10°=130°)よりも大きい値(135°)に整定する。
また図示は行わなかったが、抵抗接地系の電力系統の場合では、第1位相差θ1は、進み105°より早い領域に収束する。よって、上記進みθYは、第1位相差θ1の最大値±所定の第1値A°(105°+4°=109°)よりも大きい値(110°)に整定する。
これにより、地絡フィーダ6aにおける零相電圧V0に対する零相電流I0の位相差θが感度角の範囲内となるため、この位相差θをほぼ確実に検知できる。ここで、上記所定の第1値A°は、第1位相差θ1の最大変動幅、時間経過による収束領域、等を考慮して決定するとよく、ここでは、非接地系の電力系統の場合の上記第1値A(10°)は、第1位相差θ1の最大値(90°)と最小値(140)との差である最大振幅差(50°)の20%以下の値としている。
次に、上記遅れθX°は、健全フィーダ6bに於いて検出された第2位相差θ2の最小値から所定の第3値C°分、大きい値に整定するとよい。そして動作時限は、この所定の第3値C°に基づいて、その長さを整定するとよい。
例えば、図14に示した非接地系の電力系統の場合では、上記遅れθX°は、第2位相差θ2の最小値から所定の第3値C°分大きい値(-55°+10°=-45°)に整定する。
ここで、上記所定の第3値C°は、第2位相差θ2の最大変動幅、時間経過による収束領域、等を考慮して決定するとよく、ここでは、上記第3値C(10°)は、第2位相差θ2の最大値(-15°)と最小値(-55°)との差である最大振幅差(40°)の30%以下の値としている。
またあるいは、上記遅れθX°は、健全フィーダ6bに於いて検出された第2位相差θ2の最大値±所定の第2値Bよりも大きい値としてもよい。
例えば、図12に示した抵抗接地系の電力系統の場合では、上記遅れθX°は、第2位相差θ2の最大値±所定の第2値B(-15°-6°)よりも大きい値(-10)°と整定する。ここで、上記所定の第2値B°は、第2位相差θ2の最大変動幅、時間経過による収束領域、等を考慮して決定するとよく、ここでは、上記第2値B(6°)は、第2位相差θ2の最大値(-5°)と最小値(-30°)との差である最大振幅差(25°)の30%以下の値としている。
以上から、抵抗接地系の電力系統の場合の感度角の遅れθX°から進みθY°は、遅れ10°から進み110°の角度範囲と整定するとよい。
また、非接地系の電力系統の感度角の遅れθX°から進みθY°は、遅れ45°から進み135°の角度範囲と整定するとよい。
また例えば、遅れθX°を、第2位相差θ2の最大値±第2値Bよりも大きい値に整定し、進みθ2°を、第1位相差θ1の最大値±第1値Aよりも大きい値に整定すると、感度角は、遅れ10°から進み135°とも整定できる。図12、図14、図21から明らかなように、この感度角は、抵抗接地系、非接地系の電力系統ごとに、同一の値となる角度範囲である。
上記のように構成された本実施の形態の地絡方向継電器によると、地絡方向継電器の制御回路21は、零相電圧V0に対する零相電流I0の位相差θが所定の感度角内となると遮断器を遮断するように動作させる。そして、制御回路に設定されたこの感度角は、地絡電流が流れる経路となる母線に設置される変圧器の回路構成に応じて整定されたものである。このように、位相差θに影響を与える変圧器の抵抗値、静電容量等の要素を含めた、母線に設置される変圧器の回路構成に基づいた感度角が設定されることで、電力系統の接地形式が異なる場合でも、確実に各フィーダにおける地絡の発生、不発生を検知できるため、各フィーダの遮断器を適切に動作できる。
よって、間欠地絡発生時、地絡フィーダの遮断器の不動作および健全フィーダの遮断器の不要な動作を防止できる。
こうして、地絡が生じたフィーダに設置される遮断器のみを確実に動作させて、地絡地点を系統から切り離すことによって、健全フィーダに於ける停電等を回避をし、健全フィーダへの連続送電が可能となる。
さらに、地絡方向継電器の制御回路は、複数の角度範囲が設定されるメモリを有する構成である。このように、電力系統の接地形式に応じた複数の感度角を設定できるため、作業性がよい。
さらに、地絡方向継電器は、電力系統の接地形式が抵抗接地系である場合、即ち、母線に設置される変圧器が、EVTとGTRとを用いた回路構成である場合では、第1感度角(遅れ10°から進み110°)が設定される。また、電力系統の接地形式が非接地系である場合、即ち、母線に設置される変圧器が、EVTのみを用いた回路構成である場合では、第2感度角(遅れ45°から進み135°)が設定される。このように変圧器の回路構成に応じて、角度範囲が整定されている。
また、母線に接地される変圧器の具体的な回路構成、即ち、零相電流が流れる電流経路に於ける具体的な抵抗値、静電容量等に応じた感度角が設定されているため、更に精度よく各フィーダにおける地絡の発生、不発生を検知できる。
また、上記のように構成された地絡方向継電器を備えた電力システムは、各フィーダの遮断器を適切に動作させることができるため、安定した電力系統の運用が可能となる。
また、地絡方向継電器の感度角は、以下のような人工間欠地絡試験に基づいて整定される。即ち、所定のフィーダに於いて地絡を生じさせ、地絡フィーダの零相電圧に対する零相電流の位相差である第1位相差θ1と、健全フィーダにおける零相電圧に対する零相電流の位相差である第2位相差θ2とを算出する位相差算出工程を、母線に設置される変圧器の回路構成ごとにソフトウェア解析により行う。そして、母線に設置される変圧器の回路構成ごとに算出された、第1位相差θ1あるいは第2位相差θ2の少なくとも一方に基づいて感度角を整定する。このように、地絡方向継電器の感度角を様々な系統にて行った試験および解析結果を根拠に、電力系統の接地方式に合った角度範囲を整定している。こうして、確実に各フィーダにおける地絡の発生、不発生を検知できる感度角の整定が可能となる。
また、人工間欠地絡試験のソフトウェア解析により得られた、地絡フィーダの第1位相差θ1と、健全フィーダに於いて得られた第2位相差θ2とに基づいて、地絡方向継電器の動作時限を設定する。これにより、さらに確実に各フィーダにおける地絡の発生、不発生を検知できる感度角の整定が可能となる。
また、地絡方向継電器の感度角(遅れθX°から進みθY°)は、人工間欠地絡試験のソフトウェア解析により得られた第1位相差θ1と第2位相差θ2とに基づいて整定される。即ち、遅れθX°は、第2位相差θ2の最大値±所定の第2値よりも大きい値、あるいは第2位相差θ2の最小値から所定の3値分大きい値に整定される。また、進みθY°は、第1位相差θ1の最大値±所定の第1値よりも大きい値に整定される。
こうして、人工間欠地絡試験のソフトウェア解析により得られる第1位相差θ1、第2位相差θ2の変動幅に基づいた感度角が整定できる。
また、人工間欠地絡試験に於いては、フィーダの対地静電容量を変化させて、対地静電容量ごとに位相差算出工程を行う。そして、抵抗接地系、非接地系のそれぞれの電力系統に於いて、対地静電容量ごとの第1位相差θ1と第2位相差θ2を算出する。こうして、抵抗接地系、非接地系のそれぞれの電力系統に於いて、対地静電容量ごとの感度角が整定される。これにより、実際のフィーダのケーブル長さ、断面積に応じた感度角の整定が可能となる。
また、人工間欠地絡試験のソフトウェア解析により得られた第1位相差θ1と第2位相差θ2とに基づいて、変圧器の回路構成ごとに同一の値となる角度範囲を整定してもよい。これにより、地絡方向継電器を各電力系統に配置する際の設定が簡易となる。
なお、上記の説明では、地絡方向継電器の制御回路に2種類の感度角が設定される例を示したが、3種類以上の感度角が設定されるものでもよい。
また、電力系統の接地方式として、抵抗接地系、非接地系を挙げたが、例えば、リアクトル接地方式でもよい。
また、第1感度角は、遅れ10°から進み110°の角度範囲とし、第2感度角は、遅れ10°から進み135°としたものを示したが、回路毎の誤差を考慮し、それぞれ、±10°のマージンを設けても良い。
なお、地絡方向継電器の動作時限は、0.3秒、0.5秒に設定したものを示したが、この数値に限定するものではなく、任意の値でよい。
本願は、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
2a,2b,2 遮断器、6a,6b フィーダ(電線路)、10a 変圧器、
20a,20b,20 地絡方向継電器、21 制御回路、23 メモリ(格納部)、
100a,100b 電力システム。

Claims (11)

  1. 変圧器が設置された母線から分岐される複数の電線路ごとに設けられ、前記電線路ごとに設けられた遮断器を、前記母線の零相電圧と前記電線路の零相電流との位相差に基づいて動作させる制御回路を備えた地絡方向継電器において、
    前記制御回路は、
    前記位相差が所定の角度範囲内となると前記遮断器を遮断するように動作させ、
    前記角度範囲は、前記変圧器の回路構成に応じて整定され
    前記制御回路は、
    前記位相差が、前記角度範囲内で、且つ、設定された動作時限以上継続すると前記遮断器を遮断するように動作させるものであり、
    前記動作時限は、前記変圧器の回路構成に応じて整定された、
    地絡方向継電器。
  2. 前記制御回路は、
    複数の前記角度範囲が設定される格納部を有し、
    前記位相差が、設定された前記複数の角度範囲の内から選択された1つの前記角度範囲内となると前記遮断器を遮断するように動作させる、
    請求項1に記載の地絡方向継電器。
  3. 前記制御回路の前記格納部は、前記複数の角度範囲として、前記零相電圧に対する前記零相電流の前記位相差が遅れ10°±10°から進み110°±10°までの第1角度範囲と、前記零相電圧に対する前記零相電流の前記位相差が遅れ45°±10°から進み135°±10°までの第2角度範囲とが設定され、
    前記変圧器が、接地形計器用変圧器と接地変圧器とを用いた回路構成であると前記第1角度範囲が選択され、
    前記変圧器が、接地形計器用変圧器のみを用いた回路構成であると前記第2角度範囲が選択される、
    請求項2に記載の地絡方向継電器。
  4. 前記複数の前記角度範囲にそれぞれ前記動作時限が対応付けて設定され、
    前記第2角度範囲に対応付けられた前記動作時限は、前記第1角度範囲に対応付けられた前記動作時限以上長く設定された、
    請求項3に記載の地絡方向継電器。
  5. 前記角度範囲は、前記変圧器の抵抗値に応じて決定された、
    請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の地絡方向継電器。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の地絡方向継電器と、
    前記母線から分岐された複数の前記電線路ごとに設けられた前記遮断器と、
    前記母線に接続される前記変圧器とを備えた、
    電力システム。
  7. 請求項6に記載の電力システムにおける前記地絡方向継電器の前記角度範囲の整定方法であって、
    複数の前記電線路の内の所定の前記電線路において地絡を生じさせ、地絡を生じさせた前記所定の電線路における、前記零相電圧に対する前記零相電流の前記位相差である第1位相差と、地絡を生じさせていない前記電線路における前記零相電圧に対する前記零相電流の前記位相差である第2位相差とを算出する位相差算出工程を、前記変圧器の回路構成ごとに行い、
    前記変圧器の回路構成ごとの、前記第1位相差あるいは前記第2位相差の少なくとも一方に基づいて、前記変圧器の回路構成に応じた前記角度範囲を整定する、
    地絡方向継電器の角度範囲の整定方法。
  8. 前記制御回路は、
    前記位相差が、前記角度範囲内で、且つ、設定された動作時限以上継続すると前記遮断器を遮断するように動作させるものであり、
    前記変圧器の回路構成ごとの、前記第1位相差あるいは前記第2位相差の少なくとも一方に基づいて、前記動作時限を整定する、
    請求項7に記載の地絡方向継電器の角度範囲の整定方法。
  9. 前記角度範囲は、遅れθX°から進みθY°までの角度範囲であり、
    前記遅れθX°は、前記第2位相差の最大値±所定の第2値よりも大きい値、あるいは前記第2位相差の最小値から所定の第3値分大きい値に整定され、
    前記進みθY°は、前記第1位相差の最大値±所定の第1値よりも大きい値に整定され、
    前記第2値および前記第3値は、前記第2位相差の最大値と最小値との差である最大振幅差の30%以下の値であり、
    前記第1値は、前記第1位相差の最大値と最小値との差である最大振幅差の20%以下の値である、
    請求項7または請求項8に記載の地絡方向継電器の角度範囲の整定方法。
  10. 各前記変圧器の回路構成において、前記電線路の対地静電容量を変化させて、対地静電容量ごとに前記位相差算出工程を行い、各前記変圧器の回路構成の前記対地静電容量ごとの前記第1位相差と前記第2位相差を算出し、
    各前記変圧器の回路構成における前記対地静電容量ごとの前記第1位相差と前記第2位相差とに基づいて、各前記変圧器の回路構成における前記対地静電容量ごとの前記角度範囲を整定する、
    請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の地絡方向継電器の角度範囲の整定方法。
  11. 前記変圧器の回路構成ごとの、前記第1位相差と前記第2位相差とに基づいて、
    前記変圧器の回路構成ごとに同一の値となる前記角度範囲を整定する、
    請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の地絡方向継電器の角度範囲の整定方法。
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