以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
(実施形態1)
[車両の制御系統]
図1は、本実施形態に係る車両10の制御系統を示すブロック図である。なお、説明の便宜上、図1において、車両10の制御系統のうち、後述する活性度の推定に関係しない部品、機能ブロックは図示及び説明を省略している。
車両10は、静電誘導電流検出部11と撮像部12とECU13(Electric Control Unit)と車室内ランプ14とカーオーディオ15とエアコンディショナー16とを少なくとも有している。
静電誘導電流検出部11は車室内に設けられており、静電誘導電流検出部11の近傍にいる人の人体電位の変化により検出電極11a(図3参照)に誘起される誘導電流を検出する。例えば、車両10に乗り込もうとして車両10に近づくドライバーの人体電位の変化により検出電極11aに誘起される誘導電流を検出する。
撮像部12は、主に車外を撮影し、動画像を撮影可能なカメラであり、車室内あるいは車両10の外側に設けられている。図示しないが、撮像部12は、レンズ等の光学系とCMOSイメージセンサ等の撮像素子及び撮像素子の出力信号を信号処理する信号処理部とを有している。
ECU13は車両10の電気系統の制御を行う電子ユニットであり、図示しないが、ECU13は、各種演算を実行するCPU(Central Processing Unit)、CPUの実行する制御プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、演算結果等を格納する読書き可能なRAM(Random Access Memory)、入力インターフェース、出力インターフェース等を有している。また、ECU13は、静電誘導電流検出部11や撮像部12からの信号を受けて、後述する活性度を推定する。ECU13は、上記以外にエンジンの駆動制御機能や車両10の走行制御機能等を有するが、説明の便宜上、本明細書では記載を省略している。
車室内ランプ14は運転者の操作により、あるいはECU13またはその他の制御部からの制御信号により車室内を照明し、照明光の光量や色相を変化するように構成されている。
カーオーディオ15は運転者の操作により、あるいはECU13またはその他の制御部からの制御信号により楽曲等を選曲し、図示しないスピーカーを通じて選曲された楽曲を出力するように構成されている。
エアコンディショナー16は運転者の操作により、あるいはECU13またはその他の制御部からの制御信号により車室内の温度や湿度等を調整するように構成されている。
[活性度推定装置の構成]
図2は、本実施形態に係る活性度推定装置20の機能ブロック図を示す。
活性度推定装置20は、物理量測定部21と、評価スコア算出部22と、活性度推定部25と、を有している。
ここで、活性度とは、測定対象となる人の体調や心的状態、あるいはこれら2つの状態を総合して得られた状態を示し、定量的あるいは定性的に表現される。例えば、活性度が高いと疲労が少なく体調は快調であり、心的状態は高揚している。反対に、活性度が低いと疲労が蓄積されて体調は不調であり、心的状態は憂鬱である。
物理量測定部21は、図1に示す静電誘導電流検出部11または撮像部12、あるいはその両方を含み、車外にいる人を測定対象として、その人の運動に関する物理量、具体的には、被測定者の動画像を撮影したり、被測定者の人体電位の変化により検出電極11a(図3参照)に誘起される誘導電流を検出したりする機能を有する。
評価スコア算出部22はデータ加工部23と統計処理部24とを有している。
データ加工部23は、物理量測定部21で測定された物理量データを加工して加工データを作成する。加工データは評価指標を選択するための基礎データ、例えば、統計処理部24で統計処理を行うための基礎データとして用いられる。また、加工データは、被測定者の運動パターン、例えば、歩行ピッチや足上げ高さ等を含み、これらのデータは記憶部27に保存される。
統計処理部24は上記の加工データに基づき、必要な統計量を算出する。算出される統計量は平均や分散等であるが、例えば、平均のみ算出してもよい。また、算出された統計量を因子として主成分分析を行う。このとき、分析結果が所定の範囲の信頼度となるよう各因子の重み付けを行い、主成分を算出する。
また、評価スコア算出部22は、主成分分析において、所定の範囲の信頼度が得られた主成分を評価指標として選択する。あるいは統計量自体を評価指標として選択する。評価指標として、加工データ自体を選択するか加工データを統計処理部24で統計処理して得られた統計量、あるいは統計量に基づき主成分分析で得られた主成分を選択するかは測定物理量の種類や統計量の種類等を考慮して、評価スコア算出部22で選択される。
さらに、評価スコア算出部22は、選択された評価指標に関する数値化されたデータ(以下、評価スコアという)を算出する。なお、評価スコアは、算出された数値化データそのものでもよいし、数値化データを所定の範囲毎に区切り、例えば10段階に区分して、これを新たな評価スコアとしてもよい。評価スコアとして、評価指標に関する数値化されたデータ自体を使用するか区分された段階値を使用するかは適宜決められる。区分された段階数等も適宜決められる。また、評価スコアが高い程、活性度は高いと推定される。
活性度推定部25は評価スコア算出部22で選択された評価指標及びその評価スコアに基づき被測定者の活性度を推定する。前述したように、活性度は定量的、例えば数値化データとして、あるいは定性的、例えば高中低等として表現されていてもよい。
また、活性度推定装置20は、車室制御部26と記憶部27とを有していてもよい。
車室制御部26は活性度推定部25で推定された活性度に基づき車室内の環境を制御する。例えば、図1に示す車室内ランプ14に対し、車室制御部26から制御信号を入力して、車室内ランプ14の光量や照明光の色相を変化させるように構成されている。同様に、カーオーディオ15で選曲される楽曲や、楽曲の演奏時の音量等を制御するように構成されている。また、エアコンディショナー16から送風される空気の温度や湿度等を制御するように構成されている。
評価スコア算出部22と、活性度推定部25と、車室制御部26とは、ECU13上で実現される機能であり、概ねソフトウェア上で実現可能である。この場合、例えば、ECU13内のROM(図示せず)に格納されたプログラムを、ECU13を含むハードウェア上で実行して活性度が推定される。
記憶部27は、物理量測定部21で測定された物理量データや当該物理量データの加工データや統計処理部24で算出された統計量や主成分及び評価スコア算出部22で算出された評価スコアや活性度推定部25で推定された活性度等を保存する。物理量データとしては、例えば、静電誘導電流検出部11で検出された静電誘導電流の時系列データや、撮像部12で撮影された動画像等が挙げられる。記憶部27は、これら全てのデータを保存してもよいし、一部のデータのみ保存してもよい。活性度の推定や活性度に基づく車室制御のために必要なデータが保存されればよく、さらに、活性度推定方法を規定するプログラムが保存されていてもよい。
記憶部27は、ECU13内のRAMやROMであってもよい。また、図示しない光ディスク等の外部記録媒体や図示しない外部サーバ等であってもよい。なお、記憶部27が外部サーバである場合には、車両10のECU13と外部サーバとの間で、図示しない無線通信部を介してデータの授受が行われる。あるいは、外部サーバから受け取ったデータを、一旦、ECU13内のRAMに格納して活性度推定を行ってもよい。
なお、図2において、活性度推定装置20が、車室制御部26と記憶部27とを含む構成を示したが、前述したように、これらの機能ブロックは活性度推定装置20の外部に配置されていてもよく、その場合は、活性度推定装置20との間で有線または無線通信によりデータの授受が可能であればよい。
また、図2において、各機能ブロックの間を矢印でつないでいるが、これはやり取り可能な信号の一部の流れを示しているのであり、実際に各機能ブロック間が結線されていることを意味しない。ただし、例えば、ワイヤードロジック等により、各機能ブロック間が結線されていてもよい。また、ケースに応じて図示したルートで信号のやり取りが行われない場合もありうるし、図示する以外のルートで信号の授受が行われる場合もある。
[静電誘導電流による人体運動検出原理]
人体は人体周囲の物体と接触することにより帯電することがわかっている。特に、歩行運動では、靴底等を介して人体と地面との接触が周期的に繰り返され、この運動に応じて人体の電位が変化する。よって、歩行者近傍に設置した電極に流れる静電誘導電流を測定することにより、人体電位の変化、ひいては、歩行運動の状態を検出することができる。
図3は、本実施形態に係る静電誘導電流測定系の構成を示す。
静電誘導電流検出部11は、検出電極11aを有する静電容量センサ(図示せず)を備えている。なお、静電誘導電流検出部11は車室内に配置され、車両10の近傍を通過する歩行者の歩行運動に基づき発生する静電誘導電流を検出している。
後で詳述するように、検出電極11aには人体との間の静電容量に基づき電荷が誘起されて静電誘導電流が流れ、この静電誘導電流は電流計(図示せず)で検出される。また、静電誘導電流を検出するためには、静電誘導電流検出部11に対して、被測定者が所定の距離以内にいる必要がある。本実施形態では、所定の距離を5mとしているが、特にこれに限定されず、車両10の外部の環境や静電誘導電流検出部11の性能等により適宜変更されうる。
また、検出された電流は微弱であるため、一定以上のレベルに増幅する場合がある。その場合、図示しないが、静電誘導電流検出部11は、I/V変換器と、ローパスフィルタと、増幅器とをさらに有していてもよい。電流計で検出された電流をI/V変換器で電圧信号に変換した後、ローパスフィルタを通過させてノイズを除去する。ローパスフィルタを用いるのは、例えば、車両内の機器のオンオフに伴うスパイクノイズを除去するためであり、また、人体の運動に伴う信号であるため、一定以上の周波数の信号はノイズとみなせるためである。例えば、ローパスフィルタのカットオフ周波数を20Hzに設定してもよい。ただし、特にこれに限定されず、検出すべき歩行運動速度や周辺機器の配置等により適宜変更されうる。ローパスフィルタを通過した信号は増幅器で増幅されて電圧信号として検出される。
次に、静電誘導電流による人体運動検出原理について説明する。
人体が直立状態で静止している場合、地面と足の裏との間に靴底と地面表面層の2つの高抵抗層を形成している。ここで、地面と足の間の静電容量Csfは、足の靴底の静電容量Csと地面表面層の静電容量Cfとの直列結合と考えられる。さらに、地面の上に直立静止した人体と、人体周辺の壁などの近接物体との間の静電容量をC0とすると、地面の上に直立静止した人体の静電容量CBは式(1)で与えられる。
ここで、人が歩行運動等をしている場合には、足の動きにより発生する静電容量Cxは式(2)で与えられる。
ここで、εaは地面と足の裏との間の空隙の誘電率、xは靴底と地面との距離、Sは人体周囲の物体と人体の接触面積を表わしている。人が周囲の物体と接触している場合には、式(2)で表わされる静電容量Cxと式(1)で表わされる静電容量CBとが直列結合しているとみなすことができる。従って、周囲の物体との接触動作による人体の全体の静電容量Cは式(3)で表わされる。
また、このときの人体のポテンシャルUBは式(4)で表わされる。
ここで、QBは接触動作により人体に帯電する電荷量である。
以上を踏まえて、人体の近傍に検出電極11aを設置した場合を考える。人体と電極との間の静電容量をC、人体のポテンシャルをUB、検出電極11aの電位をVとすると、静電誘導電流により検出電極11aに誘起される電荷Qは式(5)で表わされる。
従って、人体近傍に設置した検出電極11aに流れる誘導電流Iは式(6)で表わされる。
式(6)の第1項は、接触面積Sの時間微分に比例した項である。よって、静電誘導電流Iには、人体の接触面積増加時や減少時、つまり、足の上げ下ろし動作時にピークが発生することがわかる。このことにより、人の歩行運動、例えば、足上げの高さや歩行ピッチ等を検出することができる。また、式(6)の第2項は、靴底と地面との距離xの時間微分に比例した項である。足上げ下ろしの速度は第1項及び第2項に影響する。
[活性度推定手順]
図4は、本実施形態に係る歩行運動時の静電誘導電流波形を示す。
図4に示すように、人が車外にいる場合と車内にいる場合とでは電流波形の変化が見られる。検出電極11aとの距離に応じて静電誘導電流が変化するためであり、車内では、検出電極11aと人体との距離が近いため、人体のわずかな動きに対しても、静電誘導電流の振幅が大きく変化する。また、この振幅の変化が人の状態に対応しているのか見極めが難しい。以上を踏まえて、人が車外にいる場合に検出される静電誘導電流について検討する。
図5は、異なる時間帯で取得された静電誘導電流の時系列データを示し、表1は、当該時間帯における被測定者の活性度を示す。なお、図5において、測定開始後に人が車外にいると確認される時間は、図4に示すのと同様に約5秒である。また、表1における活性度は別の手法で推定された値を用いている。別の手法としては、例えば、被測定者の心拍や体温、あるいは脳波等の身体からの信号等に基づき活性度を推定することができる。
図5及び表1から明らかなように、人が車外にいる状態で測定された静電誘導電流の振幅は、人の活性度の高低に対応している。前述したように、歩行時に足を高く上げたり、歩行ピッチが速かったりする場合は、静電誘導電流の振幅が大きくなる。また、このような場合、歩行者は、疲労度が低く体調が良好であるか気分が高揚しているか、あるいはその両方であることが多い。つまり、静電誘導電流の振幅は活性度を推定するための評価指標とすることができる。以上を踏まえて、静電誘導電流の振幅に基づいて人の活性度を推定する手順について説明する。
図6は、活性度推定部25において行われる活性度推定のためのフローチャートを示す。
車両10の近傍、例えば5m以内を人が歩行しているとき、静電誘導電流検出部11で静電誘導電流を測定する(ステップS1)。静電誘導電流の測定は人が車両10に乗り込んだ後まで行ってもよい。測定された静電誘導電流の時系列データは記憶部27に記憶される。なお、静電誘導電流を電圧信号に変換して出力する場合には、変換された電圧信号が記憶部27に記憶される。また、この場合は、以降のステップにおいて電圧信号に基づいてデータ加工等が行われる。
記憶部27から静電誘導電流の時系列データを読み出し、人が車外にいるときのデータを切り出す(ステップS2)。人が車外にいる時間帯は、静電誘導電流の振幅の変化から把握してもよいし、それ以外の方法で把握してもよい。例えば、撮像部12で撮影された動画像から当該時間帯を把握することができる。また、スマートキー等からの無線信号で車両10のエンジン等を起動させる場合には、無線信号の受信開始時刻と車両10のドアが開けられた時刻までを人が車外にいる時間帯として把握することができる。ドアが開けられたかどうかは図示しないセンサ等で検知する。なお、上記のデータ切り出しは、主に図2に示すデータ加工部23で行われる。
切り出された時系列データから静電誘導電流の振幅成分Aを抽出する(ステップS3)。振幅成分Aは、活性度を推定するための評価指標であり、静電誘導電流に基づいて得られる。静電誘導電流に基づいて得られる評価指標を以下、静電誘導電流関連指標という。静電誘導電流を電圧信号に変換した場合も、得られた評価指標は同様に静電誘導電流関連指標という。
なお、振幅成分Aは、人が車外にいる時間帯にわたって取得された時系列データの平均から求めてもよいし、あるいは当該時間帯での最大振幅値を用いてもよい。また、振幅の自乗を用いてもよい。振幅成分Aの抽出方法は、適宜決めることができる。なお、振幅成分Aの抽出は、図2に示すデータ加工部23または統計処理部24で行われる。
次に、抽出された振幅成分Aが所定の閾値TH1よりも大きいかどうかを判定する(ステップS4)。判定がYES、すなわち、振幅成分Aが閾値TH1よりも大きければ、被測定者の活性度は高いと推定し(ステップS5)、判定がNO、すなわち、振幅成分Aが閾値TH1以下であれば、被測定者の活性度は低いと推定する(ステップS6)。上記の判定及び活性度の推定は主に図2に示す活性度推定部25で行われる。なお、活性度の推定にあたって、複数の閾値を設けてもよい。段階的に閾値を設けることで活性度を細分化でき、例えば、後述する車室内環境をより細やかに制御できる。
なお、振幅成分A及び活性度の推定結果は記憶部27に保存される。また、データ加工部23で切り出された時系列データに基づき、人の足上げ高さや歩行ピッチ等を算出することができる。これらの算出結果も記憶部27に保存される。
このように、本実施形態によれば、車両10の近傍にいる人の運動状態を人体電位の変化としてとらえ、この電位変化に基づく静電誘導電流を検出して、検出結果に基づいて評価指標を選択し、選択された評価指標の評価スコアに基づいて人の体調及び/または心的状態を表現する活性度を推定することができる。また、人の運動状態を測定するためのセンサを常時携帯したり、センサの取り付け位置の調整やセンサの着脱毎にキャリブレーションを行ったりする必要がなく、簡便に活性度を推定することができる。さらに、人の運動状態を非接触で測定するため、被測定者が測定されているという心理的な圧迫感を感じることがなく、正確に活性度を推定できる。
また、人の歩行運動は人体電位の変化量が大きく、静電誘導電流を検出しやすい。さらに、人が歩行するにあたって全身を使うため、体調や心的状態が歩行運動に現れやすい。従って、人の歩行運動に伴って生じる静電誘導電流を検出することで精度良く活性度を推定することができる。
また、人体電位を直接測定するのではなく、人体電位の変化によって生じる静電誘導電流を測定することで、外乱の影響を受けにくくなる。このことについてさらに説明する。人体電位の絶対値は人体の帯電状況や周囲物体の帯電状況により大きく影響を受ける。一方、人体電位が変化した場合だけ誘起される静電誘導電流を検出することにより、測定結果に及ぼす上記の帯電状況の影響を抑制することができる。電流計測と電位計測との差異を具体的に説明すると、例えば、電極近傍に人体が直立不動で静止している場合,電位計測を行なうと、ある有限な値を計測することができる.しかし、静電誘導電流は電位が変化していないためゼロの値を示すことになる.このように、静電誘導電流は人体電位の変化により誘起されるため、歩行運動のような急激な人体電位変動の検出に適していると考えられる。従って、静電誘導電流の測定結果に基づいて人の活性度を推定する本方法は、外乱の影響を受けにくく、精度良く活性度を推定することができる。
[車室内照明の制御]
図2に示すように、活性度推定装置20内に、あるいは活性度推定装置20の外部に車室制御部26を有する場合に、活性度推定部25で推定された活性度に基づいて車室内の環境を制御することができる。
図7は、図6の続きを示すフローチャートであり、車室内の照明制御を示す。図6に示すフローチャートにおいて、被測定者の活性度が高いと推定した場合(ステップS5)、図7に示すように、振幅成分Aが所定値以上かどうかを判定する(ステップS7)。判定がYES、すなわち、振幅成分Aが所定値以上であれば、車室制御部26による車室内ランプ14の制御を開始し、照明光の色相が寒色系になるよう車室内ランプ14を制御する(ステップS8)。判定がNO、すなわち、振幅成分Aが所定値より小さい場合は、車室内ランプ14の制御を行わず、待機状態となる。
一方、図6に示すフローチャートにおいて、被測定者の活性度が低いと推定した場合(ステップS6)も同様に、図7に示すように、振幅成分Aが所定値以上かどうかを判定する(ステップS9)。この場合、時間に対して振幅成分Aが単調に増加しているかどうかも判定している。ステップS9での判定がYES、すなわち、振幅成分Aが所定値以上であれば、車室制御部26による車室内ランプ14の制御を開始し、照明光の色相が暖色系になるよう車室内ランプ14を制御する(ステップS10)。判定がNO、すなわち、振幅成分Aが所定値より小さい場合は、車室内ランプ14の制御を行わず、待機状態となる。
被測定者が車両10を運転するドライバーである場合、ドライバーの活性度に応じて車室内の照明光の色相を変化させることで、高揚した気分を鎮めてドライバーを落ち着かせたり、あるいは落ち込んだ気分を持ち上げて、ドライバーが運転に集中できるようにしたりすることができる。また、振幅成分Aが所定値以上かどうかを判定することで、ドライバーが車両10に接近したかどうかを判定することができる。このことにより、車室内ランプ14の制御を適切なタイミングで開始することができる。
図8は、推定された活性度に基づく車室内照明光の色相制御の一例を示す。色相制御では車両内外の種々の環境に合わせて適宜変更しうる。例えば、図8に実線で示すように、活性度に応じて連続的に照明光の色相を変化させてもよいし、一点鎖線で示すように段階的に変化させてもよい。あるいは、図8に破線で示すように、所定の活性度までは中間色とし、推定された活性度が所定の値よりも低い場合に照明光の色相が暖色系になるように制御してもよい。
なお、本実施形態において、推定された活性度に基づいて車室内の照明光の色相を制御する例を示したが、照明以外の車室内環境についても推定された活性度に基づいて制御可能である。例えば、図1に示すカーオーディオ15に対して、推定された活性度が高い場合には、落ち着いた印象の楽曲を、また、推定された活性度が低い場合には、快活な印象の楽曲をそれぞれ選曲し、運転時に当該楽曲を再生するように制御してもよい。あるいは、図1に示すエアコンディショナー16に対して、推定された活性度が高い場合には、ドライバーの体温が上昇しているものと推定し、車室内の温度あるいは湿度を下げるように制御し、また、推定された活性度が低い場合には、ドライバーの体温が低下しているものと推定し、車室内の温度を上げるように制御してもよい。
これらに限られず、活性度推定部25で推定された活性度に基づいて、車室制御部26により車室内の種々の環境を制御して、運転開始時にドライバーを快適な状態にすることで、ドライバーを運転に集中させることができる。このことにより、車両10の安全運転を行うことができる。
(実施形態2)
静電誘導電流の振幅は被測定者の個体差によって変化する場合がある。例えば、身長が極端に異なる人の間では、歩行ピッチが同じだとしても、歩幅や足上げ高さが異なってくる。よって、両者の本来の活性度が同程度であったとしても、測定される静電誘導電流の振幅が異なってくる場合がある。このような場合に、静電誘導電流の振幅成分をそのまま評価指標として用いると活性度の推定結果が実際と大きく異なる場合がある。
そこで、静電誘導電流の時系列データを統計処理し、得られた統計量を因子として主成分分析を行い、主成分分析に用いられた主成分を評価指標とすることで、推定結果の信頼度を向上させることができる。
図9は、活性度推定部25において行われる活性度推定のためのフローチャートを示す。
図9に示すフローチャートのうち、ステップS11,S12は図6に示すフローチャートのステップS1,S2と同じであるから説明を省略する。
ステップS12の後は図9に示すフローチャートの左側に進んで静電誘導電流の時系列データを求め(ステップS13)、以下の基本統計量を算出する(ステップS14)。本実施形態において算出される基本統計量は、平均(X1)、分散(X2)、歪度(X3)、尖度(X4)、時系列データを回帰分析した際の傾き(X5)及び切片(X6)の6つであり、人が車外にいる時間帯の時系列データに対してこれらの統計量を算出する。
ステップS14で算出された各統計量を因子として主成分分析を行い、第1主成分PC1及び第2主成分PC2をそれぞれ算出する(ステップS15)。なお、主成分分析を行うにあたって、データ群の信頼度がT検定で所定の範囲、例えば信頼度p<0.1となるように、因子の重み付けが行われる。
従って、第1主成分PC1は以下の式(7)で表わされる。
PC1=a11X1+a12X2+a13X3+a14X4+a15X5+a16X6・・・(7)
ここで、a11~a16は、第1主成分における因子の重み付け係数である。
また、第2主成分PC2は以下の式(8)で表わされる。
PC2=a21X1+a22X2+a23X3+a24X4+a25X5+a26X6・・・(8)
ここで、a21~a26は、第2主成分における因子の重み付け係数である。
第1及び第2主成分PC1,PC2ともに、静電誘導電流に基づいて選択された静電誘導電流関連指標である。また、ステップS14,S15は、主に図2に示す統計処理部24で行われる。
次に、第1主成分PC1と所定の閾値A1との大小関係を比較する(ステップS16)。第1主成分PC1が閾値A1よりも大きいYESの場合はステップS17に進み、閾値A1以下のNOである場合は活性度が低いと推定する(ステップS19)。
ステップS17において、第2主成分PC2と所定の閾値B1との大小関係を比較する。第2主成分PC2が閾値B1よりも大きいYESの場合は活性度が高いと推定し(ステップS18)、閾値B1以下であるNOの場合は活性度が低いと推定する(ステップS19)。
図10に、第1及び第2主成分PC1,PC2のロジスティック回帰分析結果を示す。図10において、白色の丸や三角等で示したデータは活性度が高いとされた場合のデータを示し、黒色の丸や三角等で示したデータは活性度が低いとされた場合のデータを示す。また、丸や三角等は、それぞれ異なる被測定者に対応したデータである。
図10に示すように、第1及び第2主成分PC1,PC2を評価指標とした場合に、活性度が高い群(白色の丸や三角等で示したデータ)と活性度が低い群(黒色の丸や三角等で示したデータ)とが破線で示す境界で分離されている。つまり、第1及び第2主成分PC1,PC2を評価指標とすることで活性度を適切に推定できていることがわかる。
なお、活性度の推定は上記のステップに限定されず、例えば、ステップS16において、第1主成分PC1が閾値A1よりも大きく、ステップS17において、第2主成分PC2が閾値B1よりも小さい場合は、活性度を中としてもよい。また、ステップS16,S17においてそれぞれ複数の閾値を設定し、活性度が多段階で推定されるようにしてもよい。また、PC1とPC2との組(PC1,PC2)を活性度として表現してもよい。
このように、本実施形態によれば、静電誘導電流の時系列データから統計量を算出し、当該統計量に基づいて得られた主成分を活性度推定のための評価指標とすることで、活性度の推定結果の信頼度を向上させることができる。
なお、評価指標である第1及び第2主成分PC1,PC2の抽出に用いられる統計量は上記の6つに特に限定されない。これらの一部を用いてもよいし、他の統計量を用いてもよい。
なお、実施形態1と同様に、本実施形態における活性度推定に基づいて、図7に示すように車室内の照明光の色相を制御できることは言うまでもない。同様に、照明以外の車室内環境についても推定された活性度に基づいて制御可能である。
<変形例1>
車両外部の状況によっては、静電誘導電流の時系列データにノイズが多く含まれる場合がある。このような場合、静電誘導電流の時系列データから直接に統計量を算出するのではなく、例えば、時系列データの包絡線を求め、この包絡線から統計量を算出する。
図9に示すフローチャートにおいて、ステップS11,S12を実行後、同フローチャートの左右中央に進んで時系列データの包絡線を求める(ステップS23)。なお、ステップS23は主にデータ加工部23で行われる。ステップS24~S29は、閾値の違いを除きステップS14~S19と同様であるので説明を省略する。
図11は、本変形例に係る第1及び第2主成分PC1,PC2のロジスティック回帰分析結果を示す。図11において、データを示す白色の丸や三角等、また、黒色の丸や三角等は図10に示すデータと同様の意味を持つ。
図11に示すように、本変形例においても、活性度が高い群(白色の丸や三角等で示したデータ)と活性度が低い群(黒色の丸や三角等で示したデータ)とが破線で示す境界で分離され、第1及び第2主成分PC1,PC2を評価指標とすることで活性度を適切に推定できていることがわかる。
このように、時系列データの包絡線を求め、さらに算出された統計量から主成分を抽出し評価指標とすることで、活性度の推定結果の信頼度を向上させることができる。
<変形例2>
静電誘導電流の時系列データから周波数成分を求めて、統計量を算出することもできる。
図9に示すフローチャートにおいて、ステップS11,S12を実行後、同フローチャートの右側に進み、時系列データをフーリエ変換して周波数成分を求める(ステップS33)。周波数成分として振幅の自乗であるパワーの周波数依存性データ(以下、パワースペクトルという)及び位相の周波数依存性データ(以下、位相スペクトルという)がそれぞれ得られる。なお、ステップS33は主にデータ加工部23で行われる。
図12A,12Bは、それぞれ、異なる時間帯で取得された静電誘導電流のパワースペクトルと位相スペクトルとを示す。
これらのスペクトルから、以下の基本統計量を算出する(ステップS34)。本実施形態において算出される基本統計量は、パワースペクトルを直線回帰分析した際の傾き(Y1)及び切片(Y2)、さらに位相スペクトルを直線回帰分析した際の傾き(Y3)及び切片(Y4)の4つであり、人が車外にいる時間帯のそれぞれのスペクトルに対してこれらの統計量を算出する。なお、図12A,12Bにおいて、各々のスペクトルを直線回帰分析したときの回帰直線は図示していない。
図9に示すフローチャートにおいて、ステップS34で算出された各統計量を因子として主成分分析を行い、第1主成分PC1及び第2主成分PC2をそれぞれ算出する(ステップS35)。なお、主成分分析を行うにあたって、データ群の信頼度がT検定で所定の範囲、例えば信頼度p<0.1となるように、因子の重み付けが行われる。
従って、第1主成分PC1は以下の式(9)で表わされる。
PC1=b11Y1+b12Y2+b13Y3+b14Y4・・・(9)
ここで、b11~b14は、第1主成分における因子の重み付け係数である。
また、第2主成分PC2は以下の式(10)で表わされる。
PC2=b21Y1+b22Y2+b23Y3+b24Y4・・・(10)
ここで、b21~b24は、第2主成分における因子の重み付け係数である。
ステップS34,S35は、主に図2に示す統計処理部24で行われる。また、ステップS36~S39は、閾値の違いを除きステップS16~S19と同様であるので説明を省略する。
図13は、本変形例に係る第1及び第2主成分PC1,PC2のロジスティック回帰分析結果を示す。図13において、データを示す白色の丸や三角等、また、黒色の丸や三角等は図10に示すデータと同様の意味を持つ。
図13に示すように、本変形例においても、活性度が高い群(白色の丸や三角等で示したデータ)と活性度が低い群(黒色の丸や三角等で示したデータ)とが破線で示す境界で分離され、第1及び第2主成分PC1,PC2を評価指標とすることで活性度を適切に推定できていることがわかる。
このように、時系列データの周波数成分から統計量を算出し、当該統計量に基づいて得られた主成分を活性度推定のための評価指標とすることで、活性度の推定結果の信頼度を向上させることができる。
なお、評価指標である第1及び第2主成分PC1,PC2の算出に用いられる統計量は上記の4つに特に限定されない。これらの一部を用いてもよいし、他の統計量を用いてもよい。
なお、変形例1,2において、実施形態1,2と同様に、図7に示すように車室内の照明光の色相を制御できることは言うまでもない。同様に、照明以外の車室内環境についても推定された活性度に基づいて制御可能である。
なお、前述したように、種々の条件によって、選択される評価指標は変更されうるが、静電誘導電流の振幅成分を評価指標の第1選択候補としてもよい。また、評価指標は変形例を含む実施形態1,2に示したものに限定されず、例えば、静電誘導電流の時系列データから変動周期を読み取って評価指標としてもよい。また、複数の評価指標に基づき活性度を推定してもよい。例えば、静電誘導電流の振幅成分に基づき推定された活性度に対し、周波数成分から算出された統計量に基づき推定された活性度を用いて補正を行い、活性度の推定精度を向上させることも可能である。
(実施形態3)
人の活性度を推定するために用いられる物理量は静電誘導電流に限定されない。例えば、被測定者の動画像に基づき活性度を推定することも可能である。
図14は、被測定者の動画像に基づいて行われる活性度推定のためのフローチャートを示す。
車両10の近傍、例えば5m以内を人が歩行しているとき、撮像部12で歩行者の動画像を撮影する(ステップS41)。動画像の撮影は人が車両10に乗り込んだ後まで行ってもよい。撮影された動画像は記憶部27に記憶される。
記憶部27から動画像を読み出し、人が車外にいるときの画像データを切り出す(ステップS42)。人が車外にいる時間帯は、撮像部12で撮影された動画像から把握してもよいし、それ以外の方法で把握してもよい。例えば、静電誘導電流の振幅の変化から当該時間帯を把握することができる。また、スマートキー等からの無線信号で車両10のエンジン等を起動させる場合には、無線信号の受信開始時刻と車両10のドアが開けられた時刻までを人が車外にいる時間帯として把握することができるのは実施形態1と同様である。上記のデータ切り出しは、主に図2に示すデータ加工部23で行われる。
切り出された動画像データを画像解析し、特徴値Cを算出する(ステップS43)。この特徴値Cは、活性度を推定するための評価指標であり、上記の動画像に基づいて得られる。動画像に基づいて得られる評価指標を以下、画像関連指標という。
ここで、特徴値Cを算出する手順の一例を説明する。まず、切り出された動画像データを画像解析し、被撮影者の歩行運動に関わる身体部位、例えば、膝を特定する。次に、特定された膝の運動軌跡に関する量(以下、運動特徴量という)、例えば、運動速度、運動方向、運動周期、動きの幅等を算出する。算出された運動特徴量、あるいはその一部の値を特徴値Cとする。なお、特徴値Cを算出するにあたって用いられる身体部位やその運動特徴量及び運動特徴量の組合せは、撮像部12の性能や算出時の処理速度等によって適宜変更されうる。例えば、上記の身体部位は足先や頭部であってもよい。また、特徴値Cの算出は、図2に示すデータ加工部23または統計処理部24で行われる。
次に、特徴値Cをそのまま画像関連指標とするかどうかを判定する(ステップS44)。特徴値Cをそのまま画像関連指標とする場合は、特徴値Cが所定の閾値TH2よりも大きいかどうかを判定する(ステップS45)。判定がYES、すなわち、特徴値Cが閾値TH2よりも大きければ、被撮影者の活性度が高いと推定し(ステップS46)、判定がNO、すなわち、特徴値Cが閾値TH2以下であれば、被撮影者の活性度が低いと推定する(ステップS47)。上記の判定及び活性度の推定は、主に図2に示す活性度推定部25で行われる。なお、活性度の推定にあたって、複数の閾値を設けてもよい。段階的に閾値を設けることで活性度を細分化でき、例えば、前述した車室内環境の制御をより細やかに行うことができる。
なお、特徴値C及び活性度の推定結果は記憶部27に保存される。また、データ加工部23で切り出された動画像データに基づき、人の足上げ高さや歩行ピッチ等を算出することができる。これらの算出結果も記憶部27に保存される。
運動特徴量に基づいて得られた統計量等を特徴値Cとする。
また、ステップS44の判定がNO、すなわち、特徴値Cをそのまま画像関連指標としない場合は、画像解析結果に基づき特徴値Cに関する統計量を算出し(ステップS48)、算出された各統計量を因子として主成分分析を行い、第1主成分PC1及び第2主成分PC2をそれぞれ算出する(ステップS49)。
次に、第1主成分PC1と所定の閾値A4との大小関係を比較する(ステップS50)。判定がYES、すなわち、第1主成分PC1が閾値A4よりも大きい場合はステップS51に進み、判定がNO、すなわち、閾値A4以下である場合は活性度が低いと推定する(ステップS53)。
ステップS51において、第2主成分PC2と所定の閾値B4との大小関係を比較する。判定がYES、すなわち、第2主成分PC2が閾値B4よりも大きい場合は活性度が高いと推定し(ステップS52)、判定がNO、すなわち、閾値B4以下である場合は活性度が低いと推定する(ステップS53)。
なお、活性度の推定は上記のステップに限定されず、例えば、ステップS50において、第1主成分PC1が閾値A4よりも大きく、ステップS51において、第2主成分PC2が閾値B4よりも小さい場合は、活性度を中としてもよい。また、ステップS50,S51においてそれぞれ複数の閾値を設定し、活性度が多段階で推定されるようにしてもよい。また、活性度を単にPC1とPC2との組(PC1,PC2)と表現してもよい。
このように、本実施形態によれば、車両10の近傍にいる人の運動状態を撮影し、撮影された動画像に基づいて画像関連指標を選択し、選択された画像関連指標の評価スコアに基づいて人の体調及び/または心的状態を表現する活性度を推定することができる。また、実施形態1,2と同様に、人の運動状態を測定するためのセンサを常時携帯したり、センサの取り付け位置の調整やセンサの着脱毎にキャリブレーションを行ったりする必要がなく、簡便に活性度を推定することができる。さらに、被撮影者が撮影されているという心理的な圧迫感を感じることがなく、正確に活性度を推定できる。
また、人の歩行運動は人体部位の位置変化量が大きく、特徴値Cを抽出しやすい。さらに、人が歩行するにあたって全身を使うため、体調や心的状態が歩行運動に現れやすい。従って、人の歩行時の動画像を撮影することで精度良く活性度を推定することができる。
なお、実施形態1,2と同様に、本実施形態における活性度推定に基づいて、図7に示すように車室内の照明光の色相を制御できることは言うまでもない。同様に、照明以外の車室内環境についても推定された活性度に基づいて制御可能である。また、画像関連指標の評価スコアから推定された活性度に基づいて車室内環境を制御する場合は、図7に示すステップS7,S9において、撮影された画像領域内での被撮影者の面積割合が、所定値以上かどうかが判定され、当該面積割合が所定値以上であれば、車室制御部26による車室内環境の制御が開始される。
なお、一般に、動画像の画像解析は処理時間がかかるとともに、画像解析に用いられるLSI等が高価なものとなる。また、動画像の撮影は、静電誘導電流の測定と比べて、外光や撮像部12と被撮影者との間の障害物等の外乱の影響を受けやすい。よって、本実施形態に係る活性度推定方法を、実施形態1,2に係る活性度推定方法の補助的方法として用いてもよい。
(実施形態4)
実施形態1~3に示した方法により評価スコアを算出した場合、個人間で推定された活性度のばらつきが大きい場合がある。図15は、評価対象者の活性度と評価スコアとの対応の一例を示す対応表である。なお、図15において、評価指標の値を10段階に区分して評価スコアとし、活性度を高低の2段階としている。図15に示す対応表は、例えば、過去の活性度推定結果に基づいて得られる。また、実施形態1~3に示す方法で推定された活性度との対応付けがなされていれば、対応表中の活性度は、他の手法、例えば、被測定者の心拍や体温、あるいは脳波等の身体からの信号等に基づいて推定された値を用いてもよい。
図15から明らかなように、静電誘導電流や動画像に基づき評価指標を選択した場合に、当該評価指標に関する評価スコアが同じであっても人によって実際の活性度が異なりうる。これは主に各人の体格や性別等の違いによる。このような場合は、活性度の推定が難しくなる。
一方、人の歩行パターンや特徴的な身体部位の形状等(以下、身体特徴情報という)は個人に特有のものであることがわかっている。そこで、予めわかっている特定の個人に関し、運動パターンに関する情報(以下、運動パターン情報という)や身体特徴情報を保存しておき、測定された静電誘導電流に基づいて得られる運動パターン情報や撮影された動画像に基づいて得られる身体特徴データと、特定の個人の運動パターン情報や身体特徴情報とを照合する。この照合結果に基づき、現在の被測定者が既知の特定人であるかどうかを知ることで、活性度の推定精度をより向上させることができる。
なお、以降の説明において、特定の個人の運動パターン情報や身体特徴情報、あるいはこれら両方の情報及び評価対象者の活性度と評価スコアとの対応に関する情報を特定人情報という。
図16は、特定人情報に基づく活性度推定のためのフローチャートを示す。なお、図16において、ステップS61~S63は、図6に示すフローチャートのステップS1~S3と同様であるので説明を省略する。
ステップS63の後、静電誘導電流の時系列データから運動パターン情報I1を抽出する(ステップS64)。なお、運動パターン情報I1は被測定者の歩行パターンの情報であり、例えば、歩行ピッチや足上げ高さ等である。また、ステップS64はステップS63の前に実行されてもよいし、ステップS63と並行して実行されてもよい。
これらのステップS61~S64が実行される間のいずれかのタイミングで、記憶部27から特定人情報I2を読み出す(ステップS65)。この場合の特定人情報I2は、特定の個人に関する歩行パターンの情報である。
次に、検出された静電誘導電流に基づいて得られた運動パターン情報I1と記憶部27から読み出された特定人情報I2とを照合し、両者が一致しているかどうかを判定する(ステップS66)。判定がYES、すなわち、両者が一致していれば、被測定者と記憶部27に記憶された特定の人とが同一人物であると判定して、以降のステップS67に進む。判定がNO、すなわち、両者が一致していなけれれば、被測定者と記憶部27に記憶された特定の人とが異なる人物であると判定して、ステップS71に進む。なお、運動パターン情報I1と特定人情報I2との一致度は所定の許容範囲をもって判定され、両者が完全に一致した場合のみ、被測定者と記憶部27に記憶された特定の人とが同一人物であるとするわけではない。また、上記の許容範囲は、運動パターンの種類や電流測定時間の長さ等の測定環境によって適宜変更しうる。
ステップS66の判定でYES、すなわち、被測定者と記憶部27に記憶された特定の人とが同一人物である場合、本実施形態では、静電誘導電流の振幅成分Aを評価指標とし、振幅成分Aに基づいて評価スコアを算出する(ステップS67)。
さらに、算出された評価スコアと特定された個人に関する特定人情報I2中の評価スコアと活性度との対応関係、例えば、図15に示す対応表とに基づき、被測定者の活性度を推定する(ステップS68)。推定された活性度を車室内照明の制御に利用できることは実施形態1~3と同様であり、推定された活性度が高い場合(ステップS69)は、図7に示すように車室内の照明光の色相を寒色系に制御し、推定された活性度が低い場合(ステップS70)は、車室内の照明光の色相を暖色系に制御する。なお、照明以外の車室内環境についても推定された活性度に基づいて制御可能であることは言うまでもない。また、車室内の環境制御の開始条件は、実施形態1で説明した条件、つまり、図7に示すフローチャートのステップS7あるいはステップS9と同じである。
一方、ステップS66の判定でNO、すなわち、被測定者と記憶部27に記憶された特定の人とが異なる人物である場合、前述の如くステップS71を実行し、活性度が高いか(ステップS72)あるいは活性度が低いか(ステップS73)を推定する。なお、ステップS71~S73は、図6に示すフローチャートのステップS4~S6と同様であるので説明を省略する。なお、活性度推定のために取得した静電誘導電流のデータや評価指標、評価スコア及び活性度等は記憶部27に保存され、例えば、図15に示すような対応表が別途作成される。
なお、本実施形態において、静電誘導電流の振幅成分Aを活性度の推定のための評価指標とする例を用いて説明したが、これ以外の評価指標、例えば、実施形態2や変形例1,2に示すように、静電誘導電流に関連する統計量を評価指標としてもよい。また、撮影された動画像に基づいて活性度を推定する場合は、実施形態3に示した評価指標を用いて活性度が推定されることは言うまでもない。
以上説明したように、予めわかっている特定の個人の情報、本実施形態では歩行パターン情報と、静電誘導電流に基づいて得られる歩行パターン情報との照合結果に基づき、現在の被測定者が既知の特定人であるかどうかを判定することができる。両者が同一人物であれば、当該特定の個人に関する評価スコアと活性度との対応関係に基づき活性度を推定できるため、活性度の推定精度をより向上させることができる。また、両者が異なる人物であると判定されれば、実施形態1,2に示した方法と同様の手順で活性度を推定することができる。また、例えば、複数の人が同時に車両10に乗り込もうとする場合に、予めわかっている特定の個人の運動パターン情報に基づいて、検出された静電誘導電流データを個人毎に分離することもできる。このことにより、ドライバーとそうでない人とを分離して、各々の活性度を推定することができる。
なお、撮影された動画像に基づいて活性度を推定する場合は、運動パターン情報に代えて、記憶部27に保存された特定の個人の身体特徴情報と、被撮影者の身体特徴に関するデータとを照合して、現在の被撮影者が既知の特定人であるかどうかを判定してもよい。特に顔画像情報等を用いると、公知の方法で比較的簡便かつ確実に両者が一致しているかどうかを判定することができる。
なお、記憶部27に保存された特定人情報は必要に応じて適宜修正されうる。特定の個人における評価スコアと活性度との対応関係も、当該個人の年齢や身体特徴等が変化した場合には、適宜修正されうる。
(その他の実施形態)
静電誘導電流を検出して活性度を推定する構成において、検出電極11aを車室内のインストルメントパネルに1箇所設ける例(図3参照)について説明したが、検出電極11aは車室内の任意の場所に必要に応じて配置することができる。また、複数の検出電極11aを配置してもよい。図示しないが、例えば、車両10の各ドアにそれぞれ検出電極11aを設けてもよい。検出電極11aの個数を増やすことで、電極面積を実質的に増加させることができ、静電誘導電流に関する検出信号のS/N比を向上させることができる。また、ドア毎に設けられた検出電極11aで検出された静電誘導電流を個別にモニターすることにより、複数の人の運動に基づく静電誘導電流を個人毎に分離することが容易となり、ドライバーだけでなく、同乗者の活性度を推定することも可能となる。このことにより、例えば、推定された各人の活性度データをドライバーに通知して、車室内の環境をドライバーの判断で制御させることも可能となる。
また、実施形態1~4において、車両10の近傍を歩行する人を活性度の推定対象としたが、特にこれに限定されず、例えば車両10の近傍を走る人についても、その運動状態に基づき活性度を推定することができる。