以下、本発明に係る針組立体について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
本発明の一実施形態に係る針組立体10は、例えば、皮膚の表皮300と皮下組織302の間に位置する皮内304(真皮内)に薬剤Mを注入するためのデバイスである(図11参照)。
薬剤Mとしては、インフルエンザ等の感染症を予防するためのワクチンが挙げられる。ただし、薬剤Mは、ワクチンに限定されず、例えば、ブドウ糖等の糖質注射液、塩化ナトリウムや乳酸カリウム等の電解質補正用注射液、ビタミン剤、抗生物質注射液、造影剤、ステロイド剤、蛋白質分解酵素阻害剤、脂肪乳剤、抗癌剤、麻酔薬、ヘパリンカルシウム、抗体医薬等であってもよい。
図1に示すように、針組立体10は、針管16を有する針ユニット12と、針ユニット12を収納する針ケース14とを備える。以下の説明では、針ユニット12及びその構成要素において、針管16の針先16aが位置する方向(図1の矢印A方向)を先端方向と呼び、その反対方向(図1の矢印B方向)を基端方向と呼ぶ。
図1及び図2に示すように、針ユニット12は、針管16、針ハブ18、針保護部材20、付勢部材22、抜け止め部材24及び規制機構26を備える。
図3及び図7に示すように、針管16は、中空状の管状部材であって、先端に鋭利な針先16aを有する。針管16の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金等の金属材料又はポリフェニレンサルファイド等の硬質樹脂材料等が挙げられる。
針管16の外径は、例えば、0.2mm以上0.45mm以下に設定される。針管16の針ハブ18からの突出長(露出している部分の長さ)は、皮内304に薬剤Mを確実に注入するため、0.5mm以上1.4mm以下に設定されるのが好ましい。
図2及び図3において、針ハブ18は、針管16を保持する第1ハブ28と、第1ハブ28に設けられた第2ハブ30と、針管16の基端部を保持する弾性部材32とを有する。第1ハブ28及び第2ハブ30のそれぞれは、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂で構成されている。
第1ハブ28は、針管16が挿通される挿通孔34が形成された針保持部36と、針保持部36に設けられた第1筒部38と、第1筒部38に設けられた第1フランジ部40とを有する。針保持部36は、針ハブ18の基端部を構成する第1端壁部42と、第1端壁部42の略中央部から先端方向に延出した針保持本体44とを含む。第1端壁部42の外形は、円形状に形成されている。
第1筒部38は、第1端壁部42の外周部から先端方向に延出した円筒部材である。つまり、第1筒部38の先端(一端)は開口し、第1筒部38の基端(他端)は第1端壁部42によって閉塞されている。第1筒部38は、第1筒部38における少なくとも基端部を構成する第1部位46と、第1部位46の先端から先端方向に延出した第2部位48とを含む。
図3において、第2部位48の厚さは、第1部位46の厚さよりも薄い。第1部位46の外面と第2部位48の外面とは、互いに面一である。第1部位46の内径D1は、第2部位48の内径D2よりも小さい。つまり、第1部位46の内面と第2部位48の内面との間には、段差部50が形成されている。
段差部50は、第1筒部38の周方向に環状に延在している。段差部50には、先端方向に向かって針管16の径方向外方に傾斜した段差面50aが設けられている。段差面50aは、第1筒部38の軸線方向の略中央に位置している。
図2及び図3に示すように、第1部位46の先端部には、抜け止め部材24を構成する後述する凸部76(図6参照)が挿入される2つの挿入孔52が設けられている。2つの挿入孔52は、針管16の周方向に位相が互いに180°ずれて位置している。
挿入孔52は、第1部位46を厚さ方向に貫通するとともに第1部位46の周方向に沿って延びている。各挿入孔52の両端には、連通孔54が連通している。4つの連通孔54は、第2部位48の基端部を厚さ方向に貫通するとともに挿入孔52から先端方向に延びている。
1つの挿入孔52と2つの連通孔54は、略逆U字状の1つの連続した孔を形成する。すなわち、第1筒部38(第2部位48)には、1つの挿入孔52と2つの連通孔54とによって形成された係止部56が2つ設けられている。2つの係止部56は、針管16の周方向に位相が互いに180°ずれて位置している。
係止部56は、針管16の軸線方向に沿って延在するとともに針管16の径方向に弾性変形可能に構成されている。係止部56は、第2部位48(筒部本体)から基端方向(矢印B方向)に突出している。係止部56の突出端面には、挿入孔52を構成する第1当接面58が設けられている。係止部56の突出端部(矢印B方向の端部)には、段差部50が設けられている。
第1フランジ部40は、第2部位48の外周面から針管16の径方向外方に突出するとともに周方向に一周延在している。第2部位48の先端部は、第1フランジ部40よりも先端方向に延出している。
第2ハブ30は、第1筒部38を覆うように設けられた第2筒部60と、第2筒部60の基端部に設けられた第2端壁部62と、第2端壁部62に設けられた接続部64と、第2筒部60の先端に設けられた第2フランジ部66とを有する。第2筒部60は、円筒状に形成されている。第2端壁部62と第1端壁部42との間には、隙間が形成されている。
図2、図3及び図11に示すように、接続部64は、第2端壁部62の略中央から基端方向に延出した管状部であって、プレフィルドシリンジ200の接続部202に対して接続可能に構成されている。接続部64の内面65は、基端方向に向かってテーパ状に拡径しており、プレフィルドシリンジ200のノズル部204の外面205が液密に接触する。接続部64の外面には、雄ねじ部67が設けられている。雄ねじ部67には、プレフィルドシリンジ200の雌ねじ部206が螺合する。なお、接続部202は、ノズル部204とは別体に構成されており、ノズル部204に対して取り付けられている。
図2及び図3において、第2フランジ部66は、第2筒部60の先端から針管16の径方向外方に突出するとともに周方向に一周延在している。第2フランジ部66のうち先端方向を指向する面は、第1フランジ部40のうち基端方向を指向する面に対して超音波溶着等によって固着されている。第2フランジ部66の外径は、第1フランジ部40の外径よりも若干小さい。ただし、第2フランジ部66の外径は、第1フランジ部40の外径以上であってもよい。
弾性部材32は、針管16の基端部を保持するものであって、第2ハブ30内に設けられている。弾性部材32は、例えば、ゴム材料によって構成されている。弾性部材32は、第1端壁部42と第2端壁部62とによって挟持された状態で接続部64の内面65に液密に接触している。
図2、図4及び図6に示すように、針保護部材20は、針先16aを保護するためのプロテクタ(シース)であって、円筒状に構成されている。針保護部材20は、針先16aを覆う保護位置(図1及び図6に示す針保護部材20の位置)と針先16aを露出させる使用位置(図12に示す針保護部材20の位置)とに針管16の軸線方向に沿って移動可能に設けられている。
針保護部材20の内孔には、針管16が挿通している(図6参照)。針保護部材20の外面には、針管16の径方向外方に突出した環状凸部68が設けられている。環状凸部68は、針保護部材20の軸線方向の中間の位置(針保護部材20の軸線方向の中央よりもやや基端方向の位置)に設けられている。環状凸部68には、基端方向を指向する規制面70が形成されている。
規制面70は、針保護部材20の軸線方向と直交する方向に延在した平坦面である。環状凸部68の外周面には、先端方向に向かって針管16の径方向内方に傾斜した第1ストッパ面68aが形成されている。針保護部材20の内面の基端側には、付勢部材22の一端が挿入される環状溝72が形成されている。
図2及び図6に示すように、付勢部材22は、針保護部材20を先端方向に付勢するためのものであって、例えば、圧縮コイルばねとして構成されている。ただし、付勢部材22は、圧縮コイルばねに限定されず、各種ばね部材又はゴム部材等であってもよい。
付勢部材22は、針ハブ18と針保護部材20との間に配設されている。具体的には、付勢部材22の一端(先端方向の端部)は、針保護部材20の環状溝72の底面に当接している。付勢部材22の他端(基端方向の端部)は、第1端壁部42の内面の中央部から先端方向に突出した部分の突出端面に当接している。付勢部材22の内孔には、針保持本体44が挿通している。
図2、図4及び図6に示すように、抜け止め部材24は、保護位置にある針保護部材20に接触することにより針保護部材20の先端方向の移動を規制するものであって、樹脂材料によって一体的に成形されている。抜け止め部材24を構成する樹脂材料としては、上述した第1ハブ28及び第2ハブ30を構成する樹脂材料と同じものが挙げられる。
抜け止め部材24は、保護位置にある針保護部材20に接触する筒状の抜け止め部本体74と、抜け止め部本体74の外面から針管16の径方向外方に突出した2つの凸部76とを有する。抜け止め部本体74は、針管16の周方向に複数(本実施形態では4つ)設けられた支持部78と、互いに隣接する支持部78を連結する複数(本実施形態では4つ)の連結部80と、各支持部78の先端部を連結するように設けられた円環部82とを有する。
支持部78の基端部は、基端方向に向かって幅狭に形成されている。連結部80は、支持部78の延在方向の中間に位置している。円環部82の内周面には、環状凸部68の第1ストッパ面68aに対応した形状の第2ストッパ面82aが形成されている。
第2ストッパ面82aは、先端方向に向かって針管16の径方向内方に傾斜している。図6において、第2ストッパ面82aは、針保護部材20が保護位置に位置した状態で環状凸部68の第1ストッパ面68aに接触する。円環部82の外面と第1筒部38の内面との間には、所定の隙間が形成されている。
図2、図4及び図6に示すように、抜け止め部本体74には、連結部80と円環部82と支持部78とによって複数(本実施形態では4つ)の窓部84(孔部)が形成されている。これら窓部84は、針管16の周方向に等間隔に設けられている。窓部84は、四角形状に形成され、抜け止め部本体74を針管16の径方向に貫通する。
2つの凸部76は、針管16の周方向に位相が互いに180°ずれて位置している。つまり、凸部76は、互いに対向する連結部80のそれぞれに1つずつ設けられている。凸部76は、連結部80の外面から針管16の径方向外方に突出している。凸部76は、第1筒部38に形成された挿入孔52に挿入されている(図6参照)。凸部76には、先端方向(矢印A方向)を指向して係止部56の第1当接面58に当接する第2当接面86が設けられている。第2当接面86は、針管16の軸線に直交する平坦面である。
抜け止め部材24は、針ハブ18における基端方向を指向する第1当接面58に抜け止め部材24における先端方向を指向する第2当接面86が当接した状態で針ハブ18(第1ハブ28)に設けられている(図6参照)。凸部76の外面には、基端方向に向かって針管16の径方向内方に傾斜した傾斜面88が形成されている。
図3及び図4に示すように、2つの凸部76の突出端の間隔L1は、第2部位48の内径D2と略同じ長さであって、2つの挿入孔52の離間間隔(第1部位46の内径D1)よりも大きい。ただし、2つの凸部76の突出端の間隔L1は、第2部位48の内径D2よりも小さくてもよい。
図2、図4及び図6において、規制機構26は、針保護部材20の基端方向の移動を規制するためのものである。換言すれば、規制機構26は、針保護部材20が保護位置から使用位置への移動を規制するためのものである。
規制機構26は、規制部材90と、規制解除部材92とを有する。規制部材90及び規制解除部材92のそれぞれは、樹脂材料によって一体的に成形されている。規制部材90及び規制解除部材92を構成する樹脂材料としては、例えば、上述した第1ハブ28及び第2ハブ30の構成材料が挙げられる。
規制部材90は、第1筒部38内に配設されている。規制部材90は、円環状に形成されたベース部94と、ベース部94から先端方向に延出した複数(本実施形態では4つ)の移動規制部96とを有する。ベース部94の外周面には、支持部78が挿入される複数の位置決め凹部98(図2参照)がベース部94の周方向に等間隔に形成されている。
つまり、規制部材90は、位置決め凹部98に支持部78が挿入することによって抜け止め部材24に支持されている。位置決め凹部98は、抜け止め部材24の支持部78の数と同じ数だけ設けられている。位置決め凹部98は、支持部78の基端側の形状に対応した形状に形成されている。すなわち、位置決め凹部98は、針管16の軸線方向に沿って延在している。位置決め凹部98の基端部は、基端方向に向かって幅狭に形成されている。
複数の移動規制部96は、針管16の周方向に等間隔に設けられている。図6に示すように、移動規制部96は、第1筒部38内に配設されている。具体的には、移動規制部96は、抜け止め部本体74の内孔(内側)に位置している。移動規制部96は、針保護部材20の保護位置から使用位置への移動を阻止する阻止位置と針保護部材20の前記保護位置から使用位置への移動を許可する退避位置とに変位可能に構成されている。
図2、図4及び図6において、移動規制部96は、ベース部94から先端方向に延出した延出部100と、延出部100の延出端に設けられた爪部102とを含む。延出部100は、針管16の径方向に弾性変形可能に構成されている。爪部102は、抜け止め部本体74の窓部84の内側に位置している(図6参照)。爪部102は、延出部100よりも針管16の径方向内方に膨出している。爪部102には、基端方向を指向して延出部100の内面に連なる係止面104が設けられている。係止面104は、針管16の軸線と直交する平坦面である。
爪部102は、延出部100が弾性変形していない状態で、阻止位置に位置している。爪部102が阻止位置に位置した状態で、互いに対向する爪部102の先端(矢印A方向の端)同士の間隔L2は、針保護部材20の環状凸部68の外径D3よりも小さい(図4参照)。爪部102は、延出部100が針管16の径方向外方に変位することにより阻止位置(図6の爪部102の位置)から退避位置(図10の爪部102の位置)に変位する。
爪部102の内面103は、先端方向に向かって針管16の径方向内方に傾斜している。爪部102の外面には、針管16の径方向外方に向かって突出した突起106が設けられている。突起106は、爪部102の外面から窓部84に向かって突出している。突起106は、横断面が円弧状の湾曲面を有する(図2及び図7参照)。
規制解除部材92は、リング状に構成されており、初期状態で針保護部材20に設けられている。具体的には、規制解除部材92は、初期状態で、環状凸部68の規制面70に支持されている。規制解除部材92の外面は、規制解除部材92の基端から先端方向に向かって縮径した第1テーパ面108と、第1テーパ面108の先端から先端方向に向かって拡径した第2テーパ面110とを有する。規制解除部材92の先端の外径D4は、環状凸部68の外径D3よりも大きい。
図1に示すように、針ケース14は、有底筒状に形成されたケース本体120と、ケース本体120の開口部を封止するための封止フィルム122とを備える。図1、図5〜図7において、ケース本体120は、底部124と、底部124から突出した筒状の側壁部126と、底部124に設けられた筒状突出部128と、複数のリブ130とを有する。ケース本体120の底面の中央部には、針保護部材20の先端側が挿入される孔部132が形成されている。
筒状突出部128は、ケース本体120の底面から上方(矢印B方向)に延出している。筒状突出部128は、孔部132の外周側に位置している。筒状突出部128は、複数(本実施形態では4つ)の変位阻止部134と、複数(本実施形態では4つ)の連結壁部136とを含む。
複数の変位阻止部134は、針管16の周方向に等間隔に設けられている。連結壁部136は、互いに隣接する変位阻止部134同士を連結する。連結壁部136は、変位阻止部134の全長に亘って延在している。連結壁部136は、変位阻止部134よりも薄い。
変位阻止部134は、針ユニット12が針ケース14内に収納された収納状態で、移動規制部96に接触することにより移動規制部96(爪部102)の阻止位置から退避位置への変位を阻止する。つまり、変位阻止部134は、針ユニット12が針ケース14内に収納された収納状態で、第1筒部38の内面と抜け止め部本体74の円環部82との間の隙間に挿入されている(図1、図6及び図7参照)。
変位阻止部134の延出端部は、針ユニット12が針ケース14内に収納された収納状態で、抜け止め部本体74の突起106に対して針管16の径方向外方に位置している。換言すれば、針ユニット12が針ケース14内に収納された収納状態で、抜け止め部本体74の窓部84を介して爪部102に設けられた突起106に対向している。この状態で、変位阻止部134と突起106とは互いに離間している。
複数のリブ130は、側壁部126の周方向に等間隔に設けられている。リブ130は、ケース本体120の底面から上方に突出している。リブ130は、側壁部126の内面から側壁部126の径方向内方に向かって延出している。リブ130と筒状突出部128との間には、第1筒部38の先端部が挿入される隙間が形成されている。リブ130の底面からの高さ寸法は、第1筒部38のうち第1フランジ部40から先端方向に突出した部分の長さよりも長い。
針ユニット12を針ケース14内に収納した収納状態で、針保護部材20の先端部が孔部132に配設され、第1筒部38の先端部が筒状突出部128とリブ130との間の隙間に配設され、第1フランジ部40のうち先端方向を指向する面がリブ130の上面に当接する。これにより、針ユニット12は、針ケース14に対して所定の姿勢を維持した状態で保持される。換言すれば、針ユニット12は、針ケース14内にガタツキが抑えられた状態で収納される。
次に、針ユニット12の組立方法の一例について説明する。
図8に示すように、針ユニット12を製造する場合、まず、規制解除部材92を針保護部材20の基端部に装着する。続いて、針保護部材20を規制部材90の基端側から挿入し、複数の移動規制部96の内側に規制解除部材92を位置させることにより、針保護部材20に装着された状態の規制機構26を組み立てる。
その後、針保護部材20及び規制機構26に対して抜け止め部材24を装着する。具体的には、規制機構26が装着された針保護部材20の先端を抜け止め部材24の複数の支持部78の内側に挿入する。そうすると、抜け止め部材24の支持部78の基端部が規制部材90の位置決め凹部98に挿入されることにより、規制部材90と抜け止め部材24との周方向の位置決めがなされる。
つまり、規制部材90の爪部102が抜け止め部材24の窓部84の内側に位置する。また、抜け止め部材24の第2ストッパ面82aが針保護部材20の第1ストッパ面68aに接触することにより、針保護部材20が先端方向の移動が規制された状態で抜け止め部材24に支持される。そして、付勢部材22を針保護部材20の環状溝72内に挿入する。これにより、針保護部材20、規制機構26、抜け止め部材24及び付勢部材22が一体化される。
次に、針保護部材20、規制機構26、抜け止め部材24及び付勢部材22を第1ハブ28に対して組み付ける。具体的には、針管16の周方向において抜け止め部材24の凸部76と第1ハブ28の係止部56との位置を合せた状態で、規制部材90のベース部94を第1筒部38内に挿入するとともに付勢部材22の内孔に針保持本体44を挿入する。なお、抜け止め部材24の2つの凸部76の突出端の間隔L1が第1筒部38の第2部位48の内径D2よりも小さいため、凸部76は第2部位48内を第1端壁部42に向かって円滑に移動する。
そうすると、凸部76の傾斜面88が段差面50aに接触する。続いて、図9に示すように、抜け止め部材24を第1端壁部42に向かってさらに進めると、凸部76によって係止部56が針管16の径方向外方に押し広げられる(弾性変形する)。そして、係止部56を乗り越えた凸部76は挿入孔52内に配置され、係止部56は元の形状に復帰する。そのため、凸部76の第2当接面86が係止部56の第1当接面58に当接し、抜け止め部材24が第1ハブ28に対して係止される。
その後、挿通孔34に針管16を挿通した状態で接着剤等によって針保持部36に固着するとともに針管16の基端部に弾性部材32を装着する。なお、針管16及び弾性部材32は、抜け止め部材24を第1ハブ28に係止する前に、第1ハブ28に対して設けられてもよい。続いて、図10に示すように、第2ハブ30を第1ハブ28に対して装着する。具体的には、第2筒部60内に第1筒部38を挿入し、第1フランジ部40と第2フランジ部66とを超音波溶着等によって互いに溶接する。これにより、針組立体10が製造されるに至る。
なお、予め、挿通孔34に針管16を挿通した状態で接着剤等によって針保持部36に固着し、さらに針保持本体44を付勢部材22の内孔に挿通させた状態の第1ハブ28に、針保護部材20、規制機構26及び抜け止め部材24を一体化したものを組み付けてもよい。
次に、針組立体10の動作について説明する。
まず、ユーザは、図1に示す針組立体10の針ケース14の封止フィルム122を開封し、ケース本体120内から針ユニット12を取り出す。この際、針保護部材20は、針先16aを覆う保護位置にあるため、ユーザは、針先16aに触れることはない。
そして、図11及び図12に示すように、薬剤Mが充填されたプレフィルドシリンジ200の接続部202を針ハブ18の接続部64に接続する。具体的には、プレフィルドシリンジ200の雌ねじ部206を針ハブ18の雄ねじ部67に螺合し、プレフィルドシリンジ200のノズル部204の外面205を針ハブ18の接続部64の内面65に液密に接触させる。この際、ノズル部204の先端面は、弾性部材32に対して液密に接触している。
その後、皮膚の表皮300に対して針保護部材20の先端面を押し付ける。そうすると、針保護部材20には、基端方向(矢印B方向)の反力が作用する。そのため、保護位置にあった針保護部材20は、抜け止め部材24の円環部82から離間して付勢部材22の付勢力に抗して基端方向に移動する。この際、規制解除部材92の第2テーパ面110によって規制部材90の爪部102が針管16の径方向外方に押し広げられて爪部102が阻止位置から退避位置に変位する(図11参照)。これにより、規制解除部材92が爪部102を乗り越えて爪部102よりも基端側に移動する。すなわち、針保護部材20は、保護位置から針先16aが露出する使用位置まで基端方向に移動する(図12参照)。
また、針保護部材20の基端方向の移動によって、針保護部材20の先端側に露出した針先16aが表皮300から穿刺され、第1フランジ部40が表皮300に接触するまで針組立体10を表皮300に対して押し付けることによって、針先16aが皮内304(真皮内)に位置する。そして、ユーザは、プレフィルドシリンジ200の図示しない押子を押圧することによって、プレフィルドシリンジ200内の薬剤Mを、針管16内を介して皮内304に注入する。その後、針ハブ18を表皮300から離すことにより、針管16を皮内304から抜去する。
そうすると、図13に示すように、使用位置にあった針保護部材20は、付勢部材22によって先端方向(矢印A方向)に押されて保護位置に復帰する。この際、規制解除部材92は、規制解除部材92の先端面が爪部102の係止面104に当接するため、針保護部材20から離脱する。すなわち、規制解除部材92は、爪部102よりも基端側に残される。
従って、図14に示すように、ユーザ等が針保護部材20を誤って基端方向に押した場合であっても、針保護部材20の環状凸部68の規制面70が規制部材90の爪部102に接触することにより針保護部材20の保護位置から使用位置への移動が阻止される。つまり、針先16aが針保護部材20から露出しない。
すなわち、針組立体10は、規制解除部材92によって針保護部材20の保護位置から使用位置への1回目の移動がなされると、針保護部材20の保護位置から使用位置への2回目の移動が規制部材90によって阻止される構造となっている。
次に、本実施形態に係る針組立体10の作用効果について以下に説明する。
針組立体10では、第1ハブ28における基端方向を指向する第1当接面58に抜け止め部材24における先端方向を指向する第2当接面86が当接した状態で抜け止め部材24が第1ハブ28に設けられている。そのため、付勢部材22から針保護部材20を介して抜け止め部材24に作用する先端方向の付勢力を第1ハブ28の第1当接面58で受けることができる。よって、第2当接面86が第1当接面58に当接するように抜け止め部材24を第1ハブ28に対して装着すればよいため、抜け止め部材24を第1ハブ28(針ハブ18)に対して容易に組み付けることができる。
抜け止め部材24は、抜け止め部本体74の外面から針管16の径方向外方に突出した凸部76を有し、第1筒部38には、凸部76が挿入される挿入孔52が形成されている。第1当接面58は、挿入孔52を構成し、第2当接面86は、凸部76の外面を構成している。これにより、抜け止め部材24の凸部76を第1ハブ28の挿入孔52に挿入することにより、抜け止め部材24を第1ハブ28(針ハブ18)に対して容易に組み付けることができる。
第1筒部38には、針管16の径方向に弾性変形可能な係止部56が設けられ、第1当接面58は、係止部56に設けられている。この場合、抜け止め部材24を第1筒部38内に挿入することにより、凸部76によって係止部56を針管16の径方向外方に弾性変形させることができるため、凸部76が係止部56を乗り越えて挿入孔52に挿入され係止部56が元の形状に復帰する。これにより、凸部76を挿入孔52に容易に挿入することができる。
係止部56は、第2部位48(筒部本体)から基端方向に突出し、係止部56の突出端部には、係止部56の基端部よりも針管16の径方向内方に突出した段差部50が設けられている。第1当接面58は、係止部56の突出端面に設けられている。これにより、抜け止め部材24を第1筒部38内に先端方向から挿入して凸部76を段差部50に押し当てることによって係止部56を針管16の径方向外方に効果的に弾性変形させることができる。
凸部76の外面には、基端方向に向かって針管16の径方向内方に傾斜した傾斜面88が設けられている。これにより、凸部76の傾斜面88を段差部50に接触させることによって係止部56を針管16の径方向外方に容易に弾性変形させることができる。
段差部50には、先端方向に向かって針管16の径方向外方に傾斜した段差面50aが設けられている。これにより、凸部76を段差面50aに接触させることによって係止部56を針管16の径方向外方に容易に弾性変形させることができる。
凸部76及び挿入孔52は、2つずつ設けられている。2つの凸部76は、針管16の周方向に位相が互いに180°ずれて位置している。2つの挿入孔52は、針管16の周方向に位相が互いに180°ずれて位置している。2つの凸部76の突出端の間隔L1は、2つの挿入孔52の離間間隔(第1部位46の内径D1)よりも大きい。これにより、2つの凸部76を2つの挿入孔52のそれぞれに確実に挿入することができる。
第1筒部38のうち挿入孔52よりも先端側は、2つの凸部76の突出端の間隔L1よりも大きい内径D2を有する第2部位48を有している。これにより、簡易な構成により凸部76を第1筒部38内に先端方向から容易に挿入することができる。
針組立体10は、第1ハブ28(針ハブ18)に支持され、針保護部材20に当接することにより針保護部材20の保護位置から使用位置への移動を規制する阻止位置と針保護部材20の保護位置から使用位置への移動を許可する退避位置とに変位可能な移動規制部96を有する。移動規制部96は、針管16の径方向外方に変位することにより阻止位置から退避位置に変位する。針ケース14は、針ユニット12が針ケース14内に収納された収納状態で、移動規制部96の阻止位置から退避位置への変位を阻止する変位阻止部134を有する。
この場合、針ユニット12が針ケース14内に収納された収納状態で、変位阻止部134によって移動規制部96の阻止位置から退避位置への移動が阻止されるため、針組立体10の輸送時や落下時の振動によって針保護部材20が使用位置に位置することを防止することができる。
変位阻止部134は、針ユニット12が針ケース14内に収納された収納状態で、移動規制部96に対して針管16の径方向外方に位置し、移動規制部96に接触することにより移動規制部96の阻止位置から退避位置への変位を阻止する。これにより、簡易な構成により、針ユニット12が針ケース14内に収納された状態で移動規制部96が阻止位置から退避位置に変位することを確実に阻止することができる。
移動規制部96は、第1筒部38内に配設され、変位阻止部134は、針ユニット12が針ケース14内に収納された収納状態で、第1筒部38の内面と移動規制部96との間に位置している。これにより、針組立体10が大型化することを抑えることができる。
移動規制部96は、針ユニット12が針ケース14に収納された収納状態で、変位阻止部134に対して離間している。これにより、移動規制部96が変位阻止部134に接触している場合と比較して、針ユニット12を針ケース14から容易に取り出すことができる。
移動規制部96は、ベース部94から針先16a側に向かって延出した延出部100と、延出部100の延出端に設けられた爪部102とを有する。爪部102は、延出部100が針管16の径方向外方に弾性変形することにより、阻止位置から退避位置に変位する。これにより、移動規制部96を簡易な構成にすることができる。
爪部102の外面には、針管16の径方向外方に突出した突起106が設けられ、変位阻止部134は、針ユニット12が針ケース14に収納された収納状態で、突起106に対して針管16の径方向外方に位置している。そのため、延出部100の厚みを比較的薄くしつつ針ユニット12が針ケース14内に収納された状態で移動規制部96が阻止位置から退避位置に変位することを効果的に阻止することができる。
移動規制部96及び変位阻止部134のそれぞれは、針管16の周方向に等間隔に複数設けられている。これにより、針ユニット12が針ケース14内に収納された収納状態で、複数の針保護部材20が保護位置から使用位置に移動することを一層確実に阻止することができる。
針ケース14は、互いに隣り合う変位阻止部134同士を連結する連結壁部136を有している。これにより、連結壁部136によって変位阻止部134の剛性を向上させることができるため、変位阻止部134が移動規制部96に押された径方向外方に変形することを抑えることができる。
針ユニット12は、第1ハブ28の第1端壁部42と針保護部材20との間に配設され、針保護部材20を先端方向に付勢する付勢部材22と、第1ハブ28の第1筒部38に係止され、保護位置にある針保護部材20に接触することにより針保護部材20の先端方向の移動を規制する抜け止め部材24と、抜け止め部材24に支持され、移動規制部96を有する規制部材90とを備える。これにより、移動規制部96を有する規制部材90を抜け止め部材24を介して針ハブ18で支持することができる。
抜け止め部材24は、筒状に構成された抜け止め部本体74を有し、抜け止め部本体74には、針管16の径方向に貫通する窓部84が形成されている。移動規制部96は、窓部84の内側に位置し、変位阻止部134は、針ユニット12が針ケース14内に収納された収納状態で、窓部84を介して移動規制部96に対向している。これにより、抜け止め部本体74の内側に移動規制部96を配置した場合であっても変位阻止部134によって移動規制部96の阻止位置から退避位置への移動を阻止することができる。
本発明は、上述した構成に限定されない。係止部56(挿入孔52)及び凸部76のそれぞれは、2つに限定されず、1つ又は3つ以上であってもよい。係止部56(挿入孔52)及び凸部76のそれぞれは、3つ以上である場合、針管16の周方向に等間隔に設けられていることが好ましい。
第1筒部38には、挿入孔52に代えて針管16の径方向内方に突出した凸部が設けられ、抜け止め部材24には、凸部76に代えて挿入孔が設けられていてもよい。この場合、第1当接面58は、第1筒部38の前記凸部の外面に設けられ、第2当接面86は、抜け止め部材24の前記挿入孔を構成する面に設けられる。
移動規制部96及び変位阻止部134のそれぞれは、4つに限定されず、3つ以下又は5つ以上であってもよい。針ケース14は、連結壁部136を有していなくてもよい。
本発明に係る針組立体は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、シリンジはプレフィルドシリンジではなく、使用直前に薬液を充填して使用するものであってもよい。