この問題は短時間では大きく改善されないので、この問題に対処する唯一の方法は、ろ過によって、きれいな空気を供給するマスクを着用することである。快適性及び有効性を向上させるために、1つ又は2つのファンがマスクに追加される。これらのファンは、使用中にスイッチが入り、通常は一定の電圧で使用される。効率と寿命の理由から、これらは通常、電気的に整流されるブラシレスDCファンである。
電動マスクを使用する着用者の利点は、従来の非電動マスクにおけるフィルタの抵抗に対して吸入することにより引き起こされるわずかな負担から肺が解放されることである。
さらに、従来の非電動マスクにおいて、吸入は、マスク内にわずかな負圧を引き起こし、この負圧が汚染物質をマスク内に漏れ入ることにつながり、これらが有毒物質である場合、この漏れは危険であることが分かる。電動マスクは、安定した気流を顔に送出し、例えば呼気弁の抵抗により決定されるわずかな正圧を与え、如何なる漏れも内側ではなく必ず外側に向かうようにする。
ファンの動作又は速度が調整される場合、幾つかの利点がある。これは、吸入及び呼気のシーケンス中のより適切な換気によって快適性を向上させるために使用され得る、又は電気効率を向上させるために使用され得る。後者は、バッテリーの寿命を長くする又は換気の強化につながる。これらの態様の両方は、現在のデザインにおいて改善を必要とする。
ファンの速度を調整するために、マスク内の圧力が測定され、圧力変動及び圧力の両方がファンを制御するために使用される。
例えば、マスク内の圧力は、圧力センサにより測定され、ファンの速度は、このセンサの測定値に依存して変化することができる。圧力センサはコストを要するので、マスク内の圧力を監視する代替方法を提供することが望ましい。そのような圧力情報は、電動マスク内のファンを制御するために使用されるが、この情報は、その圧力情報が望まれる他の如何なるファンベースのシステムの一部として使用されてもよい。
ファンが動作するマスクは、バッテリーで動作する装置であるため、コストを最小限に抑えると共に、消費電力も最小限に下げることが望ましい。1つの問題は、マスクが着用されていないとき、ファンがオンのままにされることであり、これが不要な電力消費となる。マスクが着用されているときを検出する専用のセンサを設けることは可能であるが、これは呼吸マスクのコストを増大させる。
マスクを着用するとき、ユーザは通例、スイッチを入れてファンをオンにする。このスイッチは、マスクのコストを増大させ、場所を取り及びスイッチを入れることが面倒である。自動的に電子機器のスイッチを入れる機能は、これらの欠点を回避する。しかしながら、これには一般に、マスクの使用を検知する専用のセンサも必要とする。
故に、着用から非着用への遷移及び/又は非着用から着用への遷移が検出されることを可能にするために、マスクが着用されていることを検出することの、より低コストの解決策を見出すことが望ましい。
WO2018/215225号は、ファンの回転速度が圧力測定のプロキシ(代理)として使用される解決策を開示している。圧力又は圧力変化は、ファンの回転速度に基づいて決定される。この圧力情報を用いて、マスクを着用しているかどうかを決定することができる。
検出される圧力変動がしきい値よりも下がるとき、マスクは着用されていないと決定され、ファンがオフにされる。
この方法は、ファンの速度信号が高いサンプリングレートでサンプリングされる場合、この信号の詳細な分析が行われ得るので、上手く機能する。しかしながら、電力を節約するために、低いサンプリングレートが好ましい。
特に、低いサンプリングレートが採用される場合、マスクを着用したままであっても、マスクがオフになるという状況が生じる。システムのサンプリングレートが低すぎる場合、電力消費は低くなるが、信頼性のある呼吸信号が得られない。例えば、サンプリングレートが低すぎる場合、会話中の呼吸信号にある短いスパイクが見逃されることがある。これは、誤ったターンオフ信号をもたらす。
システムのサンプリングレートが高すぎる場合、呼吸は上手くトラッキングされるが、バックグラウンドノイズも含まれ、電力消費が高くなる。
ユーザが話している場合、ユーザの呼吸は、正常な呼吸よりもはるかに浅く、これは検出されない。たとえマスクが着用されていなくても、呼吸の結果ではないわずかな圧力変化の検出に基づいて、マスクがオンにされるので、単に異なるしきい値を設定するだけでは適切ではない。
EP0661071は、持続的気道陽圧(CPAP)治療の投与における自動的な停止−開始を制御するための装置及び方法を開示している。CPAP治療の投与の開始は、患者がマスクを着用していると決定されるときに起こる。反対に、CPAP治療の投与の停止は、患者がもはやマスクを着用していないと決定されるときに行われる。ある例において、マスクが着用されているかどうかの決定は、フロー発生器への供給電流の分析に基づいている。
さらに正確な呼吸の検出、及び大量のサンプリングされるファンの回転データを処理する必要性を回避する方法が依然として必要とされる。
本発明は、請求項により規定される。
本発明のある態様に従う例によれば、
空気チャンバ、
フィルタ、例えば前記空気チャンバとこの空気チャンバの外部の周辺環境との間に境界を直接形成するフィルタ、
前記空気チャンバの外部から空気チャンバ内に空気を吸い込む、及び/又は前記空気チャンバの内部から空気チャンバ外に空気を吸い出すためのファン、
前記ファンの回転速度を決定するための手段、並びに
制御器
を有する、汚染用マスクにおいて、前記制御器は、
決定されるファンの回転速度又はファンの回転速度の変化から、マスクが着用されているときの呼吸の深さに関連する第1の値、及びマスクが着用されているときの呼吸数に関連する第2の値を導出する、並びに
前記第1の値及び第2の値に基づいて、マスクが着用されているかどうかを決定する
ように構成される、汚染用マスクが提供される。
前記第1の値は、検出される呼吸があるときの呼吸の深さに関連し、これは、前記第1の値と呼吸の深さとの間に正の相関があることを意味する。前記第2の値は、検出される呼吸があるときの呼吸数に関連し、これは、前記第2の値と呼吸数との間に正の相関があることを意味する。
より一般的には、第1の値は、例えばファンの圧力変動の大きさ(この圧力変動が呼吸により引き起こされるかどうか)に関連(すなわち、相関)し、第2の値は、例えば圧力変動率(この圧力変動率が呼吸により引き起こされるかどうか)に関連(すなわち、相関)する。「圧力変動率」は、瞬間的な圧力変化率ではなく、呼吸により引き起こされる周期的な圧力変動率を意味する。この圧力変動は、マスクが着用されているとき及び通常の使用時の呼吸により引き起こされるのに対し、マスクが着用されていないときに検出される如何なる圧力変動も他の要因により引き起こされる。
本発明は、汚染用マスクに関する。これは、ユーザにより呼吸される周囲空気をろ過することを主目的とする装置を意味する。このマスクは、如何なる形式の患者の治療も行わない。特に、ファンの動作により生じる圧力レベル及び流れは、単に(空気チャンバ内の温度又は相対湿度に影響を与えることにより)快適さを与えることを支援する、及び/又はユーザによるかなりの追加の呼吸努力を必要とせずに、フィルタを横断する流れを提供することを支援することを意図する。このマスクは、ユーザがこのマスクを着用していない状態に比べ、全体的な呼吸支援を提供しない。
このシステムにおいて、(チャンバ内に空気を送り込む、及び/又はチャンバから空気を吐き出すファンに対する)ファンの速度が圧力測定のプロキシとして使用されてもよい。ファンの速度を測定するために、追加のセンサが必要とされないように、ファン自体が使用される。前記チャンバは、通常の使用時に閉じられるので、このチャンバ内の圧力変動は、ファンの負荷状態に影響を与え、故にファンの電気的特性を変化させる。同様に、ファンの電気的特性は、チャンバの性質、例えばチャンバの容積及びチャンバが開いている、又は閉じられた容積であるかを決定することができる。
マスクが着用されたかどうかを検出するために、偽陽性(すなわち、マスクは着用されていないと誤って検出される)及び偽陰性(マスクが着用されていると誤って検出される)が防がれるように、ファンの回転信号が分析される。これは、呼吸が検出されるときの呼吸の深さを示す圧力変動レベル、及び呼吸が検出されるときの呼吸数を示す周期的な圧力変動率の両方を考慮することにより達成される。このように、(出願人の既に提案されているが、未公開の解決策のように)正常な呼吸が検出されるが、発話中に関連する圧力変動も検出される。これは、下げられたサンプリングレートを用いた信頼性のある呼吸の検出を可能にする。
マスクが着用されているかどうかを決定することにより、マスクのデザインは、マスクが着用されていないときには、如何なる追加のセンサも必要とせずに、電力を節約することを可能にする。特に、マスクの圧力差が検出されない場合、これは、両側が大気圧であり、マスクが着用されていないことを示す。実際には、閉じられる又は部分的に閉じられるチャンバはもはや存在しないので、空気チャンバは大気に対し開いている。マスクが着用されていないと検出される場合、ファンはオフされる。この検出のためのしきい値が設定されてもよいが、さらに周期的な圧力変動率を考慮することにより、誤った検出結果が避けられる。
第1の値は、例えばサンプリングウィンドウ中のファンの回転速度の最大スイングであり、制御器は、第1のしきい値を前記第1の値に設定するように構成される。このスイングは、圧力変動の程度を表し、故に、呼吸にとって、それは呼吸の深さに関連する。
サンプリングウィンドウは、少なくとも1つの全呼吸サイクルを取り込むのに十分であるように選択される、例えば10呼吸/分である最低呼吸数で全呼吸サイクルを取り込むために6秒が選択される。このウィンドウ内のデータサンプリングレートは、電力及びデータ処理を節約するために、できる限り低くなるように選択される。サンプリングレートは、最速の呼吸数に対応できるように固定されてもよい。例えば、30呼吸/分の最速の呼吸数に対し、サンプリングレートは、2Hz(最大呼吸頻度の4倍)でもよい。
しかしながら、代替のオプションは、呼吸が検出されている間、第2の値に依存するレートでファンの回転速度をサンプリングすることである。このように、最低のサンプリングレートが維持され、消費電力を節約する。
第1のしきい値は、例えば平均のファンの回転速度に依存する。従って、呼吸により引き起こされるファンの回転速度の変化は、ファンの回転速度自身に依存する。ファンの回転速度の大きな変化は、ファンがより速い速度に駆動されるとき、所与の呼吸パターンに起因している。
平均のファンの回転速度は、先行するサンプルの測定値により得られる、又は制御器によりファンに加えられる駆動信号から知ることができる。これらのオプションの両方が含まれると意図される。
第2の値は、例えばファンの回転速度における連続する最大値と最小値との間の時間に基づく周波数である。呼吸の場合、これは呼吸期間の半分である。
次いで、制御器は、第1の値がしきい値を超え、第2の値が既定の範囲内にあるとき、検出される呼吸がある、故にマスクが着用されていることを決定するように構成されてよい。従って、呼吸を検出するために、一定の呼吸数の範囲と同様に、一定の呼吸の深さが検出される必要がある。
前記既定の範囲は、例えば12〜30サイクル/分であり、これは典型的な呼吸数の範囲に対応する。
制御器は、マスクが着用されていないことを決定する前に、呼吸が連続的に検出されてはならない時間期間を適用するように構成されてもよい。このように、誤ってファンをオフにする危険性が低下する。
フィルタは、例えば空気チャンバとこの空気チャンバの外部の周辺環境との間に境界を直接形成する。これは、流れ搬送路の必要性を回避するコンパクトな構成を提供する。これは、ユーザがフィルタを介して空気を吸うことが可能であることを意味する。フィルタは、複数の層を持ってもよい。例えば、外側の層(例えば、布層)がマスクの本体を形成し、内側の層はより微細な汚染物質を除去するためでもよい。内側の層は、清掃又は交換のために取り外し可能でもよいが、空気が構造物を通ることが可能である、及びこの構造物がろ過機能を果たすという点で、両方の層が一緒にフィルタを構成すると考えられてもよい。
故に、フィルタは好ましくは、空気チャンバの外壁、及び任意で1つ以上の他のフィルタ層を有する。これは、マスクの本体がろ過機能を果たすので、特にコンパクトな構成を提供し、より大きなフィルタ領域を可能にする。故に、ユーザが息を吸うとき、周囲空気がフィルタを介してユーザに直接供給される。
使用中の空気チャンバ内の最高圧力は、例えば4cmH2O未満、例えば2cmH2O未満、例えば1cmH2O未満であり、空気チャンバの外部の圧力よりも高い。ファンが、空気チャンバ内において増大した圧力(例えば、吸入中に空気チャンバ内への流れ)を提供するためである場合、例えばユーザの吸入を補助するために、わずかに増大した圧力を提供することのみが必要とされる。
ファンが空気チャンバの内部から空気チャンバ外に空気を吸い出すためだけでもよい。このように、ファンは、呼気中であっても、同時に新鮮なろ過された空気を空気チャンバに供給することを促進することができ、これはユーザの快適さを向上させる。この場合、新鮮な空気が常に顔に供給されるように、空気チャンバ内の圧力は、常に外圧(大気圧)よりも低くてよい。
ある例において、ファンは、電子整流されるブラシレスモータにより駆動され、回転速度を決定するための手段は、モータの内部センサを有する。前記内部センサは、モータの回転を可能にするために、そのようなモータに既に設けられている。モータは、内部センサの出力が供給される出力ポートを持ってもよい。従って、回転速度を決定するのに適した信号を搬送するポートがある。
その代わりに、回転速度を決定するための手段は、ファンを駆動させるモータへの電気供給のリップルを検出するための回路を有する。リップルは、モータのコイルを流れる電流の切り替えに起因し、これは、入力電圧源の有限インピーダンスの結果として、供給電圧の誘起変化を引き起こす。
前記ファンは、2線式のファンであり、リップルを検出するための回路は、ハイパスフィルタを有する。適切なファン速度の出力をもはや持たないモータに必要とされる追加の回路が最小限に抑えられることができる。
マスクは、空気チャンバを制御可能に外部に排気するための出口弁をさらに有する。出口弁は、受動的な圧力調整逆止弁又は能動的に駆動する電気的制御可能な弁を有する。これは、マスクをより快適にするために使用される。吸入中、弁を(能動的又は受動的に)閉じることにより、ろ過されていない空気が吸い込まれることが防止される。呼気中、弁は、吐き出された空気が放出されるように開かれる。
制御器は、呼吸サイクルを決定する、及びこの呼吸サイクルの相に依存して、前記制御可能な弁を制御するように構成される。故に、圧力の監視は、吸入相を決定するための簡単な方法を提供し、これは次いで、マスクの通気弁のタイミングを制御する又はマスクが着用されているかどうか、故に使用中であるかどうかを決定するために使用される。
制御器は、吸入時間中にファンをオフにするように構成されてもよい。これは電力を節約するために使用される。吸入中にファンを停止することは、そのように構成される場合、電力を節約するので、フィルタを介した呼吸が困難ではないユーザにとって望ましい。
従って、システムは、マスクが着用されていないときにオフにされるだけでなく、マスクが異なるモードで動作されることを可能にする。
前記マスクは、
前記ファンが電気的に駆動していないとき、前記ファンの回転により引き起こされる誘導電流又は電圧スパイクを検出する検出回路、及び
前記検出回路からの出力に応じて、前記ファンの電気的な駆動を開始するための起動回路
をさらに有する。
この特徴は、ファンの手動回転により引き起こされる電気スパイクを検出することにより、マスクが着用されているときにファンを始動することを可能にする。この回転は、例えばファンが電気的に駆動されていないとき、ユーザがマスクを着用し、ファンを介して呼吸をすることにより引き起こされる。次いで、ファンの自動的なオンに提供するために、これらの動きが検出される。この手法は、マスクが着用されたことを積極的に検出することを必要とするのでははなく、代わりにユーザの呼吸が検出機能のためのエネルギーを供給する。この検出は、低オーバーヘッド及び低電力消費のファン回路に組み込まれてよい。
このように、ファンは、マスクが着用されていない状態から、マスクが着用されている状態への遷移、並びにマスクが着用されていない状態から、マスクが着用されている状態への遷移を検出するためのセンサとして使用される。
本発明の別の態様による実施例は、汚染用マスクを制御する方法を提供し、この汚染用マスクは、
前記マスクの空気チャンバと前記空気チャンバの外部の周辺環境との間に境界を直接形成するファンを使用して、前記マスクの空気チャンバ内にガスを吸い込む及び/又は前記空気チャンバからガスを吸い出すステップ、
前記ファンの回転速度を決定するステップ、
前記決定されるファンの回転速度又はファンの回転速度の変化から、マスクが着用されるときの呼吸の深さに関連する第1の値、及びマスクが着用されるときの呼吸数に関連する第2の値を導出するステップ、並びに
前記第1及び第2の値に基づいて、前記マスクが着用されているかどうかを決定するステップ
を有する。
前記第1の値は、サンプリングウィンドウ中のファンの回転速度における最大スイングであり、前記方法は、第1のしきい値を第1の値に設定するステップを有し、前記第2の値は、ファンの回転速度における連続する最大値と最小値との間の時間に基づく周波数であり、前記方法は、前記第1の値がしきい値を超え、前記第2の値が既定の範囲内にあるとき、検出される呼吸がある、故にマスクが着用されたことを決定するステップをさらに有する。
マスクが着用されていないと検出される場合、ファンはオフにされる。
故に、ファンの速度は、圧力又は相対圧力を測定するためのプロキシとして使用され、このプロキシの測定は、呼吸の深さ及び呼吸数の両方に基づいて、マスクが着用されているかどうかを検出するために使用される。これらは共に、ユーザの呼吸と一致していなければならない。
前記方法は、電子整流されるブラシレスモータを用いてファンを駆動させるステップを有し、回転速度は、前記モータの内部センサにより決定される。その代わりに、この回転速度は、ファンを駆動させるモータへの電気供給のリップルを検出することにより得られてもよい。これは、ブラシを備える従来のDCモータのような如何なる種類のモータにも適用されることができる。
マスクは、空気チャンバを制御可能に外部に排気するための電気的に制御可能な弁を有する。次いで、呼吸サイクルが圧力監視システムから決定され、前記方法は、呼吸サイクルの相に依存して、前記制御可能な弁を制御するステップを有する。前記マスクが代わりに、圧力調整放出弁を単に持ってもよい。
本発明は、汚染用マスクを提供する。ファンの回転速度又はファンの回転速度の変化が監視され、これにより、ファンの圧力変動の大きさに関連する第1の値、及び周期的な圧力変動率に関連する第2の値が導出される。次いで、第1及び第2の値に基づいて、マスクが着用されているかどうかを決定することができる。これは、マスクが着用されているかどうかの信頼性のある検出を提供し、ファンの回転信号の小量のサンプリングデータを必要とするので、電力を節約する。
第1の検出機能は、(圧力測定のプロキシとして)ファンの回転速度の監視を提供し、これを用いて、マスクが着用されているかどうかを検出することであり、特に着用されている状態から着用されていない状態への遷移が検出されることを可能にする。第2の検出機能は、着用されていない状態(及びマスクファンがオフにされた状態)から着用されている状態への遷移が検出されることを可能にすることである。
両方の検出機能は、如何なるセンサからも大幅な電力消費を必要とせず、追加のハードウェアの大幅な複雑さを必要としないことを目的とする。
図1は、フェイスマスクの一部として実施される監視システムを示す。
被験者10の鼻及び口を覆うフェイスマスク12を着用している被験者10が示される。マスクの目的は、被験者に吸い込まれる前の空気をろ過することである。この目的のために、マスクの本体自身がエアフィルタ16として働く。吸入によって、マスクにより形成される空気チャンバ18に空気が吸い込まれる。吸入中、例えば逆止弁のような出口弁22は、空気チャンバ18内の圧力が低いため閉じられる。
フィルタ16は、マスクの本体だけで形成されてもよいし、或いは複数の層があってもよい。例えば、マスク本体は、プレフィルタとして機能する多孔質織物材料から形成される外部カバーを有する。外部カバーの内側には、より微細なフィルタ層が、外部カバーに可逆的に取り付けられる。次いで、より微細なフィルタ層は、清掃及び交換のために取り外れさてもよいのに対し、外部カバーは、例えば拭き取ることにより清掃されてもよい。外部カバーは、例えばより微細なフィルタを大きな破片(例えば、泥)から守るようなろ過機能を果たすのに対し、このより微細なフィルタは、微粒子状物質のろ過を行う。2つよりも多くの層があってもよい。これら多数の層が一緒になってマスクのフィルタ全体として機能する。
被験者が息を吐くとき、空気は出口弁22を介して排出される。この弁が開かれ、容易な呼気を可能にするが、吸入中は閉じられる。ファン20は、出口弁22を介した空気の排出を補助する。好ましくは、付加的な空気が顔に供給されるように、吐き出される空気よりも多くの空気が取り除かれる。これは、相対湿度の低下及び冷却のおかげで快適性を増大させる。吸入中、弁を閉じることにより、ろ過されていない空気が吸い込まれることが防止される。故に、出口弁22のタイミングは、被験者の呼吸サイクルに依存する。出口弁は、フィルタ16の圧力差により作動する簡単な受動逆止弁でもよい。しかしながら、それは代わって電子制御弁でもよい。
マスクが着用されている場合にのみ、空気チャンバ内の圧力が上昇する。特に、空気チャンバは、ユーザの顔により閉じられる。マスクが着用されるとき、閉じられたチャンバ内の圧力は、被験者の呼吸サイクルの関数として変化もする。被験者が息を吐くとき、わずかな圧力の上昇が生じ、被験者が息を吸うとき、わずかな圧力の低下が生じる。
ファンが一定の駆動レベル(すなわち電圧)で駆動する場合、ファンの異なる圧力低下が存在するため、異なる優勢な圧力(prevailing pressure)がファンへの異なる負荷として現れる。この変更される負荷がファンの異なる速度をもたらす。
第1の検出機能は、ファンの回転速度がファンの圧力を測定するためのプロキシとして使用されるという認識に一部基づいている。それは、マスクが着用されているかどうかを決定するために、圧力レベル及び周期的な周波数レートが使用されるという認識の一部にも基づいている。本発明は、これらの考慮事項を組み合わせて、マスクが着用されていないとき、スイッチを切ることにより電力を節約することができる、及び複雑な又はコストのかかるセンサの追加を必要としないマスクを作成する。
ファンの一方の側の既知の圧力(例えば、大気圧)に対し、前記圧力の監視は、ファンの他方の側の圧力又は少なくとも圧力変化の決定を可能にする。この他方の側は、例えば大気圧とは異なる圧力を有する閉じられたチャンバである。しかしながら、ファンの各側において等しい圧力を検出することにより、このとき、チャンバは閉じられていないのではなく、両側において大気圧に接続されていると決定することができる。
従って、ファンの速度変動がないことは、マスクが着用されていない、故に使用中ではないことを決定するために使用される。この情報は、ファンのスイッチを切り、電力を節約するために使用されることができる。
本出願人は、ファンの回転速度を決定するための手段、及びこのファンの回転速度から圧力を導出する又は圧力変化を検出するための制御器を有する圧力監視システムを既に提案している(が未公開である)。次いで、その圧力情報を用いて、マスクが着用されているかどうかを決定することも提案される。
回転速度を決定するための手段がファンのモータからの既存の出力信号を有するか、又は別個の簡単な検出回路がファンの追加部分として設けられる。しかしながら、何れの場合も、追加のセンサが不要であるように、ファン自身が使用される。
図2は、提案される圧力監視システムの構成要素の一例を示す。図1と同じ構成要素には、同じ参照番号が与えられる。
図1に示される構成要素に加え、図2は、制御器30、ローカルバッテリ32及びファンの回転速度を決定するための手段36を示す。
ファン20は、ファンブレード20a及びファンモータ20bを有する。一例において、ファンモータ20bは、電子整流されるブラシレスモータであり、回転速度を決定する手段は、モータの内部センサを有する。電子整流されるブラシレスDCファンは、回転子の位置を測定し、この回転子が回転するようにコイルを流れる電流を切り替える内部センサを有する。故に、この内部センサは、そのようなモータに既に設けられ、モータの速度のフィードバック制御を可能にする。
前記モータは、内部センサの出力34が供給される出力ポートを持つ。従って、回転速度を決定するのに適切な信号を搬送するポートがある。
その代わりに、回転速度を決定するための手段は、モータ20bへの電気供給のリップルを検出するための回路36を有する。リップルは、モータのコイルを流れるスイッチング電流から生じ、これは、バッテリー32の有限インピーダンスの結果として、供給電圧の誘起変化を引き起こす。回路36は、例えばファンが回転する周波数帯域内の信号のみが処理されるようにハイパスフィルタを有する。これは、極めて簡単な追加の回路を提供し、従来の圧力センサよりはるかに低コストである。
これは、モータが、センサの出力端子が組み込まれていない2線式のファンを含む、如何なるデザインとすることができることを意味する。ブラシ付きのDCモータを用いても動作する。
制御器は、対応する圧力情報に基づいて、回転速度情報を使用して、呼吸サイクルを決定する。
出口弁22が電子的に切り換えられる弁である場合、呼吸サイクルのタイミング情報は、この呼吸サイクルの相に依存して、出口弁22を制御するために使用される。従って、圧力の監視は、吸入相を決定するための簡単な方法を提供し、これは、次いで、マスクの出口弁22のタイミングを制御するために使用される。
出口弁を制御することに加え、制御器は、吸入時間又は呼気時間中、ファンをオフにしてもよい。制御器は、ファンが着用されていないことが検出される場合、ファンをオフにしてもよい。これは、マスクに異なる動作モードを与え、これらは、電力を節約するために使用される。
所与の駆動レベル(つまり電圧)に対し、ファンブレードへの負荷が減るので、ファンの圧力が低くなるとファンの速度が上昇する。これは、流れの増大を生じる。従って、ファンの速度と圧力差の間には逆の関係がある。
この逆の関係は、較正処理中に得られるか、又はファンの製造業者により提供されてもよい。この較正処理は、例えば被験者が正常な呼吸で定期的に息を吸う及び息を吐くように指示される期間にわたる、ファンの速度情報を分析することを含む。取り込まれたファンの速度情報は次いで、呼吸サイクルと一致させることができ、このことから、吸気と呼気とを区別するためのしきい値が設定されることができる。
図3は、時間に対する回転子の位置を(測定されるセンサ電圧として)概略的に示す。
回転速度は、ファンへの直流(DC)電圧の(モータ内の切り替え事象により生じる)交流(AC)成分の周波数から測定される。このAC成分は、電源のインピーダンスに与えられる、ファンが引き込む電流の変動に由来する。
図3は、吸入中の信号をプロット40として、及び呼気中の信号をプロット42として示す。圧力勾配の増大によるファンへの負荷の増大によって引き起こされる、呼気中の周波数の減少がある。故に、観察される周波数の変化は、呼吸サイクル中の異なるファン性能に起因する。
呼気中、ファンの動作は、顔とマスクの間にある領域から空気を強制的に流出させる。これは、呼気が容易になるため、快適性が上がる。それは顔の上に付加的な空気を引き込むこともでき、これは温度及び相対湿度を下げる。吸気と呼気との間において、顔とマスクとの間の空間に新鮮な空気が吸い込まれ、それにより、その空間を冷却するので、ファンの動作は快適性を増大させる。
吸入中、出口弁は、(能動的又は受動的に)閉じられ、ファンは、電力を節約するためにスイッチが切られる。これは、呼吸サイクルの検出に基づいた動作モードを提供する。
ファンが呼吸サイクルの一部に対しオフにされる、故に圧力情報を与えない場合、吸気及び呼気相の正確なタイミングは、以前の呼吸サイクルから推測され得る。
ファンの補助による呼気に対し、出口弁が再び開く直前に、電力が復旧される必要があります。これは、次の吸気−呼気サイクルが適切なタイミングに維持され、十分な圧力及び流れが利用可能にすることを確実にする。
この手法を用いて、約30%の電力節減が容易に達成可能であり、その結果、バッテリー寿命が長くなる。その代わりに、有効性を高めるために、ファンへの電力を30%増加することができる。
異なるファン及び弁の構成を用いて、ファンの回転速度の測定が、高い快適性を達成するような制御を可能にする。
フィルタがファンと直列に配されるファンの構成において、圧力の監視は、フィルタの流れ抵抗を、特にファン及びフィルタの圧力降下に基づいて測定するために使用される。これは、マスクが一定期間顔の上にないとき、スイッチを入れて行われる。この抵抗は、フィルタの経時変化のプロキシとして使用することができる。
上述したような第1の検出機能は、ファンを利用して、マスクが着用されていないことを検出するのに使用されるプロキシ圧力測定値を供給する。この圧力情報は、上述したような他の多くの機能にも使用される。この第1の検出機能は、ファンがアクティブであることを必要とし、故に、(ファンをオンにした状態で)着用されている状態から着用されていない状態への遷移が検出されることを可能にする。マスクが再び(又は初めて)着用されるとき、ユーザは、手動でスイッチを操作して、ファンを再び始動させる。
しかしながら、マスクが最初に又は何れかの先行する自動停止の後に、着用されるとき、自動的にファンをオンに切り換えることが可能であることが望ましい。これは、専用のセンサを使用して達成されてもよいが、センサを恒久的にアクティブにするか、又は少なくとも定期的に検知動作を行うことを必要とする。これは、マスクに再び複雑さを取り入れ、望ましくない電力消費をもたらす。
上述した第2の検出機能は、メインスイッチ又は如何なるセンサの必要性を回避する。実際、ファン自体が再びセンサとして使用される。特殊な電子機器を使用して、ファンのスイッチが切られたときでも、この検出タスクを行うことができる。
ファンを備えるマスクが顔に置かれ、ユーザが呼吸を開始するとき、空気が強制的にファンを通過するので、ファンはスイッチが入っていないときでも回転する。速度検出機能は、ファンのスイッチが切られた状態で追加のセンサを使用することなく、この回転を決定することに基づく。この信号はその後、マスクの適切な動作のためにファンのスイッチを入れるのに使用される。
上述したように、電子整流されるブラシレスDCモータを使用するファンは、回転子の位置を測定し、この回転子が回転するようにコイルを流れる電流を切り替える内部センサを持つ。
しかしながら、ファンのスイッチが切られているとき、ファンが機械的に回転していたとしても、ファンの回転速度に関する信号はもはや存在しない。
図4は、直流(DC)電源VDD及びGNDから固定子のコイル50に交流電圧を発生させるインバータとして機能するH−ブリッジ回路を示す。このインバータは、コイル50を挟んで交流電圧を発生させるためのスイッチS1〜S4の組を有する。
ファンがオフにされるとき、電源線VDD、GNDから電気信号は得られない。しかしながら、ファンが強制的に回転するとき、回転子のコイル50は、この回転子内の磁石に対して動くので、電磁誘導により電気信号が発生する。
前記コイルが電子回路に接続され、この電子回路は、駆動されるファンの回転がないときには一般的に稼働していないので、これらの誘導される信号は、供給線上で測定されない。電子スイッチが正しい方法で接続されている場合のみ、これらの信号は供給線で測定される。
この問題は、固定子のコイルの一方の極で直接生成されるパルスを使用することで解決される。
この手法は、図5を参照して説明される。
H−ブリッジ回路は、高電圧レールVDDと仮想接地との間に設けられる。この仮想接地GNDは、トランジスタ配置Q1を介して低電圧レールVDD−に接続される。
仮想接地は、この回路の動作状態に依存してVDD+とVDD−との間で変化する。
ファンは、スイッチ制御回路52を有し、スイッチ、コイル及び制御回路を含むファン回路は、電圧供給線としてVDD+及びGNDに接続される。制御回路は、スイッチに切り替え信号を供給するが、図5がごちゃつくのを避けるために、これらの制御信号線は示さない。制御回路は、例えば回転子の位置検出のためのホールセンサを含む。
1つのコイル端子Co1は、検出回路54に出力を供給する。直流電圧が重畳されているので、コンデンサC1及び抵抗R1からなるハイパスフィルタは、検出回路54とコイル端子Co1との間で用いられる。ハイパスフィルタから来るパルスは、ダイオードD2により整流され、電荷を蓄積コンデンサC2に蓄積させる。
蓄積コンデンサは、(バイポーラトランジスタのダーリントンペアとして示される)トランジスタ配置Q1のためのベース電圧を構築する。蓄積コンデンサは、トランジスタ配置がパルスと同相で素早くオン及びオフを切り替えることを防ぐ。
コンデンサC2に十分な電荷が蓄積されると、トランジスタ配置Q1は、オンになり(閉回路を構築し)、次いで、供給電圧がVDD+トップVDD−電圧のフルスイングまで増大するので、ファンは動作を開始する。この動作が、ファンの動作を維持するのに十分なパルスを生成する。
これは、非常に簡単な実施を提供する。
例えば、上述したようにマスクが着用されていないことの検出に基づいて、図5の回路を使用してファンのスイッチをオフにするために、トランジスタ配置Q1のベース部は、ファンの回転を停止させるのに十分な長さ、接地される。これは、コンデンサC2を放電するトランジスタのような停止回路51を用いて達成される。
超低電力のために、スイッチQ1は、MOSFET及び任意でゲート増幅器に置き換えられる。デジタル論理回路は、コイルの回転信号及びマスクが着用されている又は着用されていない信号をゲートドライバに転送するために使用される。
図5において、ファンがオフであるとき、スイッチS1〜S4は全て開いている(作動しない)。電力は全く供給されない。
コンデンサC2を充電するパルスは、Q1のベース部の電圧を上昇させ、最終的にQ1をONにする。次いで、仮想接地GNDのレベルは、VDD−まで下げられる。このとき、電流はVDD+からVDD−に流れる。これは、十分な電圧がある限り、続いて作動を開始するファンのコイル及び制御回路52に電力を与える。
C2が充電され、Q1がオンであるとき、停止回路51が使用され、ファンを停止させるために、コンデンサC2を放電する。例えば、npnトランジスタ又はFETトランジスタが使用され、コンデンサC2を短絡させる。短絡信号は、呼吸パターンから得られてもよい。測定される周波数変動がない場合、コンデンサC2は、トランジスタ配置をオフにするために短縮され、それにより、GND−が電圧VDD+に向かって上昇するため、供給電圧が下がる。
本発明は、上述したような自動オフ機能、すなわちマスクが着用されていないことの検出の強化を提供する。このマスクが着用されていないことの検出は、上述したのと同じように使用されるが、この検出がより正確に行われる一方、ファンの回転信号の低いサンプリングレートを達成することも可能にする。
本発明は、図2に示されるようなシステムを使用して実施されるが、制御器により実施される別の方法及び故に分析を用いて実施されてもよい。
上述したシステムにおけるように、(ファンの回転速度又はファンの回転速度の変化を見ることによる)ファンの回転信号の分析は、ファンの圧力変動の大きさに関連する第1の値を生じる。故に、この第1の値は、呼吸信号と一致するとき、呼吸の深さに関連する。第1の値は、サンプリングウィンドウ中の最大のファンの回転速度と最小のファンの回転速度との間の差を有する。加えて、周期的な圧力変動率、すなわち、呼吸信号と一致するときの呼吸数に関連する第2の値が得られる。
本出願における「呼吸の深さ」という用語は、呼吸数ではなく、特定の種類の呼吸に関連する容積又は流量特性を示すために一般的に使用される。例として、軽い呼吸(light breathing)、会話及び正常な呼吸は、異なる呼吸の種類として以下に説明される。例えば、安静時の被験者が伴う軽い呼吸の種類は、低い呼吸の深さを持つと考えられる。正常な呼吸の種類は、より高い呼吸の深さを持つ。この呼吸の深さの尺度として使用される1つの知られる尺度は、1回換気量、すなわち1呼吸当たりの容積である。しかしながら、上述したことから明らかなように、ある例において、第1の値は、ファンの圧力変動に対応している。従って、これは、実際の1回換気量の尺度ではなく、1回換気量の測定値と同様に、異なる種類の呼吸との相関を提供する。従って、1回換気量の測定値が呼吸の深さの1つの尺度である(及び故に、呼吸の深さにも関連する)のと同じように、それは呼吸の深さに"関連する"。
例えば、大きな一回換気量は、所定の時間単位で送出される場合、大きな流量、故に大きな圧力差、故に大きなファンの回転速度差に対応する。小さな一回換気量は、同じ所定の時間単位で送出される場合、小さな流量、故に小さな圧力差、故に小さなファンの回転速度差に対応する。
周期的な圧力変動率、故にファンの回転信号の周期的な変動率は、1つの呼吸がファンの圧力変動の1つの全サイクル、故にファンの回転信号の変動の1つの全サイクルに対応するという点で、呼吸数に対応する。従って、ファンの回転速度における連続する最大値と最小値との間の時間に基づく頻度は、実際に呼吸速度に関連する。
本説明及び特許請求の範囲は、それに基づいて理解されるべきである。
正常な成人の呼吸頻度の範囲は、12〜18呼吸/分(BrPM)である。被験者が運動を始めるとき、呼吸頻度も増大する。極めて高い強度の活動において、呼吸頻度は30BrPMに達する。
ファンの回転信号のサンプリングは、呼吸信号から生じる変動を収集するのに十分なレートで実行される必要がある。シャノンのサンプリング定理(Shannon sampling theory)に従って、呼吸により引き起こされる構成要素への歪みを生じさせずにファンの回転信号をサンプリングするために、サンプリングレートは、最大信号の頻度の少なくとも2倍(fs≧2fmax)でなければならない。ここで、最大呼吸頻度は30BrPM、すなわち0.5Hzである。
従って、1つの手法は、fs≧2fmax=1Hzに設定することである。従って、理論上は、1Hzのサンプリングレートが使用される。しかしながら、実際には、1Hzのサンプリングレートは十分ではない。
図6Aは、30BrPMでの2秒のサンプリング期間の時間(x軸)にわたるファンの速度信号(y軸)を示す。サンプリングレートが1Hzの場合、サンプリングポイントは全て、ファンの速度がゼロのときである。
従って、図6B及び図6Cに示されるように、少なくとも2Hzのサンプリングレートが必要である。従って、2Hzのサンプリングレートは、30BrPMの呼吸信号に対する最小のサンプリングレートである。
従って、fs=4fとなる。
ここで、fsは、最小のサンプリングレートであり、fは、リアルタイムの呼吸頻度である。
サンプリングレートを設定するには、可能な方法が2つある。
実際には、呼吸頻度は、安定した値を維持するのではなく、代わりに、ユーザの呼吸特性(正常な呼吸、会話、笑う等)に依存する。これは、一定の最小のサンプリングレートは存在しないことを意味する。
1つの方法は、最悪の状況として、最速の呼吸頻度に基づいてサンプリングレートを設定することである。この最速の呼吸頻度に基づいて、一定のサンプリングレートが設定される。幾つかの低い呼吸頻度の事例において、このサンプリングレートは、実際に必要とされるものよりも高いので、これは、電力効率の良い手法ではない。30BrPMの最速の呼吸頻度は、一定のサンプリングレートが2Hzであることを意味する。
代替的な方法は、例えば1つ又は2つのような、以前の呼吸サイクルの数に基づいて、動的な方法でサンプリングレートを設定することである。結果として、頻度fsは、前記呼吸特性に依存してリアルタイムで動的に調整される。
呼吸頻度は、
f=1/2(tmax−tmin)
を用いて、リアルタイムで決定される。
tmaxは、呼吸サイクルにおける最大データポイントの時間モーメントである。
tminは、呼吸サイクルにおける最小データポイントの時間モーメントである。
特に、サイクル期間の半分を決定するために、一対の連続する最小値及び最大値が使用される。
次いで、結果生じる頻度は、この頻度が呼吸信号の妥当な範囲(12〜30BrPM)に対応するかどうかを判定するために使用される。頻度fは、圧力変動率に関連する第2の値である。このレート、すなわち頻度が許容範囲内にある場合、圧力変動は呼吸により引き起こされるが、許容範囲内にない場合、圧力変動は他の空気擾乱により引き起こされる。
適切なファンの回転信号のサンプリングレートを設定することに加え、記憶装置に保存される必要があるサンプリングされるデータの量が決定される必要がある。サンプリング時間ウィンドウ(T)は、必要なデータのバッファサイズを決定し、このデータは、呼吸のトラッキング中、リアルタイムで更新(上書き)される。サンプリング時間ウィンドウは、少なくとも1つの呼吸サイクルを記録する必要がある。10〜30BrPMの呼吸数に基づいて、サンプルリング時間期間は、10BrPMに基づく6秒である。
第1及び第2の値のしきい値は、検出される圧力信号が実際の呼吸信号であるかどうかを決定するために使用される。前記しきい値が適切に設定されていない場合、ファンは誤ってオフにされる、又はマスクがオフにされる必要があるのに、依然としてファンが動作している可能性がある。
図7は、圧力(左y軸を使用するPaの単位のプロット70)及びファンの回転速度(右y軸を使用するRPMの単位のプロット72)を示す。正常な呼吸相74、軽い呼吸相76及び会話相78が示される。
例えばサンプリングウィンドウ中の最大のファンの回転速度と最小のファンの回転速度との差のような第1の値は、図7から次のように測定され得る。
正常な呼吸:信号の山対谷の値 7792−7310=482RPM
軽い呼吸 :信号の山対谷の値 7630−7518=112RPM
会話 :信号の山対谷の値 7791−7487=304
軽い呼吸を分析するとき、正常な呼吸のしきい値を使用する場合、この軽い呼吸は呼吸なしと検出される。結果として、呼吸のしきい値は、最悪の場合(最も軽い呼吸)を考慮すべきである。しかしながら、このしきい値が低すぎる場合、誤検出の危険性がある。
最も軽い呼吸の容積は、0.5Lの呼吸量を持つ最小活性状態中(例えば座っている)に起こる。12BrPMの呼吸数と0.5Lの容積に基づいて、異なるファンの速度設定下で、ファンの回転信号の差(ΔRPM)が検査される。
以下の表1は、異なるファンの速度設定下での、幾らかの漏れを伴う、12BrPM、0.5Lに基づく上記の検査データを示す。
この表は、しきい値が、優勢なファンの速度設定に依存して設定される、すなわち、第1の値に対する第1のしきい値は好ましくは、サンプリングウィンドウ中の平均のファンの回転速度に依存して設定されることを示し、これは概ねファンの速度設定に対応している。ファンの速度設定は、制御器に知られ、入力として供給されてもよいし、又は実際の平均のファンの速度が(例えば、ファンの回転信号のローパスフィルタリングされたバージョンに基づいて)測定されてもよい。
しきい値は、ΔRPM値の略半分に設定される。これは、減少したサンプリングレートを使用することは、図6Bに見られるように、実際の呼吸信号の山(ピーク)及び谷がサンプリングされないことを意味するからである。
図8は、会話期間に対する図7と同様のプロット(圧力プロット70及びRPMプロット72)を示す。通話中の圧力信号の振幅変化は、正常な呼吸中のよりも明らかであることを示す。しかしながら、ファンの回転信号は、正常な呼吸中のよりも小さい信号振幅を示す。これは、圧力センサの応答時間が、ファン信号よりもはるかに速いからである。会話の後の急な吸い込みは、圧力を検出することで検出されるが、ファンの信号は、それほど素早くこのピーク信号を反映しない。
これは、ファンの回転信号の使用の利点でもある。減少したサンプリングレートが、会話の後の急な吸い込みの信号の影響を捕らえることが可能であるように、ファンの回転信号は、長時間にわたり反応する。2Hzのサンプルレートに対し、ピーク呼吸信号のために、少なくとも0.5秒の時間期間が必要である。
会話中の呼吸信号の分析は、ファン回転信号の反応が常に0.5秒よりも長いため、最小の2Hzのサンプリングレートの場合であっても、ファンの回転のフィードバック信号は、前記会話中の信号を捕らえられ得るのに対し、圧力信号は、この呼吸信号を捕らえないことを示す。
以下の表2は、図8の圧力信号70における12個の連続する下向き傾斜に対する、圧力のピークが起こるとき、及び回転信号のピークが起こるときを示す。
呼吸の検出は、第1の値に第1のしきい値を適用すること、例えばΔRPM>しきい値、及び第2の値に範囲を適用すること、例えば12≦f≦30に基づく。これらの条件が両方とも満たされる場合、呼吸が検出され、システムはファンをオンに保つ。
f<12又はf>30である、或いはΔRPM≦しきい値である場合、呼吸は失われている。
呼吸が失われたとき、マスクが着用されていないと決定する前に、その間に呼吸が連続して検出されてならない遅延時間期間が適用されてもよい。例えば、ターンオフが実施される前に、10秒の期間が後に設けられてもよい。
上記の例において、呼吸の深さに関連する第1の値は、サンプリングウィンドウ中のファンの回転速度における最大スイングである。しかしながら、これは最も簡単な実施である。呼吸の深さを表す信号を決定するために、ファンの回転速度の他の分析が用いられてもよい。例えば、ファンの回転速度の変化率が付加的又は代替的に使用されてもよい。さらに、この分析は、極端なサンプル値が異常であると決定される場合、それらの値を無視してもよい。従って、呼吸の深さを表す値を生成するために、ファンの回転速度の分析における、追加の制約又は追加のパラメータが考慮されてもよい。
上記の例において、呼吸数に関連する第2の値は、ファンの回転速度における連続する最大値と最小値との間の時間に基づく周波数である。しかしながら、これもまた最も簡単な実施である。周波数は、しきい値のファンの回転速度における交点から代わりに得られてもよい。
他の例において、機械学習アルゴリズムがファンの回転速度の信号に適用されてもよく、この機械学習アルゴリズムは、次いで、呼吸数を表す値及び呼吸の深さを表す値を抽出する。これは、ファンの回転信号の最大値及び最小値、又は如何なる特定の時間期間も、ファンの回転信号からはっきりと抽出されることを必要としない。
図9は、着用されている状態から着用されていない状態への遷移を検出するためのマスクの動作方法を示す。この方法は、ステップ80において、ファンを自動的にオンにすることにより任意に開始する。
この方法は、次いで、以下のステップを有する。
ステップ90において、初期化を行う。これは、データバッファのサンプリング時間(例えば6秒)、サンプルレート(例えば2Hz)、第1の値のしきい値、第2の値の範囲及び遅延時間期間(例えば10秒)を設定することを含む。第1の値のしきい値は、表1に従って設定される。この表は、異なるシステム又はファンに対し異なってもよい。
ステップ91において、ファンを用いてマスクの空気チャンバ内に空気を吸い込む及び/又はマスクの空気チャンバから空気を吸い出す。
ステップ92において、ファンの回転速度を決定する。
ステップ94において、決定されるファンの回転速度又はファンの回転速度の変化から、ファンの圧力変動の大きさに関連する第1の値、及び圧力変動率に関連する第2の値を導出する。
ステップ96において、前記方法は、上述したように、前記第1の値及び前記第2の値に基づいて、マスクが着用されているかどうかを決定することを有する。マスクが着用されてなく、このことが前記遅延時間期間中に検出される場合、電力を節約するためにファンのスイッチが切られる。
これは、上述した第1の検出機能を実施する。
前記方法は、電子整流されるブラシレスモータを用いてファンを駆動させるステップを有し、回転速度は、このモータの内部センサにより決定される。その代わりに、ファンを駆動させるモータへの電気供給のリップルを検出することにより、回転速度が得られてもよい。
前記方法は、圧力監視システムから呼吸サイクルを決定するステップを有する。電気的制御可能な出口弁が使用されるとき、この出口弁は、呼吸サイクルの相に依存して制御される。
図10は、着用されていない状態から着用されている状態の遷移を検出するためのマスクの動作方法を示す。
この方法は、
ステップ100において、ファンが電気的に駆動していないとき、このファンの回転により引き起こされる誘導電流又は電圧スパイクを検出するステップ、及び
ステップ102において、前記検出される誘導電流又は電圧スパイクに応じて、前記ファンの電気駆動を開始するステップ
を有する。
前記方法は、マスクが着用されていないことが検出される場合、ステップ104において、(続いて)ファンをオフにするステップも含む。この検出は、図9のステップ91から96に基づいている。
同様に、ファンをオンにする図9の最初のステップ80は、図10の方法のステップ100及び102に基づいて行われる。
マスクは、(図1に示されるように)鼻及び口だけを覆うためでもよいし、又はフルフェイスマスクでもよい。
示される例は、周囲空気をろ過するためのマスクである。
上述されるマスクのデザインは、フィルタ材料により形成されるメインの空気チャンバを有し、この空気チャンバを介してユーザは空気を吸い込む。
代替のマスクのデザインは、上にも述べたように、ファンと直列に配されるフィルタを有する。この場合、ファンは、ユーザがフィルタを介して空気を吸い込むのを補助する、故に、ユーザの呼吸努力を減らす。出口弁は、吐き出された空気を放出することを可能にし、入口弁は、入口に設けられる。
本発明は、入口弁及び/又は出口弁を制御するために、呼吸により引き起こされる圧力変動を検出するのに再び利用されてもよい。本例におけるファンは、ユーザが直列するフィルタを介して空気を吸い込むのを補助するために、吸入中にオンにされる必要があるが、出口弁が開いている呼気中にファンがオフにされてもよい。従って、得られる圧力情報は、ファンの動作が必要ないとき、電力を節約するようにファンを制御するために再び使用されてもよい。マスクが着用されているかどうかの検出が実施されてもよい。
本発明は、ファンにより補助される吸気又は呼気を備える、及びフィルタ膜により形成される空気チャンバ又は密閉空気チャンバを備える、多くの異なるマスクのデザインに利用されてもよいことが分かる。
故に、上述したような1つのオプションは、例えば排気弁が開いているとき、空気チャンバの内部から空気チャンバ外に空気を吸い出すためだけのファンの使用である。このような場合、呼気中にマスクの容積内への、きれいなろ過された空気の最終的な流れが存在するように、マスクの容積内の圧力は、ファンにより外部大気圧より下に維持される。故に、低い圧力は、呼気中はファンにより及び吸気中(ファンがオフにされるとき)はユーザにより引き起こされてもよい。
代替オプションは、周辺環境から空気チャンバ内に空気を吸い込むためだけのファンの使用である。このような場合、ファンは、空気チャンバ内の圧力を増大させるように動作するが、使用時の空気チャンバ内の最高圧力は、特に高い圧力で補助される呼吸を目的としないので、空気チャンバの外部の圧力よりも高い4cmH2O未満を維持する。従って、低出力のファンが使用されることができる。
全ての場合において、空気チャンバ内の圧力は好ましくは、外部大気圧より上である2cmH2O未満、1cmH2O未満、又は0.5cmH2O未満のままである。従って、汚染用マスクは、持続気道陽圧を提供するのに使用するためではなく、患者に治療を施すためのマスクではない。
マスクは好ましくは、低電力動作が特に関心があるので、バッテリーで動作する。
呼吸サイクルの検出は、監視機能の付加的使用として好ましい特徴であるが、これは任意である。
上述したように、実施例は、必要とされる様々な機能を実行するために、ソフトウェア及び/又はハードウェアと共に、多数の方法で実施される制御器を利用する。処理器は、必要とされる機能を実行するために、ソフトウェア(例えば、マイクロコード)を用いてプログラムされる1つ以上のマイクロプロセッサを用いる制御器の一例である。しかしながら、制御器は、処理器を用いて又は用いずに実施されてもよいし、幾つかの機能を行うための専用のハードウェアと、他の機能を行うための処理器(例えば1つ以上のプログラムされるマイクロプロセッサ及び関連する回路)との組み合わせとして実施されてもよい。
本開示の様々な実施例に用いられる制御器の構成要素の例は、限定ではないが、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含む。
様々な実施において、処理器又は制御器は、例えばRAM、PROM、EPROM及びEEPROMである揮発性及び不揮発性のコンピュータメモリのような1つ以上の記憶媒体に関連付けられてもよい。この記憶媒体は、1つ以上の処理器及び/又は制御器上で実行されるとき、必要とされる機能を行う1つ以上のプログラムで符号化されてもよい。様々な記憶媒体は、処理器及び/又は制御器内に取り付けられてもよいし、或いは記憶媒体に記憶される1つ以上のプログラムが処理器又は制御器に読み込まれるように、搬送可能でもよい。
開示される実施例に対する他の変形例は、図面、本開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、本発明を実施する際に当業者により理解及び実施され得る。請求項において、「有する」という用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、要素が複数あることを述べなくても、その要素が複数あることを排除するものではない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。請求項における如何なる参照符号も、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。