JP7005411B2 - 倉庫荷物重量分布推定方法 - Google Patents
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Description
従来、荷物を大量に保管する倉庫の使用状況を管理する倉庫の管理方法が知られている(特許文献1参照)。
倉庫建物の各階の出入口で荷物の搬入搬出時に荷物の重量を計測することにより、倉庫内の各階別の残留荷物の重量管理は可能である。
しかしながら、倉庫建物の床に載置された荷物の重量分布がどのようになっているのかについてはわかりようがない。即ち、倉庫建物の床に載置された荷物の配置状態は見えるが、床に載置された荷物の重量分布は見えない。
従って、床に載置された荷物の重量分布は見えない状況において、床に載置された荷物の重量分布の偏りが大きくなっている場合、即ち、床に載置された荷物の重量分布が偏荷重状態となっているような場合、建物のねじれや変形が助長される可能性がある。
尚、特許文献1では、実際の荷物の配置状況に即した荷物の保管状況の管理を可能とした方法が開示されているが、倉庫建物の床に載置された荷物の重量分布がどのようになっているのかを知ることはできない。
本発明は、倉庫建物内の床に載置された荷物の重量分布を簡単に把握できるようにした倉庫荷物重量分布推定方法を提供するものである。
また、本発明に係る倉庫荷物重量分布推定方法は、倉庫建物の柱間に設けられて各柱で支持された床上に載置された荷物の重量分布を推定する方法であって、各柱にそれぞれ取付けられた歪検出手段の出力値に基づいて各柱の実測による軸力値を求め、この各柱の実測による軸力値に基づいて、床に載置された荷物の重量分布を推定する倉庫荷物重量分布推定方法において、床を複数の領域に分割した分割領域に荷重を加えた荷重パターン又は荷重パターンの組合せを複数種類想定して、各荷重パターン又は荷重パターンの組合せ毎に各柱に加わる軸力値を計算して求めることにより、各荷重パターン又は荷重パターンの組合せ毎の各柱に加わる軸力値を解析データとしてデータベースに保存しておき、倉庫荷物重量分布推定時において、各柱に取付けられた歪検出手段の出力値に基づいて各柱の実測による軸力値を求め、この各柱の実測による軸力値とデータベースに保存された各解析データの軸力値とを比較して、各柱の実測による軸力値の組合せに最も一致度が高い軸力値の組合せを持つ荷重パターン又は荷重パターンの組合せを抽出し、この抽出された荷重パターン又は荷重パターンの組合せに基づく各分割領域の荷重パターンの重量比により、床に載置された荷物の重量分布を推定するので、倉庫建物内の床に載置された荷物の重量分布をより詳細にかつ簡単に把握できるようになる。
実施形態1に係る倉庫荷物重量分布推定方法は、例えば、図1に示すように、倉庫建物内の柱2間に設けられて各柱2,2…で支持された床3上に載置された荷物の重量分布を推定する方法である。
そして、倉庫建物1の運用後、床3に荷物が載置されている状態、即ち、倉庫荷物重量分布推定時において、各柱2,2…にそれぞれ取付けられた歪ゲージ4,4…の出力値に基づいて各柱2,2…の実測による軸力値を求め、この各柱2,2…の実測による軸力値に基づいて、床3に載置された荷物の重量分布を推定する。
・柱の実測による軸力値(柱の軸力変化)=(歪の平均値-歪の初期値)×柱(鋼材)の弾性係数(ヤング率)×柱の断面積…(1)
当該式(1)では、図3(a),図3(b)に示すように、柱2の高さ方向の中間付近(曲げモーメントが小さい位置)の水平断面の周囲に複数の歪ゲージ4を取付け、そして、曲げモーメントによる歪勾配を除去するため、水平断面の周囲に取付けられた複数の歪ゲージで検出された歪を平均した値を用いている。
例えば、三階建ての倉庫建物の場合、1階の床3と2階の床3との間の各柱2,2…の上下間の中間位置に歪ゲージ4を設けるとともに、2階の床3と3階の床3との間の各柱2,2…の上下間の中間位置に歪ゲージ4を設け、さらに、3階の床3と屋根天井との間の各柱2,2…の上下間の中間位置に歪ゲージ4を設ける。
角形鋼管を柱2として使用している場合においては、上下階の床3,3間の各柱2,2…の中間位置において、例えば図3(a)に示すように、角形鋼管の4つの側面に柱2の周方向に沿って所定間隔を隔ててそれぞれ2つずつ取付ける。また、H形鋼を柱2として使用している場合においては、上下階の床3,3間の各柱2,2…の中間位置において、例えば図3(b)に示すように、各フランジの外面に柱2の周方向に沿って所定間隔を隔ててそれぞれ2つずつ取付けるとともに、ウェブの面には柱2の断面に沿った方向に所定間隔を隔てて2つ取付ける。
例えば、4本の柱2,2…の実測による軸力値にあまり差がなければ、4本の柱2,2…で囲まれた2階の床3上にほぼ均等に荷物が載置されている状態であると推定できるようになる。
また、4本の柱2,2…のうちの1つの柱2の実測による軸力値が大きければ、その1つの柱に近い床3上に荷物の重量が偏っていると推定できるようになる。
また、互いに隣り合う一方の一対の柱2,2の実測による軸力値にあまり差がなく、かつ、互いに隣り合う他方の一対の柱2,2の実測による軸力値が、互いに隣り合う他方の一対の柱2,2の実測による軸力値も極端に小さければ、互いに隣り合う一方の一対の柱2,2の間のほぼ中間位置の床3上に荷物の重量が偏っていると推定できる。
このように、4本の柱2,2に取付けられた歪ゲージ4で計測された各柱2,2…の歪計測値に基づいて算出される各柱2,2…の実測による軸力値から、上階の床3に載置された荷物の重量分布を、推定できるようになる。
即ち、実施形態1に係る倉庫荷物重量分布推定方法によれば、倉庫建物1内の床3に載置された荷物の重量分布という見えない情報を瞬時に把握(可視化)できるようになる。
倉庫建物1内の床3に載置された荷物の重量分布を瞬時に把握できるようになれば、例えば、倉庫管理者は、設計上許容される積載重量を超えて床3に荷物が載置されていないか、床3に載置された荷物の重量部分が偏っていないかを確認でき、倉庫を貸与したテナントへの指導等を適切に行うことで、積載重量オーバーや、重量分布の偏りを是正できるようになり、倉庫建物1の床3や柱2に加わる負担を軽減できて、倉庫建物1のねじれや変形を抑制できるようになる。尚、設計上許容される積載重量を超えているか否かは、各柱2,2…の実測による軸力値から分かる。
実施形態2に係る倉庫荷物重量分布推定方法では、倉庫建物1内の複数の柱2,2…で囲まれた床3を柱2の本数以下の複数に分割した分割領域を想定し、各分割領域毎に単位荷重W0/m2を加えた場合において各柱2,2…に加わる軸力値をコンピュータ5で計算しておく。尚、単位荷重W0/m2は、分かりやすい数値、例えば、1kN/m2としておけばよい。
例えば、図5(a)に示すように、4本の柱C11,C12,C21,C22で囲まれた床3を4つのゾーン(分割領域)A,B,C,Dに4分割し、図5(b)~図5(e)に示すように、各ゾーンA,B,C,D毎に単位荷重を加えた場合において各柱C11,C12,C21,C22に加わる軸力値N11A,N12A,N21A,N22A、N11B,N12B,N21B,N22B、N11C,N12C,N21C,N22C、N11D,N12D,N21D,N22Dをコンピュータ5により計算しておく。
そして、各ゾーンA,B,C,Dに加わる荷重を未知数として、例えば図5(f)に示すように、ゾーンAに単位荷重のX1倍、ゾーンBに単位荷重のX2倍、ゾーンCに単位荷重のX3倍、ゾーンDに単位荷重のX4倍の荷重が加わっていると仮定して、以下の連立方程式を作り、この連立方程式を解いて、未知数X1、未知数X2、未知数X3、未知数X4を求める。
N11X=X1×N11A+X2×N11B+X3×N11C+X4×N11D
N12X=X1×N12A+X2×N12B+X3×N12C+X4×N12D
N21X=X1×N21A+X2×N21B+X3×N21C+X4×N21D
N22X=X1×N22A+X2×N22B+X3×N22C+X4×N22D
尚、柱C11の軸力値N11X、柱C12の軸力値N12X、柱C21の軸力値N21X、柱C22の軸力値N22Xは、倉庫荷物重量分布推定時において、各柱C11,C12,C21,C22に取付けられた歪ゲージ4で計測された歪計測値に基づいて算出された実測による軸力値である。
したがって、上記連立方程式を解いて、未知数X1、未知数X2、未知数X3、未知数X4を求めることにより、この求めた未知数X1、未知数X2、未知数X3、未知数X4の各数値の比が、各ゾーンA,B,C,Dにおける実際の荷重分布であると推定する。
実施形態3に係る倉庫荷物重量分布推定方法では、床3を複数の領域に分割した分割領域に荷重を加えた荷重パターン又は荷重パターンの組合せを複数種類想定して、倉庫建物1の構造設計時、あるいは、既存の倉庫建物1の構造計算書に基づいて、荷重パターン又は荷重パターンの組合せ毎の各柱2,2…の軸力値を解析して、荷重パターン又は荷重パターンの組合せと各柱2,2…の軸力値とを対応付けた解析データ(図8参照)をデータベース6に保存しておく。
尚、荷重パターンとは、ある分割領域にある荷重が加えられた状態を言う。
そして、コンピュータ5は、各柱2,2…の実測による軸力値と、データベース6に保存された各解析データの軸力値とを比較し、柱2,2…の実測による軸力値の組合せに最も近い軸力値の組合せを持つ解析データの荷重パターン又は荷重パターンの組合せを、実際に床3に荷物が載置されている状態での荷物重量分布であると推定する。
即ち、コンピュータ5は、柱2,2…の実測による軸力値を、データベース6に保存された各解析データの軸力値と照合(データマッチング)し、柱2,2…の実測による軸力値の組合わせに最も近い軸力値の組合せを持つ解析データの荷重パターン又は荷重パターンの組合せを抽出し、抽出された荷重パターン又は荷重パターンの組合せに基づく各分割領域の荷重パターンの重量比により、床3に載置された荷物の重量分布を推定する。
解析データは、図8に示すように、倉庫建物1の床3を複数に分割した分割領域31(A,B,C…P)を想定し、分割領域31に荷重を加えた場合に、各柱2(aa,ab,ac,ba,bb,bc,ca,cb,cc)…の軸力値がどのように影響するかを解析したデータである。
例えば、図7に示すように、床3を16等分した各分割領域A,B,C…Pを想定し、各分割領域A,B,C…P毎に、単位荷重W0/m2を加えた場合の各柱aa,ab,ac,ba,bb,bc,ca,cb,ccに加わる軸力値を解析する。即ち、基本となる16の荷重パターンに対して各柱aa,ab,ac,ba,bb,bc,ca,cb,ccに加わる軸力値を解析した16の解析データ、例えば、図8に示すような、解析データ1,2,3,4,5,6…が得られる。尚、単位荷重W0/m2は、実施形態2と同様に、分かりやすい数値、例えば、1kN/m2としておけばよい。
さらに、例えば、各分割領域A,B,C…P毎に、単位荷重の1/10、単位荷重の2/10、単位荷重の3/10、単位荷重の4/10、単位荷重の5/10、単位荷重の6/10、単位荷重の7/10、単位荷重の8/10、単位荷重の9/10の荷重を加えた場合において、各柱aa,ab,ac,ba,bb,bc,ca,cb,ccに加わる軸力値を解析した解析データを作成する。
以上で、各分割領域A,B,C…P毎に、10の荷重パターンに対する各柱aa,ab,ac,ba,bb,bc,ca,cb,ccに加わる軸力値を解析した解析データ、即ち、16×10=160の解析データが得られる。
さらに、例えば、各分割領域A,B,C…P毎に異なる荷重を加えた荷重パターンの組合わせ、例えば、分割領域Aに単位荷重、分割領域Bに単位荷重の5/10、分割領域Cに単位荷重の7/10、…分割領域Oに単位荷重の4/10、分割領域Pに単位荷重の3/10を加えた場合において、各柱aa,ab,ac,ba,bb,bc,ca,cb,ccに加わる軸力値を解析した解析データを作成する。
さらに、例えば、いくつかの分割領域に同じ荷重を加えた荷重パターンの組合せや、1つ以上の分割領域に荷重を加えない荷重パターンの組合せ等、各分割領域A,B,C…Pに様々な組合せの荷重を加えた荷重パターンの組合せを想定し、各荷重パターンの組合せに対して各柱aa,ab,ac,ba,bb,bc,ca,cb,ccに加わる軸力値を解析した解析データを作成する。
そして、これら作成した解析データ、即ち、荷重パターンの組合せと各荷重パターンの組合せに対して解析された各柱に加わる軸力値とが対応付けされたデータをマッチングデータとしてデータベース6に保存しておく。
即ち、データベース6には、図8に示すように、荷重パターンと各荷重パターンに対して解析された各柱aa,ab,ac,ba,bb,bc,ca,cb,ccに加わる軸力値とが対応付けされた解析データや、荷重パターンの組合せと各荷重パターンの組合せに対して解析された各柱aa,ab,ac,ba,bb,bc,ca,cb,ccに加わる軸力値とが対応付けされた解析データが保存されている。
即ち、柱2に1本のFBGセンサーを、例えば、図3(a)に示す角形鋼管の4つの外面のそれぞれに、柱2の延長方向に延長するように取付けて、柱2の歪を検出するようにしてもよい。
Claims (2)
- 倉庫建物の柱間に設けられて各柱で支持された床上に載置された荷物の重量分布を推定する方法であって、
各柱にそれぞれ取付けられた歪検出手段の出力値に基づいて各柱の実測による軸力値を求め、この各柱の実測による軸力値に基づいて、床に載置された荷物の重量分布を推定する倉庫荷物重量分布推定方法において、
倉庫建物内の複数の柱で囲まれた床を柱の本数以下の複数に分割した分割領域を想定し、各分割領域毎に単位荷重を加えた場合において各柱に加わる軸力を計算した計算に基づく軸力値を求めておくとともに、
倉庫荷物重量分布推定時において、各柱に取付けられた歪検出手段の出力値に基づいて各柱の実測による軸力値を求め、
ある柱の実測による軸力値=各分割領域に任意の係数(未知数)×単位重量を加えた場合においてある柱に加わる計算に基づく軸力値の総和という方程式を、柱の数だけ作った連立方程式を作り、当該連立方程式を解いて求めた各任意の係数の比を、床を分割した各分割領域に載置された荷物の重量比として、床に載置された荷物の重量分布を推定することを特徴とする倉庫荷物重量分布推定方法。 - 倉庫建物の柱間に設けられて各柱で支持された床上に載置された荷物の重量分布を推定する方法であって、
各柱にそれぞれ取付けられた歪検出手段の出力値に基づいて各柱の実測による軸力値を求め、この各柱の実測による軸力値に基づいて、床に載置された荷物の重量分布を推定する倉庫荷物重量分布推定方法において、
床を複数の領域に分割した分割領域に荷重を加えた荷重パターン又は荷重パターンの組合せを複数種類想定して、各荷重パターン又は荷重パターンの組合せ毎に各柱に加わる軸力値を計算して求めることにより、各荷重パターン又は荷重パターンの組合せ毎の各柱に加わる軸力値を解析データとしてデータベースに保存しておき、
倉庫荷物重量分布推定時において、各柱に取付けられた歪検出手段の出力値に基づいて各柱の実測による軸力値を求め、
この各柱の実測による軸力値とデータベースに保存された各解析データの軸力値とを比較して、各柱の実測による軸力値の組合せに最も一致度が高い軸力値の組合せを持つ荷重パターン又は荷重パターンの組合せを抽出し、この抽出された荷重パターン又は荷重パターンの組合せに基づく各分割領域の荷重パターンの重量比により、床に載置された荷物の重量分布を推定することを特徴とする倉庫荷物重量分布推定方法。
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