JP7020229B2 - 微細藻類の培養方法及び微細藻類 - Google Patents

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IPOD FERM P-22328
本発明は、微細藻類の培養方法及び微細藻類に関する。
近年、下水等の排水を用いて微細藻類を培養する技術が提案されている。例えば、下水を用いた藻類培養技術として、特許文献1、非特許文献1、非特許文献2の報告がある。藻類の増殖には光合成に必要な二酸化炭素、水、窒素、リン、光が必要であるが、下水中には水、窒素、リン、炭酸イオンが含まれており、そこに光を供給し、さらに空気中の二酸化炭素を利用させることで、藻類培養ができるとされている。また、藻類培養の際に窒素を消費することから、下水中の窒素が藻類増殖に利用され、固液分離により藻類と処理水を分離することで窒素除去が可能と考えられる。
また、特許文献2では少なくとも窒素分またはリン分のいずれか一方を含む排水を膜ろ過した透過水による藻類培養方法が提案されている。これは微細藻類の増殖の際に、排水に含まれる細菌類、原生動物、後生動物等の微生物によって微細藻類の増殖が阻害されるという、いわゆるコンタミネーションを抑制することを課題としており、排水をろ過して微生物を除去することを目的としている。また、藻類培養の際に窒素を消費することから、排水中の窒素が藻類増殖に利用され、固液分離により藻類と処理水を分離することで窒素除去が可能と考えられる。
さらに、特許文献3では従来の活性汚泥微生物と微細藻類とを混在させて下水等の排水を処理する方法が提案されており、微細藻類の従属栄養作用を使って有機物を分解することが可能と考えられる。
ところで、微細藻類の培養では従来、藻類を液体培地中に投入し、懸濁して培養する、いわゆる液体培養が主として用いられてきた。しかし近年、これとは異なり、固体表面上に担持した微細藻類を培養することを特徴とする表面培養が提案されている。例えば、微細藻類の表面培養として、特許文献7、特許文献8、非特許文献12及び非特許文献13の報告がある。表面培養では、液体培養よりも少ない面積でより高い生産性が可能である報告されている。また、液体培養では、液体から藻類を回収する固液分離の過程で、遠心濃縮やろ過などのコストとエネルギーを要する方法が用いられる。一方で、表面培養では藻類を固体表面から掻きとる、または洗い流すことで容易に回収可能であるとされている。
また、下水などの排水を用いた微細藻類の培養に、表面培養を適用する技術も報告されている。非特許文献14では、下水を用いて、表面培養で微細藻類を培養する方法が提案されている。表面培養では、培養した藻類をスクレイパーなどにより担体表面から削り取ることで、藻類が吸収した窒素やリンを排水中から除去することが可能だと考えられる。
特開平8-107782号公報 特開2014-60967号公報 特開2014-113559号公報 特開平5-285491号公報 特開2016-195586号公報 特開2012-175964号公報 特開2016-5439号公報 特開2017-99301号公報
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従来の下水を用いた微細藻類の増殖方法において、下水に含まれる窒素濃度は、非特許文献3によれば全窒素で30mg-N/L程度、そのうちアンモニア態窒素は20mg-N/L程度である。一方で、例えば、コークス炉を用いたコークスの製造工程において排出される排水の窒素濃度は、100mg-N/L以上あり、そのほとんどがアンモニア態窒素(アンモニア分子を構成する窒素原子)である。
ここで、コークスの製造工程では、以下の工程により排水が生成、排出される。すなわち、コークス炉から発生したCOG(コークス炉ガス)を安水で洗浄、冷却する。COGを洗浄、冷却した安水は、アンモニア態窒素、タール、スラッジ、及びCOD(化学的酸素要求量)成分等を含む。COGを洗浄、冷却した後の安水は、タールデカンタ、アンモニアストリッピング装置に順次導入される。タールデカンタでは、安水からタール及びスラッジが除去され、アンモニアストリッピング装置では、安水からアンモニア態窒素の大半が除去される。しかし、アンモニアストリッピング装置から排出された安水には、依然として多くの(すなわち少なくとも100mg-N/L以上の)アンモニア態窒素およびCOD成分が残っている。アンモニアストリッピング後の安水に残留するCOD成分の主なものとして、フェノールなどの芳香族化合物、チオシアン、チオ硫酸などの硫黄化合物がある。
このように、アンモニアストリッピング装置から排出された安水、すなわちコークス炉排水には、極めて高濃度のアンモニア態窒素が含まれている。このため、コークス炉排水中のアンモニア態窒素を用いて微細藻類を培養する技術が強く要望されていた。コークス炉排水中のアンモニア態窒素を用いて微細藻類を培養することができれば、コークス炉排水中のアンモニア態窒素を低減することができるので、環境への負荷が低減される。さらに、微細藻類は、COを吸収して増殖(生長)する。そして、微細藻類はバイオマス資源、すなわち炭材として利用することができる。このように、省資源化、CO削減の観点からもコークス炉排水を用いた微細藻類の培養は有用である。
しかしながら、非特許文献4にはアンモニアによる藻類の生長阻害EC50値が整理されている。非特許文献4には、全アンモニア濃度が数千μM、すなわちアンモニア態窒素濃度が数十mg-N/L程度となる場合、多くの緑藻類、及び、藍藻類、計藻類、渦鞭毛藻、ラフィド藻類で生長阻害が認められることが示されている。さらに、コークス炉排水には、極めて高濃度のフェノールも含まれている。このため、従来の微細藻類は、アンモニア態窒素の濃度が低い下水中では生長可能であったが、アンモニア態窒素濃度が極めて高いコークス炉排水中ではほとんど生長できなかった。さらに、コークス炉排水には、極めて高濃度のフェノールも含まれている。従来の微細藻類は、フェノール耐性がほとんどないので、フェノールが存在する環境下では、死滅するか、あるいは、ほとんど生長できない。したがって、この点からも、従来の微細藻類はコークス炉排水中では培養不可能であった。
なお、特許文献2では、排水を膜ろ過した透過水による微細藻類の増殖が提案されている。しかしながら、特許文献2には、排水の窒素濃度等に関する記載が無く、さらに、藻類種類が複数例示されているものの、それらが高アンモニア態窒素濃度下で生長可能であることは何ら示されていない。また、特許文献3には、微細藻類の従属栄養作用を使って有機物を分解することができる旨が開示されている。しかしながら、特許文献3が対象とする排水は都市下水である。また、特許文献3には、フェノールについての言及はなく、また、アンモニアへの耐性について何ら記述されていない。
また、非特許文献14では、排水を用いた微細藻類の表面培養法が提案されている。しかしながら、非特許文献14には、排水の全窒素濃度が記述されているものの、その濃度は8.63±0.43mg/Lとコークス炉排水におけるアンモニア態窒素濃度と比べて一桁以上低く、また、フェノール濃度等に関する記載は無い。さらに、藻類種類が複数例示されているものの、それらのアンモニア耐性、フェノール耐性については何ら示されていない。
ところで、コークス炉排水は、海水もしくは淡水で希釈された後、活性汚泥流入水として活性汚泥処理に供される。好気処理のみ行う活性汚泥処理によって、安水からCOD成分のほとんどを除去することができる。しかし、このような活性汚泥処理によっても、アンモニア態窒素をコークス炉排水から除去することができなかった。さらに、活性汚泥処理後のコークス炉排水のpHは淡水よりも高かった。このような高pH環境も、微細藻類の生育を阻害する一因である。したがって、コークス炉排水を活性汚泥処理した場合であっても、従来の微細藻類をコークス炉排水中で培養することができなかった。したがって、従来の微細藻類では、上述した要望に応えることができなかった。
さらに、特許文献4によれば、コークス炉排水を活性汚泥処理する場合、水温を30℃程度に維持する必要がある。したがって、活性汚泥処理後のコークス炉排水の水温は概ね30℃程度となる。一方、下水の水温は外気温の影響を受けやすく、非特許文献5によれば年中を通して16~28℃程度の変動があることが読み取れる。微生物は一般的に至適温度を有しており、培養可能な温度域が異なる。したがって、従来の微細藻類、すなわち下水中で生長可能な微細藻類は、至適温度という観点からも、活性汚泥処理後のコークス炉排水で生長できない可能性があった。このように、従来の微細藻類を活性汚泥処理後のコークス炉排水に適用しても、微細藻類を培養することができなかった。したがって、コークス炉排水を活性汚泥処理しただけでは、上述した要望に応えることができなかった。
一方、特許文献5には、活性汚泥処理後のコークス炉排水、すなわち活性汚泥処理水中で培養可能な微細藻類が開示されている。つまり、特許文献5に開示された微細藻類は、アンモニア態窒素濃度が極めて高い活性汚泥処理水中でも生長可能である。しかし、特許文献5に開示された微細藻類は、フェノール濃度が極めて高い排水中ではほとんど生長できないという問題があった。この点、好気処理が不調の場合には活性汚泥処理水中にフェノール等のCOD成分も残留することがある。したがって、このような場合、特許文献5に開示された微細藻類はほとんど生長できなかった。さらに、活性汚泥処理水には、活性汚泥由来の雑菌が含まれている。このような雑菌は、微細藻類の生長を阻害する可能性があった。
また、コークス炉排水は石炭に由来する種々の有機化合物を含み、そのうちの一部の種類の有機化合物は、コークス炉排水に着色性を与えている。また、コークス炉排水中ではこれらの有機化合物が凝集体を形成し、懸濁物として排水中に存在している。このため、一般にコークス炉排水は光の透過性が低く、排水内部には光が十分に透過しない。したがって、液体培養では、光合成に必要な光量が不足するために、微細藻類の生育が抑制されるという問題があった。
さらに、液体培養をコークス炉排水に適用する場合、微細藻類の沈降を防ぎ、また光合成に必要なCOを排水中に溶解させるために、排水の撹拌や、排水への空気の吹き込みが必要になる。しかし、コークス炉排水はフェノールやアンモニア態窒素を高濃度で含むため、撹拌や空気の吹き込みによって、これらの揮発性をもつ有害な化合物が大気中に拡散する恐れがある。また、アンモニア態窒素は藻類にとって栄養となる化合物であるため、揮発により排水中から失われれば、これを十分に利用することが出来ないという問題があった。
さらに、コークス炉排水を活性汚泥処理する場合、コークス炉排水を大量の海水または淡水で薄める必要があるので、処理対象の水量が非常に多くなる。このため、処理設備が大型化するという問題もあった。したがって、特許文献5に開示された技術によっても、上述した要件に十分に応えることができなかった。なお、特許文献1~3に開示された微細藻類は、下水(すなわち、淡水)中で生長可能な微細藻類なので、コークス炉排水を海水で薄めた場合、上述した理由とも相まって、ほとんど生育しないと推定される。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、アンモニア態窒素及びフェノールを高濃度で含む排水、例えばコークス炉排水中で微細藻類を培養することが可能な、新規かつ改良された微細藻類の培養方法及び微細藻類を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、フェノールを1mg/L以上、アンモニア態窒素を100mg-N/L以上含む排水中で増殖可能な微細藻類を排水と接触させた状態で、微細藻類に光を照射し、微細藻類は、NS001C株を含み、排水は、塩分を3.5質量%以下1.5質量%以上の割合で含むことを特徴とする、微細藻類の培養方法が提供される。
ここで、微細藻類の培養方法では、微細藻類と、前記排水とを藻類培養槽に投入し、前記微細藻類に光を照射してもよい。
また、微細藻類の培養方法では、吸水性または保水性を有する担体の表面に担持し、前記担体に前記排水を保持させ、かつ気相に露出した前記微細藻類に光を照射してもよい。
更には、微細藻類は、NS001C株であることがより好ましい。
また、排水は、コークス炉から排出されるコークス炉排水を含む場合に好適である。
本発明の他の観点によれば、フェノールを1mg/L以上、アンモニア態窒素を100mg-N/L以上、及び塩分を3.5質量%以下1.5質量%以上の割合で含む排水中で増殖可能であって、NS001C株を含むことを特徴とする、微細藻類が提供される。
ここで、微細藻類は、フェノールを1mg/L以上、アンモニア態窒素を100mg-N/L以上、及び塩分を3.5質量%以下1.5質量%以上の割合で含む排水中で増殖可能であり、NS001C株であることがより好ましい。
以上説明したように本発明によれば、フェノールを1mg/L以上、アンモニア態窒素を100mg-N/L以上含む排水を用いて微細藻類を増殖可能である。
本発明の第1の実施形態に係る微細藻類の培養装置の概要を示す説明図である。 NS001C株の18S rDNA塩基配列を示す説明図である。 本発明の第2の実施形態に係る微細藻類の培養装置の概要を示す説明図であり、藻類支持担体7を水平に設置する場合の一例を示している。 同実施形態に係る微細藻類の培養装置の概要を示す説明図であり、藻類支持担体7を垂直に設置する場合の一例を示している。 試験例2の測定結果を示すグラフである。 試験例3の測定結果を示すグラフである。 試験例4の測定結果を示すグラフである。 試験例5の測定結果を示すグラフである。 試験例6の測定結果を示すグラフである。 試験例6の測定結果を示すグラフである。 試験例7の測定結果を示すグラフである。 試験例8の測定結果を示すグラフである。 試験例9の測定結果を示すグラフである。 試験例10の測定結果を示すグラフである。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
[1.第1の実施形態]
<1-1.微細藻類の培養装置の構成>
まず、図1に基づいて、本発明の第1の実施形態に係る微細藻類の培養装置の構成について説明する。微細藻類の培養装置は、藻類培養槽3と、光源4と、固液分離層5とを備える。藻類培養槽3は、微細藻類2を培養するための培養槽である。藻類培養槽3には、少なくとも、排水1、及び微細藻類2が投入される。
排水1は、フェノールを1mg/L以上、アンモニア態窒素を100mg-N/L(窒素原子換算濃度)以上含む排水である。本実施形態に係る微細藻類2は、このような排水1中で増殖可能である。さらに、微細藻類2は、フェノール濃度が60mg/L以上であっても増殖可能である。したがって、フェノール濃度は60mg/L以上であっても良い。フェノール濃度の上限値は、本発明に係る微細藻類が増殖可能な値であれば特に制限されないが、例えば500mg/Lである。上限値は、好ましくは400mg/Lであり、さらに好ましくは150mg/Lであり、さらに好ましくは100mg/Lである。アンモニア態窒素濃度の上限値は、本発明に係る微細藻類が増殖可能な値であれば特に制限されないが、例えば1200mg/Lであり、好ましくは1000mg/Lであり、さらに好ましくは500mg/Lであり、さらに好ましくは300mg/Lであり、さらに好ましくは200mg/Lである。
このような排水1の例としては、上述したコークス炉排水等が挙げられる。本実施形態による微細藻類2は、排水1中でも培養可能である。このため、コークス炉排水を活性汚泥処理することなくそのまま使用することができる。したがって、海水等による希釈は不要であるので、培養装置の小型化が可能である。さらに、活性汚泥由来の雑菌は排水1に含まれない。もちろん、培養装置の容量に余裕があるのであれば、海水等で希釈されたコークス炉排水を使用しても良い。この場合、塩分の濃度は3.5質量%以下であることが好ましい。また、雑菌等による影響が少ないのであれば、活性汚泥処理済みのコークス炉排水を使用しても良い。
微細藻類2は、排水1中で増殖(培養)可能な微細藻類である。微細藻類2は、具体的には、NS001C株(受領機関:特許生物寄託センター、受領日:2017年3月21日、受領番号:FERM AP-22328)を含む。図2にNS001C株の18S rDNAの塩基配列を示す。
本発明者は、微細藻類について鋭意研究を重ねたところ、フェノールを1mg/L以上、アンモニア態窒素を100mg-N/L以上含む排水1中でも培養可能な微細藻類が存在することを見出した。以下、本発明者が行った検討について説明する。
微細藻類とは、非特許文献6に記載されている藻類(酸素を発生するタイプの光合成をする生物のうち、いわゆる陸上植物(コケ、シダ、種子植物)を除いたもの)のうち、非特許文献7に記載されている海洋や淡水中に生息する数十ミクロンの微生物を指す。微細藻類は窒素およびリンを摂取することにより増殖する。
本発明者は、排水1中で培養可能な微細藻類を見出すべく、コークス炉排水を活性汚泥処理する安水活性汚泥設備に着目した。すなわち、本発明者は、安水活性汚泥設備の流入路(すなわち、活性汚泥処理に供されるコークス炉排水が流動する流路)に生育している微細藻類を採取した。さらに、本発明者は、フェノールを1mg/L以上、アンモニア態窒素を100mg-N/L以上含む培養液を用意し、この培養液中で微細藻類を培養した。この結果、いくつかの微細藻類が増殖することを確認できた。そこで、本発明者は、これらの微細藻類の増殖速度を比較し、増殖速度のもっとも高いものをNS001C株として選定した。そして、本発明者は、NS001C株の液体培養物からDNAを抽出し、18S rDNAの塩基配列を決定した。NS001C株の18S rDNAの塩基配列は図2に示す通りである。
本発明者は、NS001C株の塩基配列と相同性のある塩基配列を国際塩基配列データベース(DDBJ/ENA(EMBL)/GenBank)から検索した。検索ツールはBLASTを用いた。この結果、NS001C株は、Chlorella属もしくはそれに近縁な微細藻類と推定された。なお、実験の詳細は試験例1にて説明する。
このように、本発明者は、フェノールを1mg/L以上、アンモニア態窒素を100mg-N/L以上含む排水1中で培養可能な微細藻類を特定することに成功した。さらに、このような微細藻類は、NS001C株を含むことも明らかになった。
なお、藻類培養槽3に投入する微細藻類2は、以下の方法で準備すれば良い。すなわち、培養装置によって微細藻類2を培養済みであれば、培養済みの微細藻類2を藻類培養槽3に投入すればよい。一方、このような微細藻類2が存在しない場合には、後述する試験例1と同様の方法で微細藻類2を単離、培養し、この微細藻類2を藻類培養槽3に投入すればよい。
一方、微細藻類2の培養には溶存無機炭素も必要である。溶存無機炭素は、例えば二酸化炭素(CO)、炭酸(HCO)、炭酸水素イオン(HCO )、炭酸イオン(CO 2-)等であり、排水1中に通常含まれている。ただし、微細藻類2をより増殖させるには、溶存無機炭素源、すなわち排水1中で溶存無機炭素となりうる材料を排水1に投入してもよい。溶存無機炭素源としては、例えば炭酸ガス、各種炭酸塩等が挙げられる。炭酸塩は、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などであってもよい。なお、非特許文献8では、藻類の培養に炭酸塩を使用できることが開示されている。そこで、本発明者は、微細藻類2を炭酸塩で培養可能か検証したところ、特に問題なく培養できた。したがって、溶存無機炭素源として炭酸塩を使用可能である。
溶存無機炭素源の投入量、投入方法は特に制限されず、公知の藻類培養方法で採用されている投入量、投入方法を本実施形態でも適用可能である。例えば、溶存無機炭素源として炭酸ガスを排水1中に投入する場合、藻類培養槽3の底部に散気管を配置し、この散気管から炭酸ガスを排水1中に投入(供給)してもよい。また、炭酸ガスのガス流量は、例えば0.25vvm(volume gas per volume broth per min)程度であってもよい(非特許文献9参照)。
また、藻類培養槽3には、微細藻類の呼吸に必要な酸素が投入される。酸素の投入方法は特に制限されない。例えば、上述した散気管から空気を排水1中に投入することで、空気中の酸素を藻類培養槽3に投入してもよい。ここで、溶存無機炭素源として炭酸ガスを使用する場合、炭酸ガス及び空気の混合ガス中に占める炭酸ガスの体積比は、例えば、0.2~5体積%であってもよい(非特許文献9参照)。
また、微細藻類2の培養にはリンも必要である。排水1としてコークス炉排水を使用する場合、コークス炉排水には、通常0~1mg-P/L(リン原子換算濃度)程度のリンしか含まれないため、排水1中のリンが不足している場合、排水1にリン源(例えばリン酸)を投入してもよい。なお、藻類培養槽3中のリン濃度は、JIS K1020 46.1.1 モリブデン青吸光光度法等によって測定可能である。
また、藻類培養槽3中のアンモニア態窒素濃度(窒素原子換算濃度)とリン濃度(リン原子換算濃度)の質量比(以下、「N/P質量比」とも称する)は16.7~300であることが好ましい。一般にレッドフィールド比においてN/P質量比は16とされている。これよりリン濃度が高すぎると、すなわちN/P質量比が低すぎると、カルシウム塩を多く含む排水1を使用して微細藻類2を培養する場合に、リン酸カルシウム塩による白濁が発生する場合がある。そして、藻類培養槽3中に白濁が発生した場合、これらの白濁によって光が遮蔽されることから、微細藻類の増殖が抑制される。よって、N/P質量比は一定値以上であることが好ましい。さらに、リン濃度は最低限必要な量を添加して調整すれば良く、添加するリンが多すぎると、コストが高くなる。よって、リン濃度は少ない方が、すなわち、N/P質量比は高い方がコスト的に好ましい。さらに、リン濃度が1mg-P/L以上であっても、N/P比が300より高くなると藻類濃度または比増殖速度に影響を与える場合があることから、N/P質量比には一定の好ましい上限値が存在する。そのため、N/P質量比は上述の一定の範囲内に調整されることが好ましい。具体的には、上述したように、N/P質量比は16.7~300であることが好ましい。なお、藻類培養槽3には、アンモニア態窒素濃度が非常に高い排水1(例えばコークス炉排水)が投入される。したがって、藻類培養槽3中のアンモニア態窒素濃度は非常に高いので、N/P質量比の調整は藻類培養槽3にリン源(例えばリン酸)を投入することで行われればよい。また、例えばリン源を投入しすぎた場合等のように、N/P質量比を増大させたい場合もある。この場合、藻類培養槽3にアンモニア源(例えば塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等の固体または溶液)を投入してもよい。
藻類培養槽3自体の形状は特に制限されない。例えば、藻類培養槽3は、下水処理場、工場排水処理場で設計されている直方体型または円筒形のものが好ましいが、これらに限定されない。また、藻類培養槽3内の微細藻類が増大してくると、微細藻類全体に溶存無機炭素が行き渡りにくくなる。そこで、藻類培養槽3には、撹拌装置が設けられてもよい。また、藻類培養槽3が大容量であっても、水、窒素、光、リン、溶存無機炭素源が適切に微細藻類2に供給されれば微細藻類2の培養は可能である。しかし、特に光については藻類培養槽3の底部まで届きにくくなることが考えられる。その場合は、非特許文献10に記載のある開放系ポンドシステムのうち、水深が0.3m程度のループ循環式水路を設けたレースウェイ式培養池を藻類培養槽3とすることで、太陽光を十分に底部まで届かせることができる。
光源4は、藻類培養槽3中の微細藻類に光を供給するものである。ここで、光源4から放射される光の波長は、微細藻類が光合成するのに必要な波長を含むことが好ましい。光源4としては、例えば、白熱灯、蛍光灯、LED(発光ダイオード)などが好ましいが、これらに制限されるものではない。なお、光源4から光を照射する代わりに、太陽光を微細藻類2に照射してもよい。この場合、光源4は必ずしも培養装置に設けなくても良い。
なお、光の光量子密度は60μmol/m/秒以上であることが好ましい。この場合、微細藻類2の増殖速度が大きくなるからである。また、光量子密度の上限値は特に指定しないが、非特許文献11には太陽光の日中ピークが2,000μmol/m/秒と記載されており、特許文献6には日光が当たりすぎの部位は強光阻害により増殖が停滞することが記載されていることから、およそ2,000μmol/m/秒程度が強光阻害を起こさない上限の目安と言える。ただし、この光量子密度は藻類直近におけるものである。なお、光量子密度は、例えば藤原製作所社製光量子計MQ-200を用いて測定を行うことができる。
藻類培養槽3内で微細藻類2が培養された後、排水1は、微細藻類2とともに固液分離層5に投入される。固液分離層5では、排水1及び微細藻類2の混合物が排水1と微細藻類2とに分離される。分離後の排水1は、処理完了水6として装置外に排出される。なお、固液分離層5は、培養装置が連続処理(微細藻類2を連続的に培養する処理)を行う場合に、培養装置に備えられる。したがって、培養装置がバッヂ処理を行う場合、固液分離層5は培養装置に備えられなくても良い。
<1-2.微細藻類の培養方法>
つぎに、図1に示す培養装置を用いた微細藻類の培養方法を説明する。まず、藻類培養槽3に、排水1、及び微細藻類2を投入する。ついで、微細藻類2に光源4から光を照射する。これにより、藻類培養槽3中で微細藻類2が培養される。微細藻類2の生育状況に応じて、光源4からの光量を適宜調整してもよい。ついで、排水1は、微細藻類2とともに固液分離層5に投入される。固液分離層5では、排水1及び微細藻類2の混合物が排水1と微細藻類2とに分離される。分離後の排水1は、処理完了水6として装置外に排出される。
このように、本実施形態によれば、フェノールを1mg/L以上、アンモニア態窒素を100mg-N/L以上含む排水1と微細藻類2を接触させた状態で、微細藻類に光を照射することで、微細藻類2を培養することができる。また、微細藻類の増殖には窒素を必要とするため、栄養源である窒素を多く含んだコークス炉排水等を利用できるので、窒素資源を有効利用することができる。さらに、コークス炉排水は、下水と比べて水温が高いため、微細藻類の増殖速度がより高くなることが期待できる。
[2.第2の実施形態]
<2-1.微細藻類の培養装置の構成>
まず、図3及び図4に基づいて、本発明の第2の実施形態に係る微細藻類の培養装置の構成について説明する。微細藻類の培養装置は、藻類支持担体7と、光源4と、培養液槽8とを備える。藻類支持担体7は、微細藻類2を表面に担持するための担体である。藻類支持担体7には、少なくとも、排水1が供給される。このとき、培養液槽8に投入された排水1が藻類支持担体7に供給されるか、または藻類支持担体7に供給された排水1が培養液槽8に回収される。
このとき藻類支持担体7の設置の仕方は、光源との位置関係や、藻類支持担体の素材などにより、いくつかの方法が考えられる。例えば、藻類支持担体7は図3のように、微細藻類2の担持面を上側にし、培養装置の設置面と水平に設置することができる。このとき、藻類支持担体7の一部は、培養液槽8内の排水1に接触した状態にある。また、藻類支持担体7は図4のように、微細藻類2の担持面が培養装置の設置面と垂直になるように設置することができる。この場合、藻類支持担体7の上方から排水1を供給することでができる。
排水1は、第1の実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
微細藻類2は、排水1中で増殖(培養)可能な微細藻類である。微細藻類2の具体例は、第1の実施形態と同様である。
なお、藻類支持担体7に担持する微細藻類2は、以下の方法で準備すればよい。すなわち、培養装置によって微細藻類2を培養済みであれば、培養済みの微細藻類2を藻類支持担体7に担持すればよい。一方、このような微細藻類2が存在しない場合には、あらたに微細藻類2を単離及び培養し、この微細藻類2を藻類支持担体7に担持すればよい。微細藻類2の単離及び培養法として、例えば以下のような方法が考えられる。まず、培養に用いるコークス炉排水を採取し、このコークス炉排水に微細藻類を植種し、培養を行う。このときの培養条件は特に制限されないが、例えば、光量子束密度60μmol/m/秒、光照射周期14時間明期、10時間暗期、温度25℃とすることができる。また、必要に応じてコークス炉排水を淡水や海水で希釈したものや、リン源を添加したものを培地として用いてもよい。植種する藻種は特に限定されないが、例えば、コークス炉排水に元々含まれる藻種や、野外で採取した藻種を用いることができる。このような条件で、培地中に生育した藻類は、コークス炉排水中で生育可能な微細藻類2である。もし、そのような微細藻類2がみられない場合は、植種する藻種を変えて培養を行うことで、そのような微細藻類2を探索することができる。培地中に生育した微細藻類2は複数の藻種を含む場合がある。微細藻類2を単離する必要がある場合は、寒天培地上でシングルコロニーを形成させるなど一般的な微細藻類の単離操作を行い、単離することができる。
一方、微細藻類2の培養には溶存無機炭素及びリンも必要であること、また、微細藻類2に供される排水1中のアンモニア態窒素濃度(窒素原子換算濃度)とリン濃度(リン原子換算濃度)の質量比(以下、「N/P質量比」とも称する)は16.7~300であることが好ましいことは、第1の実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。さらに、第1の実施形態と同様に、N/P質量比の調整は、排水1にリン源(例えばリン酸)を混合することで行われればよく、N/P質量比を増大させたい場合、排水1にアンモニア源(例えば塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等の固体または溶液)を投入してもよい。
藻類支持担体7の表面への微細藻類2の担持の方法は特に制限されない。例えば、藻類支持担体7が高い吸水性を有する素材で形成されていれば、乾燥した藻類支持担体7の表面に、微細藻類2の懸濁液を塗布または噴霧することで、これを担持することができる。また、付着性を有する微細藻類を用いる場合には、藻類支持担体7を、微細藻類2が懸濁した培養液中に浸漬することによっても担持することができる。さらに、微細藻類2の懸濁液を遠心またはろ過することにより濃縮し、細胞密度が高いペースト状の懸濁液を作製し、これを藻類支持担体7の表面上に塗布することによっても担持することができる。
藻類支持担体7は表面に微細藻類2を担持するための担体であると同時に、内部に排水1を保持し、担体表面の微細藻類2に排水1および排水1中の栄養塩を供給する役割をもつ。藻類支持担体7を用いることで、微細藻類2を一側では排水1に接触させつつ、同時に他側では気相に露出させることができる。言い換えると、藻類支持担体7の微細藻類2が担持されていない部分に排水1を接触させる。このことにより、微細藻類2が気相から直接COを取り込むことができ、生育が向上することが期待できる。また、排水1に着色性の成分や懸濁物質が含まれていても、気相側から照射される光を減衰させることがないため、微細藻類2の生育が向上することが期待できる。
藻類支持担体7の素材は、吸水性や保水性を有していれば、特に制限されない。ここでいう吸水性や保水性とは、素材の内部に自由水を保持する能力のことを指す。例えば、スポンジや濾紙、木綿布などの高い吸水性や保水性を有する素材が好ましいが、これらに限定されない。また、藻類支持担体7を複数の素材で構成することもできる。例えば、形状を維持するための固い素材の上に、高い吸水性を有する素材を張り合わせるなどの方法が考えられる。藻類支持担体7が高い吸水性を有する素材で形成されている場合、図3のように藻類支持担体7を単に排水1に接触させることで、毛管現象を利用して、藻類支持担体7全体に排水1を供給することができる。一方、藻類支持担体7がこのような高い吸水性をもたない場合、以下のような方法で、藻類支持担体7全体に排水1を供給することができる。例えば、図4のように、排水1を藻類支持担体7の上部から供給することで、重力により藻類支持担体7全体に排水1を浸透させることができる。また、藻類支持担体7を動かし、排水1への浸漬と気相への露出を定期的に繰り返してもよい。
藻類支持担体7の形状は特に制限されない。例えば、藻類支持担体7は、限られた設置面積を有効に活用するという観点から、薄い板状または長方形の膜状が好ましいが、これらに限定されない。また、藻類支持担体7の表面の形状は、増殖した藻類の回収が容易であるという観点から、平滑であることが好ましいが、これに限定されない。藻類支持担体7の微細藻類2を担持した面が、設置面となす角度は、藻類に光が当たる限り特に限定されない。例えば、図3のように、藻類支持担3の担持面が設置面と水平になるように設置することもできるが、図4のように藻類支持担体7の担持面が設置面と垂直になるよう設置することにより、培養装置の設置面積を小さくすることができ、設置面積当たりの藻類支持担体7の表面積を増やすことができる。一方で、光源4を藻類支持担体7の上方に設ける場合、担持面と設置面のなす角度が垂直に近くなるほど、担持面に当たる光の強さは低下し、藻類支持担体7の表面積当たりの微細藻類2の生産性は低下すると予想される。この場合、担持面と設置面のなす角度を水平から垂直の間で変化させることで、微細藻類2の生産性が最も高くなる角度を見出すことができる。
光源4は、藻類支持担体7上の微細藻類2に光を供給するものである。ここで、光源4から放射される光の波長は、微細藻類が光合成するのに必要な波長を含むことが好ましい。光源4としては、例えば、白熱灯、蛍光灯、LED(発光ダイオード)などが好ましいが、これらに制限されるものではない。なお、光源4から光を照射する代わりに、太陽光を微細藻類2に照射してもよい。この場合、光源4は必ずしも培養装置に設けなくても良い。
なお、光の光量子密度の範囲及び測定方法は、第1の実施形態と同様である。ただし、この光量子密度は藻類直近におけるものである。また、藻類支持担体7の微細藻類2を担持した面を、光源からの光線に対し、角度をつけて設置し、藻類が受ける光の強さを小さくすることで、強光阻害を回避することができる。
藻類支持担体7上で培養された微細藻類2を回収する方法は特に限定されない。例えば、藻類支持担体7ごと微細藻類2を回収する方法が考えられる。この場合、再度培養を試みる際には、新たに微細藻類2と藻類支持担体7を用意すればよい。また、スクレイパーのようなもので、藻類支持担体7の表面を擦ることで、微細藻類2を回収することができる。さらに、勢いをもった水流を藻類支持担体7の表面に当て、微細藻類2を洗い流すことで、微細藻類2を懸濁液として回収することもできる。培養された微細藻類2を藻類支持担体7から完全に回収しないことで、藻類支持担体7上に残存した微細藻類2を再び培養することもできる。
<2-2.微細藻類の培養方法>
つぎに、図3及び図4に示す培養装置を用いた微細藻類の培養方法を説明する。まず、藻類支持担体7の表面に微細藻類2を担持する。ついで、排水1を藻類支持担体に供給する。このとき、藻類支持担体7への排水1の供給方法は特に制限されない。例えば、藻類支持担体7が地面に角度を成して設置されている場合は、藻類支持担体7の上方から、排水1を滴下または流下することにより、藻類支持担体7全体に排水1を供給することができる。また、藻類支持担体7に高い吸水性を有する高い素材を用いれば、藻類支持担体7の一部を排水1に接触させることより、毛管現象を利用して藻類支持担体7全体に排水1を浸透させることができる。ついで、微細藻類2に光源4から光を照射する。これにより、藻類支持担体7上で微細藻類2が培養される。微細藻類2の生育状況に応じて、光源4からの光量を適宜調整してもよい。微細藻類2が培地として利用した排水1は、培養液槽8に溜められる。培養液槽8に溜められた排水1は再度汲み上げて、藻類支持担体7に供給することもできる。また、使用後の排水1は、処理完了水6として装置外に排出される。
このように、本実施形態によれば、フェノールを1mg/L以上、アンモニア態窒素を100mg-N/L以上含む排水1と微細藻類2を接触させた状態で、微細藻類に光を照射することで、微細藻類2を培養することができる。また、微細藻類の増殖には窒素を必要とするため、栄養源である窒素を多く含んだコークス炉排水等を利用できるので、窒素資源を有効利用することができる。さらに、コークス炉排水は、下水と比べて水温が高いため、微細藻類の増殖速度がより高くなることが期待できる。さらに、本実施形態では藻類支持担体7上の微細藻類2に直接光を照射するため、コークス炉排水に含有される着色成分や、懸濁物質によって光が減衰することがなく、微細藻類の増殖速度が高くなることが期待できる。加えて、本実施形態では排水1の撹拌や、排水1への空気の吹き込みを必要としないため、アンモニアが揮発によって失われずに、コークス炉排水中のアンモニア態窒素を効率よく微細藻類に利用させることができる。
<1.試験例1:フェノール耐性のある微細藻類の獲得>
試験例1では、フェノール耐性のある微細藻類、すなわち本実施形態に係る微細藻類を獲得した過程について説明する。
まず、安水活性汚泥設備の流入路に生育している微細藻類を採取した。ここで、安水活性汚泥設備の流入路には、活性汚泥処理に供されるコークス炉排水が流動している。ここで、流入路を流動するコークス炉排水は、海水で希釈されている。
ついで、表1に示す組成の液体培地を用意した。この液体培地は、海水で希釈されたコークス炉排水、すなわち安水被処理水(活性汚泥処理に供されるという意味で被処理水とした)を模擬したものである。ここで、滅菌ろ過海水は、天然海水をガラス繊維ろ紙GF/Bで吸引ろ過した後、蒸気滅菌(121℃、20分)したものである。液体培地中のアンモニア態窒素濃度は200mg-N/L、リン酸態リン濃度は5mg-P/Lになる。したがって、N/P比は40となる。また、液体培地は、蒸気滅菌(121℃、20分)された後に、培養実験に供した。
Figure 0007020229000001
ついで、採取した微細藻類をこの液体培地に植種し、光量子密度60μmol/m/秒、光照射周期14時間明期/10時間暗期、温度25℃の培養条件とした培養庫内で14日間培養した。光源は白色LEDパネルとした。これにより、培養液を得た。
ついで、表1の組成を有する液体培地に1.5%(w/v)の寒天を加えることで、寒天培地を作製した。ついで、この寒天培地に培養液を塗布し、光量子密度60μmol/m/秒、光照射周期14時間明期/10時間暗期、温度25℃の培養条件とした培養庫内に寒天培地をセットした。光源は白色LEDパネルとした。ついで、培養庫内で微細藻類を7日間培養した。この結果、寒天培地上にいくつかのコロニーが形成された。
ついで、上記と同様の寒天培地を新たに準備し、これらのコロニーを別々の新しい寒天培地に塗布した。光量子密度60μmol/m/秒、光照射周期14時間明期/10時間暗期、温度25℃の培養条件とした培養庫内に寒天培地をセットした。光源は白色LEDパネルとした。そして、培養庫内で微細藻類を7日間培養した。
ついで、表1の組成を有する液体培地にフェノールを100mg/Lの濃度で添加することで、高フェノール液体培地を作製した。高フェノール液体培地は、フェノールを100mg/L(つまり1mg/L以上)、アンモニア態窒素を200mg-N/L含む。ついで、上記で培養された各微細藻類を高フェノール液体培地に植種し、光量子密度60μmol/m/秒、光照射周期14時間明期/10時間暗期、温度25℃の培養条件とした培養庫内で培養した。光源は白色LEDパネルとした。そして、各微細藻類の増殖速度を比較した。ここで、増殖速度は、クロロフィルの吸収波長である波長680nmの吸光度を、培養中、1日ごとに分光光度計で測定し、その増加分から算出した。そして、増殖速度の最も高い微細藻類をNS001C株として選定した。
ついで、NS001C株の液体培養物からDNAを抽出し、18S rDNAの塩基配列を決定した。18SrDNA領域の解析に用いたプライマーは表2の通りである。また、決定されたNS001C株の18S rDNAの塩基配列は図2に示す通りである。
Figure 0007020229000002
ついで、NS001C株の塩基配列と相同性のある塩基配列を国際塩基配列データベース(DDBJ/ENA(EMBL)/GenBank)から検索した。検索ツールはBLASTを用いた。この結果、NS001C株は、Chlorella属もしくはそれに近縁な微細藻類と推定された。
このように、本発明者は、フェノールを1mg/L以上、アンモニア態窒素を100mg-N/L以上含む高フェノール液体培地中で増殖可能な微細藻類としてNS001C株を獲得することに成功した。さらに、NS001C株は、図2に示す塩基配列を有することも明らかになった。
<2.試験例2:NS001C株の増殖>
表3に示す組成(Provasoli, L. (1968): Media and prospects for the cultivation of marine algae. In Watanabe, A. & Hattori, A. [Ed.] Culture and Collection of Algae. Proc.U. S.-Japan Conf., Hakone, Sept. 1966, Jpn. Soc. Plant Physiol., Kyoto, pp. 63-75.)から硝酸ナトリウムとグリセロリン酸ナトリウムを除いた組成を有する改変PES溶液を作製した。
Figure 0007020229000003
ついで、孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過滅菌した天然海水に、上記で作製した改変PES溶液を終濃度2%(v/v)で添加することで、液体培地を作製した。液体培地は、グリセロリン酸ナトリウムをリン酸態リン濃度換算で3mg-P/L、塩化アンモニウムをアンモニア態窒素濃度換算で50mg-N/Lで含む。これにより、液体培地を作製した。さらに、当該液体培地にフェノールを1mg/L、100mg/Lで添加した第1の高フェノール液体培地及び第2の高フェノール液体培地を作製した。また、アンモニア態窒素濃度換算で100mg-N/Lで含み、かつ、フェノールを100mg/Lで添加した第3の高フェノール液体培地を作製した。
ついで、液体培地(参考例)、第1の高フェノール液体培地(試験例2-1)、第2の高フェノール液体培地(試験例2-2)、第3の高フェノール液体培地(試験例2-3)にそれぞれNS001C株を植種した。ついで、NS001C株を光量子密度60μmol/m/秒、光照射周期12時間明期/12時間暗期、温度30℃の培養条件で7日間培養した。光源は白色LEDパネルとした。培養中、1日ごとに血球計算盤を使って細胞密度を計数した。結果を図5に示す。NS001C株はいずれの例においても増殖することが確認された。増殖初期1~4日の期間の比増殖速度を計算したところ、参考例で1.57(/日)であったのに対して、試験例2-1~2-3でそれぞれ1.57(/日)、1.61(/日)、1.47(/日)となった。ここで、横軸に培養時間を、縦軸に細胞数の自然対数をプロットした時の傾きを求めることによって比増殖速度を算出した。この結果、NS001C株は、フェノールを1mg/L以上、さらにはアンモニア態窒素を100mg-N/L以上の濃度で含む液体培地中であっても、フェノールを含まない参考例と遜色なく増殖することを確認した。よって本試験例より、NSOO1C株はフェノールおよびアンモニア態窒素を高濃度で含有する環境下であっても増殖できることを確認した。
<3.試験例3:種々の塩分濃度に対するNS001C株の増殖>
孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過滅菌した天然海水(試験例3-3)、イオン交換水(試験例3-1)、及びそれらを等容量で混合した希釈海水(試験例3-2)に、試験例2で作製した改変PES溶液を終濃度2%(v/v)で、さらにフェノールを1mg/Lで添加することで、試験例3-1~3-3に係る液体培地を作製した。各液体培地は、グリセロリン酸ナトリウムをリン酸態リン濃度換算で3mg-P/L、塩化アンモニウムをアンモニア態窒素濃度換算で50mg-N/L含む。また、試験例3-1~3-3に係る液体培地の塩分濃度は、それぞれ0質量%、約1.5質量%、約3質量%であった。
このように調整した液体培地にNS001C株を植種した。ついで、NS001C株を光量子密度60μmol/m/秒、光照射周期12時間明期/12時間暗期、温度30℃の培養条件で7日間培養した。光源は白色LEDパネルとした。培養中、1日ごとに血球計算盤を使って細胞密度を計数した。結果を図に示す。NS001C株はいずれの条件においても増殖することが確認された。増殖初期1~4日の期間の比増殖速度を計算したところ、試験例3-1、試験例3-2、試験例3-3でそれぞれ1.89(/日)、1.90(/日)、1.55(/日)となり、NS001C株は淡水から海水までの範囲の塩分濃度環境下でも十分に増殖することを確認した。したがって、コークス炉排水を活性汚泥処理することなくそのまま使用して、本実施形態に係る微細藻類を培養することができる。
<4.試験例4:アンモニア態窒素濃度を変化させた場合におけるNS001C株の増殖>
孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過滅菌したイオン交換水に、試験例2で作製した改変PES溶液を終濃度2%(v/v)で添加することで、試験例4に係る液体培地を作製した。液体培地は、グリセロリン酸ナトリウムをリン酸態リン濃度換算で3mg-P/L含む。また、試験例4に係る液体培地に塩化アンモニウムをアンモニア態窒素濃度換算で50~1000mg-N/Lの範囲で添加した。
このように調整した液体培地にNS001C株を植種した。ついで、NS001C株を光量子密度60μmol/m/秒、光照射周期12時間明期/12時間暗期、温度30℃の培養条件で7日間培養した。光源は白色LEDパネルとした。培養中、1日ごとに血球計算盤を使って細胞密度を計数し、増殖初期1~4日の期間の比増殖速度を計算し、アンモニア態窒素濃度が50mg/Lの場合の比増殖速度に対する相対値を算出した。結果を図に示す。NS001C株はいずれの条件においても増殖することが確認され、その比増殖速度は、アンモニア態窒素濃度が高まるにつれて低下する傾向がみられ、アンモニア態窒素濃度が100mg/L、300mg/L、500mg/L、1000mg/Lの場合でそれぞれ、95%、82%、70%、68%となったが、NS001C株はアンモニア態窒素が100mg/L以上の濃度環境下でも十分に増殖することを確認した。したがって、コークス炉排水を活性汚泥処理することなくそのまま使用して、本実施形態に係る微細藻類を培養することができる。
<5.試験例5:安水被処理水を模擬した液体培地を用いたNS001C株の増殖>
表1の組成を有する液体培地に1mg/Lの濃度でフェノールを添加することで、高フェノール液体培地を調製した。当該高フェノール液体培地の塩分濃度は3.5質量%、アンモニア態窒素濃度は200mg-N/L、リン酸態リン濃度は5mg-P/L、フェノール濃度は1mg/Lであった。当該高フェノール液体培地を容積50Lのアクリル製の角型水槽に入れた。ついで、高フェノール液体培地にNS001C株を植種した。ついで、NS001C株を光量子密度60μmol/m/秒、光照射周期14時間明期/10時間暗期、温度20~25℃の培養条件とした培養庫にセットした。ついで、培養庫内でNS001C株を7日間培養した。培養中、1日ごとに、細胞密度の指標としてクロロフィルa濃度を測定した。クロロフィルa濃度は多波長励起蛍光光度計(独bbe Moldaenke GmbH社製Algae Online Analyser (AOA))を用いて測定した。結果を図に示す。試験例5によれば、安水被処理水内でNS001C株を培養可能であることが明らかになった。
<6.試験例6:種々のN/P比に対するNS001C株の増殖>
孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過滅菌した天然海水に、試験例2で作製した改変PES溶液を終濃度2%(v/v)で添加することで、試験例6に係る液体培地を作製した。液体培地は、塩化アンモニウムをアンモニア態窒素濃度換算で100~1000mg-N/Lの範囲で、また、グリセロリン酸ナトリウムをリン酸態リン濃度換算で1~6mg-P/Lの範囲で添加し、N/P比として16.7~1000の範囲に調整した。
このように調整した液体培地にNS001C株を植種した。ついで、NS001C株を光量子密度60μmol/m/秒、光照射周期12時間明期/12時間暗期、温度30℃の培養条件で7日間培養した。光源は白色LEDパネルとした。培養中、1日ごとに血球計算盤を使って細胞密度を計数し、増殖初期1~4日の期間の比増殖速度を計算し、N/P比が16.7の場合の比増殖速度に対する相対値を算出した。培養期間中の細胞数の最大値の結果を図に、比増殖速度の相対値の結果を図10に示す。NS001C株は細胞数が2.1×10cell/mLから最大7.3×10cell/mL程度に増加した。N/P質量比と細胞数及び比増殖速度の相対値との対応関係をみると、N/P質量比が16.7~300となる場合に3.3×10cell/mL~7.3×10cell/mLと開きがあるものの濃度としては十分であり、かつ、比増殖速度の相対値はN/P比が16.7の場合に対して80%以上であった。一方、N/P質量比が500~1,000の条件では、細胞数および比増殖速度の相対値が低下する傾向が見られた。このことから、良好な細胞数及び/または比増殖速度が得られるN/P質量比は16.7~300であることがわかった。
<7.試験例7:種々の光量子密度に対するNS001C株の増殖>
孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過滅菌した天然海水に、試験例2で作製した改変PES溶液を終濃度2%(v/v)で添加することで、液体培地を作製した。ついで、液体培地に、グリセロリン酸ナトリウムをリン酸態リン濃度換算で3mg-P/L、塩化アンモニウムをアンモニア態窒素濃度換算で100mg-N/Lを添加した。さらにNS001C株を1×10cell/mLとなるように植種した。NS001C株を光量子密度40~200μmol/m/秒、光照射周期12時間明期/12時間暗期、温度30℃の培養条件で7日間培養した。光源は白色LEDパネルとした。培養中、1日ごとに血球計算盤を使って細胞密度を計数した。結果を図11に示す。NS001C株はいずれの例においても増殖することが確認された。しかし、光量子密度40μmol/m/秒で培養した場合、0.1×10cell/mL程度の増殖に過ぎなかったが、光量子密度60μmol/m/秒以上で培養した場合、2~3×10cell/mLまで増殖した。このことから、NS001C株を培養するための光量子密度は、60μmol/m/秒以上が好ましいことが分かった。
<8.試験例8:NS001C株の表面培養法への適用例1>
孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過滅菌した天然海水に、改変PES溶液を終濃度2%(v/v)で、さらにグリセロリン酸ナトリウムをリン酸態リン濃度換算で3mg-P/Lで添加して液体培地を作製した。さらに、当該液体培地に塩化アンモニウムをアンモニア態窒素換算で50mg/Lで加え、参照培地(試験例8-1)を作製した。また、アンモニア態窒素を100mg/Lで含み、かつフェノールをそれぞれ1mg/L、100mg/Lで含む第1のフェノール液体培地(試験例8-2)及び第2のフェノール液体培地(試験例8-3)を作製した。また、アンモニア態窒素を1000mg/Lで含み、かつフェノールを1mg/Lを含む高アンモニア培地(試験例8-4)を作製した。さらに、前述のろ過滅菌海水と純水を等量混合した溶液に改変PES溶液を終濃度2%(v/v)で、さらにグリセロリン酸ナトリウムをリン酸態リン濃度換算で3mg-P/L、アンモニア態窒素濃度が100mg./L、フェノールが1mg./Lで含む汽水培地(試験例8-5)を作製した。さらに、純水に改変PES溶液を終濃度2%(v/v)で、さらにグリセロリン酸ナトリウムをリン酸態リン濃度換算で3mg-P/L、アンモニア態窒素濃度が100mg./L、フェノールが1mg./Lで含む純水培地(試験例8-6)を作製した。
このように調製した試験例8-1~8-6の液体培地40mLをそれぞれプラスチックシャーレに加えた。NS001C株の培養液を、PVDF膜片をセットしたろ過吸引機でNS001C株の培養液をろ過し、PVDF膜片上にNS001C株を担持した。培養液は、波長730nmにおける濁度が1.0、液量は25.4mlであった。ろ過部は直径1.8cmの円形で、その面積は2.54cmであった。NS001C株を担持したPVDF膜片を、試験例8-1~8-6の液体培地を加えた上記シャーレの液面上に、担持した面が上になるように静置した。ひとつのシャーレに2枚のPVDF膜片を浮かべた。シャーレの蓋を閉め、光量子密度200μmol/m/秒、光照射周期14時間明期/10時間暗期、温度30℃の培養条件で3日間培養した。光源は白色LEDパネルとした。培養開始1日後と3日後に、それぞれのシャーレから1枚ずつのPVDF膜片を取り出した。25.4mlの海水をPVDF膜片に加え、PVDF膜片上の藻細胞を海水に完全に懸濁し、この懸濁液の波長730nmにおける濁度を測定し、藻体の乾重量を求めた。結果を図12に示す。藻体乾重量は、予備検討において、波長730nmにおける濁度が1.0の培養液1Lに含まれるNS001C株の藻体の乾重量が、163mgであったことを用いて、濁度から算出した。NS001C株はいずれの例においても増殖することが確認された。また、アンモニア態窒素を100mg/L、フェノールを1mg/Lで含む培地で培養した試験例8-2では、参考例である試験例8-1と遜色ない増殖を示した。また、フェノールを100mg/Lで含む試験例8-3から、NS001C株は高アンモニア、高フェノールを含む培養液中でも増殖可能である。また、塩分濃度を1.8%に下げた試験例8-5、および0.1%に下げた試験例8-6においても増殖がみられたことから、NS001C株は淡水から海水までの塩分濃度で増殖可能である。
<9.試験例9:NS001C株の表面培養法への適用例2>
孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過滅菌した天然海水に改変PES溶液を終濃度2%(v/v)で、さらにグリセロリン酸ナトリウムをリン酸態リン濃度換算で3mg-P/L、また塩化アンモニウムをアンモニア態窒素換算で100mg/L、さらにフェノールを1mg/Lで加え参照培地(試験例9-1)を作製した。また、製鉄所の安水処理槽から安水処理水(コークス炉排水に活性汚泥処理を施したもの)を採取し、これを安水処理水培地(試験例9-2)とした。この時の安水処理水培地のアンモニア態窒素濃度は100mg/L以上、フェノール濃度は1mg/L以上であった。さらに、安水処理水にリン酸態リンを3mg/Lで添加し、安水処理水リン添加培地(試験例9-3)を作製した。
このように調製した試験例9-1~9-3の液体培地40mLをそれぞれプラスチックシャーレに加えた。プラスチックシャーレに厚さ1cm、縦横の長さが5cmのPVAスポンジを静置し、PVAスポンジに液体培地を吸水させた。ろ過吸引機に、PVDF膜片をセットし、NS001C株の培養液をろ過して、PVDF膜片上にNS001C株を担持した。培養液は、波長730nmにおける濁度が1.0、液量は90.7mlであった。ろ過部は直径3.4cmの円形で、その面積は9.07cmであった。NS001C株を担持したPVDF膜片を、液体培地を吸水した前記シャーレ中のPVAスポンジ上に、担持した面が上になるようにそれぞれ静置した。シャーレの蓋を閉め、光量子密度200μmol/m/秒、光照射周期14時間明期/10時間暗期、温度30℃の培養条件で3日間培養した。光源は白色LEDパネルとした。培養開始3日後に、それぞれのシャーレから1枚ずつのPVDF膜片を取り出した。90.7mlの海水をPVDF膜片に加え、PVDF膜片上の藻細胞を海水に完全に懸濁し、この懸濁液の波長730nmにおける濁度を測定し、藻体の乾重量を求めた。結果を図13に示す。藻体乾重量は、予備検討において、波長730nmにおける濁度が1.0の培養液1Lに含まれるNS001C株の藻体の乾重量が、163mgであったことを用いて、濁度から算出した。NS001C株はいずれの試験例においても増殖することが確認された。試験例9-2の懸濁液における濁度は試験例9-1における濁度の50%弱と低かったが、試験例9-3のリンを添加した懸濁液では試験例9-1の88%程度の濁度まで増殖がみられた。このことから、NSC001C株は実安水処理水でも生育可能であることが示された。
<10.試験例10:NS001C株の表面培養法への適用例3>
孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過滅菌した天然海水に改変PES溶液を終濃度2%(v/v)で、さらにグリセロリン酸ナトリウムをリン酸態リン濃度換算で3mg-P/L、また塩化アンモニウムをアンモニア態窒素換算で100mg/L、さらにフェノールを1mg/Lで加え液体培地(試験例10)を作製した。
高さが12cm、直径が11.3cmの腰高シャーレを二つ用意し、外周の底面から10cmの高さまで、および底面外部をアルミホイルで遮光した。一方の腰高シャーレ内に、厚さ1cm、高さ10cm、幅30cmのPVAスポンジを、高さ方向が底面と垂直になるよう内周に沿うように設置した。当該腰高シャーレに試験例10の液体培地400mlを加え、PVAスポンジに液体培地を吸水させた。このとき、腰高シャーレ下部には、PVAスポンジが吸水しきらなかった培地が深さ2cmほど残存した。ろ過吸引機に、PVDF膜片をセットし、NS001C株の培養液をろ過して、PVDF膜片上にNS001C株を担持した。培養液は、波長730nmにおける濁度が1.0、液量は25.4mlであった。ろ過部は直径1.8cmの円形で、その面積は2.54cmであった。NS001C株を担持したPVDF膜片を計16枚作製し、腰高シャーレ内のPVAスポンジの底面と垂直な面に、藻細胞を担持した面が露出するよう貼付した。光量子密度200μmol/m/秒、光照射周期14時間明期/10時間暗期、温度30℃の培養条件で、撹拌子を用いて腰高シャーレ下部の培養液を穏やかに撹拌しつつ、3日間培養した。光源は白色LEDパネルとした。培養開始1日後と4日後に、腰高シャーレから上段2枚、下段2枚、計4枚ずつのPVDF膜片を取り出した。25.4mlの海水をPVDF膜片に加え、PVDF膜片上の藻細胞を海水に完全に懸濁し、この懸濁液の波長730nmにおける濁度を測定し、藻体の乾重量を求めた(試験例10-1)。また、もう一方の腰高シャーレには試験例10の液体培地1Lを加え、NS001C株を波長730nmにおける濁度が0.1となるよう植種した。これを、試験例10-1と同様の培養条件で4日間培養し、一日ごとに培養液を採取し、この懸濁液の波長730nmにおける濁度を測定し、藻体の乾重量を求めた。(試験例10-2)。結果を図14に示す。藻体乾重量は、予備検討において、波長730nmにおける濁度が1.0の培養液1Lに含まれるNS001C株の藻体の乾重量が、163mgであったことを用いて、濁度から算出した。試験例10-1はPVDF膜の表面積あたりの藻体量で、試験例10-2は培養容器の底面積あたりの藻体量で示している。NS001C株はPVAスポンジの垂直な面上で生育可能であることが確認された。また、表面培養では液体培養に比べ、培養4日目の単位面積あたりで、約2倍の藻体を培養可能であることが示された。また、PVAスポンジの垂直な面全体の面積(約240cm)は、培養容器の底面積(100cm)の約2.5倍である。そのため、腰高シャーレ内の、PVAスポンジの底面に垂直な面全体でNSC001C株を表面培養した場合、液体培養の約5倍の藻細胞の培養が可能であると試算された。このことから、表面培養はNSC001C株を培養する方法として好適であることが示された。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 排水
2 微細藻類
3 藻類培養槽
4 光源
5 固液分離槽
6 処理完了水
7 藻類支持担体
8 培養液槽

Claims (7)

  1. フェノールを1mg/L以上、アンモニア態窒素を100mg-N/L以上含む排水中で増殖可能な微細藻類を前記排水と接触させた状態で、前記微細藻類に光を照射し、
    前記微細藻類は、NS001C株を含み、
    前記排水は、塩分を3.5質量%以下1.5質量%以上の割合で含むことを特徴とする、微細藻類の培養方法。
  2. 前記微細藻類と、前記排水とを藻類培養槽に投入し、前記微細藻類に光を照射することを特徴とする、請求項1に記載の微細藻類の培養方法。
  3. 前記微細藻類を、吸水性または保水性を有する担体の表面に担持し、前記担体に前記排水を保持させ、かつ気相に露出した前記微細藻類に光を照射することを特徴とする、請求項1に記載の微細藻類の培養方法。
  4. 前記微細藻類は、NS001C株であることを特徴とする、請求項1~の何れか1項に記載の微細藻類の培養方法。
  5. 前記排水は、コークス炉から排出されるコークス炉排水を含むことを特徴とする、請求項1~の何れか1項に記載の微細藻類の培養方法。
  6. フェノールを1mg/L以上、アンモニア態窒素を100mg-N/L以上、及び塩分を3.5質量%以下1.5質量%以上の割合で含む排水中で増殖可能であって、NS001C株を含むことを特徴とする、微細藻類。
  7. フェノールを1mg/L以上、アンモニア態窒素を100mg-N/L以上、及び塩分を3.5質量%以下1.5質量%以上の割合で含む排水中で増殖可能であり、NS001C株からなる微細藻類。
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