以下、本発明の実施の形態を、送電装置が道路に配置され、受電装置が電気自動車に搭載された場合を例にして、図面を参照して具体的に説明する。
図1は、第1実施形態に係る非接触電力伝送システム1Aを示す概略図である。同図(a)は、非接触電力伝送システム1Aの全体構成を示しており、平行線路22が敷設された道路上を走行する電気自動車Vを上から見た状態を示している。同図(b)は、電気自動車Vの側面を見た状態(内部の記載を一部省略)を示している。
図1に示すように、非接触電力伝送システム1Aは、送電装置2と受電装置3とを備えている。送電装置2は、高周波電力を発生させ、発生させた高周波電力を非接触で受電装置3に送電する。受電装置3は、電気自動車Vに搭載されており、送電装置2から送電された高周波電力を非接触で受電する。受電装置3は、受電した高周波電力を直流電力に変換して負荷4に供給する。負荷4は、例えば蓄電デバイスであり、受電装置3から供給される直流電力を蓄電し、電気自動車Vを駆動するモータなどに電力を供給する。なお、電気自動車Vは、蓄電デバイスを備えず、受電装置3から供給される直流電力でモータなどを直接駆動するようにしてもよい。この場合は、モータなどが負荷4に相当する。
送電装置2は、高周波電源装置21、平行線路22、および共振コンデンサ23を備えている。
高周波電源装置21は、高周波電力を平行線路22に供給するものである。高周波電源装置21は、所定周波数f0の一定の大きさの高周波電力を出力する。本実施形態では、所定周波数f0は、85kHzである。なお、高周波電力の周波数は限定されない。高周波電源装置21は、図示しないAC−DCコンバータ回路およびインバータ回路を備えている。AC−DCコンバータ回路は、商用電源などから入力される交流電力を直流電力に変換して、インバータ回路に出力する。インバータ回路は、AC−DCコンバータ回路から入力される直流電力を所定周波数f0の高周波電力に変換する。高周波電源装置21は、出力端子21a,21bを介して、平行線路22に高周波電力を出力する。
平行線路22は、高周波電源装置21から供給される高周波電力を受電装置3に送電するものであり、高周波電源装置21が出力する電力を送出する送電コイルとして機能する。平行線路22は、線路22a,22b,22c,22dを備えている。
線路22a,22b,22c,22dは、帯状の導体である。線路22a,22b,22c,22dとして、厚さ(断面における短手方向の寸法)0.1mm〜1cm程度、幅(断面における長手方向の寸法)1cm〜10cm程度の銅板が用いられる。本実施形態では、厚さ0.4cm、幅2.5cmの銅板が用いられている。なお、線路22a,22b,22c,22dの各寸法は限定されず、素材も限定されない。線路22a,22b,22c,22dは、幅方向を道路の路面に平行にして、互いに平行となるように、路面上に敷設されている。なお、路面上に敷設されるのではなく、路面付近に埋設されてもよい。
線路22a,22b,22c,22dは、電気自動車Vが走行する道路に沿って延びている。線路22aおよび線路22cの一方端(図1においては左端)は、共振コンデンサ23を介して、高周波電源装置21の出力端子21aに接続している。つまり、線路22aと線路22cとは、互いに並列に接続されている。また、線路22bおよび線路22dの一方端(図1においては左端)は、高周波電源装置21の出力端子21bに接続している。つまり、線路22bと線路22dとは、互いに並列に接続されている。線路22a,22b,22c,22dの他方端(図1においては右端)は、短絡されている。なお、各他方端は、絶縁されていてもよいし、特定のインピーダンスを介して接続されていてもよい。出力端子21aは本発明の「第1の出力端子」に相当し、出力端子21bは本発明の「第2の出力端子」に相当する。また、線路22a,22b,22c,22dは、それぞれ、本発明の「第1の線路」、「第2の線路」、「第3の線路」、「第4の線路」に相当する。
線路22a,22b,22c,22dは、道路に沿って配置されている。線路22aおよび線路22bは、路面上で互いに平行になるように配置されている。線路22cは、路面上で、線路22aと線路22bとの間の線路22a寄りに、線路22aに平行になるように配置されている。線路22dは、路面上で、線路22cと線路22bとの間に、線路22bに平行になるように配置されている。つまり、平行線路22は、線路22a,22bからなる従来の平行二線路の内側に、これらに平行な線路22c,22dを追加したものである。以下では、平行線路22を用いる方式を、従来の平行二線路を用いる平行二線式と対比して説明する場合、「平行四線式」と記載する場合がある。
線路22aと線路22bとの間隔(各線路の中心軸間の距離)Lxtは、数10cm〜2m程度であり、使用される電気自動車Vの車幅などから適宜設計される。本実施形態では、間隔Lxtは、80cmである。なお、間隔Lxtは限定されない。ただし、後述するシミュレーションで説明するように、受電コイル31の横ずれに対して伝送効率の低下を抑制するという観点からは、間隔Lxtを大きくするのが望ましい。一方、間隔Lxtを大きくすると、広い範囲で磁束を発生させることになり、高周波電源装置21はより大きい電力を出力する必要がある。したがって、間隔Lxtは、後述する受電装置3の受電コイル31の短辺の寸法(60cm)の100〜150%とするのが望ましい。本実施形態では、間隔Lxtを受電コイル31の短辺の寸法(60cm)の約133%である80cmとしている。
線路22aと線路22cとの間隔、および、線路22bと線路22dとの間隔は同一である。当該間隔Wxtは、本実施形態では5cmである。なお、間隔Wxtは限定されない。また、線路22aと線路22cとの間隔と、線路22bと線路22dとの間隔とが異なっていてもよい。線路22aと線路22cとの間隔は、線路22cが線路22aおよび線路22dに接触しない範囲で設定可能である。同様に、線路22bと線路22dとの間隔は、線路22dが線路22bおよび線路22cに接触しない範囲で設定可能である。ただし、後述するシミュレーションで説明するように、送電装置2から受電装置3への電力の伝送効率をより大きくするためには、間隔Wxtを間隔Lxtの6.25%、少なくとも3〜10%にすることが望ましい。本実施形態では、間隔Wxtを間隔Lxt(=80cm)の6.25%である5cmとしている。
線路22a,22b,22c,22dが配置される道路は、水平方向に直線状に延びる道路が望ましい。本実施形態では、線路22a,22b,22c,22dが、水平方向に直線状に延びる道路に配置されている場合を想定している。したがって、線路22a,22b,22c,22dは、水平面上で互いに平行に、直線状に延びている。本実施形態では、線路22a,22b,22c,22dの延びる方向の寸法Lytは、200mである。なお、寸法Lytは限定されない。ただし、寸法Lytが、供給される高周波電力の波長の4分の1以上の場合、定在波が発生するので、線路上に電力の伝送効率が低下する箇所が発生する。例えば、本実施形態における高周波電力の所定周波数f0は85kHzであり、波長は約3500mなので、約875mごとに伝送効率が低下する箇所が発生する。この場合でも、定在波の節の箇所以外の走行中に給電できるので、あまり問題にはならない。なお、線路22a,22b,22c,22dが配置される道路は、水平方向に直線状に延びる道路に限定されない。線路22a,22b,22c,22dは、道路に沿って配置され、道路が傾斜していればこれに沿って傾斜し、道路が湾曲していればこれに沿って湾曲するように配置される。
共振コンデンサ23は、送電コイルとしての平行線路22に直列接続されて、直列共振回路を構成するためのものである。平行線路22および共振コンデンサ23は、共振周波数が高周波電源装置21より供給される高周波電力の所定周波数f0と一致するように設計される。
受電装置3は、受電コイル31、共振コンデンサ32、および整流平滑回路33を備えている。
受電コイル31は、本実施形態では、直径1cmの断面円形状の銅線を、同一平面上で矩形渦巻き状に6回巻回した、いわゆるスパイラルコイルである。受電コイル31の平面視における外形は、長辺が80cmで短辺が60cmの矩形状である。なお、受電コイル31の材質、形状および寸法は限定されない。例えば、受電コイル31は、平面視における外形が円形状や楕円形状であってもよいし、ヘリカルコイルであってもよい。ただし、平行線路22を流れる電流によって変化する磁束に、より鎖交できる形状が望ましい。受電コイル31は、電気自動車Vの車体底面に、コイル面が道路と略平行となるように配置されている。また、受電コイル31は、長辺が電気自動車Vの進行方向に平行になるように配置されている。したがって、受電コイル31は、長辺を平行線路22の延びる方向に平行に保って、電気自動車Vの移動に伴って、平行線路22と一定の距離だけ離れたまま、平行線路22の延びる方向に移動する。本実施形態では、コイル面のうちの道路側を向く面と、道路に敷設された平行線路22の上面との距離は20cmである。なお、当該距離は限定されない。受電コイル31は、送電コイルとしての平行線路22と磁気結合して、送電装置2から電力を受電する。
共振コンデンサ32は、受電コイル31に直列接続されて、直列共振回路を構成するためのものである。受電コイル31および共振コンデンサ32は、共振周波数が高周波電源装置21より供給される高周波電力の所定周波数f0と一致するように設計される。
整流平滑回路33は、受電コイル31が受電した高周波電力を直流電力に変換するものである。整流平滑回路33は、例えば、4つのダイオードをブリッジ接続した全波整流回路を備えている。また、整流平滑回路33は、整流後の出力を平滑するための平滑回路も備えている。なお、整流平滑回路33の構成は限定されず、整流平滑回路33は、高周波電力を直流電力に変換するものであればよい。整流平滑回路33から出力される直流電力は、負荷4に出力される。
受電コイル31が送電コイルとしての平行線路22と磁気結合することで、受電装置3は、送電装置2から送電される高周波電力を受電する。すなわち、平行線路22に高周波電流が流れることで磁束が変化し、この磁束に鎖交する受電コイル31に高周波電流が流れる。これにより、送電装置2から受電装置3に、非接触で電力を供給することができる。
次に、非接触電力伝送システム1Aにおける、平行線路22から受電コイル31への電力の伝送効率を検証するシミュレーションについて説明する。
図2は、非接触電力伝送システム1Aの構成を簡略化した図である。図2においては、平行線路22の延びる方向をY方向、水平面においてY方向に直交する方向をX方向としている。
受電コイル31は、直径1cmの断面円形状の銅線を6回巻回したスパイラルコイルであり、X方向の寸法が60cm、Y方向の寸法が80cmの矩形状である。平行線路22の線路22a,22b,22c,22dは、厚さ0.4cm、幅2.5cmの銅板であり、Y方向の寸法はLyt(=200m)である。線路22aと線路22bとの間隔はLxt(本シミュレーションでは100cmとしている)であり、線路22aと線路22cとの間隔、および、線路22bと線路22dとの間隔はWxt(=5cm)である。受電コイル31と平行線路22との距離は20cmである。高周波電源装置21の所定周波数f0は85kHzである。
本シミュレーションでは、最大伝送効率ηmaxを指標として用いる。最大伝送効率ηmaxは、負荷インピーダンスを最適化した時に得られる効率であり、システム固有のパラメータのみによって決まる指標である。平行線路22に入力される電圧、電流、有効電力をそれぞれV
1,I
1,P
1とし、受電コイル31が出力する電圧、電流、有効電力をそれぞれV
2,I
2,P
2とする。平行線路22のインピーダンスをZ
11=R
11+jX
11(R
11は抵抗成分、X
11はリアクタンス成分)とし、受電コイル31のインピーダンスをZ
22=R
22+jX
22(R
22は抵抗成分、X
22はリアクタンス成分)とし、平行線路22と受電コイル31との間の相互インダクタンスによるリアクタンスをX
12とすると、平行線路22と受電コイル31によるシステムは、下記(1)式で表される。
平行線路22に入力される有効電力P
1、受電コイル31が出力する有効電力P
2は、それぞれ下記(2)、(3)式で表される。Re(x)は複素数xの実数部分を示している。また、伝送効率ηは下記(4)式で表される。(1)〜(4)式から最大伝送効率ηmaxを算出すると、下記(5)、(6)式が導出される(非特許文献1,2参照)。下記(5)、(6)式に示すように、βはkQ積の二乗になっており、最大伝送効率ηmaxは、送受電コイルのkQ積に依存することが分かる。また、下記(5)、(6)式から明らかなように、平行線路22のインピーダンスの抵抗成分R
11が小さいほど、最大伝送効率ηmaxは大きくなる。また、平行線路22と受電コイル31との間の相互インダクタンスによるリアクタンスX
12が大きいほど、最大伝送効率ηmaxは大きくなる。
本シミュレーションでは、比較のために、線路22a,22b,22c,22dを等間隔に配置した場合、すなわち、間隔Wxtを33.3cm(≒100cm/3)とした場合(比較例1)でもシミュレーションを行った。また、線路22c,22dを備えない場合、すなわち、従来の平行二線式とした場合(比較例2)でもシミュレーションを行った。
まず、銅の導電率を58MS/mとした場合の、各シミュレーションにおける平行線路のインピーダンスの抵抗成分の解析を行った。平行四線式の間隔Wxtを5cmとした場合(以下では、「平行四線式A」とする)、抵抗成分は0.40Ωとなった。また、平行四線式の間隔Wxtを33.3cm(等間隔)とした場合(以下では、「平行四線式B」とする)、抵抗成分は0.40Ωとなった。また、平行二線式の場合、抵抗成分は0.77Ωとなった。平行四線式の場合、間隔Wxtにかかわらず抵抗成分は同じであり、平行二線式の場合と比べてほぼ半分になった。また、間隔Lxtを60cm、80cmとした場合も、抵抗成分に変化はなかった。また、Y方向の寸法Lytを1750mとした場合についても、平行線路のインピーダンスの抵抗成分の解析を行った。この結果、各平行線路のインピーダンスの抵抗成分は、平行四線式Aの場合1.57Ωとなり、平行四線式Bの場合1.55Ωとなり、平行二線式の場合3.03Ωとなった。平行四線式の場合、間隔Wxtにかかわらず抵抗成分はほぼ同じであり、平行二線式の場合と比べてほぼ半分になった。また、間隔Lxtを60cm、80cmとした場合も、抵抗成分に変化はなかった。
次に、受電コイル31の位置を変化させたときの最大伝送効率ηmaxを解析した。受電コイル31のXY平面での中心位置をCoとする。Y方向における、平行線路22と高周波電源装置21との接続点から中心位置Coまでの距離をdy(=0〜200m)とする(図2参照)。また、中心位置Coの、平行線路22のX方向の中心位置からのX方向へのずれを横ずれdx(=−50〜50cm)とする。図2における上側へのずれをプラス、下側へのずれをマイナスとしている。
図3(a)は、受電コイル31のY方向の位置を変化させたときのシミュレーション結果を示す図である。図3(a)では、横ずれdxを0cmとし、距離dyを25mから175mまで25mずつ変化させたときの、それぞれの位置での最大伝送効率ηmaxを示している。グラフaが平行四線式Aの場合を示しており、グラフbが平行四線式Bの場合を示しており、グラフcが平行二線式の場合を示している(図3(b)、図4(a)、および図4(b)でも同様である)。Y方向の寸法Lytが200mなので、線路上に定在波は発生していない。したがって、図3(a)に示すように、最大伝送効率ηmaxは、受電コイル31の位置に関係なく、ほぼ同じになっている。
また、平行四線式Aの場合も平行四線式Bの場合も、最大伝送効率ηmaxは、平行二線式の場合と比べて10%程度大きくなっている。これは、平行四線式の場合の平行線路22の抵抗成分R11が、平行二線式の場合の平行線路の抵抗成分R11より小さいことに起因する。また、最大伝送効率ηmaxは、平行四線式Aの場合の方が、平行四線式Bの場合より大きくなっている。これは、間隔Wxtによって、平行線路22と受電コイル31との間の相互インダクタンスによるリアクタンスX12が変化することに起因する。つまり、平行四線式Aの場合(Wxt=5cm)の方が、平行四線式Bの場合(Wxt=33.3cm)より、リアクタンスX12が大きい。Y方向の寸法Lytを1750mとしたときに検証した結果では、リアクタンスX12は、平行四線式Bの場合に0.4765Ωであったが、平行四線式Aの場合には約3.4%大きくなっていた。また、間隔Lxtを80cmとして、間隔Wxtを変化させるシミュレーションを行った結果、間隔Wxtが5cmのとき、すなわち、間隔Lxtに対する間隔Wxtの割合が6.25%のときに、最大伝送効率ηmaxが最大になった。つまり、最大伝送効率ηmaxをより大きくするためには、間隔Wxtを間隔Lxtの6.25%、少なくとも3〜10%にすることが望ましい。
図3(b)は、受電コイル31のX方向の位置を変化させたときのシミュレーション結果を示す図である。図3(b)では、距離dyを100mとし、横ずれdxを−50cmから50cmまで10cmずつ変化させたときの、それぞれの位置での最大伝送効率ηmaxを示している。図3(b)に示すように、最大伝送効率ηmaxは、横ずれdxが0cm(中心位置CoがX方向の中心位置)のときに最大になり、dxの絶対値が大きくなるほど(ずれが大きくなるほど)小さくなっている。平行四線式Aの場合の最大伝送効率ηmaxは、dxが−48〜50の範囲で、平行二線式の場合より大きくなっている。また、平行四線式Bの場合の最大伝送効率ηmaxは、dxが−20〜20の範囲で、平行二線式の場合より大きくなっている。したがって、X方向へのずれが小さい領域では、平行四線式の方が平行二線式より、最大伝送効率ηmaxが大きいと言える。また、間隔Wxtが小さい方が、横ずれによる最大伝送効率ηmaxの低下が小さい。伝送される電力が最大のときから3dB減衰するまでのdxの範囲を有効範囲とすると、平行四線式Aの場合の有効範囲は±44cmであり、平行四線式Bの場合の有効範囲は±30cmである。有効範囲を大きくするためには、間隔Wxtを小さくするのが望ましい。
次に、Y方向の寸法Lytを1750mに変更した場合のシミュレーションを行った。図4は、寸法Lytを1750mとした場合のシミュレーション結果である。その他のパラメータは、図3の場合と同じである。
図4(a)は、受電コイル31のY方向の位置を変化させたときのシミュレーション結果を示す図である。図4(a)では、横ずれdxを0cmとし、距離dyを25mから1725mまで100mずつ変化させたときの、それぞれの位置での最大伝送効率ηmaxを示している。Y方向の寸法Lytが1750mなので、線路上に定在波が発生している。したがって、図4(a)に示すように、最大伝送効率ηmaxは、距離dyが800m〜900mの区間で極めて小さくなっている。また、例えば平行四線式Aの場合、最大伝送効率ηmaxは42%以下であり、寸法Lytが200mのとき(図3(a)参照)の60%と比較すると、小さくなっている。平行四線式Bおよび平行二線式の場合も同様に、寸法Lytが200mのときと比較して、最大伝送効率ηmaxは小さくなっている。これは、寸法Lytが大きくなったことにより、平行線路の抵抗成分が大きくなったことに起因する。また、図4(a)に示すように、平行四線式の場合の最大伝送効率ηmaxは、平行二線式の場合と比べて大きくなっている。つまり、最大伝送効率ηmaxについては、寸法Lytに関わらず、平行四線式の方が平行二線式より有利である。
図4(b)は、受電コイル31のX方向の位置を変化させたときのシミュレーション結果を示す図である。図4(b)では、距離dyを25mとし、横ずれdxを−50cmから50cmまで10cmずつ変化させたときの、それぞれの位置での最大伝送効率ηmaxを示している。図4(b)に示すように、最大伝送効率ηmaxは、横ずれdxが0cm(中心位置CoがX方向の中心位置)のときに最大になり、dxの絶対値が大きくなるほど(ずれが大きくなるほど)小さくなっている。平行四線式Aの場合の最大伝送効率ηmaxは、dxが−50〜50の範囲で、平行二線式の場合より大きくなっている。また、平行四線式Bの場合の最大伝送効率ηmaxは、dxが−18〜18の範囲で、平行二線式の場合より大きくなっている。したがって、X方向へのずれが小さい領域では、平行四線式の方が平行二線式より、最大伝送効率ηmaxが大きいと言える。また、間隔Wxtが小さい方が、横ずれによる最大伝送効率ηmaxの低下が小さい。平行四線式Aの場合の有効範囲は±40cmであり、平行四線式Bの場合の有効範囲は±26cmである。これらの傾向は、寸法Lytに関わらない。
次に、間隔Lxtを変化させた場合のシミュレーションを行った。図5は、間隔Lxtを、60cm、80cm、100cmとした場合の、受電コイル31のX方向の位置を変化させたときのシミュレーション結果を示す図である。その他のパラメータは、図3(b)の場合と同じである。図5(a)は平行四線式Bの場合のシミュレーション結果であり、図5(b)は平行四線式Aの場合のシミュレーション結果である。グラフaがLxt=100cmの場合を示しており、グラフbがLxt=80cmの場合を示しており、グラフcがLxt=60cmの場合を示している(図6(a)および図6(b)でも同様である)。図5(a)に示すように、平行四線式Bの場合の有効範囲は、Lxtが60cmの場合で±24cmであり、Lxtが100cmの場合で±30cmである。また、図5(b)に示すように、平行四線式Aの場合の有効範囲は、Lxtが60cmの場合で±27cmであり、Lxtが100cmの場合で±44cmである。したがって、間隔Wxtに関わらず、間隔Lxtが大きいほど有効範囲が広くなることが判る。
図6は、Y方向の寸法Lytを1750mに変更した場合のシミュレーション結果を示す図である。その他の条件は、図5の場合と同じである。図6(a)は平行四線式Bの場合のシミュレーション結果を示し、図6(b)は平行四線式Aの場合のシミュレーション結果を示している。図6(a)に示すように、平行四線式Bの場合の有効範囲は、Lxtが60cmの場合で±23cmであり、Lxtが100cmの場合で±26cmである。また、図5(b)に示すように、平行四線式Aの場合の有効範囲は、Lxtが60cmの場合で±25cmであり、Lxtが100cmの場合で±40cmである。したがって、寸法Lytが異なっていても、各線路の配置が同じであれば、有効範囲は同程度になることが判る。
次に、受電コイル31の配置数を変更した場合のシミュレーションを行った。
平行線路22に複数の受電コイル31が磁気結合している場合の最大伝送効率ηmaxも、上記(5)式になる。ただし、βは、各受電コイル31のインピーダンスをZ
nn=R
nn+jX
nn(R
nnは抵抗成分、X
nnはリアクタンス成分)とし、平行線路22と各受電コイル31との間の相互インダクタンスによるリアクタンスをX
1nとすると(n=1,2,…,N)、下記(7)式になる。
図7は、受電コイル31の配置数を変更した場合のシミュレーション結果を示す図である。図7は、各受電コイル31の中心位置Coの横ずれdxを0cmとし、配置する受電コイル31の個数を1個から10個まで変化させたときの、それぞれの最大伝送効率ηmaxを示している。その他の条件は、図3の場合と同じである。グラフaが平行四線式Aの場合を示しており、グラフbが平行四線式Bの場合を示しており、グラフcが平行二線式の場合を示している。図7に示すように、最大伝送効率ηmaxは、配置数大きくなるほど大きくなっている。例えば、平行四線式において、配置数が5個の場合の最大伝送効率ηmaxは80%であり、1個の場合は60%である。配置数が増加するほど、伝送損失が減少していることが判る。また、配置数が小さいときほど、配置数の増加に対する最大伝送効率ηmaxの増加割合は大きい。すなわち、配置数が大きくなるにつれて、最大伝送効率ηmaxの上昇は緩やかになっている。また、図7に示すように、配置数に関わらず、平行四線式の場合の最大伝送効率ηmaxは、平行二線式の場合と比べて10%程度大きくなっている。
次に、本実施形態に係る非接触電力伝送システム1Aの作用および効果について説明する。
本実施形態によると、平行線路22は、線路22a,22b,22c,22dを備えている。平行線路22は、線路22a,22bからなる従来の平行二線路の内側に、線路22aに並列接続し、かつ、線路22aに平行な線路22cと、線路22bに並列接続し、かつ、線路22bに平行な線路22dとを追加したものである。したがって、従来の平行二線路と比較して、平行線路22の抵抗成分は小さい。よって、線路長が長くなった場合でも、送電装置2から受電装置3への電力の伝送効率を、従来のものより大きくできる。また、本実施形態によると、線路22aと線路22cとの間隔、および、線路22bと線路22dとの間隔を自由に設定可能である。したがって、当該間隔Wxtを調整することで、伝送効率をより大きいものにすることができる。
また、本実施形態によると、間隔Wxtは、間隔Lxtの6.25%である。したがって、伝送効率を最大にすることができる。また、間隔Wxtが間隔Lxtに対して十分小さいので、受電装置3の受電コイル31のX方向の位置ずれ時の伝送効率の低下を、広い範囲で抑制することができる。
図8〜図10は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
図8は、本発明の第2実施形態に係る非接触電力伝送システム1Bを示す概略図である。図8においては、電気自動車Vおよび受電装置3の記載を省略している。図8に示す非接触電力伝送システム1Bは、平行線路22が6個の線路22a〜22fを備えている点で、第1実施形態に係る非接触電力伝送システム1A(図1(a)参照)と異なっている。
第2実施形態に係る平行線路22は、線路22cおよび線路22dの内側に、さらに線路22eおよび線路22fを備えている。線路22e,22fは、線路22a,22b,22c,22dと同様のものであり、材料、形状および寸法が共通している。線路22e,22fも、路面上に敷設されており、道路に沿って延びている。線路22eの一方端(図8においては左端)は、線路22a,22cと同様、共振コンデンサ23を介して、高周波電源装置21の出力端子21aに接続している。つまり、線路22a,22c,22eは、互いに並列に接続されている。線路22fの一方端(図8においては左端)は、線路22b,22dと同様、高周波電源装置21の出力端子21bに接続している。つまり、線路22b,22d,22fは、互いに並列に接続されている。線路22e,22fの他方端(図8においては右端)も、線路22a,22b,22c,22dと同様、短絡されている。線路22eは、路面上で、線路22cと線路22dとの間の線路22c寄りに、線路22cに平行になるように配置されている。線路22fは、路面上で、線路22eと線路22dとの間に、線路22dに平行になるように配置されている。つまり、第2実施形態に係る平行線路22は、第1実施形態に係る平行線路22の線路22cと線路22dとの間に、これらに平行な線路22e,22fを追加したものである。線路22eは、本発明の「第3の線路」に相当し、線路22fは、本発明の「第4の線路」に相当する。
本実施形態では、線路22cと線路22eとの間隔、および、線路22dと線路22fとの間隔は、間隔Wxtである。なお、線路22cと線路22eとの間隔と、線路22dと線路22fとの間隔とは、異なっていてもよいし、間隔Wxtと異なっていてもよい。線路22cと線路22eとの間隔は、線路22eが線路22cおよび線路22fに接触しない範囲で設定可能である。同様に、線路22dと線路22fとの間隔は、線路22fが線路22dおよび線路22eに接触しない範囲で設定可能である。本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
なお、本実施形態においては、平行線路22が備える線路が6個の場合について説明したが、これに限られない。平行線路22は、より多くの線路を備えていてもよい。例えば、平行線路22は、出力端子21aに接続するn個(nは2以上の整数)の線路と、出力端子21bに接続するn個の線路とを備えていればよい。また、出力端子21aに接続する線路の数と、出力端子21bに接続する線路の数とが異なっていてもよい。
図9は、本発明の第3実施形態に係る非接触電力伝送システム1Cを示す概略図である。図9においては、電気自動車Vおよび受電装置3の記載を省略している。図9に示す非接触電力伝送システム1Cは、線路22cが線路22aの鉛直下方に配置されており、線路22cが線路22aの鉛直下方に配置されている点で、第1実施形態に係る非接触電力伝送システム1A(図1(a)参照)と異なっている。
第3実施形態に係る平行線路22は、第1実施形態に係る平行線路22と同様、4個の線路22a,22b,22c,22dを備えている。線路22a,22bは、互いに平行となるようにして、路面上に敷設されている。線路22c,22dは、互いに平行となるようにして、路面付近に埋設されている。線路22cは、線路22aの鉛直下方に配置されており、線路22dは、線路22bの鉛直下方に配置されている。つまり、線路22aと線路22cとは、線路22aおよび線路22bが配置される面に直交する方向に並んでいる。また、線路22bと線路22dとは、線路22aおよび線路22bが配置される面に直交する方向に並んでいる。線路22aと線路22cとの間隔、および、線路22bと線路22dとの間隔は同一であり、本実施形態では5cmである。なお、当該間隔は限定されない。また、線路22aと線路22cとの間隔と、線路22bと線路22dとの間隔とが異なっていてもよい。本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、本実施形態によると、路面上への線路の敷設に制約がある場合でも、線路22c,22dの配置が可能である。
なお、本実施形態においては、線路22cと線路22dとの間隔が、線路22aと線路22bとの間隔と同じである場合について説明したが、これに限られない。線路22cと線路22dとの間隔は、線路22aと線路22bとの間隔より広くしてもよいし、狭くしてもよい。線路22c,22dは、路面付近に埋設されているので、路面上に敷設されている線路22a,22bよりも、配置の自由度がある。線路22cと線路22dとの間隔を線路22aと線路22bとの間隔より広く配置することで、磁束が発生する領域をより広げることができるので、横ずれに対する伝送効率の低下をより抑制できる。また、本実施形態においては、線路22a,22bの鉛直下方に配置される線路がそれぞれ1個ずつである場合について説明したが、これに限られず、それぞれ複数個配置されてもよい。
図10は、本発明の第4実施形態に係る非接触電力伝送システム1Dを示す概略図である。図10に示す非接触電力伝送システム1Dは、線路22a,22b,22c,22dが道路の路面に直交する方向に並んでいる点で、第1実施形態に係る非接触電力伝送システム1A(図1(a)参照)と異なっている。
第4実施形態に係る平行線路22は、第1実施形態に係る平行線路22と同様、4個の線路22a,22b,22c,22dを備えている。しかし、線路22a,22b,22c,22dは、路面に平行な方向に並んでいるのではなく、路面に直交する方向に並んでいる。具体的には、線路22a,22b,22c,22dは、幅方向が路面に直交するようにして、路面に直交する面上で互いに平行になるようにして配置されている。また、第4実施形態に係る受電コイル31は、コイル面が路面に対して直交するようにして、電気自動車Vの側面に配置されている。つまり、線路22a,22b,22c,22dが配置される面と受電コイル31のコイル面とは平行になるように配置されているが、第1実施形態の場合これらの面が路面に平行であるのに対して、本実施形態の場合これらの面が路面に直交している。本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
上記第1ないし第4実施形態では、送電装置2の平行線路22が道路に配置され、受電装置3が電気自動車Vに搭載された場合について説明したが、これに限られない。例えば、非接触電力伝送システム1A〜1Dは、工場や倉庫内などで、予め設定された経路に沿って自動走行させる無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)システムにも採用可能である。この場合、平行線路22は工場や倉庫の床などに配置され、受電装置3は無人搬送車に搭載される。また、非接触電力伝送システム1A〜1Dは、電車、路面電車、モノレールなどにも採用可能である。
本発明に係る送電装置および非接触電力伝送システムは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る送電装置および非接触電力伝送システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。