JP6923041B2 - 電力変換装置の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、複数の電力変換装置を備えるシステムに適用される制御装置に関する。
この種の制御装置としては、下記特許文献1に見られるように、第1回転電機に接続されている第1インバータと、第2回転電機に接続されている第2インバータとを備えるシステムに適用されるものが知られている。この制御装置は、第2回転電機の1電気角周期が第1回転電機の1電気角周期の6倍であって、かつ、第1回転電機が矩形波制御されていると判定した場合、第2インバータの制御に用いるキャリア周波数を低周波側に変更する。これにより、第1インバータの制御と第2インバータの制御との間の干渉を抑制し、インバータの出力電力の変動を抑制している。
特許第5067325号公報
ここで、第2回転電機の1電気角周期が第1回転電機の1電気角周期の6倍になる場合に限らず、その他の場合にも、第1インバータの制御と第2インバータの制御との間の干渉が生じ、インバータの出力電力の変動が大きくなるといった問題が生じ得る。
なお、インバータを2つ備えるシステムに限らず、スイッチのオンオフ操作により入力電圧を所定電圧に変換して出力する電力変換装置を複数備えるシステムであれば、上述した問題が同様に生じ得る。
本発明は、複数の電力変換装置を備えるシステムに適用され、電力変換装置の出力電力の変動を抑制できる電力変換装置の制御装置を提供することを主たる目的とする。
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
第1の発明は、スイッチのオンオフ操作により入力電圧を所定電圧に変換して出力する電力変換装置を複数備えるシステムであって、前記各電力変換装置が母線を介して互いに電気的に接続されているシステムに適用され、前記各電力変換装置を構成する前記スイッチをオンオフ操作する電力変換装置の制御装置において、前記各電力変換装置のうち、一部の電力変換装置を構成する前記スイッチのオンオフ操作に伴って前記母線の電圧に重畳する高調波成分である母線高調波成分の周波数と、残りの電力変換装置を構成する前記スイッチのスイッチングパターンに含まれる高調波成分であるスイッチ高調波成分の周波数とを所定値以上離間させるとの離間条件、並びに前記母線高調波成分の周波数と前記スイッチ高調波成分の周波数との差が前記所定値未満となる場合において前記母線高調波成分及び前記スイッチ高調波成分の少なくとも一方の振幅を低減するとの低減条件のうち少なくとも一方の条件を満たすように、前記一部の電力変換装置及び前記残りの電力変換装置のうち少なくとも一方の電力変換装置を構成する前記スイッチのオンオフ操作に用いられるキャリア信号の周波数を変更する。
第2の発明は、スイッチのオンオフ操作により入力電圧を所定電圧に変換して出力する電力変換装置を複数備えるシステムであって、前記各電力変換装置が母線を介して互いに電気的に接続されているシステムに適用され、前記各電力変換装置を構成する前記スイッチをオンオフ操作する電力変換装置の制御装置において、
前記各電力変換装置のうち、一部の電力変換装置を構成する前記スイッチのオンオフ操作に伴って前記母線の電圧に重畳する高調波成分である母線高調波成分の周波数と、残りの電力変換装置を構成する前記スイッチのスイッチングパターンに含まれる高調波成分であるスイッチ高調波成分の周波数とを所定値以上離間させるとの離間条件、並びに前記母線高調波成分の周波数と前記スイッチ高調波成分の周波数との差が前記所定値未満となる場合において前記母線高調波成分及び前記スイッチ高調波成分の少なくとも一方の振幅を低減するとの低減条件のうち少なくとも一方の条件を満たすように、前記一部の電力変換装置及び前記残りの電力変換装置のうち少なくとも一方の電力変換装置を構成する前記スイッチのスイッチング周波数を変更する。
上記発明が適用されるシステムでは、各電力変換装置が母線を介して互いに電気的に接続されている。このシステムにおいて、複数の電力変換装置のうち、一部の電力変換装置(以下「変動源装置」という。)を構成するスイッチが操作部によりオンオフ操作されると、母線の電圧に母線高調波成分が重畳する。この場合において、母線高調波成分の周波数と、複数の電力変換装置のうち、変動源装置以外の残りの電力変換装置(以下「被変動装置」という。)を構成するスイッチのスイッチングパターンに含まれるスイッチ高調波成分の周波数とが近接し得る。このとき、被変動装置の出力電圧に、母線高調波成分及びスイッチ高調波成分の周波数の差又はこの差に応じた値を変動周波数とする低周波成分が重畳する。その結果、被変動装置の出力電力が変動するといった問題が生じ得る。
そこで上記発明では、離間条件及び低減条件のうち少なくとも一方の条件を満たすように、変動源装置及び被変動源装置のうち少なくとも一方の装置を構成するスイッチのオンオフ操作に用いられるキャリア信号の周波数又はスイッチのスイッチング周波数を変更する。離間条件は、母線高調波成分の周波数とスイッチ高調波成分の周波数とを所定値以上離間させるとの条件である。離間条件を満たすようにキャリア信号の周波数又はスイッチング周波数を変更することにより、母線高調波成分の周波数とスイッチ高調波成分の周波数とが近接することを回避できる。したがって、低周波成分の重畳を回避でき、被変動装置の出力電力の変動を抑制できる。
一方、低減条件は、母線高調波成分の周波数とスイッチ高調波成分の周波数との差が所定値未満となる場合において、母線高調波成分及びスイッチ高調波成分のうち少なくとも一方の振幅を低減するとの条件である。周波数が互いに近接した高調波成分の振幅が小さいと、母線高調波成分及びスイッチ高調波成分の周波数の差又はこの差に応じた値を変動周波数とする低周波成分の振幅が小さくなる。その結果、被変動装置の出力電力に含まれる低周波成分が小さくなる。このため、低減条件を満たすようにキャリア信号の周波数又はスイッチング周波数を変更することにより、被変動装置の出力電力の変動を抑制できる。
第1実施形態に係るモータ制御システムの全体構成図。 モータ制御処理を示すブロック図。 母線電圧の変動がインバータ制御に及ぼす影響を示す図。 母線高調波成分のスペクトルとインバータのスイッチ高調波成分のスペクトルとを示す図。 インバータのキャリア周波数の変更態様を示す図。 第2実施形態に係るコンバータのキャリア周波数の変更態様を示す図。 第3実施形態に係るインバータのキャリア周波数の変更処理手順を示すフローチャート。 インバータ温度に応じたキャリア周波数の変更態様を示す図。 第4実施形態に係る変調方式の変更処理手順を示すフローチャート。 第5実施形態に係るDCDCコンバータの出力電圧の変更処理手順を示すフローチャート。 第6実施形態に係るモータ制御処理を示すブロック図。 パルスパターンの一例を示す図。 母線高調波成分のスペクトルとインバータのスイッチ高調波成分のスペクトルとを示す図。 パルスパターンの変更処理手順を示すフローチャート。 パルスパターンの変更態様を示す図。 母線高調波成分のスペクトルとインバータのスイッチ高調波成分のスペクトルとを示す図。 第7実施形態に係るパルスパターン変更処理手順を示すフローチャート。 第8実施形態に係るモータ制御システムの全体構成図。 第1インバータに起因した母線高調波成分のスペクトルと第2インバータのスイッチ高調波成分のスペクトルとを示す図。 キャリア周波数等の変更処理手順を示すフローチャート。 DCDCコンバータに起因した母線高調波成分を算出するためのモデルを示す図。 インバータに起因した母線高調波成分を算出するためのモデルを示す図。 第2インバータのキャリア周波数の変更態様を示す図。 第9実施形態に係る第1インバータに起因した母線高調波成分のスペクトルと第2インバータのスイッチ高調波成分のスペクトルとを示す図。 パルスパターンの変更態様を示す図。 第1インバータの母線高調波成分のスペクトルと第2インバータのスイッチ高調波成分のスペクトルとを示す図。 第10実施形態に係るキャリア周波数等の変更処理手順を示すフローチャート。
(第1実施形態)
以下、本発明に係る制御装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る制御装置は、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載されるモータ制御システムを構成する。
図1に示すように、制御システムは、直流電源としてのバッテリ10、DCDCコンバータ20、インバータ30、モータジェネレータ40、モータ制御装置50、及び上位制御装置60を備えている。本実施形態において、モータジェネレータ40は、車載主機であり、そのロータが図示しない駆動輪と動力伝達可能とされている。本実施形態では、モータジェネレータ40として、同期機を用いており、より具体的には永久磁石埋込型のものを用いている。
DCDCコンバータ20は、第1コンデンサ21、リアクトル22、第2コンデンサ23、コンバータスイッチとしての上アーム変圧スイッチScp及び下アーム変圧スイッチScnを備えている。DCDCコンバータ20は、バッテリ10の出力電圧を所定の電圧を上限として昇圧する機能を有している。本実施形態では、各変圧スイッチScp,Scnとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子を用いており、具体的にはIGBTを用いている。なお、各変圧スイッチScp,Scnには、フリーホイールダイオードDcp,Dcnが逆並列に接続されている。
上アーム変圧スイッチScpの高電位側端子であるコレクタには、正極母線Lpが接続されている。上アーム変圧スイッチScpの低電位側端子であるエミッタには、下アーム変圧スイッチScnのコレクタが接続されている。下アーム変圧スイッチScnのエミッタには、負極母線Lnが接続されている。各母線Lp,Lnは、例えばバスバーにて構成されている。
上アーム変圧スイッチScp及び下アーム変圧スイッチScnの直列接続体には、第2コンデンサ23が並列接続されている。上アーム変圧スイッチScpと下アーム変圧スイッチScnとの接続点には、リアクトル22の第1端が接続されている。リアクトル22の第2端には、バッテリ10の正極端子が接続されている。バッテリ10の負極端子には、下アーム変圧スイッチScnのエミッタが接続されている。バッテリ10には、第1コンデンサ21が並列接続されている。
正極母線Lp及び負極母線Lnには、インバータ30の入力側が接続されている。インバータ30は、上アームスイッチSup,Svp,Swpと下アームスイッチSun,Svn,Swnとの直列接続体を3相分備えている。各アームスイッチSup〜Swnが、インバータスイッチに相当する。本実施形態では、各スイッチSup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子を用いており、より具体的にはIGBTを用いている。そして、各スイッチSup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnには、各フリーホイールダイオードDup,Dun,Dvp,Dvn,Dwp,Dwnが逆並列に接続されている。
各上アームスイッチSup,Svp,Swpの高電位側端子であるコレクタには、正極母線Lpが接続されている。各下アームスイッチSun,Svn,Swnの低電位側端子であるエミッタには、負極母線Lnが接続されている。
U相上,下アームスイッチSup,Sunの接続点には、モータジェネレータ40のU相巻線40Uの第1端が接続されている。V相上,下アームスイッチSvp,Svnの接続点には、モータジェネレータ40のV相巻線40Vの第1端が接続されている。W相上,下アームスイッチSwp,Swnの接続点には、モータジェネレータ40のW相巻線40Wの第1端が接続されている。各相巻線40U,40V,40Wの第2端は、中性点にて接続されている。U,V,W相巻線40U,40V,40Wは、電気角で互いに120°ずれている。
制御システムは、さらに、相電流検出部70、角度検出部71、及びインバータ温度検出部72を備えている。相電流検出部70は、モータジェネレータ40に流れる各相電流のうち、少なくとも2相分の電流を検出する。本実施形態において、相電流検出部70は、モータジェネレータ40のV,W相に流れる電流を検出する。角度検出部71は、モータジェネレータ40の電気角θeを検出する。角度検出部71としては、例えばレゾルバを用いることができる。インバータ温度検出部72は、インバータ30の温度を検出する。インバータ温度検出部72は、具体的には例えば、インバータ30を構成する各スイッチSup〜Swnのうち、インバータ30の駆動時に温度が最も高くなるスイッチを温度検出対象とするものである。なおインバータ温度検出部72としては、例えば、感温ダイオード又はサーミスタを用いることができる。
制御システムは、さらに、低電圧検出部73と、高電圧検出部74とを備えている。低電圧検出部73は、第1コンデンサ21の端子間電圧をDCDCコンバータ20の入力電圧VLrとして検出する。高電圧検出部74は、第2コンデンサ23の端子間電圧をDCDCコンバータ20の出力電圧VHrとして検出する。
各検出部の検出値は、モータ制御装置50に入力される。モータ制御装置50は、マイコンを主体として構成され、モータジェネレータ40の制御量をその指令値に制御すべく、DCDCコンバータ20及びインバータ30を操作する。本実施形態において、制御量はトルクであり、指令値は指令トルクTrq*である。本実施形態において、指令トルクTrq*は、上位制御装置60からモータ制御装置50に入力される。上位制御装置60は、車両においてモータ制御装置50の外部に設けられており、車両制御を統括する制御装置である。なお本実施形態において、モータ制御装置50がインバータ操作部及びコンバータ操作部に相当する。
モータ制御装置50は、DCDCコンバータ20を構成する各変圧スイッチScp,Scnをオンオフ操作するための操作信号gcp,gcnを生成し、各変圧スイッチScp,Scnに対して出力する。上アーム変圧スイッチScpの操作信号gcpと、下アーム変圧スイッチScnの操作信号gcnとは、互いに相補的な信号となっている。このため、上アーム変圧スイッチScpと下アーム変圧スイッチScnとは交互にオン状態とされる。
モータ制御装置50は、インバータ30の各スイッチSup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnをオンオフ操作するための操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnを生成する。モータ制御装置50は、生成した各操作信号gup〜gwnを各スイッチSup〜Swnに対して出力する。上アーム側の操作信号gup,gvp,gwpと、対応する下アーム側の操作信号gun,gvn,gwnとは、互いに相補的な信号となっている。このため、上アームスイッチSup、Svp,Swpと、対応する下アームスイッチSun,Svn,Swnとは、交互にオン状態とされる。
続いて図2を用いて、モータ制御装置50の行うトルク制御処理について説明する。
まず、トルク制御処理のうちDCDCコンバータ20に関する処理について説明する。
指令電圧設定部50aは、DCDCコンバータ20の指令出力電圧VH*を設定する。電圧偏差算出部50bは、指令出力電圧VH*から、高電圧検出部74により検出された出力電圧VHrを減算することにより、電圧偏差ΔVHを算出する。
FB算出部50cは、電圧偏差ΔVを0にフィードバック制御するための操作量として、フィードバック指令値Dcbを算出する。なお、FB算出部50cにおけるフィードバック制御としては、例えば比例積分制御を用いればよい。
FF算出部50dは、指令出力電圧VH*と、低電圧検出部73により検出された入力電圧VLrとに基づいて、フィードフォワード操作量としてのフィードフォワード指令値Dcfを算出する。
電圧加算部50eは、フィードフォワード指令値Dcfとフィードバック指令値Dcbとの加算値として、変圧指令値Dcrを算出する。
コンバータキャリア生成部50fは、コンバータキャリア信号Scnvを生成する。本実施形態では、コンバータキャリア信号Scnvとして、三角波信号を用いる。本実施形態において、コンバータキャリア信号Scnvの周波数であるコンバータキャリア周波数fcnvは、固定値に設定されている。
コンバータ比較部50gは、変圧指令値Dcrとコンバータキャリア信号Scnvとの大小比較に基づくPWM処理により、2値信号であるコンバータPWM信号GCを生成する。コンバータ信号生成部50hは、コンバータPWM信号GCとその論理反転信号との論理反転タイミング同士をデッドタイムだけ離間させる処理を行うことで、各変圧スイッチScp、Scnの操作信号gcp,gcnを生成する。
続いて、トルク制御処理のうちインバータ30に関する処理について説明する。
2相変換部51aは、相電流検出部70により検出されたV,W相電流IV,IW、及び角度検出部71により検出された電気角θeに基づいて、モータジェネレータ40の3相固定座標系におけるU,V,W相電流IU,IV,IWを、2相回転座標系であるdq座標系におけるd,q軸電流Idr,Iqrに変換する。
速度算出部51bは、電気角θeに基づいて、モータジェネレータ40の電気角周波数ωsを算出する。電気角周波数ωsは、インバータ30の出力電圧に含まれる基本波成分の角周波数である。
トルク制御器51cは、指令トルクTrq*、d,q軸電流Idr,Iqr、及びDCDCコンバータ20の出力電圧VHrに基づいて、dq座標系における電圧ベクトルVnvtの位相である電圧位相δと、指令変調率Mrとを算出する。電圧ベクトルVnvtは、dq座標系における電圧ベクトルのd軸成分であるd軸電圧Vdとq軸成分であるq軸電圧Vqとによって定義される。本実施形態において、電圧位相δは、d軸の正方向を基準とし、この基準から反時計回りの方向が正方向として定義されている。
指令変調率Mrは、電圧ベクトルVnvtの大きさである電圧振幅Vrを出力電圧VHrで規格化した値である。電圧振幅Vrは、d軸電圧Vdの2乗値とq軸電圧Vqの2乗値との和の平方根として定義される。本実施形態において、指令変調率Mrは下式(eq1)により算出される。
Figure 0006923041
角度算出部51dは、電圧位相δに電気角θeを加算した値として、固定座標系を基準とした電圧ベクトルVnvtの位相である実位相θvを算出する。なお、固定座標系の基準としては、例えば固定座標系のU相を用いることができる。
変調器51eは、角度算出部51dから出力された実位相θvと、指令変調率Mrとに基づいて、電気角で互いに120度ずれたU,V,W相指令値DU,DV、DWを生成する。本実施形態において、U,V,W相指令値DU,DV、DWが、インバータ30の出力電圧の指令値に相当する。
インバータキャリア生成部51fは、インバータキャリア信号Sinvを生成する。本実施形態では、インバータキャリア信号Sinvとして、三角波信号を用いる。本実施形態において、インバータキャリア生成部51fは、電気角周波数ωsに基づいて、インバータキャリア信号Sinvの周波数であるインバータキャリア周波数finvを可変設定する。
詳しくは、インバータキャリア生成部51fは、電気角周波数ωsが第1切替角周波数ωa以下であると判定した場合、非同期PWM処理を行うために、インバータキャリア周波数finvを固定値に設定する。本実施形態において、非同期PWM処理時のインバータキャリア周波数finvは、コンバータキャリア周波数fcnvよりも高い値である。
インバータキャリア生成部51fは、電気角周波数ωsが第1切替角周波数ωaよりも高いと判定した場合、同期PWM処理を行うためのインバータキャリア周波数finvを設定する。
インバータ比較部51gは、U,V,W相指令値DU,DV、DWとインバータキャリア信号Sinvとの大小比較に基づくPWM処理により、2値信号であるU,V,W相PWM信号GU,GV,GWを生成する。本実施形態では、PWM処理において3相変調方式が用いられる。
インバータ信号生成部51hは、U,V,W相PWM信号GU,GV,GWとその論理反転信号との論理反転タイミング同士をデッドタイムだけ離間させる処理を行うことで、各スイッチSup、Sun,Svp,Svn,Swp,Swnの操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnを生成する。
続いて、インバータキャリア周波数finvの設定手法についてさらに説明する。本実施形態において、インバータキャリア生成部51fは、コンバータキャリア周波数fcnvと、インバータキャリア周波数finvとの差の絶対値が所定値Δf以上となるように、インバータキャリアの周波数finvを可変設定する。以下、図3を用いて、この設定方法を採用する理由について説明する。
正極母線Lp及び負極母線Lnの電位差である母線電圧には、各変圧スイッチScp,Scnのオンオフ操作に伴って、図3(a)に示すように、高調波成分が重畳する。以降、各変圧スイッチScp,Scnのオンオフ操作に伴って母線電圧に重畳される高調波成分をDC母線高調波成分と称すこととする。図3(a)には、変動周波数をfxとするDC母線高調波成分と、母線電圧に含まれる基本波成分とを示す。
また、インバータ30を構成する各スイッチSup〜Swnのスイッチングパターンには、高調波成分であるスイッチ高調波成分が含まれている。図3(b)に示すスイッチングパターンでは、オン指示信号として「+1」の信号を用い、オフ指示信号として、オン指示信号の論理値とは異なる「−1」の信号を用いている。オン指示信号は、上アームスイッチをオン操作してかつ下アームスイッチをオフ操作することを指示する信号である。オフ指示信号は、上アームスイッチをオフ操作してかつ下アームスイッチをオン操作することを指示する信号である。また図3(b)には、変動周波数をfyとするスイッチ高調波成分と、変動周波数をf1とするスイッチングパターンに含まれる基本波成分を示す。
インバータ30の各相において、インバータ30から出力される相電圧波形は、図3(c)に示すように、母線電圧とスイッチングパターンとの積として表すことができる。ここで、DC母線高調波成分の周波数fxと、スイッチ高調波成分の周波数fyとが近接すると、各周波数fx,fyの差及び和を変動周波数「fx−fy」,「fx+fy」とする変動成分が相電圧に含まれることとなる。なお図3(c)には、DC母線高調波成分の周波数fxと、スイッチングパターンに含まれる基本波成分の周波数f1との差及び和を変動周波数「fx−f1」,「fx+f1」とする変動成分も相電圧に含まれることを示した。
インバータ30の負荷となるモータジェネレータ40は、インダクタンス成分を主とする誘導性負荷である。このため、相電流は、相電圧の積分で表されて、かつ、相電圧の変動周波数に反比例することとなる。その結果、相電圧に含まれる変動成分のうち、周波数が低い変動成分ほど、相電流の変動に与える影響が大きくなる。図3(c)に示すスペクトルでは、相電圧に含まれる変動成分のうち次数の低い「fx−fy」の変動成分が、相電流の変動に与える影響が大きい。これにより、インバータ30の出力電力が大きく変動し、モータジェネレータ40のトルク変動が大きくなる。
このような問題を解決すべく、DC母線高調波成分の周波数fxと、スイッチ高調波成分の周波数fyとの差の絶対値を所定値Δf以上とする。DC母線高調波成分は、図4(a)に示すように、コンバータキャリア周波数fcnvの整数倍を中心に分布する。また、スイッチ高調波成分は、図4(b)に示すように、インバータキャリア周波数finvの整数倍を中心に分布する。図4(b)では、スイッチングパターンに含まれる基本波成分の周波数をfeとしている。
ちなみに本実施形態において、所定値Δfは、DC母線高調波成分がインバータ30の出力電力を変動させないような値に予め適合されている。具体的には例えば、所定値Δfは、コンバータキャリア周波数fcnvの整数倍を中心に分布するDC母線高調波成分の周波数帯と、インバータキャリア周波数finvの整数倍を中心に分布するスイッチ高調波成分の周波数帯とが重ならないような値に適合されればよい。
図5を用いて、インバータキャリア生成部51fにより実行されるインバータキャリア周波数finvの設定処理について説明する。
まず、非同期PWM処理時について説明する。インバータキャリア生成部51fは、電気角周波数ωsが第1切替周波数ωa以下であると判定した場合、インバータキャリア周波数finvを、コンバータキャリア周波数fcnv及び所定値Δfの加算値以上の値に設定する。本実施形態では、インバータキャリア周波数finvが、コンバータキャリア周波数fcnv及び所定値Δfの加算値よりも離間した値とされている。なお図5では、インバータキャリア周波数finvがコンバータキャリア周波数fcnvよりも高い例を示したがこれに限らず、インバータキャリア周波数finvがコンバータキャリア周波数fcnvよりも低くてもよい。
続いて、同期PWM処理時について説明する。インバータキャリア生成部51fは、電気角周波数ωsが第1切替角周波数ωaよりも高くてかつ第1所定角周波数ω1(>ωa)以下であると判定した場合、同期数Nrを12とするインバータキャリア周波数finvを設定する。同期数Nrは、モータジェネレータ40の1電気角周期(360度)をインバータキャリア信号Sinvの1周期(=1/finv)で除算した値である。なお、第1所定角周波数ω1は、同期数Nrを12とするインバータキャリア周波数finvと、コンバータキャリア周波数fcnvから所定値Δfだけ減算した値とが一致する角周波数である。
インバータキャリア生成部51fは、電気角周波数ωsが第1所定角周波数ω1よりも高くてかつ第2所定角周波数ω2未満であると判定した場合、同期数Nrを12とする同期PWM処理に代えて、同期数Nrを6とするPWM処理を行うためのインバータキャリア周波数finvを設定する。これにより、コンバータキャリア周波数fcnvとインバータキャリア周波数finvとの近接が回避される。なお、第2所定角周波数ω2は、同期数Nrを12とするインバータキャリア周波数finvと、コンバータキャリア周波数fcnv及び所定値Δfの加算値とが一致する角周波数である。
本実施形態において、各キャリア周波数fcnv,finvの近接を回避するために、同期PWM処理の同期数Nrを低減させるのは、スイッチング損失の増加を回避するためである。これにより、インバータ30の温度が過度に高くなることを回避し、インバータ30の信頼性の低下を回避する。
インバータキャリア生成部51fは、電気角周波数ωsが第2所定角周波数ω2以上であってかつ第2切替角周波数ωb(>ω2)以下であると判定した場合、同期数Nrを12とするインバータキャリア周波数finvを設定する。インバータキャリア生成部51fは、電気角周波数ωsが第2切替角周波数ωbよりも高くてかつ第3所定角周波数ω3(>ωb)以下であると判定した場合、同期数Nrを6とするインバータキャリア周波数finvを設定する。なお、第3所定角周波数ω3は、同期数Nrを6とするインバータキャリア周波数finvと、コンバータキャリア周波数fcnvから所定値Δfだけ減算した値とが一致する角周波数である。
インバータキャリア生成部51fは、電気角周波数ωsが第3所定角周波数ω3よりも高くてかつ第4所定角周波数ω4未満であると判定した場合、同期数Nrを6とする同期PWM処理に代えて、同期数Nrを1とするPWM処理を行うためのインバータキャリア周波数finvを設定する。これにより、コンバータキャリア周波数fcnvとインバータキャリア周波数finvとの近接が回避される。なお、第4所定角周波数ω4は、同期数Nrを6とするインバータキャリア周波数finvと、コンバータキャリア周波数fcnv及び所定値Δfの加算値とが一致する角周波数である。また、各キャリア周波数fcnv,finvの近接を回避するために、同期PWM処理の同期数Nrを低減させるのは、スイッチング損失の増加を回避するためである。
インバータキャリア生成部51fは、電気角周波数ωsが第4所定角周波数ω4以上であってかつ第3切替角周波数ωc(>ω4)以下であると判定した場合、同期数Nrを6とするインバータキャリア周波数finvを設定する。インバータキャリア生成部51fは、電気角周波数ωsが第3切替角周波数ωcよりも高くてかつ第5所定角周波数ω5(>ωc)以下であると判定した場合、同期数Nrを1とするインバータキャリア周波数finvを設定する。すなわち、矩形波制御を行うためのインバータキャリア周波数finvを設定する。なお、第5所定角周波数ω5は、同期数Nrを1とするインバータキャリア周波数finvと、コンバータキャリア周波数fcnvから所定値Δfだけ減算した値とが一致する角周波数である。
インバータキャリア生成部51fは、電気角周波数ωsが第5所定角周波数ω5よりも高くてかつ第6所定角周波数ω6未満であると判定した場合、同期数Nrを1とする同期PWM処理に代えて、同期数Nrを6とするPWM処理を行うためのインバータキャリア周波数finvを設定する。これにより、コンバータキャリア周波数fcnvとインバータキャリア周波数finvとの近接が回避される。なお、第6所定角周波数ω6は、同期数Nrを1とするインバータキャリア周波数finvと、コンバータキャリア周波数fcnv及び所定値Δfの加算値とが一致する角周波数である。
なお、各キャリア周波数fcnv,finvの近接を回避するために、同期PWM処理の同期数Nrを増加させるのは、これ以上同期数Nrを小さくすることができないためである。
インバータキャリア生成部51fは、電気角周波数ωsが第6所定角周波数ω6以上であると判定した場合、同期数Nrを1とするインバータキャリア周波数finvを設定する。
ちなみに、インバータキャリア周波数finvは、モータ制御装置50が備える記憶部としてのメモリに、電気角周波数ωsと関係付けられて予め記憶されている。インバータキャリア生成部51fは、電気角周波数ωs及びメモリの記憶情報に基づいて、インバータキャリア周波数finvを設定する。
以上説明した本実施形態によれば、コンバータキャリア周波数fcnvとの近接を回避するようにインバータキャリア周波数finvが設定される。このため、DCDCコンバータ20の駆動に伴う母線電圧の変動とインバータ30の制御との干渉を回避できる。これにより、インバータ30の出力電力の変動を抑制でき、ひいてはモータジェネレータ40のトルク変動を抑制することができる。
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、インバータキャリア周波数finvに代えて、コンバータキャリア周波数fcnvを可変設定する。これにより、各キャリア周波数finv,fcnvの近接を回避する。
本実施形態では、先の図2に示したコンバータキャリア生成部50fには、速度算出部51bにより算出された電気角周波数ωsが入力される。コンバータキャリア生成部50fは、インバータキャリア周波数finvと、コンバータキャリア周波数fcnvとの差の絶対値が所定値Δf以上となるように、コンバータキャリア周波数fcnvを可変設定する。
本実施形態において、インバータキャリア生成部51fは、図6に示すように、電気角周波数ωsが第1切替角周波数ωaよりも高くてかつ第2切替角周波数ωb以下になると判定した場合、同期数Nrを12とするインバータキャリア周波数finvを設定する。インバータキャリア生成部51fは、電気角周波数ωsが第2切替角周波数ωbよりも高くてかつ第3切替角周波数ωc以下になると判定した場合、同期数Nrを6とするインバータキャリア周波数finvを設定する。インバータキャリア生成部51fは、電気角周波数ωsが第3切替角周波数ωcよりも高いと判定した場合、同期数Nrを1とするインバータキャリア周波数finvを設定する。
続いて、図6を用いて、コンバータキャリア生成部50fにより実行されるコンバータキャリア周波数fcnvの設定処理について説明する。
コンバータキャリア生成部50fは、電気角周波数ωsが第1切替角周波数ωa以下であると判定した場合、コンバータキャリア周波数fcnvを、インバータキャリア周波数finvよりも所定値Δf以上離間した値に設定する。
コンバータキャリア生成部50fは、電気角周波数ωsが第1切替角周波数ωaよりも高くてかつ第2切替角周波数ωb以下であると判定した場合、電気角周波数ωsが高いほどコンバータキャリア周波数fcnvを高く設定する。この際、コンバータキャリア周波数fcnvを、インバータキャリア周波数finvよりも所定値Δf以上離間して設定する。ここで、コンバータキャリア周波数fcnvをインバータキャリア周波数finvよりも低くするのは、スイッチング損失の増加を回避するためである。これにより、DCDCコンバータ20の温度が過度に高くなることを回避し、DCDCコンバータ20の信頼性の低下を回避する。
コンバータキャリア生成部50fは、電気角周波数ωsが第2切替角周波数ωbよりも高くてかつ第3切替角周波数ωc以下であると判定した場合、電気角周波数ωsが高いほどコンバータキャリア周波数fcnvを高く設定する。この際、コンバータキャリア周波数fcnvを、インバータキャリア周波数finvよりも所定値Δf以上離間して設定する。
コンバータキャリア生成部50fは、電気角周波数ωsが第3切替角周波数ωcよりも高くてかつ第4切替角周波数ωd(>ωc)以下であると判定した場合、コンバータキャリア周波数fcnvを、電気角周波数ωsが第1切替角周波数ωa以下の場合に設定される固定値に設定する。
コンバータキャリア生成部50fは、電気角周波数ωsが第4切替角周波数ωdよりも高くてかつ第5切替角周波数ωe(>ωd)以下であると判定した場合、電気角周波数ωsが高いほどコンバータキャリア周波数fcnvを高く設定する。この際、コンバータキャリア周波数fcnvを、インバータキャリア周波数finvよりも所定値Δf以上低く設定する。コンバータキャリア生成部50fは、電気角周波数ωsが第5切替角周波数ωeよりも高いと判定した場合、コンバータキャリア周波数fcnvを、電気角周波数ωsが第1切替角周波数ωa以下の場合に設定される固定値に設定する。
ちなみに、コンバータキャリア周波数fcnvは、電気角周波数ωsと関係付けられてメモリに予め記憶されている。コンバータキャリア生成部50fは、電気角周波数ωs及びメモリの記憶情報に基づいて、コンバータキャリア周波数fcnvを設定する。
以上説明した本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、インバータ温度検出部72により検出されたインバータ温度Tinvに応じて、インバータキャリア周波数finvを高周波側又は低周波側のいずれにシフトさせるかを決定する。本実施形態において、先の図2に示したインバータキャリア生成部51fには、インバータ温度Tinvが入力される。
図7に、インバータキャリア周波数finvの設定処理の手順を示す。この処理は、インバータキャリア生成部51fにより、例えば所定周期毎に繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS10において、電気角周波数ωsに基づいて、同期PWM処理が実行されているか否かを判定する。ここでは、電気角周波数ωsが第1切替角周波数ωaよりも高いと判定した場合、同期PWM処理が実行されていると判定する。
ステップS10において否定判定した場合には、非同期PWM処理が実行されていると判定し、ステップS12に進む。ステップS12では、上記第1実施形態と同様に、非同期PWM処理時におけるインバータキャリア周波数finvを設定する。
一方、ステップS10において肯定判定した場合には、ステップS14に進み、電気角周波数ωsに基づいて、同期PWM処理時におけるインバータキャリア周波数finvを設定する。詳しくは、電気角周波数ωsに基づいて同期数Nrを選択し、選択した同期数Nrに対応したインバータキャリア周波数finvを設定する。
続くステップS16では、コンバータキャリア周波数fcnvとインバータキャリア周波数finvとが近接しているか否かを判定する。本実施形態では、コンバータキャリア周波数fcnvとインバータキャリア周波数finvとの差の絶対値が所定値Δf未満であると判定した場合、近接していると判定する。なお本実施形態において、ステップS16の処理が近接判定部に相当する。
ステップS16において近接していないと判定した場合には、ステップS14の処理で設定したインバータキャリア周波数finvがインバータ比較部51gにおいてそのまま用いられる。一方、ステップS16において近接していると判定した場合には、ステップS18に進み、インバータ温度Tinvを取得する。本実施形態において、ステップS18の処理は温度取得部に相当する。続くステップS20では、インバータキャリア周波数finvが、同期数Nrを1とした矩形波駆動時の周波数に設定されているか否かを判定する。
ステップS20において否定判定した場合には、ステップS22に進み、ステップS14の処理で設定したインバータキャリア周波数finvを低周波側にシフトさせる。これにより、インバータキャリア周波数finvが、コンバータキャリア周波数fcnvから所定値Δfを減算した値以下の値とされる。ここで図8には、現在の電気角周波数ωsが第1所定角周波数ω1よりも高くてかつ第2所定角周波数ω2以下である場合において、同期数Nrを12から6に変更したときのインバータキャリア周波数finvの設定態様を例示した。
先の図7の説明に戻り、ステップS20において肯定判定した場合には、ステップS24に進み、取得したインバータ温度Tinvがその閾値温度Tthを超えているか否かを判定する。ステップS24において肯定判定した場合には、インバータキャリア周波数finvの増加が禁止され、ステップS14の処理で設定したインバータキャリア周波数finvがインバータ比較部51gにおいてそのまま用いられる。
一方、ステップS24においてインバータ温度Tinvが閾値温度Tth以下であると判定した場合には、ステップS26に進み、ステップS14の処理で設定したインバータキャリア信号Sinvの周波数finvを高周波側にシフトさせる。これにより、インバータキャリア周波数finvが、コンバータキャリア周波数fcnv及び所定値Δfの加算値以上の値とされる。ここで図8には、同期数Nrを12から18に変更したときのインバータキャリア周波数finvの設定態様を例示した。
以上説明した本実施形態によれば、インバータ温度Tinvが閾値温度Tthを超えていると判定された場合、インバータキャリア周波数finvの高周波数側へのシフトが禁止される。これにより、インバータ30を過熱から保護することができる。
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、インバータ比較部51gにおける変調方式を変更することにより、DC母線高調波成分の周波数とスイッチ高調波成分の周波数との近接を回避する。
本実施形態において、インバータ比較部51gには、コンバータキャリア生成部50fからのコンバータキャリア周波数fcnvと、インバータキャリア生成部51fからのインバータキャリア周波数finvとが入力される。なお本実施形態において、インバータキャリア生成部51fによるインバータキャリア周波数finvの設定手法は、上記第2実施形態で説明した手法と同じ手法である。
図9に、変調方式の変更処理の手順を示す。この処理は、インバータ比較部51gにより、例えば所定周期毎に繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS40において、変調方式を設定する。そして、変調器51eにより算出されたU,V,W相指令値DU,DV、DWと、設定した変調方式とに基づいて、U,V,W相PWM信号GU,GV,GWを生成する。本実施形態では、3相変調方式又は2相変調方式が設定される。2相変調方式は、スイッチング回数を減らしてインバータ30の損失を減らすことを目的として採用される。2相変調は、上,下アームスイッチの操作状態を所定期間毎に相ごとに順次固定しつつ、固定された相以外の2相を構成する上,下アームスイッチを交互にオン操作するものである。具体的には例えば、電気角60度毎、上アームスイッチのオン固定及び下アームスイッチのオン固定が順次行われる。
続くステップS42では、ステップS40の処理で生成したU,V,W相PWM信号GU,GV,GWに含まれるスイッチ高調波成分の周波数fswを算出する。スイッチ高調波成分の周波数fswは、例えば、PWM信号にフーリエ変更を施すことにより算出されればよい。なお本実施形態において、ステップS42の処理がスイッチ高調波取得部に相当する。
続くステップS44では、ステップS42の処理で算出したスイッチ高調波成分の周波数fswとコンバータキャリア周波数fcnvとが近接しているか否かを判定する。本実施形態では、コンバータキャリア周波数fcnvとスイッチ高調波成分の周波数fswとの差の絶対値が所定値Δf未満であると判定した場合、近接していると判定する。
ステップS44において近接していないと判定した場合には、ステップS40の処理で算出したU,V,W相PWM信号GU,GV,GWがインバータ信号生成部51hにおいてそのまま用いられる。
一方、ステップS44において近接していると判定した場合には、ステップS46に進み、ステップS40の処理で設定した変調方式を変更する。具体的には例えば、ステップS40の処理で3相変調方式を設定した場合、2相変調方式に変更する。そして、変更した変調方式と、変調器51eにより算出されたU,V,W相指令値DU,DV、DWとに基づいて、U,V,W相PWM信号GU,GV,GWを再度生成する。これにより、再度生成されたU,V,W相PWM信号GU,GV,GWがインバータ信号生成部51hにおいて用いられる。その結果、スイッチ高調波成分の周波数とコンバータキャリア周波数fcnvとの差の絶対値が所定値Δf以上とされる。
以上説明した本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、DCDCコンバータ20の指令出力電圧VH*を変更によって指令変調率Mrを変更することにより、スイッチ高調波成分の振幅を低減する。これにより、スイッチ高調波成分の周波数とDC母線高調波成分の周波数との差を変動周波数とする変動成分の振幅を低減する。そしてこれにより、スイッチ高調波成分の周波数とDC母線高調波成分の周波数とが近接していても、干渉の影響を抑制する。
本実施形態において、指令電圧設定部50aには、コンバータキャリア生成部50fからのコンバータキャリア周波数fcnvと、インバータキャリア生成部51fからのインバータキャリア周波数finvとが入力される。なお本実施形態において、インバータキャリア生成部51fによるインバータキャリア周波数finvの設定手法は、上記第2実施形態で説明した手法と同じ手法である。
図10に、指令出力電圧VH*の変更処理の手順を示す。この処理は、指令電圧設定部50aにより、例えば所定周期毎に繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS50において、指令出力電圧VH*を設定する。続くステップS52では、コンバータキャリア周波数fcnvとインバータキャリア周波数finvとが近接しているか否かを判定する。この判定は、図7のステップS16の処理と同じ手法で実施すればよい。
ステップS52において近接していないと判定した場合には、ステップS50の処理で設定した指令出力電圧VH*が電圧偏差算出部50b及びFF算出部50dにおいてそのまま用いられる。
一方、ステップS52において近接していると判定した場合には、ステップS54に進み、ステップS50の処理で設定した指令出力電圧VH*を低減側又は増加側に変更する。これにより、変更された指令出力電圧VH*が電圧偏差算出部50b及びFF算出部50dにおいて用いられる。その結果、DCDCコンバータ20の出力電圧VHrが変化し、指令変調率Mr及び電圧位相δが変更される。これにより、実際の変調率及びインバータ30の力率が変更される等、インバータ30の動作点が変更され、スイッチ高調波成分のスペクトルが変更される。その結果、DC母線高調波成分の周波数と近接するスイッチ高調波成分の振幅を所定振幅以下とすること、及びDC母線高調波成分の周波数とスイッチ高調波成分の周波数との差の絶対値を所定値Δf以上とすることのうち、少なくとも一方を実現できる。したがって、DCDCコンバータ20の駆動に伴う母線電圧の変動とインバータ30の制御との干渉を回避できる。
(第6実施形態)
以下、第6実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、キャリア信号を用いたPWM処理に代えて、パルスパターンを用いてU,V,W相PWM信号GU,GV,GWを生成する。
図11に、本実施形態に係るトルク制御処理のブロック図を示す。なお図11において、先の図2に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
同期数設定部51iは、電気角周波数ωs及び同期数テーブルに基づいて、同期数Nrを設定する。この設定処理は、同期PWM処理の考え方を用いてパルスパターンを生成しているためになされるものである。同期数テーブルは、複数の電気角周波数領域のそれぞれと同期数Nrとが予め関係付けられた情報である。本実施形態では、各電気角周波数領域と関係付けられた同期数Nrとして、「3,6,9,12,15,…」というように3の倍数が用いられる。なお本実施形態では、同期数Nrとして6の倍数が用いられる。また、各同期数3,6,9,12,15,…と関係付けられた電気角周波数領域の上限閾値ωu3,ωu6,ωu9,ωu12,ωu15…は、ωu(Nr)=ωcmax/Nrに設定されている。ここで、ωcmaxは、キャリア信号の上限各周波数を示す。
パターン生成部51jは、電気角周波数ωs、同期数Nr、指令変調率Mr及び実位相θvに基づいて、スイッチングパターンの指令値である指令パターンを生成する。指令パターンは、例えば0〜360度に渡って生成される。指令パターンは、パターン記憶部51kに記憶されているパルスパターンに基づいて生成される。パルスパターンは、同期数Nr、指令変調率Mr及び変調方式と関係付けられて予めパターン記憶部51kに記憶されている。パターン記憶部51kは、メモリにて構成されている。
図12に、パルスパターンの一例を示す。図示されるように、パルスパターンは、オン指示信号とオフ指示信号とのそれぞれが電気角θeと関係付けられたマップ情報である。本実施形態において、パターン記憶部51kには、パルスパターンとして、オン指示信号及びオフ指示信号のうちいずれか一方から他方への切り替えを指示する電気角が記憶されている。図12には、オン指示信号及びオフ指示信号のうちいずれか一方から他方への切り替えを指示する電気角であるスイッチングタイミングとして、α0,α1,α2等を例示した。ちなみに、パルスパターンは、指令変調率Mrに代えて、電圧振幅と関係付けられていてもよい。
パターン生成部51jは、生成した指令パターンを規定するスイッチングタイミングαのうち、実位相θvに該当するものを選択する。パターン生成部51jは、選択したスイッチングタイミングαに基づいて、U,V,W相PWM信号GU,GV,GWを生成してインバータ信号生成部51hに出力する。
ここで、指令パターンに含まれる高調波成分であるスイッチ高調波成分は、指令パターンに含まれる基本波成分の整数倍に分布する。特に、図12に示したように、0〜180度までの第1パルスパターンに、180度に示す軸線に対して第1パルスパターンと線対称となる第2パルスパターンを第1パルスパターンにつなげたパターンの場合、スイッチ高調波成分は、図13(b)に示すように、基本波成分の周波数の奇数倍に分布する。コンバータキャリア周波数fcnvとスイッチ高調波成分の周波数fptとが近接して、かつ、スイッチ高調波成分の振幅が所定振幅よりも大きいと、DC母線高調波成分の周波数とスイッチ高調波成分の周波数fptとの差を変動周波数とする低周波成分が発生する。その結果、モータジェネレータ40のトルク変動が増加する。
この問題を解決すべく、パターン生成部51jは、コンバータキャリア周波数fcnvと、指令パターンに含まれるスイッチ高調波成分の周波数fptとの差の絶対値が所定値Δf以上となるように、指令パターンを設定する。
図14に、指令パターンの設定処理の手順を示す。この処理は、パターン生成部51jにより、例えば所定周期毎に繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS60において、電気角周波数ωs、同期数Nr、指令変調率Mr及び実位相θvに基づいて、指令パターンを生成する。
続くステップS62では、指令パターンに含まれる各スイッチ高調波成分の周波数fptと、コンバータキャリア周波数fcnvとが近接しているか否かを判定する。本実施形態では、各スイッチ高調波成分の周波数fptとコンバータキャリア周波数fcnvとの差の絶対値が所定値Δf未満であると判定した場合、近接していると判定する。ここで、判定に用いる各スイッチ高調波成分の周波数fptは、例えば以下のように算出されればよい。詳しくは、まず、ステップS60の処理で生成した指令パターンにFFT等のフーリエ変換を施す、あるいは指令パターンの変調率、変調方法といったパターン設計情報に基づきスイッチ高調波成分のスペクトルを推定する。そして、推定したスペクトルに基づいて、スイッチ高調波成分の周波数fptを算出する。
ステップS62において近接していないと判定した場合には、ステップS60の処理で生成した指令パターンをそのまま用いてU,V,W相PWM信号GU,GV,GWを生成する。一方、ステップS62において近接していると判定した場合には、ステップS64に進み、指令パターンに含まれる複数のスイッチ高調波成分のうち、ステップS62の処理で近接していると判定したスイッチ高調波成分の振幅Amphが所定振幅Aαよりも大きいか否かを判定する。ここで、振幅Amphは、ステップS62の処理で推定したスペクトルに基づいて算出されればよい。なお、所定振幅Aαは、モータジェネレータ40のトルク変動量とスイッチ高調波成分との相関から定まる閾値として設定されている。
ステップS64において否定判定した場合には、ステップS60の処理で生成した指令パターンをそのまま用いてU,V,W相PWM信号GU,GV,GWを生成する。これは、コンバータキャリア周波数fcnvと近接する周波数で変動するスイッチ高調波成分の振幅Amphが小さい場合、干渉の影響が小さいことによるものである。
一方、ステップS64において肯定判定した場合には、ステップS66に進み、ステップS60の処理で用いられた同期数Nr、指令変調率Mr及び変調方式のうち、少なくとも1つを変更したパルスパターンをパターン記憶部51kから選択する。そしてステップS68において、選択したパルスパターンに基づいて、指令パターンを再度生成する。
同期数Nr及び変調方式の少なくとも一方が変更されることにより、再度生成された指令パターンに含まれる各スイッチ高調波成分のうち振幅が所定振幅Aαよりも大きいものの周波数fptと、コンバータキャリア周波数fcnvとの差の絶対値が所定値Δf以上とされる。
一方、指令変調率Mrが変更されることにより、再度生成された指令パターンに含まれる各スイッチ高調波成分のうち、周波数がコンバータキャリア周波数fcnvと近接するものの振幅が所定振幅Aα以下とされる。
図15及び図16に、パルスパターンの選択に用いる同期数Nrを変更する場合の具体例を示す。なお図15の横軸は、インバータ30の出力電圧に含まれる基本波成分の周波数feを示す。
パターン生成部51jは、図15に示すように、コンバータキャリア周波数fcnvと、13次のスイッチ高調波成分の周波数「fcnv/13」とが近接していると判定した場合、同期数Nrが12のパルスパターンに代えて、同期数Nrが6のパルスパターンを選択する。これにより、図16(a)に示すように、指令パターンに含まれる13次のスイッチ高調波成分の振幅Amphが所定振幅Aα以下とされる。ここで、同期数Nrを小さくして振幅を小さくするのは、スイッチング損失を低減してインバータ30を過熱から保護するためである。
先の図15の説明に戻り、パターン生成部51jは、11次のスイッチ高調波成分の周波数とコンバータキャリア周波数fcnvとが近接していると判定した場合、同期数Nrを変更したパルスパターンの選択を実施しない。これは、図16(b)に示すように、同期数Nrを変更しなくても、11次のスイッチ高調波成分の振幅Amphが所定振幅Aα以下であるためである。
先の図15の説明に戻り、パターン生成部51jは、7次,5次のスイッチ高調波成分の周波数とコンバータキャリア周波数fcnvとが近接していると判定した場合、同期数Nrが1のパルスパターンに代えて、同期数Nrが12のパルスパターンを選択する。これにより、指令パターンに含まれる7次,5次のスイッチ高調波成分の振幅Amphが所定振幅Aα以下とされる。
以上説明したように、パルスパターンが用いられる構成においても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第7実施形態)
以下、第7実施形態について、上記第6実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、インバータ温度検出部72により検出されたインバータ温度Tinvに基づいて、パルスパターン変更時における同期数Nrを決定する。本実施形態において、先の図11のパターン生成部51jには、インバータ温度Tinvが入力される。
図17に、指令パターンの設定処理の手順を示す。この処理は、パターン生成部51jにより、例えば所定周期毎に繰り返し実行される。なお図17において、先の図14に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
この一連の処理では、ステップS64において肯定判定した場合には、ステップS70に進み、インバータ温度Tinvを取得する。続くステップS72では、ステップS60の処理で取得した同期数Nrが1であるか否かを判定する。
ステップS72において否定判定した場合には、ステップS74に進み、ステップS60の処理で取得した同期数Nrよりも小さい同期数Nrに対応するパルスパターンを選択する。
一方、ステップS72において肯定判定した場合には、ステップS76に進み、取得したインバータ温度Tinvが閾値温度Tthを超えているか否かを判定する。ステップS76において肯定判定した場合には、同期数Nrの増加が禁止され、ステップS60の処理で生成した指令パターンがそのまま用いられる。
一方、ステップS76においてインバータ温度Tinvが閾値温度Tth以下であると判定した場合には、ステップS78に進み、ステップS60の処理で取得した同期数Nrよりも大きい同期数Nrに対応するパルスパターンを選択する。ステップS74、S78の処理の完了後、ステップS68に進む。
以上説明した本実施形態によれば、インバータ30を過熱から保護しつつ、コンバータキャリア周波数fcnvとスイッチ高調波成分の周波数との近接を回避できる。
(第8実施形態)
以下、第8実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図18に示すように、制御システムとして、モータジェネレータ及びインバータを2組備えるものを用いる。なお図18において、先の図1に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
図示されるように、制御システムは、第1インバータ30a、第1モータジェネレータ40a、第2インバータ30b、第2モータジェネレータ40b、及び車載主機としての図示しないエンジンを備えている。第1モータジェネレータ40a、第2モータジェネレータ40b及びエンジンは、図示しない動力分割機構で接続されており、第2モータジェネレータ40bの出力軸には駆動輪が接続されている。本実施形態では、各モータジェネレータ40a,40bとして、上記第1実施形態のモータジェネレータ40と同じ永久磁石同期機を用いている。
正極母線Lp及び負極母線Lnには、第1インバータ30a及び第2インバータ30bの入力側が接続されている。第1インバータ30aには、第1モータジェネレータ40aが接続されている。第1モータジェネレータ40aは、動力分割機構を介してエンジンと接続されており、発電機やエンジンのスタータとしての役割を果たす。第2インバータ30bには、第2モータジェネレータ40bが接続されている。第2モータジェネレータ40bは、上記第1実施形態のモータジェネレータ40と同様に、車載主機等の役割を果たす。このため本実施形態において、第2モータジェネレータ40bに流れる相電流の最大値は、第1モータジェネレータ40aに流れる相電流の最大値よりも大きくなっている。なお、各インバータ30a,30bの構成は、上記第1実施形態のインバータ30の構成と同様であるため、詳細な説明を省略する。
制御システムは、第1相電流検出部70a、第2相電流検出部70b、第1角度検出部71a、第2角度検出部71b、及びリアクトル電流検出部75を備えている。第1,第2相電流検出部70a,70bは、第1,第2モータジェネレータ40a,40bに流れる各相電流のうち、少なくとも2相分の電流を検出する。第1,第2角度検出部71a,71bは、第1,第2モータジェネレータ40a,40bの電気角θe1,θe2を検出する。リアクトル電流検出部75は、リアクトル22に流れる電流を検出する。
各検出部の検出値は、モータ制御装置50に入力される。モータ制御装置50は、第1モータジェネレータ40aのトルクを第1指令トルクTrq1*に制御すべく、第1インバータ30aを操作し、第2モータジェネレータ40bのトルクを第2指令トルクTrq2*に制御すべく、第2インバータ30bを操作する。第1,第2指令トルクTrq1*,Trq2*は、上位制御装置60から入力される。
ちなみにモータ制御装置50は、第1相電流検出部70a及び第1角度検出部71aの検出値に基づいて第1インバータ30aを操作し、第2相電流検出部70b及び第2角度検出部71bの検出値に基づいて第2インバータ30bを操作する。各インバータ30a,30bは、上記第1実施形態と同様に、キャリア信号を用いたPWM処理により操作される。
本実施形態において、コンバータキャリア周波数fcnvは、上記第1実施形態と同様に固定値に設定されている。また本実施形態では、第1インバータ30aの制御で用いられるインバータキャリア信号を第1インバータキャリア信号Sinv1と称し、第2インバータ30bの制御で用いられるインバータキャリア信号を第2インバータキャリア信号Sinv2と称すこととする。また、第1インバータキャリア信号Sinv1の周波数を第1インバータキャリア周波数finv1と称し、第2インバータキャリア信号Sinv2の周波数を第2インバータキャリア周波数finv2と称すこととする。本実施形態において、第1インバータキャリア周波数finv1は固定値に設定されている。なお、各インバータ30a,30bの操作手法は、上記第1実施形態のインバータ30の操作手法と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
本実施形態において、第1インバータ30aを構成するスイッチのオンオフ操作に伴い母線電圧に重畳する高調波成分をインバータ母線高調波成分と称すこととする。そして本実施形態では、DC母線高調波成分の周波数に加えて、インバータ母線高調波成分の周波数と、第2インバータキャリア周波数finv2との近接を回避する。以下、インバータ母線高調波成分の周波数と、第2インバータキャリア周波数finv2との近接を回避する必要性について説明する。
図20(a)に、第1インバータ30aの駆動に伴って母線電圧に重畳する変動成分のスペクトルを示す。また図20(b)に、第2インバータ30bで用いられるスイッチングパターンに含まれる変動成分のスペクトルを示す。なお図20(a)では、DCDCコンバータ20の駆動に伴って母線電圧に重畳する変動成分のスペクトルの図示を省略している。
図19(a)に示すように、第1インバータ30aをPWM処理により駆動する場合、その駆動に伴って発生するインバータ母線高調波成分は、第1インバータキャリア周波数finv1を中心とした側帯波、及び第1インバータキャリア周波数finv1の2倍を中心として分布する。
一方、図19(b)に示すように、第2インバータ30bのスイッチングパターンに含まれるスイッチ高調波成分は、第2インバータキャリア周波数finv2の整数倍を中心に分布する。なお図19(b)には、スイッチングパターンに含まれる基本波成分である第2基本波成分の周波数をfe2にて示した。
インバータ母線高調波成分の周波数と、スイッチ高調波成分の周波数とが近接すると、上記第1実施形態で説明したように低次の変動成分が第2インバータ30bの相電圧に含まれることとなる。その結果、第2モータジェネレータ40bのトルク変動が大きくなるといった問題が生じる。この問題を解決すべく、モータ制御装置50は、DC母線高調波成分及びインバータ母線高調波成分それぞれの周波数と近接しないように、第2インバータキャリア周波数finv2を可変設定する。
図20に、第2インバータキャリア周波数finv2の設定処理の手順を示す。この処理は、モータ制御装置50により、例えば所定周期毎に繰り返し実行される。
この一連の処理では、まずステップS80において、DCDCコンバータ20の駆動に伴って発生するDC母線高調波成分のスペクトルを推定する。本実施形態では、コンバータキャリア周波数fcnv、出力電圧VHr及び入力電圧VLrに基づいて、DC母線高調波成分のスペクトルを推定する。この推定手法は、図21に示すDCDCコンバータ20のモデルに基づくものである。このモデルでは、DCDCコンバータ20の出力側に定電流電源が接続されている。
図21において、上アーム変圧スイッチScpのコレクタから正極母線Lpへと流れる母線電流をIbusにて示し、第2コンデンサ23に流れる電流をICにて示し、定電流電源から出力される負荷電流をIoにて示す。リアクトル22に流れる電流ILは、下式(eq2)にて表される。
Figure 0006923041
上式(eq2)において、Lはリアクトル22のインダクタンスを示し、「Sc=0」は上アーム変圧スイッチScpがオフされてかつ下アーム変圧スイッチScnがオンされている状態を示し、「Sc=1」は上アーム変圧スイッチScpがオンされてかつ下アーム変圧スイッチScnがオフされている状態を示す。
母線電流Ibusは、下式(eq3)で表される。
Figure 0006923041
第2コンデンサ23に流れる電流ICは、下式(eq4)で表される。
Figure 0006923041
母線電圧Vbusは、下式(eq5)で表される。
Figure 0006923041
上式(eq5)において、Cは第2コンデンサ23の静電容量を示す。上式(eq5)で表される母線電圧Vbusの変動周波数は、Scに依存し、Scの周波数は、コンバータキャリア周波数fcnvによって定まる。このため、DC母線高調波成分のスペクトルにおいて、DC母線高調波成分が分布する周波数は、コンバータキャリア周波数fcnvに基づいて算出できる。
また、上式(eq2),(eq5)より、DC母線高調波成分の振幅は、出力電圧VHr及び入力電圧VLrに依存するため、出力電圧VHr及び入力電圧VLrに基づいて算出できる。なお、DC母線高調波成分の振幅の算出に、負荷電流Ioを用いてもよい。負荷電流Ioは、例えば、相電流検出部70の検出値に基づいて算出されればよい。
先の図20の説明に戻り、続くステップS82では、第1インバータ30aの駆動に伴って発生するインバータ母線高調波成分のスペクトルを推定する。本実施形態では、第1モータジェネレータ40aの電気角周波数である第1電気角周波数ωs1、第1相電流検出部70aにより検出された相電流、第1インバータ30aの力率、及び第1インバータ30aの制御で用いられるスイッチングパターンに基づいて、インバータ母線高調波成分のスペクトルを推定する。本実施形態において、力率とは、スイッチングパターンと相電流との位相差のことを示す。第1電気角周波数ωs1は、第1角度検出部71aの検出値に基づいて算出される。スイッチングパターンは、第1インバータキャリア周波数finv1、第1インバータ30aの制御で用いられる指令変調率である第1指令変調率、及び第1インバータ30aの制御で用いられる変調方式に基づいて算出できる。上記推定手法は、図22に示す第1インバータ30aのモデルに基づくものである。このモデルでは、第2コンデンサ23に定電流電源が並列接続されている。
図22において、定電流電源から出力される負荷電流をIoにて示し、負荷電流Ioのうち第2コンデンサ23に流れる電流をICにて示し、負荷電流Ioのうち第1インバータ30a側へと流れる母線電流をIbusにて示す。母線電流Ibusは、下式(eq6)で表される。
Figure 0006923041
上式(eq6)において、「Sx=0」(x=u,v,w)はx相上アームスイッチSxpがオフされてかつx相下アームスイッチSxnがオンされている状態を示し、「Sx=1」はx相上アームスイッチSxpがオンされてかつx相下アームスイッチSxnがオフされている状態を示す。
第2コンデンサ23に流れる電流ICは、下式(eq7)で表される。
Figure 0006923041
母線電圧Vbusは、下式(eq8)で表される。
Figure 0006923041
上式(eq8)に示すように、母線電圧Vbusの変動周波数は、Su,Sv,Swと、相電流Iu,Iv,Iwとの積に依存する。ここで、相電流は誘導性負荷である第1モータジェネレータ40aを介して流れる。このため、相電圧に含まれる高調波振幅に対して相電流に生じる高調波振幅は周波数が高いほど小さくなり、高調波においては、相電流に生じる高調波成分は同周波の相電圧の高調波成分と比較して十分に小さいと考えられる。よって、インバータ母線高調波成分の変動周波数は相電流を電気1次のみの変動と仮定して、「Sxに含まれる高調波成分の周波数分布±相電流の周波数」で表すことができる。したがって、スペクトルの推定に、検出された相電流と、スイッチングパターンとが用いられる。
インバータ母線高調波成分の振幅は、スイッチングパターンとしてのSu,Sv,Swに加え、検出した相電流、第2コンデンサ23の静電容量の値に基づいて算出できる。また、Sxを含む母線高調波成分の振幅以外のパラメータを固定値を用いて算出してもよい。ここでの固定値としては、Sxと相電流Ixの位相差である力率角、相電流振幅、静電容量を母線高調波成分の振幅がワースト値となるよう想定して設定することができる。なお本実施形態において、ステップS80、S82の処理が母線高調波取得部に相当する。
先の図20の説明に戻り、続くステップS84では、第2モータジェネレータ40bの電気角周波数である第2電気角周波数ωs2と、第2インバータ30bの制御で用いられるスイッチングパターンとに基づいて、スイッチングパターンに含まれるスイッチ高調波成分のスペクトルを推定する。第2電気角周波数ωs2は、第2角度検出部71bの検出値に基づいて算出される。
続くステップS86では、ステップS84の処理で推定した各スイッチ高調波成分の周波数の中に、ステップS80の処理で推定したDC母線高調波成分の周波数、及びステップS82の処理で推定したインバータ高調波成分の周波数のそれぞれと近接している周波数があるか否かを判定する。
本実施形態では、コンバータキャリア周波数fcnvから第1所定値Δf1減算した値よりも高くて、かつ、コンバータキャリア周波数fcnvに第1所定値Δf1加算した値未満の周波数を有するスイッチ高調波成分があると判定した場合、DC母線高調波成分の周波数と近接しているスイッチ高調波成分があると判定する。
また本実施形態では、コンバータキャリア周波数fcnvから第2所定値Δf2(Δf2>Δf1)減算した値よりも高くて、かつ、コンバータキャリア周波数fcnvに第2所定値Δf2加算した値未満の周波数を有するスイッチ高調波成分があると判定した場合、インバータ母線高調波成分の周波数と近接しているスイッチ高調波成分があると判定する。
ちなみに、本実施形態において、第1所定値Δf1は、DC母線高調波成分が第2インバータ30bの出力電力を変動させないような値に予め適合されている。具体的には例えば、第1所定値Δf1は、コンバータキャリア周波数fcnvの整数倍を中心に分布するDC母線高調波成分の周波数帯と、第2インバータキャリア周波数finv2の整数倍を中心に分布するスイッチ高調波成分の周波数帯とが重ならないような値に適合されればよい。
また、本実施形態において、第2所定値Δf2は、インバータ母線高調波成分が第2インバータ30bの出力電力を変動させないような値に予め適合されている。具体的には例えば、第2所定値Δf2は、第1インバータキャリア周波数finv1の整数倍を中心とした側帯波として分布するインバータ母線高調波成分の周波数帯と、第2インバータキャリア周波数finv2の整数倍を中心に分布するスイッチ高調波成分の周波数帯とが重ならないような値に適合されればよい。
ステップS86において近接しているスイッチ高調波成分があると判定した場合には、ステップS88に進み、第1条件及び第2条件の論理積が真であるか否かを判定する。第1条件は、DC母線高調波成分及びインバータ母線高調波成分のうち少なくとも一方と近接していると判定したスイッチ高調波成分の振幅が、第1所定振幅Ath1よりも大きいとの条件である。第2条件は、DC母線高調波成分及びインバータ母線高調波成分のうちスイッチ高調波成分と近接していると判定した少なくとも一方の振幅が、第2所定振幅Ath2よりも大きいとの条件である。
ステップS86、S88において否定判定した場合には、上記第1実施形態で説明したインバータ30の制御手法と同様の手法により、第2インバータ30bを構成する各スイッチの操作信号を生成する。
一方、ステップS88において肯定判定した場合には、ステップS90に進む。ステップS90では、第2インバータキャリア周波数finv2、第2インバータ30bの制御で用いられる第2指令変調率Mr2、第2インバータ30bの制御で用いられる変調方式、及び指令出力電圧VH*のうち、少なくとも1つを変更する。これにより、スイッチ高調波成分のスペクトルを変更する。
図23に、第2インバータキャリア周波数finv2の設定処理の一例を示す。図23に示す例では、スイッチ高調波成分と近接するDC母線高調波成分の振幅が第2所定振幅Ath2以下であると判定されているものとする。このため、第2インバータキャリア周波数finv2が「finv1−Δf1」〜「finv1+Δf1」となる場合であっても、図20のステップS88で否定判定される。なお図23に示す第1〜第6所定角周波数ω1〜ω6は、先の図5に示した第1〜第6所定角周波数ω1〜ω6とは異なるものである。
まず、非同期PWM処理時について説明する。モータ制御装置50は、第2電気角周波数ωs2が第1切替周波数ωa以下であると判定した場合、第2インバータキャリア周波数finv2を、第1インバータキャリア周波数finv1及び第2所定値Δf2の加算値以上の値に設定する。本実施形態では、第2インバータキャリア周波数finv2が、第1インバータキャリア周波数finv1及び第2所定値Δf2の加算値よりも高い値とされている。
続いて、同期PWM処理時について説明する。モータ制御装置50は、第2電気角周波数ωs2が第1切替角周波数ωaよりも高くてかつ第2切替角周波数ωb以下であると判定した場合、基本的には、同期数Nrを12とする第2インバータキャリア周波数finv2を設定する。ただし、第2電気角周波数ωs2が第1切替角周波数ωaよりも高くてかつ第1所定角周波数ω1未満となる場合、及び第2電気角周波数ωs2が第2所定角周波数ω2よりも高くてかつ第3所定角周波数ω3未満となる場合において、同期数Nrを12とする同期PWM処理に代えて、同期数Nrを6とする第2インバータキャリア周波数finv2を設定する。これにより、各インバータキャリア周波数fcnv1,finv2の近接が回避される。
なお、第1所定角周波数ω1は、同期数Nrを12とする第2インバータキャリア周波数finv2と、第1インバータキャリア周波数fcnv1から第1所定値Δf1だけ減算した値とが一致する角周波数である。第2所定角周波数ω2は、同期数Nrを12とする第2インバータキャリア周波数finv2と、第1インバータキャリア周波数fcnv1及び第1所定値Δf1の加算値とが一致する角周波数である。第3所定角周波数ω3は、同期数Nrを12とする第2インバータキャリア周波数finv2と、第1インバータキャリア周波数fcnv1及び第2所定値Δf2の加算値とが一致する角周波数である。
モータ制御装置50は、第2電気角周波数ωs2が第2切替角周波数ωbよりも高くてかつ第3切替角周波数ωc以下であると判定した場合、基本的には、同期数Nrを6とする第2インバータキャリア周波数finv2を設定する。ただし、第2電気角周波数ωs2が第4所定角周波数ω4よりも高くてかつ第5所定角周波数ω5未満となる場合、及び第2電気角周波数ωs2が第6所定角周波数ω6よりも高くてかつ第7所定角周波数ω7未満となる場合において、同期数Nrを6から1に変更した第2インバータキャリア周波数finv2を設定する。
なお、第4所定角周波数ω4は、同期数Nrを6とする第2インバータキャリア周波数finv2と、第1インバータキャリア周波数fcnv1から第2所定値Δf2だけ減算した値とが一致する角周波数である。第5所定角周波数ω5は、同期数Nrを6とする第2インバータキャリア周波数finv2と、第1インバータキャリア周波数fcnv1から第1所定値Δf1減算した値とが一致する角周波数である。第6所定角周波数ω6は、同期数Nrを6とする第2インバータキャリア周波数finv2と、第1インバータキャリア周波数fcnv1及び第1所定値Δf1の加算値とが一致する角周波数である。第7所定角周波数ω7は、同期数Nrを6とする第2インバータキャリア周波数finv2と、第1インバータキャリア周波数fcnv1及び第2所定値Δf2の加算値とが一致する角周波数である。
モータ制御装置50は、第2電気角周波数ωs2が第3切替角周波数ωcよりも高いと判定した場合、基本的には、同期数Nrを1とする第2インバータキャリア周波数finv2を設定する。ただし、第2電気角周波数ωs2が第8所定角周波数ω8よりも高くてかつ第9所定角周波数ω9未満となる場合、及び第2電気角周波数ωs2が第10所定角周波数ω10よりも高い場合において、同期数Nrを1から6に変更した第2インバータキャリア周波数finv2を設定する。
なお、第8所定角周波数ω8は、同期数Nrを1とする第2インバータキャリア周波数finv2と、第1インバータキャリア周波数fcnv1から第2所定値Δf2減算した値とが一致する角周波数である。第9所定角周波数ω9は、同期数Nrを1とする第2インバータキャリア周波数finv2と、第1インバータキャリア周波数fcnv1から第1所定値Δf1減算した値とが一致する角周波数である。第10所定角周波数ω10は、同期数Nrを1とする第2インバータキャリア周波数finv2と、第1インバータキャリア周波数fcnv1及び第1所定値Δf1の加算値とが一致する角周波数である。
以上説明した本実施形態によれば、DCDCコンバータ20の駆動に加えて、第1インバータ30aの駆動に伴い母線電圧に重畳する高調波成分に起因した第2モータジェネレータ40bのトルク変動の増加を抑制できる。
(第9実施形態)
以下、第9実施形態について、上記第8実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、第1,第2インバータ30a,30bが、上記第6実施形態と同様に、パルスパターンを用いて駆動される。
モータ制御装置50は、DC母線高調波成分、及びパルスパターンを用いた第1インバータ30aの駆動の起因したインバータ母線高調波成分それぞれの周波数と近接しないように、第2インバータキャリア周波数finv2を可変設定する。
図24(a)に、第1インバータ30aの駆動に伴い発生するインバータ母線高調波成分のスペクトルを示す。
第1インバータ30aの駆動に伴う母線電圧の変動周波数は、第1インバータ30bの出力電圧に含まれる基本波成分である第1基本波成分の周波数fe1の3の倍数に分布する。特に、先の図12に示した対称性を有するパルスパターンで駆動する場合、第1基本波成分の周波数fe1の6の倍数に分布する。
一方、第2インバータ30bの制御に用いられる指令パターンに含まれるスイッチ高調波成分は、指令パターンに含まれる基本波成分の整数倍に分布する。特に、先の図12に示した対称性を有するパルスパターンで駆動する場合、スイッチ高調波成分は、図24(b)に示すように、基本波成分の周波数の奇数倍に分布する。
図24に示す例では、第1インバータ30aの第1電気角周波数と第2インバータ30bの第2電気角周波数との比が5:6となり、インバータ母線高調波成分とスイッチ高調波成分とが近接する状態を示した。この場合、上述した低周波成分が第2インバータ30bの出力電圧に重畳し、第2モータジェネレータ40bのトルク変動が増加する。
この問題を解決すべく、モータ制御装置50は、インバータ母線高調波成分の周波数と、第2インバータ30bの制御で用いられる指令パターンに含まれるスイッチ高調波成分の周波数fptとの差の絶対値が所定値Δf以上となるように、上記指令パターンを設定する。
なお、モータ制御装置50は、コンバータキャリア周波数fcnvスイッチ高調波成分の周波数fptとの差の絶対値も所定値Δf以上となるように指令パターンを設定する。
モータ制御装置50は、先の図20に示した処理と同様の処理を行う。詳しくは、ステップS82では、第2インバータ30bの制御で用いられる指令パターンに基づいて、インバータ母線高調波成分のスペクトルが推定される。またステップS84では、第2インバータ30bの制御で用いられる指令パターンに基づいて、スイッチ高調波成分のスペクトルが推定される。ステップS82,S84では、具体的には例えば、指令パターンにフーリエ変換を施す、あるいはパターン設計時の情報を使用することにより、高調波成分のスペクトルが推定される。
図25及び図26に、スイッチ高調波成分のスペクトルを変更するために、第2インバータ30bのパルスパターンの選択に用いる同期数Nrの変更手法の具体例を示す。
モータ制御装置50は、図25に示すように、13次のスイッチ高調波成分の周波数「fe1×6/13」と第1インバータ30aの第1基本波成分の周波数fe1とが近接していると判定した場合、同期数Nrを変更したパルスパターンの選択を実施しない。また、モータ制御装置50は、11次のスイッチ高調波成分の周波数「fe1×6/11」と第1基本波成分の周波数fe1とが近接していると判定した場合、同期数Nrを変更したパルスパターンの選択を実施しない。これは、図26(a)に示すように、同期数Nrを変更しなくても、13次のスイッチ高調波成分の振幅が第1所定振幅Ath1以下となっているためである。
モータ制御装置50は、7次のスイッチ高調波成分の周波数「fe1×6/7」と第1基本波成分の周波数fe1とが近接していると判定した場合、同期数Nrが1のパルスパターンに代えて、同期数Nrが12のパルスパターンを選択する。これにより、図26(b)に示すように、指令パターンに含まれる7次のスイッチ高調波成分の振幅が第1所定振幅Ath1以下とされる。また、モータ制御装置50は、5次のスイッチ高調波成分の周波数「fe1×6/5」と第1基本波成分の周波数fe1とが近接していると判定した場合、同期数Nrが1のパルスパターンに代えて、同期数Nrが12のパルスパターンを選択する。
以上説明したように、パルスパターンが用いられる構成においても、上記第9実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第10実施形態)
以下、第10実施形態について、上記第9実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。上記第9実施形態では、第2インバータ30bの制御で用いられるパルスパターンを変更することにより、DC母線高調波成分及びインバータ母線高調波成分それぞれの周波数と、スイッチ高調波成分の周波数との近接を回避した。本実施形態では、第1,第2モータジェネレータ40a、40bのうち少なくとも一方の回転速度を変更することにより近接を回避する。
つまり、第1,第2インバータ30a,30bのうち一方が矩形波駆動以外の駆動モードで駆動されており、かつ、対称性を有するパルスパターンで駆動されている場合には、第1,第2電気角周波数が、例えば、「ωs1:ωs2=1:12」,「ωs1:ωs2=1:24」,「ωs1:ωs2=5:12」,「ωs1:ωs2=5:24」,「ωs1:ωs2=7:12」,「ωs1:ωs2=7:24」となるときにも、インバータ母線高調波成分の周波数とスイッチ高調波成分の周波数とが近接する。この場合にも、トルク変動が増加するといった問題が生じる。一般化すると、N,Mを1以上の整数とする場合、「ωs1:ωs2=2N−1:6M」、すなわち「fe1:fe2=2N−1:6M」となるときにトルク変動が増加するといった問題が生じる。本実施形態では、この問題を、第1,第2モータジェネレータ40a、40bのうち少なくとも一方の回転速度を変更することにより解決する。
図27に、回転速度の変更処理の手順を示す。この処理は、モータ制御装置50により、例えば所定周期毎に繰り返し実行される。なお図27において、先の図20に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
この一連の処理では、ステップS88において肯定判定した場合には、ステップS92に進む。ステップS92では、第1,第2電気角周波数ωs1,ωs2に基づいて、現在の第1,第2基本波成分の周波数fe1,fe2の比が「fe1:fe2=2N−1:6M」となっているか否かを判定する。
ステップS92において肯定判定した場合には、ステップS94に進み、第1,第2モータジェネレータ40a、40bのうち少なくとも一方の回転速度を変更する。これにより、第1,第2基本波成分の周波数fe1,fe2の比が「fe1:fe2=2N−1:6M」とならないようにする。そしてこれにより、インバータ母線高調波成分の周波数とスイッチ高調波成分の周波数との近接を回避する。
以上説明した本実施形態によっても、第2モータジェネレータ40bのトルク変動の増加を抑制することができる。
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記第10実施形態の図27に示した処理の実行主体を、モータ制御装置50に代えて、上位制御装置60としてもよい。
・上記第1,第2実施形態の構成に代えて、インバータキャリア周波数finv及びコンバータキャリア周波数fcnvの双方を可変設定することにより、各キャリア周波数finv,fcnvの差の絶対値を所定値Δf以上としてもよい。
・図7のステップS16において、DC母線高調波成分の周波数とスイッチ高調波成分の周波数とが近接しているか否かの判定手法を以下のように変更してもよい。高電圧検出部74により検出された出力電圧VHrにフーリエ変換を施すことにより、母線電圧のスペクトルを推定する。また、U,V,W相PWM信号GU,GV,GWの少なくとも1つにフーリエ変換を施すことにより、PWM信号のスペクトルを推定する。そして、これらスペクトルの推定結果からDC母線高調波成分及びスイッチ高調波成分それぞれの周波数を取得する。そして、各DC母線高調波成分のうち振幅が所定振幅よりも大きくなるものの周波数と、各スイッチ高調波成分のうち振幅が所定振幅よりも大きくなるものの周波数との差の絶対値が所定値Δf未満であるか否かを判定する。
・制御システムにDCDCコンバータ20の温度を検出するコンバータ温度検出部を備える。そして上記第3実施形態において、コンバータ温度検出部により検出されたコンバータ温度に基づいて、コンバータキャリア周波数fcnvを可変設定してもよい。
・上記第3,第7実施形態で用いるインバータ温度は、温度検出部の検出値に限らず、所定の温度推定処理により推定された推定値であってもよい。
・DC母線高調波成分の推定手法としては、上記第8実施形態に例示したものに限らない。例えば、インダクタンスL、静電容量C及び負荷電流Ioに基づいて算出されたDC母線高調波成分の振幅及び周波数をメモリに予め記憶させておく。そして、DCDCコンバータ20の動作に応じてメモリの記憶情報を参照することにより、DC母線高調波成分のスペクトルを推定してもよい。また例えば、高電圧検出部74により検出された出力電圧VHrにフーリエ変換を施すことにより、DC母線高調波成分のスペクトルを推定してもよい。
・インバータ母線高調波成分の振幅の推定手法としては、上記第8実施形態に例示したものに限らない。例えば、第1インバータキャリア周波数finv1、第1指令変調率、及び変調方式と関係付けた振幅をメモリに予め記憶させておく。そして、第1インバータキャリア周波数finv1、第1指令変調率、及び変調方式に基づいてメモリの記憶情報を参照することにより、インバータ母線高調波成分の振幅を推定してもよい。
また例えば、第1インバータ30aのスイッチングパターン又は相電圧を取得し、取得した値にフーリエ変換を施すことにより、インバータ母線高調波成分の振幅を推定してもよい。さらに例えば、高電圧検出部74により検出された出力電圧VHrにフーリエ変換を施すことにより、インバータ母線高調波成分のスペクトルを推定してもよい。
・上記第8実施形態の上式(eq2)では、出力電圧VHr及び入力電圧VLrに基づいてリアクトル22に流れる電流を算出したがこれに限らず、リアクトル電流検出部75の検出値を用いてもよい。
・上記第8実施形態の図23において、第2インバータ30bの温度検出値が閾値温度よりも高い場合、第2インバータキャリア周波数finv2を低周波側に優先的に変更してもよい。
・上記第9実施形態において、第1インバータ30aのインバータ母線高調波成分及びDC母線高調波成分の少なくとも一方と、第2インバータ30bのスイッチ高調波成分とが近接していると判定された場合、第1インバータ30aの制御で用いられるパルスパターンを変更してインバータ母線高調波成分のスペクトルを変更してもよい。ここでは、スイッチ高調波成分の「6×fe1」の周波数を低減するようなパルスパターンに変更すればよい。
・上記第4,第5実施形態の構成に代えて、インバータキャリア周波数finv、変調方式及び指令出力電圧VH*のうち少なくとも2つを変更することにより、スイッチ高調波成分のスペクトルを変更してもよい。
・DCDCコンバータとしては、昇圧コンバータに限らず、入力電圧を降圧して出力する降圧コンバータであってもよい。
・上記第8実施形態において、DCDCコンバータ20を除去し、バッテリ10を第1,第2インバータ30a,30bの入力側に接続してもよい。この場合、スイッチ高調波成分の周波数と近接しているか否かの判定対象から、DC母線高調波成分の周波数が外れる。
・モータ制御システムとしては、3つ以上のインバータ及び各インバータに接続されたモータジェネレータを備えるシステムであってもよい。この場合、インバータ母線高調波成分のスペクトルの推定対象となるインバータは、複数であってもよい。また、この場合、DC母線高調波成分及びインバータ母線高調波成分それぞれの周波数との近接が回避されるようにインバータキャリア周波数が可変設定されるインバータは、複数であってもよい。
・キャリア信号としては、三角波信号に限らず、例えばのこぎり波信号であってもよい。
・モータジェネレータの制御量としては、トルクに限らず、例えば回転速度であってもよい。
・モータジェネレータとしては、同期機に限らず、例えば誘導機であってもよい。またモータジェネレータとしては、車載主機として用いられるものに限らず、電動パワーステアリング装置を構成する電動機等、他の用途に用いられるものであってもよい。
・上記第1,第2実施形態では、母線高調波成分の周波数をコンバータキャリア周波数fcnvとし、この周波数fcnvとの近接の回避対象であるスイッチ高調波成分の周波数を、インバータキャリア周波数finvとしたがこれに限らない。例えば、母線高調波成分の周波数をコンバータキャリア周波数fcnvとし、この周波数fcnvとの近接の回避対象であるスイッチ高調波成分の周波数を、インバータキャリア周波数finvの2以上の整数倍の周波数としてもよい。
20…DCDCコンバータ、30…インバータ、40…モータジェネレータ、50…モータ制御装置。

Claims (2)

  1. スイッチ(Scp,Scn,Sup〜Swn)のオンオフ操作により入力電圧を所定電圧に変換して出力する電力変換装置(20,30;20,30a,30b)を複数備えるシステムであって、前記各電力変換装置が母線(Lp,Ln)を介して互いに電気的に接続されているシステムに適用され、前記各電力変換装置を構成する前記スイッチをオンオフ操作する電力変換装置の制御装置(50)において、
    前記各電力変換装置のうち、一部の電力変換装置を構成する前記スイッチのオンオフ操作に伴って前記母線の電圧に重畳する高調波成分である母線高調波成分の周波数と、残りの電力変換装置を構成する前記スイッチのスイッチングパターンに含まれる高調波成分であるスイッチ高調波成分の周波数とを所定値以上離間させるとの離間条件、並びに前記母線高調波成分の周波数と前記スイッチ高調波成分の周波数との差が前記所定値未満となる場合において前記母線高調波成分及び前記スイッチ高調波成分の少なくとも一方の振幅を低減するとの低減条件のうち少なくとも一方の条件を満たすように、前記一部の電力変換装置及び前記残りの電力変換装置のうち少なくとも一方の電力変換装置を構成する前記スイッチのオンオフ操作に用いられるキャリア信号の周波数を変更する電力変換装置の制御装置。
  2. スイッチ(Scp,Scn,Sup〜Swn)のオンオフ操作により入力電圧を所定電圧に変換して出力する電力変換装置(20,30;20,30a,30b)を複数備えるシステムであって、前記各電力変換装置が母線(Lp,Ln)を介して互いに電気的に接続されているシステムに適用され、前記各電力変換装置を構成する前記スイッチをオンオフ操作する電力変換装置の制御装置(50)において、
    前記各電力変換装置のうち、一部の電力変換装置を構成する前記スイッチのオンオフ操作に伴って前記母線の電圧に重畳する高調波成分である母線高調波成分の周波数と、残りの電力変換装置を構成する前記スイッチのスイッチングパターンに含まれる高調波成分であるスイッチ高調波成分の周波数とを所定値以上離間させるとの離間条件、並びに前記母線高調波成分の周波数と前記スイッチ高調波成分の周波数との差が前記所定値未満となる場合において前記母線高調波成分及び前記スイッチ高調波成分の少なくとも一方の振幅を低減するとの低減条件のうち少なくとも一方の条件を満たすように、前記一部の電力変換装置及び前記残りの電力変換装置のうち少なくとも一方の電力変換装置を構成する前記スイッチのスイッチング周波数を変更する電力変換装置の制御装置。
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