以下、実施形態の発電計画決定システム、発電計画決定方法、およびプログラムを、図面を参照して説明する。
まず、第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態の発電計画決定システム10の構成の一例を示す図である。電力系統21には、例えば、複数の発電機22(22a、22b、…)と、複数の再生可能エネルギー電源23(23a、23b、23c、23d、…)と、複数の需要家24(24a、…)とが接続される。発電機22は、例えば、火力発電、水力発電、原子力発電等を含んだ大規模発電機である。再生可能エネルギー電源23は、例えば、再生可能エネルギーである太陽光、風力等を用いて発電する発電設備である。再生可能エネルギー電源23は、太陽光発電、風力発電など小規模発電から大規模発電までを含んだ再生可能エネルギーに由来する電源であって、様々な規模で構築され得る。個々の再生可能エネルギー電源23や需要家24は、地域毎にまとめられてよく、例えば、需要家と再生可能エネルギーの地域毎の集合31(31a、31b、31c)ごとにまとめられている。この集合31のパターンは、任意に設定されてよく、図示に限られず様々なパターンで設定可能である。
また、電力系統21は、発電計画決定システム10と連携するための装置として、複数の計測装置25(25‐1、25‐2、・・・、25‐m)と、複数の制御端末装置26(26‐1、26‐2、・・・、26‐m)とを備える。mは任意の自然数である。
計測装置25は、電力系統21に含まれる各所(ブランチやノード)のそれぞれにおける系統状態を計測し、計測した系統状態を示す情報(以下、系統状態情報と記す)を、発電計画決定システム10に送信する。系統状態には、例えば、各ブランチや各ノードにおける電圧、位相、潮流、変圧器の負荷、発電機の出力などが含まれる。潮流は、電気が流れているある状態における各所の電気の流れの大きさを示す指標であって、例えば、有効電力、無効電力などの大きさで表される。
制御端末装置26は、発電計画決定システム10から受信した制御指令に基づいて、系統制御機器や発電機22(出力量等)の制御、再生可能エネルギー電源23の出力抑制などを行う。系統制御機器は、例えば、進相コンデンサ、分路リアクトル、SVC(Static Var Compensator)等を含む。
次に、発電計画決定システム10について説明する。発電計画決定システム10は、例えば、電力系統21に含まれる発電機22の発電計画を決定するシステムである。なお、発電計画決定システム10が決定する発電計画は、発電機22以外に再生可能エネルギー電源23や需要家24と再生可能エネルギーの地域毎の集合31が計画対象となっても良い。発電計画決定システム10は、計測装置25により取得された情報などに基づいて、将来時間(発電計画の単位時間)において再エネ出力の不確実な変動を考慮した上で、過渡安定度を維持しながら発電コストを最小化する発電計画を決定する。
発電計画決定システム10は、例えば、計画単位時間ごとに発電機22の発電計画を決定する。計画単位時間は、例えば30分や1時間などであるが、これに限定されない。発電計画は、例えば30分単位で1日分(24×2=48コマ)や、1時間単位で1週間分(24×7=168コマ)をなどの事例が想定されるが、これに限定されない。また、発電計画決定システム10は、一度決定した発電計画を、最新の情報を反映して更新(再計画)してもよい。例えば、1週間分の週間計画を事前に策定し、前日に翌日の予測値などの最新の情報を用いて週間計画の値を更新(前日計画)、当日に予測値等前日計画で想定した状態と乖離があれば前日計画をさらに当日変更する(当日計画)、等の再計画が考えられる。
発電計画決定システム10は、例えば、入力部11と、表示部12と、記憶部13と、処理部14とを備える。発電計画決定システム10は、一以上のプロセッサを含む。発電計画決定システム10は、単体のコンピュータ装置であってもよいし、二以上に分散化されたコンピュータ装置であってもよい。例えば、入力部11と表示部12だけがPC等の端末装置により実現され、記憶部13と、処理部14とが、端末装置とネットワークを介して接続されるサーバ装置等により実現されるものであってもよい。
入力部11は、例えば、各種キー、ボタン、ダイヤルスイッチ、マウス、表示部12と一体として形成されるタッチパネルなどのうち一部または全部を含む。また、入力部11は、外部装置と電気的に接続される接続部であってもよい。表示部12は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electroluminescence)表示装置などである。
記憶部13は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、SSDなどのフラッシュメモリ、HDDなどである。記憶部13には、例えば、再生可能エネルギー出力予測情報13A、需要予測情報13B、発電機情報13C、発電計画情報13D、想定事故ケース情報13E、系統状態情報13Fなどの情報が格納される。記憶部13は、発電計画決定システム10がネットワークを介してアクセス可能なNAS(Network Attached Storage)などの外部記憶装置であってもよい。
再生可能エネルギー出力予測情報13Aは、将来(例えば、現時点から30分後あるいは60分後)の再生可能エネルギー電源23の出力として予測される予測値に関する情報である。また、再生可能エネルギー電源23は、天候などの影響を受けて出力が変動するという不確実性を有している。再生可能エネルギー出力予測情報13Aは、不確実性を考慮して、例えば確率分布で表される不確実性情報も含む。
図2は、実施形態の再生可能エネルギー出力予測の確率分布の例を示す図である。図2のグラフにおいて、縦軸は発生確率、横軸は再生可能エネルギー出力である。図2に示されるように、再生可能エネルギー出力は、出力に変動が生じるため、何らかの確率分布を持つものとして定義される。再生可能エネルギー出力の不確実性は、例えば、出力の範囲が予測値の±σ(σ:標準偏差)の内側(68.27%)にあるものと定義することによって表される。
なお、この範囲については任意に決定することができ、例えば、再生可能エネルギー出力の範囲は、予測値の±2σや±3σの内側と定義してもよいし、標準偏差以外の指標、例えば、再生可能エネルギー電源23の容量比を用いて予測値の±10%の内側などと定義してもよい。このような不確実性を含んだ再生可能エネルギー出力予測情報13Aを、再生可能エネルギー電源23あるいは地域集合31毎に記憶部13に記憶させる。
図3は、実施形態の再生可能エネルギー出力予測情報13Aの一例を示す図である。図3に示されるように、この再生可能エネルギー出力予測情報13Aでは、エリア(地域集合31)毎に、再生可能エネルギー出力予測値と確率分布における±σに相当する値が与えられている。このような再生可能エネルギー出力予測情報13Aを用いることで、発電計画決定システム10は、不確実性によって変動が生じる再生可能エネルギー出力を含む系統状態の複数の組合せパターンに対して、将来の電力系統21の過渡安定度をロバストに維持できる最適発電計画を決定することができる。
需要予測情報13Bは、1日の各時間帯(例えば30分毎)における需要の大きさを予測した情報であり、系統運用者の経験則等から高精度に予測される。
発電機情報13Cは、発電機22に関する情報である。図4は、実施形態の発電機情報13Cの一例を示す図である。発電機情報13Cは、例えば、発電機の識別情報であるナンバーに、発電機名と、増分燃料費と、現在出力と、最大出力と、最低出力と、最大出力変化速度とを対応付けた情報である。増分燃料費は、発電機22で用いられる燃料に応じて異なる燃料費に関する情報である。最大出力変化速度は、例えば、単位時間当たりで出力を変化できるスピードを示す情報である。
発電計画情報13Dは、初期発電計画決定部14Cにより決定された発電計画や、最適発電計画決定部14Eにより決定された発電計画を含む。発電計画には、例えば、発電機22の起動・停止、発電機22の出力の増減、調相設備の投入・解列など、予め決められた電力系統21の運用計画が含まれる。
想定事故ケース情報13Eは、電力系統21において想定される予め類型化された想定事故に関する情報である。予め類型化された想定事故としては、例えば、送電線故障、母線故障、発電機故障(発電機22の故障)、変圧器故障などが代表的である。
図5は、実施形態の想定事故ケース情報13Eの内容の一例を示す図である。図5に示されように、想定事故ケース情報13Eは、例えば、各事故を識別する識別情報(例えば、事故番号)に対して、事故対象箇所と、事故様相と、電制パターンとが対応付けられた情報である。事故対象箇所は、電力系統21において事故が発生すると想定される場所である。事故対象箇所は、その場所を示す情報であって、例えば、線路番号、ノード名、ブランチ名等で表される。事故様相は、電力系統21において発生する事故の類型である。図中の「3Φ3LG」等の情報は、事故様相を表すコードである。これら事故番号、事故対応箇所、および事故様相の組み合わせを、以下、事故種別と記す。電制パターンとは、想定される事故のときに電源制限(電制)される発電機の組み合わせである。電制パターンは、例えば想定される事故ごとに、安定化効果が最大となるパターンとして予め決められているパターンである。あるいは、想定される事故ごとに、予め運用者によって決められている所定のパターンであってもよい。
系統状態情報13Fは、例えば、ノードデータとブランチデータとを含む。図6は、ノードデータの内容の一例を示す図である。図7は、ブランチデータの内容の一例を示す図である。図6に示すノードデータは、例えばノード名に対して、電圧と、位相と、発電機出力(有効電力出力、無効電力出力)と、負荷(有効電力負荷、無効電力負荷)と、調相設備の情報とが対応付けられた情報である。また、図7に示すブランチデータは、例えばブランチ名に対して、有効電力潮流と、無効電力潮流と、有効電力損失と、無効電力損失の情報とが対応付けられた情報である。また、図示はないが、ブランチのインピーダンスや回線数、ブランチがトランスの場合はタップ比率など潮流計算や過渡安定度計算に必要な情報を含んでも良い。
処理部14は、例えば、データ管理部14Aと、発電需要予測値決定部14Bと、初期発電計画決定部14Cと、出力変動パターン作成部14Dと、最適発電計画決定部14Eと、系統状態情報収集部14Fと、発電計画情報送信部14Gとを備える。これらの機能部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することで実現される。また、これらの各機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
データ管理部14Aは、例えば電力系統21の運用者により入力部11を用いて入力された情報を、記憶部13に格納する。また、データ管理部14Aは、ネットワークを介して外部装置から受信した情報を、記憶部13に格納してもよい。
発電需要予測値決定部14Bは、電力系統21における需要予測値と、再生可能エネルギー電源23により出力される電力量の予測値である再生可能エネルギー出力予測値とに基づいて、発電機22に要求される電力量の予測値である発電需要予測値を決定する。図8は、1日の単位時間帯における再生可能エネルギー出力予測値の一例を示す図である。図9は、1日の単位時間帯における需要予測値の一例を示す図である。図10は、1日の単位時間帯における発電需要予測値の一例を示す図である。発電需要予測値決定部14Bは、例えば、図9に示す需要予測値から図8に示す再生可能エネルギー出力予測値を減算することにより、図10に示す発電需要予測値を導出する。
図8は、太陽光発電出力の予測値の例である。横軸の時間幅は、発電計画決定システム10で決定される発電計画の時間幅と同等かそれより小さい方が望ましい。発電計画の時間幅より大きい場合、線形補間などで発電計画の時間幅と同じ時間幅の予測値が算出されてよい。図8では一例として太陽光発電出力の予測値を示したが、発電計画の対象以外で、発電計画の対象の発電機22が所属する系統エリアの再生可能エネルギー電源23の予測値もしくは計画値を取得し、さらに合計値が計算されてもよい。
図9は、例えば、発電計画決定システム10が発電計画の対象とする発電機が所属する系統エリアの総需要の予測値の例である。横軸の時間幅は、発電計画決定システム10で決定される発電計画の時間幅と同等かそれより小さい方が望ましい。発電計画の時間幅より大きい場合、線形補間などで発電計画の時間幅と同じ時間幅の予測値が算出されてよい。
初期発電計画決定部14Cは、発電機情報13C、系統状態情報13F、および、発電需要予測値決定部14Bにより決定された発電需要予測値に基づいて、発電機22の初期発電計画を決定する。初期発電計画は、後述する最適発電計画決定部14Eにより最終的な発電計画が決定される前段階の発電計画であって、発電計画の初期値である。そのため、初期発電計画決定部14Cは、過渡安定度ついては考慮せず、例えば種々の制約条件の下、最経済(発電計画の策定対象の発電機の発電コストを最小化)を目的関数として、計画単位時間ごとに計画対象発電機の起動停止計画(UC)と出力計画を最適化問題として決定する。制約条件には、例えば、供給予備力制約(ネット需要に対して所定割合の供給余力を確保する制約)、LFC予備力制約(各発電機が負荷周波数制御のために確保する余力の制約)、出力変化速度制約(発電機が単位時間に変化させられる出力変化速度の制約)、発電機22の出力上下限制約などが含まれる。例えば、初期発電計画決定部14Cは、以下の参考文献に示すような一般的な発電計画方法を採用可能である。参考文献:「PV大量導入を考慮した需給制御技術の開発 その2 需給計画機能とシミュレーション結果」,三菱電機,電気学会研究会資料,PE-13-48(2013年9月))。
出力変動パターン作成部14Dは、再生可能エネルギー出力予測値と発生確率が異なる変動出力予測値に基づいて、再生可能エネルギー出力予測値の出力変動パターンを作成する。変動出力予測値は、例えば、再生可能エネルギー出力予測情報13Aに含まれる出力予測値と確率分布とに基づいて出力変動パターン作成部14Dにより導出される。出力変動パターンは、再生可能エネルギー出力予測値が外れた場合の複数の潮流断面を含む。一意に与えられる再生可能エネルギー出力予測値は、あくまで発生確率が最も高いだけであり、実際は図2に示したよう再生可能エネルギー電源23の予測値は確率分布で示される。
また、出力変動パターン作成部14Dは、変動出力予測値のうち、過渡安定度の低下に影響を及ぼす可能性の高い変動出力予測値だけを抽出し、抽出した変動出力予測値に基づいて出力変動パターンを作成してもよい。つまり、出力変動パターン作成部14Dは、変動出力予測値から、過渡安定度の低下に影響を及ぼさない可能性の高い変動出力予測値を除いて、出力変動パターンを作成してもよい。過渡安定度は、電力系統21における電力供給の安定性を示す指標であって、例えば、過負荷余裕、過渡安定度余裕、電圧安定度余裕、周波数安定度余裕のうちの少なくともいずれか1つを含む。
例えば、出力変動パターン作成部14Dは、変動出力予測値に応じて予め決められている過渡安定度に関する指標に基づいて、過渡安定度に関する指標が所定の閾値未満となる変動出力予測値を抽出する。ここでいう「所定の閾値未満」とは、例えば所定の電制パターンで電制した場合に不安定となる場合や、CCT(臨界故障除去時間)が所定の時間以下となる場合等が含まれる。
具体的に説明すると、出力変動パターン作成部14Dは、再生可能エネルギー出力予測情報13Aに基づいて、まず発電計画の策定対象の発電機22が所属する系統エリアの各再生可能エネルギー電源23の予測値の確率分布を取得する。出力変動パターン作成部14Dは、取得した確率分布から、過渡安定度を担保すべき信頼区間を定義する。例えば、出力変動パターン作成部14Dは、予測値±2σを信頼区間とし、再生可能エネルギー電源の予測値(=0σ)に加えて信頼区間の両端の予測値+2σと-2σで過渡安定度を評価する。この場合、発電計画の対象の発電機が所属する系統エリアの再生可能エネルギー電源23の総数をNとすると、3N通りの潮流断面分の過渡安定度を評価する必要が生じ、計算負荷が膨大となる。そこで、例えば変電所単位など、再生可能エネルギー電源23の出力予測値を特定のエリア(発電計画の対象の発電機22が所属する系統エリア内のエリア)で合計してn個のエリアに集約したとすると、出力変動パターン作成部14Dは、3n通りの潮流断面分を過渡安定度評価すればよい(N>n)。ただし、例えばn=4とエリアを4つに集約したとしても、81パターンで過渡安定度を評価する必要があり、後述する最適発電計画決定部14Eでは発電計画の最適化処理の過程で、出力変動パターンを反映した潮流断面分の過渡安定度計算を反復するため、さらに計算負荷を低減させることが望ましい。そこで、出力変動パターン作成部14Dは、3n通りの潮流断面分から、過渡安定度が所定の閾値以下となるパターンに絞り込む。
なお、出力変動パターンの抽出において参照される過渡安定度評価は、詳細シミュレーション(微分方程式の時系列計算)を利用する手法がある。しかしこれに限られず、例えば、潮流計算結果に基づいたニューラルネットワークや回帰モデルなどの統計的な手法に基づいた過渡安定度を推定、スクリーニングする方法などであってもよい。
また、再生可能エネルギー電源23の出力変動には、発電計画の初期値との需給状況のずれ分(予測値からのずれ分)も含まれる。例えば、出力変動パターン作成部14Dは、発電計画の初期値を決定した際に参照された需給断面からのずれ分を、ガバナフリー発電機や負荷周波数制御(LFC)など、発電計画の変更以外の手段によって調整することにより、再生可能エネルギー電源23の出力変動パターン分の需給断面を作成する。
最適発電計画決定部14Eは、想定される事故に関する情報と、出力変動パターン作成部14Dにより作成された出力変動パターンとに基づいて、想定される事故後において予測される電力系統21の過渡安定度を導出し、導出された過渡安定度に基づいて、最適発電計画を決定する。最適発電計画とは、複数の出力変動パターンにおいて過渡安定度をロバストに維持できる発電計画である。
例えば、最適発電計画決定部14Eは、全ての出力変動パターンにおける過渡安定度が所定条件を満たすまで、初期発電計画を変更する処理を繰り返し、全ての出力変動パターンにおける過渡安定度が所定条件を満たす発電計画を、最適発電計画に決定する。具体的には、最適発電計画決定部14Eは、出力変動パターン分の需給断面に対して、想定する事故ケースの過渡安定度を評価し、過渡安定度に関する制約条件を満たしつつ目的関数を最小化する発電計画を、最適発電計画に決定する。目的関数には、初期発電計画の決定処理と同様に、例えば、発電コストの最小化や、発電計画の変更対象となる発電機に偏りが生じないように計画対象発電機の発電計画の変更量の一定期間内における積算値の偏りの最小化などを目的とするものが含まれる。
このようにして、最適発電計画決定部14Eは、再生可能エネルギー電源23の出力変動パターンを考慮した需給断面の中に、過渡安定度の判別結果が不安定となる断面が存在する場合は、策定した発電計画を見直す。過渡安定度の判別は、例えば事故発生時には系統安定化システムが動作する事を前提として、系統安定化システムで想定する安定化効果が最大となる電制パターンで電制した場合の過渡安定度の判別結果を採用することが考えられる。
なお、最適発電計画決定部14Eは、所定の電制パターンに基づいて、電制パターンに含まれる発電機による発電が制限された状態での過渡安定度を導出し、導出された過渡安定度に基づいて最適発電計画を決定してもよい。
また、複数の出力変動パターンにおいて過渡安定度をロバストに維持できる複数の発電計画がある場合、最適発電計画決定部14Eは、複数の発電計画の中から、複数の発電機の発電に要する発電コストが最小となる発電計画を選択し、選択した発電計画を最適発電計画に決定してもよい。こうすることにより、コスト面でもよい最適発電計画を決定することができる。
また、複数の出力変動パターンにおいて過渡安定度をロバストに維持できる複数の発電計画がある場合、最適発電計画決定部14Eは、複数の発電計画の中から、初期発電計画から変更された部分の変更量を発電機ごとに積算した一定期間における積算値の偏りが最小となる発電計画を選択し、選択した発電計画を最適発電計画に決定してもよい。こうすることにより、同じ発電機ばかりが制限される事態を防止し、公平性の観点からよい最適発電計画を決定することができる。
また、複数の出力変動パターンにおいて過渡安定度をロバストに維持できる複数の発電計画がある場合、最適発電計画決定部14Eは、複数の発電計画を表示部12に表示させ、複数の発電計画の中から、入力部11を用いて利用者により選択された発電計画を、最適発電計画に決定してもよい。
また、最適発電計画決定部14Eは、例えば、系統状態推定部141と、過渡安定度評価部142とを備える。
系統状態推定部141は、電力系統21の現在の系統状態に基づいて、電力系統21の将来の系統状態を推定する。系統状態推定部141は、現在の系統状態を示す情報を、系統状態情報収集部14Fから取得してもよく、記憶部13の系統状態情報13Fから読み出してもよい。系統状態推定部141は、将来の系統状態を推定する際、さらに、再生可能エネルギー出力予測情報13A、需要予測情報13B、初期発電計画なども参照する。また、系統状態推定部141は、再生可能エネルギー電源23の出力として予測される予測値の幅に応じて、この予測値(変動出力予測値)に基づいて複数の第2系統状態を推定してもよい。
過渡安定度評価部142は、例えば、系統状態推定部141により推定された将来の系統状態と、将来の系統状態において想定される事故(想定事故ケース情報13E)とを評価モデルに入力することにより、想定される事故後の電力系統21における過渡安定度を導出する。過渡安定度評価部142は、過渡安定度を導出する際に、さらに再生可能エネルギー出力予測情報13Aを評価モデルに入力することにより過渡安定度を導出してもよい。評価モデルは、例えば、外部の学習処理装置により生成された情報であって、記憶部13に格納されている。
系統状態情報収集部14Fは、電力系統21に設置した計測装置25から受信した系統情報に基づいて、現在の電力系統21の系統状態に関する各種の情報を収集する。系統状態情報収集部14Fは、系統状態情報13Fの一部として記憶部13に格納してもよく、処理部14に含まれる機能部に出力してもよい。系統状態は、電力系統21が現時点において供給する電力の状態であって、例えば、電力系統21内の複数箇所の電圧、位相、負荷、発電機出力、潮流の少なくともいずれかを含む。
発電計画情報送信部14Gは、最適発電計画決定部14Eで決定された最適発電計画を示す情報を、制御端末装置26に送信する。制御端末装置26は、受信した最適発電計画を、例えば中央給電指令所の発電機の出力計画情報に反映するなど、系統運用に反映させる。なお、発電計画情報送信部14Gは、入力部11を介して利用者により最適発電計画として選択された発電計画を示す情報を、制御端末装置26に送信してもよい。
図11は、発電計画決定システム10における全体的な処理の流れの一例を示すフローチャートである。
まず、処理部14は、再生可能エネルギー出力予測値を取得する(ステップS1)。例えば、再生可能エネルギー出力予測値は、入力部11を介して処理部14に入力され、データ管理部14Aにより記憶部13に格納される。次いで、処理部14は、需要予測値を取得する(ステップS2)。例えば、需要予測値は、入力部11を介して処理部14に入力され、データ管理部14Aにより記憶部13に格納される。そして、発電需要予測値決定部14Bは、ステップS1,2により取得された情報に基づいて、発電需要予測値を決定する(ステップS3)。初期発電計画決定部14Cは、発電需要予測値決定部14Bにより決定された発電需要予測値と、発電機情報13Cおよび系統状態情報13Fなどに基づいて、初期発電計画を決定する(ステップS4)。
出力変動パターン作成部14Dは、再生可能エネルギー出力予測情報13Aを参照し、変動出力予測値に基づいて、再生可能エネルギー出力予測値の出力変動パターンを作成する(ステップS5)。次いで、最適発電計画決定部14Eは、想定事故ケース情報と、出力変動パターン作成部14Dにより作成された出力変動パターンとに基づいて、想定される事故後において予測される電力系統21の過渡安定度を導出し、導出された過渡安定度に基づいて、最適発電計画を決定する(ステップS6)。なお、ステップS6の処理の詳細については、後述する。そして、発電計画情報送信部14Gは、最適発電計画決定部14Eで決定された最適発電計画を示す情報を、制御端末装置26に送信する(ステップS7)。
図12,13は、最適発電計画決定部14Eにおける処理の流れの一例を示すフローチャートである。
まず、最適発電計画決定部14Eは、例えば、出力変動パターン作成部14Dによって作成された需給断面(あるいは、潮流断面)に対して、潮流計算を実施する(ステップS101)。潮流計算とは、電力系統のトポロジー、インピーダンス情報、有効電力・無効電力負荷の指定値、発電機の電圧指定値などを入力として、電力系統上の電圧分布・潮流分布(ノードの電圧やブランチの潮流)を算出するものである。
次に、最適発電計画決定部14Eは、過渡安定度を評価する対象となる事故ケースを設定する(ステップS102)。事故ケースは、事故点、事故様相を含む。たとえば、事故点とは、A送電線における事故といった情報である。想定する事故ケースは、ユーザーが任意に決定してもよく、また例えば、過渡安定度が過酷なケースや、発生確率が所定値以上の事故ケースのみ抽出するなど、事故ケースを限定しても良い。
次に、最適発電計画決定部14Eは、電制パターンを設定するか否かを判定する(ステップS103)。例えば、電制パターンを設定するか否かは予め決められていてもよい。また、設定された想定事故ケースに対応する電制パターンが無い場合、電制パターンを設定しないと判定してもよい。
電制パターンを設定する場合、最適発電計画決定部14Eは、S102で設定した事故ケースに対して、電制パターンを設定する(ステップS104)。設定する電制パターンは、ユーザーが任意に決定しても良い。例えば、最適発電計画決定部14Eは、系統安定化システムが動作する事を前提として、系統安定化システムで想定する安定化効果が最大となる電制パターンを設定する。
次に、最適発電計画決定部14Eは、S101の潮流計算結果に基づいて、S102で設定した複数の事故条件に、S104で設定した電制パターンで電制した場合の過渡安定度を、ステップS5で作成した出力変動パターン分、評価する(ステップS105)。過渡安定度計算は、詳細シミュレーション(微分方程式の時系列計算)でもよく、また計算時間の短縮化の観点から、例えば潮流計算結果に基づいたニューラルネットワークや回帰モデルなどの統計的な手法に基づいた過渡安定度の推定方法等を適用しても良い。
次に、最適発電計画決定部14Eは、過渡安定度計算結果を基に、目的関数を計算する(ステップS106)。目的関数は、過渡安定度の制約を含む制約付目的関数とする。過渡安定度の制約に関しては、評価対象とする発電計画が安定か否かを判定し、安定でない場合は制約違反としてペナルティを課す。ペナルティは、例えば、不安定となった場合に固定ペナルティを課してもよく、また、脱調までの時間など不安定さの度合いに応じて可変ペナルティ(外点ペナルティ)としても良い。また、過渡安定度の制約に加えて、たとえば供給予備力や周波数調整余力、発電機の上下限や出力変化速度などを制約としても良い。目的関数は、発電計画の初期値の策定と同様に発電コストの最小化や、発電計画の変更対象となる発電機に偏りが生じないように計画対象発電機の発電計画の変更量の一定期間内における積算値の偏りの最小化などが考えられる。なお想定する事故条件や変動パターンが複数ある場合は、それぞれのパターンの組み合わせで過渡安定度を評価し、目的関数を計算し、最後目的関数を合算する。
一方、ステップS103において電制パターンを設定しない場合、最適発電計画決定部14Eは、設定された変動パターンごとに、過渡安定度を導出し(ステップS107)、目的関数を計算する。
次いで、最適発電計画決定部14Eは、目的関数計算後、目的関数が許容値を満たしているかを判定する(ステップS108)。許容値判定は、例えばすべての制約条件を満たしているか否かの判定や、目的関数が所定の閾値以下か否かの判定が考えられる。また、例えばすべての制約条件を満たす解が導出できたが、発電コストなどが許容値を超えており、最適化によって得られた解がユーザー所望の解ではない場合、ユーザーの意思で制約条件を緩和したり、想定する事故条件や再生可能エネルギー電源の出力変動パターンを絞り込むなどが考えられる。
ステップS108にて、目的関数が許容値でないと判定された場合、最適発電計画決定部14Eは、発電計画を調整する(ステップS109)。発電計画の調整は、S106で算出した目的関数を最小化する制約付最適化問題と考えられる。発電計画策定問題は、図14に示す連続値である発電機計画出力と離散値である起動停止状態の組み合わせである混合整数計画問題であり、例えば遺伝的アルゴリズムなどの進化的アルゴリズムを用いることで、図12,13のフローチャートの処理を反復することで発電計画を最適化する事が出来る。図14は、発電機計画出力の一例を示す図である。最適発電計画決定部14Eは、例えば、発電計画の調整として、初期発電計画決定部14Cにより決定された初期発電計画を変更する。
最適発電計画決定部14Eは、発電計画を調整後、出力変動パターン作成部14Dと同様の方法で、発電計画調整後の需給断面を作成する(ステップS110)。そして、ステップS101に戻って処理を繰り返す。
一方、ステップS108において、目的関数が許容値であると判定された場合、最適発電計画決定部14Eは、対象の発電計画を最適発電計画の候補に決定する(ステップS111)。ここで、最適発電計画決定部14Eは、目的関数が最小となる解を1つ選定しても良いし、目的関数が許容値となる候補を複数残して、後述するS113以降の処理でその中から最適発電計画を選定してもよい。そして、最適発電計画決定部14Eは、全ての処理を終了したか否かを判定する(ステップS112)。全ての処理を終了しない場合、ステップS101に戻って処理を繰り返す。
ステップS112において全ての処理を終了した場合、最適発電計画決定部14Eは、ステップS111において決定された最適発電計画の候補が1つだけか否かを判定する(ステップS113)。最適発電計画の候補が1つだけである場合、最適発電計画決定部14Eは、その候補を、最適発電計画に決定する(ステップS114)。
一方、ステップS113において、候補が1つだけでない場合、最適発電計画決定部14Eは、コスト重視であるか否かを判定する(ステップS115)。コスト重視である場合、最適発電計画決定部14Eは、複数の最適発電計画の候補の中から、複数の発電機の発電に要する発電コストが最小となる発電計画を選択し、選択した発電計画を最適発電計画に決定する(ステップS116)。
一方、ステップS115において、コスト重視でない場合、最適発電計画決定部14Eは、公平性重視であるか否かを判定する(ステップS117)。公平性重視である場合、最適発電計画決定部14Eは、複数の最適発電計画の候補の中から、初期発電計画から変更された部分の変更量を発電機ごとに積算した一定期間における積算値の偏りが最小となる発電計画を選択し、選択した発電計画を最適発電計画に決定する(ステップS118)。
なお、コスト重視であるか、公平性重視であるかは、事前に利用者により設定されている。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、複数の再生可能エネルギー電源と複数の発電機とが接続された電力系統設備における需要予測値と、前記再生可能エネルギー電源により出力される電力量の予測値である出力予測値とに基づいて、前記発電機に要求される電力量の予測値である発電需要予測値を決定する発電需要予測値決定部と、前記発電需要予測値決定部により決定された前記発電需要予測値に基づいて、前記発電機の初期発電計画を決定する初期発電計画決定部と、前記出力予測値と発生確率が互いに異なる複数の変動出力予測値に基づいて、前記出力予測値の出力変動パターンを複数作成する出力変動パターン作成部と、想定される事故に関する情報と、前記出力変動パターン作成部により作成された複数の前記出力変動パターンとに基づいて、前記想定される事故後において予測される前記電力系統設備の過渡安定度を導出し、導出された前記過渡安定度に基づいて、前記出力変動パターンにおいて前記過渡安定度を維持できる最適発電計画を決定する最適発電計画決定部と、を持つことにより、発電機の容量が減少した場合でも過渡安定度を確保可能な発電計画を決定することができる。
これにより、将来時間(発電計画の単位時間)において、再生可能エネルギー出力予測値の不確実な変動を考慮した上で、過渡安定度を維持しながら運用コストを最小化する発電計画の策定が可能となる。全ての再生可能エネルギー出力予測値の出力変動パターンに対して過渡安定度制約を満たす発電計画が探索できない場合も、目的関数を最小化することで、再生可能エネルギー電源の不確実な変動に対して過渡安定度が維持できないリスクを低減する事が可能である。
また、目的関数を、計画対象の発電機の発電計画の変更量の一定期間内における積算値の偏りの最小化とすることで、計画対象が偏ることを防止することができる。例えば、発電計画を策定する系統運用者が管轄する発電機以外の発電機に対して、計画変更を依頼する場合など、計画変更の偏りが問題となる状況で役立つと考えられる。
また、再生可能エネルギー出力予測値の不確実な変動を考慮した上で、最終的に一種類の発電計画を策定することで、実需給断面において再生可能エネルギー電源の変動に対して過渡安定度をロバストに維持できる。今後、市場を介した系統のリアルタイムの需給調整の割合が増加すると考えられ、系統運用者が潮流分布を操作する自由度は下がると考えられるため、上述した通り、予め再生可能エネルギー電源の出力変動リスクを鑑みて過渡安定度に関してロバストな1つの発電計画を策定する機能の必要性は高まると考えられる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
例えば、電力系統21には、複数の蓄電池が接続されてもよい。複数の蓄電池は、主に再生可能エネルギー電源23により発電された電力を蓄電する。この場合、発電計画決定システム10は、蓄電池のSOC(State Of Charge)を示す情報などに基づいて、最適発電計画を決定してもよい。
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、発電事業者と送配電事業者の分離を考慮して、送配電事業者が調達している調整力(電源Iや電源IIなど)の計画に対して、過渡安定度を考慮するものである。主な基本構成は、第1実施形態と重複するため、以下、異なる部分について説明する。
図15は、本実施形態の発電計画決定システム10Aの構成の一例を示す図である。第1実施形態との差分は、(1)需要予測情報13Bに代わりに小売事業者計画情報13Gを入力する点、(2)発電事業者計画情報13Hを入力する点、(3)発電計画の初期値を計画する初期発電計画決定部14Cの代わりに、調整力計画の初期値を計画する初期調整力計画決定部14Hが追加されている点、(4)最適発電計画決定部14Eの代わりに、最適調整力計画決定部14Jが追加されている点である。
小売事業者計画情報Gは、小売事業者が電力を販売する対象となる需要家に対する需要計画を示す情報である。需要計画には、再生可能エネルギー電源23により発電される電力についての計画が含まれていてもよい。
発電事業者計画情報Hは、発電事業者により決定された自身の発電計画である。発電計画には、再生可能エネルギー電源23により発電される電力についての計画が含まれていてもよい。
初期調整力計画決定部14Hは、小売事業者計画情報G、発電事業者計画情報H、発電機情報13C、および系統状態情報13Fなどに基づいて、初期調整力計画を決定する。初期調整力計画は、後述する最適調整力計画決定部14Jにより最終的な調整力計画が決定される前段階の発電計画であって、調整力計画の初期値である。初期調整力計画決定部14Hは、例えば小売事業者から提出される需要計画を全小売事業者で積み上げた合計需要計画値と、発電事業者から提出される発電計画を全発電事業者で積み上げた合計発電計画値に差がある場合、その差分を補填するような初期調整力計画を決定する。
最適調整力計画決定部14Jは、想定される事故に関する情報と、出力変動パターン作成部14Dにより作成された出力変動パターンとに基づいて、想定される事故後において予測される電力系統21の過渡安定度を導出し、導出された過渡安定度に基づいて、最適調整力計画を決定する。最適調整力計画とは、複数の出力変動パターンにおいて過渡安定度をロバストに維持できる調整力計画である。
発送電分離後の電力系統の運用では、一般に小売事業者は自身が電力を販売する対象となる需要家に対する販売計画(需要計画)を、広域機関(OCCTO)を経由して送配電事業者に提出する。また、発電事業者も同様に、自身の発電計画をOCCTOを経由して送配電事業者に提出する。計画のスパンは例えば30分毎が想定される。
なお、再生可能エネルギー電源23に関しては、小売事業者の需要計画の中に含まれる場合、発電事業者の発電計画に含まれる場合、またそれらとは別に送配電事業者がOCCTOに提出するFIT電源の買取計画に含まれる場合等が想定される。再生可能エネルギー電源23に起因する計画からのズレ分は、計画を策定する事業者がそれぞれインバランス分として清算する責務を負う。そして、どの場合においても、送配電事業者は再生可能エネルギー電源23の計画値は取得できると考えられるため、本実施形態は上述したどの場合に対しても適用可能と考える。送配電事業者は、小売事業者から提出される需要計画、発電事業者から提出される発電計画を基に、自身が確保している調整力(例えば電源I、電源IIなど)の初期計画を策定する。
調整力の初期計画を策定以降の流れは図16で説明する。図16は図11のフローチャートと基本的な構成は同じであり、主たる違いは計画対象が調整力となった点である。
図16は、発電計画決定システム10Aにおける全体的な処理の流れの一例を示すフローチャートである。
まず、処理部14は、発電事業者の発電計画情報を取得する(ステップS1’)。例えば、発電事業者の発電計画情報は、入力部11を介して処理部14に入力され、データ管理部14Aにより記憶部13に格納される。次いで、処理部14は、小売事業者の発電計画情報を取得する(ステップS2’)。例えば、小売事業者の発電計画情報は、入力部11を介して処理部14に入力され、データ管理部14Aにより記憶部13に格納される。そして、初期調整力計画決定部14Hは、発電需要予測値決定部14Bにより決定された発電需要予測値と、発電機情報13Cおよび系統状態情報13Fなどに基づいて、初期調整力計画を決定する(ステップS4’)。
出力変動パターン作成部14Dは、再生可能エネルギー出力予測情報13Aを参照し、変動出力予測値に基づいて、再生可能エネルギー出力予測値の出力変動パターンを作成する(ステップS5)。次いで、最適調整力計画決定部14Jは、想定事故ケース情報と、出力変動パターン作成部14Dにより作成された出力変動パターンとに基づいて、想定される事故後において予測される電力系統21の過渡安定度を導出し、導出された過渡安定度に基づいて、最適調整力計画を決定する(ステップS6’)。なお、ステップS6’の処理の詳細については、後述する。そして、発電計画情報送信部14Gは、最適調整力計画決定部14Jで決定された最適調整力計画を示す情報を、制御端末装置26に送信する(ステップS7’)。
図17は最適な調整力計画を作成する処理で、計画対象が調整力となった点以外の基本的な流れは図12と同じである。図18は調整力計画の候補から最適な計画を選出する処理であり、計画対象が調整力となった点と、コストの計算が調整費用に代わった点を除いて、図13と同じ処理である。
ステップS108にて、目的関数が許容値でないと判定された場合、最適調整力計画決定部14Jは、調整力計画を調整する(ステップS109’)。調整力計画の調整も、発電計画の調整と同様にして調整される。最適調整力計画決定部14Jは、例えば、調整力計画の調整として、初期調整力計画決定部14Hにより決定された初期調整力計画を変更する。
最適調整力計画決定部14Jは、調整力計画を調整後、出力変動パターン作成部14Dと同様の方法で、調整力計画調整後の需給断面を作成する(ステップS110)。そして、ステップS101に戻って処理を繰り返す。
一方、ステップS108において、目的関数が許容値であると判定された場合、最適調整力計画決定部14Jは、対象の調整力計画を最適調整力計画の候補に決定する(ステップS111’)。
ステップS112において全ての処理を終了した場合、最適調整力計画決定部14Jは、ステップS111において決定された最適調整力計画の候補が1つだけか否かを判定する(ステップS113)。最適調整力計画の候補が1つだけである場合、最適調整力計画決定部14Jは、その候補を、最適調整力計画に決定する(ステップS114’)。
一方、ステップS113において、候補が1つだけでない場合、最適調整力計画決定部14Jは、コスト重視であるか否かを判定する(ステップS115)。コスト重視である場合、最適調整力計画決定部14Jは、複数の最適調整力計画の候補の中から、複数の発電機22の発電に要する発電コストが最小となる調整力計画を選択し、選択した調整力計画を最適調整力計画に決定する(ステップS116’)。
一方、ステップS115において、コスト重視でない場合、最適調整力計画決定部14Jは、公平性重視であるか否かを判定する(ステップS117)。公平性重視である場合、最適調整力計画決定部14Jは、複数の最適調整力計画の候補の中から、初期発電計画から変更された部分の変更量を発電機ごとに積算した一定期間における積算値の偏りが最小となる調整力計画を選択し、選択した調整力計画を最適調整力計画に決定する(ステップS118’)。
なお、S106でコストを目的関数とする場合は第1実施形態と考え方が異なると考えられる。第2実施形態でのコストは調整費用であり、送配電事業者が調整力を享受した事業者(主に発電事業者)に対して調整した実績に基づいて清算するものである。例えば、上げ費用単価(V1)、下げ費用単価(V2)、起動単価(V3)などから計算される。なお、ここで計算する調整費用はあくまで策定した調整力計画通りに運用した場合にかかると想定される目算費用であり、実際の調整力費用は最終的に当日の運用後に実績を踏まえて清算する。
以上説明した第2実施形態によれば、発電機22の容量が減少した場合でも過渡安定度を確保可能な調整力計画を決定することができる。
これにより、将来時間(発電計画の単位時間)において、再生可能エネルギー出力予測値の不確実な変動を考慮した上で、過渡安定度を維持しながら調整力コストを最小化する調整力計画の策定が可能となる。全ての再生可能エネルギー出力予測値の出力変動パターンに対して過渡安定度制約を満たす発電計画が探索できない場合も、目的関数を最小化することで、再生可能エネルギー電源の不確実な変動に対して過渡安定度が維持できないリスクを低減する事が可能である。
また、目的関数を、計画対象の調整力の変更量の一定期間内における積算値の偏りの最小化とすることで、計画対象が偏ることを防止することができる。例えば、送配電事業者が確保した調整力を提供する発電事業者に対して、調整量および調整実績を公平化することができる。
また、再生可能エネルギー出力予測値の不確実な変動を考慮した上で、最終的に一種類の調整力計画を策定することで、実需給断面において再生可能エネルギー電源の変動に対して過渡安定度をロバストに維持できる。今後、市場を介した系統のリアルタイムの需給調整の割合が増加すると考えられ、系統運用者が潮流分布を操作する自由度は下がると考えられるため、上述した通り、予め再生可能エネルギー電源の出力変動リスクを鑑みて過渡安定度に関してロバストな1つの調整力の計画を策定する機能の必要性は高まると考えられる。