JP6975481B2 - 脳活動検出用の頭部装着装置及び脳活動計測システム - Google Patents
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Description
脳活動を計測するためには、電極等の脳活動信号を受信する受信部材を被験者の頭皮に接地させる必要がある。そのために一般に頭部装着装置、例えば布製のベルト様の装着帯や頭部形状に対応させたヘルメットやフレームの内側に電極等の受信部材を固定させ、それら頭部装着装置を装着して電極等を頭皮に接地(当接)させるようにしている。
このような頭部装着装置の一例として特許文献1のヘッドセットを挙げる。特許文献1のヘッドセットはフレームの取り付け孔に電極が取り付けられ、その使用状態を示す参考図のように装着した状態で電極先端が被験者の頭皮に接地するように構成されている。装着した状態でヘッドセットを構成するフレームは二股に分かれたフォーク状の第1の部分が被験者の後頭部中央位置から上方に延出され後頭部から頭頂部及び前頭部を覆っている。一方、後頭部から頭部を左右方向に延出された第2の部分は後頭部中央位置から側頭部及び前頭部にかけてほぼ水平方向に配置されている。そして第2の部分は側頭部において耳上部(耳輪)の基部位置に載置されている。
視覚情報の流れは、後頭から側方に向かう腹側経路と、後頭から上方に向かう背側経路があることが知られており、それぞれの視覚情報経路について脳活動を記録し解析することが大切とされている。ここで腹側経路の記録をする場合、国際10−20電極法におけるO1−T5、O2−T6のライン上の位置で脳活動を記録することが大切であるが、そのラインの延長地点は耳の付け根付近となるT7、T8の位置となる。そのため、O1−T5、O2−T6のライン上に電極等の脳活動の受信部材を配置しようとすれば、ヘッドセットが耳付近を通過することとなってしまい、眼鏡等との干渉が発生してしまっていた。例えば、特許文献1でもT7、T8の位置をヘッドセットが通過している。
また、計測しようとする脳活動信号が聴覚を通じての脳活動の変化である場合でも、一般にヘッドフォンを耳に取り付けるため、同様に特許文献1のヘッドセットではフレームの第2の部分に干渉してしまう可能性がある。つまり、脳活動信号の正確な計測のためには耳の周囲にはなるべく頭部装着装置が配置されないようにする必要がある。
本発明はこのような従来技術の問題に着目してなされたものである。その目的は、耳付近に配置される装備と干渉せず、かつ頭部において耳とほぼ同じ高さ位置となる後頭部の脳活動信号を計測できる頭部装着装置及び脳活動計測システムを提供することである。
つまり、頭部装着装置を第1の部分が後頭部位置に配置されるように装着すると、少なくとも2つの受信部材は頭部正中面に対して直交する面に沿って直列に配設された受信部材列を構成し、そのような第1の部分を基点として第2の部分は第1の仮想平面に対して前方に向かって仰角を持たせることにより、耳方向に向かわずに頭部側面を頭部前方上方に向かって延出されることとなる。このような構成の頭部装着装置であれば側頭部の耳の上側でかつその近傍位置に第2の部分が配置されないため、眼鏡やヘッドフォン等を装用して脳活動信号を検出する必要がある場合でもそれら装備とフレームとの干渉が生じることなく、また検出作業において頭部装着装置を装用する者(装用者)にごく普通に眼鏡やヘッドフォン等を装用させることができて装用者にストレスを感じさせることが少ないため、より正確さが増した脳活動信号を検出することができる。
ここに「少なくとも2つの前記受信部材が配設」されていることは、後頭の1次視覚野に伝えられた視覚情報は腹側経路で左右に分かれて、すなわち右半球と左半球に情報が伝わって処理されることから重要である。
受信部材が電極の場合には装用者への計測負担を減らすため使用時に電極上に導電性のペーストやジェル、生理食塩水等を塗布しなくともよいドライ式の電極(以下、ドライ電極とする)等がよいが、使用時に電極上に導電性のペーストやジェル、生理食塩水等を塗布するウェット式の電極(以下、ウェット電極とする)であってもよい。電極は例えばフレームの所定の位置に埋め込み等によって一体不離的に固定されていてもよく、所定の取り付け位置に形成された取り付け用の孔に着脱可能に固定するようにしてもよい。
フレームはなるべく軽量で硬質であり適度な弾性を有する材質で構成されることがよい。材質としては、例えば木材やプラスチックがよい。また、単一の材料でなくてもエラストマー(弾力ゴム)等をフレームの一部に用いるなどしてもよい。
ここで「頭部正中面」とは、鼻根部、頭頂、後頭結節を含む平面のことである。概ね脳の右半球と左半球は頭部正中面で分割されていることになる。ここで頭頂とは、国際10−20電極法、および10−10法におけるCzの電極位置のことである。また、図8においては、鼻根部はNz、後頭結節はIzの位置となっている。
このような構成においては、受信部材列が存在する平面(第2の仮想平面)は第1仮想平面に対して平行でかつ前記第1仮想平面よりも下側とならないように配置される。この第2の仮想平面の位置(高さ)でフレーム全体を構成して頭部をそのまま鉢巻き状に周回させたとするならば、フレームは耳と干渉する位置あるいは耳のごく近傍に配置されてしまう。そして、その場合には耳に装着する眼鏡やヘッドフォン等の耳付近に配置される装備と干渉が生じる可能性がある。そのため、本発明の第2の手段ではフレームの第2の部分を耳付近に配置される装備と干渉しないように、第2の仮想平面に対して前方に向かって仰角を有するように構成したものである。
また、第3の手段として前記第2の部分は前記第1の部分から左右の頭部側面に沿って延出されるようにした。
つまり、上記第1の手段において第2の部分が第1の部分から片方の頭部側面に沿って延出される場合の構成も含んでいることを意味する。第3の手段のように構成することで、後頭部位置に配置される第1の部分をバランスよく頭部に固定することができるようになる。ここで、前記第2の部分は前記第1の部分のいずれかから延出していればよく、中央から左右に延出させても、両端から左右に延出させてもよい。また、同じ高さではなく若干異なる高さから延出させるなども含む。第2の部分の重量を左右で変更する必要がある場合、例えば片側に電池や通信機器を入れる必要がある場合などでは、前記第2の部分の延出する高さを調整することで頭部装着装置の重量バランスを整えることができる。
また、第4の手段として前記受信部材列は前記第1仮想平面に隣接した位置に配置されようにした。
このような構成ではフレームの第1の部分は第1仮想平面、つまり耳と交差する平面位置に隣接した高さに配置されることとなる。しかし、上記のようにフレームの第2の部分を構成したことにより第2の部分はこのような第1仮想平面から離れて延出されるため、確実にフレームが耳の上側でかつその近傍位置を通ることがなくなる。ここで「隣接」とは、厳密に隣り合っている場合だけでなく脳計測の計測位置として隣接しているという概念である。例えば、鼻根部から頭頂を経て後頭結節までの長さは大人の頭部において概ね35〜40cm程度であるため、その20%以下、すなわち、0〜7cm程度を隣接と考えることができる。ここで、前記受信部材列の中心は、前記第1仮想平面からあまり近くや遠くでは後頭葉の脳活動が計測しにくくなるため、2〜5cm離れて配置されることが好ましい。
また、第5の手段として前記フレームを頭部に配置した状態で、前記第2の部分は装用者の側頭部と頭頂部の境界領域を通過して前頭部に至るようにした。
特にこのように第2の部分が延出されれば、側頭部と頭頂部の境界領域は耳の近傍から離間した領域であるため第2の部分は耳付近に配置される装備と干渉しないで前頭部までフレームを延出でき、前頭部側で頭部に対してフレームを保持させることができることとなる。尚、本明細書における側頭部、頭頂部、前頭部の位置については図6に記載の通りである。「境界領域」とは、厳密に各領域が接している領域の接点だけでなく、ある程度の広さを持った領域であるものとする。例えば、側頭部と頭頂部の境界領域とは、側頭部で頭頂部に近い部位から、頭頂部で側頭部に近い部位までを含むものとする。
また、第6の手段として前記受信部材は受信部材列の全長の中心位置において線対称となるように配置されているようにした。
このような構成では、受信部材がバランス良く装用者(被験者)の頭部に当接されることとなり、頭部装着装置の重量のバランスや圧力のバランスをより均一にすることができ、頭部装着装置の装着感を向上させることができる。また、脳の左右半球の同位置は似た機能を持っており、腹側経路で左右に分かれてほぼ同時に情報が伝わる。そのため、受信部材を線対称とすることにより精度良く計測することができるようになる。
このように構成すれば、フレームの第2の部分を頭部に対して離間する外方向に押し広げることで、フレームは元に復帰する付勢力を発生させることとなる。そして、頭部よりも若干狭い間隔に構成した第2の部分を有するフレームを用意し、第2の部分を頭部に対して離間する外方向に押し広げて第1の部分を後頭部に当接させた状態で頭部側面に装着する。こうすることでフレームはその第2の部分の付勢力によって頭部を挟み込むことができ、フレームを頭部に支持させることができる。これによって、頭部装着装置を装着する際にフレームを耳上部(耳輪)の基部位置に架けて支持させなくとも頭部に装着させることができる。
第2の部分が頭部を挟む場合には頭部の側面形状に沿った広い範囲で接触しても、第2の部分の一部のみで当接するようにしてもどちらでもよい。
また、第8の手段として前記第2の部分に前頭部への当接領域を設けるようにした。
これによって、不必要な広い範囲で頭部を挟むことがなくなり、装用者へのフレームを取り付ける際にストレスが軽減される。また、なるべく前頭部側で挟む方が後頭部で接する第1の部分と離れることとなり、フレームの頭部への安定性がよくなる。
また、第9の手段として前記受信部材と前記当接領域とによって前記フレームを頭部に対して支持させるようにした。
これによってフレームにおいて第2の部分の前頭部左右の当接領域と後頭部に配置される受信部材との三点支持的な三角形となるような位置でフレームは頭部を包囲することとなるため、頭部に装着された頭部装着装置が非常に安定する。
このように構成すれば、第2の部分に比較して低い位置に配置される第1の部分が後頭部位置で重錘部材の質量の重力によって下方に引き下げられることとなり、頭部に装着された頭部装着装置が非常に安定する。重錘部材は一般に軽量なフレームに対してこれよりも重い重量物であればよい。特に重さをかせぐためだけに重錘部材を配置するのではなく、なんらかの機能部材を兼用することがよい。機能部材としては、例えば検出した信号を増幅するための増幅装置や増幅装置の給電のためのバッテリーが挙げられる。
また、第11の手段として前記重錘部材は前記第1の部分に形成した収容部に収容されるようにした。
例えば、重錘部材が上記のように機能部材と兼用する場合には収容部に収容するようにすれば、工程的に重錘部材を別途収容するようにすることができ、重錘部材フレームの加工と一緒に行う必要がなくなり、また重錘部材を収容部から取り出せば取り替えもできるため便利である。
このようにすることで、第1の部分の頭部への保持をよりバランスよくできるようになり、頭部装着装置の装用時の安定感を向上させることができる。
また、第13の手段として前記仰角は、15〜60度であるようにした。
仰角が小さ過ぎるとフレームの第2の部分が耳の上部付近を通過することとなってしまい、眼鏡、ヘッドフォン等の装用と干渉してしまう。一方で、あまりに仰角が大きいと頭部装着装置の頭部への装用時の安定感が低下してしまう。そのため、前記仰角は、15〜60度が好ましい。また、更に好ましくは、前記仰角は20〜45度であると耳付近に十分な空間を確保でき、装用時に頭部装着装置の重さが下方向にかかることになるためより好ましい。
また、第14の手段として前記第2の部分間を連結し、頭部形状に沿って配置される1又は2以上の第2のフレームを備えるようにした。
これによってフレームの強度が向上する。また、第2のフレームは頭部外周形状に沿っているためアーチ状に湾曲することとなり、上記手段7のように前記第2の部分が外方に拡がる構成である場合にはその動きに追随することができる撓みを許容することができる。
また第15の手段として、前記第2のフレームの少なくとも1つは装着状態で前頭部に配設されるようにした。
特に装着状態で第2のフレームが前頭部に配設されるのであれば、フレーム全体の重さを上部位置の第2のフレームによって頭部に吊り下げ状に保持させることができ、頭部に装着された頭部装着装置が非常に安定する。特にフレームにおいて第2の部分で挟みこむ作用があれば特に安定性は増す。更に、フレームにおいて第1の部分に重錘部材が配設されていれば更に安定性は増す。
また、第16の手段として前記第2のフレームの内面には1又は2つ以上の前記受信部材が配設されているようにした。
これによって第2のフレームが配設される頭頂部や前頭部からも受信部材によって脳活動信号を検出することができる。視覚情報で、例えば背側経路に伝えられる脳情報を計測したい場合、後頭に位置させたフレームの第1の部分の前記受信部材と第2のフレームの内面に配設された受信部材との脳活動の差分を検出することにより解析することができるため好ましい。また、視覚情報に加えて、例えば認知、聴覚、運動想起などの脳活動を検出する場合にも第2のフレームに配設した受信部材で検出することができるため好ましい。更に、第2のフレームを額に配置するようにすれば、前頭葉からの脳活動を検出することができるようになる。
また、第17の手段としては前記受信部材は電極であり、前記脳活動信号は脳波であるようにした。
これによって脳の神経活動に伴う電気的活動を脳波として検出することができる。脳活動には自発脳活動と誘発脳活動があるが、本発明では特に限定されず、どちらにも対応することができる。例えば、視覚情報の解析では、自発脳活動による後頭葉のα波等の検出や、誘発脳活動による視覚誘発電位や定常状態視覚誘発電位の検出等をすることができ好ましい。また、認知に関わる脳活動では、事象関連電位のP300等を検出することができる。また、θ帯域やHigh−γ帯域等の脳活動も検出することができる。
また、第18の手段としては前記受信部材は磁場の変化を検出するための素子であり、前記脳活動信号は脳磁場であるようにした。
これによって脳の神経活動に伴う磁界(磁場)の変化を脳磁場(脳磁界)として検出することができる。脳磁場は脳波に比べて頭蓋骨や脳髄液等による脳信号の歪の影響を受けないため、正確な脳活動位置の記録が期待できるようになる。また、脳波は髪の毛を掻き分けるなどして頭皮に電極を当接する必要があるが、脳磁場を検出するための素子は髪の毛の上から頭部に当接しても計測することができるため好ましい。
また、第19の手段としては前記受信部材の隣接位置には近赤外線の送光部を備え、前記受信部材は近赤外線の受光部であり、前記脳活動信号は脳血流であるようにした。
これによって脳の活動に伴う酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビン等の濃度変化を前記受信部材の隣接位置に設けた送光部からの近赤外線の脳表面からの反射を受光部で受光することにより検出することができる。
尚、第17〜第19の手段は組み合わせて実施することが可能である。例えば、フレームの第1の部分の受信部材を電極とし、後頭葉からの脳波を計測し、第2のフレームの内側の受信部材を近赤外の受光部として、前頭葉の脳血流を計測するなどすることで同時に得られる脳活動の情報量を増やすことができ好ましい。また例えばフレームの第1の部分に隣り合わせて、脳波を検出するための電極と脳磁場(脳磁場)を検出するための素子を配置するなどしても良い。このようにすると計測精度をより向上させることができる。
また、第20の手段として第1〜第19のいずれかの手段の頭部装着装置によって得られた脳活動信号に基づいて脳活動を計測するようにした。
このようにすることで、装用者に頭部装着装置を装着する手間を低減することができ、更には、眼鏡やヘッドフォン等を頭部装着装置と同時に装用しても装用者(被験者)にストレスをかけずに脳活動を検出する脳活動計測システムを提供することができる。
まず、本発明の一実施の形態としての脳活動計測システムを説明する。図5は脳波計測システムの電気的構成を説明する説明図である。脳波計測システムは頭部装着装置としてのヘッドセット1とコンピュータ2から構成されている。ヘッドセット1には受信部材としての複数の電極E1〜E8と電極E1〜E8ごとのプリアンプ4とそれら複数のプリアンプ4が接続された1つの差動アンプ5が配設されている。ヘッドセット1の詳しい構成は後述する。
上記各電極E1〜E8はプリアンプ4と差動アンプ5を介して差動アンプ5内に配設されたインターフェースに接続されており、インターフェースを介してコンピュータ2に取得した脳波として電位データ(電圧データ)が出力される。インターフェースを介してのコンピュータ2への入出力は、有線でも無線でもよい。本実施例ではBluetooth(登録商標)による無線式としている。wi−fi等その他の通信規格に変更することは自由にできる。
プリアンプ4は各電極E1〜E8ごとに配設され、各電極E1〜E8が取得したその位置での脳波電圧を増幅する。差動アンプ5は差動増幅回路を備え、図示しないリファレンス電極から得られた脳波電圧と電位差を算出し増幅する。リファレンスは右耳朶より取得する。また、差動アンプ5には図示しないグラウンド電極も接続されている。グラウンド電極の電極位置については制限がないが、本実施例ではリファレンス電極と同じ右耳朶としている。更に差動アンプ5は内蔵されたフィルター回路によってノイズを低減する機能を有する。差動アンプ5で増幅された電位データは検出対象データとしてコンピュータ2に出力される。
コンピュータ2はCPU(中央処理装置)11や記憶装置12及びその周辺装置によって構成されている。CPU11は記憶装置に保存されているプログラムに基づいて演算処理を行う。記憶装置12にはCPU11の動作を制御するためのプログラム、複数のプログラムに共通して適用できる機能を管理するOA処理プログラム(例えば、日本語入力機能や印刷機能等)等の基本プログラムが格納されている。更に、電位データを取り込むプログラム、電位差を算出するプログラム、電流方向を推定するプログラム、計測データの信頼度を算出するプログラム等が格納されている。CPU11には入力装置13(マウス、キーボード等)、及びモニター14が接続されている。モニター14に得られた脳波や差分等の計測結果を表示させることができる。
図1〜図4に示すように、ヘッドセット1は第1のフレーム21と第2のフレーム22の2つのフレーム体から構成されている。第1のフレーム21はUの字状に湾曲した外観を呈する抗菌プラスチック製の硬質の長尺体である。第1のフレーム21はUの字の底の部分に当たる第1の部分としてのベース部21Aと、ベース部21Aの左右両側から互いに対向するように張り出した第2の部分としての一対のフォーク部21Bとから構成されている。ベース部21Aは頭部の後頭部位置を横方向に包囲し、フォーク部21Bは頭部の左右側面を包囲する。
ベース部21Aはフォーク部21Bに対して相対的に幅広かつ肉厚に構成されている。ベース部21Aは長手方向中央寄りほど厚く、両側に向かうほど(フォーク部21B寄りほど)薄くなるように構成されている。つまり、ベース部21Aの外周には外側に凸となるような幅方向に湾曲した湾曲面23が形成され、湾曲面23の下方寄りにおいて外側に凹となるような幅方向に湾曲した逆湾曲面24が形成されている。湾曲面23と逆湾曲面24との面の接する部分は不連続な境界線となってベース部21Aの長手方向に外方に凸となる鈍角部25として現れる。ベース部21Aの内周は幅方向においては湾曲せず断面直線状に構成されている。
ベース部21A外周の長手方向中央位置であって鈍角部25に面した位置にはスイッチ26が配設されている。スイッチ26と同じベース部21A外周の長手方向中央位置であってベース部21Aの上部位置には窓27が形成されている。窓27にはアクリル製の曇りガラス28が嵌合されている。スイッチ26及び曇りガラス28の外周面はデザイン的な協調を図るためにベース部21Aの外周と面一に構成されている。窓27内には図示しないLEDが配設されている。スイッチ26は、脳波計の電源であり、窓27内に配設されたLEDが緑色に発光して電源が入っていることが示される。また、コンピュータ2との通信エラー等、計測に不具合がある場合には同じく窓27内に配設されたLEDが赤色に発光してエラーが示される。
このように構成された第1のフレーム21は、ベース部21Aの長手方向中央寄りを幅方向(上下方向)に通る線分を境界として左右対称に構成されている。また、第1のフレーム21の素材の性質に基づいて硬質であるものの、全体として弾性をもって撓み、原形状に復帰することが可能である。対向配置されているフォーク部21Bは互いに外方及び内方にその先端が接離可能とされ、外方及び内方に付勢した際に内部に付勢力が発生しこれが原位置への復帰力となる。
サイズの一例として本実施の形態ではベース部21Aの中央位置での幅は33mm、厚みは12mmとされ、最も幅広となるフォーク部21Bに隣接する位置での幅は40mm、厚みは5mmとされている。最も幅広となるフォーク部21Bのベース部21Aに隣接する位置での幅は20〜25mm(両者の接続部分が明瞭ではないため)、厚みは全長に渡って3mmとされている。
収納部本体31Bの底面には4つのスロット32A〜32Dが形成されている。図3において最も左側のスロット32Aはパソコンからケーブルを介して給電する際のケーブル端子用である。その隣のスロット32Bはレファレンス/グラウンド用の電極の挿入口である。スロット32Bには図示しないクリップ付きケーブルの端子を接続する。クリップ付きケーブルのクリップを右耳朶に取り付けてリファレンス電極とグラウンド電極を取得する。また、その隣のスロット32Cとスロット32Dは予備的な入力端子である。例えば他の電極からの入力データを入力したり、外部からの何らかの入力、例えば被験者にボタン押しのようなある動作をさせてそれと脳波との関係を解析するような場合に使用する。
電極E1〜E5のうち中央の3つの電極E2〜E4は収納部31の電極ベース部31A上に固定配置され、両端の電極E1、E5はダンパー部33と一体化した電極基部38によってベース部21A内周面に埋め込み状に固定配置されている。5つの電極E1〜E5は頭部への装着状態で後頭部において同じ等高線上に直列状に並ぶとともに(つまり周方向に同じ水平面上となるように)、均等な間隔(本実施の形態では電極本体34中央位置間で30mm間隔)となるように配置されている。ちょうど中央となる電極E3がベース部21Aの長手方向中央位置に配置されている。中央の3つの電極E2〜E4はダンパー部33内において図示しないデータ線を介して差動アンプ5に接続され、両端の電極E1、E5は第1のフレーム21内に形成された図示しない通路内を図示しないデータ線を介して差動アンプ5に接続されている。
第2のフレーム22には長手方向における中央部分に幅方向において上方に向かって隆起したガウス曲線状の稜線状となる隆起部22aが形成されている。隆起部22aはヘッドセット1を頭部に装着する際の中央位置を示すための目印とされる。第2のフレーム22は隆起部22a位置から左右方向に均等に幅広となっており、両端位置が最も幅広となって左右のフォーク部21Bに連結されている。このように第2のフレーム22は幅方向のサイズが長手方向に渡って不均等であるにも関わらず下端面は凹凸せず同一平面上に存在する。
サイズの一例として本実施の形態では第2のフレーム22の中央位置での幅は18mm、もっとも狭い部分の幅は15mm、フォーク部21Bとパッド35に挟まれた接合部分の長さは30mm、厚みは1.5mmとされている。
第2のフレーム22の内面には上記電極E1〜E5と同じ構成の複数の(3つの)電極E6〜E8が直列状に配設されている。電極E6〜E8は電極ベース部37上に固定配置されている。電極E6〜E8は頭部への装着状態で前頭部において直列状に並ぶとともに電極E6及びE8はそれぞれE7から均等な間隔(本実施の形態では電極本体34中央位置間で40mm間隔)となるように配置されている。ちょうど中央となる電極E7が第2のフレーム22の長手方向中央位置に配置されている。電極E6〜E8は第2のフレーム22及び第1のフレーム21内に形成された図示しない通路内を図示しないデータ線を介して差動アンプ5に接続されている。
図8は本実施の形態のヘッドセット1を使用する前提としての電極が置かれる位置を示した電極配置図である。鼻根と後頭結節の間及び左右耳介前点の間を10%ごとに分割し、電極を配置した10−10法(拡張10−20電極法)と呼ばれるものである。図8は平面図であるため同じ等高線上の電極位置は同心円上に配置されるが、実際の頭部においては同じ高さ位置となるため、その高さにおいて配置された電極列を側面視すれば直線状に配置されることとなる。本実施の形態のヘッドセット1はこの図8において特に後頭部と前頭部の電位を測定するために使用するものとする。後頭部の電極位置としてPO7、O1、Oz、O2、PO8の5つの位置にそれぞれ対応するように第1のフレーム21の電極E1〜E5を当接させるものとする。また、前頭部の電極位置としてF3、Fz、F4の3つの位置にそれぞれ対応するように第2のフレーム22の電極E6〜E8を当接させるものとする。これらの電極位置は主として視覚情報に関する脳波を検出するための位置となる。後頭部の5電極で腹側経路、前頭部の3電極と後頭部の5電極で背側経路の視覚情報を主として検出できる。
頭部の領域は概ね図6に示すように分けることができる。このような頭部に対してヘッドセット1を装着していく。使用するヘッドセット1は被験者の頭部のサイズに合わせて複数種類から選択される。尚、この装着操作は被験者自ら行ってもシステムを操作する作業者が行ってもよい。
ここで、もう少し厳密なヘッドセット1の取り付け位置について説明する。
第1のフレーム21の電極E1〜E5を後頭部に配置する場合には、まず電極E3を後頭結節を目標にそれよりも少しだけ上側に位置するように配置する。後頭結節は後頭部の左右方向中央の上記電極位置0zのすぐ下位置になる。ここで、後頭結節を基準とし、左右の耳介前点と鼻根を通る平面Aを想定する。平面Aは頭部正中面に直交する。また、第2のフレーム22の電極E6〜E8の電極列は平面B上に配置される。このとき平面Bは平面Aに対して平行となる。
このようなヘッドセット1の装着状態で第1のフレーム21のフォーク部21Bは頭部の側部において後頭部から側頭部と頭頂部の境界付近を通って前頭部に至っている。つまり、フォーク部21Bは側頭部領域を概ね回避しながら斜め前方上方に向かって平面Aに対して仰角をもってC方向に延出されるように配置されることとなる。本実施の形態では第1のフレーム21のベース部21Aの最も下側となる位置(図7におけるp点)を基準に30度程度の仰角とされている。第2のフレーム22は額よりも上位置まで延出されたフォーク部21Bから前頭部を包囲するように配置されることとなる。本実施の形態ではこのようにヘッドセット1を装着して脳波を計測する。
(1)ヘッドセット1を正しく装着した際には、後頭部においてPO7、O1、Oz、O2、PO8の5つの水平方向に並んだ位置に電極E1〜E5が当接される。そして、その電極E1〜E5の配置方向を側頭部方向に鉢巻き状に延長させると耳のすぐ上を通過することになる(図7のBの延長方向)。もしこのような方向にヘッドセット1があると、眼鏡やヘッドフォンのような耳に装着される装備を使用しにくくなってしまう。しかし、上記実施の形態ではヘッドセット1を正しく装着すると、ヘッドセット1を保持するために前方に延出されたフォーク部21Bは頭部の側部において後頭部から側頭部と頭頂部の境界付近を通って前頭部に至るように構成されているため、フォーク部21は耳付近には配置されなくなる。そのため、脳波を計測する際に被験者が眼鏡をかけて視覚を条件にした試験をしたり、ヘッドフォンを装着して聴覚を条件とした試験をしたりする際にそれら装備が邪魔になることがない。
(2)ヘッドセット1は後頭部の電極E1〜E5(特に中央の電極E3)とフォーク部21先端寄りのパッド35によって頭部にバランスよく三点支持されているため、ヘッドセット1が安定してしっかりと保持される。
(3)ヘッドセット1は前頭部で第2のフレーム22の電極E6〜E8が頭部に当接することとなり、ヘッドセット1の下方へのずれ落ちが防止されている。
(4)第1のフレーム21はベース部21Aの最下端となる位置に重錘部材となる差動アンプ5とバッテリーが配設されているため、ベース部21Aが後頭部にしっかりと押さえられることとなってヘッドセット1の安定性がよくなる。
(5)第1のフレーム21はベース部21Aの内周もフォーク部21Bの内周も幅方向においては湾曲していないため、幅方向に表面がスライドしやくすなっている。そのため、例えば内周面の拭き掃除や頭部に着脱する際に操作しやすくなっている。
・上記実施の形態では第1のフレーム21のフォーク部21Bは頭部の側部において後頭部から側頭部と頭頂部の境界付近を通るような仰角であったが、この角度は適宜変更可能である。例えば、眼鏡のつるが耳の基部上に乗ればいいわけだからそれほど大きな仰角でフォーク部21Bを延出する必要はない。また、ヘッドフォンのような大型の装備を装着する場合には大きな仰角がよい。このため仰角は15〜60度程度であることがよい。また特に20〜45度であることが好ましい。
・後頭部の電極E1〜E5は同一平面上に存在するが、同一平面上に存在しない位置(つまり、異なる高さの計測位置)に配置する電極を別途備えていてもよい。例えばヘッドセット1は図8において高さの違うlzの位置で計測するための電極を有するようにしてもよい。例えば、国際10−20電極法におけるP3、P4、O1、O2のような電極配置であっても本発明を適用することができる。
・後頭部の電極E1〜E5の数や間隔を変更するようにしてもよい。例えば、国際10−20電極法におけるT5、O1、O2、T6と電極を配置するようにしたりしてもよい。
・ヘッドセット1の第1のフレーム21や第2のフレーム22のサイズは上記は一例であって、実際には頭部の大きさに合わせたいくつかのサイズ違いが用意される。
・本発明の実施例は標準的な頭の大きさに合わせて設計したものである。頭の大きさは、女性が小さく男性が大きいなどの違いがあるため、それに対応するようにヘッドセット1の一部にエラストマー等を用いて可変長とするなどしても良い。また、第2のフレームの角度を可変にするなどしても良い。このようなアレンジは自由であり本発明に含まれる。
・ヘッドセット1の形状は上記実施の形態は一例である。ヘッドセット1を構成する第1のフレーム21や第2のフレーム22の素材は上記以外を使用することも可能である。
・ヘッドセット1は電極E1〜E5(特に中央の電極E3)とフォーク部21先端寄りのパッド35によって三点支持されるため、第2のフレーム22はなくともよい。
・第2のフレーム22の位置はフォーク部21間であれば先端寄り以外の位置でもよい。また、フォーク部21間には2本以上の第2のフレーム22を配置するようにしてもよい。あるいは図7の電極位置に電極を配置させるために第1のフレーム21や第2のフレーム22を基礎として様々な方向にフレームを設けるようにしてもよい。
・上記実施の形態における電極本体34の形状は上記以外であってもよい。
・上記実施の形態における電極本体34はヘッドキャップセット1に当初から埋め込みされて取り外しはできないような構成であるが、電極は別体で構成してフレーム側の取り付け孔に使用時に適宜装着するような構成であってもよい。
・上記実施の形態における電極本体34の素材は、上記の真鍮以外に導電性のよい素材であれば例えば金、銀、プラチナ等の金属(あるいはメッキとして)使用するようにしてもよい。金属以外であってもよい。
・その他本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。
Claims (20)
- 頭部に装着し、脳活動信号を受信する受信部材を介して脳活動信号を取得する頭部装着装置において、
頭部形状に沿って配置されるフレームを備え、前記フレームは後頭部位置に前記フレーム装着時の水平方向に沿って配置される側頭部に及ばない長さの第1の部分と、同第1の部分から頭部側面に沿って延出される第2の部分とを有し、
前記第1の部分の内面には少なくとも2つの前記受信部材が配設され、前記受信部材は頭部正中面に対して直交する面に沿って直列に配設された受信部材列を構成し、
前記第2の部分は、後頭結節及び左右の耳介前点の3点を通過する頭部周囲に形成される第1の仮想平面に対して前方に向かって仰角を有するように構成されるとともに、
前記第2の部分には前頭部側面に当接させるための当接領域を設けるようにし、頭部への装着状態で前記受信部材と前記当接領域によって保持されることを特徴とする脳活動検出用の頭部装着装置。 - 前記第1の部分は10−10法又は拡張10−20法におけるT7、T8付近に配置されないことを特徴とする請求項1に記載の脳活動検出用の頭部装着装置。
- 前記第2の部分は10−10法又は拡張10−20電極法におけるT7、T8付近に配置されないことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の脳活動検出用の頭部装着装置。
- 前記受信部材列は、前記第1の仮想平面に対して平行でかつ前記第1の仮想平面よりも下側とならない第2の仮想平面上に存在するように配置され、
前記第2の部分は、前記第2の仮想平面に対して前方に向かって仰角を有するように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の脳活動検出用の頭部装着装置。 - 前記第2の部分は前記第1の部分から左右の頭部側面に沿って延出されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の脳活動検出用の頭部装着装置。
- 前記受信部材列は前記第1仮想平面から7cm以下の隣接した位置に配置されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の脳活動検出用の頭部装着装置。
- 前記フレームを頭部に配置した状態で、前記第2の部分は装用者の側頭部と頭頂部の境界領域を通過して前頭部に至ることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の脳活動検出用の頭部装着装置。
- 前記受信部材は受信部材列の全長の中心位置において線対称となるように配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の脳活動検出用の頭部装着装置。
- 前記フレームの少なくとも一部は弾性を備え、前記第2の部分を頭部に対して離間する外方向に押し広げることで内側に復帰する付勢力を発生させることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の脳活動検出用の頭部装着装置。
- 前記第1の部分には重錘部材が配設されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の脳活動検出用の頭部装着装置。
- 前記重錘部材は前記第1の部分に形成した収容部に収容されていることを特徴とする請求項10に記載の脳活動検出用の頭部装着装置。
- 前記第2の部分は前記第1の部分の両側から左右一対で頭部側面に沿って延出されることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の脳活動検出用の頭部装着装置。
- 前記仰角は、15〜60度であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の脳活動検出用の頭部装着装置。
- 前記第2の部分間を連結し、頭部形状に沿って配置される1又は2以上の第2のフレームを備えることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の脳活動検出用の頭部装着装置。
- 前記第2のフレームの少なくとも1つは装着状態で前頭部に配設されることを特徴とする請求項14に記載の脳活動検出用の頭部装着装置。
- 前記第2のフレームの内面には1又は2つ以上の前記受信部材が配設されていることを特徴とする請求項14又は15のいずれかに記載の脳活動検出用の頭部装着装置。
- 前記受信部材は電極であり、前記脳活動信号は脳波であることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の脳活動検出用の頭部装着装置。
- 前記受信部材は磁場の変化を検出するための素子であり、前記脳活動信号は脳磁場であることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の脳活動検出用の頭部装着装置。
- 前記受信部材の隣接位置には近赤外線の送光部を備え、前記受信部材は近赤外線の受光部であり、前記脳活動信号は脳血流であることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の脳活動検出用の頭部装着装置。
- 請求項1〜19のいずれかに記載の脳活動検出用の頭部装着装置を備え、前記頭部装着装置によって得られた脳活動信号に基づいて脳活動を計測する脳活動計測システム。
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