JP6894061B2 - 新規トウガラシ植物、該トウガラシ植物から得られた果実及び種子、並びにトウガラシ植物の作出方法 - Google Patents
新規トウガラシ植物、該トウガラシ植物から得られた果実及び種子、並びにトウガラシ植物の作出方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP6894061B2 JP6894061B2 JP2016033554A JP2016033554A JP6894061B2 JP 6894061 B2 JP6894061 B2 JP 6894061B2 JP 2016033554 A JP2016033554 A JP 2016033554A JP 2016033554 A JP2016033554 A JP 2016033554A JP 6894061 B2 JP6894061 B2 JP 6894061B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- fruit
- capsicum
- plant
- cultivar
- capsicum plant
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Images
Landscapes
- Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)
Description
また、従来のトウガラシは、手作業で花柄から果実をもぎ取るため、多大な労力を必要とし、萼や花柄などが混入しやすい。さらに、萼から果実をうまくもぎ取れず果実を損傷する可能性があるため、収率が悪い。
このため、果実離脱性を有するトウガラシが求められていた。
[1]成熟期に果実離脱性を有し、果実が房成りに結実し、且つ、栽培品種であることを特徴とするトウガラシ植物。
[2][1]に記載のトウガラシ植物から収穫されたことを特徴とする果実。
[3][2]に記載の果実から得られ、果実離脱性を担う遺伝子をホモ接合又はヘテロ接合で有し、果実房成り性を担う遺伝子をホモ接合で有することを特徴とする種子。
[4]成熟期に果実離脱性を有し、果実が房成りに結実し、且つ、栽培品種のトウガラシ植物を作出する方法であって、果実が房成りに結実し、且つ、栽培品種のトウガラシ植物を母本とし、成熟期に果実離脱性を有するトウガラシ植物を父本として交配を行い、F1雑種を得る工程と、前記F1雑種に、前記栽培品種のトウガラシ植物を戻し交配し、前記戻し交配を少なくとも2回繰り返す工程と、得られた世代のうち、成熟期に果実離脱性を有し、果実が房成りに結実する個体を選別する工程と、を備え、前記栽培品種のトウガラシ植物が栃木三鷹であることを特徴とするトウガラシ植物の作出方法。
[5]前記成熟期に果実離脱性を有するトウガラシ植物がPiquin(ピキン)である、[4]に記載のトウガラシ植物の作出方法。
[6]受領番号FERM AP−22305であるトウガラシ植物の種子。
[7][6]に記載の種子から生育されたことを特徴とするトウガラシ植物。
本明細書において、「栽培品種」とは、農業や園芸利用のために育種された、有用な形質を保持する分類群を意味し、「野生種」とは、栽培・飼育化されている作物(本明細書においては、トウガラシ植物)と同一種あるいは近縁種のもので、野生の生物種を意味する。
本明細書において、「形質」とは、植物の特徴又は表現型を意味しており、本明細書における形質としては、例えば、果実離脱性、果実の房成り性、収量性、大果性等が挙げられる。形質は、優性又は劣性の様式で、若しくは、部分又は不完全優性の様式で遺伝する。形質は、一遺伝子性又は多遺伝子性であるか、若しくは、同様に、環境中の1つ以上の遺伝子の相互作用から起こりうる。
また、「優性」とは、 ヘテロ接合又はホモ接合状態で完全な表現型出現をもたらすことを意味し、「劣性」とは、ホモ接合状態で存在するときのみ、完全な表現型が出現することを意味する。
本明細書において、「遺伝子座」とは、形質に寄与する遺伝子を含む染色体上の領域を意味し、「対立遺伝子」とは、相同染色体内の同じ遺伝子座にあるため、遺伝において選択的であるペア又は一連の遺伝子形態の一方を意味し、「ホモ接合」とは、相同染色体上の対応する遺伝子座の1つ以上で類似の対立遺伝子をもつことを意味し、「ヘテロ接合」とは、相同染色体上の対応する遺伝子座の1つ以上で異なる対立遺伝子をもつことを意味する。
一実施形態として、本発明は、成熟期に果実離脱性を有し、且つ、栽培品種である、トウガラシ植物を提供する。
一方、トウガラシ植物の栽培品種は、果実が成熟すると果柄等から離脱し、脱落する性質を有する品種が少ない。これは、以下の経緯によりトウガラシ植物の栽培品種が発生したためである。トウガラシ植物の栽培当初、野生種が栽培されていたが、果実の脱落をコントロールできず収穫前に果実が脱落してしまうため、減収の原因となっていた。そのため、栽培者により、自然突然変異により非脱落性を示す個体が選抜され、以降、栽培の繰り返し、世界各地への伝播の過程で多数の栽培品種が生じた。
しかしながら、機械収穫も可能となった近年においては、収穫が容易である果実離脱性を有する栽培品種が求められている。
本実施形態のトウガラシ植物は、果実の成熟期(開花から約50日前後)になると、果実が赤く色づき、萼からほとんど力を要さずにもぎ取ることができるため、圃場で手作業又は収穫機により容易に収穫することができる。
一実施形態として、本発明は、上記のトウガラシ植物から収穫された、果実を提供する。
一実施形態として、本発明は、上記の果実から得られた、種子を提供する。
一実施形態として、本発明は、成熟期に果実離脱性を有し、且つ、栽培品種のトウガラシ植物を作出する方法であって、栽培品種のトウガラシ植物を母本とし、成熟期に果実離脱性を有するトウガラシ植物を父本として交配を行い、F1雑種を得る工程と、前記F1雑種に、前記栽培品種のトウガラシ植物を戻し交配し、前記戻し交配を少なくとも2回繰り返す工程と、得られた世代のうち、成熟期に果実離脱性を有する個体を選別する工程と、を備える、トウガラシ植物の作出方法を提供する。
まず、栽培品種のトウガラシ植物(反復親)及び成熟期に果実離脱性を有するトウガラシ植物(供給親)の種子を用意し、これらの種子を2日間程度水に浸して約30℃に保温して催芽を施す。これらを温室にて生育し、開花後、交配させる。交配は、栽培品種を母本とし、成熟期に果実離脱性を有する品種を父本として行い、通常、母本の除雄を行った後、授粉を行う。授粉処理後60日〜90日で果実が成熟した段階で、F1雑種の種子を得ることができる。
このような交配によって、最終的に目的の遺伝子座が供与親型のホモ接合で、それ以外の染色体領域が反復親由来の染色体で構成されたコンジェニック系統の植物体を得ることができる。
一実施形態として、本発明は、受領番号FERM AP−22305であるトウガラシ植物の種子を提供する。
果実離脱性及び房成り性を有する。
(1)茎の長さ:20cm以上40cm以下
(2)草丈:65cm以上80cm以下
(3)果実の長さ:5.0cm以上7.0cm以下
(4)果実の直径:0.5cm以上1cm以下
自殖により結実し、種子を作る。
カプシカム・アンヌウム(Capsicum annuum)種に属する。
バイオテクノロジーセンター特許生物寄託センター(NITE−IPOD)(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 120号室)にプタベスト条約の規定化で受領番号FERM AP−22305として国内寄託されている。
(1)F1雑種の作出工程
図2は、トウガラシ植物の作出方法を示す工程図である。図2において、P1とは栃木三鷹を表し、P2とはピキンを表し、Selfingとは自殖を表している。図2を参照しながら、作出方法について以下に説明する。
まず、栽培品種のトウガラシ植物として栃木三鷹(反復親)及び成熟期に果実離脱性を有するトウガラシ植物としてピキン(一回親)の種子を用意し、これらの種子を2日間程度水に浸して約30℃に保温して催芽を施した。これらを温室にて生育し、開花後、交配させた。交配は、栃木三鷹を母本とし、ピキンを父本として行い、母本の除雄を行った後、授粉させた。授粉処理後60〜90日で果実が成熟した段階で、F1雑種の種子を得た。
栃木三鷹において、果実の生育期間を通して、萼は果実にくっついた状態であり、果実が成熟しても、しっかりとついたままである。一方、ピキンでは、果実の生育期間を通して、萼は果実にくっついた状態であるが、果実の成熟後には、果実は萼から簡単に離脱します。
(1)と同様の方法により、得られたF1雑種の種子を栽培して、開花させた。このF1雑種の花粉を、栃木三鷹に授粉した。なお、授粉に用いた栃木三鷹の花は開花前に除雄し、自殖を避けるため袋掛けした。交配後も5日間は袋掛けのままとした。その後、BC1F1世代を得た。また、比較対象として、F1世代の種子を栽培して、自殖させ、159株のF2世代を得た。
図3は、ピキン世代(図3(A)及び(C)参照)とBC3F3(図3(B)及び(D)参照)との結実後の様子を表す画像及び模式図である。図3(C)及び(D)において、矢印は仮軸分裂組織を表す。
図3(A)及び(C)から、ピキンでは、シュートは、頂芽前に主軸に8〜15の葉と単一の花をつけ、また、軸から2つの仮軸が伸長し、末端の花の上に位置していた。
一方、図3(B)及び(D)から、BC3F3世代では、主軸の頂芽後に花のクラスタを形成し、下側軸のシュートは、頂芽優勢から解放されていた。
また、F1世代ではピキンと同様に無限花序(集散花序)であり、F2世代では、中間の形質のものは観察されず、110株は無限花序(集散花序)であり、48株は有限花序であり、無限花序型が有限花序型に対して単一優性の1遺伝子支配であることが明らかとなった。表1は、各世代における植物の構造の内訳を示したものである。表1において、χ2はカイ2乗を表し、Pは有意確率を表す。表1において、「Single flower per node」とは、果実が節成りである個体を意味し、「Cluster of flowers」は果実が房成りである個体を意味する。
この結果から、果実房成り性の遺伝は、一遺伝子性の劣性遺伝子によって施御されるように決定されていることが明らかとなった。
図4は、F2世代の集団における、茎の長さ(主茎長)(A)及び果実の長さ(B)の分布を示すグラフである。茎の長さ、果実の長さの平均はそれぞれ29.6±4.0cm、2.70±0.61cmであり、連続的な分布を示した。茎の長さのうち、節成り性個体の平均は、29.9±4.0cmであり、房成り性個体の平均は、28.8±3.9cmであった。
この結果から、植物の構造(花序型)と、茎の長さとの間には関連性がないことが明らかとなった。
表2は、得られた各世代において、果実離脱性を有する株と、有さない株の数をまとめたものである。
萼から果実を分離するのに必要な果実離脱力(Fruit detachment force:FDF)(単位:ニュートン(N))は、プッシュフォースゲージ(ダイヤルテンションゲージDTN−30、TECLOCK社製(日本、長野))を用いて決定した。 また、立った状態の果実の中間地点を果実に対して直角にゲージで押して計測した。
ピキンの成熟した果実の離脱力は300mN未満だったため、圃場においてハンド試験で計測できるほど離脱し易かった。
また、F2世代とBC世代については、それぞれ「ピキン」タイプ(節毎に単一の花を有するタイプ)又は「栃木三鷹」タイプ(花のクラスタを有するタイプ)として記録した。
図5は、BC3F2における開花からの生育日数と離脱しない果実の割合又は波長470nmの吸光度との関係を示すグラフである。
Claims (7)
- 成熟期に果実離脱性を有し、果実が房成りに結実し、且つ、栽培品種であることを特徴とするトウガラシ植物。
- 請求項1に記載のトウガラシ植物から収穫されたことを特徴とする果実。
- 請求項2に記載の果実から得られ、
果実離脱性を担う遺伝子をホモ接合又はヘテロ接合で有し、
果実房成り性を担う遺伝子をホモ接合で有することを特徴とする種子。 - 成熟期に果実離脱性を有し、果実が房成りに結実し、且つ、栽培品種のトウガラシ植物を作出する方法であって、
果実が房成りに結実し、且つ、栽培品種のトウガラシ植物を母本とし、成熟期に果実離脱性を有するトウガラシ植物を父本として交配を行い、F1雑種を得る工程と、
前記F1雑種に、前記栽培品種のトウガラシ植物を戻し交配し、前記戻し交配を少なくとも2回繰り返す工程と、
得られた世代のうち、成熟期に果実離脱性を有し、果実が房成りに結実する個体を選別する工程と、
を備え、
前記栽培品種のトウガラシ植物が栃木三鷹であることを特徴とするトウガラシ植物の作出方法。 - 前記成熟期に果実離脱性を有するトウガラシ植物がPiquin(ピキン)である、請求項4に記載のトウガラシ植物の作出方法。
- 受領番号FERM AP−22305であるトウガラシ植物の種子。
- 請求項6に記載の種子から生育されたことを特徴とするトウガラシ植物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016033554A JP6894061B2 (ja) | 2016-02-24 | 2016-02-24 | 新規トウガラシ植物、該トウガラシ植物から得られた果実及び種子、並びにトウガラシ植物の作出方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016033554A JP6894061B2 (ja) | 2016-02-24 | 2016-02-24 | 新規トウガラシ植物、該トウガラシ植物から得られた果実及び種子、並びにトウガラシ植物の作出方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2017147975A JP2017147975A (ja) | 2017-08-31 |
JP6894061B2 true JP6894061B2 (ja) | 2021-06-23 |
Family
ID=59740074
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2016033554A Active JP6894061B2 (ja) | 2016-02-24 | 2016-02-24 | 新規トウガラシ植物、該トウガラシ植物から得られた果実及び種子、並びにトウガラシ植物の作出方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6894061B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP3772910A1 (en) | 2018-03-29 | 2021-02-17 | The Regents of the University of California | Improved pepper plants |
Family Cites Families (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011130697A (ja) * | 2009-12-24 | 2011-07-07 | Kagome Co Ltd | ジョイントレス形質を有するトマトの作出方法 |
-
2016
- 2016-02-24 JP JP2016033554A patent/JP6894061B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2017147975A (ja) | 2017-08-31 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP6140079B2 (ja) | 二重目的の授粉種スイカ | |
CN107278872B (zh) | 在不存在受精的情况下的果实形成 | |
Vroh Bi et al. | Development of high-gossypol cotton plants with low-gossypol seeds using trispecies bridge crosses and in vitro culture of seed embryos | |
AU2002359848B2 (en) | Method of producing seedless watermelon | |
JP6159345B2 (ja) | 低木成長習性を有する三倍体スイカ植物 | |
Lyrene | Phenotype and fertility of intersectional hybrids between tetraploid highbush blueberry and colchicine-treated Vaccinium stamineum | |
JP6894061B2 (ja) | 新規トウガラシ植物、該トウガラシ植物から得られた果実及び種子、並びにトウガラシ植物の作出方法 | |
AU2016297816B2 (en) | Novel indeterminate helianthus plant | |
KR101556656B1 (ko) | 신품종 딸기 담향 및 이의 육종 방법 | |
US10849303B2 (en) | Fertilisation independent fruit formation in eggplant | |
CN105557506A (zh) | 一种以显性单基因早花材料进行烟草快速聚合育种的方法 | |
US20120324783A1 (en) | Jatropha hybrids through female only trait | |
US9974259B2 (en) | Cotton variety FM 1900GLT | |
US20110271395A1 (en) | Cotton variety fm 1773llb2 | |
US9655314B2 (en) | Cotton variety FM 2334GLT | |
EP2510780A1 (en) | Novel squash plant for protected culture | |
US20190174696A1 (en) | Cotton variety fm 1953gltp | |
WO2006002170A2 (en) | Resistance to verticillium 2 in tomato |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20160407 |
|
RD03 | Notification of appointment of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423 Effective date: 20190208 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20190220 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20190208 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20190222 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20200218 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20200413 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20200923 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20201124 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20210224 |
|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711 Effective date: 20210324 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20210324 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20210324 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 6894061 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |