無菌充填機は、通常、容器が供給され、供給された容器を殺菌する殺菌部、殺菌された容器に殺菌された内容物を無菌雰囲気で充填する充填部及び内容物が充填された容器を無菌雰囲気で密封する密封部を備える。しかし、無菌充填される容器により無菌充填機の構成は異なる。
例えば容器がボトルの場合、無菌充填機にプリフォームが供給され、プリフォームを成形温度まで加熱する加熱部、加熱されたプリフォームを容器に成形する成形部、成形されたボトルを検査する検査部、検査されたボトルを殺菌するボトル殺菌部、殺菌されたボトルをエアリンスするエアリンス部、殺菌されたボトルに内容物殺菌装置により殺菌された内容物を無菌雰囲気で充填する充填部、内容物が充填されたボトルを殺菌された蓋材により無菌雰囲気で密封する密封部及び密封されたボトルを排出する排出部からなる。ボトルの無菌充填機は検査部及びエアリンス部を備えなくても構わない。また、供給されたプリフォームを加熱する前に殺菌するプリフォーム殺菌部を有する無菌充填機もある。プリフォーム殺菌部を有する無菌充填機はボトル殺菌部を備えなくても構わない。
また、紙容器の場合、無菌充填機にスリーブが供給され、紙容器の外面を殺菌すると共に底部を成形する底部成形部、底部が成形された紙容器の内面を殺菌する殺菌部、内面が殺菌された紙容器に殺菌された内容物を充填する充填部、内容物が充填された紙容器を密封する密封部を備える。他の容器についても無菌充填機の構成は異なる。
無菌充填機を構成する各部はチャンバーにより遮蔽されている。ボトルの場合、加熱部と成形部は単一のチャンバーにより遮蔽されても構わない。また、密封部と排出部も単一のチャンバーにより遮蔽されても構わない。さらに、充填部、密封部及び排出部が単一のチャンバーにより遮蔽されても構わない。
紙容器の場合、底部成形部、殺菌部、充填部及び密封部は単一のチャンバーにより遮蔽される。しかし、底部成形部、殺菌部、充填部及び密封部をそれぞれ異なるチャンバーにより遮蔽しても構わない。無菌充填機が対象とする容器により各部の構成は異なるが、さらに各部を遮蔽するチャンバーも様々である。
ボトルの無菌充填機の稼働中には、ボトル殺菌部のチャンバー、エアリンス部のチャンバー、充填部のチャンバー、密封部のチャンバー及び排出部のチャンバーは、除菌フィルタにより無菌化された無菌エアが供給され、各チャンバー内の圧力を陽圧にすることで、無菌充填機の無菌性が維持される。陽圧に保持する圧力は、充填部のチャンバー内が最も高く、エアリンス部のチャンバー、ボトル殺菌部のチャンバーと上流に行くほど低く設定される。また、例えば、充填部のチャンバー内の圧力を20Pa〜40Paとすると、他のチャンバー内の圧力は充填部のチャンバー内の圧力よりも低い。プリフォーム殺菌部を有する無菌充填機は、加熱部及び成形部もチャンバーに覆われ、加熱部チャンバー内及び成形部チャンバー内には無菌エアが供給され陽圧に保持される。
ボトル殺菌部のチャンバー、エアリンス部のチャンバー、充填部のチャンバー、密封部のチャンバー及び排出部のチャンバー内は、無菌充填機の稼働前にCOP処理及びSOP処理が行われる。そのため図1に示すように、無菌充填機のチャンバー1内には洗浄液及び過酢酸を含む殺菌剤を噴射する回転式ノズル2及び過酸化水素を含む殺菌剤を噴射する二流体ノズル3が設けられる。回転式ノズル2とは、送液圧により回転しながら供給される液体をチャンバー1内に噴射するノズルである。また、二流体ノズル3とは過酸化水素を含む殺菌剤と圧縮エアを供給し、圧縮エアの圧力により過酸化水素を含む殺菌剤をチャンバー1内に噴射するものである。チャンバー1内に設けられるノズルは回転式ノズル2及び二流体ノズル3に限定されるものではなく、洗浄剤、過酢酸を含む殺菌剤、無菌水及び過酸化水素を含む殺菌剤をチャンバー1内に噴射できるものであれば、他の構造のノズルでも構わない。
ボトルの場合、ボトル殺菌部のチャンバー内は無菌充填機稼働中に殺菌剤が噴霧されるため、SOP処理されなくても構わない。プリフォーム殺菌部を有する無菌充填機は、加熱部及び成形部を覆うチャンバー内のSOP処理が行われる。
ボトル以外の容器を対象とする無菌充填機は、殺菌部、充填部及び密封部が単一のチャンバーにより遮蔽されている例があり、この場合、単一のチャンバー内についてCOP処理及びSOP処理が行われる。
各チャンバー内をSOP処理する前に内容物が充填される充填部のチャンバーから下流のチャンバーはCOP処理される。内容物がチャンバー内に飛散して汚染が激しいチャンバー内は温水、熱水、アルカリ性洗浄液又は酸性洗浄液等の洗浄液を噴射することで、洗浄される。成形部及びボトル殺菌部のチャンバーは汚染が限定的であるため、COP処理しなくても構わない。
無菌充填機により内容物を容器に充填する連続運転の後、内容物を変更する場合又は、長時間の連続運転により、チャンバー内が内容物の飛沫により汚染された場合、無菌充填機の運転を停止して、無菌充填機のチャンバー内のCOP処理及びSOP処理を行う。内容物による汚染がないチャンバー内はSOP処理のみを行う。
内容物により汚染されたチャンバー1内を洗浄するCOP処理のため、先ずチャンバー内に、例えばアルカリ性洗浄液の噴射を行う。アルカリ性洗浄液とは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基性化合物、又はエタノールアミン、ジエチルアミン等の有機塩基性化合物を含み、この他に、有機酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、エチレンジアミン四酢酸等の金属イオン封鎖剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類等の非イオン系界面活性剤、クメンスルホン酸ナトリウム等の可溶化剤、ポリアクリル酸等の酸系高分子の金属塩、腐食抑制剤、防腐剤、酸化防止剤、分散剤、消泡剤などを含んで構わない。
アルカリ性洗浄液の噴射を行った後に、酸性洗浄液の噴射を行っても構わない。酸性洗浄液とは、塩酸、硝酸、リン酸等の無機酸又は酢酸、蟻酸、オクタン酸、シュウ酸、クエン酸、コハク酸、グルコン酸等の有機酸であり、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類等の非イオン系界面活性剤、クメンスルホン酸ナトリウム等の可溶化剤、ポリアクリル酸等の酸系高分子、腐食抑制剤、防腐剤、酸化防止剤、分散剤、消泡剤などを含んでも構わない。アルカリ性洗浄液の噴射を行っても内容物による汚染が洗浄されない場合、酸性洗浄液の噴射を行う。また、アルカリ性洗浄液の噴射を行わずに、酸性洗浄液を噴射させることだけでも構わない。アルカリ性洗浄液の噴射を行うこと、酸性洗浄液の噴射を行うことは、交互に繰り返し行っても構わない。
アルカリ性洗浄液及び酸性洗浄液を使用せずに、常温水、温水、熱水により洗浄しても構わない。また、アルカリ性洗浄液及び酸性洗浄液により洗浄した後に、アルカリ性洗浄液及び酸性洗浄液の洗い流しを兼ねて常温水、温水、熱水により洗浄しても構わない。これらの洗浄液の使用についてはその組み合わせ及び順序はどのようなものであっても構わない。ここで、温水とは40℃以上100℃未満であり、熱水とは100℃以上130℃までの範囲の温度の水である。
アルカリ性洗浄液を50℃以上に加温すると殺菌作用も有するため、50℃以上に加熱してチャンバー1内にアルカリ性洗浄液を噴射することで、殺菌効果も期待できる。
チャンバー1内に洗浄液を噴射させた後に、容器を搬送する搬送装置を駆動させて、搬送装置に付着する洗浄液を除去する。洗浄液が例えばアルカリ性洗浄液又は酸性洗浄液の場合、さらに常温水、温水、熱水である水を洗浄液として使用し、アルカリ性洗浄液又は酸性洗浄液を洗い流しても構わない。ここで水として無菌水を使用しても構わない。菌を含む水の噴射によりチャンバー内が菌により汚染されることを防止するためには、無菌水の使用が好ましい。無菌水とは水を121.1℃以上で4分以上加熱するか、無菌化フィルタを通すことで無菌化させた水である。次に行う殺菌剤の噴射に過酢酸を含む殺菌剤を使用する場合、水は一般水で構わない。過酢酸を含む殺菌剤によりチャンバー1内に残存する水が殺菌されるためである。
アルカリ性洗浄液又は酸性洗浄液によりチャンバー内を洗浄した後に、チャンバー内に噴射する水は20℃〜100℃、好ましくは60℃〜100℃であるが、水の温度を60℃以上とすることにより、洗浄能力の向上以外にCOP処理によるアルカリ等の薬剤で損傷した耐熱性カビや耐熱性酵母に対して、殺菌効果が期待される。
ボトルを搬送する搬送装置の駆動について図2により説明する。図2は、本発明の実施の形態に係るボトルの無菌充填機の充填部チャンバー4内の概略平面図である。図2は充填部、密封部及び排出部が単一の充填部チャンバー4により遮蔽されている無菌充填機の一部を示す。殺菌された容器であるボトル5が、エアリンス部を遮蔽するエアリンス部チャンバー6内のホイール10から充填部チャンバー4内に搬送される。搬送されるボトル5は、上流側から下流側へと、導入ホイール11、充填ホイール12、中間ホイール13、キャッパーホイール14、排出ホイール15の順に並べられる。これらホイール11〜15は互いに略同じ周速度で回転運動を行うように駆動される。
上記各ホイール11〜15の回りには、ボトル5の首部をクランプ・アンクランプする鋏状のグリッパが所定のピッチで配置される。グリッパは各ホイール11〜15と共に各ホイール11〜15の中心軸の回りを旋回運動可能である。
グリッパは、公知の構造であるから詳しくは説明しないが、ホイール同士の隣接箇所でカム等の作用により開閉動作することにより、上流側ホイールのグリッパから下流側ホイールのグリッパへとボトル5を受け渡すようになっている。これにより、ボトル5は、導入ホイール11から充填ホイール12、キャッパーホイール14等を経て排出ホイール15へと連続走行する。
充填ホイール12と充填ホイール12と共に回転する充填ノズルは基台上に設置された垂直軸に水平に取り付けられる充填ホイール12に接続され、充填ホイール12の回りにはグリッパが備えられる。
また、充填ホイール12の回りには、各グリッパに対応して飲料等をボトル5に充填するためのパイプ状の充填ノズルが複数本設けられる。各充填ノズルは、グリッパに把持されたボトル5の口部に充填ノズルの下端の口が臨むように垂直に配置される。充填ノズルは充填ホイール12に対して固定されたものであってもよいが、垂直方向に往復運動可能なものであってもよい。垂直方向に往復運動可能な場合は、充填ノズルをボトル5内に挿入して内容物である飲料等をボトル5内に供給することができる。
飲料等は殺菌された後に図示しない貯留タンクに貯留され、そこから管路を通って充填ノズルに至るようになっており、貯留タンクから供給される飲料等を旋回運動する充填ノズルに配分するために、垂直軸には上部ロータリージョイント及び上部マニホルドが設けられる。貯留タンク内の飲料等は、垂直軸の空室内に入り、上部ロータリージョイント、上部マニホルドを経て充填ノズルからボトル5内に吐出される。
なお、充填ノズルには飲料等を所望量だけボトル5内に供給するためのバルブが設けられている。無菌充填機には、貯留タンクから充填ノズルに至る飲料供給系配管内を洗浄するCIP処理を行うCIP処理装置及び殺菌するSIP処理を行うSIP処理装置が設けられる。CIP処理及びSIP処理を行うために、充填ノズルの下端の口を開閉するためのカップ状の開閉体が設けられる。開閉体は、充填ホイール12の回りに、各グリッパ及び充填ノズルに対応して配置される。
開閉体は、カム装置、エアシリンダ装置等によって充填ホイール12の半径方向と垂直方向とに移動可能であり、充填ノズルから飲料等をボトル5内に供給する時は半径方向内側へと後退し、充填ノズルを遮蔽する時は充填ノズルの直下へと半径方向外側に移動し、続いて上昇して充填ノズルの口を塞ぐようになっている。
また、CIP処理装置を構成するものとして、開閉体のほか、下部マニホルドと、下部ロータリージョイントと、洗浄液タンクと、ポンプとを備える。下部ロータリージョイントは、垂直軸に取り付けられる。下部マニホルドは、基台側に固定される。これら開閉体、上部マニホルド、下部マニホルド等の間は管路で結ばれる。これらのCIP処理装置は充填ホイール12と共に回転する。
図2に示したキャッパーホイール14の回りには、図示しないが、飲料等が充填されたボトル5の口部にキャップをねじ込むためのキャッパーが設けられる。キャッパーは、キャッパーホイール14と共に旋回運動しつつ殺菌処理済のキャップをボトル5の口部に螺着するようになっている。
洗浄液により洗浄されたチャンバー内のホイール11〜15の回転を行う。充填部チャンバー4内への洗浄液の噴射後にボトル5を搬送するホイール11〜15を回転させて、ホイール11〜15を回転させることにより発生する遠心力により、ホイール11〜15及びホイール11〜15と共に回転する装置に付着する洗浄液を除去する。
ホイール11〜15の回転は、少なくとも無菌充填機の運転時のホイール回転速度の半分以上、好ましくは製造時の運転速度まで回転させる。各チャンバー内のホイールを同時に略同回転数で回転させる。チャンバーごとにモーターを備え、ホイールの回転をチャンバーごとに制御できる場合、チャンバーごとに回転させる。各チャンバーのCOP処理及びSOP処理の段階に応じて回転させることで、各チャンバーのCOP処理及びSOP処理を迅速に進めることができる。ホイールの回転を行うことで、チャンバー内の装置及び壁面に付着した無菌水を迅速に除去することができる。飲料供給系配管内のCIP処理又はSIP処理が行われているときは、充填ホイール12のホイールのクラッチを切って、充填ホイール12以外のホイールを回転させても構わない。
次に充填部チャンバー4内に殺菌剤を噴射させて、充填部チャンバー4内の装置及び壁面の殺菌を行うが、過酢酸を含む殺菌剤の噴射を行う場合、チャンバー内に残存している水により過酢酸を含む殺菌剤中の過酢酸の濃度が低下し、殺菌効果が低下することを防止するためである。過酢酸を含む殺菌剤の噴射を行う前に、さらに充填部チャンバー4内に加熱エアの吹き込みを行い、残存する水を完全に除去することが好ましいが、長時間を要する。ボトル5の搬送装置であるホイール11〜15の回転を行うことで、ホイール11〜15及びホイール11〜15に付属する装置に付着する洗浄液を除去し、過酢酸を含む殺菌剤の殺菌効果の低下を抑制することができる。
ホイール11〜15を回転させる場合、回転、停止を繰り返しても構わない。回転及び停止を繰り返すことで加速度が加わり、ホイール11〜15及びホイール11〜15に付属する装置に付着する洗浄液の除去が効率的に行われる。また、キャッパーのスピンドルを上下させ、スピンドルを保護しているベローズに付着した残水を除去させても良い。
容器を搬送する搬送装置を駆動させることで洗浄水を除去することは、ボトルの無菌充填機において、加熱部、成形部、殺菌部、エアリンス部等の充填部、密封部及び排出部以外の部を遮蔽するチャンバー内で行われる。充填部チャンバー4以外のチャンバーにおいてもホイールを回転させるが、加熱部ではプリフォームを搬送する無端チェーンを運転することで、無端チェーン及び付属するスピンドルに付着した無菌水を除去することができる。成形部ではホイールとこれに付属する金型、延伸ロッド、バルブブロック等に付着する無菌水をホイールの回転を行うことで除去することができる。
容器を搬送する搬送装置を駆動させることで洗浄水を除去する際に、無菌充填機チャンバー内にエアを吹き込むことが好ましい。チャンバー内に無菌加熱エアを吹き込むことにより洗浄水の除去を促進することができ、短時間に洗浄水の除去を行うことができる。チャンバー内に吹き込むエアは加熱することが好ましい。さらに、チャンバー内に吹き込むエアは無菌エアでも構わない。これは、図1に示すチャンバー1の上部に設けられる無菌加熱エア供給装置16により、無菌加熱エアをチャンバー1内に供給することにより行われる。無菌加熱エアは、ブロア17によるエアを加熱装置18により加熱し、フィルタ19により無菌化することで得られる。無菌加熱エア供給装置16はブロア17、加熱装置18及びフィルタ19から成る。
洗浄液の噴射によりCOP処理が行われたチャンバー内の洗浄液を除去した後に、チャンバー内はSOP処理が行われる。ボトルの無菌充填機において、プリフォーム殺菌部を有する無菌充填機の加熱部及び成形部を覆うチャンバー内は内容物による汚染がないため、COP処理を行わずSOP処理のみ行っても構わない。SOP処理としては、過酢酸を含む殺菌剤をチャンバー内に噴射後、無菌水の噴射により過酢酸を含む殺菌剤を洗い流す、過酸化水素を含む殺菌剤をチャンバー内に噴射後、過酸化水素を含む殺菌剤を乾燥により除去することが行われる。
また、過酢酸を含む殺菌剤の噴射と過酸化水素を含む殺菌剤の噴射を交互に行うこともある。例えば、過酢酸を含む殺菌剤を噴射後、無菌水により過酢酸を含む殺菌剤を洗い流し、容器を搬送する搬送装置を駆動させて無菌水を除去した後、過酸化水素を含む殺菌剤を噴射し、過酸化水素を含む殺菌剤を乾燥により除去することである。
過酸化水素を含む殺菌剤を噴射し、過酸化水素を含む殺菌剤を乾燥により除去し、過酢酸を含む殺菌剤を噴射後、無菌水により過酢酸を含む殺菌剤を洗い流す工程からなるSOP処理もある。過酢酸を含む殺菌剤の噴射と過酸化水素を含む殺菌剤の噴射を交互に行うだけでなく、それぞれを複数回行っても構わない。
過酢酸を含む殺菌剤噴射後に無菌水を噴射し、その後過酸化水素を含む殺菌剤を噴射する場合、無菌水を噴射した後に容器を搬送する搬送装置を駆動させて無菌水を除去する。過酢酸を含む殺菌剤によるチャンバー内の殺菌は、過酢酸を含む殺菌剤が接触した箇所は完全に行われる。しかし、殺菌剤が入り込めない微細な隙間や、噴射が届かない箇所、積極的に過酢酸を含む殺菌剤で殺菌できない箇所(たとえばHEPAフィルター)や過酢酸耐性菌(パエニバチルス属やセレウス菌など)は殺菌されないおそれがある。よって、過酸化水素を含む殺菌剤から発生する過酸化水素ガスにより過酢酸を含む殺菌剤では殺菌されないおそれのある、殺菌剤が入り込めない微細な隙間や、噴射が届かない箇所を殺菌するために、過酢酸を含む殺菌剤の噴射と過酸化水素を含む殺菌剤の噴射を交互に行っても構わない。
ここで、過酢酸を含む殺菌剤とは、過酢酸が主成分である殺菌剤であり、過酢酸濃度が500ppm以上で、好ましくは1000ppm〜5000ppmである。他に少なくとも過酸化水素及び酢酸を含む。このとき、過酢酸を含む殺菌剤を40℃〜95℃、好ましくは50℃〜95℃に加温することで殺菌効果が高まる。
チャンバー内に過酢酸を含む殺菌剤の噴射を行った後に、チャンバー内に無菌水の噴射を行う。無菌水の噴射を行うことで、過酢酸を含む殺菌剤をチャンバー内から洗い流す。ここでは、過酢酸を含む殺菌剤を洗い流す水は無菌水でなければならない。過酢酸を含む殺菌剤により殺菌された状態を維持するためである。
過酢酸を含む殺菌剤が無菌水により洗い流されたチャンバー内の容器を搬送する搬送装置を駆動させる。ボトルの無菌充填機では、チャンバー内への無菌水の噴射後にボトル5を搬送するホイール11〜15を回転させて、ホイール11〜15を回転させることにより発生する遠心力により、ホイール11〜15及びホイール11〜15と共に回転する装置に付着する無菌水を除去する。
無菌水を除去した後に、無菌充填機チャンバー内に過酸化水素を含む殺菌剤の噴射を行う。チャンバー内に過酸化水素を含む殺菌剤の噴射を行う前に、チャンバー内を出来るだけ乾燥させることが好ましい。濡れた状態の場合、残存する無菌水に過酸化水素が溶解し、過酸化水素の濃度が低下するため、殺菌能力が発揮されないおそれがあるためである。
各チャンバー内に残存する無菌水を短時間で効率良く除去するために、各チャンバー内のホイールを回転させるが、ホイールを回転させる回転速度は、生産時の運転速度まで上げることが好ましい。また、回転と停止を繰り返し行っても構わない。ホイールを回転させる際に、外部から菌が侵入しないように、無菌エアを供給しながら行うことが好ましい。さらに、無菌水の除去を速めるために無菌エアを加熱することが、さらに好ましい。無菌エアは50℃から200℃とすることができる。ホイールを回転させることで、ホイール及びホイールと共に回転する装置に付着する無菌水を除去することができるが、ホイールを回転させることで発生するホイール周辺の空気の流れがチャンバーの壁面に衝突することで、壁面に付着する無菌水の下方向への流れを促進し、壁面に付着する無菌水の除去も早めることができる。無菌エアを供給することにより、充填部チャンバー4内の圧力を30Pa〜200Paまで上げると無菌水の除去が効率的に行われる。また、他のチャンバー内の圧力も同様に上げることで無菌水の除去が効率的に行われる。
上述したように、ホイール回転中に無菌加熱エアをチャンバー内に吹き込むことが好ましいが、ホイールの回転を停止した後にも無菌加熱エアをチャンバー内に吹き込むことで、チャンバー内に残存する無菌水の除去を早めることができる。
チャンバー内の無菌水を除去した後に、チャンバー内に過酸化水素を含む殺菌剤の噴射を行う。噴射させる過酸化水素を含む殺菌剤は、過酸化水素を20質量%〜65質量%の範囲で含むことが適当である。20質量%未満では殺菌力が不足する場合があり、65質量%を超えると安全上、扱いが困難となる。過酸化水素を含む殺菌剤の噴射を行うことで、過酢酸を含む殺菌剤の噴射により殺菌できなかった箇所及び過酢酸耐性菌を含む菌を殺菌する。
チャンバー内に過酸化水素を含む殺菌剤の噴射を行った後に過酸化水素をガス化させてチャンバー内を殺菌するために、チャンバー内に無菌加熱エアの吹き込みを行う。無菌加熱エアは50℃から200℃とすることができる。チャンバー内への無菌加熱エアの吹き込みによりチャンバー内に残存する過酸化水素を含む殺菌剤中の過酸化水素がガス化し、過酢酸を含む殺菌剤が入り込めなかった微細な隙間や、噴射が届かない箇所や過酢酸耐性菌が殺菌される。
チャンバー内への無菌加熱エアの吹き込みにより、チャンバー内の過酸化水素を含む殺菌剤が除去されたことを確認した後に、残存する過酸化水素を除去し、無菌加熱エアの吹き込みにより昇温したチャンバー内を冷却するために常温の無菌エアをチャンバー内に吹き込むことで、チャンバー内の換気・冷却を行う。
これまで、ボトルの無菌充填機を中心に述べてきたが、ボトル以外のカップ、トレー、紙容器又はパウチのような容器の無菌充填機においても、容器を搬送する搬送装置を駆動させることは洗浄液又は無菌水の除去を短時間に行うため、無菌充填機の生産性を向上させることができる。
図3に本発明の実施の形態に係るトレーの無菌充填機の概略立面図を示す。図3に示す無菌充填機は充填する容器がトレーであるが、フランジを有するカップ形状の容器であっても同様の形態の無菌充填機である。無菌充填機に供給されるトレー20は、リテーナ21に保持される。リテーナ21は平板部を有し、平板部にトレー20が嵌り込む嵌入孔が形成されている。トレーは、容器部がリテーナ21の嵌入穴に挿入されることにより、トレー20のフランジ22が平板部に保持される。リテーナ21は多数用意され、トレーをフランジ22の面と水平に連続搬送させる。リテーナ21は連続走行する搬送装置に取り付けられる。連続走行する搬送装置とは、スプロケットホイール23a、23b間に水平に掛け渡される無端チェーン24に所定の間隔で取り付けられる。無端チェーン24の駆動により、リテーナ21を保持しつつ連続走行することで、トレー20が無菌充填機内で搬送される。
図3に示す無菌充填機のチャンバー25内を搬送されることで、トレー20は殺菌され、内容物が充填され、密封される。チャンバー25は殺菌部、充填部及び密封部をチャンバー25内に備える。チャンバー25に供給されるトレー20はリテーナ21に保持され、予備加熱用ノズル26により上下から熱風を吹き付けられることで予備加熱される。予備加熱されたトレー20は、殺菌剤吹き付けノズル27により上下から殺菌剤が吹き付けられることで殺菌される。殺菌剤が吹き付けられたトレー20は、所定時間保持された後、乾燥エアノズル28から吹き付けられる無菌加熱エアによりトレー20の表面に付着する殺菌剤が活性化されることで殺菌され、殺菌剤は乾燥により除去される。その後、充填装置29により殺菌された内容物がトレー20に充填され、内容物が充填されたトレー20は、密封装置により殺菌された蓋材がトレー20に熱シールされることにより密封される。密封されたトレー20はチャンバー25から排出される。
チャンバー25内は無菌充填機を運転する前に、COP処理及びSOP処理が行われる。この過程において、COP処理の後の洗浄水の除去又はSOP処理における無菌水の除去を行う際に、トレー20を搬送する搬送装置を駆動させて、搬送装置に付着する洗浄液及び無菌水を除去する。すなわち、トレー20を保持していないリテーナ21を搬送する無端チェーン24を駆動させる。無端チェーン24を駆動させることで、無端チェーン24及びリテーナ21に付着する洗浄液又は無菌水を短時間に除去することができる。
図4に本発明の実施の形態に係る紙容器の無菌充填機の概略立面図を示す。少なくとも紙を積層してなる壁面を有すると共に断面が略矩形状の筒状体であるスリーブ31はスリーブ供給装置32により、チャンバー33の中に導入される。スリーブ1は閉塞するために必要な部分を残し、ターレット34に設けられたマンドレル35に挿入される。さらに、殺菌装置36により、マンドレル35が挿入されていないスリーブ31の閉塞される側の内面及び、スリーブ31の外面が殺菌される。殺菌後、残存する殺菌剤は乾燥装置37により吹き付けられる熱風により除去される。
さらに、スリーブ31は、紙容器の底部を形成する罫線を底部くせ折り装置により折り込まれ、乾燥装置37により熱せられていた部分が底部シール装置38により圧着される。このようにしてスリーブ31は、開放端の一方の面を閉塞され、有底筒状の紙容器に成型される。
成型された紙容器はコンベア39により間欠的に搬送されながら、殺菌剤のガス生成器40によって生成された殺菌剤のガスが、ノズルから紙容器の内面に噴射される。紙容器に吹き付けられた殺菌剤は、ホットエアノズル41から紙容器の内面に吹き付けられるホットエアにより除去される。殺菌された紙容器には、別に設けられた装置により殺菌された内容物が、充填装置42により充填される。さらに、頭部くせ折り装置により紙容器の頭部の罫線が折り込まれ、頭部加熱装置43により内面が加熱され、頭部シール装置44により圧着され、紙容器は密封される。密封された紙容器はチャンバー33から排出される。図4に示す無菌充填機のチャンバー33内を搬送されることで紙容器は成形され、成形された紙容器は殺菌され、内容物が充填され、密封される。チャンバー33は内部に、紙容器成形部、殺菌部、充填部及び密封部を備える。
チャンバー33内は無菌充填機を運転する前に、COP処理及びSOP処理が行われる。この過程において、COP処理の後の洗浄液の除去又はSOP処理における無菌水の除去を行う際に、紙容器を搬送する搬送装置を駆動させて、搬送装置に付着する洗浄液及び無菌水を除去する。すなわち、マンドレル35が備えられるターレット34をマンドレル35にスリーブが挿入されていない状態で回転させ、紙容器を保持しない紙容器を搬送するコンベア39を駆動させる。ターレット34及びコンベア39を駆動させることで、ターレット34及びコンベア39に付着する洗浄液又は無菌水を短時間に除去することができる。
図5に本発明の実施の形態に係るパウチの無菌充填機の概略立面図を示す。図5に示すパウチの無菌充填機は、フィルムを供給し、供給されたフィルムを殺菌し、パウチを成形すると共にパウチに殺菌された内容物を充填し、密封する装置である。したがって、包装用フィルム45の走行手段と、包装用フィルム45の両面に殺菌剤を吹き付けるノズル46とを具備する。包装用フィルム45の走行手段は、包装用フィルム45の繰り出しロールから包装用フィルム45を連続走行させるための駆動装置であり、インフィードローラ、包装用フィルム45の走行路上に配置された各種のガイドローラ、包装用フィルム45をその両面から挟むガイドローラ等が含まれる。
繰り出しロールから繰り出された包装用フィルム45を殺菌剤吹き付けノズル46に案内するガイドローラ及び包装用フィルム45に殺菌剤を吹き付ける前に包装用フィルム45を加熱する予備加熱装置47及び包装用フィルム45に殺菌剤を吹き付けた後に包装用フィルム45の両面に加熱エアを吹き付ける加熱エア吹き付け装置48が設けられる。
殺菌された包装用フィルム45はローラ49により方向転換され、製袋充填部50に搬送される。製袋充填部50はチャンバー51により遮蔽され、無菌充填機を運転する前にチャンバー51内はCOP処理及びSOP処理が行われる。製袋充填部50に搬送された包装用フィルム45は、ローラ52により搬送方向が下方向に変更される。その後、包装用フィルム45はフォーマー53により搬送方向に沿った両側縁を互いに重ね合わせるように折り込まれる。折り込まれた包装用フィルム45は一対の縦シール用ローラ54(図5では手前側のみ図示されている。)の間を通過する。その際、縦シール用ローラ54により包装用フィルム45の両側縁の重複部分が加熱溶着され、それにより包装用フィルム45が筒状に形成される。その後、包装用フィルム45は、一対の横シール用ローラ55により搬送方向に対して一定の間隔で加熱溶着されて横方向にシールされる。横シールされる筒状となっている包装用フィルム45には、供給管56から殺菌された各種の内容物が連続的に供給されており、横シールは内容物の存在する箇所を液中シールすることとなる。その後、各パウチにはノッチが適宜形成され、さらに横方向にミシン目が入れられるか、又は切断ローラ57により横方向シール部がカットされてパウチが相互に分離される。カットされたパウチは排出部に落下する。
チャンバー51内は無菌充填機を運転する前に、COP処理及びSOP処理が行われる。SOP処理が行われる際、チャンバー51内には包装用フィルム45がチャンバー51内に通される。SOP処理されたチャンバー51内にチャンバー51を開放しないで包装用フィルム51を通すことができないためである。この過程において、COP処理の後の洗浄水の除去又はSOP処理における無菌水の除去を行う際に、包装用フィルム45を搬送する包装用フィルムをニップして搬送するローラ、縦シールローラ54、横シールローラ55及び切断ローラ57は包装用フィルム45を搬送する搬送装置であり、この搬送装置を駆動させて、搬送装置に付着する洗浄液及び無菌水を除去する。すなわち、成形用フィルム45の搬送装置であるローラに成形用フィルムを繰り出しながら、駆動させることで、搬送装置であるローラに付着する洗浄液又は無菌水を短時間に除去することができる。このとき、包装用フィルム45は殺菌剤吹き付け装置46により殺菌剤が吹き付けられてチャンバー51内に搬送される。チャンバー51内のSOP処理を確実に行うためには、チャンバー51内に搬送される包装用フィルム45を殺菌してチャンバー51内に搬送されなければならない。
本発明は以上説明したように構成されるが、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々変更可能である。