以下、この発明による電子ペンの実施形態を、図を参照しながら説明する。
先ず、実施形態の電子ペンの、機械的な構造の一例を、図2を参照して説明する。
この実施形態の電子ペン100のケース(筐体)101は、軸芯方向に組立結合された第1のケース102と第2のケース103とからなる有底の円筒状形状を備える。第1のケース102の軸芯方向の一端側には、一端109a側がペン先となる棒状の芯体109の、前記一端109a側を外部に突出させるための開口102aが形成されている。ケース101の中空部内には、コイル104と、筆圧検出部105と、コイル104と共に共振回路を構成するキャパシタ106や、例えばIC(Integreted Circuit;集積回路)からなるペン制御回路110などの電子部品が搭載されたプリント基板107とが、軸芯方向に順次に並べられて収納されている。
コイル104は、軸芯方向の貫通孔108aを有する円筒状の磁性体コアの例としてのフェライトコア108に巻回されている。芯体109は、このフェライトコア108とは機構的に結合しないものとして構成されており、当該フェライトコア108の貫通孔108aを貫通するように設けられる。そして、フェライトコア108の、第1のケース102の開口102aとは反対側には、筆圧検出部105が収納されており、芯体109の他端109bが、この筆圧検出部105に嵌合される。芯体109は、印加される筆圧に応じて軸心方向に移動変位する。筆圧検出部105は、その芯体109に生じる移動変位を筆圧として検出する。
この例の筆圧検出部105は、静電容量の変化として筆圧を検出するように構成されている。筆圧検出部105は、例えば特許文献:特開2011−186803号公報に記載されている周知の構成の筆圧検出機構を使用した、筆圧に応じて静電容量が変化する可変容量キャパシタの構成とすることができる。なお、筆圧検出部105としては、これに限らず、例えば、特開2013−161307号公報に開示されているような筆圧に応じて静電容量を可変とする半導体素子を用いた可変容量キャパシタの構成としてもよい。筆圧検出部105は、端子105a及び端子105bにより、プリント基板107のペン制御回路110と電気的に接続されている。
電子ペン100は、コイル104とキャパシタ106とからなる共振回路111により、位置検出装置との間で電磁波の授受を行う。位置検出装置は、電子ペン100と電磁波の授受を行っている導体を検知し、その導体の座標位置として、電子ペン100の芯体109により指示されている位置を検出するようにする。
[電子ペン100の回路構成例及び位置検出装置の回路構成例]
図1は、この実施形態の電子ペン100のプリント基板107に形成されている電子回路の一例を、この電子ペン100と電磁誘導結合による信号授受を行う位置検出装置200の回路構成例と共に示す図である。
電子ペン100は、この実施形態では、位置検出装置200のセンサの導体と電磁誘導結合することにより、位置検出用信号を授受すると共に、筆圧検出部105を通じて検出される筆圧情報などを、位置検出装置200に送信するように構成される。
前述したように、電子ペン100においては、フェライトコア108に巻回されたコイル104に対して、キャパシタ106が並列に接続されて並列共振回路111が構成される。キャパシタ106は、第1のキャパシタを構成する。そして、電子ペン100は、図1に示すように、当該電子ペン100の電子回路の全体を制御する、この例ではICからなるペン制御回路110を備える。
そして、並列共振回路111にて位置検出装置200から電磁結合により受信した交流信号が、キャパシタ113を通じてダイオード115及び116と、整流電圧の蓄電用のキャパシタ117からなる整流回路114に供給されて整流され、キャパシタ117に蓄電される。そして、キャパシタ117の両端間に得られる整流出力電圧が、電圧安定化回路122で安定化され、ペン制御回路110の電源電圧として供給される。整流回路114のキャパシタ117は、第2のキャパシタを構成する。
そして、この実施形態の電子ペン100においては、並列共振回路111に並列に、スイッチ回路112が接続されている。このスイッチ回路112は、ペン制御回路110によりオン・オフ制御されるように構成されている。
また、この実施形態の電子ペン100では、図1に示すように、ペン制御回路110には、筆圧検出部105を構成する可変容量キャパシタ105Cが接続される。この可変容量キャパシタ105Cには、抵抗123が並列に接続されている。この例では、ペン制御回路110は、可変容量キャパシタ105Cを充電した後、抵抗123を通じて放電させ、可変容量キャパシタ105Cが接続されている端子の電圧(可変容量キャパシタ105C両端電圧に相当)が所定閾値になるまでの時間を計測することで、可変容量キャパシタ105Cの静電容量を測定する。
ペン制御回路110は、その測定した可変容量キャパシタ105Cの静電容量の変化から筆圧の変化を検出し、芯体109に筆圧が印加されたかどうかを検出すると共に、筆圧が印加されたことを検出したときには、その筆圧値を可変容量キャパシタ105Cの静電容量の値から算出するようにする。
そして、この実施形態では、ペン制御回路110は、前述したように、算出した筆圧値の情報(筆圧データ)を、当該筆圧データによってスイッチ回路112をオン・オフ制御することで、複数ビットのデジタル信号を、ASK信号あるいはOOK信号として位置検出装置200に送信する。
さらに、この実施形態の電子ペン100においては、整流回路114の蓄電用のキャパシタ117の両端に得られる整流出力電圧が、予め定められた所定の電圧以上になっているか否かを検知する電圧検知回路120が設けられると共に、蓄電用のキャパシタ117と並列に、充電制御回路118とキャパシタ119との直列回路が設けられる。キャパシタ119は、第3のキャパシタを構成するもので、その静電容量C2は、整流回路114のキャパシタ117の静電容量C1よりも大きく、例えば数倍〜数十倍とされている。なお、整流回路114のキャパシタ117の静電容量は、位置検出装置200との電磁結合による信号の授受の際の応答速度を速くすることができるように、比較的小さな値とされている。
充電制御回路118は、図1の例では、スイッチ回路で構成されており、電圧検知回路120からのスイッチング制御信号によりオン、オフ制御されるように構成されている。すなわち、電圧検知回路120は、整流回路114のキャパシタ117の両端に得られる整流出力電圧が、予め定められた所定の電圧Eth以上になっていないときには、スイッチング制御信号により、充電制御回路118を構成するスイッチ回路をオフに制御する。そして、電圧検知回路120は、整流回路114のキャパシタ117の両端に得られる整流出力電圧が、予め定められた所定の電圧以上になったときには、スイッチング制御信号により、充電制御回路118を構成するスイッチ回路をオンに制御する。
ここで、所定の電圧Ethは、電圧安定化回路122で安定化されてペン制御回路110に電源電圧として供給されたときに、ペン制御回路111が、安定して動作するときの電圧値とされる。
充電制御回路118を構成するスイッチ回路がオンとなると、整流回路114のキャパシタ117の両端に得られる整流出力電圧によりキャパシタ119に充電電流が流れて、このキャパシタ119が充電される。
このキャパシタ119が充電されて蓄積された電圧は、電圧安定化回路122に供給されると共に、内部回路121に、電源電圧として供給される。内部回路121は、共振回路111を通じて位置検出装置との電磁結合による信号の授受動作とは無関係の回路で構成することができ、例えば、後述するように、LED(Light Emitting Diode)などの発光素子を駆動する発光駆動回路や、ブルートゥース(登録商標)規格などの無線通信回路等により構成することができる。
一方、位置検出装置200には、図1に示すように、X軸方向ループコイル群211Xと、Y軸方向ループコイル群212Yとが積層されて位置検出コイルが形成されている。各ループコイル群211X,212Yは、例えば、それぞれn本,m本の矩形のループコイルからなっている。各ループコイル群211X,212Yを構成する各ループコイルは、等間隔に並んで順次重なり合うように配置されている。
また、位置検出装置200には、X軸方向ループコイル群211X及びY軸方向ループコイル群212Yが接続される選択回路213が設けられている。この選択回路213は、2つのループコイル群211X,212Yのうちの一のループコイルを順次選択する。
さらに、位置検出装置200には、発振器221と、電流ドライバ222と、切り替え接続回路223と、受信アンプ224と、検波器225と、ローパスフィルタ226と、サンプルホールド回路227と、A/D変換回路228と、処理制御部229とが設けられている。処理制御部229は、例えばマイクロコンピュータにより構成されている。
発振器221は、周波数f0の交流信号を発生する。電子ペン100の共振回路111の共振周波数は、この周波数f0を中心周波数とするように選定されている。そして、発振器221で発生した交流信号は電流ドライバ222に供給される。電流ドライバ222は、発振器221から供給された交流信号を電流に変換して切り替え接続回路223へ送出する。切り替え接続回路223は、処理制御部229からの制御により、選択回路213によって選択されたループコイルが接続される接続先(送信側端子T、受信側端子R)を切り替える。この接続先のうち、送信側端子Tには電流ドライバ222が、受信側端子Rには受信アンプ224が、それぞれ接続されている。
選択回路213により選択されたループコイルに発生する誘導電圧は、選択回路213及び切り替え接続回路223を介して受信アンプ224に送られる。受信アンプ224は、ループコイルから供給された誘導電圧を増幅し、検波器225へ送出する。
検波器225は、ループコイルに発生した誘導電圧、すなわち受信信号を検波し、ローパスフィルタ226へ送出する。ローパスフィルタ226は、前述した周波数f0より充分低い遮断周波数を有しており、検波器225の出力信号を直流信号に変換してサンプルホールド回路227へ送出する。サンプルホールド回路227は、ローパスフィルタ226の出力信号の所定のタイミング、具体的には受信期間中の所定のタイミングにおける電圧値を保持し、A/D(Analog to Digital)変換回路228へ送出する。A/D変換回路228は、サンプルホールド回路227のアナログ出力をデジタル信号に変換し、処理制御部229に出力する。
処理制御部229は、選択回路213におけるループコイルの選択、切り替え接続回路223の切り替え、サンプルホールド回路227のタイミングを制御する。処理制御部229は、A/D変換回路228からの入力信号に基づき、X軸方向ループコイル群211X及びY軸方向ループコイル群212Yから一定の送信継続時間をもって電磁誘導信号を送信させる。
X軸方向ループコイル群211X及びY軸方向ループコイル群212Yの各ループコイルには、電子ペン100から送信される電磁誘導信号によって誘導電圧が発生する。処理制御部229は、この各ループコイルに発生した誘導電圧の電圧値のレベルに基づいて電子ペン100のX軸方向及びY軸方向の指示位置の座標値を算出する。
また、処理制御部229は、電流ドライバ222に、送信信号を断続制御するための信号及び送信信号レベル制御のための信号を供給すると共に、電子ペン100からの筆圧データや識別情報などの付加情報の受信処理を行うようにする。処理制御部229は、後述するように、電子ペン100からの、例えばASK信号からなる断続信号を、複数ビットのデジタル信号として検出して、筆圧データや識別情報などの付加情報を検出するようにする。
[電子ペン100の動作及び位置検出装置200の動作]
位置検出装置200は、処理制御部229の処理制御に基づいて送信信号を送出している。なお、電子ペン100は、位置検出装置200ではなく、専用の充電装置と電磁結合することで、当該専用の充電装置から送出される交流信号を受信することもできる。
電子ペン100では、位置検出装置200あるいは充電装置からの交流信号を並列共振回路111で受信する状態にないときには、整流回路114のキャパシタ117には蓄電はされない。したがって、電圧検知回路120で所定の電圧Eth以上は検知されないので、充電制御回路118を構成するスイッチ回路はオフで、キャパシタ119は充電されない。
そして、電子ペン100が、位置検出装置200あるいは充電装置からの交流信号を並列共振回路111で受信する状態になると、並列共振回路111で受信された交流信号が整流回路114で整流され、キャパシタ117に蓄電される。整流回路114のキャパシタ117の静電容量C1は、前述したように小さいので、この整流回路114のキャパシタ117に得られる整流出力電圧VC1は、図3の実線301に示すように、急峻な傾きで上昇する。
そして、整流回路114のキャパシタ117に得られる整流出力電圧VC1が、所定の電圧Ethを超えると、電圧検知回路120でそれが検知されて、充電制御回路118を構成するスイッチ回路がオンとされ、整流回路114のキャパシタ117に得られる整流出力電圧VC1により、キャパシタ119に充電電流が流れ始める。キャパシタ119の静電容量C2は、キャパシタ117の数倍〜数十倍とされるので、キャパシタ119の両端電圧(蓄電電圧)VC2は、図3の実線302で示すように、緩やかに上昇する。
一方、このとき、位置検出装置200あるいは充電装置からの交流信号が得られている間は、整流回路114のキャパシタ117に得られる整流出力電圧VC1は上昇し、所定の電圧Ethを超えると、図3の実線301で示すように、キャパシタ119への充電電流の供給のために、急峻な上昇の傾きから、僅かに上昇する傾きに変化する。
すなわち、ペン制御回路110は、整流回路114のキャパシタ117に得られる整流出力電圧VC1が所定の電圧Eth以上であれば、電圧安定化回路122からの電源電圧により、安定に動作することができる。したがって、整流回路114のキャパシタ117に得られる整流出力電圧VC1は所定の電圧Eth以上の大きな電圧値となる必要はなく、整流出力電圧VC1が所定の電圧Eth以上になった後の蓄電用のキャパシタ117への充電電流は、余剰のエネルギー分となる。
この実施形態の電子ペン100においては、この余剰のエネルギー分により、キャパシタ119に充電電流が供給されて、充電(蓄電)がなされる。そして、このキャパシタ119の充電(蓄電)は、整流回路114のキャパシタ117に得られる整流出力電圧VC1が所定の電圧Eth以上であれば、ペン制御回路110が安定に動作する状態を維持するので、緩やかな傾きで行われても全く差し支えない。
そして、もしも、電子ペン100が、位置検出装置200や充電装置から遠ざかり、共振回路111を通じて受信エネルギーが得られない状態になった時には、キャパシタ119の蓄電電圧VC2が、所定の電圧Eth以上にまでなっていれば、当該キャパシタ119の蓄電電圧VC2により、電圧安定化回路122を通じて、電子ペン100のペン制御回路110に電源電圧を供給することで、ペン制御回路110は、安定な動作状態を維持する。この場合に、キャパシタ119の静電容量は大きいので、ペン制御回路110は、安定な動作状態を、比較的長く継続することができる。
また、この実施形態においては、電子ペン100には内部回路121が設けられているが、当該内部回路121が動作状態になったとしても、その内部回路121の電源電圧は、キャパシタ119の蓄電電圧から供給される構成であるので、整流回路114のキャパシタ117に得られる整流出力電圧VC1は、内部回路121によって低下することはない。したがって、電子ペン100のペン制御回路110は、安定な動作状態をすることができる。
ところで、この場合に、電子ペン100のスイッチ回路112がオフであるときには、並列共振回路111は、位置検出装置200から送信された交流信号に対して共振動作を行って、電磁誘導信号を位置検出装置200に返送(帰還)する。位置検出装置200のループコイル211Xや212Yは、電子ペン100の共振回路111からの電磁誘導信号を受信する。これに対して、電子ペン100のスイッチ回路112がオンであるときには、並列共振回路111は、位置検出装置200からの交流信号に対する共振動作が禁止された状態になり、このために、並列共振回路111から位置検出装置200に電磁誘導信号は返送(帰還)されず、位置検出装置200のループコイル211Xや212Yは、電子ペン100からの信号を受信しない。
この例では、位置検出装置200の処理制御部229は、電子ペン100により指示された位置を検出する位置検出動作時には、ループコイル211X及びループコイル212Yを順次に切り替えながら、発振器221からの交流信号を電子ペン100に送信すると共に、送信後に受信に切り替えて、その帰還信号のレベルを検出する。この位置検出時においては、電子ペン100のペン制御回路110は、スイッチ回路112は常時オフとして、常に、並列共振回路111で受信した交流信号を、位置検出装置200に帰還する状態にする。
位置検出装置200の処理制御部229は、ループコイル211X及びループコイル212Yのそれぞれで受信した帰還信号のレベルの大きさを監視し、そのレベルに基づいて、電子ペン100により指示された座標位置を検出する。
そして、この例では、位置検出装置200の処理制御部229は、電子ペン100からの受信信号の有無の検出を、電子ペン100から伝達される情報のビット数分の回数だけ行うことにより、当該複数ビットのデジタル信号の情報を受信する。
一方、電子ペン100のペン制御回路110は、前述したように、位置検出装置200に送信する筆圧データなどの情報に対応した複数ビットのデジタル信号を生成し、その複数ビットのデジタル信号により、位置検出装置200との間の電磁誘導信号の送受信に同期してスイッチ回路112をオン・オフ制御する。
位置検出装置200の処理制御部229は、電子ペン100からの受信信号の有無の検出を、電子ペン100から伝達される情報のビット数分の回数だけ行うことにより、デジタル信号である前記電子ペン100からの情報を受信することができる。
[実施形態の効果]
以上説明したように、上述の実施形態の電子ペン100においては、整流回路114のキャパシタ117に加えて、当該キャパシタ117に蓄積された整流出力電圧により充電がなされるキャパシタ119が設けられている。そして、上述の実施形態の電子ペン100においては、電圧検知回路120で、キャパシタ117に蓄積された整流出力電圧の電圧値が、所定の電圧Ethを超えたと検知されたときに、充電制御回路118を通じて充電電流がキャパシタ119に供給されるように制御される。
これにより、上述の実施形態の電子ペン100によれば、整流回路114のキャパシタ117の静電容量を小さくして、位置検出装置200との電磁結合による信号の授受の際における応答速度を速くすることができると共に、キャパシタ117よりも静電容量の大きいキャパシタ119に余剰のエネルギーを蓄積することができる。そして、キャパシタ119に蓄積された電圧により、電子ペン100の安定な動作を確保することが可能になると共に、内部回路の駆動電圧をキャパシタ119から供給するように構成することができる。このため、内部回路の動作により整流回路114のキャパシタ117の整流出力電圧が低下するのを防止することができるので、電子ペン100の位置検出装置200との電磁結合による信号の授受について、安定な動作を維持することができる。
[実施例1;充電制御回路118及び電圧検知回路120の具体例並びに内部回路121の具体例]
次に、上述した電子ペン100の充電制御回路118及び電圧検知回路120の具体的な回路構成例、並びに、内部回路121の具体的な構成例を説明する実施例1の電子ペン100Aについて、図4を参照して説明する。なお、上述した電子ペン100と同一部分については、この図4の実施例1においても同一の参照符号を付与して、重複説明は省略する。
図4の実施例1の電子ペン100Aにおいては、電圧検知回路120は、降伏電圧(ツェナー電圧)が前記所定の電圧Eth以上であるツェナーダイオード133で構成される。そして、充電制御回路118は、このツェナーダイオード133と直列にソース−ドレイン間が接続されるFET131と、このFET131とゲートが共通に接続されると共に、キャパシタ119と直列にソース−ドレイン間が接続されるFET132とからなる。
この場合、FET131のソース−ドレイン間と、ツェナーダイオード133との直列回路は、整流回路114のキャパシタ117と並列に接続されている。また、キャパシタ119とFET132のソース−ドレイン間との直列回路も、整流回路114のキャパシタ117と並列に接続されている。
そして、FET131のゲート−ソース間が接続されることで、FET131は、いわゆるダイオード接続されて、所定の電流値Iを流す電流源の構成とされる。そして、このダイオード接続されているFET131とゲートが共通に接続されるFET132により、カレントミラー回路が構成される。この例では、FET132のサイズは、FET131のn(n≧1)倍、例えばn=3倍とされており、ツェナーダイオード133がオンとなって、このFET131及びツェナーダイオード133を通じて電流値Iの電流が流れると、FET132を通じて、キャパシタ119に電流値3Iの充電電流が流れるように構成されている。
そして、この例では、キャパシタ119とFET132のソースとの接続点は、ダイオード134を通じて電圧安定化回路122に接続されている。
また、この例の内部回路121は、発光素子としてのLED135と、スイッチ回路136との直列回路とされている。すなわち、キャパシタ119とFET132のソースとの接続点が、LED135とスイッチ回路136との直列回路を通じて接地されている。スイッチ回路136は、LED135を発光させるか否かを、使用者の操作に応じて制御するためのもので、使用者により操作される押釦スイッチ137が、ペン制御回路110に接続されている。
押釦スイッチ137の操作部137aは、図示は省略するが、図2に示したケース101から外部に露出して、使用者が操作可能に設けられている。また、LED135は、例えば図2に示したケース101内のペン先側の近傍に設けられると共に、ケース101の、少なくともLED135が設けられている位置の近傍のペン先側の部分が透明部とされて、LED135の発光光が、電子ペン100Aのペン先側(芯体109の一端109a側)による指示位置の近傍を明るく照らすように構成されている。
さらに、この実施例1においては、電子ペン100Aから位置検出装置200に伝達する情報としては、筆圧データに加えて、電子ペン100Aの製造者番号及び製品番号を含む識別情報(ID)が含められる。このため、図4に示すように、ペン制御回路110には、電子ペン100Aの製造者番号及び製品番号を含む識別情報(ID)を記憶するIDメモリ138が接続されている。
ペン制御回路110は、前述したようにして、筆圧検出部105で構成される可変容量キャパシタ105Cの容量から筆圧を検出して筆圧データを生成し、更に、IDメモリ138から識別情報を読み出し、生成した筆圧データと読み出した識別情報とからなるデジタル信号を生成する。そして、ペン制御回路110は、スイッチ回路112を制御することで、位置検出装置200に送信するようにする。
この例においては、使用者は、LED135を発光させたいときには、押釦スイッチ137の操作部137aを押して、ペン制御回路110にその旨を入力しておくようにする。この状態で、電子ペン100Aが、位置検出装置200や充電装置からの交流信号を受けて、整流回路114のキャパシタ117が充電され、整流出力電圧が所定の電圧Ethを超えると、ペン制御回路110が動作状態になる。すると、ペン制御回路110は、前述した位置検出装置200との電磁結合による信号の授受のための制御を開始すると共に、押釦スイッチ137の操作状態を検知して、当該押釦スイッチ137が、LED135を発光させる状態に設定されているときには、スイッチ回路136をオンにする。
そして、この例の電子ペン100Aにおいては、整流回路114のキャパシタ117が充電されて整流出力電圧が所定の電圧Ethを超えると、ツェナーダイオード133が降伏してオンとなり、FET131及びツェナーダイオード133を通じて電流値Iの電流が流れる。すると、カレントミラー接続されているFET132には、電流値3Iの充電電流が流れて、キャパシタ119が充電される。
そして、このキャパシタ119の蓄電電圧がLED135を発光させることができる電圧まで上昇すると、スイッチ回路136がオンであれば、LED135を通じて駆動電流が流れて、LED135が発光する。このLED135の発光により、この例では、電子ペン100の芯体109の一端109a側であるペン先側が明るく照明される。また、このLED135の発光により、使用者は、キャパシタ119の蓄電電圧が、内部回路121を動作可能にする所定値以上となって、電子ペン100が安定に動作する状態になったことを認識することができる。
以上説明した実施例1の電子ペン100Aは、バッテリーを搭載していなくても、電子ペンとしての本来の動作機能に支障をきたすことなく、LED135を点灯させることができる。しかも、電子ペンとしての本来の動作機能については、応答速度を速くすることが可能であるという効果を奏する。
なお、上述の実施例1では、LED135の配置位置は、電子ペン100のペン先側の近傍としたが、これに限られる訳ではなく、電子ペン100のケース101のペン先側とは反対側の端部や、ケース101の軸心方向の中央部など、任意の位置で良い。ただし、いずれの場合にも、LED135の発光状態が外部から視認可能となるように、ケース101の当該LED135の配置位置近傍が構成されることは言うまでない。
[実施例2;充電制御回路118及び電圧検知回路120の具体例並びに内部回路121の具体例]
次に、充電制御回路118及び電圧検知回路120の具体例並びに内部回路121の具体例の他の例である実施例2の電子ペン100Bについて、図5を参照して説明する。この図5の実施例2において、図4の実施例1と同一部分には同一の参照符号を付与して、重複説明は省略する。
図5の実施例2の電子ペン100Bにおいては、図4の実施例1の電子ペン100Aとは、内部回路121の構成が異なると共に、押釦スイッチ137が設けられていない点が異なる。
すなわち、実施例2の電子ペン100Bの内部回路121Bは、通信回路141と、認証回路142と、LED143と、スイッチ回路144とからなる。通信回路141は、この例では、ブルートゥース(登録商標)規格の無線通信回路の構成とされており、キャパシタ119の蓄電電圧を駆動電圧として駆動される。なお、この実施例2の電子ペン100Bと共に使用される位置検出装置には、電子ペン100Bの通信回路141と無線通信する通信回路が設けられている。
そして、認証回路142もキャパシタ119の蓄電電圧を電源電圧として駆動される。この認証回路142は、通信回路141と接続されており、位置検出装置に電子ペン100Bを認証させるための第1の認証用情報を通信回路141を通じて位置検出装置に送ると共に、位置検出装置から送信されてくる当該位置検出装置を認証するための第2の認証用情報を通信回路141で受信し、その第2の認証用情報に基づいて位置検出装置の認証をする。第1の認証用情報及び第2の認証用情報は、よりセキュリティーを強化するために、暗号化させており、認証回路142はその暗号化の復号処理を行う。このため、認証回路142は、ペン制御回路110の機能として構成せずに、別の回路として構成されている。
そして、認証回路142は、その認証結果を位置検出装置に通信回路を通じて送信するようにする。なお、電子ペン100Bから位置検出装置に送信される第1の認証用情報には、IDメモリ138から読み出された当該電子ペン100Bの識別情報が付加されている。
位置検出装置も、通信回路と共に、認証回路を備えており、電子ペン100Bからの第1の認証用情報に基づいて、電子ペン100Bについての認証を行う。そして、位置検出装置は、その認証結果を電子ペン100Bに送信する。
以上ようにして、電子ペン100Bと位置検出装置とは、相互に相手の認証を行い、その認証結果を相互に相手方に送る。そして、電子ペン100B及び位置検出装置は、相互の認証が取れたことを確認したときに、認証が取れたと判断する。認証が取れたときには、電子ペン100Bは位置検出装置に対する指示入力が可能となり、位置検出装置は、電子ペン100Bから送られてくる識別情報を監視しながら、認証が確認された電子ペン100Bにより指示された位置を検出するようにする。電子ペン100Bの認証回路142は、位置検出装置との間で上述の相互認証を確認したときには、その旨をペン制御回路110に通知する。
そして、更に、この実施例2の電子ペン100Bにおいては、キャパシタ119とFET132のソースとの接続点が、LED143とスイッチ回路144との直列回路を通じて接地されている。そして、スイッチ回路144は、初期状態(通常状態)ではオフとされており、ペン制御回路110からの切替制御信号によりオンに切り替え制御される。ペン制御回路110は、認証回路142から、位置検出装置との間で上述の相互認証を確認した旨の通知を受けたときには、スイッチ回路144をオンにするように制御する。したがって、LED143は、電子ペン100Bと位置検出装置との間で相互の認証が確認されたときにのみ点灯発光し、使用者は、当該LED143の点灯発光により、電子ペン100Bと位置検出装置との間で相互の認証が確認されたことを認識することができる。
電子ペン100Bのその他の構成は、電子ペン100Aと同様とされている。
この電子ペン100Bの、位置検出装置との間での相互認証の際の動作を、図6のフローチャートを参照して説明する。なお、この図6のフローチャートの各ステップの処理は、認証処理を除いて、ペン制御回路110が主として実行するものである。認証処理は、専用の認証回路142で行われるものである。
電子ペン100Bが、位置検出装置や充電装置からの交流信号を受けて、整流回路114の蓄電用のキャパシタ117が充電され、整流出力電圧が所定の電圧Ethを超えると、ペン制御回路110が動作状態になる。すると、ペン制御回路110は、図6のフローチャートに示す処理を起動し、通信回路141及び認証回路142の動作状態を確認することで、位置検出装置との通信が可能となったか否か判別する(ステップS101)。
この例の電子ペン100Bにおいても、整流回路114のキャパシタ117が充電されて整流出力電圧が所定の電圧Ethを超えると、ツェナーダイオード133が降伏してオンとなり、FET131及びツェナーダイオード133を通じて電流値Iの電流が流れ、これに伴い、FET132を通じて電流値3Iの充電電流が流れて、キャパシタ119が充電される。そして、キャパシタ119の蓄電電圧が、通信回路141及び認証回路142の動作電圧まで上昇しない間は、ステップS101では、位置検出装置との間での通信は不可となるので、ペン制御回路110は、ステップS101を継続する。このとき、スイッチ回路144は、オフのままとされる。
そして、キャパシタ119の蓄電電圧が通信回路141及び認証回路142の動作電圧以上に上昇すると、ペン制御回路110は、ステップS101で、位置検出装置との間での通信が可となったと判別する。すると、ペン制御回路110は、スイッチ回路144を所定周期でオン、オフを繰り返して、LED143を点滅させる(ステップS102)。この時、通信回路141及び認証回路142が動作状態になるので、上述した相互認証処理がなされる(ステップS103)。したがって、LED143の点滅により、電子ペン100Bは、位置検出装置との間で相互認証処理動作中であることが使用者に報知されることになる。
次に、ペン制御回路110は、認証回路142からの相互認証の確認ができた旨の通知を受けたか否か判別し(ステップS104)、通知を受けていないと判別したときには、処理をステップS101に戻して、このステップS101以降の処理を繰り返す。
そして、認証回路142からの相互認証の確認ができた旨の通知を受けたと判別したときには、ペン制御回路110は、スイッチ回路144をオンに切り替えて、LED143を点灯発光させる(ステップS105)。使用者は、このLED143の点灯発光により、位置検出装置との相互認証が取れたことを認識する。
次に、ペン制御回路110は、認証が取れた位置検出装置に対して、前述した電子ペンとしての動作を開始するようにする(ステップS106)。すなわち、電子ペン100Bは、位置検出装置からの電磁波を共振回路111で受信し、それを帰還することで、位置検出用の信号を位置検出装置に送信すると共に、筆圧データや識別情報をデジタル信号として送信するようにする。なお、筆圧データや識別情報は、通信回路141を通じて位置検出装置に送信するようにしてもよい。
次に、ペン制御回路110は、位置検出装置と通信が不能となったか否か判別し(ステップS107)、通信不能となっていないと判別したときには、電子ペンとしての処理動作を継続し、通信不能となったと判別したときには、処理をステップS101に戻して、当該ステップS101以降の処理を繰り返す。
以上説明した実施例2の電子ペン100Bによれば、位置検出装置との相互認証を行うための通信回路141及び認証回路142は、キャパシタ119の蓄電電圧で動作するように構成されているので、当該相互認証の処理動作が、ペン制御回路110に駆動電圧を供給する整流回路114の蓄電用のキャパシタ117の蓄電電圧に影響を与えることない。このため、電子ペン100Bは、相互認証処理動作中であっても、位置検出装置との間で電磁結合による電子ペンとしての動作を安定して行える。
[その他の実施形態または変形例]
電子ペンの内部回路121は、上述した例に限られる訳ではないことは言うまでもない。例えば、内部回路は、ブルートゥース(登録商標)規格の無線通信回路で構成し、この無線通信回路で、電子ペンの識別情報や筆圧データを位置検出装置に送信するようにしてもよい。
また、電子ペン100Bには第2の認証用情報が設定されており、位置検出装置から通信回路141を通じて電子ペン100Bに送信された、電子ペン100Bとの認証のための第1の認証用情報を受信することで、電子ペン100Bで位置検出装置との認証手続きを行っても良い。