以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る作動流体供給装置100の構成を示す概略図である。作動流体供給装置100は、第1駆動源としてのエンジン50と、エンジン50の出力を駆動輪に伝達する動力伝達装置としての自動変速機70と、を備える図示しない車両に搭載され、自動変速機70への作動流体の供給を制御するものである。以下では、自動変速機70が、ベルト式無段変速機構(CVT)を備える変速機である場合を例に説明する。
作動流体供給装置100は、エンジン50の出力により駆動され自動変速機70へ作動流体としての作動油を供給可能な第1ポンプとしての第1オイルポンプ10と、第2駆動源としての電動モータ60の出力により駆動され自動変速機70へ作動油を供給可能な第2ポンプとしての第2オイルポンプ20と、第1オイルポンプ10から吐出された作動油を第1オイルポンプ10の吸込側、第2オイルポンプ20の吸込側、及び、自動変速機70の内部に対して放出可能な放出部30と、電動モータ60や放出部30の作動を制御し自動変速機70への作動油の供給状態を制御するコントローラ40と、を備える。
第1オイルポンプ10は、エンジン50によって回転駆動されるベーンポンプであり、吸込管11を通じてタンク16に貯留された作動油を吸引し、吐出管12を通じて自動変速機70へと作動油を吐出する。吐出管12には、第1オイルポンプ10から自動変速機70への作動油の流れのみを許容する逆止弁14が設けられる。
第2オイルポンプ20は、電動モータ60によって回転駆動される内接歯車ポンプであり、吸込管21を通じてタンク16に貯留された作動油を吸引し、第1オイルポンプ10の吐出管12に接続される吐出管22を通じて自動変速機70へと作動油を吐出する。吐出管22には、第2オイルポンプ20から自動変速機70への作動油の流れのみを許容する逆止弁24が設けられる。
第2オイルポンプ20を駆動する電動モータ60の回転は、コントローラ40によって制御される。このため、第2オイルポンプ20の吐出流量は、電動モータ60の回転を変更することで自在に変更することが可能である。
このように、作動流体供給装置100では、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ20の2つのポンプから自動変速機70へと作動油を供給することが可能である。
放出部30は、第1オイルポンプ10の吐出側に接続される吐出管12から逆止弁14よりも上流側において分岐された分岐通路31と、分岐通路31に接続される放出弁としてのアンロード弁35と、アンロード弁35の下流側に接続される放出通路32と、を有する。分岐通路31と放出通路32とは、アンロード弁35が開弁したときに連通する。
放出通路32は、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ20の吸込側へと作動油を導く第1放出通路33と、自動変速機70の内部へと作動油を導く第2放出通路34と、に分岐される。
第1放出通路33は、第1オイルポンプ10の吸込側へと作動油を導く第1吸込側通路33aと、第2オイルポンプ20の吸込側へと作動油を導く第2吸込側通路33bと、にさらに分岐される。具体的には、第1吸込側通路33aは、第1オイルポンプ10の吸込管11に接続され、第2吸込側通路33bは、第2オイルポンプ20の吸込管21に接続される。なお、第1吸込側通路33a及び第2吸込側通路33bの接続先は、吸込管11、21に限らず、例えば、タンク16であってもよい。但し、後述のように、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ20の吸込側で生じる吸入負圧を低減させるためには、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ20の吸込口に近い位置に第1吸込側通路33a及び第2吸込側通路33bを接続させることが好ましい。
また、第1吸込側通路33aには、第1吸込側通路33aを開放または遮断可能な切換弁としての第1開閉弁36が設けられ、第2吸込側通路33bには、第2吸込側通路33bを開放または遮断可能な切換弁としての第2開閉弁37が設けられる。
第2放出通路34は、自動変速機70の内部において、例えば、図示しないベルト式無段変速機構のバリエータのプーリと金属ベルトとの接触部といった冷却ないし潤滑が要求される部位に向けて開口している。第2放出通路34には、第2放出通路34を開放または遮断可能な切換弁としての第3開閉弁38が設けられる。
アンロード弁35及び第1~3開閉弁36,37,38は、電気的に駆動される開閉弁であり、これらの開閉はコントローラ40によって制御される。なお、アンロード弁35及び第1~3開閉弁36,37,38は、ソレノイドによって弁体が直接駆動され各通路を開閉する直動式であってもよいし、弁体に作用するパイロット圧力の有無によって各通路を開閉するパイロット式であってもよく、コントローラ40からの指令に応じて各通路を開閉することができればどのような構成であってもよい。また、アンロード弁35及び第1~3開閉弁36,37,38のうち、例えば、第1吸込側通路33aに設けられる第1開閉弁36のように通常開弁状態にある開閉弁には、ノーマルオープンタイプを採用することが好ましく、アンロード弁35のように通常閉弁状態にある開閉弁には、ノーマルクローズタイプを採用することが好ましい。
アンロード弁35が閉弁した状態では、分岐通路31と放出通路32との連通が遮断されるため、第1オイルポンプ10から吐出された作動油は、吐出管12を通じて自動変速機70へと供給される。一方、アンロード弁35が開弁されると、分岐通路31と放出通路32とが連通するため、第1オイルポンプ10から吐出された作動油は、アンロード弁35を通じて放出通路32へと放出される。
アンロード弁35が開弁されたときに、第1開閉弁36が開弁した状態にあれば、放出通路32に放出された作動油は、第1放出通路33及び第1吸込側通路33aを通じて第1オイルポンプ10の吸込側に放出される。同様に、第2開閉弁37が開弁した状態にあれば、放出通路32に放出された作動油は、第1放出通路33及び第2吸込側通路33bを通じて第2オイルポンプ20の吸込側へと導かれる。
また、アンロード弁35が開弁されたときに、第3開閉弁38が開弁した状態にあれば、放出通路32に放出された作動油は、第2放出通路34を通じて自動変速機70の内部に放出され、自動変速機70を構成する機構を冷却ないし潤滑する。
つまり、アンロード弁35が開弁すると、第1オイルポンプ10から吐出された作動油は、分岐通路31及び放出通路32を通じて、第1オイルポンプ10の吸込側、第2オイルポンプ20の吸込側、及び、自動変速機70の内部の何れかへと放出されることになる。
このように、アンロード弁35が開弁し、第1オイルポンプ10から吐出された作動油が比較的圧力が低い領域に導かれると、第1オイルポンプ10の吐出側の圧力が低下するため、結果として第1オイルポンプ10の吸込側と吐出側との圧力差はゼロに近づくことになる。
したがって、作動流体供給装置100では、アンロード弁35を開閉させることで、第1オイルポンプ10を負荷運転状態と無負荷運転状態、すなわち、第1オイルポンプ10を駆動させる負荷がエンジン50に対してかかる状態と第1オイルポンプ10を駆動させる負荷がエンジン50に対してほとんどかからない状態とに切り換えることが可能である
また、作動流体供給装置100では、第1~3開閉弁36,37,38の開閉状態を制御することで、アンロード弁35を通じて放出通路32に放出された作動油を、第1オイルポンプ10の吸込側、第2オイルポンプ20の吸込側、または、自動変速機70の内部の何れかへと選択的に導くことが可能である。
次に、図2を参照し、コントローラ40について説明する。図2は、コントローラ40の機能を説明するためのブロック図である。
コントローラ40は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースはコントローラ40に接続された機器との情報の入出力に使用される。コントローラ40は、複数のマイクロコンピュータで構成されていてもよい。
コントローラ40は、車両の各部に設けられた各種センサから入力される車両の状態を示す信号に基づき、電動モータ60及びアンロード弁35を制御することで自動変速機70への作動油の供給を制御する供給状態制御部として機能するとともに、電動モータ60及び自動変速機70の作動状態に応じて第1~3開閉弁36,37,38を切り換え制御する切換制御部としても機能する。なお、コントローラ40は、エンジン50のコントローラ及び自動変速機70のコントローラを兼ねるものであってもよいし、エンジン50のコントローラ及び自動変速機70のコントローラとは別に設けられるものあってもよい。
コントローラ40に入力される車両の状態を示す信号としては、例えば、車両の速度を示す信号や車両の加速度を示す信号、シフトレバーの操作位置を示す信号、アクセルの操作量を示す信号、エンジン50の回転数を示す信号、スロットル開度や燃料噴射量等のエンジン50の負荷を示す信号、自動変速機70の入力軸及び出力軸回転数を示す信号、自動変速機70内の作動油の油温を示す信号、自動変速機70に供給された作動油の圧力(ライン圧)を示す信号、自動変速機70の変速比を示す信号、第1オイルポンプ10の吐出圧を示す信号、第2オイルポンプ20の吐出圧を示す信号、電動モータ60の回転数を示す信号等である。
コントローラ40は、自動変速機70への作動油の供給を制御するための機能として、各種センサから入力される信号に基づき自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrを演算する必要流量演算部41と、各種センサから入力される信号に基づき第1オイルポンプ10から吐出される作動油の吐出流量Q1を算出する吐出流量算出部42と、必要流量演算部41で演算された必要流量Qrと吐出流量算出部42で算出された吐出流量Q1とを比較する第1比較部43と、各種センサから入力される信号に基づき第1オイルポンプ10の駆動動力W1を演算するとともに必要流量Qrに基づき設定される目標吐出流量Qaを吐出させた場合の第2オイルポンプ20の駆動動力W2を演算する駆動動力演算部44と、駆動動力演算部44で演算された第1オイルポンプ10の駆動動力W1と第2オイルポンプ20の駆動動力W2とを比較する第2比較部45と、第1比較部43及び第2比較部45における比較結果に基づき自動変速機70への作動油の供給状態を設定する供給状態設定部46と、を有する。なお、これら必要流量演算部41等は、コントローラ40の各機能を、仮想的なユニットとして示したものであり、物理的に存在することを意味するものではない。
必要流量演算部41は、主にアクセル開度や車速、自動変速機70内の作動油の油温、自動変速機70に供給された作動油の圧力、自動変速機70の入力軸及び出力軸回転数、自動変速機70の変速比に基づいて自動変速機70で必要とされる作動油の流量を演算する。
ここで、自動変速機70で必要とされる作動油の流量は、図示しないベルト式無段変速機構のバリエータのプーリ幅を変化させるために必要となる変速流量や油圧制御弁内の隙間や油圧回路上の隙間から漏れるリーク流量、自動変速機70を冷却ないし潤滑するために必要となる潤滑流量、図示しないオイルクーラに導かれる冷却流量などがある。
これらの流量がどの程度の流量となるかは、予めマップ化されており、コントローラ40のROMに記憶されている。具体的には、変速流量は、変速比が大きく変化する場合、例えば、アクセル開度の上昇率が大きい加速時や車速の減速率が大きい減速時には大きな値となることから、アクセル開度や車速の変化率がパラメータとされる。なお、車両の加減速に関連するパラメータとしては、エンジン50の回転数や負荷の変化に影響を及ぼすスロットル開度や燃料噴射量などが用いられてもよい。リーク流量は、作動油の温度が上昇し作動油の粘度が低下するほど、また、供給される作動油の圧力が大きいほど大きな値となることから、作動油の温度や圧力がパラメータとされる。
また、作動油の温度が上昇し作動油の粘度が低下するほど油膜切れが生じやすくなるため、作動油の温度が高いほど潤滑流量を多くする必要があり、また、自動変速機70内の回転軸の回転数が高いほど油膜切れが生じやすくなるため、自動変速機70内の回転軸の回転数が高いほど潤滑流量を多くする必要がある。これらを考慮し、潤滑流量は、例えば、作動油の温度や自動変速機70の入出力軸の回転数がパラメータとされる。
また、作動油の温度は、潤滑性や油膜保持等の観点からは、所定の温度を超えないようにする必要があり、また、作動油を冷却するためには、オイルクーラに冷却風が導かれる状態、すなわち、所定以上の車速で車両が走行する状態である必要がある。このため、冷却流量は、主に作動油の温度と車速とがパラメータとされる。なお、これら変速流量、リーク流量、潤滑流量及び冷却流量を決定するためのパラメータは一例であり、例示されたパラメータと関連性があるパラメータが用いられてもよく、何をパラメータとするかはコントローラ40に入力される信号から適宜選定される。
このように、必要流量演算部41では、変速流量、リーク流量、潤滑流量及び冷却流量を考慮して自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrが演算される。
吐出流量算出部42は、主にエンジン50の回転数に基づいて第1オイルポンプ10から吐出される作動油の吐出流量Q1を算出する。
第1オイルポンプ10の回転数と第1オイルポンプ10の吐出流量Q1とは、ほぼ比例して変化する関係にあり、また、第1オイルポンプ10の吐出流量Q1は、油温によって変わる粘度や第1オイルポンプ10の吐出圧に応じて変化する。これらの関係は、第1オイルポンプ10の吐出流量Q1を正確に算出するために予めマップ化され、コントローラ40のROMに記憶されている。
第1オイルポンプ10の回転数は、第1オイルポンプ10を駆動するエンジン50の回転数に応じて変化するため、吐出流量算出部42では、エンジン50の回転数と作動油の油温と第1オイルポンプ10の吐出圧とから吐出流量Q1が容易に算出される。第1オイルポンプ10の吐出流量Q1算出は、アンロード弁35の作動状態に関わらず、すなわち、第1オイルポンプ10が負荷運転状態にあるか無負荷運転状態にあるかに関わらず行われる。なお、エンジン50の回転数に代えて、第1オイルポンプ10の回転数を用いて吐出流量Q1を算出してもよい。また、第1オイルポンプ10の吐出圧は、自動変速機70に供給された作動油の圧力であるライン圧に応じて変化するため、第1オイルポンプ10の吐出流量Q1の算出にあたっては、第1オイルポンプ10の吐出圧に代えて、ライン圧が用いられてもよい。
第1比較部43は、必要流量演算部41で演算された必要流量Qrと吐出流量算出部42で算出された吐出流量Q1とを比較し、吐出流量Q1が必要流量Qr以上である場合には、駆動動力演算部44に比較結果信号を送信し、吐出流量Q1が必要流量Qrよりも小さい場合には、供給状態設定部46に比較結果信号を送信する。
駆動動力演算部44は、第1比較部43からの比較結果信号を受信すると、第1オイルポンプ10の駆動動力W1を演算するとともに必要流量Qrに基づき設定される目標吐出流量Qaを吐出させた場合の第2オイルポンプ20の駆動動力W2を演算する。
第1オイルポンプ10の駆動動力W1は、エンジン50において、第1オイルポンプ10を駆動するために費やされた出力であり、第1オイルポンプ10の吐出流量Q1と吐出圧力P1とポンプ効率η1とから算出される。第1オイルポンプ10が無負荷運転状態にあり第1オイルポンプ10から自動変速機70へ作動油が供給されていない場合には、自動変速機70内の作動油の圧力であるライン圧PLを吐出圧力P1と仮定して第1オイルポンプ10の駆動動力W1が推定される。第1オイルポンプ10の回転数、吐出圧力P1及び作動油の油温に応じて変化するポンプ効率η1は、予めマップ化され、コントローラ40のROMに記憶されている。なお、吐出流量Q1としては、吐出流量算出部42で算出された値が用いられる。
同様にして、第2オイルポンプ20の駆動動力W2は、第2オイルポンプ20の目標吐出流量Qaと吐出圧力P2とポンプ効率η2とから算出される。目標吐出流量Qaは、必要流量演算部41で演算された必要流量Qrよりも10%程度多い流量であって、現在の車両の状態が多少変化したとしても必要流量Qrを下回らないように余裕を持って設定される。電動モータ60が停止しており第2オイルポンプ20から自動変速機70へ作動油が供給されていない場合には、自動変速機70内の作動油の圧力であるライン圧PLを吐出圧力P2と仮定して第2オイルポンプ20の駆動動力W2が推定される。第2オイルポンプ20の回転数、吐出圧力P2及び作動油の油温に応じて変化するポンプ効率η2は、第1オイルポンプ10のポンプ効率η1と同様に、予めマップ化され、コントローラ40のROMに記憶されている。なお、第2オイルポンプ20の駆動動力W2は、第2オイルポンプ20を駆動する電動モータ60において消費される電力に相当することから、電動モータ60に供給される電流及び電圧に基づき第2オイルポンプ20の駆動動力W2を算出してもよい。
ここで、電動モータ60には、エンジン50によって駆動されるオルタネータで発電された電力がバッテリを介して供給される。このため、第1オイルポンプ10の駆動条件と第2オイルポンプ20の駆動条件とを一致させるため、第2オイルポンプ20の駆動動力W2の演算にあたっては、オルタネータの発電効率やバッテリの充放電効率等の種々のエネルギー変換効率がさらに加味される。つまり、最終的に演算される第2オイルポンプ20の駆動動力W2は、第2オイルポンプ20がエンジン50によって駆動されると仮定した場合にエンジン50において費やされる出力となる。
なお、第1オイルポンプ10の駆動動力W1と第2オイルポンプ20の駆動動力W2の演算方法は、上述の演算方法に限定されず、第1オイルポンプ10の駆動条件と第2オイルポンプ20の駆動条件とを同じ条件とした場合の第1オイルポンプ10の駆動動力W1と第2オイルポンプ20の駆動動力W2とが演算されれば、どのような演算方法であってもよい。例えば、吐出圧力P1及び吐出圧力P2が直接検出されていない場合には、作動油がどのような供給状態にある場合であってもライン圧PLを吐出圧力P1及び吐出圧力P2と仮定して、駆動動力W1,W2が演算されてもよい。
第2比較部45は、駆動動力演算部44で演算された第1オイルポンプ10の駆動動力W1と第2オイルポンプ20の駆動動力W2とを比較し、供給状態設定部46に比較結果信号を送信する。
供給状態設定部46は、第1比較部43及び第2比較部45から送信された比較結果信号に基づき自動変速機70への作動油の供給状態を設定する。具体的には、供給状態設定部46は、第2比較部45から第1オイルポンプ10の駆動動力W1が第2オイルポンプ20の駆動動力W2以下であるという信号を受信すると、電動モータ60を停止、または、電動モータ60を停止した状態に維持することによって、第1オイルポンプ10のみから自動変速機70へ作動油を供給する第1供給状態に上述の供給状態を設定する。
また、第2比較部45から第1オイルポンプ10の駆動動力W1が第2オイルポンプ20の駆動動力W2よりも大きいという信号を受信すると、供給状態設定部46は、アンロード弁35を開弁させることによって第1オイルポンプ10を無負荷運転状態とし、第2オイルポンプ20のみから自動変速機70へ作動油を供給する第2供給状態に上述の供給状態を設定する。
また、第1比較部43から吐出流量Q1が必要流量Qrよりも小さいという信号を受信すると、供給状態設定部46は、アンロード弁35を閉弁させるとともに電動モータ60を駆動させることによって、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ20の両方から自動変速機70へ作動油を供給する第3供給状態に上述の供給状態を設定する。
コントローラ40は、上述の機能に加えて、各種センサから入力される信号に基づきエンジン50の駆動状態を判定する駆動状態判定部47と、各種センサから入力される信号に基づき第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ20の異常の有無を判定する異常判定部48と、を有する。
駆動状態判定部47は、主にエンジン50の回転数やスロットル開度、燃料噴射量等に基づきエンジン50がどのような駆動状態にあるか、特に停止中であるか、駆動中であるかを判定する。駆動状態判定部47で判定された結果は、供給状態設定部46へ判定結果信号として送信される。
供給状態設定部46は、エンジン50が停止状態にあるという信号を駆動状態判定部47から受信すると、第2オイルポンプ20のみから自動変速機70へ作動油を供給する第2供給状態に上述の供給状態を設定する。これにより、アイドリングストップ時のように、第1オイルポンプ10がエンジン50により駆動されない場合であっても、第2オイルポンプ20によって、自動変速機70へ作動油を供給することが可能となる。
異常判定部48は、主に自動変速機70に供給された作動油の圧力であるライン圧PLや第1オイルポンプ10の吐出圧力P1、第2オイルポンプ20の吐出圧力P2、作動油の温度などに基づき第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ20の異常の有無を判定する。例えば、異常判定部48は、第1オイルポンプ10が駆動されているときにライン圧PLや第1オイルポンプ10の吐出圧力P1が所定の範囲内にない場合は第1オイルポンプ10の異常と判定し、第2オイルポンプ20が駆動されているときにライン圧PLや第2オイルポンプ20の吐出圧力P2が所定の範囲内にない場合は第2オイルポンプ20の異常と判定する。
また、異常判定部48は、作動油が例えばマイナス20度以下といった非常に温度が低い状態であり、仮に電動モータ60により第2オイルポンプ20を駆動させた場合、作動油の粘度が高いことで電動モータ60が過負荷状態になるおそれがある場合も第2オイルポンプ20の異常と判定する。なお、作動油の温度が非常に低い場合は、アイドリングストップ制御が禁止され、第1オイルポンプ10から自動変速機70へ作動油が常時供給される状態となる。
また、異常判定部48は、電動モータ60に電力を供給するバッテリの充電量が十分でない場合やバッテリに発電電力を充電するオルタネータに異常がある場合も電動モータ60を正常に駆動させることができなくなるおそれがあることから第2オイルポンプ20の異常と判定する。
供給状態設定部46は、第1オイルポンプ10に異常があるという信号を異常判定部48から受信すると、第2オイルポンプ20のみから自動変速機70へ作動油を供給する第1異常時供給状態に上述の供給状態を設定し、第2オイルポンプ20に異常があるという信号を異常判定部48から受信すると、アンロード弁35を閉弁し第1オイルポンプ10のみから自動変速機70へ作動油を供給する第2異常時供給状態に上述の供給状態を設定する。
供給状態設定部46は、第1異常時供給状態では電動モータ60を制御し、第2オイルポンプ20の吐出流量Q2が自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrに達するように電動モータ60の回転数を上昇させる。
また、供給状態設定部46は、第2異常時供給状態において、第1オイルポンプ10の吐出流量Q1が自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrよりも小さい場合には、自動変速機70を制御して変速比をロー側へ若干変化させることによりエンジン50の回転数を上昇させ、第1オイルポンプ10の吐出流量Q1が必要流量Qrに達するように第1オイルポンプ10の回転数を上昇させる。一方、第2異常時供給状態において、第1オイルポンプ10の吐出流量Q1が自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qr以上である場合には、供給状態設定部46は、エンジン50及び自動変速機70を制御することなく、アンロード弁35の閉弁のみを実行する。これにより、第1オイルポンプ10または第2オイルポンプ20に異常がある場合であっても自動変速機70へ作動油を十分に供給することが可能となり、自動変速機70を安定して作動させることができる。
なお、第1オイルポンプ10を駆動するエンジン50の回転数が最大定格回転数に達してしまったり、第2オイルポンプ20を駆動する電動モータ60の回転数が上限回転数に達してしまうと、自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrを確保できなくなるおそれがある。このような場合には、エンジン50を制御し、エンジン50の出力トルクを低減させて必要なライン圧PLを小さくすることによって、自動変速機70の必要流量Qrを減少させてもよい。
次に、図3のフローチャートを参照し、上述の機能を有するコントローラ40による自動変速機70への作動油の供給制御について説明する。図3に示される制御は、コントローラ40によって所定の時間毎に繰り返し実行される。
まず、ステップS11において、コントローラ40には、車両の状態、特にエンジン50や自動変速機70の状態を示す各種センサの検出信号が入力される。
ステップS12では、ステップS11において入力された各種センサの信号に基づき、自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrが必要流量演算部41において演算される。
続くステップS13では、ステップS11において入力された各種センサの信号に基づき、第1オイルポンプ10から吐出される作動油の吐出流量Q1が吐出流量算出部42において算出される。
ステップS12で演算された必要流量QrとステップS13で算出された吐出流量Q1とは、ステップS14において第1比較部43によって比較される。
ステップS14において、吐出流量Q1が必要流量Qr以上であると判定された場合、つまり、第1オイルポンプ10のみで自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrを賄うことが可能である場合には、ステップS15に進む。一方、吐出流量Q1が必要流量Qrよりも小さいと判定された場合、つまり、第1オイルポンプ10のみでは自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrを賄うことが不可能である場合には、ステップS19に進む。
ステップS15では、ステップS11において入力された各種センサの信号に基づき、第1オイルポンプ10の駆動動力W1及び第2オイルポンプ20の駆動動力W2が駆動動力演算部44によって演算される。
駆動動力演算部44によって演算された第1オイルポンプ10の駆動動力W1及び第2オイルポンプ20の駆動動力W2は、ステップS16において第2比較部45によって比較される。
ここで、第1オイルポンプ10は、エンジン50によって駆動されるため、エンジン50の回転数が増加するにつれて、その吐出流量Q1は増加する。一方で、自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrは、変速比が大きく変化する場合、すなわち、アクセル開度の上昇率が大きい加速時や車速の減速率が大きい減速時には増加するものの、車速の変化が小さい場合は比較的少なくなる。
つまり、エンジン50の回転数が比較的高く、車速が比較的安定している場合には、必要流量Qrに対して吐出流量Q1が上回り、自動変速機70に供給される油量が過剰な状態となるため、結果として、エンジン50の出力が第1オイルポンプ10を駆動するために無駄に費やされることになる。このような場合は、第1オイルポンプ10を駆動させるよりも、必要流量Qrを所定量だけ上回る目標吐出流量Qaを第2オイルポンプ20によって吐出させた方がエンジン50における燃料消費を抑制させることができる可能性がある。
このような状況として、具体的には、エンジン50が比較的回転数が高い中回転域以上で回転し車両が車速の変化が小さい巡航運転状態にあるときやエンジンブレーキによってエンジン50が高回転域で回転しているときなどが挙げられる。また、エンジン50の回転数が低くても、車両が停止しておりエンジン50がアイドリング運転状態となっているときやクリープ現象で車両が走行しているときなどは、自動変速機70の必要流量Qrが非常に小さくなるため、第1オイルポンプ10の吐出流量Q1が必要流量Qrを上回る場合がある。なお、このような状況であっても油温が高い場合は、リーク流量や冷却流量が増加するため、必ずしも第1オイルポンプ10の吐出流量Q1が必要流量Qrを上回るとは限らない。
つまり、ステップS16では、第1オイルポンプ10を駆動させて作動油を供給する場合よりも第2オイルポンプ20を駆動させて作動油を供給する場合の方がエンジン50の燃料消費を低減させることができるか否かが判定される。
ステップS16において、第1オイルポンプ10の駆動動力W1が第2オイルポンプ20の駆動動力W2以下であると判定された場合、つまり、第1オイルポンプ10をエンジン50によって駆動させて作動油を供給する場合の方がエンジン50の燃料消費を低減させることができる場合は、ステップS17に進み、自動変速機70への作動油の供給状態は、供給状態設定部46によって第1供給状態に設定される。
一方、ステップS16において、第1オイルポンプ10の駆動動力W1が第2オイルポンプ20の駆動動力W2よりも大きいと判定された場合、つまり、第2オイルポンプ20を電動モータ60によって駆動させて作動油を供給する場合の方がエンジン50の燃料消費を低減させることができる場合は、ステップS18に進み、自動変速機70への作動油の供給状態は、供給状態設定部46によって第2供給状態に設定される。
ステップS19では、自動変速機70への作動油の供給状態が供給状態設定部46により第3供給状態に設定される。この場合は、自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrが比較的多く、これを確保するために、第1オイルポンプ10に加えて第2オイルポンプ20が駆動される。
このような状況として、具体的には、急加速や急減速によって変速流量が増加する場合や、作動油の油温が例えば130℃を超えるような高温となり、リーク流量が増加する場合、作動油の油温が高温であって車速が中速(30~50km/h)以上となり、十分な冷却流量を確保する必要がある場合などが挙げられる。
このように、車両の状態、特にエンジン50や自動変速機70の状態に基づいて自動変速機70への作動油の供給状態を切り換えることで、自動変速機70に十分な作動油が供給されるとともに、エンジン50において無駄な燃料が消費されることが抑制される。この結果、自動変速機70を安定して作動させることができるとともに、車両の燃費を向上させることができる。
なお、自動変速機70への作動油の供給状態が頻繁に切り換わると、自動変速機70に供給される作動油の圧力が変動し、自動変速機70の制御が不安定となるおそれがあることから、第1比較部43及び第2比較部45において比較を行う際にヒステリシスを設定し、供給状態が頻繁に切り換わることを抑制してもよい。また、何れかの供給状態に設定された後、自動変速機70への供給される作動油量が必要流量Qrを下回らなければ、所定時間の間は他の供給状態に移行することを禁止してもよい。
また、エンジン50の燃料消費を低減させるために、アイドリングストップ制御が行われる場合、駆動状態判定部47においてエンジン50が停止状態にあることが判定されると、図3に示されるフローチャートに従うことなく、自動変速機70への作動油の供給状態は、供給状態設定部46により第2供給状態、すなわち、第2オイルポンプ20のみから自動変速機70へ作動油を供給する状態に設定される。
これにより、エンジン50が停止し第1オイルポンプ10が駆動されない場合であっても、第2オイルポンプ20によって、自動変速機70へ作動油を安定して供給することができる。なお、アイドリングストップ制御が行われるときに自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrは非常に少ないため、第2オイルポンプ20によって十分に賄うことができる。このように、第2オイルポンプ20は、アイドリングストップ時に駆動される予備電動オイルポンプとして流用可能であることから、予備電動オイルポンプを別途設ける必要がなくなることで、車両の製造コストを低減させることができる。なお、すでに予備電動オイルポンプを備えた車両であれば、予備電動オイルポンプの性能を第2オイルポンプ20と同等の性能とすることで、新たな電動オイルポンプを設ける必要がなくなるため、結果として車両の製造コストを低減させることができる。
また、第1オイルポンプ10または第2オイルポンプ20に異常があると異常判定部48において判定された場合には、コントローラ40は、図3に示されるフローチャートに従うことなく、異常がないオイルポンプのみから自動変速機70へ作動油を供給させる状態とする。
具体的には、供給状態設定部46は、第1オイルポンプ10に異常があるという信号を異常判定部48から受信すると、自動変速機70へ作動油を供給する供給状態を、第2オイルポンプ20のみから作動油が供給される第1異常時供給状態に設定するとともに、電動モータ60を制御し、第2オイルポンプ20の吐出流量Q2が自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrに達するように電動モータ60の回転数を上昇させる。
また、供給状態設定部46は、第2オイルポンプ20に異常があるという信号を異常判定部48から受信すると、自動変速機70へ作動油を供給する供給状態を、アンロード弁35を閉弁し第1オイルポンプ10のみから作動油が供給される第2異常時供給状態とするとともに、エンジン50を制御し、第1オイルポンプ10の吐出流量Q1が自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrに達するようにエンジン50の回転数を上昇させる。
これにより、第1オイルポンプ10または第2オイルポンプ20に異常がある場合であっても自動変速機70へ作動油を十分に供給することが可能となり、自動変速機70を安定して作動させることができる。
続いて、コントローラ40により行われる放出部30の第1~3開閉弁36,37,38の切り換え制御について説明する。
上述のように、自動変速機70への作動油の供給状態が第2供給状態に設定されると、コントローラ40は、アンロード弁35を開弁させることによって第1オイルポンプ10から吐出された作動油を放出通路32へと放出させるとともに、電動モータ60により第2オイルポンプ20を駆動し、第2オイルポンプ20から自動変速機70へと作動油を供給させる。
アンロード弁35を開弁させる際、コントローラ40は、通常、第1開閉弁36のみを開弁状態とする。これにより、放出通路32に放出された作動油は、第1放出通路33及び第1吸込側通路33aを通じて第1オイルポンプ10の吸込側へと導かれる。このように、第1オイルポンプ10から吐出された作動油の全量を第1オイルポンプ10の吸込側に戻すことによって、第1オイルポンプ10の吸込側と吐出側との圧力差をほぼゼロとすることが可能となる。この結果、第1オイルポンプ10は無負荷運転状態、すなわち、第1オイルポンプ10を駆動させる負荷がエンジン50に対してほとんどかからない状態となる。このため、第1オイルポンプ10を駆動させる必要がない場合には、エンジン50で無駄な燃料が消費されることを抑制させることができる。
また、第1オイルポンプ10から吐出された作動油を第1オイルポンプ10の吸込側に戻すことによって、第1オイルポンプ10の吸込側において生じる吸入負圧を小さくし、吸入負圧によるキャビテーションの発生を抑制するとともにキャビテーションの発生に伴って第1オイルポンプ10の吸込部周辺にエロージョンが生じることを防止することができる。
次に、切り換え制御において、コントローラ40が第2開閉弁37を開弁させる場合について説明する。
第2オイルポンプ20の吐出流量Q2が増加するにつれて、第2オイルポンプ20の吸込側において生じる吸入負圧も大きくなる。吸入負圧が大きくなるとキャビテーションが発生するとともにキャビテーションの発生に伴って第2オイルポンプ20の吸込部周辺にエロージョンが生じるおそれがある。
このようなキャビテーション及びエロージョンの発生を抑制させるために、コントローラ40は、第2オイルポンプ20の吐出流量Q2が予め定められた第1の吐出流量Qc1を超えたと判定されると、第2開閉弁37を開弁させる。これにより、放出通路32に放出された作動油の一部は、第1放出通路33及び第2吸込側通路33bを通じて第2オイルポンプ20の吸込側へと導かれる。このように、第1オイルポンプ10から吐出された作動油の一部を第2オイルポンプ20の吸込側に戻すことによって、第2オイルポンプ20の吸込側において生じる吸入負圧が低減され、吸入負圧によるキャビテーションの発生が抑制されるとともに第2オイルポンプ20の吸込部周辺にエロージョンが生じることを防止することができる。
ここで、第2オイルポンプ20の吸込側において生じる吸入負圧の大きさは、第2オイルポンプ20の吐出流量Q2の増加に伴って大きくなり、吸入負圧が大きいほどキャビテーション及びエロージョンは発生しやすくなる。このため、コントローラ40は、第2オイルポンプ20の吐出流量Q2が、第1の吐出流量Qc1よりも大きく、よりキャビテーションが発生しやすい第2の吐出流量Qc2を超えたと判定されると、第1開閉弁36を閉弁させる。これにより、放出通路32に放出された作動油の全量が、第1放出通路33及び第2吸込側通路33bを通じて第2オイルポンプ20の吸込側へと導かれる。このように、第1オイルポンプ10から吐出された作動油の全量を第2オイルポンプ20の吸込側へと導くことによって、第2オイルポンプ20の吸込側において生じる吸入負圧が低減され、キャビテーション及びエロージョンの発生が抑制される。
第2オイルポンプ20の吐出流量Q2が、第1の吐出流量Qc1または第2の吐出流量Qc2を超えたか否かの判定は、第2オイルポンプ20の吐出流量を直接的に測定することによって行われてもよいし、第2オイルポンプ20を駆動する電動モータ60の回転数から推定される第2オイルポンプ20の予測吐出流量に基づいて行われてもよい。なお、第1の吐出流量Qc1及び第2の吐出流量Qc2は、予め設定された閾値であり、コントローラ40のROMに記憶されている。
次に、切り換え制御において、コントローラ40が第3開閉弁38を開弁させる場合について説明する。
自動変速機70の内部において、例えば、バリエータのプーリと金属ベルトとの接触部における接触圧は、エンジン50が比較的高負荷且つ高回転で運転される高速高負荷走行状態にあるときやエンジンブレーキによって車輪側からエンジン50にトルクが伝達されエンジン50が比較的高回転域で回転しているときなどに上昇する。このように接触圧が上昇すると、油膜切れが発生したり発熱したりすることで焼き付きが生じるおそれがある。
このような焼き付きの発生を防止するために、コントローラ40は、自動変速機70の内部の温度の上昇が予測されると、第3開閉弁38を開弁させる。これにより、放出通路32に放出された作動油の一部は、第2放出通路34を通じて自動変速機70の内部へと導かれる。このように、第1オイルポンプ10から吐出された作動油の一部を自動変速機70の内部、例えば、プーリと金属ベルトとの接触部に向けて放出させることによって、自動変速機70の内部を冷却ないし潤滑させることが可能となり、結果として自動変速機70の内部において焼き付きが生じることを防止することができる。
自動変速機70の内部の温度の上昇は、自動変速機70の内部の温度、例えば作動油の温度を直接計測することによって求められてもよいし、車速や自動変速機70を介して伝達される負荷の大きさ等に基づいて推定されてもよい。なお、自動変速機70の内部の温度の上昇が非常に大きいと予測される場合には、第1開閉弁36を閉弁させ、第1オイルポンプ10から吐出された作動油の全量を自動変速機70の内部に放出させてもよい。これにより、自動変速機70の内部において焼き付きが生じることをより確実に防止することができる。
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
作動流体供給装置100では、アンロード弁35を通じて第1オイルポンプ10から吐出された作動油を、第1オイルポンプ10の吸込側、第2オイルポンプ20の吸込側、及び、自動変速機70の内部の何れかに放出させることで、第1オイルポンプ10を駆動させる負荷がエンジン50にかからない状態とすることが可能である。第1オイルポンプ10を無負荷運転状態とするために用いられるアンロード弁35は、構造的に簡素であり、価格も比較的安価である。このため、作動流体供給装置100の製造コストを低減させることができるとともに装置全体をコンパクト化することができる。
次に、上記第1実施形態の変形例について説明する。なお、後述の変形例も本発明の範囲内であり、これら変形例に示す構成と上述の第1実施形態で説明した構成を組み合わせたり、後述の変形例や上述の第1実施形態で説明した構成と後述の第2実施形態で説明される構成や変形例とを組み合わせたりすることも可能である。
また、上記第1実施形態では、第1オイルポンプ10と第2オイルポンプ20とは、それぞれ吸込管11,21を通じてタンク16から作動油を吸引している。これに代えて、図4に示される第1変形例のように、第1オイルポンプ10の吸込管11に第2オイルポンプ20の吸込管21を接続し、第1オイルポンプ10と第2オイルポンプ20とで吸込管を共用させてもよい。この場合、放出通路32に放出された作動油を第2オイルポンプ20の吸込側に導く際に制御される第2開閉弁37を廃止することができるため、作動流体供給装置100の製造コストを低減させることができるとともに作動流体供給装置100を簡素化することができる。
また、上記第1実施形態では、分岐通路31に接続されるアンロード弁35を開弁させることによって第1オイルポンプ10から吐出された作動油を放出通路32へと放出させている。これに代えて、図5に示される第2変形例のように、第1放出通路33及び第2放出通路34にそれぞれ設けられた第1アンロード弁35a及び第2アンロード弁35bを開弁させることにより第1オイルポンプ10から吐出された作動油を第1放出通路33及び第2放出通路34へと放出させてもよい。
このように、第1アンロード弁35a及び第2アンロード弁35bを、放出弁としてだけではなく切換弁としても機能させることで切換弁としての開閉弁を廃止することができる。このため、作動流体供給装置100の製造コストを低減させることができる。なお、この場合、第1オイルポンプ10から吐出された作動油を、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ20の吐出側に放出させる場合には第1アンロード弁35aが開弁され、自動変速機70の内部に放出させる場合には第2アンロード弁35bが開弁され、両方へと放出させる場合には第1アンロード弁35a及び第2アンロード弁35bが開弁される。
また、上記第1実施形態では、分岐通路31に接続されるアンロード弁35を開弁させることによって第1オイルポンプ10から吐出された作動油を放出通路32へと放出させ、第1~3開閉弁36,37,38を開閉することで作動油の放出先を切り換えている。これに代えて、図6に示される第3変形例のように、放出先を切り換える機能を有するアンロード制御弁35cを放出弁及び切換弁として採用してもよい。
アンロード制御弁35cの下流側には、第1放出通路33及び第2放出通路34が接続されており、アンロード制御弁35cは、分岐通路31と第1放出通路33及び第2放出通路34との連通を遮断する遮断位置と、分岐通路31と第1放出通路33とを連通させる第1連通位置と、第1放出通路33に加えて第2放出通路34を分岐通路31と連通させる第2連通位置と、を有する。
アンロード制御弁35cは、比例ソレノイドと、比例ソレノイドによって駆動されるスプール弁とを有し、アンロード制御弁35cの位置は、比例ソレノイドに供給される電流に応じて遮断位置と第1連通位置と第2連通位置とに切り換えられる。なお、比例ソレノイドに供給される電流を調整することによって、第2放出通路34を分岐通路31に連通させる割合を第1連通位置から第2連通位置にかけて徐々に変化させる構成としてもよい。
このように、アンロード制御弁35cを、放出弁としてだけではなく切換弁としても機能させることで第1~3開閉弁36,37,38を廃止することができる。このため、作動流体供給装置100の製造コストを低減させることができるとともに作動流体供給装置100を簡素化することができる。なお、上記第1実施形態のように、第1吸込側通路33aと第2吸込側通路33bとにそれぞれ第1開閉弁36と第2開閉弁37とを設け、作動油の放出先をさらに切り換え可能な構成としてもよい。
また、上記第1実施形態では、自動変速機70がベルト式無段変速機構(CVT)を備える変速機である場合について説明したが、自動変速機70は作動油の圧力を利用して作動するものであればどのような形式のものであってもよく、トロイダル式無段変速機構や遊星歯車機構を備えたものであってもよい。
また、上記第1実施形態では、第1オイルポンプ10はベーンポンプであり、第2オイルポンプ20は内接歯車ポンプである。第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ20の形式は、異なる形式である必要はなく、同じ形式のものが用いられてもよく、例えば、両者ともベーンポンプであってもよい。また、ポンプの形式は、これらに限定されず、例えば、外接歯車ポンプやピストンポンプといった容積ポンプであればどのような形式のものであってもよい。また、第1オイルポンプ10は容量固定タイプであるが、容量可変タイプのポンプであってもよい。
また、上記第1実施形態では、第1オイルポンプ10は、エンジン50の出力により駆動される。第1オイルポンプ10を駆動する第1駆動源としては、エンジン50に限定されず、例えば、車両の駆動輪を駆動する電動モータであってもよい。
また、上記第1実施形態では、第2オイルポンプ20は、電動モータ60の出力により駆動される。第2オイルポンプ20を駆動する第2駆動源としては、電動モータ60に限定されず、例えば、補機等を駆動する補助エンジンであってもよい。
また、上記第1実施形態では、コントローラ40に入力される車両の状態を示す信号として種々の信号が列記されているが、これら以外にも、例えば、自動変速機70にトルクコンバータが設けられている場合は、トルクコンバータの作動状態や締結状態を示す信号がコントローラ40に入力されてもよい。この場合、トルクコンバータの状態を加味して、自動変速機70の必要流量Qrを演算したり、自動変速機70への作動油の供給状態の切り換えを制限したりしてもよい。例えば、トルクコンバータが半締結状態(スリップロックアップ状態)にあることが検出された場合には、作動油供給状態が他の供給状態に移行することを禁止してもよい。これにより、トルクコンバータを安定した作動状態に維持することができる。また、車両の減速状態を示す信号として、ブレーキの操作量及び操作速度を示す信号がコントローラ40に入力されてもよい。
また、上記第1実施形態では、コントローラ40の吐出流量算出部42では、第1オイルポンプ10から吐出される作動油の吐出流量Q1が算出される。これに代えて、流量センサ等によって、第1オイルポンプ10から吐出される実際の作動油の吐出流量Q1を直接的に計測してもよい。
<第2実施形態>
次に、図7を参照して、本発明の第2実施形態に係る作動流体供給装置200について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付し説明を省略する。
作動流体供給装置200の基本的な構成は、第1実施形態に係る作動流体供給装置100と同様である。作動流体供給装置200は、放出部130に切換弁としての開閉弁が設けられていない点で作動流体供給装置100と相違する。
作動流体供給装置200の放出部130は、吐出管12から分岐された分岐通路31と、分岐通路31に接続される放出弁としてのアンロード弁35と、アンロード弁35の下流側に接続される放出通路32と、を有する。分岐通路31と放出通路32とは、アンロード弁35が開弁した場合に連通する。
放出通路32は、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ20の吸込側へと作動油を導く第1放出通路33と、自動変速機70の内部へと作動油を導く第2放出通路34と、に分岐される。
第1放出通路33は、第1オイルポンプ10の吸込側へと作動油を導く第1吸込側通路33aと、第2オイルポンプ20の吸込側へと作動油を導く第2吸込側通路33bと、にさらに分岐される。具体的には、第1吸込側通路33aは、第1オイルポンプ10の吸込管11に接続され、第2吸込側通路33bは、第2オイルポンプ20の吸込管21に接続される。
第2放出通路34は、自動変速機70の内部において、例えば、ベルト式無段変速機構のバリエータのプーリと金属ベルトとの接触部といった冷却ないし潤滑が要求される部位に向けて開口している。第2放出通路34には、自動変速機70の内部の温度、例えば自動変速機70の内部を流れる作動油の温度に応じて開弁量が変化する感温式開閉弁138が設けられる。
感温式開閉弁138は、作動油の温度に応じて変形するバイメタルと、バイメタルの変形に応じて変位する弁体と、を有し、作動油の温度が高いほど開弁量が大きくなるように設定される。なお、作動油の温度を検知する部材としてはバイメタルに限定されず、温度に応じて開弁量を変化させることができるものであればどのようなものであってもよい。また、自動変速機70の内部の温度としては、作動油の温度に限定されず、内部の雰囲気温度であってもよいし、自動変速機70を構成する特定の部材の温度であってもよい。
作動流体供給装置200では、上記第1実施形態における作動流体供給装置100と同様に、アンロード弁35が閉弁した状態では、分岐通路31と放出通路32との連通が遮断されるため、第1オイルポンプ10から吐出された作動油は、吐出管12を通じて自動変速機70へと供給される。一方、アンロード弁35が開弁されると、分岐通路31と放出通路32とが連通するため、第1オイルポンプ10から吐出された作動油は、アンロード弁35を通じて放出通路32へと放出される。
ここで、第1吸込側通路33aは、第1オイルポンプ10の吸込管11に常時接続され、また、第2吸込側通路33bは、第2オイルポンプ20の吸込管21に常時接続されている。このため、放出通路32に放出された作動油は、第1放出通路33及び第1吸込側通路33aを通じて第1オイルポンプ10の吸込側へと導かれるとともに、第1放出通路33及び第2吸込側通路33bを通じて第2オイルポンプ20の吸込側へと導かれる。
このように第1オイルポンプ10から吐出された作動油を第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ20の吸込側に戻すことによって、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ20の吸込側において生じる吸入負圧を小さくし、吸入負圧によるキャビテーションの発生を抑制するとともにキャビテーションの発生に伴って第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ20の吸込部周辺にエロージョンが生じることを防止することができる。
また、アンロード弁35が開弁されたとき、自動変速機70の内部を流れる作動油の温度が比較的高く、感温式開閉弁138が開弁した状態にあれば、放出通路32に放出された作動油は、第2放出通路34を通じて自動変速機70の内部に放出される。これにより、第1オイルポンプ10から吐出された作動油の一部を自動変速機70の内部、例えば、プーリと金属ベルトとの接触部に向けて放出させることによって、自動変速機70の内部を冷却ないし潤滑させることが可能となり、結果として自動変速機70の内部において焼き付きが生じることを防止することができる。
一方で、アンロード弁35が開弁されたとき、自動変速機70の内部を流れる作動油の温度が比較的低く、感温式開閉弁138が閉弁した状態にあれば、放出通路32に放出された作動油は、自動変速機70の内部に導かれることなく、第1放出通路33を通じて第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ20の吸込側に導かれる。このように、自動変速機70の内部を冷却ないし潤滑させる必要性が低い場合は、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ20の吸込側に優先して作動油を導くことにより、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ20の吸込部におけるキャビテーション及びエロージョンの発生が抑制される。
以上のように、作動流体供給装置200では、アンロード弁35を開弁させるだけで、第1オイルポンプ10から吐出された作動油が分岐通路31及び放出通路32を通じて、第1オイルポンプ10の吸込側、第2オイルポンプ20の吸込側、及び、自動変速機70の内部の何れかへと放出されることになる。
作動流体供給装置200では、放出部130に切換弁としての開閉弁が設けられていないため、作動流体供給装置200をコンパクト化することができるとともに装置の製造コストを低減させることができる。さらに、作動流体供給装置200では、コントローラ40によって放出通路32の接続先を切り換える切り換え制御を行う必要がないため、第1オイルポンプ10から吐出された作動油を放出通路32へ放出させる際の制御を単純化することができる。
また、作動流体供給装置200では、上記第1実施形態における作動流体供給装置100と同様に、アンロード弁35が開弁すると、第1オイルポンプ10から吐出された作動油は比較的圧力が低い領域に導かれ、第1オイルポンプ10の吐出側の圧力が低下するため、結果として第1オイルポンプ10の吸込側と吐出側との圧力差はゼロに近づくことになる。
したがって作動流体供給装置200においても、アンロード弁35を開閉させることで、第1オイルポンプ10を負荷運転状態と無負荷運転状態とに切り換えることが可能である。このため、第1オイルポンプ10を駆動させる必要がない場合には、エンジン50で無駄な燃料が消費されることを抑制させることができる。
以上の第2実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
作動流体供給装置200では、アンロード弁35を通じて第1オイルポンプ10から吐出された作動油を、第1オイルポンプ10の吸込側、第2オイルポンプ20の吸込側、及び、自動変速機70の内部の何れかに放出させることで、第1オイルポンプ10を駆動させる負荷がエンジン50にかからない状態とすることが可能である。第1オイルポンプ10を無負荷運転状態とするために用いられるアンロード弁35は、構造的に簡素であり、価格も比較的安価である。このため、作動流体供給装置200の製造コストを低減させることができるとともに装置全体をコンパクト化することができる。
次に、上記第2実施形態の変形例について説明する。
上記第2実施形態では、放出通路32は、第1放出通路33と、第2放出通路34と、に分岐されている。これに代えて、第2放出通路34を廃止し、第1放出通路33のみを設けた構成としてもよい。この場合、放出通路32に放出された作動油の全量が、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ20の吸込側へと導かれる。また、第2放出通路34を廃止するとともに、第2吸込側通路33bを廃止した構成としてもよい。この場合、放出通路32に放出された作動油の全量が、第1オイルポンプ10の吸込側に導かれる。同様に、第2放出通路34を廃止するとともに、第1吸込側通路33aを廃止した構成としてもよい。この場合、放出通路32に放出された作動油の全量が、第2オイルポンプ20の吸込側に導かれる。
これら何れの場合であってもアンロード弁35が開弁すると、第1オイルポンプ10から吐出された作動油は比較的圧力が低い領域に導かれ、第1オイルポンプ10の吸込側と吐出側との圧力差はゼロに近づき、第1オイルポンプ10は無負荷運転状態となる。このため、第1オイルポンプ10を駆動させる必要がない場合には、エンジン50で無駄な燃料が消費されることを抑制させることができる。
また、上記第2実施形態では、第2放出通路34に感温式開閉弁138が設けられている。これに代えて、感温式開閉弁138を設けることなく、第2放出通路34を自動変速機70の内部において常時開口させた構成としてもよい。この場合、アンロード弁35が開弁されると、放出通路32に放出された作動油は、第2放出通路34を通じて自動変速機70の内部に放出される。このため、自動変速機70の内部を冷却ないし潤滑させることが可能となり、結果として自動変速機70の内部において焼き付きが生じることを防止することができる。
また、第2放出通路34に感温式開閉弁138が設けられていない場合には、第1放出通路33を廃止した構成としてもよい。この場合、放出通路32に放出された作動油の全量が、自動変速機70の内部へと導かれることになる。このため、自動変速機70の内部を冷却ないし潤滑する作動油の流量が増加することで、自動変速機70の内部において焼き付きが生じることをより確実に防止することができる。また、この場合も、アンロード弁35が開弁すると、第1オイルポンプ10から吐出された作動油は比較的圧力が低い領域に導かれ、第1オイルポンプ10の吸込側と吐出側との圧力差はゼロに近づき、第1オイルポンプ10は無負荷運転状態となる。このため、第1オイルポンプ10を駆動させる必要がない場合には、エンジン50で無駄な燃料が消費されることを抑制させることができる。
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
作動流体供給装置100,200は、エンジン50の出力により駆動され自動変速機70へ作動油を供給可能な第1オイルポンプ10と、電動モータ60の出力により駆動され自動変速機70へ作動油を供給可能な第2オイルポンプ20と、第1オイルポンプ10の吸込側、第2オイルポンプ20の吸込側、及び、自動変速機70の内部のうち少なくとも一つに対して、第1オイルポンプ10から吐出された作動油を放出可能な放出部30,130と、を備え、放出部30,130は、第1オイルポンプ10の吸込側、第2オイルポンプ20の吸込側、及び、自動変速機70の内部の少なくとも一つに連通する放出通路32,33,34と、開弁することによって放出通路32,33,34に第1オイルポンプ10から吐出された作動油を放出させる放出弁35,35a,35b,35cと、を有する。
この構成では、第1オイルポンプ10から吐出された作動油を、放出弁35,35a,35b,35cを通じて第1オイルポンプ10の吸込側、第2オイルポンプ20の吸込側、及び、自動変速機70の内部の何れかに放出させることで、第1オイルポンプ10を駆動させる負荷がエンジン50にかからない状態とすることが可能である。第1オイルポンプ10を無負荷運転状態とするために用いられる放出弁35,35a,35b,35cは、構造的に簡素であり、価格も比較的安価である。このため、作動流体供給装置100,200の製造コストを低減させることができるとともに装置全体をコンパクト化することができる。
また、放出部30は、第2オイルポンプ20又は自動変速機70の作動状態に応じて放出通路32,33,34の連通先を切り換える切換弁35a,35b,35c,36,37,38をさらに有する。
この構成では、放出通路32,33,34の連通先が切換弁35a,35b,35c,36,37,38によって切り換えられる。このため、切換弁35a,35b,35c,36,37,38を適宜切り換えることによって、放出弁35,35a,35b,35cを通じて放出された作動油を、第1オイルポンプ10の吸込側、第2オイルポンプ20の吸込側、及び、自動変速機70の内部のうち作動油を必要とする部位へと優先して導くことができる。
また、作動流体供給装置100は、切換弁35a,35b,35c,36,37,38を切り換え制御するコントローラ40をさらに備え、コントローラ40は、第2オイルポンプ20の吐出流量が予め定められた所定の流量を超えていると判定される場合には、放出通路32,33,34が少なくとも第2オイルポンプ20の吸込側に連通するように切換弁35a,35b,35c,36,37,38を制御する。
この構成では、第2オイルポンプ20の吐出流量が予め定められた所定の流量を超えているときには、放出通路32が第2オイルポンプ20の吸込側に連通するように切換弁35a,35b,35c,36,37,38が制御される。これにより、放出通路32に放出された作動油の一部は、第2オイルポンプ20の吸込側へと導かれる。このように、放出された作動油の一部を第2オイルポンプ20の吸込側に戻すことによって、第2オイルポンプ20の吸込側において生じる吸入負圧が低減され、吸入負圧によるキャビテーションの発生が抑制されるとともに第2オイルポンプ20の吸込部周辺にエロージョンが生じることを防止することができる。
また、作動流体供給装置100は、切換弁35a,35b,35c,36,37,38を切り換え制御するコントローラ40をさらに備え、コントローラ40は、自動変速機70の内部の温度の上昇が予測される場合には、放出通路32,33,34が少なくとも自動変速機70の内部に連通するように切換弁35a,35b,35c,36,37,38を制御する。
この構成では、自動変速機70の内部の温度が上昇しているときには、放出通路32が自動変速機70の内部に連通するように切換弁35a,35b,35c,36,37,38が制御される。これにより、放出通路32に放出された作動油の一部は、自動変速機70の内部へと導かれる。このように、放出された作動油の一部を自動変速機70の内部、例えば、プーリと金属ベルトとの接触部に向けて放出させることによって、自動変速機70の内部を冷却ないし潤滑させることが可能となり、結果として自動変速機70の内部において焼き付きが生じることを防止することができる。
また、第1放出通路33は、第1オイルポンプ10の吸込側に常時連通する。
この構成では、第1放出通路33が、第1オイルポンプ10の吸込側に常時連通している。これにより、放出弁35,35a,35cを開弁するだけで、第1オイルポンプ10から吐出された作動油の一部は、第1オイルポンプ10の吸込側へと導かれることになる。このように第1オイルポンプ10から吐出された作動油を第1オイルポンプ10の吸込側に戻すことによって、第1オイルポンプ10の吸込側において生じる吸入負圧を小さくし、吸入負圧によるキャビテーションの発生を抑制するとともにキャビテーションの発生に伴って第1オイルポンプ10の吸込部周辺にエロージョンが生じることを防止することができる。
また、第1放出通路33は、第2オイルポンプ20の吸込側に常時連通する。
この構成では、第1放出通路33が、第2オイルポンプ20の吸込側に常時連通している。これにより、放出弁35,35a,35cを開弁するだけで、第1オイルポンプ10から吐出された作動油の一部は、第2オイルポンプ20の吸込側へと導かれることになる。このように第1オイルポンプ10から吐出された作動油を第2オイルポンプ20の吸込側に戻すことによって、第2オイルポンプ20の吸込側において生じる吸入負圧を小さくし、吸入負圧によるキャビテーションの発生を抑制するとともにキャビテーションの発生に伴って第2オイルポンプ20の吸込部周辺にエロージョンが生じることを防止することができる。
また、第2放出通路34は、自動変速機70の内部に常時連通する。
この構成では、第2放出通路34が、自動変速機70の内部に常時連通している。これにより、放出弁35,35b,35cを開弁するだけで、第1オイルポンプ10から吐出された作動油の一部は、自動変速機70の内部へと導かれることになる。このように第1オイルポンプ10から吐出された作動油を自動変速機70の内部、例えば、プーリと金属ベルトとの接触部に向けて放出させることによって、自動変速機70の内部を冷却ないし潤滑させることが可能となり、結果として自動変速機70の内部において焼き付きが生じることを防止することができる。
また、第2放出通路34は、自動変速機70の内部の温度に応じて自動変速機70の内部に連通する。
この構成では、自動変速機70の内部の温度が高い場合に第2放出通路34が、自動変速機70の内部に連通する。このため、自動変速機70の内部の温度が高い場合には、自動変速機70の内部へ作動油を導くことで自動変速機70の内部において焼き付きが生じることを防止することができる一方、自動変速機70の内部の温度が低く自動変速機70の内部を冷却ないし潤滑させる必要性が低い場合は、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ20の吸込側に優先して作動油を導くことにより、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ20の吸込部におけるキャビテーション及びエロージョンの発生を抑制することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記各実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
上記各実施形態による作動流体供給装置100,200は、作動流体として、作動油を使用しているが、作動油の代わりに水や水溶液等の非圧縮性流体を使用してもよい。
また、上記各実施形態による作動流体供給装置100,200は、車両の動力伝達装置に作動流体を供給するものとして説明したが、これが適用されるものは車両に限定されず、ポンプから供給される作動流体によって作動する動力伝達装置を備えたものであればどのようなものであってもよい。