JP6885431B2 - 蒸着マスクの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、蒸着マスクの製造方法に関する。
従来、有機EL素子の製造において、有機EL素子の有機層或いはカソード電極の形成には、例えば、蒸着すべき領域に多数の微細なスリットを微小間隔で平行に配列してなる金属から構成される蒸着マスクが使用されていた。この蒸着マスクを用いる場合、蒸着すべき基板表面に蒸着マスクを載置し、裏面から磁石を用いて保持させているが、スリットの剛性は極めて小さいことから、蒸着マスクを基板表面に保持する際にスリットにゆがみが生じやすく、高精細化或いはスリット長さが大となる製品の大型化の障害となっていた。
スリットのゆがみを防止するための蒸着マスクについては、種々の検討がなされており、例えば、特許文献1には、複数の開口部を備えた第一金属マスクを兼ねるベースプレートと、前記開口部を覆う領域に多数の微細なスリットを備えた第二金属マスクと、第二金属マスクをスリットの長手方向に引っ張った状態でベースプレート上に位置させるマスク引張保持手段を備えた蒸着マスクが提案されている。すなわち、2種の金属マスクを組合せた蒸着マスクが提案されている。この蒸着マスクによれば、スリットにゆがみを生じさせることなくスリット精度を確保できるとされている。
ところで近時、有機EL素子を用いた製品の大型化或いは基板サイズの大型化にともない、蒸着マスクに対しても大型化の要請が高まりつつあり、金属から構成される蒸着マスクの製造に用いられる金属板も大型化している。しかしながら、現在の金属加工技術では、大型の金属板にスリットを精度よく形成することは困難であり、たとえ上記特許文献1に提案されている方法などによってスリット部のゆがみを防止できたとしても、スリットの高精細化への対応はできない。また、金属のみからなる蒸着マスクとした場合には、大型化に伴いその質量も増大し、フレームを含めた総質量も増大することから取り扱いに支障をきたすこととなる。
特開2003−332057号公報
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、大型化した場合でも高精細化と軽量化の双方を満たすことができる蒸着マスクの製造方法を提供すること、及び当該蒸着マスクの製造方法で用いられる金属マスク付き樹脂層、並びに有機半導体を精度よく製造することができる有機半導体素子の製造方法を提供することを主たる課題とする。
上記課題を解決するための本発明は、金属開口部を有する金属層と、前記金属開口部と重なる位置に蒸着作製するパターンに対応した樹脂開口部が形成された樹脂マスクとが積層された蒸着マスクの製造方法であって、樹脂層の一方の面に、金属開口部を有する金属層が設けられた金属層付き樹脂層を準備する工程と、前記金属層側からレーザー光を照射し、前記樹脂層に蒸着作製するパターンに対応する樹脂開口部を形成する工程と、を含み、前記樹脂層の厚みが4μm以上8μm以下であり、前記樹脂開口部を形成する工程では、前記金属層付き樹脂層における前記樹脂層の他方の面に液体を接触させた状態で、前記金属層側からレーザー光を照射する。
また、一実施形態の蒸着マスクの製造方法は、スリットが形成された金属マスクと、前記スリットと重なる位置に蒸着作製するパターンに対応した開口部が形成された樹脂マスクとが積層された蒸着マスクの製造方法であって、樹脂層の一方の面に、スリットが形成された金属マスクが設けられた金属マスク付き樹脂層を準備する工程と、前記金属マスク側からレーザー光を照射し、前記樹脂層に蒸着作製するパターンに対応する開口部を形成する工程と、を備え、前記開口部を形成する工程では、前記金属マスク付き樹脂層における前記樹脂層の他方の面、及び前記スリットによって露出している前記金属マスク付き樹脂層における前記樹脂層の前記一方の面に液体を接触させた状態で、前記金属マスク側からレーザー光が照射されることを特徴とする。
また、上記発明において、前記液体として、粘度が0.1mPa・s以上10mPa・s以下の液体が用いられてもよい。
また、上記課題を解決するための本発明は、有機半導体素子の製造方法であって、上記特徴を有する製造方法で製造された蒸着マスクが用いられることを特徴とする。
本発明の蒸着マスクの製造方法によれば、大型化した場合でも高精細化と軽量化の双方を満たすことができる蒸着マスクを歩留まり良く製造することができる。また、本発明の有機半導体素子の製造方法によれば、有機半導体素子を精度よく製造することができる。
本発明の蒸着マスクの製造方法の一例を説明するための工程図である。 開口部を形成する工程の一例を示す概略断面図である。 金属マスク付き樹脂層の形成方法の一例を説明するための工程図である。 バリやカスを示す開口部近傍の部分拡大図である。 (a)は、本発明の製造方法で製造された蒸着マスクの金属マスク側から見た正面図である。(b)は、本発明の製造方法で製造された蒸着マスクの概略断面図である。 (a)、(b)は、本発明の製造方法で製造された蒸着マスクの金属マスク側から見た正面図である。 シャドウと、金属マスクの厚みとの関係を示す概略断面図である。 金属マスクのスリットと、樹脂マスクの開口部との関係を示す部分概略断面図である。 金属マスクのスリットと、樹脂マスクの開口部との関係を示す部分概略断面図である。
以下に、本発明の蒸着マスクの製造方法について図1を用いて具体的に説明する。本発明の蒸着マスクの製造方法は、スリットが形成された金属マスクと、前記スリットと重なる位置に蒸着作製するパターンに対応した開口部が形成された樹脂マスクとが積層された蒸着マスクの製造方法であって、樹脂層の一方の面に、スリットが形成された金属マスクが設けられた金属マスク付き樹脂層を準備する工程と、前記金属マスク側からレーザー光を照射し、前記樹脂層に蒸着作製するパターンに対応する開口部を形成する工程と、を備える。以下、本発明の蒸着マスクの製造方法における各工程について説明する。なお、以下の説明にあっては、まずは工程を中心に説明し、材質等についての説明は、当該製造方法によって製造される蒸着マスクを説明する際に併せて行うこととする。
図1は、本発明の蒸着マスクの製造方法の一実施形態を説明するための工程図である。なお(a)〜(d)はすべて断面図である。
(金属マスク付き樹脂層を準備する工程)
本工程は、図1(a)に示すように、樹脂層20の一方の面に、スリット15が形成された金属マスク10が設けられた金属マスク付き樹脂層60を準備する工程である。金属マスク付き樹脂層60は、予めスリット15が形成されている金属マスク10と、樹脂層20とを従来公知の方法、例えば、接着剤等を用いて貼り合せたものを用いてもよく、金属板上に樹脂層20を形成した後に、当該金属板のみを貫通するスリット15を形成することで得られる金属マスク付き樹脂層60を用いてもよい。
図3(a)〜(c)は、金属マスク付き樹脂層60の形成方法の一例を示す概略断面図であり、金属板11上に樹脂層20を形成した後に、当該金属板11にスリット15を形成する方法の一例である。金属板11上に樹脂層20を形成する方法としては、樹脂層20の材料となる樹脂を適当な溶媒に分散、或いは溶解した塗工液を、従来公知の塗工方法で塗工、乾燥する方法等を挙げることができる。また、金属板11上に接着層等を介して樹脂層20を貼り合せてもよい。当該方法では、図3(a)に示すように、金属板11上に樹脂層20を設けた後に、金属板11の表面にレジスト材62を塗工し、スリットパターンが形成されたマスク63を用いて当該レジスト材をマスキングし、露光、現像する。これにより、図3(b)に示すように、金属板11の表面にレジストパターン64を形成する。そして、当該レジストパターン64を耐エッチングマスクとして用いて、金属板11のみをエッチング加工し、エッチング終了後に前記レジストパターンを洗浄除去する。これにより、図3(c)に示すように、金属板11のみにスリット15が形成された金属マスク10(金属マスク付き樹脂層60)を得ることができる。
レジスト材のマスキング方法について特に限定はなく、図3(a)に示すように金属板11の樹脂層20と接しない面側にのみレジスト材62を塗工してもよく、樹脂層20と金属板11のそれぞれの表面にレジスト材62を塗工してもよい(図示しない)。また、金属板11の樹脂層20と接しない面、或いは樹脂層20と金属板11のそれぞれの表面にドライフィルムレジストを貼り合せるドライフィルム法を用いることもできる。レジスト材62の塗工法について特に限定はなく、金属板11の樹脂層20と接しない面側にのみレジスト材62を塗工する場合には、スピンコート法や、スプレーコート法を用いることができる。一方、樹脂層20と金属板11とを積層したものが長尺シート状である場合には、ロール・ツー・ロール方式でレジスト材を塗工することができるディップコート法等を用いることが好ましい。なお、ディップコート法では、樹脂層20と金属板11のそれぞれの表面にレジスト材62が塗工されることとなる。
レジスト材としては処理性が良く、所望の解像性があるものを用いることが好ましい。また、エッチング加工の際に用いるエッチング材については、特に限定されることはなく、公知のエッチング材を適宜選択すればよい。
金属板11のエッチング法について特に限定はなく、例えば、エッチング材を噴射ノズルから所定の噴霧圧力で噴霧するスプレーエッチング法、エッチング材が充填されたエッチング液中に浸漬エッチング法、エッチング材を滴下するスピンエッチング法等のウェットエッチング法や、ガス、プラズマ等を利用したドライエッチング法を用いることができる。
(金属マスク付き樹脂層をフレームに固定する工程)
本発明の製造方法は、図1(b)に示すように、開口部25を形成する前の工程で、金属マスク付き樹脂層60をフレーム40に固定する工程を備えていてもよい。本工程は、本発明の蒸着マスクの製造方法における任意の工程であるが、レーザー光を照射して、樹脂層20に開口部25を形成する前の段階で、金属マスク付き樹脂層60を予めフレームに固定しておくことで、本発明の蒸着マスク100をフレームに固定する際に生じる取り付け誤差をゼロにすることができる。なお、従来公知の方法では、開口が決定された金属マスクをフレームに対して引っ張りながら固定するために、開口位置座標精度は低下する。なお、図1(b)では、フレーム40の側面において金属マスク付き樹脂層60が固定されている構成をとっているが、図2(a)に示すように、フレーム40の底面において金属マスク付き樹脂層60と固定させることもできる。フレームと金属マスク付き樹脂層60との固定は、例えば、溶接等によって行うことができる。
(開口部を形成する工程)
本工程では、金属マスク付き樹脂層60を加工ステージ上に載置した後に、金属マスク10側からスリット15を通してレーザー光を照射し、当該スリット15と重なる位置に蒸着作製するパターンに対応した開口部25を樹脂層20に形成する工程である。そして、樹脂層20に開口部25を形成した後に、当該開口部25が形成された樹脂層を含む金属マスク付き樹脂層を、加工ステージから取り外すことで、図1(d)に示すように、金属マスク10と、当該金属マスク10のスリット15と重なる位置に、蒸着作製するパターンに対応した開口部が形成された樹脂マスク21とが積層された蒸着マスクが得られる。
ここで、本発明の製造方法では、開口部25を形成する工程において、図1(c)に示すように金属マスク付き樹脂層60における樹脂層20の他方の面、換言すれば、樹脂層20の金属マスク10と接しない側の面(以下、単に樹脂層20の他方の面という)を液体と接触させた状態で、樹脂層20にレーザー光が照射して、当該樹脂層20に開口部25を形成している点を特徴とする。
本工程においては、加工ステージ上に金属マスク付き樹脂層60を載置した状態で、金属マスク10側からレーザー光を照射し、このレーザー光によって樹脂層20を分解することで開口部25が形成される。
加工ステージ上に金属マスク付き樹脂層60を載置した時に、加工ステージと金属マスク付き樹脂層60とを十分に密着させることは困難であり、加工ステージと、金属マスク付き樹脂層60との間に隙間が存在することとなる。加工ステージと金属マスク付き樹脂層60との間に存在する隙間は、樹脂層20にレーザー光を照射して、開口部25を形成する際のフォーカスボケを引き起こす要因となる。このフォーカスボケは、開口部25を形成する樹脂層20の分解に影響を及ぼし、フォーカスボケによって樹脂層の分解が十分に行われない場合には、開口部25のエッジ部にバリが残る場合や、分解しきれなかった樹脂層がカスとして残る場合が生じうる。なお、加工ステージと、金属マスク付き樹脂層60との密着性を向上させるためには、各種の吸着方法、例えば、静電吸着、真空吸着、磁石で吸着する方法を用いることができる。しかしながら、これらの吸着方法では、金属マスク付き樹脂層の平滑性が低下する場合や、レーザー光を照射することで、吸着部がダメージを受けてしまう点、或いは部分(微視)的には樹脂層と完全に密着していない部分が発生してしまい好ましくない。
樹脂層20の分解が不十分なことに起因して発生するバリやカスは、図4(a)に示すように開口部25の内周側に向かって突出する、及び/又は、図4(b)に示すように樹脂マスク21の金属マスク10と接しない側の表面に付着する。図4(a)に示すようなバリやカスが発生した場合には、製造された蒸着マスクを用いて、蒸着対象物に蒸着パターンの形成を行う際に、バリやカスが蒸着源から放出された蒸着材料を遮断してしまい、蒸着対象物に不十分なパターンが形成されてしまう、いわゆるパターン欠陥を引き起こす要因となる。また、蒸着マスクを用いて、蒸着対象物に精度良いパターン蒸着を行うためには、蒸着マスクと蒸着対象物とが十分に密着していることが必要とされるものの、図4(b)に示すようにバリやカスが発生した場合には、蒸着マスクと蒸着対象物との間で密着不良が発生し、画素ボケ等が発生する要因となる。
本発明では、樹脂層20の他方の面を液体と接触させた状態でレーザー光の照射が行われることから、加工ステージと、樹脂層20の他方の面とを液体を介して間接的に密着した状態とすることができる。これにより、フォーカスボケを防止することができ、その結果、バリやカスの発生を防止することができる。
また、本発明の製造方法では、樹脂層20の他方の面を液体と接触させた状態でレーザー光の照射が行われることから、レーザー光照射時に、樹脂層20を均熱化することができ、熱による樹脂層20の変形を防止することができる。具体的には、開口部25の形成に際し、レーザー光が照射された部分に位置する樹脂層20は、レーザー光が照射されていない部分に位置する樹脂層20よりも高温部分となり、樹脂層20の部分的な温度変化によって、樹脂層20に歪や変形等が生ずる場合が起こり得るが、樹脂層20の他方の面を液体と接触させることで、樹脂層全体としての均熱化を図ることができる。なお、レーザー光の照射によって樹脂層が変形した場合には、当該樹脂層20に形成される開口部25の寸法精度が低下することとなる。
樹脂層20の他方の面と、液体との接触方法について特に限定はないが、図1(c)に示すように、加工ステージと樹脂層20の他方の面との隙間を、液体で充填するように接触させる方法を挙げることができる。図1(c)に示す方法では、樹脂層20の他方の面のみが液体と接触しているが、図2(b)に示すように、液中に樹脂層20全体を浸漬させて、樹脂層の両面を液体と接触させることもできる。図2(b)に示す形態によれば、さらなる均熱化の向上が見込まれる。また、図示しないが、図2(a)に示す構成において、樹脂層の両面を液体と接触させることもできる。
また、樹脂層20の他方の面を液体と接触させている本発明の製造方法によれば、樹脂層20に開口部25を形成する際に、不純物等が発生した場合であっても、液体とともに、当該不純物を除去することができる。
また、上記で説明したように、蒸着マスク100とフレームとの位置合わせ精度を向上させるべく、開口部25を形成する前の段階で、金属マスク付き樹脂層60をフレーム40に固定した場合には、フレーム40と金属マスク付き樹脂層60との固定態様によっては、加工ステージと樹脂層20の他方の面との間には、より大きな隙間が生ずることとなるが、加工ステージと樹脂層20の他方の面との間に液体を介在させることで、隙間を充填することができ、加工ステージと樹脂層20の他方の面との隙間の大小にかかわらず、また、金属マスク付き樹脂層60における樹脂層20の加工ステージと対向する面の表面状態にかかわらず、フォーカスボケを防止することができる。したがって、本発明の製造方法は、フレーム40に金属マスク付き樹脂層60を固定した状態で、開口部25を形成する場合に、特に好適である。
樹脂層20の他方の面と接触する液体について特に限定はないが、少なくとも樹脂層20を溶解させない液体であることが必要である。本発明の製造方法では、樹脂層20の他方の面と接触する液体として、粘度が、0.1mPa・s以上10mPa・s以下の液体を好適に用いることができる。当該粘度の液体を用いることで、樹脂層20の他方の面の表面に微視的な凸凹やうねりがあっても、当該微視的な凹凸やうねりに追従するように液体を接触させることができる。換言すれば、樹脂層20の他方の面の表面を液体によって、空隙なく覆うことができる。上記粘度の液体の一例としては、水を挙げることができるが、粘度が上記範囲内の水以外の液体を用いることもできる。また、ここで説明する液体の粘度はAnton Paar製Physica MCR301により測定される粘度である。
本工程で用いられるレーザー装置については特に限定されることはなく、従来公知のレーザー装置を用いればよい。また、本願明細書において蒸着作製するパターンとは、当該蒸着マスクを用いて作製しようとするパターンを意味し、例えば、当該蒸着マスクを有機EL素子の有機層の形成に用いる場合には、当該有機層の形状である。
また、金属マスク付き樹脂層60の金属マスク10側からレーザー光を照射して樹脂層20に開口部25を形成するに際し、蒸着作製するパターン、すなわち形成すべき開口部25に対応するパターンが予め設けられた基準板を準備し、この基準板を、樹脂層20の他方の面と貼り合せた状態で、金属マスク10側から、基準板のパターンに対応するレーザー照射を行ってもよい。この方法によれば、基準板のパターンを見ながらレーザー照射を行う、いわゆる向こう合わせの状態で、樹脂層20に開口部25を形成することができ、開口の寸法精度が極めて高い高精細な開口部25を有する樹脂マスク21を形成することができる。また、この方法は、フレームに固定された状態で開口部25の形成が行われることから、寸法精度のみならず、位置精度にも優れた蒸着マスクとすることができる。
なお、上記方法を用いる場合には、金属マスク10側から、樹脂層20を介して基準板のパターンをレーザー照射装置等で認識することができることが必要である。樹脂層20としては、ある程度の厚みを有する場合には透明性を有するものを用いることが必要となるが、後述するようにシャドウの影響を考慮した好ましい厚み、例えば、3μm〜25μm程度の厚みとする場合には、着色された樹脂層であっても、基準板のパターンを認識させることができる。
樹脂層20の他方の面と、基準板との貼り合せ方法についても特に限定はなく、例えば、金属マスク付き樹脂層60の金属マスク10が磁性体である場合には、基準板の後方に磁石等を配置し金属マスク10と基準板とを引きつけることで、金属マスク付き樹脂層60と基準板とを貼り合せることができる。これ以外に、静電吸着法等を用いて貼り合せることもできる。基準板としては、例えば、所定のパターンを有するTFT基板や、フォトマスク等を挙げることができる。
以上説明した本発明の製造方法によれば、大型化した場合でも高精細化と軽量化の双方を満たすことができる蒸着マスクを歩留まり良く製造することができる。
具体的には、本発明の製造方法では、最終的に樹脂マスク21と金属マスク10が積層された蒸着マスク100が製造される。ここで、本発明の製造方法によって製造される蒸着マスク100の質量と、従来公知の金属のみから構成される蒸着マスクの質量とを、蒸着マスク全体の厚みが同一であると仮定して比較すると、従来公知の蒸着マスクの金属材料の一部を樹脂材料に置き換えた分だけ、本発明の蒸着マスク100の質量は軽くなる。また、金属のみから構成される蒸着マスクを用いて、軽量化を図るためには、当該蒸着マスクの厚みを薄くする必要などがあるが、蒸着マスクの厚みを薄くした場合には、蒸着マスクを大型化した際に、蒸着マスクに歪みが発生する場合や、耐久性が低下する場合が起こる。一方、本発明の製造方法によって製造された蒸着マスクによれば、大型化したときの歪みや、耐久性を満足させるべく、蒸着マスク全体の厚みを厚くしていった場合であっても、樹脂マスク21の存在によって、金属のみから形成される蒸着マスクよりも軽量化を図ることができる。
また、本発明の製造方法では、上記で説明したように、金属材料と比較して、高精細な開口の形成が可能な樹脂層20にレーザー光を照射して開口部25が形成されることから、高精細な開口部25とすることができる。また、開口部25の形成は、樹脂層20の他方の面を液体と接触させた状態で行われることから、高精細な開口部25をバリやカスの発生なく形成することができる。これにより、本発明の製造方法で製造された蒸着マスク100を用いて蒸着対象物にパターン形成を行う際に、高精細なパターンを、蒸着対象物に歩留まりよく形成することができる。
(スリミング工程)
また、本発明の製造方法においては、上記で説明した工程間、或いは工程後にスリミング工程を行ってもよい。当該工程は、本発明の製造方法における任意の工程であり、金属マスク10の厚みや、樹脂マスク21の厚みを最適化する工程である。金属マスク10や樹脂マスク21の好ましい厚みとしては、後述する好ましい範囲内で適宜設定すればよく、ここでの詳細な説明は省略する。
たとえば、金属マスク付き樹脂層60として、ある程度の厚みを有するものを用いた場合には、製造工程中において、金属マスク付き樹脂層60を搬送する際に優れた耐久性や搬送性を付与することができる。一方で、シャドウの発生等を防止するためには、本発明の製造方法で得られる蒸着マスク100の厚みは最適な厚みであることが好ましい。スリミング工程は、製造工程間、或いは工程後において耐久性や搬送性を満足させつつ、蒸着マスク100の厚みを最適化する場合に有用な工程である。
金属マスク10のスリミング、すなわち金属マスクの厚みの最適化は、上記で説明した工程間、或いは工程後に、金属マスク10の樹脂層20又は樹脂マスク21と接しない側の面を、金属マスク10をエッチング可能なエッチング材を用いてエッチングすることで実現可能である。
樹脂マスク21となる樹脂層20や樹脂マスク21のスリミング、すなわち、樹脂層20、樹脂マスク21の厚みの最適化についても同様であり、上記で説明した何れかの工程間、或いは工程後に、樹脂層20の金属マスク10と接しない側の面、或いは樹脂マスク21の金属マスク10と接しない側の面を、樹脂層20や樹脂マスク21の材料をエッチング可能なエッチング材を用いてエッチングすることで実現可能である。また、蒸着マスク100を形成した後に、金属マスク10、樹脂マスク21の双方をエッチング加工することで、双方の厚みを最適化することもできる。
スリミング工程において、樹脂層20、或いは樹脂マスク21をエッチングするためのエッチング材については、樹脂層20や樹脂マスク21の樹脂材料に応じて適宜設定すればよく、特に限定はない。例えば、樹脂層20や樹脂マスク21の樹脂材料としてポリイミド樹脂を用いる場合には、エッチング材として、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを溶解させたアルカリ水溶液、ヒドラジン等を用いることができる。エッチング材は市販品をそのまま使用することもでき、ポリイミド樹脂のエッチング材としては、東レエンジニアリング(株)製のTPE3000などが使用可能である。
(本発明の製造方法で製造した蒸着マスク)
図5(a)は、本発明の製造方法で製造した蒸着マスクの金属マスク側から見た正面図であり、図5(b)は、本発明の製造方法で製造した蒸着マスク100の拡大断面図である。なお、この図は、金属マスクの設けられたスリットおよび蒸着マスクに設けられた開口部を強調するため、全体に対する比率を大きく記載してある。
図5に示すように、本発明の製造方法で製造された蒸着マスク100は、スリット15が設けられた金属マスク10と、金属マスク10の表面(図5(b)に示す場合にあっては、金属マスク10の下面)に位置し、蒸着作製するパターンに対応した開口部25が縦横に複数列配置された樹脂マスク21が積層された構成をとる。以下、それぞれについて具体的に説明する。
(樹脂マスク)
樹脂マスク21は、樹脂から構成され、図5に示すように、スリット15と重なる位置に蒸着作製するパターンに対応した開口部25が縦横に複数列配置されている。また、本発明では、開口部が縦横に複数列配置された例を挙げて説明をしているが、開口部25は、スリットと重なる位置に設けられていればよく、スリット15が、縦方向、或いは横方向に1列のみ配置されている場合には、当該1列のスリット15と重なる位置に開口部25が設けられていればよい。
樹脂マスク21は、従来公知の樹脂材料を適宜選択して用いることができ、その材料について特に限定されないが、レーザー加工等によって高精細な開口部25の形成が可能であり、熱や経時での寸法変化率や吸湿率が小さく、軽量な材料を用いることが好ましい。このような材料としては、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、セロファン、アイオノマー樹脂等を挙げることができる。上記に例示した材料の中でも、その熱膨張係数が16ppm/℃以下である樹脂材料が好ましく、吸湿率が1.0%以下である樹脂材料が好ましく、この双方の条件を備える樹脂材料が特に好ましい。したがって、図1における樹脂層20は、将来的には当該樹脂マスク21となるため、例えば、上記に例示した好ましい樹脂材料から構成される樹脂層を用いることが好ましい。
樹脂マスク21の厚みについても特に限定はないが、本発明の蒸着マスクを用いて蒸着を行ったときに、蒸着作成するパターンに不充分な蒸着部分、つまり目的とする蒸着膜厚よりも薄い膜厚となる蒸着部分、所謂シャドウが生じることを防止するためには、樹脂マスク21は可能な限り薄いことが好ましい。しかしながら、樹脂マスク21の厚みが3μm未満である場合には、ピンホール等の欠陥が生じやすく、また変形等のリスクが高まる。一方で、25μmを超えるとシャドウの発生が生じ得る。この点を考慮すると樹脂マスク21の厚みは3μm以上25μm以下であることが好ましい。樹脂マスク21の厚みをこの範囲内とすることで、ピンホール等の欠陥や変形等のリスクを低減でき、かつシャドウの発生を効果的に防止することができる。特に、樹脂マスク21の厚みを、3μm以上10μm以下、より好ましくは4μm以上8μm以下とすることで、300ppiを超える高精細パターンを形成する際のシャドウの影響をより効果的に防止することができる。したがって、図1における樹脂層20は、将来的には当該樹脂マスク21となるため、上記の厚さとすることが好ましい。なお、樹脂層20は、金属マスク10に対して、粘着剤層や接着剤層を介して接合されていてもよく、樹脂層20と金属板とが直接接合されていてもよいが、粘着剤層や接着剤層を介して樹脂層と金属マスク10とを接合する場合には、上記シャドウの点を考慮して、樹脂層20と粘着剤層或いは樹脂層20と接着剤層との合計の厚みが3μm以上25μm以下の範囲内となるように設定することが好ましい。
開口部25の形状、大きさについて特に限定はなく、蒸着作製するパターンに対応する形状、大きさであればよい。また、図5(a)に示すように、隣接する開口部25の横方向のピッチP1や、縦方向のピッチP2についても蒸着作製するパターンに応じて適宜設定することができる。したがって、図1においてレーザー照射により開口部を形成する際には、上記ピッチP1、P2を適宜設計すればよい。
開口部25を設ける位置や、開口部25の数についても特に限定はなく、スリット15と重なる位置に1つ設けられていてもよく、縦方向、或いは横方向に複数設けられていてもよい。例えば、図6(a)に示すように、スリットが縦方向に延びる場合に、当該スリット15と重なる開口部25が、横方向に2つ以上設けられていてもよい。
開口部25の断面形状についても特に限定はなく、開口部25を形成する樹脂マスクの向かいあう端面同士が略平行であってもよいが、図5(b)に示すように、開口部25はその断面形状が、蒸着源に向かって広がりをもつような形状であることが好ましい。換言すれば、金属マスク10側に向かって広がりをもつテーパー面を有していることが好ましい。開口部25の断面形状を当該構成とすることにより、本発明の蒸着マスクを用いて蒸着を行ったときに、蒸着作成するパターンにシャドウが生じることを防止することができる。テーパー角θについては、樹脂マスク21の厚み等を考慮して適宜設定することができるが、樹脂マスクの開口部における下底先端と同じく樹脂マスクの開口部における上底先端を結んだ角度が25°〜65°の範囲内であることが好ましい。特には、この範囲内の中でも、使用する蒸着機の蒸着角度よりも小さい角度であることが好ましい。さらに、図1にあっては、開口部25を形成する端面25aは直線形状を呈しているが、これに限定されることはなく、外に凸の湾曲形状となっている、つまり開口部25の全体の形状がお椀形状となっていてもよい。このような断面形状を有する開口部25は、開口部25の形成時における、レーザーの照射位置や、レーザーの照射エネルギーを適宜調整する、或いは照射位置を段階的に変化させる多段階のレーザー照射を行うことで形成可能である。
また、本発明では、蒸着マスク100の構成として樹脂マスク21が用いられることから、この蒸着マスク100を用いて蒸着を行ったときに、樹脂マスク21の開口部25には非常に高い熱が加わり、樹脂マスク21の開口部25を形成する端面25a(図5参照)から、ガスが発生し、蒸着装置内の真空度を低下させる等のおそれが生じ得る。したがって、この点を考慮すると、図5(b)に示すように、樹脂マスク21の開口部25を形成する端面25aには、バリア層26が設けられていることが好ましい。バリア層26を形成することで、樹脂マスク21の開口部25を形成する端面25aからガスが発生することを防止できる。
バリア層26は、無機酸化物や無機窒化物、金属の薄膜層または蒸着層を用いることができる。無機酸化物としては、アルミニウムやケイ素、インジウム、スズ、マグネシウムの酸化物を用いることができ、金属としてはアルミニウム等を用いることができる。バリア層26の厚みは、0.05μm〜1μm程度であることが好ましい。したがって、図1で説明した本発明の製造方法にあっては、蒸着マスク100を得た後で、上記のようなバリア層26を形成する工程を行ってもよい。
さらに、バリア層は、樹脂マスク21の蒸着源側表面を覆っていることが好ましい。樹脂マスク21の蒸着源側表面をバリア層26で覆うことによりバリア性が更に向上する。バリア層は、無機酸化物、および無機窒化物の場合は各種PVD法、CVD法によって形成することが好ましい。金属の場合は、真空蒸着法によって形成することが好ましい。なお、ここでいうところの樹脂マスク21の蒸着源側表面とは、樹脂マスク21の蒸着源側の表面の全体であってもよく、樹脂マスク21の蒸着源側の表面において金属マスクから露出している部分のみであってもよい。
(金属マスク)
金属マスク10は、金属から構成され、該金属マスク10の正面からみたときに、開口部25と重なる位置、換言すれば、樹脂マスク21に配置された全ての開口部25がみえる位置に、縦方向或いは横方向に延びるスリット15が複数列配置されている。なお、図5では、金属マスク10の縦方向に延びるスリット15が横方向に連続して配置されている。また、本発明では、スリット15が縦方向、或いは横方向に延びるスリット15が複数列配置された例を挙げて説明をしているが、スリット15は、縦方向、或いは横方向に1列のみ配置されていてもよい。
スリット15の幅Wについて特に限定はないが、少なくとも隣接する開口部25間のピッチよりも短くなるように設計することが好ましい。具体的には、図5(a)に示すように、スリット15が縦方向に延びる場合には、スリット15の横方向の幅Wは、横方向に隣接する開口部25のピッチP1よりも短くすることが好ましい。同様に、図示はしないが、スリット15が横方向に伸びている場合には、スリット15の縦方向の幅は、縦方向に隣接する開口部25のピッチP2よりも短くすることが好ましい。一方で、スリット15が縦方向に延びる場合の縦方向の長さLについては、特に限定されることはなく、金属マスク10の縦の長さおよび樹脂マスク21に設けられている開口部25の位置に応じて適宜設計すればよい。したがって、図1で説明した本発明の製造方法にあっては、金属板をエッチングする際に前記のように設計することが好ましい。
また、縦方向、或いは横方向に連続して延びるスリット15が、図6(b)に示すようにブリッジ18によって複数に分割されていてもよい。なお、図6(b)は、蒸着マスク100の金属マスク10側から見た正面図であり、図5(a)に示される縦方向に連続して延びる1つのスリット15が、ブリッジ18によって複数(スリット15a、15b)に分割された例を示している。ブリッジ18の幅について特に限定はないが5μm〜20μm程度であることが好ましい。ブリッジ18の幅をこの範囲とすることで、金属マスク10の剛性を効果的に高めることができる。ブリッジ18の配置位置についても特に限定はないが、分割後のスリットが、2つ以上の開口部25と重なるようにブリッジ18が配置されていることが好ましい。
金属マスク10に形成されるスリット15の断面形状についても特に限定されることはないが、上記樹脂マスク21における開口部25と同様、図5(b)に示すように、蒸着源に向かって広がりをもつような形状であることが好ましい。したがって、図1で説明した本発明の製造方法にあっては、金属板をエッチングする際に前記のような断面形状となるようにエッチングをすることが好ましい。
金属マスク10の材料について特に限定はなく、蒸着マスクの分野で従来公知のものを適宜選択して用いることができ、例えば、ステンレス鋼、鉄ニッケル合金、アルミニウム合金などの金属材料を挙げることができる。中でも、鉄ニッケル合金であるインバー材は熱による変形が少ないので好適に用いることができる。
また、本発明の蒸着マスク100を用いて、基板上へ蒸着を行うにあたり、基板後方に磁石等を配置して基板前方の蒸着マスク100を磁力によって引きつけることが必要な場合には、金属マスク10を磁性体で形成することが好ましい。磁性体の金属マスク10としては、純鉄、炭素鋼、W鋼、Cr鋼、Co鋼、KS鋼、MK鋼、NKS鋼、Cunico鋼、Al−Fe合金等を挙げることができる。また、金属マスク10を形成する材料そのものが磁性体でない場合には、当該材料に上記磁性体の粉末を分散させることにより金属マスク10に磁性を付与してもよい。
金属マスク10の厚みについても特に限定はないが、5μm〜100μm程度であることが好ましい。蒸着時におけるシャドウの防止を考慮した場合、金属マスク10の厚さは薄い方が好ましいが、5μmより薄くした場合、破断や変形のリスクが高まるとともにハンドリングが困難となる可能性がある。ただし、本発明では、金属マスク10は樹脂マスク21と一体化されていることから、金属マスク10の厚さが5μmと非常に薄い場合であっても、破断や変形のリスクを低減させることができ、5μm以上であれば使用可能である。なお、100μmより厚くした場合には、シャドウの発生が生じ得るため好ましくない。したがって、図1で説明した本発明の製造方法にあっては、金属マスク付き樹脂層60を準備する際に、これらのことを考慮して準備することが好ましい。
以下、図7(a)〜図7(c)を用いてシャドウの発生と、金属マスク10の厚みとの関係について具体的に説明する。図7(a)に示すように、金属マスク10の厚みが薄い場合には、蒸着源から蒸着対象物に向かって放出される蒸着材は、金属マスク10のスリット15の内壁面や、金属マスク10の樹脂マスク21が設けられていない側の表面に衝突することなく金属マスク10のスリット15、及び樹脂マスク21の開口部25を通過して蒸着対象物へ到達する。これにより、蒸着対象物上へ、均一な膜厚での蒸着パターンの形成が可能となる。つまりシャドウの発生を防止することができる。一方、図7(b)に示すように、金属マスク10の厚みが厚い場合、例えば、金属マスク10の厚みが100μmを超える厚みである場合には、蒸着源から放出された蒸着材の一部は、金属マスク10のスリット15の内壁面や、金属マスク10の樹脂マスク21が形成されていない側の表面に衝突し、蒸着対象物へ到達することができない。蒸着対象物へ到達することができない蒸着材が多くなるほど、蒸着対象物に目的とする蒸着膜厚よりも薄い膜厚となる未蒸着部分が生ずる、シャドウが発生することとなる。
シャドウ発生を十分に防止するには、図7(c)に示すように、スリット15の断面形状を、蒸着源に向かって広がりをもつような形状とすることが好ましい。このような断面形状とすることで、蒸着マスク100に生じうる歪みの防止、或いは耐久性の向上を目的として、蒸着マスク全体の厚みを厚くしていった場合であっても、蒸着源から放出された蒸着材が、スリット15の当該表面や、スリット15の内壁面に衝突等することなく、蒸着材を蒸着対象物へ到達させることができる。より具体的には、金属マスク10のスリット15における下底先端と、同じく金属マスク10のスリット15における上底先端を結んだ直線と金属マスク10の底面とのなす角度が25°〜65°の範囲内であることが好ましい。特には、この範囲内の中でも、使用する蒸着機の蒸着角度よりも小さい角度であることが好ましい。このような断面形状とすることで、蒸着マスク100に生じうる歪みの防止、或いは耐久性の向上を目的として金属マスク10の厚みを比較的厚くした場合であっても、蒸着源から放出された蒸着材が、スリット15の内壁面に衝突等することなく、蒸着材を蒸着対象物へ到達させることができる。これにより、シャドウ発生をより効果的に防止することができる。なお、図7は、シャドウの発生と金属マスク10のスリット15との関係を説明するための部分概略断面図である。なお、図7に示す形態では、金属マスク10のスリット15が蒸着源側に向かって広がりを持つ形状となっており、樹脂マスク21の開口部の向かいあう端面は略平行となっているが、後述するように、シャドウの発生をより効果的に防止するためには、金属マスク10のスリット、及び樹脂マスク21の開口部25は、ともにその断面形状が、蒸着源側に向かって広がりを持つ形状となっていることが好ましい。したがって、本発明の蒸着マスクの製造方法では、金属マスクのスリットや、樹脂マスクの開口部の断面形状が蒸着源側に向かって広がりをもつ形状となるように金属マスク10のスリット15や、樹脂マスク21の開口部25を製造することが好ましい。
図8(a)〜(d)は、金属マスクのスリットと、樹脂マスクの開口部との関係を示す部分概略断面図であり、図示する形態では、金属マスクのスリット15と樹脂マスクの開口部25とにより形成される開口全体の断面形状が階段状を呈している。図8に示すように、開口全体の断面形状を蒸着源側に向かって広がりをもつ階段状とすることでシャドウの発生を効果的に防止することができる。
したがって、本発明の蒸着マスクの製造方法では、金属マスクのスリットと樹脂マスクの開口部25とにより形成される開口全体の断面形状が階段状となるように製造することが好ましい。
金属マスクのスリット15や、樹脂マスク21の断面形状は、図1(d)、図8(a)に示すように、向かいあう端面が略平行となっていてもよいが、図8(b)、(c)に示すように、金属マスクのスリット15、樹脂マスクの開口部の何れか一方のみが、蒸着源側に向かって広がりをもつ断面形状を有しているものであってもよい。なお、上記で説明したように、シャドウの発生をより効果的に防止するためには、金属マスクのスリット15、及び樹脂マスクの開口部25は、図5(b)や、図8(d)に示すように、ともに蒸着源側に向かって広がりをもつ断面形状を有していることが好ましい。
上記階段状となっている断面における平坦部(図8における符号(X))の幅について特に限定はないが、平坦部(X)の幅が1μm未満である場合には、金属マスクのスリットの干渉により、シャドウの発生防止効果が低下する傾向にある。したがって、この点を考慮すると、平坦部(X)の幅は、1μm以上であることが好ましい。好ましい上限値については特に限定はなく、樹脂マスクの開口部の大きさや、隣り合う開口部の間隔等を考慮して適宜設定することができ、一例としては、20μm程度である。
なお、上記図8(a)〜(d)では、スリットが縦方向に延びる場合に、当該スリット15と重なる開口部25が、横方向に1つ設けられた例を示しているが、図9に示すように、スリットが縦方向に延びる場合に、当該スリット15と重なる開口部25が、横方向に2つ以上設けられていてもよい。図9では、金属マスクのスリット15、及び樹脂マスクの開口部25は、ともに蒸着源側に向かって広がりをもつ断面形状を有しており、当該スリット15と重なる開口部25が、横方向に2つ以上設けられていている。
(有機半導体素子の製造方法)
本発明の有機半導体素子の製造方法は、上記で説明した本発明の製造方法で製造された蒸着マスク100を用いて有機半導体素子を形成することを特徴とするものである。蒸着マスク100については、上記で説明した本発明の製造方法で製造された蒸着マスク100をそのまま用いることができ、ここでの詳細な説明は省略する。上記で説明した本発明の蒸着マスクによれば、当該蒸着マスク100が有する寸法精度の高い開口部25によって、高精細なパターンを有する有機半導体素子を形成することができる。本発明の製造方法で製造される有機半導体素子としては、例えば、有機EL素子の有機層、発光層や、カソード電極等を挙げることができる。特に、本発明の有機半導体素子の製造方法は、高精細なパターン精度が要求される有機EL素子のR、G、B発光層の製造に好適に用いることができる。
100…蒸着マスク
10…金属マスク
11…金属板
15…スリット
18…ブリッジ
20…樹脂層
21…樹脂マスク
25…開口部
40…フレーム
60…金属マスク付き樹脂層
62…レジスト材
64…レジストパターン

Claims (1)

  1. 金属開口部を有する金属層と、前記金属開口部と重なる位置に蒸着作製するパターンに対応した樹脂開口部が形成された樹脂マスクとが積層された蒸着マスクの製造方法であって、
    樹脂層の一方の面に、金属開口部を有する金属層が設けられた金属層付き樹脂層を準備する工程と、
    前記金属層側からレーザー光を照射し、前記樹脂層に蒸着作製するパターンに対応する樹脂開口部を形成する工程と、を含み、
    前記樹脂層の厚みが4μm以上8μm以下であり、
    前記樹脂開口部を形成する工程では、前記金属層付き樹脂層における前記樹脂層の他方の面に液体を接触させた状態で、前記金属層側からレーザー光を照射する、蒸着マスクの製造方法。
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