JP6997497B2 - 津波抑制方法及び装置 - Google Patents

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本発明は大地震に伴う津波を抑制し、かかる津波が大都市や、原子炉・石油コンビナートなどの重要施設に対して、回復不能の損害をもたらすことを防止するための、方法及び装置に関するものである。
2011年3月11日に起きた東日本大震災において、マグニチュード9に及ぶ大地震が発生し、それに伴う津波によって東北地方の太平洋沿岸には、原子力発電所や石油コンビナートなどに激しい被害を生じることとなった。
また近い将来、南海トラフを震源とする巨大地震の発生が想定されており、それにより太平洋ベルト地帯に激しい津波が予想されており、それに伴ってかかる津波を防ぐ各種の防波堤などの発明が提案されている。
例えば特開2013-60769号公報には津波の進行を止める防波堤が提案されているが、この種の防波堤では津波の進行を止めることが難しく、東日本大震災においてもこの種の防波堤が津波で押し流されている。
また上記公報に示された形式の防波堤は基本的に据え置き式であるために、防波堤の内外で船舶の出入りが困難であり、船舶の出入りを許容する隙間を設けざるを得ず、かかる隙間から津波が防波堤内に侵入するのを防止することができない。
また特開2006-348611号公報には、鋼鉄製の剛直なパイプを直立して海底に多数並べて埋伏させておき、平常時には海底に埋伏させておいてその上を船舶の航行を許容し、津波が予想される異常時には空気を圧入して前記パイプを海底から起立せしめ、海面上に突出して津波を遮るようにしたものが提案されている。
しかしながらこのような剛直なパイプでは、津波による巨大なエネルギーを受け切ることは不可能であり、津波によってパイプが破壊されるか、そうでなければパイプの間から海水が流入して津波被害を軽減させることができない。
またこの種の直立浮上式の津波軽減方法では、ある程度の水深を有する沖合の海底を、パイプの長さ以上の深さに亙って掘削して建造しなければならないため、建造には膨大なコストと時間を要し、実現は困難である。
特開2013-60769号 特開2006-348611号
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、柔軟な筒体を平常時には扁平に折畳んだ状態で海底に敷設しておき、津波が予想される異常時には当該筒体内に空気を圧入して海面に向かって起立せしめ、このようにして起立した筒体が撓むことにより、津波のエネルギーを吸収する方法及び装置を提供するものである。
而して本発明の津波の抑制方法の発明は、海底に敷設した圧力容器内に、柔軟な筒体を扁平に折畳んだ状態で収容し、前記圧力容器に形成された上向きに開口した口金に、前記筒体の端末を環状に固定し、津波の襲来が予測されるときに前記圧力容器内に流体圧力を作用させ、当該流体圧力により前記筒体の環状固定部分において当該筒体を内側が外側となるように反転せしめ、前記筒体を反転した筒体の外側部分内を通して反転部分に送り込み、当該筒体を裏返して海中に起立せしめることを特徴とするものである。
本発明においては、前記筒体が、繊維を筒状に織成した筒状織布の外面に、柔軟なゴム又は合成樹脂の皮膜を形成してなるものであることが好ましい。また前記筒体を扁平に折畳んだ状態でコイル状に巻回したものを、圧力容器内に収容するのが好ましい。さらに前記筒体の直径は0.6~5mであるのが適当である。
本発明においては、前記筒体が、繊維を筒状に織成した筒状織布の外面に、柔軟なゴム又は合成樹脂の皮膜を内張りしてなるものであることが好ましい。また前記筒体を扁平に折畳んだ状態でコイル状に巻回したものを、圧力容器内に収容するのが好ましい。さらにこの筒体は、直径が0.6~5mであるのが適当である。
また本発明においては、前記流体圧力が、圧力容器を埋設した位置における海面において0.05~1MPaとなる圧力であることが適当である。
また本発明の津波の抑制装置の発明は、海底に埋設した圧力容器本体と、当該圧力容器本体の上面を覆う蓋体とよりなる圧力容器内に、柔軟な筒体を扁平に折り畳んだ状態で収容し、前記筒体の端末を前記蓋体に設けられた口金に環状に固定したことを特徴とするものである。
本発明における圧力容器を海底に敷設した状態の中央縦断面図 本発明の津波抑制装置を作動する状態を示す中央縦断面図 本発明における筒体を示すものであって、(a)は横断面図、(b)は中央縦断面図である。 本発明の津波抑制装置を多数敷設した状態を示すものであって、(a)は平面図、(b)は側面図である。 本発明の津波抑制装置に津波が襲来した状態を示す側面図
以下本発明を図面に基づいて説明する。図1は本発明における圧力容器1を海底に敷設した状態を示すものであって、圧力容器1は本体2と蓋体3とよりなっており、蓋体3には上向きに開口した口金4が形成されている。なおここで前記口金4は、直上方に開口している場合に限らず、斜め上方に開口していても差し支えない。
5は柔軟な筒体である。当該筒体5は図3に示すように、環状に配置されたたて糸6と、当該たて糸6群に対して螺旋状に織り込まれたよこ糸7とを筒状に織成して筒状織布8を形成し、当該筒状織布8の外面に、柔軟なゴム又は合成樹脂の皮膜9を形成してなるものであって、その直径が0.6~5m程度、特に好ましくは1~2mが適当である。筒体5を設置する水深によっても異なるが、10乃至50m程度の水深では、筒体5の直径が0.6m未満であると筒体5に作用する波力によって折れ易く好ましくない。また直径が5mを超えるような筒体5では、巻き取りが可能な柔軟性を有し、且つ耐圧力を確保できるものを製造することが困難であり、またコスト的にも適当ではない。
この筒体5は、津波が作用したときにそのエネルギーを減衰させることが可能な撓み量を保持できるものであることが必要である。筒体5の撓み量は、片持ち梁に荷重が作用したときの式から、筒体5の曲げ剛性EIに反比例する。曲げ剛性EIは、筒体5の内圧と直径が大きくなると高くなるので、筒体5の内圧と直径の数値を適宜設定して曲げ剛性EIを高くすることで、津波エネルギーを減衰させることが可能な撓み量を保持できる筒体5を得ることができる。
而して図1において当該筒体5を扁平に折畳んでコイル状に巻いた状態で、前記圧力容器1内に収容されており、当該コイル状の筒体5の外端が前記圧力容器1の蓋体3に形成された口金4に、環状に固定されている。なお前記コイル状の筒体5の他端は閉塞されている。
また前記圧力容器1には圧力容器1内に空気を送入する空気圧入口10が形成されており、当該空気圧入口10には空気ボンベ11が接続され、当該空気ボンベ11からバルブ12を介して圧力容器1内に圧縮空気が圧入されるようになっている。
なおバルブ12は、津波警報が発令されたときに、陸上から遠隔操作で開くことができるようになっており、地震の後津波の襲来が予測されるような場合に当該バルブ12を開いて、圧力容器1内に圧縮空気を圧入するようになっている。
なお圧縮空気は空気ボンベ11からに限らず、外部から適宜の方法で圧力容器1内に圧入されるようになっていても差し支えない。また圧力容器1内に圧入される圧力流体は、空気に限るものではなく、水であっても差し支えなく、さらに必要であれば水や空気以外の圧力流体を圧入することも可能である。
そして圧力容器1は、強い海流や津波によって押し流されることがないように、コンクリート13によって埋めて海底に強固に固定されている。ただし、一旦使用した後に内部の筒体5を交換できるように、本体2のみを海底に埋め、蓋体3は上方から着脱可能にするのが好ましい。
そしてかかる津波抑制装置を、図4に示すように海岸14から離れた位置の海底に、複数列複数段に配置する。なお図4においては筒体5のみを示しており、津波抑制装置を設置する深さは、津波の襲来を抑制したい施設の種類にもよるが、10乃至50m程度が適当である。
また筒体5の列における筒体5の間隔aは、筒体5の径の1乃至5倍程度、特に好ましくは1乃至3倍程度が適当であり、当該列を複数段並べた段の間隔bは筒体の径の1乃至10倍程度、特に好ましくは1~5倍程度が適当である。さらに当該段数は、3乃至20段、特に好ましくは5乃至10段とするのが適当である。
次に図2により本発明の津波抑制方法について説明する。(a)は圧力容器1を海底に埋設した状態を示すものであって、バルブ12は閉じており、圧力容器1内は外部の海水と同圧となっている。
而して地震が起こって津波警報が発令され、津波の襲来が予測されるような場合には、陸上から遠隔操作によりバルブ12を開いて、圧力容器1内に圧縮空気などの流体圧力を作用させる。
これにより口金4に環状に固定された筒体5の先端部の外側に圧力が作用し、(b)に示すように筒体5の環状固定部分5aが内側が外側となるように反転し、当該反転部分5bにおいて筒体5が内側が外側となるように反転しながら、圧力容器1内の筒体5がコイルから引き出されて既に反転した筒体5c内を通って反転部分5bに送り込まれ、反転部分5bは口金4の先端から上方に移行する。
筒体5が裏返されることにより、筒体5における筒状織布8の外面に形成されていた皮膜9は、筒状織布8の内側に位置することとなり、筒体5の内部に作用する流体圧力を支えることができる。
そして当該筒体5は前述のように裏返しが進行し、その全長に亙って裏返される。このとき筒体5の内端は閉塞されているので、筒体5の内部は加圧され、筒体5は剛直な棒状となって(c)に示すようにその先端を海面15上に突出する。このときの流体圧力は、圧力容器を埋設した位置における海面において0.05~1MPa、特に好ましくは0.1~1MPaとなる圧力であることが適当である。
この状態で図中左方から津波が押し寄せてくると、棒状になった筒体5は(d)に示すように津波に押し流され、大きく撓むが、筒体5が撓むときの弾力によって、津波のエネルギーを吸収することができるのである。
而して図4における左方から津波が押し寄せてくると、図5に示すように最も沖に近い第一段目の筒体5Aは津波によって大きく撓められるが、これによって津波のエネルギーは吸収され、その弱まった津波により第二段目の筒体5Bが撓められるので、その撓められる程度は一段目の筒体5Aよりも少なくなる。
同様にして二段目の筒体5bによって津波のエネルギーはさらに弱められ、その弱まった津波のエネルギーによって三段目の筒体5Cは撓められるが、その撓められる程度は二段目の筒体5Bよりもさらに少なくなり、同様にして四段目5D、五段目5E、六段目5Fと少しずつ津波の威力は軽減されるのである。
このようにして本発明によれば、複数段の筒体5により津波のエネルギーは少しずつ軽減されていくので、津波の影響を完全に消失させることはできないが、津波が海岸14に到達するころには、津波の威力は十分に軽減されているのである。また個々の筒体5は津波によって撓められるが、鋼鉄やコンクリートの防波堤のような剛性によって津波を遮るのと異なり、津波により破壊されることはない。
本発明によれば、筒体5は柔軟であって平常時は扁平に折畳んだ状態で、さらにそれをコイル状に巻かれた状態で海底に敷設されているので、圧力容器1を含めてもその高さは低いものであって、前記従来例のように海底を深く掘削する必要がなく、設置のコストも時間も大幅に削減される。
そして筒体5は平常時には圧力容器1と共に海底に埋設された状態であるので、その上部は船舶などが自由に航行することができ、前記従来の防波堤のように船舶の航行を妨げることはない。
而して津波の襲来が予測されるときには、圧力容器1内に流体圧力を作用させて筒体5を剛直な棒状のものとして起立せしめ、当該筒体5が撓むことにより津波のエネルギーを軽減し、津波の被害を抑制することができるのである。
1 圧力容器
2 本体
3 蓋体
4 口金
5 筒体
5a 環状固定部分
5b 反転部分
5c 外側部分
8 筒状織布
9 皮膜

Claims (6)

  1. 海底に敷設した圧力容器(1)内に、柔軟な筒体(5)を扁平に折畳んだ状態で収容し、前記圧力容器(1)に形成された上向きに開口した口金(4)に、前記筒体(5)の端末を環状に固定し、津波の襲来が予測されるときに前記圧力容器(1)内に流体圧力を作用させ、当該流体圧力により前記筒体(5)の環状固定部分(5a)において当該筒体(5)を内側が外側となるように反転せしめ、前記筒体(5)を反転した筒体(5)の外側部分(5c)内を通して反転部分(5b)に送り込み、当該筒体(5)を裏返して海中に起立せしめることを特徴とする、津波の抑制方法
  2. 前記筒体(5)が、繊維を筒状に織成した筒状織布(8)の外面に、柔軟なゴム又は合成樹脂の皮膜(9)を形成してなるものであることを特徴とする、請求項1に記載の津波の抑制方法
  3. 前記筒体(5)を扁平に折畳んだ状態でコイル状に巻回したものを、圧力容器(1)内に収容したことを特徴とする、請求項1又は2に記載の津波の抑制方法
  4. 前記筒体(5)の直径が0.6~5mであることを特徴とする、請求項1~3に記載の津波の抑制方法
  5. 前記流体圧力が、圧力容器(1)を埋設した位置における海面において0.05~1MPaとなる圧力であることを特徴とする、請求項1に記載の津波の抑制方法
  6. 海底に埋設した圧力容器本体(2)と、当該圧力容器本体(2)の上面を覆う蓋体(3)とよりなる圧力容器(1)内に、柔軟な筒体(5)を扁平に折り畳んだ状態で収容し、前記筒体(5)の端末を前記蓋体(3)に設けられた口金(4)に環状に固定したことを特徴とする、津波の抑制装置
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