以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の実施形態は前述のように、自治体における介護保険事業を含む各種の業務や事業を包括的に実施運用する地域包括ケア事業システムを得ることにあるので、図1で示すように、各種の業務や事業に関係するデータを一元化したデータベース10を作成する。図1は、データベース10に構成されるデータ種類、及びデータベース10と地域包括ケア事業システムが提供するソリューション機能15、及び地域包括ケア事業の対象事業領域16との関係を表す模式図である。
前述のように、市町村などの自治体は、基本データ11として、図1で示す住民住所データ111、住民共通番号(仮称)112、地域特性データ113、地域別取組み事例114、などのデータを保有している。また、自治体では、介護保険事業を実施しており、介護保険データ12として、要介護認定データ121、介護レセプトデータ122、介護事業所台帳123、などのデータを保有している。さらに、医療保険データ13として、高齢者特定健診データ131、国保/後期高齢者医療レセプトデータ132、医療機関台帳133、などのデータも入手可能である。
上述した各種の業務及び事業は、長年にわたって実施されており、基本データ11、介護保険データ12、医療保険データ13は、個別ではあるが定型のフォーマットにより管理されている。
自治体では、これらのほかに、住民に対する自治体固有の地域包括ケアに関する施策が実施されており、それに伴う施策等固有データ14として、基本チェックリスト(日常生活圏域ニーズ調査結果)141、小地域・事業所・利用者向けの施策計画・実績142、などのデータを保有している。これらの施策等固有データ14は、それぞれの施策に応じた各種の形式のものであり、担当部署毎に固有のフォーマットで保管されているのが現状である。
そこで、この発明の実施の形態では、これらの基本データ11、介護保険データ12、医療保険データ13、及び施策等固有データ14の必要部分を一元化したデータベース10を作成する。
このデータベース10では、上述の各データ11,12,13,14の関連する部分をひも付けして一元化している。このため、基本データ11、介護保険データ12、医療保険データ13及び施策等固有データ14が一元化された分析用の基盤となるデータベース10が得られる。
また、自治体固有の施策等固有データ14をデータベース化することにより、施策実施効果の定量的検証が可能となる。特に、従来困難だった小地域・事業所・利用者の状態像や投資実行してきた多種多様な施策の実施効果の定量的検証が可能になる。
地域包括ケア事業は図示のように対象事業領域16として複数の事業領域、すなわち、「介護保険事業計画」161、「予防給付・介護給付事業」162、「認知症施策」163、「介護予防・日常生活支援総合事業」164、「在宅医療・介護連携推進事業」165、及び「地域ケア会議」166を持っており、これら各事業領域161,162,163,164,165,166において各種の施策が実行される。このため、これら施策を達成させるための指標が各事業領域161,162,163,164,165,166別に設定されており、ソリューション機能15は、これら指標が登録された指標メニュー151を有する。
ソリューション機能15はコンピュータにより実現されるものであり、データベース10に一元化された各データ11,12,13,14を用いて、後述するように、各事業領域161,162,163,164,165,166において実行される施策の達成状況や実施状況を、施策ごとに設定された指標の値を集計して分析する。このために、集計単位152や各種の分析機能153が具備されている。
図2は、データベース10を作成すると共に、上述した地域包括ケア事業を実行するコンピュータシステムの構成を示している。
このコンピュータシステムは、クライアントコンピュータ(以下、単にクライアントと呼ぶ)31と、このクライアント31と接続されたサーバコンピュータ(以下、単にサーバと呼ぶ)32とを有し、データベース10は、このサーバ32によりデータの記憶/読出しが制御される。
クライアント31は、自治体の各事業担当部署などに設けられるコンピュータであり、データ取り込部311にて、自治体が保有する住民に関する基本データ11、介護保険データ12、医療保険データ13、及び施策等固有データ14を取り込み、サーバ32に提供する。
サーバ32は、データベース作成部321により、上述した各データ11,12,13,14を一元化されたデータとしてデータベース10の元データ保管部101に記憶させる。データベース作成部321による一元化は、基本データ11、介護保険データ12、医療保険データ13に保有される個人や事業所を特定するユニークな番号、又は個人や事業所を特定するユニークな番号を暗号化したコード(例えば、ハッシュ変換による変換コード)を利用し、施策等固有データ14は事業所を特定するユニークな番号を付加して、データを作成・収集する。
上述のように、データ11、12、13は個別ではあるが定型のフォーマットである。これに対し、施策等固有データ14はそれぞれの施策に応じた各種の形式のものであり、各担当部署が施策実施の都度、データを収集するための入力用シートとデータベース10のフォーマット(データテーブル)を作成している。このため、クライアント31及びサーバ32の機能により、施策等固有データ14を収集するための入力シート及びデータベース10のフォーマット(データテーブル)を作成し、データベース10に施策等固有データ14を保存させている。
また、サーバ32は、地域包括ケア事業のソリューション機能を実現するために指標算出部322と、集計部323と、分析部324とを有する。指標算出部322は、図1で示した指標メニュー151に事業領域毎に登録された指標の値を、後述する手法により算出する。集計部323は図1で示した集計単位152に登録された集計単位メニュー(小地域単位、利用者単位、事業所単位、等)から決められた対応する集計単位毎に指標の値を集計する。分析部324は、図1で示した分析機能153をそれぞれ実行する。これらの機能、すなわち、サーバ32のソリューション機能の詳細は後述する。
次に、地域包括ケア事業の事業計画で用いる指標の整備について説明する。この指標としては、地域包括ケア事業の実施者の施策実施状況を含むストラクチャ指標(以下、S指標と呼ぶ)、地域包括ケア事業の各施策の実施者から利用者へのサービス提供状況を含むプロセス指標(以下、P指標と呼ぶ)、及び利用者の心身状態の維持期間等の改善結果を表すアウトカム指標(以下、O指標と呼ぶ)を整備する。以下、これらの詳細を説明する。
S指標は、地域包括ケア事業の事業領域毎の各施策を実施する小地域別または事業所別の施策実施状況や環境リスク等に関するもので、利用者に関係する(取り巻く)事業所単位や居住する地域単位で定義される。このS指標は、図1で示した施策等固有データ14に基づいて設定される。
P指標は、利用者のサービス利用状況や同人に対する医療介護等、多主体の連携状況等に関するもので、利用者単位に提供されるサービス提供データ(医療・介護レセプトデータ等)が、利用者、事業所、地域など、それぞれの集計単位で集計されるこのP指標は、図1で示した事務システムデータ、すなわち、基本データ11、介護保険データ12、及び医療保険データ13の対応するものに基づいて設定される。
O指標は、要介護度・自立度・基本チェックリストスコアの段階別継続期間等、利用者単位の心身状態や費用等の施策実施効果を表すデータ(認定データ等)を、利用者、事業所、地域など、それぞれの集計単位で集計するものである。このO指標は、図1で示した、基本データ11、介護保険データ12、及び医療保険データ13の対応するものに基づいて設定される。
また日常生活圏域ニーズ調査の基本チェックリストなどのように、アンケート項目として該当か非該当かの2択の項目が複数ある場合には、意味のある項目グループごとに、例えば、ADL、IADL(Instrumental Activity of Daily Living:手段的日常生活動作)、認知機能等ごとに、該当項目をカウントして算出した値を、その項目グループのリスク段階と見立てて、心身状態段階別継続期間を算出する方法が考えられる。
なお、認定調査項目の中間評価項目得点や、健診項目の検体検査値のように、連続的な数値をもつ項目についても、それらの数値を所定のリスク段階に振り分けてコード変換することで、上記と同様に心身状態の段階別継続期間の算出をすることができる。これにより、例えば健診の検体検査項目であるHbA1Cの値をリスク段階としてとらえなおすことで、糖尿病のリスク段階別変化度の算出などが可能になる。同様に対象疾病別に注目フォローすべき検査項目の値を、それぞれのリスク段階に変換することにより、疾病別のリスク段階別変化度の算出が可能になる。
すなわち、さまざまなデータ属性を持つどのような心身状態項目に対しても、それぞれに最適なリスク段階を表す離散的なコード値に変換してリスク段階を定義することにより、心身状態段階別継続期間であるO指標の算出が可能になる。
本発明の実施の形態では、これらS指標、P指標、O指標を、O指標をキーとして互いに関連させて設定する、連結型O・P・S指標として構成することを特徴とする。連結型O・P・S指標の具体例及び算出については後述する。
これらの指標は、前述したソリューション機能を実現する指標算出部322の指標メニューに、複数の事業領域毎にそれぞれ設定され、登録されている。
指標算出部322は、データベース10の元データ保管部101に保管されたデータを用いて、事業領域毎に指標の値を算出する。算出された指標の値は、データベース10の指標保管部102に保管される。
集計部323は、指標毎に算出された指標の値を、各指標別に、所定の集計単位毎に集計する。集計単位は、地域包括ケアを実施する小地域や事業所、或は地域包括ケア事業の利用者などであり、指標の内容に応じて決められる。
分析部324は、指標毎に、集計単位別の数値から集計単位間の格差、及び各集計単位の平均値からの乖離の大きさを捉える現状分析機能を実行する。そして、集計単位間の格差、及び平均からの乖離の大きさから、格差が大きい指標を抽出し、かつ平均からの乖離の大きい指標を多く有する集計単位を抽出し、課題を明確化する。
また、分析部324は、有効施策抽出のため、各指標の値を用いて、各指標間の相関係数をそれぞれ算出する。そして、O指標との相関係数が高いP指標との組み合わせ、O指標との相関係数が高いS指標との組み合わせ、及びP指標との相関係数が高いS指標との組み合わせを有効施策として抽出する。
また、分析部324では、費用対効果シミュレーション機能を実行する。すなわち、有効施策に掛かる投資額を整理し、各有効施策実施による介護給付費の抑制額を算出する。そして、これら投資額と抑制額との差を求め、この差を有効施策ごとに比較し、この比較結果により有効施策に優先順位をつける。このシミュレーション機能により費用対効果の高い有効施策を優先することが可能となる。
さらに、分析部314では、指標モニタリング機能と集計単位モニタリング機能とを実行する。指標モニタリング機能では、格差の大きな指標をモニタリング対象とし、モニタリング周期毎に複数の集計単位別に該当する指標の値を検出する。そして、集計単位間の格差を算出することで、時系列な格差の推移を捉える。このため有効施策の実行により、格差が大きい指標がどのように変化するかをモニタリングすることができる。
集計単位モニタリング機能では、平均から悪い方に乖離の大きい指標を多く有する集計単位をモニタリング対象とし、この集計単位に関する複数の指標の値を、モニタリング周期毎に検出して目標値及び基準値と比較することで、時系列な各指標の判定結果が時系列的に得られる。このため、有効施策の実行により、平均からの乖離が大きい指標がどのように変化するかを集計単位別にモニタリングすることができる。
これらの分析結果はデータベース10の分析結果保管部103に保管される。そして、クライアント31からの要求によりクライアント31に出力され、クライアント31での分析に供される。
次に、心身状態段階別継続期間に着目した成功報酬算出について説明する。
図5は、心身状態重症化抑止施策における、介護サービスの質向上による要介護度・ADL等心身状態段階別継続期間の延伸の様子を示している。図5の縦軸は要介護状態区分(心身状態、以降要介護度と呼ぶ)、横軸は中長期的な期間(単位:ヶ月)である。
図5において、図の階段の数は、要介護度の段階が上がることを表現しており、各要介護度(縦軸)における階段の高さは、ある利用者の当該要介護度における平均介護給付費月額(円)を示している。当該要介護度期間における斜線部の面積は、当該要介護度における平均介護給付費月額(円)×期間(月数)であり、当該利用者の当該要介護度における全介護給付費(円)を示している。
利用者の全介護認定期間に対して上記のグラフを作成すると、時間軸方向の積分(斜線部の面積の合計)は、当該利用者の生涯介護給付費(円)を表現する。
介護サービスの内容が当該介護サービスを受ける利用者の心身状態に合っている場合、心身状態は維持・改善され、心身状態の悪化は遅延され、要介護度の段階が上がる時期は遅くなり、同一の要介護度の継続期間は延伸する。その様子を表現したグラフが101である。
一方、介護サービスの内容が当該介護サービスを受ける利用者の心身状態に合っていない場合、心身状態の悪化は早く、要介護度の段階が上がる時期は早くなり、同一の要介護度を維持している期間は短縮する。その様子を表現したグラフが103である。また、101と103の中間の様子を表現したグラフが102である。図5からわかる様に、当該利用者における生涯介護給付費は、3パターンの中で、101の場合が最も小さく、103の場合が最も大きく、102の場合はその中間となる。
このことから、利用者の、同一段階の心身状態継続期間をいかに長く延ばせるかが地域包括ケア事業の上で重要である。前述した連結型O・P・S指標を用いることにより、客観的かつ定量的なデータ分析による的確な課題抽出が可能になり、さらに施策の有効性が具体的に示されるので、心身状態同一段階継続期間の延伸を効果的に実現できる。
図6は、介護予防や生活支援における、小地域施策充実と高齢者の日常の介護予防取組や生きがい等のアップで、新規認定年齢の後ろ倒し(健康〜非認定期間の延伸)の様子を示している。
図6の縦軸は要介護度(心身状態)、横軸は中長期的な期間(単位:ヶ月)である。なお、横軸の起点は予め設定した時点であり、例えば、利用者の65歳の誕生月とし、そこからの非認定経過期間がO指標として算出される。また、図の階段の数は、要介護度の段階が上がることを表現しており、各要介護度(縦軸)における階段の高さは、ある利用者の当該要介護度における平均介護給付費月額(円)を示している。当該要介護度期間における斜線部の面積は、当該要介護度における平均介護給付費月額(円)×期間(月数)であり、当該利用者の当該要介護度における全介護給付費(円)を示している。
利用者の全介護認定期間に対して上記のグラフを作成すると、時間軸方向の積分(斜線部の面積の合計)は、当該利用者の生涯介護給付費(円)を表現する。
小地域施策が充実し、或いは高齢者の日常の介護予防取組や生きがい等がアップしている場合、健康状態の継続期間が長くなり、要支援(要介護)が必要となる時期が遅延し(非認定期間が延伸し)、当該認定者の全介護認定期間は、例えば保険者全体の平均期間より短くなる。その様子を表現したグラフが121である。
一方、小地域施策が機能せず、高齢者の日常の介護予防取組や生きがい等がない、もしくは不十分な場合、健康状態の継続期間が短く、要支援(要介護)が必要となる時期が早く到達し(非認定期間が短縮し)、当該認定者の全介護認定期間は上記保険者全体の平均期間よりも長くなる。その様子を表現したグラフが123である。また、これらの中間の様子を表現したグラフが122である。図6からわかる様に、当該利用者における生涯介護給付費は、3パターンの中で、121の場合が最も小さく、123の場合が最も大きく、122の場合はその中間となる。
この場合、利用者の65歳からの非認定経過期間がO指標となり、その非認定経過期間に利用者が小地域などから受けた各種サービスの量がP指標となり、同じく非認定経過期間における小地域などの利用者に対する諸施策(例えば。ふれあいサロンの提供等)がS指標であり、これらの組み合わせによる連結型O・P・S指標により地域包括ケア事業が実施される。
このように非認定期間を含む心身状態の同一段階継続期間の長さが、生涯介護給付費の大小に直結することから、この同一段階継続期間を延伸させた利用者個人、及びこの利用者に関わる小地域や各種の事業所など地域包括ケア事業の施策を実施する実施者に対し、何らかの成功報酬を与えることが、この同一段階継続期間より長く延伸させるうえで必要となる。
ここで、「日本再興戦略」改定2015の中にも記載されている通り、「個人に対する予防・健康づくりへのインセンティブ付与」が、国民の「健康寿命」の延伸、医療と介護給付費の抑制、さらには持続的社会保障システムの実現の上で不可欠であるとされている。そのためには、前述したように、以下の3種類のインセンティブ(特に金銭的なもの)がバランスよく考慮されている必要がある。
ア)人に対するインセンティブ
イ)保険者に対するインセンティブ
ウ)経営者(事業所)等に対するインセンティブ
これらのうち、ア)はヘルスケアポイントの実施や保険料への支援等、イ)は各保険者からの後期高齢者支援金の加算・減算制度や、国保などであれば保険者の公費負担の加算・減算制度等、ウ)は成功報酬制度や表彰制度や優良事業所認定制度や優良銘柄と優良事例PR支援による人材獲得促進支援等が想定されている。「日本再興戦略」改定2015では、主として医療保険サイドから各インセンティブが記載されているが、介護保険サイドにおいても全く同様のステークホルダー別インセンティブ構造が想定できることは明らかである。
このような観点に立って、心身状態段階別継続期間に着目した成功報酬算出手法を提案する。図3は、図2で示した指標算出部322に成功報酬算出機能を持たせた場合のシステム構成を示している。
すなわち、指標算出部322に成功報酬算出機能を実現するために 図3で示すように、利用者個人の基礎属性等の決定部2301、利用者個人の心身状態段階別継続期間の月次累計月の算出部2302、利用者個人の上記累計月と当該継続期間の保険者平均月や各事業所目標平均月等との差分月の算出部2303、利用者個人の月別介護給付費抑制額の算出部2304、利用者個人の事業所向け成功報酬月額合計(配分前原資)の算出部2305、利用者個人の当該継続期間にサービス提供した全事業所の月別総単位数の算出部2306、上記の月次累積総単位数の算出部2307、利用者個人が利用する全事業所の月別成功報酬配分額の算出部2308、事業所へ月別・年別成功報酬配分額の算出部2309、保険者全体の月別・年別給付費抑制額(保険者負担公費の減額量)の算出部2310、利用者個人の月別成功報酬(保険料月額の減額量)の算出部2311を有する。
これら各部の機能により実現される成功放出算出ロジックの詳細は、図4を用いて後述するが、大略すれば、心身状態の各段階の基準となる継続期間(例えば、平均継続期間)を設定し、利用者の同一段階の心身状態の継続期間の累積値が、基準となる経過期間を超えると、超えた分に相当する成功報酬を、利用者個人及びこの利用者に関わった事業者(地域包括ケア事業の施策を実施する実施者)等に提供しようとするものである。
図3では、算出部2311が前述した、ア)人に対するインセンティブに、算出部2310が、イ)保険者に対するインセンティブに、及び算出部2302〜2309が、ウ)経営者(事業所)等に対するインセンティブに対応した、具体的かつ定量的な成功報酬算出機能を示している。
なお、算出部2303で事業所別目標平均月を設定する狙いとしては、心身状態段階別平均継続期間が長い優良事業所も、逆に短い要努力事業所も、それぞれより高みを目指して保険者全体の心身状態維持平均継続期間の延伸を実現していく必要があるため、それぞれ個別の目標平均月を設定すべきと考えられるからである。ただしその際に、すでに保険者平均月を超えている優良事業所については、そのインセンティブとステータス等の保証のため、一定のベースとなる成功報酬を設定する必要もある。
図4は、心身状態段階別継続期間に着目した成功報酬算出に係る算出ロジックを説明する図である。すなわち、心身状態同一段階の継続期間の延伸の情報を用いて、成功報酬の算出ロジックを示している。
図4では、図1及び図2で示したデータベース10に格納された利用者(受給者)個人の心身状態及びサービスの利用状況を用いて、心身状態段階別の継続期間から個人別に成功報酬額を算出し、サービス事業所に支払う成功報酬額の配分額を決定している。
図4の通番2の行の「基礎・共通情報」では、通番3〜8までの行の、性別や誕生月等、受給者個人にかかる基礎的な情報を表すことを示している。これらは図3で示した利用者(受給者)個人の基礎属性等の決定部2301により決定される情報である。
通番3の行の「性別」では、受給者の性別を表している。「平成25年4月」列〜「平成27年12月」列の値が全て1となっており、これは受給者の性別が男性であることを表している。2の場合、女性である。
通番4の行の「誕生月」では、受給者の誕生月を●印で表している。「平成25年4月」列が●印となっており、以降1年ごとに●印となる。
通番5の行の「年齢」では、受給者の年齢を表している。「平成25年4月」列〜「平成26年3月」列まで78歳であることを表している、以降1年ごとに加齢されている。
通番6の行の「認定申請区分」では、受給者の認定申請区分を表している。「平成25年5月」列が新となっており、新規申請であることを表している。更の場合、更新申請であり、変の場合、変更申請である。
通番7の行の「要介護状態区分 申請時」では、認定申請時の要介護状態区分を表している。「平成25年5月」列が1となっており、要介護1であることを表している。0の場合、非認定である。数値は要介護度を表している。
通番8の行の「要介護状態区分 月展開時」では、月ごとの要介護状態区分を表している。すなわち、月ごとに非認定の0又は要介護1〜5の数値が記されている。
通番9の行の「要介護状態区分 段階別 継続期間(累計)[月]」では、通番10〜11までの行において、要介護状態区分 段階別 継続期間(累計)に関する情報を表すことを示している。これらは図3で示した利用者(受給者)個人の心身状態段階別継続期間の月次累計月の算出部(これを同一段階継続期間算出部とも呼ぶ)2302によって算出される。
通番10の行の「要介護1の 継続期間(累計)[月]」では、受給者が要介護1の状態であることを月ごとに累計し、何月継続しているかを表している。「平成25年5月」列〜「平成25年10月」列までは、1ずつ値が増加しており、平成25年10月時点では要介護1の状態を6ヶ月継続したことを表している。「平成25年11月」列〜「平成27年1月」列までは、6から値が変化しておらず、要介護1の状態ではないことを表している。「平成27年2月」列〜「平成27年10月」列までは、再び1ずつ値が増加しており、平成27年10月時点では要介護1の状態を累計で15ヶ月継続したことを表している。
通番11の行の「要介護2 継続期間(累計)[月]」では、受給者が要介護2の状態であることを月ごとに累計し、何月継続しているかを表している。「平成25年11月」列〜「平成27年1月」列までは、1ずつ値が増加しており、平成27年1月時点では要介護2の状態を15ヶ月継続したことを表している。「平成27年2月」列〜「平成27年10月」列までは、15から値が変化しておらず、要介護2の状態ではないことを表している。
通番12の行の「当該継続期間 対保険者平均差分月[月]」では、通番13〜14までの行において、当該受給者の継続期間と保険者が定めた基準となる期間(例えば、心身状態の段階毎に求められた平均継続期間)と保険者の定めた基準となる期間との月ごとの差分に関する情報を表すことを示している。これらは図3で示した利用者(受給者)個人の上記累計月と当該継続期間の保険者平均月や各事業所目標平均月等との差分月の算出部2303により算出される。
通番13の行の「要介護1 継続期間(累計)の対保険者平均差分月[月]」では、通番10の行の要介護1継続期間(累計)の値と、通番13の行の「コード他設定値」列に設定された基準となる値(この例では10ヶ月)との差分を月毎に表している。すなわち、「コード他設定値」列の値は保険者が、過去のO指標に基づいて決定したもので、要介護1の性別・年齢区分別の平均継続期間10ヶ月とする。
この例では、「平成23年5月」列〜「平成25年10月」列までは、保険者の平均継続期間10ヶ月を超えておらず負の値が続いているが、1ずつ値が増加している。「平成25年11月」列〜「平成27年1月」列は、通番の10行の累積値が変化していないため、差分の値も−4のまま変化していない。「平成27年2月」列〜「平成27年4月」列では、累積値が再び1ずつ増加しはじめ、「平成27年5月」列〜「平成27年10月」列では保険者の平気継続期間以上となったため、負の値ではなくなり、5まで増加する。
通番14の行の「要介護2 継続期間(累計)の対保険者平均差分月[月]」では、通番11の行の要介護2の継続期間(累計)の値と、通番14の行の「コード他設定値」列の値の差分を表している。「コード他設定値」列の値は、保険者における要介護2の平均継続期間(基準となる期間)を表しており、本例では11ヶ月としている。
この例では、「平成25年11月」列〜「平成26年8月」列までは、保険者の平均継続期間11ヶ月を超えておらず負の値が続いているが、1ずつ値が増加している。「平成26年9月」列〜「平成27年1月」列では保険者の平気継続期間以上となったため、負の値ではなくなり、4まで増加する。
通番15の行の「個人別事業所向け成功報酬合計額 [千円]」では、通番16〜17までの行において、個人別事業所向け成功報酬合計額に関する情報を表すことを示している。これらは図3で示した利用者個人の事業所向け成功報酬月額合計(配分前原資)の算出部(これを成功報酬額算出部とも呼ぶ)2305により算出される。すなわち、成功報酬額算出部2305は、継続期間の累積値を、変化後の心身状態の段階に対応する基準となる継続期間と比較し、累積値が基準となる継続期間を超過した場合は、その超過量に相当する成功報酬額を算出する。ここでは、累積値が基準となる継続期間を超過した月毎に後述する一定額の成功報酬額が算出される。この超過した月毎の成功報酬額(一定額)は、累積することで超過量に相当する成功報酬額となる。
通番16の行の「要介護1 成功報酬額 [千円]」では、通番13の行の差分の値が正の値で、かつ通番8の行の要介護状態区分 月展開が1の場合に、個人別事業所向け成功報酬合計額の値を報酬額として月ごとに算出する。本例では性別・年齢区分別の成功報酬額は「コード他設定値」列に示された6千円である。「平成27年6月」列〜「平成27年10月」列が条件に当てはまるため、成功報酬額は各月6千円となる。
通番17の行の「要介護2 成功報酬額[千円]」では、通番14の行の要介護2の差分の値が正の値で、かつ通番8の行の要介護状態区分 月展開が2の場合に、「コード他設定値」列の報酬の値を報酬額として月ごとに算出する。本実施例では性別・年齢区分別の個人別事業所向け成功報酬合計額は「コード他設定値」列に示された6千円である。「平成26年10月」列〜「平成27年1月」列が条件に当てはまるため、同成功報酬額は各月6千円となる。
通番18の行の「サービス事業所別 成功報酬 配分額」では、通番19〜51までの行において、サービス事業所別の成功報酬 配分額に関する情報を表すことを示している。通番16〜17で算出した要介護1の個人別事業所向け成功報酬合計額と要介護2の同成功報酬額を、受給者個人に所定サービス種類を提供したサービス事業所が請求した総単位数を基に配分を算出する。本実施例では、所定サービス種類は通所介護サービスとする。
通番19の行の「サービス事業所 総単位数[月別]」では、通番20〜29までの行において、サービス事業所 総単位数[月別]に関する情報を表すことを示している。これらの情報は図3に示された利用者(受給者)個人の当該継続期間にサービス提供した全事業所の月別総単位数の算出部2306により算出される。
通番20の行の「要介護1 継続期間(累計) 個人O指標(月次) [月]」の値は通番10の継続期間累積値と同値である。
通番21の行の「要介護1 通所介護 事業所A 総単位数」では、受給者に関する事業所Aの、月ごとの請求総単位数を表している。「平成25年7月」列〜「平成25年10月」列、「平成27年2月」列〜「平成27年8月」列が100であり、これら該当する各月100単位ずつ請求していることを表している。
通番22の行の「要介護1 通所介護 事業所B 総単位数」では、受給者に関する事業所Bの、月ごとの請求総単位数を表している。「平成25年5月」列〜「平成25年6月」列が100であり、該当する各月100単位ずつ請求していることを表している。
通番23の行の「要介護1 通所介護 事業所C 総単位数」では、受給者に関する事業所Cの、月ごとの請求総単位数を表している。「平成27年2月」列〜「平成27年8月」列が50であり、該当する各月50単位ずつ請求していることを表している。
通番24の行の「要介護1 他サービス種類 他サービス事業所 総単位数」では、受給者に対して所定サービス種類以外のサービスについて該当サービス事業所が請求した月ごとの総単位数を表している。「平成25年7月」列〜「平成25年10月」列、「平成27年2月」列〜「平成27年8月」列が20であり、該当する各月20単位ずつ通所介護サービス以外のサービスについて請求していることを表している。
通番25の行の「要介護2継続期間(累計) 個人O指標(月次) [月]」は通番11の継続期間累積値と同値である。
通番26の行の「要介護2 通所介護 事業所A 総単位数」では、受給者に関する事業所Aの、月ごとの請求総単位数を表している。「平成25年12月」列〜「平成26年9月」列が200であり、該当する各月200単位ずつ請求していることを表している。
通番27の行の「要介護2 通所介護 事業所B 総単位数」では、受給者に関する事業所Bの、月ごとの請求総単位数を表している。「「平成26年10月」列〜「平成27年1月」列が200であり、該当する各月200単位ずつ請求していることを表している。
通番28の行の「要介護2通所介護 事業所C 総単位数」では、受給者に関する事業所Cの、月ごとの請求総単位数を表している。「平成26年10月」列〜「平成27年1月」列が30であり、該当する各月30単位ずつ請求していることを表している。
通番29の行の「要介護2 他サービス種類 他サービス事業所 総単位数」では、受給者に対する所定サービス種類以外のサービスについて該当サービス事業所が請求した月ごとの総単位数を表している。本例では請求がないことを表している。
通番30の行の「サービス事業所 累積総単位数[月別]」では、通番31〜40までの行において、サービス事業所の累積総単位数[月別]に関する情報を表すことを示している。これらの情報は、通番19の行の「サービス事業所 総単位数 [月別]」を累積で表したもので、図3における月次累積総単位数の算出部2307で算出される。
通番31の行の「要介護1 継続期間(累計) 個人O指標(月次) [月]」は通番10の値と同値である。
通番32の行の「要介護1 通所介護 事業所A 累積総単位数」では、受給者に関して事業所Aが月ごとに請求した累積総単位数を表している。通番21の行の値の累積を表している。
通番33の行の「要介護1 通所介護 事業所B 累積総単位数」では、受給者に関して事業所Bが月ごとに請求した累積総単位数を表している。通番22の行の値の累積を表している。
通番34の行の「要介護1 通所介護 事業所C 累積総単位数」では、受給者に関して事業所Cが月ごとに請求した累積総単位数を表している。通番23の行の値の累積を表している。
通番35の行の「要介護1 他サービス種類 他サービス事業所 累積総単位数」では、受給者に対する所定サービス種類以外のサービスについて該当サービス事業所が請求した月ごとの累積総単位数を表している。通番24の行の値の累積を表している。
通番36の行の「要介護2 継続期間(累計) 個人O指標(月次) [月]」は通番11の値と同値である。
通番37の行の「要介護2 通所介護 事業所A 累積総単位数」では、受給者に関して事業所Aが月ごとに請求した累積総単位数を表している。通番26の行の値の累積を表している。
通番38の行の「要介護2 通所介護 事業所B 累積総単位数」では、受給者に関して事業所Bが月ごとに請求した累積総単位数を表している。通番27の行の値の累積を表している。
通番39の行の「要介護2 通所介護 事業所C 累積総単位数」では、受給者に関して事業所Cが月ごとに請求した累積総単位数を表している。通番28の行の値の累積を表している。
通番40の行の「要介護2 他サービス種類 他サービス事業所 累積総単位数」では、受給者に対する所定サービス種類以外のサービスについて該当サービス事業所が請求した月ごとの累積総単位数を表している。通番29の行の値の累積を表している。
通番41の行の「サービス事業所 成功報酬配分額[千円]」では、通番42〜51までの行において、サービス事業所への/成功報酬配分額[千円]に関する情報を表すことを示している。成功報酬配分額の算出ロジックは、通番30〜40で算出した累積総単位数の内、各サービス事業所の累積総単位数の比率に応じて、通番15〜17で算出した成功報酬額を配分する方法である。これらの値は、図3で示した利用者個人が利用する全事業所の月別成功報酬配分額の算出部(これを配分額算出部とも呼ぶ)2308により算出される。すなわち、配分額算出部2308は、継続期間の累積値が基準となる継続期間を超過し、且つこの累積値が増加し続ける超過継続期間内に、利用者にサービスを提供した事業所(実施者)に対し、そのサービス提供割合に応じて成功報酬額の配分額を算出する。
通番42の行の「要介護1 継続期間(累計) 個人O指標(月次) [月]」は通番10の値と同値である。
通番43の行の「要介護1 通所介護 事業所A 成功報酬配分額[千円]」では、通番32〜35の月ごとの累積単位数の合計の内、受給者に関して事業所Aが請求した月ごとの累積総単位数の比率に応じて、通番16の要介護1成功報酬額を配分した額を表している。「平成27年9月」列においては、通番32〜35の累積総単位数の合計は、事業所Aが1100、事業所Bが200、事業所Cが50、他サービス事業所が220のため、1570単位である。その内、事業所Aの累積総単位数の比率は0.700である。通番16の要介護1成功報酬額が6千円のため、要介護1 通所介護 事業所A 成功報酬配分額は42千円となる。
通番44の行の「要介護1 通所介護 事業所B 成功報酬配分額[千円]」では、受給者に関して事業所Bが請求した月ごとの累積総単位数の比率に応じて、通番16の要介護1成功報酬額を配分した額を表している。「平成27年9月」列においては、通番32〜35の累積総単位数に対する事業所Bの累積総単位数の比率は0.13であり、通番16の要介護1成功報酬額が6千円のため、要介護1 通所介護 事業所Bの成功報酬配分額は0.76千円となる。
通番45の行の「要介護1 通所介護 事業所C 成功報酬配分額[千円]」では、受給者に関して事業所Cが請求した月ごとの累積総単位数の比率に応じて、通番16の要介護1成功報酬額を配分した額を表している。「平成27年9月」列において、通番32〜35の累積総単位数に対する事業所Cの累積総単位数の比率は0.032であり、通番16の要介護1成功報酬額が6千円のため、要介護1 通所介護 事業所Cの成功報酬配分額は0.19千円となる。
通番46の行の「要介護1 他サービス種類 他サービス事業所 成功報酬配分額[千円]」では、通番32〜35の月ごとの累積単位数の合計の内、受給者に対して他サービス事業所が請求した月ごとの累積総単位数の比率に応じて、通番16の要介護1成功報酬額を配分した額を表している。「平成27年9月」列においては、通番32〜35の累積総単位数の合計は、事業所Aが1100、事業所Bが200、事業所Cが50、他サービス事業所が220のため、1570単位である。その内、他サービス事業所の累積総単位数の比率は0.140であり、通番16の要介護1成功報酬額 が6千円のため、要介護1、他サービス事業所の成功報酬配分額0.84千円となる。
通番47の行の「要介護2 継続期間(累計) 個人O指標(月次) [月]」は通番11の値と同値である。
通番48の行の「要介護2 通所介護 事業所A 成功報酬配分額[千円]」では、通番37〜40の月ごとの累積単位数の合計の内、受給者に関して事業所Aが請求した月ごとの累積総単位数の比率に応じて、通番17の要介護2成功報酬額を配分した額を表している。「平成26年10月」列においては、通番37〜40の累積総単位数の合計は、事業所Aが2200、事業所Bが200、事業所Cが30、他サービス事業所がなしのため、2430単位である。その内、事業所Aの累積総単位数の比率は0.905である。通番17の要介護2成功報酬額が6千円のため、要介護2 通所介護 事業所A 成功報酬配分額は5.043千円となる。
通番49の行の「要介護2 通所介護 事業所B 成功報酬配分額[千円]」では、受給者に関して事業所Bが請求した月ごとの累積総単位数の比率に応じて、通番17の要介護2成功報酬額を配分した額を表している。「平成26年10月」列においては、通番37〜40の累積総単位数に対する事業所Bの累積総単位数の比率は0.082であり、通番17の要介護2成功報酬額が6千円のため、要介護2 通所介護 事業所Bの成功報酬配分額は0.49千円となる。
通番50の行の「要介護2 通所介護 事業所C 成功報酬配分額[千円]」では、受給者に関して事業所Cが請求した月ごとの累積総単位数の比率に応じて、通番17の要介護2成功報酬額を配分した額を表している。「平成26年10月」列において、通番37〜40の累積総単位数に対する事業所Cの累積総単位数の比率は0.012であり、通番17の要介護1成功報酬額が6千円のため、要介護2 通所介護 事業所Cの成功報酬配分額は0.07千円となる。
通番51の行の「要介護2 他サービス種類 他サービス事業所 成功報酬配分額[千円]」では、通番37〜40の月ごとの累積単位数の合計の内、受給者に対して他サービス事業所が請求した月ごとの累積総単位数の比率に応じて、通番17の要介護2成功報酬額を配分した額が表される。「平成26年10月」列においては、通番37〜40の累積総単位数の合計は、事業所Aが2200、事業所Bが200、事業所Cが30、他サービス事業所がなしのため、2430単位である。他サービス事業所がなしのため、要介護2 他サービス種類 他サービス事業所 成功報酬配分額もなしとなる。
以上のロジック(各段階の演算)により、個人別事業所向け成功報酬合計額とそのサービス事業所への成功報酬配分額の計算を実現する。
上記の実施例では、保険者の心身状態の段階別継続期間(累計)の平均月(基準となる継続期間)と比較される利用者個人の心身状態の段階別継続期間(累計)は、利用者個人の心身状態の段階が上の段階に変化(悪化方向に変化)した時点を起点とし、この変化後の段階の継続期間(累積値)を指している。しかし、心身状態の段階が上がった後に一時的に段階が下がる(心身状態が好転する)こともあり、この段階が下がった期間も累積して継続期間に含めるようにしてもよい。すなわち、利用者個人の現在の心身状態の段階、及び当該段階より下位の(心身状態が良好な)段階全ての各段階の継続期間(累計)の総合計期間(「心身状態段階別 到達・維持期間」とする)と当該段階に対する保険者の「心身状態段階別 到達・維持期間」の平均月とを比較してもよい。ここで、平均月を算出する時の段階別継続期間(累計)は上記の実施例と同じである。
なお、上記の実施例では、成功報酬算出の際に、要介護状態区分段階別の性別・年齢区分別の保険者の平均継続期間を基準としたが、要介護状態区分をその他の心身状態項目(認知症自立度、障害自立度、認定調査項目等)に置き換えても良い。また基準として、保険者平均期間を、例えば、事業所別にその性別・年齢区分別に所定継続期間(所定時点での当該事業所の性別・年齢区分別目標継続期間に事業所ごとに設定した延伸目標期間を加算した期間等)に置き換えても良い。
さらに、上記の利用者個人別の事業所別成功報酬配分額を、事業所ごとに集計することにより、事業所別月額成功報酬配分額、さらにはそれを年次集計することにより同年額が算出される。これらの値は、図3で示した事業所へ月別・年別成功報酬配分額の算出部2309により算出される。
また、上記の利用者個人別の給付費抑制額(総単位数の段階別差額等)を保険者全体で集計し、さらにそこから保険者へのインセンティブコスト比率を乗じることにより保険者のインセンティブコストが算出される。この値は、図3で示した保険者全体の月別・年別給付費抑制額(保険者負担公費の減額量)の算出部2310により算出される。
さらに、利用者個人に対する成功報酬額(保険料減額等)についても、上記の利用者個人別の給付費抑制額(総単位数の段階別差額等)に対して、利用者へのインセンティブコスト比率を乗じることにより算出できる。この値は、図3で示した利用者個人の月別成功報酬(保険料月額の減額量)の算出部2311により算出される。
なお、利用者個人、保険者、事業所(経営者)等への、給付費抑制額に対するインセンティブコスト比率については、それぞれの属性と現状と目標等を考慮して慎重に設定していく必要がある。
以上まとめると、大目標である給付費抑制による持続的社会保障システムの実現を図るためには、健康寿命の延伸が大前提(必須)となるが、それを実現するためには少なくとも前述した、ア)人に対するインセンティブ、イ)保険者に対するインセンティブ、ウ)経営者(事業所)等に対するインセンティブの3種類のインセンティブコストが必要ということである。そのため、上記大目標の実現プロセスとして実際に抑制される費用としては、達成される健康寿命の延伸(介護や医療の心身状態段階別継続期間の延伸)による実際の給付費抑制額から、3種類のインセンティブコスト(それぞれ適切な比率を考慮)を差し引いた残額ということができる。給付費抑制のためには、そのために必要なコストも不可欠ということである。
ここで、月別の成功報酬原資(図4の通番16,17に記載された要介護1成功報酬合計額又は要介護2成功報酬合計額、ここではいずれも6千円)は、例えば、一月当りの保険者全体の心身状態段階別平均給付費の隣り合う段階毎の差(以下、保険者平均給付費段階別差分と記載)を基に決められている。すなわち、要介護1の利用者への平均給付費に比べ、隣り合う段階である要介護2の利用者への平均給付費の方が当然高額であり、これら隣り合う段階毎の差(上述した保険者平均給付費段階別差分)を基に各段階(この場合は要介護1)の成功報酬原資が決められている。
しかし、この保険者平均給付費段階別差分は、文字通り保険者平均給付費(保険者が管轄する全事業所での平均給付費の平均値)の差分であり、これに基づいて一律に成功報酬原資を決めることは公平性の面からみて改善の余地がある。
すなわち、保険者が管轄する事業所の中には、心身状態の各段階における平均給付費が多く、隣り合う段階毎の差が大きい事業所と、反対に、心身状態の各段階における平均給付費が少なく、隣り合う段階毎の差が小さい事業所とが混在している。この場合、後者の事業所は、比較的少ない平均給付費により同じ心身状態の段階を維持することを意味しており、前者に比べコストパフォーマンスが高いと言え、これらについて一律に成功報酬原資を決めることは公平性の面からみて改善の余地がある。
なお、ここでいうコストパフォーマンスとは、パフォーマンスが心身状態の段階の継続期間であり、コストはこの継続期間に掛かる人件費などを含むコストである。したがって、少ないコストで心身状態の継続期間を維持することが、コストパフォーマンスが高いということになる。
そこで、上述した公平性を改善するために、コストパフォーマンスの高い事業所に対しては、コストパフォーマンスに対応した成功報酬原資を与えるようにする。すなわち、一月当りの保険者全体の心身状態段階別平均給付費の隣り合う段階毎の差(保険者平均給付費段階別差分)を成功報酬原資計算に使うのでなく、事業所(地域包括ケア事業の施策の実施者)ごとの一月あたりの心身状態段階別平均給付費の隣り合う段階毎の差(事業所の平均給付費段階別差分とする)を、下式で示すように、月別の事業所別成功報酬原資計算に使う。
[式] 当該事業所向け成功報酬原資=保険者の平均給付費段階別差分×(保険者の平均給付費段階別差分÷当該事業所の平均給付段階別差分)
このように各事業所について成功報酬原資を求めることにより、保険者平均より低い平均給付費でサービス提供する事業所(よりコストパフォーマンスの高い事業所)にはより厚く成功報酬原資を与え、逆に保険者平均より高い平均給付費でサービス提供する事業所(よりコストパフォーマンスの低い事業所)には成功報酬原資を抑制する。これにより、コストパフォーマンスの低い事業所の方がより大きな成功報酬原資を手にするという問題が解消することになり、同一段階で平均給付費に違いがある(手厚いサービスか否かの差がある)事業所間で、より公平な成功報酬配分が可能になる。
これらの演算機能は、図3で示した利用者個人の事業所向け月別成功報酬合計額(配分前原資)の算出部2305にて実行させればよい。
なお、業所別の月別成功報酬配分額の算出方法の別の実施例として、各事業所の介護レセプト月別総単位数だけでなく、その期間に取り組んだ各事業所の各取組状況や、また利用者個人が取り組んだ取組状況、さらに小地域ごとの各取組状況などにも範囲を拡大して、成功報酬配分額を算出してもよい。
また、図4の通番9の行の「要介護状態区分 段階別 継続期間(累計)[月]」では、認定後の要介護度の継続期間を算出しているが、認定前の非認定期間、すなわち、所定の年齢を起点とした初回認定までの期間を算出するようにしてもよい。この場合、通番12の行の「当該継続期間 対保険者平均差分月[月]」の保険者平均(基準となる継続期間)として、非認定期間の平均継続期間も設定しておく。
また、図3及び次の図4の例では、心身状態の各段階の平均継続期間の保険者平均や各事業所の目標平均を上回る場合に成功報酬(加算等)を算定しているが、逆に上記各平均を下回る場合に、その下回った分だけ減算を行うといったよりきびしくフォローアップするやり方も考えられる。
さらに、上述の説明は介護分野における成功報酬についてであるが、同様の手法を医療分野における成功報酬算出にも適用することができる。すなわち、図3において、符号2301〜2311で示した各部を、介護に係る成功報酬の算出に用いる場合と、医療に係る成功報酬の算出に用いる場合とについて、これらの事業における違いを、それぞれ互いに対比して説明する。
2301:利用者個人の基礎属性等の決定部
<介護側>:介護サービス利用者個人の基礎属性等の決定
・性別・
・誕生月
・年齢[歳]
・認定申請区分
・要介護状態区分 申請時 等
<医療側>:疾病予防・重症化予防対象者個人の基礎属性等の決定
・性別
・誕生月
・年齢 [歳]
・健診月
・疾病別リスク段階 健診時
・所属医療保険種別 等
2302;利用者個人の心身状態段階別継続期間の月次累計月の算出部
<介護側>:利用者個人の介護の心身状態項目段階別継続期間の月次累計月の算出
・要介護状態区分
・認知症自立度
・障害自立度
・認定調査項目(中間評価項目得点含む)
・日常生活圏域ニーズ調査項目
・新総合事業チェックリスト項目 等
<医療側>;疾病予防・重症化予防対象者個人の疾病別リスク段階別継続期間の月次累計月の算出
・新生物(がん)関連のリスク項目
・脳卒中関連のリスク項目
・急性心筋梗塞関連のリスク項目
・糖尿病関連のリスク項目
・精神疾患(うつ、認知症)関連のリスク項目
・内臓慢性疾患系のリスト項目 等
2303;利用者個人の上記累計月と当該継続期間の保険者平均月や各事業所目標平均月等との差分月の算出部
<介護側>:利用者個人の上記累計月と当該継続期間の介護保険者平均月や各介護サービス事業所目標平均月等との差分月の算出(差分月:正で延伸、同負で短縮を表す)。
<医療側>:疾病予防・重症化予防対象者個人の上記累計月と当該継続期間の医療保険者平均月や各疾病予防・重症化予防推進機関の目標平均月等との差分月の算出(差分月:正で延伸、同負で短縮を表す)。
2304:利用者個人の月別介護給付費抑制額の算出部
<介護側>: 利用者個人の月別介護給付費抑制額の算出
・差分月が正の場合(すなわち設定平均月よりも延伸している場合)、その月と月平均の隣接する要介護状態区分等段階の平均給付費の差額の積として上記抑制額を算出。
・上記と逆の場合、給付費増大額として算出。
<医療側>疾病予防・重症化予防対象者個人の月別医療給付費抑制額の算出
・差分月が正の場合(すなわち設定平均月よりも延伸している場合)、その月と月平均の隣接する疾病別リスク段階の平均給付費の差額の積として上記抑制額を算出。
・上記と逆の場合、給付費増大額として算出。
2305:利用者個人の事業所向け成功報酬月額合計(配分前原資)の算出部
<介護側>:介護サービス事業所のインセンティブコスト比率を考慮して、利用者個人の介護事業所及び小地域事業主体向け月別成功報酬合計額( 配分前原資 )の算出
<医療側>:介護サービス事業所のインセンティブコスト比率を考慮して、疾病予防・重症化予防対象者個人の職域及び小地域の事業推進主体向け月別成功報酬合計額( 配分前原資 )の算出。
2306:利用者個人の当該継続期間にサービス提供した全事業所の月別総単位数の算出部
<介護側>:利用者個人の当該継続期間にサービス提供した全介護事業所の月別総単位数及び小地域事業主体での発生コストの算出。
<医療側>:疾病予防・重症化予防対象者個人の当該期間に当該事業を推進した職域及び小地域事業主体での発生コストの算出。
2307:利用者個人の当該継続期間にサービス提供した全事業所の月別総単位数の月次累積総単位数の算出部
<介護側>:上記月別総単位数の各事業所別/各小地域別の月次累積総単位数の算出。
<医療側>:上記月別総単位数の各職域及び各地域事業主体別の月次累積総単位数の算出。
2308:利用者個人が利用する全事業所の月別成功報酬配分額の算出部
<介護側>:利用者個人が利用する全介護事業所/全小地域事業主体の月別成功報酬配分額の算出。
・上記月別累積総単位数や月別累積総発生コストの比率を算出。
・上記比率を、上記事業所向け月別成功報酬合計額( 配分前原資 )にそれぞれ乗じることで、全介護サービス主体の個人別月別成功報酬配分額を算出。
<医療側>:疾病予防・重症化予防対象者個人が利用する全職域及び小地域事業主体の月別成功報酬配分額の算出。
・上記月別累積総単位数や月別累積総発生コストの比率を算出。
・上記比率を、上記主体向け月別成功報酬合計額( 配分前原資 )にそれぞれ乗じることで、全事業推進主体の個人別月別成功報酬配分額を算出。
2309:事業所へ月別・年別成功報酬配分額の算出部
<介護側>:介護事業所/小地域事業主体の月別成功報酬配分額の算出。
・利用者個人あたりの介護事業所別/小地域事業主体の月別成功報酬配分額を、各介護関連主体単位で集計。
<医療側>:職域及び地域別事業主体の月別成功報酬配分額の算出。
・利用者個人あたりの職域及び地域別事業主体の月別成功報酬配分額を、各関連主体単位で集計。
2310:保険者全体の月別・年別給付費抑制額(保険者負担公費の減額量)の算出部
<介護側>:介護保険者全体の月別・年別成功報酬額の算出(介護保険者負担公費の減額量等の算出)。
・介護保険者の月別・年別介護給付費抑制額に対する介護保険者インセンティブコスト比率の設定。
・上記月別・年別成功報酬額の算出に基づき月別・年別介護インセンティブコストの算出。
・上記月別・年別介護インセンティブコストの算出より介護保険者負担公費の減額量等の算出。
<医療側>:医療保険者全体の月別・年別成功報酬額の算出(医療保険者負担公費の減額量等の算出)。
・医療保険者の月別・年別医療給付費抑制額に対する医療保険者インセンティブコスト比率の設定。
・上記医療保険者インセンティブコスト比率の設定に基づき月別・年別医療インセンティブコストの算出。
・上記月別・年別医療インセンティブコストの算出より医療保険者負担公費の減額量等の算出。
2311:利用者個人の月別成功報酬(保険料月額の減額量)の算出部
<介護側>:介護サービス利用者個人の月別成功報酬の算出(介護保険料月額の減額量の算出)。
・上記利用者個人の月別介護給付費抑制額に対する利用者個人介護インセンティブコスト比率の設定。
・上記利用者個人介護インセンティブコスト比率の設定に基づき上記利用者個人の月別介護インセンティブコストの算出。
・上記月別介護インセンティブコストの算出より月額介護保険料減額量の算出。
<医療側>:疾病予防・重症化予防対象者個人の月別成功報酬の算出(医療保険料月額の減額量の算出)。
・上記利用者個人の月別医療給付費抑制額に対する利用者個人医療インセンティブコスト比率の設定。
・上記医療インセンティブコスト比率の設定に基づき上記利用者個人の月別医療インセンティブコストの算出。
・上記月別医療インセンティブコストの算出より月額医療保険料減額量の算出。
このように介護・医療の各分野において、心身状態の段階別継続期間を延伸させて介護給付費や医療費を低減させた個人や事業所等に対して、適切かつ公平に成功報酬を与えることができ、給付費抑制による持続的社会保障システムの実現が可能となる。
次に、本発明の別の実施の形態を図7乃至図29を用いて詳細に説明する。この実施の形態は、被保険者の心身状態を改善・維持させた実施者を公平に評価し、評価に応じたグレードで表彰して、インセンティブを与えようとするインセンティブ事業に関するものである。
この実施の形態のインセンティブ事業システムも、住民の基本データ、介護保険データ、医療保険データ、及び自治体が実行する施策を含む施策等固有データを有する図1及び図2で示すデータベース10に保持されたデータを用いている。このため、図2で示すサーバ32に、図7で示すインセンティブ事業を実行するシステムがソフトウエアとして構築されている(図2では図示省略)。
図7は、インセンティブ事業を実行するシステム構成を、処理の流れに従って図示している。図において、事業計画策定部701は、地域包括ケア事業の事業計画を3年ごとに策定する。インセンティブ事業の基本的な計画も、上述した地域包括ケア事業の事業計画と共に、インセンティブ事業の計画策定部702によって3年ごとに策定される。すなわち、3年間のインセンティブ事業計画が策定される。
インセンティブ事業は、上述した3年ごとに実行される計画策定部702のほかに、1年ごとに実行されるインセンティブ表彰内容決定部703、インセンティブ付与条件決定部704、参加者/事業所管理部705、インセンティブ事業実施部706、参加者/事業所評価部707、及び表彰管理部708、を有する。すなわち、上述した各部703,704,705,706,707,708により各期のインセンティブ事業は1年周期で実施される。
インセンティブ事業の計画策定部702は、介護事業活動における各事業所の取り組みを評価する評価期間を定義し、インセンティブ対象の指標を定義し、心身状態継続期間判定の基準となる基準期間を定義する。
具体的には、図8で示す評価期間マスタ801の作成、図12で示す加工項目定義テーブル1201の作成、図11で示すインセンティブマスタ(対象指標)1101の作成、図13で示す突合テーブル1301の作成、図14で示すインセンティブマスタ(基準期間)1401の作成、を実行する。計画策定部702で作成されたこれらマスタやテーブルは基本的に3年間変更されることなく使用される。
評価期間マスタ801は、図8で示すように、各期のインセンティブ事業における被保険者と介護サービス提供する実施者(以下、事業所として説明する)を評価する評価期間の開始年月と終了年月を定義する。すなわち、事業所の取組を判定する評価期間として、評価期間開始年月と評価期間終了年月を定義する。当該期間がインセンティブ付与の判定対象となる事業所の取組期間となる。
インセンティブマスタ(対象指標)1101は、図11で示すように、インセンティブ評価対象となる指標及び指標グループを定義する。図11では、指標の項目として、要介護区分、障害自立度、認知症自立度、認定調査項目、アンケート調査項目、及びこれら各指標を本来の評価値とは異なる評価値に加工した加工項目(図12にて加工方法を後述する)が例示されている。なお、これら指標のすべてを必ず使用しなくてもよく、幾つかの指標を適宜組み合わせて使用してもよい。更に、図11のインセンティブマスタ(対象指標)1101に示す指標以外にも、要介護認定データの一次判定結果の行為区分毎の基準時間及びその合計基準時間、並びに各郡の中間評価項目得点及びその合計点を指標とすることも可能である。
また、これら各指標のうち、継続期間が計算対象となるものについては、丸印を付した。また、単独で用いられる指標として、要介護区分、及び認知症自立度に○印を付している。指標グループとしてはGrA、GrB、GrCが示されている。GrAは、認定調査項目のうち、○印が付された認定調査項目2,3,・・・で構成される指標グループであり、GrBは、アンケート調査項目のうち、○印が付されたアンケート調査項目1,2,・・・で構成される指標グループであり、GrCは、○印が付された認定調査項目2,・・・、及び加工項目1,3、・・・で構成される指標グループである。
加工項目定義テーブル1201は、図12で示すように、前述した各種の指標を、本来の評価値とは異なる評価値に加工する加工方法を定義している。
図12では認知症自立度を加工した加工項目1、認定調査項目を加工した加工項目2、アンケート調査項目を加工した加工項目3を例示している。すなわち、認知症自立度の本来の評価値は「自立」から「M」までの8段階であるが、加工項目1として、「IIa」「IIb」を段階「3」に纏め、「IIIa」「IIIb」「IV」を段階「4」に纏めて、5段階の評価値に加工している。
また、認定調査項目の本来の評価値は、「ある=1」「なし=2」の2パターンであるが、それぞれ2パターンの「認定調査項目1」「認定調査項目2」「認定調査項目3」のデータを組み合わせると合計8パターンの組み合わせが得られる。そこで、加工項目2として、これらの組み合わせを8段階の評価値に加工している。
アンケート調査項目は、それぞれ1〜4の4段階の回答があるものとし、「アンケート調査項目1」と「アンケート調査項目2」の加算値を評価する場合、加算値「1」から加算値「8」までの16通りの組み合わせとなる。そこで、加工項目3として、加算値「4」以下、加算値「5」、加算値「6」以上、の3段階の評価値に加工している。
このように加工方法は種々考えられるが、指標の種類などに応じて、データ処理上、有効な方法を適宜採用する
突合テーブル1301は、図13で示すように、図示しない介護レセプトに基づく要介護認定データ1302、介護給付実績データ1303、及びアンケート調査テーブル1304の項目を、被保険者とサービス提供月をキーに突合して構成される。この突合テーブル作成方法を、図20のフロー図を用いて説明する。
図20において、ステップ2001では、突合テーブル1301の作成を開始する。ステップ2002は、対象被保険者の要介護認定データ1302における認定期間開始月と認定期間終了月が示す認定期間にある、介護給付実績データ1303のサービス提供月を抽出する。ステップ2003では、ステップ2002で抽出した介護給付実績データ1303のサービス提供月のデータに、要介護認定データ1302の該当するデータ項目を挿入する。ステップ2004では、要介護認定データ1302の認定期間に重複がある場合、新しい要介護認定データで上書きする。ステップ2005の判断により、対象被保険者の全ての要介護認定データの処理が終了するまで繰り返す。
ステップ2006は、対象被保険者のアンケート調査テーブル1304のアンケート調査月と次のアンケート調査月を抽出する。ステップ2007は次のアンケート調査月の有無を判断する。ステップ2008は、次のアンケート調査月がある場合、アンケート調査月と次のアンケート調査月の前月の間にある、介護給付実績データ1303のサービス提供月を抽出する。ステップ2009は、次のアンケート調査月がない場合、アンケート調査月と以降の介護給付実績データ1303のサービス提供月を抽出する。
ステップ2010は、ステップ2008、2009のいずれの場合も、介護給付実績データ1303の該当するサービス提供月に、アンケート調査テーブル1304の項目を挿入する。ステップ2011の判断により、対象被保険者の全てのアンケート調査データに対する処理が終了するまで繰り返す。
ステップ2012は、図12の加工項目定義テーブル1201に従い、突合テーブル1301の全てのサービス提供月の加工項目を作成し、挿入する。ステップ2013の判断により、図12の加工項目テーブル1201の全ての加工項目に対して処理が終了するまで繰り返す。ステップ2014で、突合テーブル1301の作成を終了する。
インセンティブマスタ(基準期間)1401は、心身状態継続期間判定の基準となる基準期間を定義するもので、図11のインセンティブマスタ(対象指標)1101で継続期間計算対象であると定義された単独指標と指標グループのそれぞれに対する基準期間を定義する。この基準期間は、図14で示すように、介護サービス種類別(主なサービス種類、居宅介護支援サービス又は「その他」、図14では介護福祉施設サービス)、性別、年齢区分(5歳ピッチ)毎に定義する。
また、この基準期間は、当該保険者における全ての被保険者を対象とし、上述した突合テーブル1301を使用して、図21の基準期間算出フロー図及び図22の悪化までの同一段階の継続期間の例に示す方法で計算する。
インセンティブマスタ(基準期間)1401は、インセンティブ事業計画策定時に図11のインセンティブマスタ(対象指標)1101及び図12の加工項目定義テーブル1201を定義し、計算する。したがって、インセンティブマスタ(対象指標)1101又は加工項目定義テーブル1201が変更された時に、インセンティブマスタ(基準期間)1401を計算する。
図21の基準期間算出フロー図における各ステップを、図22により補足して説明する。ステップ2101では基準期間の算出を開始する。ステップ2102は、図13の突合テーブル1301における当該保険者の全ての被保険者のデータを検索する。ステップ2103は、図22の認定更新チェック期間における対象被保険者の認定更新申請の有無を調べる。図22に示すように、認定更新チェック期間は集計時点からの過去一定期間(例えば3年間)として定義する。
ステップ2104は、認定更新チェック期間に認定更新申請が有る場合、当該認定更新で基準期間算出対象の心身状態指標が悪化しているかを調べる。図22の例では、参加者K1、参加者K2、参加者K3、参加者K4の心身状態指標が、認定更新チェック期間に悪化している。
ステップ2105は、当該認定更新で当該心身状態指標が悪化している場合、当該悪化月の前月を当該心身状態段階の終了月をする。ステップ2106は、当該心身状態段階の変化開始月を特定できるかを調べる。図22の例では、参加者K1の継続期間1、参加者K2の継続期間2、参加者K3の継続期間3及び継続期間4、参加者K4の継続期間5が当該心身状態段階の変化開始月を特定できる。
ステップ2107は、当該心身状態段階の変化開始月を特定できる場合、当該変化開始月を当該心身状態段階の開始月とする。ステップ2108は上記の開始月と終了月から、当該心身状態の悪化までの同一段階の継続期間を算出する。
ステップ2109は、当該継続期間中の当該被保険者のサービス種類別サービス単位数と総単位数を集計する。ステップ2110は、当該被保険者のサービス単位数が総単位数の過半数を占めるサービス種類がある場合、当該心身状態指標の当該継続期間の主なサービス種類とする。尚ここで、閾値になる「過半数」は一例であり、「70%以上」、「90%以上」等と調整して設定することも可能であり、以降の「総単位数に占めるサービス単位数の割合」等も同様に調整して設定することも可能である。
ステップ2111の判断により、図11のインセンティブマスタ(対象指標)1101の全ての継続期間計算対象指標の処理が終了するまで繰り返す。
ステップ2112は、図11のインセンティブマスタ(対象指標)1101の指標グループに継続期間計算対象指標が含まれている場合、グループを構成する指標の当該継続期間計算対象指標の悪化までの同一段階の継続期間の平均値を算出する。ステップ2113の判断により、図11のインセンティブマスタ(対象指標)1101の全ての指標グループの処理が終了するまで繰り返す。また、ステップ2114の判断により、図13の突合テーブル1301の全ての被保険者の処理が終了するまで繰り返す。
ステップ2115では、以上により算出された悪化までの同一段階の継続期間又は平均値(指標グループ)を集計して、主なサービス種類別・性別・年齢区分別に各指標、各指標グループの継続期間の平均値を算出し、これらを主なサービス種類における基準期間とする。ステップ2116はステップ2117に続く。
ステップ2117はステップ2116から続く。ステップ2118は図13の突合テーブル1301における当該保険者の全ての被保険者のデータを再度検索する。ステップ2119は認定更新チェック期間における対象被保険者の認定更新申請の有無を調べる。
ステップ2120は認定更新チェック期間に認定申請が有る場合、当該認定更新で基準期間算出対象の心身状態指標が悪化しているかを調べる。ステップ2121は当該認定更新で当該心身状態指標が悪化している場合、当該悪化月の前月を当該心身状態段階の終了月をする。
ステップ2122は当該心身状態段階の変化開始月を特定できるかを調べる。ステップ2123は当該心身状態段階の変化開始月を特定できる場合、当該変化開始月を当該心身状態段階の開始月をする。ステップ2124は上記の開始月と終了月から、当該心身状態の悪化までの同一段階の継続期間を算出する。ステップ2125は当該継続期間中に当該被保険者に居宅介護支援サービスのサービス単位数がある場合、居宅介護支援サービスに分類する。
ステップ2126の判断により、図11のインセンティブマスタ(対象指標)1101の全ての継続期間計算対象指標に対して再度処理を終了するまで繰り返す。
ステップ2127は図11のインセンティブマスタ(対象指標)1101の指標グループに継続期間計算対象指標が含まれている場合、当該継続期間計算対象指標の悪化までの同一段階の継続期間の平均値を算出する。ステップ2128の判断により、図11のインセンティブマスタ(対象指標)1101の全ての指標グループに対して再度処理を終了するまで繰り返す。ステップ2129に判断により、図13の突合テーブル1301の全ての被保険者に対して再度処理を終了するまで繰り返す。
ステップ2130は以上により算出された悪化までの同一段階の継続期間又は平均値(指標グループ)を集計して、居宅介護支援サービス及び全被保険者の性別・年齢区分別に各指標、各指標グループの継続期間の平均値を算出し、これらをそれぞれ居宅介護支援サービスの基準期間、「その他」の基準期間とする。ステップ2131は基準期間の算出を終了する。
これらの処理は、前述したように、図7の計画策定部702で策定される3年間のインセンティブ事業の基本計画であり、作成されたマスタやテーブルは基本的に3年間不変とする。
次に、上述した基本計画に基づき、1年ごとに実施される第N期インセンティブ事業の準備段階における各部の処理を説明する。
図7で示したインセンティブ表彰内容決定部703は、前述した評価期間に、被保険者の心身状態を改善・維持させた事業所(実施者)に対する表彰のグレードを決定する。具体的には図9で示すインセンティブ(事業所表彰)マスタ901を作成する。インセンティブ(事業所表彰)マスタ901は、被保険者の状態の改善・維持に取り組み、一定の成果を挙げた事業所を表彰する内容を定義する。すなわち、図8で示した評価期間マスタ801で定義する評価期間における、インセンティブ付与対象となる事業所に授与される表彰内容がグレード別に示されている。なお、グレードは、数値の小さいものほど表彰レベルが高いものとする。
インセンティブ付与条件決定部704は、評価期間における被保険者の心身状態の改善・維持の程度を、指標値の変化として捉え、この心身状態の改善・維持の程度と、表彰用のグレードとを対応付けているインセンティブマスタ(被保険者判定条件)1001を作成する。
インセンティブマスタ(被保険者判定条件)1001は、図8の評価期間マスタ801で定義する評価期間において、各被保険者が受けるサービス種類単位に、表彰される被保険者の状態の改善・維持の条件を、図10で示すように定義したものである。
判定に使用する指標は、要介護認定データの要介護区分、障害自立度、認知症自立度、認定調査項目、被保険者の状態等に対するアンケート調査項目の各項目とそれらを加工して作成する加工項目である。これらの単独の値と組み合わせたグループの合計値と、要介護区分、障害自立度、認知症自立度、認定調査項目、被保険者の状態等に対するアンケート調査項目、加工項目の各項目の同一段階の継続期間と組み合わせたグループの項目の継続期間の平均値である。
要介護区分、障害自立度、認知症自立度、認定調査項目、被保険者の状態等に対するアンケート調査項目の各項目は、全て値が大きい方が重度の要介護状態を表す。評価期間終了年月の値が評価期間開始年月の値より大きい場合は状態の悪化、適用終了年月の値が適用開始年月の値より小さい場合は状態の改善を示す。
以下、この被保険者判定条件の具体例を説明する。図19は、図10で示した各表彰グレードとその判定基準とを、計算機処理に適する様式で表記したものである。図19の例ではサービス種類は、介護福祉施設サービスを表し、P1~P5は各指標の2時点間の変化を表す。例えば、要介護区分の指標についてみると、数値「−1」は要介護区分が評価開始時点から評価終了時点までの間に1段階改善されたことを示す。グループ指標GrAについてみると、数値「−5」はグループを構成する指標の合計値が5ポイント改善されたことを示している。
また、T1〜T5は、各指標の、同一段階継続期間と基準期間との比較結果を表しており、記号「>」は、基準時間を越えたことを意味する。
図10のインセンティブマスタ(被保険者判定条件)1001の、第2期及び第3期の介護福祉施設サービスにおける、インセンティブグレード1の「要介護度改善&指標GrA合計5点以上改善」は、図19における2時点間点数変化の条件P1(要介護区分)の値の変化「−1」以下と2時点間点数変化の条件P3(指標GrA)の合計点の変化「−5」以下のどちらも満たす「P1&P3」であり、グレード1として定義される。
同様に、図10の第2期及び第3期の介護福祉施設サービスにおけるインセンティブグレード4の「要介護度継続期間が基準期間を超過」は、図19における同一段階継続期間の基準期間に対する比較条件のT1 (要介護区分)が図8の基準期間より「>」(大きい)で定義される。条件は、基準期間以上「>=」、基準期間より小さい「<」及び基準期間以下「<=」で定義することも可能である。
参加者/事業所管理部705は、インセンティブ事業へ参加する被保険者及びこの被保険者に介護サービスを提供する実施者(事業所)を登録する図15のエントリーシート1501を作成する。また、このインセンティブ事業への参加する被保険者及びこの被保険者に介護サービスを提供する事業所に対し、必要に応じて心身状態等に関する事前アンケートを実施する。すなわち、自治体(保険者)によるインセンティブ事業への参加の公募に応募した事業所と、この事業者から介護サービスを受ける被保険者(参加者)とを、図15で示すように互いに関連付けて登録する。
図15では、参加者Aに対しては、単一の事業所1がサービス種類コード51のサービスを提供している。参加者Bに対しては、複数の事業所4,2,3がそれぞれ異なるサービス種類コード43,22,15のサービスを提供している。この参加者Bの場合は、複数の事業所4,2,3がチームとして参加していることを示している。以下同様に、参加者C,D,Eについても、これらにサービスを提供する事業所と関連付けて登録される。
これらインセンティブ表彰内容決定部703、インセンティブ付与条件決定部704、及び参加者/事業所管理部705は、前述のように、1年ごとに実施される第N期インセンティブ事業の準備段階で実行される。この準備段階を経てインセンティブ事業実施部706により第N期のインセンティブ事業が実施される。
インセンティブ事業実施部706により第N期のインセンティブ事業が実施されると評価期間終了後に、参加者/事業所評価部707によりインセンティブ事業が評価される。すなわち、参加者/事業所評価部707は、評価期間の終了後に、事前アンケートと同じアンケートを実施する。また、評価期間における要介護認定データ、及び評価期間の開始時点及び終了時点のアンケート調査結果に基づき、評価期間におけるインセンティブ対象指標の指標値の変化から、参加者の心身状態の改善の程度、及び心身状態の同一段階の継続期間の基準期間との比較結果から、インセンティブ付与条件決定部704で定義された対応関係により参加者のインセンティブグレードを判定する。
具体的には、上述のように、事前アンケートと同じアンケートを評価期間の終了後のアンケートとして実施する。これは評価期間の前と後でどのように変化したかを捉えるためであり、その調査結果は、図11、図12、及び図13で示すように指標の一つとして用いられる。
また、図13で示した突合テーブル1301を更新作成する。すなわち、評価期間中に得られた要介護認定データ1302、介護給付実績データ1303、及びアンケート調査テーブル1304の値を、図20で説明した方法で突合し、更新作成する。
次に、図16で示すサービス月数テーブル1601を、図15のエントリーシート1501で定義する参加者に対する図13の突合テーブル1301を使用して、後述する図23の参加者月数等集計フロー図に示す方法で作成する。このサービス月数テーブル1601は、エントリーシート1501で定義する参加者が、評価期間中に受けた「主なサービス種類」を特定するものである。
例えば、参加者Bのように複数の事業所からサービス種類コード(サービス種類)の異なるサービスを受けた場合は、サービス提供単位数の最も多いサービス種類を評価期間中に受けた「主なサービス種類」とする。この評価期間中に受けた「主なサービス種類」は、図10のインセンティブマスタ(被保険者判定条件)1001で示したように、サービス種類ごとに定義された表彰グレードの判定条件に対応させるためのキーとなる。すなわち、「主なサービス種類」として特定されたサービスでの、評価期間の開始・終了の2点間の指標の評価値の変化を判断するために用いられる。
図17で示す参加者評価テーブル1701は、図15のエントリーシート1501で定義する参加者に対する図13突合テーブル1301を使用して、後述する図24の参加者評価フロー図に示す方法で作成される。この参加者評価テーブル1701は、エントリーシート1501で定義する参加者別に、評価値から得られる評価結果をまとめたものである。すなわち、指標毎に、評価値の変化から前述した2時点間変化、及び継続期間算出している。
例えば、参加者Bについてみると、指標が要介護区分の場合、評価値(段階)が「3」から「4」に変化したことにより2時点間変化は「+1(悪化)」となる。また、悪化までの継続期間は21ヶ月であることを示しており、その継続期間中の「主なサービス種類」は、(地域密着型)通所介護であることを示している。
図16のサービス月数テーブル1601と図17の参加者評価テーブル1701の評価結果に対して、図10のインセンティブマスタ(被保険者判定条件)1001の条件を使用して、後述する図25の参加者/事業所判定フロー図に示す方法で、図18のインセンティブ判定テーブル1801を作成する。
このインセンティブ判定テーブル1801には、上述した評価の結果、決定された付与すべきグレードを参加者及び事業所の双方について決定した結果が示されている。付与されるグレードは、参加者及び事業所とも同じグレードであるが、評価期間中の参加者へのサービス提供量(月数)が閾値(例えば、3ヶ月とする)未満の事業所は判定対象事業所から除かれ、インセンティブ対象とはならない。参加者についても同じであり、評価期間中にサービスを受けた月数が3ヶ月未満の参加者は判定対象参加者から除かれ、インセンティブ対象とはならない。
上述した図16の図18のサービス月数テーブル1601を作成する手順を、図23の参加者月数等集計フロー図で示す方法で説明する。ステップ2301では、参加者月数等の集計を開始する。ステップ2302は、図13の突合テーブル1301から参加者の評価期間中のサービ種類別のサービス単位数を集計する。ステップ2303は、当該参加者が受けている介護サービスのサービス単位数が最も大きいサービス種類を、当該参加者の評価期間における主なサービス種類とする。最大のサービス単位数が複数ある場合は、サービス種類コードが小さい方を採用する。
ステップ2304は、当該参加者がチーム参加の場合は、居宅介護支援サービスを評価期間の主なサービス種類として置き換える。
ステップ2305は、当該参加者が評価期間中に介護サービスを受けた月数を集計する。ステップ2306は、突合テーブル1301から、事業所が評価期間中に当該参加者にサービスを提供した月数を集計する。ステップ2307の判断により、図15のエントリーシート1501の当該参加者における全事業所に対して処理をする。ステップ2308に判断により、図15のエントリーシート1501の全参加者に対して処理を終了するまで繰り返す。ステップ2309は参加者月数等の集計を終了する。
次に、図17の参加者評価テーブル1701を作成する手順を、図24の参加者評価フロー図で示す方法で説明する。ステップ2401では、参加者評価を開始する。ステップ2402は、図11のインセンティブマスタ(対象指標)1101の指標に対して、評価期間の開始/終了の2時点間変化を求める。ステップ2403は、当該指標が継続期間計算対象の場合、継続期間を図26の同一段階の継続期間算出フロー図及び図27の同一段階の継続期間の例に示す方法で算出する。
前述した同一段階の継続期間算出手順を図26の同一段階の継続期間算出フロー図を用い、図27により補足して説明する。ステップ2601では、同一段階の継続期間算出を開始する。ステップ2602は、図13の突合テーブル1301の評価対象被保険者のデータを検索する。ステップ2603は突合テーブル1301の評価期間開始年月の心身状態段階を保持する。図27の評価期間開始時点における、参加者A1から参加者A6の心身状態段階が該当する。
ステップ2604は、評価期間開始年月の心身状態段階と評価期間開始年月の翌月以降の心身状態段階と比較し、評価期間終了年月まで時系列に、心身状態段階が不一致する月を抽出する。図27における時系列の向きに伸びる矢印が該当する。ステップ2605は心身状態段階が不一致する月の有無を判断する。ステップ2606は、心身状態段階が不一致する月がある場合、最初に抽出された(最古の年月の)の不一致月の前月を継続期間の終了月とする。図27における参加者A1、参加者A2、参加者A5、参加者A6が該当する。
ステップ2607は、心身状態段階が不一致する月がない場合、評価期間終了年月を継続期間の終了月とする。図27における参加者A3、参加者A4が該当する。ステップ2608は評価期間開始年月の心身状態段階と評価期間開始年月の前月以前の心身状態段階と比較し、時系列と逆向きに、心身状態段階が不一致する月を抽出する。図27における時系列と逆向きに伸びる矢印が該当する。
ステップ2609は心身状態段階が不一致する月の有無を判断する。ステップ2610は、心身状態段階が不一致する月がある場合、最初に抽出された(最新の年月)の不一致月の翌月を、継続期間の開始月とし、図17の参加者評価テーブル1701の当該参加者の開始時期確定フラグを設定する。図271における参加者A1、参加者A3、参加者A5が該当する。
ステップ2611は、心身状態段階が不一致する月がない場合、突合テーブル1301に存在する当該参加者の最古の年月のデータの年月を、継続期間の開始月とする。図27における参加者A2、参加者A4、参加者A6が該当する。ステップ2612は、開始月と終了月から当該参加者の当該心身状態の同一段階の継続期間を算出する。図27の評価期間開始時点における、参加者A1から参加者A6の同一段階継続期間の範囲が該当する。ステップ2613は当該参加者の当該心身状態の同一段階の継続期間算出を終了する。
図24に戻って、ステップ2404は当該継続期間中のサービス種類別サービス単位数を集計する。ステップ2405は当該指標が単独指標の場合、サービス単位数が総単位数の過半数を占めるサービス種類がある場合、主なサービス種類とする。サービス単位数が総単位数の過半数を占めるサービス種類がない場合、空欄のままとする。2406の判断により、図11のインセンティブマスタ(対象指標)1101の全指標に対して処理を終了するまで繰り返す。
ステップ2407は、図11のインセンティブ(マスタ(対象指標)1101の指標グループの合計点に対して、2時点間変化を求める。ステップ2408は当該指標グループに継続期間計算対象指標が含まれている場合、それらの指標の継続期間の値を使って当該指標グループに含まれる指標の平均値を算出する。ステップ2409は上記各指標のサービス種類別サービス単位数をサービス種類単位に合計する。ステップ2410は上記合計サービス単位数が総合計単位数の過半数を占めるサービス種類がある場合、当該指標グループの主なサービス種類とする。上記合計サービス単位数が総合計単位数の過半数を占めるサービス種類がない場合、空欄のままとする。
ステップ2411の判断により、図11のインセンティブマスタ(対象指標)1101の全指標グループに対して処理を終了するまで繰り返す。ステップ2412は参加者評価を終了する。
次に、図18のインセンティブ判定テーブル1801を作成する手順を、図25の参加者・事業所判定フロー図で示す方法で説明する。ステップ2501では、参加者/事業所判定を開始する。ステップ2502は、図16のサービス月数テーブル1601のサービスを受けた月数が3ヶ月以上の場合、図18のインセンティブ判定テーブル1801において判定対象参加者とする。
ステップ2503は、当該参加者が判定対象参加者の場合、図16のサービス月数テーブル1601における主なサービス種類(評価期間)に対する図10のインセンティブマスタ(被保険者判定条件)1001の条件を満たす最上位のグレードを、図17の参加者評価テーブル1701に基づき抽出する。図10のインセンティブマスタ(被保険者判定条件)1001に全てのサービス種類コードに対応する介護サービスを登録することが困難な場合は、利用実績の多い介護サービスとその他の介護サービスに対しては「その他」(の介護サービス)として設定される。継続期間を図14のインセンティブマスタ(基準期間)1401と比較する場合、図17の参加者評価テーブル1701における、当該参加者の性別、年齢及びチーム参加か否か、並びに当該指標又は当該指標グループの主なサービス種類(継続期間)に従い、サービス種類別・性別・年齢区分別の基準期間と比較する。当該参加者がチーム参加の場合、居宅介護支援サービスの基準期間と比較し、当該参加者がチーム参加でない合、当該指標又は当該指標グループの主なサービス種類(継続期間)の対する基準期間と比較する。当該指標又は当該指標グループの主なサービス種類(継続期間)の対する基準期間がない場合、あるいは当該指標又は当該指標グループの主なサービス種類(継続期間)が空欄の場合、「その他」の基準期間と比較する。ステップ2504の判断により、図16のサービス月数テーブル1601の全参加者に対して処理を終了するまで繰り返す。
ステップ2505は、図10のサービス月数テーブル1601のサービス提供月数が3ヶ月以上の場合、図18のインセンティブ判定テーブル1801において判定対象事業所とする。ステップ2506は、当該事業所が判定対象事業所の場合、参加者の表彰グレードを当該事業所の表彰グレードとする。ステップ2507の判断により、図16のサービス月数テーブル1601の全事業所に対して処理を終了するまで繰り返す。ステップ2508は参加者/事業所判定を終了する。
以上のように、本発明の実施形態によれば、インセンティブ評価事業に参加する事業所と被保険者を、介護サービス種類別に被保険者の心身状態項目の改善と維持の状態を評価することで、高い精度で成果を挙げた事業所を表彰することが可能となる。
なお、図9のインセンティブマスタ(事業所表彰)901を、図28で示すように被保険者向けのインセンティブマスタ(被保険者表彰)2801として作成して、参加する被保険者にもインセンティブを付与することも可能である。
前述の実施例では、図7で示す参加者/事業所管理部705においてインセンティブ事業に参加する事業所を募集し、応募した事業所と被保険者とを対象に図15のエントリーシートを作成し、図15のエントリーシートで定義する被保険者を対象に図16のサービス月数テーブルと図17の参加者評価テーブルを作成しているが、本発明はこれに限定されない。
例えば、参加者/事業所管理部705が、当該保険者のおける全ての介護サービス事業所及びすべての被保険者とし、必要に応じてこれらにアンケート調査を実施する。また、図16のサービス月数テーブル1601と図17の参加者評価テーブル1701は、全ての被保険者を対象作成する。このようにすれば、インセンティブ付与の判定対象を当該保険者のおける全ての被保険者とすることも可能である。尚このとき、図15のエントリーシートのチーム参加で登録される被保険者は存在しないため、図23のステップ2304の処理を「当該被保険者に評価期間中において居宅介護支援サービスの単位数がある場合は、居宅介護支援サービスを評価期間の第二の主なサービス種類とする」(ステップ2304’)に変え、図16のサービス月数テーブル1601と図17の参加者評価テーブル1701の主なサービス種類(評価期間)は、図23のステップ2303により決定されるサービス種類と上記ステップ2304’の処理結果の2つのサービス種類を保持し、2つの主なサービス種類(評価期間)を保持する被保険者に対しては、判定条件を満たすより高い表彰レベル(数値の小さいインセンティブグレード)により表彰することも可能である。
以上は、介護保険事業の中の介護重度化抑止事業におけるインセンティブ事業の実施例であるが、その他の介護予防・生活支援事業(新総合事業)、在宅医療・介護連携推進事業、急性増悪時医療・介護連携推進事業、疾病予防・重症化抑止事業(データヘルス)においても、インセンティブマスタ(被保険者判定条件)の定義で使用する指標をそれぞれの事業に対応する指標に置き換えることで、介護重度化抑止事業におけるインセンティブ事業の実施例を応用することが可能である。
図29に、インセンティブマスタ(被保険者判定条件)の定義で使用する指標例と表彰対象に、介護重度化抑止事業を含め、その他の事業におけるインセンティブマスタ(被保険者判定条件)の定義で使用する指標例と表彰対象を示す。
以上は、自治体等である保険者がインセンティブ事業を行う実施例であるが、保険者が行うインセンティブ事業を国等の上位機関が実施し、この上位機関が全保険者共通の評価期間マスタ及びインセンティブマスタ(被保険者判定条件)を定義し、当該上位機関内の全保険者における全被保険者をインセンティブマスタ(被保険者判定条件)で同様に評価判定し、インセンティブマスタ(被保険者判定条件)を満たす各保険者における被保険者の人数を集計することができ、その各人数を各保険者の被保険者数で除して割合(%)に変換することで、当該上位機関内の各保険者を評価することも可能である。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。