備考及び用語の命名
特定のシステム構成要素を指すために、以下の説明および特許請求の範囲を通して、特定の用語が使用される。当業者であれば理解するように、電気手術システムを設計し、製造する企業は、異なる名称で構成要素を参照することがある。この明細書は、名称が異なるが機能が異ならない構成要素同士を区別することを意図していない。
以下の説明および特許請求の範囲において、「含む」及び「備える」という用語は、制約がないという意味で使用され、従って、「含むがそれに限定されない」ことを意味するものとして解釈すべきである。同様に、「結合する」という用語は、間接的な接続または直接的な接続のいずれかを意味することを意図する。そのため、第1のデバイスが第2のデバイスに結合する場合、その接続は、直接的な接続を通じたものまたは他のデバイスや接続を介した間接的な接続を通じたものでありうる。
単一の項目の参照は、複数の同じ項目が存在する可能性を含む。より具体的には、本明細書及び添付した特許請求の範囲で使用されるように、単一であることを示す「1つの」、「前記」及び「その」は、その文が明確にそうでないことを明示していなければ、複数であることを含む。さらに、特許請求の範囲は、任意の付加的な構成要素を含まないで記載されていることがありうることに注意しなければならない。従って、この言及は、「単に」、「のみ」のような排他的語句の使用に対する先行詞として働き、特許請求の範囲の要素の記載及び「否定的」限定の使用に関しても同様である。最後に、そうでないことを定義していなければ、本明細書で使用されるすべての技術的用語及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって共通に理解されるものと同じ意味を有することが理解されるべきである。
「アブレーション」は、組織のプラズマとの相互作用に基づき、組織を除去することを意味するものとする。
「アブレーションモード」は、アブレーションの1つ以上の特性を指すものとする。「アブレーションの不存在」(すなわちプラズマの不存在)は、「アブレーションモード」として考えないものとする。凝固を行うモードは、「アブレーションモード」として考えないものとする。
「アクティブ電極」は、治療のために標的とする組織に接触し、または近接させた時に、電気的に導入される組織を変化させる効果を発生させる電気手術用ワンドの電極を意味するものとする。
「リターン電極」は、アクティブ電極に対して電荷の電流経路を提供する働きをする電気手術用ワンドの電極及び/またはそれ自体は治療のために標的とする組織に電気的に導入される組織を変化させる効果を発生しない電気手術用ワンドの電極を意味するものとする。
「電気モーター」は、交流(AC)モーター、直流(DC)モーター及びステッピングモーターを含むものとする。
「流体流量の制御」は、体積流量率を制御することを意味する。印加された圧力によって引き起こされる液体の体積流量率に対して独立に設定圧力(例えば吸引圧力)を維持するように印加圧力を制御することは、「流体流量の制御」として考えないものとする。しかし、液体の設定体積流量率を維持するように印加圧力を変更することは、「流体流量の制御」として考えるものとする。
「実質的に」は、電極の露出した表面積に関しては、2つの電極間の露出表面積が等しい、または25パーセントを超えて異なるものではないことを意味するものとする。
長いシャフト「内」にあるとされる流体導管は、長いシャフトの内部体積の全てまたは一部の中に物理的に存在する個別の流体導管だけでなく、長いシャフトの内部体積自体が流体導管である、または個別の流体導管が長いシャフトの長さに沿ってまたはその一部に接続されているような状態も含むものとする。
値の範囲が提供されると、その範囲の上限及び下限の間に介在する全ての値及びその宣言された範囲内の任意の他の存在するまたは介在する値が本発明の範囲内に包含されるものと理解される。また、説明される発明の変更例のあらゆる任意の特徴は独立に、または本明細書に記載された任意の1つ以上の特徴と組み合わせて記述され、主張される。
本明細書で言及される、存在するすべての対象(例えば、文献、特許、特許出願明細書及びハードウェア)は、対象が本発明のそれと矛盾しうる(そのような場合本明細書に存在するものが優先する)場合を除いて、本明細書に参照によりその全体が組み込まれる。参照される項目は、本出願の出願日前の開示のために提供されるにすぎない。本明細書のいずれも、本発明が、先行発明の効果によってそのような材料に先行することができないという承認として解釈されるべきではない。
詳細な説明
様々な実施形態を詳細に説明する前に、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、様々な変形や改良がなされ、等価物が置き換えられうる場合、本発明が本明細書に記載された特定の変形例に限定されないということを理解すべきである。本開示を読んだ当業者には明らかであるが、本明細書に記載され、示された個別の実施形態のそれぞれは、本発明の範囲または思想を逸脱することなく他のいくつかの実施形態のいずれの特徴からも容易に分離されまたはいずれの特徴とも組み合わされうる個別の構成要素及び特徴を有する。さらに、多くの改良が、特定の状態、材料、物体の組成、プロセス、プロセス動作または段階を、本発明の目的、思想または範囲に対して適合させるためになされてもよい。そのような改良の全ては、本発明でなされる特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
様々な実施形態が、電気手術の方法及び関連する電気手術システムに指向される。具体的には、様々な実施形態が、特定の種類の標的とする組織の治療または所望の電気手術効果のために構成される複数の動作モードを有する電気手術システムに指向され、単一の電気手術用ワンド及び単一の電気手術用コントローラによって実装される。例示的な実施形態において、複数の動作モードは、電気手術用ワンドの単一のアクティブ電極によって実装される。本明細書は最初に、読者を導くために例示的なシステムを参照する。
図1は、少なくともいくつかの実施形態に従う電気手術システム100を示している。具体的には、電気手術システム100は、電気手術用コントローラ104(以下「コントローラ104」)に結合された電気手術用ワンド102(以下「ワンド102」)を含む。ワンド102は、遠位端108を画定する長いシャフト106を含む。長いシャフト106はさらに、ハンドルまたは近位端110を画定し、そこで外科医は手術処置中にワンド102を握る。ワンド102はさらに、1つ以上の電気リード線(図1には特に示されていない)を収容する柔軟な複数導体ケーブル112を含み、柔軟な複数導体ケーブル112は、ワンドコネクター114内で終端する。図1に示されるように、ワンド102は、筐体122の外部表面上のコントローラコネクタ120などによって、コントローラ104に結合される(例示的な図1の場合では、前面)。
図1には見えていないが、いくつかの実施形態では、ワンド102は外部アクセス可能な管状部材に結合される1つまたは複数の内部流体導管を有する。図示されるように、ワンド102は、ワンドの遠位端108において吸引を提供するために使用される柔軟な管状部材116を有する。様々な実施形態によれば、管状部材116は蠕動ポンプ118に結合し、蠕動ポンプ118は、コントローラ104と共に内部構成要素として例示的に示されている(すなわち、コントローラ104の筐体122内に少なくとも部分的に位置する)。他の実施形態において、蠕動ポンプ118の筐体はコントローラ104のための筐体から分離されてもよい(図の点線で示されるように)が、任意の事象において、蠕動ポンプはコントローラ104に動作可能に結合される。
蠕動ポンプ118は、ローター部124(以下、単に「ローター124」)及びステーター部126(以下、単に「ステーター126」)を含む。柔軟な管状部材116は、蠕動ポンプ118内でローター124とステーター126との間に結合し、柔軟な管状部材116に対するローター124の運動は、排出部128に向けて流体を運動させることとなる。例示的な蠕動ポンプ118は2つの頭部を有するローター124と共に示されているが、様々な種類の蠕動ポンプ118が使用されてもよい(例えば、5つの頭部を有する蠕動ポンプ)。様々な実施形態において、蠕動ポンプ118はワンド102の遠位端108における手術領域から体積制御された吸引を発生させ、制御はコントローラ104によって命令されるように、ローター124の速度に基づく。
さらに図1を参照すると、表示デバイスまたはインターフェースデバイス130が、コントローラ104の筐体122を通してみることができ、いくつかの実施形態では、使用者はインターフェースデバイス130及び/または関連するボタン132によってコントローラ104の動作モードを選択しうる。例えば、1つまたは複数のボタン132を使用して、執刀医は、軟骨の一部を除去するために使用されうる低出力モード、半月板を除去するのに使用されうる中間出力モード、組織を大きく除去するための高出力モード、及び遊離する及び/または捕捉された組織を除去するための真空モードなどのアブレーションモードを選択しうる。様々な動作モードは、以下、さらに完全に説明する。
いくつかの実施形態において、電気手術システム100はまた、フットペダルアセンブリー134を含む。フットペダルアセンブリー134は、1つまたは複数のペダルデバイス136及び138、柔軟な複数導体ケーブル140並びにペダルコネクター142を含んでもよい。2つのペダルデバイス136及び138のみが示されているが、1つまたは複数のペダルデバイスが実装されてもよい。コントローラ104の筐体122は、ペダルコネクター142に結合する対応するコネクター144を含んでもよい。外科医は、フットペダルアセンブリー134を使用して、アブレーションモードなどコントローラ104の様々な態様を制御しうる。例えば、ペダルデバイス136は、ワンド102への高周波(RF)エネルギーの印加のオン-オフ制御のため、更に具体的にはアブレーションモードにおけるエネルギーの制御に使用されてもよい。さらに、ペダルデバイス138は、電気手術システムのアブレーションモードを制御及び/または設定するために使用されてもよい。例えば、ペダルデバイス138の作動は、コントローラ104によって生成されるエネルギーレベル間を切り替え、蠕動ポンプ118によって生成される吸引体積を切り替えてもよい。特定の実施形態において、コントローラ104の様々な動作上または性能の態様の制御は、ワンド102のハンドル110に位置する指のボタンを選択的に押し下げることによってアクティブ化されてもよい。
様々な実施形態の電気手術システム100は、Coblation(登録商標)技術を採用する様々な動作モードを有してもよい。具体的には、本開示の譲受人は、Coblation(登録商標)技術の所有者である。Coblation(登録商標)技術は、ワンド102の1つ以上のアクティブ電極と1つ以上のリターン電極との間の高周波(RF)信号の印加を伴い、標的組織の近傍において高い電場強度を発生させる。電場強度は、1つまたは複数のアクティブ電極と標的組織との間の領域において、1つまたは複数のアクティブ電極の少なくとも一部の上で導電性流体を蒸発させるのに十分でありうる。導電性流体は、血液など、またはいくつかの場合には細胞外もしくは細胞内液など、体内には不可避に存在しうる。他の実施形態において、導電性流体は電解塩などの液体またはガスであってもよい。ひざや肩などを伴う外科的処置など、いくつかの実施形態において、導電性流体はシステム100から分離され離隔された供給システムによってアクティブ電極及び/または標的の場所の近傍に供給される。
原子の再凝集よりも速く、流体の原子が蒸発する点まで導電流体にエネルギーが印加されると、気体が形成される。十分なエネルギーが気体に印加されると、原子は互いに衝突して、プロセス中に電子が脱離し、電離気体またはプラズマが形成される(いわゆる、「物質の第4の状態」)。そうでない場合、プラズマは気体を加熱し、気体中に電流を通すことによってまたは気体中に電磁波を導入することによって気体を電離することにより、形成されてもよい。プラズマ形成の方法は、エネルギーをプラズマ中の自由電子に直接与え、電子-原子衝突がより多くの電子を解放し、所望の電離度に到達するまでプロセスが次々に発生する。より完全なプラズマの説明は、非特許文献1に記載されており、その完全な開示が、参照によって本明細書に組み込まれている。
プラズマの密度が十分に低い場合(すなわち、水溶液に対して約1020原子/cm3未満)、電子の平均自由行程は増加し、続いて導入された電子がプラズマ内で衝撃イオン化を引き起こす。プラズマ層内のイオン粒子が十分なエネルギー(例えば、3.5電子ボルト(eV)から5eV)を有する場合、標的組織を形成する分子へのイオン粒子の衝突は、標的組織の分子結合を破壊し、分子を自由ラジカルに分解し、自由ラジカルは次いで結びついて気体または液体化学種になる。分子分解によって(熱蒸発または炭化とは反対に)、標的組織は、より大きな有機分子が、水素、酸素、炭素の酸化物、炭素の水素化物及び窒素化合物などのより小さな分子及び/または原子に、分子分解することによって、容量的に除去される。関連技術において電気手術的乾燥及び蒸発を引き起こすような、組織の細胞内液または細胞外液の除去による組織の物質の脱水とは反対に、分子分解は組織構造を完全に除去する。分子分解のより詳細な説明は特許文献1に記載されており、その完全な開示が参照により本明細書に組み込まれている。
ワンド102の遠位端108において電子手術システム100によって生成されるエネルギー密度は、様々な因子を調整することによって変化可能であり、それらの因子は例えば、アクティブ電極の数、電極の大きさ及び間隔、電極の表面積、電極表面の粗さ及び/または鋭利な端部、電極材料、印加電圧、1つまたは複数の電極の電流制限(例えば、電極に直列にインダクタを配置することによる)、電極に接触する液体の導電率、導電流体の密度及びその他の因子である。従って、これらの因子は、励起された電子のエネルギーレベルを制御するように操作可能である。異なる組織構造は異なる分子結合を有するので、電気手術システム100は、特定の組織の分子結合を切断するのに十分だが、他の組織の分子結合を切断するのには不十分であるエネルギーを発生させるように構成されてもよい。例えば、脂肪の多い組織(例えば、脂肪)は、切断するのに4eVから5eVよりも高い(すなわち約8eV程度)エネルギーを必要とする二重結合を有する。従って、いくつかの動作モードにおいてCoblation(登録商標)技術は、そのような脂肪の多い組織をアブレーションすることができない。しかし、より低いエネルギーレベルにおいてCoblation(登録商標)技術は、液体の形態の内部脂肪含有物を解放するために効果的に細胞をアブレーションするために使用されうる。他の動作モードは、二重結合も単結合と同様に切断可能となるように、増加したエネルギーを有しうる(例えば、電極における電流密度を増加させるために電圧を増加させまたは電極構成を変更する)。様々な現象のより完全な説明は共通に譲り受けられた特許文献2から4に記載されており、その完全な開示は参照により本明細書に組み込まれている。
発明者は、これから、複数の動作モードがどのように単一のワンド102及び単一のコントローラ104に実装されうるかを説明するために理論的な基礎を提示する。しかし、理論的な基礎は、単に1つの可能性のある説明として提示するにすぎず、様々な実施形態の動作における制限として読むべきではない。他の理論的な基礎が等価に提示され、異なる理論的な基礎を用いたデバイスの動作を説明しようと意図することは、そのようなデバイスが添付の特許請求の範囲に含まれることを排除するものではない。具体的には、ワンドのアクティブ電極との動作における関係で形成されたプラズマ、アクティブ電極とリターン電極との間の流体、及び電極-流体界面を含む電極回路は、アクティブ電極からリターン電極に向かうエネルギー流に対してある量のインピーダンスを有しまたは呈する。電極回路によって示されるインピーダンスは、多くの因子に依存しうるが、そのような因子は、プラズマ自体の厚さ及び体積、蒸気の層で覆われず、導電流体と直接接するアクティブ電極の表面積及びプラズマの位置から離れる流体及び/または気体の体積流量を含むがそれに限定されない。
関連技術のデバイスにおいては、吸引に使用される真空圧力のみが制御される(例えば、病院の手術室における壁のソケット接続で利用可能な真空)。しかし、壁のソケット接続で使用可能な真空は、部屋ごとに大きく変化しうるものであり、多くの場合には、同じ部屋でも経時的に大きく変化しうる。さらに、印加される真空圧力の制御は、吸引の体積の制御を意味しない。そのため、関連技術のデバイスは真空圧力を制御し得る(または好適な真空圧力を特定しうる)一方で、それらは吸引の体積流量率を制御しない。
単に印加される真空圧力を制御するよりもむしろ、吸引において流体流量を制御することによって、少なくとも部分的に、また特定の実施形態において、様々な動作モードが実装される。いくつかの実施形態において、また図1に示されるように、流体流量の制御は蠕動ポンプ118によるが、圧力変調を含む流量を制御するためのその他の機構が等価に使用されてもよい。吸引の流体流量を制御することによる一部において、電極回路におけるインピーダンスが、少なくとも部分的に制御されうる。他のパラメータもインピーダンスに影響を与えうるが、発明者は、吸引の流体の体積流量が低くなると、より大きなプラズマを発生させ、アクティブ電極が導体流動に直接接触しなくなるため、電極回路のインピーダンスがより高くなり、そのためエネルギーの放散が小さくなり、吸引の流体の体積流量が高くなると、インピーダンスが低くなり、エネルギー放散が増加することを発見した。体積流量が高くなると、プラズマの大きさを減少させ、そのためプラズマ内の電場の強度を増大させる。
発明者は、吸引の流体の流量体積とエネルギー放散との関係が、支配的な理解に反するものであることを発見した。すなわち、関連技術のデバイスおよび方法は、一般に高い流量率が、より急速にエネルギーを伝搬し、そのためアブレーションの熱的側面を低減するという仮定の下で動作している。対照的に、発明者は、吸引の体積流量が高いと、全体的により高いエネルギー放散が発生する傾向にあることを発見した。すなわち、高い体積流量率は、電極回路のインピーダンスを低下させ、インピーダンスが低くなるとエネルギー放散が増加する。さらに、体積流量率が高くなると、プラズマに「フリッカー(揺らめき)」を引き起こす。ろうそくの形態における類推を考える。ろうそくが、室内で空気の運動がほとんどない状態で燃えている場合、炎は安定した形状、大きさ及び位置を維持しうる。しかし、空気の流動(例えば天井のファン)が存在すると、炎は「揺らめく」こととなる。プラズマ消滅の期間内において(すなわちプラズマが存在しない)、より大きなエネルギーが熱モードで周囲の流体及び組織に放散され、高い体積流量率によって引き起こされる「揺らめく」プラズマ(急速に消滅し、再形成するプラズマ)は、組織及び周囲の流体へのエネルギー放散が、小さくなるよりもむしろ大きくなる。すなわち、「揺らめく」プラズマがより低い平均インピーダンスを呈することとなり、そのためエネルギー放散がより高くなるだけでなく、「揺らめき」において現れる瞬間的なプラズマ消滅において支配的な熱モードが、プラズマが存在する期間よりも高いエネルギー放散を引き起こす。
従って、本明細書で説明する実施形態は、プラズマ場を、特定の種類の組織または医療処置に対して望ましくなるように制御することができるように、電極におけるインピーダンス(またはインピーダンスを計算するために使用され得る、アクティブ電極に印加されるRF電流)が監視され、吸引の体積流量率を制御するためのパラメータとして使用されるシステムに関する。例えば、アクティブ電極におけるインピーダンスが医療処置の間にある点で減少することが観察される場合(プラズマの不安定性を示している可能性がある)、システムの制御モジュールは吸引ポンプに、プラズマ場が安定できるように吸引流量率を低下させるように指示しうる。別の観点からは、アクティブ電極に印加されるRF電流を測定し、使用者の操作選択に関連した、ある所定かつ所望のレベルに電流を維持するように吸引流量率を調整することが好適でありうる。さらに、特定の医療処置において、処置箇所における熱放散を減少させ、組織を更に保護するために、プラズマ場を安定化させる代わりに流量率を犠牲にすることが望ましいことでありうる。「吸引制御装置、システムおよび方法を有する電気手術システム」と題する譲受人に譲渡された特許文献5を参照し、その完全な開示は全ての目的に関して参照により本明細書に組み込まれている。反対に、手術野から泡や破片を除去するために、全体的により高い吸引流量率体積を有するように、プラズマ場の安定性を犠牲にすることが、特定の種類の医療処置では望ましいものでありうる。
前段の理論的な基礎に基づき、様々な実施形態が、単一のコントローラとともに単一のワンド(いくつかの場合には単一のアクティブ電極)を用いるいくつかの実施形態において、電気手術処置の間に少なくとも2つの動作モードを実装するシステムおよび関連する方法に指向される。特定の実施形態において、関節の軟骨の一部のような損傷しやすい組織の治療及び除去のために使用され得る「低出力モード」、半月板の治療及び除去のために使用され得る「中間出力モード」、任意の種類の組織の強力な除去のための「高出力モード」、並びに浮遊し及び/または捕捉された組織の除去のための「真空モード」などの4つの異なる動作モードが実装されうる。アブレーションの例示的なモードに関するさらなる詳細が、例示的なワンド102及びコントローラ104の内部構成要素の議論の後に、以下に示される。
図2は、例示的なシステムに従うワンド102の立面図を示している。具体的には、ワンド102は、柔軟または剛体でありうる長いシャフト106、長いシャフト106の近位端に結合されたハンドル110及び長いシャフト106の遠位端に結合された電極支持部200を含む。また図2には、ワンド102から延設する柔軟な管状部材116及び複数導体ケーブル112が見られる。ワンド102は、長いシャフト106の遠位端108に配置されたアクティブ電極202を含む。アクティブ電極202は、複数導体ケーブル112内の1つ以上の絶縁された電気コネクター(図示されない)によって、コントローラ104(図1)内の能動または受動制御ネットワークに結合されてもよい。アクティブ電極202は、アクティブ電極202に近接するシャフト上において、ある例示的なシステムでは遠位端の1ミリメートル(mm)から25mm以内に配置される、コモン電極またはリターン電極204から電気的に絶縁される。遠位端の近傍では、リターン電極204はワンド102の長いシャフト106と同心円状である。支持部材200は、リターン電極204の遠位側に配置され、エポキシ、プラスチック、セラミック、シリコーン、ガラスまたはその他類似のものなどの電気絶縁性の物質からなるものでありうる。支持部材200は、長いシャフト106の遠位端108から(通常約1から20mm)延設し、アクティブ電極202のための支持を提供する。
図3は、例示的な実施形態に従うワンド102の断面立面図を示している。具体的には、ワンド102は長いシャフト106内に画定された吸引管部206を含む。図3の例示的なワンド102において、長いシャフト106の内径は、区間管部206を画定するが、他の場合には、長いシャフト106内の分離された管状部が吸引管部206を画定してもよい。吸引管部206は、アクティブ電極202の近傍の標的の場所から、過剰な流体、泡、組織の破片及び/または除去生成物を吸引するために使用されうる。吸引管部206は、ハンドル110内に延設し、蠕動ポンプ118に結合するために柔軟な管状部材116に流体的に結合する。ハンドル110はまた、導電体210が内部に存在する内部キャビティ208を画定し、導電体210は複数導体ケーブル112内に延設し、最終的にコントローラ104に結合し得る。同様に、導電体は長いシャフトを通って延設し、それぞれ、リターン電極204及びアクティブ電極202に結合するが、導電体210は図を過度に複雑化させないように、長いシャフト106内に存在するとして示されていない。
図4は、例示的なシステムに従う、ワンド102の遠位端の斜視図(右側)とともに例示的なアクティブ電極(左側)の立面図を示す。具体的には、アクティブ電極202は図4に示されるようなアクティブスクリーン電極400であってもよい。スクリーン電極400は、タングステン、チタン、モリブデン、白金などの導電材料を含んでもよい。スクリーン電極400は、約0.5から8mm、いくつかの場合には約1から4mmの範囲の直径及び約0.05から約2.5mm、いくつかの場合には約0.1から1mmの厚さを有してもよい。スクリーン電極400は、吸引管部の遠位開口404の上に配置されるように構成された複数の開口部402を含んでもよい。開口部402は、アブレーション箇所から吸引された過剰な流体、泡及び気体が通過できるように設計され、アブレーションされた組織の破片が吸引管部206を通過することができる程度に十分大きい(図3)。図示されるように、スクリーン電極400は、スクリーン電極400の表面積に対する縁部の比を増大させる不規則な形状を有する。表面積に対する縁部の比が大きいと、縁部の電流密度がより高くなり、大きな表面積の電極は導電媒体内に出力を放散する傾向にあるため、導体流体内のプラズマ層を発生させ維持するスクリーン電極400の能力を増大させることとなる。
図4に示される代表的な実施形態において、スクリーン電極400は、絶縁支持部材200及び吸引管部206に対する遠位開口404の上に載置する本体406を含む。スクリーン電極400はさらに爪部408を含み、図4の例示的なスクリーン電極400では5つの爪部408が示されている。爪部408は、絶縁支持部材200上に載置され、固定され及び/または埋め込まれてもよい。特定の実施形態において、スクリーン電極400を絶縁支持部材200に固定し、スクリーン電極400をコントローラ104(図1)に電気的に結合できるように、電気コネクターは絶縁支持部材200を通して延設し、1つ以上の爪部408に結合される(すなわち、接着、ろう付け、溶接などを介して)。例示的なシステムにおいて、スクリーン電極400は、半月板、軟骨及びその他の組織を平滑に切除し、アブレーションし、削るために、実質的に平板状の組織処置表面を形成する。軟骨や半月板を再形成する際に、外科医は組織の不規則で粗い表面を実質的に平滑な表面を残して平滑にすることを望むことが多い。これらの用途に関して、実質的に平板状のスクリーン電極処置表面は、所望の効果をもたらす。本明細書はこれから、コントローラ104のより詳細な説明を行う。
図5は、少なくともいくつかの実施形態に従うコントローラ104の電気的なブロック図を示している。具体的には、コントローラ104は、プロセッサ500を含む。プロセッサ500は、マイクロコントローラであってもよく、そのため、マイクロコントローラは、読み込み専用メモリ(ROM)502、ランダムアクセスメモリ(RAM)504、デジタルアナログ変換器(D/A)506、アナログデジタル変換器(A/D)514、デジタル出力(D/O)508及びデジタル入力(D/I)510と共に集積されてもよい。プロセッサ500はさらに、シリアルバス(例えばI2C)、パラレルバスまたはその他のバス及び対応する通信モードなどの1つ以上の外部から利用可能な周辺バスを提供してもよい。プロセッサ500はさらに、プロセッサ500が内部デバイスと同様にディスプレイデバイス130等の外部デバイスと通信できるように通信論理回路512と共に集積されてもよい。いくつかの実施形態において、プロセッサ500はマイクロコントローラの形態で実装されてもよく、他の実施形態においてプロセッサ500は個別のRAM、ROM、通信、A/D、D/A、D/O及びD/Iデバイス並びに周辺機器と通信するための通信ハードウェアなどと組み合わせた独立型中央処理ユニットとして実装されてもよい。
ROM502は、プロセッサ500によって実行可能な命令を保存する。具体的には、ROM502は、実行時には、コントローラに2つ以上の動作モードを実装させるソフトウェアプログラムを含んでもよい。RAM504は、プロセッサ500に対するワーキングメモリであってもよく、データはそこに一時的に保存され、そこから命令が実行され得る。プロセッサ500は、デジタルアナログ変換器506(例えばいくつかの実施形態ではRF発生器516に)、デジタル出力508(例えばいくつかの実施形態ではRF発生器516に)、デジタル入力510(例えば押しボタンスイッチ132やフットペダルアセンブリー134(図1)などのインターフェースデバイスに)、通信デバイス512(例えばディスプレイデバイス130に)によってコントローラ104内で他のデバイスに結合する。
電圧発生器516は、ワンド102のアクティブ電極202に結合される交流電流(AC)電圧信号を発生させる。いくつかの実施形態では、電圧発生器は、コントローラのコネクター120内の電気ピン520、ワンドコネクター114内の電気ピン522に結合し、最終的にはアクティブ電極202に結合するアクティブ端子518を画定する。同様に、電圧発生器は、コントローラのコネクター120内の電気ピン526、ワンドコネクター114の電気ピン528に結合し、最終的にはリターン電極204に結合するリターン端子524を画定する。追加的なアクティブ端子及び/またはリターン端子が使用されてもよい。アクティブ端子518は、電圧および電流が電圧発生器516によって導入される端子であり、リターン端子524は、電流に対するリターン経路を提供する。リターン端子524は、コントローラ104のバランス内のコモン又はグランド(例えば押しボタン132に使用されるコモン530)と同じコモン又はグランドを提供することができるが、他の実施形態では、電圧発生器516はコントローラ104のバランスからは電気的に「浮遊した」状態であってよく、そのためリターン端子524は、コモン又はアースグランド(例えばコモン530)に対して測定した場合にある電圧を示し得る。しかし、電気的に浮遊した電圧発生器516及びそのためアースグランドに対してリターン端子524における電圧読取値の電位はアクティブ端子518に対する端子524のリターン端子の状態を無効にしない。
電圧発生器516によってアクティブ端子518とリターン端子524の間で発生し印加されるAC電圧信号は、いくつかの実施形態では、約5キロヘルツ(kHz)から20メガヘルツ(MHz)の間の周波数を有し、いくつかの場合には約30kHzから2.5MHzの間であり、他の場合には約50kHzから500kHzの間であり、通常は350kHzよりも低く、また通常は約100kHzから200kHzの間であるRFエネルギーである。いくつかの用途において、標的組織のインピーダンスは100kHzにおいて非常に大きいため、約100kHzの周波数が有用である。
電圧発生器516によって発生するRMS(二乗平均平方根)電圧は、約5ボルト(V)から1800Vの範囲であってよく、いくつかの場合には約10Vから500Vの範囲、アクティブ電極の大きさに応じて、通常約10Vから400Vの間であってよい。いくつかの実施形態においてアブレーションのために電圧発生器516によって発生するピーク-ピーク電圧は、10Vから2000Vの範囲のピーク-ピーク電圧、いくつかの場合には100Vから1800Vの範囲、他の場合には約28Vから1200Vの範囲、通常はピーク-ピークで約100Vから320Vの範囲である矩形波である。
電圧発生器516によって発生した電圧および電流は、電圧が効率的に、連続的に印加されるように(例えば、約10Hzから20Hzでパルス印加される、深さの浅い壊死組織に関するレーザーと比較して)、十分に高い周波数を有する(例えば5kHzから20MHz程度)一連の電圧パルスまたはAC電圧で供給されてもよい。さらに、電圧発生器516によって発生する矩形波電圧のデューティサイクル(すなわち、エネルギーが印加される任意の1つ目と2つ目の間隔の累積的時間)は、約0.0001%のデューティサイクルを有しうるパルスレーザーと比較して、いくつかの実施形態では約50%程度である。いくつかの実施形態では矩形波が生成され、提供されるが、AC電圧信号は、各半周期のパルス立ち上がりもしくは立ち下がりにおける電圧スパイクなどの特徴を含むように改善可能であり、または、AC電圧信号は、特定の形態(例えば、正弦波、三角波など)を取るように改善可能である。
電圧発生器516は、アブレーションモード及びアクティブ電極に近接するプラズマの状態に応じて、電極あたり数ミリワットから数百ワットの範囲の平均電力レベルを供給する。電圧発生器516は、プロセッサ500と組み合わせて、外科医によって選択されるアブレーションモードに基づき、電圧発生器516のエネルギー出力を初期設定し(例えば出力電圧を制御することによって)、選択されたアブレーションモードにおいて、制御を変化させてワンドの使用によって引き起こされる変化を補償するように構成される。制御の変化は、蠕動ポンプ118のさらなる議論の後に、以下にさらに議論される。様々な電圧発生器516の説明が、譲受人に譲渡された特許文献6及び7に記載されており、これらの完全な開示が全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれている。また、「波形成形を伴う電気手術用コントローラの方法及びシステム」と題する、譲受人に譲渡された特許文献8も参照し、その完全な開示は、以下で完全に再現されているとしても、参照により本明細書に組み込まれている。
いくつかの実施形態において、電圧発生器516により、少なくとも部分的に実装される様々な動作モードは、デジタルアナログ変換器506を使用してプロセッサ500によって制御されてもよい。例えば、プロセッサ500は、1つ以上の様々な電圧を電圧発生器516に提供することによって出力電圧を制御してもよく、デジタルアナログ変換器506によって提供される電圧は電圧発生器516によって発生する電圧と比例する。他の実施形態において、プロセッサ500は、デジタル出力変換器508からの1つ以上のデジタル出力信号によって、または通信デバイス512(通信系の実施形態は、図5を過度に複雑化させないように、具体的には示されていない)を用いるパケット系通信によって電圧変換器と通信してもよい。
さらに図5を参照すると、いくつかの実施形態において、コントローラ104はさらに、アクティブ電極に供給される電流を感知する機構を含む。図3の例示的な場合には、アクティブ電極に供給される感知電流は、電流感知トランス532によるものであってよい。具体的には、電流感知トランス532は、アクティブ端子518が1次側が単一の巻き数になるように、トランスを通して装着されるアクティブ端子518の導体を有してもよい。単一巻き数の1次側における電流は、2次側に対応する電圧及び/または電流を誘導する。そのため、例示的な電流感知トランス532は、デジタルアナログ変換器514に結合される(符号Aで示される)。いくつかの場合、電流感知トランスは、アナログデジタル変換器514に直接結合してもよく、他の場合には、増幅回路や保護回路などの追加的な回路が電流感知トランス532とデジタルアナログ変換器514との間に介在されてもよい。電流感知トランスは単に、アクティブ電極に供給される電流を感知する任意の適切な機構として例示するのみであり、他のシステムも可能である。例えば、小さな抵抗(例えば1オーム、0.1オーム)がアクティブ端子518と直列に配置されてもよく、抵抗を通って導入される電圧低下が電流表示として使用されてもよい。さらに他の場合には、電流感知回路が、任意の適切な形態で電流を測定してもよく、測定された電流値は、アナログ信号以外で、例えば通信ポート512におけるパケット系通信(図を過度に複雑化させないように、図示されていない)によって提供されてもよい。
電圧発生器516が電気的に浮遊した状態にある場合、電流を感知する機構は、アクティブ端子518のみに限られない。そのため、またさらなる実施形態では、電流を感知する機構は、リターン端子524に対して実装されてもよい。例えば、例示的な電流感知トランス532は、リターン端子524に関連する導体上に実装されてもよい。
いくつかの実施形態において、電圧発生器516に関してプロセッサによってのみ使用される単一のフィードバックパラメータは、電流量である。例えば、電圧発生器が、装着された負荷のインピーダンスとは独立に正確に出力電圧を生成することができるシステムでは、電圧発生器516によって生成される電圧のための設定値制御を有するプロセッサ500が十分でありうる(例えば、アクティブ電極に近接するプラズマのインピーダンスを示す値を計算する)。しかし、他の場合には、電圧もフィードバックパラメータであってよい。そのため、いくつかの場合には、アクティブ端子518がデジタルアナログ変換器514に電気的に結合されてもよい(符号Bで示される)。しかし、例えば様々なステップダウントランス、保護回路及び電圧発生器516の電気的に浮遊状態の性質を考慮に入れる回路など、追加的な回路が、アクティブ端子518とデジタルアナログ変換器514との間に介在されてもよい。そのような追加的な回路は、図を過度に複雑にしないように、図示されていない。さらに他の場合には、電圧感知回路は、電圧を測定してもよく、測定された電圧値は、アナログ信号以外の方法によって、例えば通信ポート512上のパケット系通信(図を過度に複雑にしないように、図示されていない)によって提供されてもよい。
さらに図5を参照すると、様々な実施形態に従うコントローラ104はさらに、蠕動ポンプ118を含む。蠕動ポンプ118は、少なくとも部分的に筐体122内に存在してもよい。蠕動ポンプは、電気モーター534のシャフトに機械的に結合されたローター124を含む。いくつかの場合には、また図示されるように、電気モーターのローターは、ローター124に直接結合してもよいが、他の場合には、様々な歯車、プーリー及び/またはベルトが電気モーター534とローター124との間に存在してもよい。電気モーター534は、ACモーター、DCモーター及び/またはステッピングモーターなどの任意の適切な形態をとってもよい。電気モーター534のシャフトの速度を制御するため、またローター124の速度(及びワンドにおける体積流量率)を制御するために、電気モーター534は、モーター速度制御回路536に結合されてもよい。ACモーターの例示的な場合には、モーター速度制御回路536は、電気モーター534に印加される電圧及び周波数を制御してもよい。DCモーターの場合には、モーター速度制御回路536は、電気モーター534に印加されるDC電圧を制御してもよい。ステッピングモーターの場合は、モーター速度制御回路536は、モーターの磁極に流れる電流を制御してもよいが、ステッピングモーターは、十分な数の磁極を有してもよく、またはローター124が円滑に動くように制御される。
プロセッサ500は、デジタルアナログ変換器506などによって(符号Cで示される)モーター速度制御回路536に結合する。プロセッサ500は、通信ポート512上のパケット系通信などの他の方法によって結合されてもよい。そのため、プロセッサ500は、プログラムを実行し、アクティブ端子518に供給される電流を読み込み、アクティブ端子518に供給される電圧を読み込み、それに応じて速度命令をモーター速度制御回路536に送信することによって、速度制御の変化(及びそのため体積流量率の変化)を行ってもよい。次いで、モーター速度制御回路536は、速度制御変化を実装する。速度制御変化は、所望の場合にはローター124の速度を変化させ、所望の場合にはローター124を停止させ、いくつかの実施形態ではローター124を一時的に逆転させる変化を含んでもよい。処理を行う前には、蠕動ポンプのローター124は、電気モーターによって回転させる必要はないことに注意すべきである。電気モーターは、電気系制御システムにはより容易に実装しうる一方で、出力シャフトの速度が制御可能である他の種類のモーター(例えば、空気圧モーター)も等価に用いられうる。
ここで、明細書は、電気手術システムによって実装されうる様々な動作モードのより詳細な説明に移る。各動作モードは、アブレーションの強さに基づいて例示的に命名される。しかし、例示的に特定された組織の種類は全て、それぞれの、また全てのモードでアブレーションされてもよく、そのため各モードでアブレーションされると考えられる組織の種類の特定を提供することは、いかなる特定のモードの適用可能性を制限するものとして読んではならない。組織に対して特別に設計されていないモードで組織をアブレーションすることは、標的組織の変色や多すぎる量の除去などの副作用をもたらしうる。システムの利用可能な動作モードは、それによって改善した性能を提供し、吸引流量率の制御と結びついたエネルギー出力の管理は標的組織または電気手術処置の種類に向けられた各モードにおける外科手術的結果を発生させる。
様々な実施形態によれば、電気手術用コントローラ100は、RFエネルギーの出力を調整することができるように、アクティブ電極近傍で流量率を動的に変調するための少なくとも2つの、またいくつかの実施形態においては以下の、軟骨の一部の処置、アブレーション及び除去のために使用され得る「低出力モード」、半月板の処置、アブレーション及び除去のために使用され得る「中間出力モード」、組織の強いアブレーション及び除去のために使用され得る「高出力モード」、及び遊離し及び/または捕捉された組織の除去のための「真空モード」の4つの動作モードを実装する。例示的な各動作モードは、電圧発生器516に関する初期エネルギー設定及び蠕動ポンプ118による初期体積流量率の設定を特徴としてもよく、この初期設定はアブレーションの間に発生するプラズマの特定の所望のインピーダンスを得る結果となりうる。特定のモードにおける動作中に、電圧発生器516によって提供されるエネルギー及び蠕動ポンプ118によって提供される体積流量率は、ワンドの遠位端108における動作条件に基づいて変化し得るが、そのような変化は、特定の動作モード内にある状態を取り除くものであってはならない。以下の表は、高レベルにおける4つの例示的な動作モードの特徴である。
これから各モードを議論する。
低出力動作モードは、特に、関節の軟骨またはその他の非常に損傷しやすい組織の処置及び選択的なアブレーションのために設計される。この低出力動作モードは特に、軟骨形成術及び半月板を仕上げまたは削るのに適している。しかし、軟骨は成長して戻らず、そのため軟骨形成術において外科医によってアブレーションされる軟骨の量は、ほとんどの処置においては非常に少ない。外科医の主な関心は、損傷した軟骨を慎重に除去し、その一方でそれと同時に残される軟骨の組織への損傷を低減することでありうる。これらの理由のために、例示的な低出力モードは、吸引の低い体積流量率とともに、アクティブ電極に供給される低いエネルギーによって特徴づけられる。具体的には、この動作モードにおいて、処置の間のエネルギー供給は、細胞の生存能力を最大化し、処置する箇所の近傍において瞬間的なエネルギー放散や熱の発生を低減させることが望ましい。この動作モードに関して、吸引流量の低減及び低い体積流量率は、より高い全インピーダンスを有するプラズマ及び電極回路を得る結果となりうる。
蒸気層の崩壊及び電流の短いスパイクは、低出力モードでは可能であれば防がれ、そのため低出力モードの体積流量率の制御は、プラズマの有効性及び安定性を維持するために、体積流量率を遅くする(すなわち、蠕動ポンプ118のローター124の速度を低下させる)のに対して、強力な制御動作を実装しうる。いくつかの場合には、制御動作は、蠕動ポンプ118のローター124の方向の瞬間的な逆転となりうる。蠕動ポンプ118のローターの逆転は、アクティブ電極202における体積流動率を反転させることとなる(管部116の弾力性を考慮に入れると)が、それでもなお、それによってコントローラ104は、コントローラ104がプラズマが崩壊しつつあることを感知するとアクティブ電極における体積流量率を素早く低下させまたは停止することができるようになりうる。周囲の組織に対する熱損傷を低減するために、低出力モードではRFエネルギーが活性化される間、吸引体積流量をほぼゼロまで低下させることが望ましいことがありうる。次いで、視認性を改善するために手術野から剥がれた組織片を除去し、泡を除去するために、RFが停止されると、制御動作は、基準値の体積流量率を提供する。
電圧発生器516に対して、低出力モードは低エネルギーを特徴とし、いくつかの場合には、コントローラ104はアクティブ電極202に提供されるエネルギー量の上限を実装する。一定のRMS電圧を発生させる電圧発生器516に関して、アクティブ電極202に提供される電流量が制御されてもよい。電圧出力を制御する電圧発生器516に関して、RMS電圧及びRMS電流の両方が、低エネルギー供給を実装するように制御されてもよい。
低出力動作モードでは、コントローラ104は、電圧発生器516及び蠕動ポンプ118を制御して、プラズマ及び電極の回路に対して比較的高い目標インピーダンスを実装し、プラズマ崩壊を防ぐ。インピーダンスを低下させることに関する制御動作は(アクティブ電極に印加される電流及び/または電圧に基づいて計算されるように)、電圧発生器516によって供給されるエネルギーを低下させ、蠕動ポンプ118を速度低下させ及び/または停止させることを伴ってもよい。いくつかの実施形態では、電圧発生器516によって発生する電気的エネルギーの変化は、蠕動ポンプ118の速度の変化よりもより急速であるように実装されてもよく、そのためいくつかの実施形態では、測定されたプラズマインピーダンスの低下に対する初期応答は、供給されるエネルギー密度を瞬間的に上昇させ、続いてポンプ速度を低下させ、供給エネルギーを再び低下させることがある。
中間出力動作モードは、半月板組織などの繊維軟骨組織のアブレーションに対して特に設計されるが、他の種類の組織もまた、中間出力モードでアブレーションされてもよい。この中間出力動作モードはまた、唇の組織の電気手術処置に対しても適切でありうる。半月板をアブレーションする際、執刀医は、軟骨の場合よりも多くの組織の体積をアブレーションすることに関心があることがあるが、その結果である残った半月板の酸化または「褐色化」のいずれも好ましくない。少なくともこの理由により、例示的な中間出力モードは、組織の不変性を守るために吸引の中程度の体積流量率とともに、アクティブ電極に提供される中程度のエネルギーを特徴とする。具体的には、この動作モードにおいて、処置中のエネルギー供給は、組織マトリクスの保護を向上し、組織の変色が低減されまたは全くない状態で、組織マトリクスの変化や、機械的な変化を引き起こし得るコラーゲン組織の架橋化を防ぐように設計される。中程度の体積流量率は、処置する場所の領域における熱の放散が比較的小さい状態で、低出力モードよりも低いインピーダンスを有するプラズマを得る結果となりうる。
プラズマ崩壊は、中間出力モードでは好ましいものでないが、時々発生するプラズマ崩壊や短い電流スパイクは、少しだけ強力な組織アブレーション率を実装するように許容されてもよい。そのため、半月板モードにおける体積流量率に対する制御動作は、低出力モードよりも強力であり得、吸引のための最小体積流量率は、そのような最小値がプラズマ崩壊につながるとしても、実装され得る。
電圧発生器516に関して、中間出力モードは、プラズマのインピーダンスの変動に対応するより遅い変化を特徴とする。一定ピークの電圧を発生させる電圧発生器516に関して、アクティブ電極202に供給される電流量は、所定の平均電流を発生させるように平均化され、制御されてもよい。電圧出力を制御する電圧発生器516に関して、平均エネルギーが制御されてもよい。
中間出力の動作モードでは、コントローラ104は、プラズマ電極回路に関する中間的な目標インピーダンスを実装するために電圧発生器516及び蠕動ポンプ118を制御する。インピーダンスの低下に対応する制御動作(アクティブ電極に印加される電流及び/または電圧に基づいて計算されるように)は、電圧発生器516によって供給されるエネルギーを変化させるとともに、蠕動ポンプ118の速度を低下させ、及び/または停止させることの両方を伴う。いくつかの実施形態において、コントローラ104は所定のエネルギーを提供してもよく、所定の範囲に入るインピーダンス値に関して、コントローラ104は蠕動ポンプ118の速度の変化のみに基づいてインピーダンスを制御してもよい。所定の範囲の外側になるインピーダンスの変化に関しても、制御の方法は電圧発生器516によって供給されるエネルギーに基づいてもよい。
例示的な高出力動作モードは、特に急速に組織を除去するために設計される。例として、この高出力動作モードは、肩峰減圧処置またはACL断端創面切除のために使用されうる。そのため、例示的な高出力モードは、吸引のための高い体積流量率とともに、アクティブ電極に供給される高いエネルギーを特徴とする。具体的には、この動作モードにおいて、処置中のエネルギーの供給はより効率的なアブレーション率及び熱放散の低減のために、ワンド近傍の組織を吸引する連続的な吸引流量体積を伴う組織除去を増大させるように調整される。高い体積流量率は、より低いインピーダンス及び一定の(しかし制御されていない)プラズマ崩壊を有するプラズマとなる。そのため、プラズマ崩壊は、強い吸引流量に基づく高出力モードにおけるものであると予期されるが、高出力モードは最小体積流量率およびそのため最小蠕動ポンプ速度を、そのような最小速度がプラズマ崩壊につながるとしても、実装してもよい。
電圧発生器516に関して、高出力モードはプラズマのインピーダンスにおける変化に対してより遅い変化を特徴とする。ワンド電極に提供されるエネルギーの変化は、ゆっくりであるが、所定の高出力エネルギーレベルに到達すると(例えば2アンペアを超える)、電圧発生器516は急速にエネルギーを減少させ、または完全に遮断するように実装されてもよい。一定のRMS電圧を発生させる電圧発生器516に関して、アクティブ電極202に提供される電流量は、所定のアンペア数となるように制御されてもよい。電圧出力を制御する電圧発生器516に関して、平均出力が制御されてもよい。
高出力の動作モードでは、コントローラ104は、プラズマに関する低い目標インピーダンスを実装するために電圧発生器516及び蠕動ポンプ118を制御する。インピーダンスの低下に応じた制御動作は(アクティブ電極に印加される電流及び/または電圧に基づいて計算されるように)、蠕動ポンプ118の速度低下を伴うが、所定の最小体積流量率までである。いくつかの実施形態において、コントローラ104は、所定のエネルギーを提供してもよく、所定の範囲に入るインピーダンス値に関して、コントローラ104は蠕動ポンプ118の速度の変化のみに基づいてインピーダンスを制御してもよい。所定の範囲の外側になるインピーダンスの変化に関して、制御は、電圧発生器516によって供給されるエネルギーの変化に基づいてもよい。
プラズマ崩壊が予期されるが、高出力モードではプラズマ崩壊の正確なタイミングは制御されない。特定の実施形態において、コントローラ104はプラズマがアクティブ電極の近傍に存在する時間量及び全時間(1秒といった任意の適切な期間に渡って)を収集しまたは計数する。例えば、コントローラは、所定の閾値(例えば、500ミリアンペア)よりも電流が低い場合にプラズマが存在する(プラズマに関するインピーダンスがない場合にはより高い電流が流れることとなるので)と仮定してもよい。プラズマモードの収集された時間に応じて、コントローラ104はプラズマの、プラズマがない時間に対する「デューティーサイクル」を示す値を、プラズマがある期間の全時間に対して存在する時間比を取ることなどによって、決定してもよい。デューティサイクルが示す値が、所定の量よりも多いプラズマモード外の動作を示す(例えば、時間の25%未満)場合、吸引流量率を低下させるなどの制御の変化がなされてもよい。
例示的な真空動作モードは、特に手術野内の浮遊組織や組織断片を迅速に除去するために設計される。このため、例示的な真空モードは、様々なモード(吸引が動作する場合)の中で最も高い体積流量率とともに、アクティブ電極に供給される様々なエネルギーを特徴とする。具体的には、この動作モードにおいて、処置におけるエネルギー供給は、ワンド先端に破片を引き付けることができるように、高い体積流量率とともに、手術野における破片の急速な分解のために最適化されるように設計される。高い体積流量率は、より低いインピーダンスを有するプラズマとなる。
吸引の高い体積流量率に基づく真空モードでは、プラズマ崩壊が予期される。いくつかの場合において、流量率体積が、モードの使用を通して変化しないように設定され、維持されることとなる。他の場合には、真空モードは、強い組織除去のための最大体積流量率と、消滅したプラズマを「再点火」することが可能となる、より低い体積流量率との間で交互変化する、パルス体積流量率を実装してもよい。例えば、1つの例示的な拍動流動実施形態において、高い体積流量率は0.5秒間実装され、次いで低い体積流量率が0.5秒間実装されてもよい。高い流量率が0.1から1.0秒の間の範囲であり、低い体積流量率が0.1から1.0秒の範囲であるような、他の時間も可能である。さらに、高い体積流量率と低い体積流量率の時間は、バランスする必要はない。
電圧発生器516に関して、真空モードはプラズマ及び電極回路のインピーダンスの変化に応じたより遅い変化を特徴とする。供給されるエネルギーの変化は、ゆっくりであるが、所定の高いエネルギーレベルに到達すると(例えば2アンペアを超えると)、電圧発生器516は急速にエネルギーを減少させ、または完全に停止させることを伴うように実装されてもよい。一定ピークの電圧を発生させる電圧発生器516に関して、アクティブ電極202に提供される電流量は所定のアンペア数になるように制御されてもよい。電圧出力を制御する電圧発生器516に関して、平均出力が制御されてもよい。
真空動作モードにおいて、コントローラ104は動作の制御を変化させなくてもよい(吸引流量をパルス化することを実装することを除いて)。換言すれば、プラズマのインピーダンスの変化は、プロセッサ500によって電圧発生器516に提供される電流及び/またはエネルギー設定値の変化をもたらさないものでありうる。他の場合において、エネルギー供給の変化は、他の動作モードよりも遅く、所定の高いエネルギー流量に関連するエネルギーにおける不定期な低下及び/または停止を伴う。
図6は、3つの例示的な動作モード、低出力モード、中間出力モード、高出力モードに関して、出力RFエネルギーの吸引流量率(ポンプ速度設定値として示されている)に対する可能な範囲に関連するグラフを示している。具体的には、各動作モードに関して、電気手術用コントローラ104は、出力RFエネルギー及び吸引流量率に関する動作パラメータの範囲内で動作するようにプログラムされる。例えば、前述の「低出力動作モード」では、コントローラ104は25から50ワットの範囲の出力RFエネルギーのみ及び「-1」(すなわちモーターの逆転方向)から「5」の吸引流量率設定値を許容するように事前にプログラムされてよく、この吸引流量率設定値は、いくつかの場合には0から45ml/分の範囲の吸引流量となりうる。前述の例示的な「中間出力動作モード」に関して、コントローラ104は50から150ワットの範囲の出力RFエネルギーのみ及び例えば「0」(すなわち、蠕動モーターが停止している)から「5」の吸引流量率設定値を許容するように、事前にプログラムされてよい。前述の例示的な「高出力動作モード」に関して、コントローラ104は150から400ワットの範囲の出力RFエネルギーのみ及び例えば「1」から「5」の吸引流量率設定値を許容するように事前にプログラムされてよい。
各モードは特定のエネルギー及び体積流量率を特徴とし得るが、最初にプラズマを確立するのを助けるために、体積流量率は最初は低くてもよく、同様に、アクティブ電極近傍の流体のガス相を確立するのを助けるために、印加エネルギーの電圧も低くてもよい。さらに、また動作モードとは関係なく、プラズマが低い体積流量率及び印加電圧で形成されると、電圧および体積流量率が動作モードに関する初期設定値まで同期して上昇しうる。少なくともいくつかの実施形態に従って、発生した電圧516は、抵抗率の低い物質(例えば血液、生理食塩水または導電ゲル)がリターン電極とアクティブ電極との間により低いインピーダンス経路を形成する場合には、電流を制限しまたは遮断するように構成される。またさらに、いくつかの実施形態において、電圧発生器516は、使用者によって一定の電流源である(すなわち、ワンド102において現れるインピーダンスの関数として出力電圧が変化する)ように構成される。
前述の議論は、本発明の原理及び様々な実施形態が例示的なものであると解される。多数の変形及び改良が可能である。以下の特許請求の範囲は、そのような変形及び改良を全て包含するものと解釈されるべきであることを意図される。例えば、図6は出力RFエネルギーが例示的な動作モードの間で重複していないことを示しているが、その範囲は単なる例である。他の状況において、動作モードの出力RFエネルギーは重複してもよい(例えば、中間出力モードの下限の出力RFエネルギーは、低出力モードの上限の出力RFエネルギーと重複してもよい。そのため、本明細書は、様々な例示的な動作モードが互いに排他的な出力RFエネルギーの範囲を要することが必要であると解されるべきではない。
図7は、ブロック図であり、ブロック700で開始しうる方法を記載しており、この方法は、電気手術処置において少なくとも2つの動作モードを実装し、電気手術用コントローラに結合された電気手術用ワンドの第1のアクティブ電極を伴う実装(ブロック702)と、電気手術用ワンドの遠位端において、第1の電極に近接した開口部に入る流体の流量を制御する、またはインピーダンスを制御することによる実装(ブロック704)、及び電気手術用コントローラによって第1のアクティブ電極に供給されるエネルギーの制御、またはインピーダンスの制御(ブロック706)を含む。次いで、この方法は、ブロック708で終了しうる。
本開示の好適な実施形態が示され、説明されたが、当業者は本明細書の範囲及び教示を逸脱しない範囲で、その改良を行うことができる。本明細書に説明された実施形態は単に例示的なものであり、限定的なものではない。多くの様々な異なる実施形態が、等価な構造、材料またはその方法を含む本発明の概念の範囲内で行われてもよく、多くの改良が、法に記載された要件に従って本明細書で詳細に説明された実施形態において行われてもよいので、本明細書の詳細は例示的なものとして解釈すべきであり、限定的な意味とすべきではないことを理解すべきである。