本発明は、吸収性シートなどの紙製品および吸収性シートなどの紙製品を製造する方法に関する。本発明による吸収性紙製品は、当技術において既知である他の吸収性紙製品よりも優れている特性の顕著な組み合わせを有する。いくつかの特定の実施形態において、本発明による吸収性紙製品は、吸収性ハンドタオル、フェイシャルティッシュまたはトイレットペーパーに特に非常に適している特性の組み合わせを有する。
本明細書において使用される「紙製品」という用語は、主成分としてセルロースを有する製紙繊維を取り込む任意の製品を包含する。これは、例えば、ペーパータオル、トイレットペーパー、フェイシャルティッシュなどとして市場に出ている製品を含むであろう。製紙繊維は、バージンパルプまたは再生(二次)セルロース系繊維、あるいはセルロース系繊維を含む繊維混合物を含む。木材繊維は、例えば、北部および南部の軟材クラフト繊維などの軟材繊維、ならびに、例えば、ユーカリ、カエデ、カバノキ、アスペンなどの硬材繊維を含む落葉樹および針葉樹から得られるものを含む。本発明の製品の製造に適した繊維の例には、木綿繊維または木綿派生物、マニラ麻、ケナフ、サバイ草、亜麻、エスパルト草、わら、ジュート麻、バガス、トウワタ綿毛繊維およびパイナップル葉繊維などの非木材繊維が含まれる。
「完成紙料」および同様の専門用語は、製紙繊維、および、任意選択で、湿潤強力樹脂、デボンダーなどを含む、紙製品を製造するための水性組成物を指す。様々な完成紙料を本発明の実施形態において使用できて、特定の完成紙料が、以下で論じる例において開示されている。いくつかの実施形態において、完成紙料は、同一出願人による米国特許第8,080,130号(この開示の全体を引用して援用する)に記載の明細書に従って使用される。この特許における完成紙料は、とりわけ、少なくとも約15.5mg/100mmの粗さを有するセルロース系長繊維を含む。完成紙料の例はまた、以下で論じる例においても示される。
本明細書において使用されるとき、製紙プロセスにおいて完成品まで乾燥される初期の繊維および液体混合物は、「紙匹」および/または「未完成紙匹」と呼ばれる。製紙プロセスからの乾燥された単一層製品は「ベースシート」と呼ばれる。さらに、製紙プロセスの製品は、「吸収性シート」と呼ばれることもある。この点に関して、吸収性シートは、単一のベースシートと同じであってもよい。あるいは、吸収性シートは、多層構造にあるような複数のベースシートを含んでもよい。さらに、吸収性シートは、初期のベースシート形成プロセスにおいて乾燥された後、変換されたベースシートから最終紙製品を形成するために、別の処理が行われてもよい。「吸収性シート」は、例えば、ハンドタオルのような市場に出ている商品を含む。
本明細書において本発明を説明するとき、「縦方向」(MD)および「横方向」(CD)という用語が、当技術においてよく理解されたそれらの意味に従って使用される。すなわち、ファブリックまたは他の構造物のMDは、製紙プロセスにおいて構造物が製紙機上を移動する方向を指し、CDは、構造物のMDと交差する方向を指す。同様に、紙製品を参照するとき、紙製品のMDは、製紙プロセスにおいて製品が製紙機上を移動した製品上の方向を指し、製品のCDは、製品のMDと交差する方向を指す。紙製品のMDに関して、「下流」は、「上流」部分の前に形成された部分を指す。
図1は、本発明による紙製品を製造するために使用され得る製紙機200の一例を示す。製紙機200の構成および操作の詳細な説明は、同一出願人による米国特許第7,494,563号(「’563特許」)(この開示の全体を引用して援用する)に記載されている。特に、’563特許は、通気乾燥(TAD)を使用しない製紙プロセスについて記載している。以下は、製紙機200を使用して吸収性シートを形成するためのプロセスの概要である。
製紙機200は、クレーピング操作が実施されるプレス部100を含む3段のファブリックループ装置である。プレス部100の上流が形成部202である。形成部202は、ロール208および210によって支持された形成ワイヤ206上に水性完成紙料を堆積させ、それによって初期の水性セルロース系紙匹116を形成するヘッドボックス204を含む。形成部202はまた、紙匹116がまた、フェルト102上でも直接形成されるように、製紙フェルト102を支持する形成ロール212も含む。フェルトラン214は、サクション転向ロール104の周りに延び、次いで、紙匹116がバッキングロール108上に堆積されるシュープレス部216まで延びる。紙匹116は、紙匹116をクレーピングニップ120へと運ぶバッキングロール108への紙匹116の転移と同時にウエットプレスされる。しかし、他の実施形態では、バッキングロール108上に転移される代わりに、紙匹116が、フェルトラン214からエンドレスベルト上に脱水ニップ内で転移され、次いで、エンドレスベルトが、紙匹116をクレーピングニップ120へと運ぶ。このような構成の一例が、米国特許第8,871,060号(この全体を本明細書に引用して援用する)に示されている。
紙匹116は、クレーピングニップ120内で構造化ファブリック112上に転移され、次いで、真空成形ボックス114によって真空引きされる。このクレーピング操作の後、紙匹116は、ヤンキードライヤ218の表面に塗布されたクレーピング接着剤を使用して、別のプレスニップ217内でヤンキードライヤ218上に堆積される。紙匹116は、加熱された円筒であるヤンキードライヤ218上で乾燥され、紙匹116はまた、高噴射速度の衝突空気によってフード内でヤンキードライヤ218の周りで乾燥される。ヤンキードライヤ218が回転するにつれ、紙匹116は、位置220においてドライヤ218から剥がされる。次いで、紙匹116が、引き続き巻取リール(図示せず)に巻き取られてもよい。リールは、さらにクレープを紙匹に与えるために、定常状態においてヤンキードライヤ218よりも低速で運転されてもよい。任意選択で、ヤンキードライヤ218から剥がされるときに紙匹116を従来通りドライクレーピングするために、クレーピングドクタブレード222が使用されてもよい。
クレーピングニップ120内で、紙匹116は、構造化ファブリック112の上側上に転移される。クレーピングニップ120は、バッキングロール108と構造化ファブリック112との間に画定され、構造化ファブリック112は、クレーピングロール110によってバッキングロール108に押し付けられる。紙匹116は、構造化ファブリック112に転移されるとき水分含有量がまだ高いため変形可能であり、したがって、構造化ファブリック112を構成する糸の間に形成されたポケット内に紙匹の一部が引き込まれる。(構造化ファブリックのポケットは以下で詳細に説明する。)特に製紙プロセスでは、構造化ファブリック112は、製紙フェルト102よりも低速で移動する。したがって、紙匹116は、構造化ファブリック112上に転移されるときクレーピングされる。
真空成形ボックス114による吸引はまた、以下で説明する通り、紙匹116を構造化ファブリック112の表面にあるポケットに引き込む助けとなり得る。構造化ファブリック112に沿って進むとき、紙匹116は、大部分の水分が除去された非常に均一な状態に達する。それによって紙匹116は、ある形状が構造化ファブリック112によってある程度永続的に与えられ、この形状は、紙匹116が構造化ファブリック112のポケットに引き込まれるドーム形領域を含む。
製紙機200を使用して製造されたベースシートはまた、ベースシートを特定の製品に変換するために、当技術において既知の通り、別の処理が施されてもよい。例えば、ベースシートがエンボス加工されてもよく、2枚のベースシートが多層製品に合わせられ得る。このような変換プロセスの具体例は、当技術において周知である。
上述の’563特許に記載のプロセスを使用して、紙匹116は、構造化ファブリック112の上側上に転移されたとき、TADプロセスなどの他の製紙プロセスにおける類似の操作と比べて、より高い均一性を有する程度まで脱水される。すなわち、紙匹116は、クレーピングニップ120に入る前に約30パーセント〜約60パーセントの均一性(すなわち、固形分)を有するように圧縮脱水される。クレーピングニップ120内で、紙匹116は、約30ポンド/リニアインチ(PLI)〜約200PLIの荷重を受ける。さらに、バッキングロール108と構造化ファブリック112との間に速度差が存在する。この速度差はファブリッククレーピング率と呼ばれ、次のように計算できる:
ファブリッククレープ%=S1/S2−1
(式中、S1はバッキングロール108の速度であり、S2は構造化ファブリック112の速度である。)
特定の実施形態において、ファブリッククレープ率または「クレーピング比」は、約3%〜約100%のどこかであり得る。紙匹均一性、クレーピングニップ120において発生する速度差、クレーピングニップ120において加えられる圧力、ならびに構造化ファブリック112およびクレーピングニップ120の配置のこの組み合わせが、セルロース繊維を再配置するように作用する一方、紙匹116は依然として構造変化を受けるのに十分に柔軟である。特に、理論に拘束されることは望まないが、構造化ファブリック112のより遅い形成表面速度が、紙匹116を構造化ファブリック112内の開口部にかなり成形し、繊維がクレーピング比に比例して再整列すると考えられる。
特定のプロセスが製紙機200に関連して説明されてきたが、本明細書に開示の本発明が前述の製紙プロセスに限定されないことを当業者なら理解するであろう。例えば、上述の非TADプロセスではなく、本発明は、TAD製紙プロセスに関連し得る。TAD製紙プロセスの一例が、米国特許第8,080,130号(この開示の全体を引用して援用する)に示されている。
図2は、本発明の実施形態による紙製品を形成するための構成を有する構造化ファブリック300の紙匹接触側の一部の詳細を示す図面である。構造化ファブリック300は、ファブリックが製紙プロセスにおいて使用されるとき縦方向(MD)に走る経糸302、および横方向(CD)に走る緯糸304を含む。経糸302および緯糸304は、構造化ファブリック300の本体を形成するように一緒に織られる。構造化ファブリック300の紙匹接触表面は、ナックル(このうちの2つの外形が図2に描かれており、306および310と表示されている)によって形成され、ナックルは、経糸302上に形成されるが、緯糸304上には形成されない。しかし、図2に示した構造化ファブリック300は、経糸302上にナックルを有するだけであるが、本発明は、経糸ナックルを有するだけの構造化ファブリックに限定されず、むしろ、経糸ナックルおよび緯糸ナックルの両方を有するファブリックを含むことに留意されたい。実際、経糸ナックルのみを有するファブリックならびに経糸ナックルおよび緯糸ナックルの両方を有するファブリックを以下で詳細に説明する。
構造化ファブリック300内のナックル306および310は、製紙操作の間に紙匹116が接触する表面を構成する平面内にある。ポケット308(このうちの1つが点線で囲まれた部分として図2に示されている)は、ナックル306とナックル310との間の部分内に画定されている。ナックル306および310に接触しない紙匹116の一部は、上述の通りポケット308に引き込まれる。これが、得られる紙製品に見られるドーム形領域を生じる、ポケット308に引き込まれる紙匹116の一部である。
構造化ファブリック300のMDの経糸ナックル306および310の著しい長さを当業者なら理解するであろう。さらに、長い経糸ナックル306および310がMDの長いポケットの外形を描くようにファブリック300が構成されることを当業者なら理解するであろう。本発明の特定の実施形態において、経糸ナックル306および310は、約2mm〜約6mmの長さを有する。当技術において既知のほとんどの構造化ファブリックは、(ファブリックが、経糸ナックルを少しでも有する場合)さらに短い経糸ナックルを有する。以下で説明する通り、より長い経糸ナックル306および310は、製紙プロセスの間に、紙匹116にとってさらに大きな接触面積を与え、これが、より短い従来の経糸ナックルを有する吸収性シートと比べて、本発明による吸収性シートに見られる向上した柔軟性の少なくとも部分的な要因であり得ると考えられる。
本明細書に記載の構造化ファブリックのパラメータを定量化するために、同一出願人による米国特許出願公開第2014/0133734号、第2014/0130996号、第2014/0254885号および第2015/0129145号(以下、「ファブリック特性評価刊行物」と呼ぶ)に記載のファブリック特性評価技術が使用され得る。ファブリック特性評価刊行物の開示の全体を引用して援用する。このようなファブリック特性評価技術は、ナックル長さおよび幅、ナックル密度、ポケット面積、ポケット密度、ポケット深さならびにポケット体積を含む構造化ファブリックのパラメータを容易に定量化することを可能にする。
図3A〜図3Eは、本発明の実施形態に従って製造された、ファブリック1〜15と表示されている構造化ファブリックの特性のいくつかを示す。図3Fはまた、ファブリック16および17と表示されている従来の構造化ファブリックの特性を示す。図3A〜図3Fに示したタイプの構造化ファブリックは、ニューハンプシャー州、ロチェスターのAlbany Internationalおよびドイツ、ハイデンハイムのVoith GmbHを含む多数の製造業者によって製造することができる。ファブリック1〜15は、ファブリック1〜15内の接触面積の大部分が、(ファブリックが、緯糸ナックルを少しでも有する場合)緯糸ナックルではなく経糸ナックルに由来するような、長い経糸ナックルのファブリックを有する。より短い経糸ナックルを有するファブリック16および17は比較のために提供されている。図3A〜図3Fに示した特性はすべて、上述のファブリック特性評価刊行物中の技術を使用して決定され、特に、ファブリック特性評価刊行物に記載されている非長方形の平行四辺形計算法を使用して決定された。図3A〜図3Fの「N/C」の表示は、特定の特性が決定されなかったことを意味することに留意されたい。
構造化ファブリックの透気度は、構造化ファブリックを使用して製造された紙製品の特性に影響し得る別の特性である。構造化ファブリックの透気度は、メリーランド州、ヘイガーズタウンのFrazier Precision Instrument CompanyによるFrazier(登録商標)差圧透気度測定器など、当技術において周知の装置および試験に従って測定される。一般的に言えば、本発明による紙製品を製造するために使用される長い経糸ナックルの構造化ファブリックは、高い透気度を有する。本発明の特定の実施形態において、長い経糸ナックルの構造化ファブリックは、約450CFM〜約1000CFMの透気度を有する。
図4A〜図4Eは、図3A〜図3Eに特性を示したものなどの長い経糸ナックルの構造化ファブリックを使用して製造された吸収性シートの写真である。さらに具体的には、図4A〜図4Eは、吸収性シートの空気側、すなわち、吸収性シートを形成するプロセスの間に構造化ファブリックに接触していた吸収性シートの側面を示す。したがって、吸収性シートの示された側面から突出しているドーム形領域を含む、構造化ファブリックとの接触によって吸収性シートに与えられる特異な形状が図4A〜図4Eに見られ得る。吸収性シートのMDは、これらの図において縦に示されることに留意されたい。
吸収性シート1000の特定の特徴は、図5において注釈が付けられており、この図は図4Eとして示した写真に基づく。吸収性シート1000は、複数の実質的に長方形のドーム形領域を含み、これらのいくつかは、図5において外形が描かれ、1010、1020、1030、1040、1050、1060、1070および1080と表示されている。上で説明の通り、ドーム形領域1010、1020、1030、1040、1050、1060、1070および1080は、吸収性シート1000を形成するプロセスの間に構造化ファブリックのポケットに引き込まれた紙匹の一部に対応する。接続領域は、これらのいくつかが図5において1015、1025および1035と表示されており、ドーム形領域を相互接続するネットワークを形成する。接続領域は、吸収性シート1000を形成するプロセスの間に構造化ファブリックのナックルの面内に形成された紙匹の一部に概ね対応する。
従来の吸収性シートとは異なる図4A〜図4Eおよび図5に示した吸収性シートのいくつかの特徴を当業者ならすぐに認識するであろう。例えば、すべてのドーム形領域は、ドーム形領域の頂部内に形成された複数本の凹筋を含み、凹筋は、ドーム形領域にわたって吸収性シートのCDに延びる。これらの凹筋のいくつかは外形が描かれており、図5において1085と表示されている。特に、ほぼすべてのドーム形領域が、このような凹筋を3本有し、ドーム形領域のいくつかは、4本、5本、6本、7本、またはさらには8本の凹筋を有する。凹筋の数は、(以下で説明する)レーザ走査プロファイリングを使用して確認できる。このようなレーザ走査プロファイリングを使用して、本発明の実施形態による特定の吸収性シートにおいて、ドーム形領域あたり平均で約6本の凹筋が存在することが明らかになった。
理論によって制限されることなく、本発明者らは、紙匹が、本明細書に記載の製紙プロセスの間に本明細書に記載の構成を有する構造化ファブリック上に転移されるとき、図4A〜図4Eおよび図5に示した吸収性シートに見られる凹筋が形成されると考える。具体的には、紙匹が構造化ファブリック上に転移されるときに紙匹をクレーピングするために速度差が利用されると、紙匹は、構造化ファブリックのナックル上を「鋤き」、ナックル間のポケット内に入り込む。その結果、紙匹の構造内、特に、構造化ファブリックのポケット内に移動した紙匹の部分内にひだが形成される。したがって、紙匹内の2つのこのようなひだの間に凹筋が形成される。本明細書に記載の長い経糸ナックルの構造化ファブリック内の長いMDポケットのために、構造化ファブリック内のポケットに及ぶ紙匹の一部にわたって鋤き/折り畳み作用が複数回起こる。したがって、本明細書に記載の長い経糸ナックルの構造化ファブリックを使用して製造された吸収性シートのドーム形領域のそれぞれにおいて複数本の凹筋が形成される。
やはり、理論によって制限されることなく、本発明者らは、ドーム形領域内の凹筋が、本発明による吸収性シートにおいて知覚される向上した柔軟性に寄与し得ると考える。具体的には、凹筋は、従来のドーム形領域を有する吸収性シートと比べて、吸収性シートに触れたとき知覚されるより滑らかで平坦な平面を与える。知覚平面の差は図6Aおよび図6Bに示されており、これらの図は、本発明による吸収性シート2000および比較のシート3000それぞれの断面を示す図面である。吸収性シート2000において、ドーム形領域2010および2020は凹筋2080を含み、隆起部が凹筋2080間に形成されている(隆起部/凹部は、上述の製紙プロセスの間の紙匹内のひだに対応する)。小さい凹筋2080および凹筋2080の周りの複数の隆起部の結果、(図6Aにおいて点線で示した)平坦で滑らかな知覚平面P1が形成される。これらの平坦で滑らかな平面P1が、吸収性シート2000に触れたとき感知される。本発明者らはさらに、使用者は、ドーム形領域2010および2020の表面における凹筋2080のわずかな不連続性を感知することができず、使用者は、ドーム形領域2010および2020の間の短い距離を感知することもできないと考える。したがって、吸収性シート2000は、滑らかで柔軟な表面を有すると知覚される。一方、知覚平面P2は、図6Bに示す通り、比較のシート3000において、従来のドーム3010および3020によるさらに丸みのある形状を有し、従来のドーム3010および3020は離れている。従来のドーム3010および3020の知覚平面P2が互いにかなりの距離離れているため、比較のシート3000は、凹筋2080を有するドーム形領域2010および2020に見られる知覚平面P1と比べて、滑らかではなく柔軟ではないと知覚されると考えられる。
製紙プロセスの性質のために、吸収性シート内のすべてのドーム形領域が同一になるわけではないことを当業者なら理解するであろう。実際、上で述べたように、本発明による吸収性シートのドーム形領域は、異なる数の凹筋を有し得る。同時に、本発明の任意の特定の吸収性シート内に観察されるドーム形領域のうちの少数は、凹筋を含まない可能性がある。これは、吸収性シートの全体的な特性に影響しないが、ドーム形領域の大部分が凹筋を含む場合に限る。したがって、本発明者らが、吸収性シートは、複数本の凹筋を含むドーム形領域を有すると述べるとき、吸収性シートが、凹筋のない少数のドーム形領域を有し得ることが理解されるであろう。
吸収性シート内の凹筋の長さおよび深さ、ならびにドーム形領域の長さは、当技術において周知のレーザ走査技術を使用して得られるドーム形領域の表面プロファイルから決定できる。図7Aおよび図7Bは、本発明による2つの吸収性シート内のドーム形領域にわたるレーザ走査プロファイルを示す。レーザ走査プロファイルの山は、凹筋に隣接するドームの部分であり、プロファイルの谷は、凹筋の底である。このようなレーザ走査プロファイルを使用して、本発明者らは、凹筋が、ドーム形領域の隣接部分の頂部から下に約45ミクロン〜約160ミクロンの深さまで延びることを見出した。特定の実施形態において、凹筋は、ドーム形領域の隣接部分の頂部から下に平均約90ミクロン延びる。いくつかの実施形態において、ドーム形領域は、吸収性シートの実質的にMDに長さで合計約2.5mm〜約3mm延びる。ドーム形領域のMDのこのような長さが、従来のファブリック内のドーム形領域の長さよりも長いこと、および前述の通り、長いドーム形領域は、少なくとも部分的に、吸収性シートを形成するために使用される構造化ファブリック内の長いMDポケットの結果であることを当業者なら理解するであろう。レーザ走査プロファイルから、本発明の実施形態において、凹筋が、ドーム形領域の長さに沿って約0.5mm離れていたことも分かる。
図4A〜図4Eおよび図5に示した吸収性シートに見られ得る別の特異な特徴は、ドーム形領域の実質的に連続した階段状のラインがシートのMDに延びるようにMDに相互にずれているドーム領域を含む。例えば、図5を再び参照して、ドーム形領域1010は、ドーム形領域1020に隣接して位置し、2つのドーム形領域は、領域1090内で重なる。同様に、ドーム形領域1020は、領域1095内でドーム形領域1030に重なる。相互にずれたドーム形領域1010、1020および1030は、吸収性シート1000のMDに実質的に沿って連続した階段状のラインを形成する。他のドーム形領域は、同様の連続した階段状のラインをMDに形成する。
本発明者らは、細長い相互にずれたドーム形領域の構成は、ドーム形領域にわたって延びる凹筋と組み合わさって、さらに安定な構成を有する吸収性シートを生じると考える。例えば、相互にずれたドーム形領域は、吸収性シートのヤンキー側に滑らかで平坦な表面を与え、それによって、吸収性シート上に圧力点がより良く分布する。吸収性シートのヤンキー側は、製紙プロセスの間に構造化ファブリックに引き込まれる吸収性シートの空気側と反対の吸収性シートの側面であることに留意されたい。実際、相互にずれたドーム形領域は、吸収性シート構造物を平坦にするMD方向の長いボードのように作用する。相互にずれたドーム形領域および凹筋の組み合わせの結果生じるこの作用は、例えば、製紙プロセスの間、紙匹をヤンキードライヤの表面により良く配置させ、この結果、より良い吸収性シートが得られる。
ドーム形領域の連続したラインと同様、接続領域の実質的に連続したラインは、吸収性シート1000のMDに沿って階段状に延びる。例えば、実質的にCDに走る接続領域1015は、実質的にCDに走る接続領域1025と近接している。接続領域1025もまた、実質的にMDに走る接続領域1035と近接している。同様に、接続領域1015は、接続領域1025および接続領域1055と近接している。要約すると、MD接続領域は、CD接続領域よりも実質的に長く、したがって、階段状の連続した接続領域のラインが吸収性シートに沿って見える。
前述の通り、吸収性シートのドーム形領域および接続領域のサイズは、吸収性シートを製造するために使用される構造化ファブリック内のポケットおよびナックルのサイズに概ね対応する。この点に関して、本発明者らは、ドーム形領域および接続領域の相対的なサイズが、ファブリックを使用して製造される吸収性シートの柔軟性に寄与すると考える。本発明者らはまた、ドーム形領域および接続領域の実質的に連続したラインの結果、柔軟性がさらに改善されると考える。本発明の特定の実施形態において、ドーム形領域にわたるCDの距離は約1.0mmであり、MD方向の接続領域にわたるCDの距離は約0.5mmである。さらに、実質的に連続したライン内の隣接するドーム形領域間の重なる領域/触れる領域は、MDに沿って長さ約1.0mmである。このような寸法は、吸収性シートの目視検査によって、または上述のレーザ走査プロファイルによって決定できる。これらの寸法が、本明細書に記載の本発明の他の特徴と組み合わせられるとき、例外的に柔軟な吸収性シートが得られる。
本発明による製品の特性を評価するために、図1に示した一般的な構成を有する製紙機において上述のプロセスを使用し、図3Eに示したファブリック15を使用して吸収性シートを製造した。比較のために、(図3Fにも示した)より短い経糸長さのナックルのファブリック17を同じプロセス条件下で使用して製品を製造した。これらの試行のベースシートを製造するために使用したパラメータを表1に示す。
2層ののり付けした組織のプロトタイプを製造するためにベースシートを変換した。表2は、試行のための変換仕様を示す。
ファブリック15(すなわち、長い経糸ナックルのファブリック)を使用した試行において形成されたシートは、ファブリック17(すなわち、より短い経糸ナックルのファブリック)を使用した試行において形成されたシートより滑らかで、より柔軟であることが明らかになった。ファブリック15を使用して製造されたシートの厚さ及びかさ等の他の重要な特性は、ファブリック17を使用して製造されたシートの特性と非常に似ていることが明らかになった。したがって、長い経糸ナックルのファブリック15を使用して製造されたベースシートは、吸収性製品の他の重要な特性を低下させることなく、より短い経糸ナックルのファブリック17を使用した吸収性製品より柔軟である吸収性製品を製造するために潜在的に使用され得ることは明らかである。
上述のファブリック特性評価刊行物に記載の通り、平面体積指数(PVI)は、構造化ファブリックの特性評価に有用なパラメータである。構造化ファブリックのPVIは、接触面積比(CAR)に有効ポケット体積(EPV)を掛け、100を掛けて計算され、EPVは、ポケット面積推定値(PA)と、測定されたポケット深さとの積である。ポケット深さは、実験室で構造化ファブリック上に形成された手すきシートの厚さを測定し、次いで、測定された厚さとポケット深さとの相関を示すことによって最も正確に計算される。さらに、特に記載のない限り、本明細書に記載のPVIに関連するパラメータはすべて、この手すきシートの厚さ測定法を使用して決定された。さらに、非長方形の平行四辺形PVIは、接触面積比(CAR)に有効ポケット体積(EPV)を掛け、100を掛けて計算され、CARおよびEPVは、非長方形の平行四辺形の単位格子面積計算を使用して計算される。本発明の実施形態において、長い経糸ナックルの構造化ファブリックの接触面積は、約25%〜約35%の間で変化し、ポケット深さは、約100ミクロン〜約600ミクロンの間で変化し、それによってPVIは、それに応じて変化する。
PVIに関連する構造化ファブリックの特性評価に有用な別のパラメータは、構造化ファブリックの平面体積密度指数(PVDI)である。構造化ファブリックのPVDIは、PVIにポケット密度を掛けたものと定義される。本発明の実施形態において、ポケット密度は、約10cm−2〜約47cm−2の間で変化することに留意されたい。構造化ファブリックのさらに別の有用なパラメータは、PVDIにファブリックのナックルの長さおよび幅の比を掛けることによって生成できて、それによってPVDI−ナックル比(PVDI−KR)が得られる。例えば、本明細書に記載の長い経糸ナックルの構造化ファブリックのPVDI−KRは、構造化ファブリックのPVDIに、MDの経糸ナックル長さ対CDの経糸ナックル幅の比を掛けたものになるであろう。PVDIおよびPVDI−KRを計算するために使用される変数から明らかなように、これらのパラメータは、構造化ファブリックを使用して製造された紙製品の形状に影響する、構造化ファブリックの重要な態様(接触面積のパーセント、ポケット密度およびポケット深さを含む)を考慮しており、したがって、PVDIおよびPVDI−KRは、柔軟性および吸収度などの紙製品の特性を示し得る。
PVI、PVDI、PVDI−KRおよび他の特性を、本発明の実施形態による3つの長い経糸ナックルの構造化ファブリックについて決定した。結果は、図8にファブリック18〜20として示されている。比較のために、図8にファブリック21として示されているように、PVI、PVDI、PVDI−KRおよび他の特性を、より短い経糸ナックルの構造化ファブリックについても決定した。特に、ファブリック18〜20のPVDI−KRは約43〜約50であり、ファブリック21における16.7のPVDI−KRよりも著しく高い。
吸収性シートを製造するためにファブリック18〜21を使用し、図9に示す通り、吸収性シートの特性を決定した。図9に示した特性は、上述のファブリック特性評価刊行物に記載されている同じ技術を使用して決定した。この点に関して、相互接続領域の決定は、構造化ファブリック上の経糸ナックルに対応し、ドーム領域は、構造化ファブリックのポケットに対応する。また、やはり、長い経糸ナックルのファブリック18〜20から製造されたシートは、各ドーム領域内に複数本の凹筋を有することが分かった。一方、より短い経糸ナックルのファブリック21から形成された吸収性シートのドーム形領域は、多くても1本の凹筋を有しており、ドーム形領域の多くは、凹筋を全く有していなかった。
官能柔軟性を、図9に示した吸収性シートについて決定した。官能柔軟性は、標準化された試験法を使用して、訓練を受けた評価者によって決定される、紙製品の知覚される柔軟性の尺度である。さらに具体的には、官能柔軟性は、柔軟性を決定した経験が豊富な評価者によって測定され、評価者は、紙をつかみ、紙の知覚される柔軟性を確かめるための特定の技法に従う。官能柔軟性の数値が高いほど、知覚される柔軟性は高くなる。ファブリック18〜20から製造されたシートの場合、ファブリック18〜20を使用して製造された吸収性シートは、ファブリック21を使用して製造された吸収性シートよりも、柔軟性が0.2〜0.3単位高いことが明らかになった。この差は顕著である。さらに、官能柔軟性は、ファブリックのPVDI−KRと相関することが明らかになった。すなわち、構造化ファブリックのPVDI−KRが高いほど、得られる官能柔軟性の数値は高くなる。したがって、本発明者らは、PVDI−KRが、構造化ファブリックを使用するプロセスを使用して製造された紙製品において得られる柔軟性の良好な指標であり、より高いPVDI−KRの構造化ファブリックが、より柔軟な製品を生じると考える。
図10A〜図10Dは、本発明の様々な実施形態による別の長い経糸ナックルのファブリック22〜41の特性を示し、各ファブリックのPVI、PVDIおよびPVDI−KRを含む。特に、これらの構造化ファブリックは、上述の構造化ファブリックよりも広い範囲の特性を有する。例えば、ファブリック22〜41の経糸ナックルの接触長さは、約2.2mm〜約5.6mmの範囲であった。しかし、本発明の別の実施形態では、経糸ナックルの接触長さは、約2.2mm〜約7.5mmの範囲であり得る。ファブリック22〜37および41の場合、ファブリック上に手すきシートを形成し、次いで、手すきシート上のドームのサイズ(上述の通り、ポケットのサイズに対応するドームのサイズ)を決定することによってポケット深さを決定したことに留意されたい。上述のファブリック特性評価特許に記載の技術を使用して、ファブリック38〜40のポケット深さを決定した。
本発明の実施形態による吸収性シートの特性を評価するために、別の試行を実施した。これらの試行では、ファブリック27および38を使用した。これらの試行については、上述のプロセスと共に、図1に示した一般的な構成を有する製紙機を使用した。これらの試行のベースシートを製造するために使用したパラメータを表3に示した。変化する率の表示は、異なる試行実施時にプロセス変数を変化させたことを意味することに留意されたい。
これらの試行におけるベースシートを、エンボス加工されていない単一層ロールに変換した。
ファブリック27を使用して製造された吸収性シートの写真を図11A〜図11Eに示し、ファブリック38を使用して製造された吸収性シートの写真を図12A〜図12Eに示した。図11A〜図11Eおよび図12A〜図12Eから明らかなように、吸収性シートのドーム形領域は、上述の吸収性シートのように複数本の凹筋を含む。さらに、やはり、上述の吸収性シートのように、ファブリック27および38を使用して製造された吸収性シートは、吸収性シートのMDの実質的に連続した階段状のライン、およびドーム形領域間の実質的に連続した階段状の接続領域を生じる相互にずれたドーム形領域を含む。
レーザ走査を使用して、上述の吸収性シートにおいてプロファイルを決定した同じ方法で、ファブリック27および38から製造されたベースシート内のドーム形領域のプロファイルを決定した。ファブリック27を使用して製造されたベースシート内のドーム形領域は、4〜7本の凹筋を有し、ドーム形領域あたり平均5.2本の凹筋が存在することが明らかになった。ドーム形領域の凹筋は、ドーム形領域の隣接部分の頂部から下に約132〜約274ミクロン延び、平均深さは約190ミクロンであった。さらに、ドーム形領域は、ベースシートのMDに約4.5mm延びていた。
ファブリック38を使用して製造されたベースシート内のドーム形領域は、4〜8本の凹筋を有し、ドーム形領域あたり平均6.29本の凹筋が存在した。ファブリック38を使用して製造されたベースシート内のドーム形領域の凹筋は、ドーム形領域の隣接部分の頂部から下に約46〜約159ミクロン延び、平均深さは約88ミクロンであった。さらに、ドーム形領域は、ベースシートのMDに約3mm延びていた。
ファブリック27および38を使用して製造されたベースシート内のMD方向に延びたドーム形領域は、複数本の凹筋を含むため、ベースシートは、ドーム形領域の構成に由来する、上述の吸収性シートと同様の有益な特性を有するということになる。例えば、ファブリック27および38を使用して製造されたベースシートは、長い経糸ナックルを有していないファブリックを使用して製造されたベースシートと比べて、手触りがより柔軟になる。
ファブリック27および38を使用して製造されたベースシートの他の特性を、より短いナックルのファブリックを使用して製造されたベースシートの特性と比較した。具体的には、厚さおよびポケット深さを、異なるファブリックを使用して製造されたカレンダ処理されていないベースシートについて比較した。厚さは、当技術において周知の標準的な技術を使用して測定した。ファブリック27を使用して製造されたベースシートの厚さは、約80mil/8シート〜約110mil/8シートで変化し、ファブリック38を使用して製造されたベースシートは、約80mil/8シート〜約90mil/8シートで変化することが明らかになった。これらの厚さの範囲はいずれも、同様のプロセス条件下でより短い経糸ナックルのファブリックを使用して製造されたベースシートに見られた約60〜約93mil/8シートの厚さよりも良くはないものの非常に近い。
ヤンキー側表面の下方のドーム形領域の最下点の深さを決定するために、ベースシートの空気側(すなわち、製紙プロセスの間に構造化ファブリックに接触するベースシートの側面)の形状プロファイル走査を使用して、ドーム形領域の深さを測定した。ファブリック27を使用して製造されたベースシート内のドーム形領域の深さは、約500ミクロン〜約675ミクロンの範囲であり、ファブリック38を使用して製造されたベースシート内のドーム形領域の深さは、約400ミクロン〜約475ミクロンの範囲であった。これらのドーム形領域は、より短い経糸ナックルを有する構造化ファブリックから製造されたベースシート内のドーム形領域の深さよりも深くはないものの同等であった。ドーム形領域の深さは、吸収性シートの厚さに直接関連するので、ドーム形領域の深さがこのように同等であることは、長い経糸の構造化ファブリックを使用して製造されたベースシートが、より短い経糸の構造化ファブリックを使用して製造されたベースシートと同等の厚さを有するという知見と一致している。
本発明による別の長い経糸ナックルのファブリックの特性は、図13においてファブリック42〜44と表示されている。同じく図13に示したのは、長い経糸ナックルを含まない従来のファブリック45である。ファブリック42の別の特性を図14に示したが、これは、ファブリックの経糸のうちの1つに沿ったプロファイルを示す。これらの図を見て分かる通り、ファブリック42は、長い経糸ナックルを含むことに加えて、いくつかの顕著な特徴を有する。1つの特徴は、図13に示したPVIに関連するパラメータに反映されているように、ポケットが長くて深いことである。図13に示したファブリック42の圧痕を見ても分かる通り、このファブリックの別の顕著な特徴は、CD糸が、MD糸内のナックルの平面下に完全に位置しており、したがって、ファブリックの上面にCDナックルが存在しないことである。CDナックルが存在しないため、経糸に対するz方向の緩傾斜が存在し、この詳細は図14のプロファイル走査に示されている。この図に示した通り、経糸は、経糸がCD糸の下を通過する最下点から、隣接する経糸ナックルの頂部まで約200μm/mmの傾斜を有する。さらに一般的に言えば、経糸は、クレーピング操作の間にファブリック42が沿って移動する平面に対して約11度傾いている。経糸のこの緩傾斜は、一部の繊維が滑って隣接するナックルの頂部を越える前に、ファブリック42に押し付けられている紙匹内の繊維が、経糸の傾斜部分の上にごくわずかに積み上がることを可能にすると考えられる。それによって、ファブリック42内の経糸の緩傾斜は、紙匹が接触しているより急な傾斜を経糸が有する他のファブリックと比べて、紙匹の繊維が突然停止するのを減らし、繊維の高密度化を抑える。
ファブリック42および43はいずれも、より高いPVDI−KR値を有し、これらの値は、本明細書に記載の他の構造化ファブリックのPVDI−KR値と共に、本発明の実施形態に見られ得るPVDI−KR値の範囲を一般的に示す。さらに、さらに高い、例えば、最大約250のPVDI−KR値を有する構造化ファブリックも使用され得る。
ファブリック42の特性を評価するために、このファブリックおよび比較用のファブリック45を使用して、一連の試行を実施した。これらの試行では、吸収性タオルのベースシートを形成するために、図1に示した一般的な構成を有する製紙機を使用した。上で一般的に記載の(および上述の’563特許に具体的に記載の)非TADプロセスを使用し、クレーピングニップにおいて構造化ファブリック(すなわち、ファブリック42または45)の上側上に転移されたときに約40〜約43パーセントの均一性を有する程度まで紙匹を脱水した。これらの試行の他の特定のパラメータは、表4に示す通りであった。
ファブリック42および45を使用したこれらの試行において製造されたベースシートの特性を表5〜表9に示した。表5〜表9に示した特性を決定するために使用した試験プロトコルは、米国特許第7,399,378号および第8,409,404号(これらの全体を本明細書に引用して援用する)に記載されている。「N/C」の表示は、特定の試行において特性が計算されなかったことを示す。
表5〜表9に示した試行の結果は、特性、特に厚さおよび吸収度の顕著な組み合わせを有するベースシートを製造するためにファブリック42が使用され得ることを示す。理論によって制限されることなく、本発明者らは、これらの結果が、ファブリック42内のナックルおよびポケットの構成に部分的に由来すると考える。具体的には、ファブリック42の構成は、MDのほぼ連続した長いラインに形成される深いポケットのアスペクト比(すなわち、MDのポケットの長さ対CDのポケットの幅)による高効率のクレーピング操作を実現する。ポケットのこれらの特性は、大きな繊維「移動性」を可能にし、これは、局部的な坪量の動きを生む機械的な力を湿潤圧縮された紙匹が受ける条件である。さらに、クレーピングプロセスの間、紙匹内のセルロース繊維は、様々な局部的な力(例えば、押し、引き、曲げ、剥離)を受け、続いて、互いにさらに分離される。言い換えれば、繊維が剥脱し、製品の弾性率がより低くなる。したがって、紙匹は、より良い真空「成形性」を有し、これは、より大きな厚さと、より大きな吸収を実現する、よりオープンな構造とにつながる。
ファブリック42のポケットの構成と共に実現した繊維移動性が、図15および図16に示した結果を見て分かる。これらの図は、試行において使用された様々なクレープレベルにおける厚さ、SAT容量およびボイド体積を比較している。図15および図16は、真空成形を使用せずにファブリック42を使用した試行においてさえも、ファブリッククレープレベルが高くなるにつれて、厚さおよびSAT容量が増加したことを示す。真空成形はなかったので、厚さおよびSAT容量のこれらの増加は、ファブリック42内の繊維移動性に直接関連するということになる。図15および図16はまた、大きな厚さおよび高いSAT容量が、真空成形が使用される試行においてファブリック42を使用して実現され、各クレーピングレベルにおいて、ファブリック42を使用して製造されたベースシートの厚さおよびSAT容量が、ファブリック45を使用して製造されたベースシートの厚さおよびSAT容量をはるかに超えたことを示す。
ファブリック42によってもたらされる繊維成形性もまた、図15および図16に示した結果を見て分かる。具体的には、真空成形を使用しなかった試行および真空成形を使用した試行の間における厚さおよびSAT容量の差は、紙匹内の繊維がファブリック42上で高度に成形できることを示す。以下で論じるように、真空成形は、ファブリック42のポケット内に形成された紙匹の領域内に繊維を引き伸ばす。大きな繊維成形性は、繊維が、この成形操作において高度に引き伸ばされ、これが、得られる製品における厚さおよびSAT容量の増加につながることを意味する。
図19もまた、ファブリッククレープレベルにおける試行によるベースシートのボイド体積を比べることによって、より大きな繊維移動性がファブリック42を使用して実現される証拠となる。シートの吸収度は、実質的にセルロース繊維間の空間の尺度であるボイド体積に直接関連する。ボイド体積は、上述の米国特許第7,399,378号に記載の手順によって測定される。図19に示す通り、真空成形を使用せずにファブリック42を使用した試行において、ボイド体積は、ファブリッククレープの増加と共に増加した。これは、追加のボイド体積を生み出すために、各ファブリッククレープレベルにおいて、セルロース繊維が互いにさらに分離された(すなわち、剥脱して、弾性率がより低くなった)ことを示す。図19はさらに、真空成形が使用されるとき、ファブリック42が、各ファブリッククレープレベルにおいて、従来のファブリック45よりもボイド体積が大きいベースシートを形成することを示す。
ファブリック42を使用するときの繊維移動性が、図20A、図20B、図21Aおよび図21Bを見ても分かり、これらの図は、ファブリック42を使用して製造されたベースシートの軟X線像である。当業者によって理解されるように、軟X線像化は、紙中の質量均一性を評価するために使用され得る高分解能技術である。図20Aおよび図20Bのベースシートは、8パーセントのファブリッククレープで製造され、図21Aおよび図21Bのベースシートは、25パーセントのファブリッククレープで製造された。図20Aおよび図21Aは、繊維の動きをより「マクロな」レベルで示し、像は、26.5mm×21.2mmの部分を示す。(像内のより明るい領域に対応する)より低質量の波状のパターンが、より高いファブリッククレープ(図21A)で見られ得るが、より低質量の領域は、より低いファブリッククレープ(図20A)では容易に見られない。図20Bおよび図21Bは、繊維の動きをより「ミクロな」レベルで示し、像は、13.2mm×10.6mmの部分を示す。セルロース繊維が、より低いファブリッククレープ(図20B)よりも、より高いファブリッククレープ(図21B)で、互いにさらに距離を置いて引き離されていることをはっきりと見ることができる。まとめると、軟X線像はさらに、ファブリック42が、より大きな繊維移動性をもたらし、より高い局部的な質量の動きが、より低いファブリッククレープレベルよりも、より高いファブリッククレープレベルで見られることを裏づける。
図17および図18ならびに図19は、完成紙料に関する試行の結果を示す。具体的には、これらの図は、非プレミアム完成紙料ならびにプレミアム完成紙料を使用するとき、ファブリック42が、同等量の厚さ、SAT容量およびボイド体積をもたらし得ることを示す。これは、ファブリック42が、より低コストの非プレミアム完成紙料を使用して顕著な結果を達成できることを示すため、非常に有益な結果である。
ファブリック42は、上述の他の特別に長い経糸ナックルのファブリックと同じく、特別に長い経糸ナックルを有するため、ファブリック42を使用して製造された製品は、CD方向に延びる複数本の凹筋を有し得る。再び、凹筋は、構造化ファブリックのポケット内に移動した紙匹の部分内に形成されるひだの結果である。ファブリック42の場合、ナックルの長さおよびポケットの両端間の長さのアスペクト比が、ひだ/凹筋の形成をいっそう促進すると考えられる。この理由は、紙匹が、長い経糸ナックル上に半拘束されている一方、ファブリック42のポケット内でより移動しやすいためである。この結果、紙匹は、各ポケットに沿った複数の場所で座屈し、または折り畳まれ、これが、製品に見られるCDの凹筋につながる。
ファブリック42から製造された吸収性シート内に形成された凹筋が図22A〜図22Eを見て分かる。これらの図は、異なるファブリッククレーピングレベルで、ただし、真空成形を使用せずにファブリック42を使用して製造された製品の空気側の像である。MDは、これらの図すべてにおいて縦方向である。特に、上述の製品のように明確に画定されたドーム領域を有する代わりに、図22A〜図22Eの製品は、MDに実質的に延びる突出領域のほぼ連続した平行のラインを有することを特徴とし、複数本の凹筋を含む延びた突出領域のそれぞれは、突出領域にわたって吸収性シートの実質的にCDに延びる。これらの突出領域は、ファブリック42のMDに延びるポケットのラインに対応する。突出領域間は、実質的にMDに同じく延びる接続領域である。接続領域は、ファブリック42の長い経糸ナックルに対応する。
図22Aの製品を、ファブリッククレープ25%で製造した。この製品では、凹筋は非常に特異である。凹筋のこのパターンは、クレーピングプロセスの間に、面内圧縮、張力、曲げおよび座屈を含む幅広い力を受けるファブリック42上の繊維ネットワークの結果であると考えられる。これらの力はすべて、前述の通り、繊維移動性および繊維成形性に寄与する。さらに、MDに延びる突出領域のほぼ連続した性質の結果、向上した繊維移動性および繊維成形性は、MDに沿ってほぼ連続して生じ得る。
図22B〜図22Eは、図22Aに示した製品と比べて、より低ファブリッククレーピングの製品の構成を示す。図22Bにおいて、示した製品を形成するために使用されたファブリッククレープレベルは15%であり、図22Cにおいてファブリッククレープレベルは10%であり、図22Dにおいてファブリッククレープレベルは8%であり、図22Eにおいてファブリッククレープレベルは3%であった。予想される通り、ひだ/凹筋の大きさが、ファブリッククレープレベルが低くなるにつれて小さくなるのが見て分かる。しかし、凹筋の頻度が、ファブリッククレープレベルを通じてほぼ同じに保たれることは注目に値する。これは、紙匹が、使用されるファブリッククレープレベルに関わらず、ファブリック42内のナックルおよびポケットに対して同じ位置で座屈する/折り畳まれることを示す。したがって、ひだ/凹筋の形成に由来する有益な特性を、より低いファブリッククレープレベルでも見出すことができる。
要約すると、図22A〜図22Eは、繊維移動性および繊維成形性が、広いファブリッククレーピング範囲にわたって促進されるように、ファブリック42のポケットの高アスペクト比が、紙匹に対して脱圧縮エネルギーを一様に作用させる能力を有することを示す。さらに、この繊維移動性および繊維成形性は、ファブリック42を使用して製造された吸収性シートに見られる厚さおよびSAT容量などの顕著な特性において非常に重要な要素である。
図23A〜図24Bは、ファブリック42(図23Aおよび図24A)を使用して製造された製品およびファブリック45(図23Bおよび図24B)を使用して製造された比較の製品の空気側の走査型電子顕微鏡像である。これらの場合、製品は、ファブリッククレープ30%および最大の真空成形で製造された。図23Aおよび図23Bの像の中心領域は、各ファブリックのポケット内に形成された部分を示し、中心領域を取り囲む部分は、各ファブリックのナックル上に形成された領域に対応する。図24Aおよび図24Bに示した断面は、MDに実質的に沿って延び、ファブリック42製品の延びた突出領域が図24Aに見られ、(複数のポケット内に形成された)複数のドームが、図24Bに示したファブリック45製品内に見られる。ファブリック42を使用して製造された製品内の繊維が、ファブリック45を使用して製造された製品内のセルロース繊維よりもはるかに低密度で充填されていることを非常にはっきりと見ることができる。すなわち、ファブリック45製品内の中心のドーム領域は非常に高密度であり、ファブリック42製品内のポケット領域を取り囲む接続領域よりも高密度ではないものの、同程度に高密度である。さらに、図24Aおよび図24Bは、繊維が、ファブリック45製品内よりも、ファブリック42製品内においてはるかに緩く、すなわち、より低密度になることを示し、図24Aにおいて、別個の繊維が、ファブリック42製品構造から飛び出している。それによって、図23A〜図24Bはさらに、ファブリック42が、大きな繊維移動性および繊維成形性のクレーピングプロセスを実現し、この結果、ファブリックを使用して製造された吸収性シート製品において、密度が大幅に低下した領域を生じることを裏づける。低密度領域は、製品において、より大きな吸収度をもたらす。さらに、シートが、低密度領域においてさらに「膨らむ」ため、低密度領域は、より厚くなる。そのうえさらに、膨れた、より低密度の領域は、製品の風合いを、より柔軟な手触りにする。
本発明の実施形態による変換されたタオル製品の特性を評価するために、別の試行を、ファブリック42を使用して実施した。これらの試行については、表4および表5に関連して記載した試行と同じ条件を使用した。次いで、ベースシートを、2層のペーパータオルに変換した。表10は、これらの試行の変換仕様を示す。これらの試行において製造された製品の特性を表11〜表13に示した。
試行22のみ、1層の製品を形成したが、それ以外は、他の試行と同じ方法で変換したことに留意されたい。
表11〜表13に示した結果は、本発明による長い経糸ナックルのファブリックを使用して得られる優れた特性を示す。例えば、ファブリック42を使用して製造された最終製品は、ファブリック45を使用して製造された比較の製品よりも大きな厚さおよび高いSAT容量を有していた。さらに、表11〜表13の結果は、プレミアム完成紙料または非プレミアム完成紙料のいずれが使用されるかに関わらず、非常に似た製品が、ファブリック42を使用して製造され得ることを示す。
本明細書に記載の試行において製造された製品の特性に基づいて、本明細書に記載の長い経糸ナックルの構造化ファブリックが、特性の顕著な組み合わせを有する製品を提供する方法において使用され得ることは明らかである。例えば、本明細書に記載の長い経糸ナックルの構造化ファブリックは、少なくとも約9.5g/gおよび少なくとも約500g/m2のSAT容量を有する吸収性シートを形成するために、上で一般的に記載した、上述の’563特許に具体的に記載されている非TADプロセス(製紙完成紙料は、クレーピング前に圧縮脱水される)と一緒に使用され得る。さらに、この吸収性シートは、この方法において、約25%未満のクレーピング比を使用しながら形成され得る。そのうえさらに、この方法および長い経糸ナックルの構造化ファブリックは、少なくとも約10.0g/gおよび少なくとも約500g/m2のSAT容量を有し、約30lbs/連未満の連量および220mil/8シートの厚さを有する吸収性シートを製造するために使用され得る。本発明者らは、このタイプの方法は、このような吸収性シートを今まで形成したことがないと考える。
別の吸収性タオルのベースシートを、ファブリック42および45を使用した試行において製造した。これらの試行を、図1に示す構成を有する製紙機上で、上で一般的に記載の(および上述の’563特許に具体的に記載の)非TADプロセスを使用して実施し、これらの試行のパラメータは、上の表4に示し、記載したパラメータと同じであった。これらの試行の結果を、以下の表14〜表16に示した。
先述の試行と同じく、表14〜表16に示した試行においてファブリック42を使用して製造された吸収性シートは、特性、特に、顕著な厚さおよび吸収度の顕著な組み合わせを有する。
図25Aおよび図25Bは、本発明の実施形態による別の構造化ファブリックの特性を示す。前述のファブリックのように、図25Aおよび図25Bに示したファブリック46〜52は長い経糸ナックルを有し、この範囲は約2.4mm〜約5.7mmである。同じく前述のファブリックのように、ファブリック46〜52は、約41〜約123の範囲の高いPVDI−KR値を有する。
ファブリック46〜52はまた、構造化ファブリックの紙匹接触表面にあるナックルの位置決めに関連する本発明の別の態様を示す。圧痕写真を見て分かる通り、ファブリック46〜52内のナックルは、複数のナックルの中心を通る直線が引けるように、互いに対して位置する。1つのこのようなラインL1を、ファブリック50の圧痕の詳細図である図26に示す。ファブリックのMDに沿って走るラインMDLに対するラインL1の角度αは約15°である。本発明の実施形態による他の構造化ファブリックにおいて、経糸ナックルラインは、MDラインに対して約10°〜約30°の間であり得る。さらに特定の実施形態では、経糸ナックルラインは、MDラインに対して約10°〜約20°の間であり得る。ファブリック46〜52の経糸ナックルラインの角度を図25Aおよび図25Bに示す。本明細書に記載の他のファブリックのいくつかは、例えば、図13に示したファブリック42を含め、経糸ナックルの同様の斜めのラインを含むことにも留意されたい。
本発明者らは、斜めの経糸ナックルライン、例えば、ファブリック42および46〜52内に示されたものを有する構造化ファブリックを使用して製造された紙製品は、例外的な特性を有することを見出した。理論によって制限されることなく、本発明者らは、これらの例外的な特性が、斜めの経糸ナックルラインを有する構造化ファブリックによってもたらされた大きな繊維移動性に由来すると考える。
斜めの経糸ナックルラインを有する構造化ファブリックのこの繊維移動性は図27Aに示されており、この繊維移動性は、図27Bおよび図27Cに示す他の構造化ファブリックの構成に匹敵し得る。例えば、図1に示し、上述した通り、紙匹116が、クレーピングニップ120内でバッキングロール108から構造化ファブリック112に転移されるときなど、クレーピング操作の間に、繊維は、これらの図に示したひだ4002および5002に移動する。図27Bは、構造化ファブリック内のMDナックル4000の場合を示す。紙匹のセルロース繊維は、クレーピングプロセスの間に、ナックル4000の縁部4004に対して高密度のひだ4002に積み重ねられ、それによって、ナックル4000に隣接する局部的な高密度化ゾーン4006を形成する。繊維のこのような局部的な高密度化は、構造化ファブリック内の他のMDナックルにおいても発生するであろう。図27Cは、どのように、構造化ファブリックのCDナックル5000も、ナックル5000の縁部5004に対して積み重なる紙匹のひだ5002の結果として、局部的な高密度化ゾーンを有するのか示す。
一方、図27Aに示した斜めの経糸ライン内のナックル6000は、図27Bおよび図27Cに示したひだ形成とは非常に異なるひだ形成につながる。斜めの経糸ナックルラインによって、ナックル6000の動きと、バッキングロール108への紙匹116の付着との組み合わせにより、歪み場が生じる。歪み場は、ナックル6000間のポケット領域に局在する。歪み場は、転移表面から構造化ファブリックへの紙匹の転移における速度差であるクレーピング比のために生じ、クレーピングニップ内で、紙匹の一部が、より速く移動する転移表面によって下流方向に引っ張られる一方、紙匹の他の部分が、より遅く移動するナックル6000によって実質上保持される。クレーピング操作の間、紙匹は、例えば、固形分40%〜45%であり、これは、紙匹が、実質的に粘性の挙動をすることを意味する。したがって、歪み場内の紙匹の繊維は、互いに対して永続的に再配置され得る。クレーピング操作を終えた後、繊維は、繊維が歪み場に入る前のその相対的な位置に戻らない。歪み場内のこの繊維の可動化は、繊維−繊維距離を大きくし、それによって繊維間の結合を弱め、したがって、紙匹がより容易に成形され得る。この結果、繊維が、ナックル6000間のポケット内の湾曲したひだ内に分布する。湾曲したひだは、繊維の可動化作用がポケット内で生じたことを示す。さらに、上述の試行の結果によって示される通り、例えば、ファブリック42によって製造された吸収性シートのSAT容量およびボイド体積から分かるように、湾曲したひだにつながる繊維の可動化が達成されるとき、吸収度および柔軟性が著しく改善する。
湾曲したひだは、湾曲したひだの頂部6003が、MDの下流に位置し、湾曲したひだの端部が、MDにずれており、湾曲したひだの端部6007が、湾曲したひだの他端6009に対してMDの上流に位置するように成形される。比較すると、図27Aに示した湾曲したひだは、図27Bおよび図27Cに示した斜めの経糸ラインを有していない構造化ファブリック内のMDナックルおよびCDナックルの縁部で形成された繊維の積み重ねよりも密度が著しく低い。さらに、本発明者らは、湾曲したひだの高密度化が抑えられるため、吸収性シートが、大幅に改善された柔軟性および吸収度を有し、これが、前述の繊維の可動化に関連すると考える。
湾曲したひだの形状はまた、ナックル6000間の距離D1にも関連する。当業者によって理解されるように、ナックル6000が近すぎる場合、ナックル6000間のポケット内には、繊維が、より低密度の湾曲したひだ内に移動する十分な余地が存在しなくなる。一方、ナックルが遠く離れすぎている場合、繊維の多くは、より速く移動する転移表面およびより遅く移動するナックルの歪み場の作用を受けなくなり、したがって、より少数のあまりはっきりしない湾曲したひだが、紙匹内および得られる吸収性シート内に形成され得る。これらの考慮すべき点を念頭に、本発明の実施形態では、異なる経糸ナックルライン内の2つの隣接するナックル6000の中心間の距離D1は約1.5mm〜約4.0mmであり得る。特定の実施形態では、距離D1は約2.0mmである。ナックル6000間の距離が2.0mmのとき、2つの隣接するナックル6000間のポケット領域内には約1.5mmの余地が存在する。
図28A〜図28Eは、図1に示した一般的な構成を有する製紙機を使用し、上で一般的に記載の(および上述の’563特許に具体的に記載の)非TADプロセスを使用し、上の表4に示したパラメータを使用し、斜めの経糸ナックルラインを有する構造化ファブリックを使用して製造された吸収性ベースシートの写真である。異なるクレーピング比(すなわち、ファブリッククレープ%)および異なる成形ボックス真空を、図28A〜図28Eに示したベースシートのそれぞれについて使用した。具体的には、図28Aのベースシートをクレープ比25%および成形ボックス真空2in.Hgで製造し、図28Bのベースシートをクレープ比25%および成形ボックス真空8in.Hgで製造し、図28Cのベースシートをクレープ比30%および成形ボックス真空10in.Hgで製造し、図28Dのベースシートをクレープ比25%および成形ボックス真空8in.Hgで製造した。図28Eに示したベースシートを、クレープ比20%で、ただし、成形ボックス真空を使用せずに製造した。図28Eに示したベースシートの製造では真空成形を使用しなかったため、ベースシートはまた、製紙プロセスにおけるクレーピング操作後の紙匹の構造も示すことに留意されたい。すなわち、製紙プロセスにおける紙匹は、図28Eに示したベースシート製品と同じ一般的な湾曲したひだ形成を有するであろう。異なるクレーピング比が、本発明の他の実施形態における斜めの経糸ナックルラインを有する構造化ファブリックと一緒に使用され得ることにも留意されたい。いくつかの実施形態において、斜めの経糸ナックルラインのファブリックと共に使用されるクレーピング比は約3%〜約100%の間であり、さらに特定の実施形態において、クレーピング比は約3%〜約50%の間であり、さらにより特定の実施形態において、クレーピング比は約5%〜30%の間である。
湾曲したひだを、図28A〜図28Eに示したベースシートの突出領域にはっきりと見ることができる。これらの図において、シートのMDは縦(すなわち、上下)方向であり、シートの上流側が写真の上部にあり、シートの下流側が図の下部にある。図28Aにおいて、湾曲したひだのいくつかが点線で示されている。斜めの経糸ナックルラインの結果、湾曲した形状の端部は非対称であり、湾曲したひだの一端は、湾曲したひだの他端よりもさらに下流に位置する。湾曲したひだは、これらの2つの端部の間を、湾曲したひだの下流のほとんどの部分にある頂部まで延びる。さらに、湾曲したひだの端部は、ファブリックのナックルに対応する接続領域に隣接して位置する。
湾曲したひだは、図22Aおよび図22Eに示した吸収性シートを見ても分かる。先述の通り、これらの図の吸収性シートを、経糸ナックルの斜めのラインを含むファブリック42を使用して形成した。さらに、湾曲したひだが、図21Aおよび図21Bに示した軟X線像を見て分かる。
図28A〜図28Eはまた、複数の湾曲したひだが、突出領域のそれぞれにおいて形成されていることを示す。複数の湾曲したひだは、ドーム形領域が形成され、したがって、湾曲したひだは、経糸ナックルの長さにも関連するポケットのMD方向に延びた長さの結果である。紙匹が、(前述の)クレーピング操作を使用して吸収性シートを製造するプロセスにおいて構造化ファブリックに転移されるとき、複数のひだが、ポケット内の紙匹の構造内に形成される。したがって、前述の実施形態において吸収性シートの突出領域のそれぞれにおいて複数本の凹筋が形成される同じ方法で、図28A〜図28Eに示した吸収性シートの突出領域内の複数の湾曲したひだ間に複数本の凹筋が形成される。このような凹筋を、図28A〜図28Eに示した吸収性シート内の湾曲したひだ間に見ることができる。
湾曲したひだを有する突出領域を接続する接続領域もまた、図28A〜図28Eに示したベースシートの写真を見て分かる。これらの接続領域は大部分が、これらのシートを製造するために使用されたファブリックのナックル上に形成されたシートの部分、ならびにナックルおよびポケットに隣接する領域内に形成されたシートの部分に対応する。本発明によるベースシートの接続領域の態様が図28Aにおいて強調されており、突出領域の上流端に隣接する領域が丸で囲まれている。シートが、これらの丸で囲った領域内で折り畳まれていることが分かる。これらのひだは、前述の通り、経糸内のz方向の傾斜およびCDナックルの欠如によって形成される。特に、紙匹は、製紙プロセスにおいて、接続領域のこれらの部分に滑り込むことができて、それによってひだを形成する。接続領域内のひだは、繊維の密度をさらに低下させるように作用し、それによって吸収性シートの特性をさらに改善する。
図28A〜図28Eに示したものなどの写真に基づいて、湾曲したひだの曲率半径を計算できる。具体的には、円弧が湾曲したひだに合うように円を描くことができる。図28A〜図28Eに示した写真から明らかなように、湾曲したひだの前(下流)縁部が最も顕著であり、したがって、弧が前縁部に合うように円を描くのが最も容易である。図29は図28Aと同じ写真であり、加えて、湾曲したひだのいくつかの前縁部に合わせた弧を有する円を示す。このような円から、写真の縮尺を使用して、湾曲したひだの平均曲率半径を容易に計算できる。本発明の実施形態において、本発明者らは、湾曲したひだの曲率半径が平均約1.2mmであり、半径が約0.5mm〜約2.0mmの間の範囲であることを見出した。
前述の通り、湾曲したひだは、本発明による斜めの経糸ナックルのファブリックを使用してクレーピング操作が実施されるとき生じる局部的な歪み場の結果として形成される。所定の吸収性シートにおいて、規格化されたひだ曲率比は、湾曲したひだの曲率半径を、突出領域内に描かれた円の半径で割って計算できる。規格化されたひだ曲率比が小さいほど、歪み場は、ひだを湾曲させるのにより効果的であった。さらに、本発明者らは、より効果的に形成されたひだの曲率によって、吸収性シートの吸収度および柔軟性が改善されると考える。
ここで、吸収性シートの規格化されたひだ曲率比の計算の一例を、図30Aおよび図30Bを参照して説明する。本発明による吸収性シートを図30Aに示し、市販の比較の吸収性シートを図30Bに示す。図30Aにおいて、弧は、湾曲したひだのうちの1つに合うように描かれた。この弧および他の同様に描かれた弧から、湾曲したひだの平均曲率半径を前述の通り計算できる。同様に、図30Bにおいて、弧は、ひだ形成において見ることができる小さい曲率に合うように描かれ、それによって、この弧および同様の弧から、この吸収性シートの平均半径を計算できる。図30Aおよび図30Bの完全な円は突出領域内に描かれ、円の対向する点は、湾曲したひだ形成が現れる突出領域の両側の点に合う。円は、突出領域にちょうど収まる最大サイズであり、したがって、これらの円の半径は、吸収性シートのCDの突出領域の両端間の距離の半分である。次いで、図30Aおよび図30Bに示した吸収性シートの規格化されたひだ曲率比が、計算された平均曲率半径と、突出領域内の最大円サイズの曲率半径との比として計算できる。図30Aに示した本発明による吸収性シートにおいて、計算された平均曲率半径は約1.2mmであり、規格化されたひだ曲率比は約1.9である。一方、図30Bに示した比較の吸収性シートにおいて、計算された平均曲率半径は約4.55であり、規格化されたひだ曲率比は約4.5である。したがって、本発明による吸収性シートが、そのひだ形成において、比較のシートよりも大きい曲率を有すること、および曲率が、吸収性シートの形成において可能であった最大曲率にはるかに近いことが明らかである。
本発明の実施形態において、規格化されたひだ曲率比は約4未満であり、とりわけ、約0.5〜約4である。さらに特定の実施形態において、規格化されたひだ曲率比は約1〜約3である。図30Aに示した吸収性シートから分かるように、本発明の実施形態は、およそ約2の特異的な規格化されたひだ曲率比を有し得る。規格化されたひだ曲率比がこれらの範囲内であるとき、本発明者らは、著しい量の繊維の可動化が、所定のファブリックにおいて生じたと考える。したがって、同じく前述の通り、繊維の可動化は、良好な吸収度など、紙製品におけるより良い特性につながる。
ある特定の例示的な実施形態において本発明が説明されてきたが、本開示に照らして、多くの追加的な変形および変種が当業者には明らかであろう。それゆえ、具体的に説明された以外の方法で本発明が実施され得ると理解されるべきである。したがって、本発明の例示的な実施形態は、すべての点において、例示的なものであり、制限的なものではないと見なされるべきであり、本発明の範囲は、以上の説明によってではなく、本出願によってサポート可能ないずれかの請求項およびその均等物によって決定されるべきである。